説明

アレルギー性疾患を処置するための局所処方物

三環系化合物を使用して、眼、耳または鼻のアレルギー性疾患を局所処置するための方法が開示される。この方法は眼、耳または鼻に処方物を局所投与する工程に特徴を有し、この処方物は、治療有効量の式I、式IIおよび式IIIの三環系化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む。式I、式IIおよび式IIIの化合物は、抗ヒスタミン活性とマスト細胞安定化活性とを有する。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季カタルおよび巨大乳頭性結膜炎からなる群より選択されるアレルギー性眼疾患を処置するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、アレルギー性疾患を処置するために使用される局所処方物に関する。より詳細には、本発明は、眼、耳または鼻のアレルギー性疾患を処置するための特定の三環系化合物の局所使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
特許文献1および特許文献2(両方ともBurroughs Wellcome Co.(「Burroughs Wellcome Patents」)に譲渡された)に教示されるように、ドキセピンの特定のカルボン酸誘導体(11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンズ[b,e]オキセピン−2−カルボン酸および11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンズ[b,e]オキセピン−2(E)−アクリル酸が挙げられる)は、抗ヒスタミン活性および喘息鎮静活性を有する。これらの2つの特許は、抗ヒスタミン作用を有するマスト細胞安定薬として、これらのドキセピンのカルボン酸誘導体を分類する。なぜなら、これらは、マスト細胞からのオータコイド(すなわち、ヒスタミンまたはセロトニンなど)の放出を阻害し、そして標的組織へのヒスタミンの影響を直接阻害すると考えられているからである。Burroughs Wellcome Patentsは、ドキセピンのカルボン酸誘導体を含む種々の薬学的処方物を教示する。両方の特許における実施例8(I)は、点眼剤処方物を開示する。
【0003】
特許文献3は、特定のジベンズ[b,e,]オキセピン誘導体(以下の化合物:
【0004】
【化11】

(すなわち、Z−11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンズ[b,e]オキセピン−2−酢酸)が挙げられる)が抗アレルギー活性および抗炎症性活性を有することを開示する。ドキセピンの酢酸誘導体についてのKyowa特許により教示される医薬形態は広範な受容可能なキャリアを含むが、経口投与形態および注射投与形態のみが言及される。アレルギー性眼疾患(例えば、アレルギー性結膜炎)の処置において、このような投与方法は、大量の用量の医薬を必要とする。
【0005】
特許文献4は、11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンズ[b,e]オキセピン−2−酢酸およびその塩がアレルギー性眼疾患の局所処置において有用であることを開示する。
【0006】
必要とされるものは、眼、耳または鼻への局所的な使用に適しており、そして抗ヒスタミン活性とマスト細胞安定化活性との両方を有するさらなる化合物である。
【特許文献1】米国特許第4,871,865号明細書
【特許文献2】米国特許第4,923,892号明細書
【特許文献3】米国特許第5,116,863号明細書
【特許文献4】米国特許第5,461,805号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、アレルギー性疾患を処置するための方法を提供し、この方法は眼、耳または鼻に処方物を局所投与する工程に特徴を有し、この処方物は、治療有効量の式I、式IIおよび式IIIの三環系化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む。式I、式IIおよび式IIIの化合物は、抗ヒスタミン活性とマスト細胞安定化活性とを有する。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季カタルおよび巨大乳頭性結膜炎からなる群より選択されるアレルギー性眼疾患を処置するために使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法において有用な三環系化合物は、以下の式I、式IIおよび式IIIにより規定される:
【0009】
【化12】

ここで、
Y、Yは、CHであり、
Xは、−CH−O−であり、
Zは、−CH=CH−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがCHまたはNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCである場合、Bは、CH−CHCH−Yまたは
【0010】
【化13】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【0011】
【化14】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Dは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、直接結合であり、
nは、1〜6であり、
は、NHC(O)R、NHS(O)、OC(O)NR、NHC(O)NRであり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり;
【0012】
【化15】

ここで、
Y、Yは、CH、Nであり、
Xは、−CH−CH−、−CH=CH−、CH−S−、
【0013】
【化16】

であり、
Zは、−CH−CH−、−S−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがCHまたはNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCである場合、Bは、CH−CHCH−Yまたは
【0014】
【化17】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【0015】
【化18】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Yは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、O、直接結合であり、
nは、1〜6であり、ただし、XがOである場合、nは、2〜6であり、
は、H、OH、OR、OC(O)R、NHC(O)R、NHS(O)、OC(O)NR、NHC(O)NR、C(O)NRであり、ここで、
、Rは、H、C1−4アルキルであり、
、Rは、H、C1−4アルキル、OH、OCHであり、ただし、RとRとの一方のみが、OHまたはOCHであり得;
【0016】
【化19】

ここで、
Y、Yは、CH、Nであり、ただし、YとYとの少なくとも一方がNであり、
Xは、CH−Oであり、
Zは、−CH−CH−、−S−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCHである場合、Bは、
【0017】
【化20】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【0018】
【化21】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Yは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、O、直接結合であり、
nは、1〜6であり、ただし、XがOである場合、nは、2〜6であり、
は、H、OH、OR、OC(O)R、NHC(O)R、NHS(O)、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)NR、C(O)NRであり、ここで、
、Rは、H、C1−4アルキルであり、そして
、Rは、H、C1−4アルキル、OH、OCHであり、ただし、RとRとの一方のみが、OHまたはOCHであり得る。
【0019】
本発明の方法にしたがって、式I、式IIもしくは式IIIの化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、眼に局所投与される。式I、式IIおよび式IIIの化合物の薬学的に受容可能な塩の例としては、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩およびリン酸塩)、有機酸塩(例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩およびクエン酸塩)、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩およびカルシウム塩)、金属塩(例えば、アルミニウム塩および亜鉛塩)および有機アミン付加塩(例えば、トリエチルアミン付加塩(トロメタミンとしても公知)、モルホリン付加塩およびピペリジン付加塩)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
式(I)〜(III)の化合物が1つ以上のキラル中心を含み得ることが認識される。本発明は、全てのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびそれらの混合物を意図する。上記の定義において、置換基中の炭素原子の総数は、C−C接頭語により示され、ここで数iおよびjは、炭素原子の数を規定し、この定義は、直鎖アルキル基または(環状アルキル)直鎖アルキル基、分枝アルキル基または(環状アルキル)分枝アルキル基、および環状アルキル基または(環状アルキル)環状アルキル基を含む。
【0021】
上記の式で同定される置換基は、示される構造単位に取り込まれる場合に、単数または複数のいずれかで存在し得る。
【0022】
以下の実施例は、本発明の異なる局面と実施形態とを示すために提供される。これらの実施例は、開示される発明を決して制限しないことが意図される。以下の略語が、実施例において使用されている:DCE−ジクロロエタン、DCM−ジクロロメタン、EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩、EtOAc−酢酸エチル、HOBT−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物、MeOH−メタノール、THE−テトラヒドロフラン。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
((S)−2−{11−E3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]−オキセピン−2−イル}−N−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)アセトアミドフマル酸塩)
(S)−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−N−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)アセトアミドフマル酸塩を、複数工程の反応手順により調製した。
【0024】
({11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−酢酸メチルエステル)
塩酸オロパタジン[(0.25g、0.67mmol)]を、メタノール(10mL)中に溶解させ、23℃で過剰量の塩化アセチル(0.2g、2.5mmol)で処理した。この溶液を2時間攪拌し、その後、希NaHCO水溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。それからNaSOで乾燥させ、濾過し濃縮した。粗生成物を、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー[溶離液:メタノール/DCM勾配(5%〜20%)]により精製し、94%の収率で{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−酢酸メチルエステル(0.22g、0.63mmol)を得た。質量スペクトル:m/z 352[M+H]
【0025】
【化22】

((S)−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−N−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)アセトアミドフマル酸塩)
封をしたチューブ内で、{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−酢酸メチルエステル(0.22g、0.63mmol)をTHF(5mL)に溶解させ、(S)−テトラヒドロフルフリルアミン(1g、9.9mmol)を添加した。この溶液を、20.5時間、100℃に加熱し、その後23℃へ冷却して、希NaHCO水溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。それからNaSOで乾燥させ、濾過し濃縮した。粗生成物を、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー[溶離液:メタノール/DCM勾配(5%〜10%)]により精製し、80%の収率で(S)−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−N−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)アセトアミド(0.21g、0.5mmol)を得た。精製したアミドをメタノール中に溶解させ、フマル酸(0.058g、0.5mmol)を添加した。この溶液を減圧下で濃縮し、(S)−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−N−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)アセトアミドフマル酸塩を得た。質量スペクトル:m/z 421[M+H]
【0026】
【化23】

(実施例2)
(1−[4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−エタノンフマル酸塩)
塩酸オロパタジン(0.26g、0.7mmol)、HOBT(0.12g、0.9mmol)、4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン(0.16g、0.8mmol)およびトリエチルアミンを、THF(20mL)中に溶解させた。この溶液にEDCI(0.15g、0.79mmol)を添加し、23℃で16時間攪拌して、希NaHCO水溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。それからNaSOで乾燥させ、濾過し濃縮した。粗生成物を、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー[溶離液:メタノール/DCM(20%)]により精製し、99%の収率で1−[4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−エタノン(0.37g、0.7mmol)を得た。精製したアミド(0.10g、0.2mmol)をメタノール(5mL)中に溶解させ、フマル酸(0.023g、0.2mmol)を添加した。この溶液を減圧下で濃縮し、1−[4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−エタノンフマル酸塩を得た。質量スペクトル:m/z 505[M+H]
【0027】
【化24】

以下の実施例2〜6を、実施例1および2と同様な様式で調製した。
【0028】
(実施例3)
(2−[11Z−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]アセトアミド)
質量スペクトル:m/z 337[M+H]
【0029】
【化25】

(実施例4)
(2−[11Z−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]−N−メチルアセトアミド)
質量スペクトル:m/z 351[M+H]
【0030】
【化26】

(実施例5)
(2−[11Z−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]−N−(2−ヒドロキシエチル)アセトアミド)
質量スペクトル:m/z 381[M+H]
【0031】
【化27】

(実施例6)
(2−[11Z−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]−N,N−ジメチルアセトアミド)
質量スペクトル:m/z 365[M+H]
【0032】
【化28】

(実施例7)
({3−[2−{2−[4−{2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−エチル}−6H−6,11−ジベンズ[b,e]オキセピン−(11Z)−イリデン]−プロピル}−ジメチルアミンフマル酸塩)
1−[4−(2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−2−{11−[3−ジメチルアミノ−プロプ−(Z)−イリデン]−6,11−ジヒドロ−ジベンズ[b,e]オキセピン−2−イル}−エタノン(0.37g、0.74mmol)をエーテル(20mL)中に溶解させ、この溶液を氷浴により0℃へ冷却し、LAH/THF(1M、3.0mL、3.0mmol)を添加した。この溶液を加熱して、17時間還流した。その後、この溶液を23℃へ冷却し、メタノール(1mL)、50% NaOH水溶液(0.1mL)およびエーテル(5mL)を注意深く添加することによりクエンチし、濾過し濃縮した。粗生成物を、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィー[溶離液:メタノール/DCM勾配(20%〜20%+2%TEA)]により精製し、58%の収率でアミン(0.21g、0.43mmol)を得た。精製したアミンをメタノール中に溶解させ、フマル酸(0.05g、0.43mmol)を添加した。この溶液を減圧下で濃縮し、{3−[2−{2−[4−{2−ジエチルアミノ−エチル)−ピペリジン−1−イル]−エチル}−6H−6,11−ジベンズ[b,e]オキセピン−(11Z)−イリデン]−プロピル}−ジメチルアミンフマル酸塩(AL−43437A)(融点=65℃〜67℃)を得た。質量スペクトル:m/z 490[M+H]
【0033】
【化29】

燃焼分析:C3247O・1.2C・4HOについての計算値:C 63.04;H 8.60;N 5.99、実測値:C 63.36;H 8.24;N 6.05。
【0034】
以下の実施例を、実施例7と同様な様式で調製した。
【0035】
(実施例8)
({3−[2−(2−アミノエチル)−6H−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン]プロピル}−ジメチルアミン)
質量スペクトル:m/z 322[M+H]
【0036】
【化30】

(実施例9)
(N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロプ−(Z)−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}−メタンスルホンアミド)
{3−[2−(2−アミノエチル)−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン]プロピル}ジメチルアミン(85mg、0.26mmol)のDCM溶液(3mL)に、トリエチルアミン(50μL、0.39mmol)を室温で添加した。生じた混合物を0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(20μL、0.29mmol)を滴下して処理した。生じた混合物を0℃で15分間攪拌し、これをTLC[EtOAc/MeOH(1:1)]で分析して、完了したとみなした。
【0037】
反応混合物を濃縮し、残渣を水(20mL)とEtOAc(15mL)との間に分配した。水相を、EtOAc(3×15mL)でさらに抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄し、その後MgSOにより乾燥させ、橙色の固体に濃縮した。この物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーに供し、EtOAc〜EtOAc/MeOH(1:1)で溶出して、N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}−メタンスルホンアミドを黄色固体(42mg、40%)として得た。HPLC分析により、90.1%(AUC)を示した。
質量スペクトル:m/z 401[M+H]
【0038】
【化31】

以下の実施例を、実施例9と同様な様式で調製した。
【0039】
(実施例10)
(N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロプ−(Z)−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}−アセトアミド)
質量スペクトル:m/z 366[M+H]
【0040】
【化32】

(実施例11)
([11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−イルオキシ]酢酸塩酸塩)
[11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−イルオキシ]酢酸塩酸塩を、以下に概説される複数工程の反応手順により調製した。
【0041】
【化33】

(2−ブロモメチル安息香酸)
200Wタングステンランプを照射しながら、o−トルイル酸(15.0g、110.3mmol)のCCl溶液(150mL)を温めて還流し、Br(17.6g、110.3mmol)のCCl溶液(150mL)で処理した。臭素の添加の間、それにより淡い橙色が観察された。添加の間、激しい還流および臭化水素の発生も観察された。
【0042】
添加の終わりに、無色の懸濁物が観察され、取り外す前に、さらに5分間、加熱と照射とを続けた。混合物のTLC分析[ヘキサン/EtOAc(1:1)]により、出発物質が残留していないことが示された。この溶液を65℃へ冷却して、n−ヘキサンで処理し、その後室温まで冷却した。沈殿した固体を濾過で取り除き、n−ヘキサンで洗浄し、そして真空オーブンにより40℃(−30inHg)で乾燥させた。これにより、所望の2−ブロモメチル安息香酸を無色の固体(20.0g、84%)として得、さらなる精製を必要とすることなく、続く工程においてこれを使用するのに十分純粋(NMR分析)であるとみなした。
【0043】
(2−ブロモメチルベンゾイルクロライド)
2−ブロモメチル安息香酸(20.0g、93.0mmol)を、塩化チオニル(110.7g、68mL、930.0mmol)に溶解させ、還流下で3時間加熱し、GC/MS分析(反応混合物のアリコートを過剰なメタノールに添加し、還流下で5分間加熱することにより、メチルエステルに誘導体化させる)により完了したとみなした。過剰な塩化チオニルを減圧蒸留により除去し、そして粗生成物を減圧下(10mmHg)でさらに乾燥させ、所望の2−ブロモメチルベンゾイルクロライドを淡黄色の固体(21.67g、100%)として得た。続く操作において、これをこのまま使用した。
【0044】
((2−ブロモメチルフェニル)−(2,5−ジメトキシフェニル)メタノン)
2−ブロモメチルベンゾイルクロライド(21.67g、93.0mmol)の1,2−ジクロロエタン(DCE)溶液(900mL)を、0℃でDCE(900mL)中のAlCl(12.4g、93.0mmol)懸濁物に滴下した。わずかな発熱(5℃)が観察され、添加の間、内部の温度を0℃〜5℃の範囲に維持した。生じた淡黄色の溶液を0℃で15分間攪拌し、それから1,4−ジメトキシベンゼン(12.83g、93.0mmol)を滴下して処理し、再び添加の速度により0℃〜5℃に維持した。添加の間に、溶液は暗緑色になり、生じた混合物を12時間の期間にわたり15℃に温めた。TLC分析[ヘキサン/EtOAc(4:1)]により、反応が完了したことが示された。
【0045】
反応混合物を氷水(1.8L)に注ぎ、有機相を分離した。さらに、水相をDCM(3×1.0L)により抽出し、合わせた有機質をNaSOにより乾燥させ、そして濃縮して約1.0Lの残留体積にした。(2−ブロモメチルフェニル)−(2,5−ジメトキシフェニル)メタノンのこの溶液を、次の工程でこのまま使用した[注記:粗製物質は室温中に置くと分解するようであり、シリカゲルクロマトグラフィーに対し不安定であることが見出された]。
【0046】
((2−ブロモメチルフェニル)−(2,5−ジヒドロキシフェニル)メタノン)
DCE(1.0L)中の(2−ブロモメチルフェニル)−(2,5−ジメトキシフェニル)メタノン[31.2g、93.0mmol(先の工程から100%と想定した)]をDCM(500mL)により希釈し、0℃へ冷却した。0℃〜5℃に維持しながら、この暗緑色の溶液に三臭化ホウ素(66.0g、26.0mL、0.26mol、2.8等量)を滴下して処理した(適切な換気が必要であり、そして反応は発熱性である)。添加の間、溶液は暗赤色になり、3時間より長くかけて、この溶液を攪拌して室温まで暖めた。この時点で、TLC分析[ヘキサン/EtOAc(4:1)]により、反応が完了したことが示された。
【0047】
メタノール(約10mLまたは反応が停止するまで)を添加することにより、反応混合物を注意深くクエンチし、それから濃縮して赤色固体にした。この固体を水(1.0L)とDCM(1.0L)との間に分配した。さらに、水相をDCM(2×1.0L)により抽出し、合わせた有機抽出物をNaSO(注記:MgSOを乾燥剤として使用した場合、暗赤色から暗褐色への変色が観察された)により乾燥させ、濃縮して赤色の油状物(27.8g、97%)にした。さらに精製することなく、続く操作にこれを使用した[注記:粗製物質は室温中に置くと分解するようであり、シリカゲルクロマトグラフィーに対し不安定であることが見出された]。
【0048】
(2−ヒドロキシ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−オン)
(2−ブロモメチルフェニル)−(2,5−ジヒドロキシフェニル)メタノン (27.8g、90.5mmol)のMeCN溶液(2.0L)を微細粉末状のKCO(25.0g、181.0mmol)により処理し、生じた懸濁物を室温で18時間攪拌し、TLC分析[ヘキサン/EtOAc(4:1)]により完了したとみなした。
【0049】
反応混合物を水(1.0L)で希釈し、1N HClを添加することにより、pH約3〜4へ酸性化した。それから、この混合物をEtOAc(3×1.5L)で抽出し、合わせた有機抽出物をNaSOにより乾燥させ、濃縮して褐色の固体にした。この固体をフラッシュカラムクロマトグラフィーに供し、ヘキサン/EtOAc(2:1)で溶出して、2−ヒドロキシ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−オンを黄色の固体として得た(9.2g、35%)。
【0050】
(11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−11−ジオール)
THF(30mL)中の2−ヒドロキシ−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−オン(1.0g、4.42mmol)を、0℃で1−メチルピペリジン−4−マグネシウムクロライド(0.79M、11.8mL、9.3mmol)の溶液により処理した。生じた橙色の溶液を0℃で1時間攪拌し、TLC分析[ヘキサン/EtOAc(1:1)]により完了したとみなした。
【0051】
飽和NHCl水溶液(10mL)を添加することにより、反応混合物をクエンチし、EtOAc(50mL)と水(30mL)との間に分配した。さらに、水相をEtOAc(3×50mL)により抽出し、合わせた有機抽出物をNaSOにより乾燥させ、濃縮して橙色の油状物にした。この油状物をEtOAcで粉砕し、11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−11−ジオールを褐色の固体(715mg、50%)として得た。これは、TLC分析およびNMR分析により均質であった。
【0052】
[グリニャール溶液を、THF(1mL/g)中のN−メチル−4−クロロピペリジン(1.0等量、遊離塩基のみ)および新しいMgの削り屑(turnings)(1.1等量)から調製した。この混合物をヨウ素結晶で処理し、還流下で12〜24時間加熱して、乳状懸濁物を形成させた]。
【0053】
([11−ヒドロキシ−11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステル)
DMF(6mL)中の11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−11−ジオール(563mg、1.73mmol)を微細粉末状のKCO(478mg、3.46mmol)、次にブロモ酢酸tert−ブチル(372mg,282μL、1.91mmol)により処理し、生じた混合物を室温で14時間攪拌し、TLC分析[DCM/MeOH(92:8)]により完了したとみなした。
【0054】
飽和NaCl水溶液(3mL)を加え、その結果オフホワイトの沈殿物を形成させた。これを濾過により集め、水およびn−ヘプタンで洗浄し、それから真空オーブンにより30℃(−30inHg)で乾燥させて、[11−ヒドロキシ−11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステルをオフホワイトの泡(765mg、101%)として得た。NMR分析により、再結晶またはカラムクロマトグラフィーのいずれによっても除去できないことが見出された単一の不純物(全量のうちの10%〜15%)が示された。
【0055】
([11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステル)
[11−ヒドロキシ−11−(1−メチルピペリジン−4−イル)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステル(760mg、1.73mmol)を無水酢酸(4mL)中に溶解させ、生じた橙色の溶液を80℃で48時間攪拌し、TLC分析[DCM/MeOH(8:2)]により完了したとみなした。
【0056】
揮発性物質を真空下で除去し、生じた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーに供し、DCM/MeOH(97:3)で溶出して、[11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステルを橙色の油状物(425mg、58%)として得た。
【0057】
([11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸塩酸塩)
[11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸tert−ブチルエステル(310mg、0.736mmol)を6N塩酸水溶液(5mL)中に溶解させ、50℃で1時間加熱した。TLC分析[DCM/MeOH(97:3)]により、出発物質が残留していないことが示された。
【0058】
反応混合物を濃縮して、褐色の固体にした。この固体をメタノール/アセトンから再結晶し、[11−(1−メチルピペリジン−4−イリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イルオキシ]酢酸塩酸塩を黄褐色の固体(96mg、33%)として得た。質量スペクトル:m/z 366[M+H]
【0059】
【化34】

(N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}メタンスルホンアミドの合成)
【0060】
【化35】

{3−[2−(2−アミノエチル)−6H−ジベンゾ[b,e]オキセピン−11−イリデン]プロピル}ジメチルアミン(85mg、0.26mmol)のDCM溶液(3mL)に、室温でトリエチルアミン(50μL、0.39mmol)を添加した。生じた混合物を0℃へ冷却し、塩化メタンスルホニル(20μL、0.29mmol)を滴下して処理した。生じた混合物を0℃で15分間攪拌し、TLC分析[EtOAc/MeOH(1:1)]により完了したとみなした。
【0061】
反応混合物を濃縮し、残渣を水(20mL)とEtOAc(15mL)との間に分配した。さらに、水相をEtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、飽和NaCl水溶液(20mL)で洗浄し、その後MgSOにより乾燥させ、濃縮して橙色の固体にした。この物質をフラッシュカラムクロマトグラフィーに供し、EtOAc〜EtOAc/MeOH(1:1)で溶出して、N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}メタンスルホンアミドを黄色固体(42mg、40%)として得た。HPLC分析により、90.1%(AUC)を示した。
質量スペクトル:m/z 401[M+H]
【0062】
【化36】

(N−{2−[11−(3−ジメチルアミノプロピリデン)−6,11−ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン−2−イル]エチル}メタンスルホンアミドの合成)
質量スペクトル:m/z 366[M+H]
【0063】
【化37】

(実施例12)
(放射性リガンド結合研究およびヒスタミン研究)
ヒスタミンレセプター結合を、洗浄したげっ歯類脳ホモジネートにより行った。簡潔に述べると、Pel−Freez(Rogers、AR)から得たモルモット前脳(H1レセプターおよびH2レセプターに対して)およびラット前脳(H3レセプターに対して)を、Polytron組織破砕機(設定:5〜7、10秒間)を使用して20mlの氷冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS;pH7.4)中でホモジェナイズし、Beckman J2−MC遠心分離機により40,000gで15分間遠心分離した。上清を捨て、組織ペレットを新しいPBS緩衝液中で再びホモジェナイズし、上記のように遠心分離した。最終的なペレットを50mMリン酸カリウムナトリウム(sodium potassium phosphate)緩衝液(pH7.5)中に分散させ、結合アッセイで使用するまで−40℃で凍らせて保存した。
【0064】
H1ヒスタミンレセプター結合アッセイを、先に公開された方法に小改変を加えて実行した(Chang、R.S.L.、Tran、V.T.およびSnyder、S.H.、J.Neurochem.、32:1653〜1663、1979;Hill、S.J.、Young、J.M.およびMarrian、D.H.、Nature、270:361〜363、1977;Gajtkowski、G.A.、Norris、D.B.、Rising、T.J.およびWood、T.P.、Nature、304:65〜67、1983;Korte、A.、Myers、J.、Shih、N.−Y.、Egan、R.W.およびClark、M.A.、Biochem.Biophys.Res.Comm.、168:979〜986、1990)。簡潔に述べると、ポリプロピレンチューブ内で500μlの全体積で、50μlの[3H]ピリラミン(1nM〜2nM;24Ci/mmol、NEN、Boston、MAから)、50μlの[3H]チオチジン(4nM〜5nM;87Ci/mmol、NEN、Boston、MAから)または50μlの[3H]N−メチルヒスタミン(1nM〜2nM;84Ci/mmol、NEN、Boston、MAから)と2.5mg/ml〜4.0mg/mlの凍結融解させた脳ホモジネート 200μlとを、未標識試験化合物(50μl;10pM〜100μM)の存在下または非存在下でインキュベートした。非特異的結合を5mMヒスタミンにより決定した。コンピュータ制御自動化システム(Biomek;Beckman、Fullerton、CA)を使用して、薬物の希釈およびアッセイ成分の分配を実行した。これらのアッセイを23℃で40分間行い、Tomtec細胞ハーベスター(Gaithersburg、MD)を使用して0.3%ポリエチレンイミン中に事前に浸したWhatman GE/Bグラスファイバーフィルター上での迅速な濾過により、アッセイを停止させた。アッセイチューブを2×6mlの氷冷50mM TrisHCl緩衝液(pH7.4)により洗浄した。フィルターに結合した放射能を、40%〜50%の効率でWallac Beta−plate(Gaithersburg、MD)固体シンチレーションカウンターで決定した。競合結合データを、Michel、A.D.およびWhiting、R.L.、Brit.J.Pharmacol.、83:46Op、1984;Sharif、N.A.、Wong、E.H.F.、Loury、D.、Stefanich、E.、Eglen、R.M.、Michel、A.D.およびWhiting、R.L.、Brit.J.Pharmacol.、102:919〜925、1991に先に記載された反復性曲線フィッティングコンピュータプログラムを使用して分析した。薬物の親和性(解離定数、Ki)を、以下のCheng−Prussofの式(Cheng、Y.−C.およびPrusoff、W.H.、Biochem.Pharmacol、22:3099〜3018、1973)にしたがって計算した:
Ki=IC5O/(1+L/Kd)
ここでIC50はレセプター結合の50%阻害を生成するために必要とされる薬物の濃度であり、Lはアッセイにおける放射性リガンド濃度であり、そしてKdは放射性リガンドの解離定数である。
【0065】
(モルモット結膜におけるヒスタミン誘導性血管透過性)
雄性Dunkin Hartley Viral Antibody Free非近交系モルモット(Charles River Labs、Portage、MI)(250グラム〜350グラム(一群あたり6匹)に、1.0mlのEvans青色素(1.0mg/ml)を縁部耳(marginal ear)静脈により静脈内(i.v.)に注射した。色素の注射から45分後、20μlの試験化合物またはビヒクルを、各実験動物の一方の眼に局所適用した。局所薬物適用から30分後、モルモットを麻酔し、そしてヒスタミン(300ng/10μl)により結膜下に誘発させた。Yanni、J.M.、Weimer、L.K.、Glaser、R.K.、Lang、L.S.、Robertson、S.M.およびSpellman、J.M.、Int.Arch.Allergy Immunol.101:102〜106、1993により先に記載されたように、応答を定量化した。
【0066】
(ヒトc結膜マスト細胞からのヒスタミン放出)
(細胞懸濁物の調製)
単分散したヒト結膜組織マスト細胞の調製を詳述する方法およびこれらの細胞による媒介因子放出の研究は記載されている(Millerら、1996)。簡潔に述べると、ヒト結膜組織マスト細胞を、種々のアイバンクによって死後8時間以内に取得し、Optisol(登録商標)角膜保存培地中で輸送した、死後組織ドナーから単離した。0.1%ゼラチンを含むタイロード緩衝液中で、コラゲナーゼおよびヒアルロニダーゼへ反復して暴露(組織1gあたり各々200Uで2回、次に各組織1gあたり組織1gあたり各々2000Uで2〜4回)(37℃で30分間)することにより、組織を酵素消化した。各々の消化混合物をNitex(登録商標)クロス(100μmメッシュ)により濾過し、同体積の緩衝液で洗浄した。濾液を825×g(7分間)遠心分離した。ペレットを緩衝液中で再懸濁し、次に1.058g/L Percoll(登録商標)クッションで富化するためにペレットを合わせた。富化したペレットを洗浄し、そして37℃での平衡化のために補充したRPMI1640培地中で再懸濁した。
【0067】
細胞を培養プレートから集め、生存度(トリパンブルー排除)およびマスト細胞数(トルイジンブルーO)を計測した。マスト細胞(1チューブあたり5000個;最終体積1mL)を、37℃で15分間、ヤギ−抗ヒトIgE(10μg/mL)により誘発し、次に試験薬物またはタイロード緩衝液により処理した(1分間または15分間;37℃)。全放出のコントロールおよび非特異的放出のコントロールを、それぞれ0.1%Triton X−100およびヤギIgG(10μg/mL)に暴露させた。反応を遠心分離(500×g、4℃、10分間)により停止させた。RIA(Miller、S.ら、Ocular Immunology and Inflammation 4(1):39〜49(1996))によりヒスタミン含有量を分析するまで、上清を−20℃で保存した。
【0068】
結果を以下の表1に報告する。
【0069】
【化38】

【0070】
【化39】

本発明の三環系化合物は、従来の局所処方物(例えば、眼および耳のための溶液、懸濁物もしくはゲル、鼻用スプレーまたは鼻のための霧)により局所投与(すなわち、局所送達、器官特異的送達)され得る。本発明の処方物内の式I、式IIまたは式IIIの三環系化合物の濃度は、選択される投与経路および投薬形態に依存するが、一般的に0.00001重量%〜5重量%、好ましくは0.001重量%〜5重量%の範囲である。眼への局所投与のために意図される溶液のために、式I、式IIまたは式IIIの三環系化合物の濃度は、好ましくは0.0001重量%〜0.2重量%、そして最も好ましくは0.01重量%〜0.2重量%である。本発明の局所組成物は、従来技術にしたがって調製され、そして式I、式IIまたは式IIIの1つ以上の三環系化合物に加えて従来の賦形剤を含む。眼用点滴薬の組成物を調製する一般的方法は以下に記載される。
【0071】
式I、式IIまたは式IIIの1つ以上の三環系化合物と張度調整剤とは、滅菌精製水かつ所望されるかまたは必要とされる場合に1つ以上の賦形剤に添加される。張度調整剤は、最終的な組成物が眼科的に受容可能な浸透圧(一般的に約150mOsm〜450mOsm、好ましくは250mOsm〜350mOsm)を有することをもたらすのに十分な量で存在する。従来の賦形剤としては、保存剤、緩衝化剤、キレート化剤または安定化剤、粘度増大剤およびその他のものが挙げられる。選択される成分は均質になるまで混合される。溶液の混合後、局所眼用使用に適する範囲内、好ましくはpH4.5〜8の範囲内になるように、pHが(代表的にNaOHまたはHClにより)調整される。
【0072】
多くの眼科的に受容可能な賦形剤が公知であり、これらとしては、例えば、塩化ナトリウム、マンニトールまたはグリセリンなどのような張度調整剤;塩化ベンザルコニウムまたはポリクオタニウム−1などのような保存剤;リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムまたはホウ酸などのような緩衝化剤;エデト酸二ナトリウムなどのようなキレート化剤または安定化剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸または多糖類などのような粘度増大剤;ならびに水酸化ナトリウムまたは塩酸などのようなpH制御剤が挙げられる。
【0073】
本発明にしたがって、式I、式IIおよび式IIIの三環系化合物は、眼のアレルギー性障害(アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季カタルおよび巨大乳頭性結膜炎が挙げられる)、鼻のアレルギー性障害(アレルギー性鼻炎およびアレルギー性副鼻腔炎が挙げられる)および耳のアレルギー性障害(耳管のそう痒が挙げられる)を処置するのに有用である。
【0074】
上記の方法により作製される眼用点滴薬は、代表的に一回につき一滴〜数滴の量で一日に2,3回眼に適用されることを必要とするが、より重篤な症例においては、この点滴薬は一日に数回適用され得る。代表的な滴は約30μlである。
【0075】
本発明の特定の実施形態は、以下の例に例示される。
【0076】
【化40】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における眼、耳または鼻のアレルギー性疾患を処置するための方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアと三環系化合物またはその薬学的に受容可能な塩の薬学的な有効量とを含む組成物を該患者に局所投与する工程を包含し、該三環系化合物は、以下の式I、式IIまたは式IIIを有する:
【化1】

ここで、
Y、Yは、CHであり、
Xは、−CH−O−であり、
Zは、−CH=CH−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがCHまたはNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCである場合、Bは、CH−CHCH−Yまたは
【化2】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【化3】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Dは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、直接結合であり、
nは、1〜6であり、
は、NHC(O)R、NHS(O)、OC(O)NR、NHC(O)NRであり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり;
【化4】

ここで、
Y、Yは、CH、Nであり、
Xは、−CH−CH−、−CH=CH−、CH−S−、
【化5】

であり、
Zは、−CH−CH−、−S−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがCHまたはNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCである場合、Bは、CH−CHCH−Yまたは
【化6】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【化7】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Yは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、O、直接結合であり、
nは、1〜6であり、ただし、XがOである場合、nは、2〜6であり、
は、H、OH、OR、OC(O)R、NHC(O)R、NHS(O)、OC(O)NR、NHC(O)NR、C(O)NRであり、ここで、
、Rは、H、C1−4アルキルであり、
、Rは、H、C1−4アルキル、OH、OCHであり、ただし、RとRとの一方のみが、OHまたはOCHであり得;
【化8】

ここで、
Y、Yは、CH、Nであり、ただし、YとYとの少なくとも一方がNであり、
Xは、CH−Oであり、
Zは、−CH−CH−、−S−であり、
、Rは、Cl、Br、F、CF、C1−6アルキル、C1−6アルキルO−であり、
Aは、C、CH、Nであり、
ただし、AがNである場合、Bは、CH−CH−CH−Yであり、そしてAがCHである場合、Bは、
【化9】

であり、ここで、
は、C1−4アルキルであり、
は、NRまたは
【化10】

であり、ここでR、Rは、H、C1−4アルキルであり、
Yは、X−(CH−Xであり、ここで、
は、O、直接結合であり、
nは、1〜6であり、ただし、XがOである場合、nは、2〜6であり、
は、H、OH、OR、OC(O)R、NHC(O)R、NHS(O)、C(O)NR、OC(O)NR、NHC(O)NR、C(O)NRであり、ここで、
、Rは、H、C1−4アルキルであり、そして
、Rは、H、C1−4アルキル、OH、OCHであり、ただし、RとRとの一方のみが、OHまたはOCHであり得る、
方法。
【請求項2】
前記三環系化合物の薬学的な有効量が、0.00001重量%〜5重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、前記眼への局所投与のために意図され、かつ前記三環系化合物の薬学的な有効量が、0.0001重量%〜0.2重量%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記三環系化合物の薬学的な有効量が、0.01重量%〜0.2重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記三環系化合物が、式Iの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記三環系化合物が、式IIの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記三環系化合物が、式IIIの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記眼、耳または鼻のアレルギー性疾患が、アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季カタル、巨大乳頭性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎および耳管のそう痒からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−504300(P2008−504300A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518371(P2007−518371)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/022940
【国際公開番号】WO2006/004757
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】