説明

アセタール合成触媒及びアセタール製造方法

【課題】 高収率で毒性が少なく、低温、常圧においても高収率なアセタール合成触媒を提供すること。
【解決手段】 固体であり、かつ酸性である固体酸を含んでいる。その固体酸は固体担体に酸が担持されている。その固体酸はZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2からなる集合から選択される化合物を含む。このようなアセタール合成触媒は、毒性が少ない物質である。また、このようなアセタール合成触媒は、低温かつ常圧において高収率でアセタ−ルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセタールを合成する為の触媒、及びアセタールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセタールは脱水剤や医薬品、農薬、染料その他の合成原料として広く利用されている。更に、アセタールはカルボニル基を有する医薬品、香料、その他の有機化合物を合成する過程でカルボニル基を保護する目的で用いられる。
【0003】
また、炭酸ジメチルを、アセタールと2酸化炭素を用いて製造する方法が提案されている。その炭酸ジメチルはガソリンの添加剤として注目されている。
【0004】
そのアセタールは、カルボニル化合物をアルコールと酸性触媒下で反応させて得られる事が知られている(ウェイド 有機化学 p1062-1064)。そのアセタールを工業的に利用する為に、環境負荷が少ない触媒を用いて、大量生産できる技術が望まれている。
【0005】
また、工業的に利用するために、常温、常圧で反応を行うことも望まれている。
【0006】
上記と関連して、特開平11−217346号公報には、カルボニル基を有する有機化合物と低級アルコールからアセタールを製造する方法において、カルボニル機を有する有機化合物及び/または低級アルコールが超臨界状態になる条件下で反応させることを特徴とするアセタールの製造方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−217346号公報
【非特許文献1】物質研News,p5,No.38(1999.7.15)
【非特許文献2】Chem.Lett, Vol32, pp232-233(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アセタールを高収率で合成するアセタール合成触媒及びアセタール製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、低温、常圧下で、高収率でアセタールを合成するアセタール合成触媒及びアセタール製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の更に他の目的は、毒性の少ない安全な触媒を用い、かつ高収率でアセタールを合成するアセタール合成触媒及びアセタール製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
アルコールと、カルボニル化合物とからアセタールを合成するアセタール合成触媒であって、
固体であり、かつ酸性である固体酸を含むことが好ましい。このようなアセタール合成触媒を用いる事で、アセタールの収率が向上する。
【0012】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その固体酸は、
固体担体と、
その固体担体に担持された酸性成分と
を備え、
その固体担体は、固体であり、
その酸性成分は、酸性であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その固体担体が、ZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2からなる集合から選択される化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その酸性成分がHを含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その酸性成分が、燐酸、硫酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、及び酢酸からなる集合から選択された酸を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その固体担体がその酸性成分を0.01〜20mass%の範囲で担持していることが好ましい。
【0017】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
その固体酸が、酸性である樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るアセタール合成触媒において、
その固体酸はスルホン酸基を含有する樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
本発明に係るアセタール合成触媒において、
そのスルホン酸基を含有する樹脂は、
整数nと、100以上の整数であるxと、0から100までの整数を示すmとを用いて、下記一般式(1)
【化1】

で示されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係るアセタール合成触媒において、
そのスルホン酸基を含有する樹脂は、
100以上の整数xを用いて、下記一般式(2)
【化2】

で示されるスチレンポリマーを含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
比表面積が10(m/g)〜300(m/g)であることが好ましい。
【0022】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
固体酸性度H が−5.6から−24の範囲に含まれることことが好ましい。
【0023】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
そのアルコールは合成時が液体であり、
そのカルボニル化合物が合成時に液体であり、
そのアセタールが合成時に液体であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るアセタール合成触媒は、
そのアルコールがメタノールであり、
そのカルボニル化合物がアセトンであり、
そのアセタールがアセトンジメチルアセタールであることが好ましい。
【0025】
本発明に係るアセタール製造方法は、
アルコール及びカルボニル化合物を原料として反応器に供給する工程
を備え、
その反応器にはアセタール合成触媒が充填されており、
そのアセタール合成触媒は、固体であり、かつ酸性である固体酸を含んでいることが好ましい。
【0026】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その固体酸が、
固体担体と、
その固体担体に担持された酸性成分と
を備え、
その固体担体は、固体であり、
その酸性成分は、酸性であることが好ましい。
【0027】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その固体担体は、ZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2からなる集合から選択される化合物を含むことが好ましい。
【0028】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その酸性成分がHを含むことが好ましい。
【0029】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その酸性成分が、燐酸、硫酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、及び酢酸からなる集合から選択された酸を含むことが好ましい。
【0030】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その固体担体がその酸性成分を0.01〜20mass%の範囲で担持していることが好ましい。
【0031】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その固体酸が、酸性である樹脂を含むことが好ましい。
【0032】
本発明に係るアセタール合成方法において、
その固体酸はスルホン酸基を含有する樹脂を含むことが好ましい。
【0033】
本発明に係るアセタール合成触媒において、
そのスルホン酸基を含有する樹脂は、
整数nと、100以上の整数であるxと、0から100までの整数を示すmとを用いて、下記一般式(3)
【化3】

で示されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含むことが好ましい。
【0034】
本発明に係るアセタール合成触媒において、
そのスルホン酸基を含有する樹脂は、
100以上の整数xを用いて、下記一般式(4)
【化4】

で示されるスチレンポリマーを含むことが好ましい。
【0035】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアセタール合成触媒の比表面積が10(m/g)〜300(m/g)であることが好ましい。
【0036】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアセタール合成触媒の固体酸性度H が−5.6から−24の範囲に含まれることが好ましい。
【0037】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その原料に液体の脱水剤を混合する工程を
更に備えることが好ましい。
【0038】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その脱水剤がそのアセタールと同じ種類のアセタールであることが好ましい。
【0039】
本発明に係るアセタール製造方法は、
その反応器に、その脱水剤とは異なる他の脱水剤が充填されていることが好ましい。
【0040】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアルコールをそのカルボニル化合物とその反応器内の雰囲気を大気圧あるいは大気圧より高い圧力に加圧して反応させることが好ましい。
【0041】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアルコールをそのカルボニル化合物とその反応器内の温度を常温あるいは常温より低い温度で反応させることが好ましい。
【0042】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアルコールは合成時に液体であり、
そのカルボニル化合物は合成時に液体であり、
そのアセタールは合成時に液体である
アセタール製造方法であることが好ましい。
【0043】
本発明に係るアセタール製造方法は、
そのアルコールがメタノールであり、
そのカルボニル化合物がアセトンであり、
そのアセタールがアセトンジメチルアセタールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るアセタール合成触媒を用いる事で、アルコールをカルボニル化合物と反応させて高収率でアセタールを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の第1の実施の形態につき詳細に説明する。
【0046】
本発明に係るアセタール合成触媒は固体酸を含んでいる。その固体酸は固体であり、かつ酸性である。このようなアセタール合成触媒を用いることにより、アルコールをカルボニル化合物と反応させて、高収率でアセタールを合成できる。
【0047】
その固体酸は、固体担体と、酸性成分を備えている。その固体担体としては、ZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2が例示される。その固体担体は1種類の化合物であってもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。その酸性成分はその固体担体に担持されている。その酸性成分はHを含有する。その酸性成分としては、燐酸、硫酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、及び酢酸が例示される。その酸性成分は1種類であってもよいし、2種類以上の物質からなる混合物であってもよい。
【0048】
上述のような固体酸は毒性の少ない安全な物質であることが知られている。
【0049】
本発明におけるアセタール合成触媒は、比表面積が10(m/g)〜300(m/g)である。
【0050】
本発明におけるアセタール合成触媒の固体酸性度H0は−5.6から−24の範囲である。
【0051】
本発明におけるアセタール合成触媒は、その酸性成分を0.01〜20wt%の範囲で担持していることが好ましい。
【0052】
上記アセタアール合成触媒は、周知の方法により製造、調製することが出来る。
【0053】
続いて、本発明の第1の実施の形態におけるアセタール製造方法について以下に詳述する。
【0054】
まず、原料のアセトン及びメタノールにアセトンジメチルアセタールが脱水剤として混合される。アセトンジメチルアセタールは脱水作用を有している。よって、アセトンジメチルアセタールを原料に混合することで、原料中に含まれる水分が除去される。よって、アセタール合成反応の開始時に、反応液相に存在する水分が除去される。これにより、そのアセタール合成触媒の表面への水分の吸着が抑制され、反応が進みやすくなる。アセトンジメチルアセタールは、メタノール及びアセトンから合成される生成物でもある。また、アセトンジメチルアセタールは脱水反応によりメタノール及びアセトンを生成する。そのメタノール及びアセトンは原料と同じである。よって、脱水剤及び脱水反応による生成物を反応生成物と分離する工程を新たに加える必要がない。
【0055】
続いて、既述のアセタール合成触媒及びモレキュラーシーブスが充填された反応器に、その原料が供給される。モレキュラーシーブスは脱水作用を有し、反応系内の水を除去する。
【0056】
尚、そのモレキュラーシーブスは、他の脱水作用を有する物質に置換されても良い。その脱水作用を有する物質としては、シリカゲルが例示される。
【0057】
続いて、その原料が供給された反応器内において、下記式(5)に示される反応によりアセトンジメチルアセタールが合成される。式(5)に示される反応は液相にて行われることが好ましい。
【化5】

【0058】
式(5)に示される反応は、そのメタノール、アセトン、及びアセトンジメチルアセタールが液体である温度、圧力下において行われる。その際、上記反応器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧しても良い。大気圧より高い圧力に加圧することにより、アセトンジメチルアセタールの収率が向上する。また、上記反応器内の温度を常温より低い温度で反応させてもよい。常温より低い温度で反応させることで、アセトンジメチルアセタールの収率が更に向上する。
【0059】
式(5)に示される反応は平衡反応である。即ち、得られる生成物は、アセトンジメチルアセタール、副生成物の水、未反応のアセトン、及びメタノールの混合物である。その混合物より、主目的物であるアセトンジメチルアセタールが分離されて取得される。
【0060】
分離方法としては周知の方法を用いることができ、例えば蒸留を用いることが出来る。また、未反応のメタノール及び未反応のアセトンも式(5)で得られた生成物から分離される。分離されたアセトン及びメタノールは上記アセタール合成工程にリサイクルされる。
【0061】
副生成物の水は上記モレキュラーシーブスによって除去される。これにより、反応の平衡が望む方向へ移動し、アセトンジメチルアセタールの収率が向上する。
【0062】
尚、上述のメタノールは他のアルコールに置換することができる。そのアルコールは、式(5)で示される反応を行なう際に、液体であるアルコールであればよい。
【0063】
そのアルコールとしては、1価のアルコール及び2価のアルコールが挙げられる。その1価のアルコールとしては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、α−フェネチルアルコール、β―フェネチルアルコール、アリルアルコール、1−メチルアリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オール、及び3−ブチン−1−オールが例示される。
【0064】
その2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,3−プロパンジオールが例示される。
【0065】
また、上述のアセトンは他のカルボニル化合物に置換することができる。他のカルボニル化合物としては、式(5)で表される反応を行なう際に液体である化合物であればよい。
【0066】
そのカルボニル化合物としては、ケトン及びアルデヒドが挙げられる。そのケトンとしては、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンが例示される。そのアルデヒドとしては、アセトアルデヒド及びプロピレンアルデヒドが例示される。
【0067】
また、上述のアセトンジメチルアセタールは他のアセタールに置換することができる。そのアセタールは、上記アセタール合成工程における反応時に液体である化合物であり、上記アルコールを上記カルボニル化合物と反応させて得られる化合物である。上記アセタールとしては、第1基R、第2基R、第3基R、及び第4基Rとを用いて下記一般式(6)で表される化合物が挙げられる。
【化6】

その第1基Rはヒドロカルビル基を示す。
その第2基Rはヒドロカルビル基を示す。
その第3基Rは水素原子又はヒドロカルビル基を示す。
その第4基Rは水素原子又はヒドロカルビル基を示す。
【0068】
本発明の第1の実施の形態によれば、アルコールをカルボニル化合物と反応させて、高収率でアセタールを得ることが出来る。
【0069】
本発明の第2の実施の形態につき、以下に詳述する。本発明に係るアセタール合成触媒は固体酸を含んでいる。その固体酸は固体であり、かつ酸性である。
【0070】
上記固体酸は、スルホン酸基を含有する樹脂である。そのスルホン酸基を含有する樹脂としては、整数nと、100以上の整数であるxと、0から100までの整数を示すmとを用いて、下記一般式(7)
【化7】

で示されるパーフルオロスルホン酸ポリマー、
又は、
100以上の整数xを用いて、下記一般式(8)
【化8】

で示されるスチレンポリマーを含むことが好ましい。
これらの化合物は毒性のない安全な物質であることが知られている。
【0071】
本発明におけるアセタール合成触媒は、比表面積が10(m/g)〜300(m/g)である。
【0072】
本発明におけるアセタール合成触媒の固体酸性度H0は−5.6から−24の範囲に含まれることが好ましい。
【0073】
本発明におけるアセタール合成触媒は、その酸性成分を0.01〜20wt%の範囲で担持している。
【0074】
上記アセタアール合成触媒は、周知の方法により製造、調製することが出来る。続いて、本発明の第2の実施の形態におけるアセタール製造方法について以下に詳述する。
【0075】
まず、原料のアセトン及びメタノールにアセトンジメチルアセタールが脱水剤として混合される。アセトンジメチルアセタールは脱水作用を有している。よって、アセトンジメチルアセタールを原料に混合することで、原料中に含まれる水分が除去される。よって、アセタール合成反応の開始時に、反応液相に存在する水分が除去される。これにより、そのアセタール合成触媒の表面への水分の吸着が抑制され、反応が進みやすくなる。アセトンジメチルアセタールは、メタノール及びアセトンから合成される生成物でもある。また、アセトンジメチルアセタールは脱水反応によりメタノール及びアセトンを生成する。そのメタノール及びアセトンは原料と同じである。よって、脱水剤及び脱水反応による生成物を反応生成物と分離する工程を新たに加える必要がない。
【0076】
続いて、その原料が既述のアセタール合成触媒及びモレキュラーシーブスが充填された反応器に供給される。モレキュラーシーブスは脱水作用を有し、反応系内の水を除去する。
【0077】
尚、上記モレキュラーシーブスは、他の脱水作用を有する物質に置換されても良い。その脱水作用を有する物質としては、シリカゲルが例示される。
【0078】
上記反応器内で、液相にて下記式(9)の反応によりアセトンジメチルアセタールが合成される。
【化9】

【0079】
式(9)に示される反応は、上記反応器内の圧力を大気圧より高い圧力に加圧しても良い。大気圧より高い圧力に加圧することにより、アセトンジメチルアセタールの収率が向上する。また、上記反応器内の温度を常温より低い温度で反応させてもよい。常温より低い温度で反応させることで、アセトンジメチルアセタールの収率が更に向上する。
【0080】
式(9)に示される反応により、メタノールがアセトンと反応して、主目的物であるアセトンジメチルアセタール及び副生成物の水が生成する。即ち、上記アセタール合成工程により得られた生成物は、アセトンジメチルアセタール、副生成物の水、未反応のアセトン、及びメタノールの混合物である。
【0081】
式(9)に示される反応は平衡反応である。よって、副生成物の水が上記モレキュラーシーブスによって除去されることで目的物であるアセトンジメチルアセタールの収率を向上させることが出来る。
【0082】
上記アセタール合成工程で得られた生成物から、主目的物であるアセトンジメチルアセタールが取得される。分離方法としては周知の方法を用いることができ、例えば蒸留、及びデカンタを用いても良い。また、未反応のメタノール及び未反応のアセトンも上記アセタール合成工程で得られた生成物から分離される。分離されたアセトン及びメタノールは上記アセタール合成工程にリサイクルされる。
【0083】
尚、上述のメタノールは他のアルコールに置換することができる。そのアルコールとしては、アセタール合成工程における反応時に液体である化合物である。
【0084】
そのアルコールとしては、1価のアルコール及びニ価のアルコールが挙げられる。その1価のアルコールとしては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、α−フェネチルアルコール、β―フェネチルアルコール、アリルアルコール、1−メチルアリルアルコール、2−メチルアリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、2−プロピン−1−オール、2−ブチン−1−オール、及び3−ブチン−1−オールが例示される。
【0085】
そのニ価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,3−プロパンジオールが例示される。
【0086】
また、上述のアセトンは他のカルボニル化合物に置換することができる。他のカルボニル化合物としては、上記アセタール合成工程における反応時に液体である化合物である。
【0087】
そのカルボニル化合物としては、ケトン及びアルデヒドが挙げられる。そのケトンとしては、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンが例示される。そのアルデヒドとしては、アセトアルデヒド及びプロピレンアルデヒドが例示される。
【0088】
また、上述のアセトンジメチルアセタールは他のアセタールに置換することができる。そのアセタールは、上記アセタール合成工程における反応時に、液体である化合物であり、上記アルコールを上記カルボニル化合物と反応させて得られる化合物である。上記アセタールとしては、第1基R、第2基R、第3基R、及び第4基Rとを用いて下記一般式(10)で表される化合物が挙げられる。
【化10】

その第1基Rはヒドロカルビル基を示す。
その第2基Rはドロカルビル基を示す。、
その第3基Rは水素原子又はヒドロカルビル基を示す。
その第4基Rは水素原子又はヒドロカルビル基を示す。
【0089】
本発明の第2の実施の形態によれば、アルコールをカルボニル化合物と反応させてアセトンジメチルを高収率で得られる。
【0090】
図面を参照して、本発明によるアセタール合成触媒の実施例1〜5、及び比較例1に関して説明する。
図1は比較例1と実施例1〜5の結果であるアセタールの収率とを示している。
【0091】
比較例1においては、触媒として酸化ジルコニウムに酸化セリウムを複合化した物質を用いた。この物質の比表面積は101m2/gであった。比較例1における触媒を1g、モレキュラーシーブスを9g、メタノールを12.8g、アセトン5.8gを反応器に混合し、30分反応させた後、生成したアセタールの収率を求めたところ、7.8%であった。なお、アセタールの収率は(生成したアセタールのモル数)/(混合したアセトンのモル数)×100として算出した。
【実施例1】
【0092】
酸化ジルコニウムに燐酸が担持され、比表面積が68(m/g)、固体酸性度H=−8.2である物質を触媒として使用し、比較例1と同一条件にて反応をおこなった。生成したアセタールの収率を求めたところ、13.0%であり、比較例1と比較してアセタールの収率が向上した。
【実施例2】
【0093】
酸化ジルコニウムに硫酸が1mass%担持され、比表面積が86(m/g)、固体酸性度H=−14.2である物質を触媒として使用し、比較例1と同一条件にて反応を行なった。生成したアセタールの収率を求めたところ11.8%であり、比較例1と比較してアセタールの収率が向上した。
【実施例3】
【0094】
酸化ジルコニウムに硫酸が5mass%担持され、比表面積が57(m/g)、固体酸性度H=−15.6である物質を触媒として使用し、比較例1と同一条件にて反応を行なった。生成したアセタールの収率を求めたところ26.5%であり、比較例1と比較してアセタールの収率が向上した。
【実施例4】
【0095】
スチレンにスルホン酸基が修飾された物質であり、比表面積が42(m/g)、固体酸性度H=−15.9である物質を触媒として使用し、比較例1と同一条件にて反応を行なった。生成したアセタールの収率を求めたところ25.0%であり、比較例1と比較してアセタールの収率が向上した。
【実施例5】
【0096】
パーフルオロスルホン酸であり、比表面積が200(m/g)、固体酸性度H=−17.2である物質を触媒として使用し、比較例1と同一条件にて反応を行なった。生成したアセタールの収率を求めたところ50.0%であり、比較例1と比較してアセタールの収率が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】比較例1及び実施例1〜5の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールと、カルボニル化合物とからアセタールを合成するアセタール合成触媒であって、
固体であり、かつ酸性である固体酸を含む
アセタール合成触媒。
【請求項2】
請求項1に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記固体酸は、
固体担体と、
前記固体担体に担持された酸性成分と
を具備し、
前記固体担体は、固体であり、
前記酸性成分は、酸性である
アセタール合成触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記固体担体は、ZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2からなる集合から選択される化合物を含む
アセタール合成触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載されたアセタール合成触媒であって、前記酸性成分がHを含むアセタール合成触媒。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたアセタール合成触媒であって、
前記酸性成分が、燐酸、硫酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、及び酢酸からなる集合から選択された酸を含む
アセタール合成触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたアセタール合成触媒であって、
前記固体担体が前記酸性成分を0.01〜20mass%の範囲で担持している
アセタール合成触媒。
【請求項7】
請求項1に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記固体酸は、酸性である樹脂を含む
アセタール合成触媒。
【請求項8】
請求項7に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記固体酸はスルホン酸基を含有する樹脂を含む
アセタール合成触媒。
【請求項9】
請求項8に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記スルホン酸基を含有する樹脂は、
整数nと、100以上の整数であるxと、0から100までの整数を示すmとを用いて、下記一般式(1)
【化1】

で示されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含む
アセタール合成触媒。
【請求項10】
請求項8に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記スルホン酸基を含有する樹脂は、
100以上の整数xを用いて、下記一般式(2)
【化2】

で示されるスチレンポリマーを含む
アセタール合成触媒。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載されたアセタール合成触媒であって、
比表面積が10m2/g以上300m2/g以下である
アセタール合成触媒。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載されたアセタール合成触媒であって、
固体酸性度H0 が−24から−5.6の範囲に含まれる
アセタール合成触媒。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載のアセタール合成触媒であって、
前記アルコールは合成時に液体であり、
前記カルボニル化合物は合成時に液体であり、
前記アセタールは合成時に液体である、
アセタール合成触媒。
【請求項14】
請求項1乃至13に記載されたアセタール合成触媒であって、
前記アルコールがメタノールであり、
前記カルボニル化合物がアセトンであり、
前記アセタールがアセトンジメチルアセタールである
アセタール合成触媒。
【請求項15】
アルコール及びカルボニル化合物を原料として反応器に供給する工程
を具備し、
前記反応器はアセタール合成触媒が充填されており、
前記アセタール合成触媒は、固体であり、かつ酸性である固体酸を含む
アセタール製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載されたアセタール製造方法であって、
前記固体酸は、
固体担体と、
前記固体担体に担持された酸性成分と
を具備し、
前記固体担体は、固体であり、
前記酸性成分は、酸性である
アセタール製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載されたアセタール製造方法であって、
前記固体担体は、ZrO2、CeO2、Al2O3、ZnO、及びTiO2からなる集合から選択される化合物を含む
アセタール製造方法。
【請求項18】
請求項15又は17に記載されたアセタール製造方法であって、
前記酸性成分がHを含む
アセタール製造方法。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記酸性成分が、燐酸、硫酸、スルホン酸、塩酸、硝酸、及び酢酸からなる集合から選択された酸を含む
アセタール製造方法。
【請求項20】
請求項16乃至19のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記固体担体が前記酸性成分を0.01〜20mass%の範囲で担持している
アセタール製造方法。
【請求項21】
請求項15に記載されたアセタール製造方法であって、
前記固体酸は、酸性である樹脂を含む
アセタール製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載されたアセタール合成方法であって、
前記固体酸はスルホン酸基を含有する樹脂を含む
アセタール合成方法。
【請求項23】
請求項22に記載されたアセタール合成方法であって、
前記スルホン酸基を含有する樹脂は、
整数nと、100以上の整数であるxと、0から100までの整数を示すmとを用いて、下記一般式(3)
【化3】

で示されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含む
アセタール合成方法。
【請求項24】
請求項22に記載されたアセタール合成方法であって、
前記スルホン酸基を含有する樹脂は、
100以上の整数xを用いて、下記一般式(4)
【化4】

で示されるスチレンポリマーを含む
アセタール合成方法。
【請求項25】
請求項15乃至24のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記アセタール合成触媒の比表面積が10〜300m2/gである
アセタール製造方法。
【請求項26】
請求項15乃至25のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記アセタール合成触媒の固体酸性度Hが−24から−5.6の範囲に含まれる
アセタール製造方法。
【請求項27】
請求項15乃至26のいずれかに記載のアセタール製造方法であって、
前記原料に液体の脱水剤を混合する工程を
更に備える
アセタール製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載されたアセタール製造方法であって、
前記脱水剤が前記アセタールと同じ種類のアセタールである
アセタール製造方法。
【請求項29】
請求項15乃至28のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記反応器は、前記脱水剤とは異なる他の脱水剤が充填されている
アセタール製造方法。
【請求項30】
請求項15乃至29のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記アルコールを前記カルボニル化合物と前記反応器内の雰囲気を大気圧あるいは大気圧より高い圧力に加圧して反応させる
アセタール製造方法。
【請求項31】
請求項15乃至30のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記アルコールを前記カルボニル化合物と前記反応器内の温度を常温あるいは常温より低い温度で反応させる
アセタール製造方法。
【請求項32】
請求項15乃至31のいずれかに記載のアセタール製造方法であって、
前記アルコールは合成時に液体であり、
前記カルボニル化合物は合成時に液体であり、
前記アセタールは合成時に液体である
アセタール製造方法。
【請求項33】
請求項15乃至32のいずれかに記載されたアセタール製造方法であって、
前記アルコールがメタノールであり、
前記カルボニル化合物がアセトンであり、
前記アセタールがアセトンジメチルアセタールである
アセタール製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−289158(P2006−289158A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109122(P2005−109122)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】