説明

アダマンタン誘導体およびそれを原料とする樹脂組成物

【課題】化学増幅型レジストなどの機能性樹脂組成物およびその原料であるアダマンタン誘導体を提供する。
【解決手段】


(式中R1〜Rはアルキル基等、Xは水素原子等、Y〜Yはメタクリロイル基等)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性や耐熱性、光透過性などに優れた、架橋型樹脂、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、KrFおよびArF、Fエキシマレーザー用レジストや、X線、電子ビーム、EUV(極端紫外光)用化学増幅型レジストなどの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品として使用することができる機能性樹脂組成物およびその原料であるアダマンタン誘導体(アダマンタン骨格を有するアクリレート化合物)に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは剛直な構造を有し、また対称性が高く、その誘導体は特異な機能を示すことから、高機能樹脂材料や医薬中間体、光学材料(特許文献1および2参照)、特にフォトレジスト(特許文献3参照)などに有用であることが知られている。
【0003】
半導体製造工程で用いられるフォトレジスト用樹脂組成物は、光照射により照射部がアルカリ可溶性に変化する性質、エッチング耐性、基盤密着性、使用する光源に対する透明性などの特性をバランスよく備えている必要がある。光源としてKrFエキシマレーザー以降の短波長光源を使用する際には、一般的に化学増幅型レジストが使用され、その組成は、一般に主剤の樹脂組成物および光酸発生剤、さらには数種の添加剤を含む溶液として使用される。その中で主剤である樹脂組成物が上記の各特性をバランス良く備えていることが重要であり、レジスト性能を決定付ける。
【0004】
光源としてKrFエキシマレーザー以降の短波長光源を使用する際には、化学増幅型レジストが使用されるが、その際、主剤である樹脂組成物は、一般的にアクリレートなどを繰り返し単位とする高分子である。しかし、単一の繰り返し単位で使用されることはない。その理由は、単一の繰り返し単位ではエッチング耐性などの特性をすべて満たすことはできないからである。実際には、各特性を向上させるための官能基を有した繰り返し単位を複数、すなわち2種類以上有する共重合体が樹脂組成物として使用されている。このような樹脂組成物として、KrFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストではヒドロキシスチレン系樹脂が、ArFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストでは、2−アルキル−2−アダマンチルメタクリレートを基本骨格とするアクリル系樹脂が提案されている(特許文献3および4参照)。
【0005】
しかしながら、近年のリソグラフィプロセスは急速に微細化が進んでおり、上記のそれぞれの光源について、波長の1/3程度までの線幅まで延命させることが要求されている。特に、ArFエキシマレーザーリソグラフィでは、液浸技術の適用やダブルパターニング技術の導入により、それ以上の微細化が要求されている。それにともない、線幅が細くなるにつれて感度や解像度、ラインエッジラフネスなどに対する要求が厳しくなってきた。
【0006】
このような課題の解決のため、既存の樹脂のモノマーに各種アクリレート化合物を共重合させたり、あるいは既存の樹脂の構造そのものを大きく変えるなどの検討がなされている。例えば、エッチング時の表面荒れやラインエッジラフネスが小さいなどの特徴を有したアダマンタン誘導体を含むレジスト組成物が提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、このようなレジスト組成物でも、細線化における解像度やラインエッジラフネスなどを十分に満たすことが困難であるのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−0305044号公報
【特許文献2】特公平1−53633号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開平10−319595号公報
【特許文献5】特開2003−167346号公報
【特許文献6】特開2000−122295号公報
【特許文献7】特開2006−016379号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SPIE,6923−123(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの事情から、樹脂組成物としての基本特性に悪影響を与えることなく、感度や解像度、ラインエッジラフネスの向上を達成しうる優れた機能性樹脂組成物の開発が強く求められている。その中で、樹脂組成物中に含有する、アルコール性ヒドロキシル基の含有量が感度や解像度を向上させる傾向があることが示されている(非特許文献1参照)。アルコール性ヒドロキシル基を有したモノマーを含む樹脂の例としては、例えば、2個のアルコール性ヒドロキシル基を含む3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートを含有した樹脂も提案されており(特許文献6参照)、レジスト性能として高感度や高解像度が期待される。また、レジストポリマーに含まれる酸解離性能を有したレジストモノマーは、通常、アルコール性ヒドロキシル基を有していないが、その中で、アルコール性ヒドロキシル基を1個有し、かつ酸解離性能を有したレジストモノマーとして、3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタンが提案されており(特許文献7)、レジスト性能として高感度や高解像度が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、アダマンタン骨格を有し、光学特性などに優れた架橋型樹脂およびそれに使用するモノマーなどとして有用なアダマンタン誘導体を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2 エキシマレーザーあるいはEUVに代表される遠紫外線に感応する化学増幅型レジストとして、パターン形状、ドライエッチング耐性、耐熱性等のレジストとしての基本物性を損なわずに、解像度やラインエッジラフネスの向上を達成しうるアルカリ現像性や基盤密着性に優れた樹脂組成物およびその原料化合物であるアダマンタン誘導体を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、式(1)で表されるアダマンタン構造から誘導されるアクリレート化合物が、特定のプロセスにより効率よく製造することが可能であり、上記の目的に適合した化合物であると期待されることを見出した。また、式(1)で表されるアダマンタン構造を有するアクリレート化合物を原料とする、式(3)で表される成分を繰り返し単位に含む機能性樹脂組成物がフォトレジストとして有用であると期待されることを見出し本発明に到達した。特に、Y、Yが水素原子で、Yが式(2)で表される式(1)で表されるアダマンタン誘導体を含む機能性樹脂組成物は、酸解離性能を有しながら、更に水酸基を2個有しており、感度、解像度、ラインエッジラフネスの大幅な向上が期待される。
【化1】

(式中、R1〜Rは、同一または異なって、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示し、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3の炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、Y〜Yは、水素原子または式(2)で表される基を示し、nは13を表す。)
【化2】

(R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示す)。
【化3】

(式中、R1〜Rは、同一または異なって、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示し、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3の炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、Y〜Yは、水素原子または式(4)で表される基を示し、nは13を表す。)
【化4】

(R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示す)。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアダマンタン誘導体は、架橋型樹脂、光ファイバーや光導波路、光ディスク基板、フォトレジストなどの光学材料およびその原料、医薬・農薬中間体、その他各種工業製品などとして有用である。また、本発明の機能性樹脂組成物は、KrFおよびArF、Fエキシマレーザー用レジスト原料や、X線、電子ビーム、EUV(極端紫外光)用化学増幅型レジストとして使用することができる。さらに本発明の機能性樹脂組成物は、レジスト用樹脂組成物としては、耐エッチング性に優れ、基板に対して優れた密着性を有し、アルカリ可溶性を備えていることはもとより、感度や解像度が高いパターンを精度よく形成できることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における化合物1のGC−MSスペクトル(CI)を示す図である。
【図2】実施例1における化合物1のH−NMR、500MHz、重メタノールを示す図である。
【図3】実施例1における化合物1の13C−NMR、500MHz、重メタノールを示す図である。
【図4】実施例1における化合物2のH−NMR、500MHz、重メタノールを示す図である。
【図5】実施例1における化合物2の13C−NMR、500MHz、重メタノールを示す図である。
【図6】実施例1における化合物3のH−NMR、500MHz、重クロロホルムを示す図である。
【図7】実施例1における化合物3の13C−NMR、500MHz、重クロロホルムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明のアダマンタン構造を有するアクリレート化合物およびそれを原料とする機能性樹脂組成物について説明する。
【0016】
式(1)で表されるアダマンタン誘導体は、式(5)で表されるアダマンタン類を出発原料として得られる。式(5)で表される化合物としては、1,3,5−アダマンタントリオール、1−ブロモ−3,5−アダマンタンジオール、1,3−ジブロモ−5−アダマンタノール、1,3,5−トリブロモアダマンタンなどが挙げられる。
【化5】

(式中、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、Z〜Zは、ヒドロキシル基またはハロゲン基を示し、nは13を表す。)
【0017】
式(5)で表されるアダマンタン類と、プロトン酸の存在下、一酸化炭素または一酸化炭素源とのカルボキシル化反応によって、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類を高い選択率および収率で合成することができる。
【化6】

【0018】
プロトン酸としては、有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸など)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)が含まれる。その中で、濃硫酸が安価で取り扱いが容易なので使用に望ましい。
【0019】
使用する濃硫酸の濃度は、好ましくは90%以上の水溶液、さらに好ましくは96%以上である。それより濃度が低いと、置換基(Z〜Z)が十分にカルボキシル基に変換しない。
【0020】
濃硫酸の使用量は、式(5)で表されるアダマンタン類に対して2〜20重量倍、好ましくは4〜16重量倍、さらに好ましくは8〜12重量倍にすることが望ましい。それより多いと、置換基(Z〜Z)が十分にカルボキシル基に変換しないし、またそれより多くても収率は向上しない。
【0021】
カルボキシル化反応で使用される一酸化炭素は、純粋な一酸化炭素であってもよく、不活性ガスで希釈して使用してもよい。一酸化炭素は常圧もしくはオートクレーブを使用した加圧下で使用してもよい。
【0022】
一酸化炭素の使用量は、式(5)で表されるアダマンタン類に対して1当量(この場合、3個のカルボキシル基を導入する場合は、式(5)で表されるアダマンタン類1モルに対して一酸化炭素3モルとなる)〜1000当量の範囲から選択でき、好ましくは1〜10当量、さらに好ましくは1〜3当量程度である。それより少ないと当然ながら収率が低下するし、それより多くても収率は変らない。一酸化炭素源として、一酸化炭素の代わりにギ酸もしくはギ酸アルキルを用いてもよく、その場合の使用量も同じである。それより少ないと当然ながら収率が低下するし、それより多くても収率は向上しない。
【0023】
カルボキシル基導入反応は、プロトン酸を溶媒として用いてもよい。また、不活性な有機溶媒を用いても良い。有機溶媒としては、例えば、酢酸などの有機カルボン酸、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、これらの混合溶媒など挙げられる。
【0024】
上記のカルボキシル化反応は、比較的温和な条件であっても反応が円滑に進行する。反応温度は、例えば、−78〜200℃、好ましくは−20〜100℃程度であり、通常、0〜80℃程度で反応する場合が多い。これより低い温度では反応が十分に進行せず、また高い温度では副反応が進行して収率が低下する。反応は、常圧または加圧下で行なうことができる。
【0025】
反応時間は通常、1〜100時間、好ましくは1〜10時間で実施する。それより短時間だとカルボキシル化反応が十分に進行しないし、それより長くても収率は変らない。
【0026】
反応終了後は、反応溶液を水またはアルカリ水溶液と混合することによって、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類が析出してきて取得することができる。なお、アルカリ水溶液との混合後は、溶液を再び酸性にする必要がある。
【0027】
上記の方法の中で、好ましくは、アダマンタン類として1,3,5−アダマンタントリオール、プロトン酸として濃硫酸、一酸化炭素源としてギ酸を使用する方法が、簡便かつ温和な液相反応で取り扱うことができ、また高選択率かつ高収率で、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類が得られる。
【0028】
また、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類をアルキルエステル化して、式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類にして次の合成に利用しても良い。通常は、次の反応を阻害しないためにも、式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類にすることが望ましい。
【化7】

(式中、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、R10〜R12は同一または異なって、水素または炭素数1〜6のアルキル基を示し、R10〜R12のうちの少なくとも1つは炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは13を表す。)
【0029】
アルキルエステル化は、いったん式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類を取り出してから、プロトン酸触媒下で所望のアルコールと反応させても良いし、式(5)で表されるアダマンタン類とプロトン酸/一酸化炭素または一酸化炭素源との反応の後に、そのまま所望のアルコールを添加して反応させても良い。使用するアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールが挙げられる。反応温度は0〜150℃、反応時間は1〜5時間で反応は完了する。反応終了後、有機溶媒に抽出して水や水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリで洗浄した後、濃縮や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で取得できる。
【0030】
反応や抽出で用いることができる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、エチルベンゼン、プソイドクメンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシルなどのエステル類、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールなどのアルコール化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル化合物が挙げられる。
【0031】
次に、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類または式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類と有機金属化合物とを反応させることによって、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類を合成する。
【化8】

(式中、R1〜Rは、同一または異なって、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示し、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3の炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、nは13を表す。)
【0032】
有機金属化合物としては、対応するアルキルリチウム、ハロゲン化アルキルマグネシウムが利用できる。また、それらの有機金属化合物の代わりに、ハロゲン化アルキル/リチウム金属やハロゲン化アルキル/マグネシウム金属の混合物を直接反応させるBarbier反応も利用できる(以下、あわせて有機金属化合物と表記する)。有機金属化合物の使用量は、1〜2当量(1当量は原料1モルに対して6モル倍となる)が望ましい。それ以下では当然ながら収率は低下するし、それ以上多くても収率は向上しない。有機金属化合物と式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類または式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類とを反応させる場合に使用できる溶媒は、反応に不活性なものなら特に規定はない。テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素や、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリアルキルベンゼン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族化合物が利用できる。
【0033】
有機金属化合物と式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類または式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類との混合方法に特に制限はない。有機金属化合物を溶媒に溶かしておき、そこに溶媒に溶かした式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類または式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類を滴下しても良いし、またその逆で、式(6)で表されるアダマンタントリカルボン酸類または式(7)で表されるアダマンタントリカルボン酸エステル類を溶媒に溶かしておき、そこに溶媒で希釈した有機金属化合物を滴下しても良い。ただし、混合の際には発熱が起こるので、異常昇温を避けることが望ましい。混合の際の温度は、0〜100℃であることが望ましい。
【0034】
混合後、反応温度0〜100℃で反応させることが好ましい。反応終了後、水やアルコールで反応を停止させた後、抽出、濃縮、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法で、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類を取得することができる。
【0035】
そして、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類と(メタ)アクリル酸又はその誘導体(以下、アクリル酸化合物)とのエステル化反応により、目的の化合物が得られる。
【0036】
式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類は、そのまま、あるいは水酸基をリチウムやナトリウムなどのアルカリ金属やハロゲン化マグネシウムに置換して使用しても良い。そして、式(9)または式(10)で表されるアクリル酸化合物とのエステル化反応は、酸触媒や塩基触媒、エステル交換触媒を用いた慣用の方法により行うことができる。
【化9】

(R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を、Zは水酸基、アルコキシ基、ハロゲン基を示す。)
【化10】

(式中、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン基、ハロゲン含有アルキル基を示す。)
【0037】
アクリル酸化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−フルオロアクリル酸、トリフルオロアクリル酸、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸などの酸化合物類、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、2−フルオロアクリル酸クロリド、トリフルオロアクリル酸クロリド、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸クロリドなどのアクリル酸ハライド類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸t−ブチル、トリフルオロアクリル酸メチル、トリフルオロアクリル酸エチル、トリフルオロアクリル酸イソプロピル、トリフルオロアクリル酸−t−ブチル、ペンタフルオロメタクリル酸メチル、ペンタフルオロメタクリル酸エチル、ペンタフルオロメタクリル酸イソプロピル、ペンタフルオロメタクリル酸−t−ブチル、2−フルオロアクリル酸メチル、2−フルオロアクリル酸エチル、2−フルオロアクリル酸イソプロピル、2−フルオロアクリル酸−t−ブチル、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸メチル、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸エチル、または2−(トリフルオロメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸−t−ブチルなどのアクリル酸エステル類、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、2−フルオロアクリル酸ナトリウム、トリフルオロアクリル酸ナトリウム、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸ナトリウムなどのアクリル酸塩類、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水ペルフルオロアクリル酸、無水ペルフルオロメタクリル酸、2,2’−ジフルオロアクリル酸無水物、2−フルオロアクリル酸無水物、2−トリフルオロメチルアクリル酸無水物などのアクリル酸無水物類が挙げられる。使用量は、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類に対して1〜100当量(必要なアクリルロイルオキシ基分を1当量とする)、好ましくは1〜10当量である。それより少ないと収率が低下し、それより多いと経済的ではない。
【0038】
式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類とアクリル酸化合物とを速やかに高収率で反応させるには、添加剤が存在していることが好ましい。アクリル酸化合物として、酸ハライドやアクリル酸無水物を使用する場合、添加剤として塩基化合物が存在することが望ましい。すなわち、アクリル酸化合物としてアクリル酸クロリドやメタクリル酸クロリド、無水アクリル酸や無水メタクリル酸などで代表される酸ハライド化合物やアクリル酸無水物を使用する場合、塩基化合物を共存させると反応が速やかに進行し、目的物質が高収率で得られる。塩基化合物として、有機塩基が挙げられるが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−5、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン類、同じく有機アミンであるアニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、クロロアニリン、ブロモアニリン、ニトロアニリン、アミノ安息香酸、ジフェニルアミンなどのアニリン類、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどのピリジン類、ピロール類、キノリン類、ピペリジン類などの含窒素複素環式化合物類が挙げられる。ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシドなどの金属アルコキシド類、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチル−n−プロピルアンモニウムなどの水酸化第四アンモニウム類、硫酸エチルアンモニウム、硝酸トリメチルアンモニウム、塩化アニリニウムなどのアミンの硫酸塩、硝酸塩、塩化物など、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基、臭化エチルマグネシウムなどのグリニヤール試薬が反応溶液中に存在していてもよい。
【0039】
これらの添加剤の使用量は、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類に対して10当量以下が好ましい。それ以上多くとも添加効果はない。塩基化合物の添加方法としては、特に制限はない。アクリル酸化合物を添加する前に予め仕込んでおいてもよいし、またアクリル酸化合物を仕込んだ後に加えてもよいし、アクリル酸化合物と同時に滴下しながら加えても良い。その際、反応温度が異常昇温しないように制御すると副反応の進行が抑えられるので望ましい。
【0040】
式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類とアクリル酸化合物とを反応させる場合に使用する溶媒として、原料および目的物質の溶解性が高いものが望ましい。そのようなものとして、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリアルキルベンゼン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。反応温度としては−70〜200℃、好ましくは−50〜80℃が良い。−70℃より低いと反応速度が低下し、200℃より高いと反応の制御が困難になることや副反応が進行して収率が低下する。
【0041】
アクリル酸化合物としてアクリル酸やメタクリル酸などで代表されるアクリル酸化合物を使用する場合には、酸触媒を用い共沸や脱水剤により反応中に副生する水を除去することによる製造方法が望ましい。共沸による水の除去にはDean−Stark水分離器等を用いることが出来る。酸触媒としては、無機酸として硫酸などが、有機酸としてはベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸などが好ましい。脱水剤としては、公知のものが利用できるが、濃硫酸、三フッ化ホウ素エーテラート、無水トリフルオロ酢酸、ジシクロヘキシルカルボジイミド、2−ハロベンゾチアゾリウムフルオロボレート、2−ハロゲン化ピリジニウム塩、トリフェニルホスフィン、塩化チオニル/塩基化合物などが好ましい。
【0042】
生成する水を共沸により除去する場合、上記溶媒としては、水との相溶性が低く、目的物質の溶解性が高く、本発明の反応に対し不活性な溶媒を選択する。また、反応中に副生する水を除去するため、水と共沸する溶媒を用いることが好ましい。そのような溶媒の例としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリアルキルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。脱水剤を使用する場合は、溶媒として、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の炭素数6〜10の脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、酢酸エチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。これらの溶媒は単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒は、式(8)で表されるアダマンタントリアルコール類1重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で使用する。本発明における反応温度は、共沸脱水する場合、使用する溶媒と水との共沸温度である。脱水剤を使用する場合はこれに限らない。反応温度が60℃よりも低い場合は反応速度が著しく低下し、150℃より高い場合は、目的物質の選択率が低下する。
【0043】
アクリル酸化合物として、アクリル酸メチルやメタクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類を使用する場合には、対応するアルコール(メトキシ基の場合にはメタノール、エトキシ基の場合にはエタノール)を蒸留などの公知の方法で反応系外へ除去し、目的物質を得る。触媒として添加する金属およびその誘導体としては、錫、チタン、ゲルマニウム、亜鉛、鉛、コバルト、鉄、ジルコニウム、マンガン、アンチモン、カリウム等の金属及びその誘導体があげられる。誘導体としてはハロゲン化合物、酸化物、炭酸塩、金属アルコキシド、カルボン酸塩等などが好ましい。反応温度は、0〜200℃、好ましくは50〜150℃で行う。0℃より低いと反応速度が低下し、200℃より高いと副反応が進行して収率が低下する。対応するアルコールを蒸留により反応系外へ除去する場合には、対応するアルコールの沸点近くで反応させる方法が挙げられる。溶媒として、原料および目的物質の溶解性が高く、反応に不活性なものが望ましい。そのようなものとして、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテルなどのエーテル化合物、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物が挙げられる。
【0044】
また、脂環構造を有するジオール誘導体の水酸基を、リチウムやナトリウムなどのアルカリ金属など、ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、臭化エチルマグネシウムなどのグリニヤール試薬などにより、アルコラート状態にした後にエステル化反応を行っても良い。すなわち、水酸基であるOH基をOX基(XはLi、Na、MgBr、MgClなど)に変換した後にエステル化しても良い。本発明のエステル化での反応時間として、0.5〜100時間、好ましくは1〜10時間必要である。反応時間は反応温度、エステル化の方法などに依存し、所望の収率などに応じて決定されるので、上記の範囲に限定されるものではない。
【0045】
エステル化工程の際、重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としては一般的なものならば特に制限はなく、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、ニトロソナフトール、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジメチル−p−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、フェノチアジン、メチレンブルー、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの含硫黄化合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、アミノフェノールなどのアミン類、ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのキノン類、メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、カテコール、3−s−ブチルカテコール、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)などのフェノール類、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類、シクロヘキサンオキシム、p−キノンジオキシムなどのオキシム類、ジアルキルチオジプロピネートなどが挙げられる。添加量としては、アクリル酸化合物100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0046】
反応終了後においては、反応液を水洗処理することにより、過剰のアクリル酸化合物類、酸や塩基などの添加物が除去される。このとき、洗浄水中に塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等、適当な無機塩が含まれていてもよい。また、未反応のアクリル酸化合物類をアルカリ洗浄により除去する。アルカリ洗浄には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水などが挙げられるが、用いるアルカリ成分に特に制限はない。また、金属不純物を除去するために、酸洗浄しても良い。酸洗浄には、塩酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液などの無機酸およびシュウ酸水溶液などの有機酸が使用できる。また、洗浄に際し、原料である式(8)で表される化合物や、生成物である式(1)で表される化合物の物性に応じて、反応液に有機溶媒を添加してもよい。添加する有機溶媒は、反応と同一のものを使用することもできるし、異なったものを使用することもできるが、通常、水との分離がよい極性の小さい溶媒を用いることが望ましい。
【0047】
本発明での各反応工程は、常圧、減圧又は加圧下で行なうことができる。また、反応は、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行なうことができる。各工程において、それぞれの誘導体を単離しても良いし、また単離することなく溶液状態のまま次の工程に使用しても良い。生成物である式(1)で表される化合物は、反応終了後、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭による精製などの分離手段や、これらを組合せた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0048】
本発明の機能性樹脂組成物は、式(1)で表される化合物を単独重合するか、または他の原料と共重合することによって製造することができる。重合においては、一般的には、式(1)で表される化合物および、共重合の場合には他の原料を溶媒に溶かし、触媒を添加して加熱あるいは冷却しながら重合反応を行う。重合反応は開始剤の種類、熱や光などの開始方法、温度、圧力、濃度、溶媒、添加剤などの重合条件に依存する。本発明の機能性樹脂組成物を製造するための重合として、アゾイソブチロニトリルなどのラジカル発生剤を使用したラジカル重合や、アルキルリチウムなどの触媒を利用したイオン重合などが一般的である。その方法は常法に従って行うことができる。
【0049】
本発明において、式(1)で表される化合物と共重合体を形成する上記原料としては、以下のものが挙げられる。2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−2−(1−アダマンチル)プロパン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−2−(1−アダマンチル)ブタン、3−(メタ)アクリルロイルオキシ−3−(1−アダマンチル)ペンタン、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチルアクリレート誘導体、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、4−t−ブトキシカルボニルメチルオキシスチレン、4−(2−t−ブトキシカルボニルエチルオキシ)スチレンなどのヒドロキシスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、β−(メタ)アクリルロイルオキシγ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリルロイルオキシβ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリルロイルオキシγ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリルロイルオキシα−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリルロイルオキシγ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、5−(メタ)アクリルロイルオキシ3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン(=9−(メタ)アクリルロイルオキシ2−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−3−オン)、6−(メタ)アクリルロイルオキシ3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、1−メチル−1−(メタ)アクリロイルオキシシクロペンタン、1−エチル−1−(メタ)アクリロイルオキシシクロペンタンなどが挙げられる。これらの原料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
本発明の機能性樹脂組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは1,000〜150,000、さらに好ましくは3,000〜100,000である。また、機能性樹脂組成物のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜10、好ましくは1〜5である。本発明において、機能性樹脂組成物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
本発明の機能性樹脂組成物は通常、さらに光酸発生剤及び溶剤を含んでいる。使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖状ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0052】
光酸発生剤は、露光光波長に応じて、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として使用可能なものの中から、レジスト塗膜の厚さ範囲、それ自体の光吸収係数を考慮した上で、適宜選択することができる。光酸発生剤は、単独あるいは2種以上を組合せて使用することができる。酸発生剤使用量は、樹脂100重量部当り、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部である。
【0053】
利用可能な光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物およびジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好適である。
【0054】
KrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)、F エキシマレーザー(波長157nm)、極端紫外線(波長13nm)、X線、電子線等電子線に対して、好適に利用可能な光酸発生剤として、具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。
【0055】
露光により酸発生剤から生じた酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する酸拡散制御剤を配合することができる。酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。このような含窒素有機化合物としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類等;エチレンジアミンなどのアミン化合物、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、尿素等のウレア化合物、イミダゾール、ベンズイミダゾールなどのイミダゾール類、ピリジン、4−メチルピリジン等のピリジン類のほか、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。酸拡散制御剤の配合量は、樹脂100重量部当り、通常、15重量部以下、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。
【0056】
さらに、本発明の機能性樹脂組成物でも、必要に応じて、従来の化学増幅型レジスト組成物においても利用されていた種々の添加成分、例えば、界面活性剤、クエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含有させることもできる。好ましい増感剤としては、例えば、カルバゾール類、ベンゾフェノン類、ローズベンガル類、アントラセン類等を挙げることができる。
【0057】
利用可能な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下の商品名で市販されている界面活性剤、メガファックスF173(大日本インキ化学工業製)、L−70001(信越化学工業製)、エフトップEF301、EF303,EF352(トーケムプロダクツ製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子製)、KP341(信越化学工業製)、ポリフローNo.75、No.95(共栄社化学製)等を挙げることができる。
【0058】
本発明の感放射線性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、前述により調製された組成物溶液を、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め50℃〜200℃程度の温度で加熱処理を行ったのち、所定のマスクパターンを介して露光する。塗膜の厚みは、例えば0.01〜20μm、好ましくは0.02〜1μm程度である。露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、例えば、光源としては、F
エキシマレーザー(波長157nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(波長13nm)、X線、電子線等を適宜選択し使用する。また、露光量等の露光条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
【0059】
本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、露光後に、50〜200℃の温度で30秒以上加熱処理を行うことが好ましい。この場合、温度が50℃未満では、基板の種類による感度のばらつきが広がるおそれがある。その後、アルカリ現像液により、通常、10〜50℃で10〜200秒、好ましくは20〜25℃で15〜90秒の条件で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。
【0060】
上記アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を、通常、1〜10重量%、好ましくは1〜3重量%の濃度となるよう溶解したアルカリ性水溶液が使用される。また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、水溶性有機溶剤や界面活性剤を適宜添加することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート冷却器を備えたフラスコに、1,3,5−アダマンタントリオール50g、96%濃硫酸1000gを仕込み、80℃に加熱してギ酸113gを1時間かけて滴下し、引き続き1時間加熱した。反応溶液を、氷冷した25%水酸化ナトリウム水溶液3200gに少しずつ加えたところ、結晶が析出した。析出した結晶をガラスロートで吸引ろ過したところ、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸30.3gを得た。繰り返して、必要量の1,3,5−アダマンタントリカルボン酸を得た。
【0063】
攪拌機、温度計、ジムロート冷却器を備えたフラスコに、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸99g、メタノール400g、濃硫酸20gを仕込み、60℃で3時間加熱した。反応溶液を冷却した後、イオン交換水300mLを加えて、さらにトルエン300mL、酢酸エチル300mLを加えて分液ロートに移し、分液した。水層にさらにトルエン300mL、酢酸エチル300mLを加えて分液することを2回実施した。トルエン/酢酸エチル層を5%水酸化ナトリウム水溶液200g、イオン交換水200mLで洗浄したのち濃縮して1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチルを120g得た。
【0064】
攪拌機、温度計、滴下ロート、ジムロート冷却器を備えたフラスコに1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチル60gおよびテトラヒドロフラン600mL溶液を仕込んで、3M臭化メチルマグネシウム・ジエチルエーテル溶液465mLを1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で24時間攪拌した。その後、フラスコを氷冷しながら、10%硫酸水溶液700gで中和した。反応溶液を有機層と水層とに分液し、有機層をイオン交換水200mLで2回洗浄した後、ろ過して濃縮したところ、スラリーとなったので、トルエン50mLを添加して、吸引ろ過した。得られた結晶は、1,3,5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(1,3,5−アダマンタントリイソプロパノール:式(1)のR〜Rがメチル基で表される化合物:化合物1)46gを得た。
【0065】
攪拌機、温度計、水抜き管を備えたジムロート冷却器、空気吹き込み管を備えたフラスコに、1,3,5−アダマンタントリイソプロパノール20g、メタクリル酸クロリド7.5g、ピリジン20.5g、フェノチアジン0.07g、ジクロロエタン80mLを仕込んだ。オイルバスで加熱し、反応温度57℃で1時間反応させた。
【0066】
反応後、反応溶液を冷却し、イオン交換水80mLを加え、有機層と水層とに分離した。有機層を氷冷したところ、結晶が析出したので吸引ろ過で分離した。析出した結晶13gは、原料の1,3,5−アダマンタントリイソプロパノールと、そのモノメタクリルエステル体である、3,5−ジ(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(1,3,5−アダマンタントリイソメタノールモノメタクリレート)の混合物であった。析出結晶をメタノール/酢酸エチル混合溶媒で溶解させた後、メタノールを留去して再び結晶を析出させ、吸引ろ過で分離した。再び得られた結晶は、主に原料の1,3,5−アダマンタントリイソプロパノールからなるものであった。酢酸エチル層とジクロロエタン層を混合し、濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、3,5−ジ(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−1−(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(1,3,5−アダマンタントリイソプロパノールモノメタクリレート:化合物2)6.5g、5−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−1,3−ジ(1−メタクリロイルオキシ−1−メチルエチル)アダマンタン(1,3,5−アダマンタントリイソプロパノールジメタクリレート:化合物3)0.8gとを分離して得た。それぞれの化合物については、H−NMRおよび13C−NMR、GC−MS分析で同定した(図1〜7を参照)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアダマンタン誘導体。
【化1】

(式中、R1〜Rは、同一または異なって、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示し、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3の炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、Y〜Yは、水素原子または式(2)で表される基を示し、nは13を表す。)
【化2】

(R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示す)。
【請求項2】
式(3)で表される成分を繰り返し単位に含む機能性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R1〜Rは、同一または異なって、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示し、Xは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3の炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、Y〜Yは、水素原子または式(4)で表される基を示し、nは13を表す。)
【化4】

(R〜Rは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン含有アルキル基を示す)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168303(P2010−168303A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11666(P2009−11666)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】