説明

アニオン電着塗料及び塗膜形成方法

【課題】 低温硬化性、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性に優れるアニオン電着塗料を見出すこと。
【解決手段】 1.水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計100重量部に対して、特定の化合物(C)を0.1〜15質量%含有するアニオン電着塗料。
2.水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計100重量部に対して、顔料成分(E)を0.1〜60質量部含有するアニオン電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温硬化性、仕上り性、耐薬品性、耐候性、上塗り塗膜の付着性に優れるアニオン電着塗料、及び該アニオン電着塗料を用いた塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陽極酸化処理(アルマイト処理)したアルミニウム材は、軽量
で強度や耐蝕性などに優れることから、成型加工した後、アクリル樹脂・メラミン硬化型のアニオン電着塗料を電着塗装して塗膜を施し、建材、例えば、アルミサッシ、建具、ベランダ用基材、屋根材、雨戸、ドア、障子、戸袋、サンルーム用に使用されている。
【0003】
上記アルミニウム材の成形加工は、通常、円柱形のアルミニウム鋳塊を加熱して溶融させ、次いでこの溶融物を押し出し機に入れ、所定の断面形状の孔を持つダイスに押し付けて、ところてん式に孔を通過させて所定の形状を持つ型材を得ている。
【0004】
最近、アルミサッシにおけるアニオン電着塗膜の規格改訂に伴って、アニオン電着塗膜の薄膜化の要求がある。しかし乾燥膜厚を7μm以下とすると、仕上り性、耐薬品性、耐候性、上塗り塗膜の付着性の低下が著しくなるといった問題点があった。さらに艶消し塗膜を形成するアニオン電着塗料においては、アルミニウム型材のダイスマークが目立ち易く、商品価値が劣るといった問題点があった。また、省エネルギー性を考慮し、焼付け温度の低温硬化が要求されている。
【0005】
従来、アルマイト処理を施したアルミニウム材に、水酸基及びカルボキシル基含有樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、及び有機錫触媒を含有するアニオン電着塗料組成物を電着塗装した乾燥膜厚20μmでの塗膜性能が良好であることが開示されている(特許文献1)。他に、水性樹脂、アミノ樹脂硬化剤及び/又はブロックイソシアネート化合物を含有する艶消しアニオン電着塗料に関して開示されており、アニオン電着塗膜が乾燥膜厚18μmでの塗膜性能の評価結果が良好であることが記載されている(特許文献2)。しかし特許文献1や特許文献2において、アニオン電着塗膜の乾燥膜厚7μm以下としたアルミニウム部材は、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性が低下するため改良が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−41380号公報
【特許文献2】特開2003−292879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、乾燥膜厚7μm以下であるアニオン電着塗膜においても、低温硬化性、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性、さらにダイスマーク隠蔽性に優れるアニオン電着塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、特定の化合物(C)を含有するアニオン電着塗料によって、乾燥膜厚7μm以下としても、低温焼付けにおいて、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性に優れ、さらに艶消しアニオン電着塗膜においては、ダイスマークの隠蔽性に優れることを見出し、発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアニオン電着塗料及び該アニオン電着塗料を用いた塗膜形成方法によって、低温焼付けでの乾燥膜厚7μm以下としても、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性に優れるアニオン電着塗膜が得られる。さらに、ダイスマークを隠蔽性に優れる艶消しアニオン電着塗膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明によると、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)、及び下記式(1)で表される化合物(C)を含有するアニオン電着塗料である。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)
(Rは、同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基、又はフェニル基、Rは同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を表し、nは15〜80の整数を示す)。
【0013】
本発明のアニオン電着塗料の被塗物としては、陽極酸化処理を施したアルミニウム、マグネシウム、チタン製の建材、電気製品、自動車部品などが挙げられる。以下、本発明のアニオン電着塗料について、詳細に述べる。
【0014】
水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A):
水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有し、少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも耐候性の面からアクリル樹脂が好適である。上記のアクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(a)を共重合せしめることによって製造することができる。
【0015】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられる。
【0016】
水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれ以外にプラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)等が挙げられる。
【0017】
上記その他のラジカル重合性不飽和単量体(a)としては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等の窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体が挙げられる。
【0018】
例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ラジカル重合性不飽和単量体が挙がられる。
【0019】
例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールアリロキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート等の1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和結合を有する単量体が挙げられる。
【0020】
例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等、が挙げられる。その他のラジカル重合性不飽和単量体(a)は、適宜に、単独もしくは2種以上組み合わせ使用することができる。
【0021】
これらの単量体の配合割合としては、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)を構成するラジカル重合性不飽和単量体の固形分合計に対して、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)は2〜40質量%、好ましくは4〜30質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a)は3〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体(a)は10〜90質量%、好ましくは20〜70質量%の範囲が好ましい。
【0022】
重合反応に使用する溶媒としては、例えば、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0023】
これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;も併用することができる。
【0024】
ラジカル共重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンザンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α'−アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。上記のようにして製造されたアクリル樹脂の重量平均分子量(注1)は、5,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲が好適である。
【0025】
(注1)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
【0026】
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B):
ブロックポリイソシアネート化合物は、従来から公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものを使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0027】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)の具体的な市販品としては、バーノックD−750、−800、DN−950、−970もしくは15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、N、HL、ILもしくはN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、−202、−110Nもしくは123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、HL、EHもしくは203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)、デュラネート24A−90CX、デュラネートTPA−B80(旭化成ケミカルズ社製、商品名)等が挙げられる。
【0028】
上記のアニオン電着塗料は、メラミン樹脂を併用することもできる。メラミン樹脂としては、メラミンをホルムアルデヒドでメチロール化してなるメチロール化メラミン樹脂;このメチロール基をモノアルコールでエーテル化したアルキル化メラミン樹脂;イミノ基を有するメチロール化メラミン樹脂又はアルキル化メラミン樹脂等を挙げることができる。
【0029】
また、メチロール基のエーテル化において、二種以上のモノアルコールを用いて混合アルキル化をしたものであってもよい。モノアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。具体的には、メチル化メラミン樹脂、イミノ基含有メチル化メラミン樹脂、メチル化・ブチル化メラミン樹脂、イミノ基含有メチル化・ブチル化メラミン樹脂等が用いられる。
【0030】
上記のメラミン樹脂の具体的な市販品としては、ユーバン20SE−60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)などのブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM−100、スミマールM−40S、スミマールM−55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル232、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600、(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル235、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130(以上、いずれも三井サイテック社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0031】
前記、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の配合割合としては、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)を25〜75質量%、好ましくは40〜60質量%、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)を10〜60質量%、好ましくは20〜40質量%の範囲が、低温硬化性と塗料安定性の為にも好ましい。
【0032】
化合物(C):
本発明のアニオン電着塗料は、
下記の式(1)で表される化合物(C)を含有することを特徴とする。
【0033】
【化1】

【0034】
式(1)
(Rは、同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基、又はフェニル基、Rは同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を表し、nは15〜80の整数を示す)。
【0035】
具体的には、サンニックスPP−1000、サンニックスPP−2000、サンニックスPP−3000、サンニックスPP−4000(以上、サンニックスシリーズ、三洋化成工業社製、ポリオキシプロピレングリコール)が挙げられる。
化合物(C)の添加によって、乾燥膜厚7μm以下、好ましくは乾燥膜厚1〜7μm、さらに好ましくは乾燥膜厚3〜6μmでも、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性に優れる塗膜を得ることができる。
【0036】
アニオン電着塗料における、化合物(C)の配合割合は、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート化合物(B)の固形分合計100重量部を基準にして、化合物(C)は0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部の範囲が、塗料安定性、仕上り性及び上塗り塗膜の付着性の面から好ましい。
【0037】
化合物(C)を添加したアニオン電着塗膜が、仕上り性や上塗り塗膜との付着性に優れる理由しては、化合物(C)が、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)やブロック化ポリイソシアネート化合物(B)との相溶性や、焼付け乾燥時に塗膜の熱フロー性に優れる。このため得られたアニオン電着塗膜は仕上り性に優れるものとなり、さらに化合物(C)が、アニオン電着塗膜の表面に容易に配向することから、上塗り塗膜との付着活性点を付与できる為、アニオン電着塗膜上の上塗り塗膜との付着性に優れるものと考える。
【0038】
有機錫化合物(D):
本発明のアニオン電着塗料には、適宜に、有機錫化合物(D)を添加して、耐薬品性や低温硬化性の向上を図ることができる。具体的な市販品としては、日東化成社製商品名;T−100、U−100、U−130、U−15、U−20、U−200、U−220、U−230、U−28、U−300、U−303、U−317、U−340U−400、U−50、U−500、U−550、U−700、U−700ES、U−8、U−800、U−810、U−830、U−ES、U−280、U−350、U−360、U−840、U−850、U−860、U−870等、三共有機合成社製商品名;SCAT−1、SCAT−1W、SCAT−4A、SCAT−7、SCAT−8、SCAT−8B、SCAT−24、SCAT−25、SCAT−27、SCAT−31A、SCAT−32A、SCAT−46A、SCAT−51、SCAT−52A、No.918、STANNBL、STANNSNT−1F等、住化バイエルウレタン社製商品名;デスモラピッドPA、デスモラピッドSO等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
上記有機錫化合物(D)以外の有機金属化合物としては、乳酸ビスマス、オクチックスビスマス等の有機ビスマス化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩、アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体、日東化成社製商品名;U−600、U−660等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
アニオン電着塗料について
水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)のカルボキシル基含有樹脂の水分散化は、中和当量として0.1〜1.2当量の塩基性化合物、脱イオン水を加えて、ディスパーなどで攪拌しながらエマルションを得ることができる。
【0041】
上記の水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)の中和に用いる塩基性化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミントリエチルアミンなどが挙げられる。
【0042】
顔料成分(E):
アニオン電着塗料は、必要に応じて、顔料成分(E)を配合することができる。顔料成分(E)を配合することによって、意匠性や上塗り付着性に優れる効果が得られる。
顔料成分(E)として、具体的には、例えば、二酸化チタン、べんがら、カーボンブラック、黄色酸化鉄(オーカー)、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等の着色顔料、クレー(カオリン)、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム等の体質顔料を使用することができる。
上記の顔料成分(E)には、界面活性剤、水を加え、ボールミルやサンドミル等を用いて分散してなる顔料分散ペーストを予め製造し、アニオン電着塗料の製造に用いることが好ましい。
【0043】
アニオン電着塗料の製造は、水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)及び化合物(C)に中和剤や水を加えて水分散してなるエマルションに、顔料分散ペーストを加えて、脱イオン水で固形分5〜30質量%に調整して得ることができる。
【0044】
塗膜形成方法
アニオン電着塗膜を有するアルミニウム部材を得るには、陽極酸化処理したアルミニウム材にアニオン電着塗料を電着塗装し、塗装物を水洗し又は水洗することなく、焼き付け硬化することにより得られる。
【0045】
アニオン電着塗装による塗膜の形成は、通常、アニオン電着塗料を電着槽に入れて、電着浴とし、この浴中に該アルミニウム基材を浸漬した後、焼付け後の乾燥膜厚が約30μm以下、好ましくは1〜7μm、さらに好ましくは3〜6μmとなるようにアニオン電着塗装を行い、水洗を行わず(ノンリンス)、又は水洗(リンス)を行う。次いで室温でセッティングした後、焼付け硬化することにより、行うことができる。焼付け条件は、通常、約130〜200℃、好ましくは140〜160℃で、約15〜50分間好ましくは15〜30分間である。
【0046】
本発明のアニオン電着塗料を用いた塗膜は、160℃以下の低温焼付けの乾燥膜厚7μm以下でも、仕上り性、耐薬品性、耐候性、及び上塗り塗膜の付着性に優れる。さらに艶消し塗膜を形成するアニオン電着塗料においては、上記塗膜性能を有し、かつ60度鏡面光沢度(後記、注13参照)が10以下でダイスマーク隠蔽性に優れた塗膜が得られる。
【0047】
複層塗膜形成方法
本発明のアニオン電着塗料の塗膜表面には、上塗り塗料を塗布することができる。該上塗り塗料としては、基体樹脂、硬化剤を主成分とするそれ自体すでに公知の塗料を用いることができる。また、アニオン電着塗膜を水洗し、室温でセッティングした後に、焼付け硬化することなく未硬化のまま上塗り塗料を塗装し、両塗膜を同時に焼付け硬化して複層塗膜を得ることもできる。
【0048】
上塗り塗料の基体樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂及びこれらの変性物などに、アミノ樹脂、(ブロック化)ポリイソシアネート化合物を配合してなる上塗り塗料が挙げられる。
【0049】
該塗料のタイプとしては、有機溶剤を媒体とした溶液型塗料、非水ディスパージョン塗料、水を媒体とした水溶性及び/又はエマルジョン塗料及び粉体塗料などのいずれのタイプのものであってもよい。
上塗り塗料は、アニオン電着塗膜表面に、通常の塗装手段、例えば刷毛塗り、スプレー塗り、浸漬塗り、流し塗り、ローラー塗り、静電吹付塗装などの方法で塗布し、次いで乾燥(加熱も含む)をおこなうことによって塗膜が形成できる。塗布する膜厚は要求される性能などによって異なるが、通常、乾燥膜厚で約10〜100μmの範囲である。また、乾燥は、室温もしくは加熱によりおこなえるが、塗料のタイプにより適宜適した条件を設定することが望ましい。本発明のアニオン電着塗膜は、乾燥膜厚0.1〜7μmにて上塗り塗膜の付着性に優れたアニオン電着塗膜が得られる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
製造例1 アクリル樹脂溶液No.1の製造例
反応容器中にイソプロピルアルコ−ルを143部を仕込み80℃に保持した中へ、以下の「混合物(A)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行って、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.1を製造した。
「混合物(A)」
スチレン 10部
メチルメタクリレート 31部
n−ブチルアクリレート 10部
エチルアクリレート 30部
アクリル酸 7部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 12部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部
該アクリル樹脂溶液No.1は、重量平均分子量約25,000、酸価55mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/gであった。
【0051】
製造例2
反応容器中にイソプロピルアルコ−ルを143部を仕込み80℃に保持した中へ、以下の「混合物(B)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル1部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行って、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.2を製造した。
「混合物(B)」
スチレン 15部
メチルメタクリレート 31部
KBM−503(注2) 3部
n−ブチルアクリレート 19部
エチルアクリレート 10部
アクリル酸 7部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 15部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部
該アクリル樹脂溶液No.2は、重量平均分子量約30,000、酸価53mgKOH/g、水酸基価72mgKOH/gであった。
(注2)KBM−503:信越シリコーン社製、商品名、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン。
【0052】
アニオン電着塗料(クリヤ)の製造
製造例3 アニオン電着塗料用エマルションNo.1の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂溶液No.1を100部(固形分70部)、デュラネートTPA−B80(注3)37.5部(固形分30部)、サンニックスPP−4000(注6)1部、SCAT−7(注7)を3部(固形分1.5部)、トリエチルアミン1.9部(0.4中和当量分)を加えて水分散後、脱イオン水158.1部を加え、固形分34%のアニオン電着塗料用エマルションNo.1を得た。
【0053】
製造例4〜10 アニオン電着塗料用エマルションNo.2〜No.8の製造
配合内容を表1とする以外は、製造例3と同様にして、アニオン電着塗料用エマルションNo.2〜No.8を得た。
【0054】
【表1】

【0055】
(注3)デュラネートTPA−B80:旭化成ケミカルズ社製、商品名、ヘキサメチレンイソシアネートのイソシアヌレート体、メチルエチルケトオキシムブロック剤
(注4)サイメル232:三井サイテック社製、商品名、メチル/ブチルの混合エーテル化のメラミン樹脂)
(注5)サンニックスPP−1000:三洋化成工業社製、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量1,000
(注6)サンニックスPP−4000:三洋化成工業社製、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量4,000
(注7)SCAT−7:三共有機合成(株)、商品名、ジブチル錫ビス(メルカプトカルボン酸エステル)。
【0056】
被塗物の作成
1次電解処理(脱脂−エッチング−中和−陽極酸化処理−封孔)を施した被膜厚さ約10μmのアルミニウム材(シルバー:大きさは150mm×70mm×0.5mm)を被塗物として用いた。
【0057】
実施例1
製造例3で得たアニオン電着塗料用エマルションNo.1を301.5部(固形分102.5部)、脱イオン水979.5部を加え、固形分8%のアニオン電着塗料No.1を得た。
前記のアルミニウム材に、アニオン電着塗料No.1を乾燥膜厚が7μmとなる塗装条件で電着塗装を行った。その後、水洗した後、3分間室温でセッティングを施し、熱風乾燥機にて150℃で20分間加熱乾燥してアニオン電着塗料No.1の試験板を得た。アニオン電着塗料No.1の膜厚及び試験結果を表3に示す。
【0058】
実施例2〜4、比較例1〜4
表2のような配合にてアニオン電着塗料No.2〜No.8を得た。実施例1と同様にて、アニオン電着塗料No.2〜No.8の試験板を得た。膜厚及び試験結果を表3に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
(注8)仕上り性:
○は、塗面良好
△は、ユズ肌、凹凸、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミ、いづれかの塗膜欠陥が少し認められる。
×は、ユズ肌、凹凸、ツヤムラ、ハジキ、ブツ、ヘコミ、いづれかの塗膜欠陥が著しい。
【0062】
(注9)耐薬品性:試験板を、1%硝酸水溶液に20℃で30日間浸漬した後、上塗り塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。
◎は、異常なし
○は、若干劣るが実用上問題なく良好
△は、異常あり
×は、著しく異常が認められる。
【0063】
(注10)耐候性:JIS K5400に準拠し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して塗膜の光沢を測定し、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。さらに塗膜表面を目視により観察した。
◎は、光沢保持率が80%を割る時間が3,000時間を越える
○は、光沢保持率が80%を割る時間が2,500時間以上、かつ3,000時間未満
○△は、光沢保持率が80%を割る時間が2,000時間以上、かつ2,500時間未満
△は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間以上、かつ2,000時間未満、
×は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間未満。
【0064】
(注11)上塗り塗膜付着性(A):アニオン電着塗膜を施した試験板に、レタンPGホワイト(関西ペイント社製、商品名、常温乾燥型2液ウレタン系塗料)を膜厚30μmになるよう塗装し、20℃で7日間乾燥させた。その後、温度50℃、相対湿度90%の条件にて240時間の条件にて耐湿性試験を行った。
耐湿性試験の終了後、室温にて1時間放置し、この試験板にカッターナイフで1mm間隔に碁盤目状に切れ目をいれ、100個のマス目にセロテープ(登録商標)を貼り付けて剥離した。
◎は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=100/100で問題なし
○は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=95〜100/100で製品での 使用は問題なし、
△は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=90〜94/100で、上塗り塗装した製品使用に問題あり
×は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=89以下/100で、上塗り塗装した製品使用は困難。
【0065】
(注12)上塗り塗膜付着性(B):アニオン電着塗膜を施した試験板に、フッカロン(関西ペイント社製、商品名、フッ素系焼付け硬化型塗料)を膜厚30μmになるよう塗装し、210℃−20分間乾燥させた。その後、沸水に4時間浸漬後、室温にて1時間放置し、この試験板にカッターナイフで1mm間隔に碁盤目状に切れ目をいれ、100個のマス目にセロテープ(登録商標)を貼り付けて剥離した。
◎は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=100/100で問題なし
○は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=95〜100/100で製品での使用は問題なし、
△は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=90〜94/100で、上塗り塗装した製品使用に問題あり
×は、残存したマス目(個)/全体のマス目(個)=89以下/100で、上塗り塗装した製品使用は困難。
【0066】
(注13)60度鏡面光沢度:複層塗膜の光沢の程度を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
【0067】
(注14)ダイスマーク隠蔽性:ダイスマーク隠蔽性:目視評価で評価した。
○は、ダイスマーク隠蔽性が良好、
△は、ダイスマーク隠蔽性が劣る、
×は、ダイスマーク隠蔽性が著しく劣る。
【0068】
アニオン電着塗料(着色)の製造
製造例11 顔料分散ペーストの製造例
ボールミルに、60%アミン中和型アクリル樹脂系顔料分散樹脂(注15) 9.6部(固形分5.8)、CR−97(石原産業社製、商品名、チタン白) 48.3、トダカラーKN−O(注16) 0.07部、TAROX LL50(注17) 0.9部、及び脱イオン水41.2部を仕込み、20時間分散処理し、固形分55%の顔料分散ぺーストを得た。
【0069】
(注15)アミン中和型アクリル樹脂系顔料分散樹脂:酸価54.5mgKOH/g、水酸基価74.2mgKOH/g、重量平均分子量40,000のカルボキシル基有するアクリル樹脂
(注16)トダカラーKN−O:戸田工業社製、商品名、べんがら
(注17)TAROX LL50:チタン工業社製、商品名、黄色酸化鉄。
【0070】
実施例5
上記の製造例3で得たアニオン電着塗料用エマルションNo.1を301.5部(固形分102.5部)、製造例11で得た55%の顔料分散ぺースト100部(固形分55.07)を加えて攪拌し、脱イオン水911部を加え、固形分12%のアニオン電着塗料No.9を得た。
次に、前記のアルミニウム材を用いて、アニオン電着塗料No.9を電着塗装を行った後、水洗し、3分間室温でセッティングを施した。その後、熱風乾燥機にて150℃で20分間加熱乾燥し、アニオン電着塗料No.9の電着塗膜を有する試験板を得た。試験板による試験結果を表5に示す。
【0071】
実施例6〜8、及び比較例5〜8
表4のような配合にて実施例6〜8及び比較例5〜8のアニオン電着塗料No.10〜No.16を得た。アニオン電着塗料No.10〜No.16による試験板による試験結果を表5に示す。
【0072】
実施例9
前記のアルミニウム材にアニオン電着塗料No.9を、乾燥膜厚が7μmとなる塗装条件にて電着塗装を行った後、水洗し、3分間室温でセッティングを施した。次に、アニオン電着塗膜を焼付け硬化することなく、上塗り塗膜の付着性A(注11)、上塗り塗膜の付着性B(注12)の試験に供した。試験結果を表5に示す。
【0073】
比較例9
前記のアルミニウム材にアニオン電着塗料No.14を、乾燥膜厚7μmとなる塗装条件にて電着塗装を行った後、水洗し、3分間室温でセッティングを施した。次に、アニオン電着塗膜を焼付け硬化することなく、上塗り塗膜の付着性A(注11)、上塗り塗膜の付着性B(注12)の試験に供した。試験結果を表5に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のアニオン電着塗料により、160℃以下の低温焼付けにおいて乾燥膜厚7μm以下の薄膜でも、仕上り性、耐薬品性、耐候性及び上塗り塗膜の付着性に優れるアルミニウム部材を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)と、ブロック化ポリイソシアネート化合物(B)との固形分合計100重量部に対して、及び下記式(1)で表される化合物(C)を0.1〜15質量%含有するアニオン電着塗料。
【化1】

式(1)
(Rは、同一又は異なってもよい炭素原子数1〜10個のアルキル基、又はフェニル基、Rは同一又は異なってもよい水素原子又はメチル基を表し、nは15〜80の整数を示す)
【請求項2】
水酸基及びカルボキシル基を含有する樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート化合物(B)との固形分合計100重量部に対して、顔料成分(E)を0.1〜60質量部含有する請求項1に記載されたアニオン電着塗料。
【請求項3】
陽極酸化処理したアルミニム基材に、請求項1又は2に記載のアニオン電着塗料を電着塗装し、乾燥膜厚1〜7μmのアニオン電着塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項3の塗膜形成方法で得られたアニオン電着塗膜の未硬化又は硬化塗膜上に、上塗り塗料を塗装することを特徴とする複層塗膜形成方法。















【公開番号】特開2007−9059(P2007−9059A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191569(P2005−191569)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】