説明

アミン末端を有するポリアミドアミンから生成したクレーピング用接着剤

ポリアミドアミン(PAE)樹脂は、具体的に定義された量の二官能性架橋剤と反応させた過剰のアミンを用いて生成されたポリアミドアミンから調製される。使用する二官能性架橋剤の量は、ポリアミドアミンのアミン価および還元比粘度(RSV)に基づく。PAE樹脂は、ポリアミンおよびポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体からポリアミドアミンをまず合成するステップであって、このポリアミンは、モルの過剰量で存在し、前記モル過剰分が約1.02〜2.00であるステップと、次いでこのポリアミドアミンを二官能性架橋剤と反応させるステップであって、ポリアミドアミン固形分に対する二官能性架橋剤の重量%が、約0.308(アミン価/RSV)-9.18を超えず、または0.385(アミン価/RSV)-5.20を超えず、アミン価が、ポリアミドアミン固形分1グラム当たりのアミンのミリ当量として表され、RSVが、1グラム当たりのデシリットルとして表される、1M HN4Cl中の2%濃度で測定された還元比粘度であるステップによって調製される。本方法により調製したPAE樹脂は、クリーピング用接着剤に使用することができ、様々なペーパー製品、例えばフェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙およびコーヒーフィルターなどを製造するために使用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン末端を有するポリアミドアミンから生成したクレーピング用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドアミン樹脂(PAE樹脂)は、高レベルの湿潤強度を有する紙の製造において添加剤として使用されてきた。例えば米国特許第2926116号明細書(特許文献1)および米国特許第2926154号明細書(特許文献2)を参照されたい。PAE樹脂はまた、ティッシュペーパー製品およびタオル品質のペーパー製品を生産するためのクレーピング工程において接着剤として使用されてきた。例えば、米国特許第5338807号明細書(特許文献3)およびカナダ特許第979579号明細書(特許文献4)を参照されたい。多数の他のポリマーおよびポリマーの組合せが、ティッシュペーパーおよびタオル品質のペーパーをクレーピングするプロセスにおいて接着剤として使用されてきた。
【0003】
多官能性アルデヒドと架橋したカチオン性ポリアミドアミンが開示されている。例えば、米国特許第5382323号明細書(特許文献5)を参照されたい。高分子量を有し、極めて分岐したPAE樹脂として、PAE樹脂の混和物をベースとするクレーピング用接着剤およびこれらを生成する手順が開示された。例えば、米国特許第5382323号明細書(特許文献5)、米国特許第5786429号明細書(特許文献6)、および米国特許第5902862号明細書(特許文献7)を参照されたい。
【0004】
PAE樹脂は通常、2段階工程で生成される。第1段階において、ポリアミドアミンが、等モルに近い量のジ酸およびポリアミン(例えば、アジピン酸およびジエチレントリアミン(DETA))の重縮合によって合成される。第2段階において、ポリアミドアミンを水溶液中でエピクロロヒドリンなどの二官能性架橋剤と反応させる。湿潤強度のある樹脂を生成する場合、ポリアミドアミンのアミン基に対するエピクロロヒドリンの比は、等モルに近い。クレーピング用接着剤は、一般的にエピクロロヒドリン/アミン比が1.00未満、通常は0.05〜0.50の範囲の比で生成される。
【0005】
過剰のポリアルキレンポリアミンで調製されたポリアミドアミンから生成された湿潤強度のあるPAE樹脂の調製も記載されている。例えば、米国特許第4287110号明細書(特許文献8)、米国特許第4336835号明細書(特許文献9)、および米国特許第5017642号を明細書(特許文献10)参照されたい。過剰のポリアルキレンポリアミンで調製されたポリアミドアミンから生成された、湿潤強度のある高固形分PAE樹脂が開示された。米国特許第6908983号明細書(特許文献11)を参照されたい。これにはアミン過剰量を用いて調製したポリアミドアミンから生成されるPAEクレーピング用接着剤も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2926116号明細書
【特許文献2】米国特許第2926154号明細書
【特許文献3】米国特許第5338807号明細書
【特許文献4】カナダ特許第979579号明細書
【特許文献5】米国特許第5382323号明細書
【特許文献6】米国特許第5786429号明細書
【特許文献7】米国特許第5902862号明細書
【特許文献8】米国特許第4287110号明細書
【特許文献9】米国特許第4336835号明細書
【特許文献10】米国特許第5017642号明細書
【特許文献11】米国特許第6908983号明細書
【特許文献12】米国特許第5660687号明細書
【特許文献13】米国特許第5833806号明細書
【特許文献14】米国特許第6133405号明細書
【特許文献15】米国特許第6280571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クレーピング用途に対して広範囲な化学的性質が開発されてきたにもかかわらず、クレーピング工程に使用する改善された接着剤製品およびそのような製品を生成するための改善された方法が依然として必要とされている。特に、高温および/または底水分のシートという条件下で、優れたクレーピング性能を提供する接着剤は、かなり望ましい。驚くべきことに、本発明の方法に従って調製されたクレーピング用接着剤は、他のクレーピング用接着剤と比較した場合、優れた高温性能を提供することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、(1)ポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体を過剰のポリアミンと反応させてポリアミドアミンを形成するステップと、(2)(1)のポリアミドアミンと二官能性架橋剤を反応させてポリアミドアミン樹脂を形成するステップとを含み、前記ポリカルボン酸に対する前記ポリアミンのモル比が、1.02:1〜2.0:1の範囲であり、前記ポリアミドアミン固形分に対する前記二官能性架橋剤の重量比が、約0.308(アミン価/RSV)-9.18を超えず、または0.385(アミン価/RSV)-5.20を超えず、前記アミン価が、ポリアミドアミン固形分1グラム当たりのアミンのミリ当量として表され、前記RSVが、1グラム当たりのデシリットルで表される、1M NH4Cl中の2%濃度で測定された還元比粘度である、ポリアミドアミン樹脂を調製する方法である。
【0009】
本発明の別の実施形態は、(2)が水性媒体中で行われる上記方法である。
【0010】
本発明の別の実施形態は、前記二官能性架橋剤がエピクロロヒドリンである上記方法である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、前記ポリカルボン酸が、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、クエン酸、トリカルバリル酸(1,2,3-プロパントリカルボン酸)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ニトリロ三酢酸、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)および1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)およびこれらの混合物からなる群から選択される上記の方法である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、前記ポリカルボン酸誘導体が、アジピン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、無水コハク酸、無水マレイン酸、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸ジ無水物、フタル酸無水物、メリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、塩化アジポイル、塩化グルタリル、セバシン酸ジクロリドおよびこれらの混合物からなる群から選択される、上記方法である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、前記ポリアミンが、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン、ポリペンチレンポリアミン、ポリヘキシレンポリアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される上記方法である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、前記ポリアミンが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、ビス-ヘキサメチレントリアミン(BHMT)、N-メチルビス(アミノプロピル)アミン(MBAPA)、アミノエチル-ピペラジン(AEP)およびこれらの混合物からなる群から選択される、上記方法である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、前記ポリアミドアミンの固形分に対する前記エピクロロヒドリンの重量比が、0.308(アミン価/RSV)-9.18または0.385(アミン/RSV)-5.20の約60〜100%である、上記方法である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、前記ポリカルボン酸誘導体がアジピン酸またはグルタル酸ジメチルであり、前記ポリアミンがジエチレントリアミン(DETA)である、上記方法である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、前記ポリアミンと前記ポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体のモル比が、1.02.1〜1.48:1の範囲である、上記方法である。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態は、上記方法によって調製したポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂である。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態は、上記方法によって調製したポリポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含むクレーピング用接着剤である。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、前記製品が、フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙、およびコーヒーフィルター、からなる群から選択される上記方法により調製したポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂を含むクレーピング用接着剤を含む製品である。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態は、上記方法により調製したポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む製品であって、前記製品は、フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙およびコーヒーフィルターからなる群から選択される。
【0022】
前述の実施形態ならびに以下の発明の詳細な説明は、付随する図と関連させて読む場合より良く理解し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】アミンが過剰の様々なポリアミドアミンから生成された22種のPAE樹脂に関して、RSVに対するアミン価の比の関数として、エピクロロヒドリン対アミンの最適比のプロットを例示する図である。
【図2】アミンが過剰の様々なポリアミドアミンから生成された22種のPAE樹脂に関して、RSVに対するアミン価の比の関数として、エピクロロヒドリン対PAA固形分の最適濃度のプロットを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用する場合、単数の用語「1つの(a)」および「当該(もしくは前記)(the)」は、言葉および/または文中の流れが明らかにそうでないものを示していない限り、「1種または複数の」および「少なくとも1つの」と同義語であり、これらと交換可能に使用される。したがって、例えば、本明細書または添付の請求の範囲における「ポリアミン」についての言及は、単一のポリアミンについても言及し得るし、または1つもしくは複数のポリアミンについても言及し得る。
【0025】
本発明は、ポリアミドアミン(PAE)樹脂を調製するための方法、本発明の方法に従って調製されたPAE樹脂、本発明の方法に従って調製されたPAE樹脂を含むクレーピング用接着剤ならびにこのようなクレーピング用接着剤およびPAE樹脂を含む製品を全般的に対象としている。本発明の一態様は、(1)ポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体と過剰のポリアミンを反応させてポリアミドアミンを形成するステップと、(2)(1)のポリアミドアミンとエピクロロヒドリンなどの二官能性架橋剤を反応させてポリアミドアミン樹脂を形成させるステップとを含み、ポリカルボン酸に対するポリアミンのモル比が1.02:1〜2.0:1の範囲にあり、ポリアミドアミンの固形分に対する二官能性架橋剤の重量比が約[0.308(アミン価/RSV)-9.18]または[0.385(アミン価/RSV)-5.20]を超えず、アミン価が、ポリアミドアミン固形分1グラム当たりのアミンのミリ当量として表され、RSVが、1グラム当たりのデシリットルで表される、1M NH4Cl中の2%濃度で測定された還元比粘度である、PAE樹脂を調製するための方法である。
【0026】
本発明の方法によって調製されたPAE樹脂は、クレーピング用接着剤の優れた性能を提供する。高い接着力の値が得られ、この接着力の値は、高温条件下で維持される。加えてこの接着力は、温度が増加するにつれて有意に変化しない。
【0027】
本発明の方法において過剰のポリアミンを使用することによって、ほとんど独占的にアミン末端基を有するポリアミドアミンが生じる。ポリアミンの過剰量は、モル比約1.02:1〜モル比約2.0:1の範囲であってよく、モル比約1.02:1〜モル比約1.48:1が好ましい。アミン過剰量とは、反応混合物に存在するカルボン酸またはカルボン酸誘導体の総数に対するアミン基の総数の比を指す。過剰のポリアミンが有利となるように試薬の化学量論を変えることにより、同じ条件下で等モルの混合物を反応させれば得られたであろう分子量よりも低い分子量を有するポリアミドアミンが生じる。
【0028】
本発明の方法において使用された過剰量のアミンは、生成したポリアミドアミンポリマーの分子量を制御する手段を提供し、そのアミン含有量も制御することになる。DPnは、数平均重合度またはポリマー鎖内のモノマー単位の平均数として定義される。式1は、すべての官能基が完全に反応したと仮定して、成分のモル比からDPnを定義している。
DPn=(I+r)/(1-r) 式(1)
(式中、rは、モノマー単位の比として定義され、以下の通り計算される)
r=A/B 式(2)
【0029】
モノマー単位AとB(r)の比は、いつも1未満であることになる。本発明の場合、Aはカルボン酸官能基を指し、Bは過剰に存在するアミン官能基を指す。
【0030】
本発明の方法によって調製したポリアミドアミンは、約3〜100の範囲、より好ましくは約3〜50の範囲、最も好ましくは約3〜30の範囲のDPnを有する。
【0031】
本発明の方法に従って調製されたポリアミドアミンは通常、反応において生成した水の凝縮物を大気圧で収集しながら、ポリアミンと共にポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体を、125〜200℃の温度で1〜10時間の間加熱することにより調製される。反応は通常、水の留出物の理論的量が反応から収集されるまで、続行される。減圧が使用された場合、75℃〜150℃などのより低い温度を利用し得る。反応終了時には、生成した生成物は、ポリマー全固形分に対して約20〜80重量%の濃度で、より典型的には約30〜70重量%の濃度で、最も典型的には約40〜60重量%の濃度で水中に溶解する。
【0032】
任意のポリカルボン酸および/またはその誘導体を使用して、本発明の方法によるポリアミドアミンを調製してもよい。通常は、ジカルボン酸および/またはこの誘導体がポリアミドアミンの調製に使用されるが、2つ以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸および/またはこの誘導体を使用してもよい。適切なポリカルボン酸として、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、クエン酸、トリカルバリル酸(1,2,3プロパントリカルボン酸)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ニトリロ三酢酸、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するのに使用してもよい適切なポリカルボン酸誘導体として、カルボン酸エステル、酸ハロゲン化物および酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような誘導体は通常、対応するカルボン酸よりもアミンとよく反応し、これによりカルボン酸誘導体を用いてポリアミドアミを生成する反応条件は、ポリカルボン酸およびポリアミンからポリアミドアミンを調製するために使用される条件よりも一般的に穏やかである。
【0034】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するためにジエステルが使用される場合、重合は大気圧で、より低い温度、好ましくは約100〜175℃で行うことができる。この場合副生成物はアルコールであってよく、このアルコールの種類は、ジエステルの識別情報に依存する。例えば、ジメチルエステルが使用される場合、アルコール副生成物はメタノールとなり、他方でエタノールは、ジエチルエステルから得られる副生成物となることになる。減圧が使用される場合、75℃〜150℃のような低い温度を利用することができる。
【0035】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために任意のエステルを使用することができる。本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するためにポリカルボン酸のエステルが使用される場合、メチルまたはエチルのエステルが通常使用される。ポリカルボン酸の適切なエステルとして、アジピン酸ジメチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、コハク酸ジメチルエステル、グルタル酸ジメチルエステルおよびグルタル酸ジエチルエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この場合、アルコール副生成物(メチルアルコールまたはエチルアルコール)は、合成において蒸留され、この合成は、対応するカルボン酸が使用される場合よりも低い温度で実施することができる。ナトリウムメトキシドなどの強塩基の触媒をポリカルボン酸エステルおよびポリアミンからのポリアミドアミドの合成において使用することもできる。
【0036】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために任意の酸無水物を使用することができる。本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために使用することができる適切な酸無水物として、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸二無水物、フタル酸無水物、メリット酸無水物、ピロメリット酸無水物およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために任意の酸ハロゲン化物を使用することができる。本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために使用することができる適切な酸ハロゲン化物として、ポリカルボン酸クロライドが挙げられるが、これに限定されるものではない。この場合、ポリアミンとの反応は、極低温で実施することができる。適切なポリカルボン酸クロライドは、ポリカルボン酸と、塩化チオニルまたは三塩化リンとをそれぞれ反応させて調製することができる。例として、塩化アジポイル、塩化グルタリル、セバシン酸ジクロリドおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
単一のポリカルボン酸またはこの誘導体、ならびにポリカルボン酸の混合物を本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために使用することができる。加えて、ポリカルカルボン酸およびポリカルボン酸の誘導体の混合物もまた本発明の方法における使用に適切である。
【0039】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するために任意のポリアミンを使用することができる。適切なポリアミンとして、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン、ポリペンチレンポリアミン、ポリヘキシレンポリアミンおよびこれらの混合物を含めた一般等級のポリアルキレンポリアミンが挙げられる。本発明の方法において使用することができるポリアルキレンポリアミンは、ポリアミンとして表すことができ、このポリアミンの中で窒素原子は、式-CnH2n-(式中、nは、1よりも大きい、小さな整数である)の基によって一緒に結合しており、分子中のこのような基の数は2から約8までの範囲である。これらの窒素原子は、-CnH2n-基の中の近くの炭素原子に結合しているか、またはさらに遠く離れていて、同じ炭素原子ではない炭素原子に結合していてもよい。
【0040】
本発明の方法に使用することができる適切なポリアミンとして、これらに限定されないが、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミンおよびジプロピレントリアミンが挙げられ、これらのポリアミンは、適度に純粋な形態ばかりでなく、混合物および様々なポリアミン物質の粗原料も入手することができる。例えば、アンモニアと二塩化エチレンの反応により得られ、クロライド、水、過剰のアンモニアおよびエチレンジアミンを除去する程度までのみ精製されているポリエチレンポリアミンの混合物は、満足な出発物質である。「ポリアルキレンポリアミン」という用語は、本明細書で使用される場合、上でポリアルキレンポリアミンと呼ばれるあらゆるもの、またはそのようなポリアルキレンポリアミンおよびこの誘導体の混合物を含む。
【0041】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するのに適した追加のポリアミンとして、ビス-ヘキサメチレントリアミン(BHMT)、N-メチルビス(アミノプロピル)アミン(MBAPA)、アミノエチル-ピペラジン(AEP)および他のポリアルキレンポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)およびジプロピレントリアミン(DPTA)などのポリアミンの使用が好ましい。
【0042】
本発明の方法によるポリアミドアミンを調製するためにジアミンも使用することができる。アミン基のうちの1つのみが反応し、別の一方の基が末端基として残らない限り、ジアミンはアミン官能基に寄与しないことになる。ジアミンがポリアミンの一部分の代わりに使用された場合、このポリアミドアミンの全体のアミン官能基は減少する(すなわち、アミン当量は増加する)。これは、ポリアルキレンポリアミンの一部分を、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンで置換することで成し遂げられる。この目的のために、本発明の方法において約80%までのポリアルキレンポリアミンを、同じ分子量のジアミンで代替してもよい。通常、約50%以下のポリアルキレンポリアミンをジアミンに交換すれば十分である。
【0043】
ポリアミドアミン合成においてジアミンを添加するのと同様に、アミノカルボン酸またはラクタムは、末端基として以外ポリマーにいかなるアミン官能基も寄与せずに、アミン官能基どうしの間隔を広げる。少なくとも3個の炭素原子またはそのラクタムを含有する適切なアミノカルボン酸もまた、間隔を広げるための本発明の方法における使用に適している。例えば、6-アミノヘキサン酸およびカプロラクタムはこの目的に適した添加剤である。
【0044】
本発明の方法によるPAE樹脂を調製するために、任意の二官能性架橋剤を使用することができる。適切な二官能性架橋剤として、エピハロヒドリン、すなわち、エピクロロヒドリン、エピフルオロヒドリン、エピブロモヒドリンおよびエピイオドヒドリンなど、ならびにアルキル置換エピハロヒドリンが挙げられる。他の適切な二官能性架橋剤として、1-ブロモ-3,4-エポキシブタン、クロロエポキシヘキサンおよびヨードエポキシイソブタンが挙げられる。エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)および1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BODGE)などのジエポキシドもまた本明細書中に有用な架橋剤として含まれている。他の適切なジエポキシド架橋剤として、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、3-(ビス(グリシドキシメチル)-メトキシ)-1,2-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタンおよびビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0045】
さらに適切な二官能性架橋剤として、ジアクリレート、ジメタクリレート、ジアクリルアミドおよびジメタクリルアミドが挙げられ、これらは、マイケル付加反応によってポリアミドアミンのアミン基と反応する。そのような架橋剤の例として、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、N,N'-メチレンビスアクリルアミド、N,N'-メチレンビスメタクリルアミド、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドおよびN,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスメタクリルアミドが挙げられる。
【0046】
本発明の方法によるPAE樹脂を調製するための二官能性架橋剤として、エピクロロヒドリンを使用するのが好ましい。
【0047】
アミン過剰のポリアミドアミンからのPAE樹脂の合成は、ポリアミドアミンをエピクロロヒドリンなどの二官能性架橋剤と、好ましくは水性の媒体中で反応させて達成される。ポリアミドアミンとエピクロロヒドリンの反応は、結果として分子量を増加させ、アミノクロロヒドリンおよびアゼチジニウム官能基の形態でポリアミドアミンに反応活性な官能基を与えることになる。
【0048】
水溶液中でのポリアミドアミンとエピクロロヒドリンの反応は、10〜75%、より好ましくは15〜40%、最も好ましくは20〜35%の全固形分濃度で行う。温度は、15〜95℃、より好ましくは30〜80℃、最も好ましくは40〜70℃であってよい。
【0049】
反応は、1段階で行ってもよいし、または一連の段階で実施してもよい。1段階の方法は、ポリアミドアミン、希釈水およびエピクロロヒドリンを反応容器に加え、形成した粘度をモニターしながらこの混合物を所望の反応温度へ加熱する。形成した粘度は通常、BYK-Gardner USA、Columbia、MDから市販されているBYK-Gardner気泡粘度管を用いて監視する。粘度のモニターは、反応混合物の一試料を取り出し、これを25℃に冷却し、標準的なBYK-Gardner粘度管に置き、反応試料内での気泡が、25℃に維持した標準的なBYK-Gardner気泡粘度管へ上昇する速度を比較することによって実施する。粘度が、Gardner管の適切な数値に到達した場合、加熱をやめ、固形分を調整するために、場合によっては希釈水を加えてもよい。エンドポイントでのBYK-Gardner粘度は通常、D〜Tの範囲、より好ましくはG〜Qの範囲、最も好ましくはI〜Oの範囲である。
【0050】
多段階での方法に関しては、反応混合物の加熱を維持し、より低い固形成分で反応を継続させながら、粘度のエンドポイントに到達した時点で希釈水を加えること以外は、一段階の方法と同じ手順が適応される。次いで粘度エンドポイントに到達するまで、反応を進行させる。手順は、所与の固形分での所望の終了粘度に達するまで何度でも繰り返すことができる。典型的な多段階反応方法であれば、20〜50%固形分での第1の加熱と、固形分15〜45%での第2の加熱と、固形分10〜40%での第3の加熱とを有することもできる。異なる段階での粘度エンドポイントおよび反応温度は、異なってもよい。初期の加熱段階でより低い温度を使用して、反応物が希釈されるにつれて、温度が上昇することによって反応を促進させて完了しやすくすることが、多くの場合望ましい。
【0051】
酸による安定化は、反応エンドポイントにおいて場合によって実施してもよい。安定化に適した酸としては、鉱酸、例えば硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、硝酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸または安息香酸を含めた適切な有機カルボン酸もまたこれらに限定されるものではないが使用し得る。メタンスルホン酸またはトルエンスルホン酸を含めたスルホン酸もまた生成物を安定化させるのに適切である。安定化のために単一の酸を使用してもよいし、または安定化のために異なる酸の混合物を使用してもよい。酸を用いて安定化を行う場合、そのpHは、2.0〜7.0、より好ましくは2.5〜6.0、最も好ましくは3.0〜5.0の数値に調整する。
【0052】
生成物を酸性のpHに安定させることがいつも必要なわけではなく、場合によっては生成物を未調整で、アルカリのpHに保つことが好ましいこともある。
【0053】
PAE樹脂生成物は、約5%〜60%、より好ましくは約10%〜40%、最も好ましくは約15%〜約30%の全固形分を有することができる。
【0054】
PAE樹脂のクレーピング用接着剤の合成において、反応混合物のゲル化を避けながら、樹脂の分子量を最大にすることが望ましい。これは、多くの場合制御が困難な工程である可能性がある。優れた貯蔵安定性特性を示すこと、すなわち、その流動度を維持し、最終使用用途で使用される時点まで凝固またはゲル化しないことも樹脂にとって有利および有益である。本発明の方法により調製されたPAE樹脂は、高い分子量を有するが、調製およびその後の保存期間中のゲル化を回避する。
【0055】
本発明の方法において使用されるエピクロロヒドリンの量は、2つの異なる方法で計算することができる。第1の方法は、アミンに対するエピクロロヒドリンの比である。この数値は、ポリアミドアミン中に存在するアミン官能基のモル数に対するエピクロロヒドリンのモル数の比である。この計算を行うためには、ポリアミドアミンのアミン当量を知る必要がある。1つの慣習的な方法は、ポリマーの理論上のアミン当量を使用することである。理論上のアミン当量は、ポリアミドアミン合成に使用した出発物質の質量をまず測定し、そこから理論上の留出物の質量を引くことにより算出する。次いでこの数値をポリマー中に存在するアミン基の理論値で割る。例えば、DETA/DMG比1.2で生成されたDETA/DMGポリアミドアミンでは、開始物質の総質量は、123.80g(1.2モルDETA)と160.17g(1.0モルDMG)を足して、合計283.97となる。留出物の理論上の質量64.08gに対して、重縮合においてメタノール2モルが形成される。総質量から留出物の理論上の質量を引くと219.89gとなる。存在するアミン基の理論上の数は、DETAの総モル数と、過剰に存在するDETAのモル数を足したものに等しい。この場合、アミン過剰分のモル数は、(DETA1.2モル)+(DETA1.2モル-DMG1.0モル)=1.4となる。したがって理論上のアミン当量は、219.89g/1.4モル、アミン=157.06g/モルである。
【0056】
もう一方のエピクロロヒドリン充填量を計算する方法は、ポリアミドアミン固形分に対するエピクロロヒドリンの重量比を取ることである。エピクロロヒドリンの量は、反応に使用したポリアミドアミン固形分の重量パーセントとして表される。
【0057】
本発明の方法において使用するエピクロロヒドリンの所望の量は、ポリアミドアミンのアミン価(固形分ベース)と、アミン末端を有するポリアミドアミンからいくらかのクレーピング用接着剤を生成した後の還元比粘度(RSV)の比に相関していた。つまり、アミン価は、ポリマー内に存在する反応性のアミン基の数を測定したものであり、RSVはポリマー分子量に関係しているので、エピクロロヒドリンの量は、この比に相関しているべきであるということになる。したがって、アミン官能基の濃度が高くなるほど、反応するためにより多くのエピクロロヒドリンが必要となり、その一方で、ポリマー分子量(RSVとして測定)が高くなるほど、反応するためのエピクロロヒドリンの量が少なくてすみ、PAE樹脂内に所望の分子量を形成する。エピクロロヒドリンの最適量を使用することによって、PAE樹脂のこのような分子量を形成し、安定した生成物を提供するような反応が生じることになる。本発明の方法は、許容可能な分子量を有する安定した生成物を調製するために使用できるエピクロロヒドリンの最大量を特定している。定義された最大量よりも多くの量のエピクロロヒドリンを使用することは、樹脂合成において極めて速く粘度を形成することになり、多くの場合反応混合物のゲル化を引き起こす恐れがある。定義された最大量よりも高濃度のエピクロロヒドリンを使用すると、生成したPAE樹脂の貯蔵条件下での安定度が低くなる可能性もある。より低い分子量の生成物を望む場合は、合成において、特定された最適のエピクロロヒドリン最大濃度よりも少ないエピクロロヒドリンの量を使用することもできる。
【0058】
図1は、異なるアミン過剰ポリアミドアミンから生成した22種のPAE樹脂に関して、アミン価とRSVの比の関数として、エピクロロヒドリンとアミンの最適比のプロットを示している。結果は、すべてが相関係数0.975を有する1つの直線に収まる。したがってこの関係を使用することによって、エピクロロヒドリンとアミンの適切な比を定義することができる。
【0059】
本発明の方法によるPAE樹脂を調製するために使用される、エピクロロヒドリンとアミンの最適最大比(E/A)を計算するために使用された関係は、近似で以下のように表される
E/A=0.385(アミン#/RSV)-5.20 式(3)
(式中、エピクロロヒドリン/アミン比は、ポリアミドアミン中のアミン基に対するエピクロロヒドリンのモル比である)。ポリアミドアミンに存在するアミン基の数は、ポリアミドアミンの理論上のアミン当量から計算する。
【0060】
エピクロロヒドリン充填量は、エピクロロヒドリンとポリアミドアミン(PAA)の固形分比にも基づき得る。RSVに対するアミン価の比の関数として、この方法で計算したエピクロロヒドリンの最適充填量のプロットが、図2にプロットされている。このプロットはまた、1つの直線と極めて一致することを示している。この場合、PAE合成に使用されるエピクロロヒドリンの最適な最大充填量の関係は、近似で以下のように表される
Epi/PAA固形分重量%=0.308(アミン#/RSV)-9.18 式(4)
【0061】
式3または式4のいずれかを使用することによって、本発明の方法において使用したエピクロロヒドリンの量を算出することができる。これら2式からは、近似の当量値を得ることになる。PAE樹脂が、酸で安定化されていない場合、エピクロロヒドリンとアミンの好ましい比またはエピクロロヒドリンとPAA固形分の好ましい比を、式3および4を用いて計算した量よりも低くすることによって、生成物の確かな安定度を得ることにある。
【0062】
所望のエピクロロヒドリン量は、好ましくは式3および4で定義された最大量から式3および4で定義された量の約60%、より好ましくは式3および4で定義された最大量から式3および4で定義された量の約70%まで、最も好ましくは式3および4で定義された最大量から式3および4で定義された量の約80%の範囲である。
【0063】
RSVに対するポリアミドアミンのアミン価の比に基づき計算した、エピクロロヒドリンとアミンの比を使用することは、高い分子量および最小限の量の反応性官能基を有するクレーピング用接着剤を生成することを可能にする。エピクロロヒドリンとアミンの比をこのような方法で求めることにより、これらの生成物を商業用に生産する場合の利点も得られる。なぜならこの関係を使用することによって、開始ポリアミドアミンの分子量およびアミン含有量における標準的なばらつきを補うことにより、優れた性能を有する製品を一貫して生産することが可能となるからである。これはまた、生産者にとっては非常に費用のかかる、破壊的な出来事である、製造プロセスにおけるゲル化したバッチの発生を阻止するのにも役立つことになる。
【0064】
本発明の別の態様は、上記に記載した方法に従い調製されたPAE樹脂である。本発明のさらに別の態様は、上記に記載した方法に従い調製されたPAE樹脂を含むクレーピング用接着剤である。本発明の方法に従い調製されたPAE樹脂は、製紙プロセスにおいてクレーピング用接着剤として使用することができる。クレーピング工程は、ティッシュペーパーおよびタオル品質のペーパーの製造において一般的に実行されている。この方法は、クレーピング用ドクターブレードを使用することによって、乾燥シリンダー(ヤンキードライヤー)からの乾燥したペーパーウェブを擦過することを含む。クレーピング工程によって、微細で、波が打つような組織がシートに生じ、さらにシートの嵩を増加させ、その結果柔らかさおよび吸収性が改善される。接着剤配合物は、ヤンキードライヤーへのペーパーシートの付着性を制御するために使用されることが多い。クレーピング工程は、クレーピング用接着剤を、一般的に水溶液または分散液の形態でウェブ用の乾燥用表面に塗布することを通常含む。この表面は、回転している加熱したクレーピング用シリンダー、例えばヤンキードライヤーとして知られている装置などの表面が好ましい。次いでウェブを、指摘したこの表面に接着する。続いてこれを、クレーピングデバイス、好ましくはドクターブレードを用いて表面から剥がす。クレーピングデバイスに対するウェブの衝撃により、ウェブ内のファイバーとファイバーの結合が破壊され、ウェブにしわまたはひだが生じる。この点に関しては、繊維ウェブ、特にペーパーウェブなどは、これらに柔らかさおよび嵩などの望ましい質感的特徴を与えるために、従来からクレーピング工程の対象となっている。このような接着配合物を使用することにより、製品の品質を改善し、製紙プロセスをより良く制御することができることは周知である。
【0065】
本発明の方法により調製されたPAE樹脂を含むクレーピング用接着剤は、溶液または分散液の形態であってよく、1種または複数の成分、通常水溶性ポリマー、例えば追加のポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリメタクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(n-ビニルピロリジノン)、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グァーガム、澱粉、寒天、キトサン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、高度に分岐したポリアミドアミンおよびシリル化したポリアミドアミンをさらに含むことができる。クレーピング用接着剤配合物中に他の水溶性のポリマーと組み合わせる場合、本発明に方法により調製したPAE樹脂の、もう一方の水溶性ポリマーに対する重量比は0.01〜0.99から0.99〜0.01までの範囲とすることができる。
【0066】
本発明の方法により調製したPAE樹脂を含むクレーピング用接着剤配合物はまた、1種または複数の剥離剤ならびにクレーピング工程に影響を与え得る他の添加剤も含むことができる。クレーピング用接着剤パッケージとして知られている。適切なクレーピング用剥離剤は、例えば、その全体の開示が本明細書中に参照により組み込まれている、米国特許第5660687号明細書(特許文献12)、および米国特許第5833806号明細書(特許文献13)で開示されている。接着剤成分および剥離剤の添加剤に加えて、クレーピング用接着剤配合物は、界面活性剤、分散剤、水の硬度を調整するための塩、クレーピング用接着剤組成物のpHを調整するための酸または塩基、改質剤、または他の有用な添加剤をさらに含むことができる。適切な改質剤として、これらに限らないが、米国特許第6133405号明細書(特許文献14)の粘着剤樹脂、または米国特許第6280571号明細書(特許文献15)の安定剤が挙げられるが、これら全体の開示が本明細書中に参照により組み込まれている。
【0067】
本発明の方法により調製したPAE樹脂は、これだけで、またはクレーピング用接着剤パッケージ内の他の成分との組合せのいずれかで、繊維ウェブにクレーピングを施すための手段に応用することができ、このウェブにクレーピングを施すために、この手段を使用する。さらにこの点に関して、本発明のクレーピング工程は、PAE樹脂を、これだけでまたはクレーピング用接着剤パッケージとの組合せのいずれかにより、繊維ウェブ用の乾燥用表面に塗布するステップ、すなわち繊維ウェブを供給するステップと、繊維ウェブを乾燥用表面に押しつけることによってこのウェブを表面に接着するステップと、クレーピングデバイスで乾燥用表面から繊維ウェブを剥がすことによって、繊維ウェブにクレーピングを施すステップとを含むことができる。
【0068】
本発明のクレーピング用接着剤の応用は、当分野で知られている任意の方法で、および水性、固体、分散液またはエアロゾルを含む形態で行うことができる。好ましい応用の方法は、ペーパーウェブの移動の前に、乾燥用表面の表面に向けられた散布ブームを介して行われる。クレーピング用接着剤は、抄紙機のウェットエンドに加えることもできるし、湿紙がその表面と接触する前に湿紙に塗布することもできる。クレーピング用接着剤のスプレーによる応用は、当分野で知られている任意の従来からの方法または応用手順の任意の所望の組合せにより行うことができる。
【0069】
本発明のさらに別の態様は、上記の方法により調製したポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂または上記の方法により調製したポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含むクレーピング用接着剤を含む製品である。このような製品の例として、フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙およびコーヒーフィルターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明は、以下の非限定的な例を参照することによってこれよりさらに詳細に記述されることになる。
【0071】
(実施例)
(実施例1)
アジピン酸および過剰のDETAから生成したポリアミドアミン
装置:機械式アンカー型撹拌機、熱電対、加熱マントルおよび留出受器を装備した1リットルの樹脂の反応釜。反応容器に355.94gDETA(99+%)を仕込んだ。撹拌しながら、438.42gの量のアジピン酸(99+%)を15分間にわたり添加した。この添加中混合物の温度は、117.4℃に上昇した。この反応温度を125℃に上げて、そこで20分間保持した。20分後に125℃であった反応温度を150℃に上げ、そこで20分間維持した。この20分の温度維持期間の最後に、反応の設定温度を170℃に上げた。留出物を収集しながら温度を220分間170℃で維持した。この反応から総計99mLの留出物を得た(理論量=108.12mL)。170℃での220分間の加熱の終わりに、加熱をやめ、680gの温水(50〜60℃)を反応混合物に添加した。生成物を周辺温度まで冷却し、ビンに移した。生成物は、固形成分総含有量が49.37%、pHが10.59、60rpmでの#2スピンドルを用いたLVFモデルBrookfield粘度計で測定したBrookfield粘度が195cPsであった。ポリアミドアミン生成物のアミン含有量は、乾燥生成物固形分ベースで6.725meq/gであった。1M NH4Cl中の2.0%固形分で測定した生成物の還元比粘度(RSV)は、0.0929dL/gであった。このアミン価およびRSVを、以下の通り求めた。
【0072】
ポリアミドアミンの総アミン含有量を求めるために使用される方法は、この生成物を1:1エチレングリコール-イソプロパノール混合物中に溶解するステップと、次いでこの生成した溶液を、組合せ式pH電極を用いて、1N塩酸(または1:1EG-IPA)で電位差滴定により滴定するステップとを含む。
【0073】
[装置]
(1)0.0001g付近まで秤量可能な天秤
(2)Brinkman Instrumentsから市販されているモデルMetrohm Titrino794/798またはこの同等品の20mLビュレットおよびスターラーを備えた、自動滴定装置
(3)組合せ式pH電極-Brinkmann Instrumentsから市販されているMetrohm Part No. 6.0233.100。pH緩衝液で電極性能を1週間に少なくとも一度チェックすること。
(4)撹拌機、磁気式-VWR Scientific Co.から市販
(5)撹拌棒、磁気式、長さ1〜1/2"
(6)ビーカー、150mL
(7)ビン、試薬保存用
(8)フラスコ、容積測定用、1リットル
(9)シリンジ、使い捨て型、10mL、試料秤量用
【0074】
[試薬]
(1)塩酸、濃縮したもの、試薬グレード、VWR Scientificから市販されているCat.No.VW3110または同等品。
(2)エチレングリコール、実験用グレード、VWR Scientificから市販されているCat.No.JTL715またはFisher Scientificから市販されているCat.No.E178または同等品。
(3)イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、ACSグレード認定、VWR Scientificから市販されているCat No.VW3250、またはFisher Scientificから市販されているCat.No.A464-4もしくはA416、または同等品。
(4)エチレングリコール-イソプロパノール混合物、1:1-試薬保存ビンへ、エチレングリコール1リットル(試薬2)と、イソプロパノール1リットル(試薬3)を合わせ、よく混合する。
(5)塩酸滴定剤、1N-1:1のエチレングリコールイソプロパノール約400mL(試薬4)を、1リットルのメスフラスコに添加する。メスシリンダーを用いて、濃塩酸86mL(試薬1)を添加し、よく混合する。その溶液を室温まで冷却させておく。1:1のエチレングリコール-イソプロパノール(試薬4)で容量になるまで希釈する。トリス-(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)を第1標準として用いてこの溶液を標定する。CO2を含まない、蒸留水または脱イオン水中にTHAM標準を溶解し、HCl溶液で、電位差測定の当量点、またはTHAM約1.7グラムを用いてメチルパープルエンドポイントへ滴定する。HClの正常性を次いで計算する。
(6)ブロモフェノールブルー指示薬溶液-050〜16を参照。
【0075】
[抽出見本]
試料をよく混合し、これが均一であることを確認する。試料が濁っている場合でも、これを十分に分散することによって、代表的な試料を得ることができる。
【0076】
[手順]
(1)試料2つ分(同じもの)を、別個の150mLビーカーに0.0001g付近まで秤量する。それぞれ約12〜15mLの滴定を行うにはこの量で十分である。式5を参照されたい。使い捨て型シリンジからの差により秤量することを推薦する。注意:試料は、秤量前には約25℃であること。
(2)エチレングリコール-イソプロパノール混合物を、電極(80mL)を覆うまで添加する。
(3)試料を含有したビーカーを磁気撹拌機上に置き、少なくとも10分間の間、または溶液が透明になるまで撹拌する。加熱は、必ずしも必要ではないはずである。溶解するのが特に困難な場合には、試料を温めるだけでよい。
(4)製造元の指示書によると、溶液中に電極を挿入し、mV滴定用の滴定装置をセットする。代わりの方法として、ブロモフェノールブルーの指示溶液0.1〜0.2mLを添加し、よく混合する。(電位差測定の滴定が好ましい。)
(5)標準化した1N HCl溶液で試料溶液を滴定する(試薬5)。十分な混合を維持するが、試料をビーカーの側面上にはね散らすことは避ける。指標エンドポイントは、青から、緑色を介して、黄色への変化である。黄色がエンドポイントである。
(6)当量点で消費された滴定剤の容量を求める。当量点は、主要な屈曲の中間点である。
(7)滴定溶液から直ちに電極を取り出し、蒸留水または脱イオン水で電極をすすぐ。滴定と滴定との間には電極は濡れたままにしておくか、または次の使用まで電極保存溶液に浸しておく。
(8)試料中のアミン濃度を、式6を用いて、meq/gとして計算する。式7を用いて乾量基準に変換する。
【0077】
[計算]
【0078】
【数1】

【0079】
式中、
14=所望の滴定容量、mL
Aw=予想される湿量基準での総アミン量、meq/g
TS=全固形分のうちの試料の重量%
Ad=予想される乾量基準での総アミン量、meq/g
【0080】
【数2】

【0081】
式中、
V2=試料により消費される滴定剤の容量、mL
N=滴定剤の正常性(試薬5)
W2=試料の重量、g
【0082】
【数3】

【0083】
式中、
A=式2からの総アミン量、meq/g
TS=試料の全固形分(%)
【0084】
還元比粘度(RSV)の測定:1N塩化アンモニウム中の2%ポリマー溶液の還元粘度を、Cannon自動キャピラリー粘度計を用いて25.0℃で求める。2%ポリマー溶液および純粋溶媒の流れ時間を測定し、相対粘度(Nrel)を計算する。この相対粘度から還元粘度を計算する。
【0085】
[機器]
(1)Cannon Polyvisc自動キャピラリー粘度計、Cannon Instrument Co.、State College、PA.から市販されている、熱電冷却を備えているもの。
(2)粘度計チューブ、No.0.3〜30、直線切り、山形先端部、粘度計定数C=0.01-同書Cat.No.P65.2116。
(3)コンピュータ、特定の機器必要条件を満たすもの、プリンター付き
(4)機器用ソフトウェア、還元粘度の報告能力を有するもの。
(5)バイアル、Kimble Glass #60958A-4-Fisher Scientific Co.から市販されているCat.No.03-339-5A、VWR Scientificから市販されているCat.No.66014-301、または同じサイズのプラスチック製またはガラス製のバイアル。
(6)1穴の開いたキャップ、Kimble Glass #73804-24400-同書Cat.No.03-340-7K、66010-887または同等品。
(7)穴のないキャップ-同書Cat.No.03-340-14A、16198-915または同等品。
(8)アルミ箔、薄く、安価のもの(自社ブランド)。
(9)メスフラスコ、50mL、Aクラス。
(10)フィルターまたはステンレス鋼スクリーン、ca100メッシュ。
(11)定温槽、25℃。
【0086】
[試薬]
(1)塩化アンモニウム、粒状のもの。ACS試薬グレード。
(2)溶媒(1N塩化アンモニウム)。53.5+/-0.1gのNH4Clを1-リットルの容積測定用メスフラスコに添加する。蒸留水で容量まで希釈し、混合する。
(3)洗浄溶液、濃縮Chromerge(H2S04-K2Cr2O7)またはNo-Chromix(クロムを含まない)。希釈してはならない。水/lPAおよびアセトンが十分でない場合のみ使用。
(4)アセトン、試薬グレード。
(5)水、蒸留水または脱イオン水。
(6)イソプロパノール/水、50:50の混合、溶媒を洗浄するために使用。
【0087】
[機器のセットアップ]
(1)測定を行う予定の約1時間前に機器およびコンピュータシステムの電源を入れておく。機器用ソフトウェアを実行する。注意:測定を行う前に、粘度計チューブを洗浄および乾燥させておく。必要に応じて、洗浄サイクルを実行する。
(2)上部メニューバーから、Configure、Provisc、Instrument Settingsを選択し、機器パラメータが適切にセットされているかを確認する。
【0088】
注意:空気の流れおよびVacuumの設定は、自動的にセットされるが、必要に応じて調整することができる。
【0089】
[手順]
[試料の調製]
(1)ポリマー試料の全固形分を求める。
(2)式8を用いて固形分1.000+/-0.020gに対して必要なポリマーの量を計算する。
(3)ステップ2で計算した、試料の適量である0.0001g付近まで、50mLメスフラスコに秤量する。代わりに、試料を小さいビーカーへ入れて秤量し、塩化アンモニウム溶液で4、5回洗浄した50mLメスフラスコへ定量的に移すこともできる。
(4)20〜25mLの1N塩化アンモニウムをフラスコに添加し、試料が完全に溶解するまで静かにかき混ぜる。次いで印の1/4"以内まで塩化アンモニウム溶液を添加する。
(5)フラスコおよび含有物を25℃定温槽内に置き、少なくとも15分間の間、温度が釣り合うようになるまで放置する。
(6)容量が印に達するまでさらなる溶媒でゆっくりと増やし、最後に混合して完全な均一性を得る。これによって2.000+/-0.040%溶液を得ることになる。ポリマー溶液の実際の濃度を、式2を用いて0.0001g/100mL付近まで計算する。
(7)100-メッシュステンレス製スクリーンまたは匹敵する細孔サイズのフィルターを介して溶液をビーカーへと濾過し、次いでバイアルの約2/3まで満たすように試料をバイアルに移す。バイアルを薄いアルミ箔で覆い、1穴のキャップでバイアルにふたをする。
【0090】
[試料分析]
(1)100-メッシュフィルターを介して塩化アンモニウム溶媒をビーカーへと濾過し、次いでバイアルの約2/3まで満たすように試料をバイアルに移す。バイアルをアルミ箔で覆い、1穴のキャップでバイアルにふたをする。
(2)ソフトウェアへログインする。
(3)塩化アンモニウム溶媒のバイアルおよび試料バイアルをオートサンプラートレーに置く。塩化アンモニウム溶媒は、いつも最初にサンプルランを行わなければならない。注意:試料が実行される場合、塩化アンモニウムの流れ時間は、少なくとも一日一度測定しなければならない。この数値をRVの計算に使用する。
(4)試料の情報をコンピュータに入力する。
(a)第1の試料(溶媒)の位置をウィンドウ上部(Instrument View Window(機器を見るウィンドウ))で選択する。
(b)F5ファンクションキーを押すかまたは選択位置で右クリックする。
(c)「2 Determine Blank(2 ブランクを求める)」を選択(溶媒粘度)。
(d)密度が1.0000g/mLにセットされていることを確認して、「OK」をクリック。
(e)溶媒(ブランク)に対して、F2機能キーを押してID名を入力するまたはで左クリックして位置を選択する。溶媒のID名をタイプして、「Enter(実行)」を押す。
(f)第1の試料溶液に対して位置を選択し、F2機能キーを押すか、または左クリックして位置を選択する。試料のID名をタイプして、「Enter(実行)」を押す。
(g)「Polymer Sample Measurement Options(ポリマー試料測定オプション)」という表示のウィンドウが現れる。濃度は、2.0000g/dLである。実際の試料濃度を入力する(式9)。
(h)密度が1.0000g/mLに設定されているか確認する。
(i)RV計算に使用するブランクの試料IDを選択するか、入力する。
(j)「OK」をクリックする。
(k)残りの試料に対して(f)から(j)のステップを繰り返す。
(5)「Instrument View Window(機器を見るウィンドウ)」の中のRUN(作動)ボタンをクリックする。PolyViscが熱平衡サイクル(10分間)でスタートする。
(6)下の分析結果ウィンドウを選抜し、左上のメニューバーのMainを選択し、Printを選択して結果を印刷する。
【0091】
[計算]
【0092】
【数4】

【0093】
式中、
TS=ポリマーの全固形分(%)
Ws=固形分1.000+/-0.020gに対して必要な試料の重量
【0094】
【数5】

【0095】
式中、
Ws=ポリマー試料の実際の重量
TS=ポリマーの全固形分、%
50=希釈されたポリマー溶液、mL
Cp=ポリマー溶液の濃度、g/l00mL
【0096】
【数6】

【0097】
式中、
ts=2%試料溶液の25℃での平均流れ時間(sec.)
to=溶媒の25℃での平均流れ時間(sec.)
Nrel=相対粘度
【0098】
【数7】

【0099】
式中、
Nrel=相対粘度
Cp=溶液100mLごとの、グラム単位でのポリマー固形分のポリマー溶液濃度
Nred=還元比粘度(RSV)
還元比粘度(RSV)を0.0001単位付近まで報告する。
【0100】
(実施例2〜11)
アジピン酸および過剰のDETAから生成したポリアミドアミン
表1A/1Bは、過剰のポリアルキレンポリアミンで調製した数種のポリアミドアミンの反応条件および特性を一覧にしたものである。実施例1〜11は、アジピン酸と反応させた過剰のジエチレントリアミン(DETA)から調製した。実施例2〜11のポリアミドアミンは、実施例1に記載された方法と同様の方法によって調製した。アミン価およびRSV値は、実施例1に記載された方法を用いて得た。
【0101】
表1A/1B-過剰のDETAで生成したポリアミドアミン
【表1A】

【表1B】

【0102】
(実施例12)
グルタル酸ジメチルおよび過剰のDETAから生成したポリアミドアミン
装置:機械式アンカー型撹拌機、熱電対、加熱マントルおよび留出受器を装備した1リットルの樹脂の反応釜。この反応容器に340.46gDETA(99+%)を仕込んだ。撹拌しながら、480.51gの量のグルタル酸ジメチル(98%)を5分間にわたり等圧化添加漏斗を介して添加した。この添加中、混合物の温度は、21.6℃から16.8℃へ下がった。温度を125℃へ上げながら、装置を還流用に構成した。温度が125℃に到達した場合、強い還流を観察した。還流しながら反応温度を1時間の間125℃より低く維持した。1時間の終わりに還流混合物の温度を106.1℃に下げた。この時点で装置を、メタノール留出物を取り去るように再構成した。反応の設定温度を125℃で維持しながら留出物を採取した。23分後には、110mLのメタノール留出物を採取していた。33分の時点では130mLのメタノール留出物を採取し、留出物の生成速度は、かなり遅くなっていた。次いで温度の設定点を175℃に変えた。22分間で、反応温度は、175℃に到達し、全部で155mLのメタノール留出物を採取した。留出物を収集しながら、反応温度を175℃で3時間維持した。175℃での3時間の終わりには、全部で160mLの留出物が採取された。この反応に対するメタノール留出物の理論上の容量は、152.1mLであった。この時点で反応の加熱をやめ、撹拌された生成物に、620gの温かい希釈水を添加した。生成物は、全固形分が50.99%、pHが10.22、および60rpmでの#2スピンドルを用いてLVFモデルBrookfield粘度計で測定したBrookfield粘度が510cPsであった。ポリアミドアミン生成物のアミン含有量は、乾燥生成物固形分ベースで6.207meq/gであった。この生成物の還元比粘度(RSV)は、1M NH4Cl中の2.0%固形分で測定した場合0.1333dL/gであった。アミン価およびRSVは、実施例1で記載された通りに求めた。
【0103】
(実施例13〜23)
グルタル酸ジメチル(DMG)および過剰のDETAから生成したポリアミドアミン
グルタル酸ジメチル(DMG)と過剰のDETAの反応から調製された数種のポリアミドアミンに関して、反応の条件および特性を表1に示す。実施例12〜23は、この方法によって調製されたポリアミドアミンである。実施例13〜23のポリアミドアミンはすべて、実施例12に記載された方法と同様の方法によって調製された。アミン価およびRSV値は、実施例1に記載された方法を用いて得た。
【0104】
(実施例14)
アジピン酸およびグルタル酸ジメチル(DMG)と過剰量のDETAの混合物から生成されたポリアミドアミン
装置:機械式アンカー型撹拌機、熱電対、加熱マントルおよび留出受器を装備した1リットルの樹脂の反応釜。この反応容器に332.72gDETA(99+%)を仕込んだ。撹拌しながら、240.26gの量のグルタル酸ジメチル(98%)を3分間にわたり等圧化添加漏斗を介して添加した。この添加中、混合物の温度は21.4℃から17.8℃へ下がった。次いで219.21gの量のアジピン酸を、撹拌した反応混合物に15分間にわたり添加した。この添加中に反応混合物の温度は17.8℃から35.6℃に上がった。装置を還流用に構成し、温度を125℃に設定した。温度が125℃に到達した時点で、強い還流が観察され、温度が急速に151.1℃へ上がった。加熱マントルを取り除き、温度を約120℃まで下げた。この反応混合物を1時間の間、還流条件下で維持し、この間温度は、約97℃で安定させた。1時間の還流時間の終わりに、メタノール留出物を取り出すように装置を再構成した。反応の設定温度を125℃で維持しながら留出物を採取した。19分間後には80mLの留出物が採取されていた。アジピン酸およびグルタル酸ジメチルの混合物を出発物質として使用したため、反応からの留出物は、水とメタノールの混合物であった。31分の時点では、90mLの留出物が採取されており、留出物の生成速度は、かなり遅くなっていた。次いで温度の設定点を、170℃に変えた。32分間で、反応温度は169.3℃に到達し、全部で127mL留出物が採取された。次いで留出物を収集しながら、反応温度を170℃で3時間維持した。170℃での3時間の終わりに、全部で155mLの留出物を採取した。この反応に対する留出物の理論上の容量は、169.3mLであった。この時点で反応の加熱をやめ、640gの温かい希釈水を、撹拌した生成物に添加した。生成物は、全固形分が48.35%、pHが10.39、60rpmでの#2スピンドルを用いたLVFモデルBrookfield粘度計で測定したBrookfield粘度が285cPsであった。ポリアミドアミン生成物のアミン含有量は、乾燥生成物固形分ベースで6.267meq/gであった。生成物の還元比粘度(RSV)は、1M NH4Cl中の2.0%固形分で測定した場合、0.1146dL/gであった。アミン価およびRSVは、実施例1に記載された通りに求めた。
【0105】
(実施例25〜30)
過剰のMBAPAとアジピン酸またはDMGから生成されたポリアミドアミン
表1の実施例25〜30の項目は、過剰のN-メチル-ビス-(アミノプロピル)アミン(MBAPA)で生成したポリアミドアミンに対するものである。実施例25〜29は、グルタル酸ジメチルで生成され、実施例12に記載された方法と同様の方法によって調製された。実施例30は、アジピン酸で調製され、実施例1に記載された通りに合成された。これら実施例のすべてに対するアミン価およびRSVは、実施例1に記載された通りに求められた。
【0106】
(実施例31および32)
過剰のDPTAとアジピン酸から生成されたポリアミドアミン
表1の実施例31および実施例32の項目は、過剰のジプロピレントリアミン(DPTA)とアジピン酸で生成したポリアミドアミンに対するものである。これらのポリアミドアミンは、実施例1に記載された通りに合成された。これら両実施例に対するアミン価およびRSVは、実施例1に記載された通りに求められた。
【0107】
(実施例33)
アジピン酸と過剰のDETAの、実施例10のポリアミドアミンから生成されたPAE樹脂
装置:冷却器、熱電対およびヒーター、pHプローブならびにオーバーヘッド機械撹拌装置を装備した3000mLの丸底4口フラスコ。727.13gの量の、実施例10からのポリアミドアミンを希釈水492gの入ったフラスコに仕込んだ。この撹拌された反応混合物に、エピクロロヒドリン25.91gを加えた。反応混合物を周辺温度で30分間撹拌させておいた。次いで反応温度を50℃に設定した。温度が50℃に到達した時点で、BKY-Gardnerバブル粘度チューブを用いて粘度を監視した。50℃で142分間後には、BKY-Gardner粘度は、値M-に達していた。この時点で822gの量の希釈水を反応混合物に添加し、加熱を50℃で維持した。50℃でさらに75分間経過後、粘度は、BKY-Gardner粘度値M+を達成していた。加熱をやめ、冷希釈水837gをソルビン酸カリウム保存剤1.61gと共に反応混合物に添加した。pHを濃縮リン酸(85%)95.18gで6.00に調整し、次いで濃硫酸(98%)34.91gで3.99に調整した。生成物は、全固形分が17.30%で、60rpmでの#2スピンドルを用いてLVFモデルBrookfield粘度計で測定したBrookfield粘度が220cPsであった。生成物の還元比粘度(RSV)は、実施例1に記載された通り、1M NH4Cl中の2.0%固形分で測定した場合、0.9729dL/gであった。
【0108】
(実施例34〜80)
アミン過剰のポリアミドアミンから生成されたPAE樹脂
表2A/2Bは、表1に挙げたポリアミドアミンから生成したいくつかのPAE樹脂の合成の条件および特性を示している。PAE樹脂は、実施例33に記載された通り、水溶液中でポリアミドアミンとエピクロロヒドリンを反応させて調製した。場合によっては、反応を促進させるために温度を上げた。所望の粘度の形成を達成するため、追加のエピクロロヒドリンを反応の経過の途中で時々加えた。アミンに対するエピクロロヒドリンの値およびポリアミドアミンに対するエピクロロヒドリンの重量%の値は、反応の間中に添加されたすべてのエピクロロヒドリンを考慮に入れている。濃硫酸もしくは濃縮リン酸のいずれか、またはこれら2つの組合せを用いて、生成物のpHを3.0〜4.0に調整した場合もあったし、生成物をpH調整なしで保存した場合もあった。
【0109】
表2A/2B-アミン過剰のポリアミドアミンから調製したPAE樹脂
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【表2D】

【表2E】

【表2F】

【0110】
表3A/3Bは、アミン末端を有するプレポリマーのうちの数種に対して最適な配合物の一覧を表し、およびこれらプレポリマーのRSV、アミン価およびアミン価/RSV比も示している。
【0111】
表3A/3B-アミン過剰のポリアミドアミンから調製したPAE樹脂に対する最適な配合物
【表3A】

【表3B】

【0112】
図1は、アミン価/RSV比の関数として最適なepi/アミン比をプロットしたものを示している。この関係から相関係数0.975を有する1つの直線が得られる。アミン価とRSVの比の関数としての、最適なエピクロロヒドリンとPAA固形分濃度の比が、図2でプロットされている。このプロットは、相関係数0.970を有する1つの直線を示す。このような2つの関係を使用することによって、アミン末端を有するポリアミドアミンから生成されたPAE樹脂の合成に使用される適切なepi/アミン比を迅速に確証することができる。これにより、新たに合成されたポリアミドアミンに対する適切なepi/アミン比を確証するため時間のかかる実験を行う必要性がなくなる。
【0113】
[接着力テスト]
本発明のPAE樹脂の性能の測定を行うため、見込まれるクレーピング用接着剤の接着特性を評価するためのデバイスを構築した。このデバイスは、MTS Co.、Minneapolis、MN製のMTS(商標)Test Star(商標)材料試験装置のアクチュエーター上に下部プラテンとして組み込まれた加熱可能な鋳鉄のブロックから構成された。この試験装置は、装置のロードセルに結合している、固定された上部プラテンを有する。MacDermid Inc.、Denver COから市販されている0.057〜0.058インチのFlex Cushion付きの両面テープで、紙の試料は上部プラテンに接着されているが、この両面テープは、紙の試料とロードセルとの間に接着されている。この方法に使用した紙は、70/30広葉樹/針葉樹の漂白したクラフト紙原料から調製した40#ベースの重量のシートであった。
【0114】
下部プラテンを120℃に加熱し、テストする接着剤の水溶液をスプレーした。接着剤の濃度がわかっている接着剤溶液の既知の量を使用した。既知の濃度の、既知の量の溶液を、容量測定用スプレーボトルを装備したエアブラシを使用して提供された。使用したエアブラシは、Paasche Airbrush Company、Harwood Heights、IL製のPaasche Vエアブラシであった。容量測定用のスプレーボトルを使用すれば、加熱したブロックに塗布される溶液の容量を正確に測定することができる。これらのテストには、4.0%固形分濃度を有する1.2mL溶液を使用した。
【0115】
接着剤溶液を加熱したブロック上にスプレーした後で、アクチュエーターを上昇させて、加熱したブロックを紙試料に10kgの力で接触させる。次いでアクチュエーターを下降させ、下部プラテンを紙から引き剥がすのに必要な力を決めた。この力を、テストされる接着剤の接着力の値として測定した。
【0116】
加えられる力は、いつもちょうど10kgではなかったので、加えられた力のわずかなばらつきを補うために、得た接着力の値を標準化した。この標準化は、測定された接着力の値に[10/(加えられた力(kg))]をかけることによって行った。
【0117】
上述のような接着力テストを、数種のPAEクレーピング用接着剤で実施した。このテストの結果を表4に示す。
【0118】
【表4】

【0119】
本発明のPAE樹脂を、Hercules Incorporated、Wilmington DEより販売されている市販のPAEクレーピング用接着剤、Crepetrol A3025と比較した。本発明の接着剤からは、Crepetrol A3025から得られた接着力の値と同様またはこれを有意に超える接着力の値を得た。
【0120】
他の接着力テストの実験をいくつかの温度で実施することによって、高温での接着剤の性能を評価した。これらの結果を表5に示す。
【0121】
【表5】

【0122】
Crepetrol5318、Hercules Incorporated、Wilmington DEから販売されている市販のPAEクレーピング用接着剤を比較用に使用した。Crepetrol5318は、120℃で本発明の接着剤よりも高い接着力を示すにもかかわらず、テスト温度が135℃および150℃に上がるにつれ、Crepetrol5318の接着力は落ち、その一方で本発明の接着剤は、テスト温度が上がっても接着力はわずかの減少しか示さない。これは、高温条件下でこれらの材料が改善された性能を有しているに違いないことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリカルボン酸またはポリカルボン酸誘導体を過剰のポリアミンと反応させてポリアミドアミンを形成するステップと、
(2)(1)のポリアミドアミンと二官能性架橋剤を反応させてポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を形成するステップと
を含み、前記ポリカルボン酸に対する前記ポリアミンのモル比が、1.02:1〜2.0:1の範囲であり、
前記ポリアミドアミン固形分に対する前記二官能性架橋剤の重量比が、約0.308(アミン価/RSV)-9.18を超えず、または0.385(アミン価/RSV)-5.20を超えず、前記アミン価が、ポリアミドアミン固形分1グラム当たりのアミンのミリ当量として表され、前記RSVが、1グラム当たりのデシリットルで表される、1M NH4Cl中の2%濃度で測定された還元比粘度である、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を調製するための方法。
【請求項2】
(2)が水性媒体中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二官能性架橋剤がエピクロロヒドリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸が、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、クエン酸、トリカルバリル酸(1,2,3-プロパントリカルボン酸)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ニトリロ三酢酸、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)および1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸誘導体が、アジピン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、無水コハク酸、無水マレイン酸、N,N,N',N'-エチレンジアミン四酢酸二無水物、フタル酸無水物、メリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、塩化アジポイル、塩化グルタリル、塩化セバコイルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリアミンが、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン、ポリペンチレンポリアミン、ポリヘキシレンポリアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミンが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、ビス-ヘキサメチレントリアミン(BHMT)、N-メチルビス(アミノプロピル)アミン(MBAPA)、アミノエチル-ピペラジン(AEP)およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミドアミン固形分に対する前記エピクロロヒドリンの重量比が、0.308(アミン価/RSV)-9.18または0.385(アミン価/RSV)-5.20の約60〜100%である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリカルボン酸誘導体が、アジピン酸またはグルタル酸ジメチルであり、前記ポリアミンがジエチレントリアミン(DETA)である、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリカルボン酸に対する前記ポリアミンのモル比が、1.02:1〜1.48:1の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
請求項3に記載の方法によって調製されるポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂。
【請求項12】
請求項11に記載のポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む、クレーピング用接着剤。
【請求項13】
フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙およびコーヒーフィルターからなる群から選択される、請求項12に記載のクレーピング用接着剤を含む製品。
【請求項14】
フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、拭取り紙、ペーパータオル、ペーパーナプキン、濾紙およびコーヒーフィルターからなる群から選択される、請求項11に記載のポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂を含む製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516911(P2010−516911A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546538(P2009−546538)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/051456
【国際公開番号】WO2008/089419
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】