アミロイド症の治療法
【課題】本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。
【解決手段】臨床状態の如何にかかわらず被験体においてアミロイドの沈着を阻止するための治療用化合物及び方法を記載する。アミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との間の相互作用を阻害するのに有効な量の、アニオン性基及び担体分子からなる治療用化合物を又はその医薬的に許容しうる塩を、その被験体に投与することによってアミロイドの沈着が阻害される。好ましいアニオン性基はスルホネートおよびスルフェートである。好適な担体分子は炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基及びそれらの組み合わせを含む。
【解決手段】臨床状態の如何にかかわらず被験体においてアミロイドの沈着を阻止するための治療用化合物及び方法を記載する。アミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との間の相互作用を阻害するのに有効な量の、アニオン性基及び担体分子からなる治療用化合物を又はその医薬的に許容しうる塩を、その被験体に投与することによってアミロイドの沈着が阻害される。好ましいアニオン性基はスルホネートおよびスルフェートである。好適な担体分子は炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基及びそれらの組み合わせを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイド症はアミロイドの存在を特徴とする病的症状に関する。アミロイドは様々な疾患に於いて見られる多様であるが特定の細胞外タンパク質沈着を示す総称である。それらの発生において多様であるが、アミロイド沈着は全て共通の形態学的特性、即ち特定の染料(例えば、コンゴレッド)による染色を伴い、染色後は偏光中で特徴的な赤緑色の複屈折光が現われる。それらは、共通の超微細構造的特徴や共通のx−線回折及び赤外線スペクトルも共有している。
【0003】
アミロイド症は臨床的には原発性、続発性、家族性及び/又は局在性に分類可能である。原発性アミロイドはいかなる先行する失調を伴わずに新規(de novo)に現われる。続発性アミロイドは先に存在している失調の合併症として現われる形態のものである。家族性アミロイドは特定の地域集団に見られる遺伝的に受け継がれた形態である。局在性のアミロイドは単一の臓器に関連する傾向のものである。様々なアミロイドは沈着物の中に存在するタンパク質のタイプによっても特徴付けられる。神経変性疾患、例えば、スクレイピー、ウシ海綿状脳炎、クロイツフェルドーヤコブ病等は、中枢神経系におけるプリオンタンパク質のプロテアーゼ耐性型(AScr又はPrP-27と呼ぶ)の出現及び蓄積を特徴とする。同様に、別の神経変性異常であるアルツハイマー病はコンゴ好染血管障害、神経炎プラク及び神経原線維のもつれを特徴とし、これらは全てアミロイドの特徴を有している。この場合、これらの斑及び血管アミロイドはベータタンパク質で形成されている。他の全身性疾患、例えば、成人発症糖尿病、長期血液透析の合併症及び長年の炎症又はプラズマ細胞疾患による後遺症等は全身にわたるアミロイドの蓄積を特徴としている。これらの症例のそれぞれにおいて、別々のアミロイド形成性タンパク質がアミロイドの沈着に関与している。
【0004】
一旦、これらのアミロイドが形成されてしまうと、広く許容されたその沈着物をその場で溶解するための治療法は知られていない。
【発明の開示】
【0005】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法はアミロイドの沈着を阻害する治療用化合物を被験体に投与することからなる。従って、本発明の組成物及び方法はアミロイドの沈着が生ずる疾患においてアミロイド症を阻害するために有用である。本発明の方法はアミロイド症を治療するために臨床的に使用可能であり、又、アミロイド症にかかりやすい被験体に予防的に使用することもできる。本発明の方法は、少なくとも部分的には、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することに基づいている。前記基底膜の構成成分は糖タンパク質又はプロテオグリカン、好ましくは、硫酸ヘパリンプロテオグリカンである。本発明の方法で使用される治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質上の標的結合部位に基底膜の構成成分が結合するのを妨げることが可能で、それによってアミロイドの沈着を阻害する。
【0006】
一態様において、本発明の方法はアミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン系構成成分との相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することの可能な担体分子に共有結合的に付いた少なくとも一個のアニオン性基を有する治療用化合物を被験体に投与することからなる。一例として、前記担体分子に共有結合的に付いたアニオン性基はスルホネート基である。従って、この治療用化合物は次の式
Q−[−SO3−X+]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。別の態様においては、前記アニオン性基はスルフェート基である。それ故、この治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。使用可能な担体分子としては、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明に於いて使用するのに好ましい治療用化合物としては、ポリ(ビニルスルホン酸)、エタンスルホン酸、八硫酸蔗糖(sucrose octasulfate)、1,2−エタンジオール2硫酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジオール2硫酸、1,4−ブタンジスルホン酸、1,5−ペンタンジスルホン酸、タウリン、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキキシド−3,4−ジスルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、又は医薬として許容されるそれらの塩が挙げられる。本発明において使用するのに他の好ましい治療用化合物は、1−ブタンスルホン酸、1−デセンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、3−ペンタンスルホン酸、4−ヘプタンスルホン酸、及びそれらの医薬として許容される塩を含む。他の好ましい態様においては、治療用化合物は、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸又はその医薬として許容される塩である。さらに他の好ましい態様においては、治療用化合物は、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる。さらに好ましい態様においては、治療用化合物は、2,3,4,3′,4′,−スクロース5硫酸、又はその医薬として許容される塩である。さらに好ましい他の態様においては、治療用化合物は、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及びそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる。さらに他の好ましい態様においては、治療用化合物は、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸およびそれらの医薬として許容される塩から選ばれる。
【0007】
他の態様においては、アニオン基は、テトラゾール基である。従って、1の態様においては、本発明は、被験体においてアミロイド沈着を阻止する方法であって、担体分子に共有結合された少なくとも1のテトラゾール基を含む治療用化合物、又はその医薬として許容される塩の有効量をその被験体に投与することを含む方法を特徴とする。特定の態様においては、治療用化合物は、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−4オキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル、1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及びそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる。
【0008】
本発明の治療用化合物はアミロイドの沈着を阻害するために有効な経路によって被験体に投与される。適切な投与経路としては、皮下、静脈及び腹腔内注射が挙げられる。本発明の治療用化合物は経口投与した場合に有効であることも判明している。それ故、好ましい投与経路は経口投与である。これらの治療用化合物は医薬的に許容しうる担体と共に投与可能である。
【0009】
本発明はさらにアミロイド症を治療するための医薬組成物も提供する。これらの医薬組成物は本発明の治療用化合物をアミロイドの沈着を阻害するのに有効な量と、医薬的に許容しうる担体とを含有する。
【0010】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法はアミロイドの沈着を阻止する治療用化合物を被験体に投与することからなる。「アミロイド沈着の阻害」とはアミロイド形成の防止、アミロイド症が進行している被験体における更なるアミロイドの沈着の防止及びアミロイド症が進行している被験体におけるアミロイド沈着減少を含むものとする。アミロイドの沈着が阻止されたか否かは治療対象外に対して又は治療前の被験体に対して決定される。アミロイドの沈着は、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の構成成分とのあいだの相互作用を阻害することによって行われる。「基底膜」とはラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン及び硫酸ヘパリンプロテオグリカン(HSPG)を含む、糖タンパク質及びプロテオグリカンからなる細胞外マトリックスを示す。一例において、アミロイドの沈着はアミロイド形成性タンパク質とHSPGの様な硫酸化グリコサミノグリカンとの間の相互作用を妨げることによって阻止される。硫酸化グリコサミノグリカンはあらゆるタイプのアミロイド中に存在することが知られており[A.D.スノウ等、Lab. Invest. 56, 120-123 (1987) 参照]、アミロイドの沈着とHSPGの沈着とはアミロイド症の動物モデルにおいて同時におこる。[A.D.スノウ等、Lab. Invest. 56, 665-675 (1987) 参照]。本発明の方法において、硫酸化グリコサミノグリカンに類似する構造を有する分子がアミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との相互作用を阻止するために使用される。特に、本発明の治療用化合物は担体分子に結合した、少なくとも一個のスルフェート基又はその機能的均等物、例えば、スルホネート基又は他の機能的に均等なアニオン性基を含んでいる。このアニオン官能性によって担体として機能することに加えて、前記担体分子は前記化合物が過度又は早期代謝することなく生体膜を貫通してバイオディストリビュート(biodistributed)されることを可能にする。さらに、この担体分子は前記アニオン性基を正しい幾何学的に分離した状態に離間する作用をする。
【0011】
一態様において、本発明の方法は担体分子に共有結合したアニオン性基を少なくとも一個有する治療用化合物を被験体に投与することからなる。この治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカンとの間の相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することができる。上記治療用化合物は次の式
Q−[−Y−X+]n
[式中、Y− は生理pHにおいてアニオン性である基、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。アニオン性基の数(“n”)は、この化合物の活性を維持しながらこの化合物の意図した目標部位へのバイオディストリビューションが妨げられないように選択する。例えば、アニオン性基の数は、細胞膜の様な解剖学的構造の障壁を貫通したり又は血液脳関門の様な生理障壁を通して入ることが望まれる場合に、その様な特性を阻止するほど大きくない様にする。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。
【0012】
本発明の治療用化合物のアニオン性基は、担体分子に結合したとき、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害できるマイナスに荷電した部分である。本発明の目的上、このアニオン性基は生理pHにおいてマイナスに荷電している。このアニオン性治療用化合物は硫酸化プロテオグリカンの構造に類似し、即ち、硫酸化化合物又はその機能的均等物であるのが好ましい。スルフェートの「均等物」はバイオ同配体 (bioisosteres)を含むものとする。スルフェート基の古典的及び非古典的バイオ同配体は本件技術分野において知られている[(例えば、R.B.シルバーマン、The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, 19-23 、アカデミック・プレス社、サンディエゴ、カリフォルニア(1992)参照]。それ故、本発明の治療用化合物は、スルホネート、スルフェート、フォスフォネート、カルボキシレート、及び次の式
【化1】
の複素環式基を含む、アニオン性基を少なくとも一個含みうる。担体分子の種類により、二個以上のアニオン性基が担体分子に結合しうる。担体分子に二個以上のアニオン性基が結合しているとき、これらの複数のアニオン性基は同じ構造の基(例えば、全てスルホネート)であってもよいし、又は、異種のアニオン性基を組み合わせて用いてもよい(例えば、スルホネート、スルフェートなど)。
【0013】
アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害する本発明の治療用化合物の能力は、以下の実施例又はキズレフスキー等の米国特許第5,164,295 号に記載されているような生体内結合測定法によって評価しうる。簡単に述べると、ポリスチレン製マイクロプレートの様な固体支持体にアミロイド形成性タンパク質[例えば、血清アミロイドAタンパク質又はβ−アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)を塗布して疎水性表面を全て覆う。被験化合物の存在下又は非存在下、この被覆固体支持体を様々な濃度の基底膜構成成分、好ましくは、HSPGと共にインキュベートする。この固体支持体を十分洗浄して結合されていない物質を除去する。次いで、基底膜構成成分(例えば、HSPG)の前記アミロイド形成性タンパク質(例えば、β−APP)への結合を、検出しうる物質(例えば、アルカリホスファターゼ等の酵素)に結合した前記基底膜構成成分に対する抗体を用いて前記検出しうる物質を検出することによって測定する。アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害する化合物は物質の検出量を減少する(例えば、酵素の検出活性量を阻害する)。
【0014】
本発明の治療用化合物がアミロイド形成性タンパク質中の基底膜糖タンパク質又はプロテオグリカン用結合部位に作用して、このアミロイド形成性タンパク質の前記基底膜構成成分への結合を阻害するのが好ましい。基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカンにはラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン及び硫酸ヘパリンプロテオグリカン(HSPG)が含まれる。好ましい実施態様において、前記治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質とHSPGとの相互作用を阻害する。アミロイド形成性タンパク質中のHSPG用共通結合部位モチーフは既に記載されている[(例えば、カーディン及びバイントラウブ、Arteriosclerosis, 9, 21-32 (1989) 参照]。一例として、HSPG用共通結合モチーフは一般式X1−X2−Y−X3[式中、X1,X2およびX3はアミノ酸(例えば、リシン又はアルギニン)、Yは何等かのアミノ酸である]のものであってよい。この部位の結合構造モデリングにより塩基性アミノ酸残基間の間隔(カルボキシレートからカルボキシレートまでの。オングストロームで)は以下の通りであることが判明した。
X1−X2 5.3 ± 1.5Å
X1−X3 7.1 ± 1.5Å
X2−X3 7.6 ± 1.5Å
これらの値は分子力学計算と半実験的量子力学計算とを組み合わせて用いて得られた。分子力学計算はMM2力場式を利用して実施した。半実験的分子軌道計算はAM1ハミルトン方程式を用いて行なった。前記部位の配座空間は分子力学(高温及び低温の双方)とモンテカルロ近似法とを組み合わせて利用してサンプルした。
【0015】
それ故、本発明の治療用化合物において複数のアニオン性基が担体分子に結合している場合、これらのアニオン性基同士の間隔はこれらのアニオン性基(例えば、スルホネート)が前記HSPG結合部位内の塩基性残基に最も望ましい形で作用する(HSPGと前記部位との相互作用を阻害する)ように選択する。例えば、アニオン性基は、それら同士の間隔がアミロイド形成性タンパク質中で基底膜構成成分(例えば、HSPG)用結合部位との相互作用を最適化しうるように、約 5.3±1.5 Å, 7.1±1.5 Å及び/若しくは7.6±1.5 Å又はそれを適当に整数倍した距離離間しうる。
【0016】
さらに本発明の治療用化合物は、典型的な例として、対イオン(即ち、前記一般式:Q−[−Y− X+ ]n におけるX+ )を含んでいる。カチオン性基にはプラスに荷電された原子及び部分的な分子が含まれる。カチオン性基が水素H+ ならば、その化合物は酸、例えば、エタンスルホン酸と考えられる。水素が金属又はその均等物で置換された場合、その化合物は前記酸の塩である。前記治療用化合物の医薬的に許容しうる塩も本発明の範囲に含まれる。例えば、X+ は医薬的に許容しうるアルカリ金属、アルカリ土類、多価カチオン性基(例えば、アルミニウム塩)、多価カチオン性対イオン又はアンモニウムとなりうる。医薬的に許容しうる好ましい塩はナトリウム塩であるが、それ以外の塩も医薬的に許容しうる範囲内で考えられる。
【0017】
前記治療用化合物中において、アニオン性基は担体分子に共有結合している。適切な担体分子としては、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。担体分子を、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基で置換することも可能である。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、「炭水化物」なる用語は置換及び未置換モノー、オリゴー及びポリサッカライドを含むものとする。モノサッカライドは、合体してオリゴサッカライド又はポリサッカライドを形成しうる一般に式 C6H12O6の単純な糖である。モノサッカライドはモノサッカライドの互変異性体並びにD及びL両立体異性体を含む。炭水化物は各モノサッカライド部分に結合した複数のアニオン性基を含みうる。例えば、八硫酸蔗糖(sucrose octasulfate)においては、四個のスルフェート基が二個のモノサッカライド部分のそれぞれに付いている。
【0019】
本明細書中で用いられるとき、「ポリマー」なる用語はモノマーと呼ばれるサブユニットを二個以上化学的に結合することによって形成される分子を含むものとする。モノマーは一般に炭素を含み、比較的低分子量で単純な構造の分子又は化合物である。モノマーはそれ自体又は他の類似する分子若しくは化合物と組み合わせてポリマーに変えることができる。ポリマーは単一の同種の繰り返しサブユニット又は複数の異種の繰り返しサブユニット(コポリマー)からなり得る。本発明の範囲内のポリマーには置換及び未置換ビニル、アクリル、スチレン及び炭水化物−由来ポリマー及びコポリマー並びにそれらの塩が含まれる。一例において、前記ポリマーは約 800−1000ダルトンの分子量を有する。配位的に結合した適切なアニオン性基(例えば、スルホネート又はスルフェート)を有するポリマーの例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルフリック酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);スルフェート及びスルホネートであって:ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸メチル);及びポリ(ビニルアルコール)から誘導されたもの;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。配位的に結合した適切なアニオン性基を有する炭水化物−由来ポリマーの例としては、次の式
【化2】
[式中、RはSO3− 又はOSO3−である。]のもの及びそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0020】
ペプチド及びペプチド誘導体も担体分子として作用しうる。「ペプチド」なる用語はペプチド結合を介して配位的に結合した二個又はそれ以上のアミノ酸を含む。ペプチド系担体分子中で使用可能なアミノ酸にはタンパク質中に見られる天然に生ずるアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンが含まれる。さらに、アミノ酸なる用語は天然に生ずるアミノ酸の類似体、誘導体及び同族体を含み、それらの一個又はそれ以上はペプチド誘導体中に存在しうる。例えば、アミノ酸類似体は適当な官能基を備えた長い又は短い側鎖即ち様々な側鎖を有する。アミノ酸の構造が立体異性形を取りうるときはそのアミノ酸のD形及びL形立体異性体も含む。さらに、「ペプチド誘導体」なる用語は、ベンゾジアゼピン分子[例えば、G.L.ジェームス等、Science, 260, 1937-1942 (1993)参照]のような、ペプチド主鎖に類似しているがアミノ酸ではない分子(所謂ペプチド類似体)を含む化合物を包含する。前記アニオン性基はある種のアミノ酸の側鎖の官能基又は他の適当な官能基を介してペプチド又はペプチド誘導体に結合しうる。例えば、スルフェート又はスルホネート基はセリン残基のヒドロキキシシ側鎖を介して結合しうる。ペプチドは(上記のとおり)アミロイド形成性タンパク質内の基底膜構成成分(例えば、HSPG)用結合部位に作用するように設計しうる。それ故、一実施態様において、前記ペプチドは四個のアミノ酸からなり、アニオン性基(例えば、スルホネート)がこの第一、第二、第四のアミノ酸に結合している。例えば、前記ペプチドは Ser−Ser −Y−Ser [式中、アニオン性基は各セリン残基の側鎖に結合し、Yは何等かのアミノ酸である]であってよい。ペプチド及びペプチド誘導体に加えて、一種類のアミノ酸を本発明の治療用化合物中で担体として使用しうる。例えば、システイン酸、システインのスルホン酸誘導体が使用可能である。
【0021】
「脂肪族基」なる用語は、典型的には1〜22の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖を特徴とする有機化合物を含むものとする。脂肪族基はアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。複雑な構造では、鎖は枝分かれ又は架橋しうる。アルキル基は、直鎖アルキル基及び枝分かれ鎖のアルキル基を含む、一個またはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む。そのような炭化水素分子の部分を一個又はそれ以上の炭素において、例えばハロゲン、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルチオ、又はニトロ基によって置換することも可能である。炭素数に別段の定めがない限り、本明細書において使用されている「低級脂肪族」は上記の通り(例えば、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル)であるが、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基を意味する。そのような低級脂肪族の代表例、例えば、低級アルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−クロロプロピル、n−ブチル、 sec−ブチル、2−アミノブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−チオペンチル等である。本明細書で用いられるとき、「アミノ」なる用語は−NH2 ;「ニトロ」なる用語は−NO2 ;「ハロゲン」なる用語は−F,−Cl,−Br又は−I;「チオール」なる用語はSH;及び「ヒドロキシル」なる用語は−OHを意味する。従って、本明細書で用いられる「アルキルアミノ」なる用語は、上記の通り、それに結合したアミノ基を有するアルキル基を意味する。「アルキルチオ」なる用語は、上記の通り、それに結合したスルフィドリル基を有するアルキル基を示す。本明細書で用いられる「アルキルカルボニル」なる用語は、上記の通り、それに結合したカルボニル基を有するアルキル基を意味する。本明細書で用いられる「アルコキシ」なる用語は、上記の通り、それに結合した酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等を含む。「アルケニル」及び「アルキニル」なる用語はアルキルに類縁する不飽和脂肪族基に関するが、それぞれ少なくとも一個の二重又は三重結合を含んでいる。
【0022】
「脂環式基」なる用語は三個又はそれ以上の炭素原子の閉環構造を示すものとする。脂環式基は飽和環状炭化水素であるシクロパラフィン及びナフタレン、二個又はそれ以上の二重結合を有する不飽和シクロオレフィン、及び三重結合を有するシクロアセチレンを含む。これらは芳香族基を含まない。シクロパラフィンの例にはシクロプロパン、シクロヘキサン、及びシクロペンタンが含まれる。シクロオレフィンの例にはシクロペンタジエン及びシクロオクタテトレンが含まれる。脂環式基は縮合環構造及びアルキル置換脂環式基のような置換脂環式基も含む。さらに、これらの脂環式基の場合、そのような置換基には低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3 、−CN等が含まれる。
【0023】
「複素環式基」なる用語は環内の原子の一個又はそれ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素又は酸素である閉環構造を含むものとする。複素環式基は飽和されていても、また不飽和であってもよく、ピロール又はフランのような複素環式基は芳香族の特性を備えうる。それらはキノリンやイソキノリンのような縮合環構造を含んでいる。複素環式基の他の例にはピリジンやプリンが含まれる。複素環式基はその一個又はそれ以上の構成原子において、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシ、−CF3 、又は−CN等によって置換されていても良い。
【0024】
「芳香族基」なる用語は一個又はそれ以上の環を有する不飽和環状炭化水素を含むものとする。芳香族基は5−員又は6−員単環基を含み、これらは0個から4個のヘテロ原子を含むことが可能で、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等が含まれる。この芳香族環は一箇所またはそれ以上の環の部位で、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシ、−CF3 、又は−CN等によって置換されていてもよい。
【0025】
本発明の治療用化合物は医薬的に許容しうる担体に入れて投与できる。本発明において用いられているように、「医薬的に許容しうる担体」には、前記化合物の活性に適合しかつ治療対象に対して生理学的に許容しうる、いかなる又あらゆる種類の溶媒、分散媒、コーティング材、抗菌及び抗カビ剤、等張吸収遅延剤等が含まれる。医薬的に許容しうる担体の例として緩衝標準食塩水(0.15モルNaCl)がある。医薬的に活性な物質に対してそのような媒体や剤を使用することは本技術分野においてよく知られている。従来の媒体や剤が前記医療用化合物と適合しない場合を除いて、医薬として投与するために好適な組成物においてそれらを使用することが考えられる。補足的な活性化合物を前記組成物中に入れることも可能である。
【0026】
本発明の方法の好ましい態様において、治療対象に投与される治療用化合物は担体分子に配位的に結合したスルホネート基を少なくとも一個含むか、又はその医薬的に許容しうる塩である。それ故、この治療用化合物は次の式
Q−[−SO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nは整数である]で表わすことができる。適切な担体分子及びカチオン性基は上記の物である。スルホネート基の数(“n”)は、前記の通り、前記化合物の活性を維持しながら前記化合物の意図した目標部位への生分散が妨げられないように選択する。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。先に記載したように、複数のスルホネート基を有する治療用化合物は、前記化合物がアミロイド形成性タンパク質内のHSPG結合部位に最適に作用するように離間されたスルホネート基を含みうる。
【0027】
好適な実施態様において、スルホネートに対する担体分子は低級脂肪族基(例えば、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、ジサッカライド、ポリマー、ペプチド又はペプチド誘導体である。さらに、この担体は、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
【0028】
適切なスルホン化高分子治療用化合物の例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルホネート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルホネート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0029】
好ましいスルホン化ポリマーはポリ(ビニルスルホン酸)(PVS)又はその医薬的に許容しうる塩、好ましくはそのナトリウム塩である。
【0030】
1の態様においては、約 800〜1000ダルトンの分子量を有する PVSが使用される。他の態様においては、約2000の分子量をもつPVSが使用される(例えば、XC、式中、nは平均して約15である。)。PVS は立体異性体の混合物又は単一の活性異性体として使用されることができる。
【0031】
好ましいスルホン化ジサッカライドは完全に又は部分的にスルホン化した蔗糖、又はその医薬的に許容しうる塩である。他のスルホン化サッカライドは、5−デオキシ−1,2−O−イソプロピリデン−α−D−キシロフラノース−5−スルホン酸(XXIII 、ナトリウム塩として示す。)を含む。
【0032】
本発明において使用するのに好ましい低級脂肪族スルホン化化合物としては、エタンスルホン酸;2−アミノ−エタンスルホン酸(タウリン);システイン酸(3−スルホアラニン又はα−アミノ−β−スルホプロピオン酸);1−プロパンスルホン酸;1,2−エタンジスルホン酸;1,3−プロパンジスルホン酸;1,4−ブタンジスルホン酸;1,5−ペンタンジスルホン酸;及び4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸(VIII、ナトリウム塩として示す。);並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。本発明における使用を意図される他の脂肪族スルホン化化合物は、1−ブタンスルホン酸(XLVII 、ナトリウム塩として示す。)、2−プロパンスルホン酸(XLIX、ナトリウム塩として示す。)、3−ペンタンスルホン酸(I、ナトリウム塩として示す。)、4−ヘプタンスルホン酸(LII、ナトリウム塩として示す。)、1−デカンスルホン酸(XLVIII、ナトリウム塩として示す。);及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図されるスルホン化置換脂肪族化合物は、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(XXII、ナトリウム塩として示す。)、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸スルフェート(XXXV、ナトリウム塩として示す。)、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸(LIII、ナトリウム塩として示す。);及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図される他のスルホン化化合物は、2−〔(4−ピリジニル)アミノ〕エタンスルホン酸(LIV 、ナトリウム塩として示す。)、及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0033】
好ましい複素環式スルホン化化合物は、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸;及びテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−2硫酸;並びにそれらの医薬として許容される塩を含む。
【0034】
芳香族スルホン化化合物は、1,3−ベンゼンジスルホン酸(XXXVI 、2ナトリウム塩として示す。)、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸(2ナトリウム塩として示す。、XXXVII、又は2カリウム塩、XXXIX)、4−アミノ−3−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸(XLIII) 、3,4−ジアミノ−1−ナフタレンスルホン酸(XLIV);並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0035】
本発明の方法の別の態様においては、治療対象に投与される治療用化合物は担体分子に配位的に結合したスルフェート基を少なくとも一個含むか、又はその医薬的に許容しうる塩である。それ故、前記治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nは整数である]で表わすことができる。適切な担体分子及びカチオン性基は上記の物である。スルフェート基の数(“n”)は、前記の通り、前記化合物の活性を維持しながら前記化合物の意図した標的部位へのバイオディストリビューションが妨げられないように選択する。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。先に記載したように、複数のスルフェート基を有する治療用化合物は、前記化合物がアミロイド形成性タンパク質内のHSPG結合部位に最適に作用するように離間されたスルフェート基を含みうる。
【0036】
好適な実施態様において、スルフェートに対する担体分子は低級脂肪族基(例えば、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、ジサッカライド、ポリマー、ペプチド又はペプチド誘導体である。さらに、この担体は、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
【0037】
適切な硫酸化高分子治療用化合物の例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−スチレン);ポリ(ビニル硫酸);ポリ(4−スチレン硫酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルフェート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルフェート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0038】
好ましい硫酸化ポリマーはポリ(ビニル硫酸)又はその医薬的に許容しうる塩である。
【0039】
好ましい硫酸化ジサッカライドは八硫酸蔗糖又はその医薬的に許容しうる塩である。本発明において使用を意図される他の硫酸化サッカライドは、メチル−α−D−グルコピラノシド2,3−ジスルフェート(XVI)、メチル4,6−(O−ベンジリデン−α−1)−ブルコピラノシド2,3−ジスルフェート(XVII)、2,3,4,3′,4′−スクロース・ペンタスルフェート(XXXIII)、1,3,4,6−ジ−O−ベンジリデン−1)−マンニトール2,5−ジスルフェート(XLI)、D−マンニトール2,5−ジスルフェート(XLII)、2,5−ジ−O−ベンジル−D−マンニトール・テトラスルフェート(XI,V)の酸形態;及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0040】
本発明において使用を意図される好ましい低級脂肪族硫酸化化合物は、エチル硫酸;2−アミノエタン−1−オール硫酸;1−プロパノール硫酸;1,2−エタンジオール2硫酸;1,3−プロパンジオール2硫酸;1,4−ブタンジオール2硫酸;1,5−ペンタンジオール2硫酸;及び1,4−ブタンジオール・モノ硫酸;並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図される他の硫酸化脂肪族化合物は、1,3−シクロヘキサンジオール・ジスルフェート(XI)、1,3,5−ヘプタントリオール・トリスルフェート(XIX)、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XX)、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XXI)、1,3,5,7−ヘプタンテトラオール・テトラスルフェート(XLVI)、1,3,5,7,9−ノナン・ペンタスルフェート(LI)の酸形態;及びそれらの医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明において使用を意図される他の硫酸化化合物は、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XXIV)、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール・ジスルフェート(XXIX)、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸スルフェート(XXX)2,2′−イミノエタノール・ジスルフェート(XXXI)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸ジスルフェート(XXXII)の酸形態;及びそれらの医薬として許容される塩を含む。好ましい複素環式硫酸化化合物は、3−(N−モルフォリノ)プロパン硫酸;及びテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジオール2硫酸;並びにそれらの医薬として許容される塩を含む。
【0041】
本発明の更に別の態様においてアミロイド症を治療するための医薬組成物がある。上記の様な、本発明の方法における治療用化合物はアミロイド症を阻止するために有効な量、医薬的に許容しうる担体と共に医薬組成物に調製しうる。
【0042】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は担体分子に配位的に結合したスルホネート基を少なくとも一個有する医療用化合物又はその医薬的に許容しうる塩をアミロイドの沈着を阻止するのに十分な量と、医薬的に許容しうる担体とを含んでいる。この治療用組成物は次の式
Q−[−SO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnはこの化合物の活性を維持しながら、意図する目標部位へのこの化合物の生分散が妨げられないような整数である。]で表わすことができる。
【0043】
別の態様において、本発明の治薬組成物は担体分子に共有結合したスルフェート基を少なくとも一個有する医療用化合物又はその医薬的に許容しうる塩をアミロイドの沈着を阻止するのに十分な量と、医薬的に許容しうる担体とを含んでいる。この治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nはこの化合物の活性を維持しながら、意図する標的部位へのこの化合物のバイオディストリビューションが妨げられないような整数である]で表わすことができる。
【0044】
本発明において使用を意図される他の例示的化合物は、トレハロース・オクタスルフェート8ナトリウム塩、スクロース・オクタスルフェート8ナトリウム塩、メチル−α−D−グルコピラノシド4ナトリウム塩、及びメチルβ−D−ラクトシド・ヘプタスルフェート7ナトリウム塩;及び化合物I,XXVII-CVIII (図14〜17)であって、とりわけナトリウム・エタンスルホネート(CVII)、ナトリウム1−プロパンスルホネート(CVI)、及び1−ペンタンスルホン酸ナトリウム塩(CVIII)を含むものを含む。
【0045】
本発明は、さらに、本発明の治療用化合物にインビボにおいて変換されるプロドラッグの使用をも企図する(例えば、R. B. Silverman, 1992,“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, Academic Press, Chp.8参照)。このようなプロドラッグは、(例えば、典型的には血液脳関門を通過しないであろう化合物が血液脳関門を通過することを許容するための)バイオディストリビューションを変更し、又はその治療化合物の薬理動態を変更するために使用されることができる。例えば、アニオン基、例えば、スルフェート又はスルホネートは、例えば、メチル基又はフェニル基によりエステル化されて硫酸又はスルホネート・エステルを作ることができる。硫酸又はスルホネート・エステルが被験体に投与されるとき、そのエステルは酵素により又は非酸素的に、還元的に又は加水分解により解製された、そのアニオン基を現す。このようなエステルは、環状であり、例えば、環式硫酸又はスルホンであることができ、又は2以上のアニオン部分が連結基を介してエステル化されることができる。例示的な環式化合物は、例えば、2−スルホ安息香酸(LV)、プロパン・スルホン(LVI)、ブタン・スルホン(LVII)、1,3−ブタンジオール環式スルフェート(LVIII)、α−クロロ−α−ヒドロキシ−O−トルエンスルホン酸スルホン(LIX)、及び6−ニトロナフタ−〔1,8−cd〕−1,2−オキサチオール2,2−ジオキシド(LX)を含む。好ましい態様においては、プロドラッグは、環式硫酸又はスルホンである。アニオン基は、解製されてその後に分解されて活性化合物を生ずる中間体化合物を現す部分(例えば、アシルオキシメチル・エステル)でエステル化されることができる。他の態様においては、プロドラッグは、スルフェート又はスルホネートの還元型、例えば、インビボにおいて上記治療用化合物に酸化されることができるチオールである。さらに、アニオン部分は、インビボにおいて能動的に輸送され、又は標的臓器に選択的に取り込まれることができる基にエステル化されることができる。このエステルは、担体部分について以下に説明するように、特定の臓器への上記治療用化合物の特異的標的化を許容するように選択されることができる。
【0046】
この医療用化合物において使用可能な担体分子としては、先に記載した担体分子、例えば、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリマーには、置換及び未置換ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物由来のポリマー及びコポリマー並びにそれらの塩が含まれる。好ましい担体分子には、低級アルキル基、ジサッカライド、ポリマー、並びにペプチド及びその誘導体が含まれる。
【0047】
本発明において有用な担体分子は、上記治療用化合物が標的臓器に選択的にデリバリーされること許容する部分を含むこともできる。例えば、治療用化合物の脳へのデリバリーが望ましい場合、担体分子は、能動又は受動輸送によりその治療用化合物を脳に標的化することができる分子(標的化分子)を含むことができる。実例として、担体分子は、例えば共にBodor に付与された米国特許第4,540,564 号及び同5,389,623 号中に記載されたような酸化還元部分を含むことができる。これらの特許は、脳に侵入することができるジヒドロピリジン部分に結合された薬物を開示しており、脳内で、それらはその、脳内に捕獲される電荷をもったピリジニウム種に酸化される。従って、薬物は脳内に蓄積する。本発明の例示的なピリジン/ジヒドロピリジン化合物は、ナトリウム1−(3−スルホプロピル)−1,4−ジヒドロピリジン(LXI)、ナトリウム2−(ニコチルアミノ)−エタンスルホネート(LXII)、及び1−(3−スルホプロピル)−ピリジニウム・ベタイン(LXIII)を含む。他の担体部分は、化合物、例えばアミノ酸又はチロキシンであってインビボにおいて受動的又は能動的に輸送されることができるものを含む。例示的化合物は、フェニルアラニルタウリン(LXIX)であってその中でタウリン分子がフェニルアラニン(大きな中性アミノ酸)に結合しているものである。このような担体分子は、インビボにおいて代謝により除去され、又は活性化合物の一部として無傷で残ることができる。アミノ酸構造擬態(及び他の能動輸送部分)も本発明において有用である(例えば、1−(アミノメチル)−1−(スルホメチル)−シクロヘキサン(LXX)) 。他の例示的アミノ酸擬態は、P−(スルホメチル)フェニルアラニン(LXXII)、P−(1,3−ジスルホプロプ−2−イル)フェニルアラニン(LXXIII) 、及びO−(1,3−ジスルホプロプ−2−イル)チロシン(LXXIV)を含む。例示的なチロキシン擬態は、化合物LXXV, LXXI及びLXXVIIを含む、多くの標的化分子が知られており、そして例えば、アジアログリコプロテイン(agialoglycoproteins)(例えば、Wu、米国特許第5,166,320 号参照)、及びレセプター仲介エンドサイトーシスを介して細胞内に輸送される他のリガンドを含む(担体分子に共有結合又は非共有結合されることができる標的化部分のさらなる例については以下を参照のこと。)。さらに、本発明に係る治療用化合物は、循環内のアミロイド形成タンパク質に結合し、そしてそれ故作用部位に輸送されることができる。
【0048】
上記の標的化及びプロドラッグ戦略は、プロドラッグとして所望の作用部位に輸送され、そして脱マスクされて活性化合物を現すことができる化合物を作るために併合されることができる。例えば、Bodor のジヒドロピリン戦略(前掲参照)は、例えば、化合物2−(1−メチル−1,4−ジヒドロニコチニル)アミドメチル−プロパンスルホン(LXXI)におけるように、環式プロドラッグと併合されることができる。
【0049】
一実施態様において、前記医薬組成物中の治療用化合物は、スルホン化ポリマー、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルホネート誘導体;ポリ(アクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルホネート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0050】
別の実施態様において、前記医薬組成物中の治療用化合物は硫酸化ポリマー、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−スチレン);ポリ(ビニル硫酸);ポリ(4−スチレン硫酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルフェート誘導体;ポリ(アクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルフェート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0051】
アミロイド症を治療するための本発明の医薬組成物中に含有するために好ましい治療用化合物としては、ポリ(ビニル硫酸);ポリ(ビニルスルホン酸);八硫酸蔗糖;部分又は完全スルホネート化蔗糖;エチル硫酸;エタンスルホン酸;2−アミノエタンスルホン酸(タウリン);2−アミノエタン硫酸;システイン酸(3−スルホアラニン又はα−アミノ−β−スルホプロピオン酸);1−プロパンスルホン酸;プロピル硫酸;1,2−エタンジスルホン酸;1,2−エタンジ硫酸;1,3−プロパンジスルホン酸;1,3−プロパンジ硫酸;1,4−ブタンジスルホン酸;1,4−ブタンジ硫酸;1,5−ペンタンジオール2硫酸;4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸;テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジスルホン酸;3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0052】
本発明の方法において、被験体におけるアミロイドの沈着が本発明の治療用化合物をその被験体に投与することにより阻害される。被験体(subject)なる用語はアミロイド症が起りうる生体を包含するものとする。治療対象の例として、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェネック種が挙げられる。本発明の組成物の被験体への投与は、公知の方法を用い、その治療対象内でのアミロイドの沈着を阻止するのに有効な投与量で期間実施される。治療効果をあげるために必要な治療用化合物の有効量は、治療対象の臨床部位に既に沈着しているアミロイドの量、治療対象の年齢、性別及び体重、その治療対象におけるアミロイドの沈着を阻止する前記治療用化合物の能力などの要因のよって変わりうる。治療に対して最適な応答が得られるように投与量プログラムを調整可能である。例えば、投与量を数回に分けて毎日投与したり、治療状況の緊急性による指示に従って投与量を減らすことができる。本発明を限定するわけではないが、本発明の治療用化合物[例えば、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム)]に関する有効投与量の範囲は、例えば、5〜 500mg/kg−体重/日である。水性組成物においては、活性化合物(すなわち、アミロイド沈着を阻害することができる治療用化合物)の好ましい濃度は、5〜500mM 、より好ましくは10〜100mM 、そしてさらにより好ましくは20〜50mMである。タウリンについては、特に好ましい水性濃度は10〜20mMである。
【0053】
実施例において示すように、本発明の治療用化合物は経口投与された場合に有効である。それ故、好ましい投与経路は経口投与である。代わりに、前記活性化合物を他の適切な経路、例えば、皮下、静脈内、腹腔内等の投与(例えば、注射によって)投与することも可能である。投与経路により、前記活性化合物を不活性化しうる酸又は他の自然環境から保護するための材料で前記活性化合物を被覆してもよい。
【0054】
本発明に係る化合物は、インビボにおける適正な分布を保証するために配合されることができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療用化合物がBBB を通過することを保証するために、それらは、例えば、リポソームに配合されることができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811 号;同第5,374,548 号;及び同第5,399,331 号を参照のこと。リポソームは、特定細胞又は臓器に選択的に輸送される1以上の部分(標的化部分)を含み、これにより、標的化されたドラッグ・デリバリーを提供することができる(例えば、V. V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29: 685 を参照のこと。)。例示的な標的化部分は、フォレート又はビオチン(例えば、Low 他への米国特許第5,416,016 号参照);マンノサイド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys, Res. Commun, 158 : 1038);抗体(P. G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett, 357: 140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob, Asents Chemother, 39; 180);界面活性剤プロテインAレセプター(Briscoe et al. (1995) Am, J. Physiol, 1233:134) ;gp120 (Shreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269: 9090) を含む;またK. Keinaneu; M. L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346: 123 ら j. J. Killion; I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4: 273を参照のこと。好ましい態様においては、本発明の治療用化合物は、リポソームに配合され;より好ましい態様においては、リポソームは標的化部分を含む。
【0055】
デリバリー及びインビボ・ディストリビューションは、本発明に係る化合物のアニオン基の変更によっても影響を受けることができる。例えば、アニオン基、例えばカルボキシレート又はテトラゾール、望ましい薬理動態、バイオディストリビュート性又は他の特性をもつ化合物を提供するために、スルフェート又はスルホネート部分の代わりに、又はそれに加えて使用されることができる。例示的なテトラゾール置換化合物は、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド(LXIV)、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)(LXV)、1H−テトラゾール(LXVI) 、5−フェニル−1H−テトラゾール(LXVII)、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール(LXVIII) その他;並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。例示的なカルボキシレート置換化合物は、カルボン酸、例えばアジピン酸、アゼラン酸(azelaic acid) 、3,3−ジメチルグルタル酸、スベリン酸(suberic acid) 、コハク酸その他並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0056】
非経口投与以外によって前記治療用化合物を投与するためには、その化合物の不活性化を防止するための材料で被覆したり、その材料と一緒に投与する必要になることがある。例えば、前記治療用化合物を適当な担体、例えば、リポソーム又は希釈剤と共に治療対象に投与することができる。医薬的に許容しうる希釈剤としては、食塩水及び緩衝水溶液が挙げられる。リポソームには水中油中水形CGF エマルジョン及び従来形のリポソームが含まれる[ストレジャン等、J. Neuroimmunol.,7,27(1984)]。
【0057】
前記治療用化合物は非経口又は腹腔内投与することも可能である。分散系製剤はグリセロール、液状ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びに油で調製できる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの製剤に保存剤を添加して微生物の繁殖を防止することも可能である。
【0058】
注射で用いるのに適した医薬組成物としては、無菌状態の注射液又は分散系製剤を用時調製するための滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散系製剤及び滅菌粉剤が挙げられる。すべての場合において、前記組成物は滅菌されていて、しかも注射が容易な程度に流動的でなければならない。それは製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、また、細菌やかび等の微生物による汚染作用に対して保存されなければならない。担体は溶媒又は分散媒であって、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物、並びに植物油が含まれる。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材を使用することにより、分散系製剤の場合には、必要とされる粒径の維持により、また、界面活性剤を用いることによって保持しうる。微生物の作用を防止することは種々の抗菌および抗かび剤、例えば、パラベン、クロロプタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成可能である。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、塩化ナトリウム、又はマンニトール若しくはソルビトールのようなポリアルコールを組成物中に使用するのが好ましい。吸収を遅延させる添加物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを注射用組成物中に含めることによって前記注射用組成物の長期にわたる吸収を達成しうる。
【0059】
無菌の注射液は、前記治療用化合物を、必要に応じて、前記の成分の一種又はそれ以上の組み合わせと共に適当な溶媒に添加し、次いでろ過滅菌することによって調製しうる。一般に、分散系製剤は、塩基性分散媒と上記の成分から必要に応じて選択した物を含有する滅菌担体中に前記治療用化合物を加えることによって調製される。無菌注射液を調製するための滅菌粉剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、前記活性成分(即ち、前記治療用化合物)と所望の追加成分との粉剤が、それらの成分を含む事前に滅菌ろ過した溶液から得られる。
【0060】
前記治療用化合物は、例えば、不活性の希釈剤又は同化可能で食べられる担体と共に経口投与しうる。前記治療用化合物とその他の成分は硬または軟殻ゼラチンカプセルに封入したり、打錠したり、又は治療対象の食事中に直接添加することも可能である。経口治療投与には、前記治療用化合物を賦形剤とあわせて、経口投与可能な錠剤、バッカル剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁系製剤、シロップ、ウェハ等の形態で使用できる。そのような治療のために有用な組成物中における前記治療用化合物の量は適切な投与量が得られる様な量である。
【0061】
投与を容易にしかつ投与量を均一にするためには非経口組成物を投薬量単位の形態にすることが特に有益である。本明細書で使用する投薬量単位の形態とは治療対象用の単位投与量として適している物理的に別個のユニットを示し、各ユニットは所定の治療効果を挙げるために計算された量の治療用化合物を必要な医薬用担体と共に含有している。本発明の投薬量単位の形態に対する仕様は(a)前記治療用化合物のユニークな特性及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)治療対象におけるアミロイドの沈着を治療するためにそのような治療用化合物を製剤にする技術にもともと付随している制約によって定められ、又それらにだけ直接依存するものである。
【0062】
活性化合物は、被験体においてアミロイド沈着を阻止するために十分な治療的有効量において投与される。“治療的有効量”は好ましくは、少なくとも約2%程、より好ましくは少なくとも約40%程、さらにより好ましくは少なくとも約60%程さらにより好ましくは少なくとも約80%程、非処置被験体に対して、アミロイド沈着を阻止する。化合物がアミロイド沈着を阻止する能力は、ヒト疾患においてアミロイド沈着を阻止することにおける効果を予測することができる動物モデル系、例えば、実施例におけるモデル系において評価されることができる。あるいは、化合物がアミロイド沈着を阻止する能力は、例えば、先に記載したような結合アッセイを使用してアミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との間の相互作用を阻止する化合物の能力を調べることにより評価されることができる。
【0063】
本発明の方法はアミロイドの沈着が生ずる疾病に付随するアミロイド症を治療するために有用である。臨床的には、アミロイド症は原発性、続発性、家族性又は局在性である。アミロイド症はそのアミロイドに含まれるアミロイド形成性タンパク質のタイプによって分類されてきた。限定するわけではないが、阻止しうる、アミロイド形成性タンパク質によって特定したアミロイド症の例は以下の通りである(アミロイド形成性タンパク質の後の括弧内は付随する病名):β−アミロイド症(アルツハイマー病、ダウン症、遺伝性脳出血アミロイド症[オランダ人]);アミロイドA(反応性[続発性]アミロイド症、家族性地中海熱、ジンマ疹や難聴を伴う家族性アミロイド腎症[マックル−ウエルズ症候群];アミロイドκL−鎖又はアミロイドλL−鎖(突発性[原発性]、骨髄腫又はマクログロブリン血症が付随する);Aβ2M(慢性血液透析);ATTR(家族性アミロイド多発性神経障害[ポルトガル人、日本人、スウェーデン人];家族性アミロイド心筋症[デンマーク人]、局在性心臓アミロイド、全身性老年アミロイド症);AIAPP 又はアミリン(成人発症糖尿病、インスリノーマ);心房ナトリウム排泄増加因子(局在性心房アミロイド);プロカルシトニン(甲状腺の骨髄種);ゲルソリン(家族性アミロイド症[フィンランド人]);シスタチンC(アミロイド症を伴った遺伝性脳出血アミロイド症)[アイスランド人]); AApoA−I(家族性アミロイド症多発性神経障害)[アイオワ州]; AApoA−II(マウスにおける老化促進);フィブリノーゲン結合アミロイド;リゾチーム結合アミロイド;及びAScr又は PrP−27(スクレイピー、クロイツフェルド−ヤコブ病、ゲルストマン−ストラウスラー−シャインカー症候群;ウシ海綿状脳炎)。
【0064】
本明細書に記載された方法において使用される硫酸化及びスルホン化された化合物は、商業的に入手可能であり(例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO,又はAldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)そして/又は本分野において知られた標準的な技術により合成されることができる。(例えば、Stone, G. C.II. (1936) J. Am. Chem. Soc., 58: 488 を参照のこと。)。一般に、硫酸化化合物は、それらの対応アルコールから合成された。XIX とXXに対応するアルコールが、それぞれ商業的に入手可能である1,3−アセトンジカルボン酸とトリエチル・メタントリカルボン酸の還元により得られた。
【0065】
本発明のある実施態様において、コンゴレッドは本発明の方法で使用されるスルホン化化合物から除外される。
【0066】
本発明のある実施態様において、次の硫酸化化合物は本発明の方法において使用されることから除外される:硫酸デキストラン500、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、八硫酸デキストラン、κ−カラギーナン、ペントサンポリスルフェート、及び/又はヘパラン。
【0067】
本発明のある実施態様において、本発明の組成物及び方法は、アミロイド形成性タンパク質がプリオンタンパク質、AScr ( PrP−27としても知られている)、のプロテアーゼ耐性形でないアミロイド症でアミロイドの沈着を阻害するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これらの実施例を本発明を更に限定するものと考えてはならない。本明細書において引用されているすべての文献及び特許公報の内容を引用により本明細書中に取り込む。実施例に記載されたマウス・モデルにおける本発明の治療用化合物の効果の立証は、ヒトにおける効果を予言するものである。
【0069】
以下の実験例では、十分に特徴付けられたアミロイド症のマウスモデルが使用された。このインビボ系において、動物は炎症性刺激及びアミロイド増強因子を与えられる。急性アミロイド症(即ち、短期間でのアミロイド沈着)のための炎症性刺激はAgNO3 である。慢性アミロイド症(進行中のアミロイド沈着)のための炎症性刺激はリポポリサッカライド(LPS)である。マウスの脾臓におけるアミロイドの沈着(AAアミロイド)は処理を行い又は行なわずに測定した。
【実施例1】
【0070】
動物
マウスは全てCD系(チャールズリバー、モントリオール、ケベック州)で、体重は25−30gであった。
【0071】
動物の治療
全ての動物には背中にAgNO3 (0.5ml、2%溶液)を皮下的に、かつアミロイド増強因子 (AEF) 100μgを静脈内投与した。アミロイド増強因子の調製方法は既にM.A.アクセルラド等、(「アミロイド増強因子の更なる特徴化」、Lab. Invest. 47, 139-146 (1982) )に記載されている。動物を幾つかの群に分け、そのうちの一つの群を未治療対照群とし、6日後に殺した。残りの動物を、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)(PVS)を腹腔内注射により12時間ごとに50mg、40mg、20mgまたは10mgずつ投与した群と、八硫酸蔗糖アンモニウム塩を腹腔内注射により8時間ごとに73mg又は36.5mgずつ投与した群とに分けた。生きていた動物を治療5日目に殺した。すべての場合に於いて、 PVSまたは SOAを滅菌水性担体中に溶解した。
【0072】
組織の調製
実験の終了時に前記動物を頸部脱臼によって殺し、脾臓、肝臓及び腎臓をA.W.ライオン等(「ネズミ脾臓AAアミロイドの誘導中における基底膜構成成分の同時沈着」、Lab. Invest., 64, 785-790 (1991))に記載されているように96%エタノール、1%氷酢酸及び3%水中で固定した。固定に引き続いて、組織をパラフィン中に包埋したのち、H.パヒトラー等(「直接綿染色条件下におけるアミロイドへのチアゾール系染色剤の適用:組織化学データと化学データとの相関性」、Histochemistry, 77, 431-445 (1983))に記載されているように、8〜10ミクロンの薄片を切り出してから、後染色することなくコンゴレッドにより染色した。偏光下で観察した組織の薄片をアミロイドによって占められている脾臓の百分率の画像分析によって評価した。八硫酸蔗糖を用いた実験の場合、組織を SAAタンパク質に対する抗体で免疫染色した(A.W.ライオン等、Lab. Invest., 64, 785-790(1991) に記載されている)のち、上記免疫染色した薄片をアミロイドによって占められている組織の百分率の画像分析によって評価した。
【0073】
動物の生存性
対照動物はすべて一匹の例外もなく実験中生存した。治療を受けている動物の場合、八硫酸蔗糖を73mg注射で与えられた動物は実験の終了前に全部死んだ。八硫酸蔗糖を36.5mg注射で与えられた動物は全部生き残った。各投与群で PVS(分子量: 900〜1000)を投与された動物のうち、約半分から三分の一が実験の終了前に死んだ。実験の終了前に死んだ動物の場合、死因は全て腹腔内出血をそのまま放置しておいたためであった。
【0074】
アミロイドの沈着に対する薬剤の効果
36.5mg/注射における八硫酸蔗糖の効果を下記表1に示す。対照動物においてアミロイドによって占められている脾臓の平均面積は 7.8%± 1.5%S.E.M.(平均値の標準誤差)であった。前記治療剤の投与を受けた動物に於いて、この平均面積は 3.2%± 0.5%S.E.M.であった。この違いはp≦0.02で有意であった。
【表1】
PVS の場合におけるデータを図1に示す。すべての投与量においてアミロイドの沈着に対して卓越した阻止があり、この効果は投与量に依存することが示された。有効な投与量の範囲は5〜500mg /kg体重/日である。
炎症が付随するアミロイド症の前駆物質、 SAA、のプラズマ中濃度を予備的に評価すると、 PVSを投与した動物と投与しない動物との間には差がないことが判明した。
【0075】
本発明の治療剤の投与方法は前記動物の死亡率に影響があったと考えられる。循環系に入るのを容易にするための大きな膜面が得られるので腹腔内注射を選択した。しかしながら、ヘパランのように、本発明の化合物は抗凝結性を示す。腹膜を通して繰り返し注射することにより激しい出血をおこし、最終的には腹腔内が血液で一杯になり、失血によって死に至った。皮下注射は有効化合物がゆっくりと吸収されることになると思われるが、この投与経路が死を起こすほど出血を生じさせるとはあまり考えられない。前記化合物の経口投与を後の実験(後記参照)で実施した。
【実施例2】
【0076】
既に記載したように(R.キズレフスキー及びL.ブードロー、「アミロイド沈着の速度論:I.アミロイド増強因子及び脾摘出の影響」、"Lab. Invest.", 48, 53-59 (1983))、体重25−30gのスイスホワイトマウスにアミロイド増強因子(AEF)及びAgNO3 を与えてアミロイド症を誘導した。24時間後にマウスを三つの群に分けた。一つの群を対照群として用い、標準的な実験室用マウスフード及び水道水を自由に摂取させた。二番めの群には標準的なフードを与えたが、その飲料水にはポリ(ビニルスルホン酸)ナトリウム塩(PVS)を20mg/ml添加した。三番目の群は PVSを50ml/mg含む飲料水を摂取した。水分の摂取量は両群とも同じであった。動物を全て実験6日目に殺し、それらの脾臓を採取し、薄片を切り出す予備処理を行ない、脾臓薄片をコンゴレッドで染色し(H.パヒトラー等、「直接綿染色条件下におけるアミロイドへのチアゾール系染色剤の適用:組織化学データと化学データとの相関性」、Histochemistry, 77, 431-445 (1983))、次いでアミロイド占有面積百分率を画像分析装置及びプログラムによって測定した(MCID M2 、イメージング・リサーチ社、ブロック大学、セントキャサリーンズ、オンタリオ、カナダ)。図4に示す通り、 PVSの経口投与は投与量に依存した形でアミロイドの沈着を妨げる。
【実施例3】
【0077】
PVS が前記アミロイド前駆物質の肝臓における合成を阻止しているのでアミロイドの沈着が生じないのは前駆物質の貯留がないことによると考えられることから、本実験の過程における前記アミロイド前駆物質(SAA)の血中濃度に対する PVSの影響を調べた。上記の通り AEF+AgNO3 を与えてから、動物を二つの群に分けた。群1にはそれ以上何も投与しなかった。24時間後から、群2には12時間ごとに5日間腹腔内注射により PVSを50mg投与した。この実験の間 SAAの濃度をグラフにプロットするために、各動物(対照及び実験)の尾から毎日採血した(≒25μl)。これらのサンプル中の SAA濃度は固相ELISA(酵素免疫)法によって測定した(L.ブリセット等、J. Biol. Chem., 264, 19327-19332 (1989) に記載)。結果を図5に示す。丸印は PVS−投与マウスのデータを表わし、一方三角印は非投与動物のデータを示す。 SAA濃度は投与及び非投与動物において同等であり、 PVSが SAAの合成を防止することによってその効果を発揮するのではないことを示している。
【実施例4】
【0078】
上記各実験例において、 PVSによる治療はアミロイド誘導プロトコル(計画)に入ってから24時間経過後から開始された。これは、通常患者が既に完全にアミロイド症になってしまっている臨床状態を反映していない。より実験的な臨床状態に似せるため、アミロイドの沈着が既に開始していた後で PVSによる治療を始める別の一連の実験を行なった。上記のとおり、動物に AEF+AgNO3 を投与してから7日間水道水で飼育した後、二つの群に分けた。群1には標準フードと水道水を与え、群2に関しては標準フードはそのままであったが、飲料水に PVSを50mg/ml添加した。アミロイドが既に生じてしまった後でのアミロイドの沈着の進行に対する PVSの効果を評価するために、各群において動物を5匹ずつ7,10,14、及び17日目に殺した。それらの脾臓を上記の通り処理して評価した。データを図6に示す。対照動物(三角印)ではアミロイドが14日間沈着し続けたが、その後アミロイドの量は減少し始めた。この後者の減少はAgNO3 、炎症性刺激、の注射を一回しか行なわなかったという事実による可能性が最も大きいが、14日目以降では SAA濃度は減少することが知られている(R.キズレフスキー、L.ブードロー及びD.フォスター、「アミロイド沈着の速度論:II. ジメチルスルホキシド及びコルヒチンによる治療の効果」、"Lab. Invest.",48,60-67 (1983))。前駆物質がない場合には、アミロイドが更に沈着することは有り得ず、既に存在している沈着物が動くようになる(R.キズレフスキー及びL.ブードロー、「アミロイド沈着の速度論:I. アミロイド増強因子及び脾摘出の影響」、"Lab. Invest.",48,53-59 (1983))。逆に、治療した群の動物(丸印)ではPVS を投与してから3日以内にアミロイドの沈着が停止した。これは PVSが進行中のアミロイド沈着を阻害するためにも有効であることを示している。
【実施例5】
【0079】
炎症の程度と SAAの血中濃度を維持してより長期にわたる実験期間中アミロイドが沈着し続けるように、炎症性刺激の内容を変更した。炎症を維持するために、動物にリポポリサッカライド(LPS, 20μg)+AEF を0日目に投与し、 LPSを2日目毎に腹腔内注射により投与した。実験例4に記載したように、7日目に動物を二つの群に分けた。実験の過程を通してのアミロイドの評価は実験例4に記載したように行なった。データを図7に示す。対照群(三角印)は17日の全期間を通じてアミロイドを沈着し続けた。 PVS投与を受けた群は14日目までにアミロイドの沈着が停止したのがよく解る(丸印及び破線)。17日目のデータは、この期間では動物を一匹除外したので、各群当たり4匹の動物のデータを示している。この特定の動物のアミロイド量が他の全部のデータ点(治療の有無にかかわらず、21%)からあまりにもかけ離れていたので、上記の判断は統計学的に有効な方法であったと考えられる。この一匹のデータを入れると、得られる曲線は点線及び上記以外の丸印で表わしたようになる。なお、 PVSの投与を受けた動物は実験が進行するに連れてひどい下痢を起こし始めたことを付記する。
【実施例6】
【0080】
本実験例において、アミロイド症を阻止するために別のスルホン酸化化合物、エタンモノスルフェート、を使用した。エタンモノスルフェートナトリウム塩(EMS)は構造的には PVSのモノマー単位である。実験例5同様、動物に LPS+AEF を投与したが、7日目に EMSを治療剤として飲料水に入れて使用した。7日目に、動物を三つの群に分けた。群1は未治療群である。群2には EMSを 2.5mg/ml添加した飲料水を与えた。群3には EMSを6mg/ml添加した飲料水を与えた。7,10,14及び17日目に動物を殺した。これらの動物は胃腸障害をおこさなかった。これらのデータを図8に示す。 EMSを6mg/ml添加した飲料水を与えられた動物(四角印)は14日目以降アミロイドの沈着が停止した。 EMSを 2.5mg/ml投与された動物(丸印)の場合は、14日目にアミロイドの沈着速度が減少したが17日目までは継続せず、治療効果が頓挫してしまったようにみえる。
【実施例7】
【0081】
アルツハイマー病のアミロイド前駆タンパク質(ベータAPP)へのHSPGの結合に対する PVSの影響
ベータAPP に対する硫酸ヘパランプロテオグリカンの結合をS.ナリンドラソラサック等(「アルツハイマー病のベータ−アミロイド前駆タンパク質と基底膜状態の硫酸ヘパランプロテオグリカンとの間の高親和性相互作用」、J. Biol. Chem., 266, 12878-12883 (1991))に記載されているような酵素免疫測定法を用いて評価した。ポリスチレン製マイクロプレート (Linbro、フロー・ラボラトリーズ社)を pH9.6の20mM NaHCO3 緩衝溶液中にβ−APP を1μl/ml含有する溶液 100μlで被覆した。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを pH7.5の0.15M NaCl, 20mM Tris-Cl (TBS)で洗浄した。ついでプレートをウシ血清アルブミン(BSA)を1%含有する TBS溶液 150μlと共に2時間37℃でインキュベートしてウエルの疎水性の残っている面を覆った。Tween20 を0.05%(w/v)含有する TBS(TBS-Tween)で洗浄した後、TBS-Tween 中にHSPGを様々な濃度で含有する溶液 100μlを単独で添加するか又はTris−緩衝食塩水(TBS)若しくはリン酸−緩衝食塩水(PBS)中に PVSを 500μl/ml含有する溶液を前記結合測定法に含ませてβ−APP へのHSPGの結合に対する PVSの影響を調べた。プレートを4℃で一晩放置してHSPGをβ−APP へ最大限結合させた。次にプレートを再度洗浄してから、上記の通り BSAを含有する TBS-Tween中にアルカリ性フォスファターゼ結合ヤギ抗−ウサギIgG を含む溶液(希釈度:1:2000)100μlと共にさらに2時間インキュベートした。最後に、更に洗浄した後、p−ニトロフェニルフォスフェート2mg/ml、ZnCl2 0.1mM, MgCl21mM及びグリシン 100mMを含有するpH10のアルカリ性フォスファターゼ基質溶液(100μl)を添加して結合した抗体を検出した。プレートを室温で15−120 分間放置した。2M NaOHを加えて酵素反応を停止した。遊離したp−ニトロフェニルの吸収を 405nmでTitertek Multiscan/MCC 340(フロー・ラボラトリーズ社)によって測定した。HSPGインキュベーション工程を省略したブランクウエルの吸収値Aを総吸収値A405 から差し引いた後の値によって結合したHSPGの量を求めた。HSPGとベータ−APP との結合に対する PVSの影響を図2(TBS中)及び図3(PBS中)に示す。この化合物によって約30−50%の結合阻害が生ずることが示されている。
【実施例8】
【0082】
実験例1と2に記載されているようにAgNO3 とアミロイド増強因子とによってマウスに急性アミロイド症を起こした。24時間後に、動物を一つの対照群と六つの試験群に分けた。対照群には標準的な実験室用マウスフード及び水道水を自由に摂取させた。試験群には標準的なフードを与えたが、それらの飲料水には次の6種類の化合物50mMを1種類ずつ含んでいた:エタンスルホン酸ナトリウム塩、2−アミノ−エタンスルホン酸ナトリウム塩(タウリン)、プロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩、プロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩、又はブタン−1,4−ジスルホン酸ナトリウム塩。水の摂取量はすべての群でほぼ同等であった。6日後に、動物を殺し、脾臓を実験例2に記載したように処理した。予備的に分析するために、治療した動物と対照動物との間のアミロイド沈着の差を見るために脾臓の薄片を顕微鏡下観察した。
【0083】
観察結果はプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩又はプロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩で治療した動物が対照動物よりアミロイドの沈着が少なかったことを示した。これらの急性アミロイド症条件の下では、エタンスルホン酸ナトリウム塩、タウリンナトリウム塩又はブタン−1,4−ジスルホン酸ナトリウム塩で治療した動物は対照動物よりアミロイドの沈着が少ないとは観察されなかった。しかしながら、これらの化合物も他の条件下では効果を示す可能性が有り、例えば、エタンスルホン酸ナトリウム塩は慢性アミロイド沈着を阻害し(実施例6参照)、そしてタウリンは他の濃度において急性アミロイド沈着を阻害することが観察されている(実験例9参照)。
【0084】
本実験例はスルホン化低級脂肪族類、例えば、プロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩及びプロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩が急性アミロイド形成性の系においてアミロイドの沈着を阻害しうることを示している。
【実施例9】
【0085】
実施例8に説明した予備的結果を考慮して、急性アミロイド沈着に対する硫酸化又はスルホン化化合物のパネルの効果を決定するために、さらなる実験を行った。急性アミロイド症は、実施例1と2に記載したようにマウスにおいて引き起こされた。24時間後、動物を対照群とテスト群に分けた。対照群には、標準的な実験マウス・フード及び水道水を自由に摂取させた。テスト群には標準的なフードを与えたが、それらの飲料水は以下の表2中に列記する化合物20又は50mMを含んでいた(表2中に列記したWAS 化合物の化学構造を図9と10に示す。)。1の化合物、タウリンを、5mM,10mM,20mM及び50mMの濃度においてテストした。全ての化合物を1.0 %スクロースを含む水に溶解した。水の摂取は、全ての群においてほぼ同等であった。6日後に、動物を殺し、そしてそれらの脾臓を実施例2に記載したように処理した。
結果を以下の表2に要約する。
【表2】
【0086】
上記結果は、1,2−エタンジオール・ジスルフェート又はナトリウム1,3−プロパンジオール・ジスルフェートにより処置された動物が、20mMにおいてアミロイド沈着において少なくとも約65%の減少、そして50mMにおいてアミロイド沈着において少なくとも約90%の減少をもっていたことを示している。ナトリウム1,4−ブタンジオール・ジスルフェート(50mM)、ナトリウム1,5−ペンタンジスルホネート(50mM)、タウリン(ナトリウム2−アミノ−エタンスルホネート)(10〜20mM)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパン・スルホネート(III)(50mM)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホネート(IV)(20mM)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(VI)又はそのナトリウム塩(VII)(50mM)、ナトリウム・テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジスルフェート・トリヒドレート(X)、ナトリウム4−ヒドロキシブタン−1−スルホネート(VIII) (50mM)、ナトリウム1,3,5−ペンタントリオール・トリスルフェート(XIX)(20と50mM)、硫酸水素2−アミノエチル(XXV)(20と50mM)、又はインジゴ・カルミン(XXVI) (50mM)に処理された動物は、非処理対照動物に比較してアミロイド沈着において少なくとも約40%の減少をもっていた。タウリンは、本実施例において10〜20mMの濃度において有効であったが、5mM又は50mMにおいてはより小さく有効であった(実施例8も参照のこと。)。
【0087】
特定の硫酸化又はスルホン化化合物は、使用された条件下でアミロイド沈着量の減少において有効でなかったが、他の態様においては有効であることができる。初期のインビトロ試験は、硫酸デルマタンとコンドロイチン6−スルフェートが、HSPGへのベータ・アミロイド前駆体タンパク質の結合を妨害しないことを示した。ナトリウム(±)−10−カンファースルホネート(XIII) 、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2ナトリウム塩(XII)及び2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、2カリウム塩(XI) を上記マウス・モデルにおいてテストし、そして表2中に示すように、アミロイド沈着を減少させることが見られなかった。
【実施例10】
【0088】
本実施例において、本発明の方法において使用される2つの化合物の代表的な合成について説明する。
【0089】
ナトリウム・エタン−1,2−ジスルホネート
水(225 ml)中1,2−ジブロモエタン(37.6g、0.20モル)と亜硫酸ナトリウム(63.0g、0.5 モル)の混合物を、20時間還流温度に加熱した。この混合物を冷蔵庫内で冷却した後に、結晶を集めた。粗生成物を、水−エタノールから繰り返し再結晶化した。微量の無機塩を、少量の酸化銀(I)と水酸化バリウムでその水溶液を処理することにより除去した。この塩基性溶液を、Amberlite-120イオン交換樹脂で中和し、そしてAmberlite-120 (ナトリウム型)イオン交換樹脂で3回処理した。水を除去後、その生成物を水−エタノールで再結晶化して表題の化合物(30.5g)を得た。
【0090】
ナトリウム1,3−プロパンジスルホネート
上記化合物を、Stone, G. C. H. (1936) J. Am. Chem. Soc., 58: 488 中に記載された方法の変法により合成した。1,3−ジブロモプロパン(40.4g、0.20モル)を、48時間還流温度において水中の亜硫酸ナトリウム(60.3g、0.50モル)で処理した。無機塩(臭化ナトリウムと亜硫酸ナトリウム)を、水酸化バリウムと酸化銀(I)による得られた反応混合物の連続処理により除去した。次にこの溶液をAmberlite-120 (酸型)で中和し、そしてNorit-Aで脱色した。バリウム・イオンを、Amberlite-120 (ナトリウム型)イオン交換樹脂による上記水溶液の処理により除去した。溶媒を、ロータリー・エバポレーター上で除去し、そして粗生成物を数回水−エタノールから再結晶化して表題の化合物(42.5g)を得た。少量の含有エタノールを最小量の水にそれら結晶を溶解することにより除去し、そして次にその溶液を蒸発乾固させた。純粋な生成物をさらに24時間56℃において高真空下で乾燥させた:融点>300 ℃; 1HNMR (D2O)8;3.06−3.13(m,4H,H−1及びH−3)、2.13−2.29(m,2H,H−2);13C NMR(D2O)8:52.3(C−1及びC−3)、23.8(C−2)。
【0091】
均等
当業者は、単なる日常的な実験作業により、本明細書に記載した具体的な手順に対する無数の均等な手順を認識し又は想到しうる。このような均等も本発明の範疇に入ると考えられ、以下の特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1はマウス脾臓におけるインビボAAアミロイド沈着に対する腹腔内投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示す棒グラフである。
【図2】図2はトリス緩衝食塩水(TBS)中におけるβ−APP への硫酸ヘパリンプロテオグリカンの結合に対するポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。
【図3】図3はリン酸緩衝食塩水(PBS)中におけるβ−APP への硫酸ヘパリンプロテオグリカンの結合に対するポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。
【図4】図4はマウス脾臓内におけるインビボAAアミロイド沈着に対する経口投与ポリ(ビニルスルホネート)の効果を示す棒グラフである。
【図5】図5はポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の投与を受けている動物(丸印)と対照動物(三角印)に関するアミロイド前駆体、SAA 、の経時血中濃度を示すグラフである。
【図6】図6はマウスを治療する前に既にアミロイドの沈着が存在する場合におけるマウス脾臓内のAAアミロイド沈着の進行に対する経口投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印は治療した動物を示す。
【図7】図7は実験の過程を通じて炎症性刺激を維持したときの脾アミロイド沈着に対する経口投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印は治療した動物を示す。
【図8】図8は生体内AA脾アミロイド沈着に対する経口投与エタンモノスルホネートナトリウム塩(EMS)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印はEMS を 2.5mg/ml含む飲料水を与えられている動物、さらに四角印はEMS を6mg/ml含む飲料水を与えられている動物を示す。
【図9】図9は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図10】図10は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図11】図11は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図12】図12は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図13】図13は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図14】図14は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図15】図15は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図16】図16は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図17】図17は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイド症はアミロイドの存在を特徴とする病的症状に関する。アミロイドは様々な疾患に於いて見られる多様であるが特定の細胞外タンパク質沈着を示す総称である。それらの発生において多様であるが、アミロイド沈着は全て共通の形態学的特性、即ち特定の染料(例えば、コンゴレッド)による染色を伴い、染色後は偏光中で特徴的な赤緑色の複屈折光が現われる。それらは、共通の超微細構造的特徴や共通のx−線回折及び赤外線スペクトルも共有している。
【0003】
アミロイド症は臨床的には原発性、続発性、家族性及び/又は局在性に分類可能である。原発性アミロイドはいかなる先行する失調を伴わずに新規(de novo)に現われる。続発性アミロイドは先に存在している失調の合併症として現われる形態のものである。家族性アミロイドは特定の地域集団に見られる遺伝的に受け継がれた形態である。局在性のアミロイドは単一の臓器に関連する傾向のものである。様々なアミロイドは沈着物の中に存在するタンパク質のタイプによっても特徴付けられる。神経変性疾患、例えば、スクレイピー、ウシ海綿状脳炎、クロイツフェルドーヤコブ病等は、中枢神経系におけるプリオンタンパク質のプロテアーゼ耐性型(AScr又はPrP-27と呼ぶ)の出現及び蓄積を特徴とする。同様に、別の神経変性異常であるアルツハイマー病はコンゴ好染血管障害、神経炎プラク及び神経原線維のもつれを特徴とし、これらは全てアミロイドの特徴を有している。この場合、これらの斑及び血管アミロイドはベータタンパク質で形成されている。他の全身性疾患、例えば、成人発症糖尿病、長期血液透析の合併症及び長年の炎症又はプラズマ細胞疾患による後遺症等は全身にわたるアミロイドの蓄積を特徴としている。これらの症例のそれぞれにおいて、別々のアミロイド形成性タンパク質がアミロイドの沈着に関与している。
【0004】
一旦、これらのアミロイドが形成されてしまうと、広く許容されたその沈着物をその場で溶解するための治療法は知られていない。
【発明の開示】
【0005】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法はアミロイドの沈着を阻害する治療用化合物を被験体に投与することからなる。従って、本発明の組成物及び方法はアミロイドの沈着が生ずる疾患においてアミロイド症を阻害するために有用である。本発明の方法はアミロイド症を治療するために臨床的に使用可能であり、又、アミロイド症にかかりやすい被験体に予防的に使用することもできる。本発明の方法は、少なくとも部分的には、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の構成成分との相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することに基づいている。前記基底膜の構成成分は糖タンパク質又はプロテオグリカン、好ましくは、硫酸ヘパリンプロテオグリカンである。本発明の方法で使用される治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質上の標的結合部位に基底膜の構成成分が結合するのを妨げることが可能で、それによってアミロイドの沈着を阻害する。
【0006】
一態様において、本発明の方法はアミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン系構成成分との相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することの可能な担体分子に共有結合的に付いた少なくとも一個のアニオン性基を有する治療用化合物を被験体に投与することからなる。一例として、前記担体分子に共有結合的に付いたアニオン性基はスルホネート基である。従って、この治療用化合物は次の式
Q−[−SO3−X+]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。別の態様においては、前記アニオン性基はスルフェート基である。それ故、この治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。使用可能な担体分子としては、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。本発明に於いて使用するのに好ましい治療用化合物としては、ポリ(ビニルスルホン酸)、エタンスルホン酸、八硫酸蔗糖(sucrose octasulfate)、1,2−エタンジオール2硫酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジオール2硫酸、1,4−ブタンジスルホン酸、1,5−ペンタンジスルホン酸、タウリン、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸、テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキキシド−3,4−ジスルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、又は医薬として許容されるそれらの塩が挙げられる。本発明において使用するのに他の好ましい治療用化合物は、1−ブタンスルホン酸、1−デセンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、3−ペンタンスルホン酸、4−ヘプタンスルホン酸、及びそれらの医薬として許容される塩を含む。他の好ましい態様においては、治療用化合物は、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸又はその医薬として許容される塩である。さらに他の好ましい態様においては、治療用化合物は、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる。さらに好ましい態様においては、治療用化合物は、2,3,4,3′,4′,−スクロース5硫酸、又はその医薬として許容される塩である。さらに好ましい他の態様においては、治療用化合物は、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及びそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる。さらに他の好ましい態様においては、治療用化合物は、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸およびそれらの医薬として許容される塩から選ばれる。
【0007】
他の態様においては、アニオン基は、テトラゾール基である。従って、1の態様においては、本発明は、被験体においてアミロイド沈着を阻止する方法であって、担体分子に共有結合された少なくとも1のテトラゾール基を含む治療用化合物、又はその医薬として許容される塩の有効量をその被験体に投与することを含む方法を特徴とする。特定の態様においては、治療用化合物は、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−4オキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル、1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及びそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる。
【0008】
本発明の治療用化合物はアミロイドの沈着を阻害するために有効な経路によって被験体に投与される。適切な投与経路としては、皮下、静脈及び腹腔内注射が挙げられる。本発明の治療用化合物は経口投与した場合に有効であることも判明している。それ故、好ましい投与経路は経口投与である。これらの治療用化合物は医薬的に許容しうる担体と共に投与可能である。
【0009】
本発明はさらにアミロイド症を治療するための医薬組成物も提供する。これらの医薬組成物は本発明の治療用化合物をアミロイドの沈着を阻害するのに有効な量と、医薬的に許容しうる担体とを含有する。
【0010】
本発明はアミロイド症を治療するために有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法はアミロイドの沈着を阻止する治療用化合物を被験体に投与することからなる。「アミロイド沈着の阻害」とはアミロイド形成の防止、アミロイド症が進行している被験体における更なるアミロイドの沈着の防止及びアミロイド症が進行している被験体におけるアミロイド沈着減少を含むものとする。アミロイドの沈着が阻止されたか否かは治療対象外に対して又は治療前の被験体に対して決定される。アミロイドの沈着は、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の構成成分とのあいだの相互作用を阻害することによって行われる。「基底膜」とはラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン及び硫酸ヘパリンプロテオグリカン(HSPG)を含む、糖タンパク質及びプロテオグリカンからなる細胞外マトリックスを示す。一例において、アミロイドの沈着はアミロイド形成性タンパク質とHSPGの様な硫酸化グリコサミノグリカンとの間の相互作用を妨げることによって阻止される。硫酸化グリコサミノグリカンはあらゆるタイプのアミロイド中に存在することが知られており[A.D.スノウ等、Lab. Invest. 56, 120-123 (1987) 参照]、アミロイドの沈着とHSPGの沈着とはアミロイド症の動物モデルにおいて同時におこる。[A.D.スノウ等、Lab. Invest. 56, 665-675 (1987) 参照]。本発明の方法において、硫酸化グリコサミノグリカンに類似する構造を有する分子がアミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との相互作用を阻止するために使用される。特に、本発明の治療用化合物は担体分子に結合した、少なくとも一個のスルフェート基又はその機能的均等物、例えば、スルホネート基又は他の機能的に均等なアニオン性基を含んでいる。このアニオン官能性によって担体として機能することに加えて、前記担体分子は前記化合物が過度又は早期代謝することなく生体膜を貫通してバイオディストリビュート(biodistributed)されることを可能にする。さらに、この担体分子は前記アニオン性基を正しい幾何学的に分離した状態に離間する作用をする。
【0011】
一態様において、本発明の方法は担体分子に共有結合したアニオン性基を少なくとも一個有する治療用化合物を被験体に投与することからなる。この治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカンとの間の相互作用を阻害してアミロイドの沈着を阻害することができる。上記治療用化合物は次の式
Q−[−Y−X+]n
[式中、Y− は生理pHにおいてアニオン性である基、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnは整数である。]で表わすことができる。アニオン性基の数(“n”)は、この化合物の活性を維持しながらこの化合物の意図した目標部位へのバイオディストリビューションが妨げられないように選択する。例えば、アニオン性基の数は、細胞膜の様な解剖学的構造の障壁を貫通したり又は血液脳関門の様な生理障壁を通して入ることが望まれる場合に、その様な特性を阻止するほど大きくない様にする。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。
【0012】
本発明の治療用化合物のアニオン性基は、担体分子に結合したとき、アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害できるマイナスに荷電した部分である。本発明の目的上、このアニオン性基は生理pHにおいてマイナスに荷電している。このアニオン性治療用化合物は硫酸化プロテオグリカンの構造に類似し、即ち、硫酸化化合物又はその機能的均等物であるのが好ましい。スルフェートの「均等物」はバイオ同配体 (bioisosteres)を含むものとする。スルフェート基の古典的及び非古典的バイオ同配体は本件技術分野において知られている[(例えば、R.B.シルバーマン、The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, 19-23 、アカデミック・プレス社、サンディエゴ、カリフォルニア(1992)参照]。それ故、本発明の治療用化合物は、スルホネート、スルフェート、フォスフォネート、カルボキシレート、及び次の式
【化1】
の複素環式基を含む、アニオン性基を少なくとも一個含みうる。担体分子の種類により、二個以上のアニオン性基が担体分子に結合しうる。担体分子に二個以上のアニオン性基が結合しているとき、これらの複数のアニオン性基は同じ構造の基(例えば、全てスルホネート)であってもよいし、又は、異種のアニオン性基を組み合わせて用いてもよい(例えば、スルホネート、スルフェートなど)。
【0013】
アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害する本発明の治療用化合物の能力は、以下の実施例又はキズレフスキー等の米国特許第5,164,295 号に記載されているような生体内結合測定法によって評価しうる。簡単に述べると、ポリスチレン製マイクロプレートの様な固体支持体にアミロイド形成性タンパク質[例えば、血清アミロイドAタンパク質又はβ−アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)を塗布して疎水性表面を全て覆う。被験化合物の存在下又は非存在下、この被覆固体支持体を様々な濃度の基底膜構成成分、好ましくは、HSPGと共にインキュベートする。この固体支持体を十分洗浄して結合されていない物質を除去する。次いで、基底膜構成成分(例えば、HSPG)の前記アミロイド形成性タンパク質(例えば、β−APP)への結合を、検出しうる物質(例えば、アルカリホスファターゼ等の酵素)に結合した前記基底膜構成成分に対する抗体を用いて前記検出しうる物質を検出することによって測定する。アミロイド形成性タンパク質と基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカン構成成分との間の相互作用を阻害する化合物は物質の検出量を減少する(例えば、酵素の検出活性量を阻害する)。
【0014】
本発明の治療用化合物がアミロイド形成性タンパク質中の基底膜糖タンパク質又はプロテオグリカン用結合部位に作用して、このアミロイド形成性タンパク質の前記基底膜構成成分への結合を阻害するのが好ましい。基底膜の糖タンパク質又はプロテオグリカンにはラミニン、IV型コラーゲン、フィブロネクチン及び硫酸ヘパリンプロテオグリカン(HSPG)が含まれる。好ましい実施態様において、前記治療用化合物はアミロイド形成性タンパク質とHSPGとの相互作用を阻害する。アミロイド形成性タンパク質中のHSPG用共通結合部位モチーフは既に記載されている[(例えば、カーディン及びバイントラウブ、Arteriosclerosis, 9, 21-32 (1989) 参照]。一例として、HSPG用共通結合モチーフは一般式X1−X2−Y−X3[式中、X1,X2およびX3はアミノ酸(例えば、リシン又はアルギニン)、Yは何等かのアミノ酸である]のものであってよい。この部位の結合構造モデリングにより塩基性アミノ酸残基間の間隔(カルボキシレートからカルボキシレートまでの。オングストロームで)は以下の通りであることが判明した。
X1−X2 5.3 ± 1.5Å
X1−X3 7.1 ± 1.5Å
X2−X3 7.6 ± 1.5Å
これらの値は分子力学計算と半実験的量子力学計算とを組み合わせて用いて得られた。分子力学計算はMM2力場式を利用して実施した。半実験的分子軌道計算はAM1ハミルトン方程式を用いて行なった。前記部位の配座空間は分子力学(高温及び低温の双方)とモンテカルロ近似法とを組み合わせて利用してサンプルした。
【0015】
それ故、本発明の治療用化合物において複数のアニオン性基が担体分子に結合している場合、これらのアニオン性基同士の間隔はこれらのアニオン性基(例えば、スルホネート)が前記HSPG結合部位内の塩基性残基に最も望ましい形で作用する(HSPGと前記部位との相互作用を阻害する)ように選択する。例えば、アニオン性基は、それら同士の間隔がアミロイド形成性タンパク質中で基底膜構成成分(例えば、HSPG)用結合部位との相互作用を最適化しうるように、約 5.3±1.5 Å, 7.1±1.5 Å及び/若しくは7.6±1.5 Å又はそれを適当に整数倍した距離離間しうる。
【0016】
さらに本発明の治療用化合物は、典型的な例として、対イオン(即ち、前記一般式:Q−[−Y− X+ ]n におけるX+ )を含んでいる。カチオン性基にはプラスに荷電された原子及び部分的な分子が含まれる。カチオン性基が水素H+ ならば、その化合物は酸、例えば、エタンスルホン酸と考えられる。水素が金属又はその均等物で置換された場合、その化合物は前記酸の塩である。前記治療用化合物の医薬的に許容しうる塩も本発明の範囲に含まれる。例えば、X+ は医薬的に許容しうるアルカリ金属、アルカリ土類、多価カチオン性基(例えば、アルミニウム塩)、多価カチオン性対イオン又はアンモニウムとなりうる。医薬的に許容しうる好ましい塩はナトリウム塩であるが、それ以外の塩も医薬的に許容しうる範囲内で考えられる。
【0017】
前記治療用化合物中において、アニオン性基は担体分子に共有結合している。適切な担体分子としては、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。担体分子を、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基で置換することも可能である。
【0018】
本明細書中で用いられるとき、「炭水化物」なる用語は置換及び未置換モノー、オリゴー及びポリサッカライドを含むものとする。モノサッカライドは、合体してオリゴサッカライド又はポリサッカライドを形成しうる一般に式 C6H12O6の単純な糖である。モノサッカライドはモノサッカライドの互変異性体並びにD及びL両立体異性体を含む。炭水化物は各モノサッカライド部分に結合した複数のアニオン性基を含みうる。例えば、八硫酸蔗糖(sucrose octasulfate)においては、四個のスルフェート基が二個のモノサッカライド部分のそれぞれに付いている。
【0019】
本明細書中で用いられるとき、「ポリマー」なる用語はモノマーと呼ばれるサブユニットを二個以上化学的に結合することによって形成される分子を含むものとする。モノマーは一般に炭素を含み、比較的低分子量で単純な構造の分子又は化合物である。モノマーはそれ自体又は他の類似する分子若しくは化合物と組み合わせてポリマーに変えることができる。ポリマーは単一の同種の繰り返しサブユニット又は複数の異種の繰り返しサブユニット(コポリマー)からなり得る。本発明の範囲内のポリマーには置換及び未置換ビニル、アクリル、スチレン及び炭水化物−由来ポリマー及びコポリマー並びにそれらの塩が含まれる。一例において、前記ポリマーは約 800−1000ダルトンの分子量を有する。配位的に結合した適切なアニオン性基(例えば、スルホネート又はスルフェート)を有するポリマーの例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルフリック酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);スルフェート及びスルホネートであって:ポリ(アクリル酸);ポリ(アクリル酸メチル);ポリ(メタクリル酸メチル);及びポリ(ビニルアルコール)から誘導されたもの;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。配位的に結合した適切なアニオン性基を有する炭水化物−由来ポリマーの例としては、次の式
【化2】
[式中、RはSO3− 又はOSO3−である。]のもの及びそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0020】
ペプチド及びペプチド誘導体も担体分子として作用しうる。「ペプチド」なる用語はペプチド結合を介して配位的に結合した二個又はそれ以上のアミノ酸を含む。ペプチド系担体分子中で使用可能なアミノ酸にはタンパク質中に見られる天然に生ずるアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、バリン、システイン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンが含まれる。さらに、アミノ酸なる用語は天然に生ずるアミノ酸の類似体、誘導体及び同族体を含み、それらの一個又はそれ以上はペプチド誘導体中に存在しうる。例えば、アミノ酸類似体は適当な官能基を備えた長い又は短い側鎖即ち様々な側鎖を有する。アミノ酸の構造が立体異性形を取りうるときはそのアミノ酸のD形及びL形立体異性体も含む。さらに、「ペプチド誘導体」なる用語は、ベンゾジアゼピン分子[例えば、G.L.ジェームス等、Science, 260, 1937-1942 (1993)参照]のような、ペプチド主鎖に類似しているがアミノ酸ではない分子(所謂ペプチド類似体)を含む化合物を包含する。前記アニオン性基はある種のアミノ酸の側鎖の官能基又は他の適当な官能基を介してペプチド又はペプチド誘導体に結合しうる。例えば、スルフェート又はスルホネート基はセリン残基のヒドロキキシシ側鎖を介して結合しうる。ペプチドは(上記のとおり)アミロイド形成性タンパク質内の基底膜構成成分(例えば、HSPG)用結合部位に作用するように設計しうる。それ故、一実施態様において、前記ペプチドは四個のアミノ酸からなり、アニオン性基(例えば、スルホネート)がこの第一、第二、第四のアミノ酸に結合している。例えば、前記ペプチドは Ser−Ser −Y−Ser [式中、アニオン性基は各セリン残基の側鎖に結合し、Yは何等かのアミノ酸である]であってよい。ペプチド及びペプチド誘導体に加えて、一種類のアミノ酸を本発明の治療用化合物中で担体として使用しうる。例えば、システイン酸、システインのスルホン酸誘導体が使用可能である。
【0021】
「脂肪族基」なる用語は、典型的には1〜22の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖を特徴とする有機化合物を含むものとする。脂肪族基はアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を含む。複雑な構造では、鎖は枝分かれ又は架橋しうる。アルキル基は、直鎖アルキル基及び枝分かれ鎖のアルキル基を含む、一個またはそれ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む。そのような炭化水素分子の部分を一個又はそれ以上の炭素において、例えばハロゲン、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルチオ、又はニトロ基によって置換することも可能である。炭素数に別段の定めがない限り、本明細書において使用されている「低級脂肪族」は上記の通り(例えば、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル)であるが、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族基を意味する。そのような低級脂肪族の代表例、例えば、低級アルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−クロロプロピル、n−ブチル、 sec−ブチル、2−アミノブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−チオペンチル等である。本明細書で用いられるとき、「アミノ」なる用語は−NH2 ;「ニトロ」なる用語は−NO2 ;「ハロゲン」なる用語は−F,−Cl,−Br又は−I;「チオール」なる用語はSH;及び「ヒドロキシル」なる用語は−OHを意味する。従って、本明細書で用いられる「アルキルアミノ」なる用語は、上記の通り、それに結合したアミノ基を有するアルキル基を意味する。「アルキルチオ」なる用語は、上記の通り、それに結合したスルフィドリル基を有するアルキル基を示す。本明細書で用いられる「アルキルカルボニル」なる用語は、上記の通り、それに結合したカルボニル基を有するアルキル基を意味する。本明細書で用いられる「アルコキシ」なる用語は、上記の通り、それに結合した酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等を含む。「アルケニル」及び「アルキニル」なる用語はアルキルに類縁する不飽和脂肪族基に関するが、それぞれ少なくとも一個の二重又は三重結合を含んでいる。
【0022】
「脂環式基」なる用語は三個又はそれ以上の炭素原子の閉環構造を示すものとする。脂環式基は飽和環状炭化水素であるシクロパラフィン及びナフタレン、二個又はそれ以上の二重結合を有する不飽和シクロオレフィン、及び三重結合を有するシクロアセチレンを含む。これらは芳香族基を含まない。シクロパラフィンの例にはシクロプロパン、シクロヘキサン、及びシクロペンタンが含まれる。シクロオレフィンの例にはシクロペンタジエン及びシクロオクタテトレンが含まれる。脂環式基は縮合環構造及びアルキル置換脂環式基のような置換脂環式基も含む。さらに、これらの脂環式基の場合、そのような置換基には低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3 、−CN等が含まれる。
【0023】
「複素環式基」なる用語は環内の原子の一個又はそれ以上が炭素以外の元素、例えば、窒素又は酸素である閉環構造を含むものとする。複素環式基は飽和されていても、また不飽和であってもよく、ピロール又はフランのような複素環式基は芳香族の特性を備えうる。それらはキノリンやイソキノリンのような縮合環構造を含んでいる。複素環式基の他の例にはピリジンやプリンが含まれる。複素環式基はその一個又はそれ以上の構成原子において、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシ、−CF3 、又は−CN等によって置換されていても良い。
【0024】
「芳香族基」なる用語は一個又はそれ以上の環を有する不飽和環状炭化水素を含むものとする。芳香族基は5−員又は6−員単環基を含み、これらは0個から4個のヘテロ原子を含むことが可能で、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等が含まれる。この芳香族環は一箇所またはそれ以上の環の部位で、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボニル、ニトロ、ヒドロキシ、−CF3 、又は−CN等によって置換されていてもよい。
【0025】
本発明の治療用化合物は医薬的に許容しうる担体に入れて投与できる。本発明において用いられているように、「医薬的に許容しうる担体」には、前記化合物の活性に適合しかつ治療対象に対して生理学的に許容しうる、いかなる又あらゆる種類の溶媒、分散媒、コーティング材、抗菌及び抗カビ剤、等張吸収遅延剤等が含まれる。医薬的に許容しうる担体の例として緩衝標準食塩水(0.15モルNaCl)がある。医薬的に活性な物質に対してそのような媒体や剤を使用することは本技術分野においてよく知られている。従来の媒体や剤が前記医療用化合物と適合しない場合を除いて、医薬として投与するために好適な組成物においてそれらを使用することが考えられる。補足的な活性化合物を前記組成物中に入れることも可能である。
【0026】
本発明の方法の好ましい態様において、治療対象に投与される治療用化合物は担体分子に配位的に結合したスルホネート基を少なくとも一個含むか、又はその医薬的に許容しうる塩である。それ故、この治療用化合物は次の式
Q−[−SO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nは整数である]で表わすことができる。適切な担体分子及びカチオン性基は上記の物である。スルホネート基の数(“n”)は、前記の通り、前記化合物の活性を維持しながら前記化合物の意図した目標部位への生分散が妨げられないように選択する。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。先に記載したように、複数のスルホネート基を有する治療用化合物は、前記化合物がアミロイド形成性タンパク質内のHSPG結合部位に最適に作用するように離間されたスルホネート基を含みうる。
【0027】
好適な実施態様において、スルホネートに対する担体分子は低級脂肪族基(例えば、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、ジサッカライド、ポリマー、ペプチド又はペプチド誘導体である。さらに、この担体は、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
【0028】
適切なスルホン化高分子治療用化合物の例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルホネート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルホネート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0029】
好ましいスルホン化ポリマーはポリ(ビニルスルホン酸)(PVS)又はその医薬的に許容しうる塩、好ましくはそのナトリウム塩である。
【0030】
1の態様においては、約 800〜1000ダルトンの分子量を有する PVSが使用される。他の態様においては、約2000の分子量をもつPVSが使用される(例えば、XC、式中、nは平均して約15である。)。PVS は立体異性体の混合物又は単一の活性異性体として使用されることができる。
【0031】
好ましいスルホン化ジサッカライドは完全に又は部分的にスルホン化した蔗糖、又はその医薬的に許容しうる塩である。他のスルホン化サッカライドは、5−デオキシ−1,2−O−イソプロピリデン−α−D−キシロフラノース−5−スルホン酸(XXIII 、ナトリウム塩として示す。)を含む。
【0032】
本発明において使用するのに好ましい低級脂肪族スルホン化化合物としては、エタンスルホン酸;2−アミノ−エタンスルホン酸(タウリン);システイン酸(3−スルホアラニン又はα−アミノ−β−スルホプロピオン酸);1−プロパンスルホン酸;1,2−エタンジスルホン酸;1,3−プロパンジスルホン酸;1,4−ブタンジスルホン酸;1,5−ペンタンジスルホン酸;及び4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸(VIII、ナトリウム塩として示す。);並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。本発明における使用を意図される他の脂肪族スルホン化化合物は、1−ブタンスルホン酸(XLVII 、ナトリウム塩として示す。)、2−プロパンスルホン酸(XLIX、ナトリウム塩として示す。)、3−ペンタンスルホン酸(I、ナトリウム塩として示す。)、4−ヘプタンスルホン酸(LII、ナトリウム塩として示す。)、1−デカンスルホン酸(XLVIII、ナトリウム塩として示す。);及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図されるスルホン化置換脂肪族化合物は、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(XXII、ナトリウム塩として示す。)、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸スルフェート(XXXV、ナトリウム塩として示す。)、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸(LIII、ナトリウム塩として示す。);及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図される他のスルホン化化合物は、2−〔(4−ピリジニル)アミノ〕エタンスルホン酸(LIV 、ナトリウム塩として示す。)、及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0033】
好ましい複素環式スルホン化化合物は、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸;及びテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−2硫酸;並びにそれらの医薬として許容される塩を含む。
【0034】
芳香族スルホン化化合物は、1,3−ベンゼンジスルホン酸(XXXVI 、2ナトリウム塩として示す。)、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸(2ナトリウム塩として示す。、XXXVII、又は2カリウム塩、XXXIX)、4−アミノ−3−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸(XLIII) 、3,4−ジアミノ−1−ナフタレンスルホン酸(XLIV);並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0035】
本発明の方法の別の態様においては、治療対象に投与される治療用化合物は担体分子に配位的に結合したスルフェート基を少なくとも一個含むか、又はその医薬的に許容しうる塩である。それ故、前記治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nは整数である]で表わすことができる。適切な担体分子及びカチオン性基は上記の物である。スルフェート基の数(“n”)は、前記の通り、前記化合物の活性を維持しながら前記化合物の意図した標的部位へのバイオディストリビューションが妨げられないように選択する。一例において、nは1〜10の整数である。他の例において、nは3〜8の整数である。先に記載したように、複数のスルフェート基を有する治療用化合物は、前記化合物がアミロイド形成性タンパク質内のHSPG結合部位に最適に作用するように離間されたスルフェート基を含みうる。
【0036】
好適な実施態様において、スルフェートに対する担体分子は低級脂肪族基(例えば、低級アルキル、低級アルケニル又は低級アルキニル)、ジサッカライド、ポリマー、ペプチド又はペプチド誘導体である。さらに、この担体は、例えば、一個又はそれ以上のアミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール又はヒドロキシ基によって置換されていてもよい。
【0037】
適切な硫酸化高分子治療用化合物の例としては、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−スチレン);ポリ(ビニル硫酸);ポリ(4−スチレン硫酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルフェート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルフェート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0038】
好ましい硫酸化ポリマーはポリ(ビニル硫酸)又はその医薬的に許容しうる塩である。
【0039】
好ましい硫酸化ジサッカライドは八硫酸蔗糖又はその医薬的に許容しうる塩である。本発明において使用を意図される他の硫酸化サッカライドは、メチル−α−D−グルコピラノシド2,3−ジスルフェート(XVI)、メチル4,6−(O−ベンジリデン−α−1)−ブルコピラノシド2,3−ジスルフェート(XVII)、2,3,4,3′,4′−スクロース・ペンタスルフェート(XXXIII)、1,3,4,6−ジ−O−ベンジリデン−1)−マンニトール2,5−ジスルフェート(XLI)、D−マンニトール2,5−ジスルフェート(XLII)、2,5−ジ−O−ベンジル−D−マンニトール・テトラスルフェート(XI,V)の酸形態;及び医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0040】
本発明において使用を意図される好ましい低級脂肪族硫酸化化合物は、エチル硫酸;2−アミノエタン−1−オール硫酸;1−プロパノール硫酸;1,2−エタンジオール2硫酸;1,3−プロパンジオール2硫酸;1,4−ブタンジオール2硫酸;1,5−ペンタンジオール2硫酸;及び1,4−ブタンジオール・モノ硫酸;並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明における使用を意図される他の硫酸化脂肪族化合物は、1,3−シクロヘキサンジオール・ジスルフェート(XI)、1,3,5−ヘプタントリオール・トリスルフェート(XIX)、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XX)、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XXI)、1,3,5,7−ヘプタンテトラオール・テトラスルフェート(XLVI)、1,3,5,7,9−ノナン・ペンタスルフェート(LI)の酸形態;及びそれらの医薬として許容されるそれらの塩を含む。本発明において使用を意図される他の硫酸化化合物は、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール・トリスルフェート(XXIV)、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール・ジスルフェート(XXIX)、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸スルフェート(XXX)2,2′−イミノエタノール・ジスルフェート(XXXI)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸ジスルフェート(XXXII)の酸形態;及びそれらの医薬として許容される塩を含む。好ましい複素環式硫酸化化合物は、3−(N−モルフォリノ)プロパン硫酸;及びテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジオール2硫酸;並びにそれらの医薬として許容される塩を含む。
【0041】
本発明の更に別の態様においてアミロイド症を治療するための医薬組成物がある。上記の様な、本発明の方法における治療用化合物はアミロイド症を阻止するために有効な量、医薬的に許容しうる担体と共に医薬組成物に調製しうる。
【0042】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は担体分子に配位的に結合したスルホネート基を少なくとも一個有する医療用化合物又はその医薬的に許容しうる塩をアミロイドの沈着を阻止するのに十分な量と、医薬的に許容しうる担体とを含んでいる。この治療用組成物は次の式
Q−[−SO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、そしてnはこの化合物の活性を維持しながら、意図する目標部位へのこの化合物の生分散が妨げられないような整数である。]で表わすことができる。
【0043】
別の態様において、本発明の治薬組成物は担体分子に共有結合したスルフェート基を少なくとも一個有する医療用化合物又はその医薬的に許容しうる塩をアミロイドの沈着を阻止するのに十分な量と、医薬的に許容しうる担体とを含んでいる。この治療用化合物は次の式
Q−[−OSO3−X+ ]n
[式中、Qは担体分子、X+ はカチオン性基、nはこの化合物の活性を維持しながら、意図する標的部位へのこの化合物のバイオディストリビューションが妨げられないような整数である]で表わすことができる。
【0044】
本発明において使用を意図される他の例示的化合物は、トレハロース・オクタスルフェート8ナトリウム塩、スクロース・オクタスルフェート8ナトリウム塩、メチル−α−D−グルコピラノシド4ナトリウム塩、及びメチルβ−D−ラクトシド・ヘプタスルフェート7ナトリウム塩;及び化合物I,XXVII-CVIII (図14〜17)であって、とりわけナトリウム・エタンスルホネート(CVII)、ナトリウム1−プロパンスルホネート(CVI)、及び1−ペンタンスルホン酸ナトリウム塩(CVIII)を含むものを含む。
【0045】
本発明は、さらに、本発明の治療用化合物にインビボにおいて変換されるプロドラッグの使用をも企図する(例えば、R. B. Silverman, 1992,“The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, Academic Press, Chp.8参照)。このようなプロドラッグは、(例えば、典型的には血液脳関門を通過しないであろう化合物が血液脳関門を通過することを許容するための)バイオディストリビューションを変更し、又はその治療化合物の薬理動態を変更するために使用されることができる。例えば、アニオン基、例えば、スルフェート又はスルホネートは、例えば、メチル基又はフェニル基によりエステル化されて硫酸又はスルホネート・エステルを作ることができる。硫酸又はスルホネート・エステルが被験体に投与されるとき、そのエステルは酵素により又は非酸素的に、還元的に又は加水分解により解製された、そのアニオン基を現す。このようなエステルは、環状であり、例えば、環式硫酸又はスルホンであることができ、又は2以上のアニオン部分が連結基を介してエステル化されることができる。例示的な環式化合物は、例えば、2−スルホ安息香酸(LV)、プロパン・スルホン(LVI)、ブタン・スルホン(LVII)、1,3−ブタンジオール環式スルフェート(LVIII)、α−クロロ−α−ヒドロキシ−O−トルエンスルホン酸スルホン(LIX)、及び6−ニトロナフタ−〔1,8−cd〕−1,2−オキサチオール2,2−ジオキシド(LX)を含む。好ましい態様においては、プロドラッグは、環式硫酸又はスルホンである。アニオン基は、解製されてその後に分解されて活性化合物を生ずる中間体化合物を現す部分(例えば、アシルオキシメチル・エステル)でエステル化されることができる。他の態様においては、プロドラッグは、スルフェート又はスルホネートの還元型、例えば、インビボにおいて上記治療用化合物に酸化されることができるチオールである。さらに、アニオン部分は、インビボにおいて能動的に輸送され、又は標的臓器に選択的に取り込まれることができる基にエステル化されることができる。このエステルは、担体部分について以下に説明するように、特定の臓器への上記治療用化合物の特異的標的化を許容するように選択されることができる。
【0046】
この医療用化合物において使用可能な担体分子としては、先に記載した担体分子、例えば、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリマーには、置換及び未置換ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物由来のポリマー及びコポリマー並びにそれらの塩が含まれる。好ましい担体分子には、低級アルキル基、ジサッカライド、ポリマー、並びにペプチド及びその誘導体が含まれる。
【0047】
本発明において有用な担体分子は、上記治療用化合物が標的臓器に選択的にデリバリーされること許容する部分を含むこともできる。例えば、治療用化合物の脳へのデリバリーが望ましい場合、担体分子は、能動又は受動輸送によりその治療用化合物を脳に標的化することができる分子(標的化分子)を含むことができる。実例として、担体分子は、例えば共にBodor に付与された米国特許第4,540,564 号及び同5,389,623 号中に記載されたような酸化還元部分を含むことができる。これらの特許は、脳に侵入することができるジヒドロピリジン部分に結合された薬物を開示しており、脳内で、それらはその、脳内に捕獲される電荷をもったピリジニウム種に酸化される。従って、薬物は脳内に蓄積する。本発明の例示的なピリジン/ジヒドロピリジン化合物は、ナトリウム1−(3−スルホプロピル)−1,4−ジヒドロピリジン(LXI)、ナトリウム2−(ニコチルアミノ)−エタンスルホネート(LXII)、及び1−(3−スルホプロピル)−ピリジニウム・ベタイン(LXIII)を含む。他の担体部分は、化合物、例えばアミノ酸又はチロキシンであってインビボにおいて受動的又は能動的に輸送されることができるものを含む。例示的化合物は、フェニルアラニルタウリン(LXIX)であってその中でタウリン分子がフェニルアラニン(大きな中性アミノ酸)に結合しているものである。このような担体分子は、インビボにおいて代謝により除去され、又は活性化合物の一部として無傷で残ることができる。アミノ酸構造擬態(及び他の能動輸送部分)も本発明において有用である(例えば、1−(アミノメチル)−1−(スルホメチル)−シクロヘキサン(LXX)) 。他の例示的アミノ酸擬態は、P−(スルホメチル)フェニルアラニン(LXXII)、P−(1,3−ジスルホプロプ−2−イル)フェニルアラニン(LXXIII) 、及びO−(1,3−ジスルホプロプ−2−イル)チロシン(LXXIV)を含む。例示的なチロキシン擬態は、化合物LXXV, LXXI及びLXXVIIを含む、多くの標的化分子が知られており、そして例えば、アジアログリコプロテイン(agialoglycoproteins)(例えば、Wu、米国特許第5,166,320 号参照)、及びレセプター仲介エンドサイトーシスを介して細胞内に輸送される他のリガンドを含む(担体分子に共有結合又は非共有結合されることができる標的化部分のさらなる例については以下を参照のこと。)。さらに、本発明に係る治療用化合物は、循環内のアミロイド形成タンパク質に結合し、そしてそれ故作用部位に輸送されることができる。
【0048】
上記の標的化及びプロドラッグ戦略は、プロドラッグとして所望の作用部位に輸送され、そして脱マスクされて活性化合物を現すことができる化合物を作るために併合されることができる。例えば、Bodor のジヒドロピリン戦略(前掲参照)は、例えば、化合物2−(1−メチル−1,4−ジヒドロニコチニル)アミドメチル−プロパンスルホン(LXXI)におけるように、環式プロドラッグと併合されることができる。
【0049】
一実施態様において、前記医薬組成物中の治療用化合物は、スルホン化ポリマー、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン);ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(4−スチレンスルホン酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルホネート誘導体;ポリ(アクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルホネート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルホネート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0050】
別の実施態様において、前記医薬組成物中の治療用化合物は硫酸化ポリマー、例えば、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−アクリロニトリル);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパン硫酸−コ−スチレン);ポリ(ビニル硫酸);ポリ(4−スチレン硫酸ナトリウム);ポリ(アクリル酸)のスルフェート誘導体;ポリ(アクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;ポリ(メタクリル酸メチル)のスルフェート誘導体;及びポリ(ビニルアルコール)のスルフェート誘導体;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0051】
アミロイド症を治療するための本発明の医薬組成物中に含有するために好ましい治療用化合物としては、ポリ(ビニル硫酸);ポリ(ビニルスルホン酸);八硫酸蔗糖;部分又は完全スルホネート化蔗糖;エチル硫酸;エタンスルホン酸;2−アミノエタンスルホン酸(タウリン);2−アミノエタン硫酸;システイン酸(3−スルホアラニン又はα−アミノ−β−スルホプロピオン酸);1−プロパンスルホン酸;プロピル硫酸;1,2−エタンジスルホン酸;1,2−エタンジ硫酸;1,3−プロパンジスルホン酸;1,3−プロパンジ硫酸;1,4−ブタンジスルホン酸;1,4−ブタンジ硫酸;1,5−ペンタンジオール2硫酸;4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸;テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジスルホン酸;3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸;並びにそれらの医薬的に許容しうる塩が挙げられる。
【0052】
本発明の方法において、被験体におけるアミロイドの沈着が本発明の治療用化合物をその被験体に投与することにより阻害される。被験体(subject)なる用語はアミロイド症が起りうる生体を包含するものとする。治療対象の例として、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェネック種が挙げられる。本発明の組成物の被験体への投与は、公知の方法を用い、その治療対象内でのアミロイドの沈着を阻止するのに有効な投与量で期間実施される。治療効果をあげるために必要な治療用化合物の有効量は、治療対象の臨床部位に既に沈着しているアミロイドの量、治療対象の年齢、性別及び体重、その治療対象におけるアミロイドの沈着を阻止する前記治療用化合物の能力などの要因のよって変わりうる。治療に対して最適な応答が得られるように投与量プログラムを調整可能である。例えば、投与量を数回に分けて毎日投与したり、治療状況の緊急性による指示に従って投与量を減らすことができる。本発明を限定するわけではないが、本発明の治療用化合物[例えば、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム)]に関する有効投与量の範囲は、例えば、5〜 500mg/kg−体重/日である。水性組成物においては、活性化合物(すなわち、アミロイド沈着を阻害することができる治療用化合物)の好ましい濃度は、5〜500mM 、より好ましくは10〜100mM 、そしてさらにより好ましくは20〜50mMである。タウリンについては、特に好ましい水性濃度は10〜20mMである。
【0053】
実施例において示すように、本発明の治療用化合物は経口投与された場合に有効である。それ故、好ましい投与経路は経口投与である。代わりに、前記活性化合物を他の適切な経路、例えば、皮下、静脈内、腹腔内等の投与(例えば、注射によって)投与することも可能である。投与経路により、前記活性化合物を不活性化しうる酸又は他の自然環境から保護するための材料で前記活性化合物を被覆してもよい。
【0054】
本発明に係る化合物は、インビボにおける適正な分布を保証するために配合されることができる。例えば、血液脳関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療用化合物がBBB を通過することを保証するために、それらは、例えば、リポソームに配合されることができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811 号;同第5,374,548 号;及び同第5,399,331 号を参照のこと。リポソームは、特定細胞又は臓器に選択的に輸送される1以上の部分(標的化部分)を含み、これにより、標的化されたドラッグ・デリバリーを提供することができる(例えば、V. V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29: 685 を参照のこと。)。例示的な標的化部分は、フォレート又はビオチン(例えば、Low 他への米国特許第5,416,016 号参照);マンノサイド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys, Res. Commun, 158 : 1038);抗体(P. G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett, 357: 140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob, Asents Chemother, 39; 180);界面活性剤プロテインAレセプター(Briscoe et al. (1995) Am, J. Physiol, 1233:134) ;gp120 (Shreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269: 9090) を含む;またK. Keinaneu; M. L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346: 123 ら j. J. Killion; I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4: 273を参照のこと。好ましい態様においては、本発明の治療用化合物は、リポソームに配合され;より好ましい態様においては、リポソームは標的化部分を含む。
【0055】
デリバリー及びインビボ・ディストリビューションは、本発明に係る化合物のアニオン基の変更によっても影響を受けることができる。例えば、アニオン基、例えばカルボキシレート又はテトラゾール、望ましい薬理動態、バイオディストリビュート性又は他の特性をもつ化合物を提供するために、スルフェート又はスルホネート部分の代わりに、又はそれに加えて使用されることができる。例示的なテトラゾール置換化合物は、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド(LXIV)、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)(LXV)、1H−テトラゾール(LXVI) 、5−フェニル−1H−テトラゾール(LXVII)、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール(LXVIII) その他;並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。例示的なカルボキシレート置換化合物は、カルボン酸、例えばアジピン酸、アゼラン酸(azelaic acid) 、3,3−ジメチルグルタル酸、スベリン酸(suberic acid) 、コハク酸その他並びに医薬として許容されるそれらの塩を含む。
【0056】
非経口投与以外によって前記治療用化合物を投与するためには、その化合物の不活性化を防止するための材料で被覆したり、その材料と一緒に投与する必要になることがある。例えば、前記治療用化合物を適当な担体、例えば、リポソーム又は希釈剤と共に治療対象に投与することができる。医薬的に許容しうる希釈剤としては、食塩水及び緩衝水溶液が挙げられる。リポソームには水中油中水形CGF エマルジョン及び従来形のリポソームが含まれる[ストレジャン等、J. Neuroimmunol.,7,27(1984)]。
【0057】
前記治療用化合物は非経口又は腹腔内投与することも可能である。分散系製剤はグリセロール、液状ポリエチレングリコール及びそれらの混合物並びに油で調製できる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの製剤に保存剤を添加して微生物の繁殖を防止することも可能である。
【0058】
注射で用いるのに適した医薬組成物としては、無菌状態の注射液又は分散系製剤を用時調製するための滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散系製剤及び滅菌粉剤が挙げられる。すべての場合において、前記組成物は滅菌されていて、しかも注射が容易な程度に流動的でなければならない。それは製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、また、細菌やかび等の微生物による汚染作用に対して保存されなければならない。担体は溶媒又は分散媒であって、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物、並びに植物油が含まれる。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材を使用することにより、分散系製剤の場合には、必要とされる粒径の維持により、また、界面活性剤を用いることによって保持しうる。微生物の作用を防止することは種々の抗菌および抗かび剤、例えば、パラベン、クロロプタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成可能である。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、塩化ナトリウム、又はマンニトール若しくはソルビトールのようなポリアルコールを組成物中に使用するのが好ましい。吸収を遅延させる添加物、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを注射用組成物中に含めることによって前記注射用組成物の長期にわたる吸収を達成しうる。
【0059】
無菌の注射液は、前記治療用化合物を、必要に応じて、前記の成分の一種又はそれ以上の組み合わせと共に適当な溶媒に添加し、次いでろ過滅菌することによって調製しうる。一般に、分散系製剤は、塩基性分散媒と上記の成分から必要に応じて選択した物を含有する滅菌担体中に前記治療用化合物を加えることによって調製される。無菌注射液を調製するための滅菌粉剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、前記活性成分(即ち、前記治療用化合物)と所望の追加成分との粉剤が、それらの成分を含む事前に滅菌ろ過した溶液から得られる。
【0060】
前記治療用化合物は、例えば、不活性の希釈剤又は同化可能で食べられる担体と共に経口投与しうる。前記治療用化合物とその他の成分は硬または軟殻ゼラチンカプセルに封入したり、打錠したり、又は治療対象の食事中に直接添加することも可能である。経口治療投与には、前記治療用化合物を賦形剤とあわせて、経口投与可能な錠剤、バッカル剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁系製剤、シロップ、ウェハ等の形態で使用できる。そのような治療のために有用な組成物中における前記治療用化合物の量は適切な投与量が得られる様な量である。
【0061】
投与を容易にしかつ投与量を均一にするためには非経口組成物を投薬量単位の形態にすることが特に有益である。本明細書で使用する投薬量単位の形態とは治療対象用の単位投与量として適している物理的に別個のユニットを示し、各ユニットは所定の治療効果を挙げるために計算された量の治療用化合物を必要な医薬用担体と共に含有している。本発明の投薬量単位の形態に対する仕様は(a)前記治療用化合物のユニークな特性及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)治療対象におけるアミロイドの沈着を治療するためにそのような治療用化合物を製剤にする技術にもともと付随している制約によって定められ、又それらにだけ直接依存するものである。
【0062】
活性化合物は、被験体においてアミロイド沈着を阻止するために十分な治療的有効量において投与される。“治療的有効量”は好ましくは、少なくとも約2%程、より好ましくは少なくとも約40%程、さらにより好ましくは少なくとも約60%程さらにより好ましくは少なくとも約80%程、非処置被験体に対して、アミロイド沈着を阻止する。化合物がアミロイド沈着を阻止する能力は、ヒト疾患においてアミロイド沈着を阻止することにおける効果を予測することができる動物モデル系、例えば、実施例におけるモデル系において評価されることができる。あるいは、化合物がアミロイド沈着を阻止する能力は、例えば、先に記載したような結合アッセイを使用してアミロイド形成性タンパク質と基底膜構成成分との間の相互作用を阻止する化合物の能力を調べることにより評価されることができる。
【0063】
本発明の方法はアミロイドの沈着が生ずる疾病に付随するアミロイド症を治療するために有用である。臨床的には、アミロイド症は原発性、続発性、家族性又は局在性である。アミロイド症はそのアミロイドに含まれるアミロイド形成性タンパク質のタイプによって分類されてきた。限定するわけではないが、阻止しうる、アミロイド形成性タンパク質によって特定したアミロイド症の例は以下の通りである(アミロイド形成性タンパク質の後の括弧内は付随する病名):β−アミロイド症(アルツハイマー病、ダウン症、遺伝性脳出血アミロイド症[オランダ人]);アミロイドA(反応性[続発性]アミロイド症、家族性地中海熱、ジンマ疹や難聴を伴う家族性アミロイド腎症[マックル−ウエルズ症候群];アミロイドκL−鎖又はアミロイドλL−鎖(突発性[原発性]、骨髄腫又はマクログロブリン血症が付随する);Aβ2M(慢性血液透析);ATTR(家族性アミロイド多発性神経障害[ポルトガル人、日本人、スウェーデン人];家族性アミロイド心筋症[デンマーク人]、局在性心臓アミロイド、全身性老年アミロイド症);AIAPP 又はアミリン(成人発症糖尿病、インスリノーマ);心房ナトリウム排泄増加因子(局在性心房アミロイド);プロカルシトニン(甲状腺の骨髄種);ゲルソリン(家族性アミロイド症[フィンランド人]);シスタチンC(アミロイド症を伴った遺伝性脳出血アミロイド症)[アイスランド人]); AApoA−I(家族性アミロイド症多発性神経障害)[アイオワ州]; AApoA−II(マウスにおける老化促進);フィブリノーゲン結合アミロイド;リゾチーム結合アミロイド;及びAScr又は PrP−27(スクレイピー、クロイツフェルド−ヤコブ病、ゲルストマン−ストラウスラー−シャインカー症候群;ウシ海綿状脳炎)。
【0064】
本明細書に記載された方法において使用される硫酸化及びスルホン化された化合物は、商業的に入手可能であり(例えば、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO,又はAldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)そして/又は本分野において知られた標準的な技術により合成されることができる。(例えば、Stone, G. C.II. (1936) J. Am. Chem. Soc., 58: 488 を参照のこと。)。一般に、硫酸化化合物は、それらの対応アルコールから合成された。XIX とXXに対応するアルコールが、それぞれ商業的に入手可能である1,3−アセトンジカルボン酸とトリエチル・メタントリカルボン酸の還元により得られた。
【0065】
本発明のある実施態様において、コンゴレッドは本発明の方法で使用されるスルホン化化合物から除外される。
【0066】
本発明のある実施態様において、次の硫酸化化合物は本発明の方法において使用されることから除外される:硫酸デキストラン500、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、八硫酸デキストラン、κ−カラギーナン、ペントサンポリスルフェート、及び/又はヘパラン。
【0067】
本発明のある実施態様において、本発明の組成物及び方法は、アミロイド形成性タンパク質がプリオンタンパク質、AScr ( PrP−27としても知られている)、のプロテアーゼ耐性形でないアミロイド症でアミロイドの沈着を阻害するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これらの実施例を本発明を更に限定するものと考えてはならない。本明細書において引用されているすべての文献及び特許公報の内容を引用により本明細書中に取り込む。実施例に記載されたマウス・モデルにおける本発明の治療用化合物の効果の立証は、ヒトにおける効果を予言するものである。
【0069】
以下の実験例では、十分に特徴付けられたアミロイド症のマウスモデルが使用された。このインビボ系において、動物は炎症性刺激及びアミロイド増強因子を与えられる。急性アミロイド症(即ち、短期間でのアミロイド沈着)のための炎症性刺激はAgNO3 である。慢性アミロイド症(進行中のアミロイド沈着)のための炎症性刺激はリポポリサッカライド(LPS)である。マウスの脾臓におけるアミロイドの沈着(AAアミロイド)は処理を行い又は行なわずに測定した。
【実施例1】
【0070】
動物
マウスは全てCD系(チャールズリバー、モントリオール、ケベック州)で、体重は25−30gであった。
【0071】
動物の治療
全ての動物には背中にAgNO3 (0.5ml、2%溶液)を皮下的に、かつアミロイド増強因子 (AEF) 100μgを静脈内投与した。アミロイド増強因子の調製方法は既にM.A.アクセルラド等、(「アミロイド増強因子の更なる特徴化」、Lab. Invest. 47, 139-146 (1982) )に記載されている。動物を幾つかの群に分け、そのうちの一つの群を未治療対照群とし、6日後に殺した。残りの動物を、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)(PVS)を腹腔内注射により12時間ごとに50mg、40mg、20mgまたは10mgずつ投与した群と、八硫酸蔗糖アンモニウム塩を腹腔内注射により8時間ごとに73mg又は36.5mgずつ投与した群とに分けた。生きていた動物を治療5日目に殺した。すべての場合に於いて、 PVSまたは SOAを滅菌水性担体中に溶解した。
【0072】
組織の調製
実験の終了時に前記動物を頸部脱臼によって殺し、脾臓、肝臓及び腎臓をA.W.ライオン等(「ネズミ脾臓AAアミロイドの誘導中における基底膜構成成分の同時沈着」、Lab. Invest., 64, 785-790 (1991))に記載されているように96%エタノール、1%氷酢酸及び3%水中で固定した。固定に引き続いて、組織をパラフィン中に包埋したのち、H.パヒトラー等(「直接綿染色条件下におけるアミロイドへのチアゾール系染色剤の適用:組織化学データと化学データとの相関性」、Histochemistry, 77, 431-445 (1983))に記載されているように、8〜10ミクロンの薄片を切り出してから、後染色することなくコンゴレッドにより染色した。偏光下で観察した組織の薄片をアミロイドによって占められている脾臓の百分率の画像分析によって評価した。八硫酸蔗糖を用いた実験の場合、組織を SAAタンパク質に対する抗体で免疫染色した(A.W.ライオン等、Lab. Invest., 64, 785-790(1991) に記載されている)のち、上記免疫染色した薄片をアミロイドによって占められている組織の百分率の画像分析によって評価した。
【0073】
動物の生存性
対照動物はすべて一匹の例外もなく実験中生存した。治療を受けている動物の場合、八硫酸蔗糖を73mg注射で与えられた動物は実験の終了前に全部死んだ。八硫酸蔗糖を36.5mg注射で与えられた動物は全部生き残った。各投与群で PVS(分子量: 900〜1000)を投与された動物のうち、約半分から三分の一が実験の終了前に死んだ。実験の終了前に死んだ動物の場合、死因は全て腹腔内出血をそのまま放置しておいたためであった。
【0074】
アミロイドの沈着に対する薬剤の効果
36.5mg/注射における八硫酸蔗糖の効果を下記表1に示す。対照動物においてアミロイドによって占められている脾臓の平均面積は 7.8%± 1.5%S.E.M.(平均値の標準誤差)であった。前記治療剤の投与を受けた動物に於いて、この平均面積は 3.2%± 0.5%S.E.M.であった。この違いはp≦0.02で有意であった。
【表1】
PVS の場合におけるデータを図1に示す。すべての投与量においてアミロイドの沈着に対して卓越した阻止があり、この効果は投与量に依存することが示された。有効な投与量の範囲は5〜500mg /kg体重/日である。
炎症が付随するアミロイド症の前駆物質、 SAA、のプラズマ中濃度を予備的に評価すると、 PVSを投与した動物と投与しない動物との間には差がないことが判明した。
【0075】
本発明の治療剤の投与方法は前記動物の死亡率に影響があったと考えられる。循環系に入るのを容易にするための大きな膜面が得られるので腹腔内注射を選択した。しかしながら、ヘパランのように、本発明の化合物は抗凝結性を示す。腹膜を通して繰り返し注射することにより激しい出血をおこし、最終的には腹腔内が血液で一杯になり、失血によって死に至った。皮下注射は有効化合物がゆっくりと吸収されることになると思われるが、この投与経路が死を起こすほど出血を生じさせるとはあまり考えられない。前記化合物の経口投与を後の実験(後記参照)で実施した。
【実施例2】
【0076】
既に記載したように(R.キズレフスキー及びL.ブードロー、「アミロイド沈着の速度論:I.アミロイド増強因子及び脾摘出の影響」、"Lab. Invest.", 48, 53-59 (1983))、体重25−30gのスイスホワイトマウスにアミロイド増強因子(AEF)及びAgNO3 を与えてアミロイド症を誘導した。24時間後にマウスを三つの群に分けた。一つの群を対照群として用い、標準的な実験室用マウスフード及び水道水を自由に摂取させた。二番めの群には標準的なフードを与えたが、その飲料水にはポリ(ビニルスルホン酸)ナトリウム塩(PVS)を20mg/ml添加した。三番目の群は PVSを50ml/mg含む飲料水を摂取した。水分の摂取量は両群とも同じであった。動物を全て実験6日目に殺し、それらの脾臓を採取し、薄片を切り出す予備処理を行ない、脾臓薄片をコンゴレッドで染色し(H.パヒトラー等、「直接綿染色条件下におけるアミロイドへのチアゾール系染色剤の適用:組織化学データと化学データとの相関性」、Histochemistry, 77, 431-445 (1983))、次いでアミロイド占有面積百分率を画像分析装置及びプログラムによって測定した(MCID M2 、イメージング・リサーチ社、ブロック大学、セントキャサリーンズ、オンタリオ、カナダ)。図4に示す通り、 PVSの経口投与は投与量に依存した形でアミロイドの沈着を妨げる。
【実施例3】
【0077】
PVS が前記アミロイド前駆物質の肝臓における合成を阻止しているのでアミロイドの沈着が生じないのは前駆物質の貯留がないことによると考えられることから、本実験の過程における前記アミロイド前駆物質(SAA)の血中濃度に対する PVSの影響を調べた。上記の通り AEF+AgNO3 を与えてから、動物を二つの群に分けた。群1にはそれ以上何も投与しなかった。24時間後から、群2には12時間ごとに5日間腹腔内注射により PVSを50mg投与した。この実験の間 SAAの濃度をグラフにプロットするために、各動物(対照及び実験)の尾から毎日採血した(≒25μl)。これらのサンプル中の SAA濃度は固相ELISA(酵素免疫)法によって測定した(L.ブリセット等、J. Biol. Chem., 264, 19327-19332 (1989) に記載)。結果を図5に示す。丸印は PVS−投与マウスのデータを表わし、一方三角印は非投与動物のデータを示す。 SAA濃度は投与及び非投与動物において同等であり、 PVSが SAAの合成を防止することによってその効果を発揮するのではないことを示している。
【実施例4】
【0078】
上記各実験例において、 PVSによる治療はアミロイド誘導プロトコル(計画)に入ってから24時間経過後から開始された。これは、通常患者が既に完全にアミロイド症になってしまっている臨床状態を反映していない。より実験的な臨床状態に似せるため、アミロイドの沈着が既に開始していた後で PVSによる治療を始める別の一連の実験を行なった。上記のとおり、動物に AEF+AgNO3 を投与してから7日間水道水で飼育した後、二つの群に分けた。群1には標準フードと水道水を与え、群2に関しては標準フードはそのままであったが、飲料水に PVSを50mg/ml添加した。アミロイドが既に生じてしまった後でのアミロイドの沈着の進行に対する PVSの効果を評価するために、各群において動物を5匹ずつ7,10,14、及び17日目に殺した。それらの脾臓を上記の通り処理して評価した。データを図6に示す。対照動物(三角印)ではアミロイドが14日間沈着し続けたが、その後アミロイドの量は減少し始めた。この後者の減少はAgNO3 、炎症性刺激、の注射を一回しか行なわなかったという事実による可能性が最も大きいが、14日目以降では SAA濃度は減少することが知られている(R.キズレフスキー、L.ブードロー及びD.フォスター、「アミロイド沈着の速度論:II. ジメチルスルホキシド及びコルヒチンによる治療の効果」、"Lab. Invest.",48,60-67 (1983))。前駆物質がない場合には、アミロイドが更に沈着することは有り得ず、既に存在している沈着物が動くようになる(R.キズレフスキー及びL.ブードロー、「アミロイド沈着の速度論:I. アミロイド増強因子及び脾摘出の影響」、"Lab. Invest.",48,53-59 (1983))。逆に、治療した群の動物(丸印)ではPVS を投与してから3日以内にアミロイドの沈着が停止した。これは PVSが進行中のアミロイド沈着を阻害するためにも有効であることを示している。
【実施例5】
【0079】
炎症の程度と SAAの血中濃度を維持してより長期にわたる実験期間中アミロイドが沈着し続けるように、炎症性刺激の内容を変更した。炎症を維持するために、動物にリポポリサッカライド(LPS, 20μg)+AEF を0日目に投与し、 LPSを2日目毎に腹腔内注射により投与した。実験例4に記載したように、7日目に動物を二つの群に分けた。実験の過程を通してのアミロイドの評価は実験例4に記載したように行なった。データを図7に示す。対照群(三角印)は17日の全期間を通じてアミロイドを沈着し続けた。 PVS投与を受けた群は14日目までにアミロイドの沈着が停止したのがよく解る(丸印及び破線)。17日目のデータは、この期間では動物を一匹除外したので、各群当たり4匹の動物のデータを示している。この特定の動物のアミロイド量が他の全部のデータ点(治療の有無にかかわらず、21%)からあまりにもかけ離れていたので、上記の判断は統計学的に有効な方法であったと考えられる。この一匹のデータを入れると、得られる曲線は点線及び上記以外の丸印で表わしたようになる。なお、 PVSの投与を受けた動物は実験が進行するに連れてひどい下痢を起こし始めたことを付記する。
【実施例6】
【0080】
本実験例において、アミロイド症を阻止するために別のスルホン酸化化合物、エタンモノスルフェート、を使用した。エタンモノスルフェートナトリウム塩(EMS)は構造的には PVSのモノマー単位である。実験例5同様、動物に LPS+AEF を投与したが、7日目に EMSを治療剤として飲料水に入れて使用した。7日目に、動物を三つの群に分けた。群1は未治療群である。群2には EMSを 2.5mg/ml添加した飲料水を与えた。群3には EMSを6mg/ml添加した飲料水を与えた。7,10,14及び17日目に動物を殺した。これらの動物は胃腸障害をおこさなかった。これらのデータを図8に示す。 EMSを6mg/ml添加した飲料水を与えられた動物(四角印)は14日目以降アミロイドの沈着が停止した。 EMSを 2.5mg/ml投与された動物(丸印)の場合は、14日目にアミロイドの沈着速度が減少したが17日目までは継続せず、治療効果が頓挫してしまったようにみえる。
【実施例7】
【0081】
アルツハイマー病のアミロイド前駆タンパク質(ベータAPP)へのHSPGの結合に対する PVSの影響
ベータAPP に対する硫酸ヘパランプロテオグリカンの結合をS.ナリンドラソラサック等(「アルツハイマー病のベータ−アミロイド前駆タンパク質と基底膜状態の硫酸ヘパランプロテオグリカンとの間の高親和性相互作用」、J. Biol. Chem., 266, 12878-12883 (1991))に記載されているような酵素免疫測定法を用いて評価した。ポリスチレン製マイクロプレート (Linbro、フロー・ラボラトリーズ社)を pH9.6の20mM NaHCO3 緩衝溶液中にβ−APP を1μl/ml含有する溶液 100μlで被覆した。4℃で一晩インキュベートした後、プレートを pH7.5の0.15M NaCl, 20mM Tris-Cl (TBS)で洗浄した。ついでプレートをウシ血清アルブミン(BSA)を1%含有する TBS溶液 150μlと共に2時間37℃でインキュベートしてウエルの疎水性の残っている面を覆った。Tween20 を0.05%(w/v)含有する TBS(TBS-Tween)で洗浄した後、TBS-Tween 中にHSPGを様々な濃度で含有する溶液 100μlを単独で添加するか又はTris−緩衝食塩水(TBS)若しくはリン酸−緩衝食塩水(PBS)中に PVSを 500μl/ml含有する溶液を前記結合測定法に含ませてβ−APP へのHSPGの結合に対する PVSの影響を調べた。プレートを4℃で一晩放置してHSPGをβ−APP へ最大限結合させた。次にプレートを再度洗浄してから、上記の通り BSAを含有する TBS-Tween中にアルカリ性フォスファターゼ結合ヤギ抗−ウサギIgG を含む溶液(希釈度:1:2000)100μlと共にさらに2時間インキュベートした。最後に、更に洗浄した後、p−ニトロフェニルフォスフェート2mg/ml、ZnCl2 0.1mM, MgCl21mM及びグリシン 100mMを含有するpH10のアルカリ性フォスファターゼ基質溶液(100μl)を添加して結合した抗体を検出した。プレートを室温で15−120 分間放置した。2M NaOHを加えて酵素反応を停止した。遊離したp−ニトロフェニルの吸収を 405nmでTitertek Multiscan/MCC 340(フロー・ラボラトリーズ社)によって測定した。HSPGインキュベーション工程を省略したブランクウエルの吸収値Aを総吸収値A405 から差し引いた後の値によって結合したHSPGの量を求めた。HSPGとベータ−APP との結合に対する PVSの影響を図2(TBS中)及び図3(PBS中)に示す。この化合物によって約30−50%の結合阻害が生ずることが示されている。
【実施例8】
【0082】
実験例1と2に記載されているようにAgNO3 とアミロイド増強因子とによってマウスに急性アミロイド症を起こした。24時間後に、動物を一つの対照群と六つの試験群に分けた。対照群には標準的な実験室用マウスフード及び水道水を自由に摂取させた。試験群には標準的なフードを与えたが、それらの飲料水には次の6種類の化合物50mMを1種類ずつ含んでいた:エタンスルホン酸ナトリウム塩、2−アミノ−エタンスルホン酸ナトリウム塩(タウリン)、プロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩、プロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩、又はブタン−1,4−ジスルホン酸ナトリウム塩。水の摂取量はすべての群でほぼ同等であった。6日後に、動物を殺し、脾臓を実験例2に記載したように処理した。予備的に分析するために、治療した動物と対照動物との間のアミロイド沈着の差を見るために脾臓の薄片を顕微鏡下観察した。
【0083】
観察結果はプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩又はプロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩で治療した動物が対照動物よりアミロイドの沈着が少なかったことを示した。これらの急性アミロイド症条件の下では、エタンスルホン酸ナトリウム塩、タウリンナトリウム塩又はブタン−1,4−ジスルホン酸ナトリウム塩で治療した動物は対照動物よりアミロイドの沈着が少ないとは観察されなかった。しかしながら、これらの化合物も他の条件下では効果を示す可能性が有り、例えば、エタンスルホン酸ナトリウム塩は慢性アミロイド沈着を阻害し(実施例6参照)、そしてタウリンは他の濃度において急性アミロイド沈着を阻害することが観察されている(実験例9参照)。
【0084】
本実験例はスルホン化低級脂肪族類、例えば、プロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩、エタン−1,2−ジスルホン酸ナトリウム塩及びプロパン−1,3−ジスルホン酸ナトリウム塩が急性アミロイド形成性の系においてアミロイドの沈着を阻害しうることを示している。
【実施例9】
【0085】
実施例8に説明した予備的結果を考慮して、急性アミロイド沈着に対する硫酸化又はスルホン化化合物のパネルの効果を決定するために、さらなる実験を行った。急性アミロイド症は、実施例1と2に記載したようにマウスにおいて引き起こされた。24時間後、動物を対照群とテスト群に分けた。対照群には、標準的な実験マウス・フード及び水道水を自由に摂取させた。テスト群には標準的なフードを与えたが、それらの飲料水は以下の表2中に列記する化合物20又は50mMを含んでいた(表2中に列記したWAS 化合物の化学構造を図9と10に示す。)。1の化合物、タウリンを、5mM,10mM,20mM及び50mMの濃度においてテストした。全ての化合物を1.0 %スクロースを含む水に溶解した。水の摂取は、全ての群においてほぼ同等であった。6日後に、動物を殺し、そしてそれらの脾臓を実施例2に記載したように処理した。
結果を以下の表2に要約する。
【表2】
【0086】
上記結果は、1,2−エタンジオール・ジスルフェート又はナトリウム1,3−プロパンジオール・ジスルフェートにより処置された動物が、20mMにおいてアミロイド沈着において少なくとも約65%の減少、そして50mMにおいてアミロイド沈着において少なくとも約90%の減少をもっていたことを示している。ナトリウム1,4−ブタンジオール・ジスルフェート(50mM)、ナトリウム1,5−ペンタンジスルホネート(50mM)、タウリン(ナトリウム2−アミノ−エタンスルホネート)(10〜20mM)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパン・スルホネート(III)(50mM)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホネート(IV)(20mM)、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)(VI)又はそのナトリウム塩(VII)(50mM)、ナトリウム・テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド−3,4−ジスルフェート・トリヒドレート(X)、ナトリウム4−ヒドロキシブタン−1−スルホネート(VIII) (50mM)、ナトリウム1,3,5−ペンタントリオール・トリスルフェート(XIX)(20と50mM)、硫酸水素2−アミノエチル(XXV)(20と50mM)、又はインジゴ・カルミン(XXVI) (50mM)に処理された動物は、非処理対照動物に比較してアミロイド沈着において少なくとも約40%の減少をもっていた。タウリンは、本実施例において10〜20mMの濃度において有効であったが、5mM又は50mMにおいてはより小さく有効であった(実施例8も参照のこと。)。
【0087】
特定の硫酸化又はスルホン化化合物は、使用された条件下でアミロイド沈着量の減少において有効でなかったが、他の態様においては有効であることができる。初期のインビトロ試験は、硫酸デルマタンとコンドロイチン6−スルフェートが、HSPGへのベータ・アミロイド前駆体タンパク質の結合を妨害しないことを示した。ナトリウム(±)−10−カンファースルホネート(XIII) 、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2ナトリウム塩(XII)及び2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、2カリウム塩(XI) を上記マウス・モデルにおいてテストし、そして表2中に示すように、アミロイド沈着を減少させることが見られなかった。
【実施例10】
【0088】
本実施例において、本発明の方法において使用される2つの化合物の代表的な合成について説明する。
【0089】
ナトリウム・エタン−1,2−ジスルホネート
水(225 ml)中1,2−ジブロモエタン(37.6g、0.20モル)と亜硫酸ナトリウム(63.0g、0.5 モル)の混合物を、20時間還流温度に加熱した。この混合物を冷蔵庫内で冷却した後に、結晶を集めた。粗生成物を、水−エタノールから繰り返し再結晶化した。微量の無機塩を、少量の酸化銀(I)と水酸化バリウムでその水溶液を処理することにより除去した。この塩基性溶液を、Amberlite-120イオン交換樹脂で中和し、そしてAmberlite-120 (ナトリウム型)イオン交換樹脂で3回処理した。水を除去後、その生成物を水−エタノールで再結晶化して表題の化合物(30.5g)を得た。
【0090】
ナトリウム1,3−プロパンジスルホネート
上記化合物を、Stone, G. C. H. (1936) J. Am. Chem. Soc., 58: 488 中に記載された方法の変法により合成した。1,3−ジブロモプロパン(40.4g、0.20モル)を、48時間還流温度において水中の亜硫酸ナトリウム(60.3g、0.50モル)で処理した。無機塩(臭化ナトリウムと亜硫酸ナトリウム)を、水酸化バリウムと酸化銀(I)による得られた反応混合物の連続処理により除去した。次にこの溶液をAmberlite-120 (酸型)で中和し、そしてNorit-Aで脱色した。バリウム・イオンを、Amberlite-120 (ナトリウム型)イオン交換樹脂による上記水溶液の処理により除去した。溶媒を、ロータリー・エバポレーター上で除去し、そして粗生成物を数回水−エタノールから再結晶化して表題の化合物(42.5g)を得た。少量の含有エタノールを最小量の水にそれら結晶を溶解することにより除去し、そして次にその溶液を蒸発乾固させた。純粋な生成物をさらに24時間56℃において高真空下で乾燥させた:融点>300 ℃; 1HNMR (D2O)8;3.06−3.13(m,4H,H−1及びH−3)、2.13−2.29(m,2H,H−2);13C NMR(D2O)8:52.3(C−1及びC−3)、23.8(C−2)。
【0091】
均等
当業者は、単なる日常的な実験作業により、本明細書に記載した具体的な手順に対する無数の均等な手順を認識し又は想到しうる。このような均等も本発明の範疇に入ると考えられ、以下の特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1はマウス脾臓におけるインビボAAアミロイド沈着に対する腹腔内投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示す棒グラフである。
【図2】図2はトリス緩衝食塩水(TBS)中におけるβ−APP への硫酸ヘパリンプロテオグリカンの結合に対するポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。
【図3】図3はリン酸緩衝食塩水(PBS)中におけるβ−APP への硫酸ヘパリンプロテオグリカンの結合に対するポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。
【図4】図4はマウス脾臓内におけるインビボAAアミロイド沈着に対する経口投与ポリ(ビニルスルホネート)の効果を示す棒グラフである。
【図5】図5はポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の投与を受けている動物(丸印)と対照動物(三角印)に関するアミロイド前駆体、SAA 、の経時血中濃度を示すグラフである。
【図6】図6はマウスを治療する前に既にアミロイドの沈着が存在する場合におけるマウス脾臓内のAAアミロイド沈着の進行に対する経口投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印は治療した動物を示す。
【図7】図7は実験の過程を通じて炎症性刺激を維持したときの脾アミロイド沈着に対する経口投与ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印は治療した動物を示す。
【図8】図8は生体内AA脾アミロイド沈着に対する経口投与エタンモノスルホネートナトリウム塩(EMS)の効果を示すグラフである。三角印は対照動物を示し、丸印はEMS を 2.5mg/ml含む飲料水を与えられている動物、さらに四角印はEMS を6mg/ml含む飲料水を与えられている動物を示す。
【図9】図9は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図10】図10は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図11】図11は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図12】図12は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図13】図13は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図14】図14は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図15】図15は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図16】図16は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【図17】図17は、本明細書中に説明され又は本発明における使用を企図される化合物の化学構造を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体においてアミロイド沈着を阻害をする方法であって、その被験体に、有効量の、担体分子に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物、又はその医薬として許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記治療用化合物が、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン基がスルホネート基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療用化合物が、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸、1,5−ペンタンジスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用化合物が、1−ブタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、3−ペンタンスルホン酸、4−ヘプタンスルホン酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用化合物が、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸又は医薬として許容されるその塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アニオン基がスルフェート基である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療用化合物が、2,3,4,3′,4′−スクロース8硫酸、又は医薬として許容されるその塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記治療用化合物が、1,3,5−ペンタン3硫酸、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸、並びにそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記アニオン基がテトラゾール基である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用化合物が、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
前記担体が標的化部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療用の化合物が経口投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体分子が、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基及びそれらの組合せから成る群より選ばれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体分子が脂肪族基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1,3,5−ペンタン3硫酸又はその塩を医薬として許容される担体中に含む組成物。
【請求項19】
3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれた化合物を医薬として許容される担体中に含む組成物。
【請求項20】
被験体におけるアミロイド沈着の阻害において使用される組成物であって、担体に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物であって、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、治療用化合物、又は医薬として許容されるその塩、並びに医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項21】
前記治療用化合物が、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸、又はその医薬として許容されるその塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記治療用化合物が、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸並びにそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
患者においてアミロイド沈着を阻害するための医薬の製造における、担体に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物の使用。
【請求項26】
前記治療用化合物が、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記アニオン基がスルホネート基、スルフェート基及びテトラゾール基の中の1である、請求項25に記載の使用。
【請求項1】
被験体においてアミロイド沈着を阻害をする方法であって、その被験体に、有効量の、担体分子に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物、又はその医薬として許容される塩を投与することを含む方法。
【請求項2】
前記治療用化合物が、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アニオン基がスルホネート基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療用化合物が、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸、1,5−ペンタンジスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、4−ヒドロキシブタン−1−スルホン酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用化合物が、1−ブタンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、3−ペンタンスルホン酸、4−ヘプタンスルホン酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用化合物が、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸又は医薬として許容されるその塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アニオン基がスルフェート基である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療用化合物が、2,3,4,3′,4′−スクロース8硫酸、又は医薬として許容されるその塩である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記治療用化合物が、1,3,5−ペンタン3硫酸、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸、並びにそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記アニオン基がテトラゾール基である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用化合物が、3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
前記担体が標的化部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療用の化合物が経口投与される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体分子が、炭水化物、ポリマー、ペプチド、ペプチド誘導体、脂肪族基、脂環式基、複素環式基、芳香族基及びそれらの組合せから成る群より選ばれる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記担体分子が脂肪族基である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1,3,5−ペンタン3硫酸又はその塩を医薬として許容される担体中に含む組成物。
【請求項19】
3−(1H−テトラゾール−5−イル)−9H−チオキサンテン−9−オン10,10−ジオキシド、5,5−ジチオビス(1−フェニルテトラゾール)、1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、及び5−(2−アミノエタン酸)−1H−テトラゾール、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれた化合物を医薬として許容される担体中に含む組成物。
【請求項20】
被験体におけるアミロイド沈着の阻害において使用される組成物であって、担体に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物であって、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、治療用化合物、又は医薬として許容されるその塩、並びに医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項21】
前記治療用化合物が、1,7−ジヒドロキシ−4−ヘプタンスルホン酸、又はその医薬として許容されるその塩である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール2硫酸、1,3−シクロヘキサンジオール2硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記治療用化合物が、2−ヒドロキシエチルスルファミン酸硫酸、3−ヒドロキシプロピルスルファミン酸硫酸、及び医薬として許容されるそれらの塩から成る群から選ばれる請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記治療用化合物が、1,3,5,7−ヘプタン4硫酸及び1,3,5,7,9−ノナン5硫酸並びにそれらの医薬として許容される塩から成る群から選ばれる、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
患者においてアミロイド沈着を阻害するための医薬の製造における、担体に共有結合された少なくとも1のアニオン基を含む治療用化合物の使用。
【請求項26】
前記治療用化合物が、以下の式:
Q−〔−Y− X+ 〕n
{式中、Y− は、生理学的pHにおいてアニオン基であり;Qは、担体分子であり;X+ は、カチオン基であり;そしてnは、意図された標的部位についての上記治療用化合物のバイオディストリビューションが、その治療用化合物の活性を維持しながら、妨害されないように選ばれた整数である。}をもつ、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記アニオン基がスルホネート基、スルフェート基及びテトラゾール基の中の1である、請求項25に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−101020(P2008−101020A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316576(P2007−316576)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【分割の表示】特願2003−404129(P2003−404129)の分割
【原出願日】平成8年3月15日(1996.3.15)
【出願人】(506365038)ニューロケム (インターナショナル) リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【分割の表示】特願2003−404129(P2003−404129)の分割
【原出願日】平成8年3月15日(1996.3.15)
【出願人】(506365038)ニューロケム (インターナショナル) リミテッド (4)
【Fターム(参考)】
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