説明

アミロイドベータ産生制御因子を用いた阻害剤スクリーニング方法

【課題】有効なアルツハイマー病治療薬の提供。
【解決手段】γ−セクレターゼ活性との関係が知られていなかった特定の12種類のタンパク質の発現もしくは機能を抑制する物質を含有してなる、βアミロイド(Aβ)産生抑制剤、前記タンパク質を用いたAβ産生抑制物質、アルツハイマー病の予防・治療薬のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病の原因であるβアミロイドの産生抑制剤、アルツハイマー病の予防及び治療剤、並びにそのような薬剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)の脳に蓄積するβアミロイド(Aβ)ペプチドは、前駆体タンパク質であるアミロイド前駆タンパク質(APP)からβ−セクレターゼおよびγ−セクレターゼにより切り出されて生成し、これが重合化して老人斑が形成される。Aβの蓄積は、AD脳に特異性が高くAD初期に生じる病変である。さらに家族性アルツハイマー病(FAD)では、病因遺伝子APP及びプレセニリン(PS)の変異により凝集性の高いAβ42の産生が亢進する、などの理由から、AβはADの病因物質と考えられ(アミロイド仮説)、ADの根本的治療法の治療ターゲットとして有力視されている(非特許文献1)。
【0003】
Aβペプチド産生は、その最終段階の切断を行う責任酵素であるγ−セクレターゼを阻害することにより抑制可能である。しかし、これまでに報告されているγ−セクレターゼ阻害剤では、該酵素の別の生理的基質であるNotchの切断も阻害し、発生や分化に関与するシグナルを阻害するため、腸管上皮形成障害や免疫異常などの末梢性副作用が問題になっている(非特許文献2)。一方で、Notchを介したシグナル経路で異常が発生すると、組織や器官の発生・形成に重大な異常がおこるだけでなく、癌の原因となる場合もある。Notch遺伝子は、発ガン遺伝子として明らかにされており、Notchを切断するγ-セクレターゼの活性を調節することが、制癌効果をもたらすことも知られている(非特許文献3)。
近年、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)がAβ42の産生に特異的な阻害能(γ−セクレターゼモジュレーター活性)を示すことが報告され、AD治療薬として開発が進められている(非特許文献4)。このように、今後、脳特異的にγ−セクレターゼの活性を阻害する化合物、あるいはγ−セクレターゼモジュレーターが、末梢性副作用を回避した理想的な治療薬となりうると予測されている。
【0004】
γ−セクレターゼは、プレセニリン(PS),ニカストリン(NCT),Aph-1およびPen-2により構成される膜貫通型アスパラギン酸プロテアーゼである(非特許文献5)。γ−セクレターゼは、Aβ40およびAβ42を産生するが、その詳細なAβペプチド産生の制御メカニズムについては明確になっていない。最近、TMP21が、γ−セクレターゼに結合し活性を制御する分子として同定された(非特許文献6)。
一方、膜結合型タンパク質をコードする遺伝子(ATP2A2, FLOT2)をRNAi法でノックダウンしたところ、Aβの産生が減少することなどが報告されている(非特許文献7、8)。
さらに、本発明者らは、これまでに、γ−セクレターゼに結合してAβの産生を制御する複数の因子を同定している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mattson, M.P., Nature (2004) 430, 631-639
【非特許文献2】Wong, G.T. et al., J.Biol.Chem. (2004) 279, 12876
【非特許文献3】Purow B., Curr. Pharm. Biotechnol. (2009) 10(2):154-60
【非特許文献4】Kukar, T., Nat.Med. (2005) 11, 545-50
【非特許文献5】Haass, C., EMBO J. (2004) 23, 483-488
【非特許文献6】Chen, F. et al., Nature (2006) 440, 1208-12
【非特許文献7】Green, K.N. et al., J. Cell Biol. (2008) 181, 1107-1116
【非特許文献8】Schneider, A. et al., J. Neurosci. (2008) 28, 2874-2882
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/140694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有効なAD治療薬の開発が切望されている。本発明の目的は、γ−セクレターゼに結合してその活性を促進/増強する新規因子を同定し、該因子の発現や機能を抑制することを機序とするγ−セクレターゼ阻害剤あるいはモジュレーター、Aβ産生抑制剤、AD予防・治療剤を提供することであり、また、該因子を用いてそのような薬剤をスクリーニングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、脳組織においてγ−セクレターゼに結合しAβの産生を制御する分子が存在するのではないかと着想し、インヒビタープルダウン法(TOrAC法)(国際公開第2010/053115号)を用いてγ−セクレターゼと結合するタンパク質をヒトおよびラット脳より探索し、脳に発現する複数の新規γ−セクレターゼ結合因子を見出した。さらに、Aβの前駆体タンパク質であるAPPを過剰発現するヒト胎児腎臓細胞株(HEK-APP)において、これらの結合因子の発現をRNAi法によりノックダウンし、Aβ産生能への影響をELISA法で評価した。その結果、γ−セクレターゼ活性との関係が知られていなかった12因子について、それらの発現量を低下させることによりAβの産生を特異的に抑制できるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]以下のタンパク質:
(P1) F-box only protein 2;
(P2) 14-3-3 protein eta;
(P3) 60S ribosomal protein L22;
(P4) Endoplasmin;
(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;
(P6) Prostaglandin E synthase 3;
(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;
(P8) Protein disulfide-isomerase;
(P9) Cytochrome c;
(P10) Phospholipid scramblase 3;
(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および
(P12) Tetraspanin-2;
から選ばれるタンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)の発現または機能を抑制する、1以上の物質を含有してなる、Aβ産生抑制剤。
[2]タンパク質Pnの発現を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、上記[1]に記載の剤。
(a)タンパク質Pnをコードする遺伝子Gn:
(G1) FBXO2;
(G2) YWHAH;
(G3) RPL22;
(G4) HSP90B1;
(G5) GNG2;
(G6) PTGES3;
(G7) HSP90AA1;
(G8) P4HB;
(G9) CYCS;
(G10) PLSCR3;
(G11) VAMP1;または
(G12) TSPAN2;
の転写産物に対するアンチセンス核酸
(b)遺伝子Gnの転写産物に対するリボザイム核酸
(c)遺伝子Gnの転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
[3]タンパク質Pnの機能を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、上記[1]に記載の剤。
(a)タンパク質Pnと結合する抗体
(b)タンパク質Pnと結合する低分子化合物
(c)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する化合物
[4]Aβが、Aβ40またはAβ42である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の剤。
[5]アルツハイマー病もしくは癌の治療または予防のための、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の剤。
[6]哺乳動物において、以下のタンパク質:
(P1) F-box only protein 2;
(P2) 14-3-3 protein eta;
(P3) 60S ribosomal protein L22;
(P4) Endoplasmin;
(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;
(P6) Prostaglandin E synthase 3;
(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;
(P8) Protein disulfide-isomerase;
(P9) Cytochrome c;
(P10) Phospholipid scramblase 3;
(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および
(P12) Tetraspanin-2;
から選ばれるタンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)の発現または機能を抑制することを含む、該哺乳動物におけるAβ産生の抑制方法。
[7]有効量の、タンパク質Pnの発現または機能を抑制する1以上の物質を哺乳動物に投与することを含む、上記[6]に記載の方法。
[8]タンパク質Pnの発現を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、上記[7]に記載の方法。
(a)タンパク質Pnをコードする遺伝子Gn:
(G1) FBXO2;
(G2) YWHAH;
(G3) RPL22;
(G4) HSP90B1;
(G5) GNG2;
(G6) PTGES3;
(G7) HSP90AA1;
(G8) P4HB;
(G9) CYCS;
(G10) PLSCR3;
(G11) VAMP1;または
(G12) TSPAN2;
の転写産物に対するアンチセンス核酸
(b)遺伝子Gnの転写産物に対するリボザイム核酸
(c)遺伝子Gnの転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
[9]タンパク質Pnの機能を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、上記[7]に記載の方法。
(a)タンパク質Pnと結合する抗体
(b)タンパク質Pnと結合する低分子化合物
(c)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する化合物
[10]Aβが、Aβ40またはAβ42である、上記[6]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]アルツハイマー病もしくは癌の治療または予防のための、上記[6]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量もしくは前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質の活性を低下させる物質を選択することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
[13]以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)(a1)遺伝子Gn(nは1〜12のいずれかの整数)もしくは(a2) 遺伝子Gn(nは1〜12のいずれかの整数)の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子を発現する細胞に、被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞における(b1)遺伝子Gnもしくは(b2)レポーター遺伝子の発現量を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、発現量を低下させる物質をAβ産生抑制物質の候補として選択する工程
[14]以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)アミロイド前駆タンパク質(APP)を発現する細胞に、前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質および被検物質を接触させる工程
(b)前記タンパク質の活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記タンパク質の活性を低下させる物質を選択する工程
[15]前記タンパク質が前記細胞自体により提供される、上記[14]に記載の方法。
[16]前記タンパク質の活性をAβの産生量を指標として測定することを特徴とする、上記[14]または[15]に記載の方法。
[17]以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)γ−セクレターゼを発現する細胞もしくはその細胞膜画分に、前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質および被検物質を接触させる工程
(b)γ−セクレターゼ活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、γ−セクレターゼ活性を低下またはモジュレートさせる物質を選択する工程
[18]前記タンパク質が前記細胞自体により提供される、上記[17]に記載の方法。
[19]タンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)とγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
[20]以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)タンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)およびγ−セクレターゼと、被検物質とを接触させる工程
(b)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を低下させる物質を選択する工程
[21]前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物において、アルツハイマー病の病態を反映する表現型を改善する物質を選択することを特徴とする、アルツハイマー病の治療または予防薬のスクリーニングまたは薬効評価方法。
[22]以下の(a)〜(c)の工程を含む、アルツハイマー病の治療または予防薬のスクリーニングまたは薬効評価方法。
(a)前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物に被検物質を投与する工程
(b)該動物における、アルツハイマー病の病態を反映する少なくとも1つの表現型を評価する工程
(c)被検物質の非投与時において評価した場合と比較して、前記表現型を改善させる物質を選択する工程
[23]前記表現型が、脳組織、脳脊髄液、血液中などの組織中のAβ量、神経細胞死、中枢神経系の炎症反応、認知能力、アミロイドプラークの蓄積量、脳内血流量および脳内グルコース代謝量からなる群より選択される、上記[22]に記載の方法。
[24]アルツハイマー病または癌の発症または発症リスクの判定方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)被験動物由来の試料を提供する工程
(b)該試料中の、前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量もしくは前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質の活性を測定する工程
(c)正常動物由来の試料において測定した場合と比較して、前記発現量もしくは活性が上昇している被験動物を、アルツハイマー病または癌を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明に従って、γ-セクレターゼの活性を調節する新規タンパク質を利用することにより、Aβの産生を阻害する化合物のスクリーニング、抗体や核酸を用いた医療の開発が可能となる。これより、ADやあるいは癌などの疾患の予防および治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Affigel−DAPT+Cholesterol樹脂の構造を示す図である。
【図2】Affigel−DAPT+Cholesterol樹脂を用いてγ−セクレターゼの既知コンポーネントがプルダウンされたことを示す図である。
【図3】HEK-APP細胞に対するsiRNAによる遺伝子ノックダウンによる、内在性Aβ42の産生抑制を示す図である(導入siRNA量:0.1pmol/well)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下のタンパク質:
(P1) F-box only protein 2;
(P2) 14-3-3 protein eta;
(P3) 60S ribosomal protein L22;
(P4) Endoplasmin;
(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;
(P6) Prostaglandin E synthase 3;
(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;
(P8) Protein disulfide-isomerase;
(P9) Cytochrome c;
(P10) Phospholipid scramblase 3;
(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および
(P12) Tetraspanin-2;
から選ばれるタンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)の発現を抑制する物質または機能を抑制する物質を含有してなる、Aβ産生抑制剤を提供する。
本発明におけるタンパク質Pn[(P1) F-box only protein 2;(P2) 14-3-3 protein eta;(P3) 60S ribosomal protein L22;(P4) Endoplasmin;(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;(P6) Prostaglandin E synthase 3;(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;(P8) Protein disulfide-isomerase;(P9) Cytochrome c;(P10) Phospholipid scramblase 3;(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および(P12) Tetraspanin-2; ]は、配列番号:2n(nは1〜12のいずれかの整数)で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。本明細書において、タンパク質およびペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。
タンパク質Pnは、ヒトや他の温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、肺細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉(例、平滑筋、骨格筋)、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、白色脂肪組織、褐色脂肪組織)など]等から、自体公知のタンパク質分離精製技術により単離・精製されるものであってもよい。
【0013】
「配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」とは、
(a) 配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と約80%以上の相同性を有するアミノ酸配列;
(b) 配列番号:2nで表されるアミノ酸配列において、1〜50個のアミノ酸が置換および/または欠失および/または挿入および/または付加されたアミノ酸配列;
(c) 配列番号:2nで表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質の他の哺乳動物におけるオルソログのアミノ酸配列;または
(d) 配列番号:2nで表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質もしくは上記(c)のオルソログのスプライスバリアント、アレル変異体もしくは多型におけるアミノ酸配列
を意味する。
【0014】
ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247:1306-1310 (1990)を参照)。
【0015】
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込まれている(Altschulら, Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402 (1997))]、Needlemanら, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller, CABIOS, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれている]、Pearsonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられ得る。
【0016】
上記(a)において、より好ましくは、「配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」とは、配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、いっそう好ましくは約97%以上、特に好ましくは約98%以上、最も好ましくは約99%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。
「配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質」は、配列番号:2nで表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2nで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質である。
【0017】
ここで「活性」とは、Aβの産生を促進する活性をいう。また、「実質的に同質」とは、例えば生理学的に、あるいは薬理学的にみて、その性質が定性的に同じであることを意味する。したがって、Aβ産生促進活性が同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例、約0.1〜約10倍)や、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
Aβ産生促進活性の測定は、自体公知の方法に準じて、タンパク質の存在下および非存在下でAβ産生量(好ましくはAβ40またはAβ42の産生量)を測定し、比較することによって行うことができる。
【0018】
また、本発明におけるタンパク質Pnとして、上記(b)に示すとおり、例えば、(i)配列番号:2nで表されるアミノ酸配列中の1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2nで表されるアミノ酸配列に1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2nで表されるアミノ酸配列に1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2nで表されるアミノ酸配列中の1〜50個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜数(5、4、3もしくは2)個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、Aβ産生促進活性が保持される限り、特に限定されない。
【0019】
タンパク質P1(F-box only protein 2)の好ましい例としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_036300)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_789818)、チンパンジー(RefSeq No. XP_514389)、イヌ(RefSeq No. XP_535406)、ラット(RefSeq No. NP_445963)、ウシ(RefSeq No. NP_001069037) 等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs75074481(Val/Leu), rs9614(Lys/Thr)など)などがあげられる。
【0020】
タンパク質P2(14-3-3 protein eta)の好ましい例としては、例えば、配列番号:4で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_003396)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_035868)、ラット(RefSeq No. NP_037184)、ウシ(RefSeq No. NP_776917)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001151357)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq Nos. XP_001151423、XP_001150958、XP_001151164、XP_001151028、XP_001151226、XP_515092、XP_001151095 等)、アレル変異体、多型などがあげられる。
【0021】
タンパク質P3(60S ribosomal protein L22)の好ましい例としては、例えば、配列番号:6で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_000974)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_033105)、ラット(RefSeq No. NP_112366)、イヌ(RefSeq No. XP_536725)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XP_849312 等)、アレル変異体、多型などがあげられる。
【0022】
タンパク質P4(Endoplasmin)の好ましい例としては、例えば、配列番号:8で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_003290)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_035761)、ラット(RefSeq No. NP_001012197)、ウシ(RefSeq No. NP_777125)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001158681)、イヌ(RefSeq No. NP_001003327)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq Nos. XP_001158799、XP_001158841、XP_001158740、 XP_001157342、 XP_001158377等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs34482425(Lys/Asn)等)などがあげられる。
【0023】
タンパク質P5(Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2)の好ましい例としては、例えば、配列番号:10で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_444292)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_034445)、ラット(RefSeq No. XP_002725075)、イヌ(RefSeq No. XP_853464)、チンパンジー(RefSeq No. XP_522854)、ウシ(RefSeq No. NP_776497)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq Nos. XP_001158267、XP_001158222、 XP_001158380、 XP_001158320、 NP_001033726、 XP_002725074等)、アレル変異体、多型などがあげられる。
【0024】
タンパク質P6(Prostaglandin E synthase 3)の好ましい例としては、例えば、配列番号:12で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_006592)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_062740)、ラット(RefSeq No. NP_001014294)、ウシ(RefSeq No. NP_001007807)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001159085)、イヌ(RefSeq No. XP_848910)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、refSNP No. XP_001159134等)、アレル変異体、多型などがあげられる。
【0025】
タンパク質P7(Heat shock protein HSP 90-alpha)の好ましい例としては、例えば、配列番号:14で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_001017963)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_034610)、ラット(RefSeq No. NP_786937)、ウシ(RefSeq No. NP_001012688)、チンパンジー(RefSeq No. NP_001092042)、イヌ(RefSeq No. XP_537557)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq Nos. NP_005339、 XP_868585、 XP_868588 等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs8005905(Met/Leu)、 rs35446359(Gln/Arg等)などがあげられる。
【0026】
タンパク質P8(Protein disulfide-isomerase)の好ましい例としては、例えば、配列番号:16で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_000909)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_035162)、ラット(RefSeq No. NP_037130)、ウシ(RefSeq No. NP_776560)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001164396)、イヌ(RefSeq No. XP_540488)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq Nos. XP_001164327、 XP_001164362、 XP_511745、XP_001164216、 XP_001164286、 XP_001164146、 XP_001164258等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs62077233(His/Arg等)などがあげられる。
【0027】
タンパク質P9(Cytochrome c)の好ましい例としては、例えば、配列番号:18で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_061820)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_031834)、ラット(RefSeq No. NP_036971)、ウシ(RefSeq No. NP_001039526)、チンパンジー(RefSeq No. NP_001065289)、イヌ(RefSeq No. NP_001183974)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs11548795(Lys/Arg) 等)などがあげられる。
【0028】
タンパク質P10(Phospholipid scramblase 3)の好ましい例としては、例えば、配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_065093)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_076053)、ラット(RefSeq No. NP_001012139)、ウシ(RefSeq No. NP_001039518)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001174792)、イヌ(RefSeq No. XP_546589)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、refSNP No.NP_001161969等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP Nos. rs3744549(Val/lle)、 rs34961966(Met/lle)等)などがあげられる。
【0029】
タンパク質P11(Vesicle-associated membrane protein 1)の好ましい例としては、例えば、配列番号:22で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_055046)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、ラット(RefSeq No. NP_037222)、ウシ(RefSeq No. NP_001069098)、チンパンジー(RefSeq No. XP_001169040)、イヌ(RefSeq No. XP_543853)、マウス(RefSeq No. NP_033522)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. NP_058439、NP_954740, NP_001074026等)、アレル変異体、多型などがあげられる。
【0030】
タンパク質P12(Tetraspanin-2)の好ましい例としては、例えば、配列番号:24で表されるアミノ酸配列からなるヒトタンパク質(RefSeq No. NP_005716)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NP_081809)、ラット(RefSeq No. NP_072111)、ウシ(RefSeq No. NP_001029829)、チンパンジー(RefSeq No. XP_513675)、イヌ(RefSeq No. XP_848759等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs34749181(Val/Ala)、 rs9659602(Arg/Leu等)などがあげられる。
【0031】
本発明において「タンパク質Pnの発現を抑制する物質」とは、タンパク質Pnをコードする遺伝子Gnの転写レベル、転写後調節のレベル、タンパク質Pnへの翻訳レベル、翻訳後修飾のレベル等のいかなる段階で作用するものであってもよい。従って、タンパク質Pnの発現を抑制する物質としては、例えば、遺伝子Gnの転写を阻害する物質(例、アンチジーン)、初期転写産物からmRNAへのプロセッシングを阻害する物質、mRNAの細胞質への輸送を阻害する物質、mRNAからタンパク質Pnへの翻訳を阻害するか(例、アンチセンス核酸、miRNA)あるいはmRNAを分解する(例、siRNA、リボザイム、miRNA)物質、初期翻訳産物の翻訳後修飾を阻害する物質などが含まれる。いずれの段階で作用するものであっても好ましく用いることができるが、mRNAに相補的に結合してタンパク質Pnへの翻訳を阻害するかあるいはmRNAを分解する物質が好ましい。
【0032】
遺伝子GnのmRNAからタンパク質Pnへの翻訳を特異的に阻害する(あるいはmRNAを分解する)物質として、好ましくは、これらのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸が挙げられる。
遺伝子GnのmRNAの塩基配列と実質的に相補的な塩基配列とは、哺乳動物の生理的条件下において、該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る(あるいは該標的配列を切断する)程度の相補性を有する塩基配列を意味し、具体的には、例えば、該mRNAの塩基配列と完全相補的な塩基配列(すなわち、mRNAの相補鎖の塩基配列)と、オーバーラップする領域に関して、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上の相同性を有する塩基配列である。
【0033】
本発明における「塩基配列の相同性」は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
【0034】
より具体的には、遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列としては、(a)配列番号:2n-1(nは1〜12のいずれかの整数)で表される塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列、または(b)「配列番号:2n-1(nは1〜12のいずれかの整数)で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、配列番号:2n(nは1〜12のいずれかの整数)で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードする配列」と、相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列が挙げられる。ここで「実質的に同質の活性」とは前記と同義である。
【0035】
ストリンジェントな条件とは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,6.3.1-6.3.6, 1999に記載される条件、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)/45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC/0.1% SDS/50〜65℃での一回以上の洗浄等が挙げられるが、当業者であれば、これと同等のストリンジェンシーを与えるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することができる。
【0036】
遺伝子G1(FBXO2)のmRNAの好ましい例としては、配列番号: 1で表される塩基配列を含むヒトFBXO2(RefSeq Accession No. NM_012168)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_176848)、チンパンジー(RefSeq No. XM_514389)、イヌ(RefSeq No. XM_535406)、ラット(RefSeq No. NM_053511)、ウシ(RefSeq No. NM_001075569)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs75074481(G/C)、 rs9614(A/C)等)などのmRNAがあげられる。
【0037】
遺伝子G2(YWHAH)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:3で表される塩基酸配列からなるヒトYWHAH(RefSeq Accession No. NM_003405)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_011738)、ラット(RefSeq No. NM_013052)、ウシ(RefSeq No. NM_174492)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001151357)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_001151423、XM_001150958、XM_001151164、XM_001151028、XM_001151226、XM_515092、XM_001151095等)、アレル変異体、多型などのmRNAがあげられる。
【0038】
遺伝子G3(RPL22)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:5で表される塩基配列からなるヒトRPL22(RefSeq Accession No. NM_000983)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_009079)、ラット(RefSeq No. NM_031104)、イヌ(RefSeq No. XM_536725)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_844219等)、アレル変異体、多型などのmRNAがあげられる。
【0039】
遺伝子G4(HSP90B1)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:7で表される塩基配列からなるヒトHSP90B1(RefSeq Accession No. NM_003299)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_011631)、ラット(RefSeq No. NM_001012197)、ウシ(RefSeq No. NM_174700)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001158681)、イヌ(RefSeq No. NM_001003327)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_001158799、 XM_001158841、XM_001158740、 XM_001157342、 XM_001158377等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No.rs34482425(Lys/Asn)等)などのmRNAがあげられる。
【0040】
遺伝子G5(GNG2)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:9で表される塩基配列からなるヒトGNG2(RefSeq Accession No. NM_053064)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_010315)、ラット(RefSeq No. XM_002725029)、イヌ(RefSeq No. XM_848371)、ウシ(RefSeq No. NM_174072)、チンパンジー(RefSeq No. XM_522854)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_001158267、 XM_001158222、XM_001158380、 XM_001158320、 NM_001038637、 XM_002725028等) 、アレル変異体、多型などのmRNAがあげられる。
【0041】
遺伝子G6(PTGES3)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:11で表される塩基配列からなるヒトPTGES3(RefSeq Accession No. NM_006601)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_019766)、ラット(RefSeq No. NM_001014272)、ウシ(RefSeq No. NM_001007806)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001159085)、イヌ(RefSeq No. XM_843817)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_001159134等)、アレル変異体、多型などのmRNAがあげられる。
【0042】
遺伝子G7(HSP90AA1)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:13で表される塩基配列からなるヒトHSP90AA1(RefSeq Accession No. NM_001017963)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_010480)、ラット(RefSeq No. NM_175761)、ウシ(RefSeq No. NM_001012670)、チンパンジー(RefSeq No. NM_001098572)、イヌ(RefSeq No. XM_537557)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. NM_005348, XM_863492、 XM_863495等 )、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs8005905(Met/Leu)、 rs35446359(Gln/Arg等)などのmRNAがあげられる。
【0043】
遺伝子G8(P4HB)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:15で表される塩基配列からなるヒトP4HB(RefSeq Accession No. NM_000918)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_011032)、ラット(RefSeq No. NM_012998)、ウシ(RefSeq No. NM_174135)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001164396)、イヌ(RefSeq No. XM_540488)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. XM_001164327、 XM_001164362、 XM_511745、 XM_001164216、 XM_001164286、 XM_001164146、 XM_001164258等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs62077233(His/Arg)等)などのmRNAがあげられる。
【0044】
遺伝子G9(CYCS)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:17で表される塩基配列からなるヒトCYCS(RefSeq Accession No. NM_018947)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_007808)、ラット(RefSeq No. NM_012839)、ウシ(RefSeq No. NM_001046061)、チンパンジー(RefSeq No. NM_001071821)、イヌ(RefSeq No. NM_001197045)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs11548795(Lys/Arg) 等)などのmRNAがあげられる。
【0045】
遺伝子G10(PLSCR3)のmRNAの好ましい例としては、例えば、配列番号:19で表される塩基配列からなるヒトPLSCR3(RefSeq Accession No. NM_020360)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_023564)、ラット(RefSeq No. NM_001012139)、ウシ(RefSeq No. NM_001046053)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001174792)、イヌ(RefSeq No. XM_546589)等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. NM_001168497等)、アレル変異体、多型(例えば、refSNP No. rs3744549(Val/lle)、 rs34961966(Met/lle)等)などのmRNAがあげられる。
【0046】
遺伝子G11(VAMP1)のmRNAの好ましい例としては、配列番号:21で表される塩基配列を含むヒトVAMP1(RefSeq Accession No. NM_014231)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、ラット(RefSeq No. NM_013090)、ウシ(RefSeq No. NM_001075630)、チンパンジー(RefSeq No. XM_001169040)、イヌ(RefSeq No. XM_543853)、マウス(RefSeq No. NM_009496) 等)、さらにはそれらのスプライスバリアント(例えば、RefSeq No. NM_016830、NM_199245、NM_001080557等)、アレル変異体、多型などのmRNAがあげられる。
【0047】
遺伝子G12(TSPAN2)のmRNAの好ましい例としては、配列番号:23で表される塩基配列を含むヒトTSPAN2(RefSeq Accession No. NM_005725)、あるいは他の哺乳動物におけるそれらのオルソログ(例えば、マウス(RefSeq No. NM_027533)、ラット(RefSeq No. NM_022589)、ウシ(RefSeq No. NM_001034657)、チンパンジー(RefSeq No. XM_513675)、イヌ(RefSeq No. XM_843666等)、さらにはそれらのスプライスバリアント、アレル変異体、多型(例えば、refSNP Nors34749181(Val/Ala), rs9659602(Arg/Leu)等)などのmRNAがあげられる。
【0048】
「遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列の一部」とは、遺伝子GnのmRNAに特異的に結合することができ、且つ該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害(あるいは該mRNAを分解)し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的もしくは実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約20塩基以上含むものである。
【0049】
具体的には、遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸として、以下の(a)〜(c)のいずれかのものが好ましく例示される。
(a) 遺伝子GnのmRNAに対するアンチセンス核酸
(b) 遺伝子GnのmRNAに対するリボザイム核酸
(c) 遺伝子GnのmRNAに対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
【0050】
(a) 遺伝子GnのmRNAに対するアンチセンス核酸
本発明における「遺伝子GnのmRNAに対するアンチセンス核酸」とは、該mRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸であって、標的mRNAと特異的かつ安定した二重鎖を形成して結合することにより、タンパク質合成を抑制する機能を有するものである。
アンチセンス核酸は、2-デオキシ-D-リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D-リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN-グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、DNA:RNAハイブリッドであってもよく、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(例、ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)や糖(例、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。このような修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオシドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、またはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0051】
上記の通り、アンチセンス核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸がDNAの場合、標的RNAとアンチセンスDNAとによって形成されるRNA:DNAハイブリッドは、内在性RNase Hに認識されて標的RNAの選択的な分解を引き起こすことができる。したがって、RNase Hによる分解を指向するアンチセンスDNAの場合、標的配列は、mRNA中の配列だけでなく、遺伝子Gnの初期翻訳産物におけるイントロン領域の配列であってもよい。イントロン配列は、ゲノム配列と、遺伝子GnのcDNA塩基配列とをBLAST、FASTA等のホモロジー検索プログラムを用いて比較することにより、決定することができる。
【0052】
本発明のアンチセンス核酸の標的領域は、該アンチセンス核酸がハイブリダイズすることにより、結果としてタンパク質Pnへの翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、タンパク質PnをコードするmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約10塩基程度、長いものでmRNAもしくは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性、細胞内移行性の問題等を考慮すれば、約10〜約40塩基、特に約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいが、それに限定されない。具体的には、遺伝子Gnの5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域または3’端ヘアピンループなどが、アンチセンス核酸の好ましい標的領域として選択しうるが、それらに限定されない。
【0053】
さらに、本発明のアンチセンス核酸は、遺伝子GnのmRNAや初期転写産物とハイブリダイズしてタンパク質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるこれらの遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAへの転写を阻害し得るもの(アンチジーン)であってもよい。
【0054】
アンチセンス核酸を構成するヌクレオチド分子は、天然型のDNAもしくはRNAでもよいが、安定性(化学的および/または対酵素)や比活性(RNAとの親和性)を向上させるために、種々の化学修飾を含むことができる。例えば、ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンス核酸を構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各ヌクレオチドの糖(リボース)の2’位の水酸基を、-OR(R=CH3(2’-O-Me)、CH2CH2OCH3(2’-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。
【0055】
RNAの糖部のコンフォーメーションはC2’-endo(S型)とC3’-endo(N型)の2つが支配的であり、一本鎖RNAではこの両者の平衡として存在するが、二本鎖を形成するとN型に固定される。したがって、標的RNAに対して強い結合能を付与するために、2’酸素と4’炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したRNA誘導体であるBNA(LNA)(Imanishi, T. et al., Chem. Commun., 1653-9, 2002; Jepsen, J.S. et al., Oligonucleotides, 14, 130-46, 2004)やENA(Morita, K. et al., Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids, 22, 1619-21, 2003)もまた、好ましく用いられ得る。
【0056】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子GnのcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的配列を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。また、上記した各種修飾を含むアンチセンス核酸も、いずれも自体公知の手法により、化学的に合成することができる。
【0057】
(b) 遺伝子GnのmRNAに対するリボザイム核酸
遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸の他の好ましい例としては、該mRNAをコード領域の内部で特異的に切断し得るリボザイム核酸が挙げられる。「リボザイム」とは、狭義には、核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイム核酸として最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイム核酸は、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。遺伝子GnのmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
【0058】
(c) 遺伝子GnのmRNAに対するsiRNA又はmiRNA
本明細書においては、遺伝子GnのmRNAに相補的なオリゴRNAとその相補鎖とからなる二本鎖RNA、いわゆるsiRNAもまた、遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、この現象が動物細胞でも広く起こることが確認されて以来[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として汎用されている。
【0059】
siRNAは、標的遺伝子のcDNA配列情報に基づいて、例えば、Elbashirら(Genes Dev., 15, 188-200 (2001))の提唱する規則に従って設計することができる。siRNAの標的配列としては、例えばAA+(N)19、AA+(N)21もしくはNA+(N)21(Nは任意の塩基)等が挙げられるが、それらに限定されない。標的配列の位置も特に制限されるわけではない。選択された標的配列の候補群について、標的以外のmRNAにおいて16-17塩基の連続した配列に相同性がないかどうかを、BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)等のホモロジー検索ソフトを用いて調べ、選択した標的配列の特異性を確認する。例えば、AA+(N)19、AA+(N)21もしくはNA+(N)21(Nは任意の塩基)を標的配列とする場合、特異性の確認された標的配列について、AA(もしくはNA)以降の19-21塩基にTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するセンス鎖と、該19-21塩基に相補的な配列及びTTもしくはUUの3’末端オーバーハングを有するアンチセンス鎖とからなる2本鎖RNAをsiRNAとして設計してもよい。また、siRNAの前駆体であるショートヘアピンRNA(shRNA)は、ループ構造を形成しうる任意のリンカー配列(例えば、5-25塩基程度)を適宜選択し、上記センス鎖とアンチセンス鎖とを該リンカー配列を介して連結することにより設計することができる。
【0060】
siRNA及び/又はshRNAの配列は、種々のwebサイト上に無料で提供される検索ソフトを用いて検索が可能である。このようなサイトとしては、例えば、Ambionが提供するsiRNA Target Finder(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/siRNA_finder.html)及びpSilencerTM Expression Vector用インサートデザインツール(http://www.ambion.com/jp/techlib/misc/psilencer_converter.html)、RNAi Codexが提供するGeneSeer(http://codex.cshl.edu/scripts/newsearchhairpin.cgi)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
siRNAを構成するリボヌクレオシド分子もまた、安定性、比活性などを向上させるために、上記のアンチセンス核酸の場合と同様の修飾を受けていてもよい。
【0062】
siRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、siRNAの前駆体となるシングルヘアピンRNA(shRNA)を合成し、これをダイサー(dicer)を用いて切断することにより調製することもできる。
【0063】
本明細書においては、生体内で遺伝子GnのmRNAに対するsiRNAを生成し得るようにデザインされた核酸もまた、遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に包含されるものとして定義される。そのような核酸としては、上記したshRNAやsiRNAを発現するように構築された発現ベクターなどが挙げられる。shRNAは、mRNA上の標的配列のセンス鎖およびアンチセンス鎖を適当なループ構造を形成しうる長さ(例えば5〜25塩基程度)のスペーサー配列を間に挿入して連結した塩基配列を含むオリゴRNAをデザインし、これをDNA/RNA自動合成機で合成することにより調製することができる。shRNAを発現するベクターには、タンデムタイプとステムループ(ヘアピン)タイプとがある。前者はsiRNAのセンス鎖の発現カセットとアンチセンス鎖の発現カセットをタンデムに連結したもので、細胞内で各鎖が発現してアニーリングすることにより2本鎖のsiRNA(dsRNA)を形成するというものである。一方、後者はshRNAの発現カセットをベクターに挿入したもので、細胞内でshRNAが発現しdicerによるプロセシングを受けてdsRNAを形成するというものである。プロモーターとしては、polII系プロモーター(例えば、CMV前初期プロモーター)を使用することもできるが、短いRNAの転写を正確に行わせるために、polIII系プロモーターを使用するのが一般的である。polIII系プロモーターとしては、マウスおよびヒトのU6-snRNAプロモーター、ヒトH1-RNase P RNAプロモーター、ヒトバリン-tRNAプロモーターなどが挙げられる。また、転写終結シグナルとして4個以上Tが連続した配列が用いられる。
【0064】
このようにして構築したsiRNAもしくはshRNA発現カセットを、次いでプラスミドベクターやウイルスベクターに挿入する。このようなベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、センダイウイルスなどのウイルスベクターや、動物細胞発現プラスミドなどが用いられる。
【0065】
遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸は、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療に適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例、ホスホリピド、コレステロールなど)などの疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端または5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端または5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0066】
これらの核酸のタンパク質Pn発現抑制活性は、遺伝子Gnを導入した形質転換体、生体内や生体外の遺伝子Gn発現系、または生体内や生体外のタンパク質Pn翻訳系を用いて調べることができる。
【0067】
本発明におけるタンパク質Pnの発現を抑制する物質は、上記のような遺伝子GnのmRNAの塩基配列と相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含む核酸に限定されず、タンパク質Pnの産生を直接的または間接的に阻害する限り、低分子化合物などの他の物質であってもよい。該物質は、タンパク質P1〜P12から選ばれるいずれか1種のタンパク質の発現を抑制するものであってもよいし、2種以上のタンパク質の発現を抑制し得るものであってもよい。そのような物質は、例えば、後述する本発明のスクリーニング方法により取得することができる。
【0068】
本発明において「タンパク質Pnの機能を抑制する物質」とは、いったん機能的に産生されたタンパク質Pnが、Aβの産生を促進するのを抑制する限りいかなるものでもよく、例えば、タンパク質Pnに結合してAβ産生を抑制する物質、タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する物質(たとえば、タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合によってγ−セクレターゼ活性が促進するのを阻害またはモジュレートする物質、タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合若しくは複合体形成を阻害する物質等)、タンパク質Pnの細胞膜への移行を阻害する物質等が挙げられる。「γ−セクレターゼ活性をモジュレートする物質」とは、γ−セクレターゼ活性の基質となるAPPもしくはNotchの基質選択性を変化させる、あるいはAβ種の産生割合を変化させる物質等が挙げられる。
【0069】
具体的には、タンパク質Pnの機能を抑制する物質として、例えば、タンパク質Pnに対する抗体が挙げられる。該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体は、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgA、特に好ましくはIgGが挙げられる。また、該抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
【0070】
好ましい一実施態様において、タンパク質Pnに対する抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、該抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、常法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生マウスやファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
【0071】
タンパク質Pnはγ−セクレターゼを介して、Aβペプチドの生成において重要な役割を担っているので、タンパク質Pnの機能を抑制する物質は、脳移行性(血液脳関門通過性)、細胞膜透過性に優れた物質であることが望ましい。したがって、タンパク質Pnの機能を抑制するより好ましい物質は、Lipinski's Ruleに見合った低分子化合物である。該低分子化合物は、タンパク質P1〜P12から選ばれるいずれか1種のタンパク質の機能を抑制するものであってもよいし、2種以上のタンパク質の機能を抑制し得るものであってもよい。そのような化合物は、例えば、後述する本発明のスクリーニング法を用いて取得することができる。
【0072】
タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質は、Aβ産生を抑制するので、アルツハイマー病(AD)の病態または癌の病態の改善に有用である。しかも該物質は、Notchタンパク質の切断を阻害しない可能性があるので、腸管上皮形成障害や免疫異常などの末梢性副作用を生じる危険性が低いというさらなる有利な効果を奏する。
【0073】
したがって、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質を含有する医薬は、γ−セクレターゼ阻害剤あるいはモジュレーター、Aβ産生抑制剤、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の予防および/または治療剤として使用することができる。
タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質を組み合わせて使用する場合、それらの物質は、同一のタンパク質の発現もしくは機能を抑制するものであってもよいし、あるいは2種以上の異なるタンパク質の発現もしくは機能を抑制するものであってもよい。
また、2種以上の、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質は、それぞれ別個の医薬として製剤化してもよいし、同一の医薬組成物中に配合してもよい。2種以上の、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質が、それぞれ別個の医薬として製剤化される場合、各製剤を同時に投与してもよいし、時間をおいて投与してもよい。また、投与経路は同一であってもよいし、異なっていてもよい。後述する投与量は、1種の、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質の投与量を示すが、2種以上の物質を組み合わせて用いる場合でも、投与対象に好ましくない影響を与えない範囲で、それぞれの物質について同様の投与量を用いることができる。
2種以上の、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する物質を組み合わせて使用する場合において、前記2種以上の異なるタンパク質の組み合わせとしては、タンパク質P1〜P12から選択される任意の2種以上のタンパク質が挙げられる。あるいは、タンパク質P1〜P12から選択される任意の1種以上のタンパク質と、国際公開第2010/140694号に開示された以下のタンパク質:
Probable phospholipid-transporting ATPase IIA(遺伝子名:ATP9A);
BDNF/NT-3 growth factors receptor precursor(遺伝子名:NTRK2);
ELAV-like protein 4(遺伝子名:ELAVL4);
Coiled-coil domain-containing protein 136(遺伝子名:NAG6);
Potassium/sodium hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel 2(遺伝子名:HCN2);
DnaJ homolog subfamily A member 2(遺伝子名:DNAJA2);
Vesicle-associated membrane protein-associated protein A(遺伝子名:VAPA);
Proton myo-inositol cotransporter(遺伝子名:SLC2A13);
Leukocyte surface antigen CD47(遺伝子:CD47);
Flotillin-1(遺伝子名:FLOT1);
Band 4.1 like 1(遺伝子名:EPB41L1);
Regulator of G-protein signaling 7(遺伝子名:RGS7);
Phospholipase D3(遺伝子名:PLD3);
Ectoderm-neural cortex protein 1(遺伝子名:ENC1);
synaptophysin(遺伝子名:SYP);
solute carrier family 2 (facilitated glucose transporter), member 3(遺伝子名:SLC2A3);
syntaxin binding protein 1(遺伝子名:STXBP1);
growth associated protein 43(遺伝子名:GAP43);
ATPase, Na+/K+ transporting, beta 1 polypeptide(遺伝子名:ATP1B1);
Amine oxidase [flavin-containing] B(遺伝子名:MAOB);
Muscarinic acetylcholine receptor M1(遺伝子名:CHRM1);
Probable cationic amino acid transporter(遺伝子名:SLC7A14);
NADH dehydrogenase iron-sulfur protein 7(遺伝子名:NDUFS7);
G-protein-regulated inducer of neurite outgrowth(遺伝子名:GPRIN1);および
Probable phospholipid-transporting ATPase 1A(遺伝子名:ATP8A1);
から選択される任意の1種以上のタンパク質の組み合わせであってもよい。又は、2種以上の、国際公開第2010/140694号に開示された上述の25種類のタンパク質から選択される任意の2種以上のタンパク質の発現もしくは機能を抑制する物質を含有する医薬組成物も又本発明に含まれる。
例えば、当該タンパク質2種の組み合わせの例としては、次のものが挙げられる。尚、以下各タンパク質は便宜的に、対応する遺伝子名で表し、2種の組み合わせを、「第一のタンパク質−第二のタンパク質」で表す。
YWHAH-FBXO2, RPL22-FBXO2, RPL22-YWHAH, HSP90B1-FBXO2, HSP90B1-YWHAH, HSP90B1-RPL22, GNG2-FBXO2, GNG2-YWHAH, GNG2-RPL22, GNG2-HSP90B1, PTGES3-FBXO2, PTGES3-YWHAH, PTGES3-RPL22, PTGES3-HSP90B1, PTGES3-GNG2, HSP90AA1-FBXO2, HSP90AA1-YWHAH, HSP90AA1-RPL22, HSP90AA1-HSP90B1, HSP90AA1-GNG2, HSP90AA1-PTGES3, P4HB-FBXO2, P4HB-YWHAH, P4HB-RPL22, P4HB-HSP90B1, P4HB-GNG2, P4HB-PTGES3, P4HB-HSP90AA1, CYCS-FBXO2, CYCS-YWHAH, CYCS-RPL22, CYCS-HSP90B1, CYCS-GNG2, CYCS-PTGES3, CYCS-HSP90AA1, CYCS-P4HB, PLSCR3-FBXO2, PLSCR3-YWHAH, PLSCR3-RPL22, PLSCR3-HSP90B1, PLSCR3-GNG2, PLSCR3-PTGES3, PLSCR3-HSP90AA1, PLSCR3-P4HB, PLSCR3-CYCS, VAMP1-FBXO2, VAMP1-YWHAH, VAMP1-RPL22, VAMP1-HSP90B1, VAMP1-GNG2, VAMP1-PTGES3, VAMP1-HSP90AA1, VAMP1-P4HB, VAMP1-CYCS, VAMP1-PLSCR3, TSPAN2-FBXO2, TSPAN2-YWHAH, TSPAN2-RPL22, TSPAN2-HSP90B1, TSPAN2-GNG2, TSPAN2-PTGES3, TSPAN2-HSP90AA1, TSPAN2-P4HB, TSPAN2-CYCS, TSPAN2-PLSCR3, TSPAN2-VAMP1, ATP9A-FBXO2, ATP9A-YWHAH, ATP9A-RPL22, ATP9A-HSP90B1, ATP9A-GNG2, ATP9A-PTGES3, ATP9A-HSP90AA1, ATP9A-P4HB, ATP9A-CYCS, ATP9A-PLSCR3, ATP9A-VAMP1, ATP9A-TSPAN2, NTRK2-FBXO2, NTRK2-YWHAH, NTRK2-RPL22, NTRK2-HSP90B1, NTRK2-GNG2, NTRK2-PTGES3, NTRK2-HSP90AA1, NTRK2-P4HB, NTRK2-CYCS, NTRK2-PLSCR3, NTRK2-VAMP1, NTRK2-TSPAN2, NTRK2-ATP9A, Elavl4-FBXO2, Elavl4-YWHAH, Elavl4-RPL22, Elavl4-HSP90B1, Elavl4-GNG2, Elavl4-PTGES3, Elavl4-HSP90AA1, Elavl4-P4HB, Elavl4-CYCS, Elavl4-PLSCR3, Elavl4-VAMP1, Elavl4-TSPAN2, Elavl4-ATP9A, Elavl4-NTRK2, NAG6-FBXO2, NAG6-YWHAH, NAG6-RPL22, NAG6-HSP90B1, NAG6-GNG2, NAG6-PTGES3, NAG6-HSP90AA1, NAG6-P4HB, NAG6-CYCS, NAG6-PLSCR3, NAG6-VAMP1, NAG6-TSPAN2, NAG6-ATP9A, NAG6-NTRK2, NAG6-Elavl4, Hcn2-FBXO2, Hcn2-YWHAH, Hcn2-RPL22, Hcn2-HSP90B1, Hcn2-GNG2, Hcn2-PTGES3, Hcn2-HSP90AA1, Hcn2-P4HB, Hcn2-CYCS, Hcn2-PLSCR3, Hcn2-VAMP1, Hcn2-TSPAN2, Hcn2-ATP9A, Hcn2-NTRK2, Hcn2-Elavl4, Hcn2-NAG6, Dnaja2-FBXO2, Dnaja2-YWHAH, Dnaja2-RPL22, Dnaja2-HSP90B1, Dnaja2-GNG2, Dnaja2-PTGES3, Dnaja2-HSP90AA1, Dnaja2-P4HB, Dnaja2-CYCS, Dnaja2-PLSCR3, Dnaja2-VAMP1, Dnaja2-TSPAN2, Dnaja2-ATP9A, Dnaja2-NTRK2, Dnaja2-Elavl4, Dnaja2-NAG6, Dnaja2-Hcn2, VAPA-FBXO2, VAPA-YWHAH, VAPA-RPL22, VAPA-HSP90B1, VAPA-GNG2, VAPA-PTGES3, VAPA-HSP90AA1, VAPA-P4HB, VAPA-CYCS, VAPA-PLSCR3, VAPA-VAMP1, VAPA-TSPAN2, VAPA-ATP9A, VAPA-NTRK2, VAPA-Elavl4, VAPA-NAG6, VAPA-Hcn2, VAPA-Dnaja2, SLC2A13-FBXO2, SLC2A13-YWHAH, SLC2A13-RPL22, SLC2A13-HSP90B1, SLC2A13-GNG2, SLC2A13-PTGES3, SLC2A13-HSP90AA1, SLC2A13-P4HB, SLC2A13-CYCS, SLC2A13-PLSCR3, SLC2A13-VAMP1, SLC2A13-TSPAN2, SLC2A13-ATP9A, SLC2A13-NTRK2, SLC2A13-Elavl4, SLC2A13-NAG6, SLC2A13-Hcn2, SLC2A13-Dnaja2, SLC2A13-VAPA, CD47-FBXO2, CD47-YWHAH, CD47-RPL22, CD47-HSP90B1, CD47-GNG2, CD47-PTGES3, CD47-HSP90AA1, CD47-P4HB, CD47-CYCS, CD47-PLSCR3, CD47-VAMP1, CD47-TSPAN2, CD47-ATP9A, CD47-NTRK2, CD47-Elavl4, CD47-NAG6, CD47-Hcn2, CD47-Dnaja2, CD47-VAPA, CD47-SLC2A13, FLOT1-FBXO2, FLOT1-YWHAH, FLOT1-RPL22, FLOT1-HSP90B1, FLOT1-GNG2, FLOT1-PTGES3, FLOT1-HSP90AA1, FLOT1-P4HB, FLOT1-CYCS, FLOT1-PLSCR3, FLOT1-VAMP1, FLOT1-TSPAN2, FLOT1-ATP9A, FLOT1-NTRK2, FLOT1-Elavl4, FLOT1-NAG6, FLOT1-Hcn2, FLOT1-Dnaja2, FLOT1-VAPA, FLOT1-SLC2A13, FLOT1-CD47, ATP2A2-FBXO2, ATP2A2-YWHAH, ATP2A2-RPL22, ATP2A2-HSP90B1, ATP2A2-GNG2, ATP2A2-PTGES3, ATP2A2-HSP90AA1, ATP2A2-P4HB, ATP2A2-CYCS, ATP2A2-PLSCR3, ATP2A2-VAMP1, ATP2A2-TSPAN2, ATP2A2-ATP9A, ATP2A2-NTRK2, ATP2A2-Elavl4, ATP2A2-NAG6, ATP2A2-Hcn2, ATP2A2-Dnaja2, ATP2A2-VAPA, ATP2A2-SLC2A13, ATP2A2-CD47, ATP2A2-FLOT1, FLOT2-FBXO2, FLOT2-YWHAH, FLOT2-RPL22, FLOT2-HSP90B1, FLOT2-GNG2, FLOT2-PTGES3, FLOT2-HSP90AA1, FLOT2-P4HB, FLOT2-CYCS, FLOT2-PLSCR3, FLOT2-VAMP1, FLOT2-TSPAN2, FLOT2-ATP9A, FLOT2-NTRK2, FLOT2-Elavl4, FLOT2-NAG6, FLOT2-Hcn2, FLOT2-Dnaja2, FLOT2-VAPA, FLOT2-SLC2A13, FLOT2-CD47, FLOT2-FLOT1, FLOT2-ATP2A2, EPB41L1-FBXO2, EPB41L1-YWHAH, EPB41L1-RPL22, EPB41L1-HSP90B1, EPB41L1-GNG2, EPB41L1-PTGES3, EPB41L1-HSP90AA1, EPB41L1-P4HB, EPB41L1-CYCS, EPB41L1-PLSCR3, EPB41L1-VAMP1, EPB41L1-TSPAN2, EPB41L1-ATP9A, EPB41L1-NTRK2, EPB41L1-Elavl4, EPB41L1-NAG6, EPB41L1-Hcn2, EPB41L1-Dnaja2, EPB41L1-VAPA, EPB41L1-SLC2A13, EPB41L1-CD47, EPB41L1-FLOT1, EPB41L1-ATP2A2, EPB41L1-FLOT2, RGS7-FBXO2, RGS7-YWHAH, RGS7-RPL22, RGS7-HSP90B1, RGS7-GNG2, RGS7-PTGES3, RGS7-HSP90AA1, RGS7-P4HB, RGS7-CYCS, RGS7-PLSCR3, RGS7-VAMP1, RGS7-TSPAN2, RGS7-ATP9A, RGS7-NTRK2, RGS7-Elavl4, RGS7-NAG6, RGS7-Hcn2, RGS7-Dnaja2, RGS7-VAPA, RGS7-SLC2A13, RGS7-CD47, RGS7-FLOT1, RGS7-ATP2A2, RGS7-FLOT2, RGS7-EPB41L1, PLD3-FBXO2, PLD3-YWHAH, PLD3-RPL22, PLD3-HSP90B1, PLD3-GNG2, PLD3-PTGES3, PLD3-HSP90AA1, PLD3-P4HB, PLD3-CYCS, PLD3-PLSCR3, PLD3-VAMP1, PLD3-TSPAN2, PLD3-ATP9A, PLD3-NTRK2, PLD3-Elavl4, PLD3-NAG6, PLD3-Hcn2, PLD3-Dnaja2, PLD3-VAPA, PLD3-SLC2A13, PLD3-CD47, PLD3-FLOT1, PLD3-ATP2A2, PLD3-FLOT2, PLD3-EPB41L1, PLD3-RGS7, ENC1-FBXO2, ENC1-YWHAH, ENC1-RPL22, ENC1-HSP90B1, ENC1-GNG2, ENC1-PTGES3, ENC1-HSP90AA1, ENC1-P4HB, ENC1-CYCS, ENC1-PLSCR3, ENC1-VAMP1, ENC1-TSPAN2, ENC1-ATP9A, ENC1-NTRK2, ENC1-Elavl4, ENC1-NAG6, ENC1-Hcn2, ENC1-Dnaja2, ENC1-VAPA, ENC1-SLC2A13, ENC1-CD47, ENC1-FLOT1, ENC1-ATP2A2, ENC1-FLOT2, ENC1-EPB41L1, ENC1-RGS7, ENC1-PLD3, SYP-FBXO2, SYP-YWHAH, SYP-RPL22, SYP-HSP90B1, SYP-GNG2, SYP-PTGES3, SYP-HSP90AA1, SYP-P4HB, SYP-CYCS, SYP-PLSCR3, SYP-VAMP1, SYP-TSPAN2, SYP-ATP9A, SYP-NTRK2, SYP-Elavl4, SYP-NAG6, SYP-Hcn2, SYP-Dnaja2, SYP-VAPA, SYP-SLC2A13, SYP-CD47, SYP-FLOT1, SYP-ATP2A2, SYP-FLOT2, SYP-EPB41L1, SYP-RGS7, SYP-PLD3, SYP-ENC1, SLC2A3-FBXO2, SLC2A3-YWHAH, SLC2A3-RPL22, SLC2A3-HSP90B1, SLC2A3-GNG2, SLC2A3-PTGES3, SLC2A3-HSP90AA1, SLC2A3-P4HB, SLC2A3-CYCS, SLC2A3-PLSCR3, SLC2A3-VAMP1, SLC2A3-TSPAN2, SLC2A3-ATP9A, SLC2A3-NTRK2, SLC2A3-Elavl4, SLC2A3-NAG6, SLC2A3-Hcn2, SLC2A3-Dnaja2, SLC2A3-VAPA, SLC2A3-SLC2A13, SLC2A3-CD47, SLC2A3-FLOT1, SLC2A3-ATP2A2, SLC2A3-FLOT2, SLC2A3-EPB41L1, SLC2A3-RGS7, SLC2A3-PLD3, SLC2A3-ENC1, SLC2A3-SYP, STXBP1-FBXO2, STXBP1-YWHAH, STXBP1-RPL22, STXBP1-HSP90B1, STXBP1-GNG2, STXBP1-PTGES3, STXBP1-HSP90AA1, STXBP1-P4HB, STXBP1-CYCS, STXBP1-PLSCR3, STXBP1-VAMP1, STXBP1-TSPAN2, STXBP1-ATP9A, STXBP1-NTRK2, STXBP1-Elavl4, STXBP1-NAG6, STXBP1-Hcn2, STXBP1-Dnaja2, STXBP1-VAPA, STXBP1-SLC2A13, STXBP1-CD47, STXBP1-FLOT1, STXBP1-ATP2A2, STXBP1-FLOT2, STXBP1-EPB41L1, STXBP1-RGS7, STXBP1-PLD3, STXBP1-ENC1, STXBP1-SYP, STXBP1-SLC2A3, GAP43-FBXO2, GAP43-YWHAH, GAP43-RPL22, GAP43-HSP90B1, GAP43-GNG2, GAP43-PTGES3, GAP43-HSP90AA1, GAP43-P4HB, GAP43-CYCS, GAP43-PLSCR3, GAP43-VAMP1, GAP43-TSPAN2, GAP43-ATP9A, GAP43-NTRK2, GAP43-Elavl4, GAP43-NAG6, GAP43-Hcn2, GAP43-Dnaja2, GAP43-VAPA, GAP43-SLC2A13, GAP43-CD47, GAP43-FLOT1, GAP43-ATP2A2, GAP43-FLOT2, GAP43-EPB41L1, GAP43-RGS7, GAP43-PLD3, GAP43-ENC1, GAP43-SYP, GAP43-SLC2A3, GAP43-STXBP1, ATP1B1-FBXO2, ATP1B1-YWHAH, ATP1B1-RPL22, ATP1B1-HSP90B1, ATP1B1-GNG2, ATP1B1-PTGES3, ATP1B1-HSP90AA1, ATP1B1-P4HB, ATP1B1-CYCS, ATP1B1-PLSCR3, ATP1B1-VAMP1, ATP1B1-TSPAN2, ATP1B1-ATP9A, ATP1B1-NTRK2, ATP1B1-Elavl4, ATP1B1-NAG6, ATP1B1-Hcn2, ATP1B1-Dnaja2, ATP1B1-VAPA, ATP1B1-SLC2A13, ATP1B1-CD47, ATP1B1-FLOT1, ATP1B1-ATP2A2, ATP1B1-FLOT2, ATP1B1-EPB41L1, ATP1B1-RGS7, ATP1B1-PLD3, ATP1B1-ENC1, ATP1B1-SYP, ATP1B1-SLC2A3, ATP1B1-STXBP1, ATP1B1-GAP43, MAOB-FBXO2, MAOB-YWHAH, MAOB-RPL22, MAOB-HSP90B1, MAOB-GNG2, MAOB-PTGES3, MAOB-HSP90AA1, MAOB-P4HB, MAOB-CYCS, MAOB-PLSCR3, MAOB-VAMP1, MAOB-TSPAN2, MAOB-ATP9A, MAOB-NTRK2, MAOB-Elavl4, MAOB-NAG6, MAOB-Hcn2, MAOB-Dnaja2, MAOB-VAPA, MAOB-SLC2A13, MAOB-CD47, MAOB-FLOT1, MAOB-ATP2A2, MAOB-FLOT2, MAOB-EPB41L1, MAOB-RGS7, MAOB-PLD3, MAOB-ENC1, MAOB-SYP, MAOB-SLC2A3, MAOB-STXBP1, MAOB-GAP43, MAOB-ATP1B1, CHRM1-FBXO2, CHRM1-YWHAH, CHRM1-RPL22, CHRM1-HSP90B1, CHRM1-GNG2, CHRM1-PTGES3, CHRM1-HSP90AA1, CHRM1-P4HB, CHRM1-CYCS, CHRM1-PLSCR3, CHRM1-VAMP1, CHRM1-TSPAN2, CHRM1-ATP9A, CHRM1-NTRK2, CHRM1-Elavl4, CHRM1-NAG6, CHRM1-Hcn2, CHRM1-Dnaja2, CHRM1-VAPA, CHRM1-SLC2A13, CHRM1-CD47, CHRM1-FLOT1, CHRM1-ATP2A2, CHRM1-FLOT2, CHRM1-EPB41L1, CHRM1-RGS7, CHRM1-PLD3, CHRM1-ENC1, CHRM1-SYP, CHRM1-SLC2A3, CHRM1-STXBP1, CHRM1-GAP43, CHRM1-ATP1B1, CHRM1-MAOB, SLC7A14-FBXO2, SLC7A14-YWHAH, SLC7A14-RPL22, SLC7A14-HSP90B1, SLC7A14-GNG2, SLC7A14-PTGES3, SLC7A14-HSP90AA1, SLC7A14-P4HB, SLC7A14-CYCS, SLC7A14-PLSCR3, SLC7A14-VAMP1, SLC7A14-TSPAN2, SLC7A14-ATP9A, SLC7A14-NTRK2, SLC7A14-Elavl4, SLC7A14-NAG6, SLC7A14-Hcn2, SLC7A14-Dnaja2, SLC7A14-VAPA, SLC7A14-SLC2A13, SLC7A14-CD47, SLC7A14-FLOT1, SLC7A14-ATP2A2, SLC7A14-FLOT2, SLC7A14-EPB41L1, SLC7A14-RGS7, SLC7A14-PLD3, SLC7A14-ENC1, SLC7A14-SYP, SLC7A14-SLC2A3, SLC7A14-STXBP1, SLC7A14-GAP43, SLC7A14-ATP1B1, SLC7A14-MAOB, SLC7A14-CHRM1, NDUFS7-FBXO2, NDUFS7-YWHAH, NDUFS7-RPL22, NDUFS7-HSP90B1, NDUFS7-GNG2, NDUFS7-PTGES3, NDUFS7-HSP90AA1, NDUFS7-P4HB, NDUFS7-CYCS, NDUFS7-PLSCR3, NDUFS7-VAMP1, NDUFS7-TSPAN2, NDUFS7-ATP9A, NDUFS7-NTRK2, NDUFS7-Elavl4, NDUFS7-NAG6, NDUFS7-Hcn2, NDUFS7-Dnaja2, NDUFS7-VAPA, NDUFS7-SLC2A13, NDUFS7-CD47, NDUFS7-FLOT1, NDUFS7-ATP2A2, NDUFS7-FLOT2, NDUFS7-EPB41L1, NDUFS7-RGS7, NDUFS7-PLD3, NDUFS7-ENC1, NDUFS7-SYP, NDUFS7-SLC2A3, NDUFS7-STXBP1, NDUFS7-GAP43, NDUFS7-ATP1B1, NDUFS7-MAOB, NDUFS7-CHRM1, NDUFS7-SLC7A14, GPRIN1-FBXO2, GPRIN1-YWHAH, GPRIN1-RPL22, GPRIN1-HSP90B1, GPRIN1-GNG2, GPRIN1-PTGES3, GPRIN1-HSP90AA1, GPRIN1-P4HB, GPRIN1-CYCS, GPRIN1-PLSCR3, GPRIN1-VAMP1, GPRIN1-TSPAN2, GPRIN1-ATP9A, GPRIN1-NTRK2, GPRIN1-Elavl4, GPRIN1-NAG6, GPRIN1-Hcn2, GPRIN1-Dnaja2, GPRIN1-VAPA, GPRIN1-SLC2A13, GPRIN1-CD47, GPRIN1-FLOT1, GPRIN1-ATP2A2, GPRIN1-FLOT2, GPRIN1-EPB41L1, GPRIN1-RGS7, GPRIN1-PLD3, GPRIN1-ENC1, GPRIN1-SYP, GPRIN1-SLC2A3, GPRIN1-STXBP1, GPRIN1-GAP43, GPRIN1-ATP1B1, GPRIN1-MAOB, GPRIN1-CHRM1, GPRIN1-SLC7A14, GPRIN1-NDUFS7, ATP8A1-FBXO2, ATP8A1-YWHAH, ATP8A1-RPL22, ATP8A1-HSP90B1, ATP8A1-GNG2, ATP8A1-PTGES3, ATP8A1-HSP90AA1, ATP8A1-P4HB, ATP8A1-CYCS, ATP8A1-PLSCR3, ATP8A1-VAMP1, ATP8A1-TSPAN2, ATP8A1-ATP9A, ATP8A1-NTRK2, ATP8A1-Elavl4, ATP8A1-NAG6, ATP8A1-Hcn2, ATP8A1-Dnaja2, ATP8A1-VAPA, ATP8A1-SLC2A13, ATP8A1-CD47, ATP8A1-FLOT1, ATP8A1-ATP2A2, ATP8A1-FLOT2, ATP8A1-EPB41L1, ATP8A1-RGS7, ATP8A1-PLD3, ATP8A1-ENC1, ATP8A1-SYP, ATP8A1-SLC2A3, ATP8A1-STXBP1, ATP8A1-GAP43, ATP8A1-ATP1B1, ATP8A1-MAOB, ATP8A1-CHRM1, ATP8A1-SLC7A14, ATP8A1-NDUFS7, ATP8A1-GPRIN1。
さらに、上記2種の組み合わせに、更に異なる1種以上のタンパク質を組み合わせて、3種以上の組み合わせを用いることもできる。
【0074】
(1)アンチセンス核酸、リボザイム核酸、siRNAおよびその前駆体を含有する医薬
遺伝子Gnの転写産物に相補的に結合し、該転写産物からのタンパク質の翻訳を抑制することができる本発明のアンチセンス核酸や、遺伝子Gnの転写産物における相同な(もしくは相補的な)塩基配列を標的として該転写産物を切断し得るsiRNA(もしくはリボザイム)、さらに該siRNAの前駆体であるshRNAなど(以下、包括的に「本発明の核酸」という場合がある)は、Aβ産生抑制剤、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の予防および/または治療剤として使用することができる。
本発明の核酸を含有する医薬はそのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
【0075】
本発明の核酸を上記のAβ産生抑制剤、Aβが関与する疾患の予防および/または治療剤などとして使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。即ち、本発明の核酸を単独で用いてもよいし、あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当な哺乳動物細胞用の発現ベクターに機能可能な態様で挿入することもできる。該核酸は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記核酸を単独またはリポソームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下等に投与してもよい。
【0076】
本発明の核酸は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の核酸と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0077】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、鼻腔内投与剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の核酸を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記核酸を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。
【0078】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
【0079】
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。本発明の核酸は、例えば、投薬単位剤形当たり通常0.01〜500mg程度含有されていることが好ましい。
【0080】
本発明の核酸を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、ADの治療・予防のために使用する場合には、本発明の核酸を1回量として、通常0.0001〜20mg/kg体重程度を、1日〜6ヶ月に1回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0081】
なお前記の各組成物は、本発明の核酸との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。他の活性成分としては、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬に代表されるAD治療薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などのγ-セクレターゼモジュレーターおよびγ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤(例、遷移状態ミミックとして機能し得るスタチン、ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルカルボニル構造を持ったペプチド性阻害剤(J. Med. Chem., 46(22), 4625-4630 (2003))、非ペプチド性の低分子型阻害剤(国際公開第2001/87293号、国際公開第2002/88101号、国際公開第2002/96897号))などがあげられる。
【0082】
(2)タンパク質Pnに対する抗体、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する低分子化合物等を含有する医薬
タンパク質Pnに対する抗体や、タンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制する低分子化合物は、タンパク質Pnの産生または活性を阻害したり、あるいはタンパク質Pnとγ−セクレターゼとの相互作用(複合体形成)を阻害することができる。したがって、これらの物質は、生体内におけるタンパク質Pnの発現もしくは機能を抑制し、γ−セクレターゼ活性を阻害するので、Aβ産生抑制剤、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の予防および/または治療剤として使用することができる。
上記の抗体や低分子化合物を含有する医薬は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、血管内投与、皮下投与など)に投与することができる。
【0083】
上記の抗体や低分子化合物は、それ自体を投与してもよいし、または適当な医薬組成物として投与してもよい。投与に用いられる医薬組成物としては、上記の抗体もしくは低分子化合物またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0084】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤、鼻腔内投与剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体もしくは低分子化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、または油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO-50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されても良い。
【0085】
経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。
【0086】
上記の非経口用または経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。抗体や低分子化合物は、投薬単位剤形当たり通常0.1〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mg含有されていることが好ましい。
【0087】
上記の抗体もしくは低分子化合物またはその塩を含有する上記医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、ADの治療・予防のために使用する場合には、抗体もしくは低分子化合物を1回量として、通常0.0001〜20mg/kg体重程度、低分子化合物であれば1日1〜5回程度、経口または非経口で、抗体であれば1日〜数ヶ月に1回、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0088】
なお前記の各組成物は、上記抗体や低分子化合物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。他の活性成分としては、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬に代表されるAD治療薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などのγ-セクレターゼモジュレーターおよびγ−セクレターゼ阻害剤、β−セクレターゼ阻害剤(例、遷移状態ミミックとして機能し得るスタチン、ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルカルボニル構造を持ったペプチド性阻害剤(J. Med. Chem., 46(22), 4625-4630 (2003))、非ペプチド性の低分子型阻害剤(国際公開第2001/87293号、国際公開第2002/88101号、国際公開第2002/96897号))などがあげられる。
【0089】
(3)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
上述の通り、タンパク質Pnの発現および/または機能を抑制すると、Aβ産生が抑制される。従って、タンパク質Pnの発現および/または機能を抑制する化合物またはその塩は、Aβ産生抑制剤、Aβが関与する疾患(例、AD等)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の予防および/または治療剤として使用することができる。
したがって、タンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれを産生する細胞は、該タンパク質(遺伝子)の発現量および/または活性を指標とすることにより、Aβ産生抑制作用を有する物質のスクリーニングのためのツールとして用いることができる。
【0090】
スクリーニング法(I)
タンパク質Pnの機能を抑制する化合物またはその塩をスクリーニングする場合、該スクリーニング方法は、タンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれを産生する能力を有する細胞を、被検物質の存在下および非存在下にインキュベート(培養)し、両条件下におけるタンパク質Pnの活性を比較することを含む。
【0091】
上記のスクリーニング方法において用いられるタンパク質Pnを産生する能力を有する細胞としては、それらを生来発現しているヒトもしくは他の哺乳動物細胞またはそれを含む生体試料(例:血液、組織、臓器等)であれば特に制限はない。非ヒト動物由来の血液、組織、臓器等の場合は、それらを生体から単離して培養してもよいし、あるいは生体自体に被検物質を投与し、一定時間経過後にそれら生体試料を単離してもよい。
また、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドを産生する能力を有する細胞としては、公知慣用の遺伝子工学的手法により作製された各種の形質転換体が例示される。宿主としては、例えば、H4IIE-C3細胞、HepG2細胞、HEK293細胞、COS7細胞、CHO細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。
【0092】
具体的には、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドをコードするDNA(即ち、配列番号:2n-1(nは1〜12の何れかの整数)で表される塩基配列もしくは該塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号:2nで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同質の活性を有するポリペプチドをコードする塩基配列を含むDNA)を、適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結して宿主動物細胞に導入することにより調製することができる。
【0093】
タンパク質Pnまたはその部分ペプチドをコードするDNAは、例えば、配列番号:2n-1で表される塩基配列に基づいて、適当なオリゴヌクレオチドをプローブもしくはプライマーとして合成し、前記のタンパク質Pnを産生する細胞・組織由来のcDNAもしくはcDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーション法やPCR法を用いてクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0094】
クローン化されたDNAは、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って塩基配列の変換をすることができる。
【0095】
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0096】
発現ベクターとしては、動物細胞発現プラスミド(例:pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなどの動物ウイルスベクターなどが用いられる。プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
【0097】
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点(以下、SV40 oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、dhfrと略称する場合がある、メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子(以下、amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、チミジンを含まない培地によって目的遺伝子を選択することもできる。
【0098】
上記のタンパク質PnをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主を形質転換することにより、タンパク質Pn発現細胞を製造することができる。
宿主としては、哺乳動物細胞、例えば、HepG2細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、ヒトFL細胞、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットH4IIE-C3細胞、ラットGH3細胞などが用いられ得る。
【0099】
形質転換は、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより行うことができる。例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)に記載の方法を用いることができる。
【0100】
上記のようにして得られる形質転換細胞や生来タンパク質Pnを産生する能力を有する哺乳動物細胞または該細胞を含む組織・臓器は、例えば、約5〜20%の胎仔牛血清を含む最小必須培地(MEM)〔Science,122巻,501(1952)〕,ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などの培地中で培養することができる。培地のpHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0101】
タンパク質Pnまたはその部分ペプチドは、前記形質転換細胞(あるいは、大腸菌、枯草菌などの細菌、酵母、昆虫細胞などに遺伝子Gnを導入して得られる非哺乳動物細胞でもよい)や、生来タンパク質Pnを産生する能力を有する哺乳動物細胞を培養して得られる培養物から、自体公知の方法に従って分離精製することができる。
【0102】
例えば、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドを培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。一方、膜画分からタンパク質Pnまたはその部分ペプチドを抽出する場合は、上記と同様に菌体あるいは細胞を破壊した後、低速遠心で細胞デブリスを沈澱除去し、上清を高速遠心して細胞膜含有画分を沈澱させる(必要に応じて密度勾配遠心などにより細胞膜画分を精製する)などの方法が用いられる。また、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドが菌体(細胞)外に分泌される場合には、培養物から遠心分離またはろ過等により培養上清を分取するなどの方法が用いられる。
【0103】
このようにして得られた可溶性画分、膜画分あるいは培養上清中に含まれるタンパク質Pnまたはその部分ペプチドの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
【0104】
かくして得られるタンパク質またはペプチドが遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって、該遊離体を塩に変換することができ、タンパク質またはペプチドが塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。なお、形質転換細胞が産生するタンパク質Pnまたはその部分ペプチドを、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0105】
さらに、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドは、それをコードするRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞タンパク質翻訳系を用いてインビトロ合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。
【0106】
タンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれを産生する能力を有する細胞としては、(P1)〜(P12)から選ばれるいずれか1種のタンパク質を用いてもよいし、2種以上のタンパク質を組み合わせて用いてもよい。すなわち、P1〜P12から選ばれる2種以上のタンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれらを産生する能力を有する細胞を用いることにより、2種以上のタンパク質Pnの機能を抑制する化合物またはその塩をスクリーニングすることができる。あるいは、タンパク質P1〜P12から選択される任意の1種類以上のタンパク質と、国際公開第2010/140694号に開示された上述の25種類のタンパク質から選択される1種以上のタンパク質を組み合わせて用いてもよい。又は、国際公開第2010/140694号に開示された上述の25種類のタンパク質から選択される任意の2種以上のタンパク質の機能を抑制する化合物またはその塩をスクリーニングする方法も本発明に含まれる。
例えば、2種のタンパク質の組み合わせの例としては、次のようなものが挙げられる。尚、以下各タンパク質は便宜的に、対応する遺伝子名で表し、2種の組み合わせを、「第一のタンパク質−第二のタンパク質」で表す。
YWHAH-FBXO2, RPL22-FBXO2, RPL22-YWHAH, HSP90B1-FBXO2, HSP90B1-YWHAH, HSP90B1-RPL22, GNG2-FBXO2, GNG2-YWHAH, GNG2-RPL22, GNG2-HSP90B1, PTGES3-FBXO2, PTGES3-YWHAH, PTGES3-RPL22, PTGES3-HSP90B1, PTGES3-GNG2, HSP90AA1-FBXO2, HSP90AA1-YWHAH, HSP90AA1-RPL22, HSP90AA1-HSP90B1, HSP90AA1-GNG2, HSP90AA1-PTGES3, P4HB-FBXO2, P4HB-YWHAH, P4HB-RPL22, P4HB-HSP90B1, P4HB-GNG2, P4HB-PTGES3, P4HB-HSP90AA1, CYCS-FBXO2, CYCS-YWHAH, CYCS-RPL22, CYCS-HSP90B1, CYCS-GNG2, CYCS-PTGES3, CYCS-HSP90AA1, CYCS-P4HB, PLSCR3-FBXO2, PLSCR3-YWHAH, PLSCR3-RPL22, PLSCR3-HSP90B1, PLSCR3-GNG2, PLSCR3-PTGES3, PLSCR3-HSP90AA1, PLSCR3-P4HB, PLSCR3-CYCS, VAMP1-FBXO2, VAMP1-YWHAH, VAMP1-RPL22, VAMP1-HSP90B1, VAMP1-GNG2, VAMP1-PTGES3, VAMP1-HSP90AA1, VAMP1-P4HB, VAMP1-CYCS, VAMP1-PLSCR3, TSPAN2-FBXO2, TSPAN2-YWHAH, TSPAN2-RPL22, TSPAN2-HSP90B1, TSPAN2-GNG2, TSPAN2-PTGES3, TSPAN2-HSP90AA1, TSPAN2-P4HB, TSPAN2-CYCS, TSPAN2-PLSCR3, TSPAN2-VAMP1, ATP9A-FBXO2, ATP9A-YWHAH, ATP9A-RPL22, ATP9A-HSP90B1, ATP9A-GNG2, ATP9A-PTGES3, ATP9A-HSP90AA1, ATP9A-P4HB, ATP9A-CYCS, ATP9A-PLSCR3, ATP9A-VAMP1, ATP9A-TSPAN2, NTRK2-FBXO2, NTRK2-YWHAH, NTRK2-RPL22, NTRK2-HSP90B1, NTRK2-GNG2, NTRK2-PTGES3, NTRK2-HSP90AA1, NTRK2-P4HB, NTRK2-CYCS, NTRK2-PLSCR3, NTRK2-VAMP1, NTRK2-TSPAN2, NTRK2-ATP9A, Elavl4-FBXO2, Elavl4-YWHAH, Elavl4-RPL22, Elavl4-HSP90B1, Elavl4-GNG2, Elavl4-PTGES3, Elavl4-HSP90AA1, Elavl4-P4HB, Elavl4-CYCS, Elavl4-PLSCR3, Elavl4-VAMP1, Elavl4-TSPAN2, Elavl4-ATP9A, Elavl4-NTRK2, NAG6-FBXO2, NAG6-YWHAH, NAG6-RPL22, NAG6-HSP90B1, NAG6-GNG2, NAG6-PTGES3, NAG6-HSP90AA1, NAG6-P4HB, NAG6-CYCS, NAG6-PLSCR3, NAG6-VAMP1, NAG6-TSPAN2, NAG6-ATP9A, NAG6-NTRK2, NAG6-Elavl4, Hcn2-FBXO2, Hcn2-YWHAH, Hcn2-RPL22, Hcn2-HSP90B1, Hcn2-GNG2, Hcn2-PTGES3, Hcn2-HSP90AA1, Hcn2-P4HB, Hcn2-CYCS, Hcn2-PLSCR3, Hcn2-VAMP1, Hcn2-TSPAN2, Hcn2-ATP9A, Hcn2-NTRK2, Hcn2-Elavl4, Hcn2-NAG6, Dnaja2-FBXO2, Dnaja2-YWHAH, Dnaja2-RPL22, Dnaja2-HSP90B1, Dnaja2-GNG2, Dnaja2-PTGES3, Dnaja2-HSP90AA1, Dnaja2-P4HB, Dnaja2-CYCS, Dnaja2-PLSCR3, Dnaja2-VAMP1, 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EPB41L1-Dnaja2, EPB41L1-VAPA, EPB41L1-SLC2A13, EPB41L1-CD47, EPB41L1-FLOT1, EPB41L1-ATP2A2, EPB41L1-FLOT2, RGS7-FBXO2, RGS7-YWHAH, RGS7-RPL22, RGS7-HSP90B1, RGS7-GNG2, RGS7-PTGES3, RGS7-HSP90AA1, RGS7-P4HB, RGS7-CYCS, RGS7-PLSCR3, RGS7-VAMP1, RGS7-TSPAN2, RGS7-ATP9A, RGS7-NTRK2, RGS7-Elavl4, RGS7-NAG6, RGS7-Hcn2, RGS7-Dnaja2, RGS7-VAPA, RGS7-SLC2A13, RGS7-CD47, RGS7-FLOT1, RGS7-ATP2A2, RGS7-FLOT2, RGS7-EPB41L1, PLD3-FBXO2, PLD3-YWHAH, PLD3-RPL22, PLD3-HSP90B1, PLD3-GNG2, PLD3-PTGES3, PLD3-HSP90AA1, PLD3-P4HB, PLD3-CYCS, PLD3-PLSCR3, PLD3-VAMP1, PLD3-TSPAN2, PLD3-ATP9A, PLD3-NTRK2, PLD3-Elavl4, PLD3-NAG6, PLD3-Hcn2, PLD3-Dnaja2, PLD3-VAPA, PLD3-SLC2A13, PLD3-CD47, PLD3-FLOT1, PLD3-ATP2A2, PLD3-FLOT2, PLD3-EPB41L1, PLD3-RGS7, ENC1-FBXO2, ENC1-YWHAH, ENC1-RPL22, ENC1-HSP90B1, ENC1-GNG2, ENC1-PTGES3, ENC1-HSP90AA1, ENC1-P4HB, ENC1-CYCS, ENC1-PLSCR3, ENC1-VAMP1, ENC1-TSPAN2, ENC1-ATP9A, ENC1-NTRK2, ENC1-Elavl4, ENC1-NAG6, ENC1-Hcn2, ENC1-Dnaja2, ENC1-VAPA, ENC1-SLC2A13, ENC1-CD47, ENC1-FLOT1, ENC1-ATP2A2, ENC1-FLOT2, ENC1-EPB41L1, ENC1-RGS7, ENC1-PLD3, SYP-FBXO2, SYP-YWHAH, SYP-RPL22, SYP-HSP90B1, SYP-GNG2, SYP-PTGES3, SYP-HSP90AA1, SYP-P4HB, SYP-CYCS, SYP-PLSCR3, SYP-VAMP1, SYP-TSPAN2, SYP-ATP9A, SYP-NTRK2, SYP-Elavl4, SYP-NAG6, SYP-Hcn2, SYP-Dnaja2, SYP-VAPA, SYP-SLC2A13, SYP-CD47, SYP-FLOT1, SYP-ATP2A2, SYP-FLOT2, SYP-EPB41L1, SYP-RGS7, SYP-PLD3, SYP-ENC1, SLC2A3-FBXO2, SLC2A3-YWHAH, SLC2A3-RPL22, SLC2A3-HSP90B1, SLC2A3-GNG2, SLC2A3-PTGES3, SLC2A3-HSP90AA1, SLC2A3-P4HB, SLC2A3-CYCS, SLC2A3-PLSCR3, SLC2A3-VAMP1, SLC2A3-TSPAN2, SLC2A3-ATP9A, SLC2A3-NTRK2, SLC2A3-Elavl4, SLC2A3-NAG6, SLC2A3-Hcn2, SLC2A3-Dnaja2, SLC2A3-VAPA, SLC2A3-SLC2A13, SLC2A3-CD47, SLC2A3-FLOT1, SLC2A3-ATP2A2, SLC2A3-FLOT2, SLC2A3-EPB41L1, SLC2A3-RGS7, SLC2A3-PLD3, SLC2A3-ENC1, SLC2A3-SYP, STXBP1-FBXO2, STXBP1-YWHAH, STXBP1-RPL22, STXBP1-HSP90B1, STXBP1-GNG2, STXBP1-PTGES3, STXBP1-HSP90AA1, STXBP1-P4HB, STXBP1-CYCS, STXBP1-PLSCR3, STXBP1-VAMP1, STXBP1-TSPAN2, STXBP1-ATP9A, STXBP1-NTRK2, STXBP1-Elavl4, STXBP1-NAG6, STXBP1-Hcn2, STXBP1-Dnaja2, STXBP1-VAPA, STXBP1-SLC2A13, STXBP1-CD47, STXBP1-FLOT1, STXBP1-ATP2A2, STXBP1-FLOT2, STXBP1-EPB41L1, STXBP1-RGS7, STXBP1-PLD3, STXBP1-ENC1, STXBP1-SYP, STXBP1-SLC2A3, GAP43-FBXO2, GAP43-YWHAH, GAP43-RPL22, GAP43-HSP90B1, GAP43-GNG2, GAP43-PTGES3, GAP43-HSP90AA1, GAP43-P4HB, GAP43-CYCS, GAP43-PLSCR3, GAP43-VAMP1, GAP43-TSPAN2, GAP43-ATP9A, GAP43-NTRK2, GAP43-Elavl4, GAP43-NAG6, GAP43-Hcn2, GAP43-Dnaja2, GAP43-VAPA, GAP43-SLC2A13, GAP43-CD47, GAP43-FLOT1, GAP43-ATP2A2, GAP43-FLOT2, GAP43-EPB41L1, GAP43-RGS7, GAP43-PLD3, GAP43-ENC1, GAP43-SYP, GAP43-SLC2A3, GAP43-STXBP1, ATP1B1-FBXO2, ATP1B1-YWHAH, ATP1B1-RPL22, ATP1B1-HSP90B1, ATP1B1-GNG2, ATP1B1-PTGES3, ATP1B1-HSP90AA1, ATP1B1-P4HB, ATP1B1-CYCS, ATP1B1-PLSCR3, ATP1B1-VAMP1, ATP1B1-TSPAN2, ATP1B1-ATP9A, ATP1B1-NTRK2, ATP1B1-Elavl4, ATP1B1-NAG6, ATP1B1-Hcn2, ATP1B1-Dnaja2, ATP1B1-VAPA, ATP1B1-SLC2A13, ATP1B1-CD47, ATP1B1-FLOT1, ATP1B1-ATP2A2, ATP1B1-FLOT2, ATP1B1-EPB41L1, ATP1B1-RGS7, ATP1B1-PLD3, ATP1B1-ENC1, ATP1B1-SYP, ATP1B1-SLC2A3, ATP1B1-STXBP1, ATP1B1-GAP43, MAOB-FBXO2, MAOB-YWHAH, MAOB-RPL22, MAOB-HSP90B1, MAOB-GNG2, MAOB-PTGES3, MAOB-HSP90AA1, MAOB-P4HB, MAOB-CYCS, MAOB-PLSCR3, MAOB-VAMP1, MAOB-TSPAN2, MAOB-ATP9A, MAOB-NTRK2, MAOB-Elavl4, MAOB-NAG6, MAOB-Hcn2, MAOB-Dnaja2, MAOB-VAPA, MAOB-SLC2A13, MAOB-CD47, MAOB-FLOT1, MAOB-ATP2A2, MAOB-FLOT2, MAOB-EPB41L1, MAOB-RGS7, MAOB-PLD3, MAOB-ENC1, MAOB-SYP, MAOB-SLC2A3, MAOB-STXBP1, MAOB-GAP43, MAOB-ATP1B1, CHRM1-FBXO2, CHRM1-YWHAH, CHRM1-RPL22, CHRM1-HSP90B1, CHRM1-GNG2, CHRM1-PTGES3, CHRM1-HSP90AA1, CHRM1-P4HB, CHRM1-CYCS, CHRM1-PLSCR3, CHRM1-VAMP1, CHRM1-TSPAN2, CHRM1-ATP9A, CHRM1-NTRK2, CHRM1-Elavl4, CHRM1-NAG6, CHRM1-Hcn2, CHRM1-Dnaja2, CHRM1-VAPA, CHRM1-SLC2A13, CHRM1-CD47, CHRM1-FLOT1, CHRM1-ATP2A2, CHRM1-FLOT2, CHRM1-EPB41L1, CHRM1-RGS7, CHRM1-PLD3, CHRM1-ENC1, CHRM1-SYP, CHRM1-SLC2A3, CHRM1-STXBP1, CHRM1-GAP43, CHRM1-ATP1B1, CHRM1-MAOB, SLC7A14-FBXO2, SLC7A14-YWHAH, SLC7A14-RPL22, SLC7A14-HSP90B1, SLC7A14-GNG2, SLC7A14-PTGES3, SLC7A14-HSP90AA1, SLC7A14-P4HB, SLC7A14-CYCS, SLC7A14-PLSCR3, SLC7A14-VAMP1, SLC7A14-TSPAN2, SLC7A14-ATP9A, SLC7A14-NTRK2, SLC7A14-Elavl4, SLC7A14-NAG6, SLC7A14-Hcn2, SLC7A14-Dnaja2, SLC7A14-VAPA, SLC7A14-SLC2A13, SLC7A14-CD47, SLC7A14-FLOT1, SLC7A14-ATP2A2, SLC7A14-FLOT2, SLC7A14-EPB41L1, SLC7A14-RGS7, SLC7A14-PLD3, SLC7A14-ENC1, SLC7A14-SYP, SLC7A14-SLC2A3, SLC7A14-STXBP1, SLC7A14-GAP43, SLC7A14-ATP1B1, SLC7A14-MAOB, SLC7A14-CHRM1, NDUFS7-FBXO2, NDUFS7-YWHAH, NDUFS7-RPL22, NDUFS7-HSP90B1, NDUFS7-GNG2, NDUFS7-PTGES3, NDUFS7-HSP90AA1, NDUFS7-P4HB, NDUFS7-CYCS, NDUFS7-PLSCR3, NDUFS7-VAMP1, NDUFS7-TSPAN2, NDUFS7-ATP9A, NDUFS7-NTRK2, NDUFS7-Elavl4, NDUFS7-NAG6, NDUFS7-Hcn2, NDUFS7-Dnaja2, NDUFS7-VAPA, NDUFS7-SLC2A13, NDUFS7-CD47, NDUFS7-FLOT1, NDUFS7-ATP2A2, NDUFS7-FLOT2, NDUFS7-EPB41L1, NDUFS7-RGS7, NDUFS7-PLD3, NDUFS7-ENC1, NDUFS7-SYP, NDUFS7-SLC2A3, NDUFS7-STXBP1, NDUFS7-GAP43, NDUFS7-ATP1B1, NDUFS7-MAOB, NDUFS7-CHRM1, NDUFS7-SLC7A14, GPRIN1-FBXO2, GPRIN1-YWHAH, GPRIN1-RPL22, GPRIN1-HSP90B1, GPRIN1-GNG2, GPRIN1-PTGES3, GPRIN1-HSP90AA1, GPRIN1-P4HB, GPRIN1-CYCS, GPRIN1-PLSCR3, GPRIN1-VAMP1, GPRIN1-TSPAN2, GPRIN1-ATP9A, GPRIN1-NTRK2, GPRIN1-Elavl4, GPRIN1-NAG6, GPRIN1-Hcn2, GPRIN1-Dnaja2, GPRIN1-VAPA, GPRIN1-SLC2A13, GPRIN1-CD47, GPRIN1-FLOT1, GPRIN1-ATP2A2, GPRIN1-FLOT2, GPRIN1-EPB41L1, GPRIN1-RGS7, GPRIN1-PLD3, GPRIN1-ENC1, GPRIN1-SYP, GPRIN1-SLC2A3, GPRIN1-STXBP1, GPRIN1-GAP43, GPRIN1-ATP1B1, GPRIN1-MAOB, GPRIN1-CHRM1, GPRIN1-SLC7A14, GPRIN1-NDUFS7, ATP8A1-FBXO2, ATP8A1-YWHAH, ATP8A1-RPL22, ATP8A1-HSP90B1, ATP8A1-GNG2, ATP8A1-PTGES3, ATP8A1-HSP90AA1, ATP8A1-P4HB, ATP8A1-CYCS, ATP8A1-PLSCR3, ATP8A1-VAMP1, ATP8A1-TSPAN2, ATP8A1-ATP9A, ATP8A1-NTRK2, ATP8A1-Elavl4, ATP8A1-NAG6, ATP8A1-Hcn2, ATP8A1-Dnaja2, ATP8A1-VAPA, ATP8A1-SLC2A13, ATP8A1-CD47, ATP8A1-FLOT1, ATP8A1-ATP2A2, ATP8A1-FLOT2, ATP8A1-EPB41L1, ATP8A1-RGS7, ATP8A1-PLD3, ATP8A1-ENC1, ATP8A1-SYP, ATP8A1-SLC2A3, ATP8A1-STXBP1, ATP8A1-GAP43, ATP8A1-ATP1B1, ATP8A1-MAOB, ATP8A1-CHRM1, ATP8A1-SLC7A14, ATP8A1-NDUFS7, ATP8A1-GPRIN1。
さらに、上記2種の組み合わせに、更に異なる1種のタンパク質を組み合わせて、3種以上の組み合わせを用いることもできる。
なお、上記2種以上のタンパク質又はそれらに対応する2種以上の遺伝子の組み合わせは、後述するスクリーニング法(Ia)、(Ib)、(II)および(III)においても、同様に適用することができ、それぞれ2種以上のタンパク質の発現または機能を抑制する化合物をスクリーニングすることができる。
2種以上のタンパク質を組み合わせてスクリーニングを行う場合、当該2種以上のタンパク質すべてを産生する1種の細胞を用いることが好ましい。例えば、前記の哺乳動物細胞、例えば、HepG2細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、ヒトFL細胞、サルCOS-7細胞、サルVero細胞、CHO細胞、CHO(dhfr-)細胞、マウスL細胞,マウスAtT-20細胞、マウスミエローマ細胞,ラットH4IIE-C3細胞、ラットGH3細胞などを用い、上記2種以上のタンパク質をそれぞれコードするDNAを含む発現ベクターで同時形質転換することにより、当該2種以上のタンパク質を同時に発現する細胞を製造し、これを2種以上のタンパク質の発現または機能を抑制する化合物のスクリーニングに用いることができる。
【0107】
被検物質としては、例えばタンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
【0108】
タンパク質Pnの活性は、好ましくはAβの産生抑制を指標として測定されるので、タンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれを産生する能力を有する細胞と、被検物質との接触に際しては、Aβ産生系を共存させることが好ましい。Aβ産生系としては、Aβの前駆体であるAPPを発現する細胞が好ましく用いられる。ここで、タンパク質Pnまたはその部分ペプチドが、それを産生する能力を有する細胞として提供される場合、当該細胞自体がAPPを発現するものであることが好ましい。
【0109】
被検物質の上記細胞との接触は、例えば、上記の培地や各種緩衝液(例えば、HEPES緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)の中に被検物質を添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加される被検物質の濃度は化合物の種類(溶解度、毒性等)により異なるが、例えば、約0.1nM〜約100nMの範囲で適宜選択される。インキュベート時間としては、例えば、約10分〜約24時間が挙げられる。一方、単離されたタンパク質Pnまたはその部分ペプチドを用いる場合、該タンパク質またはペプチドと被検物質との接触は、両者を、APPを発現する細胞の培地に添加して、細胞を一定時間インキュベートすることにより実施することができる。添加されるタンパク質Pnまたはその部分ペプチドの濃度は、各タンパク質またはペプチドについて、例えば、約0.1〜約100μg/mlの範囲で適宜選択される。
【0110】
タンパク質Pnを産生する細胞が、非ヒト哺乳動物個体の形態で提供される場合、タンパク質Pnを生来発現している動物を用いてもよいし、Pnが過剰発現するように遺伝子Gnを組み込んだ遺伝子組換え動物(トランスジェニック(Tg)動物)を用いてもよい。特に、ヒトタンパク質Pnに対する被検物質の効果を調べたい場合等には、該動物の内因性遺伝子Gnをヒト遺伝子Gnで置換したノックイン動物を用いることもできる。尚、この場合、APPを発現する細胞は該動物個体に内在する。該動物個体の状態は特に制限されないが、例えば、Tg2576マウス、APP23 Tgマウス等のADモデル動物であってもよい。使用される動物の飼育条件に特に制限はないが、SPFグレード以上の環境下で飼育されたものであることが好ましい。被検物質の該細胞との接触は、該動物個体への被検物質の投与によって行われる。投与経路は特に制限されないが、例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、経口投与、気道内投与、直腸投与、鼻腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。投与量も特に制限はないが、例えば、1回量として約0.5〜20 mg/kgを、1日1〜5回、1日〜6ヶ月程度投与することができる。
【0111】
上記のスクリーニング方法におけるタンパク質Pnの活性の測定は、自体公知の方法でAβの産生量を測定することにより行うことができる。活性測定のための被験試料としては、APPを発現する培養細胞(組織培養、臓器培養を含む)に、タンパク質Pnまたはその部分ペプチド、あるいはそれを産生する能力を有する細胞等(APPを発現する細胞等自体であってもよい)と、被検物質とを接触させる場合、該培養細胞の培養上清が、タンパク質PnおよびAPPを産生する非ヒト哺乳動物個体に被検物質を投与する場合は、該個体から採取した体液、例えば、血液、脳脊髄液等、あるいは細胞、組織、臓器の抽出物、例えば、脳、あるいはそれらの組織切片等のホモジネートなどが挙げられる。
Aβの産生量は、被験試料中のAβ(例、Aβ38、Aβ40、Aβ42等、好ましくAβ40および/またはAβ42)量を、例えば、抗Aβ抗体を用いたELISA法やウエスタンブロッティング等の各種免疫学的手法、質量分析法などを用いて測定することにより行うことができる。
【0112】
例えば、上記のスクリーニング方法において、被検物質の存在下におけるタンパク質Pnの活性(例えば、被験試料中のAβ量)が、被検物質の非存在下における活性に比べて、例えば、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは約50%以上阻害された場合に、該被検物質を、タンパク質Pnの機能抑制物質、従って、Aβ産生抑制作用を有する物質の候補として選択することができる。
【0113】
スクリーニング法(Ia)
あるいはまた、(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物において、ADの病態を反映する表現型の改善を指標として、ADの治療または予防薬をスクリーニングしたり、上記スクリーニング法もしくは他のスクリーニング法により得られた薬剤のADに対する薬効を評価したりすることができる。具体的には、当該方法は、以下の(a)〜(c)の工程を含む。
(a)(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物に被検物質を投与する工程
(b)該動物における、ADの病態を反映する少なくとも1つの表現型を評価する工程
(c)被検物質の非投与時において評価した場合と比較して、前記表現型を改善させる物質を選択する工程
工程(a)は、前記タンパク質Pnの活性を指標とするスクリーニング方法において、タンパク質PnおよびAPPを産生する非ヒト哺乳動物個体に被検物質を投与する場合と同様に実施することができる。
工程(b)において、ADの病態を反映する表現型としては、例えば、(1) 脳組織、脳脊髄液、血液中など組織中のAβ量、(2)神経細胞死、(3)中枢神経系の炎症反応、(4)認知能力の低下、(5)アミロイドプラークの蓄積、(6)脳内血流の悪化、(7)脳内グルコース代謝の低下等が挙げられるが、それらに限定されない。これらの表現型の評価は、それぞれについて自体公知のものを用いることができる(例えば、認知能力の評価法として、Y字型迷路試験などが挙げられる)。
【0114】
スクリーニング法(Ib)
別の好ましい一実施態様においては、タンパク質Pnの活性はγ−セクレターゼの活性亢進を指標にして測定することができる。具体的には、当該スクリーニング方法は、
(a)タンパク質Pnおよびγ−セクレターゼと、被検物質とを接触させる工程、
(b)γ−セクレターゼ活性を測定する工程、および
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、γ−セクレターゼ活性を低下あるいはモジュレートさせる物質を選択する工程、を含む。
【0115】
γ−セクレターゼとしては、例えば、それを発現する細胞もしくはその細胞膜画分を用いることができる。また、タンパク質Pnは、γ−セクレターゼを発現する細胞が自ら産生することによって提供されてもよい。
γ−セクレターゼ活性は、基質となるAPPもしくはNotchを添加して、APPの代謝物フラグメント(Aβ38、Aβ40、Aβ42、AICD等)もしくはNotchの代謝物(NICD)を、ELISA法、ウエスタンブロッティング、レポータージーンアッセイ、質量分析法などを用いて検出することにより、測定することができる。
【0116】
例えば、上記のスクリーニング方法において、被検物質の存在下におけるγ−セクレターゼ活性が、被検物質の非存在下における活性に比べて、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは約50%以上阻害された場合に、該被検物質を、タンパク質Pnの機能抑制物質、従って、Aβ産生抑制作用を有する物質の候補として選択することができる。
【0117】
上記いずれかのスクリーニング方法において、コントロールとして、常法を用いて作製される、遺伝子Gnがノックアウトまたはノックダウンされた細胞または動物を用い、被験細胞または動物とコントロールとにおける、被検物質存在下でのタンパク質Pnの活性を測定、比較することによってもAβ産生抑制物質を選択することができる。
【0118】
スクリーニング法(II)
本発明はまた、タンパク質Pnを産生する能力を有する細胞における該タンパク質(遺伝子)の発現を、被検物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法を提供する。本方法において用いられる細胞、被検物質の種類、被検物質と細胞との接触の態様などは、上記したタンパク質Pnの活性を指標とする方法と同様である。
【0119】
タンパク質Pnの発現量は、前記のタンパク質PnをコードするDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸、即ち、配列番号:nで表される塩基配列もしくはそれと相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸(以下、「本発明の検出用核酸」という場合がある)を用いて、遺伝子GnのmRNAを検出することにより、RNAレベルで測定することができる。あるいは、該発現量は、前記のタンパク質Pnに対する抗体(以下、「本発明の検出用抗体」という場合がある)を用いて、これらのタンパク質を検出することにより、タンパク質レベルで測定することもできる。
【0120】
従って、より具体的には、本発明は、
(a)タンパク質Pnを産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質をコードするmRNAの量を、本発明の検出用核酸を用いて測定、比較することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法、および
(b)タンパク質Pnを産生する能力を有する細胞を被検物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該タンパク質の量を、本発明の検出用抗体を用いて測定、比較することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法を提供する。
【0121】
例えば、タンパク質PnのmRNA量またはタンパク質量の測定は、具体的には以下のようにして行うことができる。
(i)正常あるいは疾患(例えば、ADなど)モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して薬剤などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳等)、あるいは臓器から単離した組織または細胞を得る。
得られた細胞に含まれるタンパク質PnのmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、RT-PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、あるいは自体公知のノーザンブロット解析により定量することもできる。一方、タンパク質Pnの量は、ウェスタンブロット解析や以下に詳述する各種イムノアッセイ法を用いて定量することができる。
(ii)遺伝子Gnを導入した形質転換体を上記の方法に従って作製し、該形質転換体に含まれるタンパク質PnあるいはそれをコードするmRNAを、上記(i)と同様にして定量、解析することができる。
【0122】
タンパク質Pnの発現量を変化させる物質のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤などを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤などと同時に被検物質を投与し、投与から一定時間が経過した後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、該動物から単離した細胞に含まれるタンパク質PnをコードするmRNA量、あるいはタンパク質Pnの量を定量、解析することにより、あるいは
(ii)形質転換体を常法に従って培養する際に被検物質を培地もしくは緩衝液中に添加し、一定時間インキュベート後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれるタンパク質PnをコードするmRNA量、あるいはタンパク質Pnの量を定量、解析することにより行うことができる。
【0123】
上記(b)のスクリーニング方法におけるタンパク質Pnの量の測定は、具体的には、例えば、
(i)本発明の検出用抗体と、試料液および標識化されたタンパク質Pnとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたタンパク質を検出することにより試料液中のタンパク質Pnを定量する方法や、
(ii)試料液と、担体上に不溶化した本発明の検出用抗体および標識化された別の本発明の検出用抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより、試料液中のCタンパク質Pnを定量する方法等が挙げられる。
上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はタンパク質Pnの異なる部分を認識するものであることが望ましい。例えば、一方の抗体がタンパク質PnのN端部を認識する抗体であれば、他方の抗体として該タンパク質のC端部と反応するものを用いることができる。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
【0124】
本発明の検出用抗体を用いるタンパク質Pnの定量法は、特に制限されるべきものではなく、試料液中の抗原量に対応した、抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられる。感度、特異性の点で、例えば、後述するサンドイッチ法を用いるのが好ましい。
【0125】
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
【0126】
サンドイッチ法においては不溶化した本発明の検出用抗体に試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明の検出用抗体を反応させ(2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のタンパク質Pnを定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0127】
本発明の検出用抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、試料液中のタンパク質Pnと標識したタンパク質Pnとを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定することにより、試料液中のタンパク質Pnを定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか(直接法)、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる(間接法)固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、試料液中のタンパク質Pnと固相化したタンパク質Pnとを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するか、あるいは試料液中のタンパク質Pnと過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化したタンパク質Pnを加えて未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し試料液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。試料液中のタンパク質Pnの量がわずかであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0128】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてタンパク質Pnの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
【0129】
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の検出用抗体を用いることによって、細胞におけるタンパク質Pnの量を感度よく定量することができる。
【0130】
例えば、上記(a)および(b)のスクリーニング法において、被検物質の存在下におけるタンパク質Pnの発現量(mRNA量またはタンパク質量)が、被検物質の非存在下における場合に比べて、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、さらに好ましくは約50%以上阻害された場合、該被検物質を、タンパク質Pnの発現抑制物質、従って、Aβ産生抑制作用を有する物質の候補として選択することができる。
【0131】
あるいは、上記スクリーニング法において、遺伝子Gnを発現する細胞に代えて、遺伝子Gnの内在の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子を含む細胞を用いることができる。このような細胞は、遺伝子Gnの転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼ、GFPなど)を導入したトランスジェニック動物の細胞、組織、臓器もしくは個体であってもよい。かかる細胞を用いる場合には、タンパク質Pnの発現量は、レポーター遺伝子の発現レベルを、常法を用いて測定することにより評価することができる。
【0132】
上記のスクリーニング方法において、コントロールとして、常法を用いて作製される、遺伝子Gnがノックアウトまたはノックダウンされた細胞または動物を用い、被験細胞または動物とコントロールとにおける、被検物質存在下でのタンパク質Pnの発現量を測定、比較することによってもAβ産生抑制物質を選択することができる。
【0133】
スクリーニング法(III)
本発明はまた、以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法を提供する。
(a)タンパク質Pnおよびγ−セクレターゼと、被検物質とを接触させる工程
(b)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を低下させる物質を選択する工程
結合活性の指標としては、γ−セクレターゼの活性亢進で測定するか、下記に示すごとく、結合量を測定することが例示できる(前者については、上記スクリーニング法(Ib)に準じて行うことができる)。
より具体的には、上記スクリーニング方法は、
(1)標識したタンパク質Pnと、γ−セクレターゼとを、被検物質の存在下および非存在下で接触させた場合における、標識したタンパク質Pnのγ−セクレターゼに対する結合量を測定し、比較する、または
(2)標識したタンパク質Pnと、γ−セクレターゼを産生する細胞またはその膜画分とを、被検物質の存在下および非存在下で接触させた場合における、標識したタンパク質Pnの該細胞または膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする。
【0134】
タンパク質Pnは、常法に従って、例えば放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などで標識することができる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
【0135】
例えば、上記(1)および(2)のスクリーニング法において、被検物質の存在下におけるγ−セクレターゼに結合する標識量(タンパク質Pn量)が、被検物質の非存在下における場合に比べて、約10%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、さらに好ましくは約50%以上阻害された場合、該被検物質をタンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を抑制する物質、従って、Aβ産生抑制作用を有する物質の候補として選択することができる。
【0136】
本発明の上記いずれかのスクリーニング方法を用いて得られる、タンパク質Pnの発現または機能を抑制する物質は、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の予防および/または治療薬として有用である。
【0137】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる物質を上述の予防・治療剤として使用する場合、上記タンパク質Pnの発現または機能を抑制する低分子化合物と同様に製剤化することができ、同様の投与経路および投与量で、ヒトまたは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して、経口的にまたは非経口的に投与することができる。
【0138】
(4)診断薬としての利用
また、本発明は、被験動物より採取した試料中のタンパク質Pnの発現量を測定することを特徴とするAβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)の発症または発症リスクの判定方法を提供する。当該方法は以下の(a)〜(c)の工程を含む。
(a)被験動物由来の試料を提供する工程
(b)該試料中の、遺伝子Gn(n=1〜12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量もしくはタンパク質Pn(n=1〜12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質の活性を測定する工程
(c)正常動物由来の試料において測定した場合と比較して、前記発現量もしくは活性が上昇している被験動物を、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定する工程
【0139】
被験動物としては、ヒトもしくは他の哺乳動物が挙げられるが、好ましくはヒト、あるいは実験動物として汎用されるマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル等である。測定対象試料としては、血液、血漿、血清、脳脊髄液、リンパ液、唾液、粘膜、尿、涙、精液、関節液、生検サンプル等が挙げられる。
【0140】
試料中の遺伝子Gnの発現量およびタンパク質Pnの量は、該遺伝子もしくは該タンパク質の発現量を指標とする上記スクリーニング法に記載されたのと同様の方法により測定することができる。
上記測定の結果、被験動物より採取した試料中の遺伝子Gnの発現量またはタンパク質Pnの量が、正常動物より採取した試料中の遺伝子Gnの発現量またはタンパク質Pnの量と比較して有意に高かった場合、該被験動物は、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定することができる。あるいは、正常動物における発現量を予め同定しておき、例えば、その平均値+2SDをカットオフ値として規定し、被験動物より採取した試料中の遺伝子Gnの発現量またはタンパク質Pnの量が、当該カットオフ値を超えた場合に、該被験動物は、Aβが関与する疾患(例、AD)やNotchタンパク質の切断が関与する疾患(例、癌)を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定することもできる。
【0141】
非ヒト動物の上記診断においては、コントロールとして、遺伝子Gnをノックアウトまたはノックダウンした動物を用いてもよい。また、遺伝子Gnをノックアウトまたはノックダウンした動物は、タンパク質Pnの機能解析のためのツールとしても有用である。
【実施例】
【0142】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0143】
実施例1 脳γ−セクレターゼ結合タンパク質の同定
脳組織では、ミクロゾーム画分においてγ−セクレターゼ活性が強く検出されているので、この画分を調製し、インヒビタープルダウン法によりγ−セクレターゼ複合体の精製を行った。
【0144】
(1)脳γ−セクレターゼの含有画分の調製
ラット脳はフナコシ株式会社より入手した。
ラットの脳組織を緩衝液A (20 mM Hepes, 50 mM KCl, 2 mM EGTA, pH 7.5にComplete protease inhibitor mixture(Roche Applied Science, Indianapolis, IN, USA)を添加したもの)中でホモジナイズした後、1,000 x gおよび10,000 x gの遠心分離により細胞片、核成分を取り除いたのち、100,000 x gの遠心分離による沈殿物よりミクロゾーム画分を調製した。調製されたミクロゾーム画分を1% (w/v) CHAPSOを含む緩衝液Aで可溶化した後、100,000 x gの遠心分離により、可溶化γ−セクレターゼ複合体を調製した。結合実験には0.5%(w/v)CHAPSOに調製した可溶化γ−セクレターゼ複合体を用いた。
(2)脳γ−セクレターゼの含有画分の精製
一般的に用いられるγ−セクレターゼ阻害剤(DAPT)にPEGリンカーを導入した化合物とコレステロール(Cholesterol)にPEGリンカーを導入した化合物を市販のアフィニティー樹脂Affi-Gel−102Gel(BIO−RAD, cat. No; 153-2401)に固定化したアフィゲル-DAPT+Cholesterol樹脂(Affigel−DAPT+Cholesterol樹脂)(図1)(国際公開第2010/053115号)を用いて以下の実験を行った。
【0145】
この方法は、DAPTのターゲットであるγ−セクレターゼ複合体の存在する膜環境を、アフィニティー樹脂上に擬似的に構築することで、効率よく膜タンパク質をプルダウンする手法(Target Oriented Affinity Chromatography (TOrAC法))である(国際公開第2010/053115号)。
原料となるDAPTは、別名LY-374973, N-[N-(3,5-ジフルオロフェンアセチル)-L-アラニル]-S-フェニルグリシン t-ブチルエステルともいい、分子式C23H26F2N2O4、分子量432.46の公知化合物であり、J. Neurochem. 2001, 76, 173, Org. Biomol. Chem., 2005, 3, 2450-2457, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters., 2004, 14, 1983-1985.に記載の方法で製造できる。また、市販品(シグマ社、Cat. No. D5942,カルビオ社、Cat. No. 565770, トクリス社、Cat. No. 2634, アレキシス社、Cat. No. 270-416-M005, ペプネット社、Cat. No. IGS-3641-PI)を入手することもできる。
【0146】
Affigel−DAPT+Cholesterol樹脂(図1)(1.2μmol相当)を正確にはかり取り、上記(1)で得られたラット脳ライゼート(200μl)と結合実験を実施した。
拮抗(+)はあらかじめLysateに100mMDAPT0.2μl加え(最終濃度 100μM)、30分間インキュベーションした後、結合実験に用いた。結合実験終了後、樹脂を12,000xgにて遠心分離し、上澄みを捨て、残された樹脂をbufferB (20mM Hepse pH7.5, 50mM KCl, 2mM EGTA+ protease inhibitor, 0.5%CHAPSO) 800μl にて3回洗浄した(15分、3回)。樹脂にSDS用ローディングバッファーを加え、インキュベーションした。こうして得られたサンプル液を市販のSDSゲル(BioRad ready Gel J, 5-20%SDS, cat. No; 161-J371V)で分離し、そのSDSゲルを解析した。
【0147】
(3)ウエスタンブロッティングによる特異性の確認
SDS-PAGEによって分離した蛋白質をPVDF Membrane Filter Paper Sandwich 0.2um Pore Size,20/pk.(invitrogen cat. No; LC2002)へトランスファーした。PVDF膜をトレーに移し、ブロッキング剤であるBlocking One (nakalai)を50ml加え、室温にて1時間振とうした。TBS-Tにて3回洗浄した(10分、3回)。
【0148】
1次抗体をCan Get Signal Solution 1 (TOYOBO, cat. No;NKB-101)にて希釈し、室温にて1時間振とうした。TBS-Tにて3回洗浄した(10分、3回)。 2次抗体をCan Get Signal Solution 2 (TOYOBO, cat. No;NKB-101)にて希釈し、室温にて1時間インキュベーションした。TBS-Tにて3回洗浄した(10分、3回)。検出試薬はECL Plus western Blotting Detection System (GE Healthcare cat. No;RPN2132)を用いて行った。
検出装置としてルミノ・イメージアナライザーLAS-1000(富士フィルム)を用いて検出した。
【0149】
その結果、図2に示すとおり、脳抽出物にあらかじめγ−セクレターゼ阻害剤であるDAPTを添加していないレーン(−)はγ−セクレターゼ(ニカストリン(NCT),プレセニリン1(PS1-NTF,PS1−CTF),アフ−1(APH-1),ペン−2(PEN-2)のコンプレックス体)が樹脂上のDAPTを認識し結合するが、脳抽出物に拮抗剤であるDAPTをあらかじめ添加したレーン(+)はすでにフリーのDAPTがターゲットであるγ−セクレターゼに結合しているため、樹脂上のDAPTとは結合せず、Nct,PS1,Aph−1、Pen−2のバンドが消失している。バンドの消失からこれら4つの構成成分がコンプレックス体としてDAPTに特異的に結合していることがわかる。
【0150】
従って、図1のAffigel−DAPT+Cholesterol樹脂は、DAPTの結合タンパク質である、Nct、PS−1、Aph−1及びPen−2といったγ−セクレターゼの構成成分と結合し、この結合は、DAPTにより拮抗される特異的なものであることがわかった。
【0151】
(4)γ−セクレターゼ複合体成分の同定
SDS-PAGEにより分離したタンパク質を拮抗剤(-)のレーン、拮抗剤(+)のレーンそれぞれを上から下まで短冊状に切断した。切断したゲル片をin-Gel トリプシン消化を行い得られたペプチドをLTQ-Orbitrap(サーモフィッシャーサイエンス社)にて測定し、タンパク質を同定した。拮抗(-)で得られたタンパク質群から拮抗(+)で得られたタンパク質群を差し引きした。この結果、特異的にγ−セクレターゼに結合し、脳に発現する複数の新規γ−セクレターゼ構成因子を見出した(表1)。
【0152】
【表1】

【0153】
実施例2 新規結合因子のsiRNAノックダウンによるAβ産生抑制
上記方法で同定されたものについて、Aβ産生に対する影響をRNAi法により評価した。
【0154】
評価に用いた細胞である、アミロイドプレカーサータンパク(APP)を恒常的に発現するヒト胎児腎臓細胞株(HEK-APP)は、カロリンスカ研究所のDr. Eirikur Benedikz氏より入手した (Nilsson et al., Biochem Biophys Res Commun, 341,1294-9.)。HEK-APP細胞は、10% fetal calf serum を含む Dulbecco’s modified Eagle’s medium (Invitrogen) で培養した。
【0155】
新規因子のsiRNAは、Ambion社などから市販されているものを購入するか、Teramoto R.らが報告する方法(Teramoto, R. et al., FEBS Lett. (2005) 579, 2878-2882)および特許公開2006-236153に記載の方法によりデザインし、株式会社ジーンデザインより合成された(表2)。
【0156】
【表2】

【0157】
siRNAは、siRNA導入試薬LipofectamineTM RNAiMAX Transfection Reagent (Invitrogen) を用い、HEK-APP細胞に導入した。導入72時間後に、培養培地をOpti-MEM I (Invitrogen)に変換した後、さらに24時間培養し、培養上清を回収した。
【0158】
WST8 法により、生細胞数を測定し、30%以上の細胞毒性を示したsiRNAは試験より排除した。標的遺伝子のノックダウン効率は、リアルタイムPCR法により確認した。標的遺伝子のプライマーはアプライドバイオシステムズ社のPre-Developed TaqMan(登録商標) Assay Reagentsを用い、内部標準としてGAPDH遺伝子を用いた。培養上清中のAβ42量は、ELISA法 (Wako Chemicals, Osaka, Japan)を用いて測定した。評価系のコントロールとしてAllStars Negative Control siRNA (qiagen 1027280)を用い、Negative Control siRNA を導入した時の値(Neg.Con)を100%として抑制率を算出した。その結果、試験系のコントロールとして用いたγ−セクレターゼの構成因子であるプレセニリン1(PS1)の発現量を低下させた場合と同様に、新規因子の発現量を低下させることにより、Aβ42量を減少させる知見を得た(図3)。

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明により提供されるスクリーニング法は、γ-セクレターゼの活性をアップレギュレートする新規タンパク質の発現や機能を抑制する作用を有する物質を選択することができるので、本スクリーニング法により得られる物質は、Aβの産生および/またはNotchの切断阻害剤あるいはモジュレーターとして、ADや癌などの疾患の予防および治療薬として期待される。あるいは、これらの新規タンパク質は、γ−セクレターゼのNotch切断活性には影響しない可能性があるので、本スクリーニング法により得られる物質は、Notchなどの他の生理的基質の切断を阻害することなく、γ−セクレターゼ活性のAPP切断活性のみを阻害できる可能性があり、副作用の少ない安全なADなどの疾患の予防および治療薬としても期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のタンパク質:
(P1) F-box only protein 2;
(P2) 14-3-3 protein eta;
(P3) 60S ribosomal protein L22;
(P4) Endoplasmin;
(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;
(P6) Prostaglandin E synthase 3;
(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;
(P8) Protein disulfide-isomerase;
(P9) Cytochrome c;
(P10) Phospholipid scramblase 3;
(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および
(P12) Tetraspanin-2;
から選ばれるタンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)の発現または機能を抑制する、1以上の物質を含有してなる、Aβ産生抑制剤。
【請求項2】
タンパク質Pnの発現を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、請求項1に記載の剤。
(a)タンパク質Pnをコードする遺伝子Gn:
(G1) FBXO2;
(G2) YWHAH;
(G3) RPL22;
(G4) HSP90B1;
(G5) GNG2;
(G6) PTGES3;
(G7) HSP90AA1;
(G8) P4HB;
(G9) CYCS;
(G10) PLSCR3;
(G11) VAMP1;または
(G12) TSPAN2;
の転写産物に対するアンチセンス核酸
(b)遺伝子Gnの転写産物に対するリボザイム核酸
(c)遺伝子Gnの転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
【請求項3】
タンパク質Pnの機能を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、請求項1に記載の剤。
(a)タンパク質Pnと結合する抗体
(b)タンパク質Pnと結合する低分子化合物
(c)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する化合物
【請求項4】
Aβが、Aβ40またはAβ42である、請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
【請求項5】
アルツハイマー病もしくは癌の治療または予防のための、請求項1〜4のいずれかに記載の剤。
【請求項6】
哺乳動物において、以下のタンパク質:
(P1) F-box only protein 2;
(P2) 14-3-3 protein eta;
(P3) 60S ribosomal protein L22;
(P4) Endoplasmin;
(P5) Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-2;
(P6) Prostaglandin E synthase 3;
(P7) Heat shock protein HSP 90-alpha;
(P8) Protein disulfide-isomerase;
(P9) Cytochrome c;
(P10) Phospholipid scramblase 3;
(P11) Vesicle-associated membrane protein 1;および
(P12) Tetraspanin-2;
から選ばれるタンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)の発現または機能を抑制することを含む、該哺乳動物におけるAβ産生の抑制方法。
【請求項7】
有効量の、タンパク質Pnの発現または機能を抑制する1以上の物質を哺乳動物に投与することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質Pnの発現を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、請求項7に記載の方法。
(a)タンパク質Pnをコードする遺伝子Gn:
(G1) FBXO2;
(G2) YWHAH;
(G3) RPL22;
(G4) HSP90B1;
(G5) GNG2;
(G6) PTGES3;
(G7) HSP90AA1;
(G8) P4HB;
(G9) CYCS;
(G10) PLSCR3;
(G11) VAMP1;または
(G12) TSPAN2;
の転写産物に対するアンチセンス核酸
(b)遺伝子Gnの転写産物に対するリボザイム核酸
(c)遺伝子Gnの転写産物に対してRNAi活性を有する核酸もしくはその前駆体
【請求項9】
タンパク質Pnの機能を抑制する物質が、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される物質である、請求項7に記載の方法。
(a)タンパク質Pnと結合する抗体
(b)タンパク質Pnと結合する低分子化合物
(c)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する化合物
【請求項10】
Aβが、Aβ40またはAβ42である、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
アルツハイマー病もしくは癌の治療または予防のための、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量もしくは前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質の活性を低下させる物質を選択することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項13】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)(a1)遺伝子Gn(nは1〜12のいずれかの整数)もしくは(a2) 遺伝子Gn(nは1〜12のいずれかの整数)の転写調節領域の制御下にあるレポーター遺伝子を発現する細胞に、被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞における(b1)遺伝子Gnもしくは(b2)レポーター遺伝子の発現量を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、発現量を低下させる物質をAβ産生抑制物質の候補として選択する工程
【請求項14】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)アミロイド前駆タンパク質を発現する細胞に、前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質および被検物質を接触させる工程
(b)前記タンパク質の活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記タンパク質の活性を低下させる物質を選択する工程
【請求項15】
前記タンパク質が前記細胞自体により提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質の活性をAβの産生量を指標として測定することを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)γ−セクレターゼを発現する細胞もしくはその細胞膜画分に、前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質および被検物質を接触させる工程
(b)γ−セクレターゼ活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、γ−セクレターゼ活性を低下またはモジュレートさせる物質を選択する工程
【請求項18】
前記タンパク質が前記細胞自体により提供される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
タンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)とγ−セクレターゼとの結合活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項20】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、Aβ産生抑制物質のスクリーニング方法。
(a)タンパク質Pn(nは1〜12のいずれかの整数)およびγ−セクレターゼと、被検物質とを接触させる工程
(b)タンパク質Pnとγ−セクレターゼとの結合活性を測定する工程
(c)被検物質の非存在下において測定した場合と比較して、前記結合活性を低下させる物質を選択する工程
【請求項21】
前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物において、アルツハイマー病の病態を反映する表現型を改善する物質を選択することを特徴とする、アルツハイマー病の治療または予防薬のスクリーニングまたは薬効評価方法。
【請求項22】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、アルツハイマー病の治療または予防薬のスクリーニングまたは薬効評価方法。
(a)前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子を導入した非ヒト動物に被検物質を投与する工程
(b)該動物における、アルツハイマー病の病態を反映する少なくとも1つの表現型を評価する工程
(c)被検物質の非投与時において評価した場合と比較して、前記表現型を改善させる物質を選択する工程
【請求項23】
前記表現型が、脳組織、脳脊髄液、血液中などの組織中のAβ量、神経細胞死、中枢神経系の炎症反応、認知能力、アミロイドプラークの蓄積量、脳内血流量および脳内グルコース代謝量からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アルツハイマー病または癌の発症または発症リスクの判定方法であって、以下の(a)〜(c)の工程を含む方法。
(a)被験動物由来の試料を提供する工程
(b)該試料中の、前記(G1)〜(G12)から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量もしくは前記(P1)〜(P12)から選ばれる少なくとも1つのタンパク質の活性を測定する工程
(c)正常動物由来の試料において測定した場合と比較して、前記発現量もしくは活性が上昇している被験動物を、アルツハイマー病または癌を発症しているか、将来発症するリスクが高いと判定する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−135304(P2012−135304A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266664(P2011−266664)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】