説明

アセチレン転換を用いた原油C4留分からの1,3−ブタジエン分離方法

ブタン、イソブタン、2−ブテン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン及びアセチレンを含むC4留分から1,3−ブタジエンを回収する方法を開示する。高純度の1,3−ブタジエンを回収する方法は、液相水素化を経てアセチレンを選択的に転換しアセチレン含有量が70質量ppm以下に減少させるためのアセチレン転換、及び、抽出蒸留塔、プレ分離器、溶媒除去塔、溶媒回収塔及び精製塔を用いた1,3−ブタジエン抽出を含む。アセチレン転換を経て、ビニルアセチレンの濃度は70質量ppm以下に減少し、その後、1,3−ブタジエンは、たった一つの抽出蒸留塔のみを用いて回収され、そのことによって、ユーティリティーの度合い及び抽出工程における留分の損失を大幅に減少させる。該工程に必要なユニットの数が減少し、したがって、不純物が工程ユニット内に蓄積し得る時間を著しく減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタン、イソブタン、2−ブテン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン及びアセチレンからなる原油C4留分からアセチレンを除去するための選択的水素化を経た高純度1,3−ブタジエンの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解装置から排出されそしてアセチレンを含む原油C4留分からの高純度1,3−ブタジエンの分離の方法は、一般に、2つの抽出蒸留塔(EDC)とともにブタジエン抽出ユニット(BEU)を使用する。
【0003】
1,3−ブタジエンは、従来のブタジエン抽出ユニット内のビニルアセチレンの爆発可能性を除くべく希釈剤として使用されるため、1,3−ブタジエンをなくすことは不可避的である。
【0004】
現在の抽出ユニットにおいて、第2のEDCの底部留分からいくらかの1,3−ブタジエンを回収するために使用される、1,3−ブタジエン回収塔の底部温度は、第1のEDCのC4供給留分のビニルアセチレン対1,3−ブタジエン比に依存する。1,3−ブタジエン回収は、それらの比率が低い場合に1,3−ブタジエン回収の運転温度を上昇させることにより改善され得る。しかしながら、C4留分が1.2質量%より多いビニルアセチレンを含む場合には、1,3−ブタジエン回収塔の底部留分は、ビニルアセチレンの爆発閾値を回避するために1,3−ブタジエンの添加によって希釈されるべきである。このように、1,3−ブタジエン回収塔の温度を130℃℃より高く上昇させることは困難である。したがって、全工程中の1,3−ブタジエン回収率は96乃至97%に留まる。さらに、塔及び熱交換器のアセチレン汚染が、BEUの長期稼動を制限する。
【0005】
これらの問題を解決するために、BEU原料中のアセチレン(特にビニルアセチレン)を予め除去する方法が提案されてきた。
【0006】
ナフサ熱分解装置からの原油C4混合物は、0.5乃至2.0質量%のビニルアセチレン、0.1乃至0.3質量%のエチルアセチレン、及び0.01乃至0.10質量%のメチルアセチレンからなる。アセチレンを1,3−ブタジエン、1−ブテン及びプロピレンにそれぞれ転換する水素化を経て、そして2つのEDCを用いるBEUを経て、アセチレンを除去する2つの方法がある。
【0007】
石油精製工程のハンドブック(The Handbook of Petroleum
Refining Process)(McGraw−Hill、 第3版、8.2章(8.25)、2004年)は、2又は3個の水素化反応器及びただ1つのEDCの付いたBEUを用いたKLP(登録商標)工程を統合することにより高純度1,3−ブタジエンを製造する工程を開示している。該KLP(登録商標)工程は、C4混合物中のCu系触媒の不活化を防ぐための硫黄化合物の除去ユニットを含むだけでなく、水洗浄ユニットも含む。この工程において、再利用されるC4混合物は、新しいC4混合物及び水素とともに反応器へ供給される。該水素化は、2つの反応器を用いて15kg/cm2・g及び30乃至50℃で行われる。最近では、水素の溶解性を増加させるために、該反応器は、40kg/cm2・g及び60乃至70℃で運転するために適切に設計されてきた。そして、水素化生成物は、C4留分が底部から得られそして、軽油成分が塔の頂部から排出されるよう、蒸留塔に供給される。しかし、この工程は、軽油が塔頂部から除去される場合には、C4混合物の損失を防ぐためにさらなる冷凍装置を用いるので、エネルギー消費の
増加を必要とする欠点がある。
【0008】
1,3−ブタジエン精製のためのKLP(登録商標)及びBEU以外のC4混合物中のアセチレンの選択的水素化を完全な物にするその他の従来の方法がいくつかある。米国特許第4,277,313号明細書は、アセチレンを除去するための水素化及び第2の溶媒回収塔の頂部の留分がC4混合物とともに水素化反応器へ再利用されるBEUを含む。
【0009】
しかしながら、この場合において、第2の溶媒回収塔の頂部留分は、大量の溶媒とともにビニルアセチレンとほぼ同量の1,3−ブタジエンを含む。しかし、第2の溶媒回収塔の頂部留分の再利用には、その気相のみが再利用されるため、水素化反応器に導入する前に、その気相は、圧力を増すためにさらに濃縮されなければならないという問題がある。
【0010】
水素化に使用する水素はC4混合物中に完全に溶解されなければならず、そして水素対アセチレンのモル比は1より大であるべきである。しかし、上記特許の水素化は6kg/cm2・g及び30℃で行われるため、水素は、望ましい比率で溶解され得ない。この条件において完全にアセチレンを転換することは不可能である。米国特許第6,040,689号明細書は、Cu系触媒で抽出蒸留に水素化を組み入れる反応性のある抽出蒸留塔を示唆している。
【0011】
ジエンとともに原油C4混合物中のアセチレンの選択的水素化と抽出工程を結合するために、アセチレン転換炉の反応安定性、長期間運転及び触媒再生の容易さが根本的に要求される。さらにまた、工程の単純化及び経済効率を高めるために、1つのみのEDCの運転が好ましい。選択的水素化工程後の1つのみのEDCを用いることによる高純度1,3−ブタジエンの回収のために、水素化廃液中の1,3−ブタジエンの損失及びビニルアセチレン濃度は、それぞれ1質量%未満及び70ppm未満であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,277,313号明細書
【特許文献2】米国特許第6,040,689号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ブタン、イソブタン、2−ブテン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン及びアセチレンを含む原油C4留分から高純度の1,3−ブタジエンを分離するための方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
原油C4混合物から高純度1,3−ブタジエンを分離する方法であって、以下の工程:
(a)原油C4留分を水素化反応器へ供給する工程;
(b)水素化反応器を用いる液相水素化を経てC4留分中のアセチレンを選択的に転換し、そしてアセチレンの含有量を70質量ppm又はそれ以下に減少させる工程;
(c)水素転換反応器の後の留分をEDCへ抽出溶媒とともに供給し、そして次に抽出蒸留を行う工程;
(d)EDCの底部留分をプレ分離器へ供給し、そしてプレ分離器の上端気相留分を溶媒回収塔へ供給し、そしてプレ分離器の底部液留分を溶媒除去塔へ供給する工程;
(e)抽出溶媒、ブタジエン及びアセチレンの一部を含む溶媒除去塔の頂部留分を、プレ分離器の上端留分と共に溶媒回収塔へ供給する工程;そして
(f)抽出溶媒が除去された溶媒回収塔の頂部留分を精製塔に導入し、高純度1,3−ブ
タジエンを得る工程;
を含む方法、
を提供する。
【0015】
さらに、本発明によれば、1,3−ブタジエンを分離するめの装置は、
気相水素化を経て原油C4留分中のアセチレンを選択的に転換するための水素化反応器;水素化反応器からの留分中の1,3−ブタジエンを抽出するための抽出蒸留塔(EDC);
水素化から未反応の水素を除去するための分離器;
5個より多くの炭素原子数を有する炭化水素及びグリーンオイルを除去するための重質除去塔;
溶媒回収塔への上端気相留分中の抽出溶媒の成分を調節するためのプレ分離器;
プレ分離器の底部液相留分からの抽出溶媒を除去するための溶媒除去塔;
プレ分離器の上端気相留分及び溶媒除去塔の頂部留分から抽出溶媒を除去するための溶媒回収塔;そして
抽出溶媒が高純度で除去される、溶媒回収塔の頂部留分の精製のための精製塔、
を含む。
【0016】
以上のように、本発明は、アセチレン転換を経て原油C4留分から1,3−ブタジエンを分離する方法を提供する。本発明によれば、アセチレン転換工程において、ビニルアセチレンの濃度は150質量ppm又はそれ以下まで減少し、その後1,3−ブタジエンはただ1つの抽出蒸留塔を用いて回収され、したがって、ユーティリティの度合い及び抽出工程における留分の損失が大幅に減少する。さらに、工程に必要なユニットの数が減少するため、不純物が工程ユニット中で累積し得る間の時間が著しく減少する。さらにまた、アセチレン転換工程における1,3−ブタジエンの損失は1質量%以下に減少し、そして高純度1,3−ブタジエン分離工程の回収率は、98.5質量%以上に増し、その結果、全工程を経た1,3−ブタジエンの総回収率は増加する。
【0017】
本発明の好ましい態様を、例証する目的で開示してきたが、添付の特許請求の範囲に開示される本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、種々の変形、追加及び置換が可能であることは当業者にとり明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施態様による1,3−ブタジエン分離工程の回路図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施態様による1,3−ブタジエン分離工程の回路図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施態様による1,3−ブタジエン分離工程の回路図である。そして
【図4】図4は、本発明の第4の実施態様による1,3−ブタジエン分離工程の回路図である。
【図5】図5は、本発明の第5の実施態様による1,3−ブタジエン分離工程の回路図である。
【0019】
最良の形態
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ナフサ熱分解装置から製造され、そして0.5乃至2.5質量%のアセチレンを含む原油C4留分を、アセチレン水素化触媒を充填した反応器へ導入することにより、アセチレンのみを選択的に水素化し、そして次に次の抽出工程へ反応排水を供給することによる1,3−ブタジエンの回収方法、及びそのために使用する装置に関する。
【0020】
本発明における原料としてのC4混合物は、ナフサ熱分解プロセスを経て得られそして、表1に示すようにブタン、イソブタン、2−ブテン、1−ブテン、ブタジエン及びアセチレンからなる。C4混合物中に1,3−ブタジエンの成分は30乃至55質量%でありそしてアセチレンは0.5乃至2.5質量%である。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明によれば、原油C4混合物は、アセチレン成分を選択的に水素化するため水素化工程へ供給される。水素化工程は、2又はそれ以上の水素化反応器を必要とし、そして、トップダウンの流れ方向に進められる。
【0023】
アセチレンを含むC4混合物の水素化に使用する触媒は、主に2つの型;Cu系触媒及びPd系触媒に分類される。本発明において、如何なる触媒も当該技術分野におけるアセチレンの選択的水素化のための触媒として使用され得るが、触媒の安定性及び水素化活性の観点から優れているPd系触媒を使用することが望ましい。
【0024】
本発明において、反応器内での液相水素化が、原油C4混合物中に完全に水素を溶解させるための温度及び圧力の条件下で行われるべきである。水素が水素化反応器内の原油C4混合物中に完全に溶解していない場合、液体蒸気が混合された留分中に水素の泡が発生し得る。そのような水素の泡は、それらが触媒と接触した場合にジエン及びアセチレンの急速な水素化の原因となる。
【0025】
ジエン及びアセチレンの水素化は、その反応が非常に発熱するために、ホットスポット現象と呼ばれる触媒の一部の劇的な温度上昇を生じる。C4留分中のオレフィンは、触媒
ベッド中のホットスポット現象が生じた場合に、重合化及び二量化(いわゆる“グリーンオイル”)を生じる。ポリマー及びグリーンオイルは、反応器の圧力損失及び目詰まりを起こすため、効率的に水素化工程が機能することは難しい。さらに、ホットスポット現象が過度になる場合、触媒活性は、高温に起因するその変形により低下し得る。
【0026】
本発明で用いられる原油C4混合物は、約0.5乃至2.5質量%の、ビニルアセチレン、メチルアセチレン及びエチルアセチレンのようなアセチレンを含む。したがって、水素が、水素対C4留分中のアセチレンのモル比が0.7乃至1.4で導入される場合、20乃至60℃において水素を完全に溶解するために、20バールを超える反応圧力を必要とする。本発明の水素化反応において、反応圧力は好ましくは20乃至40バールに設定される。水素化のための反応圧力が20バールより低いと、水素は完全に溶解し得ず、そしてこのことはポリマー及びグリーンオイルを生じ得る。一方、該圧力が40バールより高い場合には、工程コストが増し、そして触媒のアセチレン選択性が低下し得る。理論上は、最適な水素対アセチレンのモル比は1:1である。しかし、水素対アセチレンのモル比が非常に低い場合、C4オレフィン及びアセチレンの重合が触媒の表面部位において起こり、触媒の活性の低下を招く。一方、水素のモル比が高すぎると、不完全な水素の溶解が通常に機能することを困難にし得る。
【0027】
本発明において、選択的なアセチレン転換は、安定な連続運転のための再利用留分を含み得る。再利用の手順は、下記の3つの方法のひとつにおいて実現される。
【0028】
第1に、3つの水素化反応器が備えられた場合、第3の反応器からの廃液の一部が、C4供給留分と一緒に第1の反応器へ再利用される。第2に、第1の反応器からの廃液の一部が、供給されるC4留分と一緒に第1の反応器へ再利用される。最後に、EDCの頂部留分(C4残渣又はBBR−1)がC4供給留分と一緒に第1の反応器へ供給される。このようにして、反応器の供給物中のビニルアセチレン含有量は大幅に減少する。さらに、水素対アセチレンのモル比が1.2又はそれ以上であっても、水素は、溶媒としてのC4供給物留分を増加させることにより容易に溶解し得る。最後に、触媒の周期は、触媒活性の安定性とともに延長され得る。
【0029】
さらに、EDC頂部から分離されるブテン−ブタン−ラフィネート(BBR−1)が再利用される場合、反応器の供給留分に含まれる1,3−ブタジエンの画分もまた減少する。水素化反応器の廃液が再利用される場合とは異なり、この場合において、第1のEDCの溶媒の対供給物比は大幅に減少され得る。一般的に、抽出溶媒は、40乃至45質量%の1,3−ブタジエンを含むC4供給留分には約6.2乃至6.9の質量比において供給され、そして、30乃至38質量%の1,3−ブタジエンを含むC4供給留分には約5.2乃至5.8の質量比において供給される。例えば、BBR−1の約2/3が第1の反応器へ再利用される場合、第1の反応器供給留分の1,3−ブタジエンの濃度は、ビニルアセチレンに対して1.2から0.9質量%そして1,3−ブタジエンに対して45乃至34質量%に減少し、触媒の周期の延長をもたらす。
【0030】
複数の水素化反応器を経るビニルアセチレンの最終的な転換は98.0乃至100%であり、エチルアセチレンの転換は60.0乃至95.5%であり、そしてブタジエンの損失は−1.0乃至1.0質量%である。C5又はそれより大きな重油留分及びグリーンオイルの予め決定された量を除去するために、水素分離器は更に、水素化反応器の下流にさらに増設され得、そして、それによって未反応の水素は回収されそして次に除去蒸留塔へ供給される。
【0031】
複数の水素化反応器を通って150質量ppm又はそれ以下に減少した濃度を有するビニルアセチレンを含み、そして水素分離器及び除去蒸留塔を用いて水素及び重質留分が除
去された、気相留分は、抽出溶媒と共に1,3−ブタジエン抽出工程へ供給される。
【0032】
本発明による1,3−ブタジエン抽出工程は、1つの抽出蒸留塔、プレ分離器、溶媒除去塔、溶媒回収塔及び精製塔を用いて処理される。抽出溶媒と一緒に抽出蒸留塔の中へ供給される留分中のブタジエン、アセチレン及び少量のシス−2−ブテンは、溶媒に溶解した状態でプレ分離器の中へ導入される。その後、抽出溶媒の含有量がプレ分離器の温度の調節を経て調整される気相留分は、溶媒回収塔の中へ導入される。典型的な蒸留方法を用いた溶媒回収塔において、溶媒はプレ分離器から供給される気相留分から除去される。溶媒回収塔が、上端留分中のビニルアセチレンの含有量が30質量ppm又はそれ以下となるよう機能し、そして、溶媒回収塔の上端留分は、1つ又は2つの精製塔を経て、そして99.6質量%以上の高純度の1,3−ブタジエンが得られる。
【0033】
以下に、本発明を添付の図面を参照して詳細に記載する。図1乃至4に図示された工程及び以下の記載は、本発明の特許請求の範囲に開示された技術的思想を明確にするために説明されるものであるが、本発明を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【0034】
図1乃至4にみられるように、ナフサ熱分解装置から製造される原油C4留分1は、水素2−1とともに第1のアセチレン水素化反応器R1に導入される。該水素は異なる量でそれぞれの反応器に導入される。即ち、第1の反応器R1を通過したC4留分1−1は、水素2−2と共に第2の反応器R2に導入され、そして第2の反応器R2を通過したC4留分1−2は、水素2−3と共に第3の反応器R3に導入される。水素対アセチレンのモル比(供給量に基づく)は0.2乃至1.4であり、そしてそれぞれの反応器において変化する。それぞれの反応器に供給される水素の量は、原油C4留分に溶解し得る量を超えるべきではない。およそ、第1の反応器中の水素対アセチレンのモル比(第1の反応器に供給されるものとしての供給量に含まれるアセチレン含有量に基づく)は、好ましくは1.4乃至0.7、第2の反応器において1.0乃至0.5、そして第3の反応器において0.2乃至1.0に調整される。
【0035】
本発明によるアセチレン転換工程は、好ましくは、複数の水素化反応器、例えば、2乃至4の反応器を用いて、液相水素化を経て行われる。好ましくは、4つの反応器が用意され、3つの反応器が機能するために使用されるものでありそして1つの反応器が触媒再生において連続運転のために待機するものである。該反応器内の運転圧力は、好ましくは20乃至40バールであり、そしてより好ましくは25乃至35バールである。該反応器内の運転温度は、20乃至60℃であり、そして好ましくは40乃至50℃である。反応器を通過する留分の温度は反応熱に起因して上昇し、上昇した温度を運転温度まで低下させるためにコンデンサーが各反応器の間に用意される。図1に見られるように、アセチレン水素化反応器への再循環がない場合において、時間あたり液空間速度(LHSV)は5乃至20hr-1であり、そして好ましくは7ないし15hr-1である。さらに、図2乃至4にみられるように、水素化工程の留分又は抽出工程の上端留分を再循環させる手順を含む工程において、反応器内のLHSVは、再循環留分に比例して増加する(例えば、再循環留分及び原油C4供給の流量比が1:1である場合、LHSVは10乃至40hr-1である)。反応器内への留分の導入は、トップダウン方式(ダウンフロー型)において行われる。
【0036】
アセチレン水素化反応器からの留分1−3は、水素分離器F1へ供給され、そうすると未反応の水素及びプロピレンのような軽油は、分離器F1の上端から除去される。分離器F1の底部留分3は、大量のC4留分を含み、そして、反応器を通過する間に生成したグリーンオイル及び非常に少量のC5又はそれ以上の重質留分を含む。該底部留分3からのその除去のために、除去蒸留塔D1が用意され、グリーンオイル及び重質留分は蒸留塔D1の底部から除去される。さらに、殆どのC4留分4は、除去蒸留塔D1の上端からの気
相中に得られ、そして、次に抽出蒸留塔D2の中部へ供給される。同時に、抽出溶媒が、抽出蒸留塔D2の上部へ導入される。その結果、C4留分の成分の中で溶媒と高い親和性を有する、ブタジエン、アセチレン及び少量のシス−2−ブテンが、溶媒と共に塔の底部から得られ、一方では、ブタン、イソブタン、2−ブテン、1−ブテン及びイソブテンを含むラフィネート−1(BBR−1)5が、塔の上端から除去される。
【0037】
抽出蒸留塔へ供給される抽出溶媒は、極性溶媒、即ち、N(窒素原子)−アルキル化溶媒、を含み、その例としては、ジメチルホルムアミド(DMF),ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びアセトニトリルを含む。これらの無水状態での極性溶媒は、良好な相対揮発度及び適切な沸点を有しそして、従って本発明における使用に好適である。これらの中でも、特に有用なものは、ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0038】
抽出蒸留塔D2は好ましくは、それぞれ100個のトレイを有する2つの蒸留からなり、そして、2つの蒸留は直列に連結され、合計200個のトレイを含む抽出蒸留塔をもたらす。抽出蒸留塔D2の底部温度は100乃至140℃であり、そして好ましくは110乃至130℃である。
【0039】
抽出蒸留塔D2の底部留分6は、プレ分離器F2へ導入される。プレ分離器F2の運転温度は、100乃至140℃であり、そして好ましくは120乃至135℃である。プレ分離器F2の上端気相留分は、抽出溶媒を7乃至18質量%の含有量で、そして好ましくは11乃至13質量%の量で含む。プレ分離器F2の上端気相留分の抽出溶媒の含有量が7質量%に満たない場合には、溶媒回収塔D4中のビニルアセチレンの含有量が増加した場合は制御し得ない。逆に、その含有量が18質量%より大きい場合には、プレ分離器F2の底部温度が高すぎそして従って不純物が累積し得る。プレ分離器F2の底部液体の留分8は、溶媒除去塔D3の中部へ導入される。
【0040】
溶媒除去塔D3は、1質量ppm以下において底部留分10のビニルアセチレンの濃度を維持する一方で、抽出溶媒を除去するよう作用する。当該目的を達成するために、溶媒除去塔D3は、抽出蒸留塔D2へ供給される抽出溶媒の少なくとも2.5質量%の還流比率において運転されるべきである。溶媒除去塔D3の上端留分9は抽出溶媒の一部を含み、そして1,3−ブタジエン及びアセチレンは、抽出溶媒中に溶解している状態において完全に回収される。留分9はドラムへ供給され、そして該ドラムからの蒸気留分11はコンプレッサーC1へ導入され、そして該ドラムからの液体留分12は溶媒精製蒸留塔へ供給される(図示せず)。
【0041】
コンプレッサーC1を通過する留分の13−2部分は、抽出蒸留塔D2の底部温度が減少するように、抽出蒸留塔D2の下部へ導入され、そしてジエン及びアセチレンの重合を防ぐ。留分13−1及び留分13−2は、主に1,3−ブタジエン、及び少量のシス−2−ブテン、溶媒及び1,2−ブタジエンから構成される。
【0042】
留分13−1は、プレ分離器F2の上端気相留分7と共に溶媒回収塔D4の中部へ導入される。このようにして、予め決定された量の抽出溶媒を含む留分7が、少量の溶媒を含む留分13−1よりも比較的重いため、留分13−1よりもわずかに高い位置に供給され、そのことにより留分の間の接触が最大になる。
【0043】
1,3−ブタジエンを豊富に含む留分14は、溶媒回収塔D4の上端から得られ、そして留分14は、98.1質量%以上の1,3−ブタジエンを、1.9質量%未満のシス−2−ブテン及び1,2−ブタジエン、そしてプロパジエンと共に含む。溶媒回収塔D4の底部留分19は、大量の抽出溶媒、少量の1,3−ブタジエン及びビニルアセチレンから構成される。ジエン及びアセチレンは、溶媒回収塔D4の底部留分19から除去され、底
部留分19は次に、溶媒除去塔D3の底部留分10及び溶媒補給(make−up)留分4−1と共に抽出蒸留塔D2へ再び供給される。溶媒除去塔D3の底部留分10の部分は、ドラムの液相留分12と共に、溶媒精製蒸留塔へ供給される。
【0044】
溶媒回収塔D4の主な機能は、最終生成物としての1,3−ブタジエン中に含まれるビニルアセチレンの含有量をさらに低下させることである。溶媒回収塔D4の上端留分14中のアセチレンの含有量が減少する場合、底部留分19中のビニルアセチレンの爆発を防ぐために混合される1,3−ブタジエンの含有量は増加し、そしてしたがって、上端留分14からの1,3−ブタジエンの損失が増加し、その結果1,3−ブタジエン回収の低下を生じる。したがって、溶媒回収塔は最終生成物の規格を考慮して稼動される。上端留分14中のアセチレン含有量は、好ましくは30質量ppm以下である。
【0045】
溶媒回収塔D4の上端留分14は、第1の精製塔D5へ供給され、そしてメチルアセチレン及びプロパジエンは、精製塔D5の上端留分15から除去される。第1の精製塔D5の底部留分16は第2の精製塔D6へ導入され、そして底部留分18としてエチルアセチレン、シス−2−ブテン、1,2−ブタジエン及び低揮発性のC5又はそれ以上の重質留分が除去され、高純度1,3−ブタジエンが上端留分17として得られる。
【0046】
同様の組成を有する原油C4留分が出発原料として使用される場合、2−塔抽出蒸留系のみを使用した従来の1,3−ブタジエン抽出工程において第2の抽出蒸留塔の上端生成物、及び本発明による複数の水素化反応器を使用した水素化工程後の1つの抽出蒸留塔を使用した1,3−ブタジエン抽出工程における溶媒回収塔D4の上端留分14は、以下の表2に示す組成を有する。
【0047】
【表2】

【0048】
即ち、従来の抽出蒸留工程と比較した場合、1,3−ブタジエンの含有量は、94.5乃至96.0質量%から98.0質量%に増加し、そしてシス−2−ブテンの含有量は3乃至4質量%から1.7質量%に減少した。さらに、C4留分中のメチルアセチレンの濃度は、0.02乃至0.05質量%から10質量ppm以下に減少した。これは、かなりの量のメチルアセチレンが、本発明によるアセチレン転換の経路においてビニルアセチレンと共に除去されたことによる。したがって、図1乃至4に示す2つの精製塔D5、D6の、第1の精製塔D5は、プロパジエンの含有量が小さいか又はゼロの場合において省略され得る。
【0049】
一般的に、1,3−ブタジエン及びシスー2−ブテンは、それらの間の相対揮発度における非常にわずかな差しか有さないので、多数の還流作業及びプレートをこれらの原料を蒸留しそして分離するために必要とし、1,3−ブタジエンの損失をひき起こす。本発明において、シス−2−ブテンの含有量は最小化され、したがって、第2の精製塔D6中の2つの原料の間の分離のための負担は低減され得、そして従って、1,3−ブタンジエンの損失は、従来の抽出工程と比較して約80%まで減少され得る。
【0050】
図2及び3の工程は、最終水素化反応器からの留分の21−1部分及び抽出蒸留塔D2の上端留分の21−2部分がそれぞれ反応器へそれぞれ再循環される系が備えられている以外は、図1の工程と殆ど同様である。例えば、水素化反応器からの留分の部分及び/又は抽出蒸留塔D2の上端留分の21−2部分が、原油C4供給物のものと同様の量で再循環される場合、反応器へ導入される合計の留分中のビニルアセチレンの含有量は、原油C4供給物のビニルアセチレンの含有量の半分に減少する。導入される水素の量は、殆ど同様であり、そしてしたがって、水素の溶解性は高められ、そうすることでC4留分中の水素の溶解を促進する。さらに、LHSVは2倍になり、そしてしたがって、反応器の直線速度は増加し、その結果触媒からの不純物の除去は、ある程度まで効率化する。特に、抽出蒸留塔D2の上端留分5の21−2部分が、C4供給留分1と共に第1の反応器R1へ再循環される場合において、反応器内に導入される合計の留分中の1,3ブタジエンの含有量は減少し、そしてそのことにより、下流の抽出蒸留塔中の供給物と共に使用される抽出溶媒の量は大幅に減少され得る。
【0051】
さらに、本発明はさらに、図4に示されるように、溶媒回収塔D4の底部留分19の殆どを溶媒除去塔D3へ再循環させる手順を含む。大量の抽出溶媒及び少量の1,3−ブタジエン及びビニルアセチレンからなる溶媒除去塔の底部留分19は、溶媒除去塔D3に再度導入され、そのことにより、溶媒精製塔へ供給される留分の量を減少させ、そして溶媒回収塔D4で損失した1,3−ブタジエンを最大限で回収する。溶媒回収塔D4の底部留分19の殆どは溶媒除去塔D3へ導入され、そして溶媒除去塔D3は、抽出蒸留塔D2へ導入される抽出溶媒のビニルアセチレンの含有量を最大限に減少させるために、増加した還流比において機能する。
【0052】
その結果、本発明による複数の水素化反応器を用いたアセチレン転換工程は、抽出工程前にアセチレン含有量を著しく減少させ、そうすることで2−塔抽出蒸留系を使用した従来の1,3−ブタジエン抽出工程と比較して、1,3−ブタジエン抽出工程の全体の負担を軽減させることができ、したがって、工程の処理能力を高めそして1,3−ブタジエンの損失を減少させることができる。さらに、工程単位の数が減少し、そしてしたがって、一つの工程単位中に累積し得る不純物が生成し得る間の時間が著しく短縮する。
【0053】
上記のように、ナフサ分解物から製造され、そして30乃至55質量%のブタジエン及び0.5乃至2.5質量%のアセチレンを含む原油C4留分中のアセチレンのみを選択的に転換するアセチレン転換工程を、改善された精製工程と共に導入した場合、2−塔抽出蒸留系を用いた従来の抽出工程と比較して、1,3−ブタジエンの回収率が2乃至3%まで増加し、ラフィネート含有量もまた2乃至4%まで増加する。その上、全工程の簡易化の結果、ユーティリティの量は10%まで減少し、そしてさらにまた、抽出工程留分中のアセチレン含有量が減少するため、長期間移動のない部分がなく、高温熱交換機中のアセチレンに起因する不純物の累積の可能性が解消され得る。
【0054】
発明の態様
以下に、本発明を以下の実施例を参照してより詳細に説明する。
【実施例】
【0055】
実施例1
アセチレン転換
以下の表3の組成を有する原油C4留分を用いて、パイロット試験を実施した。パイロット反応器は、6cmの直径及び120cmの長さを有し、それぞれの反応器内の触媒の量は900ccであり、そして流速は9L/hrであり、そして3つの反応器は、再循環の手段をとることなしに連続して連結した。アセチレン水素化触媒として、日本のズードケミー触媒株式会社より入手可能な市販の触媒G−68SKを使用した。さらに、内部コ
ンデンサーを反応器の間に用意し、各反応器へ導入される留分の温度が一定となるようにした。表1に示すように、原油C4留分1は約44乃至50質量%の1,3−ブタジエン及び1.2乃至2質量%のアセチレンを含む。各反応器の供給物の温度は約40乃至50℃であり、そして圧力は約30乃至31バールであった。各反応器内のLHSVは10hr-1であり、そして、水素は3つの反応器へ34.6、30.8及び11.5NL/hrの速度において連続的に供給され、原油C4留分1の中の水素対アセチレンのモル比は、それぞれ0.88、0.79及び0.29に相当する。水素化は発熱反応であるので、その反応温度は、使用したアセチレン及び水素の量に応じてそれぞれの反応器内で15乃至25℃、15乃至20℃、10乃至15℃の範囲での上昇が観測された。表3に示すように、アセチレン転換後の生成物中のビニルアセチレンの濃度は、30乃至150質量ppmであり、1,3−ブタジエンの損失は1質量%未満であり、1−ブテンは8乃至12質量%まで増加し、トランス−2−ブテンは8乃至12質量%まで増加し、そしてシス−2−ブテンは2乃至4質量%増加した。
【0056】
【表3】

【0057】
1,3−ブタジエン抽出
工程シミュレーションを市販のシミュレータ−、アスペン プラス(Aspen Plus)を用いて実施した。精度のために、シミュレーションを実際の工程と比較し、そして全過程の原料樹脂の誤差範囲が0.2質量%以下であることを確認した。工程シミュレーターの熱力学的パラメーターを、シミュレーターにインプットした値と実験値に基づき確定した。パイロット試験結果を、利用可能なシミュレーターの供給物として採用し、そして、複数の水素化反応器R1、R2、R3、プレ分離器F1、グリーンオイル及びC5
又はそれ以上の原料を除去するための蒸留塔D1の後、そして抽出工程をシミュレートした。2−塔抽出蒸留系を用いた従来の抽出工程とは異なり、溶媒回収塔D4を、第2の抽出蒸留塔の代わりに取り付けた。
アセチレン転換工程から生じたビニルアセチレン60質量ppmを含む留分が導入された場合、14質量ppmのビニルアセチレンを含む99.6質量%の1,3−ブタジエンが、98.9質量%以上の量(反応器の損失を考慮して、97.9質量%)で回収された。さらに、アセチレン転換工程から生じたビニルアセチレン200質量ppmを含む留分が抽出工程に導入された場合、45質量ppmのビニルアセチレンを含む1,3−ブタジエンは、抽出工程の工程パラメーターの操作をすることなく、98.9質量%以上(反応器の損失を考慮して、97.9質量%)まで回収された。または、最終生成物中のビニルアセチレンの濃度を30質量ppmまで減少させるために、溶媒回収塔D4の稼動条件を部分的に変化させ、そのことにより、1,3−ブタジエンの回収は僅かに98.5質量%まで低下した。しかし、従来の抽出工程を経た96.5質量%の1,3−ブタジエン回収と比較すると、本発明のアセチレン転換工程及び抽出工程によると、回収率は1乃至1.5質量%増加し、そしてラフィネートの量は2乃至8質量%増加する。さらに、少なくともエネルギーは10%少なく費やされ、したがってエネルギー減少効果を示す。表4及び5は、反応器の後及び1,3−ブタジエン抽出工程中のそれぞれの留分の原料樹脂、温度及び圧力を示す。
【0058】
表4
【表4】

【表5】

【0059】
表5
【表6】

【表7】

【0060】
実施例2
図2に示すように、第3の反応器R3の留分1−3の21−1部分を、原油C4留分1と同量で原油C4留分1と共に第1の反応器に導入した以外は、実施例1と同様の方法で、1,3−ブタジエンを高純度で分離した。このことは、第1の反応器R1へ導入される留分のビニルアセチレンの濃度が、再循環工程のない場合の半分に減少し、触媒の活性安定性及び選択性を増加させる有利な点である。各反応器中のLHSVは20hr-1であっ
た。
ビニルアセチレン42質量ppmを含む留分はアセチレン転換工程から得られ、そして、次の抽出工程を経て、ビニルアセチレン11質量ppmを含む99.6質量%の1,3−ブタジエンを、98.9質量%以上(反応器の損失を考慮して97.9質量%)回収した。抽出工程の工程パラメータの操作をすることなく、1,3−ブタジエンを98.8質量%以上(反応器の損失を考慮して97.4質量%)回収した。
下記表6は、反応器の後及び1,3−ブタジエン抽出工程中のそれぞれの留分の原料樹脂、温度及び圧力を示す。
【0061】
表6
【表8】

【表9】

【0062】
実施例3
図3に示すように、抽出蒸留塔D2の上端留分の21−2部分を、予め決定された量で
原油C4留分と共に第1の反応器に再循環させた以外は、実施例1と同様の方法で、1,3−ブタジエンを高純度で分離した。抽出蒸留塔D2の上端留分21−2を再循環する場合は、第1の反応器R1に導入されるビニルアセチレンの初期濃度及び1,3−ブタジエンの濃度が予め決定されたレベルまで減少し、触媒の活性安定性及び選択性が増す点で有利である。原油C4留分1中のブタジエン46.7質量%及びビニルアセチレン1.3質量%は、抽出蒸留塔D2の上端留分5の67%を再循環留分21−2として使用した場合に、反応器に導入される留分1及び留分21−2の総質量に基づき、ブタジエン35.1質量%及び1,3−ビニルアセチレン0.99質量%に減少した。さらに、反応器内のLHSVは13.3hr-1であった。抽出蒸留塔D2に導入されるC4留分の量が増加した場合、工程容量は増加するが、1,3−ブタジエンの相対濃度は減少する。したがって、抽出溶媒の使用は減少するが、抽出蒸留塔D2の稼動は大きく変化しなかった。対抽出塔D2に導入されるC4留分の抽出溶媒質量比は5.8であった。
ビニルアセチレン62質量ppmを含む留分はアセチレン転換工程から得られ、そして、次の抽出工程を経て、ビニルアセチレン22質量ppmを含む99.6質量%の1,3−ブタジエンを、98.8質量%以上(反応器の損失を考慮して98.1質量%)回収した。
下記表7は、反応器の後及び1,3−ブタジエン抽出工程中のそれぞれの留分の原料樹脂、温度及び圧力を示す。
【0063】
表7
【表10】

【表11】

【0064】
実施例4
図4に示すように、溶媒回収塔D4の底部留分の大半を溶媒除去塔D3へ導入した以外は、実施例2と同様の方法で1,3−ブタジエンを高純度で分離した。溶媒精製塔へ導入される留分の量が減少し、そして溶媒回収塔D4中で損失した1,3−ブタジエンが最大限に回収され得る利点を有する。溶媒抽出塔D4の底部留分19の90質量%を溶媒除去塔D3に導入し、そして、抽出蒸留塔D2へ1質量ppm以下の濃度において導入される抽出溶媒のビニルアセチレン含有量を維持するために、溶媒除去塔D3を、抽出溶媒の2.8質量%からその3.3質量%に増加する還流比で稼動した。溶媒回収塔D4の底部留分19は、溶媒除去塔D3の上端留分9がドラムを通過した後の液体留分12とともに、抽出溶媒を精製するための溶媒精製塔へ移行させた。
ビニルアセチレン42質量ppmを含む留分はアセチレン転換工程から得られ、そして、次の抽出工程を経て、ビニルアセチレン24質量ppmを含む99.6質量%の1,3−ブタジエンを、99.0質量%以上(反応器の損失を考慮して98.0質量%)回収した。
下記表8は、反応器の後及び1,3−ブタジエン抽出工程中のそれぞれの留分の原料樹脂、温度及び圧力を示す。
【0065】
表8
【表12】

【表13】

【0066】
実施例5
図5に示すように、第1の反応器を通過する留分を第1の反応器へ再循環させた以外は、実施例4と同様の方法で、1,3−ブタジエンを高純度で分離した。
溶媒精製塔へ導入される留分の量が減少し、また、溶媒回収塔D4中で損失した1,3−ブタジエンが最大限に回収され得、そして、水素及びアセチレンの比率が容易に調節できる利点を有する。最後の反応器を通過した留分を第1の反応器へ再利用する方法は、接触時間が増加し、そして内部反応器の直線速度が増加する利点を有し、一方、水素化が進行するにしたがってオリゴマーが生成することがあるという欠点を有し、したがって一般に“グリーンオイル”と呼ばれる生成したオリゴマーが連続的に維持される。
溶媒回収塔D4の底部留分19の90質量%を溶媒除去塔D3に導入し、そして、抽出蒸留塔D2へ1質量ppm以下の濃度において導入される抽出溶媒のビニルアセチレン含有量を維持するために、溶媒除去塔D3を、抽出溶媒の2.8質量%からその3.3質量%に増加する還流比で稼動した。溶媒回収塔D4の底部留分19は、溶媒除去塔D3の上端留分9がドラムを通過した後の液体留分12とともに、抽出溶媒を精製するための溶媒精製塔へ移行させた。
ビニルアセチレン42質量ppmを含む留分はアセチレン転換工程から得られ、そして、続く抽出工程を経て、ビニルアセチレン23質量ppmを含む99.6質量%の1,3−ブタジエンを、98.9質量%以上(反応器の損失を考慮して97.8質量%)回収した。また、水素の使用量は、図2に開示される方法よりも11%以上抑えられた。
下記表9は、反応器の後及び1,3−ブタジエン抽出工程中のそれぞれの留分の原料樹脂、温度及び圧力を示す。
【0067】
表9
【表14】

【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油C4留分から高純度1,3−ブタジエンを分離する方法であって、以下の工程:
(a)C4留分を複数の水素化反応器へ供給する工程;
(b)複数の水素化反応器を用いる液相水素化を通してC4留分中に含まれるアセチレンを選択的に転換し、そしてアセチレンの含有量を70質量ppm又はそれ以下に減少させる工程;
(c)複数の水素転換反応器から抽出蒸留塔へ抽出溶媒とともに留分を供給し、そして抽出蒸留を行う工程;
(d)抽出蒸留塔の底部留分をプレ分離器へ導入し、そしてプレ分離器の上端気相留分を溶媒回収塔へ供給し、そしてプレ分離器の底部液留分を溶媒除去塔へ供給する工程;
(e)抽出溶媒の一部、ブタジエン及びアセチレンを含む溶媒除去塔の上端留分を、プレ分離器の上端留分と共に溶媒回収塔へ供給する工程;そして
(f)抽出溶媒が除去された溶媒回収塔の上端留分を精製塔に導入し、高純度1,3−ブタジエンを得る工程;
を含む方法。
【請求項2】
前記液相水素化が、反応物質が下部に流れることにより、20乃至60℃の温度条件下でそして20乃至40バールの圧力下で起こる、下降流式で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の水素化反応器から水素分離器へ前記留分を導入し未反応の水素及び軽油を除去しそして次に、複数の水素化反応器から抽出蒸留塔へ留分を供給する前に、除去蒸留塔を用いてグリーンオイル及び炭素原子数5又はそれ以上の炭化水素を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド及びアセトニトリルからなる群より選ばれる1つ又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プレ分離器の上端気相留分に含まれる抽出溶媒の含有量が、7乃至18質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プレ分離器の上端気相留分及び溶媒除去塔の上端留分が溶媒回収塔の中間部に導入され、そしてプレ分離器の上端気相留分が溶媒除去塔の上端留分よりも高い位置において導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒除去塔の上端留分を溶媒回収塔へ導入する前に、溶媒除去塔の上端留分を円筒を通して蒸気留分を分離し、そして分離された蒸気留分をコンプレッサーへ供給し、それを圧縮することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンプレッサーからの留分の一部が、溶媒回収塔へ導入され、そしてその残余部分が抽出蒸留塔の底部部分へ導入され、抽出蒸留塔の底部温度が低下し、ジエン及びアセチレンの重合を阻害する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒除去塔の底部留分及び溶媒回収塔の底部留分が、抽出用蒸留塔へ再び導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の水素化反応器を通過する留分の一部又は抽出蒸留塔の上端留分の一部が、複数の水素化反応器の中の第1の水素化反応器へ再循環され、
複数の水素化反応器を通過する留分の一部及び抽出蒸留塔の上端留分の一部の両方が、複数の水素化反応器の中の第1の水素化反応器へ同時に再循環され、または
複数の水素化反応器の中の第1の水素化反応器の反応物の一部が、所望により抽出蒸留塔の上端留分の一部とともに、複数の水素化反応器の中の第1の水素化反応器へ再循環される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の水素化反応器の最後の反応器を通過する留分の部分が第1の反応器へ再循環される位置が、最後の水素化反応器の位置又は分離器の底部である、請求項1又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒回収塔の底部留分が溶媒除去塔へ導入される、請求項1又は9に記載の方法。
【請求項13】
液相水素化を通じて原油C4留分中に含まれるアセチレンを選択的に転換するための複数の水素化反応器;
複数の水素化反応器からの留分を抽出蒸留にかけるための抽出蒸留塔;
抽出蒸留塔の底部留分中の抽出溶媒の含有量を調節し底部留分を分離するためのプレ分離器;
プレ分離器の底部留分から抽出溶媒を除去するための溶媒除去塔;
プレ分離器の上端留分及び溶媒除去塔の上端留分から抽出溶媒を除去するための溶媒回収塔;そして
抽出溶媒を除去する溶媒回収塔から、高純度で、溶媒回収塔の留分を精製するための精製塔;
を含む、
1,3−ブタジエンを分離する装置。
【請求項14】
前記複数の水素化反応器及び抽出蒸留塔の間に、未反応の水素及び軽油を除去するための水素分離器、及びグリーンオイル及び炭素原子数5又はそれ以上の炭化水素を除去するための除去蒸留塔を更に含む、請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−528655(P2011−528655A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518606(P2011−518606)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004220
【国際公開番号】WO2010/008109
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(507268341)エスケー イノベーション カンパニー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】