説明

アルコール濃度検出システム

【課題】感ガスセンサが劣化しているか否かを簡易、正確に判断できるアルコール濃度検出システムを提供すること。
【解決手段】正常な感ガスセンサの大気アルコール濃度に相当する初期抵抗値Aを取得する(S11)。所定時期になった場合には(S12:YES)、大気を測定ユニットに取り込み(S13)、そのときの感ガスセンサの実測抵抗値Bを測定する(S14)。その実測抵抗値Bが、初期抵抗値Aを基準とした所定範囲(±α)である許容範囲に含まれているか否かを判断して(S15)、含まれている場合には(S15:YES)、未だ劣化していないとする。一方、許容範囲に含まれていない場合には(S15:NO)、劣化しているとして、呼気アルコール濃度を補正して算出したり(S22、S19)、直ちに交換する必要がある旨を通知したりする(S23)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲酒運転を防止するために用いられ、自動車の運転者等の被験者の呼気に含まれているアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲酒運転を防止するために、自動車の運転手の呼気に含まれているアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のアルコール濃度検出システムは、少なくとも被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じたセンサ物性を示す感ガスセンサを含む測定ユニットと、そのセンサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、その計測されたセンサ物性に基づいて、被験者の呼気に含まれているアルコール濃度を呼気アルコール濃度として算出する呼気アルコール濃度算出手段と、を備える。そして、呼気アルコール濃度算出手段によって、自動車の運転手の呼気から基準値以上のアルコール濃度が算出された場合には、自動車の走行を不能にするなどして飲酒運転を防止するようにしたものである。
【0003】
ところで、上記感ガスセンサは、使用環境、使用時間等によってアルコールに対する感度が悪くなって劣化することが知られている。感ガスセンサが劣化すると正確な呼気アルコール濃度を算出することができないので、定期的に感ガスセンサを交換するなどの対策をする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−307295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、感ガスセンサが劣化しているか否かを簡易、正確に判断することができなかった。そのため、ユーザは、自動車をディーラ等に持って行き、そこで感ガスセンサが劣化しているか否かを判断してもらう必要があった。そのため、劣化の判断が煩わしいという問題があった。
【0006】
また、感ガスセンサの寿命を予め定めておき、感ガスセンサの経過時間や使用回数がその寿命で定める値になったときに、一律に感ガスセンサが劣化していると通知することも考えられる。しかし、感ガスセンサが劣化するか否かは、使用環境等の種々の要因で変わる。したがって、未だ劣化していないにもかかわらず感ガスセンサを交換してしまったり、劣化が進んでいるにもかかわらずその感ガスセンサで正確でない呼気アルコール濃度を検出してしまったりするなどの不具合が生じていた。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、感ガスセンサが劣化している場合には交換したりするなどの対策をしやすくするために、感ガスセンサが劣化しているか否かを簡易、正確に判断できるアルコール濃度検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のアルコール濃度検出システムは、少なくとも被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性を示す感ガスセンサを含む測定ユニットと、
その感ガスセンサの物性であるセンサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
そのセンサ物性計測手段によって計測された前記センサ物性に基づいて、被験者の呼気に含まれているアルコール濃度を呼気アルコール濃度として算出する呼気アルコール濃度算出手段と、を備えるアルコール濃度検出システムにおいて、
大気を前記測定ユニットに取り込む大気取込手段と、
その大気取込手段によって大気が取り込まれたときに前記センサ物性計測手段によって計測された前記センサ物性に基づいて、その大気に含まれているアルコール濃度を大気アルコール濃度として算出する大気アルコール濃度算出手段と、
その大気アルコール濃度算出手段によって算出された前記大気アルコール濃度が、所定の許容範囲に含まれているか否かを判断することによって、前記感ガスセンサが劣化しているか否かを判断する劣化有無判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、大気取込手段が大気を測定ユニットに取り込んで、大気アルコール濃度算出手段が取り込んだ大気に含まれている大気アルコール濃度を算出する。ここで、大気に含まれているアルコール濃度はある程度取り得る範囲が決まってくるので、感ガスセンサが劣化していなければ、算出された大気アルコール濃度がある許容範囲に含まれることになる。一方、感ガスセンサが劣化していれば、その許容範囲から外れる大気アルコール濃度が算出されることになる。そこで、劣化有無判断手段は、算出された大気アルコール濃度が許容範囲に含まれるか否かによって、感ガスセンサが劣化しているか否かを判断する。これにより、ディーラ等に自動車を持って行く必要がないので、感ガスセンサが劣化しているか否かを簡易、正確に判断することができる。
【0010】
また、本発明のアルコール濃度検出システムは、被験者が前記アルコール濃度検出システムを使用する前の、前記感ガスセンサの劣化を判断する時期として予め定められた劣化判断時期になったか否かを判断する時期判断手段を備え、
その時期判断手段によって前記劣化判断時期になった場合に、前記大気取込手段、前記大気アルコール濃度算出手段及び前記劣化有無判断手段に基づいて、前記感ガススセンサが劣化しているか否かを判断する。
【0011】
これによれば、被験者がアルコール濃度検出システムを使用する前に予め、感ガスセンサが劣化しているか否かが判断されるので、被験者は、感ガスセンサが劣化している場合にはそれを交換するなどの対策をとることができ、劣化していない場合には安心してアルコール濃度検出システムを使用することができる。
【0012】
そして、感ガスセンサが劣化していると判断した場合には、以下のように対策することができる。すなわち、本発明のアルコール濃度検出システムは、前記劣化有無判断手段によって、前記感ガスセンサが劣化していると判断された場合に、前記感ガスセンサの交換が必要である旨をユーザに通知する交換通知手段を備える。
【0013】
これによって、ユーザは劣化している感ガスセンサの交換が必要であると判断することができ、未だ劣化していないにもかかわらず感ガスセンサを交換してしまったり、劣化が進んでいるにもかかわらずその感ガスセンサで正確でない呼気アルコール濃度を検出してしまったりするなどの不具合を防止できる。
【0014】
また、感ガスセンサが劣化していると判断した場合には、次のように対策してもよい。すなわち、本発明のアルコール濃度検出システムは、正常な感ガスセンサから算出された大気アルコール濃度を初期値として取得する初期値取得手段と、
前記劣化有無判断手段によって、前記感ガスセンサが劣化していると判断された場合に、前記大気アルコール濃度算出手段が算出する大気アルコール濃度を測定値としたときに、その測定値と前記初期値との差分に基づいて、前記感ガスセンサの劣化度合いを示す劣化係数を算出する劣化係数算出手段と、
前記呼気アルコール濃度算出手段によって算出された前記呼気アルコール濃度を、正常な感ガスセンサから算出された前記呼気アルコール濃度に近づく方向に前記劣化係数に応じた量だけ補正するアルコール濃度補正手段と、を備える。
【0015】
このように、正常な感ガスセンサから算出された大気アルコール濃度を初期値とし、大気アルコール濃度算出手段が算出する大気アルコール濃度を測定値としたときに、その測定値と初期値との差分に応じた分だけ感ガスセンサが劣化していると考えることができる。すわなち、測定値と初期値との差分が大きくなるほど、感ガスセンサの劣化度合いも大きくなる。そこで、劣化係数算出手段が、その差分に基づいて、感ガスセンサの劣化度合いを示す劣化係数を算出する。そして、アルコール濃度補正手段が、呼気アルコール濃度算出手段によって算出された呼気アルコール濃度を、正常な感ガスセンサから算出された呼気アルコール濃度に近づく方向に劣化係数に応じた量だけ補正するので、感ガスセンサが劣化していたとしても、正確な呼気アルコール濃度を検出することができる。また、感ガスセンサの交換の手間を省くことができる。
【0016】
また、感ガスセンサが劣化していると判断した場合には、感ガスセンサの劣化の進行度合いに応じて、上記交換が必要である旨を通知する方法と呼気アルコール濃度を補正する方法とを組み合わせてもよい。すなわち、本発明のアルコール濃度検出システムは、前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが初期の第一段階に対応した、前記許容範囲外の一部の範囲である第一劣化範囲と、
前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが前記第一段階よりも進行した第二段階に対応した、前記許容範囲外でかつ前記第一劣化範囲外の範囲である第二劣化範囲と、が定められ、
前記劣化有無判断手段は、算出された前記大気アルコール濃度が、前記許容範囲に含まれない場合に、前記第一劣化範囲と前記第二劣化範囲のどちらに含まれているかを判断することによって、前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが前記第一段階と前記第二段階のどちらであるかを判断する劣化度合い判断手段を備え、
正常な感ガスセンサから算出された大気アルコール濃度を初期値として取得する初期値取得手段と、
前記大気アルコール濃度算出手段が算出する大気アルコール濃度を測定値としたときに、その測定値と前記初期値との差分に基づいて、前記感ガスセンサの劣化度合いを示す劣化係数を算出する劣化係数算出手段と、
前記劣化度合い判断手段によって前記第一段階であることを判断された場合に、前記呼気アルコール濃度算出手段によって算出された前記呼気アルコール濃度を、正常な感ガスセンサから算出された前記呼気アルコール濃度に近づく方向に前記劣化係数に応じた量だけ補正するアルコール濃度補正手段と、
前記劣化度合い判断手段によって前記第二段階であることを判断された場合に、前記感ガスセンサの交換が必要である旨をユーザに通知する交換通知手段と、を備える。
【0017】
これによれば、感ガスセンサの劣化度合いが初期の第一段階である場合には、呼気アルコール濃度が補正されるので、感ガスセンサを交換することなく、正確な呼気アルコール濃度を検出することができる。一方、感ガスセンサの劣化度合いが第一段階よりも進行した第二段階である場合には、呼気アルコール濃度を補正しても正確な呼気アルコール濃度を検出できない可能性がある。そこで、この場合には、感ガスセンサの交換が必要である旨がユーザに通知されるので、ユーザは感ガスセンサの交換が必要であると判断することができる。
【0018】
また、本発明のアルコール濃度検出システムは、前記感ガスセンサに付着した水蒸気を除去するために、前記感ガスセンサを加熱する加熱手段を備え、
前記劣化判断時期は、前記加熱手段によって前記感ガスセンサが加熱されて、前記感ガスセンサに付着した水蒸気を除去するタイミングである。
【0019】
これによれば、感ガスセンサに付着した水蒸気を除去するタイミングで大気アルコール濃度が算出されるので、付着した水蒸気の影響で正確でない大気アルコール濃度が算出されるのを防止できる。すなわち、正確に感ガスセンサが劣化しているか否かを判断することができる。
【0020】
また、本発明のアルコール濃度検出システムは、前記劣化判断時期は、被験者が毎日、前記アルコール濃度検出システムを使用する時期として予め定められた使用時期を基準にして、予め定められた時間前のタイミングである。
【0021】
これによれば、ユーザが上記使用時期にアルコール濃度検出システムを使用する限りにおいては、ユーザが使用する前に予め感ガスセンサが劣化しているか否かを確実に判断できる。
【0022】
また、本発明のアルコール濃度検出システムは、前記大気取込手段は、
前記測定ユニットに設けられ、大気を前記測定ユニットに取り込むファンと、
そのファンを駆動制御するファン駆動制御手段と、を備える。これによって、大気を測定ユニットに取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】アルコール濃度検出システム1の概略構成を示したブロック図である。
【図2】感ガスセンサ16の構成を説明するための図である。
【図3】ディスプレイ30の設置場所を説明するための図である。
【図4】呼気アルコール濃度の算出方法を説明するための図である。
【図5】劣化した感ガスセンサ16を用いると、正確な呼気アルコール濃度を検出できないことを説明するための図である。
【図6】検出される抵抗値Rの経過時間変化の曲線71と算出される呼気アルコール濃度の経過時間変化の曲線81とを示した図である。
【図7】劣化判断処理を示したフローチャートである。
【図8】大気アルコール濃度に相当する実測抵抗値Bの時間変化を示した曲線72を示した図である。
【図9】呼気アルコール濃度Xを補正して算出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のアルコール濃度検出システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態のアルコール濃度検出システムは、自動車の飲酒運転を防止するために、自動車に搭載されるものである。
【0025】
図1は、本実施形態のアルコール濃度検出システム1の概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、アルコール濃度検出システム1は、測定ユニット10、車両駆動系制御ユニット20及びディスプレイ30を備えている。なお、図1中の測定ユニット10は、その断面を示している。その測定ユニット10は、例えば、運転席近傍の運転手が操作できる位置に設けられ、運転手の呼気に含まれているアルコール濃度を検出するものである。その測定ユニット10は、図1に示すように、筐体11、ファン12、呼気流路13、側壁部14、感ガスセンサ16及びアルコール演算ECU17を含み構成される。
【0026】
その筐体11は、測定ユニット10の外形をなすものであり、その内部に上記他の構成12〜17が含まれている。また、筐体11の正面には、運転手の呼気を測定ユニット10の内部に取り込むための取込口111と取り込まれた呼気を測定ユニット10の外に排出する排出口112が形成されている。筐体11は、運転手が把持できる形状となっている。そして、運転手は、アルコール濃度を検出するときには、筐体11を把持して、筐体11の正面に形成された取込口11に口を近づけて呼気を吹きかけることによって、呼気を測定ユニット10内に取り込ませることができる。そして、取り込まれた呼気は、側壁部14で囲まれた呼気流路13に沿って流されることになる。
【0027】
また、取込口111には、その全領域を覆うようにファン12が設けられている。そのファン12は、アルコール演算ECU17からの信号に基づいて駆動し、呼気や大気を強制的に測定ユニット10内に取り込む送風機である。このように、取込口111にファン12が設けられているのは、呼気や大気を測定ユニット10内に取り込みやすくするためである。さらに、取り込まれた呼気を攪拌し均一に呼気流路13に流して、均一に感ガスセンサ16に接触させるためである。
【0028】
また、側壁部14には、少なくとも運転手の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性(抵抗値)を示す感ガスセンサ16が配置されている。ここで、図2は、その感ガスセンサ16の構成を説明するための図である。本実施形態における感ガスセンサ16は半導体センサであり、表面が酸化スズ等の金属酸化物161をコーティングして焼結したものである。また、感ガスセンサ16の表面には、その金属酸化物161と重ねて、白金より成るコイル18Cもコーティングされている。
【0029】
感ガスセンサ16の機能について説明する。大気(アルコール分を含まない又は非常に少ない)中では、大気中の酸素原子と金属酸化物161(酸化スズ)中の電子が結合しているため、金属酸化物161には電気が流れにくい状態となっている。一方、金属酸化物161にアルコール分を含む呼気が接触すると、呼気中のアルコール分と表面の酸素原子とが反応し、金属酸化物161中の電子と結合している酸素原子が剥ぎ取られる。これにより、金属酸化物161中の電子が自由になって電気が流れるようになる。この変化を検出回路19にて検出し、金属酸化物161の電気抵抗値(センサ物性)の変化を計測することにより、呼気中のアルコール濃度である呼気アルコール濃度が測定される。なお、検出回路19が本発明の「センサ物性計測手段」に相当する。
【0030】
また、感ガスセンサ16は、大気中に含まれている水蒸気が付着してアルコールに対する感度が変化することがある。そこで、本実施形態では、所定時間ごと(例えば1時間ごと)に、コイル18Cに接続された電源回路18Sによって、コイル18Cに電流を流し、金属酸化物161を所定温度に加熱して、付着した水蒸気を除去している(エージング)。なお、電源回路18S及びコイル18Cが本発明の「加熱手段」に相当する。
【0031】
図1の説明に戻り、筐体11には、アルコール演算ECU17が含まれている。そのアルコール演算ECU17は、ROM171を有しており、そのROM171に記憶されたプログラムにしたがって、感ガスセンサ16の抵抗値から呼気アルコール濃度を算出する処理等、各種演算処理を実行する。このアルコール濃度算出処理については、本発明の特徴的部分であるので、フローチャートを参照して後述する。
【0032】
車両駆動系制御ユニット20は、図示しないエンジン等、自動車の駆動を制御するものである。その車両駆動系制御ユニット20は、測定ユニット10と接続されており、測定ユニット10で算出された呼気アルコール濃度が所定の基準値より大きい場合には、飲酒運転に該当するとして、自動車を走行不能にする。
【0033】
ディスプレイ30は、図3に示すように、運転席の前方の速度メータやエンジン回転数メータ等の各種メータ41が配置されたメータパネル40に設けられている。そのディスプレイ30は、例えば液晶ディスプレイであり、車両駆動系制御ユニット20からの信号に基づいて、測定ユニット10による呼気アルコール濃度の検出結果を表示するものである。すなわち、検出された呼気アルコール濃度を表示するとともに、それが基準値より大きい場合には飲酒運転に該当し走行不能になっている旨や基準値以下の場合には通常通りに運転できる旨なども表示する。また、本実施形態では、後述するように、定期的に感ガスセンサ16が劣化しているか否かが判断され、その判断結果もディスプレイ30に表示される。なお、ディスプレイ30が本発明の「交換通知手段」に相当する。
【0034】
次に、呼気アルコール濃度の算出方法について説明する。上述したように、呼気アルコール濃度を算出する際には、運転者によって吹き付けられた呼気が、測定ユニット10内に取り込まれる。そして、その呼気に含まれているアルコールが感ガスセンサ16と接触して、感ガスセンサ16は、そのアルコール濃度に応じた抵抗値に変化する。ここで、図4(a)は、アルコール濃度Xと感ガスセンサ16の抵抗値Rとの対応関係61を示した図である。なお、本実施形態では、アルコール濃度Xと抵抗値Rとの対応関係は、説明の便宜のため比例関係としている。図4(a)に示すように、呼気に含まれているアルコール濃度Xが大きくなるほど、感ガスセンサ16の抵抗値Rが小さくなる。これは、アルコール濃度Xが大きくなるほど、感ガスセンサ16の金属酸化物161中の電子と結合している酸素原子の剥ぎ取られる量が多くなるためである。例えば、図4(a)に示すように、(1)運転者が呼気アルコール濃度x1の呼気を吹き付けた場合、感ガスセンサ16が抵抗値r1を示し、(2)その抵抗値r1が検出回路19(図2参照)で検出されることになる。したがって、その対応関係61を予めROM171等に記憶しておけば、図4(b)に示すように、(3)検出された抵抗値r1から呼気アルコール濃度x1を算出することができる。
【0035】
一方、感ガスセンサ16は、上述したように大気中の水蒸気が付着するとともに、水蒸気以外にも例えばシリコン等の不純物が付着する。付着した水蒸気については、上述したように感ガスセンサ16を加熱することによって除去することができるが、シリコン等は加熱しても除去することができない。そのため、感ガスセンサ16は、時間の経過とともに、アルコールに対する感度が悪くなっていく。すなわち、感ガスセンサ16は時間の経過とともに劣化する。
【0036】
ここで、図5は、劣化した感ガスセンサ16を用いると、正確な呼気アルコール濃度を検出できないことを説明するための図である。図5(a)には、感ガスセンサ16が劣化していないときにおけるアルコール濃度Xと抵抗値Rとの対応関係61を示している。感ガスセンサ16が劣化すると、感度が変化するために、同じ呼気アルコール濃度Xの呼気を吹き付けたとしても、検出される抵抗値Rが正常な感ガスセンサ16のときと異なってくる。このことは、図5(a)に示すように、対応関係61が別の対応関係62に変化することを意味している。なお、シリコン等が付着して感ガスセンサ16が劣化すると、アルコールと接触しても、金属酸化物161中の電子と結合している酸素原子の剥ぎ取られる量が抑えられるために、劣化していないときに比べて検出される抵抗値Rが大きくなると考えられる。したがって、例えば、(1)呼気アルコールx1の呼気を吹き付けた場合、感ガスセンサ16が劣化していないときには抵抗値r1が計測されるのに対し、(2)劣化しているときには抵抗値r1より大きな抵抗値r2が計測されることになる。その一方で、ROM171には劣化していないときの対応関係61が記憶されているので、図5(b)に示すように、(3)その対応関係61と抵抗値r2とから算出される呼気アルコール濃度x2は、吹き付けた呼気アルコール濃度x1と異なってしまう。なお、この場合、変化後の対応関係62を用いれば、呼気アルコール濃度x1を算出することができる。
【0037】
図6(a)は、吹き付ける呼気アルコール濃度が一定の場合における、検出される抵抗値Rの経過時間変化の曲線71を示している。また図6(b)は、吹き付ける呼気アルコール濃度が一定の場合における、算出されるアルコール濃度Xの経過時間変化の曲線81を示している。図6(a)に示すように、感ガスセンサ16は時間経過とともに劣化していき、当初(感ガスセンサ16の出荷時)の抵抗値R0に比べて大きな抵抗値Rを示すようになる。そのため、図6(b)に示すように、感ガスセンサ16が劣化するにしたがって、算出されるアルコール濃度Xは、正しいアルコール濃度X0に比べて小さくなっていく。
【0038】
そこで、本実施形態のアルコール濃度検出システム1は、運転者が運転する前の予め定められた劣化判断時期に、大気中に含まれているアルコール濃度である大気アルコール濃度を算出し、その大気アルコール濃度に基づいて感ガスセンサ16が劣化しているか否かを判断する劣化判断処理を実行している。図7はその劣化判断処理の手順を示したフローチャートである。以下、このフローチャートを参照しながら、劣化判断処理について説明する。なお、図7のフローチャートの処理は、例えば、アルコール濃度検出システム1が自動車に搭載されたときに開始される。
【0039】
先ず、ステップS11では、アルコール演算ECU17が、大気を測定ユニット10に取り込んだときにおける正常な感ガスセンサ16から検出される抵抗値Rとして、出荷時における感ガスセンサ16から検出される初期抵抗値Aを取得する。なお、正常な感ガスセンサ16から検出される抵抗値Rであれば、初期抵抗値Aとしてどの時点のものを取得してもよく、例えば、感ガスセンサ16が自動車に搭載されたときにおける初期抵抗値Aを取得してもよい。この初期抵抗値Aは、予めROM171に記憶しておき、その記憶された初期抵抗値Aを取得する。なお、ステップS11を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「初期値取得手段」に相当する。
【0040】
続くステップS12では、アルコール演算ECU17が、運転者が運転する前の感ガスセンサ16の劣化を判断する所定の劣化判断時期として、感ガスセンサ16を加熱して水蒸気を除去するタイミングになったか否かを判断する。上述したように、本実施形態では、所定時間ごと(例えば1時間ごと)にエージングを実行しているため、ステップS12では、その所定時間になったか否かをタイマで判断することになる。なお、ステップS12を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「時期判断手段」に相当する。そして、未だ劣化判断時期になっていない場合には(S12:NO)その劣化判断時期になるまで待機し、その劣化判断時期になった場合には(S12:YES)処理をステップS13に進める。
【0041】
ステップS13では、アルコール演算ECU17が、取込口111に設けられたファン12を駆動して、大気を測定ユニット10に取り込む。そして、感ガスセンサ16は、取り込まれた大気に含まれているアルコールと反応して、その大気アルコール濃度に応じた抵抗値Rを示すことになる。なお、ステップS13を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「ファン駆動制御手段」に相当する。また、ステップS13を実行するアルコール演算ECU17及びファン12が本発明の「大気取込手段」に相当する。
【0042】
続くステップS14では、アルコール演算ECU17が、検出回路19(図2参照)で検出された感ガスセンサ16の抵抗値Rを実測抵抗値Bとして取得する。この実測抵抗値BとROM171に記憶された対応関係61(図4(b)参照)とに基づいて、大気アルコール濃度を算出することができるので、実測抵抗値Bは、大気アルコール濃度に相当する。なお、ステップS14を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「大気アルコール濃度算出手段」に相当する。
【0043】
続くステップS15では、アルコール演算ECU17が、実測抵抗値Bが初期抵抗値Aから一定の範囲(±α)に含まれているか否かを判断する。すなわち、A−α≦B≦A+αを満たしているか否かを判断する。このA±αの範囲は、正常な感ガスセンサ16から算出された大気アルコール濃度の取り得る許容範囲である。なお、ステップS15を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「劣化有無判断手段」に相当する。
【0044】
ここで、図8は、感ガスセンサ16の経過時間tに伴って、大気アルコール濃度に相当する実測抵抗値Bの時間変化を示した曲線72を示している。上述したように、感ガスセンサ16は、その経過時間tとともに劣化していき、同じアルコール濃度Xでも検出される抵抗値Rが大きくなっていく。したがって、実測抵抗値Bは、経過時間tが大きくなるにつれて、徐々に大きくなっていく。ただし、(1)まだ経過時間tがそれほど経過していないときには、実測抵抗値Bは、許容範囲(A±α)に含まれている。この場合、先のステップS15で肯定判断がなされ、処理をステップS16に進める。
【0045】
そして、ステップS16では、感ガスセンサ16が未だ劣化していないとして、車両駆動系制御ユニット20が、ディスプレイ30に感ガスセンサ16が劣化していない旨を表示して運転者に通知する。この通知のタイミングは、例えば運転者が自動車に乗り込んで、アルコール濃度検出システム1を起動させたときに通知する。これにより、運転者は、感ガスセンサ16が劣化していないことを容易に把握することができ、安心してアルコール濃度検出システム1を使用でき、また未だ劣化していないにもかかわらず感ガスセンサ16を交換してしまうことを防止できる。
【0046】
続くステップS17では、アルコール演算ECU17が、後に算出される呼気アルコール濃度を補正するための補正係数Cに「1」を代入する(C=1)。
【0047】
続くステップS18では、アルコール演算ECU17が、図示しない測定開始スイッチが操作されたか否かに基づいて、運転者の呼気に含まれている呼気アルコール濃度の測定を開始するか否かを判断する。そして、未だ測定を開始しない場合には(S18:NO)、ステップS12の処理に戻る。この場合、次の劣化判断時期になったときに、再度、感ガスセンサ16が劣化しているか否かが判断されることになる(S12〜S15)。一方、呼気アルコール濃度の測定を開始する場合には(S18:YES)、処理をステップS19に進める。
【0048】
そして、ステップS19では、アルコール演算ECU17が、呼気アルコール濃度Xを算出する。すなわち、ファン12を駆動して運転者の呼気を測定ユニット10に取り込んで、呼気を感ガスセンサ16に接触させる。そして、検出回路19で計測された感ガスセンサ16の抵抗値Rを取得して、その抵抗値RとROM171に記憶されている対応関係61とに基づいて、呼気アルコール濃度X’を仮に算出する。さらに、仮に算出した呼気アルコール濃度X’に、ステップS17で決定した補正係数C(=1)を乗算して、最終的な呼気アルコール濃度Xを算出する。この場合、補正係数Cは「1」であるので、仮に算出した呼気アルコール濃度X’がそのまま最終的な呼気アルコール濃度Xになる。まだ、感ガスセンサ16が劣化していないためである。なお、算出した呼気アルコール濃度Xが所定の基準値よりも大きい場合には、車両駆動系制御ユニット20が自動車を走行不能にして飲酒運転をさせないようにし、呼気アルコール濃度Xが所定の基準値よりも小さい場合には、運転操作を許容する。なお、ステップS19を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「呼気アルコール濃度算出手段」に相当する。
【0049】
その後、ステップS12の処理に戻る。この場合、次の劣化判断時期になったときに、再度、大気アルコール濃度に相当する実測抵抗値Bを測定して、感ガスセンサ16が劣化しているか否かを判断することになる(S12〜S15)。ここで、図8に示すように、経過時間tが経過するにつれて、実測抵抗値Bが徐々に大きくなっていく。そして、(2)実測抵抗値Bが、許容範囲(A±α)外になった場合には、ステップS15で否定判断がなされ、処理をステップS20に進める。
【0050】
この場合、この感ガスセンサ16を用いると、正確な呼気アルコール濃度を算出することができないので、何らかの対策をする必要がある。そして、本実施形態では、感ガスセンサ16の劣化の進行度合いに応じた対策処理を実行している。
【0051】
すなわち、ステップS20では、アルコール演算ECU17が、感ガスセンサ16が劣化しているとして、その劣化の進行度合いが初期の第一段階であるか、その第一段階よりも劣化が進行した第二段階であるかを判断する。具体的には、実測抵抗値Bが許容範囲(A±α)外の初期抵抗値Aから一定の範囲(±β)に含まれているか否かを判断する。すなわち、A−β≦B≦A+βを満たしているか否かを判断する。このA±βの範囲(第一劣化範囲)は、感ガスセンサ16の劣化の進行度合いが上記第一段階に対応した範囲である。そして、A−β≦B≦A+βを満たしている場合には(S20:YES)、処理をステップS21に進める。なお、ステップS20を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「劣化度合い判断手段」に相当する。
【0052】
そして、本実施形態では、感ガスセンサ16の劣化の進行度合いが未だ初期の第一段階である場合には、感ガスセンサ16を直ちに交換する必要がないとして、感ガスセンサ16をそのまま用いて、呼気アルコール濃度を補正して算出している。
【0053】
そこでステップS21では、車両駆動系制御ユニット20が、ディスプレイ30に感ガスセンサ16が劣化している旨を表示して運転者に通知する。この際、その劣化の進行度合いが未だ初期の段階であるために、間もなく感ガスセンサ16の交換が必要である旨を通知する。なお、この通知のタイミングは、先のステップS16の通知と同様に、例えば運転者が自動車に乗り込んで、アルコール濃度検出システム1を起動させたときに通知する。これによって、運転者は、感ガスセンサ16が劣化していることを容易に把握することができ、間もなく交換する必要があることを把握することができる。
【0054】
続くステップS22では、アルコール演算ECU17が、後に算出される呼気アルコール濃度を補正するための補正係数Cとして、感ガスセンサ16の劣化度合いを示す劣化係数を算出する。ここで、実測抵抗値Bと初期抵抗値Aとの差分は、感ガスセンサ16の劣化度合いに応じた値となると考えられる。すなわち、実測抵抗値Bと初期抵抗値Aとの差分に応じた分だけ感ガスセンサ16が劣化していると考えることができる。図9(a)は、正常な感ガスセンサ16におけるアルコール濃度Xと抵抗値Rとの対応関係61が、劣化すると対応関係63に変化することを示した図である。図9(a)に示すように、感ガスセンサ16は、大気(アルコール濃度x3)と反応すると、正常なときには抵抗値A(初期抵抗値)を示すが、劣化すると抵抗値B(実測抵抗値)を示すようになる。これは、対応関係61が対応関係63に変化したことを意味している。また、対応関係63は、対応関係61に対して抵抗値Bと抵抗値Aとの差分に応じた分だけ変化したものである。そこで、ステップS22では、実測抵抗値Bと初期抵抗値Aとの差分を算出して、その差分に所定係数を乗算することにより、上記劣化係数Cを算出する。なお、ステップS22を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「劣化係数算出手段」に相当する。
【0055】
そしてステップS18で、図示しない測定開始スイッチが操作された場合には(S18:YES)、ステップS19で、アルコール演算ECU17が、呼気アルコール濃度Xを算出する。すなわち、ファン12を駆動して運転者の呼気を測定ユニット10に取り込んで、呼気を感ガスセンサ16に接触させる。そして、検出回路19で計測された感ガスセンサ16の抵抗値Rを取得して、その抵抗値RとROM171に記憶されている対応関係61とに基づいて、呼気アルコール濃度X’を仮に算出する。さらに、仮に算出した呼気アルコール濃度X’に、ステップS17で決定した補正係数C(=劣化係数)を乗算して、最終的な呼気アルコール濃度Xを算出する。すなわち、正常な感ガスセンサ16から算出された呼気アルコール濃度Xに近づく方向に補正係数C(=劣化係数)に応じた量だけ呼気アルコール濃度X’を補正する。これによって、感ガスセンサ16が劣化していたとしても、正確な呼気アルコール濃度Xを検出することができる。なお、ステップS19を実行するアルコール演算ECU17が本発明の「アルコール濃度補正手段」に相当する。
【0056】
なお、このステップS19の処理は、図9(b)に示すように、ROM171に記憶されている対応関係61を劣化係数Cに応じた対応関係63に補正することと同義である。
【0057】
そして、ステップS19において、算出した呼気アルコール濃度Xが所定の基準値よりも大きい場合には、車両駆動系制御ユニット20が自動車を走行不能にして飲酒運転をさせないようし、呼気アルコール濃度Xが所定の基準値よりも小さい場合には運転操作を許容する。
【0058】
その後、ステップS12の処理に戻る。この場合、次の劣化判断時期になったときに、再度、大気アルコール濃度に相当する実測抵抗値Bを測定して、感ガスセンサ16が劣化しているか否かを判断することになる(S12〜S20)。ここで、図8に示すように、経過時間tがさらに経過すると、劣化がさらに進行し、実測抵抗値Bがさらに大きくなる。そして、(3)実測抵抗値Bが、第一劣化範囲(A±βの範囲)外の第二劣化範囲(A−β>B、A+β<B)になった場合には、ステップS20で否定判断がなされ、処理をステップS23に進める。この第二劣化範囲は、感ガスセンサ16の劣化の進行度合いが上記第一段階よりも進行した第二段階に対応した範囲である。
【0059】
この場合、呼気アルコール濃度X‘を補正しても正確な呼気アルコール濃度Xを検出できない可能性がある。そこで、この場合には、ステップS23で、車両駆動系制御ユニット20が、ディスプレイ30に感ガスセンサ16の交換が直ちに必要である旨を表示して運転者に通知する。なお、この通知のタイミングは、先のステップS16、S21の通知と同様に、例えば運転者が自動車に乗り込んで、アルコール濃度検出システム1を起動させたときに通知する。これによって、運転者は、感ガスセンサ16が劣化していることを容易に把握することができ、直ちに交換する必要があることを把握することができる。したがって、運転者は、ディーラ等で感ガスセンサ16を他の感ガスセンサに交換するとともに、交換後の感ガスセンサの特性が反映された対応関係が記憶されたROM171に交換することができる。その後、ステップS12の処理に戻り、上記処理が繰り返し実行される。
【0060】
なお、本発明のアルコール濃度検出システムは上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、感ガスセンサ16の劣化の進行度合いに応じて、呼気アルコール濃度Xを補正して算出する方法(S19)と、感ガスセンサ16を直ちに交換する必要がある旨を通知する方法(S23)とのどちらかを実行していたが、劣化の進行度合いにかかわらず一方のみを実行してもよい。すなわち、感ガスセンサ16が劣化していると判断した場合(S15:NO)、以後、補正係数Cを算出して、その補正係数Cに基づいて、呼気アルコール濃度Xを補正して算出する。又は、感ガスセンサ16が劣化していると判断した場合(S15:NO)、以後、感ガスセンサ16を直ちに交換する必要がある旨を通知する。
【0061】
また、上記実施形態では、感ガスセンサ16の劣化を判断する時期として、感ガスセンサ16を加熱して水蒸気を除去するタイミングとしていた(S12)。しかし、運転者が運転する前であれば、どの時期で感ガスセンサ16の劣化を判断してもよい。例えば、業務用の車両のように、毎日午前8時に使用する等、自動車を使用する時期が毎日決まっている場合には、その使用時期を基準にして、予め定められた時間前のタイミング(例えば使用時期の1時間前)で、感ガスセンサ16の劣化を判断してもよい。この場合、例えば、運転者がその使用時期を設定できるようにし、または、劣化を判断する時期を設定できるようにしてもよい。これにより、運転者がその使用時期に運転する限りにおいては、運転者が使用する前に予め感ガスセンサ16が劣化しているか否かを確実に判断できる。
【0062】
また、上記実施形態では、感ガスセンサ16の交換が必要である旨の通知をディスプレイ30で行っていたが、他の手段でその通知を行ってもよい。例えば、測定ユニット10にディスプレイを設けて、そのディスプレイで通知を行ったり、運転者の携帯電話やパソコンでその通知を行ったりしてもよい。この場合、運転者の携帯電話の電話番号やメールアドレス、パソコンのメールアドレスを予め記憶しておき、その電話番号やメールアドレスに基づいて通知する。また、音声で通知してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、感ガスセンサ16の交換が必要である旨の通知を、車両駆動系制御ユニット20が実行していたが、アルコール演算ECU17が実行してもよいのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1 アルコール濃度検出システム
10 測定ユニット
12 ファン
16 感ガスセンサ
17 アルコール演算ECU
171 ROM
18S 電源回路
18C コイル
19 検出回路(センサ物性計測手段)
20 車両駆動系制御ユニット
30 ディスプレイ(交換通知手段)
S11 初期値取得手段
S12 時期判断手段
S13 ファン駆動制御手段
S14 大気アルコール濃度算出手段
S15 劣化有無判断手段
S19 呼気アルコール濃度算出手段、アルコール濃度補正手段
S20 劣化度合い判断手段
S22 劣化係数算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被験者の呼気に含まれているアルコールに反応して、そのアルコール濃度に応じた物性を示す感ガスセンサを含む測定ユニットと、
その感ガスセンサの物性であるセンサ物性を計測するセンサ物性計測手段と、
そのセンサ物性計測手段によって計測された前記センサ物性に基づいて、被験者の呼気に含まれているアルコール濃度を呼気アルコール濃度として算出する呼気アルコール濃度算出手段と、を備えるアルコール濃度検出システムにおいて、
大気を前記測定ユニットに取り込む大気取込手段と、
その大気取込手段によって大気が取り込まれたときに前記センサ物性計測手段によって計測された前記センサ物性に基づいて、その大気に含まれているアルコール濃度を大気アルコール濃度として算出する大気アルコール濃度算出手段と、
その大気アルコール濃度算出手段によって算出された前記大気アルコール濃度が、所定の許容範囲に含まれているか否かを判断することによって、前記感ガスセンサが劣化しているか否かを判断する劣化有無判断手段と、を備えることを特徴とするアルコール濃度検出システム。
【請求項2】
被験者が前記アルコール濃度検出システムを使用する前の、前記感ガスセンサの劣化を判断する時期として予め定められた劣化判断時期になったか否かを判断する時期判断手段を備え、
その時期判断手段によって前記劣化判断時期になった場合に、前記大気取込手段、前記大気アルコール濃度算出手段及び前記劣化有無判断手段に基づいて、前記感ガススセンサが劣化しているか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項3】
前記劣化有無判断手段によって、前記感ガスセンサが劣化していると判断された場合に、前記感ガスセンサの交換が必要である旨をユーザに通知する交換通知手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項4】
正常な感ガスセンサから算出された大気アルコール濃度を初期値として取得する初期値取得手段と、
前記劣化有無判断手段によって、前記感ガスセンサが劣化していると判断された場合に、前記大気アルコール濃度算出手段が算出する大気アルコール濃度を測定値としたときに、その測定値と前記初期値との差分に基づいて、前記感ガスセンサの劣化度合いを示す劣化係数を算出する劣化係数算出手段と、
前記呼気アルコール濃度算出手段によって算出された前記呼気アルコール濃度を、正常な感ガスセンサから算出された前記呼気アルコール濃度に近づく方向に前記劣化係数に応じた量だけ補正するアルコール濃度補正手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項5】
前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが初期の第一段階に対応した、前記許容範囲外の一部の範囲である第一劣化範囲と、
前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが前記第一段階よりも進行した第二段階に対応した、前記許容範囲外でかつ前記第一劣化範囲外の範囲である第二劣化範囲と、が定められ、
前記劣化有無判断手段は、算出された前記大気アルコール濃度が、前記許容範囲に含まれない場合に、前記第一劣化範囲と前記第二劣化範囲のどちらに含まれているかを判断することによって、前記感ガスセンサの劣化の進行度合いが前記第一段階と前記第二段階のどちらであるかを判断する劣化度合い判断手段を備え、
正常な感ガスセンサから算出された大気アルコール濃度を初期値として取得する初期値取得手段と、
前記大気アルコール濃度算出手段が算出する大気アルコール濃度を測定値としたときに、その測定値と前記初期値との差分に基づいて、前記感ガスセンサの劣化度合いを示す劣化係数を算出する劣化係数算出手段と、
前記劣化度合い判断手段によって前記第一段階であることを判断された場合に、前記呼気アルコール濃度算出手段によって算出された前記呼気アルコール濃度を、正常な感ガスセンサから算出された前記呼気アルコール濃度に近づく方向に前記劣化係数に応じた量だけ補正するアルコール濃度補正手段と、
前記劣化度合い判断手段によって前記第二段階であることを判断された場合に、前記感ガスセンサの交換が必要である旨をユーザに通知する交換通知手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項6】
前記感ガスセンサに付着した水蒸気を除去するために、前記感ガスセンサを加熱する加熱手段を備え、
前記劣化判断時期は、前記加熱手段によって前記感ガスセンサが加熱されて、前記感ガスセンサに付着した水蒸気を除去するタイミングであることを特徴とする請求項2に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項7】
前記劣化判断時期は、被験者が毎日、前記アルコール濃度検出システムを使用する時期として予め定められた使用時期を基準にして、予め定められた時間前のタイミングであることを特徴とする請求項2に記載のアルコール濃度検出システム。
【請求項8】
前記大気取込手段は、
前記測定ユニットに設けられ、大気を前記測定ユニットに取り込むファンと、
そのファンを駆動制御するファン駆動制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルコール濃度検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−27676(P2011−27676A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176183(P2009−176183)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】