説明

アンサ−メタロセン錯体のメソ−選択的合成

式(II):
【化1】


で表されるリガンド出発化合物を、式(III):
【化2】


で表される遷移金属化合物と反応させる工程を含む、メソ−選択的に、式(I):
【化3】


で表されるアンサ−メタロセン錯体を製造する方法であり、且つ
上記式(I)、(II)及び(III)において、
1、R1'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
2、R2'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
3が、少なくとも3個の炭素原子を有する嵩高い有機基であり、非芳香族性の炭素原子又はケイ素原子を介して酸素原子に結合し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜20個の別の有機基で置換されていてもよく、そしてさらにSi、N、P、O及びSから選択されるヘテロ原子を含んでいても良く、
T、T’が、同一でも異なっていても良く、それぞれ1〜40個の炭素原子を有し、シクロペンタジエニル環と共に少なくとも1個の別の飽和又は不飽和の環を形成する2価の有機基を表し、飽和又は不飽和の環は5〜12原子の環員を有し、且つT、T’は、シクロペンタジエニル環との縮合環の中にSi、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se又はTeを含んでいても良く、
Aが、2価の原子又は2価の基から構成される架橋基を表し、
1が、元素周期表の第3、4、5又は6族の元素、或いはランタニド元素を表し、
基Xが、同一でも異なっていても良く、それぞれシクロペンタジエニルアニオンにより置換可能な有機基又は無機基を表し、
xが、1〜4の自然数を表し、
2が、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はマグネシウムモノハライドの一部を表し、
pが、電荷が+2の金属の場合は1を表し、或いは電荷が+1の金属又は金属イオンの一部の場合は2を表し
LBが、非電荷のルイス塩基リガンドを表し、そして
yが、0〜6の自然数を表す、
ことを特徴とする方法に関し、そしてこのような錯体を反応させて式(IV)で表されるアンサ−メタロセンを形成するこのような錯体の次の反応、メタロセンを製造するために式(III)の遷移金属化合物の使用する方法及び式(III)の遷移金属化合物、式(I)のアンサ−メタロセン錯体、及び式(I)のメタロセン錯体をオレフィンの重合のための触媒組成物の構成成分として使用する方法、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)で表されるアンサ−メタロセン錯体のメソ−選択的製造方法、このような錯体を反応させて式(IV)で表されるアンサ−メタロセンを形成する錯体の次の反応、メタロセンを製造するために式(III)の遷移金属化合物の使用する方法及び式(III)の遷移金属化合物、式(I)のアンサ−メタロセン錯体、及びオレフィンの重合のための触媒組成物の構成成分としてこれらの錯体を使用する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
有機遷移金属化合物、特にメタロセンを、テイラード(注文に応じた)ポリオレフィンを製造するためにオレフィンの重合及び共重合に使用される触媒成分として使用する方法についての研究及び開発が、大学及び工業界において過去15年に亘り活発に進められている。
【0003】
現在、メタロセン触媒組成物により製造されるエチレンを主成分とするポリオレフィンのみならず、特にメタロセン触媒組成物により製造されるプロピレンを主成分とするポリオレフィンも、躍動的に成長する市場分野を形成している。
【0004】
アイソタクチック・ポリプロピレンを製造するために、ラセミ体のアンサ−メタロセンが一般に使用されている。ラセミ体のアンサ−メタロセンの合成においては、これらは、一般に、単離することができずに、通常分離されるべき不要なメソ−メタロセンと共に得られる。メソ体のアンサ−メタロセンは、触媒構成成分として使用した場合、アタクチックポリプロピレンを形成する機能があることが一般に知られている。
【0005】
特許文献1(EP0643078)には、特定のメソ体のアンサ−メタロセンを極めて高分子のエチレンの単独重合体及び共重合体を製造するために使用する方法が記載されている。
【0006】
ラセミ体メタロセンにおいては、種々のラセモ選択合成が開発される一方、対応するメソ選択的合成を開発する緊急な要求はこれまでにまだ無い。
【0007】
非特許文献1(Organometallics 1997, 16, 5046-49)には、メソ−メタロセン及び対応するラセミ−メタロセンの合成が記載されており、その合成においては、2種のメタロセン体の正確な1種が、ジスタンニル化ビスシクロペンタジエニル・リガンドの単離ジアステレオマーから出発して形成される。しかしながら、純粋にジアステレオマーのジスタンニル化ビスシクロペンタジエニル・リガンドは、以前から、対応するジアステレオマーの混合物から分離することにより得られていた。
【0008】
この文献は、メタロセン異性体のラセミ/メソ(rac/meso)比は、ジルコニウムテトラクロリド及び種々のジリチオ化(dilithiated)ビスシクロペンタジエニル・リガンドから出発する合成において使用される溶剤に依存するが、標準的な規則性を導くことはできない場合について記載している。
【0009】
特に、メソ体のアンサ−メタロセンを製造する公知の方法は、経済的及び利用可能性の両方の点において不足している。
【0010】
【特許文献1】EP0643078
【非特許文献1】Organometallics 1997, 16, 5046-49
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
メソ体のアンサ−メタロセンの潜在的可能性をより良く評価することができるように、種々のメソ−メタロセンを簡単なやり方法で得ることができることが必要である。
【0012】
本発明の目的は、メソ体のアンサ−メタロセンの、簡単で、経済的で、そして広い利用可能性をもつ製造方法を見いだすことであり、このような製造方法は経済性及び利用可能性(適用性)の両方の点において有利である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的が、
式(II):
【0014】
【化1】

で表されるリガンド出発化合物を、式(III):
【0015】
【化2】

で表される遷移金属化合物と反応させる工程を含む、メソ−選択的に、式(I):
【0016】
【化3】

で表されるアンサ−メタロセン錯体を製造する方法であり、且つ
上記式(I)、(II)及び(III)において、
1、R1'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
2、R2'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
3が、少なくとも3個の炭素原子を有する嵩高い有機基であり、非芳香族性の炭素原子又はケイ素原子を介して酸素原子に結合し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜20個の別の有機基で置換されていてもよく、そしてさらにSi、N、P、O及びSから選択されるヘテロ原子を含んでいても良く、
T、T’が、同一でも異なっていても良く、それぞれ1〜40個の炭素原子を有し、シクロペンタジエニル環と共に少なくとも1個の別の飽和又は不飽和の、置換又は無置換の環を形成する2価の有機基を表し、この飽和又は不飽和の環は5〜12原子の環員を有し、且つT、T’は、シクロペンタジエニル環に縮合した環の中にSi、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se又はTeを含んでいても良く、
Aが、2価の原子又は2価の基から構成される架橋基を表し、
1が、元素周期表の第3、4、5又は6族の元素、或いはランタニド元素を表し、
基Xが、同一でも異なっていても良く、それぞれシクロペンタジエニルアニオンにより置換可能な有機基又は無機基を表し、
xが、1〜4の自然数を表し、
2が、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はマグネシウムモノハライドの一部を表し、
pが、電荷が+2の金属の場合は1を表し、或いは電荷が+1の金属又は金属イオンの一部の場合は2を表し
LBが、非電荷のルイス塩基リガンドを表し、そして
yが、0〜6の自然数を表す、
ことを特徴とする方法;
により達成されることが見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1、R1'は、同一でも異なっていても良いが、同一が好ましく、そしてそれぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、この有機基としては、例えば、C1〜C40−アルキル、C1〜C10−フルオロアルキル、C2〜C40−アルケニル、C6〜C40−アリール、C6〜C10−フルオロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル又はアルキルアリール(これらの3個の基のそれぞれは、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個である)、又はO、N、S、P及びSe、特にO、N及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むC2〜C40−ヘテロ芳香族基であり、そして別の基R6で置換されていてもよい。この基R6は、炭素原子数1〜20個の有機基、例えばC1〜C10−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、C6〜C10−アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル又はフルオロアリール(これらの4個の基のそれぞれは、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜18個、好ましくは6〜10個である)を表し、複数のR6の場合は、R6は同一でも異なっていても良い。
【0018】
1及びR1'は、同一でも異なっていても良いが、同一が好ましく、そしてそれぞれC1〜C10−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−へプチル又はn−オクチルであることが好ましく、さらにメチル、エチル又はイソプロピルが好ましく、特にメチルが好ましい。
【0019】
2、R2'は、同一でも異なっていても良いが、同一が好ましく、そしてそれぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、この有機基としては、例えば、C1〜C40−アルキル、C1〜C10−フルオロアルキル、C2〜C40−アルケニル、C6〜C40−アリール、C6〜C10−フルオロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル又はアルキルアリール(これらの3個の基のそれぞれは、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個である)、又はO、N、S、P及びSe、特にO、N及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含むC2〜C40−ヘテロ芳香族基であり、そして前記で規定された別の基R6で置換されていてもよい。複数のR6の場合は、R6は同一でも異なっていても良い。R2、R2'は、水素であることが好ましい。
【0020】
3は、少なくとも3個(好ましくは4〜40個)の炭素原子を有する嵩高い有機基であり、非芳香族性の炭素原子又はケイ素原子(好ましくは炭素原子)を介して酸素原子に結合し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜20個の別の有機基で置換されていてもよく、そしてさらにSi、N、P、O及びS(好ましくはN、O及びS)から選択されるヘテロ原子を含んでいても良い。非芳香族性の炭素原子又はケイ素原子は、芳香族環又はヘテロ芳香族環内に位置しないこの種の原子であり、即ちOR3の酸素原子は、芳香族性又はヘテロ芳香族性の環に直接結合していない。このような嵩高いアルキル基の例としては、イソプロピル、シクロヘキシル、tert−ブチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、トリフェニルメチル、ジフェニルメチル、(1R)−endo−(+)−1,3,3−トリメチル−2−ノルボルニル、トリメチルシリル、トリフェニルシリル及びジメチル−tert−ブチルシリルを挙げることができる。
【0021】
3は、α位で分岐し、1〜40個(好ましくは7〜40個)の炭素原子を有し、そしてハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特にフッ素又は塩素)又は炭素原子数1〜10個の別の有機基で置換されていても良いアルキル基が好ましい。本発明では、α位で分岐するアルキル基は、結合するα原子が水素とは異なる少なくとも2個の直接結合する原子及び1個以下の水素原子を有するアルキル基である。
【0022】
3は、特に、7〜30個の炭素原子を有し、1個以上のC1〜C4−アルキルで置換されていても良い2環式又は多環式のアルキル基であることが好ましい。
【0023】
T及びT’は、同一でも異なっていても良く、好ましくは同一であることであり、それぞれ1〜40個の炭素原子を有し、シクロペンタジエニル環と共に少なくとも1個の別の飽和又は不飽和の、置換又は無置換の環を形成する2価の有機基を表し、この飽和又は不飽和の、置換又は無置換の環は5〜12原子、特に5〜7原子の環員を有し、且つT、T’は、シクロペンタジエニル環に縮合した環の中にSi、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se又はTe(好ましくはSi、N、O又はS、特にS又はN)を含んでいても良い。
【0024】
2価の有機基T及びT’の好ましい例として、
【0025】
【化4】

さらに好ましくは、
【0026】
【化5】

特に好ましくは、
【0027】
【化6】

を挙げることができ、上記式中において、
4は、同一でも異なっていても良く、それぞれ1〜40個、好ましくは1〜20個の炭素原子を有する有機基、例えば、環式、分岐又は非分岐のC1〜C20−、好ましくはC1〜C8−アルキル、C2〜C20−、好ましくはC2〜C8−アルケニル基、C6〜C22−、好ましくはC6〜C10−アリール基、アルキル部分の炭素原子数が1〜10個、好ましくは1〜4個であり、アリール部分の炭素原子数が6〜22個、好ましくは6〜10個であるアルキルアリール又はアリールアルキル基、そして以上の置換基は、ハロゲン化されていても良く、或いはR4は、2〜40個、特に4〜20個の炭素原子を有し、好ましくはO、N、SびP、特にO、N及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む置換又は無置換の、飽和又は不飽和のヘテロ環(特に芳香族ヘテロ環)であるか、或いは隣接する2個のR4が、これらに結合する原子と共に、1〜40個の炭素原子を含む且つSi、Ge、N、P、O、S、Se又はTe、特にN及びSから選択されるヘテロ原子を含んでも良い単環又は多環の、置換又は無置換の環を形成している。
【0028】
5は、水素、又はR4で定義された基である。
【0029】
sは、0〜4、特に0〜3の自然数を表す。
【0030】
tは、0〜2、特に1又は2の自然数を表す。
【0031】
uは、0〜6、特に1の自然数を表す。
【0032】
Aは2価の原子又は2価の基から構成される架橋基である。Aの例としては、
【0033】
【化7】

特に、
【0034】
【化8】

を挙げることができ、上記式中において、
3は、ケイ素、ゲルマニウム又はスズ、好ましくはケイ素又はゲルマニウム、特にケイ素を表し、そして
7、R8及びR9は、同一又は異なっていても良く、それぞれハロゲン原子、トリメチルシリル基、C1〜C10−、好ましくはC1〜C3−アルキル基、C1〜C10−フルオロアルキル基、C6〜C10−フルオロアリール基、C6〜C10−アリール基、C1〜C10−、好ましくはC1〜C3−アルコキシ基、C7〜C15−アルキルアリールオキシ基、C2〜C10−、好ましくはC2〜C4−アルケニル基、C7〜C40−アリールアルキル基、C8〜C40−アリールアルケニル基又はC7〜C40−アルキルアリール基を表し、或いは2個の隣接基が、これらに結合する原子と共に、4〜15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の環を形成している。
【0035】
Aの好ましい態様は、次の架橋基:ジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、ジフェニルシランジイル、ジメチルゲルマンジイル、エチリデン、1−メチルエチリデン、1,1−ジメチルエチリデン、1,2−ジメチルエチリデン、1,1,2,2−テトラメチルエチリデン、ジメチルメチリデン、フェニルメチルメチリデン又はジフェニルメチルメチリデン、特にジメチルシランジイル、ジフェニルシランジイル及びエチリデンを挙げることができる。
【0036】
特に好ましいAとしては、置換シリレン基、又は置換又は無置換のエチレン基で、好ましくは置換シリレン基、例えばジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、メチル−tert−ブチルシランジイル又はジフェニルシランジイル、特にジメチルシランジイルを挙げることができる。
【0037】
1が、元素周期表の第3、4、5又は6族の元素、或いはランタニド元素を表し、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステンを挙げることができ、チタン、ジルコニウム又はハフニウムが好ましく、さらにジルコニウム又はハフニウム、特にジルコニウムが好ましい。
【0038】
基Xは、同一でも異なっていても良く、それぞれシクロペンタジエニルアニオンにより置換可能な有機基又は無機基を表す。Xの例としては、ハロゲン、例えば塩素、臭素、ヨウ素、特に塩素、有機スルホナート基、例えばトリフルオロメタンスルホナート(トリフラート(triflate))又はメシラートを挙げることができる。Xは、ハロゲンが好ましく、特に塩素が好ましい。
【0039】
xは、1〜4の自然数を表し、通常M1の酸化数から2を引いた値に対応する。元素周期表第4族の元素の場合、xは2であることが好ましい。
【0040】
2は、アルカリ金属、例えばLi、Na又はK、アルカリ土類金属、例えばMg又はCa、又はマグネシウムモノハライドの一部、例えばMgCl、MgBr又はMgIを表す。M2は、Li、Na、K、MgCl、MgBr、MgI又はMgが好ましく、さらにLi、K又はMg、特にLiが好ましい。
【0041】
pは、電荷が+2の金属の場合は1を表し、或いは電荷が+1の金属又は金属イオンの一部の場合は2を表す。
【0042】
LBは、非電荷のルイス塩基リガンドを表し、好ましくは直鎖状、環式又は分岐状の、酸素−、イオウ−、窒素−又はリン−含有、特に酸素−又は窒素−含有炭化水素、例えばエーテル、ポリエーテル、チオエーテル、アミン、ポリアミン又はホスフィンである。LBは、環式又は非環式のエーテル又はジエーテルが好ましく、例えばジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)又はジオキサンを挙げることができる。特に、THF又はDMEが好ましい。
【0043】
yは、0〜6の自然数を表す。元素周期表第4族の元素の場合、yは1又は2が好ましい。
【0044】
さらに、本発明における置換基は、特に言及しない限り、以下のように定義される:
本発明で使用される用語「炭素原子数1〜40個の有機基」とは、例えば、C1〜C40−アルキル基、C1〜C10−フルオロアルキル基、C1〜C12−アルコキシ基、C3〜C20−飽和ヘテロ環基、C6〜C40−アリール基、C2〜C10−ヘテロ芳香族基、C6〜C10−フルオロアリール基、C6〜C10−アリールオキシ基、C3〜C18−トリアルキルシリル基、C2〜C20−アルケニル基、C2〜C20−アルキニル基、C7〜C40−アリールアルキル基又はC8〜C40−アリールアルケニル基を指す。有機基は、各場合、有機化合物に由来する基である。従って、有機化合物のメタノールにおいては、一般に、1個の炭素原子を有する3個の異なる基、即ちメチル(CH3−)、メトキシ(CH3−O−)及びヒドロキシメチル(HOC(H2)−)が生ずることになる。
【0045】
本発明で使用される用語「アルキル」は、直鎖又は1つ若しくは複数分岐した、環式であっても良い飽和炭化水素を包含する。好ましくはC1〜C18−アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、イソヘキシル、sec−ブチル又はtert−ブチルを挙げることができる。
【0046】
本発明で使用される用語「アルケニル基」は、直鎖又は1つ若しくは複数分岐した、少なくとも1個(必要により1個以上)のC−C2重結合(集積していても、交互であっても良い)を有する飽和炭化水素を包含する。
【0047】
本発明で使用される用語「飽和ヘテロ環基」とは、例えば、1個以上の炭素原子、CH基及び/又はCH2基が好ましくはO、S、NびPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子で置換されている、単環又は多環の、置換又は無置換の炭化水素基を言う。置換又は無置換の飽和ヘテロ環基の好ましい例としては、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル等、及びこれらの、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−及びtert−ブチル−置換誘導体を挙げることができる。
【0048】
本発明で使用される用語「アリール」とは、例えば、直鎖又は分岐の、C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−アルコキシ基、C2〜C10−アルケニル基又はハロゲン(特にフッ素)で置換されていても良い、芳香族炭化水素置換基、或いは縮合又は非縮合ポリ芳香族炭化水素置換基を言う。置換又は無置換のアリール基の好ましい例としては、特に、フェニル、ペンタフルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−n−プロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、9−ナフチル、9−フェナンチル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル及び4−トリフルオロメチルフェニルを挙げることができる。
【0049】
本発明で使用される用語「ヘテロ芳香族基」とは、例えば、1個以上の炭素原子が窒素、リン、酸素又はイオウ或いはこれらの組合せで置換されている芳香族炭化水素基を言う。これらは、アリール基のように、直鎖又は分岐の、C1〜C18−アルキル基、C2〜C10−アルケニル基又はハロゲン(特にフッ素)で単置換又は多置換されていても良い。好ましい例としては、フリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリミジニル、ピラジニル等、及びこれらの、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−及びtert−ブチル−置換誘導体を挙げることができる。
【0050】
本発明で使用される用語「アリールアルキル」とは、例えば、アリール基がアルキル基を介してその分子の残り部分と結合するアリール含有置換基を言う。好ましい例としては、ベンジル、置換ベンジル、フェネチル、置換フェネチル等を挙げることができる。
【0051】
用語「フルオロアルキル基」及び「フルオロアリール基」は、個々の置換基の少なくとも1個の水素原子、好ましくは2個以上の水素原子、最大でも全ての水素原子がフッ素原子で置換されている基を言う。本発明で好ましいフッ素含有基の例としては、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−ペルフルオロ−tert−ブチルフェニル等を挙げることができる。
【0052】
本発明の方法の好ましい態様において、式(I)で表されるメタロセン錯体を、次の反応工程において、適当な脱離剤と反応させることにより、式(IV):
【0053】
【化9】

【0054】
[但し、上記基及び指数が、式(I)と同義である。]
で表されるアンサ−メタロセン錯体に転化する。
【0055】
このため、本発明は、式(I)のメタロセン錯体を式(IV)のアンサ−メタロセン錯体を製造するための中間体として使用する方法も提供する。
【0056】
脱離剤は一般に公知である。好ましい脱離剤の例としては、ハロゲン化水素、例えばHCl、及び脂肪族又は芳香族カルボン酸ハロゲン化物、例えば塩化アセチル、臭化アセチル、塩化フェニルアセチル、塩化tert−ブチルアセチル、及びオルガノアルミニウムハライド、例えばエチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジクロリド又はジメチルアルミニウムクロリド、及びハロゲン含有主族化合物、例えばSiCl4、SOCl2、PCl5又はAlCl3を挙げることができる。
【0057】
特に好ましい脱離剤はHCl、塩化アセチル、エチルアルミニウムジクロリド及びメチルアルミニウムジクロリドである。
【0058】
脱離反応は、0℃〜110℃の温度範囲で通常行うことができる。反応を終了するまで、少なくとも化学量論量の脱離剤を使用するのが一般的である。
【0059】
過剰の脱離剤は、後処理において目的の生成物から問題なく分離することができるのであれば、一般に邪魔するものではない。
【0060】
下記で規定される式(I)のアンサ−メタロセン錯体のメソ−選択的製造方法であって、任意にこの化合物(I)を反応させる下記で規定された式(IV)のアンサ−メタロセンを形成する次の反応をさらに含んでいる製造方法が特に好ましい:
上記の式(I)及び(IV)において、
1、R1'が、同一でも異なっていても良く、それぞれC1〜C10−アルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル又はオクチル、特にメチルを表し、
2、R2'が水素を表し、
T、T’が、同一でも異なっていても良く、それぞれ無置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、又は1〜4個の基R4(R4が同一でも異なっていても良く、炭素原子数1〜40個の有機基を表す)で置換された1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基を表し、
Aが、エチレン、置換エチレン基又は置換シリレン、特に置換シリレン基、例えばジメチルシランジイル、メチルフェニルシランジイル、メチル−tert−ブチルシランジイル又はジフェニルシランジイル、特にジメチルシランジイルを表し、そして
基R3、M1、X、M2及びLB、及び指数x、p及びyは、式(I)におけると同義である。
【0061】
上記で規定された式(I)又は式(IV)で表されるアンサ−メタロセン錯体のメソ−選択的製造方法が極めてに好ましい:
上記式(I)又は式(IV)において、
3が、α位で分岐し、4〜40個(好ましくは7〜40個)の炭素原子を有し、そしてハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特にフッ素又は塩素)又は炭素原子数1〜10個の別の有機基で置換されていても良いアルキル基を表し、R3は、特に好ましくは、7〜30個の炭素原子を有し、1個以上のC1〜C4−アルキルで置換されていても良い2環式又は多環式のアルキル基であり、
1が、Ti、Zr又はHf、好ましくはZr又はHf、特にZrを表し、
Xが、ハロゲン、特に塩素を表し、
xが、2を表し、
LBが、環式又は非環式エーテル又はジエーテル、特にTHF又はDMEを表し、そして
yが、1又は2を表す。
【0062】
本発明の方法において、式(II)で表される塩様リガンド出発物質を単離状態で使用するか、或いは式(III)の遷移金属化合物と反応する直前にその場で作製することができる。
【0063】
式(II)の塩様リガンド出発物質を合成するために、対応する非電荷の架橋されたビスシクロペンタジエニル化合物は、通常、強塩基により2価脱プロトン化される。使用することができる強塩基としては、例えば、有機金属化合物又は金属水素化物、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属含有化合物、を挙げることができる。好ましい塩基としては、有機リチウム化合物又は有機マグネシウム化合物、例えばメチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、n−ブチル−n−オクチルマグネシウム又はジブチルマグネシウムを挙げることができる。
【0064】
脱プロトン化するべき非電荷の架橋されたビスシクロペンタジエニル化合物は、単離状態で使用することもでき、或いは又は単離せずに、2個のシクロペンタジエニル・アニオンを適当な架橋剤(bridging agent)、例えばジオルガノジクロロシラン(例、ジメチルジクロロシラン)とカップリング反応させることにより直接製造することもできる。非電荷のビスシクロペンタジエニル化合物を製造する別の方法は、段階的構築である。例えば、シクロペンタジエニル・アニオンを、まず適当な架橋剤、例えばジオルガノジクロロシラン(例、ジメチルジクロロシラン)と反応させ、モノクロロモノシクロペンタジエニルジオルガノシラン化合物を形成し、そして次いでこの中の塩素を別のシクロペンタジエニル基(最初のシクロペンタジエニル基と異なっても良い)で置換し、所望の非電荷の架橋ビスシクロペンタジエニル化合物を得る。
【0065】
シクロペンタジエニル・アニオンの合成は、原則として、非電荷架橋されたビスシクロペンタジエニル化合物の脱プロトン化と同様の条件下で行うことができる。
【0066】
式(II)のリガンド出発物質を形成するための非電荷架橋されたビスシクロペンタジエニル化合物の2価脱プロトン化は、通常、−78〜110℃、好ましくは0〜80℃、特に好ましくは20〜70℃で行われる。
【0067】
強塩基によりシクロペンタジエニル誘導体の脱プロトン化を行うことができる好適な不活性溶剤としては、脂肪族又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クメン、デカリン、テトラリン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、又はエーテル類、例えばジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、アニソール、トリグライム(triglyme)、ジオキサン及びこれらの物質の混合物を挙げることができる。式(I)のメタロセン錯体を製造する本発明の次の工程を同様に直接行うことができる溶剤又は溶剤混合物が好ましい。
【0068】
式(III)の遷移金属化合物の合成は、一般に文献において公知である。その製造方法は、例えば、遷移金属化合物M1x-2又は(LB)y1x+2を、M2(OR3)と、不活性溶剤中で反応させる方法である。但し、M1とM2は、式(I)におけると同義である。
【0069】
本発明の方法において、式(II)のリガンド出発化合物と式(III)の遷移金属化合物との反応は、不活性溶剤又は不活性溶剤混合物中で、−78〜150℃、特に0〜110℃の範囲で行うことができる。不活性溶剤又は不活性溶剤混合物は、式(II)のリガンド出発化合物の合成を行った時に使用したものと同じものが好ましい。反応時間は通常少なくとも10分、一般に1〜8時間である。
【0070】
従って、本発明は、式(III):
【0071】
【化10】

で表される遷移金属化合物を、アンサ−メタロセン錯体の製造、特に式(I)のアンサ−メタロセン錯体のメソ−選択的製造、又は本発明の方法による式(IV)のアンサ−メタロセン錯体の製造に、使用する方法も提供する。式(III)の基及び指数は上述の通りである。
【0072】
さらに、本発明は、式(III):
【0073】
【化11】

で表される遷移金属化合物(式(III)の基及び指数は上述の通りである)を提供する。
【0074】
特に、R3が、α位で分岐し、4〜40個(好ましくは7〜40個)の炭素原子を有し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜10個の有機基で置換されていても良いアルキル基を表す式(III)の化合物が好ましく、さらにR3が、7〜30個の炭素原子を有し、1個以上のC1〜C4−アルキルで置換されていても良い2環式又は多環式のアルキル基を表す式(III)の化合物が好ましく、これらの化合物の場合において、M1が、Ti、Zr又はHf、好ましくはZr又はHfを表し、Xがハロゲン、特に塩素を表し、xが2を表し、LBが環式又は非環式エーテル又はジエーテルを表し、そしてyが1又は2を表す。
【0075】
本発明の方法においては、式(I)の所望のメソ化合物のみならず対応するラセミ(rac)化合物を形成することが可能である。ここで、用語メソ(meso)及びラセミ(rac)は、2個のシクロペンタジエニル基のお互いの相対的な空間配置を言う。例えば、架橋基上の2個のシクロペンタジエニルが同一でない場合、Cs対称を有するメソ(meso)体又はC2対称を有するラセミ(rac)体ではなく、C1対称を有するジアステレオマー化合物のみがある。異なる置換基の空間配置が相互に異なるこれらの種々のジアステレオマー・メタロセン化合物は、プロピレンの重合の触媒成分として使用した場合、2個のシクロペンタジエニル基のお互いに相対的な空間配置に基づき、Cs対称メソ異性体(アタクチックポリプロピレン)のように或いはC2対称ラセミ異性体(アイソタクチックポリプロピレン)のような挙動を示し、従って疑似ラセミ(pseudo-rac)体又は疑似メソ(pseudo-meso)体と呼ばれる。
【0076】
【化12】

【0077】
下記において、ラセミ及び疑似ラセミ体、及びメソ及び疑似メソ(pseudo-meso)体を、単にラセミ体及びメソ体として区別する。
【0078】
さらに、本発明の方法における、メソ選択性=(メソの割合−ラセミの割合)/(メソの割合+ラセミの割合)は0より大きく、0.5より大きいことが好ましい。
【0079】
式M2X又はM22の塩、例えば、塩化リチウム又は塩化マグネシウムは、公知の方法でメタロセンから分離することができる。これらは、式(I)のメソアンサ−メタロセンを製造する本発明の方法における別の反応生成物として得られる。例えば、塩化リチウム等の塩は、適当な溶剤により析出させることができる。しかしながら、この場合、その溶剤に、メタロセンは、固体の塩化リチウムがろ過工程により溶解したメタロセンから分離できるように溶解している。メタロセンは、このような溶剤で抽出することにより塩から分離することもできる。ろ過工程を用いる場合、珪藻土等のろ過助剤を使用することもできる。このようなろ過又は抽出工程に好適な有機溶剤としては、特に有機非プロトン性酸素非含有溶剤、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及び塩化メチレンを挙げることができる。適宜、塩の少なくとも一部が溶解する溶剤成分を、上述の塩の除去の前に大部分除去する。例えば、塩化リチウムは、テトラヒドロフランにかなり溶解する。このため、代わりの方法としては、式M2X又はM22の塩を、それらは容易に溶解するが、メタロセン錯体は難溶性である溶剤又は溶剤混合物により除去することである。
【0080】
本発明の方法で製造される式(I)のアンサメタロセン錯体は、適当な助触媒、及び、適宜好適な担持材料と共に、オレフィン重合用触媒組成物の成分として、使用される。
【0081】
本発明はさらに、本発明の方法により得ることができる式(I)のアンサメタロセン錯体、及び請求項1の方法で製造される式(I)のアンサメタロセン錯体をオレフィン重合用触媒組成物の成分として使用する方法も提供する。
【0082】
上記の式(I)のアンサメタロセン錯体としては、R3が、2環又は多環の炭素原子数7〜30個のアルキル基(置換基として、1個以上のC1〜C4−アルキルを有していても良い)を表し、M1がTi、Zr又はHf、特にZr又はHfを表し、Xハロゲン特に塩素を表し、そしてxが2を表す場合の錯体が好ましい。
【0083】
本発明により直接得ることができ、式(I)のアンサメタロセン錯体をメタロセン化合物の合計量に対して50モル%超過で、式(Ia)のメタロセンをメタロセン化合物の合計量に対して50モル%未満で含む、メタロセン混合物が好ましい。特に式(I)のアンサメタロセン錯体を75モル%超過で、式(Ia)のメタロセンを25モル%未満で含む、メタロセン混合物が好ましい。
【0084】
本発明を、以下の実施例で説明するがこれらに限定されるものではない:
【実施例】
【0085】
[一般手順]
有機金属化合物の合成及び操作を、アルゴン雰囲気中、空気及び水分の非存在下に行った(グローブ・ボックス及びシュレンク技術)。使用される全ての溶剤をアルゴンで浄化し、使用前に分子篩い上で乾燥した。有機化合物及び有機金属化合物のNMRスペクトルを、Varian Unity−300 NMR分光器で室温で記録した。化学シフトはSiMe4と比較して記録した。
【0086】
1.メソ−ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムモノクロリド1−アダマントキシドを介してメソ−ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
【0087】
1a.ZrCl4(THF)2の合成
保護ガス雰囲気下、15.2gのジルコニウムテトラクロリドを80gのトルエンに懸濁させた。懸濁液を氷浴で冷却し、12gのテトラヒドロフラン(THF)をゆっくり添加した。次に、無色の懸濁液を室温でさらに1時間撹拌した。
【0088】
1b.リチウム1−アダマントキシドの合成
9.6gの1−アダマンタノールを80gのトルエン及び12gのTHFに溶解した液を氷浴で冷却し、21.2gのn−ブチルリチウム溶液(20質量%トルエン溶液)を0.5時間に亘って滴下した。次いで、反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した。
【0089】
1c.(THF)2Cl3Zr(1−アダマントキシド)の合成
実施例1bで製造されたリチウム1−アダマントキシド溶液を、実施例1aで製造されたジルコニウムテトラクロリド−THF錯体の懸濁液に室温で20分に亘って滴下した。次に、反応混合物を室温でさらに2時間撹拌した。
【0090】
1d.Li2[ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)]の合成
42gのn−ブチルリチウム溶液(20質量%トルエン溶液)を、20gのジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)シラン(63.30ミリモル)を132gのトルエン及び12gのTHFを溶解した液に、0〜4℃にて、30分間に亘って添加した。黄・ベージュ色の懸濁液が生成し、これを室温でさらに1.5時間撹拌した。
【0091】
1e.メソ−ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムモノクロリド1−アダマントキシド(1e)の合成及び単離
実施例1cで製造された(THF)2Cl3Zr(1−アダマントキシド)の懸濁液を、実施例1dで製造されたLi2[ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)]の懸濁液に、室温で添加し、黄色の懸濁液が中間的に生成した。この懸濁液を、室温でさらに2.5時間撹拌し、次いで、G4フリットでろ過した。ろ過ケーキを、各回200gのトルエンで3回抽出した。抽出液を集め、減圧下、最初の質量の12%に濃縮し、−20℃で16時間保管した。形成した黄色の沈殿物をろ別し、15mlのトルエンで洗浄し、減圧乾燥した。黄色の粉末として6.16gの(1e)を得た。トルエン抽出後に残ったオレンジ色のろ過ケーキを200gのジクロロメタンで抽出した。もう一度減圧下に溶剤を除去して、黄色の粉末を得、これを30gのヘプタンで洗浄し、次いでオイルポンプ減圧で乾燥した。さらに11.36gの錯体(1e)を得た。錯体(1e)を、黄色粉末の形態で、全部で46.7%(17.52g)の収率にて得た。
【0092】
1H−NMR(CD2Cl2):7.72(dd,J=8.7Hz及び1.0Hz,2H,芳香族),7.22−7.19(m,2H,芳香族),7.00−6.96(m,2H,芳香族),6.65−6.61(m,2H,芳香族),6.25(s,1H,Cp),2.52(s,6H,2×CH3−Cp),2.15−2.12(m,3H,アダマンチル),1.80−1.79(m,6H,アダマンチル),1.50−1.48(m,6H,アダマンチル),1.37(s,3H,CH3Si),1.20(s,3H,CH3Si)。
【0093】
1 メソ−ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(1)の合成
2gの塩化アセチルを、実施例1eで製造された10gの錯体(1e)を100mlのn−ヘプタンに懸濁させた液に添加した。反応混合物を40℃で5時間撹拌した。オレンジ色の懸濁液をG3フリットでろ過し、ろ過ケーキを30gのn−ヘプタン及び20gのトルエンで洗浄し、減圧下に乾燥した。これにより、オレンジ色の粉末として5.12gの化合物(1)を得た((1e)に対して64%の収率)。
【0094】
1H−NMR(CD2Cl2):7.67(dd,J=8.8Hz及び0.9Hz,2H,芳香族),7.38−7.36(m,2H,芳香族),7.11−7.07(m,2H,芳香族),6.77−6.73(m,2H,芳香族),6.65(s,1H,Cp),2.44(s,6H,2×CH3−Cp),1.43(s,3H,CH3Si),1.23(s,3H,CH3Si)。
【0095】
2 ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムモノクロロ1−アダマントキシドの中間単離無しの、メソ・リッチのジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(1)の単一容器合成
実施例1cと同量且つ同様な方法で製造された(THF)2Cl3Zr(1−アダマントキシド)懸濁液を、実施例1dで製造されたLi2[ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)]に添加し、その混合物を室温で2.5時間撹拌した。黄色の懸濁液を、G4ガラスフリットフィルタでろ過し、ろ過ケーキを、各回200gのトルエンで3回抽出した。ろ液を蒸発させ、最初の質量の50%にした。4.98gの塩化アセチルを溶液に添加し、反応混合物を40℃で3時間撹拌した。反応溶液を最初の質量の10%に濃縮した。形成した沈殿をG3フリットフィルタでろ別し、10gのトルエンで洗浄し、減圧下乾燥した。オレンジ色の粉末状の化合物(1)を4g(収率14%)得た。このラセミ/メソ比を1H−NMRで測定したところ、1:4であった。
【0096】
3 メソ・リッチのジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムモノクロリドエンド−(−)−フェンコキシド(endo-(-)-fenchoxide)の中間単離無しの、メソ・リッチのジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(1)の単一容器合成
実施例2と類似の方法で実験を行った。ZrCl4(THF)2を実施例1aと同量製造し、そして実施例1bと類似の方法により9.76gのエンド−(−)−フェンコール及び21.2gのn−ブチルリチウム溶液(20質量%トルエン溶液)から製造したリチウムエンド−(−)−フェンコキシド溶液と混合し、(THF)2Cl3Zr(フェンコキシド)の懸濁液を得た。この懸濁液を、実施例1dに記載の様に20g(63.30ミリモル)のジメチルビス(2−メチルインデニル)シランから製造されたLi2[ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)]に添加した。これにより、黄色の懸濁液が中間的に形成し、室温で1.5時間撹拌した。黄色の懸濁液を、G4ガラスフリットフィルタでろ過し、ろ過ケーキを、各回200gのトルエンで3回抽出した。ろ液を蒸発させ、最初の質量の12%にした。黄色の結晶を一部単離することができ、NMR分光器により測定、ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムモノクロリドエンド−(−)−フェンコキシドを確認した。
【0097】
1H−NMR(CD2Cl2:7.66−7.63(m,2H,芳香族),7.27−7.15(2dd,2H,芳香族),7.05−6.98(m,2H,芳香族),6.69−6.65(m,2H,芳香族),6.58及び6.36(2s,2H,2×Cp),3.91(s,1H,フェンチル),2.53及び2.49(2s,6H,2×CH3−Cp),1.36,1.20及び1.18(3s,9H,CH3−フェンチル),1.03(s,3H,CH3Si),0.92(s,3H,CH3Si),1.69−1.30,1.10−1.04,0.98及び0.85−0.77(m,H,フェンチル)。
【0098】
4.97gの塩化アセチルを、部分蒸発溶液に添加し、反応混合物を40℃で1時間撹拌した。沈殿をG3ガラスフリットフィルタでろ過し、ろ過ケーキを40gのn−ヘプタンで洗浄し、減圧下に乾燥した。これにより、オレンジ色の粉末状の化合物(1)を4.51g(収率14%)得た。このラセミ/メソ比を1H−NMRで測定したところ、1:6であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】

で表されるリガンド出発化合物を、式(III):
【化2】

で表される遷移金属化合物と反応させる工程を含む、メソ−選択的に、式(I):
【化3】

で表されるアンサ−メタロセン錯体を製造する方法であり、且つ
上記式(I)、(II)及び(III)において、
1、R1'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
2、R2'が、同一でも異なっていても良く、それぞれ水素又は炭素原子数1〜40個の有機基を表し、
3が、少なくとも3個の炭素原子を有する嵩高い有機基であり、非芳香族性の炭素原子又はケイ素原子を介して酸素原子に結合し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜20個の別の有機基で置換されていてもよく、そしてさらにSi、N、P、O及びSから選択されるヘテロ原子を含んでいても良く、
T、T’が、同一でも異なっていても良く、それぞれ1〜40個の炭素原子を有し、シクロペンタジエニル環と共に少なくとも1個の別の飽和又は不飽和の、置換又は無置換の環を形成する2価の有機基を表し、この飽和又は不飽和の環は5〜12原子の環員を有し、且つT、T’は、シクロペンタジエニル環に縮合した環の中にSi、Ge、N、P、As、Sb、O、S、Se又はTeを含んでいても良く、
Aが、2価の原子又は2価の基から構成される架橋基を表し、
1が、元素周期表の第3、4、5又は6族の元素、或いはランタニド元素を表し、
基Xが、同一でも異なっていても良く、それぞれシクロペンタジエニルアニオンにより置換可能な有機基又は無機基を表し、
xが、1〜4の自然数を表し、
2が、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はマグネシウムモノハライドの一部を表し、
pが、電荷が+2の金属の場合は1を表し、或いは電荷が+1の金属又は金属イオンの一部の場合は2を表し
LBが、非電荷のルイス塩基リガンドを表し、そして
yが、0〜6の自然数を表す、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
式(I)で表されるメタロセン錯体を、次の反応工程において、適当な脱離剤と反応させることにより、式(IV):
【化4】

[但し、上記基及び指数が、式(I)と同義である。]
で表されるアンサ−メタロセン錯体に転化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1、R1'が、同一でも異なっていても良く、それぞれC1〜C10−アルキルを表し、
2、R2'が、それぞれ水素を表し、
T、T’が、同一でも異なっていても良く、それぞれ無置換の1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、又は1〜4個の基R4(R4が、同一でも異なっていても良く、炭素原子数1〜40個の有機基を表す)で置換された1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基を表し、
Aが、エチレン、置換エチレン又は置換シリレンを表し、そして
基R3、M1、X、M2及びLB、及び指数x、p及びyが請求項1と同義である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
3が、α位で分岐し、4〜40個の炭素原子を有し、そしてハロゲン原子又は炭素原子数1〜10個の有機基で置換されていても良いアルキル基を表し、
1が、Ti、Zr又はHfを表し、
Xが、ハロゲンを表し、
xが、2を表し、
LBが、環式又は非環式のエーテル又はジエーテルを表し、そして
yが、1又は2を表す、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2が、Li、Na、K、MgCl、MgBr、MgI又はMgを表す請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式(III):
【化5】

[但し、上記基及び指数が、請求項1又は4と同義である。]
で表される遷移金属化合物を、アンサ−メタロセン錯体の製造に使用する方法。
【請求項7】
式(III):
【化6】

[但し、上記基及び指数が、請求項1又は4と同義である。]
で表される遷移金属化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I):
【化7】

で表されるメタロセン錯体を、式(IV) [但し、上記基及び指数が、請求項1、3又は4と同義である。]で表されるアンサ−メタロセン錯体を製造するための中間体として使用する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の式(I):
【化8】

[但し、上記基及び指数が、請求項1、2又は4と同義である。]
で表されるアンサ−メタロセン錯体。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により製造された式(I)で表されるアンサ−メタロセン錯体を、オレフィンの重合のための触媒組成物の構成成分として使用する方法。

【公表番号】特表2007−514684(P2007−514684A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544318(P2006−544318)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014247
【国際公開番号】WO2005/058929
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】