説明

アミド化合物の製造方法及びその触媒

【課題】温和な条件下、副生成物を生成せずに高効率で水の付加反応を促進させる触媒、及びそれを用いたアミド化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】粒子径が1.0nm〜5.0nmの範囲であるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を、酸素含有銅化合物と組み合わせてなることを特徴とする触媒である。また、かかる触媒の存在下、ニトリル化合物に水を付加させる工程において、パラジウム若しくはルテニウムを含む触媒の存在下では80℃以上で行い、又は白金を含む触媒の存在下では100℃以上で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物への水の付加反応、特にニトリル化合物への水の付加反応に用いることが可能であり、更にその反応が温和な条件下で進行し、副生成物を生成せずに高収率でアミド化合物を得ることが可能な触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミド化合物の製造に関しては、例えば、ニトリル化合物への水の付加反応を利用するものが挙げられるが、かかる反応により得られるアミド化合物には、産業上有益なものが多い。例えば、紙力増強剤としてのアクリルアミドや、ビタミンB3の構成成分としてのニコチンアミド等が市場規模の大きな製品として工業生産されている。また、アミド化合物は、医薬品等の生理活性物質の合成中間体としても有用である。
【0003】
上記ニトリル化合物への水の付加反応は、産業上実施されている手法であり、大まかに微生物由来の生体触媒を用いる手法と、人工触媒を用いる手法とに分けることができる。
【0004】
一般に生体触媒を用いる手法では、微生物の代謝の過程でニトリル化合物への水の付加反応が行われ、その産物としてアミド化合物が得られる。例えば、アクリルアミド化合物の合成には、ニトリルヒドラターゼの作用を有する微生物が生体触媒として用いられる(例えば、特開平5−30982号公報(特許文献1)参照)。しかしながら、生体触媒の場合にはさまざまなアミド化合物を製造できる汎用性は、必ずしも高くなく、汎用性の高い触媒が望まれている。また、生体触媒を用いる手法では、触媒の生体維持に要した廃水の処理が必要である。
【0005】
これに対し、人工触媒を用いる手法では、酸・塩基触媒、還元銅、銅-クロム系触媒、錯体触媒等を用いて水の付加反応が行われるが、それらの触媒は限定的な用途で使用されるものであり、また、酸・塩基触媒では高温の反応温度が必要であり、さらにアミド化合物の製造の後処理段階の中和過程において多量の無機塩等の副生成物が生じる問題もある。また、還元銅触媒では、高温の反応温度が必要であり、多量の水も必要であり、その濃縮操作も必要な問題点がある。更に、銅-クロム系触媒では有害金属であるクロムを使用することから環境保全の観点から問題がある。更に、錯体触媒法では、有害な揮発性有機溶媒を多量に使う必要があり、環境保全の観点から好ましくない。したがって、多量の無機塩を排出せず、有害金属を含まず、有害な揮発性有機溶媒を使わないアミド製造法が望まれている。
【0006】
また一方で、近年、金属微粒子(ナノ粒子)の特性に注目した人工触媒の研究が急速に進みつつある。該金属ナノ粒子は、数個から数百個の原子からなる微結晶粒子であり、固体触媒に無い効果が得られる。かかる効果は、主としてその高い比表面積や表面構造の多様性に由来していると考えられている。具体的には、クラスターを構成する金属ナノ粒子が、一般的な固体触媒のバルク相での触媒作用に比べて飛躍的に高い触媒作用を示す。Pratiらは、Appl.Catal.A:General,291,199(2005)(非特許文献1)において、元来不活性な金を、活性炭に担持させた金ナノ粒子とすることで、多価アルコールを酸素酸化できることを報告している。また、多元系の金属ナノ粒子触媒は、一般に、イオン状態の混合溶液を還元することにより、水熱反応で金属ナノ粒子(金属間化合物)の核を形成する。例えば、特開平6−320002号公報(特許文献2)及び特開平7−204511号公報(特許文献3)においては、加熱処理して得た合金系ナノ粒子を触媒として用いたニトリル化合物への水の付加反応が、実施例ではアクリロニトリルへの水の付加反応のみが報告されている。白石らは高分子論文集,57,346(2000)(非特許文献2)において、合金系ナノ粒子触媒の作用機構を述べており、パラジウムがアクリロニトリルのオレフィン部と相互作用し、水が配位した銅の近傍にニトリル部位を固定する役割を果たすため、高い活性が発現すると説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−30982号公報
【特許文献2】特開平6−320002号公報
【特許文献3】特開平7−204511号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Prati et al.,Appl.Catal.A:General,291,199(2005)
【非特許文献2】白石幸英ら,高分子論文集,57,346(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開平6−320002号公報及び特開平7−204511号公報に開示のアミド化合物の製造方法は、パラジウムと銅の合金ナノ粒子を触媒として使用しているが、該触媒は、必要に応じて別途に調製する必要がある。またその調製方法は単成分ナノ粒子に比べ煩雑であり、触媒調製時にpHをコントロールする等の条件設定が必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、温和な条件下、簡便な触媒調製で副生成物を生成せずに高効率で水の付加反応を促進させる触媒を提供することにある。特に、ニトリル類からアミド類の製造用触媒として有用であり、該触媒を用いるアミド化合物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、中心となるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子に、酸素含有銅化合物を加えることにより、液相中で水の付加反応に対し優れた触媒能を示す新規な触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の触媒は、粒子径が1.0nm〜5.0nmの範囲であるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を、酸素含有銅化合物と組み合わせてなることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明の触媒は、パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子と酸素含有銅化合物を混ぜ合わせるだけで調製でき、水の付加反応に触媒能を示すことを特徴とする。
【0014】
本発明の触媒の好適例においては、前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子がクラスターである。
【0015】
本発明の触媒において、前記酸素含有銅化合物としては、硫酸銅、酸化銅、炭酸銅、硝酸銅及びビスアセチルアセトナト銅が好ましい。
【0016】
本発明の触媒は、前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子が、水溶性高分子よりなる保護剤により単分散で存在する微粒子であることが好ましい。
【0017】
本発明の触媒は、前記酸素含有銅化合物と前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子とのモル比(Cu/M)[但し、MはPd、Pt又はRuである]が0.1〜10であることが好ましい。なお、モル比(Cu/M)は、パラジウム、白金又はルテニウムのモル数に対する銅のモル数の比である。
【0018】
本発明の触媒は、更に、水溶性高分子よりなる保護剤を含むことが好ましい。ここで、前記水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0019】
本発明の触媒の他の好適例においては、前記微粒子が白金からなり、該微粒子の溶媒がpH6.0以上であるのが好ましい。
【0020】
本発明の触媒は、アミド化合物製造用触媒として好適である。
【0021】
また、本発明のアミド化合物の製造方法は、上記の触媒の存在下、ニトリル化合物に水を付加させる工程において、パラジウム若しくはルテニウムを含む触媒の存在下では80℃以上で行い、又は白金を含む触媒の存在下では100℃以上で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子に、酸素含有銅化合物を加えることで温和な条件下で機能し、且つ再利用が可能な加水分解反応及び付加反応を促進させる新規な触媒を提供することができる。また、かかる触媒を用いることで、特定の触媒反応系専用の多元系触媒を調製することなく、目的とするアミド化合物を温和な条件下で簡便に高い選択率で製造することができ、更に生体触媒を用いた際に必要となる水処理施設等も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ベンゾニトリルへの水の付加反応における酸素含有銅化合物の効果を示す図である。
【図2】水の付加反応におけるビスアセチルアセトナト銅の添加量の効果(80℃)を示す図である。
【図3】アクリロニトリルへの水の付加反応における反応温度の影響を示す図である。
【図4】アクリロニトリルへの水の付加反応における空気曝露の影響を示す図である。
【図5】アクリロニトリルへの水の付加反応におけるアクリルアミド収率の経時変化を示す図である。
【図6】アクリロニトリルへの水の付加反応における水添加量の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の触媒は、粒子径が1.0nm〜5.0nmの範囲であるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を、酸素含有銅化合物と組み合わせてなることを特徴とする。上述の通り、アミド化合物の製造に用いる多元系の複合触媒は、通常、その調製が煩雑で且つその調製には厳密な条件設定を必要とし、更には反応系別に専用の多元触媒を調製する必要があるため、その汎用性が低いものである。しかしながら、本発明者らは、一般的なパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子に酸素含有銅化合物を混ぜ合わせるだけで、溶媒中で加水分解反応や付加反応に優れた触媒能を示す新規な触媒が得られることを見出した。驚くべきことに、かかる触媒は、その調製が容易であることに加えて、温和な条件下でニトリル化合物からアミド化合物を製造することができ、従来のアミド化合物の製造方法における中和過程で見られた無機塩等の副生成物を多量に生成することなく、ニトリル化合物からアミド化合物を高収率で製造することができる。金属微粒子(ナノ粒子)を含む本触媒系が水の付加反応を促進させる理由は、必ずしも明らかではないが、ニトリル基がパラジウム、白金又はルテニウムに配位することによるニトリル化合物の活性化と、水が銅に配位することによる水の活性化が起こるものと考えている。すなわち、本触媒系は水の付加反応を2元機能型で触媒する。白石らが高分子論文集,57,346(2000)(非特許文献2)において、提唱している作用機構では、原料のニトリル化合物(アクリロニトリル)の二重結合部分がパラジウムに配位することにより、銅の近傍にアクリロニトリルを固定すると述べている。本触媒系では、ニトリル基の近傍に二重結合のないヒドロシンナモニトリルでも水の付加反応が進行しており、白石らの触媒系とは全く異なるものであることは明らかである。本触媒系ではニトリル化合物への水の付加反応において、アミド化合物の段階で反応は停止し、カルボン酸までの水和が進行しない。また、逆反応である、アミド化合物からニトリル化合物への脱水反応は進行しない。このため、アミド化合物が高収率で得られることが本触媒系の特徴である。本触媒系の活性の高さは、ナノ粒子固有の高い比表面積に由来すると考えられる。パラジウムや白金の単結晶の結晶構造は面心立方格子構造であり、それらのナノ粒子は立方八面体を形成することがわかっている。立方八面体では、2殻構造(原子数 55)で約76%、3殻構造(原子数 147)で約63%の原子が最外殻(外表面)に位置する。更にナノ粒子はバルク相に比べ、ステップやキンクなどの存在割合が高いため、配位不飽和性の高い表面原子が多く存在する。固体触媒の場合、まず基質が反応場である触媒表面に吸着する必要があるが、反応性の高い、配位不飽和性の高い表面原子に優先して化学吸着することから、ナノ粒子表面上では基質であるニトリル化合物が高密度で配位することによって水の付加反応が促進されていることが推察される。また、本発明の触媒は、特にアミド化合物製造用触媒として好適で、任意のニトリル化合物に水を付加させることができ、基質であるニトリル化合物の種類に制限されない。
【0025】
更に、本発明の触媒は、有害金属であるクロムなどの使用を必要とせず、また下記で説明するように、任意の溶媒を用いることができるため、環境保全の観点からも好ましい。
【0026】
本発明の触媒に用いるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子は、保護剤として、ポリビニルピロリドン、ナフタリンスルホン酸縮合物、クエン酸、ポリアクリル酸、4級アミン等の水溶性高分子を用いることで、該パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を単分散で存在させることができる。なお、これら水溶性高分子の中では、ポリビニルピロリドンが特に好ましい。また、上記保護剤としては、水溶性高分子に制限されず、金属微粒子に通常使用される有機配位子や界面活性剤を用いてもよい。
【0027】
また、本発明の触媒に用いるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子は、その粒子径が1.0nm〜5.0nmの範囲であることを要する。該微粒子の粒子径が上記特定した範囲内にあれば、触媒として作用し、水の付加反応を促進させることができる。従って、その粒子径が上記特定した範囲から外れると、水の付加反応に対する触媒能が低下することが予想される。
【0028】
本発明の触媒に用いる酸素含有銅化合物は、分子内に酸素原子を含む銅化合物であり、具体例としては、硫酸銅(CuSO4)、酸化銅(CuO、Cu2O)、炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2)、硝酸銅(Cu(NO)2)、酢酸銅、配位子中に酸素を含む銅錯体等が挙げられる。例えば、上記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を含む触媒系に酸素含有銅化合物を加えることで、ニトリル化合物への水の付加反応を達成することができるが、この理由は、前記の配位不飽和性が高く反応性の高いナノ粒子表面活性点と、酸素含有銅化合物による水の活性化作用の協奏的な働きによるものと思われる。なお、これら酸素含有銅化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの酸素含有銅化合物は、二価の銅化合物に制限されず、一価の銅化合物でもよい。更に、これらの酸素含有銅化合物は、水和物の形態であってもよい。
【0029】
また、本発明の触媒に用いることができる配位子中に酸素を含む銅錯体として、具体的には、ビスアセチルアセトナト銅(Cu(acac)2)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅が挙げられ、これらの中でも、ビスアセチルアセトナト銅が経済性の観点から特に好ましい。
【0030】
本発明の触媒は、酸素含有銅化合物とパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子とのモル比(Cu/M)[但し、MはPd、Pt又はRuである]が0.1〜10であることが好ましく、0.1を超えて且つ1.0未満であることが更に好ましい。該モル比(Cu/M)が0.1未満では(即ち、酸素含有銅化合物の割合が低減すると)、水の付加反応に対する触媒能が低下する。一方、該モル比(Cu/M)が10を超えると、(即ち、酸素含有銅化合物の割合が増大すると)、触媒効率は増加しない。
【0031】
また、本発明のアミド化合物の製造方法は、上述の触媒の存在下、加熱条件下でニトリル化合物に水を付加させる工程を含むことを特徴とする。ここで、触媒を構成する金属微粒子としてパラジウム微粒子又はルテニウム微粒子を選択した場合においては、80℃以上の加熱を行うことを要し、80〜180℃の範囲で行うことが好ましい。一方、触媒を構成する金属微粒子として白金微粒子を選択した場合においては、100℃以上の加熱を行うことを要し、180〜250℃の範囲で行うことが好ましい。本発明によれば、上記触媒を用いることにより、副生成物を生成することなく目的とするアミド化合物を高収率で製造することができる。また、芳香族アミド、ヘテロ置換芳香族アミド、脂肪族アミド等の各種アミド化合物を製造することができ、広い汎用性を有する。また、本発明のアミド化合物の製造方法においては、上記触媒を構成するパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子がクラスターであることが好ましく、この場合、更に、ポリビニルピロリドン、ナフタリンスルホン酸縮合物、クエン酸、ポリアクリル酸、4級アミン等の水溶性高分子を保護剤として用いることで、触媒を構成する微粒子を単分散で存在させることができる。これにより、アミド化合物の収率を大幅に向上させることができる。
【0032】
本発明のアミド化合物の製造方法に用いる触媒は、上記した通り、パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子と酸素含有銅化合物を混ぜ合わせるだけで調製することができ、かかる触媒の調製には、塩等の副生成物が生じる問題もない。加えて、上記特定した温度範囲の加熱処理を行うことで付加反応に対する触媒能が発揮される。このため、パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子と酸素含有銅化合物を予め反応させて触媒を調製する必要がなく、例えば、触媒の調製時に、パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子及び酸素含有銅化合物と共に、ニトリル化合物、水、溶媒等を同時に加えることもできる。
【0033】
本発明のアミド化合物の製造方法に用いるニトリル化合物としては、特に制限されないが、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ヒドロシンナモニトリル、マンデロニトリル、フェノキシアセトニトリル等の一価の脂肪族ニトリル類、マロノニトリル、サクシノニトリル、アジポニトリル、ポリアクリロニトリル等の多価の脂肪族ニトリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリルシアニド等の不飽和脂肪族ニトリル類、ベンゾニトリル、p-メトキシベンゾニトリル、p-クロロベンゾニトリル、p-ブロモベンゾニトリル、p-ヨードベンゾニトリル、p-シアノベンズアルデヒド、3-シアノピリジン、4-シアノピリジン、フタロニトリル等の芳香族ニトリル類等が挙げられる。また、本発明によれば、反応性の低いニトリル化合物、例えばp-メトキシベンゾニトリルやヒドロシンナモニトリルを用いた場合でさえ高い収率で対応するアミド化合物を製造することができる。また、本発明によれば、窒素原子を含有する3-シアノピリジンも効率よく、工業的に重要なニコチンアミドに変換することができる。さらに、工業的に重要なアクリルアミドも製造することが可能である。
【0034】
また、本発明のアミド化合物の製造方法に用いる触媒は、溶媒を含有することができる。
上記触媒に用いることができる溶媒、即ち、上記ニトリル化合物への水の付加反応に用いることができる溶媒としては、水の他、例えば、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;フェノール等のフェノール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トルイル酸等のカルボン酸類;酢酸メチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のカルボン酸アミド;ヘキサメチルリン酸トリアミド等の他のアミド化合物;N,N-ジメチルイミダゾリジノン等の尿素;ジメチルスルホン等のスルホン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ガンマブチロラクトン、カプロラクトン等のラクトン類;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル類;トリグライム、テトラグライム等のポリエーテル類等が挙げられる。また、原料となるアクリロニトリル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、3-シアノピリジン、ポリアクリロニトリル等のニトリル化合物そのものを溶媒として用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
また、上記触媒は、微粒子が白金である場合、そのpHが6.0以上の溶液であるのが好ましい。該溶液のpHが6.0未満では、アミド化合物の収率が低下する場合があり、目的とするアミド化合物の収率確保の観点より好ましくない。
【0036】
上記ニトリル化合物への水の付加反応において、水の使用量は、収率の観点からニトリル化合物のニトリル基1モル当り0.1〜1000モル当量の範囲が好ましく、0.5〜1000モル当量の範囲が更に好ましく、1.0〜1000モル当量の範囲が一層好ましく、10〜1000モル当量の範囲が特に好ましい。水の使用量がニトリル基1モル当り0.1モル当量未満では、アミド化合物の収率の低下が大きくなり、一方、水の使用量がニトリル基1モル当り1000モル当量を超えると、ニトリル化合物の触媒への接触が抑制されるためアミド化合物の収率が低下する場合がある。
【0037】
上記ニトリル化合物への水の付加反応において、触媒に含まれるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子の使用量は、ニトリル化合物のニトリル基に対して、0.00001〜1.0倍モルの範囲が好ましく、0.001〜0.5倍モルの範囲が更に好ましい。該微粒子の使用量が0.00001倍モル未満では、反応速度が低下し工業的に不利であり、一方、1.0倍モルを超えると、経済性が低下する。
【0038】
また、上記付加反応は、反応系が実質的に液相に保たれるのに十分な圧力で行うことが好ましい。ここで、該付加反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましいが、特に限定されるものではなく、空気中でもかまわない。なお、反応形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。また、本発明の製造方法により得られるアミド化合物は、蒸留や晶析等の方法により回収できる。該アミド化合物を回収後の本触媒は、再度反応に利用できる。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(触媒の調製例1)
市販のパラジウム微粒子(ナノ粒子)溶液(ナノキューブジャパン社製、パラジウム平均粒径1.8 nm、パラジウム濃度5.0モル%(ニトリル基に対して)、水:エタノール=1:1(v/v)、保護剤としてポリビニルピロリドン含有)をそのまま触媒として溶液のまま用いた。
【0041】
(触媒の調製例2)
市販の白金微粒子(ナノ粒子)溶液(ナノキューブジャパン社製、白金平均粒径1.5 nm,白金濃度5.0モル%(ニトリル基に対して)、水:エタノール=1:1(v/v)、保護剤としてポリビニルピロリドン含有)をそのまま触媒として溶液のまま用いた。
【0042】
(本発明の触媒の調製例3)
調製例1で調製した触媒溶液に、ビスアセチルアセトナト銅(Cu(acac)2)を反応開始直前に室温で添加し、アミド合成用触媒Aを調製した。なお、ビスアセチルアセトナト銅とパラジウム微粒子とのモル比(Cu/Pd)は2であった。
【0043】
(本発明の触媒の調製例4)
調製例2で調製した触媒溶液に、ビスアセチルアセトナト銅(Cu(acac)2)を反応開始直前に室温で添加し、アミド合成用触媒B(pH=1.5)を得た。なお、ビスアセチルアセトナト銅と白金微粒子とのモル比(Cu/Pt)は2であった。
【0044】
<金属微粒子の違いによる触媒効果>
アミド合成用触媒Aを用いたときの典型的な実験例を示す。アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え(パラジウム量1.1mg、ビスアセチルアセトナト銅5.6mg)、ベンゾニトリル(0.02 mL,0.2 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、100 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、8時間加熱した。室温まで冷却した後、反応液をガスクロマトグラフ装置により定量し、ベンズアミド濃度とベンゾニトリル濃度を求めた。表1は、100 ℃,8時間後におけるベンゾニトリルへの水の付加反応のベンズアミド収率を示している。ベンズアミドの収率の計算式を以下に示す。
ベンズアミド収率(%)=[ベンズアミド濃度(生成物)]/[ベンゾニトリル初濃度(基質)]× 100
パラジウム及び白金の双方で、金属微粒子のみでは100℃における触媒能は殆ど認められなかったが、酸素含有銅化合物であるビスアセチルアセトナト銅を加えることで、パラジウム系での触媒におけるベンズアミド収率が飛躍的に向上した。
【0045】
次に、加熱処理の温度を180 ℃に変えた以外は、表1に示す反応と同様の条件で、ベンゾニトリルへの水の付加反応を行い、ベンズアミド収率を求めた。結果を表2に示す。パラジウム微粒子にビスアセチルアセトナト銅を加えた触媒系では、収率が100%に向上した。また、白金の微粒子にビスアセチルアセトナト銅を加えた触媒系も、収率が7%に向上した。なお、パラジウム微粒子にビスアセチルアセトナト銅を加えた触媒系では、1時間以内に収率が100%に達した。すなわち、180 ℃においても酸素含有銅化合物であるビスアセチルアセトナト銅を加えることによる触媒機能の向上は明らかである。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
*1 調製例1又は調製例2に記載の触媒を用いた。
*2 調製例3又は調製例4に記載のアミド合成用触媒A又はBを用いた。
【0049】
表1及び表2の結果から、本発明の触媒を用いた場合にのみ、ベンゾニトリルからベンズアミドの生成が認められた。なお、表1及び表2に示されていないが、ビスアセチルアセトナト銅を単独で使用してもベンゾニトリルへの水の付加反応は、全く進行しなかった。
【0050】
<添加物の違いによる触媒効果>
調製例1に記載の触媒を用い、添加物の違いがベンズアミド収率に与える影響を検討した。結果を図1に示す。
【0051】
図1の結果から、酸素含有銅化合物を加えた触媒を用いた場合にベンゾニトリルからベンズアミドの生成が認められた。特に、ビスアセチルアセトナト銅(収率88%)、硫酸銅(収率98%)、炭酸銅(収率96%)又は酸化銅(収率73%)を用いた場合にアミド化合物の収率が高いことが分かった。即ち、パラジウム微粒子と適切な銅化合物の組み合わせは、ニトリル化合物への水の付加反応を触媒する新規な触媒系 の一つとして有効であることが明らかとなった。
【0052】
<酸素含有銅化合物の添加量が触媒能に及ぼす影響>
ベンゾニトリルからベンズアミドの合成において、酸素含有銅化合物(Cu(acac)2)の添加量を変えてモル比(Cu/Pd)を変化させた以外、調製例3と同様の方法で得たアミド合成用触媒を用い、銅化合物の添加量が触媒能に及ぼす影響について評価した。典型的な実験例を示す。アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え(パラジウム量1.1mg、ビスアセチルアセトナト銅5.6 mg)、ベンゾニトリル(0.02 mL,0.2 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、80 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、16時間加熱した。室温まで冷却した後、反応液をガスクロマトグラフ装置により定量し、ベンズアミド濃度とベンゾニトリル濃度を求めた。
なお、触媒効率(TON,16時間)は、下記式で計算した。
【数1】

[PhCONH2]はベンズアミドのモル濃度であり、[Pd]はパラジウムのモル濃度であり、[Cu(acac)2]は銅錯体(Cu(acac)2)のモル濃度である。
【0053】
上記式より計算された結果を図2に示す。なお、図2の(b)は、(a)を対数表示したものである。ここで、[Cu(acac)2]は、銅錯体のモル濃度であり、[Pd微粒子]は、パラジウムのモル濃度である。
【0054】
図2の結果から明らかなように、酸素含有銅化合物の添加効果は、該酸素含有銅化合物の添加量が極めて低い割合から高い割合まで広く確認され、TON値はモル比(Cu/Pd)が約0.2で最高値をとった。このことから、上記アミド合成用触媒における酸素含有銅化合物とパラジウム微粒子とのモル比(Cu/Pd)は0.1を超えて且つ1.0未満の範囲が添加効率の面から好適であることが分かった。
【0055】
<pHの影響>
調製例4に記載のアミド合成用触媒BのpHの影響について評価した。触媒Bの溶液のpHは、0.1 M NaOHを滴下することで調整した。実験はアルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、ベンゾニトリル(0.02 mL,0.2 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、反応温度100 ℃で16時間加熱した。結果を表3に示す。白金微粒子にビスアセチルアセトナト銅を加えたのみの触媒系では、収率が1%以下であったが、溶液のpHを中性 (6.9) に調整した触媒系は、収率が96%に向上した。すなわち、白金触媒系においてpHの調整により触媒機能の向上が可能なことがわかった。なお、中性条件(pH = 6.9)では、白金微粒子のみでは反応が進行しなかった。
【0056】
【表3】

【0057】
<各種ニトリル化合物に対する汎用性の評価>
調製例3に記載のアミド合成用触媒Aと同様の方法で、硫酸銅、酸化銅又はビスアセチルアセトナト銅を用いて触媒を調製し、ベンゾニトリル以外のニトリル化合物への水の付加反応を行った。添加物として酸素含有銅化合物を使わない調製例1の触媒を用いた結果(none)も含めて実験結果を表4にまとめた。典型的な実験例を示す。アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5mLを加え(パラジウム量1.1mg,ビスアセチルアセトナト銅5.6 mg)、ニトリル化合物(0.2 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、100 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、16時間加熱した。室温まで冷却した後、反応液をガスクロマトグラフ装置により定量し、アミド濃度とニトリル濃度を求めた。
【0058】
【表4】

【0059】
表4の結果から、本発明によれば、反応性の低いニトリル化合物、例えば電子供与性置換基であるメトキシ基がパラ位に結合したベンゾニトリル誘導体であるp-メトキシベンゾニトリルや脂肪族ニトリルであるヒドロシンナモニトリルを用いた場合でも、ベンゾニトリルと同等であるか又はそれより高い収率で対応するアミド化合物を合成できることが分かった。これは、従来の人工触媒に見られない特長である。なお、副生成物はガスクロマトグラフ装置では全く確認できなかった。また、どのニトリル化合物の場合でも、パラジウム微粒子のみ(none)では水の付加反応は進行せず、酸素含有銅化合物は必須である。
【0060】
次に、以下の反応式に示す条件で、調製例3に記載のアミド合成用触媒Aと同様の方法で、ビスアセチルアセトナト銅に替えて酸化銅(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行ったところ、高い収率で対応するアクリルアミドを合成することができた。
【化1】

【0061】
(本発明の触媒の調製例5)
市販のパラジウム微粒子(ナノ粒子)溶液(ナノキューブジャパン社製、パラジウム平均粒径1.8 nm、パラジウム濃度0.8モル%(ニトリル基に対して)、水:エタノール=1:1(v/v)、保護剤としてポリビニルピロリドン含有)に、添加物として遷移金属化合物を反応開始直前に室温で添加し、アミド合成用触媒を得た。なお、遷移金属化合物とパラジウム微粒子とのモル比(遷移金属化合物/Pd)は2であった。
【0062】
<アクリロニトリルへの適用(1)>
添加物の違いによる触媒効果
調製例5に記載のアミド合成用触媒において、添加物としてビスアセチルアセトナト銅(Cu(acac)2),酢酸銅(Cu(OAc)2),酸化銅(II)(CuO),酸化銅(I)(Cu2O),硫化銅(II)(CuS),塩化銅(II)(CuCl),塩化銅(I)(CuCl2),炭酸銅(CuCO3・Cu(OH)2),アセチルアセトナト亜鉛(Zn(acac)2)又は酸化銀(Ag2O)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験はアルゴン雰囲気下で行い、ネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLとアクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、100 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、16時間加熱した。
【0063】
【表5】

【0064】
表5の結果から、添加物としてCu(acac)2、Cu(OAc)2、CuO、Cu2O又はCuCO3・Cu(OH)2を用いたときアクリロニトリルからアクリルアミドの生成が認められた。特に、CuO又はCu2Oを用いた場合にアクリルアミドの収率が高いことが分かった。また、ベンゾニトリルの結果と同様に、パラジウム微粒子のみでは水の付加反応は進行しなかった。
【0065】
<アクリロニトリルへの適用(2)>
金属粒子の違いによる触媒効果
調製例5に記載のアミド合成用触媒において、市販のパラジウム微粒子に替えてルテニウム微粒子(平均粒径 2nm)又は銀微粒子(平均粒径 10〜20nm)(共に田中貴金属工業製)を用いた以外は、調製例5に示す同様の条件で、添加物に酸化銅(II)(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験は、アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、アクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、反応温度100 ℃で16時間加熱した。
【0066】
【表6】

【0067】
表6の結果から、ルテニウム微粒子を用いたときアクリルアミドの生成が認められた。一方、銀微粒子の触媒活性は殆ど認められなかった。また、微粒子のみ(表6の番号3と4)では水の付加反応は進行しなかった。
【0068】
<アクリロニトリルへの適用(3)>
反応温度の影響
調製例5に記載のアミド合成用触媒において、添加物として酸化銅(II)(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験は、アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、アクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、16時間加熱した。結果を図3に示す。
【0069】
図3の結果から、反応温度80℃以上でアクリルアミドの生成が認められた。
【0070】
<アクリロニトリルへの適用(4)>
空気曝露の影響
調製例5に記載のアミド合成用触媒において、添加物として酸化銅(II)(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験は大気中でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、アクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、反応温度100 ℃で16時間加熱した。結果を図4に示す。
【0071】
図4の結果から、大気曝露下(空気存在下)においてもアクリルアミドの生成が確認された。したがって、アクリルアミド製造時においてアルゴン雰囲気下である必要はないことは明らかである。
【0072】
<アクリロニトリルへの適用(5)>
アクリルアミド収率の経時変化
調製例5に記載のアミド合成用触媒において、添加物として酸化銅(II)(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験はアルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、アクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、100 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、アクリルアミド収率の推移を測定した。結果を図5に示す。
【0073】
図5の結果から、アクリルアミド収率は実験開始後およそ16時間まで増加を続けた。アクリルアミドは反応開始直後から生成し、この触媒系に誘導期はないことが確認できた。
【0074】
(本発明の触媒の調製例6)
市販のパラジウム微粒子(ナノ粒子)溶液(ナノキューブジャパン社製、パラジウム平均粒径1.8 nm、パラジウム濃度0.8モル%(ニトリル基に対して)、水:エタノール=1:1(v/v)、保護剤としてポリビニルピロリドン含有)の溶剤を、一旦減圧下で留去し、水:エタノールの混合割合を変えた溶液で再溶解した。その後、添加物として酸化銅(II)(CuO)を反応開始直前に室温で添加し、アミド合成用触媒を得た。なお、酸化銅(II)(CuO)とパラジウム微粒子とのモル比(Cu/Pd)は2であった。
【0075】
<アクリロニトリルへの適用(7)>
水添加量の影響
調製例6に記載のアミド合成用触媒において、基質(アクリロニトリル)と水の比率([H2O]/[基質])が5〜100になるよう調整した微粒子溶液に、添加物として酸化銅(II)(CuO)を用いて触媒を調製し、アクリロニトリルへの水の付加反応を行った。実験は、アルゴン雰囲気下でネジ式試験管に触媒溶液0.5 mLを加え、アクリロニトリル(0.066 mL,1.0 mmol)を加えた。試験管を密栓した後、100 ℃に加熱したヒートブロックにセットし、アクリルアミド収率の推移をガスクロマトグラフ装置で測定した。結果を図6に示す。なお、[H2O]は水のモル濃度であり、[基質]は基質(アクリロニトリル)のモル濃度である。
【0076】
図6の結果から、付加反応に必要な水の過剰率が、アクリロニトリルに対して少過剰の5でもアクリルアミドは生成した。また、アクリロニトリルに対して100倍以上の水が存在しても、アクリルアミドは生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1.0nm〜5.0nmの範囲であるパラジウム、白金又はルテニウムの微粒子を、酸素含有銅化合物と組み合わせてなることを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子がクラスターであることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記酸素含有銅化合物が、硫酸銅、酸化銅、炭酸銅、硝酸銅及びビスアセチルアセトナト銅よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子が、水溶性高分子よりなる保護剤により単分散で存在する微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の触媒。
【請求項5】
前記酸素含有銅化合物と前記パラジウム、白金又はルテニウムの微粒子とのモル比(Cu/M)[但し、MはPd、Pt又はRuである]が0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
更に、水溶性高分子よりなる保護剤を含むことを特徴とする請求項2に記載の触媒。
【請求項7】
前記水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記微粒子が白金からなり、該微粒子の溶媒がpH6.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
アミド化合物製造用触媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
請求項9に記載の触媒の存在下、ニトリル化合物に水を付加させる工程において、パラジウム若しくはルテニウムを含む触媒の存在下では80 ℃以上で行い、又は白金を含む触媒の存在下では100℃以上で行うことを特徴とするアミド化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−214099(P2009−214099A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27337(P2009−27337)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】