説明

アラミドフィブリル

【課題】本発明は、ウェット状態でのカナダ標準ろ水度(CSF)値が100mL未満、乾燥後の比表面積(SSA)が7m/g未満、長さ>250μmの粒子の重量加重長さが1.2mm未満であるアラミドフィブリルに関する。
【解決手段】上記フィブリルの製造方法は、a.芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ハライドとを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと、塩化カルシウムまたは塩化リチウムとの混合物中でアラミドポリマーに重合し、ポリマーが濃度2〜6wt%で上記混合物中に溶解されたドープを得る工程、b.ガス流下でジェットスピンノズルを用いて上記ドープをフィブリルに変換する工程、およびc.凝固剤のジェットを用いて上記フィブリルを凝固する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミドフィブリル、該フィブリルの製造方法および該フィブリル製の紙に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプは、高度にフィブリル化された繊維のステム(stem)と定義される。フィブリル化された部分はフィブリルと呼ばれ、高度に絡み合い、高いアスペクト比(>100)と、通常の単繊維の約40倍もの大きな表面積(8〜10m/g)とを有する。例えばアラミドパルプはフィブリル化された粒子(particle)であり、紙、ガスケット、ブレーキライニング等に用いられる。パルプは、通常、紡糸された繊維から、切断およびフィブリル化工程を経て製造される。しかし、ポリマーをはじめに繊維に紡糸する工程を伴わず、直接にパルプ化する方が有利である。このようなパルプを直接に製造する方法は、例えば米国特許第5,028,372号明細書等の文献に開示されている。同明細書によると、パラ−アラミドポリマーの溶液を準備し、1〜4の固有粘度を有する該溶液をコンベア上に押し出し、該溶液がゲル化するまでコンベア上に温置し、そしてこのゲルを切断してパルプを単離することによりアラミドパルプが製造される。溶液中のポリマーは6〜13wt%の濃度であり、得られるパルプの比表面積は2m/gよりも大きい。
【0003】
ある特定の用途には、高度にフィブリル化されたパルプが有利と考えられる。また、ポリマー材料が完全に(あるいは実質的に完全に)フィブリル化されている、すなわち有意量の繊維状物質を含有しないことがより有利であろう。換言すると、フィブリル化された部分がほとんどであり、繊維状ステムを有さない「パルプ」が求められている。このような材料はいまだ知られていない。このような材料は高度の柔軟性、易製紙性、製造された紙の良好な多孔性といった極めて有用な性質が期待される。更に、このような材料は、乾燥後にもかなりの硬度を持ち、構造材料として有用であると期待される。本発明が目的とする上記の如き材料を「フィブリル」と定義する。
当業者において、比表面積(SSA)の大きいパルプほどカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness、CSF)が小さいことがよく知られている。例えばYangの標準参照試験(Yang, 1993, Wiley & Sons, ISBN 0 471 93765 7,p156)では、SSAの増大とともにCSFが減少すると説明されている。本発明の目的は、小さなSSAと小さなCSFとを同時に有し、しかもパルプの性質の多くを有する材料を提供することである。このような材料は、製紙を含む多くの応用が可能な特異な性質を有すると考えられる。このような材料は、当業者においていまだ知られていない。
【0004】
フィブリル化度の低い、小さいSSAを持つ繊維は公知である。欧州特許出願公開第381206号明細書には、太さ1デニール未満の(subdenier)パルプ様繊維が開示されている。この繊維は、溶媒として硫酸を用いて高ドープ濃度を採用し、標準的な方法によって製造された。この繊維は小さなSSAを有するが、CSFは大きい(すなわち、600mLを超える値である。)。
欧州特許出願公開第348996号明細書および米国特許第5,028,372号明細書には、押し出してドープを配向させた後に重合を部分的に進行させる方法により得られたパルプが開示されている。このパルプは小さなSSA(例えば5.2および7.1m/g)を示し、したがってYangのp156によると450mLを超える高いCSFを持つ。
【特許文献1】米国特許第5,028,372号明細書
【非特許文献1】Yang, 1993, Wiley & Sons, ISBN 0 471 93765 7,p156
【特許文献2】欧州特許出願公開第381206号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第348996号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の第一の目的は、紡糸ドープ、好ましくは光学異方性を示す紡糸ドープとしてのアラミドポリマー溶液、フィブリルを製造するために高圧および/または高い紡糸温度を用いずに直接紡糸することのできる紡糸ドープを得るためのアラミドポリマー溶液を提供することにある。この目的を達成することにより、所定長さの(本発明にしたがって定義されるところの)アラミドフィブリルを一段階で製造することが可能となる。このフィブリルは曲がっているのみならずよじれを有し、各よじれにおいてフィブリルの方向は角度をもって鋭く変化している。
本発明の別の目的は、乾燥するとふわふわした性質のほとんどを失うが、濡れた状態において嵩高いフィブリルを提供することにある。本発明のフィブリルは、濡れた状態におけるカナダ標準ろ水度(CSF)が300mL未満の値であり、乾燥後の比表面積(SSA)が7m/g未満である。本発明のフィブリルは、長さ250μmを超える粒子の重量加重長さ(weight weighted length)(WL0.25)が1.2mm未満、より好ましくは1.0mm未満である。このフィブリルは、小さなSSA、大きなCSFで特徴付けられる。
本発明のフィブリルは乾燥後は再分散せず、したがって乾燥後には非常に強度の強い紙や非常に堅い材料とすることができる。
【0006】
本発明の好ましいフィブリルは、濡れた状態におけるCSF値が150mL未満であり、SSAが1.5m/g未満である。
このフィブリルは、メタ−および/またはパラ−アラミドポリマーの溶液から得ることができる。かかるポリマーは、ポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタ−フェニレンイソフタルアミド)、コポリ(パラ−フェニレン/3,4−ジオキシジフェニレンテレフタルアミド)等の如きものであり、これらポリマーのうちのいくつかは繊維やパルプの分野で商業的に使用されており、Kevlar(登録商標)、Twaron(登録商標)、Conex(登録商標)およびTechnora(登録商標)といった商品名で入手可能である。好ましいアラミドはパラ−アラミドであり、より好ましくはポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)である。
パラ−配向の芳香族ポリアミドは、パラ−配向の芳香族ジアミンとパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドとの縮合ポリマー(以下、「パラ−アラミド」と略称する。)であり、その高い強度、高い弾性率および高い耐熱性のため、従来から繊維、パルプ等の様々な分野に有用であることが知られていた。
【0007】
パラ−アラミドの代表例としては、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)およびポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)といったポリ−パラ−配向構造またはこれに近い構造を有するアラミドが挙げられる。これらパラ−アラミドのうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(以下、PPTAと略称する。)がもっとも代表的である。
従来、PPTAは極性のアミド溶媒/塩系で下記の方法によって製造されていた。例えば、PPTAは極性アミド溶媒中で溶液重合法によって製造される。上記PPTAは沈殿、水で洗浄、乾燥され、一度ポリマーとして単離される。その後ポリマーは溶媒に溶解され、湿式紡糸によりPPTA繊維が製造される。この工程中、PPTAは有機溶媒に簡単には溶解しないので、紡糸ドープの溶媒として濃硫酸が使用される。通常この紡糸ドープは光学異方性を示す。
工業的にはPPTA繊維は、濃硫酸を溶媒として使用した紡糸ドープから製造され、長繊維として特に強度と硬度に優れる。
【0008】
もっとも近い先行文献である欧州特許出願公開第381206号明細書には、離液性液晶の紡糸ドープから太さ1デニール未満の繊維を製造する方法が開示されている。この方法は、1)光学異方性のポリマー溶液の流れをチャンバー中に押し出し、2)該チャンバーに加圧ガスを導入し、3)チャンバー内でガスを上記ポリマーの流れ方向に向けて流れの周囲に接触させ、4)ガスおよび流れの双方を、流れを細くして繊維に分断するに有効な速度で開口部を通して低圧領域に噴出し、5)分断された流れを前記領域中で凝固液の流れと接触させるものである。本発明の方法は、太さ1デニール未満の繊維を得るのに最適化され、フィブリルの製造に適した方法である。
従来法を合理化する目的で、既に米国特許第5,028,372号明細書において触れられたような、重合工程を独立に設けることなく、また別個に紡糸する工程を経ることなく液状のポリマードープから直接パルプを製造する様々なプロセスがこんにちまでに提案されているが、そのどれもが(繊維を有さない)フィブリルを得ることができるものではない。
本発明の更に別の目的は、工業的に有利であり、単純化された方法により安定なポリマー溶液および均質な製品を製造でき、高い相対粘度のフィブリルを得ることにより、従来のパルプ製造工程の弱点を克服することにある。高い相対粘度の材料を一工程で得るために、フィブリルを容易に得られる低い動粘度のポリマー溶液が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらおよび他の目的は、下記工程を含むポリマー溶液の製造方法により達成される。
a. 芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ハライドとを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと、塩化カルシウムまたは塩化リチウムとの混合物中でアラミドポリマーに重合し、ポリマーが濃度2〜6wt%で上記混合物中に溶解されたドープを得る工程、
b. ガス流下でジェット紡糸ノズルを用いて上記ドープをフィブリルに変換する工程、および
c. 凝固剤のジェットを用いて上記フィブリルを凝固する工程。
好ましい実施態様では、重合反応を実施し、生成した塩酸の少なくとも一部は中和される。この手順により、ηrel(相対粘度)2.0〜5.0のアラミドポリマーが得られる。
【0010】
本発明の好ましい実施態様によると、NMP/CaCl、NMP/LiClまたはDMAc/LiCl混合物中のパラ−アラミドの繊維状ではないポリマー溶液が製造され、該溶液の相対粘度はηrel>2.2である。
上記ドープは、ガス流を用いて本発明のフィブリルに変換される。好ましいガス種は、例えば空気、酸素、窒素、希ガス、二酸化炭素等である。
本発明のアラミドポリマー溶液は、ずり速度100〜10,000s−1の範囲、約60℃以下の温度で低い動粘度を示す。そのため、本発明のポリマー溶液は、60℃未満、好ましくは室温で紡糸することができる、更に、本発明のアラミドドープはピリジン等の余計な成分を含まず、また、従来のドープが溶媒として濃硫酸を使用していたのと比較して、単純化され、濃硫酸による装置の腐食の問題がない工業的に有利な工程で得ることができる。
更に、本発明の工程によると、ポリマー溶液は直接紡糸することができ、製品はフィブリルとして得ることができるので、その製造工程は、先ず最初にヤーンを製造していた従来のアラミドパルプの製造工程に比べて極めて単純化されたものである。
【0011】
本発明のアラミドフィブリルから、断裂長の長いアラミド紙を製造することができる。自動トランスミッション等の摩擦材料の原料として使用されたときにその性能は良好である。上記フィブリルは、ポリマー溶液から繊維を経ることなく直接紡糸することにより製造される。
本発明は、未乾燥時のCSF(カナダ標準ろ水度)が300未満、好ましくは150未満であるアラミドフィブリルにも関する。より好ましいパラ−アラミドフィブリルでは、相対粘度(ηrel)は2.2を超える。
本発明の別の態様は、本発明のフィブリルから得られるアラミド紙に関する。この紙は、少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも5wt%、もっとも好ましくは少なくとも10wt%のアラミドフィブリルを含有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明について更に詳しく説明する。
安定な紡糸ドープは、パラ−アラミド濃度が2〜6wt%であり、高い相対粘度(ηrel=約2.0〜約5.0)を得るために中程度ないし高度の重合度を有する。ドープは、ポリマー濃度に依存して異方性(ポリマー濃度=2〜6wt%)ないし等方性を示す。好ましくは、ずり速度1000s−1における動粘度(ηdyn)は10Pa.s未満であり、より好ましくは5Pa.s未満である。アラミドとなるモノマーの重合中または好ましくは重合後に、中和が行われる。中和剤は、重合開始前のモノマー溶液中には存在しない。中和は、動粘度を少なくとも3分の1に減ずる。中和されたポリマー溶液は、ノズルを用い、ポリマー流を減圧領域にて加圧空気と接触させ、空気の膨張によりポリマー流を小滴に分断する直接フィブリル化に使用することができる。上記小滴は、フィブリルに細断される。フィブリルの凝固は、例えば水、水/NMP/CaCl混合物といった適当な凝固剤を用いて行われる。CaClの代わりにLiClの如き他の塩化物を使用することもできる。ポリマー流量/空気流量比を調整することにより、フィブリルの長さおよびCSFを変えることができる。この比が高い場合には長いフィブリルが得られ、この比が低い場合には短いフィブリルが得られる。フィブリルのカナダ標準ろ水度(CSF)が減少すると、その比表面積(SSA)も減少する。
本発明のフィブリルは、パラ−アラミド紙、自動車のブレーキといった摩擦材料、種々のガスケット、E−ペーパー(例えば電子用途の紙であり、そのイオン含量は硫酸溶液から作られるパラ−アラミドパルプに比べて極めて低い。)等の原料として有用である。
【0013】
本発明に使用することのできるパラ−配向の芳香族ジアミンの例としては、例えばパラ−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、2−メチル−パラフェニレンジアミン、2−クロロ−パラフェニレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミンベンズアニリド等である。
本発明に使用することのできるパラ−配向の芳香族ジカルボン酸ハライドの例としては、例えばテレフタロイルクロライド、4,4’−ベンゾイルクロライド、2−クロロテレフタロイルクロライド、2,5−ジクロロテレフタロイルクロライド、2−メチルテレフタロイルクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸クロライド、1,5−ナフタレンジカルボン酸クロライド等を挙げることができる。
本発明では、0.5〜4wt%(好ましくは1〜3wt%)のアルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物が溶解された極性アミド溶媒中で、パラ−配向芳香族カルボン酸ハライド1モル当たり、0.950〜1.050モル、好ましくは0.980〜1.030モル、より好ましくは0.995〜1.010モルのパラ−配向芳香族ジアミンが使用され、濃度2〜6wt%、好ましくは2〜4wt%、より好ましくは2.5〜3.5wt%のパラ−アラミド溶液が製造される。本発明では、パラ−アラミドの重合温度は−20℃〜70℃であり、好ましくは0℃〜30℃であり、より好ましくは5℃〜25℃である。この温度範囲において、動粘度が所望の範囲内となり、紡糸により得られるフィブリルが適当な結晶度と結晶配向性を有することとなる。
【0014】
本発明の本質的な特徴は、はじめに重合反応が促進され、その後ポリマー溶液ないしポリマーを組成する溶液を、無機塩基または強い有機塩基、好ましくは酸化カルシウムまたは酸化リチウムを添加して中和することにより停止されることである。ここで、「酸化カルシウム」および「酸化リチウム」とは、それぞれ水酸化カルシウムおよび水酸化リチウムを含むものである。この中和は、重合反応中に生成した塩化水素を除く効果を有する。中和は、動粘度を(中和していない対応溶液と比較して)少なくとも3分の1に減少する。中和後には塩化物が、重縮合反応により生成したアミド基1モル当たり好ましくは0.5〜2.5モル、より好ましくは0.7〜1.4モル存在する。塩化物の総量は、溶媒中に使用されたCaClおよび中和剤(塩基)として使用されたCaOに由来する。塩化カルシウムの量が多すぎるまたは少なすぎると、溶液の動粘度が紡糸溶液として適当な値よりも大きすぎることとなる。
【0015】
液状のパラ−アラミド重合溶液は、加圧容器の助けにより、空気ジェットによるフィブリル紡糸用の100〜1000μmのノズルへ送るための紡糸ポンプへと供給される。液状のパラ−アラミド溶液は、紡糸ノズルを通って低圧領域へと紡糸される。空気ジェット紡糸には、1バールを超える、好ましくは4〜6バールの圧力がリング状のチャネルを通って空気が膨張する前記と同じ領域へと独立に加えられる。膨張する空気流の影響下、液状の紡糸溶液は小滴へ分断され、同時にまたは引き続いて引っ張られて配向する。そしてフィブリルは同じ領域で凝固剤のジェットにより凝固され、生成したフィブリルはフィルター上に集められ、洗浄される。凝固剤は、水、水とNMPとCaClとの混合物、およびその他の適当な凝固剤から選択される。
【実施例】
【0016】
以下、本発明について非限定的な実施例によって説明する。
実施例および比較例において採用した試験および評価の方法、ならびに判断基準は以下の通りである。
試験方法
相対粘度
試料を、室温にて濃度0.25%(m/v)で硫酸(96%)に溶解した。ウベローデ粘度計を用い、硫酸中、25℃における試料溶液の流下時間を測定した。同じ条件の下、溶媒の流下時間も同様に測定した。これら二つの流下時間の比を計算し、粘度比とした。
動粘度
動粘度は、室温にてキャピラリレオメトリーによって測定した。Powerlaw係数およびRabinowitsch補正を用い、真のせん断速度および粘度を計算した。
繊維長さ測定
繊維長さは、Pulp Expert(登録商標) FS(Metso社)を用いて測定した。長さとして、平均長さ(AL)、長さ加重長さ(length weighted length、LL)および重量加重長さ(weight weighted length、LL)を用いた。下付きの0.25は、長さ>250μmの粒子についての値であることを示す。Finesとして示した量は、長さ荷重長さ(LL)<250μmの粒子の占める割合である。
この装置は、既知の繊維長さの試料を用いて基準化することを要する。基準化は、第1表に示した市販品パルプを用いて行った。
【0017】
【表1】

【0018】
CSF
未乾燥フィブリル3g(乾燥重量)をローレンツェン アンド ベットレー社製の叩解機中で1000回打撃し、1Lの水に分散させた。よく開いた(well−opened)試料が得られた。カナダ標準ろ水度(CSF)値を測定し、フィブリルの重量のわずかの差を補正した(Tappi227)。
比表面積(SSA)測定
Micromeretics社製Gemini 2375を用いて、窒素吸着法によるBET比表面積測定法により比表面積(m/g)を測定した。濡れた状態のフィブリル試料は、120℃で終夜乾燥し、次いで200℃において少なくとも1時間窒素フラッシュを行った。
光学異方性の評価
偏光顕微鏡(明視野)および/または攪拌中の乳光の観察により光学異方性を調べた。
紙強度
100%フィブリド材料、または50%フィブリド材料とTwaron(登録商標)の6mm繊維(Twaron 1000)とにより、hand sheet紙(70g/m)を製造した。ASTM D828およびTappi T494 om−96に準じて乾燥紙(120℃)の引張強度(Nm/g)を測定した。試料幅は15mm、試料長さは100mm、試験速度は10mm/分であり、21℃/65%RHの条件下で行った。
【0019】
実施例1
2.5mのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミドの重合を行った。反応器を十分に乾燥し、濃度2.5wt%のCaClを含むNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)1140Lを反応器に加えた。次いで、27.50kgのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え室温にて溶解した。その後、PPD溶液を10℃に冷却し、51.10kgのテレフタル酸二塩化物(TDC)を加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして、酸化カルシウム/NMP懸濁液(28LのNMP中に14.10kgのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を添加後、ポリマー溶液は少なくとも15分間更に攪拌した。この中和反応は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度4.5wt%、相対粘度2.8(0.25%HSO中)のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間安定であった。得られた溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度を3.0wt%とした。
【0020】
350μmの孔を20個有する紡糸ノズルにへフィードするための紡糸ポンプに上記3%溶液を供給した(120L/h)。紡糸温度は周囲温度であった。PPTAを、ノズルを通して低圧領域に紡糸した。6バールの空気ジェット(160Nm/h)(ノルマル立米毎時)を、リング状チャネルを通して空気が膨張する前記と同一の領域にポリマー流に垂直の方向で独立に供給した。その後、リング状チャネルを通してポリマー流の方向に対して角度を付けて凝固剤ジェット(600L/h)を供給することにより同一領域内でフィブリルを凝固し(HO/30%NMP/1.3%CaCl)、生成したフィブリルをフィルター上に集め、洗浄した。紡糸されたフィブリルは、フィブリルとして特徴的な83mLのCSF値を有していたが、そのSSAはわずか0.63m/gにすぎなかった。顕微鏡観察によると、極めて微細な構造が見え、CSF値の低いことが確認された。WL0.25は0.76mmであった。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例2
160LのDrais反応器を用いてパラ−フェニレンテレフタルアミドの重合を行った。反応器を十分に乾燥し、濃度2.5wt%のCacClを含むNMP/CaCl(N−メチルピロリドン/塩化カルシウム)64Lを反応器に加えた。次いで、1487gのパラ−フェニレンジアミン(PPD)を加え室温にて溶解した。その後、PPD溶液を10℃に冷却し、2772gのTDCを加えた。TDC添加後、重合反応を45分間行った。そして、酸化カルシウム/NMP懸濁液(NMP中に776gのCaO)によりポリマー溶液を中和した。CaO懸濁液を添加後、ポリマー溶液は少なくとも15分間更に攪拌した。この中和反応は、重合中に生成した塩化水素(HCl)を除去するために行った。PPTA濃度4.5wt%、相対粘度2.7(0.25%HSO中)のゲル状のポリマー溶液が得られた。得られた溶液は光学異方性を示し、一月を超える期間安定であった。得られた溶液をNMPで希釈し、ポリマー濃度を3.6wt%とした。
【0023】
350μmの孔を4個有する紡糸ノズルへフィードするための紡糸ポンプに上記3.6%溶液を供給した(16kg/h)。紡糸温度は周囲温度であった。PPTAを、ノズルを通して低圧領域に紡糸した。7バールの空気ジェット(45Nm/h)を、リング状チャネルを通して空気が膨張する前記と同一の領域にポリマー流に垂直の方向で独立に供給した。その後、リング状チャネルを通してポリマー流の方向に対して角度を付けて水ジェット(225L/h)を供給することにより同一領域内でフィブリルを凝固し(HO/30%NMP/1.3%CaCl)、生成したフィブリルをフィルター上に集め、洗浄した。
紡糸されたフィブリルはより高いSSA値を示したが、ここでもCSF値の減少に伴いSSA値は減少した(第2表参照。)。
【0024】
【表3】

【0025】
実施例3
実施例1の未乾燥フィブリルを用いて紙を製造した。50%のTwaron(登録商標) 1000の6mm繊維および50%のフィブリルからなる紙の強度は、23Nm/gであった。
実施例4
実施例2の未乾燥フィブリルを用いて紙を製造した。50%のTwaron(登録商標) 1000の6mm繊維および50%のフィブリルからなる紙の強度は、18Nm/gであった。100%フィブリルからなる紙の強度は10.8Nm/gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濡れた状態におけるカナダ標準ろ水度(CSF)が300mL未満であり、乾燥後の比表面積(SSA)が7m/g未満であり、そして長さ>250μmの粒子の重量加重長さ(WL0.25)が1.2mm未満であることを特徴とする、アラミドフィブリル。
【請求項2】
濡れた状態におけるCSF値が150mL未満であり、乾燥後のSSA値が1.5m/g未満である、請求項1に記載のフィブリル。
【請求項3】
アラミドがパラ−アラミド、好ましくはポリ(パラ−フェニレンテレフタルアミド)である、請求項1ないし2のいずれか一項に記載のフィブリル。
【請求項4】
下記工程を含むことを特徴とする、請求項1ないし3に記載のフィブリルの製造方法。
a. 芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ハライドとを、N−メチルピロリドンまたはジメチルアセタミドと、塩化カルシウムまたは塩化リチウムとの混合物中でアラミドポリマーに重合し、ポリマーが濃度2〜6wt%で上記混合物中に溶解されたドープを得る工程、
b. ガス流下でジェット紡糸ノズルを用いて上記ドープをフィブリルに変換する工程、および
c. 凝固剤のジェットを用いて上記フィブリルを凝固する工程。
【請求項5】
ドープが、生成した塩酸の少なくとも一部が中和された中和ドープである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アラミドポリマーのηrel(相対粘度)が2.0〜5.0である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアラミドフィブリルを少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも5wt%、もっとも好ましくは少なくとも10wt%含有する成分で作られた紙。

【公表番号】特表2007−515564(P2007−515564A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543427(P2006−543427)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013542
【国際公開番号】WO2005/059211
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501469803)テイジン・トゥワロン・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】