説明

アミド酸またはイミド側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂

【課題】優れた耐熱性を維持し、耐化学性が著しく改善された芳香族ポリエーテル系新規樹脂および該樹脂をコーティング薄膜化して製造された、基材の平滑度が改善されたフィルム及びディスプレイ用基板の提供。
【解決手段】通常の芳香族ポリエーテル系樹脂にアミド酸側鎖基または前記アミド酸を熱硬化したイミド側鎖基を導入し、該側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド酸またはイミド側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂に関するものであって、さらに詳細には、通常の芳香族ポリエーテル系樹脂がアミド酸側鎖基または前記アミド酸を熱硬化したイミド側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂であって、ポリエーテルの基本骨格構造にアミド酸側鎖基またはイミド側鎖基を導入することにより、耐化学性の改善効果が著しく、優れた耐熱性を維持し、また、薄膜コーティングされては、基材の平滑度が改善される効果が得られるため、フィルム及びディスプレイ用基板として使用可能な、新規なアミド酸側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂またはイミド側鎖基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、基板に薄膜トランジスタ配列を形成し、これが各画素の色を調節することにより、ディスプレイ機能を行うようになる。このようなディスプレイ基板の素材としては、主にガラス基板が適用されてきたが、ガラスの特性上、重くて、よく割れるだけではなく、製作費用が高いという短所がある。このため、業界では、ディスプレイ製品の軽量化及び薄型化のために、ガラス基板の厚さを減らそうと努力しているが、ガラスは薄くなるほど割れやすいため、工程が複雑となり、これによる生産収率の低下が製造コストの増大につながっている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
最近は、ディスプレイ基板素材として、ガラスに代わって使用できるプラスチック素材が開発されている。プラスチック基板は、軽量化及び薄型化が容易であり、プラスチック素材の選択により耐衝撃性、撓み、基板の連続工程(roll to roll)処理も可能であるため、ガラス基板に比べ、産業的に遥かに有用に適用できる。また、ディスプレイ用プラスチック基板の素材としては、色の透明性、高い寸法安定性、低い吸湿率などが求められるが、これを満たすプラスチック素材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン高分子などが使用されている。しかし、プラスチックをディスプレイ基板に適用するためには、上記特性の他にも、耐化学性が非常に重要である。その理由は、プラスチック基板は、モジュール製造工程上の種々の化学的処理過程で溶媒に露出されるため、基板の損傷を防ぐためには、優れた耐化学性が求められるのである。現在、商業的に生産されているプラスチック基板としては、PC、PET、PESなどが代表的であるが、これらの樹脂は、依然として、耐化学性に対する改善の余地がある。
【0004】
樹脂の耐化学性を向上させる方法としては、高分子の構造変更、表面コーティング、硬化性基の導入などがある。硬化フィルムまたはコーティング層を形成する一般的な方法においては、熱硬化性樹脂溶液または紫外線硬化型樹脂溶液をプラスチック基材フィルム上に直接、またはバッファ層を媒介として1〜15μm程度の薄膜を形成して製造している。特許文献1には、プラスチック基材の表面上に硬化性高分子をコーティングする方法が開示されているが、本特許文献ではアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーの重合により架橋を形成する方法が記載されている。特許文献2は、プラスチック基板の表面上に、脂環族系列のアクリレート重合体を塗布し、UVを照射して硬化させる方法が開示されている。また、特許文献3は、アクリレート官能基を有する紫外線硬化樹脂に硬化型シリコン系界面活性剤及びシリカ粒子を分散して光硬化させることにより、耐化学性及び耐摩擦性を向上させる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記従来の硬化皮膜を形成する方法は、基材の樹脂とは全く異なる組成の化合物をコーティングすることから、液晶ディスプレイモジュールの製造工程中に、熱膨張係数の異なることによる層間分離や撓み、そしてヘイズ(haze)が増加する現象が発生する。
【0006】
上記のような問題点に鑑みて、本発明者らは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート樹脂などの通常のポリエーテル系樹脂が、透明で且つ光透過性に優れているにも拘わらず、耐化学性が劣り、ディスプレイ基板などに利用するには制約があることを認識して、これらの通常のポリエーテル系樹脂の耐化学性を改善するために鋭意研究し、本発明を完成することに至った。
【非特許文献1】Appl.Phys.,A,72,669(2001)
【特許文献2】日本特開2003−191370号
【特許文献3】日本特開2002−60506号
【特許文献4】大韓民国特許公開第2001−76642号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、芳香族ポリエーテル系樹脂がアミド酸またはイミド側鎖基により架橋され耐化学性が改善された新規な芳香族ポリエーテル系樹脂を提供することにその目的がある。
【0008】
また、本発明は、上記の新規樹脂をコーティング薄膜化して製造されたフィルムまたはディスプレイ用基板を提供することに他の目的がある。
【0009】
また、本発明は、上記新規樹脂の製造方法を提供することにまた他の目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るポリエーテル系樹脂は、次の化学式1aまたは1bで表されるアミド酸またはイミド架橋結合により耐化学性が改善されたことを特徴とする。





【0011】
本発明は、耐化学性を改善する目的で、高分子骨格間の架橋結合基としてアミド酸またはイミド基を導入したことにその技術的特徴がある発明である。上記化学式1aまたは1bで表される架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂において、高分子骨格間の架橋結合のために導入されるアミド酸またはイミド基が含まれた反復単位(p)のモル数が、全体の反復単位(p+q)のモル数に対し、0.01〜0.5であることが好ましい。
【0012】
p/(p+q)の比が0.01未満であると、耐化学性の増進効果が小さく、0.5を超過すると、柔軟性が劣り、機械的強度が低下する。
【0013】
本発明に係る架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂の製造方法は次の反応式1で示される。
【0014】

【発明の効果】
【0015】
本発明に係る上記化学式1aまたは1bで表される架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂は、通常のポリエーテル樹脂の側鎖基として導入されたアミド酸またはこれを熱硬化したイミド基により骨格構造間でお互い架橋結合をなし、内部的に網状構造を形成することにより、耐熱性及び耐化学性が大きく改善され、各種フィルム及びディスプレイ用基板に適用可能である。
【0016】
ディスプレイ用基板の素材として通常的に使用されてきたプラスチック基板及び光学用フィルム、特にポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどは、一般有機溶媒に溶解されやすい短所を有している。しかし、本発明に従って、ポリスルホン、ポリカーボネートなどの側鎖にアミン基を導入し、これを酸二無水物と反応しアミド酸を製造した後、イミド化すると、イミド構造の特性と架橋構造の特性により、透明性及び機械的特性を低下させることなく、耐熱性、耐化学性を向上させ、光学用フィルム基板、ディスプレイ用基板素材として使用する際、耐溶媒性の向上により、他の工程を容易に進行することができると共に、基材フィルムにコーティングし、均一な表面特性及び耐化学性を有したフィルムを製造することができるという長所を有する。
【0017】
従って、本発明により製造したフィルム、基板及びコーティング液は、各種光学用フィルム及びディスプレイ用基板として有用に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、上記反応式1による製造方法についてより詳細に説明する。
【0019】
まず、i)芳香族ポリエーテル系樹脂の芳香族環部分にクロロメチル基(−CH2Cl)が導入された上記化学式2で表されるクロロメチル化された樹脂を製造する。
【0020】
本発明による樹脂の骨格構造を構成する芳香族ポリエーテル樹脂には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどが含まれて、その他に、この技術分野で一般に使われるプラスチックは、例え芳香族エーテル連結主鎖(aromatic ether linkage backbone)を有するものであれば適用することも可能である。また、上記化学式2で表される骨格樹脂の製造方法は、当分野でよく知られている通常の単量体と重合方法を利用して行うことができる。そして、芳香族環部分にクロロメチル基を導入する方法も同様に、公知の方法[E. Avram, M. A. Brebu, A. Warshawsky, and C.Vasile, Polymer Degradation and Stability, 69, 175(2000)]により行うことができる。従って、本発明では、上記化学式2で表される骨格樹脂の構造や製造方法に特に制限はない。例えば、クロロメチル化されたポリスルホン樹脂を製造するにおいては、ポリスルホンをクロロホルムに溶解して、溶液をメタノールに沈殿し精製したポリスルホンをクロロホルムに溶解して、パラホルムアルデヒド、クロロトリメチルシラン、塩化第二錫を添加し、十分攪拌して製造することができる。
【0021】
次は、ii)上記化学式2で表される樹脂のクロロメチル基部分に、Y−R1−NH2(Y=COOH)で表されるアミン化合物と反応させ、上記の化学式3で表されるアミン側鎖基(−R1−NH2)含有樹脂を製造する。
【0022】
より具体的に説明すると、上記化学式2で表されるクロロメチル基を含む樹脂をジメチルホルムアミドなどの極性溶媒に溶解して、これにアミン化合物を添加し、テトラブチルアンモニウムブロマイド、炭酸カリウムなどを添加した後、十分攪拌して反応させる。その後、メタノールで沈澱し、洗滌及び乾燥過程を経て、アミン基の導入された樹脂を製造する。この際、アミン化合物としては、Y−R1−NH2(ここで、Yは、−COOH)で表される脂肪族、脂環族または芳香族アミン化合物が含まれる。脂肪族アミン化合物としては、3−アミノプロピオン酸、4−アミノブチリック酸、5−アミノペンタン酸、6−アミノヘキサン酸などが含まれて、脂環族アミン化合物としては、3−アミノシクロブタンカルボン酸、3−アミノシクロペンタンカルボン酸、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノシクロヘプタンカルボン酸などが含まれて、芳香族アミン化合物としては、4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4−ビフェニルカルボン酸などが含まれる。また、本発明は、上述のアミン化合物の選択に特に制限がない。
【0023】
次は、iii)上記化学式3で表されるアミン化された樹脂に、酸二無水物を反応させて、アミド酸側鎖基により架橋された上記化学式1aで表されるアミド酸側鎖基含有樹脂を製造する。
【0024】
より具体的に説明すると、アミン基の導入された上記化学式3で表される樹脂をジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN−メチルピロリドン(NMP)などの溶解性に優れた極性溶媒に1〜40重量%の濃度で溶解したアミン樹脂溶液に、酸二無水物化合物をアミン基の量に合わせて投入し、24時間反応して、アミド酸構造の導入されたポリスルホンを製造する。この際、酸二無水物化合物としては、ポリアミド酸またはポリイミド樹脂の製造に使用される通常の脂肪族、脂環族または芳香族系列の酸二無水物であれば、適用することが可能である。具体的には、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び3,3’,4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸二無水物(DOCDA)などが含まれる。
【0025】
次は、iv)上記化学式1aで表されるアミド酸側鎖基含有樹脂を加熱硬化し、イミド側鎖基により架橋された上記化学式1bで表されるイミド側鎖基含有樹脂を製造する。
【0026】
より具体的に説明すると、上記化学式1aで表されるアミド酸構造の導入された樹脂を溶解性に優れた溶媒に5〜40重量%の濃度で溶解した溶液を、厚さ10〜200μmでフィルムを形成した後、60〜300℃の温度で加熱乾燥する加熱硬化工程を行ってイミド化する。この際、溶液の濃度が5重量%未満であると、溶液の粘度が低くなり、所望のコーティング厚を得る観点からは好ましくはなく、溶液の濃度が40重量%を超えると、高粘度となり、フィルム形成時、厚さのバラツキを押さえるという観点からは好ましくはない。また、フィルム厚が200μmを超過して厚く形成すると、溶媒を除去する時間が長引いて、生産効率が低下する。
【0027】
以上で説明したような製造方法により製造された本発明によるアミド酸またはイミド基により架橋された芳香族ポリエーテル系樹脂は、溶液鋳型(solvent casting)方法を通じてフィルムまたは基板を製造することができ、あるいは基材にコーティングして、熱装置による硬化、加熱乾燥過程を通じてフィルムまたは基板を製造することができる。溶液鋳型方法を使用する際、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、m−クレゾールなどを含む極性有機溶媒を使用する。そして、補助成分としては、必要に応じて、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、染料、顔料、充填剤及び加工助剤などを混合して使用することができる。
【0028】
以上説明したような本発明を、次の合成例、製造例及び実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
合成例1:クロロメチル化されたポリスルホン(CMPSF)の合成
攪拌機、窒素注入装置、温度調節装置、還流冷却機を付着した2Lの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、ポリスルホン(PSF、BASF社の‘Ultrason S’製品、下記式)20g、パラホルムアルデヒド(PFA)13.56g、クロロトリメチルシラン(CTMS)49.2g、塩化第二錫(TC)2.356gをクロロホルム(CF)660mlに添加し、置換率を調節するために反応時間を5〜72時間にして、1%〜50%の置換率を有したクロロメチルポリスルホンを製造した。製造したクロロメチル化されたポリスルホンをメタノールに沈澱しメタノールで3回洗滌して、クロロメチルポリスルホンを95%の収率で得た。

【0030】
上記の方法により製造されたクロロメチルポリスルホンの合成と置換率とは、1H−NMRでクロロメチル基の水素積分比(4.53ppm)とポリスルホンでメチル基の水素積分比(1.69ppm)により確認し、合成例1に対する1H−NMRスペクトルを図1に示した。得られた塩化メチルの置換率を次の表1に示した。1H−NMRから、上記合成例1に提示された方法によりクロロメチル化されたポリスルホン(CMPSF3)の製造が成功的になされたことが確認できた。
【0031】
【表1】

【0032】
合成例2:メチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホン(PSFMAm1)の合成
攪拌機、窒素注入装置、温度調節装置、還流冷却機を付着した500mlの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、上記合成例1で合成したクロロメチル化されたポリスルホン(CMPSF1)20gをジメチルホルムアミド400mlに溶解した後、4−アミノ安息香酸(AB)0.394g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)0.926g、炭酸カリウム(KC)0.397gを添加し24時間攪拌して、メチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホンを97%の収率で製造した。
【0033】
上記の方法により製造されたメチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホン(PSFMAm4)の合成は、1H−NMRでクロロメチル基の水素積分比(5.21ppm)と安息香酸の水素積分比(6.49ppm、7.54ppm)で定量的に合成されたことを確認した(図2)。
【0034】
合成例3〜6:メチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホン(PSFMAm2〜5)の合成
攪拌機、窒素注入装置、温度調節装置、還流冷却機を付着した500mlの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、上記合成例1で合成したクロロメチルポリスルホンと、4−アミノ安息香酸(Ab)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、炭酸カリウム(KC)は、合成例1で合成した置換率の異なるクロロメチルポリスルホンの量に合わせて理論的に計算し次の表2に示した分量で添加して、24時間攪拌し、メチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホンを92〜98%の収率で製造した。
【0035】
【表2】

【0036】
合成例7〜15:メチレンアミノベンジレートを導入したポリスルホン(PSFMAm1〜5)と酸二無水物との反応
攪拌機、窒素注入装置を付着した500mlの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、上記合成例2〜6で合成したメチレンアミノベンジレートの導入されたポリスルホンと酸二無水物を、置換率の異なるメチレンアミノベンジレートの導入されたポリスルホンの量に合わせて理論的に計算し次の表3に示した分量で添加して、12時間攪拌し、未反応ジアミンを末端基処理するためにフタル酸無水物を添加し30分間攪拌して反応を終結し、アミド酸構造を導入したポリスルホンを製造した。
【0037】
【表3】

【0038】
合成例16:クロロメチル化されたポリカーボネート(CMPC)の合成
攪拌機、窒素注入装置、温度調節装置、還流冷却機を付着した2Lの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながらポリカーボネート(PC; General Electric 社の‘Lexan’製品、下記式)20g、パラホルムアルデヒド(PFA)23.59g、クロロトリメチルシラン(CTMS)85.45g、塩化第二錫(TC)4.09gをクロロホルム(CF)884mlに添加し、置換率を調節するために反応時間を5〜72時間として、1%〜50%の置換率を有したクロロメチル化されたポリカーボネートを製造した。製造したクロロメチルポリカーボネートをメタノールに沈澱してメタノールで3回洗滌し、クロロメチルポリカーボネートを得た。


【0039】
上記方法により製造されたクロロメチルポリカーボネートの合成と置換率とは、1H−NMRで確認して、塩化メチルの置換率は、次の表4に示した。
【0040】
【表4】

【0041】
合成例17〜21:メチレンアミノベンジレートを導入したポリカーボネート(PCMAm1〜5)の合成
攪拌機、窒素注入装置、温度調節装置、還流冷却機を付着した500mlの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、上記合成例16で合成したクロロメチル化されたポリカーボネート20gと、4−アミノ安息香酸(Ab)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、炭酸カリウム(KC)をジメチルホルムアミド(DMF)に、クロロメチルポリカーボネートの量に合わせて理論的に計算して次の表5に示した分量で添加し、24時間攪拌して、メチレンアミノベンジレートの導入されたポリカーボネートを製造した。
【0042】
上記方法により製造されたメチレンアミノベンジレートを導入したポリカーボネートの合成を元素分析により確認し、その結果を表6に示した。
【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
合成例22〜30:メチレンアミノベンジレートを導入したポリカーボネート(PCMAm1〜3)と酸二無水物との反応
攪拌機、窒素注入装置を付着した500mlの反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら、上記合成例12〜14で合成したメチレンアミノベンジレートの導入されたポリカーボネートと酸二無水物を、置換率の異なるメチレンアミノベンジレートの導入されたポリカーボネートの量に合わせて理論的に計算し次の表7に示した分量で添加して、12時間攪拌し、イミド構造を導入したポリカーボネートを製造した。
【0046】
【表7】

【0047】
実施例1
次の表8に示したように、上記合成例9で製造したアミド酸構造の導入されたポリスルホン溶液を、厚さ調節の可能なコーティング機でコンマコーターを利用し、厚さ75μm、幅500mmで、80℃に温度調節されたドラムにコーティングして、自体支持フィルム状で剥がし出し、テンターに掛けて、120℃に加熱された熱風オーブン、180℃に加熱された熱風オーブン、250℃に加熱された熱風オーブンを順に通過し、ロールに巻取し、イミド基を導入したポリスルホンフィルムを製造した。
【0048】
実施例2
次の表8に示したように、上記合成例11で製造したアミド酸構造の導入されたポリスルホン溶液を、スプレーコーティングの可能なコーティング機で200μmのポリスルホンフィルム上に、厚さ3μm、幅500mmで、ピリジンと無水酢酸との混合溶液と1:1で混練して直ちに塗布し、連続して80℃に温度調節された熱風オーブン、120℃に加熱された熱風オーブン、180℃に加熱された熱風オーブンを順に通過し、ロールに巻取して、イミド基を導入した架橋ポリスルホンがコーティングされたポリスルホンフィルムを製造した。
【0049】
実施例3〜11
次の表8に示したように、上記合成例7、8、10、12、22、23、24、26、30で製造したアミド酸構造が側鎖に導入されたポリスルホン及びポリカーボネート溶液を、厚さ30〜200μmとなるようにバーコーター(bar-coater)を利用して均一な厚さでガラス板上にコーティングした後、90分間50℃の対流オーブンで乾燥した。乾燥後の自体支持フィルムをガラス板から剥離した後、フィルム支持枠に固定し、120℃で1時間、180℃で1時間、300℃で1分間熱処理して、イミド構造が側鎖に導入され架橋されたポリスルホンフィルムを製造した。
【0050】
実施例12
次の表8に示すように、上記合成例29で製造したアミド酸構造の導入されたポリカーボネート溶液を、厚さ調節の可能なコーティング機でコンマコーターを利用し、幅500mmで、80℃に温度調節されたドラムにコーティングして、自体支持フィルム状で剥がし出し、テンターに掛けて、120℃に加熱された熱風オーブン、180℃に加熱された熱風オーブン、250℃に加熱された熱風オーブンを順に通過し、ロールに巻取して、イミド基を導入した架橋ポリカーボネートフィルムを製造した。
【0051】
【表8】

【0052】
比較例1〜2
ポリスルホン(比較例1)とポリカーボネート(比較例2)をDMAcに溶かして、20重量%の固形分含量の溶液を製造し、溶液鋳型法で成形した後、前記実施例と同様に、厚さ100μmとなるようにバーコーターを利用し均一な厚さでガラス板上にコーティングした後、90分間50℃の対流オーブンで乾燥した。乾燥後の自体支持フィルムをガラス板から剥離した後、フィルム支持枠に固定し、100℃で1時間、160℃の対流オーブンで1時間熱処理して溶媒を除去し、フィルムを得た。
【0053】
実験例1:耐化学性の比較
上記実施例1〜12と比較例1〜2で製造したフィルムを、ジメチルアセトアミド(DMAc)、クロロホルム(CHCl3)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)にそれぞれ溶かして耐化学性を測定し、その結果を表9に示した。
【0054】
【表9】

【0055】
上記表9に示されたように、実施例1〜12に提示の方法によりイミド構造の硬化基が導入されたポリスルホンフィルムの場合は、比較例1〜2に提示のPSF、PC基材フィルムに比べ、耐化学性の改善効果があることが分かる。硬化基の導入量が増加するほど、耐化学性はさらに増大する傾向を示すことが確認できた。
【0056】
実験例2:熱的特性の比較
上記実施例5と比較例1で製造したフィルムを、示差走査熱量計(DSC)を通じて熱的特性を測定し、その結果を図3に示した。図3に示されたように、実施例に提示の方法によりイミド構造の硬化基が導入されたポリスルホンフィルムの場合は、比較例1に提示のPSF基材フィルムに比べ、熱的特性の改善効果があることが確認できた。また、イミド基を側鎖に導入して架橋構造を形成することにより、熱膨張係数(CTE)が著しく減少する特性を示した(表10)。
【0057】
【表10】

【0058】
実験例3:柔軟性の比較
前記実施例1〜12と比較例1〜2で製造したフィルムの柔軟性を測定するために、高さ0.5cm、長さ2cmで切り出し、フィルムの曲げ伸ばしを200回繰り返してクラックの形成程度を確認し、その結果を表11に示した。
【0059】
【表11】

【0060】
上記表11に示されたように、実施例1〜12に提示の方法によりイミド構造の硬化基が導入されたポリスルホンフィルムの柔軟性は、比較例1〜2に提示のポリスルホン、ポリカーボネート基材フィルムに等しいことが分かる。また、酸二無水物の選択により、本発明の目的範囲内で柔軟性を適宜調節することができることも確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】クロロメチル化されたポリスルホン(CMPSF3)の1H−NMRスペクトルである。
【図2】メチレンアミノベンジレートが側鎖に導入されたポリスルホン(PSFMAm4)の1H−NMRスペクトルである。
【図3】通常のポリスルホン(比較例1)と本発明に係るイミド側鎖基により架橋されたポリスルホン(実施例5)とのそれぞれに対する示差走査熱量分析の比較結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド酸側鎖基により架橋された、次の化学式1aで表されるものであることを特徴とする芳香族ポリエーテル系樹脂。

【請求項2】
イミド側鎖基により架橋された、次の化学式1bで表されるものであることを特徴とする芳香族ポリエーテル系樹脂。

【請求項3】
p/(p+q)の比が、0.01〜0.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族ポリエーテル系樹脂。
【請求項4】
i)芳香族ポリエーテル系樹脂の芳香族環部分にクロロメチル基(−CH2Cl)が導入されている、次の化学式2で表されるクロロメチル化された樹脂を製造する過程と、
ii)上記化学式2で表される樹脂のクロロメチル基部分に、Y−R1−NH2(Y=COOH)で表されるアミン化合物と反応させて、次の化学式3で表されるアミン側鎖基(−R1−NH2)含有樹脂を製造する過程と、
iii)上記化学式3で表されるアミン化された樹脂に酸二無水物を反応させて、アミド酸側鎖基により架橋された次の化学式1aで表されるアミド酸側鎖基含有樹脂を製造する過程と
iv)上記化学式1aで表されるアミド酸側鎖基含有樹脂を加熱し、イミド側鎖基により架橋された次の化学式1bで表されるイミド側鎖基含有樹脂を製造する過程とを含むことを特徴とする製造方法。





【請求項5】
前記アミン化合物は、3−アミノプロピオン酸、4−アミノブチリック酸、5−アミノペンタン酸及び6−アミノヘキサン酸の中から選択された脂肪族アミン化合物;3−アミノシクロブタンカルボン酸、3−アミノシクロペンタンカルボン酸、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノシクロヘプタンカルボン酸の中から選択された脂環族アミン化合物;4−アミノ安息香酸、4−アミノ−4−ビフェニルカルボン酸の中から選択された芳香族アミン化合物であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
次の化学式1aで表されるアミド酸側鎖基を含有する芳香族ポリエーテル系樹脂溶液をコーティング及び熱硬化して製造されることを特徴とするフィルム。

【請求項7】
次の化学式1bで表されるイミド側鎖基を含有する芳香族ポリエーテル系樹脂を含むことを特徴とするディスプレイ用基板。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−274241(P2006−274241A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35723(P2006−35723)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(502175837)韓國化學研究院 (4)
【Fターム(参考)】