説明

アッパーサポート取付構造

【課題】 車両の操縦安定性を向上させること。
【解決手段】 内筒と、内筒の外側に弾性部材を介して配設される外筒と、外筒に連続一体で形成され外径方向へ延設されるフランジ部と、を有するアッパーサポートと、フランジ部にボルトにより連結される車体側部材と、を備えるアッパーサポート取付構造であって、車体側部材のボルト挿通孔近傍には、フランジ部側に突出する突状部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦安定性を向上させる車両用サスペンションのアッパーサポート取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アッパーサポートのフランジ部には、フランジ部を車体の取付部に螺着したとき、取付部と接触する突状部を有する車両サスペンション用アッパーサポートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実登録2602727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両サスペンション用アッパーサポートにおいては、突状部はボルト挿通孔間において、ボルト挿通孔とは間隔をおいて、断続的に延びている。したがって、突状部の突出量(0.5mm)が不十分となる可能性があり、車両の取付部の平面度のバラツキ(平面度が確保されていない場合)を考慮すると、フランジ部の突状部が車両の取付部に接触しない場合が発生し得る。これにより、アッパーサポートのフランジ部と車両の取付部との接触面圧が不安定となることから、取付剛性が低下し、操舵応答性等の操縦安定性が低下するおそれがある。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、車両の操縦安定性を向上させることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、内筒と、上記内筒の外側に弾性部材を介して配設される外筒と、上記外筒に連続一体で形成され外径方向へ延設されるフランジ部と、を有するアッパーサポートと、上記フランジ部にボルトにより連結される車体側部材と、を備えるアッパーサポート取付構造であって、上記車体側部材のボルト挿通孔近傍には、上記フランジ部側に突出する突状部が形成されていることを特徴とするアッパーサポート取付構造である。
【0006】
この一態様によれば、上記車体側部材のボルト挿通孔近傍には、上記フランジ部側に突出する突状部が形成されている。これにより、ボルトの締結力をアッパーサポートのフランジ部と車体側部材の突状部との接触面のみに集中させることができ、アッパーサポートのフランジ部と車体側部材とを安定的に接触させることができる。したがって、アッパーサポートのフランジ部と車体側部材との接触面圧が安定し、取付剛性が向上する。すなわち、車両用サスペンションを安定させ、操縦応答性等の操縦安定性を向上させることができる。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、内筒と、上記内筒の外側に弾性部材を介して配設される外筒と、上記外筒に連続一体で形成され外径方向へ延設されるフランジ部と、を有するアッパーサポートと、上記フランジ部にボルトにより連結される車体側部材と、を備えるアッパーサポート取付構造であって、上記フランジ部と上記車体側部材との間には、ワッシャーが介在していることを特徴とするアッパーサポート取付構造である。
【0008】
この一態様において、上記フランジ部と上記車体側部材との間にはワッシャーが介在している。これにより、ボルトの締結力をワッシャーが介在するアッパーサポートのフランジ部と車体側部材との間の接触面のみに集中させることができ、フランジ部と車体側部材とをワッシャーを介して安定的に接触させることができる。したがって、アッパーサポートのフランジ部と車体側部材との接触面圧が安定し、取付剛性が向上する。すなわち、車両用サスペンションを安定させ、操縦応答性等の操縦安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。なお、車両用サスペンションの基本概念、主要なハードウェア構成、作動原理、及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用サスペンションを示す概略図である。
【0012】
車両用サスペンション(懸架装置)1は、主としてコイルバネ3と、コイルバネ3を懸架するショックアブゾーバ5と、ショックアブゾーバ5の上端部に固定されたアッパーサポート7と、から構成されている。またアッパーサポート7はボディーパネル(車体側部材)9に連結され、ショックアブゾーバ5を介して車輪側からボディーパネル9に伝達される振動を抑制する機能を有している。
【0013】
図2は本発明の一実施例に係るアッパーサポート取付構造の概略の断面図である。アッパーサポート取付構造11において、アッパーサポート7はショックアブゾーバ5の上端部が嵌合する鋼製の内筒7aと、内筒7aの外側に配置される鋼製の外筒7bとを有する。内筒7aと外筒7bとの間には加硫ゴム材料等の弾性体7cが介在し、走行時の振動を減衰している。なお、内筒7aおよび外筒7bは弾性部材7cに加硫接着されている。外筒7bは内筒7aの外周面側に所定間隔を隔てて略同軸に形成され、外筒7bには外径方向へ延在するフランジ部7dが連続一体に形成されている。フランジ部7dは車両上方から見て略三角おにぎり形状をなしている(図3)。また、略三角形状のフランジ部7dの角部近傍には、ボルト挿通孔7eが1つずつ形成され、これに対応してボディーパネル9の取付部9aにボルト挿通孔9bが1つずつ形成されている。なお、フランジ部7dおよび取付部9aには、3つのボルト挿通孔7e、9bが夫々形成されているが、形成されるボルト挿通孔7e、9bの数は任意でよい。アッパーサポート7のフランジ部7dのボルト挿通孔7eおよびボディーパネル9の取付部9aのボルト挿通孔9bに車両下方側からボルト13が挿通し、挿通したボルト13に車両上方側からナット15が螺合することにより、アッパーサポート7とボディーパネル9とは連結される。
【0014】
ボディーパネル9の取付部9aのボルト挿通孔9b近傍には、フランジ部7d側に突出する突状部9cが形成されている。ここで、突状部9cは、一般面(他の面)に対してフランジ部7d側に約2mm突出しているが、2mm以上突出していてもよい。また、アッパーサポート7とボディーパネル9とがボルト13及びナット15により連結された状態で、ボディーパネル9の突状部9cは、例えばナット15の最外径から約5mm離れた部分(中心方向)までアッパーサポート7のフランジ部7dと接触するように形成されている(図2)。
【0015】
図3は図2に示すアッパーサポート7をA方向から見た図であり、アッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの接触部分(斜線部分)を示す図である。このように形成された突状部9cは、図3に示す如く、アッパーサポート7のフランジ部7dにおいて、ボルト挿通孔7eの周囲(斜線部分)のみに接触する。
【0016】
以上、ボディーパネル9の取付部9aのボルト挿通孔9b近傍には、フランジ部7d側に突出する突状部9cが形成されている。これにより(所謂リブ効果により)、ボルト13およびナット15の締結力をアッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aの突状部9cとの接触面のみに集中させることができ、フランジ部7dと取付部9aを安定的に接触させることができる。したがって、アッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの接触面圧が安定し、取付剛性(締結面3点局部剛性)が向上する。すなわち、車両用サスペンション1を安定させ、操縦応答性等の操縦安定性が向上する。また、ボディーパネル9の取付部9aの平面度において、ある程度バラツキがある(平面度が確保されていない)場合でも、アッパーサポート7のフランジ部7dをボディーパネル9の取付部9aの突状部9cのみに安定的に接触させることにより、フランジ部7dと取付部9aとの接触面において、不安定接触部(振動、荷重等に応じて、接触または非接触となる部分)を無くすことができる。すなわち、不安定接触部から発生する異音を防止することにより、車両の静粛性を向上させることができる。
【0017】
以上、本発明を実施するための最良の形態について一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0018】
例えば、上記一実施例において、ボディーパネル9の取付部9aのボルト挿通孔9b近傍には、フランジ部7d側に突出する突状部9cが形成されているが、アッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの間に、ワッシャー17を介在させてもよい(図4)。なお、ワッシャー17の厚さtは約2mmとなっているが、2mm以上となっていてもよい。また、アッパーサポート7とボディーパネル9とがボルト13及びナット15により連結された状態で、ナット15の外径とワッシャー17の外径との間の距離が、例えば約5mmとなるように、ワッシャー17の外径が設定されている。これにより、ボルト13およびナット15の締結力をワッシャー17が介在するアッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの間の接触面のみに集中させることができ、フランジ部7dと取付部9aとをワッシャー17を介して安定的に接触させることができる。したがって、アッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの接触面圧が安定し、取付剛性が向上する。
【0019】
また、上記一実施例において、ボディーパネル9の取付部9aのボルト挿通孔9b近傍には、フランジ部7d側に突出する突状部9cが形成されているが、アッパーサポート7のボルト挿通孔7e近傍に、ボディーパネル9の取付部9a側に突出する突状部7fが形成されていてもよい(図5(a)および(b))。なお、図5(a)はアッパーサポート7の突状部(斜線部)7fを示す概略図であり、車両上方から見た図である。図5(b)は、図5(a)に示すアッパーサポート7を直線B−B′で切断した際の断面図である。アッパーサポート7のフランジ部7dの突出部7fは、一般面(他の面)に対して取付部9a側に約2mm突出しているが、2mm以上突出していてもよい。また、アッパーサポート7とボディーパネル9とがボルト13及びナット15により連結された状態で、アッパーサポート7のフランジ部7dの突状部7fは、例えばナット15の最外径から約10mm離れた部分(中心方向)までボディーパネル9の取付部9aと接触するように形成されている(図5(a)において斜線部)。これにより、ボルト13およびナット15の締結力をアッパーサポート7のフランジ部7dの突状部7fとボディーパネル9の取付部9aとの接触面のみに集中させることができ、フランジ部7dと取付部9aとを安定的に接触させることができる。したがって、アッパーサポート7のフランジ部7dとボディーパネル9の取付部9aとの接触面圧が安定し、取付剛性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、車両用サスペンションに利用できる。搭載される車両の外観、重量、サイズ、走行性能等は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用サスペンションを示す概略図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアッパーサポート取付構造の概略の断面図である。
【図3】図2に示すアッパーサポートをA方向から見た図であり、アッパーサポートのフランジ部とボディーパネルの取付部との接触部分(斜線部分)を示す図である。
【図4】アッパーサポートのフランジ部とボディーパネルの取付部との間にワッシャーを介在させた状態を示す図である。
【図5】(a)アッパーサポートの突状部(斜線部)を示す概略図であり、車両上方から見た図である。(b)図5(a)に示すアッパーサポートを直線B−B′で切断した際の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両用サスペンション
3 コイルバネ
5 ショックアブゾーバ
7 アッパーサポート
7a 内筒
7b 外筒
7d フランジ部
7e ボルト挿通孔
9 車体側部材
9a 取付部
9b ボルト挿通孔
9c 突状部
11 アッパーサポート取付構造
13 ボルト
15 ナット
17 ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、該内筒の外側に弾性部材を介して配設される外筒と、該外筒に連続一体で形成され外径方向へ延設されるフランジ部と、を有するアッパーサポートと、
前記フランジ部にボルトにより連結される車体側部材と、を備えるアッパーサポート取付構造であって、
前記車体側部材のボルト挿通孔近傍には、前記フランジ部側に突出する突状部が形成されていることを特徴とするアッパーサポート取付構造。
【請求項2】
内筒と、該内筒の外側に弾性部材を介して配設される外筒と、該外筒に連続一体で形成され外径方向へ延設されるフランジ部と、を有するアッパーサポートと、
前記フランジ部にボルトにより連結される車体側部材と、を備えるアッパーサポート取付構造であって、
前記フランジ部と前記車体側部材との間には、ワッシャーが介在していることを特徴とするアッパーサポート取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−168613(P2006−168613A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366017(P2004−366017)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】