説明

アミン化合物及びその製造法、並びにその用途

【課題】従来材料以上に高い効率を発現する有機EL用材料、特に燐光材料を用いた有機EL素子において非常に有用である材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるアミン化合物を用いる。


(式中、環A、環B及び環Cは各々芳香環を表す。R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、アルキル基等を表す。Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して置換基を有してもよいアリール基等を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミン化合物及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関するものである。本発明におけるアミン化合物は、感光材料、有機光導電材料として使用でき、具体的には、平面光源や表示に使用される有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔輸送材料、正孔注入材料及び発光材料として有用である。特に、本発明のアミン化合物は、燐光材料を用いた有機EL素子に対して非常に有用である。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、次世代の薄型平面ディスプレイとして現在盛んに研究されており、既に携帯電話のディスプレイやテレビ等への実用化も始まっている。しかし、有機EL素子をさらに広く普及させるために、素子の発光効率を一層向上させることが求められている。
【0003】
有機EL素子の一般的な発光メカニズムは、両電極から電子及び正孔が注入されると、それらが対電極に向かい、発光層で再結合して励起子を生成し、その励起子の励起状態が基底状態に戻るときに発光が生じるものである。この励起状態には、電子スピンの向きが反平行である一重項励起状態と、電子スピンの向きが平行となる三重項励起状態とがあるが、現在普及している有機EL素子は、一重項励起状態のみが関与する蛍光発光が主流となっている。しかし、単純な量子力学的推論から、電子と正孔の再結合により生成する一重項励起状態と三重項励起状態の生成比率は1:3であるため、蛍光を利用した有機EL素子の場合には内部量子効率の最大値は25%となる。つまり、励起状態の75%は発光に使用されないことになる。また、有機EL素子外部への光取り出し効率は、高々20%程度であるため、蛍光を利用した有機EL素子においては、その外部量子効率は25%×20%となり、最大5%程度と見積もられる。
【0004】
このため、外部量子効率をさらに向上させるためには、励起状態のうちの75%を占める三重項励起状態からの発光、すなわち燐光も利用する必要がある。この利用が可能となれば、外部量子効率を最大20%まで向上させることができる。このような背景から、近年では燐光材料を用いた有機EL素子の開発が活発化している。
【0005】
ところで、燐光材料を用いた有機EL素子では、発光層と隣接する層に用いる材料は、蛍光材料に比べて高い三重項準位(T1)を有することが求められる。一方、蛍光材料を利用した有機EL素子において従来使用されてきた周知の材料の三重項準位は十分とは言い難い。例えば、正孔輸送材料として良く知られている、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)の三重項準位は、2.3eV程度と低いため、2.3eV以上の三重項準位を有する燐光材料と組み合わせた場合には、励起エネルギーを十分に閉じ込められず、効率の低下を招いてしまう。
【0006】
さらに、三重項準位を向上させるために、材料中にカルバゾール基などの骨格を導入する方法も試みられている。例えば、カルバゾール骨格を有する化合物として、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)が挙げられるが(例えば、非特許文献1参照)、その三重項準位は2.6eV程度であり、十分なレベルとは言い難いものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R.Holms et.al.,Appl.Phys.Lett.,2003年,第82巻,2422頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来材料以上に高い効率を発現する有機EL用材料、特に燐光材料を用いた有機EL素子において非常に有用である材料を提供することにある。さらに詳しくは、有機EL素子等の正孔注入材料、正孔輸送材料及び発光材料に適した新規な材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式(1)で表されるアミン化合物が、従来周知の材料に比べて高い三重項準位を有することを見出した。即ち本発明は、一般式(1)で表されるアミン化合物及びその用途に関するものである。
【0010】
【化1】

(式中、環A、環B及び環Cは各々独立してヘテロ原子を含んでもよい芳香環を表す。R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有してもよいアリール基、又は炭素数5〜40の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。なお、R又はRとR又はRはお互いに結合して環を形成してもよい。また、ArとAr、及びArとArは互い結合して環を形成してもよい。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物において、環A、環B及び環Cは各々独立してヘテロ原子を含んでもよい芳香環を表す。以下に限定されるものではないが、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環等を例示することができる。
【0012】
本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物において、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基等を例示することができる。
【0013】
炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等を例示することができる。
【0014】
炭素数6〜24のアリール基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、フェニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、1−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フェナントリル基、9,9−ジアルキル−フルオレン−2−イル基、9,9−ジ−トリフルオロメチル−フルオレン−2−イル基等を例示することができる。
【0015】
炭素数6〜24のアリールオキシ基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基等を例示することができる。
【0016】
なお、R又はRとR又はRは、お互いに結合して環を形成することができる。
【0017】
本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物において、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換基を有してもよいアリール基、又は炭素数5〜40の置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。炭素数6〜40の置換基を有してもよいアリール基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ビフェニレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基等を例示することができ、さらに具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−(2’−エチルブチル)フェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2’−エチルヘキシル)フェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4’−メチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4’−tert−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−エチル−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4,6−ジ−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、5−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル基、9−メチル−2−フルオレニル基、9−エチル−2−フルオレニル基、9−n−ヘキシル−2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9,9−ジエチル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−プロピル−2−フルオレニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2’−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−n−ブトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、6−n−ブトキシ−2−ナフチル基、6−n−ヘキシルオキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、7−n−ブトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、2−ビフェニリル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(3’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−n−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2’−メトキシフェニル)フェニル基、3−メチル−4−フェニルフェニル基、3−メトキシ−4−フェニルフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、10−フェニルアントリル基、10−(3,5−ジフェニルフェニル)−9−アントリル基、9−フェニル−2−フルオレニル基等を例示することができる。また、炭素数5〜40の置換基を有してもよいヘテロアリール基としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香族基であり、例えば、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基等の複素環基を例示することができる。なお、ArとAr、及びArとArは互いに結合して環を形成することができる。ArとAr、及びArとArが形成する環としては、以下に限定されるものではないが、具体的には、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環等を例示することができる。
【0018】
また、上記一般式(1)で表されるアミン化合物の好ましい具体例として、下記一般式(2)で表されるアミン化合物を挙げることができる。
【0019】
【化2】

一般式(2)で表されるアミン化合物において、R、R、R、R、R、R、R、R、RAr、Ar、Ar及びArは、前記一般式(1)で表されるアミン化合物と同じ基を表す。
【0020】
本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物の中間体であるトリキナン化合物(3)は、下記一般式(4)で表される化合物を環化することで合成することが出来る。
【0021】
【化3】

(式中、環A、環B、環C、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは前記一般式(1)で表されるアミン化合物と同じ基を表す。また、X1及びXは各々独立して塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
化合物(4)は、公知の方法によって合成することができる(例えば、非特許文献2〜4参照)。
【0022】
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1984年,第23巻,508項
【非特許文献3】Chem.Ber.,1992年,第125巻,1449項
【非特許文献4】J.Chem.Soc.PERKIN TRANS.,1995年,721項 本発明の一般式(3)で表されるトリキナン化合物は、酸触媒存在下、有機溶媒中において一般式(4)で表されるジオール化合物を環化させることによって合成することが出来る。
【0023】
酸触媒としては、特に限定されるものではないが、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)等の鉄化合物、塩化亜鉛、臭化亜鉛等の亜鉛化合物、塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物、塩化チタン、臭化チタン、チタニウムエトキシド等のチタン化合物、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のアルミニウム化合物、三フッ化ボロン、三フッ化ボロン・エーテル錯体、三フッ化ボロン・酢酸錯体、三臭化ボロン等のボロン化合物、塩化スカンジウム、塩化ランタン等のランタノイド金属塩等のルイス酸、硫酸、塩酸、燐酸、ポリ燐酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のブレンステッド酸、ニオブ酸、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、チタニアジルコニア、リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム系触媒、リン酸鉄、硫酸アルミニウム、硫酸イオン担持ジルコニア、硫酸イオン担持チタニア、五フッ化アンチモン担持シリカアルミナ、酸性白土、カオリン、モンモリロナイト、フッ化スルホン樹脂、ゼオライト、強酸性陽イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸塩等の固体酸が挙げられる。このうちブレンステッド酸が好ましく、特に好ましくは硫酸である。
【0024】
ルイス酸またはブレンステッド酸の使用量は、特に限定されないが、上記一般式(4)で表されるジオール化合物の1モルに対して、通常、0.5〜20倍モルであり、好ましくは2〜10倍モルの範囲である。
【0025】
固体酸の使用量は、特に限定するものではないが、原料である上記一般式(4)で表されるジオール化合物の使用量に対し、通常0.01〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。
【0026】
本発明における環化反応は液相で行うことも出来るし、気相で行うことも出来るが、液相反応が好ましい。また、反応は回分式、連続式または固定床流通式でも実施することが出来る。
【0027】
液相での環化反応は、有機溶媒中で実施される。有機溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、通常、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのプロトン酸溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒を好ましく用いることが出来る。
【0028】
上記環化反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができ、加圧下で行うこともできる。尚、反応は、−10〜300℃の温度範囲で行われるが、より好ましくは0〜200℃の温度範囲である。
【0029】
反応に要する時間は、使用する上記化合物(4)及び酸触媒の量、反応温度等によって変動するため、必ずしも限定されないが、例えば、1〜40時間である。
【0030】
このようにして得られるトリキナン化合物(3)は本発明の有機EL用材料の中間体としてだけでなく、太陽電池等の電子材料中間体、超分子構築用の中間体、医農薬中間体としての利用が期待出来る。
【0031】
本発明の一般式(1)で表されるアミン化合物は、下記一般式(5)及び(6)で表されるアミン化合物を用い、公知の方法(例えば、非特許文献5参照)で、トリキナン化合物(3)をアミノ化することによって、効率良く合成することが出来る。このとき、化合物(5)と(6)は異なっても良いし、同じであっても良い。反応から得られる一般式(1)で表されるアミン化合物は、単一構造の場合もあるが、化合物(5)と化合物(6)が異なる場合、これらに対応した混合物として得ることも出来る。
【0032】
【化4】

(式中、Ar、Ar、Ar及びArは一般式(1)で表されるアミン化合物と同じ基を表す。)
一般式(1)で表されるアミン化合物は、具体的には、以下に挙げるルートで製造することが出来る。
【0033】
ルートA:化合物(3)、化合物(5)及び化合物(6)を混合し、反応させて化合物(1)を得るルート。
【0034】
ルートB:化合物(3)と化合物(5)の反応生成物のうち、1対1で反応した成分を単離精製し、この単離生成物に化合物(6)を反応させて化合物(1)を得るルート。
【0035】
ルートC:化合物(3)と化合物(6)の反応生成物のうち、1対1で反応した成分を単離精製し、この単離生成物に化合物(5)を反応させて化合物(1)を得るルート。
【0036】
ルートD:化合物(3)と化合物(5)を反応させ、得られた生成物に、直接化合物(6)を反応させて化合物(1)を得るルート。
【0037】
ルートE:化合物(3)と化合物(6)を反応させ、得られた生成物に、直接化合物(5)を反応させて化合物(1)を得るルート。
【0038】
上記いずれかのルートで得られる最終生成物から、未反応原料及び不要副生物をカラムクロマトグラフィー等で除去することによって、本願発明である有機EL材料に適したアミン化合物(1)を得ることが出来る。
【0039】
化合物(5)と化合物(6)が同一の場合又はルートB若しくはルートCでアミノ化を行った場合、高純度の化合物(1)を得ることが出来る。一方、ルートA、ルートD又はルートEの場合、アミン化合物(1)は用いた原料化合物に対応した混合物となる。
【0040】
本アミノ化反応における化合物(5)及び(6)の使用量は、いずれも、化合物(3)1モルに対し1〜1.2倍モルが好ましい。
【0041】
本アミノ化反応は、パラジウム化合物、トリアルキルホスフィン類及び塩基の存在下、有機溶媒中で実施することが出来る。
【0042】
パラジウム化合物としては、特に限定されないが、具体例として、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート等の2価パラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、パラジウム−カーボン等の0価パラジウム化合物を挙げることができる。これらのうち特に好ましくは、酢酸パラジウム(II)又はトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)である。パラジウム化合物の使用量は、特に限定するものではないが、上記一般式(5)及び(6)で表されるアミンに対し、パラジウム換算で0.001〜10モル%であり、より好ましくは、パラジウム換算で0.005〜5モル%である。0.001〜10モル%の範囲であれば、十分な触媒活性が得られる上、経済的にも好ましい。
【0043】
また、パラジウムの配位子として使用されるトリアルキルホスフィン類の具体例としては、特に限定されないが、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、n−ブチル−ジ(1−アダマンチル)ホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどが挙げられるが、反応性の良さから特にトリ−tert−ブチルホスフィンが好適に用いられる。トリアルキルホスフィンの使用量は、特に限定されないが、パラジウム金属1モルに対し、0.5〜5倍モル、好ましくは1〜4倍モルの範囲が選ばれる。ここで、1〜4倍モルの範囲であれば、十分な触媒活性が得られる上、経済的にも好ましい。
本アミノ化反応において、使用される塩基としては、有機塩基及び無機塩基からなる群より選択することが出来る。具体例として、特に限定されないが、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムアミド、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム金属、カリウム金属、リチウム金属、メトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシナトリウム、エトキシカリウム、エトキシリチウム、tert−ブトキシリチウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム等が挙げられる。これらのうち、tert−ブトキシナトリウムが好適に用いられる。これらの塩基の使用量は、特に限定されないが、一般式(3)で表される化合物1モルに対し、1〜5倍モルである。
また、本アミノ化反応は、通常、反応溶媒中で実施される。反応溶媒は、反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、具体例として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等が挙げられる。これらのうち、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好適に用いられる。ここで、溶媒は、単一または混合溶媒として用いることも出来る。反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、一般式(3)で表される化合物に対し、2〜20重量比である。
【0044】
また本アミノ化反応は、通常、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施されるが、加圧条件下で実施することも出来る。反応は、20〜300℃の温度範囲で実施されるが、より好ましくは50〜200℃の温度範囲である。
【0045】
反応時間は、反応温度、使用する上記化合物(3)、(5)、(6)及びパラジウム化合物の量により異なるため、特に限定されないが、例えば、数分〜72時間である。
【0046】
【非特許文献5】Tetrahedron Letters,1998年,第39巻,2367頁(アミノ化反応) 以下に、一般式(1)で表されるアミン化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

本発明の前記一般式(1)で表されるアミン化合物は、有機EL素子の発光層、正孔輸送層又は正孔注入層として使用することができる。
【0050】
特に、前記一般式(1)で表されるアミン化合物は正孔輸送能に優れることから、正孔輸送層及び/又は正孔注入層として使用した際に、有機EL素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び耐久性の向上を実現することができる。
【0051】
前記一般式(1)で表されるアミン化合物を有機EL素子の正孔注入層及び/又は正孔輸送層として使用する際の発光層には、従来から使用されている公知の発光材料を使用することができる。発光層は1種類の発光材料のみで形成されていても、ホスト材料中に1種類以上の発光材料がドープされていてもよい。
【0052】
近年、高い発光効率を実現できることから、発光材料として燐光材料を使用した有機EL素子が注目されているが、前記一般式(1)で表されるアミン化合物は燐光材料とも組み合わせて使用することができる。
【0053】
前記一般式(1)で表されるアミン化合物からなる正孔注入層及び/又は正孔輸送層を形成する際には、必要に応じて2種類以上の材料を含有若しくは積層させてもよく、例えば、酸化モリブデン等の酸化物、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン等の公知の電子受容性材料を含有若しくは積層させてもよい。
【0054】
前記一般式(1)で表されるアミン化合物を有機EL素子の発光層として使用する場合には、アミン化合物を単独で使用、公知の発光ホスト材料にドープして使用、又は公知の蛍光若しくは燐光材料をドープして使用することができる。
【0055】
前記一般式(1)で表されるアミン化合物を含有する正孔注入層、正孔輸送層又は発光層を形成する方法としては、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法等の公知の方法を適用することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明による一般式(1)で表されるアミン化合物は、従来の材料以上に高い三重項準位を有するため、有機EL素子、特に燐光材料を用いた有機EL素子において高い外部量子効率を発現させることが可能となる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0059】
[材料純度測定(HPLC分析)]
測定装置:東ソー製 マルチステーションLC−8020
測定方法:カラム Inertsil ODS−3V(4.6mmΦ×250mm)
検出器 UV検出(波長 254nm)
溶離液 メタノール/テトラヒドロフラン=9/1(v/v比)
[燐光スペクトル測定]
測定装置:日本分光株式会社製 分光蛍光光度計FP−6500
[NMR測定]
測定装置:バリアン社製 Gemini200
[有機EL素子の電流−電圧特性及び発光特性]
測定装置:ケースレーインスツルメンツ社製 ソースメータ(2400)
TOPCON社製 輝度計LUMINANCE METER(BM−9)
[ガラス転移温度測定]
測定装置:マックサイエンス社製 DSC−3100
測定方法:窒素気流下、昇温速度10℃/分で測定
【0060】
【化8】

合成例1 化合物(B−1)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた1L3つ口フラスコ中に、1,3−インダンジオン 21.2g(144mmol)、アセトニトリル 250mL、フッ化カリウム 42.0g(723mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、p−ブロモベンジルブロミド 72.6g(290mmol)をアセトニトリル 250mLに溶解させた溶液を、90分かけて滴下した。滴下終了後、さらに室温で7時間攪拌した。反応終了後、純水 600mLを添加し、室温で1時間攪拌した。析出した黄色粉末をろ取し、純水 500mLで洗浄した。さらに、得られた黄色粉末をエタノールで再結晶精製し、淡黄色粉末 62.1gを得た(収率 89%、純度 99.8%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた淡黄色粉末は目的の化合物(B−1)であることを確認した。
【0061】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.18(s 4H), 6.83〜6.87(d 4H),7.12〜7.16(d 4H), 7.56〜7.68(m 4H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=40.69, 61.64, 120.90, 122.55, 131.17, 131.52, 134.08, 135.64, 142.45, 202.84
合成例2 化合物(B−2)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた1L3つ口フラスコ中に、化合物(B−1) 15.0g(31.0mmol)、テトラヒドロフラン 150mL、メタノール 150mLを加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム 8.8g(233mmol)を1時間かけてゆっくりと加え、さらに室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応容器を0℃に冷却し、10%塩化水素水溶液 75mLをゆっくりと加えた。純水 250mLを添加し、ジクロロメタン 300mLで抽出した。得られた有機層を純水 500mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、黄色オイル 14.9gを得た(収率 99%、純度 99.6%)。得られた黄色オイルをイソプロパノール/テトラヒドロフランの混合溶液で再結晶し、白色結晶として一方のジアステレオマーを単離した。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色結晶は目的の化合物(B−2)であることを確認した。
【0062】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=1.46〜1.49(d 2H), 2.89(s 4H), 5.10〜5.13(d 2H), 7.04〜7.35(m 12H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=37.16, 55.91, 78.82, 120.11, 124.16, 128.79, 131.13, 132.16, 137.71, 142.80
実施例1 化合物(B−3)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた500mL3つ口フラスコ中に、硫酸 4.0g(41mmol)、ジクロロメタン 200mLを加え、室温で5分間攪拌した。この溶液に、化合物(B−2) 10g(29mmol)をジクロロメタン 70mLに溶解させた溶液を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに45℃で20時間攪拌した。反応終了後、純水 200mLを添加して洗浄分液した。さらに、飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、トルエンで再結晶することにより、白色固体 7.1gを得た(収率 77%、純度 99.9%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(B−3)であることを確認した。
【0063】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.03〜3.30(4H), 4.40(s 2H), 7.02〜7.06(d 2H), 7.19〜7.36(m 6H), 7.48(s 2H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=43.71, 61.77, 63.73, 120.53, 124.56, 126.39, 127.77, 130.13, 141.37, 143.20, 145.95
実施例2 化合物(A−1)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた100mL4つ口フラスコ中に、化合物(B−3) 0.70g(1.5mmol)、ジフェニルアミン 0.58g(3.41mmol)、炭酸セシウム 1.51g(4.64mmol)、酢酸パラジウム(II) 7mg(0.03mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン 20mg(0.1mmol)、o−キシレン 10mLを加え、120℃で15時間攪拌した。反応終了後、純水 30mL、トルエン 30mLを添加して洗浄分液した。さらに、純水 30mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体 0.72gを得た(収率 74%、純度 99.6%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−1)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−1)のガラス転移温度は120℃であった。
【0064】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.09〜3.38(4H), 4.40(s 2H), 6.86〜7.26(m 30H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=44.59, 62.50, 63.25, 120.99, 122.22, 123.65, 123.92, 124.38, 125.29, 127.20, 129.05, 137.42, 144.01, 145.14, 146.74, 148.00
実施例3 化合物(A−4)の合成
実施例2において、ジフェニルアミンの代わりにジ−p−トリルアミンを0.64g(3.24mmol)用いた以外は同様の実験操作を行って、白色固体を0.74g得た(収率 70%、純度 99.4%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−4)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−4)のガラス転移温度は124℃であった。
【0065】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.30(s 12H), 3.07〜3.36(4H), 4.38(s 2H), 6.80〜7.25(m 26H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=20.88, 44.59, 62.54, 63.29, 119.95, 122.91, 123.86, 124.40, 125.09, 127.11, 129.65, 131.68, 136.52, 144.10, 144.96, 145.69, 147.14
実施例4 化合物(A−5)の合成
実施例2において、ジフェニルアミンの代わりにN−(4−ビフェニリル)アニリンを0.80g(3.24mmol)用いた以外は同様の実験操作を行って、白色粉末を0.98g得た(収率 84%、純度 99.2%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−5)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−5)のガラス転移温度は136℃であった。
【0066】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.11〜3.40(4H), 4.42(s 2H), 6.91〜7.60(m 38H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=44.63, 62.53, 63.29, 121.19, 122.53, 123.39, 123.97, 124.14, 124.43, 125.40, 126.57, 126.70, 127.27, 127.62, 128.70, 129.14, 134.63, 137.67, 140.66, 144.01, 145.22, 146.57, 147.34, 147.83
【0067】
【化9】

合成例3 化合物(C−1)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた1L3つ口フラスコ中に、1,3−インダンジオン 14.7g(100mmol)、アセトニトリル 300mL、フッ化カリウム 29.2g(502mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、o−ブロモベンジルブロミド 50.6g(202mmol)をアセトニトリル 120mLに溶解させた溶液を、40分かけて滴下した。滴下終了後、さらに室温で15時間攪拌した。反応終了後、純水 1000mLを添加し、室温で1時間攪拌した。析出した黄色粉末をろ取し、純水 500mLで洗浄した。さらに、得られた黄色粉末をエタノールで再結晶精製し、淡肌色粉末 42.3gを得た(収率 87%、純度 99.9%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた淡黄色粉末は目的の化合物(C−1)であることを確認した。
【0068】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.51(s 4H), 6.87〜7.09(m 4H),7.39〜7.43(4H), 7.64〜7.82(m 4H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=39.67, 59.92, 122.97, 125.66, 126.92, 128.42, 131.32, 133.13, 135.22, 135.40, 142.14, 201.56
合成例4 化合物(C−2)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた1L3つ口フラスコ中に、化合物(C−1) 42.2g(87.2mmol)、テトラヒドロフラン 230mL、メタノール 230mLを加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム 16.5g(436mmol)を1時間30分かけてゆっくりと加え、さらに室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応容器を0℃に冷却し、10%塩化水素水溶液 100mLをゆっくりと加えた。純水 150mLを添加し、ジクロロメタン 300mLで抽出した。得られた有機層を純水 300mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、白色粉末 42.4gを得た(収率 99%、純度 99.5%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色粉末は目的の化合物(C−2)であることを確認した。
【0069】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.15〜2.18(d 2H), 3.21〜3.39(4H), 5.34〜5.36(d 2H), 6.86〜7.07(m 8H), 7.34〜7.44(m 4H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=36.66, 58.36, 78.38, 123.68, 125.75, 126.78, 127.42, 128.30, 132.54, 133.00, 138.64, 143.29
実施例5 化合物(C−3)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた1L3つ口フラスコ中に、硫酸 29.8g(304mmol)、ジクロロメタン 400mLを加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、化合物(C−2) 42.4g(86.8mmol)をジクロロメタン 220mLに溶解させた溶液を、1時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに45℃で17時間攪拌した。反応終了後、蒸留水 400mLを添加して洗浄分液した。さらに、飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、トルエンで再結晶することにより、白色粉末 11.0gを得た(収率 28%、純度 99.9%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(C−3)であることを確認した。
【0070】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=3.17〜3.44(4H), 4.58(s 2H), 7.04〜7.36(m 10H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=46.04, 60.76, 63.31, 120.11, 123.39, 124.45, 127.64, 128.75, 130.18, 142.73, 143.48, 145.47
実施例6 化合物(A−21)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた100mL4つ口フラスコ中に、化合物(C−3) 2.00g(4.42mmol)、ジフェニルアミン 1.57g(9.38mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 1.02g(10.6mmol)、酢酸パラジウム(II) 20mg(0.089mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン 70mg(0.35mmol)、o−キシレン 30mLを加え、120℃で3時間攪拌した。反応終了後、蒸留水 50mL、トルエン 50mLを添加して洗浄分液した。さらに、純水 50mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色粉末 2.34gを得た(収率 84%、純度 98.7%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−21)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−21)のガラス転移温度は113℃であった。
【0071】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.27〜2.83(4H), 4.30(s 2H), 6.89〜7.41(m 30H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=42.87, 62.06, 62.39, 121.06, 121.80, 122.38, 124.54, 125.73, 127.27, 128.28, 128.97, 139.25, 143.20, 143.95, 145.99, 147.14
実施例7 化合物(A−22)の合成
実施例6において、ジフェニルアミンの代わりにジ−p−トリルアミンを1.76g(8.92mmol)用いた以外は同様の実験操作を行って、白色粉末を2.70g得た(収率 97%、純度 98.8%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−22)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−22)のガラス転移温度は117℃であった。
【0072】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.26(s 12H), 2.38〜2.84(4H), 4.30(s 2H), 6.77〜7.39(m 26H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=20.88, 42.95, 62.15, 62.45, 120.55, 122.51, 124.54, 125.31, 127.22, 128.13, 129.52, 131.06, 138.90, 143.53, 144.14, 145.03, 145.95
実施例8 化合物(A−26)の合成
実施例6において、ジフェニルアミンの代わりにp−メトキシフェニルフェニルアミンを1.78g(8.93mmol)用いた以外は同様の実験操作を行って、白色粉末を2.98g得た(収率 98%、純度 99.6%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−26)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−26)のガラス転移温度は102℃であった。
【0073】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.35〜2.85(4H), 3.78(s 6H),4.31(s 2H), 6.73〜7.40(m 28H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=43.07, 55.51, 62.14, 62.32, 114.43, 120.61, 124.52, 125.13, 125.66, 127.22, 128.15, 128.85, 138.68, 140.38, 143.49, 144.03, 145.93, 147.78, 155.40
実施例9 化合物(A−27)の合成
実施例6において、ジフェニルアミンの代わりにジ−p−メトキシフェニルアミンを2.05g(8.94mmol)用いた以外は同様の実験操作を行って、白色粉末を2.32g得た(収率 70%、純度 99.1%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色固体は目的の化合物(A−27)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−27)のガラス転移温度は105℃であった。
【0074】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.38〜2.81(4H), 3.76(s 12H),4.28(s 2H), 6.70〜7.39(m 26H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=43.28, 55.53, 62.23, 114.31, 119.78, 124.12, 124.49, 127.12, 127.97, 137.78, 141.39, 144.12, 145.95, 154.63
【0075】
【化10】

合成例5 化合物(D−1)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた500mL4つ口フラスコ中に、3−クロロ−2−メチル安息香酸 8.12g(47.6mmol)、テトラヒドロフラン 100mLを加え、反応容器を−78℃に冷却した。この溶液に、リチウムアルミニウムヒドリド溶液 100mL(アルドリッチ製 1.0Mテトラヒドロフラン溶液)を30分かけて滴下した。滴下終了後、−78℃で1時間攪拌し、さらに室温に戻して5時間攪拌した。反応終了後、反応容器を0℃に冷却し、3.5%塩化水素水溶液を注意深く滴下した。純水 300mLを添加し、トルエン 500mLで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、白色粉末 6.92gを得た(収率 93%、純度 95.5%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた淡黄色粉末は目的の化合物(D−1)であることを確認した。
【0076】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.30(s 1H), 2.44(s 3H), 4.75(s 2H), 7.15〜7.41(m 3H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=15.35, 63.78, 125.97, 126.68, 128.64, 134.08, 135.03, 140.46
合成例6 化合物(D−2)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた500mL4つ口フラスコ中に、化合物(D−1) 6.82g(43.5mmol)、トリフェニルホスフィン 12.6g(47.9mmol)、ジエチルエーテル 40mLを加え、室温で5分間攪拌した。この溶液に、四臭化炭素 15.2g(45.7mmol)をジエチルエーテル 20mLに溶解させた溶液を20分かけて滴下し、さらに室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過した。得られたろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。更に減圧蒸留して低沸不純物を除去し、無色透明オイル 7.93gを得た(収率 83%、純度 97.1%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた無色透明オイルは目的の化合物(D−2)であることを確認した。
【0077】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.44(s 3H), 4.50(s 2H), 7.05〜7.35(m 3H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=15.79, 32.32, 126.89, 128.44, 129.80, 135.36, 135.49, 137.62
合成例7 化合物(D−3)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた300mL3つ口フラスコ中に、1,3−インダンジオン 2.40g(16.4mmol)、アセトニトリル 40mL、フッ化カリウム 4.77g(82.1mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、化合物(D−2) 7.93g(36.1mmol)をアセトニトリル 30mLに溶解させた溶液を、15分かけて滴下した。滴下終了後、さらに室温で15時間攪拌した。反応終了後、純水 200mLを添加し、室温で1時間攪拌した。析出した黄色粉末をろ取し、純水 100mLで洗浄した。さらに、得られた黄色粉末をエタノールで再結晶精製し、肌色粉末 5.40gを得た(収率 78%、純度 97.0%)。この肌色粉末を、化合物(D−3)として次工程(合成例8)へ用いた。
【0078】
合成例8 化合物(D−4)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた300mL4つ口フラスコ中に、化合物(D−3) 4.3g(10.2mmol)、テトラヒドロフラン 35mL、メタノール 35mLを加え、反応容器を0℃に冷却した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム 3.92g(104mmol)を1時間30分かけてゆっくりと加え、さらに室温で1時間攪拌し、HPLC分析にて原料消失を確認した。反応容器を0℃に冷却し、10%塩化水素水溶液 30mLをゆっくりと加えた。純水 50mLを添加し、ジクロロメタン 120mLで抽出した。得られた有機層を純水 100mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、淡桃色粉末 4.35gを得た(収率 99%、純度 96.0%)。この淡桃色粉末を、化合物(D−4)として次工程(実施例10)へ用いた。
【0079】
実施例10 化合物(D−5)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた300mL3つ口フラスコ中に、硫酸 3.0g(31mmol)、ジクロロメタン 100mLを加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、化合物(D−4) 4.35g(10.1mmol)をジクロロメタン 10mLに溶解させた溶液を、20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに45℃で15時間攪拌した。反応終了後、純水 150mL ジクロロメタン100mLを添加して洗浄分液した。さらに、飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、トルエンで再結晶することにより、淡黄色結晶 1.26gを得た(収率 32%、純度 99.0%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた淡黄色結晶は目的の化合物(D−5)であることを確認した。
【0080】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.26(s 6H), 3.09〜3.38(4H), 4.44(s 2H), 7.12〜7.34(m 8H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=16.69, 44.32, 62.32, 62.67, 122.69, 124.34, 127.47, 127.84, 132.11, 132.91, 142.03, 143.15, 143.64
実施例11 化合物(A−34)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた100mL4つ口フラスコ中に、化合物(D−5) 0.61g(1.56mmol)、ジ−p−トリルアミン 0.63g(3.19mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 0.36g(3.74mmol)、酢酸パラジウム(II) 7mg(0.031mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン 25mg(0.12mmol)、o−キシレン 15mLを加え、120℃で15時間攪拌した。反応終了後、純水 30mL、トルエン 15mLを添加して洗浄分液した。さらに、純水 30mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色粉末 0.86gを得た(収率 77%、純度 99.0%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色粉末は目的の化合物(A−34)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−34)のガラス転移温度は147℃であった。
【0081】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=1.93(s 6H), 2.26(s 12H), 3.08〜3.39(4H), 4.52(s 2H), 6.81〜7.42(m 24H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=15.22, 20.75, 44.80, 62.45, 62.85, 121.34, 122.69, 124.51, 127.25, 128.31, 129.45, 130.26, 132.38, 140.99, 143.46, 144.41, 144.45, 145.51
【0082】
【化11】

合成例9 化合物(E−1)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた500mL4つ口フラスコ中に、5−クロロ−2−メチル安息香酸 8.12g(47.6mmol)、テトラヒドロフラン 100mLを加え、反応容器を−78℃に冷却した。この溶液に、リチウムアルミニウムヒドリド溶液 100mL(アルドリッチ製 1.0Mテトラヒドロフラン溶液)を30分かけて滴下した。滴下終了後、−78℃で1時間攪拌し、さらに室温に戻して5時間攪拌した。反応終了後、反応容器を0℃に冷却し、3.5%塩化水素水溶液を注意深く滴下した。純水 300mLを添加し、トルエン 500mLで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、淡黄色オイル 7.30gを得た(収率 98%、純度 98.3%)。この淡黄色オイルを化合物(E−1)として次工程(合成例10)に用いた。
【0083】
合成例10 化合物(E−2)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた500mL4つ口フラスコ中に、化合物(E−1) 7.30g(46.6mmol)、トリフェニルホスフィン 13.5g(51.5mmol)、ジエチルエーテル 70mLを加え、室温で5分間攪拌した。この溶液に、四臭化炭素 16.2g(48.8mmol)をジエチルエーテル 20mLに溶解させた溶液を20分かけて滴下し、さらに室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過した。得られたろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。更に減圧蒸留して低沸不純物を除去し、淡黄色オイル 10.0gを得た(収率 98%、純度 98.8%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた淡黄色オイルは目的の化合物(E−2)であることを確認した。
【0084】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.37(s 3H), 4.43(s 2H), 7.08〜7.30(m 3H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=18.33, 31.12, 128.79, 129.69, 131.63, 132.03, 135.53, 137.32
合成例11 化合物(E−3)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた300mL3つ口フラスコ中に、1,3−インダンジオン 2.90g(19.8mmol)、アセトニトリル 100mL、フッ化カリウム 5.80g(100mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、化合物(E−2) 9.13g(41.6mmol)をアセトニトリル 10mLに溶解させた溶液を、15分かけて滴下した。滴下終了後、さらに室温で15時間攪拌した。反応終了後、純水 200mLを添加し、室温で1時間攪拌した。析出した肌色粉末をろ取し、純水 100mLで洗浄した。さらに、得られた肌色粉末をエタノールで再結晶精製し、白色粉末 4.90gを得た(収率 58%、純度 95.3%)。この白色粉末を化合物(E−3)として次工程(合成例12)に用いた。
【0085】
合成例12 化合物(E−4)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた300mL4つ口フラスコ中に、化合物(E−3) 4.90g(11.6mmol)、テトラヒドロフラン 40mL、メタノール 40mLを加え、反応容器を0℃に冷却した。この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム 3.20g(84.6mmol)を1時間30分かけてゆっくりと加え、さらに室温で1時間攪拌し、HPLC分析にて原料消失を確認した。反応容器を0℃に冷却し、10%塩化水素水溶液 30mLをゆっくりと加えた。純水 50mLを添加し、ジクロロメタン 150mLで抽出した。得られた有機層を純水 100mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、減圧濃縮して溶媒を留去し、白色粉末 4.94gを得た(収率 99%、純度 96.4%)。この白色粉末を化合物(E−4)として次工程(実施例12)に用いた。
【0086】
実施例12 化合物(E−5)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた200mL3つ口フラスコ中に、硫酸 5.69g(58.0mmol)、ジクロロメタン 120mLを加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に、化合物(E−4) 4.94g(11.6mmol)をジクロロメタン 10mLに溶解させた溶液を、20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに45℃で15時間攪拌した。反応終了後、純水 150mL ジクロロメタン100mLを添加して洗浄分液した。さらに、飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、トルエンで再結晶することにより、白色結晶 0.77gを得た(収率 17%、純度 99.9%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色結晶は目的の化合物(E−5)であることを確認した。
【0087】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.19(s 6H), 2.92〜3.30(4H), 4.67(s 2H), 6.93〜7.20(m 6H), 7.68〜7.73(m 2H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=18.85, 42.67, 61.59, 62.83, 126.98, 127.03, 127.73, 128.66, 129.50, 132.71, 140.73, 142.82, 143.90
実施例13 化合物(A−38)の合成
窒素雰囲気下、攪拌装置を備えた100mL4つ口フラスコ中に、化合物(E−5) 0.61g(1.56mmol)、ジ−p−トリルアミン 0.63g(3.19mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 0.36g(3.74mmol)、酢酸パラジウム(II) 7mg(0.031mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン 25mg(0.12mmol)、o−キシレン 15mLを加え、120℃で15時間攪拌した。反応終了後、純水 30mL、トルエン 15mLを添加して洗浄分液した。さらに、純水 30mL、次いで飽和食塩水で洗浄分液した後、得られた有機層を減圧濃縮して溶媒を留去した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色粉末 0.59gを得た(収率 53%、純度 99.8%)。H−NMR及び13C−NMR分析から、得られた白色粉末は目的の化合物(A−38)であることを確認した。DSC分析から、化合物(A−38)のガラス転移温度は149℃であった。
【0088】
H−NMR(CDCl)δ(ppm)=2.11(s 6H), 2.26(s 12H), 2.79〜3.00(4H), 3.90(s 2H), 6.71〜7.00(m 22H), 7.38〜7.42(m 2H)
13C−NMR(CDCl)δ(ppm)=18.74, 20.77, 43.22, 61.15, 61.29, 122.25, 125.71, 125.93, 126.78, 129.21, 129.49, 130.04, 130.86, 139.76, 142.14, 143.79, 143.88, 145.11
実施例14 化合物(A−1)の三重項準位の測定
サンプルチューブ内で、化合物(A−1) 1mgと2−メチルテトラヒドロフラン 1mLをよく混合し、均一な溶液を調製した。この溶液をアルゴンガスで10分間バブリングすることによって脱気した後、このサンプルチューブを密栓することにより燐光スペクトル測定用サンプルとした。温度77K(液体窒素冷却下)で燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−1)の三重項準位は、2.95eVであった。
【0089】
実施例15 化合物(A−4)の三重項準位の測定
実施例14において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−4)を用いた以外は同様の実験操作を行って燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−4)の三重項準位は、2.93eVであった。
【0090】
実施例16 化合物(A−21)の三重項準位の測定
実施例14において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−21)を用いた以外は同様の実験操作を行って燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−21)の三重項準位は、2.95eVであった。
【0091】
実施例17 化合物(A−22)の三重項準位の測定
実施例14において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−22)を用いた以外は同様の実験操作を行って燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−22)の三重項準位は、2.94eVであった。
【0092】
実施例18 化合物(A−34)の三重項準位の測定
実施例14において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−34)を用いた以外は同様の実験操作を行って燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−34)の三重項準位は、2.96eVであった。
【0093】
実施例19 化合物(A−38)の三重項準位の測定
実施例14において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−38)を用いた以外は同様の実験操作を行って燐光スペクトルを測定したところ、得られた燐光スペクトルから算出された化合物(A−38)の三重項準位は、2.93eVであった。
【0094】
実施例20 化合物(A−1)の素子評価
厚さ200nmのITO透明電極を積層したガラス基板を、アセトン及び純水による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる煮沸洗浄した後、乾燥した。さらに、UV/オゾン処理を行い、真空蒸着装置へ設置後、1×10−4Paになるまで真空ポンプにて排気した。まず、ITO透明電極上にα−NPDを蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、20nmの正孔注入層とした。次に、化合物(A−1)を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層とした。次に、燐光ドーパント材料であるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))とホスト材料である4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(CBP)を重量比が1:11.5となるように蒸着速度0.25nm/秒で共蒸着し、20nmの発光層とした。次に、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、10nmのエキシトシンブロック層とした。次に、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体を蒸着速度0.3nm/秒で蒸着し、30nmの電子輸送層とした。さらに、電子注入層としてフッ化リチウムを蒸着速度0.01nm/秒で0.5nm蒸着し、最後にアルミニウムを蒸着速度0.25nm/秒で100nm蒸着して陰極を形成した。窒素雰囲気下、封止用のガラス板をUV硬化樹脂で接着し、評価用の有機EL素子とした。このようにして得られた素子に、20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
実施例21 化合物(A−4)の素子評価
実施例20において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−4)を用いた以外は同様の実験操作を行って、有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
実施例22 化合物(A−22)の素子評価
実施例20において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−22)を用いた以外は同様の実験操作を行って、有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
実施例23 化合物(A−34)の素子評価
実施例20において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−34)を用いた以外は同様の実験操作を行って、有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例24 化合物(A−38)の素子評価
実施例20において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−38)を用いた以外は同様の実験操作を行って、有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
比較例1 α−NPDの素子評価
実施例20において、化合物(A−1)の代わりにα−NPDを用いた以外は同様の実験操作を行って、有機EL素子を作製した。20mA/cmの電流を印加し、駆動電圧及び外部量子効率を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のアミン化合物は、有機EL素子の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光層のホスト材料として利用可能であり、従来の材料以上に高い三重項準位を有するため、特に燐光材料を用いた有機EL素子において極めて有用な材料となることが期待される。さらには、有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光材料としてのみでなく、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の有機光導電材料への分野にも応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアミン化合物。
【化1】

(式中、環A、環B及び環Cは各々独立してヘテロ原子を含んでもよい芳香環を表す。R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。なお、RとRはお互いに結合して環を形成しても良い。)
【請求項2】
環A、環B及び環Cがベンゼン環であることを特徴とする請求項1に記載の一般式(2)で表されるアミン化合物。
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。なお、RとRはお互いに結合して環を形成しても良い。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアミン化合物を、発光層、正孔輸送層又は正孔注入層のいずれか一層に用いる事を特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
一般式(3)で表されるトリキナン化合物。
【化3】

(式中、環A、環B及び環Cは各々独立してヘテロ原子を含んでもよい芳香環を表す。R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。なお、RとRはお互いに結合して環を形成しても良い。X1及びXは各々独立して塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
【請求項5】
一般式(4)で表されるジオール化合物を酸触媒存在下、環化させることを特徴とする請求項4に記載の一般式(3)で表されるトリキナン化合物の製造方法。
【化4】

(式中、環A、環B及び環Cは各々独立してヘテロ原子を含んでもよい芳香環を表す。R、R、R、R、R、R、R、R及びRは各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、又は炭素数6〜24のアリールオキシ基を表す。なお、RとRはお互いに結合して環を形成しても良い。X1及びXは各々独立して塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
【請求項6】
請求項4に記載の一般式(3)で表されるトリキナン化合物と下記一般式(5)及び一般式(6)で表されるアミン化合物を、パラジウム化合物とトリアルキルホスフィン類からなる触媒及び塩基の存在下、反応させることを特徴とする請求項1に記載の一般式(1)で表されるアミン化合物の製造方法。
【化5】

(式中、Ar、Ar、Ar及びArは各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。)

【公開番号】特開2012−25731(P2012−25731A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264086(P2010−264086)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】