説明

アリール基で置換されたベンゾ[d」イソチアゾール−3−イルアミン類縁体

式(I):


(式中、可変基は明細書中に記載のようなものである)で表されるアリール置換されているベンゾ[d]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体を提供する。このような化合物は生体内及び生体外において、特異的な受容体活性を調節するために使用できるリガンドであり、特にヒト、ペット及び家畜における病理学上の受容体活性に関連する病気の治療に有用である。本発明は、医薬組成物及びこのような化合物を用いてこのような病気を治療する方法、さらに受容体局在化研究にこのようなリガンドを用いる方法も提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、カプサイシン受容体の調節剤である、アリール基で置換されたベンゾ[d]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体、及びこのような化合物をカプサイシン受容体活性に関連する病気の治療に使用することに関する。本発明はさらに、このような化合物をカプサイシン受容体の検出及び局在化のためのプローブとして使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛知覚、又は侵害知覚には、「侵害受容体」という特化した知覚神経群の末梢ターミナルが介在している。多岐に亘る物理的及び化学的な刺激は、哺乳動物のこのような神経を活性化させるものであり、潜在的に有害な刺激の認知へとつながる。しかしながら、侵害受容体の不適切又は過剰な活性化は、衰弱性の急性又は慢性の疼痛をを生じさせる。
【0003】
神経因性疼痛は、刺激がないのに疼痛信号の伝達を伴うもので、通常、神経系の損傷に起因するものである。ほとんどの場合、このような疼痛は(例えば、直接の損傷又は全身性疾患による)末梢系の初期損傷後の末梢及び中枢神経系の鋭敏化によって生じるものと考えられている。神経因性疼痛は、通常その強さにより、灼熱痛(burning)、疼くような痛み(shooting)及び強烈な間断のない(unrelenting)痛みであり、時には痛みの原因となった初期損傷又は病状を凌ぐほどのものである。
【0004】
神経因性疼痛の既存の治療法は、殆ど効果がない。モルヒネのような麻薬は強力な鎮痛薬であるが、その実用性は、身体的嗜癖、退薬性のような、さらには呼吸障害、情緒変調、付随性の便秘、悪心、嘔吐、及び内分泌及び自律神経系の変化による腸運動の減少のような、副作用があるので限られたものとなっている。さらに、神経因性疼痛は従来のオピオイド鎮痛薬による治療に対して多くの場合は反応しないか又は部分的に反応するのみである。N−メチル−D−アスパラテート拮抗薬ケタミン又はアルファ−(2)−アドレナリン作動薬クロニジンを用いる治療法は、急性又は慢性の疼痛を緩和することができ、オピオイド消費の減少させるが、これらの薬剤は副作用があるため症状を悪化させる場合がある。
【0005】
カプサイシンを用いる局所療法が、神経因性疼痛を含む慢性及び急性疼痛の治療に用いられている。カプサイシンはなす科(辛いチリ・ペパーを含む)植物から得られる刺激的な物質であり、痛みに介在すると見なされる小さな直径を有する求心性神経線維(A−デルタ及びC繊維)上で特異的に作用すると思われる。カプサイシンに対する応答は、末梢組織に存在する侵害受容体の持続的な活性化に続いて、1つ又はそれ以上の刺激に対して次第に末梢の侵害受容体が脱感作されるものと特徴付けられている。動物を用いた研究により、カプサイシンは、カルシウム及びナトリウムに対してカチオン選択性チャネルを開くことにより、C繊維膜の脱分極化を誘発するものと思われる。
【0006】
同様の応答が、バニロイド部位を共通にするカプサイシンの構造的な類縁体によっても引き起こされる。そのような類縁体の1つは、ユーホルビア(Euphorbia)植物の天然生成物であるレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)である。バニロイド受容体(VR)という用語は、カプサイシン及びこれに関連する刺激性物質の神経膜認識部位を表すために造られた用語である。カプサイシンの応答は他の類縁体、カプサゼピンによって競合的に阻害され(従って拮抗され)、また非選択的カチオンチャネルブロッカー、ルテニウムレッドによっても阻害される。これらの拮抗薬は中等度未満の親和性(一般に140μM以上のK値で)でVRと結合する。
【0007】
ラット及びヒトのバニロイド受容体は、脊髄後根神経節細胞(dorsal root ganglion cells)からクローン化されている。最初に同定されたバニロイド受容体の型は、バニロイド受容体1型(VR1)として知られており、「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、哺乳動物の同属体のものと同様にラット及び/又はヒトのこのような型の受容体を意味し、本明細書では同義的に用いられている。痛覚におけるVR1の役割は、バニロイドが誘発する疼痛症状を示さず、熱及び炎症に対する応答が低下している、当該受容体が欠如しているマウスを用いて確認された。VR1は、高温、低pH、及びカプサイシン受容体作動薬に応答してチャネルを開く閾値が低くなる、非選択的なカチオンチャネルである。例えば、このチャネルは通常、約45℃以上の温度で開く。カプサイシン受容体チャンネルの開放は、一般に、この受容体を発現している神経細胞及び隣接する神経細胞からの炎症ペプチドの放出に引き続いて起こり、疼痛応答を増強させる。カプサイシンによる初期活性化後に、カプサイシン受容体は、cAMP依存プロテインキナーゼによるリン酸化によって急速に脱感作を受ける。
【0008】
末梢組織の侵害受容体を脱感作するこれらの能力により、VR1作動薬であるバニロイド化合物は局所麻酔薬として使用されている。しかしながら、作動薬の投与自体が灼熱痛を引き起こす場合があるため、治療への使用が制限されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近、非バニロイド化合物を含むVR1拮抗薬も疼痛の治療に有用であることが報告された(2002年1月31日公開のPCT国際出願公開公報第WO02/08221号を参照のこと)。
【0010】
従って、VR1と相互に作用はするが、VR1作動薬であるバニロイド化合物のように初期疼痛を誘発しない化合物が、神経因性疼痛を含む慢性及び急性の疼痛の治療に対して望まれている。この受容体の拮抗薬は疼痛、さらに催涙弾暴露、痒み及び尿失禁、過活動膀胱のような尿路疾患のような病気の治療に対して特に望ましい。本発明はこの要求を満たし、さらに関連する利点を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
本発明は、カプサイシン受容体活性を変化させる、好ましくは阻害するカプサイシン受容体調節剤を提供する。ある態様においては、本明細書で提供される化合物は式I:
【0012】
【化3】

又はその薬学的に許容されるその形態(form)によって、特徴付けられる。
【0013】
式中;
W、Y及びZは、独立してN又はCRである。
は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、置換されていてもよいC−Cアルキル、置換されていてもよいハロC−Cアルキル、置換されていてもよいC−Cアルコキシ、置換されていてもよいハロC−Cアルコキシ及び置換されていてもよいモノ−及びジ−C−Cアルキルアミノから選ばれる。
【0014】
Ar及びArは、それぞれが置換されていてもよく、好ましくはハロゲン、シアノ、ニトロ及び式LRaの基から独立して選ばれる0から3個の置換基で置換されている、5から10員の芳香族炭素環及び複素環から選ばれる。
【0015】
Lは、それぞれ独立して、単共有結合、O、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、O−C(=O)O、S(O)、N(Rx)、C(=O)N(Rx)−、N(Rx)C(=O)、N(Rx)S(O)、S(O)N(Rx)及びN[S(O)(Rx)]S(O)から選ばれる(式中、mはそれぞれ独立して0、1及び2から選ばれ;そしてRxはそれぞれ独立して水素及び置換されていてもよいC−Cアルキルから選ばれる)。そして
【0016】
Raは、それぞれ独立して、(i)水素、及び(ii)(a)ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、シアノ、ニトロ、オキソ及びCOOH;及び(b)それぞれが置換されていてもよい、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノン、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、ヒドロキシC−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、シアノC−Cアルキル、フェニルC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルキルスルホンアミド及び(5から7員の複素環)−C−Cアルキル、からそれぞれ独立して選ばれる0〜6個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ及び(3から10員の複素環)−C−Cアルキル;から選ばれる。
【0017】
ある態様においては、本明細書に記載されているようなVR1調節剤は、カプサイシン受容体結合試験において1マイクロモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のK値を示し、及び/又はカプサイシン受容体作動活性又は拮抗活性を測定する試験において1マイクロモル、100ナノモル、50ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル以下のEC50値又はIC50値を有している。
【0018】
ある態様においては、本明細書に記載されているようなVR1調節剤はVR1拮抗剤であり、そしてカプサイシン受容体活性化のインビトロ試験において検出可能な作動活性を示さない。
ある態様においては、本明細書に記載されているVR1調節剤は、検出可能なマーカー(例えば、放射性標識又は蛍光結合)で標識されている。
ある態様においては、本明細書に記載されているVR1調節剤及びその薬学的に許容される形態(form)は、検出可能なマーカー(例えば、放射性標識又は蛍光結合)で標識されている。
【0019】
他の態様によると、本発明はさらに本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤(すなわち、本明細書で提供される化合物又はその薬学的に許容される形態)を生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物を提供する。
【0020】
さらなる態様において、カプサイシン受容体を発現している細胞(例えば、神経細胞)を、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量と、接触させることからなる、細胞カプサイシン受容体のカルシウム伝達を減少させる方法を提供する。
【0021】
バニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを阻害する方法もさらに提供される。このような態様においては、阻害はインビトロで起こる。このような方法は、バニロイドリガンドのカプサイシン受容体への結合を阻害することを検出できる十分な条件下及び量で、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤をカプサイシン受容体に接触させることを含んでなる。その他のこのような態様では、カプサイシン受容体は患者の体内で発現している。このような方法は、バニロイドリガンドが、カプサイシン受容体のクローンをインビトロで発現する細胞に結合するのを阻害することを検出できる十分な量で、本発明に記載の1つ以上のVR1調節剤を、患者体内のカプサイシン受容体発現細胞と接触させて、これにより患者に於いて、バニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを阻害することからなる。
【0022】
本発明はさらに、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量を、患者に投与することからなる、患者のカプサイシン受容体の調節に敏感な病気を治療する方法を提供する。
他の態様において、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量を、疼痛に罹っている患者に投与することからなる、患者の疼痛を治療する方法を提供する。
【0023】
痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳及び/又はしゃっくりの1つ以上に罹っている患者に、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量を、投与することからなる、患者における痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳及び/又はしゃっくりを治療する方法がさらに提供される。
本発明はさらに、肥満患者に、本明細書に記載されている1つ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量を投与することからなる、減量を促進する方法を提供する。
【0024】
さらなる態様によれば、本発明は(a)カプサイシン受容体へのVR1調節剤の結合が可能な条件で、試料に本明細書に記載されているVR1調節剤を接触させ;そして(b)カプサイシン受容体に結合しているVR1調節剤の濃度を検出することからなる、試料中のカプサイシン受容体の有無を決定する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、(a)容器中の本明細書に記載されている医薬組成物;及び(b)疼痛、痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳、しゃっくり及び/又は肥満のような、カプサイシン受容体調節に敏感な1つ又はそれ以上の病気を治療するためのこの化合物の使用説明書を含む、包装された医薬組成物を提供する。
【0026】
さらに他の態様によれば、本発明は中間体を含め、本明細書に開示されている化合物の製造方法を提供する。
【0027】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明を参照することにより明確となるであろう。
【0028】
(発明の詳細な説明)
上で述べたように、本発明はアリール基で置換されたベンゾ[b]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体である、カプサイシン受容体調節剤を提供する。このような調節剤はインビトロ又はインビボで、カプサイシン受容体活性を調節(好ましくは阻害)するために様々な状況下で使用できる。
【0029】
(用語)
化合物は一般に、本明細書に標準の命名法を用いて記載されている。不斉中心を有する化合物については、特定される以外は、全ての光学異性体及びこれらの混合物は範囲内であることを理解すべきである。さらに、炭素−炭素2重結合を有する化合物はZ体及びE体を生じ、特定される以外は、全ての異性体が本発明に含まれる。多種の互変異性体の型で存在する化合物においては、表示されている化合物は一つの特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異性体の型を含むように意図されている。ある化合物は、可変基(例えば、R、A、X)を含む一般式を用いてここに記載されている。特定しない限り、そのような式のそれぞれの可変基は、他の可変基から独立して定義されており、式中に一度以上現れるどの可変基もその都度独立して定義される。
【0030】
本明細書で用いられているような用語、「アリール基で置換されたベンゾ[b]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体」は、本明細書の式Iを充たす全ての化合物、さらに本明細書で提供される他の式の化合物及びそのような化合物の薬学的に許容される形態をも包含する。このような化合物は、ベンゾ[b]イソチアゾール骨格が、環員複素原子の数及び/又は位置を変更した類縁体、また以下により詳細に記載されているような、多種の置換基がこのような核構造に付加した類縁体を包含する。例えば、本発明の範囲を限定しないが、以下の核構造を有する化合物(さらに環置換があっても無くても)が、アリール基で置換されたベンゾ[b]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体の範囲に含まれる。
【0031】
【化4】

【0032】
本明細書で示されている化合物の「薬学的に許容される形態」は、このような化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、結晶形、多形体、キレート、非−共有複合体、エステル、包接体及びプロドラッグである。本明細書で用いられているような、薬学的に許容される塩は、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題もしくは合併症をもたらさずに、ヒト又は動物の組織に接触させて用いるのに適当であると当該技術分野で一般に考えられている、酸又は塩基の塩である。このような塩は、アミンのような塩基残基の鉱酸及び有機酸塩を、またカルボン酸のような酸残基のアルカリ又は有機塩を包含する。具体的な薬学的に許容される塩は、これに限定されないが、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、酢酸のようなアルカノイル酸、HOOC−(CH)n−COOH(nは0−4である)等のような酸の塩を包含する。同様に薬学的に許容されるカチオンは、これに限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムを包含する。当業者は、本明細書で提供される化合物のためのさらなる薬学的に許容される塩が、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p.1418 (1985) に記載されているものを包含しているということを認識できるであろう。一般的に、薬学的に許容される酸又は塩基の塩は、塩基又は酸の部位を含んでいる親化合物からいくつかの慣用の化学的方法によって合成することができる。つまり、このような塩は、これの化合物の遊離酸又は塩基形態を水又は有機溶媒、又はこれらの混合物中で、化学量論的な量の適当な塩又は酸と接触させることによって製造でき;一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、
イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水溶媒の使用が好ましい。
【0033】
「プロドラッグ」とは、本明細書で提供される化合物の構造的な要求を完全には充たしていないが、患者へ投与した後に、生体内で修飾されて、式I、又は本明細書で提供される他の式の化合物を生ずる化合物である。例えば、プロドラッグは本明細書で提供されるような化合物のアシル化誘導体であってもよい。プロドラッグは、哺乳動物に投与した後に開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシ、アミノ又はメルカプト基を形成する、ヒドロキシ、アミノ又はメルカプト基と任意の基とが結合している化合物を包含している。プロドラッグの例は、これに限定されないが、本明細書で提供される化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸、ギ酸、安息香酸の誘導体を包含する。本明細書で提供される化合物のプロドラッグは、化合物中の官能基を、修飾体が開裂して親化合物になるような方法で、修飾することによって製造することができる。
【0034】
本明細書で用いられているような「アルキル」という用語は、直鎖、分枝鎖又は環状の飽和脂肪族炭化水素を示す。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、3−メチルペンチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びノルボルニルのような、1から8個の炭素原子(C−Cアルキル)、1から6個の炭素原子(C−Cアルキル)及び1から4個の炭素原子(C−Cアルキル)を有する基を包含する。「C−Cアルキル」は単共有結合(C)又は1、2、3又は4個の炭素原子を有するアルキル基を示し;「C−Cアルキル」は単共有結合又はC−Cアルキル基を示し;「C−Cアルキル」は単共有結合又はC−Cアルキル基を示す。ある態様においては、好ましいアルキル基は直鎖又は分枝鎖である。本明細書中のある場合には、アルキル基の置換基は具体的に示されている。例えば、「シアノC−Cアルキル」は、1つ以上のCN置換基を有するC−Cアルキル基を示す。代表的な分枝鎖シアノアルキル基は−C(CHCNである。
【0035】
同様に、「アルケニル」は、直鎖又は分枝鎖又は環状のアルケン基で、そこに1つ以上の炭素−炭素二重結合が存在する。アルケニル基は、エテニル、アリル又はイソプロペニルのような、それぞれ2から8個、2から6個又は2から4個の炭素原子を有する、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル及びC−Cアルケニル基を包含する。
「アルキニル」は、直鎖又は分枝鎖又は環状のアルキン基で、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、それの1つ以上は三重結合である。アルキニル基は、それぞれ2から8個、2から6個及び2から4個の炭素原子を有する、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル及びC−Cアルキニル基を包含する。ある態様においては、好ましいアルケニル及びアルキニル基は直鎖又は分枝鎖である。
【0036】
「アルコキシ」として本明細書で用いられているものは、酸素結合を介して結合している上記のアルキル基を意味する。アルコキシ基は、それぞれ1から6個又は1から4個の炭素原子を有する、C−Cアルコキシ及びC−Cアルコキシ基を包含する。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、2−ペントキシ、3−ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2−ヘキソキシ、3−ヘキソキシ、及び3−メチルペントキシが具体的なアルコキシ基である。
【0037】
同様に、「アルキルチオ」は硫黄結合を介して結合している上記のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を意味する。好ましいアルコキシ及びアルキルチオ基はアルキル基が複素原子結合を介して結合しているものである。
本明細書で用いられているような用語「オキソ」は、ケト(C=O)基を示す。オキソ基は、−CH−から−C(C=O)−への変換をもたらす、非芳香族炭素原子の置換基である。
【0038】
用語「アルカノイル」は、直状又は分枝状に配列しているアシル基(例えば、−(C=O)−アルキル)基を示す(ここにおいて結合はケト基の炭素を介する)。アルカノイル基は、それぞれ2から8個、2から6個又は2から4個の炭素原子を有する、C−C8アルカノイル、C−Cアルカノイル及びC−Cアルカノイル基を包含する。Cアルカノイルは−(C=O)−Hを示し、(C−C8アルカノイルと共に)「C−C8アルカノイル」の語によって包括される。エタノイルはCアルカノイルである。
【0039】
「アルカノン」は、炭素原子が直状又は分枝状にアルキル配列しているケトン基である。C3−C8アルカノン、C−Cアルカノン及びC−Cアルカノンは、それぞれ3から8個、6個又は4個の炭素原子を有するアルカノン基を示す。例を挙げると、Cアルカノイル基は構造−CH−(C=O)−CHを有する。
【0040】
同様に、「アルキルエーテル」は直鎖又は分枝鎖のエーテル置換基を示す。アルキルエーテル基は、それぞれ2から8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−C8アルキルエーテル、C−C6アルキルエーテル及びC−C4アルキルエーテル基を包含する。例を挙げると、Cアルキルエーテル基は構造−CH−O−CHを有する。
【0041】
「アルコキシカルボニル」という語は、カルボニルを介して結合しているアルコキシ(すなわち、一般構造−C(=O)−O−アルキルを有する基)を示す。アルコキシカルボニル基は、それぞれ2から8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−C、C−C及びC−Cアルコキシカルボニル基を包含する。「Cアルコキシカルボニル」は−C(=O)−OHを示し、用語「C−C8アルコキシカルボニル」の範囲に入る。
【0042】
本明細書で用いられている「アルカノイルオキシ」は、酸素結合を介して結合するアルカノイル基(すなわち、一般構造−O−C(=O)−アルキルを有する基)を示す。アルカノイルオキシ基は、それぞれ2から8個、6個又は4個の炭素原子を有する、C−C、C−C及びC−Cアルカノイルオキシ基を包含する。
【0043】
「アルキルスルホニル」は、式−(SO)−アルキルの基を示し、ここでは硫黄原子が結合点である。アルキルスルホニル基は、C−Cアルキルスルホニル及びC−Cアルキルスルホニル基を包含し、それぞれ1から6個又は1から4個の炭素原子を有する。メチルスルホニルはアルキルスルホニル基の1具体例である。
【0044】
「アルキルスルホンアミド」は式−(SO)−N(R)の基を示し、ここでは硫黄原子が結合点であり、そしてRは独立して水素又はアルキルである。用語「モノ−又はジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド」は、1つのRがC−Cアルキルで、他方のRが水素又は独立して選ばれるC−Cアルキルであるような基を示す。
【0045】
「アルキルアミノ」は一般構造−NH−アルキル又は−N(アルキル)(アルキル)を有する2級又は3級アミンを示し、ここにおいてそれぞれのアルキルは同一でも異なってもよい。このような基は、例えば、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基を包含し、ここにおいては、それぞれのアルキル基は同一でも異なってもよく、1から8個の炭素原子を含み、またモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ基も包含する。
【0046】
「アルキルアミノアルキル」はアルキル基を介して結合するアルキルアミノ基(すなわち、一般構造−アルキル−NH−アルキル又は−アルキル−N(アルキル)(アルキル)を有する基)を示し、それぞれのアルキル基は独立して選ばれる。このような基は、例えば、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノC−Cアルキル及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノC−Cアルキルを包含し、ここにおいてそれぞれのアルキル基は同一でも異なってもよい。「モノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノC−Cアルキル」は、直接結合又はC−Cアルキル基を介して結合しているモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−アミノ基を示す。以下は代表的アルキルアミノアルキル基である。
【0047】
【化5】

【0048】
「アミノカルボニル」という用語は、アミド基(すなわち、−(C=O)NH)を示す。「モノ−又はジ−(C−Cアルキル)−アミノカルボニル」は、一方又は両方の水素原子がC−Cアルキルに置き換わったアミノカルボニル基である。両方の水素原子がこのように置き換わった場合には、このC−Cアルキル基は同一でも異なってもよい。
【0049】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示す。
「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン原子で置換された、分枝又は直鎖のアルキル基(例えば、「C−Cハロアルキル」は1から8個の炭素原子を有し、「C−Cハロアルキル」は1から6個の炭素原子をする)である。ハロアルキル基の例は、これに限定されないが、モノ−、ジ−又はトリ−フルオロメチル;モノ−、ジ−又はトリ−クロロメチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−フルオロエチル;モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−又はペンタ−クロロロエチル;及び1,2,2,2、−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチル−エチルを包含する。代表的なハロアルキル基はトリフルオロメチル及びジフルオロメチルである。
「ハロアルコキシ」という用語は、酸素結合を介して結合した、上記で定義したハロアルキル基を示す。「C−Cハロアルコキシ」基は1から8個の炭素原子を有する。
【0050】
2つの文字又は記号の間にない、ダッシュ(「−」)は置換基の結合位置を示すために用いられている。例えば、−CONHは炭素原子を介して結合している。
【0051】
「炭素環」又は「炭素環基」は、1つ以上の、全てが炭素−炭素結合で形成されている環(本明細書では炭素環として示す)を含有してなり、複素環を含んでいない。特定する以外は、炭素環基中のそれぞれの炭素環は飽和、部分飽和又は芳香族であってもよい。炭素環は一般に1から3個の縮合、懸吊又はスピロ環を有し;ある態様における炭素環は1環又は2個の縮合環を有している。通常は、それぞれの環は3から8個の環員原子を含み(すなわち、C−C);ある態様においてはC−C環が示されている。縮合、懸吊又はスピロ環からなる炭素環は通常9から14個の環員原子を含んでいる。炭素環のある代表例はシクロアルキル(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、デカヒドロ−ナフタレニル、オクタヒドロ−インデニルのような、飽和及び/又は部分飽和の環からなる基、及びシクロヘキセニルのような前述のものの部分飽和変異体)である。他の炭素環はアリール(すなわち、1つ以上の芳香族炭素環を含有している)である。このような炭素環は、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル、インダニル及び1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフチルを包含する。
【0052】
本明細書で述べられているある炭素環は、C−C10アリールC−Cアルキル基(すなわち、1つ以上の芳香族環よりなる炭素環が直接結合又はC−Cアルキル基を介して結合している基)である。このような基は、例えば、フェニル及びインダニルを、また上記のものの一方がC−Cアルキルを介して、好ましくはC−Cアルキルを介して結合している基をも包含している。直接結合又はC−Cアルキル基を介して結合しているフェニル基はフェニルC−Cアルキル(例えば、ベンジル、1−フェニル−エチル、1−フェニル−プロピル及び2−フェニル−エチル)と表すことができる。
【0053】
「複素環」又は「複素環基」は、1つ以上の環が複素環(すなわち、1つ以上の環員原子が複素原子で残りの環員原子が炭素である)である、1から3個の縮合、懸吊又はスピロ環を有する。一般に、複素環は1、2、3又は4個の複素原子からなり;ある態様によれば、それぞれの複素環は環当り1又は2個の複素原子を有する。それぞれの複素環は、一般に3から8個の環員原子を含み(4又は5から7個の環員原子を有する環がある態様で述べられている)、そして縮合、懸吊又はスピロ環からなる複素環は一般に9から14個の環員原子を含んでいる。ある複素環は環員原子として硫黄を含有してなり;ある態様では、この硫黄原子はSO又はSOに酸化されている。複素環は、示されたような多種の置換基で置換されていてもよい。特定しない限り、複素環はヘテロシクロアルキル基(すなわち、それぞれの環が飽和又は不飽和である)又はヘテロアリール基(すなわち、基の1つ以上の環が芳香族である)であってもよい。複素環基は一般に、安定な化合物が得られるなら、いくつかの環又は置換基の原子を介して結合できる。N−結合複素環基は構成窒素原子を介して結合している。
【0054】
複素環基は、例えば、アゼパニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズテトラゾリル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラニル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロテトラヒドロフラニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシル、ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イソキノリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドイミダゾリル、ピリドオキサゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、チアジアジニル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チエニル、チオフェニル、チオモルホリニル及び硫黄原子が酸化されたこの変異体、トリアジニル及び前述のような1から4個の置換基で置換されている前記のものを包含する。
【0055】
「複素環−C−Cアルキル」は直接結合又はC−Cアルキル基を介して結合している複素環基である。(3から10員の複素環)−C−Cアルキルは、単共有結合又は1から6個の炭素原子を有するアルキル基を介して結合している、3から10個の環員原子を有する複素環基である。複素環がヘテロアリールの場合、(5から10員のヘテロアリール)−C−Cアルキルを表す。(5から7員の複素環)−C−Cアルキルは単共有結合又はC−Cアルキル基を介して結合している、5から7個の環員原子を有する複素環基である。
【0056】
ある複素環基は、置換されていてもよい、1個の複素環又は2個の縮合環又はスピロ環を含む、4から10員の、5から10員の、3から7員の、4から7員の又は5から7員の基である。4から10員のヘテロシクロアルキル基は、例えば、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、アゼパニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デシ−8−イル、モルホリノ、チオモルホリノ及び1,1−ジオキソ−チオモルホリン−4−イルを包含する。このような基は示されたように置換されていてもよい。代表的な芳香族複素環はアゾシニル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾリル、テトラゾリル及び3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリン−2−イルである。
【0057】
本明細書で用いられている「置換基」は、対象の分子中の原子に共有結合している分子の残基を示す。例えば、「環置換基」は、環員である原子(好ましくは炭素又は窒素原子)に共有結合しているハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基又は本明細書で述べられている他の基のような残基であってよい。用語「置換」は、分子構造中の水素原子を上記の置換基で、指定された原子の原子化が過剰にならないように、かつ置換の結果化学的に安定な化合物(すなわち、単離でき、特徴づけができ、生物活性を試験することができる化合物)が得られるように、置き換えることを示す。
【0058】
「置換されていてもよい」基は、非置換か又は、水素以外で1つ以上の可能な位置、具体的には1、2、3、4又は5位が、1つ以上の適当な基(これは同一でも異なってもよい)で置換されている。このような任意の置換基は、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノン、C−Cアルキルチオ、アミノ、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)アミノ、ハロC−Cアルキル、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、−COOH、−CONH、モノ−又はジ−(C−Cアルキル)−アミノカルボニル、−SONH、及び/又はモノ−又はジ−(C−Cアルキル)−スルホンアミドを、さらに炭素環及び複素環基をも含有する。置換されていてもよいは、「0からX個の置換基で置換されている」(ここにおいてXは置換可能な最大数である)という語句でも表される。ある置換されていてもよい基は、0から2、3又は4個の独立して選ばれる置換基で置換されている(すなわち、これらは非置換であるか又は挙げられている置換基の最大数までで置換されている)。
【0059】
「VR1」及び「カプサイシン受容体」という用語は、本明細書ではどちらも1型のバニロイド受容体を示す同義語として用いられている。他に特定されない限り、これらの用語はラット及びヒトのVR1受容体の両方(例えば、GenBankの受託番号 AF327067、AJ277028及びNM 018727;特定のヒトVR1のcDNA配列表は米国特許第6,482,611号の配列番号1〜3に示されており、そのコードするアミノ酸配列は配列番号4及び5に示されている)を含み、さらに他の種で見出されるこれらの同族体をも含む。
【0060】
「VR1調節剤」(本明細書では「調節剤」とも示す)とは、VR1の活性化及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を調節する化合物である。本明細書で特に提供されるVR1調節剤は式Iの化合物及び式Iの化合物の薬学的に許容される形態である。VR1調節剤はVR1の作動薬又は拮抗薬であってもよい。調節剤は、VR1におけるK値が1マイクロモル未満、好ましくは100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満であれば、「高親和性」で結合する。VR1におけるK値を測定する代表的な試験は本明細書の実施例3に提供されている。
【0061】
調節剤は、バニロイドリガンドがVR1に結合するのを阻害することを検出できれば、及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(例えば、実施例4で提供されている代表的な試験を用いて)を阻害するのを検出できれば、拮抗薬と考えられ;一般に、このような拮抗薬はVR1の活性化を、実施例4に提供されている試験において、1マイクロモル未満の、好ましくは100ナノモル未満の、より好ましくは10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50値で阻害する。VR1拮抗薬はニュートラルアンタゴニスト及びインバースアゴニスト(逆作動薬)を含む。ある態様において、本明細書にはバニロイド以外のカプサイシン受容体拮抗薬も示されている。
【0062】
VR1の「逆作動薬」とは、追加のバニロイドリガンドの非存在下で、VR1の活性をその基礎活性レベル以下に減少させる化合物である。VR1の逆作動薬はVR1におけるバニロイドリガンドの活性も阻害でき、及び/又はVR1にバニロイドリガンドが結合するのも阻害できる。バニロイドリガンドがVR1に結合するのを阻害する化合物の能力は、実施例3で示されるような、結合試験で測定できる。VR1の基礎活性、またVR1拮抗薬の存在によるVR1活性の減少は、実施例4に示されるような、カルシウム非固定化試験によって測定することができる。
【0063】
VR1の「ニュートラルアンタゴニスト」とは、VR1におけるバニロイドリガンドの活性を阻害するが、この受容体の基礎活性を有意に変化させない(すなわち、バニロイドリガンドの非存在下で行われる実施例4に記載のカルシウム非固定化試験において、VR1活性が、10%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満減少し、最も好ましくは検出可能な活性低下を示さない)化合物である。VR1のニュートラルアンタゴニストはバニロイドリガンドがVR1に結合するのを阻害できる。
【0064】
本明細書で用いられている「カプサイシン受容体作動薬」又は「VR1作動薬」とは、受容体の活性を受容体の基礎活性より上に上昇させる(すなわち、VR1活性及び/又はVR1が介在するシグナル伝達を増強する)化合物である。カプサイシン受容体作動薬活性は実施例4で示される代表的な試験を用いて同定可能である。一般に、このような作動薬は実施例4で示される試験において、1マイクロモル未満、好ましくは100ナノモル未満、より好ましくは10ナノモル以下のEC50値を有する。ある態様において、本明細書にはバニロイド以外のカプサイシン受容体拮抗薬も示されている。
【0065】
「バニロイド」とは、カプサイシン又は、隣接する炭素原子(この炭素原子のうちの1つはフェニル環に結合している第3の残基が結合している位置とパラ位にある)に結合した2つの酸素原子を有するフェニル環を含有してなるカプサイシン類縁体である。バニロイドは、10μM未満のK(本明細書で述べられているように測定)でVR1と結合するならば、「バニロイドリガンド」である。バニロイドリガンド作動薬はカプサイシン、オルバニル(olvanil)、N−アラキドノイル−ドーパミン及びレシニフェラトキシン(resiniferatoxin:RTX)を包含する。バニロイドリガンド拮抗薬はカプサゼピン及びヨード−レシニフェラトキシンを包含する。
【0066】
「カプサイシン受容体調節量」とは、患者に投与したときに、患者中のカプサイシン受容体におけるVR1調節剤の濃度が、インビトロでVR1へのバニロイドリガンドの結合(実施例3で提供されている試験を用いて)及び/又はVR1が介在するシグナル伝達(実施例4で提供されている試験を用いて)を変化させるのに十分な濃度になるようにした量である。カプサイシン受容体は、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、滑液、リンパ液、細胞間質液、涙又は尿のような体液中に存在する。
【0067】
「治療有効量」とは、投与により、治療している病気から患者の苦痛を検出可能な程度軽減するのに十分な量である。このような軽減は、痛みのような1つ以上の症状の緩和を含む、適当な基準を用いて確認することができる。
【0068】
「患者」とは、本明細書で提供されるようなVR1調節剤で治療される個人である。患者とは、ヒト、またペット(例えば、イヌ及びネコ)及び家畜のような他の動物をも包含する。患者はカプサイシン受容体調節に敏感な病気の1つ又はそれ以上の症状(例えば、疼痛、バニロイドリガンドへの暴露、痒み、尿失禁、過活動膀胱、呼吸器疾患、咳及び/又はしゃっくり)に悩んでいるか、又はこのような症状がなくてもよい(すなわち、治療は予防でもよい)。
【0069】
(VR1調節剤)
上で述べたように、本発明は、疼痛(例えば神経因性又は末梢神経を介する疼痛);カプサイシンへの暴露;酸、熱、光、催涙ガス、大気汚染、唐辛子スプレー又は関連する薬剤への暴露;喘息又は慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患;痒み;尿失禁又は過活動膀胱;咳又はしゃっくり;及び/又は肥満の治療を含む、多岐に亘る状況下で使用できるVR1調節剤を提供する。VR1調節剤は、インビトロ試験(例えば、受容体活性の試験)において、VR1の検出及び局在性のためのプローブとして及びリガンド結合及びVR1が介在するシグナル伝達試験における標準としても使用できる。
【0070】
本明細書で提供されるVR1調節剤はアリール基で置換されたベンゾ[d」イソチアゾール−3−イルアミン類縁体で、VR1へのカプサイシンの結合を、ナノモル(すなわち、サブマイクロモル)濃度で、好ましくはサブナノモルの濃度で、よりに好ましくは100ピコモル未満、又はさらに20ピコモル未満の濃度で、検出可能な程度に調節する。このような調節剤はバニロイドでないことが好ましい。ある好ましい調節剤はVR1拮抗薬であり、実施例4に記載されている試験において検出可能な作動薬活性を有していない。ある態様においては、このような調節剤はさらに高い選択性でVR1と結合し、またヒトEGF受容体チロシンキナーゼの活性を実質的に阻害しない。
【0071】
本発明は、一般式Iを有する低分子化合物(その薬学的に許容される形態もまた)が、VR1活性を調節するという発見に、部分的に、基づいている。式I:
【0072】
【化6】

の可変基は上で述べたようなものである。
【0073】
上で述べたように、Ar及びArは独立して、置換されていてもよい炭素環又は複素環である。ある置換基は式LRの基から選ばれる。上で述べたように、Lはそれぞれ独立して下記のものから選ばれる;
【0074】
単共有結合、O、
【化7】

【0075】
ある態様においては、Arが置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよい6員の芳香族複素環である。このようなAr基は、これに限定されないが、それぞれがハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルキルスルホニル及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル、ピリジル及びピリミジルを包含する。代表的なAr基は、フェニル及びピリジル(ハロゲン、C−Cアルキル又はハロC−Cアルキルで置換されていてもよい)を包含する。ある態様においては、Arの1個の置換基は結合部位に対してパラ位に位置している。すなわち、Arがフェニルなら、置換基は4位に位置している。同様に、Arが2−ピリジルなら、置換基は5位に位置している。
【0076】
ある態様においては、Arが、ハロゲン(例えば、フッ素又は塩素)、シアノ、COOH、C−Cアルキル(例えば、メチル)、ハロC−Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、C−Cアルコキシ、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルキルスルホニ及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又はピリジルである。ある態様においては、Arが結合部位に対してオルト位に1置換されている(すなわち、Arが置換フェニルなら2位;Arが置換2−ピリジルなら3位)。好ましいAr基は、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルキルスルホニル及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、2−ピリジルである。このようなAr基のあるものは、3位が置換されている2−ピリジル基であり、そのような基の例は、3−メチル−ピリジン−2−イル、3−クロロ−ピリジン−2−イル、3−シアノ−ピリジン−2−イル及び3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルである。
【0077】
W、Y及びZは、ある態様において、独立してN又はCHである。例えば、W、Y及びZのうちの1つがNで、他のものがCHであってもよい。また、W、Y及びZのうちの1つがCHで、他のものがNであってもよい。ある化合物においては、WがCHであり、そしてY及びZが独立してN又はCHである。
【0078】
式Iの化合物においては、Arが、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル及びハロC−Cアルキルから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又は2−ピリジルであり;そしてArが、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)−スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又はピリジルである。
【0079】
本明細書で提供される特定の化合物はさらに式II:
【0080】
【化8】

(式中、Ar及びArは置換フェニル、置換ピリジル及び置換ピリミジルから独立して選ばれ、そしてY及びZは式Iについて記載されているようなものである)で表されるものである。
【0081】
本明細書で提供されるある化合物はさらに式III:
【0082】
【化9】

(式中、AはCH又はNであり、Rはそれぞれ独立してハロゲン、シアノ、ニトロ又はLRであり、そして他の可変基は式Iについて記載されているようなものである)で表されるものである。
【0083】
式Iの代表的な化合物は、本明細書の実施1及び表1に記載されているものを包含するがこれに限定されるものではない。本明細書で具体的に示されている化合物は代表例に過ぎず、本発明の範囲を限定するように意図されたものではないということは明確であろう。さらに、上記のように、本発明の全ての化合物は、遊離塩基として又は酸付加塩のような、薬学的に許容される形態として存在していてもよい。
【0084】
本発明のアリール基で置換されているベンゾ[d]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体は、インビトロでのVR1リガンド結合試験及び/又はカルシウム非固定化試験、脊髄後根神経節試験又はインビボでの疼痛緩和試験のような機能試験を用いて測定すると、VR1活性を検出可能な程度変化させる(調節する)。本明細書に於ける「VR1リガンド結合試験」への言及は、実施例3で挙げられているような標準インビトロ受容体結合試験のことを意図しており、そして「カルシウム非固定化試験」(本明細書では「シグナル伝達試験」とも言う)は実施例4に記載されているように行うことができる。つまり、VR1との結合を評価するために、VR1調合液をVR1(例えば、RTXのようなカプサイシン受容体作動薬)と結合する(例えば、125I又はHで)標識された化合物及び標識されていない試験化合物と共に培養する、競合試験をしてもよい。本明細書に示される試験において、使用されるVR1は哺乳動物のVR1が好ましく、より好ましくはヒト又はラットのVR1である。受容体は組み換え技術で発現させたもの又は天然に発現しているものを用いてもよい。VR1調合液は、例えば、ヒトVR1を組み換え技術で発現するHEK293又はCHO細胞からの膜調合液であってもよい。バニロイドリガンドがVR1に結合するのを検出可能な程度に調節する化合物と共に培養すると、VR1調合液と結合する標識の量が、当該化合物を添加していない場合の結合した標識の量に比べて、減少又は増加する。この様な増減は、本明細書に記載されているように、VR1におけるK値の測定に用いられる。一般には、このような試験に於いてVR1調合液と結合する標識の量を減少させる化合物が好ましい。
【0085】
上述のように、VR1拮抗薬が、ある態様に於いては好ましい。このような化合物のIC50値は、実施例4で示されているような、標準のインビトロVR1介在カルシウム非固定化試験で測定可能である。つまり、カプサイシン受容体を発現する細胞を、目的の化合物及び細胞内カルシウム濃度の指示薬(例えば、それぞれ、Ca++と結合すると蛍光信号を発生するFluo−3又はFura−2のような膜透過性カルシウム感受性染料(両方とも、Molecular Probes社、Eugine社、OR社等から購入可能))と接触させる。このような接触は、溶液中に当該化合物及び指示薬の一方又は両方を含有する、緩衝液又は培養液中で細胞を1回又はそれ以上培養することによって行うことが好ましい。染料が細胞に入るのに十分な時間(例えば、1〜2時間)接触を保持させる。細胞から過剰な染料を除去するために洗浄又はろ過し、次いでバニロイド受容体作動薬(例えば、カプサイシン、RTX又はオルバニル)と、通常、EC50と等しい濃度で接触させて、蛍光応答を測定する。作動薬と接触させた細胞をVR1拮抗薬である化合物と接触させると、蛍光応答は、一般に、試験化合物を添加していない作動薬と接触させた細胞と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%そしてより好ましくは少なくとも80%減少する。本発明のVR1拮抗薬のIC50は、1マイクロモル未満、100nM未満、10nM未満又は1nM未満が好ましい。
【0086】
他の態様においては、カプサイシン受容体作動薬である化合物が好ましい。カプサイシン受容体作動薬活性は、一般に実施例4に記載されているようにして測定できる。細胞を1マイクロモルのVR1作動薬である化合物と接触させると、蛍光応答は一般に、細胞を100nMのカプサイシンと接触させて観測される増加の少なくとも30%の量で増加する。本発明のVR1作動薬のEC50は1マイクロモル未満、100nM未満又は10nM未満が好ましい。
【0087】
VR1調節活性も同様に、又は、実施例7に示されているような培養脊髄後根神経節試験及び/又は実施例8に示されているようなインビボ疼痛緩和試験を用いて評価できる。本発明で提供される化合物は好ましくは、本明細書で示される1つ又はそれ以上の機能試験でVR1活性について統計的に有意に特異な効果を有している。
【0088】
ある態様においては、本発明で提供されるVR1調節剤は、EGF受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような、他の細胞表面受容体とのリガンド結合を実質的には調節しない。すなわち、このような調節剤はヒト上皮細胞増殖因子(EGF)受容体チロシンキナーゼ又はニコチン性アセチルコリン受容体のような細胞表面受容体の活性を実質的には阻害しない(例えば、このような受容体におけるIC50又はIC40は、1マイクロモルより大きいことが好ましく、10マイクロモルより大きいことが、最も好ましい)。好ましくは、調節剤は0.5マイクロモル、1マイクロモル又はより好ましくは10マイクロモルの濃度で、EGF受容体又はニコチン性アセチルコリン受容体活性を検出可能な程度で阻害しない。パンベラ社(Panvera:Madison, WI)から入手できるチロシンキナーゼ試験キットを含めて、細胞表面受容体の活性を測定するアッセイは市販されている。
【0089】
本明細書で提供される好ましいVR1調節剤は非鎮静剤である。すなわち、疼痛緩和測定の動物モデル(本明細書の実施例8に示されているモデルのような)において無痛覚をもたらすに足る最小用量の2倍であるVR1調節剤用量は、鎮静動物モデル試験(Fitsgerald et al. (1988) Toxicology 49 (2-3): 433-9 に記載の方法を用いて)において、一時的(すなわち、疼痛緩和持続時間の1/2の時間だけ持続する)又は好ましくは、統計的に有意性のない鎮静のみを引き起こす。好ましくは、無痛覚をもたらすに足る最小用量の5倍の用量が統計的に有意な鎮静を引き起こさない。より好ましくは、本明細書で提供されるVR1調節剤は、25mg/kg未満(好ましくは10mg/kg未満)の静脈内用量又は140mg/kg未満(好ましくは、50mg/kg未満、より好ましくは、30mg/kg未満)の経口用量で鎮静を引き起こさない。
【0090】
必要に応じて、本明細書で提供されるVR1調節剤は幾つかの薬理学的性質を評価することができ、この性質は、これに限定されないが、経口バイオアベイラビリティー(好ましい化合物は、140mg/kg未満、好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは30mg/kg未満、さらに好ましくは10mg/kg未満、さらにより好ましくは1mg/kg未満そして最も好ましくは0.1mg/kg未満の経口用量で、この化合物の治療有効濃度が達成される程度まで経口で体内に吸収され利用され得る)、毒性(好ましいVR1調節剤はカプサイシン受容体調節量を患者に投与したときに非毒性である)、副作用(好ましいVR1調節剤は化合物の治療有効量を患者に投与したとき、プラセボと同等の副作用を生ずる)、血清蛋白との結合性及びインビトロ及びインビボ半減期(好ましいVR1調節剤は、1日4回(Q.I.D.)投与、好ましくは1日3回(T.I.D.)投与、より好ましくは1日2回(B.I.D.)投与、そして最も好ましくは1日1回投与を容認する程のインビボ半減期と同等のインビトロ半減期を示す)を包含する。さらに、上述の1日の総経口投与量が治療効果のある調節をするといった、中枢神経系(CNS)のVR1活性を調節することによる疼痛の治療に用いるVR1調節剤には、血液脳関門の差別化された透過(differential penetration)が望ましいが、一方、末梢神経が介在する疼痛の治療には、VR1調節剤の脳レベルが低い方が好ましい(すなわち、化合物の脳(例えばCSF)レベルは、VR1活性を有意に調節するのに十分ではない用量である)。当該技術分野でよく知られた通常の試験はこれらの性質を評価し、そして特定な使用のための優れた化合物を同定するために用いられる。例えば、バイオアベイラビリティーを予測するために用いられる試験は、Caco−2細胞単層を含む、ヒト腸細胞単層間の輸送試験を含む。ヒトにおける化合物の血液脳関門の透過は、化合物を投与(例えば、静脈内投与)した実験動物の脳内レベルから予測できる。血清蛋白結合性はアルブミン結合試験から予測できる。化合物の半減期は化合物の投与頻度に反比例する。化合物のインビトロ半減期は本明細書の実施例5で記載されているようなミクロソーム半減期の試験から予測できる。
【0091】
上述のように、本明細書で提供される好ましいVR1調節剤は非毒性である。一般に、本明細書で用いられている「非毒性」という用語は、相対的な意識で理解すべきであり、米国食品医薬品局(「FDA」)によって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認されているか、又は、判定基準を保持しつつ、FDAによって哺乳動物(好ましくはヒト)への投与が承認される可能性のある幾つかの物質を参照することが意図されている。さらに、非常に好ましい非毒性の化合物は一般的に、以下の判定基準(1)細胞のATP生成を実質的に阻害しない;(2)心臓のQT間隔を有意に延長しない;(3)実質的な肝肥大を引き起こさない;及び(4)肝酵素の実質的な放出を引き起こさない;の1つ又はそれ以上を満たすものである。
【0092】
本明細書で用いられている、「細胞のATP生成を実質的に阻害しない」VR1調節剤は実施例6で示されている判定基準を充たしている化合物である。つまり、実施例6で述べられているように100μMのこのような化合物で処理された細胞は、非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも50%のATPレベルを示す。さらに非常に好ましい態様によると、このような細胞は、非処理の細胞で検出されたATPレベルの少なくとも80%のATPレベルを示す。
【0093】
「心臓のQT間隔を有意に延長しない」VR1調節剤とは、治療有効インビボ濃度を生ずる最小用量の2倍を投与したモルモット、ミニブタ又はイヌにおいて、心臓のQT間隔を統計的に有意に延長しない(心電図記録で測定して)化合物のことである。ある好ましい態様においては、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口用量は、心臓のQT間隔の統計的に有意な延長をもたらさない。「統計学的に有意」とは、スチューデントT検定のような統計的有意性の標準パラメーター試験を用いて測定した、対照との差異で表され、有意性のレベルがp<0.1又はそれ以上、より好ましくはp<0.05となることを意味する。
【0094】
VR1調節剤は、実験用齧歯動物(例えば、マウス又はラット)に5〜10日間毎日、治療有効インビボ濃度を生ずる最小用量の2倍を投与する治療を施しても、対応する対照の100%以上の肝臓の対体重比の増加をもたらさず、「実質的な肝肥大をもたらさない」。さらに極めて好ましい態様においては、このような用量は、対応する対照に対して75%を越える又は50%を越える肝肥大をもたらさない。非齧歯動物(例えば、イヌ)を用いると、このような用量は、対応する治療を施していない対照に対して50%未満の、好ましくは25%未満のそしてより好ましくは10%未満の肝臓の対体重比の増加をもたらさない。このような試験における好ましい用量は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、40又は50mg/kgの注射又は経口投与を包含する。
【0095】
同様にVR1調節剤は、実験用齧歯動物に治療有効インビボ濃度を生ずる最小用量の2倍量を投与しても、偽治療を施した対照のALT、LDH又はASTの血清レベルを100%を越えて上昇させず、「肝酵素の実質的な放出を促進しない」。さらに極めて好ましい態様においては、このような用量は、これらの血清レベルを対応する対照の75%を越えて又は50%を越えて上昇させない。また、VR1調節剤は、インビトロ肝細胞試験において、化合物の最小インビボ治療濃度の2倍に等しい濃度(インビトロで肝細胞と接触させて培養する培養液又は溶液の濃度)が、対応する偽治療を施した対照細胞と較べて培養液中に基礎レベルを超えて、このような酵素を培養液中に検出可能な程放出せず、「肝酵素の実質的な放出を促進しない」。さらに極めて好ましい態様においては、このような化合物の濃度が、化合物の最小インビボ治療濃度の5倍及び好ましくは10倍であっても、基礎レベル以上に、このような肝酵素を培養液に検出可能な程放出しない。
【0096】
他の態様において、特定の好ましいVR1調節剤は、治療に有効な最小インビボ濃度と同じ濃度で、CYP1A2活性、CYP2A6活性、CYP2C9活性、CYP2C19活性、CYP2D6活性、CYP2E1活性又はCYP3A4活性のような、ミクロソームチトクロームP450酵素活性を阻害又は誘発しない。
【0097】
特定の好ましいVR1調節剤は、治療に有効な最小インビボ濃度と同じ濃度で、染色体異常を誘発しない(例えば、マウス赤血球前駆細胞小核試験、エームス小核試験、らせん小核試験などを用いて決定されるような)。他の態様において、特定の好ましいVR1調節剤は、このような濃度で姉妹染色分体交換(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞において)を誘発しない。
【0098】
以下で更に詳細に考察されるように、本発明のVR1調節剤は、検出を目的とする同位体標識又は放射性標識が可能である。例えば、式I〜IIIで表される化合物は、一般に自然界で見出される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する同じ元素の原子で置き換えられえた1つ又はそれ以上の原子を有することができる。本明細書で提供される化合物に存在させることができる同位体の例は、H、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F及び36Clのような、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体を包含する。さらに、重水素(すなわち、H)のような重同位体は、例えばインビボ半減期の増加又は必要用量の減少のような大きな代謝安定性に起因する治療利点をもたらすので、特定の状況においては好ましい。
【0099】
(VR1調節剤の調製)
置換ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体は、一般的に、Kwon et. al. (1996) Arzneim. Forsch. 46: 966-971; Boshagen (1967) Chem.Ber.100:954-960; Boshagen (1967) Chem. Ber. 100: 3326-3330; 及びYevich et. al. (1986) J. Med. Chem.29: 359-369 に記載されているような、標準的な合成法を用いて製造できる。一般に出発物質は、シグマ−アルドリッチ社[Sigma-Aldrich Corp. (St. Louis, MO)]のような供給業者から購入できるか、又は市販の前駆物質から確立された方法で製造することできる。1例として、以下のスキーム1〜3に示されているのと同様な合成経路は、有機化学合成の技術において知られている合成方法、又は当業者によって評価されているこれらの変法、と共に使用することができる。下記スキーム中の各可変基は、本明細書で提供される化合物の記載に一致した基を示す。
【0100】
以下のスキームにおいて、「触媒(catalyst)」という用語は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)又は酢酸パラジウム(II)のような、適当な遷移金属を示すがこれに限定されるものではない。さらに、この触媒系は、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−ビフェニル及びトリ−tert−ブチルホスフィンのようなリガンドを含有することができるが、これらに限定されるものではなく、更に、KPO、NaCO又はナトリウム又はカリウムtert−ブトキシドのような塩基も含有していてもよい。遷移金属−触媒反応は、常温又は温度を上げて、これらに限定されないが、トルエン、ジオキサン、DMF,N−メチル−ピロリジノン、エチレグリコール、ジメチルエーテル、ジグライム及びアセトニトリルを包含する各種の不活性溶媒を用いて行うことができる。よく用いられる試薬/触媒の組み合わせは、アリールボロン酸/パラジウム(0)(スズキ反応;Miyamura and Suzuki (1995) Chemical Reviews 95: 2457)、アリール トリアルキルスズ/パラジウム(0)(シュティレ反応;T. N. Mitchell (1992) Synthesis 9: 803-815)、アリール亜鉛/パラジウム(0)及びアリール グリニャール/ニッケル(II)を包含する。
【0101】
「活性化する(activate)」という用語は、アミド基のカルボニルを適当な脱離基(L)に変える合成的な変換を示す。この変換を行うのに適当な試薬は有機合成分野の当業者によく知られており、これに限定されないが、SOCl、POCl及びトリフルオロ無水酢酸を包含する。以下のスキーム中の「L]で示される脱離基は、Cl、Br又はO(C=O)CFを包含する。
本明細書で用いられている他の定義は次のとおりである。
【0102】
CDCl 重水素化クロロホルム
d ケミカルシフト
DCM ジクロロメタン
DME エチレングリコールジメチルエーテル
DMF ジメチルホルムアミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
H NMR プロトン核磁気共鳴
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
Hz ヘルツ
LCMS 液体クロマトグラフィー/質量分析
MS 質量分析
(M+1) 質量+1
Pd(PPh テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
【0103】
【化10】

【0104】
【化11】

【0105】
【化12】

【0106】
ある態様においては、VR1調節剤は1つ又はそれ以上の不斉炭素原子を含有することができるので、この化合物は異なった立体異性体の形態で存在することができる。このような形態は、例えば、ラセミ体又は光学活性体の形態になる。上述したように、全ての立体異性体は本発明の範囲に入る。それにもかかわらず、1つの鏡像異性体(すなわち、光学活性体)を得ることが望ましい。1つの鏡像異性体を製造する標準的な方法は不斉合成及びラセミ分割を包含する。ラセミ分割は、例えば、分割剤の存在下での再結晶、又はキラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィーのような通常の方法によって達成される。
【0107】
化合物は、放射性同位体である原子を1つ以上含有する前駆物質を用いる合成を行うことにより放射性標識できる。それぞれの放射性同位体は、炭素(例えば、14C)、水素(例えば、H)、硫黄(例えば、35S)、又はヨウ素(例えば、125I)が好ましい。トリチウム標識化合物も基質として該化合物を用いてトリチウムガスと、トリチウム化酢酸中でのプラチナ−触媒交換、トリチウム化トリフルオロ酢酸中での酸−触媒交換、又は不均一系触媒交換を介して触媒作用によって製造することができる。さらに、ある前駆体は、必要に応じて、トリチウムガスとトリチウム−ハロゲン交換、不飽和結合のトリチウムガス還元、又はナトリウムボロントリタイドを用いる還元に付すことができる。放射性標識化合物の調製は、放射性標識プローブ化合物の受注合成を専門とする放射性同位体供給業者によって容易になすことができる。
【0108】
(医薬組成物)
本発明は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤を1つ以上の生理的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる医薬組成物も提供する。医薬組成物は、例えば、1つ又はそれ以上の水、緩衝液(例えば、中性に緩衝された食塩水、又はリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、糖質(例えば、ブドウ糖、マンノース、蔗糖又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド又はグリシンのようなアミノ酸、抗酸化剤、EDTA又はグルタチオンのようなキレート剤及び/又は防腐剤を含有していてもよい。さらに、他の活性成分を本明細書で提供される医薬組成物に含有させてもよい(しかし必要ではない)。
【0109】
医薬組成物は適切な投与方法、例えば、局所、経口、経鼻、直腸内又は非経口投与を含む、のために製剤化できる。本明細書で用いられている非経口という語は皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内及び腹腔内注射を、また同様な注射又は注入法も包含する。ある態様においては、経口使用に適する組成物が好ましい。このような組成物は、例えば、錠剤、トローチ、薬用キャンディー、水性又は油性懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、乳剤、硬又は軟カプセル、又はシロップ又はエリキシルを包含する。さらなる他の態様においては、本発明の組成物は凍結乾燥剤として製剤化できる。局所投与用の製剤はある状況(例えば、火傷や痒みのような皮膚の症状を治療する場合)では好ましい。膀胱に直接投与する製剤(膀胱内投与:intravesicular administration)は尿失禁及び過活動膀胱の治療に好ましい。
【0110】
経口使用のための組成物はさらに、魅力的かつ味の良い製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤及び/又は保存剤のような成分を1つ以上含有していても良い。錠剤は活性成分を、錠剤の製造に適当な生理的に許容される賦形剤と共に含有している。このような賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳酸、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム)、顆粒化及び崩壊剤(例えば、トウモロコシ澱粉又はアルギン酸)、結合剤(例えば、澱粉、ゼラチン又はアラビアゴム)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)を包含する。錠剤は非−被覆であるか又は胃腸系における崩壊及び吸収を遅らせて長期間にわたる除放作用を示すようにする公知の技術によって被覆することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンのような時間遅延物質を使用できる。
【0111】
経口使用のための製剤は、活性成分を不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合した硬カプセル、又は活性成分を水又は油性媒体(例えば、ピーナッツオイル、流動パラフィン又はオリーブオイル)と混合した軟ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0112】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤を製造するのに適している賦形剤と共に活性物質を含有している。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム);及び分散又は湿潤剤(レクチンのような自然界にあるリン脂質、アルキレンオキシドとステアリン酸ポリオキシエチレンのような脂肪酸との縮合生成物、エチレンオキシドとヘプタデカエチレンオキシセタノールのような長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、エチレンオキシドとモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのような脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物、又はエチレンオキシドとモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンのような脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物)を包含する。水性懸濁剤は、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピルのような1つ又はそれ以上の防腐剤、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の着香剤、及び蔗糖又はサッカリンのような1つ又はそれ以上の甘味剤を含有していてよい。
【0113】
油性懸濁剤は、活性成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブオイル、ごま油
又はココナッツ油)又は流動パラフィンのよう鉱物油に懸濁させることによって製剤化できる。油性懸濁剤は蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。味の良い経口用製剤を提供するために、上記のような甘味剤及び/又は着香剤を添加することができる。このような懸濁剤は、アスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存されてもよい。
【0114】
水を加えて水性懸濁剤を製造するのに適当な、分散性の粉末又は顆粒は、活性成分を、分散又は湿潤剤、懸濁化剤及び1つ又はそれ以上の保存剤との混合剤とすることを提供する。適当な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に上で述べたようなもので例示されている。甘味、着香及び着色剤のような追加の賦形剤も存在させることができる。
【0115】
医薬組成物は水中油型乳剤として製剤化してもよい。油層は植物油(例えば、オリーブオイル又はラッカセイ油)、鉱物油(例えば、流動パラフィン)又はこれらの混合物であってよい。適当な乳化剤は、自然界に存在するガム(例えば、アラビアゴム又はトラガカントゴム)、自然界に存在するリン脂質(例えば、大豆レシチン、及び脂肪酸及びヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル)、無水物(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)及び脂肪酸とヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)を包含する。乳剤は1つ又はそれ以上の甘味剤及び/又は着香剤を含有していてもよい。
【0116】
シロップ及びエリキシルはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール又は蔗糖のような甘味剤と製剤化できる。このような製剤は1つ又はそれ以上の粘滑剤、保存剤、着香剤及び/又は着色剤も含有していてよい。
【0117】
局所投与用の製剤は、一般的に、活性剤を加えた局所用賦形剤を追加の任意成分とともに又はこれなしで含有している。適当な局所用賦形剤及び追加の任意成分は当該技術ではよく知られており、賦形剤の選択は、特殊な物理的形態及び送達方法によって決まるものと考えられる。局所用賦形剤は、水;アルコール(例えばエタノール又はイソプロピルアルコール)又はグリセリンのような有機溶媒;グリコール(例えば、ブチレン、イソプレン又はプロピレングリコール);脂肪族アルコール(例えば、ラノリン);水と有機溶媒との混合物及びアルコールのような有機溶媒とグリセリンの混合物;脂肪酸、アシルグリセロール(鉱物油のような油、及び天然又は合成の脂肪を含む)、ホスホグリセロイド、スフィンゴリピド及びワックスのような脂肪をベースとする物質;コラーゲン及びゼラチンのようなタンパク質をベースとする物質;シリコンをベースとする物質(非−揮発性と揮発性の両方);及びマイクロスポンジ及び高分子物質のような炭化水素をベースとする物質を包含する。組成物は、さらに用いる製剤の安定性又は効果を高めるのに適する1つ又はそれ以上の成分を含有していてもよく、この成分は安定化剤、懸濁化剤、乳化剤、粘度調節剤、ゲル化剤、防腐剤、抗酸化剤、皮膚浸透増強剤、保湿剤及び徐放物質のようなものであるこのような成分の例は、Martindale- The Extra Pharmacopoeia (Pharmaceutical Press, Lomdon 1993) 及び Martin (ed.), Remington's Pharamceutical Sciences に記載されている。製剤は、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルのようなマイクロカプセル、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子又はナノカプセルを含有していてもよい。
【0118】
局所製剤は例えば、固体、ペースト、クリーム、フォーム、ローション、ゲル、パウダー、水性液及び乳剤を包含する多種の物理的な形態に製剤化することができる。このような薬学的に許容される形態の物理的な外観及び粘度は、この製剤に存在する乳化剤及び粘度調節剤の有無及び量によって規定できる。固体製剤は硬質で非注入性であって、一般に棒状又はスティック状、又は特定な形態で製剤化され;固定製剤は不透明又は透明で、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤及び最終物の効能を増加もしくは増強しうる他の活性成分を任意に含有していてもよい。クリーム及びローションは互いに同様なものであることが多く、主にこれらの粘度が異なる。ローションとクリームの両者は不透明、透明又は透明感があり、乳化剤、溶媒、及び粘度調節剤を、さらに保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤及び最終物の効能を増加もしくは増強しうる他の活性成分をも含むことが多い。ゲルは高粘度から低粘度の範囲の粘度で製造できる。これらの製剤はローション及びクリームと同様に、溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤及び最終物の効能を増加もしくは増強うる他の活性成分を含有していてもよい。液剤はクリーム、ローション、又はゲルよりも薄く、乳化剤を含まないことが多い。液状の局所用製品は溶媒、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤及び最終物の効能を増加もしくは増強うる他の活性成分を含有していることが多い。
【0119】
局所製剤中で使用するのに適している乳剤は、イオン性乳化剤、セテアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルのような非イオン性乳化剤、ステアリン酸PEG−40、セテアレス−12、セテアレス−20、セテアレス−30、セテアレスアルコール、ステアリン酸PEG−100及びステアリン酸グリセリルを包含するがこれに限定されない。適当な粘度調節剤は、これに限定されないが、保護コロイド、又はヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、マグネシウムアルミニウムシリケート、シリカ、微結晶性ワックス、蜜蝋、パラフィン、及びパルミチン酸セチルのような非−イオン性のゴムを包含する。ゲル組成物は、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクオタニウム(polyquaterniums)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー(carbomer)又はグリチルリチン酸アンモニウム(ammoniated glycyrrhizinate)のようなゲル化剤の添加によって形成できる。適当な界面活性剤は、非イオン、両性、陽イオン性及び陰イオン性界面活性剤を包含するがこれらに限定されるものではない。例えば、ジメチコンコポリオール、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルビタン60、ポリソルベート80、ラウラミドDEA,コカミドDEA、及びコカミドMEA、オレイルベタイン、コカミドプロピルホスファチジルPG−ジモニウムクロライド(PG-dimonium chloride)、及びラウレス硫酸アンモニウム(ammonium laureth sulfate)の1つ以上を局所製剤中に用いることができる。
【0120】
好ましい防腐剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、安息香酸及びホルムアルデヒドのような抗菌薬を、また物理的安定剤及びビタミンE、アスコルビン酸ナトリウム/アスコルビン酸及び没食子酸プロピルのような抗酸化剤をも包含するがこれらに限定されるものではない。適当な保湿剤は、乳酸及び他のヒドロキシ酸及びこれの塩、グリセリン、プロピレングリコール、及びブチレングリコールを包含するがこれらに限定されるものではない。適当な皮膚軟化剤は、ラノリンアルコール、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、ワセリン、ネオペンタン酸イソステアリル及び鉱油を包含する。適当な香料及び着色剤は、これに限定されないが、FD&C Red No.40及びFD&C Yellow No.5を包含する。局所製剤に包含できる他の好ましい更なる成分は、研磨剤、吸湿剤、固結防止剤、消泡剤、帯電防止剤、収れん剤(例えば、ヘーゼル、アルコール及びカモミールエキスのようなハーブエキス)、結合剤/賦形剤、緩衝剤、キレート化剤、フィルム形成剤、品質改良剤、高圧ガス、不透明化剤、pH調節剤及び保護剤を包含するがこれらに限定はされない。
【0121】
ゲルの製剤化のために適する局所賦形剤の例は:ヒドロキシプロピルセルロース(2.1%);70/30のイソプロピルアルコール/水(90.9%);プロピレングリコール(5.1%);及びポリソルベート80(1.9%)である。泡として製剤化するための適当な局所賦形剤の例は:セチルアルコール(1.1%);ステアリルアルコール(0.5%); クオターニウム52(Quaternium 52)(1.0%);プロピレングリコール(2.0%);エタノール95PGF3(61.05%)、脱イオン水(30.05%);P75炭化水素高圧ガス(4.30%)である。全てのパーセントは重量によるものである。
局所用組成物の局所送達方法は、指を使用する塗布;布、ティッシュー、綿棒、スティック又はブラシのような物理的な塗布具を用いる塗布;スプレー(霧、エアゾール又は泡のスプレーを包含する);点滴投与、散布;浸漬;及びすすぎ;を包含する。放出制御賦形剤も使用できる。
【0122】
医薬組成物は無菌注射用の水溶液又は油性懸濁液として製造することができる。調節剤は、使用する賦形剤及び濃度に応じて、賦形剤に懸濁させても溶解させてもよい。このような組成物は上述の適する分散、湿潤剤及び/又は懸濁剤を用いて、公知の技術に従って製剤化することができる。許容される賦形剤及び溶媒のうち使用し得るものは、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液及び生理食塩液である。さらに、無菌の不揮発性油を溶媒又は懸濁媒体として使用できる。この目的のために、合成モノ−又はジグリセライドを含む、幾つかの無菌の不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射用組成物の製造において使用できると考えられ、局所麻酔剤、防腐剤及び/又は緩衝剤のようなアジュバントを賦形剤に溶解することができる。
【0123】
調節剤は坐薬(例えば、直腸内投与用)としても製剤化できる。このような組成物は薬剤を、常温では固体であるが直腸の温度では液体であるので直腸内で溶けて薬剤を放出する、適当な非刺激性の賦形剤と混合することによって製造できる。適当な賦形剤は、例えば、ココアバター又はポリエチレグリコールを包含する。
【0124】
医薬組成物は徐放製剤(すなわち、投与後に調節剤の徐放をもたらすカプセルのような製剤)として製剤化することができる。このような製剤は一般に、公知の技術で製造され、例えば、経口、直腸又は皮下移植によって、又は目的の標的部位に移植することによって投与される。このような製剤に用いられる担体は生体適合性があり、生体分解性でもあるようなもので;好ましくは、この製剤は比較的一定のレベルで調節剤を放出する。徐放製剤中に含有する調節剤の量は例えば、移植部位、速度及び期待する放出時間、及び治療又は予防する病気の性質によって決まる。
【0125】
さらに又は上記投与方法と共に、調節剤は便利に食物又は飲料水に添加することができる(例えば、ペットを含むヒト以外の動物(イヌ又はネコのような)及び家畜への投与)。動物用の餌及び飲料水組成物は、動物が食事と共に組成物の適当量を摂取できるように処方することができる。組成物を餌又は飲料水に添加するための、プレミックスとしても便利に提供できる。
【0126】
調節剤は一般に、カプサイシン受容体調節量、好ましくは治療有効量を投与する。好ましい全身用量は1日に体重1kg当り50mg未満(例えば、1日に体重1kg当り約0.001mgから約50mgの範囲)であり、経口では静脈内投与の約5−20倍高い(例えば、1日に体重1kg当り約0.01mgから約40mgの範囲)。
【0127】
単回投与単位を調製するために担体物質と混合する活性成分の量は例えば、治療する患者及び特定の投与方法によって変わる。投与単位は一般に約10μgから約500mgの活性成分を含有している。最適投与量は日常の検査、及びこの分野でよく知られている手順によって決めることができる。
【0128】
医薬組成物はVR1調節に応答する病気の治療(例えば、バニロイドリガンドへの暴露、疼痛、痒み、肥満又は尿失禁の治療)用に包装することができる。包装された医薬組成物は、本明細書で述べられている1つ以上のVR1調節剤の治療有効量を入れた容器及び中に入っている組成物は患者のVR1調節に応答する病気を治療するために使用するものであることを指摘している使用説明書(例えば、ラベル)を包含することができる。
【0129】
(使用方法)
本発明で提供されるVR1調節剤はインビトロ及びインビボの両方で、多岐に亘る状況下におけるカプサイシン受容体の活性化及び/又は活性を変化させるために使用できる。ある態様においては、VR1拮抗薬は、インビトロ又はインビボにおいてカプサイシン受容体にバニロイドリガンド作動薬(カプサイシン及び/又はRTXのような)が結合するのを阻害するために用いることができる。一般に、このような方法は、水溶液中でバニロイドリガンドの存在下に、このリガンドがカプサイシン受容体と結合する他の好ましい条件下に、本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量と、カプサイシン受容体を接触させる工程を含有してなる。カプサイシン受容体は溶液又は懸濁液中に(例えば、単離した膜又は細胞の調合液中)、又は培養された若しくは単離された細胞中に存在する。ある態様においては、カプサイシン受容体は患者の神経細胞に発現し、その水溶液は体液である。好ましくは、1つ又はそれ以上のVR1調節剤は、この類縁体が動物の1つ以上の体液に、1マイクロモル以下、好ましくは500ナノモル以下、さらに好ましくは100ナノモル以下、50ナノモル以下、20ナノモル以下、又は10ナノモル以下の治療有効濃度で存在するような量で動物に投与される。例えば、このような化合物は20mg/体重kg未満、好ましくは5mg/体重kg、ある場合では、1mg/体重kg未満の投与量で投与可能である。
【0130】
細胞カプサイシン受容体のシグナル伝達活性(すなわち、カルシウム伝達)を調節する、好ましくは低減する方法も本明細書で提供される。このような調節は、カプサイシン受容体(インビトロ又はインビボのどちらかで)を、本明細書で提供される1つ又はそれ以上のVR1調節剤のカプサイシン受容体調節量と、調節剤が受容体と結合するのに適当な条件下で、接触させることによって達成することができる。この受容体は、溶液又は懸濁液中に、培養したか単離した細胞の調合液中、又は患者の細胞内に存在する。例えば、この細胞は動物のインビボで接触している神経細胞であってもよい。また、この細胞は、動物のインビボで接触している、膀胱上皮細胞(尿路上皮細胞)又は気道上皮細胞のような、上皮細胞であってもよい。シグナル送達活性の調節は、カルシウムイオンの伝導性(カルシウム非固定化又は流動化としても)を検出することによって評価することができる。シグナル送達活性の調節は、また本発明の1つ又はそれ以上のVR1調節剤で治療されている患者の症状(例えば、疼痛、灼熱感、気管支収縮、炎症、咳、しゃっくり、痒み、尿失禁又は過活動膀胱)の変化を見ることによっても評価することができる。
【0131】
本発明で提供されるVR1調節剤は、患者(例えば、ヒト)に経口で又は局所に投与され、VR1のシグナル伝達活性を調節している間に、動物の1つ以上の体液中に存在させることが好ましい。このような方法に用いられる好ましいVR1調節剤は、VR1のシグナル伝達活性を、インビトロでは1ナノモル以下の、好ましくは100ピコモル以下の、より好ましくは20ピコモル以下の濃度で、インビボでは血液のような体液中で1マイクロモル以下の、500ナノモル以下の又は100ナノモル以下の濃度で、調節する。
【0132】
本発明はさらにVR1調節に応答する病気を治療する方法を提供する。本発明の文脈においては、「治療」という用語は、予防維持療法及び対症療法の両方(どちらも予防(すなわち、症状の発現前に、症状の重症度を阻止し、遅らせ、減少させるために)又は治療(すなわち、症状の発現後に、症状の重症度及び/又は期間を減少させるために)を含んでいる。局所的に存在するバニロイドリガンドの量に関係なく、カプサイシン受容体の不適正な活性によって特徴付けられ且つ/又はカプサイシン受容体活性の調節がこれらの病気又は症状の緩和をもたらすならば、病気は「VR1調節に応答する」。このような病気は例えば、以下に詳細に説明されるように、VR1活性化刺激への暴露、疼痛、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患、痒み、尿失禁、過活動膀胱、咳、しゃっくり、及び肥満からくる症状を包含する。これらの病気は当該技術で確立されている評価基準を用いて診断及び観察ができる。上記の用量で治療される患者はヒト、ペット及び家畜を含む。
【0133】
治療養生方法は、使用する化合物、及び治療すべき特定の病気によって変わる。しかし、殆どの病気の治療には、一日に4回以下の投与が望ましい。一般に、一日に2回の投与養生がさらに望ましく、一日に1回が特に望ましい。急性の疼痛治療には、有効濃度に急速に到達する単回投与が望ましい。しかし、特定の患者に対する特定の投与量レベル及び治療養生方法は、使用される特定化合物の活性、年齢、体重、健康状況、性別、治療食、投与期間、投与経路、そして排出速度、薬剤の組合せ及び治療中の特定の病気を含む、種々の要因によって変わる。一般に、効果的な治療を提供できるに十分な量の最少の投与量が望ましい。患者は、一般に治療される又は予防される病気に対して適した、医療の又は獣医の判断標準を使用して治療の効果をモニターされる。
【0134】
カプサイシン受容体活性化刺激への暴露による症状に罹っている患者には、熱、光、催涙ガス又は酸による火傷のある個人及び粘膜がカプサイシン(例えば、唐辛子又は唐辛子スプレーから)又は酸、催涙ガス又は汚染物質のような関連刺激に暴露(例えば、摂食、吸入又は目の接触を介して)している者が含まれる。結果として生じる症状(本発明のVR1調節剤、特に拮抗薬を用いて治療される)は例えば、疼痛、気管支収縮及び炎症を包含する。
【0135】
本発明のVR1調節剤を用いて治療できる疼痛は慢性又は急性で、これに限定されないが、末梢神経介在の疼痛(特に、神経因性疼痛)を包含する。本明細書で提供される化合物は例えば、乳房切除後疼痛症候群、断端痛、幻肢痛、口腔内神経因性疼痛、歯痛、義歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、反射性交感神経性ジストトロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、線維筋痛、ギラン−バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群及び/又は両側末梢神経障害の治療に用いることができる。さらなる神経障害性疼痛は、灼熱痛(反射性交感神経性ジストトロフィー−RSD、末梢神経損傷に続発する)、神経炎(例えば、坐骨神経炎、末梢神経炎、多発性神経炎、視神経炎、発熱後神経炎、移動性神経炎、分節性神経炎及びゴンボール神経炎(Gombault's neuritis)を含む)、ニューロン炎、神経痛(例えば、上で述べたもの、 頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、群発頭痛、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、顎関節神経痛、モートン神経痛(Morton's neuralgia)、鼻毛様体神経痛、後頭神経痛、紅神経痛、スラダー神経痛(Sluder's neuralgia)、スプレノパラチン(splenopalatine)神経痛、上部眼窩点神経痛及びヴィディウス神経痛)、手術関連疼痛、筋骨格痛、エイズ−関連神経因性疼痛、MS−関連神経因性疼痛、及び脊髄損傷−関連疼痛を包含する。膿瘻、クラスター(すなわち、群発頭痛)のような末梢神経活性及びある種の緊張性頭痛を含む頭痛及び片頭痛を包含する頭痛も、本明細書で述べられている様に治療できる。例えば、片頭痛は、患者が片頭痛の前兆を感じたら直ちに本発明で提供される化合物を投与することによって阻止することができる。ここに記載されている様に治療することができる更なる疼痛は、「口内焼灼感症候群」、労働痛、シャルコー疼痛、腸内ガスによる疼痛、生理痛、急性及び慢性の背痛(例えば、腰痛)、痔痛、消化不良性疼痛、狭心症、神経根痛、同所痛及び異所痛−癌関連疼痛(例えば、骨癌患者における)、毒への暴露による疼痛(及び炎症)(例えば、蛇、くもに咬まれたり昆虫に刺されたことによる)及び外傷性疼痛(例えば、手術後疼痛、切り傷、打撲及び骨折からの痛み、及び火傷の痛み)を包含する。ここ
に記載されている様に治療することができる更なる疼痛は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群及び又は炎症性腸疾患に関連する疼痛を包含する。
【0136】
ある態様において、本発明のVR1調節剤は機械的疼痛の治療に用いることができる。本明細書で用いられている「機械的疼痛」という語は、神経因性ではない頭痛又は熱、寒冷又は外からの化学的な刺激への暴露によるもの以外の疼痛を示す。機械的疼痛は、術後疼痛及び切り傷、打撲及び骨折からの痛み;歯痛;神経根痛、変形性関節症;間接リウマチ;線維筋痛;知覚異常性大腿神経痛;背痛;癌関連疼痛;狭心症;カーペルトンネル症候群(carpel tunnel syndrome);及び骨折、労働、痔、腸内ガス、消化不良、及び生理からくる疼痛のような物理的な外傷(熱又は化学的な火傷又は他の刺激及び/又は有毒な化学物質への有痛性の暴露以外の)を包含する。
【0137】
治療できる掻痒症は、乾癬性掻痒、血液透析による痒み、水性掻痒、及び膣前庭炎、接触皮膚炎、昆虫に咬まれる及び皮膚アレルギーに関連する痒みを包含する。本明細書に記載されているように治療することができる尿路疾患は、尿失禁(溢流性尿失禁、急迫性尿失禁及びストレス性尿失禁を包含する)、さらに過活動又は不安定膀胱症(脊髄因性排尿筋過反射及び膀胱過敏症を包含する)を包含する。このようなある方法においては、VR1調節剤を直接膀胱に注射できるように、カテーテルまたは同様な器具を介してVR1調節剤を投与する。本明細書で提供される化合物は鎮該薬(咳を阻止し、緩和し又は抑える)として、及びしゃっくりの治療及び肥満患者の減量を促進するためにも使用することができる。
【0138】
他の態様において、本発明のVR1調節剤は、炎症性要素を含む病気の治療のための併用療法で使用することができる。このような病気には、これに限定されないが、関節炎(特に関節リウマチ)、乾癬、クローン病、紅斑性狼瘡、過敏性腸症候群、組織移植不適合、及び移植臓器の超急性拒絶を、包含する炎症要素を有するものと知られている例えば、自己免疫疾患及び病的自己免疫反応を包含する。他のこのような疾患は外傷(例えば、頭部又は骨髄の損傷)、心臓−及び脳−血管疾患及びある種の感染症を包含する。
【0139】
このような併用療法においては、VR1調節剤は抗炎症剤とともに患者に投与される。このVR1調節剤と抗炎症剤は同じ医薬組成物中に存在させても、いずれかの順序で別々に投与されてもよい。抗炎症剤は、例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID類)非特異的及びシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキセート、腫瘍壊死因子(TNF)受容体拮抗薬、抗−TNFアルファー抗体、抗−C5抗体、及びインターロイキン−1(IL−1)受容体拮抗薬を包含する。NSAID類の例は、これに限定されないが、イブプロフェン(例えば、ADVIL(登録商標)、MOTRIN(登録商標))、フルビプロフェン(ANSAID(登録商標))、ナプロキセン又はナプロキセンナトリウム(例えば、NAPROSYN、ANAPROX、ALEVE(登録商標))、ジクロフェナク(例えば、CATAFLAM(登録商標)、VOLTAREN(登録商標))、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの合剤(例えば、ARTHROTEC(登録商標))、スリンダック(CLINORIL(登録商標))、オキサプロジン(DAYPRO(登録商標))、ジフルニサール(DOLOBID(登録商標))、ピロキシカム(FELDENE(登録商標))、インドメタシン(INDOCIN(登録商標))、エトドラック(LODINE(登録商標))、フェノプロフェンカルシウム(NALFON(登録商標))、ケトプロフェン(例えば、ORUDIS(登録商標)、ORUVAIL(登録商標))、ナトリウムナブメトン(RELAFEN(登録商標))、スルファサラジン(AZULFIDINE(登録商標))、トルメチンナトリウム(TOLECTIN(登録商標))、及びヒドロキシクロロキン(PLAQUENIL(登録商標))を包含する。特定の種類のNSAID類は、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))及びロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))のように、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害する化合物からなっている。NSAID類はさらに、アセチルサリチル酸又はアスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン及びナトリウム(TRILISATE(登録商標))、及びサルサラーテ(DISALCID(登録商標))のようなサリチル酸塩を、またコーチゾン(CORTONE(登録商標)アセテート)、デキサメサゾン(例えば、DECADRON(登録商標))、メチルプレドニゾロン(MEDROL(登録商標))、プレドニゾロン(PRELONE(登録商標))、プレドニゾロンリン酸ナトリウムリン酸(PEDIAPRED(登録商標))、及びプレドニゾン(例えば、PREDNICEN−M(登録商標)、DELTASONE(登録商標)、STERAPRED(登録商標))のような副腎皮質ステロイドを包含する。
【0140】
このような併用療法におけるVR1調節剤の適切な用量は、一般に上記のようである。抗炎症剤の用量及び投与方法は、例えば Physician's Desk Reference 中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様において、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、治療効果を生ずるのに必要な抗炎症剤の用量の減少をもたらす。したがって、好ましくは、本発明の併用又は併用療法における抗炎症剤の用量は、抗炎症剤を、VR1拮抗薬の併用投与なしで、投与する際の製造会社が助言している最大用量未満である。より好ましくは、この用量はこの最大用量の3/4未満、さらに好ましくは1/2未満、非常に好ましくは1/4未満であり、さらに最も好ましい用量は、VR1拮抗薬と併用投与しないで投与するときの抗炎症剤の投与に対して製造会社が助言する最大量の10%未満である。望ましい効果を達成するのに必要な併用薬のVR1拮抗薬成分の用量は、併用薬の抗炎症剤成分の用量及び効力によって影響されることは明らかであろう。
【0141】
ある好ましい態様において、VR1調節剤と抗炎症剤との併用投与は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤をパッケージ内の別の容器に入れるか、又は1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤の混合物として同じ容器に入れるか、して同じパッケージに包装することによって遂行できる。好ましい混合物は経口投与用(例えば、ピル、カプセル、錠剤など)に製剤化される。ある態様においては、このパッケージは、1つ又はそれ以上のVR1調節剤及び1つ又はそれ以上の抗炎症剤は、炎症性の疼痛を治療するために一緒に用いるように指示するしるし付きのラベルを含有してなる。非常に好ましい併用は抗炎症剤が、バルデコキシブ(BEXTRA(登録商標))、ルミラコキシブ(PREXIGE(登録商標))、エトリコキシブ(ARCOXIA(登録商標))、セレコキシブ(CELEBLEX(登録商標))及び/又はロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))のようなCOX−2特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤の少なくとも1つを含有しているものである。
【0142】
さらなる態様においては、本発明のVR1調節剤は1つ又はそれ以上のさらなる疼痛緩和薬剤と併用して用いることができる。このような薬剤のあるものは抗炎症剤で、上に記載されている。他のこのような薬剤は麻薬性鎮痛薬で、これは通常1つ又はそれ以上のオピオイド受容体のサブタイプ(例えば、μ、κ及び/又はδ)上で好ましくは作動薬又は部分作動薬として作用する。このような薬剤は、アヘン剤、アヘン誘導体及びオピオイドを、またこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。麻薬性鎮痛薬の特定の例は、好ましい態様において、アルフェンタニル、アルファプロジン、アニレリジン、ベジトラマイド、ブプレノフィン、コデイン、ジアセチルジヒドロモルフィン、ジアセチルモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、エチルモルフィネ、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、イソメタドン、レボメトルファン、レボルファン、レボルファノール、メペリジン、メタゾシン、メタドン、メトルファン、メトポン、モルヒネ、アヘン抽出物、アヘン流エキス剤、粉末化アヘン、顆粒化アヘン、原料アヘン、アヘンチンキ、オキシコドン、オキシモルホン、パレゴリック、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、ピミノジン、プロポキシフェン、ラセメトルファン、ラセモルファン、テバイン及びこれ薬剤の薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0143】
麻薬性鎮痛薬の他の例は、アセトルフィン、アセチルジヒドロコデイン、アセチルメタドール、アリルプロジン、アルファアセチルメタドール、アルファメプロジン、アルファメタドール、ベンゼチジン、ベンジルモルヒネ、ベータアセチルメタドール、ベータメプロジン、ベータメタドール、ベータプロジン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデインメチルブロマイド、コデイン−N−オキシド、シプレノルフィン(cyprenorphine)、デソモルヒネ、デキストロモルアミド、ジアンプロミド、ジエチルチアンブテン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン(dimethylthiamubtene)、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、ドロテバノール、エタノール、エチルメチルチアンブテン、エトニタゼン、エトルフィン、エトキセリジン、フレチジン、ヒドロモルヒノール、ヒドロキシペチジン、ケトベミドン、レボモラミド、レボフェナシルモルファン、メチルデソルフィン、メチルジヒドロモルヒネ、モルフェリジン、モルヒネメチルプロミド、モルヒネメチルスルホネート、モルフィンーN−オキシド、ミロフィン、ナロキソン、ナルブイフィン、ナルチヘキソン、ニココデイン、ニコモルヒネ、ノラシメタドール、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、ペンタゾカイン、フェナドキソン、フェナムプロミド、フェノモルファン、フェノペリジン、ピリトラミド、フォルコジン、プロヘプタゾイン、プロペリジン、プロピラン、ラセモラミド、テバコン、トリメペリジン及びこれらの薬学的に許容される塩及び水和物を包含する。
【0144】
さらに特定的な代表的鎮痛剤は、例えば、TALWIN(登録商標)Nx及びDEMEROL(登録商標)(両者は Sanofi Winthrop Pharmaceuticals; New York、 NY より入手可能);LEVO−DROMORAN(登録商標)、BUPRENEX(登録商標)(Reckitt & Coleman Pharmaceuticals、 Inc.; Richmond, VA);MSIR(登録商標)(Purdue Pharma L. P.; Norwalk、 CT);DILAUDIO(登録商標)(Knoll Pharmaceutical Co.; Mount Olive, NJ);SUBLIMAZE(登録商標);SUFENTA(登録商標)(Janssen Pharmaceutical Inc.; Titusville, NJ);PERCOCET(登録商標)、NUBAIN(登録商標)及びNUMORPHAN(登録商標)(全てが Endo Pharmaceuticals Inc.; Chadds Ford, PA から入手可能);HYDROSTAT(登録商標)IR、MS/S及びMS/L(全てが Richwood Pharmaceutical Co. Inc; Florence, KY);ORAMORPH(登録商標)SR及びROXICODONE(登録商標)(両者は Roxanne Laboratories; Columbus OH から入手可能)及びSTADOL(登録商標)(Bristol-Myers Squibb; New York, NY)を包含する。さらなる鎮痛剤は、AM1241のようなCB2受容体作動薬、及びNeurontin(Gabapentin)及びプレガバリン(pregabalin)のようなα2δに結合する化合物を包含する。
【0145】
このような併用療法でのVR1調節剤の好ましい用量は上記のようである。他の疼痛緩和薬剤の用量及び投与方法は、例えば Physician's Desk Reference 中の製造会社の説明書に見出すことができる。ある態様において、VR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤との併用投与は、それぞれの治療薬が治療効果を示すのに必要な用量を減少させる(例えば、両薬剤の用量は上で示した又は製造会社が助言している最大容量の3/4未満、1/2未満、1/4未満又は10%未満であろう)。ある態様において、VR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤との併用投与は、1つ又はそれ以上のVR1調節剤と1つ又はそれ以上の追加の疼痛緩和薬剤を、上記のように同じパッケージに包装することによって遂行できる。
【0146】
VR1作動薬である調節剤は、例えば、群衆整理で(催涙ガスの代用品として)又は身辺警護で(例えばスプレー製剤中に)又はカプサイシン受容体の脱感作による疼痛、痒み尿失禁又は過活動膀胱の治療用の薬剤として、さらに使用できるであろう。一般に、群集整理又は個人警護で用いられる化合物は通常の催涙ガス又は唐辛子スプレー技術に従って製剤化及び使用される。
【0147】
別の態様によると、本発明は本明細書で提供される化合物についての多種のインビトロ及びインビボでの非医薬用途を提供する。例えば、このような化合物は標識されて、カプサイシン受容体の検出及び局在化(細胞調合液又は組織片、これらの調合液又は分画のような試料中の)のためのプローブとして使用できる。本明細書で提供される化合物は、受容体活性試験において陽性対照として、候補薬剤のカプサイシン受容体との結合能力を測定するためのスタンダードとして、又は陽電子放出断層撮影(PET)用の又は単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)用の放射性追跡子 としても使用できる。これらの方法は対象生物のカプサイシン受容体を特徴付けるために使用することができる。例えば、VR1調節剤を多種のよく知られた技術を用いて標識し(例えば、ここに記載されているように、トリチウムのような放射性核種で放射性標識)、そして試料と適当な培養時間(例えば、結合の時間的経過の最初の測定によって決定された)培養する。培養に続いて、結合しなかった化合物を除去し(例えば、洗浄によって)、結合した化合物を使用された標識に適した幾つかの方法(例えば、放射性標識化合物に対してはオートラジオグラフィー又はシンチレーションカウントで;発光性の基及び蛍光性の基を検出するために分光方法を使用できる)を用いて検出する。対照実験として、標識化化合物及び大量の(例えば10倍以上の)非標識化化合物を含有する対応試料を同様の方法で処理することができる。試料中に、対照実験中よりも多い量の検出可能な標識が残っていることは、試料中にカプサイシン受容体が存在することを示している。培養細胞又は組織飼料中のカプサイシン受容体の受容体オートラジオグラフィー(受容体マッピング)を含む検出試験は、Current Protocols in Pharmacology (1988) John Wiley & Sons, New York の section 8.1.1 から 8.19 中の Kuhar による記載のようにして行うことができる。
【0148】
本発明の調節剤は、よく知られた各種細胞分離方法においても使用できる。例えば、調節剤を、固定化のためのアフィニティーリガンドとして用いるために、組織培養のプレート又は他の支持体の内部表面に結合させ、それによってインビトロでカプサイシン受容体を分離(例えば、カプサイシン受容体を発現する細胞を分離する)することができる。一つの好ましい態様によると、蛍光発光のような蛍光マーカーに結合させた調節剤を細胞に接触させ、次いでこれを蛍光活性化細胞選別(FACS)によって分析(又は分離)する。
【0149】
以下の実施例は説明の目的で提供されているものであり、それによって本発明を何ら制限するものではない。特に明記されない限り、全ての試薬及び溶媒は標準の商用等級であり、さらに精製することなく使用した。通常の改変方法で、出発物質を改変してもよく、追加の工程を採用して本明細書で提供される他の化合物を製造してもよい。
(実施例)
【実施例1】
【0150】
代表的化合物の調製
本実施例は代表的な置換アリール ベンゾ[ジ]イソチアゾール−3−イルアミン類縁体の製造を示す。
A. [1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミン
1. 2−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−ピリジン
【0151】
【化13】

【0152】
DME(10mL)中の2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−ピリジン(2.26ミリモル)、4−メチル−フェニルボロン酸(2.49ミリモル)及び2MのNa2CO3(5.65ミリモル)の脱ガス混合物に、窒素雰囲気下でPd(PPh(0.09ミリモル)を加える。混合物を80℃で一晩撹拌し、濃縮して、EtOAcで抽出する。NaSOで乾燥し、真空下で濃縮して、フラッシュクロマトグラフィー(4:1のヘキサン/EtOAc)で精製すると、2−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−ピリジンが得られる。
2. 2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド
【0153】
【化14】

【0154】
氷水で冷却したクロロスルホン酸(211ミリモル)に、注意深く2−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−ピリジン(42ミリモル)を加える。混合物を60℃で1時間撹拌する。室温まで冷却し、氷水(200mL)に注ぎ、EtOAcで抽出し、NaSOで乾燥して、真空下で濃縮する。残渣をDCM(200mL)に溶解し、30分間NH3ガスを通じてバブリングし、混合物を室温で1時間攪拌する。濃縮し、EtOAcと水で分配し、NaSOで乾燥して、真空下で濃縮する。 EtOAc−ヘキサンから再結晶すると、2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゼンスルホンアミドが得られる。
3. 1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オン
【0155】
【化15】

【0156】
2−メチル−5−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゼンスルホンアミド(4.75ミリモル)のINのNaOH(5mL)溶液に、過マンガン酸カリウム(14.2ミリモル)を加える。混合物を80℃で5時間撹拌する。室温まで冷やし、
ろ過し、ろ液をpH3まで酸性化する。その沈殿物を採取すると、1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オンが得られる。
4. 3−クロロ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゾ[d]イソチアゾール)−1,1−ジオキシド
【0157】
【化16】

【0158】
1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1,2−ジヒドロ−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オン(1.5ミリモル)、POCl(3ml)及びPCl(2.0ミリモル)の混合物を160℃で16時間加熱する。氷でを加えて反応を止め、 EtOAcで抽出して、濃縮すると、3−クロロ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゾ[d]イソチアゾール)−1,1−ジオキシドが得られる。
5. [1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミン
【0159】
【化17】

【0160】
ピリジン(4ml)中の3−クロロ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−ベンゾ[d]イソチアゾール−1,1ジオキシド(0.33ミリモル)及び4−トリフルオロメチルアニリン(0.33ミリモル)の混合物を80℃で16時間加熱し、濃縮して、クロマトグラフィー(1:1のEtOAc/へキサン)で精製すると、[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミンが得られる。
【0161】
B. [1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−フェニル−2−イル)−1H−λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミン
1. 6−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[d]イソチアゾール−1,1−ジオキシド
【0162】
【化18】

【0163】
6−ブロモ−1,1−ジオキソ−1,2−ジヒドロ −1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−オン(Kwon et al. (1996) Arzneim. Forsh. 46 (10): 966-971;1.5ミリモル)、POCl(3ml)及びPCl(2.0ミリモル)の混合物を160℃で16時間加熱する。氷を加えて反応を止め、 EtOAcで抽出して、濃縮すると、6−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[d]イソチアゾール)−1,1−ジオキシドが得られる。
2. (6−ブロモ−1,1−ジオキシド−1H−λ−ベンゾ[d]−イソチアゾール−3−イル)−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミン
【0164】
【化19】

【0165】
ピリジン(4ml)中の6−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[d]イソチアゾール−1,1ジオキサイド(0.33ミリモル)及び4−tert−ブチル−アニリン(0.33ミリモル)の混合物を80℃で16時間加熱する。濃縮して、クロマトグラフィー(1:1のEtOAc/へキサン)で精製すると、(6−ブロモ−1,1−ジオキシド−1H−λ−ベンゾ[d]−イソチアゾール−3−イル)−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミンが得られる。
3. [1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−λ−ベンゾ[d]−イソチアゾール−3−イル)−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミン
【0166】
【化20】

【0167】
DME(5mL)中の(6−ブロモ−1,1−ジオキシド−1H−λ−ベンゾ[d]−イソチアゾール−3−イル)−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミン(0.32ミリモル)、2−トリフルオロメチル−フェニルボロン酸(0.40ミリモル)、及び2MのNaCO(0.80ミリモル)の脱ガス混合物に、窒素雰囲気下でPd(PPh(0.012ミリモル)を加える。混合物を80℃で一晩撹拌し、濃縮して、EtOAcで抽出する。NaSOで乾燥し、真空下で濃縮して、フラッシュクロマトグラフィー(4:1のヘキサン/EtOAc)で精製すると、[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−λ−ベンゾ[d]−イソチアゾール−3−イル]−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミンが得られる。
【0168】
C.追加の化合物
通常の変法を用い、本明細書で提供される他の化合物を製造するために出発物質を変え、追加の工程を使用することができる。表1に載っている化合物は、このような方法を用いて製造された。本明細書に記載されているように測定された、表1に載っている化合物のIC50は、1マイクロモル以下である。
【0169】
「MS]と標記されている欄の質量分析の値は、Waters 600ポンプ、Waters 996フォトダイオード配列検出器、Gilson 215オートサンプラー、及びGilson 841マイクロインジェクターを取り付けたMicromass Time−of−Flight LCTを用い、コーン電圧15V又は30Vの陽イオンモードによって得られるエレクトロスプレーMSである。MassLynx(Adcanced Chemistry Development, Inc; Toronto, Canada)のバージョン4.0 ソフトウェアをデータ収集及び分析に用いた。1マイクロリッター量の試料を、50x4.6mmの Chromolish SpeedROD C18 カラム上に注入し、6ml/minの速度で、2相線形グラジエントを用いて溶出した。試料は、220−340nmのUV範囲における総吸収量を用いて検出した。
【0170】
溶出条件
移動相A−95/5/0.05 水/メタノール/TFA;
移動相B−5/95/0.025 水/メタノール/TFA。
グラジエント: 時間(分) %B
0 10
0.5 100
1.2 100
1.21 10
総ランタイムは注入から注入まで2分であった。
【0171】
【表1】

【実施例2】
【0172】
VR1導入細胞及び膜の調合液
本実施例は結合試験(実施例3)で用いるためのVR1−導入細胞及びVR1−含有の膜調合液の製造を説明するものである。
ヒトカプサイシン受容体(米国特許第6,482,611号の配列番号1、2又は3)の全長をコードするcDNAを、哺乳動物の細胞中で組み換え体を発現させるために、プラスミドpBK−CMV(Stratagene, La Jolla, CA)にサブクローンした。
【0173】
ヒト胎児腎細胞(HEK293)に、標準の方法を用いて、ヒトカプサイシン受容体の全長をコードするコンストラクトを発現するpBK−CMVを導入した。導入された細胞をG418(400μg/ml)を含有する培地で2週間培養して選択し、安定に導入された細胞の集合(pool)を得た。この集合から独立したクローンを限界希釈法によって単離して、次の実験に用いる、安定にクローン化された細胞系を得た。
【0174】
放射性リガンド結合試験のために、細胞をT175細胞培養フラスコ中の抗生物質を含有しない培地に播種して約90%集密まで生育させた。次いで、フラスコをPBSで洗浄し、5mMのEDTAを含有するPBS中に細胞を集めた。細胞は緩やかに遠心分離してペレット状にし、試験まで−80℃で保管した。
【0175】
凍結する前に細胞を、組織ホモジナイザーを用いて氷冷したHEPESホモジナイズ緩衝液(5mMのKCl5、5.8mMのNaCl、0.75mMのCaCl、2mMのMgCl、320mMの蔗糖、及び10mMのHEPES;pH7.4)中でバラバラにした。組織のホモジネートはまず1000×g(4℃)で10分間遠心分離して核画分及び破片を除去し、次いで最初の遠心分離の上澄液をさらに35,000×g(4℃)で30分遠心分離して部分的に精製された膜画分を得た。膜は試験前に再度HEPESホモジナイズ緩衝液に懸濁した。この膜ホモジネートの1つのアリコートをブラッドフォード法[Bradford method (BIO-RAD Protein Assay Kit, #500-0001, BIO-RAD, Hercules, CA)]による蛋白濃度測定に用いた。
【実施例3】
【0176】
カプサイシン受容体結合試験
この実施例は、化合物のカプサイシン(VR1)受容体に対する結合親和性を測定するために用いることができる代表的なカプサイシン受容体結合試験を説明している。
H]レジニフェラトキシン(RTX)を用いる結合の検討は実質的には、Szallasi and Blumberg (1992) J. Pharmacol. Exp. Ter. 262: 883-888 に記載されているように行われる。この手順において、非特異的なRTX結合は、結合反応の終了後にウシα酸性糖タンパク(1管あたり100μg)を添加することによって減少した。
H]RTX(37Ci/ミリモル)は Chemical Synthesis and Analysis Laboratory, National Cancer Institute-Fredrick Cancer Research and Development Center, Fredric, MD で合成され、ここから入手した。また、[H]RTXは一般業者からも入手できる。(例えば、Amersham Pharmacia Biotech, Inc.; Piscataway, NJ)。
【0177】
実施例2の膜ホモジネートを前述のように遠心分離して、蛋白濃度が333μg/mlになるように、ホモジネート緩衝液に再懸濁する。結合試験用の混合物は氷の上に備え付け、[H]RTX(比活性:2200mCi/ml)、2μlの非放射性の試験化合物、0.25mg/mlのウシ血清アルブミン(コーンフラクションV)、及び5×10から1×10個のVR1導入細胞を含有している。最終容量を上記の氷冷HEPESホモジネート緩衝液(pH7.4)で500μl(競合結合試験用)又は1,000μl(飽和結合試験用)に調整する。非特異的結合は1μMの非放射性RTX(ALexis Corp.; San Diego, CA)が存在すると生じるものであると定義する。飽和結合のために、[H]RTXを、1から2倍希釈を用いて、7〜1,000pMの濃度範囲で添加する。一般に、飽和結合曲線当り11個の濃度ポイントが収集される。
【0178】
競合結合試験は、60pMの[H]RTX及び各種の濃度の試験化合物の存在下で行われる。結合反応は、試験混合物を37℃の水浴に移したときに始まり、60分間培養した後に管を氷の上で冷却したときに終了する。膜に結合したRTXは、使用する2時間前に1.0%のPEI(ポリエチレンイミン)に予備浸漬したWALLACグラスファイバーフィルター(PERKIN-ELMER, Gaithersburg, MD)でろ過して非結合物から、同様にα酸性糖タンパクに結合したRTXからも分離する。フィルターを一晩乾燥して、WALLAC BETA SCINTシンチレーション液を添加した後に、WALLAC 1205 BETA PLATEカウンターでカウントする。
【0179】
平衡結合変数は、Szllasi, et. al. (1993) J. Pharmacol. Exp. Ter. 266: 678-683 に記載されているように、コンピュータプログラムFIT P(Biosoft, Ferguson, MO)の助けを借りて、アロステリックのヒルの式を測定値に当てはめて算出される。本明細書で提供される化合物は、この試験において、一般にカプサイシン受容体に対して1μM、100nM、50nM、25nM、10nM又は1nM未満のK値を示す。
【実施例4】
【0180】
カルシウム非固定化試験
本実施例は、試験化合物の作動薬及び拮抗薬活性を評価するために用いる代表的なカルシウム非固定化試験を説明するものである。
発現プラスミドを導入してヒトカプサイシン受容体を発現している細胞(実施例2に記載のような)をFALCONの壁が黒く、底が透明な、96ウェルプレート(#3904、 BECTON-DICKINSON、 Franklin Lakes, NJ)に播種し、70〜90%集密になるまで生育する。96ウェルプレートから培養液を空にし、FLUO−3 AMカルシウム感受性染料(Molecular Probes, Eugene, OR)をそれぞれのウェルに加える(染料溶液:1mgのFLUO−3 AM(1mg)、DMSO(440μl)及び20%のプルロン酸のDMSO溶液(440μl)を1:250でクレブス−リンガーHEPES(KRH)緩衝液(HEPES(25mM)、KCl(5mM)、NaHPO(0.96mM)、MgSO(1mM)、CaCl(2mM)、グルコース(5mM)、プロベネシド(1mM)、pH7)に希釈、各ウェル毎に希釈液を50μl)。プレートをアルミニウムホイルで覆って5%COを含有する環境下で1〜2時間37℃で培養する。培養後、染料をプレートから空にし、細胞をKRH緩衝液で1度洗浄してKRH緩衝液に再懸濁する。
【0181】
(カプサイシンEC50の算出)
カプサイシン又は他のバニロイド作動薬に対してカプサイシン受容体を発現している細胞中で、カルシウム非固定化応答に対する試験化合物の作動又は拮抗する能力を測定するために、最初に作動カプサイシンのEC50を算出する。上記のように調整した、各細胞のウェルに、追加の20μlのKRH緩衝液及び1μlのDMSOを加える。KRH緩衝液中の100μlのカプサイシンをFLIPR器具で各ウェルに自動的に移す。カプサイシンが誘導するカルシウムの非固定化は、FLUOROSKAN ASCENT(Labsystems; Franklin, MA)又はFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダーシステム;Molecular Devices, Sunnyvale, CA)器具のいずれかを用いて観察する。作動薬を適用しから30秒後〜60秒後に得られたデータを、8点濃度の反応曲線を作るために、1nMから3nMの最終カプサイシン濃度と共に使用した。KALEIDAGRAPHソフトウェア(Synergy Software, Reading, PA)を使用して、このデータを式:
y=a(1/(1+(b/x)))
に当てはめて、応答に対する50%影響濃度(EC50)を算出する。この式において、yは最大蛍光信号であり、xは作動薬又は拮抗薬(この場合は、カプサイシン)の濃度であり、aはEmaxで、bはEC50値に対応し、そしてcはヒル(Hill)係数である。
【0182】
(作動活性の測定)
試験化合物をDMSOに溶解してKRH緩衝液で希釈し、直ちに上記のように調製した細胞に加える。100nMのカプサイシン(おおよそEC90濃度)も同様の96ウェルプレートに陽性対照として加える。試験化合物の試験ウェル中の最終濃度は0.1nM〜5μMである。
【0183】
試験化合物のカプサイシン受容体の作動薬として作用する能力を、化合物によって誘発される、カプサイシン受容体を発現する細胞の蛍光応答を測定して、化合物濃度の関数として算定する。このデータを上記のように当てはめてEC50を得る。これは一般に、1マイクロモル未満、好ましくは100nM未満、より好ましくは10nM未満である。各試験化合物の有効性の程度も、100nMのカプサイシンが誘発する応答に対する特定の濃度(通常、1μM)の試験化合物が誘発する応答の割合を算定することにより決定される。シグナルのパーセント(POS)と呼ばれる、この値は以下の式によって算出される:
POS=100試験化合物による応答/100nMカプサイシンによる応答
【0184】
この分析は、試験化合物のヒトカプサイシン受容体作動薬としての能力及び有効性の両方の定量的な評価を提供する。ヒトカプサイシン受容体作動薬は一般に、100μM未満の濃度で、又は好ましくは1μM未満の濃度で、最も好ましくは10nM未満の濃度で検出可能な応答を誘発する。ヒトカプサイシン受容体に対する有効性の範囲は、1μMの濃度で、好ましくは30POSより大きく、より好ましくは80POSより大きい。ある作動薬は、以下に記載される試験において、化合物の4nM未満の濃度で、より好ましくは10μM未満の濃度で、最も好ましくは100μM以下の濃度で検出可能な拮抗薬活性がないことが証明されるように、実質的に拮抗薬活性がない。
【0185】
(拮抗薬活性の測定)
試験化合物をDMSOに溶解し、試験ウェル中の試験化合物の最終濃度が1μM〜5μMになるように20μlのKRH緩衝液で希釈して、上記のように調製した細胞に加える。調製細胞及び試験化合物を含有する96ウェルプレートを暗所において室温で0.5〜6時間培養する。6時間を越えて培養を続けないことが重要である。蛍光応答を測定する直前に、KRH緩衝液中の上記のように測定したEC50の2倍濃度のカプサイシン100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに、最終試験容量が200μlそしてカプサイシン濃度がEC50と等しくなるように、FLIPR器具により自動的に加える。試験ウェル中の試験化合物の最終濃度は1μM〜5μMである。カプサイシン受容体の拮抗薬は、対応の対照試験(すなわち、試験化合物の非存在下に、カプサイシンのEC50の2倍濃度で処理した細胞)と比べて、10マイクモル以下の濃度で、好ましくは1マイクモル以下の濃度で、当該応答を少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約80%減少する。カプサイシンの存在下で、拮抗薬なしで観測される応答に対して、50%の減少を示すのに必要な拮抗薬の濃度は、拮抗薬のIC50であり、これは1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満が好ましい。
【0186】
ある好ましいVR1調節剤は、上記試験において、4nM未満の濃度、より好ましくは10μM未満の化合物濃度、最も好ましくは100μM未満の濃度で検出可能な作動薬活性がないことが証明されたように、実質的に作動薬活性がない。
【実施例5】
【0187】
ミクロソームインビボ半減期
この実施例は、代表的な肝ミクロソーム半減期試験を用いる、化合物の半減期値(t1/2値)の評価を説明している。
【0188】
プールされたヒト肝ミクロソームは、XenoTech LLC(Kansas City, KS)から入手する。このような肝ミクロソームはIn Vitro Technologies(Baltimore, MD)又はTissue Transformation Technologies(Edison、 NJ)からも入手できる。それぞれがミクロソームを25μl、試験化合物の100μM溶液を5μl及び0.1Mのリン酸緩衝液(0.1MのNaHPO19mL、0.1MのNaHPO81mL、HPOでpH7.4に調整)を399μlを含有する6つの試験反応物を調製する。ミクロソームを25μl、0.1Mリン酸緩衝液を399μl、及び既知の代謝特性を有する化合物(例えば、ジアゼパム:DIAZPAM又はクロザピン:CLOZAPINE)の100μM溶液5μlを含有するポジティブ対照試験として7番目の反応物を調製する。反応物は39℃で10分間予備培養する。
【0189】
NADP16.2mg及びグルコース−6−リン酸45.4mgを100mMのMgCl4mLに希釈してコファクター混合物を調製する。グルコース−6−リン酸脱水素酵素懸濁液(Roche Molecular Biochemicals; Indianapolis, IN)214.3μlを蒸留水1285.7μlに希釈して、グルコース−6−リン酸脱水素酵素溶液を調製する。出発反応混合物(コファクター混合物3mL;グルコース−6−リン酸脱水素酵素溶液1.2mL)71μlを6つの試験反応物のうちの5つ及びポジティブ対照試験に加える。100mMのMgCl71μlを6番目の試験反応物に加え、これをネガティブ対照試験として用いる。各時点(0、1、3、5、及び10分)での各試験反応物75μlを、氷冷アセトニトリル75μlを含有している96ウェルのディープウェルプレートのウェルに、ピペットで添加する。試料をボルテックス撹拌及び遠心分離を3500rpmで10分行う(Sorval T 6000D centrifuge、 H1000B rotor)。各反応物から75μlの上澄液を、それぞれのウェルに既知のLCMSプロファイルを有する化合物(内部標準)の0.5μM溶液150μlを含有させた96ウェルプレートのウェルに移す。各試料のLCMS分析を行い、代謝されなかった試験化合物をAUCとして測定し、化合物の濃度対時間をプロットして試験化合物のt1/2値を外挿する。
本明細書で提供される好ましい化合物は、ヒト肝ミクロソームにおいて、10分より長くて4時間未満の、好ましくは30分〜1時間のインビトロt1/2値を示す。
【実施例6】
【0190】
MDCK毒性試験
本実施例は、Madin Darbyイヌ腎(MDCK)細胞の細胞毒性試験を用いる化合物の毒性の評価を説明する。
試験化合物1μlを透明底の96ウェルプレート(PACKARD, Meriden, CT)の各ウェルに、試験における化合物の最終濃度が10マイクロモル、100マイクロモル又は200マイクロモルになるように加える。試験化合物を含まない溶媒を対照のウェルに加える。
【0191】
MDCK細胞であるATCC No.CCL−34(American Type Culture Collection, Manassas, VA)を、ATCC製品情報紙の指示に従って無菌条件下に保つ。集密になったMDCK細胞をトリプシン処理し、採取し、そして温めた(37℃)培地(VITACELLイーグル最小必須培地、ATCCカタログ#30−2003)で細胞0.1×10個/mlの濃度に希釈する。希釈した細胞100μlを5個以外の各ウェルに加え、5個は標準曲線用の対照試験ウェルで、細胞を含まない温培地100μlを含有している。プレートを37℃で、95%のO及び5%のCOの雰囲気下で、振盪しながら2時間培養する。培養後、哺乳動物細胞溶解溶液(PACKARD(Meriden, CT)から入手の、ATP−LITE−M発光ATP検出キット)50μLを各ウェルに加え、ウェルをPACKARD TOPSEALステッカーで覆い、プレートを約700rpmで適当な振盪機上で2分間振盪する。
【0192】
毒性を生じる化合物は非処理細胞に比べて、ATP産生を減少させる。ATP−LITE−M発光ATP検出キットは、一般に処理及び非処理MDCK細胞におけるATP産生の測定についての製造会社の説明書に従って使用される。PACKARD ATP−LITE−M試薬は室温に調整する。調整したら直ちに、凍結乾燥した基質溶液を基質緩衝液(キットから)5.5mL中で解凍する。凍結乾燥したATP標準溶液を脱イオン水中で解凍して10mMのストックを得る。5個の対照試験ウェルについては、連続的に希釈したPACKARD標準10μlを、それぞれの標準曲線用の対照試験ウェルに、各ウェルの最終濃度が順次200nM、100nM、50nM、25nM及び12.5nMになるように加える。PACKARD基質溶液(50μL)を全てのウェルに加え、ウェルを覆い、プレートを約700rpmで適当な振盪機上で2分間振盪する。白色のPACKARDステッカーを各プレートの底に貼り、フォイルでプレートを包んで暗所に10分置くことによって試料を暗順応させる。次いで、発光計測器(例えば、PACKARD TOPCOUNT Microplate Scintillation and Luminescence Counter 又は TECAN SPECTRAFLUOR PLUS)を用いて22℃で発光を測定して、標準曲線からATPレベルを算出する。試験化合物で処理した細胞中のATPレベルを非処理細胞について測定したレベルと比較する。好ましい試験化合物の10μMで処理した細胞は非処理の細胞の少なくとも80%、好ましくは90%のATPレベルを示した。試験化合物の100μM濃度を使用したときは、好ましい試験化合物で処理した細胞は、非処理細胞において検出されたATPレベルの少なくとも50%好ましくは少なくとも80%のATPレベルを示した。
【実施例7】
【0193】
脊髄後根神経節細胞試験
本実施例は、化合物のVR1拮抗薬又は作動薬活性を評価するための代表的な脊髄後根神経節細胞試験について説明する。
DRG(脊髄後根神経節)は新生児ラットから解剖して得、解離して標準的な方法(Aguayo and White (1992) Brain Rsearch 570: 61-67)を用いて培養する。48時間培養した後、細胞を1回洗浄し、カルシウム感受性染料Fluo4AM(2.5〜10ug/ml;TefLabs, Austin, TX)と共に30〜60分間培養する。次いで細胞を1回洗浄する。細胞にカプサイシンを加えると、VR1に依存して細胞内カルシウムレベルの増加が起きる。これは蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化によって監視する。60〜180秒のデータを集めて最大蛍光信号を算定する。
【0194】
拮抗薬試験については、各種の濃度の化合物を細胞に加える。発光信号を化合物濃度の関数としてプロットして、カプサイシン活性化応答を50%阻止するのに必要な濃度、又はIC50を決定する。カプサイシン受容体の拮抗薬は、好ましくは1マイクロモル、100ナノモル、10ナノモル又は1ナノモル未満のIC50を有している。
【0195】
作動薬試験については、各種の濃度の化合物を、カプサイシンを添加しないで細胞に加える。カプサイシン受容体の作動薬である化合物はVR1に依存する細胞内カルシウムレベルの増加を引き起こす。これは蛍光光度計によるFluo−4の蛍光の変化によって監視する。EC50又はカプサイシン−活性化応答のための最大信号の50%を引き起こすのに必要な濃度は、好ましくは、1マイクロモル未満、100ナノモル未満又は10ナノモル未満である。
【実施例8】
【0196】
疼痛緩和確認のための動物実験
本実施例は、化合物がもたらす疼痛緩和の程度を評価する代表的な方法について説明している。
A.疼痛緩和試験
以下の方法は疼痛緩和を評価するために使用される。
【0197】
(機械的異痛症)
機械的異痛(無害の刺激に対する異常な応答)は本質的に、Chaplan et al. (1994) J. Neurosci. Methods 53: 55-63 及び Tal and Eliav (1998) Pain 64 (3): 511-518 に記載のようにして評価する。各種硬度の1組のフォン・フライのフィラメント(von Frey filaments:一般に、1組に8〜14本のフィラメント)を後足の足底面にフィラメントが曲がるのに十分な力で適用する。フィラメントはこの位置に3秒以内又は陽性異痛応答がラットによって示されるまで保持する。陽性異痛応答は、処理された足をあげると、直ちに足を舐めるか振る、よりなる。個々のフィラメントを適用する順序及び頻度は、ディクソンのアップダウン法を用いて決定する。試験は組の内の中程度の毛で始め、陰性又は陽性応答のどちらが最初のフィラメントで得られたかによって、上行性又は下行性の連続法で次のフィラメントを適用する。
【0198】
化合物は、このような化合物で処置されたラットが陽性異痛応答を示すのに、非処置又は賦形剤で処置されたラットに比べて、より硬い強度のフォン・フライのフィラメントでの刺激が必要であれば、機械的異痛様の症状を治療又は阻止するのに有効である。一方、又はさらに、化合物を前投与又は後投与して動物の慢性疼痛の試験を行うことができる。このような試験において、有効化合物は、処置後に応答を引き起こすのに必要なフィラメントの硬度が、処置前の応答を引き起こすフィラメント又は慢性疼痛であるが無処置のままか賦形剤で処置されている動物に比べて、増加する。試験化合物は疼痛発現の前又は後に投与する。疼痛発現の後に試験化合物を投与する時は、試験は与後10分から3時間後に行う。
【0199】
(機械的痛覚過敏症)
機械的痛覚過敏(疼痛刺激に対する誇張された応答)は実質的に、Koch et al. Analgesia 2 (3): 157-164 に記載のようにして評価する。ラットを暖かい穴の開いた金属の床でできているオリの個室に入れる。後足を引っ込める時間(すなわち、動物が足を床に戻す前に足を抱えている時間の量)を、両後足の足底面に中程度に針を刺した後、測定する。
【0200】
後足を引っ込める時間を統計学的に有意に減少させるなら、化合物は機械的痛覚過敏の減少をもたらす。試験化合物は疼痛発現の前又は後に投与することができる。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与後10分から3時間後に行う。
【0201】
(熱的痛覚過敏)
熱的痛覚過敏(有害な熱刺激に対する誇張された応答)は本質的に、Hargreaves et al. (1988) Pain. 32 (1): 77-88 に記載のようにして測定される。つまり、一定の放射熱源を動物の一方の後足の足底面 に当てる。引っ込める時間(すなわち、熱が当てられてから動物が足を動かす前の時間の量)又は熱限界又は潜在と記載されているものは、動物の後足の熱に対する感受性を決定する。
後足を引っ込める時間を統計学的に有意に増加させる(すなわち、熱限界又は潜在を増加する)なら、化合物は熱的痛覚過敏の減少をもたらす。試験化合物は疼痛発現の前又は後に投与することができる。疼痛発現の後に投与する化合物については、試験は投与後10分から3時間後に行う。
【0202】
B.疼痛モデル
化合物の鎮痛効果を試験するために、疼痛を下記の方法を用いて導入することができる。一般に、本明細書で提供される化合物は、雄性SDラット及び1つ以上の下記モデルを用いて、先に述べた1つ以上の試験方法によって確認されるように、統計的有意な疼痛減少をもたらす。
【0203】
(急性炎症性疼痛モデル)
急性炎症性疼痛モデルはカラギナンモデルを用いて、本質的に、Field et al. (1997) Br. J. Pharmacol. 121 (8): 1513-1522 に記載のようにして導入する。1〜2%のカラギニン溶液100〜200μlをラットの後足に注射する。注射から3乃至4時間後に、熱及び機械刺激に対する動物の感応性を上記の方法を用いて試験する。試験化合物(0.01〜50mg/kg)を試験前又はカラギニン注射前に、動物に投与する。化合物は経口、又は何れかの非経口経路を介して、又は足に局所的に投与することができる。このモデルにおいて疼痛を緩和する化合物は機械的異痛及び又は熱的痛覚過敏の統計的有意な減少をもたらす。
【0204】
(慢性炎症性疼痛モデル)
慢性炎症性疼痛モデルは下記の手順のうちの1つを用いて導入される。
1.本質的に、Bertorelli et al. (1999) Br. J. Pharmacol. 128 (6): 1252-1258 及び Stein et al. (1998) Pharmacol. Biochem. Behav. 31 (2): 455-51 に記載のように、コンプリートフロインドアジュバント(Complete Freund's Adjuvant:加熱死させ乾燥したM.Tuberculosis0.1mg)をラットの後足に注射する(100μlを背面に、100μlを足底面に)。
2.本質的に、Abbadie et al. (1994) J. Neurosci. 14 (10): 5865-5871 に記載のように、150μlのCFA(1.5mg)を脛骨足根骨関節に注射する。
どちらの手順においてもCFAの注射前に、動物の後足の機械的及び熱的刺激に対する個々の基準感受性を、各実験動物に対して求める。
【0205】
CFAの注射に続いて、ラットに上記のような熱的痛覚過敏、機械的異痛及び機械的痛覚過敏の試験を行う。症状の進展を確認するために、CFAの注射から5,6、7日目にラットを試験する。7日目に、動物を試験化合物、モルヒネ又は賦形剤で処置する。モルヒネ1−5mg/kgの経口投与がポジティブ対照試験として適当である。一般に、試験化合物の0.01〜50mg/kgの用量が用いられる。化合物は試験の前に単回ボーラス投与として、又は試験前の数日、1日1回又は2回又は3回投与することができる。薬剤は経口、又は何れかの非経口経路を介して、又は動物に局所的に投与する。
結果は最大潜在的有効性に対する割合(Percent Maximum Potential Efficacy;MPE)として表す。0%MPEを賦形剤の鎮痛効果と定義し、100%MPEを動物がCFA投与前の基準感受性に戻ることと定義する。このモデルで疼痛を緩和する化合物は少なくとも30%のMPEをもたらす。
【0206】
(慢性神経因性疼痛モデル)
慢性神経因性疼痛は本質的に、Benett and Xie (1988) Pain 33: 87-107 に記載のように、ラットの坐骨神経に対する慢性の狭窄損傷(CCI)を用いて導入される。ラットを麻酔する(例えば、ペントバルビタール50−65mg/kgの腹腔内投与で、必要により追加用量を投与して)。各後肢の外側面の毛をそり、消毒する。無菌法を用いて、後肢の外側面を大腿の真ん中あたりで切断する。大腿二頭筋をずばり切り開き、坐骨神経を露出する。各動物の一方の後肢上に、坐骨神経の周りに1〜2mm離して4つのゆるく結ぶ結紮を行う。他方の坐骨神経は結紮せず、処理しない。筋肉を連続法で閉じ、皮膚を創傷クリップ又は縫合糸で閉じる。ラットを上記のように、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び熱的痛覚過敏について評価する。
【0207】
このモデルで疼痛を緩和する化合物は、試験の直前に単回ボーラス投与、又は試験前数日間に亘り1日当り1回、2回又は3回投与(0.01〜50mg/kgを経口、注射又は局所投与)すると、機械的異痛、機械的痛覚過敏及び/又は熱的痛覚過敏の統計的有意な緩和をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、W、Y及びZは、独立してN又はCRであり;
は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、アミノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルコキシ及びハロC−Cアルコキシから選ばれ;
Ar及びArは、それぞれがハロゲン、シアノ、ニトロ及び式LRの基から独立して選ばれる0から3個の置換基で置換されている、5から10員の芳香族炭素環及び複素環から独立して選ばれ;
Lは、独立して、単共有結合、O、C(=O)、OC(=O)、C(=O)O、O−C(=O)O、S(O)m、N(Rx)、C(=O)N(R)−、N(R)C(=O)、N(R)S(O)、S(O)N(R)及びN[S(O)(R)]S(O)から選ばれ(式中、mはそれぞれ独立して0、1及び2から選ばれ;RXはそれぞれ独立して水素及びC−Cアルキルから選ばれる);そして
Raは、独立して、(i)水素、及び(ii)(a)ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、アミノカルボニル、シアノ、ニトロ、オキソ及びCOOH;及び(b)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキルエーテル、C−Cアルカノイル、C−Cアルカノン、C−Cアルカノイルオキシ、C−Cアルコキシカルボニル、ヒドロキシC−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、シアノC−Cアルキル、フェニルC−Cアルキル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルキルスルホンアミド及び(5から7員の複素環)−C−Cアルキル、からそれぞれ独立して選ばれる0から6個の置換基で置換されている、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルキルエーテル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ及び(3から10員の複素環)C−Cアルキル;から選ばれる):
の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項2】
Arが、それぞれがハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルキルスルホニル及び(C−Cアルキル)スルホンアミドから独立して選ばれる0から2個の置換基で置換されている、フェニル、ピリジル又はピリミジルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項3】
Arが、ハロゲン、C−Cアルキル及びハロC−Cアルキルから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又はピリジルである、請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項4】
Arが、結合部位に対して環のパラ位にある1個の置換基を有する、請求項3に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項5】
Arが、ハロゲン、シアノ、COOH、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロC−Cアルコキシ、C−Cアルキルスルホニ及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又はピリジルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項6】
Arが、ハロゲン、C−Cアルキル及びハロC−Cアルキルから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、2−ピリジルである、請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項7】
Arが、3−メチル−ピリジン−2−イル、3−クロロ−ピリジン−2−イル、又は3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルである、請求項5に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項8】
WがCHであり;そしてY及びZが独立してN又はCHである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項9】
W、Y及びZがそれぞれCHである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項10】
Arが、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル及びハロC−Cアルキルから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又は2−ピリジルであり;そしてArが、ハロゲン、シアノ、C−Cアルキル、ハロC−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミドから独立して選ばれる1又は2個の置換基で置換されている、フェニル又はピリジルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項11】
化合物が、式:
【化2】

(式中、AはN又はCHであり、Rはそれぞれ独立してはハロゲン、シアノ、ニトロ又はLRaである):
を有する、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項12】
化合物が:
(4−tert−ブチル−フェニル)−[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−アミン;
[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−イソプロピル−フェニル)−アミン;
[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−[4−(1,2,2,2−テトラフルオロ−1−トリフルオロメチル−エチル)−フェニル]−アミン;
[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル)−1H−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−アミン;及び
[1,1−ジオキソ−6−(3−トリフルオロメチル−フェニル)−1H−1λ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル]−(4−tert−ブチル−フェニル)−アミン:
から選ばれる、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項13】
化合物が、カプサイシン受容体作動のインビトロ試験において検出可能な作動活性を示さない、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項14】
化合物が、カプサイシン受容体のカルシウム非固定化試験において、1マイクロモル以下のIC50値を有する、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項15】
化合物が、カプサイシン受容体のカルシウム非固定化試験において、100ナノモル以下のIC50値を有する、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される形態。
【請求項16】
請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその薬学的に許容される形態を、生理学的に許容される担体又は賦形剤と共に含有してなる、医薬組成物。
【請求項17】
カプサイシン受容体を発現する細胞を、請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその薬学的に許容される形態と接触させて、カプサイシン受容体のカルシウム伝達を低減することを含む、細胞内のカプサイシン受容体のカルシウム伝達を低減する方法。
【請求項18】
細胞を動物の体内でインビボで接触させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞が神経細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞が尿路上皮細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
接触中に化合物を動物の体液中に存在させる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
化合物を1マイクロモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
化合物を500ナノモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化合物を100ナノモル以下の濃度で動物の血液中に存在させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
動物がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項26】
化合物又は塩を経口で投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
バニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを検出可能に阻害する十分な条件下及び量で、カプサイシン受容体に請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその形態を接触させることを含む、バニロイドリガンドがカプサイシン受容体にインビトロで結合することを阻害する方法。
【請求項28】
カプサイシン受容体のクローンをインビトロで発現している細胞にバニロイドリガンドが結合するのを検出可能に阻害する十分な量の、請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその形態を、カプサイシン受容体を発現している細胞と接触させ、それにより患者に於いてバニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合するのを阻害することからなる、患者に於いてバニロイドリガンドがカプサイシン受容体に結合することを阻害する方法。
【請求項29】
患者がヒトである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
化合物を、1マイクロモル以下の濃度で患者の血液中に存在させる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を患者に投与し、それにより患者の症状を軽減することからなる、患者のカプサイシン受容体調節に応答する症状を治療する方法。
【請求項32】
患者が(i)カプサイシンへの暴露、(ii)熱への暴露による火傷又は炎症、(iii)光への暴露による火傷又は炎症、(iv)催涙ガス、大気汚染又は唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮又は炎症、又は(v)酸への暴露による火傷又は炎症、に罹っている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
病気が喘息又は慢性閉塞性肺疾患である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
請求項1に記載の1つ以上の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を、疼痛に罹っている患者に投与し、それにより患者の疼痛を軽減することからなる、患者の疼痛を治療する方法。
【請求項35】
化合物を、1マイクロモル以下の濃度で患者の血中に存在させる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
化合物を、500ナノモル以下の濃度で患者の血中に存在させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
化合物を、100ナノモル以下の濃度で患者の血中に存在させる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
患者が神経因性疼痛に罹っている、請求項34記載の方法。
【請求項39】
疼痛が、乳房切除後疼痛症候群、切断痛、幻肢痛、口腔内神経因性疼痛、歯痛、ヘルペス後神経痛、糖尿病性神経障害、反射交感神経性ジストロフィー、三叉神経痛、変形性関節症、関節リウマチ、繊維筋痛、ギラン・バーレ症候群、知覚異常性大腿神経痛、口内焼灼感症候群、両側性末梢神経障害、灼熱痛、神経炎、ニューロン炎、神経痛、AIDS関連神経障害、MS関連神経障害、脊髄損傷関連の疼痛、手術関連の疼痛、筋骨格の疼痛、背中の疼痛、頭痛、片頭痛、狭心症、陣痛、痔、消化不良、シャルコー痛、腸内ガス、生理、ガン、毒汚染、過敏性腸症候群、炎症性大腸炎、及び外傷:から選ばれる病気に関連している、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
患者がヒトである、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を、患者に投与し、それにより患者の痒みを軽減することからなる、患者の痒みを治療する方法。
【請求項42】
請求項1に記載の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を、患者に投与し、
それにより患者の咳又はしゃっくりを軽減することからなる、患者の咳又はしゃっくりを治療する方法。
【請求項43】
請求項1に記載の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を、患者に投与し、
それにより患者の尿失禁又は過活動膀胱を軽減することからなる、患者の尿失禁又は過活動膀胱を治療する方法。
【請求項44】
請求項1に記載の化合物又はその形態のカプサイシン受容体調節量を、患者に投与し、
それにより患者の減量を促進することからなる、肥満患者の減量を促進する方法。
【請求項45】
化合物又はその形態が放射性標識されている、請求項1に記載の化合物又はその形態。
【請求項46】
(a)カプサイシン受容体への当該化合物の結合が可能な条件下で、請求項1又に記載の化合物又はその形態と試料を接触させる;及び
(b)カプサイシン受容体に結合した化合物の量を検出し、それから試料中のカプサイシン受容体の有無を確定する;
工程からなる、試料中のカプサイシン受容体の有無を確定する方法。
【請求項47】
化合物が請求項45に記載の放射性標識された化合物であり、検出の工程が
(i)結合した化合物から結合しなかった化合物を分離する;及び
(ii)試料中の結合した化合物の有無を検出する;
工程からなる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(a)容器中の請求項16に記載の医薬組成物;及び
(b)この化合物を疼痛の治療に用いるための説明書;
を含む、包装された医薬製剤。
【請求項49】
(a)容器中の請求項16に記載の医薬組成物;及び
(b)この化合物を咳又はしゃっくりの治療に用いるための説明書;
を含む、包装された医薬製剤。
【請求項50】
(a)容器中の請求項16に記載の医薬組成物;及び
(b)この化合物を肥満の治療に用いるための説明書;
を含む、包装された医薬製剤。
【請求項51】
(a)容器中の請求項16に記載の医薬組成物;及び
(b)この化合物を尿失禁又は過活動膀胱治療に用いるための説明書;
を含む、包装された医薬製剤。
【請求項52】
カプサイシン受容体調節に敏感な病気に罹っている患者を治療する薬剤を製造するための、請求項1〜15の何れかに記載の化合物又はその形態の使用。
【請求項53】
病気が疼痛、喘息、慢性閉塞性肺疾患、咳、しゃっくり、肥満症、尿失禁、過活動膀胱、カプサイシンへの暴露、熱への暴露による火傷又は炎症、光への暴露による火傷又は炎症、催涙ガス、大気汚染又は唐辛子スプレーへの暴露による火傷、気管支収縮又は炎症、又は酸への暴露による火傷又は炎症である、請求項52に記載の使用。

【公表番号】特表2007−537978(P2007−537978A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518907(P2006−518907)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/021914
【国際公開番号】WO2005/009982
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(500015456)ニューロジェン・コーポレーション (48)
【Fターム(参考)】