説明

アルカノールアミンを含有するポリウレタン分散液

ポリウレタン分散液において、ポリウレタンがアニオン基を有し、該アニオン基は少なくとも10モル%までが、少なくとも2のヒドロキシル基を有するアルカノールアミンにより中和されていることを特徴とするポリウレタン分散液であり、この場合、水乳化可能なポリイソシアネートを含有するポリウレタン分散液は除外されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンがアニオン基を有し、該アニオン基は少なくとも10モル%までが、少なくとも2のヒドロキシル基を有するアルカノールアミンにより中和されていることを特徴とするポリウレタン分散液に関する。ただし、水乳化可能なポリイソシアネートを含有するポリウレタン分散液を除外する。
【0002】
本発明はさらに、接着剤、被覆剤および含浸剤のための結合剤としての該ポリウレタン分散液の使用に関する。
【0003】
ポリウレタン分散液はしばしば、t−アミン、たとえばトリエチルアミンにより中和される。トリエチルアミンの代替物として、たとえばアルカリ化合物、アンモニア、またはその他のアミンが公知である。低分子アミンは、多くの場合揮発性であり、従って望ましくない。揮発性が低い長鎖のアミンは、アニオン性ポリウレタンを中和するために適切ではない。というのも、該アミンは、極めて粗大な粒子状の分散液を生じるか、または分散が全く不可能だからである。
【0004】
アンモニアは、例外的な場合において利用することができるにすぎない。というのも、アンモニアは、しばしば製造されるNCO末端プレポリマーのNCO末端基と反応して連鎖を中断するからである。アルカリ性塩基は、フィルムを明らかにより硬質にし、かつ該フィルムに恒久的な親水性を付与する。このことにより塗料中で耐水性が低下し、かつ接着剤中で活性化の可能性が低下する。
【0005】
さらに、所定の固体含有率でできる限り低い粘度を有する分散液が、より良好な加工性のために望まれている。
【0006】
DE−A−3739332には、一連の異なったアミンが、ポリウレタン分散液のための中和剤として挙げられている。この場合、基本的にアミンとして、イソシアネートと反応する基を有していないアミンのみが適切であるとみなされている。
【0007】
EP−A−806443から、以下の成分を含有している2成分ポリウレタン分散液が公知である:
a)アニオン基を有するポリウレタン、
b)水乳化可能なポリイソシアネートおよび
c)アルカノールアミン。
【0008】
ここでアルカノールアミンは、すでに別のアミンにより中和されているポリウレタン分散液への添加剤として使用されている。欄外には、アルカノールアミンc)も、ポリウレタンa)のための中和剤であってよいという示唆も見られる。しかし上記の従来技術に基づいて、DE−A−3739332によれば、当業者はこの示唆を実際の技術的な教示としては捉えない。
【0009】
前記の欠点を有していない、中和されたポリウレタン分散液を見いだすという課題が存在していた。
【0010】
前記課題に応じて、上記で定義したポリウレタン分散液およびその使用が判明した。
【0011】
本発明によるポリウレタン分散液は有利には、
a)ジイソシアネート、
b)ジオール、このうち
b1)ジオール(b)の全量に対して、10〜100モル%は、500〜5000g/モルの分子量を有し、かつ
b2)ジオール(b)の全量に対して、0〜90モル%は、60〜500g/モルの分子量を有する、
c)モノマー(a)および(b)とは異なる、少なくとも1のイソシアネート基を有するか、または少なくとも1の、イソシアネート基に対して反応性の基を有し、さらに少なくとも1のアニオン基を有し、このことによってポリウレタンの水分散性がもたらされるモノマー、
d)場合によりモノマー(a)〜(c)とは異なった、一価または多価の、アルコール性ヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基またはイソシアネート基である反応性の基を有する化合物
から構成されているポリウレタンを含有している。
【0012】
ジイソシアネートa)として、特に式X(NCO)2のジイソシアネート[式中、Xは、4〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する脂環式もしくは芳香族炭化水素基、または7〜15個の炭素原子を有する芳香族脂肪族炭化水素基を表す]が挙げられる。このようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、4,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン(MDI)、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、たとえばトランス/トランス−、シス/シス−およびシス/トランス−異性体、ならびにこれらの化合物からなる混合物である。
【0013】
このようなジイソシアネートは市販されている。
【0014】
これらのイソシアネートの混合物として、特にジイソシアナトトルエンおよびジイソシアナト−ジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が重要であり、特に2,4−ジイソシアナトトルエン80モル%と、2,6−ジイソシアナトトルエン20モル%とからなる混合物が適切である。さらに、芳香族イソシアネート、たとえば2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族もしくは脂環式イソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートもしくはIPDIとからなる混合物が特に有利であり、その際、脂肪族イソシアネート対芳香族イソシアネートの有利な混合比は、4:1〜1:4である。
【0015】
ポリウレタンを構成するために、前記の化合物以外の化合物として、遊離のイソシアネート基とならんで別のキャップトイソシアネート基、たとえばウレトジオン基またはカルボジイミド基を有するイソシアネートも使用することができる。
【0016】
良好な塗膜形成および弾性を鑑みると、ジオール(b)として、主として約500〜5000g/モル、有利には約1000〜3000g/モルの分子量を有する、比較的高分子のジオール(b1)が考えられる。
【0017】
ジオール(b1)は、特にたとえばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chmie、第4版、第19巻、第62〜65頁から公知であるポリエステルポリオールである。有利には、二価のアルコールと二価のカルボン酸との反応により得られるポリエステルポリオールを使用する。遊離のポリカルボン酸に代えて、相応するポリカルボン酸無水物または低級アルコールの相応するポリカルボン酸エステル、またはポリエステルポリオールを製造するためのこれらの混合物を使用することもできる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族または複素環式であってよく、かつ場合により、たとえばハロゲン原子により置換されているか、かつ/または不飽和であってもよい。このための例として、コルク酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、脂肪酸二量体が挙げられる。一般式HOOC−(CH2y−COOH[式中、yは、1〜20の数、有利には2〜20の整数である]のジカルボン酸、たとえばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカン二カルボン酸が有利である。
【0018】
多価アルコールとして、たとえばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、たとえば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、さらにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが考慮される。有利であるのは、一般式HO−(CH2x−OH[式中、xは、1〜20の数、有利には2〜20の整数である]のアルコールである。このための例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、およびドデカン−1,12−ジオールである。さらにネオペンチルグリコールが有利である。
【0019】
さらに、たとえばホスゲンと、ポリエステルポリコールのための構成成分としてあげられる低分子アルコールの過剰量との反応により得ることができるポリカーボネートジオールもまた考慮される。
【0020】
ラクトンベースのポリエステルジオールもまた適切であり、その際、これはラクトンのホモポリマーまたはコポリマー、有利には末端ヒドロキシル基を有する、適切な二官能性スターター分子へのラクトンの付加生成物である。ラクトンとして有利には、一般式HO−(CH2z−COOH[式中、zは、1〜20の数であり、かつメチレン単位のH原子はC1〜C4−アルキル基により置換されていてもよい]の化合物から誘導されるラクトンが考慮される。その例は、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン、ならびにこれらの混合物である。適切なスターター成分は、たとえば、ポリエステルポリオールのための構成成分として前記で記載した低分子の二価アルコールである。ε−カプロラクトンの相応するポリマーは、特に有利である。低分子のポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールも、ラクトンのポリマーを製造するためのスターターとして使用することができる。ラクトンのポリマーに代えて、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の相応する化学的に等価の重縮合物を使用することができる。
【0021】
その他に、モノマー(b1)として、ポリエーテルジオールが考えられる。これらは特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリン自体の、たとえばBF3の存在下での重合により、またはこれらの化合物の、場合により混合物として、もしくは順次、反応可能な水素原子を有するスターター分子、たとえばアルコールまたはアミン、たとえば水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、1,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル)−プロパンまたはアニリンへの付加により得られる。特に有利であるのは、240〜5000g/モル、および特に500〜4500g/モルの分子量範囲のポリテトラヒドロフランである。その他に、ポリエステルジオールとポリエーテルジオールとからなる混合物も、モノマー(b1)として使用することができる。
【0022】
ポリヒドロキシオレフィンは同様に適切であり、2個の末端ヒドロキシル基を有するもの、たとえばα,ω−ジヒドロキシポリブタジエン、α,ω−ジヒドロキシポリメタクリルエステルまたはα,ω−ジヒドロキシポリアクリルエステルがモノマー(c1)として好適である。このような化合物はたとえばEP−A0622378から公知である。その他の適切なポリオールは、ポリアセタール、ポリシロキサンおよびアルキド樹脂である。
【0023】
ポリオールは、混合物として使用することもできる。
【0024】
ポリウレタン(I)の硬度および弾性率は、ジオール(b)として、ジオール(b1)以外にさらに、約60〜500g/モル、有利には62〜200g/モルの分子量を有する低分子ジオール(b2)を使用する場合に向上することができる。
【0025】
モノマー(b2)として、特に、ポリエステルポリオールを製造するために挙げた短鎖のアルカンジオール構成成分が使用され、その際、2〜12個の炭素原子を有するジオール、2〜12個の炭素原子を有し、かつ整数の炭素数を有する非分枝鎖状ジオール、ならびにペンタン−1,5−ジオールおよびネオペンチルグリコールが有利である。
【0026】
有利にはジオール(b1)の割合は、ジオール(b)の全量に対して、10〜100モル%であり、かつモノマー(b2)の割合は、ジオール(b)の全量に対して、0〜90モル%である。特に有利にはジオール(b1)対ジオール(b2)の比は、0.1:1〜5:1、特に有利には0.2:1〜2:1である。
【0027】
ポリウレタンの水分散性を達成するために、ポリウレタンは、少なくとも1のイソシアネート基、または少なくとも1の、イソシアネート基に対して反応性の基、およびさらに少なくとも1のアニオン基を有するモノマー(c)を含有している。
【0028】
成分(a)、(b)、(c)および(d)の全量におけるアニオン基を有する成分の割合は一般に、全てのモノマー(a)〜(d)の質量に対して、アニオン基のモル量が、30〜1000ミリモル/kg、有利には50〜500ミリモル/kg、および特に有利には80〜300ミリモル/kgポリウレタンであるように量定する。
【0029】
アニオン基は特にスルホネート基、カルボキシレート基およびホスフェート基である。
【0030】
アニオン基を有する、もしくは中和によりアニオン基に変換される酸基を有するモノマーとして、通常は少なくとも1のアルコール性ヒドロキシル基または少なくとも1の第一級もしくは第二級アミノ基を有する脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族もしくは芳香族のカルボン酸およびスルホン酸が考慮される。
【0031】
ジヒドロキシアルキルカルボン酸、特に3〜10個の炭素原子を有するものが有利であり、これらはUS−A3,412,054にも記載されている。特に一般式(C1
【化1】

[式中、R1およびR2は、C1〜C4−アルカンジイル単位を表し、かつR3は、C1〜C4−アルキル単位を表す]の化合物が有利であり、特にジメチロールプロピオン酸(DMPA)が有利である。
【0032】
さらに、相応するジヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシホスホン酸、たとえば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が適切である。
【0033】
その他に、DE−A3911827から公知の500〜10000g/モルの分子量を有し、少なくとも2個のカルボキシレート基を有するジヒドロキシ化合物が適切である。これらはジヒドロキシ化合物とテトラカルボン酸二無水物、たとえばピロメリット酸二無水物またはシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物とを、モル比2:1〜1.05:1で、重付加反応により反応させることにより得られる。ジヒドロキシ化合物として、特に鎖長延長剤として記載されているモノマー(b2)ならびにジオール(b1)が適切である。
【0034】
イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するモノマー(c)として、アミノカルボン酸、たとえばリシン、β−アラニンまたはDE−A2034479において公知の、α,β−不飽和カルボン酸またはスルホン酸への脂肪族二第一級ジアミンの付加物が考慮される。
【0035】
このような化合物は、たとえば式(c
2N−R4−NH−NR5−X (c
[式中、R4およびR5は、相互に無関係にC1〜C6−アルカンジイル単位、有利にはエチレンを表し、かつXは、COOHまたはSO3Hを表す]により記載される。
【0036】
式c2の特に有利な化合物は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸、もしくはスルホン酸である。
【0037】
さらに、たとえばDE特許1954090に記載されているような、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸への上記の脂肪族二第一級ジアミンの付加物が有利である。同様に好適なモノマーc)は、アクリレートまたはメタクリレートへの脂肪族ジアミン、たとえばエチレンジアミンの、あるいはまたプロピレンジアミンの付加物である。ポリウレタンのアニオン基は、少なくとも10モル%まで、有利には少なくとも40モル%まで、特に有利には少なくとも70モル%まで、とりわけ有利には少なくとも90モル%まで、および特に完全に(100モル%)アルカノールアミンにより中和されている、つまりこれらは塩として存在しており、その際、酸基はアニオンであり、かつアルカノールアミンはカチオンとして存在している。
【0038】
アルカノールアミンによる中和は、イソシアネートの重付加の前、重付加の間、しかし有利には重付加の後に行うことができる。
【0039】
ポリウレタンは、モノマー(a)〜(c)とは異なっているモノマー(d)を構成成分として含有していてよい。モノマー(d)は、たとえば架橋または鎖長の延長のために役立つ。これは一般に、2価を超える非フェノール性アルコール、2以上の第一級および/または第二級アミノ基を有するアミン、ならびに1もしくは複数のアルコール性ヒドロキシル基以外に、1もしくは複数の第一級および/または第二級アミノ基を有する化合物である。
【0040】
一定の分岐度または架橋度を調整するために役立ちうる2価より高い価数を有するアルコールは、たとえばトリメチロールプロパン、グリセリンまたは糖である。
【0041】
2もしくは複数の第一級および/または第二級アミノ基を有するポリアミンは特に、鎖長の延長もしくは架橋が水の存在下で行われるべき場合に使用される。というのも、アミンは一般に、アルコールまたは水よりも早くイソシアネートと反応するからである。これはしばしば、架橋したポリウレタンの水性分散液または高い分子量を有するポリウレタンが所望される場合に必要とされる。このような場合には、イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、該ポリマーを迅速に水中に分散させ、かつ引き続きイソシアネートに対して反応性のアミノ基を複数有する化合物を添加することによって鎖長を延長するか、または架橋する。
【0042】
このために適切なアミンは一般に、第一級および第二級アミノ基の群から選択される少なくとも2のアミノ基を有する、32〜500g/モル、有利には60〜300g/モルの分子量範囲の多官能価アミンである。このための例は、ジアミン、たとえばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物またはトリアミン、たとえばジエチレントリアミンまたは1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンである。
【0043】
アミンはブロックされた形で、たとえば相応するケチミン(たとえばCA−A1,129,128を参照のこと)、ケタジン(たとえばUS−A4,269,748を参照のこと)、またはアミン塩(US−A4,292,226を参照のこと)の形で使用することもできる。オキサゾリジン、たとえばUS−A4,192,937で使用されているものも、キャップトポリアミンであり、これらは本発明によるポリウレタンの製造のために、プレポリマーの鎖長延長のために使用することができる。このようなキャップトポリアミンを使用する場合、これらは一般に水の不存在下でプレポリマーと混合され、かつ該混合物を引き続き、分散水又または分散水の一部と混合して、加水分解により相応するポリアミンが放出される。
【0044】
有利には、ジアミンおよびトリアミンの混合物、特に有利にはイソホロンジアミン(IPDA)およびジエチレントリアミン(DETA)の混合物を使用する。
【0045】
ポリウレタンは、有利な実施態様では、少なくとも2の、イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するポリアミンを、モノマー(d)として、成分(b)および(d)の全量に対して、たとえば1〜30モル%、特に有利には4〜25モル%含有していてもよい。
【0046】
一定の架橋度または分岐度を調整するために役立ちうる、2より高い価数を有するアルコールは、たとえばトリメチロールプロパン、グリセリンまたは糖である。
【0047】
同じ目的のために、2価よりも高い価数のイソシアネートをモノマー(d)として使用することもできる。市販の化合物はたとえば、イソシアヌレートまたはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットである。
【0048】
モノマー(d)として、さらに、ヒドロキシル基以外に別のイソシアネート反応性の基を有するモノアルコール、たとえば1もしくは複数の第一級および/または第二級アミノ基を有するモノアルコール、たとえばモノエタノールアミンが考慮される。
【0049】
場合により併用されるモノマー(d)は、モノイソシアネート、モノアルコールおよび一第一級および第二級アミンである。一般に、その割合はモノマーの全モル量に対して最大で10モル%である。これらの単官能性化合物は通常、その他の官能基、たとえばオレフィン基またはカルボニル基を有しており、かつポリウレタンの分散もしくは架橋またはその他のポリマー類似の反応を可能にする官能基をポリウレタン中へ導入するために役立つ。このためには、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)のようなモノマー、およびアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、たとえばヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートが考慮される。
【0050】
モノマー(d)としてさらに、少なくとも1のイソシアネート基またはイソシアネートと反応性の基、および別の親水基、たとえば非イオン性もしくはカチオン性の基を有するモノマーが考慮される。
【0051】
非イオン性の親水基として、特に有利に5〜100、好ましくは10〜80のエチレンオキシド繰り返し単位からなるポリエチレングリコールが考慮される。ポリエチレンオキシド単位の含有率は、全てのモノマー(a)〜(d)の質量に対して、0〜10、有利には0〜6質量%であってよい。
【0052】
非イオン性の親水基を有する有利なモノマーは、ポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドモノオールならびにポリエチレングリコールと、末端にエーテル化したポリエチレングリコール基を有するジイソシアネートとからの反応生成物である。このようなジイソシアネートならびにその製造方法は、特許文献US−A3,905,929およびUS−A3,920,598に記載されている。
【0053】
ポリウレタン化学の分野では一般に、ポリウレタンの分子量が、相互に反応性のモノマーの割合ならびに分子あたりの反応性官能基の数の数学的平均の選択によって調整することができることが公知である。
【0054】
通常、成分(a)〜(d)ならびにこれらのそれぞれのモル量は、
A)イソシアネート基のモル量および
B)ヒドロキシル基のモル量と、イソシアネートと付加反応において反応することができる官能基のモル量とからの合計
である場合に、比A:Bが、0.5:1〜2:1、有利には0.8:1〜1.5、特に有利には0.9:1〜1.2:1であるように選択する。特に有利には比A:Bはできる限り1:1に近い。
【0055】
使用されるモノマー(a)〜(d)は、平均して通常は1.5〜2.5、有利には1.9〜2.1、特に有利には2.0のイソシアネート基、もしくは付加反応においてイソシアネートと反応することができる官能基を有している。
【0056】
本発明による水性分散液中に存在するポリウレタンを製造するための成分(a)〜(d)の重付加は、20〜180℃、有利には70〜150℃の反応温度で、常圧または自然発生的な圧力の下で行うことができる。
【0057】
必要とされる反応時間は通常、1〜20時間の範囲であり、特に1.5〜10時間の範囲である。ポリウレタン化学の分野では、反応時間が、多数のパラメータ、たとえば温度、モノマーの濃度、モノマーの反応性により影響されることは公知である。
【0058】
ポリウレタンを製造するための反応、つまりモノマーa)、b)、c)ならびに場合によりd)の重付加は、有機化合物または有機金属化合物により触媒することができる。適切な有機金属化合物は特にジブチルスズジラウレート、スズ−II−オクトエート、またはジアゾビシクロ−(2,2,2)−オクタンである。モノマーa)、b)、c)ならびに場合によりd)およびe)の反応の適切な触媒は、セシウム塩、特にカルボン酸セシウム塩、たとえばセシウムのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩または2−エチルヘキサン酸塩である。
【0059】
モノマーa)、b)、c)ならびに場合によりd)およびe)の重付加、つまり反応を実施するための重合装置として、特に低い粘度および良好な熱除去のために溶剤を併用する場合には、攪拌反応器が考慮される。
【0060】
有利な溶剤は、水と無制限に混和可能であり、標準圧力で40〜100℃の沸点を有し、かつモノマーと反応しないか、または緩慢に反応するにすぎない溶剤である。
【0061】
多くの場合、分散液は以下の方法により製造される:
「アセトン法」によれば、水と混和可能な、および常圧で100℃未満で沸騰する、成分(a)〜(c)からなる溶剤中で、イオン性ポリウレタンを製造する。水がその中でコヒーレントな相である分散液を形成するまで水を添加する。
【0062】
「プレポリマー混合法」は、反応していない(潜在的な)イオン性のポリウレタンではなく、まずイソシアネート基を有するプレポリマーを製造する点で、アセトン法とは異なる。この場合、成分は、定義による比A:Bが1.0〜3より大である、有利には1.05〜1.5より大であるように選択する。プレポリマーをまず水中に分散させ、かつ引き続き場合によりイソシアネート基を、イソシアネートに対して反応性のアミノ基を2より多く有するアミンと反応させることにより架橋するか、またはイソシアネートに対して反応性のアミノ基を2より多く有するアミンと反応させることにより鎖長を延長する。鎖長の延長は、この場合、アミンを添加しない場合にも行われる。この場合、イソシアネート基をアミノ基へと加水分解し、該アミノ基を、なお残留するプレポリマーのイソシアネート基と反応させて鎖長を延長する。
【0063】
通常、ポリウレタンの製造の際に溶剤を併用した場合、溶剤の大部分を、たとえば減圧での蒸留により分散液から除去する。有利には該分散液は、10質量%未満の溶剤含有率を有し、かつ特に有利には溶剤を含有していない。
【0064】
本発明によるポリウレタン分散液は、上記でモノマーc)でも記載したように、アニオン基を中和するためのアルカノールアミンを含有している。
【0065】
該アルカノールアミンは、少なくとも2のヒドロキシル基を有しており、有利には少なくともヒドロキシル基を有し、特に有利には3のヒドロキシル基を有している。
【0066】
アルカノールアミンは、有利には式
【化2】

[式中、R1は、H原子、炭化水素基を表すか、または少なくとも1のヒドロキシル基により置換されている炭化水素基を表し、かつR2およびR3は、そのつど、少なくとも1のヒドロキシル基により置換されている炭化水素基を表す]のものである。
【0067】
炭化水素基、またはヒドロキシル基により置換されている炭化水素基は有利には1〜10個の炭素原子、特に2〜10個の炭素原子を有し、かつ有利にはヒドロキシル基以外の別のヘテロ原子を有していない。
【0068】
特に有利にはR1は、C1〜C4−アルキル基、特にC2〜C4−アルキル基を表すか、または1のヒドロキシル基により置換されたC1〜C4−アルキレン基、特にC2〜C4−アルキレン基を表し、かつR2およびR3は、それぞれ1のヒドロキシル基により置換されているC1〜C4、特にC2〜C4もしくはC2またはC3−アルキレン基を表す。
【0069】
有利なアルカノールアミンはたとえばトリエタノールアミンおよび特に有利にはトリイソプロパノールアミンである。
【0070】
本発明による水性ポリウレタン分散液は、被覆剤、含浸剤または接着剤のための結合剤として適切である。接着剤、被覆剤または含浸剤(まとめて水性組成物と略称する)は、もっぱらポリウレタン分散液からなり、該分散液はこれらの使用のために別の助剤および添加剤、たとえば架橋剤、発泡剤、消泡剤、乳化剤、増粘剤およびチキソトロープ剤ならびに着色剤、たとえば染料および顔料を含有していてよい。
【0071】
水性組成物は、そのつどの使用のために所望される架橋剤、たとえばカルボジイミドまたはアジリジンを含有していてよい。
【0072】
水性組成物もしくはポリウレタン分散液は、金属、プラスチック、紙、テキスタイル、皮革、または木材からなる物品の被覆のために適切である。これらは一般に慣用の方法により、つまりたとえば噴霧もしくはナイフ塗布により、フィルムの形でこれらの物品上に施与し、かつ乾燥させることができる。乾燥は室温で、または高めた温度で行うことができる。
【0073】
特に本発明によるポリウレタン分散液は、接着剤として、もしくは接着剤のための結合剤として適切であり、特に有利であるのは積層用接着剤である。この場合、1成分系と2成分系とは区別される。
【0074】
水性組成物は、1成分系としても、2成分系としても適切である。1成分系は、架橋剤を含有しており、貯蔵安定性である。2成分系の場合、架橋剤は使用の直前に初めて添加される。
【0075】
金属、プラスチック、紙、皮革または木材からなる物品は、同様に、本発明による水性分散液をフィルムの形でこれらの物品の少なくとも1の上に塗布し、かつ該フィルムの乾燥前または乾燥後に該物品を別の物品と貼り合わせることにより、その他の物品、有利には前記の物品と接着することができる。この場合、有利にはフィルムを50〜150℃の温度に加熱する。
【0076】
積層用接着剤として使用する場合、ポリマーフィルム、紙、特にポリマーで浸漬または被覆されている装飾紙、または皮革を、特に結合された木繊維材料、たとえば合板またはその他のセルロース材料からなる板でもある木材からなる物品、金属またはプラスチックからなる物品と接着し、たとえば家具、もしくは家具の部材を紙またはポリマーフィルムと積層するか、または自動車内部部材をポリマーフィルムと積層する。
【0077】
1成分系の場合、本発明による組成物をまず接着すべきポリマーフィルム上に、または接着すべき紙上に施与し、かつ被覆したポリマーフィルムもしくは被覆した紙を、後の時点で家具部材または自動車内部部材と積層すべき時まで貯蔵する。
【0078】
本発明によるポリウレタン分散液は、低い粘度を有する。本発明によるポリウレタン分散液、または本発明による組成物を接着剤もしくは積層用接着剤として使用する場合、高い強度を有する複合材料、特に高い耐熱性、つまり高温での強度を有する複合材料が得られる。本発明による組成物は、1成分系としても(ブロックされた反応基を有する架橋剤)貯蔵安定性であり、かつ積層すべきポリマーフィルムまたは紙上に施与し、かつ貯蔵することができる。
【0079】
実施例
分散液の粘度は、Paar Physica社の回転粘度計中で、Paar Physica社の測定装置Viscolab LC10を用いて23℃および250s-1の剪断勾配で測定した。
【0080】

トリイソプロパノールアミンを含有するPUR分散液
OH価56のポリプロピレングリコール800g(0.40モル)、ジメチロールプロピオン酸80.48g(0.60モル)およびアセトン100gを装入し、60℃でトルイレンジイソシアネート174.16g(1.00モル)を添加し、かつ90℃で6時間、さらに攪拌した。次いで、アセトン800g、トリイソプロパノールアミン(TIPA)54.01g(0.240モル)および水50gを順次計量供給し、かつさらに5分間、後攪拌した。反応混合物を水1600gで分散させた。その後、アセトンを真空で留去し、かつ固体含有率を40%に調整した。
【0081】
粘度:31mPas。
【0082】
比較例1:NaOHを含有するPUR分散液
OH価56のポリプロピレングリコール800g(0.40モル)、ジメチロールプロピオン酸80.48g(0.60モル)およびアセトン100gを装入し、60℃でトルイレンジイソシアネート174.16g(1.00モル)を添加し、かつ90℃で6時間、さらに攪拌した。次いで、アセトン800gおよび水25g中の水酸化ナトリウム19.2g(0.240モル)の溶液を計量供給し、かつさらに5分間、後攪拌した。反応混合物を水1600gで分散させた。その後、アセトンを真空で留去し、かつ固体含有率を40%に調整した。
粘度:190mPas。
【0083】
比較例2:トリブチルアミンを含有するPUR分散液
OH価56のポリプロピレングリコール800g(0.40モル)、ジメチロールプロピオン酸80.48g(0.60モル)およびアセトン100gを装入し、60℃でトルイレンジイソシアネート174.16g(1.00モル)を添加し、かつ92.0℃で6時間、さらに攪拌した。次いで、アセトン800g、トリブチルアミン(TBA)44.49g(0.240モル)および水50gを計量供給し、かつさらに5分間、後攪拌した。反応混合物を水1600gで分散させた。試料は凝固し、使用可能な分散液は得られなかった。
【0084】
比較例3:トリエチルアミンを含有するPUR分散液
OH価56のポリプロピレングリコール800g(0.40モル)、ジメチロールプロピオン酸80.48g(0.60モル)およびアセトン100gを装入し、60℃でトルイレンジイソシアネート174.16g(1.00モル)を添加し、かつ92.0℃で6時間、さらに攪拌した。次いで、アセトン800g、トリエチルアミン(TEA)24.29g(0.240モル)および水50gを計量供給し、かつさらに5分間、後攪拌した。反応混合物を水1600gで分散させた。
粘度:374mPas。
【0085】
【表1】

23℃および250s-1で測定。
【0086】
はく離強度の測定
試験のために、ポリウレタン分散液を1:1でエチレンビニルアセテート分散液(Airflex(登録商標)EP17)と混合した。はく離強度を確認するために、ABS成形部材を、ドクターナイフにより約80μmの塗布厚で分散液混合物により被覆した。被覆した成形部材を乾燥させた。90℃に加熱された実験室用プレス中で、約3バールの圧力下に、自動車の内部部材の積層のために使用されている市販の発泡PVCフィルムを、30秒間、貼り合わせた。室温で積層体を3〜5日間貯蔵した後、90゜のはく離角度で、周囲温度100℃での該接着部のはく離強度を測定した。
【0087】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン分散液において、ポリウレタンがアニオン基を有し、該アニオン基は少なくとも10モル%までが、少なくとも2のヒドロキシル基を有するアルカノールアミンにより中和されていることを特徴とするポリウレタン分散液、ただし、水乳化可能なポリイソシアネートを含有するポリウレタン分散液を除外する。
【請求項2】
ポリウレタンが、
a)ジイソシアネート、
b)ジオール、このうち
b1)ジオール(b)の全量に対して、10〜100モル%は、500〜5000g/モルの分子量を有し、かつ
b2)ジオール(b)の全量に対して、0〜90モル%は、60〜500g/モルの分子量を有する、
c)モノマー(a)および(b)とは異なり、少なくとも1のイソシアネート基を有するか、または少なくとも1の、イソシアネート基に対して反応性の基を有し、さらに少なくとも1のアニオン基を有し、このことによってポリウレタンの水分散性がもたらされるモノマー、および
d)場合によりモノマー(a)〜(c)とは異なった、一価または多価の、アルコール性ヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基またはイソシアネート基である反応性の基を有する化合物
から構成されていることを特徴とする、請求項1記載のポリウレタン分散液。
【請求項3】
ポリウレタン中のアニオン基または潜在的なアニオン基の含有率が、30〜1000ミリモル/kgポリウレタンであることを特徴とする、請求項1または2記載のポリウレタン分散液。
【請求項4】
アルカノールアミンが、式
【化1】

[式中、R1は、H原子を表すか、炭化水素基を表すか、または少なくとも1のヒドロキシル基により置換された炭化水素基を表し、かつR2およびR3はそれぞれ、少なくとも1のヒドロキシル基により置換された炭化水素基を表す]のアルカノールアミンであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液。
【請求項5】
1が、H原子を表すか、C1〜C4−アルキル基を表すか、または1のヒドロキシル基により置換されたC1〜C4−アルキレン基を表し、かつR2およびR3がそれぞれ、1のヒドロキシル基により置換されたC1〜C4−アルキレン基を表すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液。
【請求項6】
アルカノールアミンが、トリイソプロパノールアミンであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液。
【請求項7】
ポリウレタンのアニオン基が、少なくとも80モル%まで、アルカノールアミンにより中和されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液。
【請求項8】
さらに架橋剤を含有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液。
【請求項9】
接着剤、被覆剤および含浸剤のための結合剤としての、請求項1から8までのいずれか1項記載のポリウレタン分散液の使用。

【公表番号】特表2009−507951(P2009−507951A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529608(P2008−529608)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065872
【国際公開番号】WO2007/028760
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】