説明

アミノ酸によって緩衝化されたコーティング経口ニコチン製剤

ニコチンの速やかな経口送達により任意の形態のニコチンを患者に送達するための、コーティングされた経口剤形は、少なくとも1つのコア、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤、少なくとも1つのコーティング層、並びに場合により少なくとも1以上のその他の添加剤を含み、かかる少なくとも1つのコーティング層は緩衝剤として少なくとも1種類のアミノ酸を用いて緩衝化されている。任意の形態のニコチンの送達方法、喫煙したい衝動又はタバコを用いたいという衝動を低減するための方法、並びに前記コーティング製品の製造方法及びニコチンの急速な経口吸収を実現するための前記コーティング製品の使用についても検討する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、患者にニコチンを口腔内送達するためのコーティングされた経口剤形に関するものである。このコーティング経口剤形は1以上のアミノ酸を緩衝剤として含む。また、ニコチンの送達のための方法及びシステム、並びに、本コーティング経口剤形の使用及び製造についても検討する。
【0002】
〔背景技術〕
タバコへの依存性及びその低下
近年、喫煙の有害性の認識にともなって、喫煙による健康への悪影響に関する情報を広めるための多くのキャンペーンやプログラムが、政府機関及び種々の健康グループ並びに他の関連組織によって行われてきた。更に、有害性へのこうした認識の結果、喫煙率を減らす試みを目的とする多くのプログラムが行われてきた。
【0003】
ニコチンは有機化合物であって、タバコの主要アルカロイドである。ニコチンは、巻きタバコ、葉巻、嗅ぎタバコなどに使用されるタバコ中の主要な習慣性成分である。ニコチンは習慣性薬物でもあり、喫煙者は一時的に禁煙に成功した後、喫煙を再開してしまう強い傾向を特徴的に示す。ニコチンは、コーヒーやお茶のカフェインに次いで世界で2番目に多く使用されている薬物である。
【0004】
喫煙の主な問題は、健康に対するその多大な影響である。喫煙に関連する疾患による死亡者数は毎年3〜4百万人にものぼると推定されている。米国疾病管理予防センターによれば、米国において約50万人がタバコの使用の結果として死亡している(United States, 1995 MMWR 1997; 46:1217-1220を参照)。実際、過剰な喫煙は世界的に、主要な健康問題の1つとして現在では認識されている。こうした喫煙による厳然たる結果は、多くの医療団体及び保健衛生当局に、タバコの使用について非常に強い措置をとるよう迫るものであった。
【0005】
多くの先進国では今日喫煙は減少しつつあるものの、世界で2番目に多く使用されているこの薬物を社会がどのように廃絶させるかを展望することは困難である。多くの国々、特に発展途上国において喫煙率は依然上昇している。
【0006】
ヘビースモーカーが行える最も有益なことは、完全に禁煙するか、少なくとも喫煙量を減少させることである。しかしながら、多くの場合、喫煙は依存性障害又は欲求を引き起こすことから、大部分の喫煙者にとってこれは極めて困難であることは経験の示すところである。世界保健機構(「WHO」)は疾患の国際分類においてタバコ依存症と呼ばれる診断項目を設けている。アメリカ精神医学会のような他の団体は、この中毒をニコチン依存症と呼んでいる。ヘビースモーカーがニコチン依存症であるという事実に起因する、こうした禁煙の困難性が広く認識されている。しかしながら最も重要な危険因子は、一酸化炭素、発がん性タール物質、N−ニトロソアミン、アルデヒド、及びヒドロシアン酸などのタバコの燃焼時に発生する物質である。
【0007】
ニコチンの影響
ニコチンの投与は、充足感を与え得、その通常の方法は、喫煙、例えば巻きタバコ、葉巻又はパイプタバコの喫煙である。しかしながら、喫煙は健康に有害であることから、したがって、喫煙を止めることを促進するのに用いることができ、及び/又は喫煙の代わりとして用いることができる、楽しい方法でニコチンを投与する代替法を作り出すことが好ましい。
【0008】
喫煙時にはニコチンは喫煙者の血中に速やかに吸収され、吸入後約10秒以内に脳に達する。ニコチンの急速な吸収によって喫煙者は急速な充足感又は活力(kick)を得る。この充足感はタバコの喫煙中、及びその後の一定時間持続する。有毒性、中毒性、発癌性及び習慣性といった喫煙の性質のため、喫煙の習慣を断つ上で助けとなる方法、組成物及び装置を開発する努力がなされてきた。
【0009】
ニコチンとは、タバコ植物に由来する習慣性の有毒アルカロイドであるC54NC47NCH3である。ニコチンは殺虫剤としても使用される。
【0010】
ニコチンの代替製品
喫煙を減らす1つの方法は、喫煙以外の形態又は方式でニコチンを提供することである。このニーズを満たすためにいくつかの製品がこれまでに開発されてきた。現在、ニコチン含有製剤はタバコ依存症の主要な治療法である。
【0011】
現在知られている製品を使用した喫煙率低下の試みはそれほどの成果をあげていない。現在の水準の技術では、行動的アプローチと薬理学的アプローチとがある。一般に、喫煙頻度を単独で減らすべく何らかの行動的アプローチ又は薬理学的アプローチを用いて当初は喫煙を止めた喫煙者の80%以上が喫煙を再開し、約一年以内に以前の喫煙率での喫煙習慣に戻ってしまう。
【0012】
禁煙しようという人々のための助けとして、ニコチン代替製品の幾つかの方法及び形態が市場に出回っている。米国特許第5,810,018号(経口ニコチン含有スプレー)、米国特許第5,939,100号(ニコチン含有マイクロスフェア)及び米国特許第4,967,773号(ニコチン含有トローチ剤)に記載されるように、ニコチン又はその誘導体を患者に投与する工程を含む、タバコを用いたいという患者の欲求を減らすための幾つかの方法及び手段が開示されている。
【0013】
ニコチン含有点鼻薬が報告されている(Russell et al. British Medical Journal, Vol. 286, p. 683(1983); Jarvis et al.Brit.J. of Addiction, Vol. 82, p. 983(1987))。しかしながら点鼻薬は投与が困難であり、職場やその他の公共の場で使用するには不便である。スプレーにより鼻腔内に直接的に投与することによってニコチンを送達する方法が、米国特許第4,579,858号、独国特許第32 41 437号及び国際公開第93 127 64号より知られる。しかしながら鼻腔ニコチン製剤の使用には局所的な鼻腔の刺激をともなう場合がある。投与が困難なため、投与されるニコチンの用量も予測不能になり得る。
【0014】
ニコチンの経皮投与のための皮膚パッチの使用が報告されている(Rose,Pharmacologic Treatment of Tobacco Dependence,(1986)pp. 158-166, Harvard Univ. Press)。今日広く使用されているニコチン含有皮膚パッチは局所的な刺激を生じる場合があり、またニコチンの吸収が遅く、皮膚血流による影響を受ける。
【0015】
米国特許第5,167,242号において示唆されているように、ニコチン蒸気の取り込みのための巻きタバコに類似した吸入装置も知られている。
【0016】
喫煙率の低下においてこれまでに最も成功しているアプローチの1つは、ニコチン禁断症状を低減するように設計されたニコチン含有チューインガムによるものである。報告されている成功率はプラセボの約2倍である。ニコチンガムの使用には幾つかの問題がある。例えば、ニコチン含有ガムは多くの喫煙家が経験する欲求を速やかにかつ充分に充足させるものではないことが分かっている。タバコの代用品及び/又は禁煙支援製品として使用され、ニコチンに基づいた成功を収めた製品の1つにチューインガムNicorette(登録商標)がある。この製品は米国食品医薬品局(FDA)の認可を得た最初のニコチン代替形態のうちの1つであり、今尚、最も多く使用されているニコチン代替製品の1つである。チューインガムNicorette(登録商標)は数年にわたって約80カ国で販売されている。このチューインガムでは、ニコチンはガムベース中に分散された不溶性カチオン交換体(ポラクリレックス(polacrilex))との複合体の形で存在する。ニコチンは、噛むこと(チューイング)によってガムからゆっくりと放出され、チューイングの緩急に応じて、約30分後にタバコの喫煙時と同程度の血漿中濃度に達する。この製品に関する特許は、例えば米国特許第3,877,468号、米国特許第3,901,248号及び米国特許第3,845,217号である。
【0017】
国際公開第98/23165号は、緩衝化されていないコーティング中にニコチンが存在するチューインガムを開示している。この概念は、コーティングチューインガムからのニコチンの迅速な放出を可能とするが、ニコチンの頬からの吸収は充分に速やかではない。放出されたニコチンの直ちに吸収されない部分は唾液により消化管に流入し、しゃっくり及び他の消化管副作用を引き起こし得る。消化管経路から吸収されるとこうした飲み込まれたニコチンは初回通過代謝を受ける。
【0018】
国際公開第00/13662号は、活性成分の全身的経口投与のためのチューインガムを開示している。この活性成分は、二相形態のチューインガム組成物によって投与される。この二相形態による送達は、ガムマトリックス自体によって与えられ、コーティングによって与えられるものではない。
【0019】
国際公開第00/19977号は、活性成分の送達のための、実質的に水分を含まない、必要に応じてコーティングされたチューインガムについて開示している。ニコチンは好ましくはカプセル化されている。必要に応じて用いられるコーティングは緩衝化されていない。
【0020】
国際公開第00/35296号は、緩衝化されていないコーティングを有するコーティングされたニコチン含有チューインガムを開示している。
【0021】
国際公開第02/102357号は、コーティングされたニコチン含有チューインガムを開示している。このガムでは、口腔内におけるニコチンの経粘膜吸収が高くなっている。それによってよりタバコのような充足感が得られるとともに、喫煙への衝動がより速やかに低減される。しかしながら国際公開第02/102357号で提案される緩衝剤の多くは不快な匂いを有し、こうした不快な味を隠すために1以上の香味料をガムに添加しなければならない。グリシンのある種の塩について緩衝剤のリストにおいて触れられているが、これらの塩が不快な味を有するか否かについては何ら言及されていない。更に、国際公開第02/102357号のコーティングガムの層の乾燥時間は容認できないほど長い。
【0022】
国際公開第2005/023227号は、種子を作らない生物、特に藻類、細菌及び/又は真菌類に由来するセルロース内及び/又は表面上にニコチンが吸収されるようなニコチン含有組成物を開示している。国際公開第02/102357号と同様に、国際公開第2005/023227号で提案されている緩衝剤の多くも不快な匂いを有する。グリシンのある種の塩について緩衝剤のリストにおいて触れられているが、これらの塩が不快な味を有するか否かについては何ら言及されていない。
【0023】
オガワ・タズコ等(Oqawa Tazuko et al.)は、数種のアミノ酸はキニンの苦みを抑制する可能性があるが、多くのアミノ酸はこうした苦みを抑制しないという仮説を提唱している。("Screening of bitterness-suppressing agents for quinine: The use of molecularly imprinted polymers"; Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 94, No. 2(Feb 2005), 353 -362)いずれにせよオガワ等はニコチン含有製剤におけるアミノ酸の緩衝剤としての有用性については何ら開示していない。キニンとニコチンは化学的にも薬理学的にも大きく異なるものであり、このことは、キニンに関する教示は、それ自体をニコチンに当てはめることはできないことを意味する。
【0024】
米国特許第5,733,572号はガス充填されたマイクロスフェアについて開示しており、活性成分及び賦形剤の根拠のない、長々としたリストに述べられているように、これには更にニコチン及びある種のアミノ酸が含まれ得るが、アミノ酸は緩衝目的ではなく、貯蔵作用効果を得るためのものである。これまで、コーティングされたニコチン含有医薬製剤における、アミノ酸の緩衝剤としての有用性については何らの開示もなされていない。
【0025】
本発明は特に上記の課題に対する解決策を与えるものである。
【0026】
〔課題を解決するための手段〕
口腔内で溶解することを目的とした医療用製品を調製する場合、感覚受容性が重要である。更に、多くの場合、有効成分が充分速やかに充分吸収されるように口腔内のpHを最適とする必要がある。製品に緩衝剤を用いることにより、このpHの調整が可能になる。しかしながら、医薬的に適した緩衝剤の数は限られており、最も一般的に使用されている緩衝剤の一部のものは不快な匂いを有する。したがって、この不快な匂いを隠すために通常1以上の香味及び/又は風味マスキング剤を製剤に添加する。更に、香味剤は製品に良い風味を与える目的でも製剤に使用される。不快な風味がないか、比較的軽度である緩衝剤を使用する可能性は、調剤作業を容易とし、香味及び/又は風味マスキングプロセスの複雑さを軽減するものである。
【0027】
驚いたことに、緩衝剤としてのアミノ酸の多くは固有の風味を有さないことが見出され、したがって口腔吸収のためにこれらの賦形剤を製品に使用することが有益であることが本発明者等によって見出された。より詳細には、少なくとも1つの緩衝された又は緩衝されていないコアと、任意の形態のニコチン及び場合によりニコチン模倣剤と、少なくとも1つのコーティング層と、場合により1以上のその他の添加剤を含むニコチンの口腔内送達のためのコーティング医薬品であって、かかる少なくとも1つのコーティング層が緩衝化されており、その際、少なくとも1種類のアミノ酸が緩衝剤として使用されるコーティング医薬品が提供される。
【0028】
適当な緩衝化合物を選択するための別の重要な基準はその毒性である。一般的なアミノ酸の多くは通常の栄養摂取において大量に存在し、毎日数グラム摂取されることから、無害に分類される。
【0029】
ニコチン含有製剤においてアミノ酸を緩衝剤として使用することの他の利点としては、不快な匂いがないこと、対象とするアミノ酸の多くはUSP/NF(米国薬局方国民医薬品集)及びPh.Eur(欧州薬局方)の両方においてモノグラフを有すること、及びこれらのアミノ酸の多くはFDAの不活性成分のリストに見出されることが挙げられる。
【0030】
製品に活性成分及び緩衝剤の両方を使用する場合、不要な化学反応を回避するため、これら二つの成分を分離しておく必要性が生じ得る。このため、これらの成分を例えば別々の層中に置くことができる。そのような異なる層の乾燥時間は極めて長くなり、適度なプロセス時間枠の範囲内ではなくなる場合がある。許容される乾燥時間を与える緩衝剤を見つけるために多くの異なる緩衝剤の評価を行ったところ、いずれも許容される結果を与えるものではなかったが、驚いたことに本製剤の製造プロセスにアミノ酸を導入することによって、許容される乾燥時間となることが見出された。上述したように、アミノ酸は緩衝目的で際立った特性を有し、これにより不快な匂い及び長い乾燥時間の問題の双方が回避される。
【0031】
患者にニコチンを送達し、患者の口腔内でのニコチンの速やかな経粘膜吸収を達成しようとする際の当該技術分野で周知の上記の難点に鑑み、本発明は、使用される緩衝剤の不快な匂いを避け、製品のコーティング層の許容される乾燥時間を与える一方で、患者の口腔内におけるニコチンの速やかな経粘膜吸収を実現するための新規で改良された製品、システム及び方法を提供するものである。
【0032】
本発明の目的の1つは、このような従来より知られていた製品及び方法の難点を解消した、患者におけるニコチンの速やかな吸収のための効率的かつ効果的な製品、並びに方法及びシステムを提供することにある。
【0033】
本発明は、少なくとも1種類のアミノ酸によって緩衝化され、かかる少なくとも1種類のアミノ酸のpH調整能が不充分である場合にはpH調整化合物を含む、任意の形態のニコチンを含むコーティングされた経口剤形を提供する。
【0034】
本発明は更に、任意の形態のニコチンを患者に送達する方法であって、任意の形態のニコチンを含有するかかるコーティング経口剤形を患者の口腔内に投与することと、コーティング経口剤形製品中の任意の形態のニコチンを口腔内の唾液中に放出させて患者の体循環系に吸収させることとを含む方法、並びに、かかるコーティング経口剤形を製造する方法を提供する。
【0035】
本コーティング経口剤形は、主として口腔内にニコチンを放出することを目的としたものである。本コーティング経口剤形は、好ましくはチューインガム、チュアブル錠、錠剤、溶解錠、トローチ剤又はハードボイルドキャンディである。特に関心を惹くものにコーティングチューインガムがある。
【0036】
以下の説明が、コーティングチューインガム又は錠剤に関する場合、こうした説明は、本願の他のコーティング経口剤形にも必要に応じて変更を加えて適用されるものと理解されるべきである。
【0037】
本発明は、喫煙の衝動又はタバコ含有材料を用いたいという衝動を低減させる方法、及び/又は喫煙することなく喫煙の充足感を与える方法であって、タバコ含有物質を少なくとも部分的にかかるコーティング経口剤形で置き換える工程と、任意の形態のニコチン含有コーティング経口剤形を患者の口腔内に投与する工程と、コーティング経口剤形中の任意の形態のニコチンを、口腔の唾液中に放出して患者に吸収させる工程とを含む方法を更に提供する。
【0038】
更に本発明は、任意の形態のニコチンを患者に送達するためのシステムであって、かかるコーティング経口剤形と、喫煙又はタバコの使用に対する衝動を低減するための少なくとも1つの他の手段とを含むシステム、並びに、喫煙又はタバコの使用に対する衝動を低減し、かつ/又は喫煙することなく喫煙の充足感を与えるためのシステムであって、上記のコーティング経口剤形と、喫煙又はタバコの使用に対する衝動を他の方法で低減するための少なくとも1つの他の方法とを含むシステムを提供する。かかるシステムは、かかる少なくとも1つの他の方法が、マウススプレー、鼻用スプレー、経皮パッチ、吸入装置、トローチ剤、錠剤による投与、及び、非経口的方法、皮下的方法、及び経粘膜的方法、又はタバコの使用からなる群から選ばれるようなシステムであってよい。
【0039】
更にまた、本発明は、少なくとも1つのコアと、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤と、少なくとも1つのコーティング層と、場合により少なくとも1以上のその他の添加剤とを含むコーティング経口剤形であって、かかる少なくとも1つのコーティング層が少なくとも1種類のアミノ酸によって緩衝化されるコーティング経口剤形に関する。
【0040】
かかるコーティング経口剤形において唯一の緩衝剤として又は主たる緩衝剤としてアミノ酸を使用することにより、国際公開第02/102357号によるガム製品の問題点、すなわち、使用される緩衝剤からの不快な匂い、及びコーティング層の長すぎる乾燥時間の問題点が解決される。
【0041】
本発明に基づく本コーティング経口剤形の使用により、任意の形態のニコチンが速やかに患者に送達され、また、コーティング経口剤形は、喫煙したい又はタバコを用いたいという衝動を速やかにかつ/又は持続的にかつ/又は完全に低減させるために、及び/又は、喫煙することなく喫煙の充足感に類似した充足感を与え、習慣的な喫煙又はタバコの使用後に得られる喫煙の衝動を低減するためにも使用される。
【0042】
上記のコーティングガムのコア及び上記コーティングのないガムは、それぞれのニコチン含有量が異なる点を除いて基本的に同じ組成を有する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
用語の定義
用語「コア」とは、1以上のコーティング層が塗布される対象すなわち核を意味するものである。
【0044】
用語「喫煙の衝動又はタバコを用いたいという衝動の速やかな低減」とは、喫煙の衝動又はタバコを用いたいという衝動を低減するための、患者の初期の準備刺激(priming)を意味するものである。
【0045】
用語「持続的な」とは、時間的に継続することを意味するものである。
【0046】
用語「完全な低減」又は「完全な」とは、完全な低減又はほぼ完全な低減を意味するものである。
【0047】
用語「制御放出」とは、患者の口腔内においてガム又は錠剤を能動的に噛んだり吸ったりすることによるガム又は錠剤からの物質の放出を意味するものであり、こうした能動的な咀嚼又は吸引によって放出される物質の量が制御される。
【0048】
用語「持続放出」とは、所定の時間、例えば数分から1時間にわたって例えば噛むことによって、ニコチンがガム又は錠剤から放出されることを意味するものである。
【0049】
用語「単位組成(unit formula)」とは、1つのチューインガム又は錠剤製品を意味するものである。
【0050】
用語「一過性」は、非永続的変化であって、例えば生物学的状態又は生理的状態といった関連状態が、一定時間の後、変化の前のその値又は挙動に戻るような変化を意味するものである。
【0051】
用語「頬の」及び「頬に」とは、口腔組織のすべて又は任意の部分に関係するものを言う。
【0052】
用語「口腔内送達」とは、口腔の任意の組織による有効成分の吸収によって、全身の血液循環系に送達することを意味するものである。
【0053】
コーティング口腔剤形
従来のニコチンチューインガム及び他の経口剤形は、喫煙と比較してニコチンの放出及び吸収が遅い。これでは必ずしも喫煙の際の実際の充足感が確実に得られない。喫煙時にはニコチンは初期に速やかに吸収され、喫煙者又はタバコのユーザー(患者)に充足感が与えられることになる。したがって上述したように、本発明は患者におけるニコチンの吸収を改善するためのコーティングチューインガム又は錠剤製品に関するものであり、その吸収はニコチンチューインガムについての当該技術分野で公知の現行の手段や方法を用いる場合よりも速やかである。口腔中のニコチンのこのような速やかな経粘膜吸収は、巻きタバコのような充足感をより一層与え、喫煙又はタバコを用いたいという衝動をより速やかに低減するものと期待される。
【0054】
本コーティングチューインガム又は錠剤製品は、少なくとも1つのコアと、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤と、少なくとも1つのコーティング層と、少なくとも1つのその他の添加剤とを含み、このコーティング層の少なくとも1つが緩衝化されている。
【0055】
別の実施形態では、少なくとも1つのコアを緩衝化し得る。このコアは、かかる少なくとも1つのコーティング層の緩衝化と同じ方法で緩衝化しても、異なる方法で緩衝化してもよい。
【0056】
少なくとも1つのコーティング層及び場合により少なくとも1つのコアの緩衝化により、当該技術分野で公知のチューインガムや錠剤製品と比較して、ニコチンの改善された吸収動態を与えるコーティングチューインガム又は錠剤製品が与えられる。最も重要な点は、緩衝化が少なくとも一部においてアミノ酸の使用によって行われる点である。
【0057】
チューインガム又は錠剤製品は、薬用チューインガム又は錠剤であってもよい。本明細書における薬用チューインガムとは、固体又は半固体の単回投与製剤であり、基剤が噛むことを意図しているが飲み込むことは意図していないガムから主としてなる製剤であって、チューインガムが薬物送達システムとして機能するような製剤のことを意味するものである。これらの製品は噛むことによって放出される、1以上の活性物質を含んでいる。本発明における活性物質は、全身への送達を目的としたニコチン及び/又はニコチン模倣剤である。
【0058】
緩衝剤
口腔から全身の循環系へのニコチンの吸収は、唾液のpH、血漿のpH、及びニコチンの酸―塩基平衡(37℃においてpKa=約7.8)に依存する。唾液のpHが6.8であるとすると、ニコチンのわずか約10%程度が非電荷の塩基形態として存在する。したがって、粘膜からの主たる吸収形態である遊離塩基形態でのニコチンの吸収を促進するには、唾液のpHは少なくともpH7かつpH10以下、より好ましくは少なくともpH8かつpH9.5以下に好ましくは高められる必要がある。9.0のpHでは、ニコチンの90%以上が遊離の、容易に吸収される塩基の形で存在する。
【0059】
本発明によれば、経口製剤は少なくとも一部がアミノ酸、好ましくは内因性のアミノ酸、及び/又はその塩からなる物質、薬剤又は他の手段の使用によって緩衝化される。
【0060】
上述したように、緩衝剤のアミノ酸の種類の多くは固有の風味を有さない。更に、一般的なアミノ酸、特に内因性のアミノ酸の多くは通常の栄養摂取において大量に存在し、毎日数グラム摂取されることから、毒性の観点からは無害に分類される。
【0061】
ニコチン含有製剤における緩衝剤として有用なアミノ酸を選択する際に、下記の基準の少なくとも一部が好ましくは用いられるべきである。
1)pKaが8.0〜9.6の範囲である(25℃におけるニコチンのpKa値よりも高いpH範囲において系が緩衝されるため)。
2)水への溶解度が約10g/kgよりも高い。
3)毒性の観点から有用である。
4)ニコチンを含まない医薬製剤において緩衝剤として既に使用されていることが好ましい。
【0062】
最も有用なアミノ酸を下記表1に示す。
【0063】
【表1】

a)ニコチンを含有しない医薬製剤において緩衝剤として報告されている。
b)水への溶解度が低いか不確定な値である。
【0064】
アミノ酸についての上記のデータは、「ハンドブック・オブ・ケミストリー・アンド・フィジックス(Handbook of Chemistry and Physics)」、第85版、表7−1(「タンパク質の基本的構成成分である20種類の標準的アミノ酸(20 standard amino acids that are the basic constituents of proteins)」)及び表7−2(「生化学的に重要なアミノ酸及び関連化合物(Amino acids and related compounds of biochemical importance)」)より引用した。
【0065】
緩衝化は、経口製剤の溶融、崩壊又は溶解時に、高いpH値で患者の唾液が一過性に緩衝化されるように設計されている。この変化は一過性であるため、pHは所定の時間の後、通常の値に戻る。
【0066】
上記の唾液のpHの上昇を利用することにより、口腔内のニコチンの経粘膜吸収は、唾液が本発明に基づいた緩衝化をされてない場合のニコチン吸収と比較して、上昇する。また、本発明に基づく口腔内のニコチンの経粘膜吸収は、本発明に基づいた緩衝化がされていないニコチン吸収よりも速いため、飲み込まれて消化管に達するニコチンは少なくなる。消化管に達したニコチンは初回通過代謝を受けるため、吸収される完全なニコチンの総量が減少する。このことは、緩衝剤と同時投与されないニコチンのバイオアベイラビリティは、緩衝剤と同時に投与される場合よりも一般に低いことを意味している。
【0067】
このため、本発明によればコーティングチューインガム又は錠剤製品は緩衝化される。これは生理学的に許容可能な緩衝物質又は緩衝剤を含むこと、又はその他の手段によって実現される。その際、こうした物質、剤又はその他の手段は少なくとも一部がアミノ酸からなる。その他の手段には、例えば自己緩衝化添加剤(self-buffering additive)やガムベースといった、通常は緩衝剤として機能しない、製品中の任意の成分が含まれる。
【0068】
本発明によれば、少なくとも1つのコーティング層が緩衝化される。特定の実施形態では、少なくとも1つのコアも緩衝化される。
【0069】
特定の実施形態では、ガム又は錠剤の投与時に唾液のpHを0.3〜4pH単位、好ましくは0.5〜2pH単位だけ上昇させるように、かかる少なくとも1つのコーティング層が緩衝化される。この緩衝化は、1又は複数のコーティング層の溶融、崩壊又は溶解時に、患者の唾液が一過性に緩衝化されるように設計される。この変化は一過性であるため、pHは所定の時間の後、その通常の値に戻る。
【0070】
同様に、少なくとも1つのコアが緩衝化されてもよい。これにより、ガム又は錠剤製品のコアを噛むか、ガム又は錠剤製品を吸う際にpHの上記変化が確実に起こり、こうした咀嚼や吸引によって、適当な緩衝剤、緩衝物質又はその他の手段が唾液のpHの一過性の変化(例えばpHの上昇)をもたらす。
【0071】
唾液のpHの変化(例えばpHの上昇)を利用することによって、口腔中のニコチンの経粘膜吸収量は、唾液が本発明に基づいた緩衝化をされていない場合のニコチン吸収量と比較して、変化し、例えば増大する。また、本発明に基づく口腔内のニコチンの経粘膜吸収は、本発明に基づいた緩衝化をされていないニコチン吸収よりも速いため、飲み込まれて消化管に達するニコチンは少なくなる。消化管に達したニコチンは初回通過代謝を受けるため、吸収される完全なニコチンの総量が減少する。このことは、本発明に基づいた緩衝剤と同時投与されないニコチンのバイオアベイラビリティが、本発明で記載されるような緩衝剤と同時に投与される場合よりも、一般に低いことを意味している。
【0072】
本発明の更なる実施形態には、少なくとも1つのコーティング層が、アミノ酸と、場合によりカリウム若しくはナトリウム、又はアンモニウムなどのアルカリ金属の、炭酸塩(重炭酸塩又はセスキ炭酸塩など)、グリシン酸塩、リン酸塩、グリセロリン酸塩又はクエン酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤又はpH調整化合物と、を一緒に使用することによって緩衝化されるような組み合わせが含まれる。
【0073】
更なる実施形態には、アミノ酸と、異なるリン酸塩系(例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及びリン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム)及び、水酸化カルシウム、グリシン酸ナトリウム、トロメタモール及びそれらの混合物との組み合わせの使用が含まれる。
【0074】
アルカリ金属炭酸塩及びリン酸塩は、好ましい更なる緩衝剤である。
【0075】
緩衝能を高め、なお更には、pHの対応する上昇をさせないためには、特定の実施形態において上記の第1の少なくとも1つのアミノ酸に対して、第2の、すなわち補助的な緩衝剤(例えば重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム緩衝剤)を使用することが可能である。第2の、すなわち補助的な緩衝剤は、この目的に好ましい、アルカリ金属重炭酸塩からなる群から選択することができる。したがって本発明の更なる実施形態には、アミノ酸、並びにアルカリ金属炭酸塩又はリン酸塩及びアルカリ金属重炭酸塩の混合物が含まれてよい。
【0076】
特定の実施形態におけるチューインガム又は錠剤組成物中の緩衝剤の量は、口腔中の唾液のpHを一過性に7よりも高く、例えばpH7〜10に維持するために、上記で特定したように唾液のpHを約7.5を上回る値にまで上昇させるだけ充分な量であることが好ましい。
【0077】
上記に述べたような、異なるニコチンの投与形態におけるpHの上昇を実現するために必要とされる緩衝剤及び場合に応じて用いられるpH調整化合物の量は、当業者であれば容易に算出される。pH上昇の程度及び持続時間は、使用される緩衝剤の種類及び量に依存し、並びに、すなわち少なくとも1つのコーティング層及び場合に応じて用いられる少なくとも1つのコアにおいて、緩衝剤が製品中のどこに分布しているかについては、下記の段落で更に述べる。
ニコチンは異なる形態(例、異なる複合体又は塩)で投与することができる。
【0078】
コーティング
本発明の特定の実施形態の例には、コーティングガム、錠剤又は他の剤形が含まれる。本発明の一実施形態によれば、チューインガム又は錠剤は、少なくとも1つのコーティング層を含むコーティングチューインガム又は錠剤である。チューインガム、錠剤又はその他の経口剤形をコーティングする方法は当該技術分野では周知のものである。本発明により、患者に投与される任意の形態のニコチンの吸収を促すためのコーティングが提供される。チューインガム又は錠剤製品をコーティングすることの従来の意図は、サクサクした触感を与えたり、風味を強調したり、例えば保存時にガム又は錠剤を保護したり、ガム又は錠剤製品の不快又は刺激性の風味を軽減したりすることである。
【0079】
本発明に基づく特定の実施形態では、ハードコーティング、フィルムコーティング、プレス/圧縮コーティング、又は溶融コーティングを使用することができる。
【0080】
フィルムコーティング及びハードコーティングについては、コーティングを手で行ってもよく、あるいは異なる形状の回転パン又は流動床中のガム又は錠剤のコア/ペレットにコーティング材を噴霧し、溶媒(例えば水又は有機溶媒)の蒸発を組み合わせてもよい。
【0081】
ハードコーティングは多工程からなるプロセスであり、以下の工程に分けることができる。
1.コアの密封
2.補助コーティング(subcoating)
3.スムージング又は光沢付与
4.着色
5.研磨
6.必要に応じて印刷
【0082】
ハードコーティングされたコアはより滑らかな外形を有し、元々のコアの辺縁が見えなくなっている。糖アルコール溶液に粉体をまぶすことによる又は、糖アルコール溶液に乾燥粉体を適用することによる補助コーティングを用いることができる。コアは、例えばハードコーティングパンを使うパニング技術によって、又は、ある程度の自動化が可能な他のより高度な技術によってハードコーティングすることができる。
【0083】
ハードコーティング中の糖は、ショ糖、糖アルコール、多価アルコール、ポリオール、及びこれらのうちの2以上の混合物からなる群から選択することができる。
【0084】
特定の実施形態によれば、ハードコーティングに使用される糖は、人工甘味料であってもよく、(1)カロリーが低いか実質的にゼロであり、及び、(2)通常の糖、又は糖及び/若しくは糖アルコールの組合せよりも虫歯を促進しにくい。人工甘味料の例、及びそのような組合せの例を下記の「その他の添加剤」に示す。フィルムコーティングには、コアを囲むポリマー薄膜の成膜(通常はスプレー法による)を含む。
【0085】
溶液は回転混合床にスプレーしてもよい。乾燥条件により、溶媒が除去されて、各々のコアの周りにコーティング材料が薄く成膜される。
【0086】
コーティング溶液と懸濁液の組成は、プロセスの異なる部分において異なっていてよい。
【0087】
プレスコーティングでは、既に製造されたコアの周りに粒状材料を押し固める。プレス/圧縮コーティングを用いることで、最初の1又は複数のコアの外側に更なるコアが圧着される。
【0088】
ニコチン酒石酸水素塩(NHT)がニコチン形態として使用される場合に、NHTと緩衝剤とは、特にハードコーティングが用いられる場合に別々の層内に保たれることによって、コーティング中で互いから適切に分離される。コーティングプロセス時のNHT酸性塩と緩衝剤との相互作用を防ぐために、NHT含有層と緩衝剤を含むコーティングとの間に水分バリアを適用することができる。適切な水分バリアには、例えば、無極性脂質及びワックス(例えば、カルナウバワックス)、エチルセルロース、又は、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の組み合わせ、及び/又は、有機溶媒又は溶媒混合物からの可塑剤、水性エチルセルロース分散液(例えば、アクアコートEDC(Aquacoat EDC)(FMC社、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、Surelease(カラーコン(Colorcon)社、ウェストポイント、ペンシルベニア州)(好ましくは可塑剤との組み合わせ)、Sepifilm LP 007又はLP 010(セピック(Seppic)社、パリ、フランス)―主にHPMCとステアリン酸をベースとしている−、Opadry AMB又はHigh Performance Opadry II(カラーコン(Colorcon)社)−主にポリビニルアルコールをベースとしている−、及び、ポリメタクリレート(Eudragit L30 D−55又はEPO(ローム(Rohm)社、ドイツ)))がある。選択されるバリアフィルムの種類に応じ、水分バリアは好ましくはコーティングの総重量の約0.3%〜約5%の重さを占める。
【0089】
コーティング又はコアには、1以上の添加剤を添加することができる。添加剤については「その他の添加剤」の段落で更に説明する。
【0090】
コア
本発明に基づくコーティングチューインガム中のガムベースの量は、全ガムコアの重量の約15〜80%、好ましくは少なくとも約40%(例えば40〜80%の範囲)である。最も望ましいニコチンの持続放出のために用いられるガムベースの量は、ニコチンが遊離塩基として用いられるか、又は吸収形態が用いられる場合には通常、高い方の値の範囲である。
【0091】
ガムベースは、当該技術分野で公知のいずれの従来の性質のものでもよい。例えば、商業的に容易に入手可能な天然又は合成ガムベースが含まれる。天然ガムベースには、例えば、チクル(chicle)、ジェルトン(jelutong-)、レチ・デ・カスピ(lechi de caspi-)、ソー(soh-)、シアク(siak-)、カチアウ(katiau-)、ソーワ(sorwa-)、バラタ(balata-)、ペンダレ(pendare-)、マラヤ(malaya-)、及びピーチ(peach)ガム、天然のカウチュク(cautchouc)、及び、ダマール(dammar)やマスチックス(mastix)といった天然樹脂が含まれる。合成ガムベースは以下のものの混合物である。
−エラストマー(例、ポリマー及び咀嚼物質)、
−可塑化剤(例、樹脂、エラストマー及び溶媒)、
−充填剤(例、調質剤、及び非水溶性補助剤)、
−柔軟剤(例、脂肪)、
−乳化剤、
−ワックス、
−抗酸化剤、
−抗粘着剤(例、ビニルポリマー及び親水性樹脂)。
【0092】
ガムベースの他の例は、寒天、アルギネート、アラビアガム、キャロブガム、カラギーナン、ガッティガム、グアーガム、カラヤガム、ペクチン、トラガカントガム、イナゴマメガム、ゲランガム及びキサンタンガムを含むガムである。
【0093】
ゲル化剤の例には、アラビアガム、デンプン、ゼラチン、寒天及びペクチンが含まれる。
【0094】
本発明に基づいて、任意の形態のニコチン及び緩衝剤をチューインガムの塊中に組み込む場合、広範なチューインガム組成物及びチューインガムベースの量を用いることが可能である。ニコチン濃度、ニコチンの分布及びその他の添加剤に関して、消費者の好みと使用目的に応じて異なるチューインガム製品を構成することができる。
【0095】
上記の成分は、それぞれ、混合、ローリング(rolling)、及びスコアリング(scoring)技術を用いた製造に、並びに直接圧縮技術を用いたガムの製造に適した性質を有し得る。
【0096】
錠剤のコアに関しては、実施例6を参照されたい。
【0097】
活性成分
本発明によれば、本コーティングチューインガム又は錠剤製品には、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤が含まれる。特定の実施形態では、ニコチンは前記少なくとも1つのコーティング層の一部であるか、あるいは、複数の層が使用される場合、かかる少なくとも1つのコーティング層の内の少なくとも1つである。
【0098】
なお更なる実施形態では、ニコチンは、チューインガム又は錠剤のコアの一部であるか、あるいは、複数のコアが使用される場合には、チューインガム又は錠剤のコアの少なくとも1つである。
【0099】
更なる実施形態では、ニコチンが少なくとも1つのコーティング層の一部、又は少なくとも1つのコーティング層及びチューインガム又は錠剤のコアの少なくとも1つ、又は、チューインガム又は錠剤のコアの少なくとも1つであることにより、患者の口腔内においてニコチンが速やかに経粘膜吸収されることによって喫煙の衝動及び/又はタバコを用いたいという衝動の急速なキック(kick)すなわち低減が実現される。これによりニコチンの全身的な濃度も維持される。
【0100】
ニコチンと言う場合、ニコチン、3−(1−メチル−2−ピロリジニル)−ピリジン、及びその塩基形態が含まれ、これには合成ニコチン、及びタバコ植物からのニコチン抽出物若しくはその一部(タバコ属(genus Nicotiana)単独又はそれらの組み合わせ)又は薬学的に許容される塩が含まれる。
【0101】
口腔内の唾液中へのニコチン剤の速やかな放出と、更にこれに続く口腔内の唾液から患者の体循環中へのニコチンの吸収を促すため、ニコチン化合物は最終的には唾液に溶ける形態とされなければならない。
【0102】
ニコチンはニコチン樹脂酸塩複合体(NRC)の形態で用いることができる。NRCからのニコチンの放出は緩衝剤の存在下で上昇する。
【0103】
好ましい実施形態では、任意の形態のニコチンは、ニコチン塩、遊離塩基形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体(例えば、β−シクロデキストリンとの複合体のニコチン)、又は、任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン、セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びそれらの任意のものの混合物からなる群から選択される。
【0104】
例えば、下記表2に示される塩のような多くのニコチン塩類が知られており使用することができる。好ましくは、モノ酒石酸塩、酒石酸水素塩(hydrogen tartrate)(バイタートレート(bi-tartrate)とも呼ばれる)、クエン酸塩、リンゴ酸塩及び/又は塩酸塩等である。
【0105】
【表2】

* 製造時の推奨レベル
【0106】
包接複合体は、ニコチン−β−シクロデキストリンのようなニコチン−シクロデキストリン(1−1)化合物であってよい。
【0107】
好適なカチオン交換体を下記表3に示したが、これらは米国特許第3,845,217号に更に開示されている。好適なものとしては、ローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)社より市販されるアンバーライトコレクション(Amberlite collection)などのポリアクリレートのニコチンカチオン交換体がある。
【0108】
【表3】

【0109】
本発明に基づく製品にはニコチン模倣剤も含まれる。こうした薬剤は、口や喉にヒリヒリ感を与える、ニコチンのような刺すような熱い風味(acrid burning taste)を持ついずれの適当な薬剤であってもよい。ニコチン模倣剤の例には、カプサイシン、ピペリン及びジンゲロンがある。
【0110】
コーティング又はコアには、1以上の添加剤を添加してもよい。添加剤については、更に下記の「その他の添加物」の段落で述べる。
【0111】
ニコチンの量及び分布
本発明に基づく任意の形態のニコチンは、所定の効果を与える用量が患者に与えられるように配合される。この効果は、喫煙することなく喫煙の充足感を与えることであってよい。投与される任意の形態のニコチンの別の効果は、喫煙への衝動やタバコを用いたいという衝動の低減であってよい。
【0112】
この効果は、喫煙への衝動の低減と喫煙なしでの喫煙の充足感との組合せであってもよい。ニコチンの量は、患者にそのような効果を与える上で充分なものでなければならない。この量は、無論、人によって変わり得る。
【0113】
本発明によれば、チュアブルガム又は錠剤製品の実施形態には、任意の形態のニコチンが、遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合にコーティングチューインガム又は錠剤製品1個当たり0.05〜10mgの量で存在する実施形態が含まれる。これには異なる実施形態において、遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合にコーティングチューインガム又は錠剤製品1個当たり0.05、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10mgが存在する。
【0114】
更に好ましい実施形態には、任意の形態のニコチンが、遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合にコーティングチューインガム又は錠剤製品1個あたり0.5〜6mgの量で存在する実施形態が含まれる。
【0115】
更により好ましい実施形態では、任意の形態のニコチンが、遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合にコーティングチューインガム又は錠剤製品1個あたり0.5〜4mgの量で存在する。
【0116】
本発明の特定の実施例によれば、任意の形態のニコチンは、かかる少なくとも1つのコーティング層の一部、又は、かかる少なくとも1つのコーティング層のうちの少なくとも1つである。
【0117】
任意の形態のニコチンは、遊離塩基の形態として計算した場合、少なくとも1つのコーティング層のうちの少なくとも1つにおいて0〜8mgの量で含まれ得る。更なる実施形態では、少なくとも1つのコーティング層のうちの少なくとも1つにおいて、0.1〜6mgの量のニコチンが含まれる。又は、より好ましくは、少なくとも1つのコーティング層のうちの少なくとも1つにおいて、0.1〜5mgの量のニコチンが含まれる。
【0118】
異なる実施形態において、任意の形態のニコチンは、コア及び/又は異なるコーティング層中に分布し得る。コーティングチューインガム又は錠剤の全体にわたるニコチンの異なる分布は、異なる方法で患者にニコチンを投与することを意味する。これにより患者の喫煙への衝動やタバコを用いたいという衝動に応じて、異なる患者の異なるニーズに対してコーティングチューインガム又は錠剤の組成を調整する上で幾つかの可能性が与えられる。
【0119】
ニコチンの放出と吸収
口腔内吸収のための現在利用可能なニコチン含有製剤、例えばチューインガム及び錠剤は、喫煙に比較してニコチンの放出と吸収が遅い。
【0120】
本発明に基づくコーティングされた医薬製剤中のニコチンの放出は、以下の少なくとも1つの工程で進行する。
I)コーティング中、及び場合によりコア中の1以上の緩衝剤の溶解により、口腔中の液体のpHの最適化調整が与えられる。
II)好ましい実施形態におけるように、ニコチンが上記で規定された少なくとも1つのコーティング層の少なくとも1つに、規定量、例えば異なる実施形態に基づいて上記のごとく規定された量だけ存在する場合、コーティングチューインガム又は錠剤のコーティングが、溶融するか、崩壊するか、又は溶解して、この製品中のチュアブルガム又は錠剤のコアが露出する際にニコチンが放出される。ニコチン及びその種々の形態は、チュアブルガム若しくは吸引ガム又は錠剤の使用等により、コーティングが溶融するか、崩壊するか、又は溶解する際にコーティングから口腔内の唾液中に放出される。次いで、任意の形態のニコチンは、更に患者によって吸収され得る。
III)チュアブル若しくは吸引ガム又は錠剤からの任意の形態のニコチンの放出は、例えばガム又は錠剤のコアを咀嚼したり吸引したりすることによる放出制御によって行われる。その際、咀嚼によってガム又は錠剤のコアからのニコチンの放出量が制御される。これによってニコチンの放出が所定時間にわたって維持される。この時間は異なる実施形態において約5、10、20、30又は40分であってよい。
【0121】
ニコチンの放出はコーティング層及び/又はガム又は錠剤のコア中への任意の形態のニコチンの所定量の取り込み方によって変わり得る。
【0122】
チューインガム又は錠剤製品の異なる部分から放出されるニコチンの量が価値あるばかりではなく、本発明に基づいた、口腔から患者の体循環系へのニコチンの特定の経粘膜吸収において、1以上の緩衝剤が、口腔の液体のpHの適切な調整を実現することも価値がある。
【0123】
本発明によれば、コーティング中のニコチンの急速な初期バースト投与とその後の緩衝化されたコーティングによる口腔中の速やかな経粘膜吸収により、短時間の内に充足感が得られる。本コーティング医薬製剤からのニコチンの口腔内吸収は、総ニコチン含量が同じ口腔内吸収用の非コーティング固形薬用製剤又は半固形薬用製剤の場合より、速やかであることが好ましい。
【0124】
その他の添加剤
場合に応じて他の添加剤をコア及び/又はコーティング層に添加することができる。
【0125】
場合に応じて添加される添加剤には、安定剤(例えば防腐剤(例えば酸化防止剤))、軟化剤、増粘剤、充填剤、フィルム形成剤、乳化剤、流動促進剤、潤滑剤、甘味料、香味剤、芳香剤、エンハンサー、着色剤、ビタミン、ミネラル、フッ素、ブレスフレッシュナー(breath fresheners)、及び歯の美白剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の添加剤が含まれる。本発明によれば、そのような添加剤のうちの少なくとも1つが場合に応じて本製品に添加される。
【0126】
エンハンサーは、主に口腔からの経粘膜的取り込みを改善、すなわち増大させるために添加される。
【0127】
甘味料は、主に風味を改善するために添加される。甘味料には、合成糖又は天然糖(例えば、甘味料として使用するのに適した任意の形態の炭水化物)、及び、いわゆる人工甘味料、例えば、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム(NutraSweet(登録商標)として販売されている)、アセスルファムK又はアセスルファム、カリウム・アセスルファム、タウマチン、グリチルリチン、スクラロース、ジヒドロカルコン、アリテーム(alitame)、ミラクリン、モネリン(monellin)、ステビサイド(stevside)から選択される1以上の要素が含まれる。
【0128】
適切な甘味料は、糖アルコール(たとえばソルビトール及びキシリトール)、単糖類(サトウキビやテンサイから抽出された糖(スクロース)を含む)、デキストロース(グルコースとも呼ばれる)、フルクトース(レブロース(leavulose)とも呼ばれる)、及びラクトース(乳糖とも呼ばれる);ソルビトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールシロップ(又は加水分解水添デンプン)、イソマルト、ラクチトール;及び、グルコースシロップ、(たとえば、デキストロース、マルトース及び一連の複合糖質の混合物を含むデンプン加水分解物)、転化(invert)糖シロップ(例えば、デキストロースとフルクトースとの混合物を含む、インベルターゼ(スクラーゼ又はサッカラーゼとも呼ばれる)で転化されたスクロース)、高い糖含有量のシロップ(たとえば、特定のレブロース、デキストロース、マルトース、ラクチトール、スクロース、樹脂、デキストリン及び高級糖の混合物を含む糖蜜や蜂蜜)を含めた、糖の混合物;及びモルト又は麦芽エキス、からなる群から選択することができる。
【0129】
香味添加物と芳香添加物には、1以上の合成又は天然の香味剤又は芳香剤が含まれ得る。
【0130】
香味剤及び芳香剤は、アルコール、エステル、アルデヒド及びラクトンの混合物を含む、切られた花、葉、皮、若しくはつぶされた果物全体の蒸留物、溶媒抽出物、又は冷圧搾物を含めたエッセンシャルオイル、エキス(エッセンシャルオイルの希釈溶液又は、果物、たとえばイチゴ、キイチゴ及びブラックカラントの天然の香味にマッチするようにブレンドされた合成化学物質の混合物を含める);醸造物及びリカー(例えば、コニャック、ウィスキー、ラム、ジン、シェリー、ポートワイン及びワイン)の人工又は天然の香味剤;タバコ、コーヒー、茶、ココア及びミント;フルーツジュース(洗浄され、こすり洗いされた果物(たとえばレモン、オレンジ及びライム)から放出されたジュースを含める);スペアミント、ペパーミント、ヒメコウジ、シナモン、カコー(cacoe)/ココア、バニラ、リコリス、メントール、ユーカリ、アニスの実、ナッツ(例えば、ピーナッツ、ココナッツ、ヘイゼルナッツ、クリ、クルミ、コーラナッツ(colanuts))、アーモンド、レーズン;及び、ニコチンの濃度に有意に関与しない量のタバコ植物製品(tobacco plant parts)(例えばニコチアナ属(genus Nicotiana))を含めたパウダー、粉末(flour)、又は植物性材料製品、及びジンジャーから選択することができる。
【0131】
着色添加剤は、食品添加物として承認されている着色剤から選択することができる。
【0132】
安定剤添加物は、酸化防止剤(ビタミンE、すなわちトコフェロール、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、エデト酸、及びエデト酸塩を含める);及び防腐剤(クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、安息香酸、及びソルビン酸を含める)からなる群から選択することができる。好ましい実施形態は、安定剤として酸化防止剤を含み、より好ましくは酸化防止剤ビタミンE及び/又はブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が含まれる。
【0133】
任意の形態のニコチンを対象者に送達する方法
本発明によれば、任意の形態のニコチンを患者に送達する方法は以下の工程を含む。
a)患者の口腔内に本発明に基づく任意の形態のニコチンを含有するチューインガム又は錠剤製品を投与する工程と、
b)チューインガム又は錠剤製品中の任意の形態のニコチンを口腔内の唾液中に放出させて患者の血漿に吸収させる工程と、を含む。
【0134】
本発明によれば、口腔内のニコチンの経粘膜吸収は、現在知られている経口医薬製剤よりも速やかである。
【0135】
任意の形態のニコチンを送達する方法は以下の工程を更に含んでもよい。
c)例えば少なくとも5、10、20、30又は40分の時間にわたって患者に任意の形態のニコチンを投与する工程。
【0136】
喫煙又はタバコの使用に対する衝動を低減するための方法
本発明に基づく喫煙したいという又はタバコ含有材料を使用したいという衝動を低減し、かつ/又は喫煙することなく喫煙の充足感を与えるための方法は、以下の工程からなる。
a)ニコチン含有タバコ製品を本発明に基づくコーティングされた経口剤形で少なくとも部分的に置き換える工程と、
b)本発明に基づく任意の形態のニコチンを含有するコーティング経口剤形を患者の口腔内に投与する工程と、
c)コーティング経口剤形のコーティング中の任意の形態のニコチンを口腔内の唾液中に放出させて患者に吸収させる工程。
【0137】
ニコチンを患者に送達するための方法の更なる実施形態には、喫煙又はタバコの使用に対する衝動を低減するための少なくとも1つの他の方法を本発明の製品と組み合わせる工程が含まれ得る。
【0138】
タバコ含有材料は、例えば喫煙、鼻からの吸引又は噛む(チューイングする)ために使用される材料であってよく、巻きタバコ、葉巻、パイプタバコ、嗅ぎタバコ、スヌース(snus)、及び噛みタバコが含まれる。
【0139】
コーティング経口剤形は、更に以下に述べるように、喫煙又はタバコの使用に対する衝動の速やかな、及び/若しくは持続的な、及び/若しくは完全な減少を実現するために、並びに/又は、喫煙せずに喫煙の充足感を与えるために使用することができる。
【0140】
この迅速な除去により、患者に喫煙することなく喫煙の充足感が速やかに与えられる。このような充足感は、他の既知の固形又は半固形の経口剤形より速やかに欲求を低減させるものである。
【0141】
コーティング及び場合によりコア中に1以上の緩衝剤が存在する状態でニコチンがコーティング層中にある実施形態において、ある服用量のニコチンが、コーティング経口剤形の少なくとも1つのコーティング層のうちの少なくとも1つから放出される際に、速やかな欲求の除去が実現する。これにより患者における口腔内でのニコチンの初期の急速な経粘膜吸収が実現し、初期ピークが誘導され、その結果、患者は、充実した感情すなわち充足感を得、初期の欲求が消滅する。
【0142】
喫煙又はタバコの使用に対する衝動の持続的低減
本発明は、喫煙への衝動やタバコを用いたいという衝動を持続的に低減させ、及び初期の欲求除去後にも、患者に、充足感を感じる能力を与え得る。持続的な欲求除去は、コーティング経口剤形のコア部分を咀嚼したり吸ったりすることにより、ニコチンの持続的吸収が可能になることで実現する。患者の血漿中のニコチン濃度が、この充足感を得るのに充分に高濃度に維持される限り、患者の持続的な欲求除去及び/又は充足感は持続する。
【0143】
所定の時間、例えば5、10、20、30又は40分又はそれより長い間にわたってコーティング経口剤形のコアを咀嚼し、それにより咀嚼による持続放出を実現することにより、患者は、この持続的な除去を達成し得る。
【0144】
喫煙又はタバコの使用に対する衝動の抑制
使用者によっては、いくつかの理由(例えば、健康上、経済上、社会的又は行動上の理由)のために、ニコチンの使用を完全に断つことが目標であり得る。これは、ある期間にわたって徐々に、任意の形態のニコチンの量を更に減少させることによって成し遂げられ得る。本発明の具体的な一実施形態では、タバコへの欲求の完全な除去を達成するために、ある期間にわたって徐々に、上記の全コーティング経口剤形製品中のニコチンの量を減少させる工程が、欲求除去を成し遂げるための上記方法に更に含まれ得る。この方法は、ある期間にわたって徐々に行う離脱(weaning)プロセスである。
【0145】
異なる血漿濃度のニコチンで、異なるタイプの喫煙者が、欲求の減少感を実現する。これは、もちろん、本発明に従うコーティングチューインガム又は錠剤の投与プログラムの個々のタイプに影響を及ぼし得る。異なるタイプの喫煙者には、例えば、ピークシーカー、すなわち、ニコチンの血漿濃度が禁断症状のレベルより常に上にあるよう欲求する喫煙者が含まれる。
【0146】
投与されるコーティング経口剤形の頻度を減少させるのも1つの戦略であり得る。他の実施形態には、かかるコーティング経口剤形中のニコチンの服用量を変えること、及びこれら二つを組み合わせることが含まれる。また、実質的に任意の形態のニコチンを含まないコーティング経口剤形も本戦略に含まれ得る。このようなコーティング経口剤形は、欲求が低いか実質的にない、処置期間の最後に投与され得る。
【0147】
ニコチンを送達し、欲求の除去を実現するためのシステム
本発明によれば、患者に任意の形態のニコチンを送達するシステムが提供される。このようなシステムには、本発明に基づくコーティング経口剤形と、喫煙への衝動の減少を実現するための少なくとも1つの他の手段とが含まれる。
【0148】
本発明に基づく別のシステムは、喫煙への衝動やタバコの使用の減少を実現し、及び/又は、喫煙せずに喫煙の充足感を与えるためのシステムでもあり得る。このようなシステムには、本発明に従うコーティング経口剤形と、喫煙への衝動やタバコを用いたいという衝動の減少を実現するための少なくとも1つの他の方法とが含まれる。その他の方法としては、マウススプレー、鼻用スプレー、経皮パッチ、吸入装置、トローチ剤、錠剤による投与、並びに、非経口的方法、皮下的方法、及び経粘膜的方法;又はタバコの使用からなる群から選択された付随的方法又は同時に実行される方法もあり得る。
【0149】
具体的な一実施形態では、かかる少なくとも他の方法には、ニコチンの投与が含まれる。
【0150】
コーティング経口剤形の使用
本発明に基づくコーティング経口剤形の使用は、上記のように、喫煙への衝動やタバコを用いたいという衝動の速やかな、及び/若しくは持続的な、及び/若しくは完全な減少の実現、又は、喫煙せずに喫煙の充足感を与えるためのものである。
【0151】
ニコチンの服用量は、任意の形態のニコチンの効果として、患者に、個人的な感覚認知と充足感とを与えるように選択される。コーティング経口剤形の使用は、本発明に従う使用のみであっても、又は薬物濫用の分野で公知の他の手段又は方法との組合せであってもよい。具体的には、本発明は、上記段落の方法において上記で説明した他の手段と組み合わせて使用され得る。
【0152】
本発明によれば、本発明に基づくコーティング経口剤形の使用は、任意の形態のニコチンを患者に送達するためにも開示されている。
【0153】
コーティング経口剤形の製造
本発明に基づくコーティング経口剤形は、含まれるコアの総数とコーティング層の総数とに応じて、いくつかの製造工程で維持され得る。
【0154】
本発明に従うコーティング経口剤形の製造のための一方法を下記に開示する。代替法としては、その他の製造方法、例えば圧縮技術を使用する製造も役に立つであろう。
【0155】
本方法は、
a)少なくとも1つのコアを与え、及び/又は少なくとも1つのニコチン含有コアを与える工程と、
b)任意の形態のニコチンを与える工程と、
c)少なくとも1種類のアミノ酸で緩衝化された少なくとも1つのコーティング層を与える工程と、
d)かかる任意の形態のニコチンをかかる少なくとも1つのコア及び/又はかかる少なくとも1つのコーティングに添加する工程と、
e)かかる少なくとも1つのコアをかかる緩衝化された少なくとも1つのコーティング層でコーティングする工程と、を含む。
【0156】
特定の実施形態では本方法は更に、
f)かかる少なくとも1つのコアを緩衝化し、かつ/又は、
g)緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層を与える工程と、場合に応じて、
h)かかる任意の形態のニコチンをかかる緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層の内の少なくとも1つに添加する工程と、場合に応じて、
i)かかるコーティング中のニコチン及びかかるコーティング中の緩衝剤を、別々の層に、好ましくは水分バリアによって分離された別々の層に与える工程と、を含む。
【0157】
一実施形態では、ニコチンは、ニコチン塩、遊離塩基の形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体、又は任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン;セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0158】
実施形態によっては、上記少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1種類のアミノ酸、又は、少なくとも1種類のアミノ酸と、アルカリ金属(例えばカリウム又はナトリウム)の炭酸塩緩衝剤(例えば炭酸塩、重炭酸塩又はセスキ炭酸塩);又はアンモニウム;グリシン酸ナトリウム、アルカリ金属のリン酸塩、グリセロリン酸ナトリウム又はカリウム、クエン酸三ナトリウム又は三カリウム;又はトロメタモール、及び、これらの混合物から選ばれた緩衝剤との組み合わせからなる群から選択される緩衝剤を使用して緩衝化され、その際、かかる少なくとも1つのコーティング層が、ガムの投与時に唾液のpHが0.3〜4pH単位上昇するように緩衝化される。この緩衝化は一過性であり得る。
【0159】
更なる実施形態では、上記少なくとも1つのコーティング層が、ガムの投与時に、唾液のpHが0.5〜2pH単位上昇するように緩衝化される。
【0160】
チューインガムの場合、コアの組成は、ガムベースと、ニコチンの各形態(例えば、ニコチンイオン交換複合体又は、遊離塩基又は塩としてのニコチン)の少なくとも1つとを単に混合、ローリング及びスコアリング、又は圧縮することで形成され得る。ガムベースを除いて、固形成分は、良好な分布を確実なものとするため、添加する前に、まず固形成分を磨り潰し、サイズを決めることが好ましい。混合は、使用されるガムコアの粘度に応じて、適切な高い温度で行うのが好ましい。温度の上昇はゴムの粘度を減少させ、それによって、ニコチンとその他の添加剤とが、チューインガムのコア/ペレット内で均一かつ緊密に分布され得る。添加剤を加えられたガム塊は、冷却され、ローリング及びスコアリングされ、充分に硬化され、その後、上記段落「コーティング」と実施例1〜4に従ってコーティングされる。
【0161】
本発明において開示される方法によれば、かかる少なくとも1つの緩衝化されたコーティングの少なくとも1つの層による、かかる少なくとも1つのチューインガム又は錠剤コアのコーティングが、以下の工程からなるようないくつかの実施形態が開示される。すなわち、
a)フィルムコーティング、及び/又は、
b)プレスコーティング、及び/又は、
c)ハードコーティング、及び/又は、
d)溶融コーティング。
【0162】
次いで、本製品は、当該技術分野で公知の方法に従って分析され、更に包装され得る。
【0163】
本発明の異なる実施例は、当該技術分野で公知の技術を用いて製造される。
【0164】
治療及び処置のための使用
本発明に基づくコーティングチューインガム又は錠剤製品は治療に用いることができる。かかる治療は、タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される、疾患の治療であってよい。
【0165】
ニコチンは、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾病を治療するための本発明に基づくチューインガム又は錠剤製品の製造に使用することもできる。
【0166】
タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される疾病の治療のための本発明に基づくニコチン含有チューインガム又は錠剤製品の製造のための、コーティングチューインガム又は錠剤製品の使用も開示される。
【0167】
ニコチンの分析
本発明に基づくニコチン吸収及び効果の分析は、当該技術分野で公知の標準的手順に従って、例えば、患者の血漿中におけるニコチン又はその代謝物質の測定のための生物的分析を用いて行うことができる。
【実施例】
【0168】
下記実施例は、例示的なものであり、限定的なものではない。実施例1〜4は、本発明に基づいて使用され得る、4つの異なるコーティングとコーティング組成物、すなわち、実施例1のハードコーティング、実施例2のフィルムコーティング、実施例3のプレスコーティング、及び実施例4の溶融コーティング(全てチューインガム又は錠剤のコア上にコーティング)を開示している。それぞれのケースで、コーティングは緩衝化されており、ニコチンも含有する。実施例1〜4のコーティングは、異なるコアと組み合わせることができる。コアの例を実施例5に示し、下記に更に述べる。
以下の実施例で使用したアミノ酸はL−アルギニンである。ただし、当業者であれば、L−アルギニンを例えば上記表1から選択されるアミノ酸のような1以上の他のアミノ酸と置き換えることによって、現況技術の方法に基づいてアミノ酸の量を調整することが可能である。更に当業者であれば、pH調整化合物を添加する必要があるか否かを容易に計算することができる。したがって下記の実施例5Aでは、緩衝剤に加えてpH調整化合物を添加した。
【0169】
当業者ならば、以下の実施例に基づいて、本発明の他の実施例も想定することができよう。
【0170】
下記の製剤の製造のバッチサイズは、実際のニーズ及び実際の生産設備に応じて改変することができる。
【0171】
(実施例1)緩衝化されたハードコーティング
目的
本実施例の目的は、ニコチンを含有し緩衝化されたハードコーティングを提供するものである。ニコチンは、それぞれ、0.5、1、2、3又は4mgの量である。
【0172】
ハードコーティング材料*
【0173】
【表4】

* 本実施例のハードコーティングはサッカロース系の糖ではなく糖アルコールを示す。
** q.s.=充分量
【0174】
【表5】

【0175】
(実施例2)緩衝化されたフィルムコーティング
目的
本実施例の目的は、ニコチンを含有し緩衝化されたフィルムコーティングを提供するものである。ニコチンは、それぞれ、0.5、1、2、3又は4mgの量である。
【0176】
フィルムコーティング材料
【0177】
【表6】

【0178】
【表7】

a=HPMC=ヒドロキシプロピルメチルセルロース
b=PEG=ポリエチレングリコール
【0179】
(実施例3)緩衝化されたプレスコーティング
目的
本実施例の目的は、ニコチンを含有し緩衝化されたプレスコーティングを提供するものである。ニコチンは、それぞれ、0.5、1、2、3又は4mgの量である。
【0180】
プレスコーティング材料
【0181】
【表8】

【0182】
【表9】

【0183】
(実施例4)緩衝化された溶融コーティング
目的
本実施例の目的は、ニコチンを含有し緩衝化された溶融コーティングを提供するものである。ニコチンは、それぞれ、0.5、1、2、3又は4mgの量である。
【0184】
溶融コーティング材料
【0185】
【表10】

【0186】
【表11】

【0187】
(実施例5)ガムコア
目的
本実施例の目的は、本発明に基づくチューインガム製品に適したコアを提供するものである。ニコチンは、遊離塩基(NFB)、ニコチンβ−シクロデキストリン複合体(NCC)、ニコチン酒石酸水素塩(NHT)、又はニコチン樹脂複合体(NRC)として取り込まれる。それぞれの単位組成におけるニコチン量、すなわちコアあたりのニコチン量は、0、0.5、1、2、3又は4mgの量である。
【0188】
原理
ガムコアは、混合、ローリング及びスコアリングプロセス、又は圧縮プロセスにより形成される。
【0189】
コアの組成
【0190】
【表12】

【0191】
【表13】

【0192】
【表14】

【0193】
【表15】

【0194】
【表16】

【0195】
製造手順
I)混合、ローリング及びスコアリング
混合、ローリング及びスコアリングは従来の手順によって行う。ガムベースと、製剤のその他の成分との混合には、ダブルシグマブレードミキサーを用いる。ガムベースは、ミキサーで柔らかくする。(ヒートジャケット(heating jacket)からの)熱と混合とによってガムベースは塑性状態となる。そこで、柔らかくなったベースを、液体成分(例えば香味剤、液体、ソルビトール及びグリセロールが使用される場合にはそれら)、及び粉末混合物のような固体材料(例えば、任意の形態のニコチン、緩衝剤、バルク甘味料、着色剤)と混合する。この暖かいかたまりをミキサーから排出し、台車上のトレイ上に積み重ね、次のステップの開始まで、条件を調整した場所に保管する。これはガムを冷却するためである。
【0196】
その後、ローリングとスコアリングとを行う。ゴムを押し出して厚いシートにし、複数セットのカレンダーロールでローリングして正しい厚さにする。スコアリングロールは通常2セットで、このシートを正しい大きさにカットする。
【0197】
次いで、シートを、トレイ上の条件付けられた場所に移し、そこで、シートを、折り取るのに十分な硬さになるように冷却する。次いで、この条件付けられたゴムシートを、回転ドラムであるブレーカーに通し、シートをスコアに沿って別々のガム小片に分ける。
【0198】
選別工程で、変形したガムを取り除く。合格したガムは金属探知機に通される。
【0199】
II)圧縮
圧縮(通常はドライ法)によって製造されたチューインガム、すなわち、錠剤化したガム、は、特別なガムベースから造られる。混合物の正しいサイズの粒子を与える造粒のためには、高速ミキサーを使用することができる。次いで、この混合物はタブレットマシーンで圧縮される。
【0200】
選別工程で、変形したガムを取り除く。合格したガムは金属探知機に通される。
【0201】
(実施例6)錠剤コア
本実施例の説明は、本発明を本発明に基づく異なる錠剤コアの製造方法に限定するものではない。
【0202】
(実施例6A)直接圧縮可能なニコチン錠剤(コア重量1200mg)
【0203】
【表17】

【0204】
製造方法:
上記成分を乾式混合した後、錠剤コアに圧縮する。次いで実施例1〜4の任意の方法を用いてこのコアをコーティングする。
【0205】
(実施例6B)湿式顆粒化されたニコチンチュアブル錠(コア重量600mg)
【0206】
【表18】

【0207】
製造方法:
ニコチン酒石酸水素塩とデキストロース粉を乾式混合し、次いで流動床造粒機でPVPの水溶液を用いて造粒する。次いで造粒された材料を篩い分けし、PEGと乾式混合し、錠剤に圧縮する。次いで実施例1〜4のいずれかの方法を用いてこのコアをコーティングする。
【0208】
〔実施態様〕
(1) 少なくとも1つの緩衝化又は非緩衝化コアと、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤と、少なくとも1つのコーティング層と、場合により1以上の他の添加剤とを含むニコチンの口腔内送達のためのコーティングされた医薬品であって、前記少なくとも1つのコーティング層が緩衝化され、その際少なくとも1種類のアミノ酸及び/又はその塩が緩衝剤として使用され、該製品が、前記少なくとも1種類のアミノ酸及び/又はその塩のpH調整能が不充分である場合にはpH調整化合物を含む、医薬品。
(2) 前記少なくとも1種類のアミノ酸の内、少なくとも1種類の内因性のアミノ酸が存在することを特徴とする、実施態様1に記載の経口製剤。
(3) 前記少なくとも1種類の内因性アミノ酸が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン及びバリンから選択されることを特徴とする、実施態様2に記載の経口製剤。
(4) 前記少なくとも1種類のアミノ酸が、システイン酸、N−グリシルグリシン及びオルニチンから選択されることを特徴とする、実施態様1に記載の経口製剤。
(5) 前記少なくとも1つのコアが、チューインガム、チュアブル錠、錠剤、溶解錠、トローチ剤及びハードボイルドキャンディから選択される、実施態様1〜4のいずれかに記載の製品。
(6) 前記任意の形態のニコチンが少なくとも1つのコーティング層の一部である、実施態様1〜5のいずれかに記載の製品。
(7) 前記少なくとも1つのコアが緩衝化されている、実施態様1〜6のいずれかに記載の製品。
(8) 前記任意の形態のニコチンが少なくとも1つのコアの一部である、実施態様1〜7のいずれかに記載の製品。
(9) 前記製品が患者に投与される際に前記患者の唾液のpHが0.3〜4pH単位だけ上昇するように少なくとも1つのコーティング層が緩衝化されている、実施態様1〜8のいずれかに記載の製品。
(10) 前記製品が患者に投与される際に前記患者の唾液のpHが0.5〜2pH単位だけ上昇するように少なくとも1つのコーティング層が緩衝化されている、実施態様9に記載の製品。
(11) 前記患者の唾液のpHが、少なくともpH7に、最大でpH10にまで上昇し、好ましくは少なくともpH8に、最大でpH9.5にまで上昇する、実施態様9又は10に記載の製品。
(12) 少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1種類のアミノ酸と、カリウム若しくはナトリウムなどのアルカリ金属、又はアンモニウムの、モノ炭酸塩、重炭酸塩又はセスキ炭酸塩のような炭酸塩、グリシン酸塩、リン酸塩、グリセロリン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、又はクエン酸塩、トロメタモール及びこれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤とを併用することによって緩衝化されており、前記少なくとも1つのチューインガム又は錠剤のコアの、前記場合に応じて行われる緩衝化が、前記選択に基づいた緩衝剤の使用によって行われる、実施態様1〜11のいずれかに記載の製品。
(13) 前記任意の形態のニコチンが、ニコチン塩、遊離塩基の形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体又は任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン;セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1〜12のいずれかに記載の製品。
(14) 前記ニコチン包接複合体がニコチン−β−シクロデキストリン複合体のようなシクロデキストリン複合体である、実施態様13に記載の製品。
(15) 前記ニコチンカチオン交換体が、ポリアクリレートカチオン交換体である、実施態様13に記載の製品。
(16) 前記ニコチン塩が、モノ酒石酸塩、酒石酸水素塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、又は塩酸塩で形成されている塩である、実施態様13に記載の製品。
(17) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティングチューインガム又は錠剤製品1個当たり0.05〜8mgの量で存在する、実施態様1〜16のいずれかに記載の製品。
(18) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティング製品1個当たり0.1〜6mgの量で存在する、実施態様17に記載の製品。
(19) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティング製品1個当たり0.5〜5mgの量で存在する、実施態様18に記載の製品。
(20) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜5mgの量で含まれる、実施態様1〜19のいずれかに記載の製品。
(21) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜3mgの量で含まれる、実施態様20に記載の製品。
(22) 前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜2mgの量で含まれる、実施態様21に記載の製品。
(23) 前記ニコチン模倣剤が、ヒリヒリする感じを与える、ニコチンのような刺すように熱い風味を有する物質である、実施態様1〜22のいずれかに記載の製品。
(24) 前記ニコチン模倣剤が、カプサイシン、ピペリン、及びジンゲロン又はこれらの任意の組み合わせのいずれかから選択される、実施態様23に記載の製品。
(25) 前記場合に応じて用いられる少なくとも1以上の添加剤が、防腐剤などの安定剤(例、酸化防止剤)、軟化剤、増粘剤、充填剤、歯の美白剤、ブレスフレッシュナー、乳化剤、流動促進剤、潤滑剤、甘味料、香味剤、芳香剤、エンハンサー、着色剤、ビタミン、ミネラル、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、実施態様1〜24のいずれかに記載の製品。
(26) 前記コーティング中、特にハードコーティングが使用される場合に、前記ニコチン、好ましくはニコチン酒石酸水素塩(NHT)の形態のニコチン、及び前記緩衝剤が、場合に応じて水分バリアによって分離された別々の層内に保持されることによって互いに分離され、前記水分バリアは、無極性脂質及びワックス(例えば、カルナウバワックス)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリメタクリレート、又はそれらの組合せから選択される物質を、好ましくは1以上の可塑剤及び/又は疎水性脂質ベースのフィルム(例えばステアリン酸含有フィルム)と組み合わせて含む、実施態様1〜25のいずれかに記載の製品。
(27) 任意の形態のニコチンを患者に送達する方法であって、
a)患者の口腔内に実施態様1〜26のいずれかに基づくコーティング製品を投与する工程と、
b)前記コーティング製品中の前記任意の形態のニコチンを前記口腔内の唾液中に放出させて前記患者の体循環に吸収させる工程と、を含む、方法。
(28) c)所定の時間にわたって持続される方法で、前記任意の形態のニコチンを前記患者に投与する工程を更に含む、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記時間が少なくとも5、10、20、30、又は40分である、実施態様28に記載の方法。
(30) 喫煙したいという衝動、ないしは別の方法でニコチン含有タバコ材料を使用したいという衝動を低減し、かつ/又は喫煙することなく喫煙の充足感を与えるための方法であって、
a)前記ニコチン含有タバコ材料を実施態様1〜26のいずれかに基づくコーティング製品で少なくとも部分的に置き換える工程と、
b)実施態様1〜26のいずれかに基づく任意の形態のニコチンを含有するコーティング製品を患者の口腔内に投与する工程と、
c)前記コーティング製品中の前記任意の形態のニコチンを前記口腔内の唾液中に放出させて前記患者に吸収させる工程とを含む、方法。
(31) 前記任意の形態のニコチンを所定の時間にわたって持続される方法で前記患者に投与する工程を更に含む、実施態様26〜30のいずれかに記載の方法。
(32) 前記時間が少なくとも5、10、20、30、又は40分である、実施態様31に記載の方法。
(33) 任意の形態のニコチンを患者に送達するためのシステムであって、実施態様1〜26のいずれかに記載のコーティング製品、及び、喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための少なくとも1つの他の手段又は方法を含む、システム。
(34) 喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための、かつ/又は、喫煙することなく喫煙の充足感を与えるためのシステムであって、実施態様1〜26に記載のコーティング製品、及び、喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための少なくとも1つの他の手段又は方法を含む、システム。
(35) 前記少なくとも1つの他の手段又は方法が、マウススプレー、鼻用スプレー、経皮パッチ、吸入デバイス、トローチ剤、錠剤による投与、並びに、非経口的方法、皮下的方法、及び経粘膜的方法;又はタバコの使用を介した投与からなる群から選択される付随的手段若しくは方法、又は同時に実行される手段若しくは方法である、実施態様33又は34に記載のシステム。
(36) 前記少なくとも1つの他の手段又は方法がニコチンを投与することを含む、実施態様35に記載のシステム。
(37) 任意の形態のニコチンを患者に送達するための実施態様1〜26のいずれかに記載のコーティング製品の使用。
(38) 実施態様1〜26のいずれかに記載のコーティングを製造するための方法であって、
a)少なくとも1つのコアを与え、かつ/又は少なくとも1つのニコチン含有コアを与える工程と、
b)任意の形態のニコチンを与える工程と、
c)緩衝剤として少なくとも1種類のアミノ酸を用いて緩衝化された少なくとも1つのコーティングを与える工程と、
d)前記任意の形態のニコチンを前記少なくとも1つのコア及び/又は前記少なくとも1つのコーティングに添加する工程と、
e)前記少なくとも1つのコアを前記少なくとも1つの緩衝化されたコーティング層の少なくとも1つの層でコーティングする工程と、を含む方法。
(39) f)前記少なくとも1つのコアを緩衝化する工程と、及び/又は、
g)緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層を与える工程と、場合に応じて、
h)前記任意の形態のニコチンを前記緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層の内の少なくとも1つに添加する工程と、場合に応じて、
i)前記コーティング中の前記ニコチン及び前記コーティング中の緩衝剤を、好ましくは水分バリアによって分離された、別々の層に与える工程とを更に含む、実施態様38に記載の方法。
(40) 前記任意の形態のニコチンが、ニコチン塩、遊離塩基の形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体又は任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン;セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様38又は39に記載の方法。
(41) 前記少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1種類のアミノ酸と、カリウム若しくはナトリウムなどのアルカリ金属、又はアンモニウムの重炭酸塩又はセスキ炭酸塩を含めた炭酸塩、グリシン酸塩、リン酸塩、グリセロリン酸塩、又はクエン酸塩、トロメタモール及びこれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤とを併用することによって緩衝化され、少なくとも1つのコーティング層は、患者への前記製品の投与の際に前記患者の唾液のpHが0.3〜4pH単位だけ上昇するように緩衝化されている、実施態様38又は39に記載の方法。
(42) 少なくとも1つのコーティング層は、患者への前記製品の投与の際に前記患者の唾液のpHが0.5〜2pH単位だけ上昇するように緩衝化されている、実施態様41に記載の方法。
(43) 前記製品がチューインガム又は錠剤であり、工程a)の、前記少なくとも1つのコアを与えることが、
a1)ガム又は錠剤コア塊を与える工程と、
a2)前記ガム又は錠剤塊を混合、ローリング及びスコアリング、又は成形、又は押出し成形する工程とを含む、実施態様38〜42のいずれかに記載の方法。
(44) 工程a)の、前記コアを与えることが、原料を直接圧縮することによって行われる、実施態様38〜43のいずれかに記載の方法。
(45) 前記少なくとも1つの緩衝化されたコーティングの少なくとも1つの層による、前記少なくとも1つのコアのコーティングが、
a)フィルムコーティング工程、及び/又は、
b)プレスコーティング工程、及び/又は、
c)ハードコーティング工程、及び/又は、
d)溶融コーティング工程を含む、実施態様38〜44のいずれかに記載の方法。
(46) 治療に使用するための実施態様1〜26のいずれかに記載の製品。
(47) 前記治療が、タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療である、実施態様46に記載の製品。
(48) タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療のための実施態様1〜26のいずれかに記載の製品を製造するためのニコチンの使用。
(49) タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療のための実施態様1〜26のいずれかに記載のニコチン含有製品を製造するためのチューインガム又は錠剤の使用。
(50) ガムコアが、任意の形態のニコチン、ガムベース、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の甘味料、及び1以上の香味料を含み、コーティングが、任意の形態のニコチン、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の甘味料、及びゼラチンを含むハードコーティングである、ニコチン含有コーティングチューインガム。
(51) 錠剤コアが、任意の形態のニコチン、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の結合剤、1以上の甘味料、及び1以上の香味料を含み、コーティングが少なくとも1種類のアミノ酸を含むとともにハードコーティング、フィルムコーティング、プレスコーティング又は溶融コーティングである、ニコチン含有コーティング錠剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの緩衝化又は非緩衝化コアと、任意の形態のニコチン及び/又はニコチン模倣剤と、少なくとも1つのコーティング層と、場合により1以上の他の添加剤とを含むニコチンの口腔内送達のためのコーティングされた医薬品であって、前記少なくとも1つのコーティング層が緩衝化され、その際少なくとも1種類のアミノ酸及び/又はその塩が緩衝剤として使用され、該製品が、前記少なくとも1種類のアミノ酸及び/又はその塩のpH調整能が不充分である場合にはpH調整化合物を含む、医薬品。
【請求項2】
前記少なくとも1種類のアミノ酸の内、少なくとも1種類の内因性のアミノ酸が存在することを特徴とする、請求項1に記載の経口製剤。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の内因性アミノ酸が、アルギニン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン及びバリンから選択されることを特徴とする、請求項2に記載の経口製剤。
【請求項4】
前記少なくとも1種類のアミノ酸が、システイン酸、N−グリシルグリシン及びオルニチンから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の経口製剤。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコアが、チューインガム、チュアブル錠、錠剤、溶解錠、トローチ剤及びハードボイルドキャンディから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の製品。
【請求項6】
前記任意の形態のニコチンが少なくとも1つのコーティング層の一部である、請求項1〜5のいずれかに記載の製品。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコアが緩衝化されている、請求項1〜6のいずれかに記載の製品。
【請求項8】
前記任意の形態のニコチンが少なくとも1つのコアの一部である、請求項1〜7のいずれかに記載の製品。
【請求項9】
前記製品が患者に投与される際に前記患者の唾液のpHが0.3〜4pH単位だけ上昇するように少なくとも1つのコーティング層が緩衝化されている、請求項1〜8のいずれかに記載の製品。
【請求項10】
前記製品が患者に投与される際に前記患者の唾液のpHが0.5〜2pH単位だけ上昇するように少なくとも1つのコーティング層が緩衝化されている、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
前記患者の唾液のpHが、少なくともpH7に、最大でpH10にまで上昇し、好ましくは少なくともpH8に、最大でpH9.5にまで上昇する、請求項9又は10に記載の製品。
【請求項12】
少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1種類のアミノ酸と、カリウム若しくはナトリウムなどのアルカリ金属、又はアンモニウムの、モノ炭酸塩、重炭酸塩又はセスキ炭酸塩のような炭酸塩、グリシン酸塩、リン酸塩、グリセロリン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、又はクエン酸塩、トロメタモール及びこれらの混合物からなる群から選択される緩衝剤とを併用することによって緩衝化されており、前記少なくとも1つのチューインガム又は錠剤のコアの、前記場合に応じて行われる緩衝化が、前記選択に基づいた緩衝剤の使用によって行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の製品。
【請求項13】
前記任意の形態のニコチンが、ニコチン塩、遊離塩基の形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体又は任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン;セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の製品。
【請求項14】
前記ニコチン包接複合体がニコチン−β−シクロデキストリン複合体のようなシクロデキストリン複合体である、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記ニコチンカチオン交換体が、ポリアクリレートカチオン交換体である、請求項13に記載の製品。
【請求項16】
前記ニコチン塩が、モノ酒石酸塩、酒石酸水素塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、又は塩酸塩で形成されている塩である、請求項13に記載の製品。
【請求項17】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティングチューインガム又は錠剤製品1個当たり0.05〜8mgの量で存在する、請求項1〜16のいずれかに記載の製品。
【請求項18】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティング製品1個当たり0.1〜6mgの量で存在する、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、コーティング製品1個当たり0.5〜5mgの量で存在する、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜5mgの量で含まれる、請求項1〜19のいずれかに記載の製品。
【請求項21】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜3mgの量で含まれる、請求項20に記載の製品。
【請求項22】
前記任意の形態のニコチンが、前記遊離塩基の形態のニコチンとして計算した場合、少なくとも1つのコーティング層中に0.1〜2mgの量で含まれる、請求項21に記載の製品。
【請求項23】
前記ニコチン模倣剤が、ヒリヒリする感じを与える、ニコチンのような刺すように熱い風味を有する物質である、請求項1〜22のいずれかに記載の製品。
【請求項24】
前記ニコチン模倣剤が、カプサイシン、ピペリン、及びジンゲロン又はこれらの任意の組み合わせのいずれかから選択される、請求項23に記載の製品。
【請求項25】
前記場合に応じて用いられる少なくとも1以上の添加剤が、防腐剤などの安定剤(例、酸化防止剤)、軟化剤、増粘剤、充填剤、歯の美白剤、ブレスフレッシュナー、乳化剤、流動促進剤、潤滑剤、甘味料、香味剤、芳香剤、エンハンサー、着色剤、ビタミン、ミネラル、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜24のいずれかに記載の製品。
【請求項26】
前記コーティング中、特にハードコーティングが使用される場合に、前記ニコチン、好ましくはニコチン酒石酸水素塩(NHT)の形態のニコチン、及び前記緩衝剤が、場合に応じて水分バリアによって分離された別々の層内に保持されることによって互いに分離され、前記水分バリアは、無極性脂質及びワックス(例えば、カルナウバワックス)、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリメタクリレート、又はそれらの組合せから選択される物質を、好ましくは1以上の可塑剤及び/又は疎水性脂質ベースのフィルム(例えばステアリン酸含有フィルム)と組み合わせて含む、請求項1〜25のいずれかに記載の製品。
【請求項27】
任意の形態のニコチンを患者に送達する方法であって、
a)患者の口腔内に請求項1〜26のいずれかに基づくコーティング製品を投与する工程と、
b)前記コーティング製品中の前記任意の形態のニコチンを前記口腔内の唾液中に放出させて前記患者の体循環に吸収させる工程と、を含む、方法。
【請求項28】
c)所定の時間にわたって持続される方法で、前記任意の形態のニコチンを前記患者に投与する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記時間が少なくとも5、10、20、30、又は40分である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
喫煙したいという衝動、ないしは別の方法でニコチン含有タバコ材料を使用したいという衝動を低減し、かつ/又は喫煙することなく喫煙の充足感を与えるための方法であって、
a)前記ニコチン含有タバコ材料を請求項1〜26のいずれかに基づくコーティング製品で少なくとも部分的に置き換える工程と、
b)請求項1〜26のいずれかに基づく任意の形態のニコチンを含有するコーティング製品を患者の口腔内に投与する工程と、
c)前記コーティング製品中の前記任意の形態のニコチンを前記口腔内の唾液中に放出させて前記患者に吸収させる工程とを含む、方法。
【請求項31】
前記任意の形態のニコチンを所定の時間にわたって持続される方法で前記患者に投与する工程を更に含む、請求項26〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記時間が少なくとも5、10、20、30、又は40分である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
任意の形態のニコチンを患者に送達するためのシステムであって、請求項1〜26のいずれかに記載のコーティング製品、及び、喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための少なくとも1つの他の手段又は方法を含む、システム。
【請求項34】
喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための、かつ/又は、喫煙することなく喫煙の充足感を与えるためのシステムであって、請求項1〜26に記載のコーティング製品、及び、喫煙に対する又はタバコの使用に対する衝動を低減させるための少なくとも1つの他の手段又は方法を含む、システム。
【請求項35】
前記少なくとも1つの他の手段又は方法が、マウススプレー、鼻用スプレー、経皮パッチ、吸入デバイス、トローチ剤、錠剤による投与、並びに、非経口的方法、皮下的方法、及び経粘膜的方法;又はタバコの使用を介した投与からなる群から選択される付随的手段若しくは方法、又は同時に実行される手段若しくは方法である、請求項33又は34に記載のシステム。
【請求項36】
前記少なくとも1つの他の手段又は方法がニコチンを投与することを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
任意の形態のニコチンを患者に送達するための請求項1〜26のいずれかに記載のコーティング製品の使用。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれかに記載のコーティングを製造するための方法であって、
a)少なくとも1つのコアを与え、かつ/又は少なくとも1つのニコチン含有コアを与える工程と、
b)任意の形態のニコチンを与える工程と、
c)緩衝剤として少なくとも1種類のアミノ酸を用いて緩衝化された少なくとも1つのコーティングを与える工程と、
d)前記任意の形態のニコチンを前記少なくとも1つのコア及び/又は前記少なくとも1つのコーティングに添加する工程と、
e)前記少なくとも1つのコアを前記少なくとも1つの緩衝化されたコーティング層の少なくとも1つの層でコーティングする工程と、を含む方法。
【請求項39】
f)前記少なくとも1つのコアを緩衝化する工程と、及び/又は、
g)緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層を与える工程と、場合に応じて、
h)前記任意の形態のニコチンを前記緩衝化されていない少なくとも1つのコーティング層の内の少なくとも1つに添加する工程と、場合に応じて、
i)前記コーティング中の前記ニコチン及び前記コーティング中の緩衝剤を、好ましくは水分バリアによって分離された、別々の層に与える工程とを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記任意の形態のニコチンが、ニコチン塩、遊離塩基の形態のニコチン、ニコチン誘導体(例えばニコチンカチオン交換体)、ニコチン包接複合体又は任意の非共有結合のニコチン;ゼオライトと結合したニコチン;セルロース又はデンプンマイクロスフェアと結合したニコチン;及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つのコーティング層が、少なくとも1種類のアミノ酸と、カリウム若しくはナトリウムなどのアルカリ金属、又はアンモニウムの重炭酸塩又はセスキ炭酸塩を含めた炭酸塩、グリシン酸塩、リン酸塩、グリセロリン酸塩、又はクエン酸塩、トロメタモール及びこれらの混合物からなる群から選択された緩衝剤とを併用することによって緩衝化され、少なくとも1つのコーティング層は、患者への前記製品の投与の際に前記患者の唾液のpHが0.3〜4pH単位だけ上昇するように緩衝化されている、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つのコーティング層は、患者への前記製品の投与の際に前記患者の唾液のpHが0.5〜2pH単位だけ上昇するように緩衝化されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記製品がチューインガム又は錠剤であり、工程a)の、前記少なくとも1つのコアを与えることが、
a1)ガム又は錠剤コア塊を与える工程と、
a2)前記ガム又は錠剤塊を混合、ローリング及びスコアリング、又は成形、又は押出し成形する工程とを含む、請求項38〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
工程a)の、前記コアを与えることが、原料を直接圧縮することによって行われる、請求項38〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの緩衝化されたコーティングの少なくとも1つの層による、前記少なくとも1つのコアのコーティングが、
a)フィルムコーティング工程、及び/又は、
b)プレスコーティング工程、及び/又は、
c)ハードコーティング工程、及び/又は、
d)溶融コーティング工程を含む、請求項38〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
治療に使用するための請求項1〜26のいずれかに記載の製品。
【請求項47】
前記治療が、タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療である、請求項46に記載の製品。
【請求項48】
タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療のための請求項1〜26のいずれかに記載の製品を製造するためのニコチンの使用。
【請求項49】
タバコ又はニコチン依存症、アルツハイマー病、クローン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、潰瘍性大腸炎、及び禁煙後の体重コントロールからなる群から選択される疾患の治療のための請求項1〜26のいずれかに記載のニコチン含有製品を製造するためのチューインガム又は錠剤の使用。
【請求項50】
ガムコアが、任意の形態のニコチン、ガムベース、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の甘味料、及び1以上の香味料を含み、コーティングが、任意の形態のニコチン、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の甘味料、及びゼラチンを含むハードコーティングである、ニコチン含有コーティングチューインガム。
【請求項51】
錠剤コアが、任意の形態のニコチン、少なくとも1種類のアミノ酸、1以上の結合剤、1以上の甘味料、及び1以上の香味料を含み、コーティングが少なくとも1種類のアミノ酸を含むとともにハードコーティング、フィルムコーティング、プレスコーティング又は溶融コーティングである、ニコチン含有コーティング錠剤。

【公表番号】特表2010−526876(P2010−526876A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508332(P2010−508332)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000278
【国際公開番号】WO2008/140372
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507362719)マクニール アーベー (8)
【氏名又は名称原語表記】MCNEIL AB
【Fターム(参考)】