説明

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤として有用な薬剤組成物

本発明は、(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチンおよび7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリンおよび4−メチル−7−アセチルオキシクマリンのクマリン誘導体類から選択した天然の化合物類を含む薬剤組成物に関する。前記組成物は、高度のアセチルコリンエステラーゼ阻害(AChE)性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChE)として有用な薬剤組成物に関する。本発明は特に、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤として有用な組成物調製のための(±)マメルメシン(Marmesin)、コラムビアネチン(Columbianetin)、ジヒドロキサンサイレチン(Dihydroxanthyletin)および置換クマリン誘導体類から選択した天然化合物類の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)(J.Med.Chem.46、2279、2003)(非特許文献1)は、慢性神経変性疾患であり、重篤な行動異常と認知機能喪失を見出す。アルツハイマー病は脳コリン作動性機能不全と関連しており、アミロイドβ−ペプチドプラーク類、神経線維タングルおよび基底前脳コリン作動性ニューロンの変性すなわち萎縮を特徴とする。前脳コリン作動性細胞喪失の結果アセチルコリン減少が起こり、そのことは、アルツハイマー病関連認知不全において重要な役割を果たしている。アルツハイマー病治療のための最も有効な手法のひとつは、アセチルコリンエステラーゼ阻害によってアセチルコリンレベルの増大を図ることである。
【0003】
AChE阻害によるアルツハイマー病治療のため、いくつかの手法が開発された。最も使用されるAChE阻害剤類はガランサミン(Galanthamine)、ドネペジル、リバスチグミン、タクリンであり、さらに、2H−3,4−テトラヒドロキナゾリン−2−オンおよび2H−3,4−テトラヒドロキナゾリン−2、4−ジオン(米国特許第5,504,088号、1996)(特許文献1)もまた、報告されている。
【0004】
ピラノクマリン類、フロクマリン類および置換クマリン類は、下剤(J.Indian.Chem.Soc.Vol.66、66、1989)(非特許文献2)、殺虫剤(Jpn.Appl.7 973 12、1977;Chem.Abstr.Vol91、p152771u、1977)(非特許文献3、4)、抗菌剤(Chem.Abstr.Vol56、1835b,1962)(非特許文献5)、アンチフィーダント(J.Agric.Food.Chem.Vol37、1435、1989)(非特許文献6)、抗潰瘍(Fitoterapia Vol68、410、1997;Chem.Abstr Vol128、268242j、1998)(非特許文献7、8)、抗癌(J.Nat.Prod.Vol57、518、1994)(非特許文献9)および抗HIV()(特許文献2、非特許文献10)のように、生物活性を有する天然化合物類である。クマリン誘導体類もまた、モノアミンオキシダーゼ(MAO−A&B)阻害性を示した(J.Med.Chem43、4747、2000;J.Med.Chem44、3195、2001;Arkivoc、272、2004)(非特許文献11〜13)。
【0005】
本発明は、天然起源の化合物類(±)マルメシン、コラムビアネチン(Phytochemistry,Vol39(6)、1347、1995)(非特許文献14)、ジヒドロキサンサイレチン(Phytochemistry,Vol34(3)、819、1993)(非特許文献15)、7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリンおよび4−メチル−7−アセチルオキシクマリンのクマリン誘導体類に関し、インビトロおよびインビボにおいてAChEに対して極めて高選択性である。これらの化合物類は、AChEの処理および防止において極めて効果的である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,504,088号明細書
【特許文献2】米国特許第5,637,589号明細書
【非特許文献1】J.Med.Chem.46、2279、2003
【非特許文献2】J.Indian.Chem.Soc.Vol.66、66、1989
【非特許文献3】Jpn.Appl.7 973 12、1977
【非特許文献4】Chem.Abstr.Vol91、p152771u、1977
【非特許文献5】Chem.Abstr.Vol56、1835b,1962
【非特許文献6】J.Agric.Food.Chem.Vol37、1435、1989
【非特許文献7】Fitoterapia Vol68、410、1997
【非特許文献8】Chem.Abstr Vol128、268242j、1998
【非特許文献9】J.Nat.Prod.Vol57、518、1994
【非特許文献10】Chem.Abstr.Vol127、104326t、1997
【非特許文献11】J.Med.Chem43、4747、2000
【非特許文献12】J.Med.Chem44、3195、2001
【非特許文献13】Arkivoc、272、2004
【非特許文献14】Phytochemistry,Vol39(6)、1347、1995
【非特許文献15】Phytochemistry,Vol34(3)、819、1993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤として有用な薬剤組成物を提供することである。
【0008】
本発明のもうひとつの目的は、スコポラミン誘発記憶欠損マウスにおいて標準的薬剤ドネペジルよりも百分率の高い記憶保持を示す組成物を提供することである。
【0009】
本発明の目的のひとつは、(±)マルメシンおよびコラムビアネチン調製のため天然起源化合物類を使用することである。
【0010】
本発明のもうひとつの目的は、AChE阻害剤として有用な組成物を、ジヒドロキサンサイレチンを用いて提供することである。
【0011】
さらに本発明の目的は、AChE阻害剤として有用な組成物を、化合物類7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリンおよび4−メチル−7−アセチルオキシクマリン類を用いて提供することである。
【0012】
さらに本発明の目的は、AChE阻害剤として有用な組成物を、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリンおよび4−メチル−7−ヒドロキシクマリン類から選択した化合物類を用いて、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、式1の化合物、アナログ類およびその薬学的に許容できる塩類の有効量を含み、薬学的に許容できる担体または希釈剤を適宜一緒に含む薬剤組成物を提供することであり、ここで、組成物の有効量とは、50乃至100mg/kg体重の間の範囲にある。
【0014】
【化1】

【0015】
(i)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【0016】
【化2】

【0017】
(ii)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【0018】
【化3】

【0019】
(iii)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【0020】
【化4】

【0021】
(vi)式中、R、R、R、およびRの値は、下記から構成される群から選択される。
1.R=R=R=H;R=OH
2.R=R=R=H;R=プレニル
3.R=R=R=H;R=アリル
4.R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルキン
5.R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルケン
6.R=R=R=H;R=ベンジル
7.R=R=R=H;R=アセチル
8.R=R=R=H;R=メチル
9.R=R=R=H;R=プレニル
10.R=R=H;R=R=プレニル
11.R=R=R=H;R=プレニル
12.R=メチル;R=R=R=H
13.R=R=メチル;R=R=H
14.R=R=アセチル;R=R=H
15.R=メチル;R=R=H;R=OH
16.R=メチル;R=ベンジル、R=ベンジルオキシ、R=H
17.R=メチル;R=メチル、R=メチルオキシ、R=H
18.R=メチル;R=アセチル、R=アセチルオキシ、R=H
【0022】
本発明の態様において、一般式1の化合物は、さらに、(±)マルメシンを含む。
【0023】
【化5】

【0024】
本発明の態様において、一般式1の化合物は、さらに、コラムビアネチンを含む。
【0025】
【化6】

【0026】
本発明のもう一つの態様において、一般式1の化合物は、さらに、ジヒドロキサンサイレチンを含む。
【0027】
【化7】

【0028】
本発明のさらなるもう一つの態様において、一般式1の化合物は、さらに、セセリンを含む。
【0029】
【化8】

【0030】
本発明のさらなる態様において、一般式1の化合物は、さらに、クマリンアナログ類を含む。
【0031】
【化9】

【0032】
式中、
R=R=R=H;R=OH
R=R=R=H;R=プレニル
R=R=R=H;R=アリル
R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルキン
R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルケン
R=R=R=H;R=ベンジル
R=R=R=H;R=アセチル
R=R=R=H;R=メチル
R=R=R=H;R=プレニル
R=R=H;R=R=プレニル
R=R=R=H;R=プレニル
R=メチル;R=R=R=H
R=R=メチル;R=R=H
R=R=アセチル;R=R=H
R=メチル;R=R=H;R=OH
R=メチル;R=ベンジル、R=ベンジルオキシ、R=H
R=メチル;R=メチル、R=メチルオキシ、R=H
R=メチル;R=アセチル、R=アセチルオキシ、R=H。
【0033】
さらに本発明のもう一つの態様において、組成物調製に用いた化合物は、(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン、7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリンから構成される群から選択される。
【0034】
本発明の態様において、組成物調製に用いた化合物類は、天然起源であるかまたは合成することもできる。
【0035】
本発明のさらなるもう一つの態様において、前記組成物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤として有用である。
【0036】
本発明のさらなる態様において、前記組成物は、49%までコリンエステラーゼを阻害する。
【0037】
本発明のもう一つの態様において、前記組成物は、経口投与される。
【0038】
従って、本発明は、アルツハイマー病および関連する慢性神経変性疾患類を治療する方法を提供し、前記組成物を必要とする対象に対して投与することを含み、前記組成物は、適宜薬学的に許容できる担体または希釈剤類とともに、式1の化合物、そのアナログ類および薬学的に許容できる塩類の有効量を含む。
【0039】
本発明の態様において、前記組成物は、経口投与される。
【0040】
本発明の別の態様において、前記組成物は、スコポラミン誘発記憶欠損マウスにおいて標準的薬剤ドネペジルよりもより高い記憶保持百分率を示す。
【0041】
本発明のさらに別の態様において、前記組成物は、インビトロでAChEを阻害する(±)マルメシン、コロンビアネチン、ジヒドロキサンサイレチン、7−ヒドロキシ−6−プレニルクマリン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン、4−メチル−7−メトキシクマリン、4−メチル−7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7,8−ジヒドロキシクマリン、4−メチル−7,8−ジベンジルオキシクマリン、4−メチル−7,8−ジメトキシクマリン、4−メチル−7,8−ジアセチルオキシクマリンから構成される群から選択される化合物を含む。
【0042】
本発明の態様において、7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン、4−メチル−7−アセチルオキシクマリンから構成される群から選択した化合物を含む組成物は、インビボでアセチルコリンエステラーゼを阻害する。
【発明の効果】
【0043】
利点:
1.化合物類(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチンおよびクマリン誘導体類は、AChE阻害剤類として有用である。
2.阻害百分率は、初期に報告された化合物類に比較して、大きい。
3.上述の化合物類は全て、天然起源から容易に抽出可能で、実験室で効率的に合成可能である。
4.クマリン誘導体類は、実験室で効率的に合成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明をさらに下記の実施例で詳細に説明するが、これらは例示のために述べたものであり、いかなる意味でも本発明を限定することを意図していない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチン、セセリンおよびクマリン誘導体類の調製:
合成(±)マルメシン、コラムビアネチンを、7−ヒドロキシクマリン(ウンベリフェロン)から調製した。7−ヒドロキシクマリンを2−クロロ−2−メチル−ブト−3−インとともに塩基の存在下縮合させ、プロパルギルエーテルを得た。得られたエーテルに触媒的水素添加を行い、アルケンを得た。クライゼン転位によりこのアルケンが、2種の異性体産物を付与した。7−ヒドロキシ−6−プレニルクマリンをm−クロロ過安息香酸で酢酸エチル溶媒中酸化し、(±)マルメシンを得た。7−ヒドロキシ−8−プレニルクマリンを酢酸エチル溶媒中m−クロロ過安息香酸で酸化し、コラムビアネチンを得た。7−ヒドロキシ−6−プレニルクマリンをm−クロロ過安息香酸でクロロホルム溶媒中酸化し、ジヒドロキサンサイレチンを得た(Tetrahedron、27、1247、1971;Tetrahedron、27、4901、1971)。
【0046】
合成セセリンを、7−ヒドロキシクマリン(ウンベリフェロン)から調製した。7−ヒドロキシクマリンを2−クロロ−2−メチル−ブト−3−インとともに塩基の存在下縮合させ、プロパルギルエーテルを得た。プロパルギルエーテルを200℃でN,N−ジメチルアニリンとともに加熱し、セセリンを得た。(Tetrahedron、27、1247、1971;Tetrahedron、27、4901、1971)。
【0047】
(実施例2)
(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチン、セセリンおよびクマリン誘導体のインビトロおよびインビボ評価のための実験操作:
アセチルコリンエステラーゼ阻害能:
単回受動的回避試験は、霊長類における学習記憶機能を評価するための実験的試験として広く用いられている。霊長類における受動的回避(インビボ)のスコポラミン誘発不全およびアセチルコリンエステラーゼ阻害(インビトロ)は、認知増強(抗痴呆)薬物としてのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の能力を予測するため広く用いられており、スクリーニング試験である。
【0048】
受動的回避試験(インビボ):
本研究は、12時間の明暗サイクルで標準的室内条件下飼育した3−4月齢(体重20−25g)の成熟雄性スイスマウスで実施した。食料および水は、自由に摂取させた。
【0049】
このマウスを、Brioniが記載したような単回受動的回避試験に供した。
【0050】
この受動的回避試験は、ソフトウェアプログラムPACS30を付属したコンピュータ化シャトルボックス(Columbus Instruments、Ohio,USA)により調べた。このシャトルボックスは、2個のコンパートメントから構成されている。自動ドアを用いてこのコンパートメントを区切った。順化のために30秒の探索時間を置いた後、動物を、270秒の試験に供した。各マウスを明コンパートメントに入れ、暗コンパートメントに移した時点で、フロアグリッドを介して電気ショック(0.5mAで5秒)を与えた。明コンパートメントから暗コンパートメントへのマウスの移動を、移動潜伏時間(TLT)として秒単位で記録した。TLTは、コントロールおよび処理群で記録し(第1回試験、習得)、その後、24時間後に記録した(第2回試験、保持)。第1回の試験(習得)に比較して第2回試験(保持)におけるTLTの増大は、学習および記憶良好(認知活性)のための基準として採用した。
【0051】
スコポラミン誘発欠損(痴呆):
ムスカリンアンタゴニストであるスコポラミンは、ヒトおよび実験動物で認知機能不全(痴呆)をもたらすことが公知であり、それを用いて受動的回避学習における欠損を作製した(第2回試験では、有意な増加なし)。第1回試験の5分前にスコポラミンを投与した。試験物質によるスコポラミン誘発欠損の反転すなわち第2回試験における有意な増加は、潜在的抗痴呆活性を示している。スコポラミンは、第1回試験の5分前に投与した。
【0052】
薬物投与:
試験物質コラムビアネチンは、100m/kg(アカシアゴム中1%水性懸濁液)の投与量で3日間、投与した。処理動物は、第3回目の試験物質投与60分後に第1回試験に供した。スコポラミンは、試験群で第1回試験の5分前に投与した。
【0053】
コントロール群には、担体1ml/kg(アカシアゴム中1%水性懸濁液)を3日間経口投与した。コントロールマウス中、半分(n=5)には第1回試験の5分前にスコポラミンを投与し(コントロール−痴呆)、残りの半分は、受動的回避試験に供した(コントロール−訓練)。
【0054】
コントロール群は、第1回試験に比較して第2回試験でTLTの有意な増加を示し、そのことは、学習および記憶機能良好であることを示唆している。スコポラミン処理マウスは、第1回試験に比較して第2回試験でもTLTの有意な増加を示さず、そのことは、学習および記憶機能の欠損を示唆している。7−アリルクマリン(AP20am12)、7−ベンジルオキシクマリン(AP20am13)、7−メトキシクマリン(AP20am14)、7−アセチルオキシクマリン(AP20am15)、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン(AP20am16)、および4−メチル−7−アセチルオキシクマリン(AP20am19)処理で前処理した動物において、スコポラミン処理は、第1回試験に比較して第2回試験でTLTの有意な増加によって示唆されたような記憶欠損を引き起こさなかった。これらの化合物類の中でも、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリンおよび4−メチル−7−ヒドロキシクマリンは、非常に効果的であった。スコポラミン誘発記憶欠損の予防は、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリンおよび4−メチル−7−ヒドロキシクマリンが抗痴呆活性に対して潜在力を有していることを示唆している。
【0055】
p値<0.05のレベルは、統計的有意差を示している。p値の低下はより大きな有意差を意味し、第1回試験のTLTが極めて顕著に増加したことを示唆している。
【0056】
表:標準的薬物ドネペジルとクマリン化合物類の比較データ
【0057】
【表1】

【0058】
脳におけるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)アッセイ(インビトロ)
本研究は、成熟SD雄性ラット(200−250g)で実施した。ラットは、緩和なエーテル麻酔下で心臓を介して氷冷正常生理食塩水(0.9%NaCl)を潅流させ、脳から血液運搬コリンエステラーゼを減少させた。潅流後、全血を採取した。脳の10%(w/v)ホモジネートを、速度9500rpmでリン酸ナトリウム緩衝液とともに(30mmol/lit、pH7.0)3回、Ultra−Turrax T25ホモジナイザー中で均質化して調製し、均質化実験の間、数秒の間隔を空けた。リン酸ナトリウム緩衝液は、10%ホモジネートに必要な最終容量の半分の容量で用いた。
【0059】
次に、10%ホモジネートの最終容量とするために必要な容量の1%Triton X−100(30mmol/litリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0中1w/v%)を、氷上でこのホモジネートをゆっくりと撹拌しながら、添加する。このホモジネートを、固定角度ローター(80Ti)を用いてベックマン(Beckman)超遠心(LE80)中で100,000×g、4℃で60分間、遠心分離した。上清を集め4℃で保存した。この上清のアリコットを、1:10の比で希釈し、このアッセイ用の酵素源として使用した。
【0060】
酵素アッセイ:
AChEアッセイは、Ellmanらにより記載された方法に従い、実施した。酵素アッセイの動態プロフィールは、15秒おきに412nmにおいて分光分析で調べた。各サンプルのアッセイは二重に行い、各実験を3回行った。AChEの比活性は、タンパク質のμmoles/min/mgで示す。試験物質(DMSOに溶解)は、AChE活性動態プロフィールを得る前に、濃度100μg/1ml反応混合物中で酵素源と37℃において30分間インキュベーションした。AChE阻害活性は、コントロール値からの低下%変化に基づき計算した。
【0061】
タンパク質アッセイ:
タンパク質は、改良ローリー(Lowry)法により脳サンプル中で推定した。ウシ血清アルブミン(BSA)を濃度1mg/mlで標準として用いた。範囲0.01−0.1mg/mlで推定した。
【0062】
結果:
AChEインビトロ阻害(25−49%)を示した化合物類は、(±)マルメシン、ジヒドロキサンサイレチン、7−アセチルオキシクマリンおよび4−メチル−7−メトキシクマリンである。AChEインビトロ阻害(20−25%)を示した化合物類は、7−メトキシクマリン、4−メチル−7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7,8−ジベンジルオキシクマリンおよび4−メチル−7,8−ジアセチルオキシクマリンである。しかし、受動的回避試験(インビボ)では、7−アセチルオキシクマリンおよび4−メチル−7−メトキシクマリンが効果的であった。他のインビトロ活性化合物類がインビボ受動的回避試験において有効でなかったことは、吸収および代謝のような薬物動態因子によるのであろう。
【0063】
統計分析
平均値および平均の標準誤差(S.E.)は、各群の脳サンプルの異なる領域中でTLTおよびAChEの比活性について計算した。2群のAChE活性とTLTの有意差は、一元配置分散分析(one−way ANOVA)検定の後、Dunnett検定により決定した。
【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1aはマウス受動的回避試験におけるスコポラミン誘発欠損に及ぼすAP20amサンプル類(100mg/Kg、経口×3日間)の効果であり、図1bはマウス受動的回避試験におけるスコポラミン誘発欠損に及ぼすAP20am14、15及び16サンプル類(50mg/Kg、経口×3日間)の効果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の化合物、アナログ類およびその薬学的に許容できる塩類の有効量を含み、薬学的に許容できる担体または希釈剤を適宜一緒に含む薬剤組成物であって、組成物の有効量が、50乃至100mg/kg体重の間の範囲にある薬剤組成物。
【化1】

(i)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【化2】

(ii)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【化3】

(iii)式中、RとRは下記の部分で互いに結合しており、一緒になって融合系を形成し、かつ、RはHである;
【化4】

(iv)式中、R、R、R、およびRの値は、下記から構成される群から選択される。
1.R=R=R=H;R=OH
2.R=R=R=H;R=プレニル
3.R=R=R=H;R=アリル
4.R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルキン
5.R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルケン
6.R=R=R=H;R=ベンジル
7.R=R=R=H;R=アセチル
8.R=R=R=H;R=メチル
9.R=R=R=H;R=プレニル
10.R=R=H;R=R=プレニル
11.R=R=R=H;R=プレニル
12.R=メチル;R=R=R=H
13.R=R=メチル;R=R=H
14.R=R=アセチル;R=R=H
15.R=メチル;R=R=H;R=OH
16.R=メチル;R=ベンジル、R=ベンジルオキシ、R=H
17.R=メチル;R=メチル、R=メチルオキシ、R=H
18.R=メチル;R=アセチル、R=アセチルオキシ、R=H
【請求項2】
一般式1の化合物が、さらに下記を含む請求項1記載の組成物。
【化5】

【請求項3】
一般式1の化合物が、さらに下記を含む請求項1記載の組成物。
【化6】

【請求項4】
一般式1の化合物が、さらに下記を含む請求項1記載の組成物。
【化7】

【請求項5】
一般式1の化合物が、さらに下記を含む請求項1記載の組成物。
【化8】

式中、R=R=R=H;R=OH
R=R=R=H;R=プレニル
R=R=R=H;R=アリル
R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルキン
R=R=R=H;R=2,2−ジメチルアルケン
R=R=R=H;R=ベンジル
R=R=R=H;R=アセチル
R=R=R=H;R=メチル
R=R=R=H;R=プレニル
R=R=H;R=R=プレニル
R=R=R=H;R=プレニル
R=メチル;R=R=R=H
R=R=メチル;R=R=H
R=R=アセチル;R=R=H
R=メチル;R=R=H;R=OH
R=メチル;R=ベンジル、R=ベンジルオキシ、R=H
R=メチル;R=メチル、R=メチルオキシ、R=H
R=メチル;R=アセチル、R=アセチルオキシ、R=H
【請求項6】
組成物調製に使用した化合物が、(±)マルメシン、コラムビアネチン、ジヒドロキサンサイレチン、7−メトキシクマリン、7−アセチルオキシクマリン、4−メチル−7−ヒドロキシクマリン、7−アリルオキシクマリン、7−ベンジルオキシクマリンから選択される請求項1記載の組成物。
【請求項7】
組成物調製に使用した化合物類が、天然起源であるかまたは合成できる請求項1記載の組成物。
【請求項8】
スコポラミン誘発記憶欠損マウスにおいて、標準的薬剤であるドネペジルよりも大きい記憶保持百分率を示す請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、コリンエステラーゼを49%まで阻害する請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、アカシアゴム、メチルセルロースから選択した担体を用いて経口経路で投与される請求項に記載の組成物。
【請求項11】
アルツハイマー病および関連する慢性神経変性疾患の治療に有用な医薬の調製における請求項1記載の組成物の用途。
【請求項12】
前記組成物が経口経路で投与される請求項12記載の用途。

【図1】
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【公表番号】特表2009−531323(P2009−531323A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500954(P2009−500954)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/000686
【国際公開番号】WO2007/107846
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】