説明

アルカリ水溶液可溶性樹脂、それを含む組成物及びその硬化物

【課題】活性エネルギー線に対する感光性に優れ、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、その硬化膜が十分なフレキシブル性を有し、高絶縁性で密着性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性に優れたソルダーマスクインキに適する樹脂組成物及びその硬化物が望まれている。
【解決手段】分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)に、多塩基酸無水物(b)を反応させて得られるエステル化合物(x)のカルボキシル基に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を反応させ、更に生成したジオールと多塩基酸無水物(b’)とを反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ水溶液可溶性樹脂、それを含む組成物及びその硬化物の製造法等に関し、更に詳しくは、プリント配線(基)板用ソルダーマスク、フレキシブルプリント配線(基)板用ソルダーマスク、多層プリント配線(基)板用層間絶縁膜、感光性光導波路、感光性塗料膜等として有用な、現像性、感光性、フレキシブル性、密着性、半田耐熱性、耐薬品性、メッキ耐性、高絶縁性等に優れた硬化物を与える特定の樹脂を含む組成物、その硬化物の製造法及びその硬化物の層を有する基材等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一部の民生用プリント配線板並びにほとんどの産業用プリント配線板のソルダーマスクは、フォトリソグラフ法を利用した、即ち、露光後に現像処理をすることによって画像形成し、更に熱及び/または光照射で硬化する光硬化型組成物を使用したソルダーマスクである。そして、環境問題への配慮から、現像液として有機溶媒ではなく希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのソルダーマスク用組成物が主流になっている。このような希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのソルダーマスク用組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂、光重合開始剤、架橋剤、及びエポキシ樹脂からなる組成物が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この組成物の硬化物は硬く、近年の携帯機器のような分野に多く使用されつつあるボールグリッドアレイ(以下BGAという)基板やフレキシブル基板に適用すると、表面にクラックが生じたり、基板の折り曲げに追随できないという不具合を生ずる。
【0003】
この、BGA基板やフレキシブル基板に適する材料として、多官能ビスフェノール系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物に多塩基酸無水物を反応させて得られる多塩基酸無水物変性エポキシアクリレート樹脂を使用した組成物が特許文献2に記載されている。しかしながら、これを用いた場合、表面の耐クラック性は改善されるものの、感光性、フレキシブル性の点で十分ではなく、また、極度の折り曲げには追随できない。
特許文献3には、1分子中に1.2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させて得られるビニルエステル樹脂等からなるウレタン変性ビニルエステル樹脂に、多塩基酸無水物を付加させることにより得られるウレタン変性酸付加ビニルエステル樹脂を含む光重合性樹脂組成物が開示されているが、その硬化物はフレキシブル性ではほぼ満足する性能が得られるが、感光性、耐熱性、絶縁性の低下等の課題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特許2868190号公報
【特許文献3】特開平9−52925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線板は、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざして高精度、高密度化が求められており、それに伴いソルダーマスクへの要求も増々高度となり、よりフレキシブル性を保ちながら感光性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性、基板密着性、高絶縁性等の電気特性の向上が要求されている。しかしながら、現在知られているソルダーマスクでは、これら要求に対応できていない。
本発明の目的は、今日のプリント配線板の高機能に対応し得る微細な画像を描画可能な活性エネルギー線に対する感光性に優れ、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成ができると共に、後硬化(ポストキュア)工程として熱硬化させて得られる硬化膜が十分な耐熱性、フレキシブル性を有し、高絶縁性で密着性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性に優れたソルダーマスク用インキに適する組成物及び硬化物とそれらの特性を発揮させるアルカリ水溶液可溶性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前述の課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)に、多塩基酸無水物(b)を反応させて得られるエステル化合物(x)のカルボキシル基に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を反応させ、更に生成したジオールと多塩基酸無水物(b’)とを反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A);
(2)ジオール化合物(a)が分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物であり、多塩基酸無水物が2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物である請求項1に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A);
(3)アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価が、30〜150mgKOH/gである上記(1)または(2)に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A);
【0008】
(4)1.上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、
2.光重合開始剤(B)、
3.反応性架橋剤(C)、
4.任意成分としての硬化成分(D)
を含有する感光性樹脂組成物;
(5)上記(4)に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法;
(6)上記(5)に記載の製造法による硬化物の層を有する基材;
(7)上記(6)に記載の基材を有する物品;
【0009】
(8)請求項4に記載の感光性樹脂組成物を塗布し、光硬化し、アルカリ処理及び熱処理する工程を含むことを特徴とするプリント配線板用ソルダーマスク、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路または感光性塗料膜の製造法;
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)は、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)に、多塩基酸無水物(b)を反応させて得られるエステル化合物(x)のカルボキシル基に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を反応させ、更に生成したジオールと多塩基酸無水物(b’)とを反応させて得られ、例えば、模式的に下記の構造式で表される。
【0011】
【化1】

【0012】
但し、(c)のエポキシ基は(x)及び(b’)のカルボキシル基と反応してエステル結合を形成している。この樹脂を含む感光性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線による高機能プリント配線板に対応する微細な画像の形成において光感度性に優れ、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成でき、現像性に優れると共に、後硬化(ポストキュア)工程で熱硬化させて得られる硬化膜が、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐薬品性、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性、高絶縁性等も十分に満足するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路及び感光性塗料膜等の製造に適している。
また、エポキシ化合物(c)や多塩基酸無水物(b’)の仕込み量比を変えて上記構造式のm+nやmを変えることで、各種特性に寄与する樹脂の分子量や酸価を自由に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)は、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)に、多塩基酸無水物(b)を反応(以下、第一の反応という)させて得られるエステル化合物(x)のカルボキシル基に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を反応(以下、第二の反応という)させ、更に生成したジオールと多塩基酸無水物(b’)とを反応(以下、第三の反応という)させて得られることを特徴とする。
【0014】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の製造に使用される分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)としては、ジメチロールプロピオン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールプロピオン酸と2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールブタン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールブタン酸と2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物、分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物等が挙げられる。
【0015】
上記において分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のフェニルジグリシジルエーテル;ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等の水素化ビスフェノール型エポキシ化合物;臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂等のハロゲノビスフェノール型エポキシ化合物;シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の脂環式ジグリシジルエーテル化合物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物;ポリサルファイドジグリシジルエーテル等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物;ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
前記において分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等が挙げられる。
【0017】
ジオール化合物(a)としては、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物が好ましく、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂または水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物が特に好ましい。
【0018】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の製造においてジオール化合物(d)を使用する場合、ジオール化合物(d)としては、上記のジオール化合物(a)以外の、2個のアルコール性水酸基が相異なる炭素原子に結合している脂肪族あるいは脂環式ジオール化合物が挙げられ、具体的には例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、末端に水酸基を有するブタジエン−アクリロニトリル共重合体(例えば、宇部興産のAT×013)、末端に水酸基を有するスピログリコール(例えば3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等)、末端に水酸基を有するジオキサングリコール(例えば2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン等)、末端に水酸基を有するトリシクロデカン−ジメタノール、末端に水酸基を有しポリスチレンを側鎖に持つマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製のHS−6等)、末端に水酸基を有しポリスチレン−アクリロニトリル共重合体を側鎖に持つマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製のHN−6等)等のジオール化合物、水素化ビスフェノール−A、水素化ビスフェノール−F、あるいはこれらのジオール化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のオキサイド類との反応物等が挙げられる。
【0019】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の製造に使用される多塩基酸無水物(b)としては特に限定されないが、2塩基酸が分子内で酸無水物を形成している2塩基酸1無水物、3塩基酸の任意の2個のカルボキシル基が分子内で酸無水物を形成している3塩基酸1無水物、若しくはそれら酸1無水物の混合物が好ましい。2塩基酸1無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、好ましくは無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸である。また、3塩基酸1無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、テトラヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸が挙げられ、好ましくはテトラヒドロ無水トリメリット酸である。
【0020】
第一の反応においては、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)における水酸基1当量に対し、多塩基酸無水物(b)を0.5〜3当量、より好ましくは0.8〜1.2当量仕込むことが好ましい。この値が、0.5を下回ると第二の反応が進みにくくなり、結果として全体の分子量が低下し感光性や耐熱性の問題が生じやすくなる。また、この値が3を上回ると第二の反応中に分子同士が架橋してしまいゲル化を生じやすい。
反応温度としては、例えば、60〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。また、反応時間は2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0021】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の製造に使用される分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としては、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のフェニルジグリシジルエーテル;ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等の水素化ビスフェノール型エポキシ化合物;臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂等のハロゲノ化ビスフェノール型エポキシ化合物;シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の脂環式ジグリシジルエーテル化合物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物;ポリサルファイドジグリシジルエーテル等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物;ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、好ましくはビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
第二の反応は、第一の反応で得られたエステル化合物(x)のカルボキシル基に分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を付加させる反応である。
第二の反応においては、第一の反応で生成したカルボキシル基1当量に対し、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)のエポキシ基を0.1〜3当量、より好ましくは0.2〜1当量仕込むことが好ましい。この値が0.1を下回ると分子量が低くなり感光性や耐熱性の問題が生じやすくなる。また、この値が3を上回ると第三の反応中にゲル化を生じやすい。
反応温度としては、例えば、60〜180℃であり、好ましくは80〜150℃である。また、反応時間は2〜15時間、好ましくは3〜10時間である。
【0023】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂の製造の第三の反応に使用される多塩基酸無水物(b’)としては上記多塩基酸無水物(b)と同様な化合物が挙げられ、好ましい化合物も同様である。第三の反応における多塩基酸無水物(b’)は第一の反応における多塩基酸無水物(b)と同じでも異なっていてもよい。
【0024】
第三の反応は、第二の反応で得られた化合物の分子中のアルコール性水酸基に多塩基酸無水物(b’)を付加させる反応である。
多塩基酸無水物(b’)の仕込み量としては、第二の反応で生成した水酸基の当量以下で、且つ、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価が30〜150mgKOH/gの範囲になる計算量を仕込むことが好ましい。この固形分酸価が30mgKOH/g未満の場合、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液可溶性が著しく低下し、最悪の場合現像処理ができず、その結果パターニングができなくなる。また、固形分酸価が150mgKOH/gを超えるとアルカリ水溶液可溶性が大きくなりすぎて、密着性の低下やパターンの流れ等の不具合を生じ好ましくない。
本発明において固形分酸価とは、樹脂1g中のカルボン酸の酸性を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、酸価とは樹脂を含む溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、JIS K0070に準じて通常の中和滴定法により測定される。また、溶液中の該樹脂の濃度がわかれば、溶液の酸価から固形分酸価を計算して求めることもできる。
第三の反応の反応温度としては、例えば、60〜150℃であり、好ましくは80〜120℃である。また、反応時間は2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0025】
第一の反応及び/または第三の反応の際には、酸無水物、特に2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物とアルコール性水酸基との反応性を高めるため、触媒を用いてもよい。該触媒の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、塩化トリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、沃化ベンジルトリメチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド等が挙げられる。
【0026】
第一、第二、第三の反応の際には、熱重合反応を抑えるため熱重合禁止剤を加えることが好ましく、該熱重合禁止剤の使用量は、反応物に対して0.05〜10重量%である。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール等があげられる。
【0027】
第一、第二、第三の反応は、無溶剤もしくはアルコール性水酸基を有さない溶媒、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、更には後記する反応性架橋剤(C)等の、単独または混合溶液中で行えばよい。
【0028】
本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、反応性架橋剤(C)、任意成分としての硬化成分(D)を含有する。
【0030】
アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常15〜70重量%、好ましくは、20〜60重量%である。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤(B)とは、通常の光重合硬化に用いられる化合物が全て挙げられるが、具体的に例示すると、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの添加割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常1〜30重量%、好ましくは、2〜25重量%である。
【0032】
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の重合促進剤と組み合わせて使用してもよい。これら重合促進剤を使用する場合、その添加量は、光重合開始剤(B)に対して100重量%以下となる量である。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物に含有される反応性架橋剤(C)としては(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられ、具体的には例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノまたはポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
反応性架橋剤(C)における水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステルにおいて水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多カルボン酸化合物の酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
反応性架橋剤(C)におけるモノまたはポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートにおいてモノまたはポリグリシジル化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら反応性架橋剤(C)の添加割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常2〜40重量%、好ましくは、5〜30重量%である。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物に含有する任意成分としての硬化成分(D)としては、エポキシ化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。硬化成分(D)は、光硬化後の樹脂塗膜に残存するカルボキシル基や水酸基と加熱により反応し、直線的な及び/または梯子的な分子量増大効果が期待され、更に耐熱性の向上した強固な薬品耐性を有する硬化塗膜を得ようとする場合に特に好ましく用いられる。
【0036】
硬化成分(D)としてのエポキシ化合物の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、RE−306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0038】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0039】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成(株)製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂;UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成(株)製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000H(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
【0040】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC−7000、NC−7300(いずれも日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0041】
硬化成分(D)としてのオキサジン化合物としては、例えば、B−m型ベンゾオキサジン、P−a型ベンゾオキサジン、B−a型ベンゾオキサジン(いずれも四国化成工業(株)製)が挙げられる。
【0042】
中でも、ビフェノール型エポキシ樹脂であるNC−3000やYX−4000、複素環式エポキシ樹脂であるTEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S等が硬化成分(D)として好ましい。
【0043】
硬化成分(D)を添加する場合、その添加割合としては、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価とその使用量から計算される当量、即ち、アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)に含まれるカルボキシル基に対する硬化成分(D)中のエポキシ基の当量の200%以下の量が好ましい。この量が200%を超えると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が著しく低下して好ましくない。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種のフィラーや添加剤、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤;アエロジル等のチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン等の着色剤;シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等を組成物の諸性能を高める目的で添加することができる。また、熱硬化触媒、例えば、メラミン等を加えてもよい。
【0045】
なお、前記の硬化成分(D)は、予め前記樹脂組成物に混合してもよいが、プリント配線板への塗布前に混合して用いることもできる。即ち、前記アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、硬化成分(D)を主体とした硬化剤溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いる方法である。溶液として使用する場合の溶媒としては、上記のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)合成の際の溶媒をそのまま用いてもよく、また、反応の際の溶媒として例示した上記溶媒を別途使用しても、混合して用いてもよい。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルム型のソルダーマスクとして用いることもできる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物(液状またはフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0048】
本発明には、上記の感光性樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させる硬化物の製造法も含まれる。紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化は常法により行うことができ、例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物は、基材、例えばレジスト膜、あるいはビルドアップ工法用の層間絶縁材や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光部品に使用される。これらの基材を有する物品の具体例としては、例えば、コンピューター、液晶ディスプレイ等の家庭電化製品、携帯電話等の携帯機器等が挙げられる。
この硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度が好ましい。
【0050】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、光硬化し、アルカリ処理及び熱処理する工程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または感光性光導波路の製造法も本発明に含まれる。例えばフレキシブルプリント配線板について具体的に説明すると、前記の液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により0.5〜160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させ、塗膜を形成する。その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に紫外線等の活性エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えばスプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。必要に応じて更に紫外線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ耐性に優れ、高絶縁性、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、屈曲性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板を得る。
【0051】
上記の現像に使用されるアルカリ水溶液としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が挙げられる。
これらのアルカリ水溶液の濃度は0.1〜5重量%程度、好ましくは0.5〜3重量%程度である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
【0053】
実施例1
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)としてカヤラッドR−115(日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシアクリレート、分子量508.52)を508.52g(1.00モル)、多塩基酸無水物(b)として無水コハク酸を200.14g(2.00モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを303.71g及び重合禁止剤として2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールを3.04g、触媒としてトリフェニルホスフィンを3.04g仕込み、98℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、158.36mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としてRE310S(日本化薬(株)製 2官能ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を184.0g、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを78.86g加え、98℃の温度で10時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、62.86mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に多塩基酸無水物(b’)として無水コハク酸を71.97g(0.72モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを136.85g加え、98℃で5時間反応させ、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−1とする。酸価を測定したところ、65mgKOH/g(固形分酸価:100mgKOH/g)であった。
【0054】
実施例2
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)としてR−9467(日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシメタクリレート、分子量540.18)を540.18g(1.00モル)、多塩基酸無水物(b)としてテトラヒドロ無水フタル酸を304.30g(2.00モル)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを361.92g及び重合禁止剤として2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールを、3.62g、触媒としてトリフェニルホスフィンを3.62g仕込み、98℃の温度で5時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ132.89mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)としてエピコート806(ジャパンエポキシレジン(株)製 2官能ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量165g/当量)を165g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを70.71g加え、98℃の温度で10時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ55.58mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に酸無水物(b’)として無水コハク酸を97.32g(0.97モル)、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを163.34g加え、98℃で5時間反応させ、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−2とする。酸価を測定したところ65mgKOH/g(固形分酸価:100mgKOH/g)であった。
【0055】
実施例3
前記実施例1で得られた(A−1)を表1に示す配合割合で混合、3本ロールミルで混練し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1重量%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。塗膜及び硬化物について、後述のとおり、タック性、現像性、解像性、光感度、表面光沢、基板そり、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性、耐PCT性、耐熱衝撃性の試験を行ない、それらの結果を表2に示す。
実施例4
前記実施例2で得られた(A−2)を表1に示す配合割合で混合、3本ロールミルで混練し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1重量%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。塗膜及び硬化物について、後述のとおり、タック性、現像性、解像性、光感度、表面光沢、基板そり、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性、耐PCT性、耐熱衝撃性の試験を行ない、それらの結果を表2に示す。
比較例
日本化薬(株)製KAYARAD ZFR−1122(アルカリ現像型多官能BisFエポキシアクリレート;ビスフェノールFのエポキシ化物とアクリル酸との反応により生成する水酸基とテトラヒドロ無水フタル酸との反応物)を用い、表1に示す配合割合で混合、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1重量%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。塗膜及び硬化物について、後述のとおり、タック性、現像性、解像性、光感度、表面光沢、基板そり、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、金メッキ耐性、耐PCT性、耐熱衝撃性の試験を行ない、それらの結果を表2に示す。
【0056】
[表1] 感光性樹脂組成物の組成内容
実施例 比較例
注 3 4
樹脂溶液
A−1 46.55
A−2 46.55
比較樹脂溶液
ZFR−1122 46.55
架橋剤(C)
DPCA−60 *1 6.06 6.06
HX−220 *2 6.06
光重合開始剤(B)
イルガキュアー907 *3 4.54 4.54 4.54
DETX−S *4 0.91 0.91 0.91
硬化成分(D)
YX−4000 *5 18.31 18.31 18.31
熱硬化触媒
メラミン 1.00 1.00 1.00
フィラー
硫酸バリウム 15.15 15.15 15.15
フタロシアニンブルー 0.61 0.61 0.61
添加剤
BYK−354 *6 0.39 0.39 0.39
KS−66 *7 0.69 0.69 0.69
溶剤
CA *8 4.54 4.54 4.54
【0057】

*1 日本化薬(株)製 :ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*2 日本化薬(株)製 :ε−カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート
*3 チバスペシャリティケミカルズ社製 :2−メチル−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパン
*4 日本化薬(株)製 :2,4−ジエチルチオキサントン
*5 ジャパンエポキシレジン(株)製 :2官能ビキシレノール型エポキシ樹脂
*6 ビックケミー社製 :レベリング剤
*7 信越化学(株)製 :消泡剤
*8 大阪有機(株)製 :カルビトールアセテート
【0058】
試験方法及び評価方法は次のとおりである。
(タック性)基板に塗布した乾燥後の膜に脱脂綿をこすりつけ、膜のタック性を評価した。
○・・・・脱脂綿は貼り付かない。
×・・・・脱脂綿の糸くずが、膜に貼り付く。
【0059】
(現像性)1重量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、塗膜が完全に除去されるまでの時間を測定する。
【0060】
(解像性)乾燥後の塗膜に、20、25、30、35、40、45、50μmのネガパターンを密着させ積算光量200mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1重量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、転写パターンを顕微鏡にて観察し、直線で剥離やぎざぎざがなくパターニングされる細かさを確認する。
【0061】
(光感度)乾燥後の塗膜に、ステップタブレット21段(コダック社製)を密着させ積算光量500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1重量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、現像されずに残った塗膜の段数を確認する。
【0062】
(表面光沢)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1重量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、乾燥後の硬化膜をグロスチェッカIG−320((株)堀場製作所製)により測定する。
【0063】
(基板そり)下記の基準を使用した。
○・・・・基板にそりは見られない
△・・・・ごくわずか基板がそっている
×・・・・基板のそりが見られる
【0064】
(屈曲性)硬化膜を180℃に折り曲げ観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・膜面に割れは見られない
×・・・・膜面が割れる
【0065】
(密着性)JIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
〇・・・・剥れのないもの
×・・・・剥離するもの
【0066】
(鉛筆硬度)JIS K5400に準じて評価を行った。
【0067】
(耐溶剤性)試験片をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの
【0068】
(耐酸性)試験片を10%塩酸水溶液に室温で30分浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの
【0069】
(耐熱性)試験片にロジン系フラックスを塗布し260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
〇・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの
【0070】
(金メッキ耐性)試験基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後、水洗し、次いで、14.4重量%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した後、水洗し、更に10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に7分間浸漬、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、更に60℃の温水で3分間浸漬し、水洗し、乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロテープ(登録商標)を付着し、剥離したときの状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・全く異常が無いもの
×・・・・若干剥がれが観られたもの
【0071】
(耐PCT性)試験基板を121℃、2気圧の水中で96時間放置後、外観に異常がないかの確認とセロテープ(登録商標)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの
【0072】
(耐熱衝撃性)試験片を、−55℃/30分、125℃/30分を1サイクルとして熱履歴を加え、1000サイクル経過後、試験片を顕微鏡観察し、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜にクラックの発生のないもの
×・・・・塗膜にクラックが発生したもの
【0073】
[表2] 評価結果
実施例 3 4 比較例
評価項目
タック性 ○ ○ ○
現像性 15 25 42
解像性 30 30 30
光感度 10 13 8
表面光沢 88 85 87
基板そり ○ ○ △
屈曲性 ○ ○ ○
密着性 ○ ○ ○
鉛筆硬度 6H 6H 6H
耐溶剤性 ○ ○ ○
耐酸性 ○ ○ ○
耐熱性 ○ ○ ○
耐金メッキ性 ○ ○ ○
耐PCT性 ○ ○ ○
耐熱衝撃性 ○ ○ ○
【0074】
実施例5
実施例2で得られた樹脂溶液(A−2)54.44g、反応性架橋剤(C)としてHX−220(日本化薬(株)製 2官能アクリレート樹脂)3.54g、光重合開始剤(B)としてイルガキュアー907(バンティコ製 光重合開始剤)4.72g及びカヤキュアーDETX−S(日本化薬(株)製 光重合開始剤)0.47g、硬化成分(D)としてYX−8000(ジャパンエポキシレジン(株)製 2官能水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポキシ当量:202.06g/当量)14.83g、熱硬化触媒としてメラミン1.05g及び濃度調整溶媒としてメチルエチルケトン20.95gを加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させ本発明の感光性樹脂組成物を得た。
【0075】
得られた組成物をロールコート法により、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ30μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm・ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
【0076】
次いで、光導波路パターンを有するネガマスクを装着した紫外線縮小投影露光装置を用いて紫外線を照射した(照射量500mJ/cm)。照射後、支持フィルムを樹脂から剥離し、0.25重量%のテトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、未照射部分を溶解除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で30分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物は透明性が良好で50μmのパターンが解像されていた。
【0077】
実施例6
実施例1で得られた樹脂溶液(A−1)19.8g、反応性架橋剤(C)としてDPHA(日本化薬(株)製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)13.4g及びPET−30(日本化薬(株)製 ペンタエリスリトールトリアクリレート)4.0g、改質剤(ハードコート用の添加剤)としてMEK−ST(日産化学(株)製 オルガノシリカゾルMEK−ST)45.1g、光重合開始剤(B)としてIrg−184(チバスペシャリティケミカルズ製 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)0.9g及びルシリンTPO(BASFジャパン製 2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)0.2g、溶媒としてメチルエチルケトン16.6gを配合し、本発明の感光性樹脂からなる感光性塗料組成物を得た。
【0078】
得られた組成物を、バーコーター(No.20)を用いて未処理のポリエステルフィルム(帝人(株)製HSL、膜厚75μm)に塗布し、80℃の熱風乾燥機にて1分間放置後、空気雰囲気下で120W/cmの高圧水銀灯を用い、10cmの距離で5m/分のコンベアスピードで紫外線を照射し、硬化物層を有するフィルムを得た。
【0079】
得られた硬化物層を前記の方法により、密着性、鉛筆硬度、耐衝撃性試験を行ったところ、各試験で良好な結果が得られた。
【0080】
上記の結果から明らかなように、本発明のアルカリ水溶液可溶性樹脂及びそれを用いた感光性樹脂組成物は、タック性も無く、高感度であり、その硬化膜も半田耐熱性、耐薬品性、金メッキ耐性、高絶縁性等の電気特性に優れ、また硬化物表面にクラックが発生せず、薄膜化された基板を用いた場合でも基板にそりがみられず、プリント基板、光導波路、感光性塗料膜等に適したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(a)、または、前記ジオール化合物(a)と化合物(a)以外のジオール化合物(d)に、多塩基酸無水物(b)を反応させて得られるエステル化合物(x)のカルボキシル基に、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(c)を反応させ、更に生成したジオールと多塩基酸無水物(b’)とを反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)。
【請求項2】
ジオール化合物(a)が分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物であり、多塩基酸無水物が2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物である請求項1に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)。
【請求項3】
アルカリ水溶液可溶性樹脂(A)の固形分酸価が、30〜150mgKOH/gである請求項1または2に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)。
【請求項4】
1.請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ水溶液可溶性樹脂(A)、
2.光重合開始剤(B)、
3.反応性架橋剤(C)、
4.任意成分としての硬化成分(D)
を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造法による硬化物の層を有する基材。
【請求項7】
請求項6に記載の基材を有する物品。
【請求項8】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物を塗布し、光硬化し、アルカリ処理及び熱処理する工程を含むことを特徴とするプリント配線板用ソルダーマスク、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路または感光性塗料膜の製造法。

【公開番号】特開2006−36949(P2006−36949A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219696(P2004−219696)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】