説明

アミノ基を有する有機酸のアシル化のための連続的方法

本発明の対象は、アミノ基を有する有機酸のN−アシル化のための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素または炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも一種と、次式(II)
NH−A−X (II)
[式中、
Aは、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表し、
Xは、酸基またはそれの金属塩を表し、そして
は、水素、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基、または式−A−X(式中、Aも、Xも、互いに独立して、上記の意味を有する)の基を表す]
で表される少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸の少なくとも一種とを、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてアミドとする、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的規模で、マイクロ波照射下にアミノ基を有する有機酸をアシル化するための連続的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基を有する有機酸のアシル化生成物は、化学原料として多様な用途がある。例えば、低級カルボン酸でN−アシル化されたアミノ基を有する有機酸は、特に医薬品として、または医薬品の製造のための中間物質として重要である。長鎖脂肪酸でN−アシル化されたアミノ基を有する有機酸は両親媒性の特性を有し、そのためこれらは、洗濯洗剤及び洗浄剤中ならびに化粧料中の構成分としての多様な用途がある。更に、これらは、金属加工における助剤として、植物保護剤の調製の際に、ポリオレフィン用の耐電防止剤として、並びに石油の採掘及び加工の際にも首尾良く使用される。
【0003】
アミノ基を有する酸のN−アシル化生成物の工業的な製造では、通常は、カルボン酸の反応性誘導体、例えば酸無水物、酸塩化物またはエステルを、少なくとも一つのアミノ基を有する酸と反応させ、この際、大抵は、アルカリ性環境中で作業される。これは、一方では、高い製造コストを招き、他方では、分離しそして廃棄もしくは再生しなければならない望ましくない付随生成物、例えば塩または酸を生じさせる。それで、例えばショッテン−バオマン(Schotten−Baumann)合成では、酸基を有するアミンの多数のアミドが工業的な規模で製造されるが、少なくとも当モル量の塩化ナトリウムが生ずる。同様に実用化されているN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのカップリング試薬の使用は高価であり、そのカップリング試薬及びそれらの反応生成物の毒性の故に、仕事場の衛生のために特別な処置が必要であり、また同様に、廃棄すべき副生成物を多量に招く。カルボン酸と少なくとも一つの酸基を有するアミンとの努力する価値のある直接熱縮合は非常に高い温度及び長い反応時間を必要とし、しかも平凡な収量しか得られない(J.Am.Chem.Soc.,59(1937),401−402(非特許文献1))。加えて、この反応条件下において、酸、アミン、アミド及び反応水からなる反応混合物の腐食性が大きな工業的な問題を起こす。というのも、これらの混合物は、必要な高い反応温度下に金属製反応容器を強く腐食または溶かすからである。それによって生成物中に導入される金属含分は非常に望ましくない、というのも、これらは、色に関して生成物の特性を損なわせるばかりでなく、分解反応を触媒して、それによって収量を減少させるからである。後者の問題は部分的には高腐食耐性の材料から作られているかまたは相当するコーティングを備えた特別な反応容器によって対処できるが、それでもかからわず長い反応時間を必要とし、それ故色が損なわれた生成物を与える。更に、使用したカルボン酸と生成したアミドとの分離は、しばしば非常に手間がかかる。なぜならば、これらはしばしば非常に似た沸点を有する上に、共沸混合物を形成するからである。
【0004】
アミドの合成に対するより新しい方策は、マイクロ波によって支援してカルボン酸とアミンとを反応させてアミドとすることである。
【0005】
Vazquez−Tato,Synlett 1993,506(非特許文献2)は、カルボン酸及びアリール脂肪族アミンからアンモニウム塩を介してアミドを製造するための加熱源としてマイクロ波を使用することを開示している。この合成は、ミリモル規模で行われる。
【0006】
Gelensら,Tetrahedron Letters 2005,46(21),3751−3754(非特許文献3)は、マイクロ波放射線の助けを借りて合成された多数のアミドを開示している。この合成は10ml容積の容器中で行われる。酸基を有するアミンは使用されていない。
【0007】
しかし、このようなマイクロ波援助反応を実験室から工業的な規模へとスケールアップすること、それ故、工業的な用途に関心を引く空時収量をもって一年間当たりで数トン、例えば数十トン、数百トンまたは数千トンの生産に適したプラントの開発は、これまで実現できていない。これの原因は、一方では、反応物中へのマイクロ波の侵入深さが通常数ミリメータから数センチメータに制限されることであり、このことは、特にバッチプロセスで行われる反応ではそれを小さな容器に制限するかまたは攪拌された反応器中では非常に長い反応時間を招く。多量の物質量をマイクロ波で照射するのに望ましいマイクロ場の増強は、特に化学反応のスケールアップにこれまで好ましく使用されてきたマルチモード装置においては、その際発生する放電プロセス及びプラズマ形成によって狭く制限される。更に、マイクロ波炉中に入射されたマイクロ波がそれの壁及び反応物のところで多かれ少なかれ不制御に反射することによって引き起こされるマイクロ波場の不均一性は、マルチモード−マイクロ波装置において反応物の局所的な過熱を招くが、このような不均一性が規模拡大の際の問題を提起する。加えて、反応中にしばしば変化する反応混合物のマイクロ波吸収係数が、安全で再現性のある反応の実行に関して困難さを与える。
【0008】
Chenら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1990,807−809(非特許文献4)は、実験室用の連続式マイクロ波反応器を記載しており、この反応器では、反応物は、マイクロ波炉中に取り付けられたテフロンチューブコイルに通される。類似の実験室用連続式マイクロ波反応器が、Cablewskiら,J.Org.Chem.1994,59,3408−3412(非特許文献5)によって様々な化学反応の実施用に開示されている。しかし、両方のケースにおいて、マルチモードで操業されるマイクロ波は、上記の理由から、工業的な領域へのスケープアップを可能にしない。加えて、反応物のマイクロ波吸収に関しての上記の方法の効率は、マルチモード−マイクロ波アプリケータ中でアプリケータ空間中に多かれ少なかれ均一に分布され、チューブコイル上に集中しないマイクロ波エネルギーの故に、低い。入射されるマイクロ波出力の強い増大は、望ましくないプラズマ−放電を、またはいわゆる熱ランナウェイ効果(thermische Runaway−Effekt)を招く恐れがある。更に、ホットスポットと称される、アプリケータ空間内でのマイクロ波場の経時的に変化する空間的な不均一さが、大規模での安全でかつ再現可能な反応の実行を不可能にする。
【0009】
更に、一つの空間方向にだけ伝播しそして正確な寸法の導波管によって反応容器に集中される単一のマイクロ波モードで操業される、モノモード−もしくはシングルモード−マイクロ波アプリケータが知られている。確かに、これらの装置は、より高い局所的な場の強さを可能とするが、形状に対する要求の故に(例えば、電場の強さは、それの波頂で最も高くなり、そしてノードのところで0に近くなる)、従来実験室規模の小さな反応容積(≦50ml)に制限されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,59(1937),401−402
【非特許文献2】Vazquez−Tato,Synlett 1993,506
【非特許文献3】Gelensら,Tetrahedron Letters 2005,46(21),3751−3754
【非特許文献4】Chenら,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1990,807−809
【非特許文献5】Cablewskiら,J.Org.Chem.1994,59,3408−3412
【非特許文献6】K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降
【非特許文献7】D.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005
【非特許文献8】“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、カルボン酸と、アミノ基を有する有機酸とを、工業的な規模でもマイクロ波照射下にアミドへと添加できる、アミノ基を有する有機酸のN−アシル化生成物を製造するための方法が求められていた。この際、できるだけ高い、すなわち定量的なまでの転化率及び収量が達成されるべきである。更に、該方法は、できるだけエネルギー節約型のアミド製造を可能にするべきであり、すなわち使用されるマイクロ波の出力は、反応物によってできるだけ定量的に吸収されるべきであり、それ故該方法は、高いエネルギー効率を供するべきである。この際、副生成物は全く生じないかまたは副次的な量でのみ生ずるべきである。更にアミドは、できるだけ少ない触媒活性金属イオン含有量、特に亜族金属、例えば鉄の含有量及び低い個有色を有するべきである。加えて、該方法は、安全かつ再現可能な反応の実行を保証するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中で、マイクロ波照射を用いて短時間加熱するだけで、連続的な方法でカルボン酸を、アミノ基を有する有機酸と直接反応させることによって、工業的に重要な量でアミノ基を有する有機酸のN−アシル化生成物を製造できることが見出された。この際、マイクロ波アプリケータ中に入射されるマイクロ波エネルギーは、実際上定量的に反応物によって吸収される。加えて、本発明の方法は、プロセス実行の間の高い安全性を有し、かつ調節される反応条件の高い再現性を供する。本発明の方法に従い製造される酸基を有する有機酸のN−アシル化生成物は、慣用の製造方法と比較して、追加的なプロセスステップ無しでは達成できない高い純度及び低い固有色を示す。
【0013】
本発明の対象は、アミノ基を有する有機酸のN−アシル化のための連続的な方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素または炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも一種と、次式(II)
NH−A−X (II)
[式中、
Aは、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表し、
Xは、酸基またはそれの金属塩を表し、そして
は、水素、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基、または式−A−Xの基を表し、ここでA並びにXは、互いに独立して、上記の意味を有する]
で表される少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸の少なくとも一種とを、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてアミドとする、方法である。
【0014】
式Iのカルボン酸としては、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基に少なくとも一つのカルボキシル基を有する化合物全てが並びにギ酸が適している。炭化水素残基は脂肪族または芳香族であることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の好ましい実施形態では、炭化水素残基Rは、脂肪族の置換されていないアルキル基またはアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、脂肪族炭化水素残基は、一つまたはそれ以上の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の置換基を有する。適当な置換基は、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、ポリ(C〜Cアルコキシ)基、ポリ(C〜Cアルコキシ)アルキル基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基、及び/または炭素原子数5〜20のアリール基、例えばフェニル基であるが、これらの置換基が、反応条件下に安定しており、そして副反応、例えば脱離反応などをしないことが条件である。上記のC〜C20アリール基は、それらが置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、ニトリル基、及び/またはニトロ基を有することができる。しかし、前記脂肪族炭化水素残基は、最大でも、それが原子価数を持つだけの置換基を有する。特別な実施形態の一つでは、前記脂肪族炭化水素残基Rは、一つまたはそれ以上の更なるカルボキシル基を有する。それで、本発明の方法は、ポリカルボン酸、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸による、アミノ基を有する有機酸のN−アシル化にも同様に適している。この際、ポリカルボン酸(I)のカルボキシル基は、完全にまたは部分的にのみアミド化することができる。アミド化度は、例えば、反応混合物中のカルボン酸(I)とアミノ基を有する有機酸(II)との理論化学量によって調節することができる。更に、好ましくは、脂肪族炭化水素残基Rはアミノ基を持たない。
【0016】
本発明において特に好ましいものは、炭素原子数1〜30、特に炭素原子数2〜24、例えば炭素原子数3〜20の脂肪族炭化水素残基を有するカルボン酸(I)である。これらは、天然または合成由来のものであることができる。前記脂肪族炭化水素残基は、ヘテロ原子、例えば酸素、窒素、リン及び/または硫黄を含むこともできるが、好ましくは炭素原子3個当たりヘテロ原子数は1以下である。前記脂肪族炭化水素残基は、線状、分枝状または環状であることができる。カルボキシル基は、第一、第二または第三炭素原子に結合することができる。好ましくは、これは第一炭素原子に結合する。炭化水素残基は、飽和であるか、炭化水素残基Rが少なくとも二つの炭素原子を含む場合には、不飽和であることができる。不飽和炭化水素残基は、好ましくは一つまたはそれ以上のC=C二重結合を含み、特に好ましくは一つ、二つまたは三つのC=C二重結合を含む。それで、本発明の方法は、ポリ不飽和カルボン酸のアミドの製造に特に有利であることがわかった。というのも、不飽和カルボン酸の二重結合は、本発明の方法の反応条件下では攻撃されないからである。好ましい環状脂肪族炭化水素残基は、四つ、五つ、六つ、七つ、八つまたはそれ以上の環原子を有する少なくとも一つの環を有する。
【0017】
好ましい実施形態の一つでは、Rは、炭素原子数1、2、3または4の飽和アルキル基を表す。これは線状または分枝状であることができる。カルボキシル基は、第一もしくは第二炭素原子にまたはピバリン酸のような場合には第三炭素原子に結合することができる。特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル基は、置換されていないアルキル基である。更に別の特に好ましい実施形態の一つでは、アルキル基は、一つから九つ、好ましくは一つから五つ、例えば二つ、三つまたは四つの更なる置換基を有する。好ましい更なる置換基は、カルボキシル基、並びに場合により置換されたC〜C20アリール基である。
【0018】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、カルボン酸(I)は、エチレン性不飽和カルボン酸である。この際、Rは、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す。ここで、エチレン性不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基に対して共役したC=C二重結合を有するカルボン酸と理解される。アルケニル基は、線状であるか、または少なくとも三つの炭素原子を含む場合には分枝状であることができる。好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基は、置換されていないアルケニル基である。特に好ましくは、Rは、炭素原子数2または3のアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基は、一つまたはそれ以上、例えば二つ、三つまたはそれ以上の更なる置換基を有する。しかし、アルケニル基は、それが原子価を持つだけの数の置換基を有する。特に好ましい実施形態の一つでは、アルケニル基Rは更なる置換基として、カルボキシル基、または場合により置換されたC〜C20アリール基を有する。それで、本発明の方法は、エチレン性不飽和ジカルボン酸の反応にも同様に好適である。
【0019】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、カルボン酸(I)は脂肪酸である。この場合、Rは、炭素原子数5〜50の場合により置換された脂肪族炭化水素残基を表す。この際、炭素原子数6〜30、特に炭素原子数7〜26、例えば炭素原子数8〜22の脂肪族炭化水素残基を有する脂肪酸が特に好ましい。特に好ましい実施形態の一つでは、脂肪酸の炭化水素残基は、置換されていないアルキル基またはアルケニル基である。更に別の好ましい実施形態の一つでは、脂肪酸の炭化水素残基は、一つまたはそれ以上の、例えば二つ、三つ、四つまたはそれ以上の更なる置換基を有する。特別な実施態様の一つでは、脂肪酸の炭化水素残基は一つ、二つ、三つ、四つまたはそれ以上の更なるカルボキシル基を有する。
【0020】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、炭化水素残基Rは芳香族基である。ここで芳香族カルボン酸(I)とは、芳香族系に結合した少なくとも一つのカルボキシル基を有する全ての化合物と解される。芳香族系とは、(4n+2)π電子を有する環状の全共役(durchkonjugierte)系と解され、ここでnは自然数であり、好ましくは1、2、3、4または5である。前記芳香族系は、単環式または多環式、例えば二環式または三環式であることができる。前記芳香族系は好ましくは炭素原子から形成される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、これは、炭素原子の他に、一つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素及び/または硫黄を含む。このような芳香族系の例は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、インドール、フラン、ピリジン、ピロール、チオフェン及びチアゾールである。芳香族系は、カルボキシル基の他に、一つまたはそれ以上の、例えば一つ、二つ、三つまたはそれ以上の同一かまたは異なる更なる置換基を有することができる。適当な更なる置換基は、例えばハロゲン原子、アルキルもしくはアルケニル基、並びにヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ポリ(アルコキシ)基、アミド基、シアノ基及び/またはニトリル基である。これらの置換基は、芳香族系の任意の位置に結合することができる。しかし、アリール基は、最大でも、それらが原子価を持つだけの数の置換基を有する。好ましくは、アリール基はアミノ基を持たない。
【0021】
特別な実施形態の一つでは、芳香族カルボン酸(I)の前記アリール基は更に別のカルボキシル基を有する。それで、本発明の方法は、例えば二つまたはそれ以上のカルボン酸基を有する芳香族カルボン酸の反応にも同様に適している。カルボン酸基は、本発明の方法に従い、完全にまたは部分的にのみアミドに転化することができる。アミド化度は、例えば反応混合物中のカルボン酸と、アミノ基を有する有機酸との理論化学量によって調節することができる。
【0022】
更に、本発明の方法は、アルキルアリールカルボン酸アミド、例えばアルキルフェニルカルボン酸アミドの製造に特に適している。この際、本発明方法に従い、カルボン酸基を有するアリール基が追加的に少なくとも一つのアルキル基またはアルキレン基を有する芳香族カルボン酸(I)を、アミノ基を有する有機酸(II)と反応させる。この際、該方法は、アリール基が炭素原子数1〜20、特に1〜12、例えば1〜4のアルキル基を少なくとも一つ有するアルキル安息香酸アミドの製造に特に有利である。
更に、本発明の方法は、アリール基Rが、一つまたはそれ以上の、例えば二つまたは三つのヒドロキシル基及び/またはヒドロキシアルキル基を有する芳香族カルボン酸アミドの製造に特に適している。この際、相当するカルボン酸(I)と、特に多くても当モル量の式(II)のアミノ基を有する有機酸との反応において、カルボキシル基のアミド化が選択的に起こり、フェノール性OH基のアミノリシスは起こらない。
本発明の方法に従いアミド化するために好適なカルボン酸(I)は、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2,2−ジメチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸及びメトキシケイ皮酸、コハク酸、ブタンテトラカルボン酸、フェニル酢酸、(2−ブロモフェニル)酢酸、(メトキシフェニル)酢酸、(ジメトキシフェニル)酢酸、2−フェニルプロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4−ヒドロキシフェノキシ酢酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ネオウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、テトラデカン酸、12−メチルトリデカン酸、ペンタデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、12−メチルテトラデカン酸、ヘキサデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イソオクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸及びテトラコサン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヘキサデカジエン酸、デルタ−9−cis−ヘプタデセン酸、オレイン酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、ゴンド酸、イコサジエン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸及びテトラコセン酸、ドデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸、及び不飽和脂肪酸から製造可能なダイマー脂肪酸、並びにこれらの混合物である。更に、天然油脂から、例えば綿実油、ココナッツ油、ピーナッツ油、サフラワー油、マイズ油、パーム核油、ナタネ油、オリーブ油、カラシ油、ダイズ油、ヒマワリ油並びに獣脂油、骨油、及び魚油から得られるカルボン酸混合物も適している。本発明の方法のためのカルボン酸またはカルボン酸混合物としては、トール油脂肪酸並びに樹脂酸及びナフテン酸も同様に適している。本発明方法に従うアミド化に適した更に別のカルボン酸(I)は、例えば安息香酸、フタル酸、イソフタル酸; ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸の各種異性体、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びメリト酸; メトキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシメトキシ安息香酸、ヒドロキシジメトキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシピリジンカルボン酸、ヒドロキシメチルピリジンカルボン酸、及びヒドロキシキノリンカルボン酸の各種異性体; 並びにo−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸及び3,4−ジメチル安息香酸である。様々なアリール−及び/またはアルキルアリールカルボン酸の混合物も同様に適している。
【0023】
上記の少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸(II)は、場合により置換された炭化水素残基Aを介してアミノ基の窒素に結合した少なくとも一つの酸基Xを有する。酸基Xとは、少なくとも一つの酸性プロトンを解裂できる官能基と解される。本発明に好ましい酸基Xは、カルボン酸、並びに硫黄及びリンの有機酸、例えばスルホン酸及びホスホン酸である。
【0024】
炭化水素残基Aは、好ましくは脂肪族または芳香族基を表すが、Aは、アシル基、またはアシル基を介して窒素に結合した炭化水素残基を表さないことが条件である。
【0025】
好ましい実施形態の一つでは、Aは、炭素原子数1〜12、特に好ましくは2〜6の脂肪族基である。これは線状、環状及び/または分枝状であることができる。好ましくは飽和である。Aは、更なる置換基を有してもよい。適当な更なる置換基は、例えばカルボン酸アミド、グアニジン基、場合により置換されたC〜C12アリール基、例えばインドール及びイミダゾール、並びに酸基、例えばカルボン酸及び/またはホスホン酸基である。基Aはヒドロキシル基を有することもでき、ただしこの場合の反応は、このOH基のアシル化を避けるために、多くとも当モル割合のカルボン酸(I)と行わなければならない。特に好ましい実施形態の一つでは、脂肪族基Aは、窒素原子に対しα位またはβ位に酸基Xを有する。本発明の方法は、Aが炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、かつ酸基Xが窒素原子に対しα位またはβ位の炭素原子上に存在するアミノ基を有する脂肪族酸のアシル化、特にα−アミノカルボン酸、β−アミノスルホン酸及びアミノメチレンホスホン酸のアシル化のために特に有利であることが分かった。
【0026】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Aは、炭素原子数5〜12の芳香族炭化水素残基を表す。ここで、芳香族系とは、(4n+2)π電子を有する環状の全共役系と解され、nは自然数、好ましくは1、2、3、4または5である。芳香族系は、単環式または多環式、例えば二環式または三環式であることができ、好ましくは単環式である。芳香族基Aは、一つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば酸素、窒素及び/または硫黄を含むことができる。少なくとも一つのアミノ基を有する芳香族酸(II)のアミノ及び酸基は、芳香族系にオルト位、メタ位、パラ位に位置することができ、多核の芳香族系の場合には異なる環上に存在することができる。適当な芳香族系Aの例は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、インドール、フラン、ピリジン、ピロール、チオフェン及びチアゾールである。更に、芳香族系Aは、カルボキシル−及びアミノ基の他に、一つまたはそれ以上の例えば一つ、二つ、三つまたはそれ以上の同一かまたは異なる更なる置換基を有することができる。適当な更なる置換基は、例えばハロゲン原子、アルキルもしくはアルケニル基並びにヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、ポリ(アルコキシ)基、アミド基、シアノ基及び/またはニトリル基である。これらの置換基は、芳香族系の任意の位置に結合することができる。しかし、アリール基は、多くとも、それらが原子価を有するだけの数の置換基を有する。
【0027】
好ましい実施形態の一つでは、Rは脂肪族基を表す。これは、好ましくは1〜24個、特に好ましくは2〜18個、特に3〜6個の炭素原子を有する。この脂肪族基は、線状、分枝状または環状であることができる。これは更に飽和または不飽和であることができ、好ましくは飽和である。この脂肪族基は、置換基、例えばハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜Cアルコキシアルキル基、シアノ基、ニトリル基、ニトロ基及び/またはC〜C20アリール基、例えばフェニル基を有することができる。前記C〜C20アリール基は、それらが場合によりハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基、C〜Cアルコキシ基、例えばメトキシ基、エステル基、アミド基、シアノ基、及び/またはニトリル基で置換されていてもよい。特に好ましい脂肪族基Rは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert.−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びメチルフェニルであり、就中好ましいものは、メチル、エチル、プロピル及びブチルである。
【0028】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、Rは、場合により置換されたC〜C12アリール基または環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基を表す。好ましいヘテロ原子は酸素、窒素及び硫黄である。特別な実施形態の一つでは、Rは、式−A−Xの更なる基を表し、この際、Aも、Xも、互いに独立して上記の意味を有する。
【0029】
炭化水素残基A及び/またはRが更なる酸基、例えばカルボキシル基及び/またはホスホン酸基を有する場合は、少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸(II)のこの際少なくとも部分的に生ずる重縮合に対する処置を講ずるべきである。
【0030】
特に好ましい実施形態の一つでは、Rは水素を表す。
【0031】
本発明において適した少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸(II)の例は、アミノ酸類、例えばグリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、セリン、チロシン、3−アミノプロピオン酸(β−アラニン)、3−アミノ酪酸、2−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、N−メチルタウリン、2−(アミノメチル)ホスホン酸、1−アミノエチルホスホン酸、1−アミノ−2−メチルプロピル)ホスホン酸、(1−アミノ−1−ホスホノ−オクチル)−ホスホン酸である。
【0032】
本発明の方法では、カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)とは、任意の比率で互いに反応させることができる。好ましくは、カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)との反応は、それぞれ(I)中のカルボキシル基及び(II)中のアミノ基のモル当量を基準にして、100:1〜1:10、好ましくは10:1〜1:2、特に3:1〜1:1.2のモル比で行われる。特別な実施形態の一つでは、カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)とは、(I)中のカルボキシル基及び(II)中のアミノ基を基準にして当モル量で使用される。
【0033】
多くの場合に、カルボン酸(I)を過剰に使用して、すなわちカルボキシル基とアミノ基とを少なくとも1.01:1.00、特に50:1〜1.02:1、例えば10:1〜1.1:1のモル比で作業することが有利であることが判明した。この際、アミノ基は実質的に定量的にアミドに転化される。該方法は、使用するカルボン酸が易揮発性の場合に特に有利である。ここで、易揮発性とは、カルボン酸(I)が、常圧下に好ましくは200℃未満の沸点、例えば160℃未満の沸点を有し、それ故蒸留することによってアミドから分離できることである。
【0034】
本発明によるアミドの製造は、カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)とを反応させて、アンモニウム塩とし、その後この塩を、モノモード−マイクロ波アプリケータ内でマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波で照射することによって行われる。最も簡単な場合には、アンモニウム塩への転化は、カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)とを、場合によっては溶剤の存在下に混合することによって首尾良くいく。
【0035】
また、多くの場合に、少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸(II)を、反応の前に金属塩に転化するか、またはこれを金属塩の形でカルボン酸(I)との反応に使用することが同様に有利であることが分かった。同様に、(I)と(II)との混合物を、酸基Xの濃度に基づいて実質的の当モル量の塩基と混合することができる。このために好ましい塩基は、特に無機塩基、例えば金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩または金属アルコキシドである。この際特に好ましいものは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩またはアルコキシド、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムtert−ブタノレート、カリウムtert−ブタノレート、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムである。好ましい実施形態の一つでは、アンモニウム塩への転化は、例えば低級アルコール、例えばメタノール、エタノールもしくはプロパノール中のまたは水中の然るべき塩基の溶液を反応体または反応混合物に加えることによって行われる。この作業方法は、強酸基Xを有するアミン(II)、例えばスルホン基またはホスホン酸基を有するアミン(II)のアシル化に特に有利であることが分かった。ここで、強酸とは、特に3.5未満、就中3.0未満のpKs値を有する酸と解される。
【0036】
好ましい実施形態の一つでは、反応を加速するためまたは反応をより完全にするために、少なくとも一種の触媒の存在下に作業される。この際、好ましくは、塩基性触媒または複数種のこのような触媒の混合物の存在下に作業する。塩基性触媒としては、本発明の枠内において、カルボン酸アミドへのカルボン酸のアミンによるアミド化を加速するのに適した全ての塩基性触媒が使用される。これらの物質は、固形の形で、例えば分散物もしくは固定床として、または溶液として、例えば水溶液もしくは好ましくはアルコール性溶液として使用することができる。適当な触媒の例は、無機塩基及び有機塩基、例えば金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩、金属ケイ酸塩または金属アルコキシドである。好ましい実施形態の一つでは、塩基性触媒は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩またはアルコキシドの群から選択される。この際、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムtert−ブタノレート、カリウムtert−ブタノレート、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが就中好ましい。シアニドイオンも触媒として適している。更に、強塩基性イオン交換体も触媒として適している。この際、触媒の使用量は、選択された反応条件下に触媒の活性及び安定性に依存し、そして各々の反応に適合される。この際、触媒の使用量は幅広い範囲で変えることができる。多くの場合に、使用するアミン1モル当たり0.1〜2.0モルの塩基、例えば0.2〜1.0モルの塩基を用いて作業することが有利であることが判明した。特に好ましくは、上述の反応加速作用を有する化合物の触媒量が使用され、好ましくは、カルボン酸(I)とアミノ基を有する酸(II)の使用量を基準にして、0.001〜10重量%の範囲、特に好ましくは0.01〜5重量%、例えば0.02〜2重量%の範囲で使用される。
【0037】
好ましくは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波発生器に接続された中空導体内に存在する、ほぼマイクロ波に対し透明な反応管中で行われる。好ましくは、反応管は、中空導体の中央対称軸と軸状に整列される。
【0038】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体は、好ましくは空洞共振器として構成される。更に、好ましくは、中空導体に吸収されないマイクロ波はそれの端部で反射される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中に定常波が生ずるように寸法決めされる。反射タイプの共振器としてマイクロ波アプリケータを構成することによって、発生器から供給される同じ出力での電場強度の局所的強化及び高められたエネルギー利用が達成される。
【0039】
空洞共振器は、好ましくはE01n−モードで稼働され、ここでnは整数を表し、共振器の中央対称軸に沿うマイクロ波の電場最大点の数を示す。この稼働の際、場は、空洞共振器の中央対称軸の方向に方向づけされる。これは、中央対称軸の範囲おいて最大を有し、そして外套面に向かうにつれて0の値まで減少する。この場の形態は、中央対称軸の周りに回転対称的に存在する。nが整数である長さを有する空洞共振器を使用することによって、定常波の形成が可能となる。反応管中を流れる反応物の所望の流速、必要な温度、及び共振器中での必要な滞留時間に応じて、共振器の長さが、使用されるマイクロ波放射線の波長に相対して選択される。好ましくは、nは1〜200、特に好ましくは2〜100、特に3〜50、就中4〜20の整数、例えば3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0040】
空洞共振器のE01n−モードは、英語ではTM01n−モードとも称される。例えば、K.Lange,K.H.Loecherer,Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”,第2巻,K21頁以降(非特許文献6)を参照されたい。
【0041】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導体中へのマイクロ波エネルギーの入射は、適当な寸法のホールまたはスリットを介して行うことができる。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた中空導体中に存在する反応管中で行われる。この方法に特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器、マイクロ波場を中空共振器にカップリングするためのカップリングデバイス、及び共振器に反応管を通すための二つの相対する末端壁上のそれぞれの一つの開口から構成される。空洞共振器中へのマイクロ波のカップリングは、好ましくは、空洞共振器中に突出するカップリングピンを介して行われる。好ましくは、カップリングピンは、カップリングアンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管として構成される。特に好ましい実施形態の一つでは、このカップリングピンは、末端開口部の一つを通って空洞共振器中に突出する。特に好ましくは、反応管は、同軸変換器の内部導体管に接続し、そして特にはそれの空洞を通って空洞共振器中に通される。好ましくは、反応管は、空洞共振器の中央対称軸と軸状に整列される。このためには、空洞共振器は、好ましくは、反応管を通すために相対する二つの末端壁上にそれぞれ一つの中央開口を有する。
【0042】
カップリングピン中へのまたはカップリングアンテナとして機能する内部導体管中へのマイクロ波の伝送は、例えば、同軸線路を用いて行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波場は中空導体を介して共振器に伝送され、この際、空洞共振器から突出するカップリングピンの末端が、中空導体の壁中に存在する開口を介して中空導体中へ通じており、そして中空導体からマイクロ波エネルギーが取り出されてそして共振器中にカップリングされる。
【0043】
具体的な実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を有するE01n円形中空導体中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われる。この際、反応管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞を通して空洞共振器中に通される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送(axialer Einspeisung)を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の軸状伝送を備えたE01n空洞共振器中に通したマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、ここで空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換(koaxialem Uebergang)を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対して透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大が生ずるように調節される。更に別の好ましい実施形態の一つでは、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸変換を備えた円筒状E01n空洞共振器中に軸対称的に存在するマイクロ波に対し透明な反応管中で行われ、この際、空洞共振器の長さは、マイクロ波のn=2またはそれ以上の場の最大を有する定常波が生ずるように調節される。
【0044】
マイクロ波発生器、例えばマグネトロン、クライストロン及びジャイロトロンは当業者には既知である。
【0045】
本発明の方法の実行に使用される反応管は、好ましくは、マイクロ波に対しほぼ透明で、高融点の材料から作られる。特に好ましくは、非金属製の反応管が使用される。ここで、マイクロ波に対しほぼ透明とは、できるだけ少ないマイクロ波エネルギーを吸収しそしてこれを熱に変換する原材料と解される。マイクロ波エネルギーを吸収してこれを熱に変える物質の能力の目安としては、しばしば、誘電損失率tanδ=ε’’/ε’が用いられる。誘電損失率tanδは、誘電損失ε’’と誘電率ε’との比率と定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えばD.Bogdal,Microwave−assisted Organic Synthesis,Elsevier 2005(非特許文献7)に記載されている。本発明において適した反応管には、2.45GHz及び25℃で測定して、0.01未満のtanδ値、特に0.005未満、特に0.001未満のtanδ値を有する材料が好ましい。マイクロ波に対し透明でかつ温度安定性の好ましい材料としては、先ず第一には、鉱物ベースの原材料、例えば石英、酸化アルミニウム、サファイア、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素及び類似物が考慮される。温度安定性のプラスチック、例えば特にフルオロポリマー、例えばテフロン、及びエンジニアリングプラスチック、例えばポリプロピレン、またはポリアリールエーテルケトン、例えばガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)も原材料として適している。反応中の温度条件に耐えるためには、特に上記のプラスチックでコーティングされた材料、例えば石英または酸化アルミニウムが反応器材料として有用であることが判明した。
【0046】
本発明の方法に特に適した反応管は、1ミリメータ〜約50cm、特に2mm〜35cm、就中5mm〜15cm、例えば10mm〜7cmの内径を有する。ここで反応管とは、直径に対する長さの比率が5超、好ましくは10〜100,000、特に好ましくは20〜10,000、例えば30〜1,000の容器と解される。ここで、反応管の長さとは、マイクロ波照射が行われるところの反応管の長さと解される。反応管中には、攪拌バフル及び/または他の混合要素を設置することができる。
【0047】
本発明の方法に特に適したE01空洞共振器は、好ましくは、使用したマイクロ波放射線の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。好ましくは、空洞共振器の直径は、使用したマイクロ波放射線の半分の波長の1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、特に2.1〜2.6倍である。好ましくは、E01空洞共振器は丸い横断面を有し、これはE01円形中空導体とも称される。特に好ましくは、これは筒状の形状を有し、特に円筒状の形状を有する。
【0048】
該反応管は、通常は、入口に計量ポンプ及びマノメーター、及び出口に圧力保持デバイス及び熱交換器を備える。それ故、反応は、非常に幅の広い圧力及び温度範囲で可能である。
【0049】
カルボン酸(I)、少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸(II)またはそれの塩、場合により及び触媒からなる反応混合物の調製は、連続式、断続式または半バッチ式プロセスで行うことができる。例えば、反応混合物の調製は、上流の(半)バッチプロセスで、例えば攪拌容器中で行うことができる。好ましい実施形態の一つでは、原料としてのカルボン酸(I)、及びアミノ基を有する有機酸(I)またはそれの塩、場合より及び触媒を、互いに独立して場合により溶剤で希釈して、反応管中に入れる少し前になって初めて混合する。触媒はそのままでまたは原料のうちの一つとの混合物として反応混合物に加えることができる。例えば、カルボン酸、アミノ基を有する有機酸及び触媒の混合を混合域中で行い、それから反応混合物を反応管中に送ることが有利であることが判明した。更に、好ましくは、原料及び触媒は液体の形で本発明方法に供給される。このためには高融点及び/または高粘度の原料は、例えば溶融状態で及び/または溶剤を混合して、例えば溶液、分散液またはエマルションとして使用することができる。触媒は、反応管に入れる前に、原料の一つまたは原料混合物に加えられる。不均一系も本発明の方法に従い反応させることができ、この場合、反応物を輸送するための然るべき工業的な装置が必要である。
【0050】
反応混合物は、内部導体管中に通した末端、またはその反対側の末端から反応管中に供給することができる。そのため、反応混合物は、マイクロ波アプリケータ中を、マイクロ波の伝播方向に対して並行にまたは逆並行に通すことができる。
【0051】
管の横断面、照射域の長さ(以下、反応物がマイクロ波放射線に曝される反応管の長さと解される)、流速、空洞共振器の形状、及び入射されるマイクロ波出力を変えることによって、最大の反応温度が可能な限り速く達成されるようにそして最大温度での滞留時間が短くなって、副反応もしくは二次反応の発生が出来るだけ少なくなるように、反応条件が調節することが好ましい。反応物は、反応をより完全にするために、場合によっては中間冷却後に、反応管に数回通すことができる。ゆっくりと進行する反応の場合には、反応管を出た後の反応生成物を、なおも或る一定の時間、反応温度に維持することがしばしば有利であることが判明した。反応生成物を、反応管から出た直後に、例えば外套冷却または放圧によって冷却すると多くの場合に有利であると判明した。また、触媒を、反応管から出た後に直ぐに失活することが有利であると判明した。これは、例えば、中和によって、または不均一系触媒反応の場合には濾過によって行うことができる。
【0052】
好ましくは、マイクロ波照射によって生ずる温度上昇は、例えば、マイクロ波強度、流速の調節及び/または反応管の冷却、例えば窒素流による冷却によって最大500℃まで制限する。特に、150℃から最大400℃、特に170℃から最大300℃の温度、例えば180℃から270℃の温度で反応を行うことが有利であると判明した。
【0053】
マイクロ波照射の期間は、様々なファクター、例えば反応管の形状、入射されるマイクロ波エネルギー、特定の反応、及び所望とする転化率などに依存する。通常は、マイクロ波照射は、30分間未満の期間、好ましくは0.01秒間〜15分間、特に好ましくは0.1秒間〜10分間、特に1秒間〜5分間、例えば5秒間〜2分間の期間にわたり行われる。マイクロ波放射線の強度(出力)は、反応物が、空洞共振器から出る際に所望の最大温度を有するように調節される。好ましい実施形態の一つでは、反応生成物は、マイクロ波照射が完了した後直接、できるだけ早く120℃未満、好ましくは100℃未満、特に60℃未満の温度に冷却する。
【0054】
好ましくは、反応は、1bar(大気圧)〜500bar、特に好ましくは1.5bar〜200bar、特に3bar〜150bar、就中10bar〜100bar、例えば15〜50barの圧力で行われる。高められた圧力下での作業が有利であると判明し、この際、原料、生成物、場合により存在する溶剤、及び/または反応中に生成する反応水の沸点(常圧下)以上で作業される。特に好ましくは、圧力は、反応混合物がマイクロ波照射中に液状の状態に留まり、沸騰しない高さに調節される。
【0055】
副反応を避けて出来るだけ純粋な生成物を製造するためには、原料及び生成物を不活性保護ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムの存在下に扱うことが有利であると判明した。
【0056】
たとえ原料としてのカルボン酸(I)及びアミノ基を有する酸(II)がしばしば扱いやすい反応混合物を与えるとしても、例えば反応媒体の粘度を低下させ及び/または反応混合物を(特にこれが不均一系である場合に)流動性にするために、溶剤の存在下に作業することが多くの場合に有利であると判明した。そのためには、原則的に、使用する反応条件の下に不活性でありかつ原料または生ずる生成物と反応しないものであれば、全ての溶剤を使用できる。適当な溶剤の選択にあたっての重要なファクターの一つは、一方では溶解特性をそして他方ではマイクロ波放射線との相互作用の程度を決定するそれの極性である。適当な溶剤を選択するにあたっての特に重要なファクターの一つは、それの誘電損失ε’’である。誘電損失ε’’は、マイクロ波放射線と物質との相互作用の際に熱に変換されるマイクロ波放射線の割合を示す。最後に挙げた値は、本発明の方法を実施するための溶剤の適性にとって特に重要な規準であることが判明した。
【0057】
できるだけ少ないマイクロ波吸収を示し、それゆえ反応系の加温にわずかな貢献しかしない溶剤中で作業することが特に有利であると分かった。本発明の方法に好ましい溶剤は、室温及び2450MHzで測定して、10未満、好ましくは1未満、例えば0.5未満の誘電損失ε’’を有する。様々な溶剤の誘電損失に関する一覧は、例えば、“Microwave Synthesis”von B.L.Hayes,CEM Publishing 2002(非特許文献8)に記載されている。本発明の方法には、特に、10未満のε’’値を有する溶剤、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはアセトン、特に1未満のε’’値を有する溶剤が適している。1未満のε’’値を有する特に好ましい溶剤の例は、芳香族及び/または脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、ヘキサン、シクロヘキサン、デカン、ペンタデカン、デカリン並びに商業的な炭化水素混合物、例えばベンジン留分、ケロシン、ソルベントナフサ、Shellsol(登録商標)AB、Solvesso(登録商標)150、Solvesso(登録商標)200、Exxsol(登録商標)、Isopar(登録商標)及びShellsol(登録商標)タイプである。好ましくは10未満、特に1未満のε’’値を有する溶剤混合物も、本発明方法の実行に同様に好ましい。
【0058】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、本発明の方法は、より高いε’’値、例えば5またはそれ以上のε’’値、特に10またはそれ以上のε’’値を有する溶剤中で行われる。これは、加えて、しばしば、アミノ基を有する酸(II)に対して優れた溶解挙動を示す。更に、この実施形態は、それ自体が、すなわち溶剤及び/または希釈剤の存在無しで、非常に低いマイクロ波吸収しか示さない反応混合物の反応において特に有効であると判明した。例えば、この実施形態は、10未満、好ましくは1未満の誘電損失ε’’を有する反応混合物において非常に有利であると判明した。異なるε’’値を有する溶剤の混合物も、本発明反応に特に有利であることが判明した。特に好ましい溶剤は、炭素原子数1〜5の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert.−ブタノール、ペンタノールの各種異性体、エチレングリコール、グリセリン並びに水である。しかし、溶剤の添加によってしばしば観察される加速された反応混合物の加熱は、最大温度を維持するための措置を必要とする。
【0059】
溶剤の存在下に作業する場合には、反応混合物中でのそれの割合は好ましくは2〜95重量%、特に5〜90重量%、就中10〜75重量%、例えば30〜60重量%である。特に好ましくは、反応は、極性溶剤、例えば炭素原子数1〜5の低級アルコールまたは水の存在下に行われる。
【0060】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物に、それに不溶性のマイクロ波を強く吸収する物質を加える。これは、反応混合物の強い局所的な加熱を招き、そしてその結果、反応を更に加速させる。一つの適したこのような熱収集体は例えばグラファイトである。
【0061】
約1cm〜1mの波長及び約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁放射線がマイクロ波と称される。原則的にこの周波数範囲が本発明方法に適している。好ましくは、本発明方法には、工業用、学術用、医学用、家庭用または類似の用途に許可されている周波数を有するマイクロ波放射線、例えば915MHz、2.45GHz、5.8GHzまたは24.12GHzの周波数を有するマイクロ波放射線が使用される。
【0062】
本発明方法の実施のために空洞共振器中に入射するべきマイクロ波出力は、特に、目的とする反応温度に、加えて反応管の形状、それ故、反応容積に、並びに加熱管中を通る際の反応物の流速に依存する。これは、通常は、200W〜数100kW、特に500W〜100kW、例えば1kW〜70kWである。これは、一つまたは複数のマイクロ波発生器によって発生させることができる。
【0063】
好ましい実施形態の一つでは、反応は耐圧性で化学的に不活性な管中で行われ、この際、生ずる反応水、並びに場合により原料、及び存在する場合には溶剤は圧力上昇をもたらす。反応の終了の後に、過剰圧を、反応水、過剰の原料、並びに場合により溶剤の揮発及び分離のために及び/または反応生成物の冷却のために、放圧により使用することができる。更に別の実施形態の一つでは、生じた反応水を、冷却及び/または放圧の後に、慣用の方法、例えば相分離、濾過、蒸留、ストリッピング、フラッシング及び/または吸収によって分離する。
【0064】
特に高い転化率を達成するためには、多くの場合に、得られた反応生成物を、反応水を除去した後に、並びに場合によっては生成物及び/または副生成物を排出した後に、再びマイクロ波照射に付すことが有利であることが分かった。この際、場合により、使用する各反応体の比率を、消費されたまたは不足の原料の分補うことができる。
【0065】
本発明方法の利点は、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向に及び特に(例えば同軸変換を備えた)E01空洞共振器の内部にその長軸がある反応管の内部の対称的マイクロ波場の中央で、反応物が非常に均一に照射されることである。この際、本発明の反応器設計は、反応を非常に高い圧力及び/または温度で行うことも可能とする。温度及び/または圧力を高めることによって、既知のマイクロ波反応器と比べても、転化率及び収量の明らかな向上が観察され、しかもこの際、望ましくない副反応及び/または着色を招かない。この際、驚くべきことに、空洞共振器中に入射されたマイクロ波エネルギーの利用の下に非常に高い効率が達成され、これは、入射されたマイクロ波出力の通常は50%超、しばしば80%超、一部では90%超、特別な場合では95%超、例えば98%超であり、それ故、慣用の製造方法並びに従来技術のマイクロ波方法に対して経済的かつエコロジー的な利点を供する。
【0066】
加えて、本発明の方法は、制御された安全でかつ再現性のある反応の実行を可能にする。反応物が、マイクロ波の伝播方向に並行して反応管中を移動するため、(例えば波頂及びノードにおいて)マイクロ波場の強度が変化することよって生ずる局所的な過熱を招く制御不能な場の分布による既知の過熱現象が、反応物の上記の流動運動によって均される。上記の利点は、1kW超、例えば2〜10kW、特に5〜100kW、一部ではより大きな高いマイクロ波出力を用いて作業することも可能とし、それ故、空洞共振器中でのほんの短い滞留時間との組み合わせで、一つのプラントで1年間当たり100トンまたはそれ以上の多量の生産量を成し遂げることを可能とする。
【0067】
この際、連続的に通流される流管中でマイクロ波場中での反応混合物の滞留時間が非常に短いにも拘わらず、不足量で使用された成分を基準にして一般的に80%超、しばしば90%超、例えば95%超の転化率をもって非常に実質的なN−アシル化が起こり、しかもこの際、副生成物は目立つ量では生じないことは驚くべきことであった。更に、アミド化の際に生ずる反応水を分離せずともこれらの反応条件下に及び極性溶剤、例えば水及び/またはアルコールの存在下に上述の転化率が達成できることも驚きべきことであった。熱外套加熱下での同じ寸法の流管中でのこの反応混合物の対応する反応では、適当な反応温度を達成するためには極めて高い壁温度が必要とされ、これは未定義のポリマー及び着色された化学種の形成を招き、しかし同じ時間間隔において明らかに減少したN−アシル化を引き起こす。更に、本発明方法に従い製造された生成物は、粗製生成物の更なる仕上げ処理を必要とすることなく、非常に低い金属含有量を有する。例えば、本発明方法に従い製造された生成物の金属含有量は、主な元素としての鉄に基づいて、通常は25ppm未満、好ましくは15ppm未満、特に10ppm未満、例えば0.01〜5ppmの鉄である。
【0068】
それ故、本発明の方法は、工業的な量において高収量及び高純度で、アミノ基を有する有機酸のアミドを非常に迅速に、エネルギー節約的にかつ費用効果高く製造することを可能にする。この方法では、副生成物は実質的な量では生じない。目的の生成物の収量を低下させるであろう望ましくない副反応、例えばアミンの酸化またはカルボン酸の脱カルボキシル化は観察されない。このような迅速でかつ選択的な反応は、従来の方法では達成することができず、ただ高温度に加熱することでは期待できなかったものである。
【実施例】
【0069】
マイクロ波照射下での反応混合物の反応を、筒状空洞共振器(60×10cm)中に軸対称的に存在するセラミック管(60×1cm)中で行った。空洞共振器の末端側の一つのところで、上記のセラミック管は、カップリングアンテナとして機能する内部導体管の空洞中を通って延びていた。マグネトロンから発生される2.45GHzの周波数を有するマイクロ波場は、前記のカップリングアンテナを用いて空洞共振器中にカップリングし(E01空洞アプリケータ、モノモード)、ここで定常波が生じた。
【0070】
マイクロ波の出力は、試験期間にわたりそれぞれ、照射域の端部で反応物の所望の温度が一定に維持されるように調節された。それ故、試験の記載において挙げるマイクロ波出力は、入射されたマイクロ波出力の時間平均値を表す。反応混合物の温度測定は、反応域(絶縁した特殊鋼キャピラリー(φ1cm)中約15cm長)を出た後直ぐにPt100温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されないマイクロ波エネルギーは、カップリングアンテナとは反対側の空洞共振器末端で反射した。逆行時にも反応混合物に吸収されず、マグネトロンの方向に反射するマイクロ波エネルギーは、プリズムシステム(サーキュレーター)を用いて、水を含む容器中に導いた。入射されたエネルギーとこの水負荷の加熱との差から、反応物中に取り入れられたマイクロ波エネルギーを計算した。
【0071】
高圧ポンプ及び適当な圧力逃し弁を用いて、全ての原料及び生成物もしくは縮合生成物を常に液状の状態に維持するのに十分な作業圧を、反応管中の反応混合にかけた。カルボン酸及びアルコールから調製される反応混合物を、一定の流速で、反応管中にポンプ輸送して通し、そして照射域中での滞留時間を流速を変更することによって調節した。
【0072】
生成物の分析は、H−NMR分光分析を用いてCDCl中で500MHzで行った。鉄含有率の測定は、原子吸収分光によって行った。
【0073】
例1: N−ラウロイル−N−メチルタウレートの製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中で、1.6kgのメチルタウリン(10モル)を4Lの水−イソプロパノール混合物(3:2体積割合)中に溶解し、そして2.0kgのラウリン酸(10モル)と混合した。
【0074】
こうして得られた混合物を、35barの作業圧下に連続的に5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、2.2kWのマイクロ波出力にかけた。そのうち94%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約34秒間であった。反応管の端部で、反応混合物は255℃の温度を有していた。
【0075】
理論値の83%の転化率が達成された。反応生成物の鉄含有率は<5ppmであった。イソプロパノールを蒸留して分離した後に、高い発泡傾向を有する無色で透明な液体が得られた。
【0076】
例2: N−アセチルグリシンNa塩の製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中で、2リットルの水中に溶解した1.0kgのグリシン酸ナトリウム(27モル)を3.2kgの酢酸(107モル)と混合した。
【0077】
こうして得られた混合物を、30barの作業圧で連続的に5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、そして1.8kWのマイクロ波出力にかけた。そのうち92%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約34秒間であった。反応管の端部で、反応混合物は261℃の温度を有していた。
【0078】
理論値の90%の転化率が達成された。この反応生成物の鉄含有率は<5ppmであった。
【0079】
例3:N−ステアロイルグリシンNa塩の製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中で、1.2kgのグリシンNa塩(12モル)を3.5リットルの水−イソプロパノール混合物(2:2体積割合)中に溶解し、そして2.65kgのステアリン酸(9.3モル)と混合した。
【0080】
こうして得られた混合物を、35barの作業圧で連続的に4L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、2.6kWのマイクロ波出力にかけた。そのうち90%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約42秒間であった。反応管の端部で、反応混合物は267℃の温度を有していた。
【0081】
理論値の79%の転化率が達成された。この反応生成物の鉄含有率は<5ppmであった。
【0082】
例4:4−(N−ココイル)アミド安息香酸の製造
攪拌機、内部温度計及び均圧管を備えた10Lビュッヒ攪拌オートクレーブ中で、1.45kgの4−アミノ安息香酸(10.5モル)及び2.25kgのココナッツ脂肪酸(10.5モル)を加温下に5Lのイソプロパノール中に溶解した。こうして得られた混合物を、35barの作業圧下に連続的に3.5L/hで反応管中にポンプ輸送して通し、1.6kWのマイクロ波出力にかけた。そのうち87%が反応物によって吸収された。照射域中での反応混合物の滞留時間は約49秒間であった。反応管の末端で、反応混合物は281℃の温度を有していた。
【0083】
理論値の85%の転化率が達成された。この反応生成物の鉄含有率は<5ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基を有する有機酸のN−アシル化のための連続的方法であって、次式(I)
−COOH (I)
[式中、Rは、水素、または炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表す]
で表されるカルボン酸の少なくとも一種と、次式(II)
NH−A−X (II)
[式中、
Aは、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基を表し、
Xは、酸基またはそれの金属塩を表し、そして
は、水素、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素残基、または式−A−Xの基を表し、ここでAも、Xも、互いに独立して、上記の意味を有する]
で表される少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸の少なくとも一種とを、モノモード−マイクロ波アプリケータのマイクロ波の伝播方向にその長軸がある反応管中でマイクロ波照射下に反応させてアミドとする、上記方法。
【請求項2】
マイクロ波による反応混合物の照射を、導波管を介してマイクロ波発生器に接続された中空導体の内部でマイクロ波に対しほぼ透明な反応管中で行う、請求項1の方法。
【請求項3】
マイクロ波アプリケータが中空共振器として構成される、請求項1及び2の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項4】
マイクロ波アプリケータが反射型中空共振器として構成される、請求項1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項5】
反応管が、中空導体の中央対称軸に軸状に整列されている、請求項1〜4の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項6】
反応混合物の照射が、マイクロ波の同軸変換を備えた空洞共振器中で行われる、請求項1〜5の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項7】
空洞共振器がE01nモードで稼働され、この際nは1〜200の整数である、請求項1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項8】
空洞共振器中に定在波が形成される、請求項1〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
反応物がマイクロ波照射によって150〜500℃の温度に加熱される、請求項1〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
マイクロ波照射が大気圧よりも高い圧力下に行われる、請求項1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項11】
が、炭素原子数2〜30の場合により置換された脂肪族炭化水素残基である、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項12】
が、少なくとも一つのC=C二重結合を含む、炭素原子数2〜30の場合により置換された脂肪族炭化水素残基である、請求項1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項13】
が、炭素原子数1、2、3または4の飽和アルキル基である、請求項1〜11の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項14】
が、炭素原子数2〜4の場合により置換されたアルケニル基を表す、請求項1〜12の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項15】
が、(4n+2)π電子を有する場合により置換された環状全共役系であり、ここでnは1、2、3、4または5である、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項16】
式Iのカルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ピバリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2,2−ジメチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、メトキシケイ皮酸、コハク酸、ブタンテトラカルボン酸、フェニル酢酸、(2−ブロモフェニル)酢酸、(メトキシフェニル)酢酸、(ジメトキシフェニル)酢酸、2−フェニルプロピオン酸、3−フェニルプロピオン酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、4−ヒドロキシフェノキシ酢酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、ネオノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ネオウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、12−メチルトリデカン酸、ペンタデカン酸、13−メチルテトラデカン酸、12−メチルテトラデカン酸、ヘキサデカン酸、14−メチルペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、15−メチルヘキサデカン酸、14−メチルヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イソオクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヘキサデカジエン酸、デルタ−9−cis−ヘプタデセン酸、オレイン酸、ペトロセリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、ゴンド酸、イコサジエン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸及びテトラコセン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸; 綿実油、ココナッツ油、ピーナッツ油、サフラワー油、マイズ油、パーム核油、ナタネ油、オリーブ油、カラシ油、ダイズ油、ヒマワリ油、獣油、骨油、及び魚油から得られるカルボン酸混合物、トール油脂肪酸、樹脂酸及びナフテン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸; ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸の各種異性体; トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸及びメリト酸; メトキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシメトキシ安息香酸、ヒドロキシジメトキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシピリジンカルボン酸、ヒドロキシメチルピリジンカルボン酸、ヒドロキシキノリンカルボン酸の各種異性体; o−トリル酸、m−トリル酸、p−トリル酸、o−エチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、o−プロピル安息香酸、m−プロピル安息香酸、p−プロピル安息香酸及び3,4−ジメチル安息香酸から選択される、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項17】
Aが、炭素原子数1〜12の脂肪族基及び炭素原子数5〜12の芳香族基から選択される、請求項1〜16の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項18】
が、H、炭素原子数2〜18の場合により置換された脂肪族基、場合により置換されたC〜C12アリール基、環員数5〜12の場合により置換されたヘテロ芳香族基、または式−A−Xの基からなる群から選択され、ここで
Aは、炭素原子数1〜50の場合により置換された炭化水素基を表し、そして
Xは、酸基またはそれの金属塩を表す、
請求項1〜17の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項19】
Xが、カルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸からなる群から選択される、請求項1〜18の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項20】
Xが、酸基のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を表す、請求項1〜19の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項21】
式(II)の少なくとも一つのアミノ基を有する有機酸が、α−アミノカルボン酸、β−アミノスルホン酸、アミノメチレンホスホン酸及びこれらの金属塩から選択される、請求項1〜20の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項22】
カルボン酸(I)と、アミノ基を有する有機酸(II)とを、それぞれカルボキシル基及びアミノ基のモル当量を基準にして20:1〜1:20のモル比で反応させる、請求項1〜21の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項23】
塩基性触媒の存在下に行われる、請求項1〜22の一つまたはそれ以上の方法。

【公表番号】特表2012−531450(P2012−531450A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518032(P2012−518032)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003444
【国際公開番号】WO2011/000461
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】