説明

アスベストの処理装置

【課題】 アスベストを十分に溶融処理できるような広く深いスラグ浴を確保してアスベストの大量処理を可能とすると共にアスベストの溶融状態を離れた場所からでも確認可能で、しかもアスベストを安全に処理することが可能なアスベストの処理装置を提供する。
【解決手段】溶融炉10の天井部に袋詰めされたアスベスト3を投入する投入シュート20が設けられ、投入シュート20は、アスベストを収容した袋の最大幅サイズの1.5倍以上の内径を有する筒状体とされると共にその途中には傾斜部21を備え、傾斜部21には監視カメラ30が設けられ、さらに、一方が開くと他方が閉じて投入経路を交互に開閉するようにされた冷却機構22zを有する一対の自動開閉ダンパ22とを備えていると共に、投入シュート20と溶融炉10の天井部との接合部分に耐熱性金属28を配置して構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストの処理装置に関し、さらに詳しくは、溶融炉内へ投入した産業廃棄物をサイドバーナで加熱溶融することによって形成したスラグ浴中にアスベストを投入して無害化処理するアスベストの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは、クリソタイル(白石綿:MgSi(OH)−融点1521℃―)、クロシドライト(青石綿:NaFeSi22(OH)―融点1193℃―)、及びアモサイト(茶石綿:(FeMg)Si22(OH))の総称である。アスベストは、微細な繊維状の針状結晶で、人体に吸引されると呼吸器官に癌等の障害を発生させる原因となることが知られている。そのため、これまでは十分な飛散防止処理を施した上で埋め立て処理等によって処分されていたが、強い発ガン性のために土中に埋めるのではなく溶融等の手段によって無害化する処理法が種々提案されていた。
【0003】
従来のアスベストの処理方法としては、例えば、特許第3085959号に開示された処理方法がある。この処理方法はアスベストそのものを処理する方法でなく、バインダーを利用する方法であったために処理コストが嵩むおそれがあること、また、特開平7−171536号公報に開示された処理方法は、電気炉を利用するものであったため高価な電力を多量に必要となること等の問題点があった。
【0004】
そのため、汚泥、鉱滓、燃え殻、プリント基板、パット屑,廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダストなどの産業廃棄物を横型炉に装入し、該炉に設けられたバーナにより溶融し、湯溜り部にスラグ浴を形成するとともに、アスベストをスラグ浴に投入して、スラグ浴中に溶解することを特徴とするアスベストの無害化処理方法が提案されている(特開2003−181412号公報(特許文献1))。
【0005】
【特許文献1】特開2003−181412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアスベストの無害化処理方法は、溶融炉の炉短辺に設けられたサイドバーナによって産業廃棄物を加熱、溶融させたスラグ浴中にアスベストを投入し、その保有熱でアスベストを溶融して無害化するというものであるが、産業廃棄物中に含まれる鉄などの高融点物質が次第に固化して炉底に堆積するという問題があった。それらがアスベストを溶融炉内に投入する投入口の下側の炉底部に堆積すると形成されるスラグ浴の深さが次第に浅くなり、投入したアスベストを十分に溶融処理することが困難となると共に、処理できる量も減少することとなって大量処理を妨げる原因となっていた。
【0007】
また、従来は、袋詰めされたアスベストを溶融炉の上部に設けられた投入口へ作業員が直接投入することによって行われていたが、投入したアスベストの溶融状態を確認する手段がなかったため投入のタイミングは作業員の感に頼らざるを得ず効率的な処理が行われているとはいい難かった。
【0008】
さらに、袋詰めされたアスベストの溶融炉への投入に際してはアスベストの飛散防止対策を十分に行う必要があると共に、投入経路の途中で目詰まりを起こしたりせずに確実に溶融炉内へ投入できるようにする必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決し、アスベストを十分に溶融処理できるような広く深いスラグ浴を確保してアスベストの大量処理を可能とするアスベストの処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、投入した袋詰めされたアスベストの溶融状態を離れた場所からでも確認することができ、しかもアスベストを安全に処理することが可能なアスベストの処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明は、溶融炉内へ投入した産業廃棄物をサイドバーナで加熱溶融することによって形成したスラグ浴中にアスベストを投入して無害化処理するアスベストの処理装置において、スラグ浴の上部に位置する溶融炉の天井部に袋詰めされたアスベストを溶融炉内に投入する投入シュートが設けられ、投入シュートは、アスベストを収容した袋の最大幅サイズの1.5倍以上の内径を有する筒状体とされると共にその途中には所定の角度で傾斜した傾斜部を備え、傾斜部の側面部であって溶融炉内へ投入したアスベストの落下箇所を撮影可能な位置に監視カメラが設けられ、さらに、冷却機構を備えた上部側ダンパ及び下部側ダンパを有して構成される一対の自動開閉ダンパであって一方が開くと他方が閉じて投入経路を交互に開閉するようにされた一対の自動開閉ダンパとを備えていると共に、投入シュートと溶融炉の天井部との接合部分に耐熱性金属を配置して構成されたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のアスベストの処理装置において、投入シュートの傾斜部を冷却する冷却機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のアスベストの処理装置において、産業廃棄物が投入される上流側の溶融炉の天井部に1又は複数の酸素バーナを設けると共に、投入シュート近傍の溶融炉の天井部にも1又は複数の酸素バーナを設け、酸素バーナの取り付け位置の下側付近の炉底を所定の深さのスラグ浴が形成されるように相対的に低く形成したことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のアスベストの処理装置において、袋詰めされたアスベストを搬送して投入シュートへ自動的に投入する搬送コンベアをさらに備えて構成されていることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のアスベストの処理装置において、投入シュートの下部側に炉内ガスの吹き出しを防止すると共に耐熱金属を冷却するためのエアを吹き込むエア吹込管が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るアスベストの処理装置によれば、広く深いスラグ浴を確保することを可能としたのでアスベストを大量に処理することができるという効果がある。
また、溶融状態を監視可能としたので袋詰めされたアスベストの投入のタイミングや目詰まり等を確認することができ効率的かつ安全に作業を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るアスベストの処理装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係るアスベストの処理装置の一実施形態の正面図である。
【0018】
初めに、図示されたアスベストの処理装置1は、袋詰めされたアスベスト3を溶融する溶融炉10と、溶融炉10の天井部に設けられた投入シュート20と、袋詰めされたアスベスト3を搬送して投入シュート20内へ投入する搬送コンベア40を備えて構成されている。
【0019】
溶融炉10は、横型炉の一つである反射炉を基にして形成されており、マット、金属のいずれを生成する際にも用いられ、金属の乾式精錬にも用いられる。溶融炉10の内側は主として、マグネシア(MgO)、クロミナ・マグネシア(Cr−MgO)系などの塩基性の耐熱性レンガ10aで構築されている。そして、溶融炉10の炉短辺にはサイドバーナ15が横一列に3つ配置されている。サイドバーナ15は、例えば、重油や廃油、天然ガス等の燃料を燃焼することによって炉内に向かって長い火炎16を吹き出し、炉内に投入される産業廃棄物5の加熱溶融を行う。また、サイドバーナ15に近い溶融炉10の天井部には長手方向に沿って2列に産業廃棄物5を溶融炉10内に装入するための装入口11、11が並んで設けられている。装入口11、11から装入された産業廃棄物5はサイドバーナ15の火炎16によって直接或いは天井や内壁に反射した熱によって加熱溶融される。
【0020】
溶融炉10内に装入される産業廃棄物5は、例えば、汚泥、鉱滓、燃え殻、プリント基板、パット屑、廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダスト等がある。ここで、「汚泥」は「脱水汚泥」、「めっき汚泥」、「研磨汚泥」、「下水汚泥」等であり、「脱水汚泥は」Ca、Feを主成分とする。「めっき汚泥」はCu、Fe、S、Caを主成分とする。また、「燃え殻」は焼却残渣等である。「プリント基板」はCuとプラスチックから構成される。「鉱滓」はAl粉等であり、「パット屑」はブレーキパッド等である。「廃ショット」はショットブラスト用投射粒等の廃材である。「ダスト」は煤塵である。被処理物が有価金属を含有する場合は硫化鉄を添加してマットを生成し、有価金属をマット中に捕捉することができる。また、汚泥類に多く含まれる、主に酸化物として存在する鉄分、排水汚泥に多く含まれるCaO分などは、SiOを多く含むガラス屑を適量添加し、低融点のスラグを生成してマットから比重差で分離し、マット中の有価金属の含有率を高める。尚、上記汚泥等以外にもスラグとして再利用可能な産業廃棄物を装入することもある。
【0021】
溶融炉10の炉底部は、産業廃棄物5が装入される位置では鉄あるいは高融点の鉄の高級酸化物の堆積により湯溜り部13より高い位置となっており、溜り部13との間は傾斜面となっている。これによりバーナ15の火炎16によって溶融された産業廃棄物5は溶融状態のまま炉底部を流れ、湯溜り部13に溜まるようになっている。湯溜り部13に溜まった溶融状態の産業廃棄物5は有価金属を含む比重の高いマット浴13aとその上層に形成されるスラグ浴13bとに分離され、それぞれマットタップホール18及びスラグタップホール19から炉外へ排出されるようになっている。
【0022】
スラグ浴13bが形成される湯溜り部13の上部側に位置する炉のほぼ中央付近の天井部には袋詰めされたアスベスト3を投入する投入シュート20が配置されている。そして、投入口20の近傍の3箇所及び上流側(産業廃棄物5を投入する側)の2箇所にそれぞれ天井バーナ25が設置されている。天井バーナ25は、重油や廃油、天然ガス等の燃料を燃焼することによって溶融炉10内に局部的に約1,500℃以上の高温部を形成する。これにより、加熱溶融されたスラグが固化することなく流れる流路を確保すると共に、産業廃棄物5中に含まれる鉄などの高融点物質が固化して炉底に堆積することが防止されるので袋詰めされたアスベスト3を溶融するに十分な深さのスラグ浴13bを形成保持することができる。そのため、袋詰めされたアスベスト3を迅速且つ大量に溶融処理することが可能となる。尚、本実施形態では天井バーナ25は5箇所に設置されているがこれに限るものではなく、例えば、投入シュート20の近傍に4つ設けてもよい。また、十分な深さのスラグ浴13bを確保するために炉底を少し掘り下げている。アスベストは、当該横型炉内で生成するスラグと組成が似ているため、スラグ浴を確保し温度を最低1,350℃以上に維持することで、容易にスラグ中に溶融可能となる。
【0023】
また、天井バーナ25は、溶融炉10の天井から下側に位置するスラグ浴13bに向かって火炎26を放射して局所的に高温部を形成させているので炉の側壁や天井部に熱負荷を与えることがなく設備の寿命を長く保持することも可能となる。さらに、天井バーナ25は、火炎26の放射口を揺動可能に形成されており、火炎16の放射方向を所定の範囲で変更できるようになっている。
【0024】
ここで、スラグ浴13bは、アルミナ含有率の低い銅精錬スラグ、例えば、溶鉱炉スラグや自溶炉スラグを用いることもできる。溶鉱炉スラグ及び自溶炉スラグの組成は、概略として、SiO:30〜35%、FeO:25〜30%、Fe:5〜10%、Al:4〜8%、CaO:10〜15%であり、その溶融温度は1,075〜1,125℃となっている。この点、アスベストを主とする産業廃棄物50よりも低融点ではあるが、アスベストの主成分は塩基性のMgOで、ここに酸性のSiO等が接触すると、低融点の化合物が生成される。これにより1,500℃を超える融点を持つ高融点のアスベストを主とする産業廃棄物50であってもそれよりも低融点のスラグに溶かし込むことが可能となり、熔融物を全体として低融点の組成とすることができる。この溶融物は低融点であるため銅との分離性がよく、水砕し、スラグとして製品化することもできる。
【0025】
投入シュート20は溶融炉10の天井部に設置されおり、図6に示すように概略として、袋詰めされたアスベスト3の最大幅サイズの少なくとも1.5倍以上の内径を有する筒状体によって形成され、その途中には所定の角度で傾斜した傾斜部21が設けられている。また、投入シュート20には、一方が開くと他方が閉じて投入経路を交互に開閉する上部側ダンパ22a及び下部側ダンパ22bを有する一対の自動開閉ダンパ22が設けられている。
【0026】
袋詰めされたアスベスト3は概ね幅サイズが約40cm前後であり、投入シュート20内で目詰まりすることなくスムーズに落下させるためには、袋の最大幅サイズの少なくとも1.5倍以上の内径を確保することが好ましく、従って、投入シュート20の内径は約60cm以上確保することが好ましい。本実施形態では投入シュート20の内径は70cmとされている。
【0027】
一方、投入シュート20の傾斜部21は、約40−60°の傾斜角とされており、この傾斜部21に溶融炉10内に投入された袋詰めされたアスベスト3の状態を撮影するための監視カメラ30が取り付けられている。投入シュート20を傾斜させたことで袋詰めされたアスベスト3が溶融炉10内へ落下して溶融するまでの状態の撮影が可能となった。これにより、後述する搬送コンベア40への袋詰めされたアスベスト3の移載位置付近にモニタを設置することで袋詰めされたアスベスト3の溶融状態を離れた場所で監視しながら投入スピードや投入量の調整を図ることができる。
【0028】
また、傾斜部21の傾斜角度があまり小さいと袋詰めされたアスベスト3がうまく投入シュート20の内面をすべり落ちずに目詰まりするおそれがあり、逆に傾斜角度があまり大きいと監視カメラ30が取り付け難くなるので傾斜部21の傾斜角度は約40−60°程度とするのが好ましい。尚、本実施形態では傾斜部21は50°の傾斜角度とされている。
【0029】
さらに、傾斜部21の外側面には冷却板21aが取り付けられている。冷却板21aは、その内部に冷却水を流通させる水路が形成されており、冷却板21a内に冷却水を流通させることにより傾斜部21を適度に冷却するようになっている。これにより、傾斜部21が高温となることが抑制されるのでアスベストを収容した合成樹脂製の袋が傾斜部21の内面に接触してすべり落ちる際にも熱によって袋が溶けて内容物が飛び出すようなことが防止される。
【0030】
投入シュート20に設けられた一対の自動開閉ダンパ22は、上部側ダンパ22aと下部側ダンパ22bによって構成されており、一方が開くと他方が閉じて投入経路を交互に開閉するシーケンスをもって動作するようになっている。これにより、投入シュート20内部は常に外部と遮断された状態となってアスベストの外部へ飛散するのを防止している。
【0031】
また、上部側ダンパ22a及び下部側ダンパ22bは内部に冷却水を流通させるための水路22zが形成されており、上部側ダンパ22a及び下部側ダンパ22bが過熱するのを防止している。すなわち、図7に示すように、上部側ダンパ22aの内部には仕切板22yによって冷却水を流通させる水路22zが形成されており、冷却水は上部側ダンパ22aの回転軸22x内を介して上部側ダンパ22aの内部に供給されるようになっている。そして、上部側ダンパ22aの内部を巡回した冷却水は反対側の回転軸22xの端部から外部へ至るようになっている。尚、下部側ダンパ22b及び冷却板21aも同様にして形成されている。上部側ダンパ22a及び下部側ダンパ22bに冷却機構を設けたのは過熱によって上部側ダンパ22a又は下部側ダンパ22bのいずれか一方でも動作不良を起こすと安全な処理ができなくなるため一対の自動開閉ダンパ22が確実に動作するようにするためである。また、アスベストを収容した合成樹脂製の袋が高温の上部側ダンパ22a又は下部側ダンパ22bによって溶融して破れることがないようにするためである。
【0032】
投入シュート20と溶融炉10の天井部との接合部分には耐熱性金属28が配置されており、投入シュート20の溶融炉10との境界部分を過熱から保護している。投入シュート20は耐熱性ステンレス材によって形成されているが、溶融炉10との接合部付近は1,400〜1,600℃とかなりの高熱となり、劣化が進行し易い。そのため、投入シュート20と溶融炉10との接合部に耐熱性金属28を配置することにより過熱による劣化を防止している、耐熱性金属28としては、例えば、クロム45%、ニッケル30%を含む耐熱性鋼や、さらにタングステン、モリブデン、ニオブ、バナジウムなどを加えた耐熱性鋼等がある。
【0033】
また、投入シュート20の下部側には投入シュート20内にエアを吹き込むエア吹込管38が配置されている。エア吹込管38は斜め下方側に向かってエアを噴射するように取り付けられており、これによって耐熱性金属28を内側から冷却して投入シュート20と溶融炉10との接合部を保護すると共に、溶融炉10内からのガスの吹き上げを押さえ込み、それによってアスベストの飛散や排ガスの漏出を防止している。
【0034】
投入シュート20の上部には袋詰めされたアスベスト3を投入するための投入口20aが設けられており、この投入口20aと袋詰めされたアスベスト3の集積場3aとの間に搬送コンベア40が配置されている。これにより作業員は投入シュート20から離れた位置にある集積場3aから袋詰めされたアスベスト3を投入シュート20に投入することができるようになっている。また、集積場3aにはモニタ31が設置されており、監視カメラ30によって撮影される映像を確認することができるようになっている。これにより作業員は袋詰めされたアスベストの溶融状態を離れた場所からでも確認することができ、しかも投入シュート20から離れた位置にあるのでアスベストを安全に処理することが可能となる。
【0035】
次に、本発明に係るアスベストの処理装置1の動作について説明する。
初めに、溶融炉10の上部に設けられた装入口11から汚泥、鉱滓、燃え殻、プリント基板、パット屑,廃触媒、金属屑、廃ショット、研削屑、ダスト等の産業廃棄物5を装入する。そして、炉の側壁に配置されたサイドバーナ15によって溶融して湯溜り部13にスラグ浴13bを形成する。スラグ浴13bが形成されたことを監視カメラ30が撮影する映像をモニタ31によって確認したら集積場3aに集められた袋詰めされたアスベスト3を搬送コンベア40に移載し投入を開始する。搬送コンベア40によって搬送される袋詰めされたアスベスト3は投入シュート20に投入口20aに達し、投入口20aから袋詰めされたアスベスト3が自動的に投入シュート20内に投入される。
【0036】
袋詰めされたアスベスト3の投入時には上部側ダンパ22aは閉じた状態となっており、この状態で袋詰めされたアスベスト3が投入される。そして、上部側ダンパ22aが開くと袋詰めされたアスベスト3は落下すると共に傾斜部21を滑り落ちて下部側ダンパ22bに達する。下部側ダンパ22bは上部側ダンパ22aが開いているときには閉じるというシーケンスで動作するようになっているので袋詰めされたアスベスト3は一旦下部側ダンパ22b上に留まる。そして、上部ダンパ22aが閉じると、下部側ダンパ22bが開いて袋詰めされたアスベスト3が溶融炉10内に落下投入される。そして、上部側ダンパ22aが閉じた状態で次の袋詰めされたアスベスト3が投入されるのを待つ。
【0037】
投入された袋詰めされたアスベスト3の状態は集積場3aに設けられたモニタ31で観察することができるので、作業員は溶融状態を確認しながら次の袋詰めされたアスベスト3の投入を行う。
一方、上部側ダンパ22a及び下部側ダンパ22bは内部に配置された水路22z内を冷却水が流通しているので動作中は適度に冷却され、過熱よる動作不良を起こすことなく確実な動作が続けられる。また、傾斜部21の周囲に設けられた冷却板21aにも冷却水が流通されて傾斜部21が適度に冷却され、袋詰めされたアスベスト3の過熱による破損が防止されるので、アスベストが飛散することなく確実に溶融炉10内に投入される。
【0038】
操業に際しては、エア吹込管38からエアを投入シュート20内に吹き込んで耐熱性金属28を内側から冷却し、投入シュート20と溶融炉10との接合部の保護を行うと共に、溶融炉10内からのガスの吹き上げを押さえ込んでアスベストの飛散や排ガスの漏出を防止する。
【0039】
形成されたスラグ浴13bは溶融炉10に流路に沿って設けられた各天井バーナ25によって十分な溶融状態が確保されると共に、炉底の掘り下げによって深さも確保され、袋詰めされたアスベスト3を溶融するに足りるだけのスラグ量が確保される。これにより、大量の袋詰めされたアスベスト3の溶融無害化処理を行うことが可能となる。
【0040】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るアスベストの処理装置の一実施形態の正面図である。
【図2】図1のアスベストの処理装置の概略側面断面図である。
【図3】図1のアスベストの処理装置の概略平面図である。
【図4】図1のアスベストの処理装置の概略正面断面図である。
【図5】図1のアスベストの処理装置の概要を示す説明図である。
【図6】投入シュートの側面図である。
【図7】上部側ダンパの平面構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1 アスベストの処理装置
3 袋詰めされたアスベスト
3a 集積場
5 産業廃棄物
10 溶融炉
10a 耐熱レンガ
11 装入口
13a マット浴
13b スラグ浴
15 サイドバーナ
16 火炎
18 マットタップホール
19 スラグタップホール
20 投入シュート
21 傾斜部
21a 冷却板
22 一対の自動開閉ダンパ
22a 上部側ダンパ
22b 下部側ダンパ
22y 仕切板
22x 回転軸
22z 水路
25 天井バーナ
26 火炎
28 耐熱性金属
30 監視カメラ
31 モニタ
38 エア吹込管
40 搬送コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融炉内へ投入した産業廃棄物をサイドバーナで加熱溶融することによって形成したスラグ浴中にアスベストを投入して無害化処理するアスベストの処理装置において、
スラグ浴の上部に位置する前記溶融炉の天井部に袋詰めされたアスベストを当該溶融炉内に投入する投入シュートが設けられ、前記投入シュートは、
アスベストを収容した袋の最大幅サイズの1.5倍以上の内径を有する筒状体とされると共にその途中には所定の角度で傾斜した傾斜部を備え、当該傾斜部の側面部であって溶融炉内へ投入したアスベストの落下箇所を撮影可能な位置に監視カメラが設けられ、さらに、冷却機構を備えた上部側ダンパ及び下部側ダンパを有して構成される一対の自動開閉ダンパであって一方が開くと他方が閉じて投入経路を交互に開閉するようにされた一対の自動開閉ダンパ、
を備えていると共に、
前記投入シュートと前記溶融炉の天井部との接合部分に耐熱性金属を配置して構成されたことを特徴とするアスベストの処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアスベストの処理装置において、
前記投入シュートの傾斜部を冷却する冷却機構をさらに備えていることを特徴とするアスベストの処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアスベストの処理装置において、
前記産業廃棄物が投入される上流側の前記溶融炉の天井部に1又は複数の酸素バーナを設けると共に、前記投入シュート近傍の前記溶融炉の天井部にも1又は複数の酸素バーナを設け、当該酸素バーナの取り付け位置の下側付近の炉底を所定の深さのスラグ浴が形成されるように相対的に低く形成したことを特徴とするアスベストの処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアスベストの処理装置において、
袋詰めされたアスベストを搬送して前記投入シュートへ自動的に投入する搬送コンベアをさらに備えて構成されていることを特徴とするアスベストの処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のアスベストの処理装置において、
前記投入シュートの下部側に炉内ガスの吹き出しを防止すると共に前記耐熱金属を冷却するためのエアを吹き込むエア吹込管が配置されていることを特徴とするアスベストの処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−50745(P2009−50745A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204130(P2007−204130)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】