説明

アモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】エネルギーの変換効率の高いフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池の基板に適した、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなるアモルファスシリコン太陽電池基板用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる基材層を含む二軸配向フィルムであって、フィルムの全光線透過率が85%を越えており、200℃で10分間処理した際のフィルムの熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも0.1〜1.0%であり、かつフィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値が0.4%以下であるアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなるアモルファスシリコン太陽電池基板用ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、変換効率の高いアモルファスシリコン太陽電池の基板に適した、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる透明なアモルファスシリコン太陽電池基板用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池には、一般的にガラスを基板材料とするリジットタイプのものと、フィルムを基板材料とするフレキシブルタイプがある。そうした中で最近では、時計あるいは携帯電話や携帯端末のような移動体通信機器の補助電源として、フレキシブルタイプの太陽電池が多く活用されるようになってきた。従来のリジットタイプは、フレキシブルタイプに比べると太陽電池セルでのエネルギーの変換効率は高いが、機器の薄型化や軽量化に限界があり、また衝撃を受けた場合には太陽電池モジュールが破損するケースも考えられる。
このため、フレキシブルタイプの有用性は以前から注目されてきた。例えば特許文献1には、高分子フィルム基板上に変換素子としてアモルファスシリコン層を電極層で挟んだ構造の薄膜太陽電池が開示されており、その中でポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等が例示されている。
【0003】
アモルファスシリコン太陽電池基板用途に適したポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムとして、アモルファスシリコン層を200℃前後で加工する必要性から、耐熱寸法安定性に優れるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムが提案されている(特許文献2、特許文献3)。また特許文献4には高透明なポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムが開示されているものの、ディスプレイ用に適した輝度改良を目的としている。
一方、高分子フィルム基板を用いたフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池は、従来のガラス基板を用いたリジットタイプのアモルファスシリコン太陽電池に較べると、未だエネルギーの変換効率が低いことから、より変換効率の高いフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池が求められているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平1−198081号公報
【特許文献2】特開昭62−84568号公報
【特許文献3】特開2004−335517号公報
【特許文献4】特開2004−9362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決し、エネルギーの変換効率の高いフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池の基板に適した、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主成分とするポリエステルフィルムを提供することにある。また本発明の他の目的は、粒子を少量含む回収フィルムを使用した場合にもエネルギー変換効率の高い、フレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池基板に適したポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムを単層でアモルファスシリコン太陽電池の基板フィルムとして用いた場合のエネルギー変換効率に較べて、基材層の屈折率より低屈折率である塗布層をその少なくとも片面に設けることによって、フィルムの透明性が向上し、かつ高温熱収縮率が低い場合に、従来よりも高いエネルギー変換効率が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる基材層を含む二軸配向フィルムであって、フィルムの全光線透過率が85%を越えており、200℃で10分間処理した際のフィルムの熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも0.1〜1.0%であり、かつフィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値が0.4%以下であるアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。
【0008】
また、本発明のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、基材層の少なくとも片面に塗布層が形成されてなること、塗布層の屈折率が1.40〜1.70であること、塗膜層厚みが20〜150nmであること、基材層の両面に塗布層が形成されてなること、基材層中の粒子含有量が0.0005〜0.01重量%であること、の少なくともいずれか1つを具備するものも好ましい態様として包含する。
本発明はまた、該アモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルムを基板として含むアモルファスシリコン太陽電池も包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムに較べて透明性が向上することからエネルギー変換効率の高いフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
<基材層>
本発明の基材層は、主たる成分がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである。かかるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される。「主たる成分」とは、基材層の重量を基準として90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上であることを意味する。ナフタレンジカルボン酸は、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは単独重合体、第三成分を共重合した共重合体のいずれでもよい。
【0011】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが共重合体の場合、共重合成分として分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物として例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸;或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等を用いることができる。これらの共重合成分は1種であっても、2種以上を併用してもよい。これらの共重合成分の中で、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p―オキシ安息香酸を、グリコール成分としてはジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物を好ましい例として挙げることができる。かかる共重合成分はポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを構成する全繰返し単位の10モル%以下であることが好ましく、更に好ましくは5モル%以下、特に好ましくは3モル%以下である。
【0012】
また、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよく、或いは例えば極少量のグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0013】
本発明において、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、単独重合体であることが特に好ましい。
本発明のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、一般に知られたポリエステル組成物の製造方法によって製造できる。例えば、ジカルボン酸とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得、或いはジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応で低重合度ポリエステルを得、この低重合度ポリエステルを重合触媒の存在下で更に重合させてポリエステルを得る方法で製造することができる。
【0014】
エステル交換反応に用いるエステル交換触媒としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を挙げることができる。また、重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を挙げることができる。
【0015】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物を添加することができる。なお、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中においてさらに固相重合を施してもよい。
【0016】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることがさらに好ましい。固有粘度が下限に満たない場合、工程切断が多発することがある。一方固有粘度が上限を超える場合、溶融粘度が高いため溶融押出が困難であるうえ、重合に長時間を要し生産性が悪くなることがある。なお、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、35℃で測定した値(単位:dl/g)である。
【0017】
本発明の基材層は好ましくは0.0005〜0.01重量%の範囲で粒子を含むことができる。基材層の粒子含有量がかかる範囲であれば、フィルムの全光線透過率は85%を超えており、透明性を維持することができる。基材層中の粒子含有量が上限を超える範囲では、全光線透過率が85%以下となり良好なエネルギー変換効率を得ることができない。粒子は、フィルム製膜時に添加することができる他、回収フィルム中に含まれる粒子であってもよい。粒子の種類は特に問わない。
【0018】
本発明の基材層は、本発明の課題を損なわない範囲内で少量のその他樹脂、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤などを含んでもよい。ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート以外の成分の含有量は、基材層の重量を基準として10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下の範囲内であることが好ましい。
本発明の基材層の厚みは、太陽電池の支持体として使用する場合に必要な強度とある程度自由な屈曲性を得るために25〜250μmの範囲であることが好ましい。フィルム厚みは、さらに好ましくは40〜188μmであり、特に好ましくは60〜125μmである。
【0019】
<全光線透過率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、高いエネルギー変換効率を得るために、全光線透過率が85%を越えることが必要である。ここで全光線透過率はJIS規格K6714−1958に準拠する。本発明は、エネルギー変換効率が基板フィルムの透明性の影響を受けることを見出したものであり、特に全光線透過率の影響を受けることを見出したものである。基板に用いる二軸配向ポリエステルフィルムの全光線透過率がかかる範囲内であれば、ヘイズの影響は受けない。本発明における全光線透過率は、より好ましくは87%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率が下限に満たない場合、フィルムの透明性が悪くなり、アモルファスシリコン太陽電池の基板フィルムとして用いた場合のエネルギー変換効率の向上が十分でない。フィルムの全光線透過率はより高い方がエネルギー変換効率が高くなる傾向にあり、上限は特に制限されないが、通常100%未満である。全光線透過率が85%を越えるようにするためには、基材層中の粒子量が0.01重量%以下であること、基材層の少なくとも片面に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層よりも低屈折率の塗布層が20〜150nm厚みで設けられることが必要である。また全光線透過率を90%以上にするためには、基材層の両面に塗布層が形成されることによって達成される。
【0020】
<熱収縮率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、200℃の温度で10分間加熱処理したときのフィルムの熱収縮率が長手方向、幅方向のいずれも0.1〜1.0%である。フィルムの熱収縮率は0.5〜0.9%であることが好ましい。ここで熱収縮率とはフィルムに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、下記式(I)にて算出した値を指す。
熱収縮率(%)=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100 ・・・(I)
【0021】
フィルムの熱収縮率が上限を超える場合、基板フィルム上にアモルファスシリコン層や電極層などの機能層を堆積させる加熱加工を行う際に、該機能層にひびが入ったりしわが寄り、透明性が高いフィルムであってもエネルギー変換効率の低下につながる。熱収縮率は低い方がより好ましいが、熱収縮率を下限よりも小さくするためには、特殊な熱弛緩処理が必要になるため、フィルム製膜工程の複雑化を要する。
【0022】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述の熱収縮率特性を備え、かつ200℃の温度で10分間加熱処理したときのフィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値が0.4%以下であることが必要である。フィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値は、さらに好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.2%以下である。フィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値が上限を超える場合、フィルムの寸法変化量の異方性が大きく、特定方向にシワが寄るなどして平面性が損なわれる。
該熱収縮率を達成する方法として、フィルム長手方向に3.0〜3.7倍、フィルム幅方向に3.2倍〜4.0倍の延伸倍率でそれぞれ延伸を行い、230〜245℃で熱固定を行った後、さらに0.05〜2%の範囲で幅方向に弛緩処理(トーイン)を行うことによって達成される。
【0023】
<塗布層>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、基材層の少なくとも片面にポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層よりも低屈折率の塗布層が20〜150nm厚みで設けられることによって、フィルムが全光線透過率85%を越える高透明性を有することが可能となる。かかる基材層は屈折率が1.40〜1.70であることが好ましい。塗布層の屈折率が下限に満たない場合、フィルムの全光線透過率を高くする効果を有するものの塗布層とポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層との接着性が悪くなる。一方、塗布層の屈折率が上限を超える場合、二軸配向ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以下となってしまい、アモルファスシリコン太陽電池の基板フィルムとして用いた場合にエネルギー変換効率の向上が十分でない。塗布層の屈折率は、好ましくは1.50〜1.65、特に好ましくは1.50〜1.60である。かかる範囲内では、塗布層の屈折率が低い方が全光線透過率が高くなる傾向にあり、一方、塗布層の屈折率が高い方がポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層との接着性が良化する。
【0024】
上述の屈折率を有する塗布層として、例えばアクリル樹脂を高分子バインダーとして含むことが好ましい。アクリル樹脂は、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸ソーダ、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等で示されるアクリル系単量体を主成分とする重合体或いは共重合体が挙げられる。アクリル樹脂は、水に可溶性または分散性のアクリルが好ましい。アクリル樹脂は多少の有機溶剤を含有してもよい。
【0025】
アクリル樹脂は、塗布層の凝集力を向上させる目的で、さらにオキサゾリン基を有することができる。オキサゾリン基を有するモノマーとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンを例示することができ、1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらのうち、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的に入手しやすく好適である。オキサゾリン基を有するアクリル樹脂を用いた場合、塗布層の凝集力が向上し、ハードコートや粘着層等の層をさらに積層させた場合に密着性がより強固になる。またフィルム製膜工程内やハードコートの加工工程内の金属ロールに対する耐擦過性を付与することができる。アクリル樹脂は、また、ポリアルキレンオキシド鎖を有していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたものを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖はポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドを挙げることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は3〜100であることが好ましい。ポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリル樹脂を用いることで、塗布層にポリエステル樹脂が含まれる場合、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の相溶性が、ポリアルキレンオキシド連鎖を含有しないアクリル樹脂と較べて良くなり、塗布層の透明性を向上させることができる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が3未満であるとポリエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が悪く塗布層の透明性が向上しないことがある。一方ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位が100を超えると塗布層の耐湿熱性が下がることがある。
【0026】
また、かかる屈折率を有する高分子バインダーとして、ポリエステル樹脂を含有することができる。ポリエステル樹脂は、高分子バインダーとして単独で用いてもよく、またアクリル樹脂と併用してもよい。ポリエステル樹脂を用いることによって、塗布層とポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層との接着性を高めることができる。ポリエステル樹脂として、下記の多価塩基酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。多価塩基成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。塗布層を構成するポリエステル樹脂としては、2種以上の多価塩基酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
塗布層を構成するポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、更に好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、基材層との優れた接着性と優れた耐傷性を得ることができる。
【0027】
高分子バインダーは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂をそれぞれ単独で用いてもよく、また併用してもよい。アクリル樹脂とポリエステル樹脂とを併用する場合、両樹脂の合計量を基準として、アクリル樹脂の含有量が10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。アクリル樹脂の配合量が多い方が屈折率が低くなり、全光線透過率が高くなる傾向にある。またポリエステル樹脂の配合量が多い方が屈折率が高くなり、全光線透過率の改良効果は小さくなるもののポリエチレンナフタレンジカルボキシレート基材層との接着性が良化する。全光線透過率及び基材層との接着性を両立させる観点で、高分子バインダーはアクリル樹脂とポリエステル樹脂とを併用することがより好ましい。
【0028】
アクリル樹脂とポリエステル樹脂とを含む場合、アクリル樹脂はポリアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。アクリル樹脂がポリアルキレンオキシド鎖を有していない場合、ポリエステル樹脂との相溶性が低下し、フィルムの全光線透過率が85%未満となることがある。
なお塗布層を構成する高分子バインダーの含有量は、塗布層の重量を基準として40〜99重量%の範囲が好ましい。
【0029】
また塗布層は粒子を含有することが好ましい。塗布層が粒子を含有することで二軸配向ポリエステルフィルムに滑り性を付与することができる。粒子は、有機粒子、無機粒子のいずれを用いてもよく、例えば炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、シリカ及びチタニアの複合無機粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。粒子は平均粒径が30〜120nmであることが好ましい。ここで平均粒径とは、粒子の電子顕微鏡写真または透過型電子顕微鏡写真により測定した全粒子の粒子径の平均値を意味する。粒子の平均粒径が下限に満たない場合、十分な滑り性が発現しないことがある。また粒子の平均粒径が上限を超える場合、表面が粗くなることがある。また粒子の含有量は塗布層の重量を基準として1〜25重量%の範囲が好ましい。粒子の含有量が下限に満たないと十分な滑り性が得られないことがあり、一方粒子の含有量が上限を超える量を含有しても滑り性の更なる向上は見られない。
【0030】
塗布層は、その他の成分として少量の有機溶剤、脂肪族ワックス、架橋剤、界面活性剤(濡れ剤)などが含まれていてもよい。かかる成分は二軸配向ポリエステルフィルムの透明性を損なわない範囲内で用いられることが好ましい。塗布層を構成するその他成分は、塗布層の重量を基準として0〜40重量%の範囲で含有することができる。
【0031】
本発明において塗布層の塗設に用いられる上記組成物は、塗布層を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液(以下、塗剤と称することがある)の形態で使用されることが好ましい。 水性塗液の基材層への塗布は、任意の段階で実施することができるが、基材層を構成するポリエステルフィルムの製造過程で実施することが好ましく、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布することがさらに好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含む概念である。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すことで、塗液を乾燥させて塗布層を形成することができる。
【0032】
<塗布層厚み>
本発明の塗布層の厚みは20〜150nmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜120nm、特に好ましくは40〜100nmである。塗布層の厚みが下限に満たない場合、塗布層による全光線透過率の向上が見られず、全光線透過率が85%以下となることがある。一方上限を超える塗布層厚みは、フィルム製膜過程で塗布により形成しようとすると生産性が低下することがある。
【0033】
<層構成>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、基材層の少なくとも片面に該塗布層が形成されることが好ましい。塗布層が基材層の片面に形成されることによって、二軸配向ポリエステルフィルムの全光線透過率は85%を越える。また基材層の両面の塗布層が形成されることがさらに好ましく、その場合の二軸配向ポリエステルフィルムの全光線透過率は90%以上となり、アモルファスシリコン太陽電池の基板フィルムとして用いた場合に高いエネルギー変換効率が得られる。
【0034】
<フィルム製膜方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、十分に乾燥させたポリエチレンナフタレンジカルボキシレートをTm〜(Tm+70)℃の温度でTダイを通じて溶融押出し、フィルム状溶融物を冷却ロール(キャスティンクドラム)上で急冷して未延伸フィルムとし、次いで該未延伸フィルムを逐次または同時二軸延伸する。二軸延伸は逐次二軸延伸が好ましく、未延伸フィルムを長手方向に延伸し、次いでステンターにて幅方向に延伸する方法が挙げられる。延伸は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートのTg以上170℃以下の温度範囲で、フィルム長手方向に3.0〜3.7倍、フィルム幅方向に3.2〜4.0倍の範囲でそれぞれ延伸倍率で行う。ここで、Tgはポリエチレンナフタレンジカルボキシレートのガラス転移温度、Tmはポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの融点を表わす。二軸配向されたポリエステルフィルムは、続いて230〜245℃の温度で緊張下又は制限収縮下で10〜30秒熱固定を行い、その後0.05〜2%の範囲で幅方向に弛緩処理(トーイン)を行うことによって本発明の熱収縮率特性を備えることができる。
【0035】
塗布層は逐次延伸の場合、一方向に延伸した1軸配向フィルムに、水性塗液を塗布し、そのままもう一方向に延伸し熱固定することによって設けられる。塗布方法としては、公知の任意の塗布法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。塗布量は走行しているフィルム1m2当り0.5〜20g、更に1〜10gが好ましい。
【0036】
<アモルファスシリコン太陽電池用基材フィルム>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、アモルファスシリコン太陽電池基板用フィルムとして好適に用いられる。アモルファスシリコン太陽電池は、該基材フィルム上に透明電極層として例えば酸化インジウム・スズ(ITO)層、アモルファスシリコン層、アルミニウム層を順次積層させることによって得られる。太陽電池がこのような層構成を有する場合、変換効率の向上に対するフィルム基板の高透明性の影響がより大きくなる。またアモルファスシリコン太陽電池の層構成は、基材フィルム上にアルミニウム層/アモルファスシリコン層/透明電極層として例えば酸化インジウム・スズ(ITO)層の順の積層構成であってもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
(1)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(2)塗布層厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製の商品名「エポマウント」)中に包埋し、Reichert−Jung社製Microtome2050を用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、透過型電子顕微鏡(LEM−2000)にて加速電圧100KV、倍率10万倍にて観察し、塗布層の厚みを測定した。
(3)全光線透過率
JIS規格 K6714−1958に従い、フィルムサンプルの全光線透過率Tt(%)を求めた。
(4)屈折率
塗剤を蒸発乾固させ、レーザー屈折計(METRICON PRINM COUPER Model2010)を用い、波長633nmでの塗布層を構成する塗剤の屈折率を測定した。
(5)粒子の平均粒径
塗布層厚みの測定と同様の操作を行い、50個の粒子の粒子径を測定し、平均値を平均粒子径とした。
(6)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム長手方向(MD方向)と、フィルム幅方向(TD方向)において、下記式(I)にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離×100 ・・・(I)
(7)熱収縮率差
(6)によって得られたフィルムの長手方向の熱収縮率(SMD)と幅方向の熱収縮率(STD)を用い、下記式に従って両方向の熱収縮率差の絶対値を算出した。
フィルム長手方向と幅方向の熱収縮率差=|SMD−STD
(8)滑り性(動摩擦係数)
75mm(幅)×100mm(長さ)にカットしたフィルムサンプルを2枚重ねて、23℃、65%RHで24時間調湿する。サンプルの上に重量200gfの荷重を乗せ、上側のフィルムを150mm/分の速度で滑らせる。滑らせている時の力Fdから動摩擦係数μd(=Fd/200)を算出し、下記の基準に従って評価した。
○: μd≦0.5 滑り性良好
×: μd>0.5 滑り性不良
(9)基材層と塗布層との接着性
フィルムサンプルの塗布層面に碁盤目のクロスカット(1mmのマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記基準で評価した。
○: 剥離面積が40%以下 ・・・・・・接着性良好
△: 剥離面積が40%を超えるもの ・・・接着性弱い
(10)太陽電池の変換効率
フィルム上に、ITO層、アモルファスシリコン層、アルミニウム層を順次積層してアモルファスシリコン太陽電池を作成した。ITO層はスパッタリング法、アモルファスシリコン層はCVD法、アルミニウム層は蒸着法でそれぞれ作成した。なおプロセスの最高温度は200℃であった。得られた100mm大の太陽電池を用いて、下記の方法でエネルギー変換効率を算出した。
ぺクセルテクノロジーズ社製ソーラーシュミレーター(PEC-L10)を用い入射光強度が100mW/cmの模擬太陽光を、気温25℃、湿度50%の雰囲気で測定した。電流電圧測定装置(PECK 2400)を用いて、システムに印加するDC電圧を10mV/secの定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流-電圧特性を測定し、エネルギー変換効率を算出した。
◎: 7.0%<変換効率
○: 5.5%<変換効率≦7.0%
△: 5.0%<変換効率≦5.5%
×: 変換効率≦5.0%
(11)太陽電池の加工性
(10)によって作成したアモルファスシリコン太陽電池について、太陽電池モジュールの変形や汚染が生じていないかを目視により評価した。
○: 変形や汚染が無く、加工性が良い。
×: 変形や汚染が有り、加工性が悪い。
【0038】
<塗布層組成>
塗布層を構成する高分子バインダーの種類と含有量、粒子の含有量は各実施例、比較例の通りである。なお、各塗布層ともに、ワックスとしてカルナバワックス(中京油脂株式会社製の商品名「セロゾール524」)5重量%、濡れ剤としてポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製の商品名「ナロアクティーN−70」)5重量%を含む。各成分の含有量は、いずれも塗布層の重量を基準とする。
塗布層を構成する高分子バインダー成分、粒子の種類を以下に示す。
【0039】
(アクリル樹脂)
メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
なお、アクリル樹脂は下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%のアクリルの水分散体を得た。
【0040】
(コポリエステル樹脂)
酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸63モル%/イソフタル酸32モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=76℃、平均分子量12000)。
なお、該ポリエステル樹脂は下記の通り製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル42部、イソフタル酸ジメチル17部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール33部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。
【0041】
(粒子)
シリカ及びチタニアの複合無機粒子(平均粒径:100nm)を用いた。なお、該粒子は下記の通り製造した。撹拌羽根付きの内容積4リットルのガラス製反応容器にメタノール140g、イソプロパノール260g、およびアンモニア水(25重量%)100gを仕込み、反応液を調製し、反応液の温度を40℃に保持しつつ攪拌した。次に、3リットルの三角フラスコに、シリコンテトラメトキシド(Si(OMe)、コルコート(株)製の商品名「メチルシリケート39」)542gを仕込み、撹拌しながら、メタノール195gと0.1重量%塩酸水溶液(和光純薬工業(株)製の35%塩酸を1/1000に水で希釈)28gを加え、約10分間撹拌した。続いて、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(O−i−Pr)、日本曹達(株)製の商品名「A−1(TPT)」)300gをイソプロパノール634gで希釈した液を加え、透明な均一溶液(シリコンテトラアルコキシドとチタニウムテトラアルコキシドの共縮合物)を得た。上記均一溶液1699gとアンモニア水(25重量%)480gの各々を前記反応液中に、最初は滴下速度を小さくし、終盤にかけて徐々に速度を大きくして、2時間かけて同時に滴下した。滴下終了後、得られた共加水分解物をろ過し、50℃で有機溶媒を乾燥させ、その後、水に分散化させ、濃度10重量%、屈折率1.56の粒子を得た。
【0042】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、常法に従ってエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、燐酸トリメチル0.023部を添加した。ついで、三酸化アンチモン0.024部を添加後、引き続き高温高真空下で常法通り重縮合反応を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.61dl/gの、粒子を含まないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートA(以下、PEN樹脂Aと略記する)を得た。
また回収フィルムとして、粒子を含まないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート層の片面に粒子5wt%を含む塗布層が形成された、基材層厚み75μm、塗布層厚み50nmの回収フィルムBを用い、PEN樹脂Aと回収フィルムBを重量比1:1の割合で混合し、粒子0.002wt%含むポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート組成物を得た。
【0043】
このポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート組成物を170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給し、溶融温度305℃で溶融し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、2mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に前述した塗布層組成のうち、アクリル樹脂20重量%、コポリエステル樹脂65重量%、粒子5重量%をそれぞれ含み、固形分濃度4重量%の水性液をロールコーターにて塗布した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に.3.3倍に延伸し、さらに240℃で5秒間熱固定処理及び幅方向に1.5%収縮(トーイン)させ厚み75μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。PEN基材層の屈折率は1.75、塗布層の屈折率は1.57、塗布層厚みは50nmであった。
【0044】
[実施例2]
塗布層を基材層の両面に形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。塗布層厚みは両面とも50nmであった。
【0045】
[実施例3]
塗布層組成をアクリル樹脂85重量%に変更し、コポリエステル樹脂を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。塗布層の屈折率は1.51、塗布層厚みは50nmであった。
【0046】
[実施例4]
塗布層組成をコポリエステル樹脂85重量%に変更し、アクリル樹脂を用いなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。塗布層の屈折率は1.63、塗布層厚みは50nmであった。
【0047】
[実施例5、6]
フィルムの製膜条件を表1に示すように変えること以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
塗布層を形成しない以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
実施例1で用いたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートAに平均粒径0.35μmの球状シリカ粒子を0.1重量%練り込んだものを用い、また基材層上に塗布層を形成しない以外は実施例1と同様の方法にて二軸配向フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0050】
[比較例3,4]
フィルムの製膜条件を表1に示すように変えること以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の太陽電池基板用ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートフィルムに較べて透明性が向上することからエネルギー変換効率の高いフレキシブルタイプのアモルファスシリコン太陽電池を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる基材層を含む二軸配向フィルムであって、フィルムの全光線透過率が85%を越えており、200℃で10分間処理した際のフィルムの熱収縮率が長手方向、幅方向いずれも0.1〜1.0%であり、かつフィルムの長手方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率差の絶対値が0.4%以下であることを特徴とするアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
基材層の少なくとも片面に塗布層が形成されてなる請求項1に記載のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
塗布層の屈折率が1.40〜1.70である請求項1または2に記載のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗膜層厚みが20〜150nmである請求項1〜3のいずれかに記載のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
基材層の両面に塗布層が形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
基材層中の粒子含有量が0.0005〜0.01重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のアモルファスシリコン太陽電池基板用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムを基板として含むアモルファスシリコン太陽電池。

【公開番号】特開2007−281071(P2007−281071A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103104(P2006−103104)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】