アンダーカット処理機構
【課題】成形品の内側にセンター孔を有するボスが全体の型抜き方向と交差する方向へ突出している場合も、容易に型抜きすることができるアンダーカット処理機構を提供する。
【解決手段】可動型１３に内設されたホルダー４０内に、中子ピン５０とこれを囲む一対の成形コア３０，３０を収納し、各成形コア３０は、中子ピン５０を囲んで互いに対接し合う成形位置と、離隔する離型位置とに摺動可能であり、ホルダー４０内に、成形品Ｐの型抜き時に各成形コア３０を成形位置から離型位置に向けて、型抜き方向および逃げ方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内する斜溝４３を設けた。また、各成形コア３０の移動に伴い中子ピン５０はセンター孔Ｐ２からの逃げ方向に移動する。
【解決手段】可動型１３に内設されたホルダー４０内に、中子ピン５０とこれを囲む一対の成形コア３０，３０を収納し、各成形コア３０は、中子ピン５０を囲んで互いに対接し合う成形位置と、離隔する離型位置とに摺動可能であり、ホルダー４０内に、成形品Ｐの型抜き時に各成形コア３０を成形位置から離型位置に向けて、型抜き方向および逃げ方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内する斜溝４３を設けた。また、各成形コア３０の移動に伴い中子ピン５０はセンター孔Ｐ２からの逃げ方向に移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、固定型と可動型から成る金型において、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の成形用金型装置としては、例えば、特許文献１に記載されたルーズコアエジェクター装置が知られている。すなわち、成形品の内面を形成する金型のコアと、このコアを貫通してコア表面に対して傾斜配置された移動可能なルーズコア支持ロッドと、可動側型板と台座プレートとに係止されたガイド手段ロッドと、このガイド手段ロッドに対して相対的に摺動可能にエジェクタープレートの摺動路に配置されたスライドベースとを備え、ルーズコア支持ロッドがスライドベースの移動に連動するものである。
【０００３】
このようなルーズコアエジェクター装置において、ガイド手段ロッドの一端は、可動側型板の下面に形成された凹部に緊密に嵌め込まれたホルダーに係止されており、また、ルーズコア支持ロッドは、コアにガイド手段ロッドとほぼ同じ傾斜角度で形成された挿通孔を摺動可能に挿通して、この挿通孔がルーズコア支持ロッドの傾斜角度を設定する唯一の角度設定孔となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００２−３２６２３３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、前述したような従来の技術では、ルーズコア支持ロッドのみならず、ガイド手段ロッドも傾斜配置されており、しかも、各々ロッドを同じ傾斜角度で移動させるための機構が、エジェクタープレートと可動側型板とに分散するように構成されている。従って、成形品のアンダーカット部の型抜きのために必要なアンダーカット部分形状を施した駒の移動量に比べて大きな設置スペースを要し、全体的に構造も複雑となり組み立てに手間と時間がかかり、コストダウンが難しいという問題点があった。
【０００６】
また、アンダーカット部が成形品の外側ないし内側の一方向にある場合にしか対応することができず、例えば、成形品の内側にセンター孔を有するボスが全体の型抜き方向と交差する斜め下方向へ突出しているような場合には、このような成形品を型抜きすることは不可能であった。そのため、成形可能な成形品におけるアンダーカット部の形状の他、その位置や数が非常に狭い範囲に限定されるという問題点があった。
【０００７】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、コンパクトに構成することが可能となり省スペース化の要請に応じることができ、金型への加工および組み込みが容易で、また、構成が簡単であり組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができ、特に、成形品の内側にセンター孔を有するボスが全体の型抜き方向と交差する斜め下方向へ突出している場合も、容易に型抜きすることができるアンダーカット処理機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
［１］固定型（１２）と可動型（１３）から成る金型（１１）において、成形品（Ｐ）の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部（Ｐ１）を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記アンダーカット部（Ｐ１）は、センター孔（Ｐ２）を有するボス形状であり、
前記アンダーカット部（Ｐ１）のセンター孔（Ｐ２）を成形する中子ピン（５０）と、
前記アンダーカット部（Ｐ１）の外周側を成形すべく、前記中子ピン（５０）を外側から囲む状態に複数に分割されて配置される成形コア（３０）と、
前記固定型（１２）または前記可動型（１３）に内設され前記各成形コア（３０）を収納するホルダー（４０）とを有し、
前記中子ピン（５０）は、前記成形品（Ｐ）の型抜き方向への移動に伴い前記センター孔（Ｐ２）からの逃げ方向に後退可能に前記ホルダー（４０）内に支持され、
前記各成形コア（３０）は、前記ホルダー（４０）内に収まり前記中子ピン（５０）を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、前記ホルダー（４０）外に一部が突出して前記中子ピン（５０）から互いに離れる離型位置とに移動可能に前記ホルダー（４０）に収納され、
前記ホルダー（４０）内に、前記各成形コア（３０）を成形位置から離型位置に向けて、成形品（Ｐ）の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部（Ｐ１）から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段（４３）を設けた
ことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【０００９】
［２］前記ホルダー（４０）の内壁および前記各成形コア（３０）の外壁の何れか一方に、前記各成形コア（３０）がそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝（４３）を設け、
何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝（４３）にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条（３１）を設け、
前記ホルダー（４０）内にある各斜溝（４３）または各斜条（３１）を前記ガイド手段（４３）とした
ことを特徴とする［１］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１０】
［３］前記各成形コア（３０）に対応して、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する複数のエジェクタピン（２０）を有し、
前記ホルダー（４０）は、前記各エジェクタピン（２０）の先端部が移動可能に案内される状態で前記可動型（１３）に内設され、
前記各成形コア（３０）は、それぞれの基端部が前記エジェクタピン（２０）の先端部に対して前記離隔方向に摺動可能に連結された
ことを特徴とする［１］または［２］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１１】
［４］前記各成形コア（３０）を、前記成形品（Ｐ）の型抜きストロークに応じた長さに設計する
ことを特徴とする［１］，［２］または［３］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１２】
［５］前記ホルダー（４０）自体を、該ホルダー（４０）を設ける前記可動型（１３）または前記固定型（１２）の一部として構成した
ことを特徴とする［１］，［２］，［３］または［４］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１３】
前記本発明は次のように作用する。
前記［１］に記載のアンダーカット処理機構によれば、成形品（Ｐ）のボス形状のアンダーカット部（Ｐ１）にあるセンター孔（Ｐ２）を成形する中子ピン（５０）と、アンダーカット部（Ｐ１）の外周側を成形する成形コア（３０）とを備え、成形コア（３０）はホルダー（４０）に収納され、中子ピン（５０）を外側から囲む状態に複数に分割されて配置される。
【００１４】
中子ピン（５０）は、成形品（Ｐ）の型抜き方向への移動に伴いセンター孔（Ｐ２）からの逃げ方向に後退可能にホルダー（４０）内に支持される。一方、各成形コア（３０）は、ホルダー（４０）内に収まり中子ピン（５０）を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、ホルダー（４０）外に一部が突出して中子ピン（５０）から互いに離れる離型位置とに移動可能にホルダー（４０）に収納される。これにより、センター孔（Ｐ２）を有するボス形状のアンダーカット部（Ｐ１）が型抜き方向と交差する方向へ突き出す成形品（Ｐ）も、容易に型抜きすることが可能となる。
【００１５】
しかも、成形品（Ｐ）の型抜き時には、ホルダー（４０）内に設けてあるガイド手段（４３）により、各成形コア（３０）が成形位置から離型位置に向かって、成形品（Ｐ）の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部（Ｐ１）から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内される。これにより、各成形コア（３０）は、成形位置から離型位置に確実に移動することができる。
【００１６】
以上のようなアンダーカット処理機構によれば、全体的な構造の簡易化が可能となり、製造コストを大幅に低減することが可能となる。また、各成形コア（３０）を支持する部材を、エジェクタ台板や可動型（１３）に分散させることなく、ホルダー（４０）を介して固定型（１２）または可動型（１３）の何れか一方にのみに集中して配設することができる。これにより、コンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請に応じることができ、金型（１１）への加工および組み込みが容易となる。
【００１７】
前記ガイド手段（４３）としては、具体的には前記［２］に記載したように、ホルダー（４０）の内壁および各成形コア（３０）の外壁の何れか一方に、前記各成形コア（３０）がそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝（４３）を設け、何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝（４３）にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条（３１）を設けて、ホルダー（４０）内にある各斜溝（４３）または各斜条（３１）を前記ガイド手段（４３）とすれば良い。
【００１８】
これにより、各成形コア（３０）の移動は、各成形コア（３０）自体とホルダー（４０）とに設けられた斜溝（４３）および斜条（３１）の嵌合関係によって確実かつ円滑に案内されると共に、型抜き時における負荷も一箇所に集中することがなく分散されるので、耐久性が高められる。また、設計時における高い精度出しも緩和されるため、さらなるコストダウンが可能となる。
【００１９】
前記［３］に記載のアンダーカット処理機構は、成形品（Ｐ）の型抜き時に、型抜き方向に駆動されるエジェクタピン（２０）の突き出し動作に応じて作動する。成形が終わり可動型（１３）から固定型（１２）が離れると、成形品（Ｐ）の外面側が現われる。次いでエジェクタピン（２０）が型抜きのために、成形品（Ｐ）を可動型（１３）から離脱させるように突き出し動作し、該エジェクタピン（２０）の先端部はホルダー（４０）内を移動する。
【００２０】
ホルダー（４０）内では、エジェクタピン（２０）の先端部に連結されている成形コア（３０）が、エジェクタピン（２０）の突き出し動作に伴って、ホルダー（４０）にあるガイド手段（４３）により、型抜き方向および離隔方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に案内される。これにより、各成形コア（３０）も成形位置から離型位置に確実に移動するので、成形品（Ｐ）のアンダーカット部（Ｐ１）が型抜き可能な状態となり、成形品（Ｐ）全体を容易に金型（１１）から取り外すことができる。
【００２１】
前記［４］に記載のアンダーカット処理機構によれば、各成形コア（３０）を成形品（Ｐ）の型抜きストロークに応じた長さに設定する。これにより、成形品（Ｐ）の型抜きにおける大きなストロークから小さなストロークまで、自在に対応することが可能となる。
【００２２】
前記［５］に記載のアンダーカット処理機構によれば、ホルダー（４０）自体を、該ホルダー（４０）を設ける可動型（１３）または固定型（１２）における中空部を囲むような一部として構成する。すなわち、金型（１１）に直接ホルダー（４０）の内部空間の代わりとなる中空部を形成して、この中空部内に中子ピン（５０）や各成形コア（３０）を収納すれば良い。これにより、ホルダー部品が不要となって部品点数が削減され、装置全体の構成をより簡易化することができ、いっそうコストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【００２３】
本発明に係るアンダーカット処理機構によれば、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部がある成形品のうち、特にセンター孔を有するボス形状のアンダーカット部がある場合でも、容易に型抜きすることができる。
【００２４】
しかも、コンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請に応じることができ、金型への加工および組み込みが容易で、また、構成が簡単であり組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する縦断面図である。
【図２】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する縦断面図である。
【図３】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する別角度から観た縦断面図である。
【図４】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時から型抜き時に至る過程の動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図５】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時から型抜き時に至る過程の動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図６】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図７】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の全体の外観を示す斜視図である。
【図８】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの一部を外して内部を示す斜視図である。
【図９】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピン突出終了時における外観を示す斜視図である。
【図１０】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピン突出終了時におけるホルダーの一部を外して内部を示す斜視図である。
【図１１】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１２】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１３】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１４】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１５】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダー単体の内部を示す斜視図である。
【図１６】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の中子ピンを示す斜視図である。
【図１７】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピンと成形コアの嵌合を示す斜視図である。
【図１８】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の中子ピンの逃げ方向への移動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図１〜図６は、本実施の形態に係る成形用金型装置１０を構成する金型１１およびアンダーカット処理機構の動作を説明するための縦断面図である。図１は、成形品Ｐの成形時の状態を示し、図２は、成形品Ｐの型抜き時の状態を示している。図３〜図６は、図１，図２に示す縦断面図とは直交する方向からの縦断面図であり、成型時から型抜き時に至る経過ごとの状態を示している。
【００２７】
成形用金型装置１０は、成形品Ｐを金型１１によって成形する装置である。ここでの成形品Ｐは、図３に示すように全体的に板状部材であり、その内面側にアンダーカット部Ｐ１を有している。アンダーカット部Ｐ１は、センター孔Ｐ２を有する管状のアンダーカットボスである。アンダーカット部Ｐ１は、成形品Ｐの水平な内面に対して斜め下方へ、すなわち水平面に対して垂直な型抜き方向と交差する方向へ突き出ている。なお、成形品Ｐの材料は、プラスチック等の合成樹脂に限らず鉄や銅等の金属も該当する。
【００２８】
図１および図２に示すように、成形用金型装置１０の金型１１は、成形品Ｐの外面側を成形する固定型１２と、成形品Ｐのアンダーカット部Ｐ１を含む内面側を成形する可動型１３とから成る。また、可動型１３の下方には可動取付板１４が設置されており、可動型１３と可動取付板１４との間に、２枚重ねの板材から成るエジェクタ台板１５が上下方向に駆動可能に配設されている。
【００２９】
本願発明の根幹を成すアンダーカット処理機構は、成形品Ｐの型抜き時にアンダーカット部Ｐ１を型抜き可能な状態とするものであり、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する一対のエジェクタピン２０，２０と、各エジェクタピン２０の先端部２３が摺動可能に案内されるホルダー４０と、各エジェクタピン２０の先端部２３にそれぞれ連結され、ホルダー４０内に移動可能に配される一対の成形コア３０，３０と、前記アンダーカット部Ｐ１にあるセンター孔Ｐ２を成形する中子ピン５０等を有する。
【００３０】
図１および図２に示すように、各エジェクタピン２０は角棒部材から形成されており、それぞれエジェクタ台板１５上に互いに平行な状態で立設されている。各エジェクタピン２０の基端部２２が、ノックピン２１を介してエジェクタ台板１５に固定されている。各エジェクタピン２０は、エジェクタ台板１５の上方への移動に伴い型抜き方向に駆動されて突き出し動作する。各エジェクタピン２０の先端部２３は、次述するホルダー４０内に摺動可能に挿通している。可動型１３には、各エジェクタピン２０が貫通する縦孔１３ａが穿設されており、かかる部位は別体のブロック１３ｂとして組み合わせると良い。
【００３１】
ホルダー４０は、可動型１３内に収容される状態で、該可動型１３に一体に内設されている。図７および図８に示すように、ホルダー４０は、２つの対称な部品を組み合わせて成り、上端面と下端面が開口する内部空間４１を備えた箱状に形成されている。図１５に示すように、ホルダー４０の下部には、前記各エジェクタピン２０の先端部２３が摺動可能に挿通する一対の縦孔４２，４２が形成されている。
【００３２】
ホルダー４０（の内部空間４１）内において、前記各エジェクタピン２０の先端部２３の間となる中間位置には、前記アンダーカット部Ｐ１のセンター孔Ｐ２を成形する中子ピン５０が配置されている。ここで中子ピン５０は、成形品Ｐの型抜き方向への移動、すなわち前記各エジェクタピン２０の上方への摺動に伴って、前記センター孔Ｐ２からの逃げ方向に後退可能に支持されている。中子ピン５０の上端側が、センター孔Ｐ２の内径に合致する円柱形の成形部５０ａとなっている。
【００３３】
詳しく言えば中子ピン５０は、前記アンダーカット部Ｐ１が斜め下方へ突出する傾斜角度と同一の傾斜角度で傾く状態に配されている。中子ピン５０の下端部には、その両側に位置する各エジェクタピン２０の対向面にそれぞれ形成されたガイド溝２５に対して、相対的に押し引き可能に案内される状態で嵌る係合ピン５１が両側に突設されている。ここでガイド溝２５は、中子ピン５０の傾斜角度と同一の傾斜角度で傾く状態に形成されている。
【００３４】
ホルダー４０内には、中子ピン５０の軸心と直交するガイド杆５２が架設されており、中子ピン５０には、このガイド杆５２が相対的に移動可能に貫通する挿通孔５３が穿設されている。図３〜図６に示すように、前記各エジェクタピン２０の上方への摺動に伴って、各エジェクタピン２０のガイド溝２５に嵌っている係合ピン５１を介して中子ピン５０は押されることにより、中子ピン５０の挿通孔５３に貫通しているガイド杆５２に沿って、センター孔Ｐ２からの逃げ方向に後退するように設定されている。
【００３５】
また、ホルダー４０内には、前記アンダーカット部Ｐ１の外周側を成形する成形コア３０が、前記中子ピン５０を外側から囲む状態に複数に分割されて配置されている。ここで成形コア３０は、左右対称となる一対の駒形状の部材として分割されており、各成形コア３０は、それぞれ前記中子ピン５０を間にして左右対称に並ぶ状態で同期して移動可能に配置されている。
【００３６】
すなわち、各成形コア３０は、ホルダー４０内に収まり中子ピン５０を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置（図１参照）と、ホルダー４０外に一部が突出して中子ピン５０から互いに離れる離型位置（図２参照）とに移動可能に、ホルダー４０に収納されている。なお、各成形コア３０が互いに対向する上側面に、アンダーカット部Ｐ１の外周形状に合致する成形部３０ａ（図９参照）が凹設されている。
【００３７】
図１５に示すように、ホルダー４０の内部空間４１の内壁には、成形品Ｐの型抜き時に各成形コア３０を成形位置から離型位置に向けて、図１中で上方向となる型抜き方向、および該型抜き方向と直角に交差してアンダーカット部Ｐ１から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段が設けられている。このガイド手段は一対の斜溝４３，４３であり、各斜溝４３は、左右対称にＶ字形をなすように、内壁の前後にそれぞれ矩形状断面の凹溝として設けられている。
【００３８】
一方、前記各成形コア３０の外壁の前後には、それぞれ前記斜溝４３に摺動可能に嵌合する斜条３１が凸設されている。ここで斜条３１は、成形コア３０の外壁とホルダー４０の内壁の何れに設けても良く、何れか他方に斜溝４３を設けることになる。要するに、各成形コア３０が型抜き動作時に、前述した傾斜方向に移動可能に案内される構成であれば良い。
【００３９】
図８，図１０に示すように、各成形コア３０は、各エジェクタピン２０の先端部２３に対して、前記型抜き方向（図１中で上方向）と直角に交差するアンダーカット部Ｐ１から離れる離隔方向（図１中で左右方向）に摺動可能に基端部が連結されている。各エジェクタピン２０の先端部２３には、ホルダー４０内で型抜き方向に摺動可能に配される保持駒部２４が設けられている。一方、成形コア３０の基端部には、前記保持駒部２４に対して、前記離隔方向に摺動可能に連結される逃げ動作駒部３２が設けられている。
【００４０】
図６に示すように、保持駒部２４は、エジェクタピン２０の軸方向（図６中で上下方向）と直角に交わる左右方向に延びる凸条として、エジェクタピン２０の先端部２３の上端面に形成されている。一方、成形コア３０の逃げ動作駒部３２は、保持駒部２４の凸条に対して左右方向に移動可能に嵌合する蟻溝として形成されている。保持駒部２４と逃げ動作駒部３２とは、互いに押し引き可能に連結されており、エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い成形コア３０が前記傾斜方向に移動するように設定されている。
【００４１】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
図１に示すように、成形用金型装置１０によって成形品Ｐが成形される。この時、可動型１３に収容されているホルダー４０内では、一対の成形コア３０，３０が中子ピン５０を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置にある。このような状態で、各成形コア３０の成形部３０ａに囲まれた空間でアンダーカット部Ｐ１の外周側が成形されると共に、中子ピン５０の成形部５０ａによりセンター孔Ｐ２が成形される。
【００４２】
図２に示すように、成形が終了して固定型１２が可動型１３から離れると、エジェクタ台板１５が上方に駆動される。すると、エジェクタ台板１５上に立設されている一対のエジェクタピン２０，２０が、可動型１３（ブロック１３ｂ）にある縦孔１３ａを貫通した状態で、型抜き方向である上方に向かって突き出し動作を行う。
【００４３】
この時、ホルダー４０内では、各エジェクタピン２０の先端部２３に連結されている各成形コア３０が、エジェクタピン２０と一緒に型抜き方向へ摺動すると共に、該エジェクタピン２０の先端部２３に対して、型抜き方向と直角に交差する離隔方向にも同時に摺動する。これに伴いエジェクタピン２０と成形コア３０との位置関係は、互いに相対的に変位する。
【００４４】
エジェクタピン２０の先端部２３には、可動型１３内で型抜き方向に摺動可能に配される保持駒部２４があり、成形コア３０の基端部には、前記保持駒部２４に対して離隔方向に摺動可能に連結される逃げ動作駒部３２がある。このため、エジェクタピン２０の先端部２３と成形コア３０の基端部とを、互いに押し引き可能な状態で相対的に変位するよう確実に連結することができる。
【００４５】
各エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い各成形コア３０は、それぞれ斜条３１がホルダー４０内のガイド手段である斜溝４３に摺動可能に嵌合して案内されつつ、型抜き方向と離隔方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に移動する。これにより、各成形コア３０から成形品Ｐのアンダーカット部Ｐ１が型抜き可能な状態となる。
【００４６】
また、図３〜図６に示すように、各エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い、これらの間にある中子ピン５０は、その下端部にある係合ピン５１が各エジェクタピン２０の対向面にあるガイド溝２５内を相対的に移動しつつ押される。ここで中子ピン５０は、その挿通孔５３に貫通しているガイド杆５２に沿って、図１８に示すように、センター孔Ｐ２からの逃げ方向に所定量だけ後退することになる。
【００４７】
これにより、中子ピン５０も、アンダーカット部Ｐ１のセンター孔Ｐ２内から離脱するので、成形品Ｐは完全に型抜き可能な状態となる。以上のように、成形品Ｐの型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部Ｐ１にセンター孔Ｐ２があるような場合でも、極めて容易に成形ないし型抜きすることが可能となる。
【００４８】
前述したように、ホルダー４０内における各成形コア３０の移動は、成形コア３０の斜条３１と、ホルダー４０にあるガイド手段としての斜溝４３との嵌合関係によって、確実かつ円滑に前記傾斜方向に案内される。しかも、型抜き時における負荷も一箇所に集中することがなく分散されるので、耐久性が高められる。また、設計時における高い精度出しも緩和されるため、さらなるコストダウンが可能となる。
【００４９】
また、本実施の形態に係るアンダーカット処理機構によれば、成形コア３０を、エジェクタ台板１５や可動型１３に分散させることなく、ホルダー４０を介して可動型１３のみに集中して配設することができる。これにより、成形用金型装置１０全体をコンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請にも応じることができ、金型１１への加工および組み込みが容易となる。
【００５０】
特に、アンダーカット処理機構は、図７に示すように、予めホルダー４０に組み込んだ形でユニットとして構成することができ、図１に示すように、ホルダー４０を介して可動型１３内に容易に後付けすることができる。かかる構成は、可動型１３が小型である場合のように、可動型１３自体にホルダー４０を収納する空間を穿設するような加工が容易な場合に適している。
【００５１】
図２において、成形品Ｐが抜き去られると、各エジェクタピン２０が成形時の位置に戻るに従い、各エジェクタピン２０に引かれて各成形コア３０や中子ピン５０も、成型時の初期位置に戻る。また、固定型１２も成形位置に戻って、次の成形品Ｐが成形されることになる。ところで、各成形コア３０は、アンダーカット部Ｐ１を含む成形品Ｐ全体の型抜き可能なストロークに応じた長さに設計する。これにより、成形品Ｐの型抜きにおける大きなストロークから小さなストロークまでに適宜対応することができる。
【００５２】
なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、成形品Ｐや各成形コア３０の形状は、具体的に図示したものに限定されるわけではない。
【００５３】
また、前記実施の形態では、各エジェクタピン２０や各成形コア３０を一対となる２つ設けたが、他に例えば、３つ放射状に設けたり、あるいは５つ、６つ、７つ以上と、ホルダー内の配置スペースに応じて適当な数だけ設けることができる。また、保持駒部２４を凸条として形成し、逃げ動作駒部３２を凸条に対して移動可能に嵌合する蟻溝として形成したが、逆の態様として、保持駒部２４を蟻溝として、逃げ動作駒部３２を凸条として形成しても良い。
【００５４】
また、前記各実施の形態では、エジェクタピン２０を角棒部材から構成したが、丸棒部材により構成しても良い。エジェクタピン２０は、各成形コア３０ごとに対応させて同数用意したが、他の構成として、エジェクタピン２０は１本だけにして、このエジェクタピン２０の先端部２３に、各成形コア３０の基端部にある逃げ動作駒部３２にそれぞれ対応した保持駒部２４を複数まとめて設けるようにしても良い。
【００５５】
また、前記実施の形態では、ホルダー４０内に、各成形コア３０の斜条３１に嵌合する斜溝４３を設けることで、各成形コア３０を傾斜方向に案内するガイド手段としたが、他に例えば、ホルダー４０の端面部に、各成形コア３０が貫通して傾斜した状態で移動可能に案内されるガイド孔を穿設してガイド手段としたり、あるいは、ホルダー４０の内部に、各成形コア３０の外周全体を摺動可能に案内する溝を設けてガイド手段としても良い。
【００５６】
さらに、前記各実施の形態では、ホルダー４０を可動型１３に対して一体に設けているが、可動型１３ではなく固定型１２に一体に設けるように構成しても良い。また、ホルダー４０自体を、可動型１３（または固定型１２）における中空部を囲む一部として構成しても良い。
【００５７】
すなわち、金型１１に直接ホルダー４０の内部空間の代わりとなる中空部を形成して、この中空部内に各成形コア３０等を収納すれば良い。これにより、ホルダー４０に関する部品点数が削減され、成形用金型装置１０全体の構成をよりいっそう簡易化することができ、コストを低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００５８】
アンダーカット処理機構は、予めホルダーに組み込んだ形でユニットとして構成することができ、ホルダーを介して可動型内に容易に後付けすることができる。かかる構成は、可動型が小型である場合のように、可動型自体にホルダーを収納する空間を穿設するような加工が容易な場合に適している。
【符号の説明】
【００５９】
Ｐ…成形品
Ｐ１…アンダーカット部
Ｐ２…センター孔
１０…成形用金型装置
１１…金型
１２…固定型
１３…可動型
１３ａ…縦孔
１３ｂ…ブロック
１４…可動取付板
１５…エジェクタ台板
２０…エジェクタピン
２１…ノックピン
２２…基端部
２３…先端部
２４…保持駒部
２５…ガイド溝
３０…成形コア
３０ａ…成形部
３１…斜条
３２…逃げ動作駒部
４０…ホルダー
４１…内部空間
４２…縦孔
４３…斜溝
５０…中子ピン
５０ａ…成形部
５１…係合ピン
５２…ガイド杆
５３…挿通孔
【技術分野】
【０００１】
本発明は、固定型と可動型から成る金型において、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、この種の成形用金型装置としては、例えば、特許文献１に記載されたルーズコアエジェクター装置が知られている。すなわち、成形品の内面を形成する金型のコアと、このコアを貫通してコア表面に対して傾斜配置された移動可能なルーズコア支持ロッドと、可動側型板と台座プレートとに係止されたガイド手段ロッドと、このガイド手段ロッドに対して相対的に摺動可能にエジェクタープレートの摺動路に配置されたスライドベースとを備え、ルーズコア支持ロッドがスライドベースの移動に連動するものである。
【０００３】
このようなルーズコアエジェクター装置において、ガイド手段ロッドの一端は、可動側型板の下面に形成された凹部に緊密に嵌め込まれたホルダーに係止されており、また、ルーズコア支持ロッドは、コアにガイド手段ロッドとほぼ同じ傾斜角度で形成された挿通孔を摺動可能に挿通して、この挿通孔がルーズコア支持ロッドの傾斜角度を設定する唯一の角度設定孔となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００２−３２６２３３号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、前述したような従来の技術では、ルーズコア支持ロッドのみならず、ガイド手段ロッドも傾斜配置されており、しかも、各々ロッドを同じ傾斜角度で移動させるための機構が、エジェクタープレートと可動側型板とに分散するように構成されている。従って、成形品のアンダーカット部の型抜きのために必要なアンダーカット部分形状を施した駒の移動量に比べて大きな設置スペースを要し、全体的に構造も複雑となり組み立てに手間と時間がかかり、コストダウンが難しいという問題点があった。
【０００６】
また、アンダーカット部が成形品の外側ないし内側の一方向にある場合にしか対応することができず、例えば、成形品の内側にセンター孔を有するボスが全体の型抜き方向と交差する斜め下方向へ突出しているような場合には、このような成形品を型抜きすることは不可能であった。そのため、成形可能な成形品におけるアンダーカット部の形状の他、その位置や数が非常に狭い範囲に限定されるという問題点があった。
【０００７】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、コンパクトに構成することが可能となり省スペース化の要請に応じることができ、金型への加工および組み込みが容易で、また、構成が簡単であり組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができ、特に、成形品の内側にセンター孔を有するボスが全体の型抜き方向と交差する斜め下方向へ突出している場合も、容易に型抜きすることができるアンダーカット処理機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
［１］固定型（１２）と可動型（１３）から成る金型（１１）において、成形品（Ｐ）の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部（Ｐ１）を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記アンダーカット部（Ｐ１）は、センター孔（Ｐ２）を有するボス形状であり、
前記アンダーカット部（Ｐ１）のセンター孔（Ｐ２）を成形する中子ピン（５０）と、
前記アンダーカット部（Ｐ１）の外周側を成形すべく、前記中子ピン（５０）を外側から囲む状態に複数に分割されて配置される成形コア（３０）と、
前記固定型（１２）または前記可動型（１３）に内設され前記各成形コア（３０）を収納するホルダー（４０）とを有し、
前記中子ピン（５０）は、前記成形品（Ｐ）の型抜き方向への移動に伴い前記センター孔（Ｐ２）からの逃げ方向に後退可能に前記ホルダー（４０）内に支持され、
前記各成形コア（３０）は、前記ホルダー（４０）内に収まり前記中子ピン（５０）を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、前記ホルダー（４０）外に一部が突出して前記中子ピン（５０）から互いに離れる離型位置とに移動可能に前記ホルダー（４０）に収納され、
前記ホルダー（４０）内に、前記各成形コア（３０）を成形位置から離型位置に向けて、成形品（Ｐ）の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部（Ｐ１）から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段（４３）を設けた
ことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【０００９】
［２］前記ホルダー（４０）の内壁および前記各成形コア（３０）の外壁の何れか一方に、前記各成形コア（３０）がそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝（４３）を設け、
何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝（４３）にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条（３１）を設け、
前記ホルダー（４０）内にある各斜溝（４３）または各斜条（３１）を前記ガイド手段（４３）とした
ことを特徴とする［１］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１０】
［３］前記各成形コア（３０）に対応して、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する複数のエジェクタピン（２０）を有し、
前記ホルダー（４０）は、前記各エジェクタピン（２０）の先端部が移動可能に案内される状態で前記可動型（１３）に内設され、
前記各成形コア（３０）は、それぞれの基端部が前記エジェクタピン（２０）の先端部に対して前記離隔方向に摺動可能に連結された
ことを特徴とする［１］または［２］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１１】
［４］前記各成形コア（３０）を、前記成形品（Ｐ）の型抜きストロークに応じた長さに設計する
ことを特徴とする［１］，［２］または［３］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１２】
［５］前記ホルダー（４０）自体を、該ホルダー（４０）を設ける前記可動型（１３）または前記固定型（１２）の一部として構成した
ことを特徴とする［１］，［２］，［３］または［４］に記載のアンダーカット処理機構。
【００１３】
前記本発明は次のように作用する。
前記［１］に記載のアンダーカット処理機構によれば、成形品（Ｐ）のボス形状のアンダーカット部（Ｐ１）にあるセンター孔（Ｐ２）を成形する中子ピン（５０）と、アンダーカット部（Ｐ１）の外周側を成形する成形コア（３０）とを備え、成形コア（３０）はホルダー（４０）に収納され、中子ピン（５０）を外側から囲む状態に複数に分割されて配置される。
【００１４】
中子ピン（５０）は、成形品（Ｐ）の型抜き方向への移動に伴いセンター孔（Ｐ２）からの逃げ方向に後退可能にホルダー（４０）内に支持される。一方、各成形コア（３０）は、ホルダー（４０）内に収まり中子ピン（５０）を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、ホルダー（４０）外に一部が突出して中子ピン（５０）から互いに離れる離型位置とに移動可能にホルダー（４０）に収納される。これにより、センター孔（Ｐ２）を有するボス形状のアンダーカット部（Ｐ１）が型抜き方向と交差する方向へ突き出す成形品（Ｐ）も、容易に型抜きすることが可能となる。
【００１５】
しかも、成形品（Ｐ）の型抜き時には、ホルダー（４０）内に設けてあるガイド手段（４３）により、各成形コア（３０）が成形位置から離型位置に向かって、成形品（Ｐ）の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部（Ｐ１）から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内される。これにより、各成形コア（３０）は、成形位置から離型位置に確実に移動することができる。
【００１６】
以上のようなアンダーカット処理機構によれば、全体的な構造の簡易化が可能となり、製造コストを大幅に低減することが可能となる。また、各成形コア（３０）を支持する部材を、エジェクタ台板や可動型（１３）に分散させることなく、ホルダー（４０）を介して固定型（１２）または可動型（１３）の何れか一方にのみに集中して配設することができる。これにより、コンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請に応じることができ、金型（１１）への加工および組み込みが容易となる。
【００１７】
前記ガイド手段（４３）としては、具体的には前記［２］に記載したように、ホルダー（４０）の内壁および各成形コア（３０）の外壁の何れか一方に、前記各成形コア（３０）がそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝（４３）を設け、何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝（４３）にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条（３１）を設けて、ホルダー（４０）内にある各斜溝（４３）または各斜条（３１）を前記ガイド手段（４３）とすれば良い。
【００１８】
これにより、各成形コア（３０）の移動は、各成形コア（３０）自体とホルダー（４０）とに設けられた斜溝（４３）および斜条（３１）の嵌合関係によって確実かつ円滑に案内されると共に、型抜き時における負荷も一箇所に集中することがなく分散されるので、耐久性が高められる。また、設計時における高い精度出しも緩和されるため、さらなるコストダウンが可能となる。
【００１９】
前記［３］に記載のアンダーカット処理機構は、成形品（Ｐ）の型抜き時に、型抜き方向に駆動されるエジェクタピン（２０）の突き出し動作に応じて作動する。成形が終わり可動型（１３）から固定型（１２）が離れると、成形品（Ｐ）の外面側が現われる。次いでエジェクタピン（２０）が型抜きのために、成形品（Ｐ）を可動型（１３）から離脱させるように突き出し動作し、該エジェクタピン（２０）の先端部はホルダー（４０）内を移動する。
【００２０】
ホルダー（４０）内では、エジェクタピン（２０）の先端部に連結されている成形コア（３０）が、エジェクタピン（２０）の突き出し動作に伴って、ホルダー（４０）にあるガイド手段（４３）により、型抜き方向および離隔方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に案内される。これにより、各成形コア（３０）も成形位置から離型位置に確実に移動するので、成形品（Ｐ）のアンダーカット部（Ｐ１）が型抜き可能な状態となり、成形品（Ｐ）全体を容易に金型（１１）から取り外すことができる。
【００２１】
前記［４］に記載のアンダーカット処理機構によれば、各成形コア（３０）を成形品（Ｐ）の型抜きストロークに応じた長さに設定する。これにより、成形品（Ｐ）の型抜きにおける大きなストロークから小さなストロークまで、自在に対応することが可能となる。
【００２２】
前記［５］に記載のアンダーカット処理機構によれば、ホルダー（４０）自体を、該ホルダー（４０）を設ける可動型（１３）または固定型（１２）における中空部を囲むような一部として構成する。すなわち、金型（１１）に直接ホルダー（４０）の内部空間の代わりとなる中空部を形成して、この中空部内に中子ピン（５０）や各成形コア（３０）を収納すれば良い。これにより、ホルダー部品が不要となって部品点数が削減され、装置全体の構成をより簡易化することができ、いっそうコストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【００２３】
本発明に係るアンダーカット処理機構によれば、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部がある成形品のうち、特にセンター孔を有するボス形状のアンダーカット部がある場合でも、容易に型抜きすることができる。
【００２４】
しかも、コンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請に応じることができ、金型への加工および組み込みが容易で、また、構成が簡単であり組み立てに手間と時間がかからず、コストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する縦断面図である。
【図２】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する縦断面図である。
【図３】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時における動作を説明する別角度から観た縦断面図である。
【図４】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時から型抜き時に至る過程の動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図５】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の成形時から型抜き時に至る過程の動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図６】本発明の実施の形態に係る成形用金型装置およびアンダーカット処理機構の型抜き時における動作を説明する別角度から見た縦断面図である。
【図７】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の全体の外観を示す斜視図である。
【図８】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの一部を外して内部を示す斜視図である。
【図９】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピン突出終了時における外観を示す斜視図である。
【図１０】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピン突出終了時におけるホルダーの一部を外して内部を示す斜視図である。
【図１１】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１２】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１３】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１４】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダーの内部を示す斜視図である。
【図１５】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のホルダー単体の内部を示す斜視図である。
【図１６】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の中子ピンを示す斜視図である。
【図１７】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構のエジェクタピンと成形コアの嵌合を示す斜視図である。
【図１８】本発明の実施の形態に係るアンダーカット処理機構の中子ピンの逃げ方向への移動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００２６】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施の形態を説明する。
図１〜図６は、本実施の形態に係る成形用金型装置１０を構成する金型１１およびアンダーカット処理機構の動作を説明するための縦断面図である。図１は、成形品Ｐの成形時の状態を示し、図２は、成形品Ｐの型抜き時の状態を示している。図３〜図６は、図１，図２に示す縦断面図とは直交する方向からの縦断面図であり、成型時から型抜き時に至る経過ごとの状態を示している。
【００２７】
成形用金型装置１０は、成形品Ｐを金型１１によって成形する装置である。ここでの成形品Ｐは、図３に示すように全体的に板状部材であり、その内面側にアンダーカット部Ｐ１を有している。アンダーカット部Ｐ１は、センター孔Ｐ２を有する管状のアンダーカットボスである。アンダーカット部Ｐ１は、成形品Ｐの水平な内面に対して斜め下方へ、すなわち水平面に対して垂直な型抜き方向と交差する方向へ突き出ている。なお、成形品Ｐの材料は、プラスチック等の合成樹脂に限らず鉄や銅等の金属も該当する。
【００２８】
図１および図２に示すように、成形用金型装置１０の金型１１は、成形品Ｐの外面側を成形する固定型１２と、成形品Ｐのアンダーカット部Ｐ１を含む内面側を成形する可動型１３とから成る。また、可動型１３の下方には可動取付板１４が設置されており、可動型１３と可動取付板１４との間に、２枚重ねの板材から成るエジェクタ台板１５が上下方向に駆動可能に配設されている。
【００２９】
本願発明の根幹を成すアンダーカット処理機構は、成形品Ｐの型抜き時にアンダーカット部Ｐ１を型抜き可能な状態とするものであり、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する一対のエジェクタピン２０，２０と、各エジェクタピン２０の先端部２３が摺動可能に案内されるホルダー４０と、各エジェクタピン２０の先端部２３にそれぞれ連結され、ホルダー４０内に移動可能に配される一対の成形コア３０，３０と、前記アンダーカット部Ｐ１にあるセンター孔Ｐ２を成形する中子ピン５０等を有する。
【００３０】
図１および図２に示すように、各エジェクタピン２０は角棒部材から形成されており、それぞれエジェクタ台板１５上に互いに平行な状態で立設されている。各エジェクタピン２０の基端部２２が、ノックピン２１を介してエジェクタ台板１５に固定されている。各エジェクタピン２０は、エジェクタ台板１５の上方への移動に伴い型抜き方向に駆動されて突き出し動作する。各エジェクタピン２０の先端部２３は、次述するホルダー４０内に摺動可能に挿通している。可動型１３には、各エジェクタピン２０が貫通する縦孔１３ａが穿設されており、かかる部位は別体のブロック１３ｂとして組み合わせると良い。
【００３１】
ホルダー４０は、可動型１３内に収容される状態で、該可動型１３に一体に内設されている。図７および図８に示すように、ホルダー４０は、２つの対称な部品を組み合わせて成り、上端面と下端面が開口する内部空間４１を備えた箱状に形成されている。図１５に示すように、ホルダー４０の下部には、前記各エジェクタピン２０の先端部２３が摺動可能に挿通する一対の縦孔４２，４２が形成されている。
【００３２】
ホルダー４０（の内部空間４１）内において、前記各エジェクタピン２０の先端部２３の間となる中間位置には、前記アンダーカット部Ｐ１のセンター孔Ｐ２を成形する中子ピン５０が配置されている。ここで中子ピン５０は、成形品Ｐの型抜き方向への移動、すなわち前記各エジェクタピン２０の上方への摺動に伴って、前記センター孔Ｐ２からの逃げ方向に後退可能に支持されている。中子ピン５０の上端側が、センター孔Ｐ２の内径に合致する円柱形の成形部５０ａとなっている。
【００３３】
詳しく言えば中子ピン５０は、前記アンダーカット部Ｐ１が斜め下方へ突出する傾斜角度と同一の傾斜角度で傾く状態に配されている。中子ピン５０の下端部には、その両側に位置する各エジェクタピン２０の対向面にそれぞれ形成されたガイド溝２５に対して、相対的に押し引き可能に案内される状態で嵌る係合ピン５１が両側に突設されている。ここでガイド溝２５は、中子ピン５０の傾斜角度と同一の傾斜角度で傾く状態に形成されている。
【００３４】
ホルダー４０内には、中子ピン５０の軸心と直交するガイド杆５２が架設されており、中子ピン５０には、このガイド杆５２が相対的に移動可能に貫通する挿通孔５３が穿設されている。図３〜図６に示すように、前記各エジェクタピン２０の上方への摺動に伴って、各エジェクタピン２０のガイド溝２５に嵌っている係合ピン５１を介して中子ピン５０は押されることにより、中子ピン５０の挿通孔５３に貫通しているガイド杆５２に沿って、センター孔Ｐ２からの逃げ方向に後退するように設定されている。
【００３５】
また、ホルダー４０内には、前記アンダーカット部Ｐ１の外周側を成形する成形コア３０が、前記中子ピン５０を外側から囲む状態に複数に分割されて配置されている。ここで成形コア３０は、左右対称となる一対の駒形状の部材として分割されており、各成形コア３０は、それぞれ前記中子ピン５０を間にして左右対称に並ぶ状態で同期して移動可能に配置されている。
【００３６】
すなわち、各成形コア３０は、ホルダー４０内に収まり中子ピン５０を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置（図１参照）と、ホルダー４０外に一部が突出して中子ピン５０から互いに離れる離型位置（図２参照）とに移動可能に、ホルダー４０に収納されている。なお、各成形コア３０が互いに対向する上側面に、アンダーカット部Ｐ１の外周形状に合致する成形部３０ａ（図９参照）が凹設されている。
【００３７】
図１５に示すように、ホルダー４０の内部空間４１の内壁には、成形品Ｐの型抜き時に各成形コア３０を成形位置から離型位置に向けて、図１中で上方向となる型抜き方向、および該型抜き方向と直角に交差してアンダーカット部Ｐ１から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段が設けられている。このガイド手段は一対の斜溝４３，４３であり、各斜溝４３は、左右対称にＶ字形をなすように、内壁の前後にそれぞれ矩形状断面の凹溝として設けられている。
【００３８】
一方、前記各成形コア３０の外壁の前後には、それぞれ前記斜溝４３に摺動可能に嵌合する斜条３１が凸設されている。ここで斜条３１は、成形コア３０の外壁とホルダー４０の内壁の何れに設けても良く、何れか他方に斜溝４３を設けることになる。要するに、各成形コア３０が型抜き動作時に、前述した傾斜方向に移動可能に案内される構成であれば良い。
【００３９】
図８，図１０に示すように、各成形コア３０は、各エジェクタピン２０の先端部２３に対して、前記型抜き方向（図１中で上方向）と直角に交差するアンダーカット部Ｐ１から離れる離隔方向（図１中で左右方向）に摺動可能に基端部が連結されている。各エジェクタピン２０の先端部２３には、ホルダー４０内で型抜き方向に摺動可能に配される保持駒部２４が設けられている。一方、成形コア３０の基端部には、前記保持駒部２４に対して、前記離隔方向に摺動可能に連結される逃げ動作駒部３２が設けられている。
【００４０】
図６に示すように、保持駒部２４は、エジェクタピン２０の軸方向（図６中で上下方向）と直角に交わる左右方向に延びる凸条として、エジェクタピン２０の先端部２３の上端面に形成されている。一方、成形コア３０の逃げ動作駒部３２は、保持駒部２４の凸条に対して左右方向に移動可能に嵌合する蟻溝として形成されている。保持駒部２４と逃げ動作駒部３２とは、互いに押し引き可能に連結されており、エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い成形コア３０が前記傾斜方向に移動するように設定されている。
【００４１】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
図１に示すように、成形用金型装置１０によって成形品Ｐが成形される。この時、可動型１３に収容されているホルダー４０内では、一対の成形コア３０，３０が中子ピン５０を全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置にある。このような状態で、各成形コア３０の成形部３０ａに囲まれた空間でアンダーカット部Ｐ１の外周側が成形されると共に、中子ピン５０の成形部５０ａによりセンター孔Ｐ２が成形される。
【００４２】
図２に示すように、成形が終了して固定型１２が可動型１３から離れると、エジェクタ台板１５が上方に駆動される。すると、エジェクタ台板１５上に立設されている一対のエジェクタピン２０，２０が、可動型１３（ブロック１３ｂ）にある縦孔１３ａを貫通した状態で、型抜き方向である上方に向かって突き出し動作を行う。
【００４３】
この時、ホルダー４０内では、各エジェクタピン２０の先端部２３に連結されている各成形コア３０が、エジェクタピン２０と一緒に型抜き方向へ摺動すると共に、該エジェクタピン２０の先端部２３に対して、型抜き方向と直角に交差する離隔方向にも同時に摺動する。これに伴いエジェクタピン２０と成形コア３０との位置関係は、互いに相対的に変位する。
【００４４】
エジェクタピン２０の先端部２３には、可動型１３内で型抜き方向に摺動可能に配される保持駒部２４があり、成形コア３０の基端部には、前記保持駒部２４に対して離隔方向に摺動可能に連結される逃げ動作駒部３２がある。このため、エジェクタピン２０の先端部２３と成形コア３０の基端部とを、互いに押し引き可能な状態で相対的に変位するよう確実に連結することができる。
【００４５】
各エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い各成形コア３０は、それぞれ斜条３１がホルダー４０内のガイド手段である斜溝４３に摺動可能に嵌合して案内されつつ、型抜き方向と離隔方向にそれぞれ同時に移動する傾斜方向に移動する。これにより、各成形コア３０から成形品Ｐのアンダーカット部Ｐ１が型抜き可能な状態となる。
【００４６】
また、図３〜図６に示すように、各エジェクタピン２０の突き出し動作に伴い、これらの間にある中子ピン５０は、その下端部にある係合ピン５１が各エジェクタピン２０の対向面にあるガイド溝２５内を相対的に移動しつつ押される。ここで中子ピン５０は、その挿通孔５３に貫通しているガイド杆５２に沿って、図１８に示すように、センター孔Ｐ２からの逃げ方向に所定量だけ後退することになる。
【００４７】
これにより、中子ピン５０も、アンダーカット部Ｐ１のセンター孔Ｐ２内から離脱するので、成形品Ｐは完全に型抜き可能な状態となる。以上のように、成形品Ｐの型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部Ｐ１にセンター孔Ｐ２があるような場合でも、極めて容易に成形ないし型抜きすることが可能となる。
【００４８】
前述したように、ホルダー４０内における各成形コア３０の移動は、成形コア３０の斜条３１と、ホルダー４０にあるガイド手段としての斜溝４３との嵌合関係によって、確実かつ円滑に前記傾斜方向に案内される。しかも、型抜き時における負荷も一箇所に集中することがなく分散されるので、耐久性が高められる。また、設計時における高い精度出しも緩和されるため、さらなるコストダウンが可能となる。
【００４９】
また、本実施の形態に係るアンダーカット処理機構によれば、成形コア３０を、エジェクタ台板１５や可動型１３に分散させることなく、ホルダー４０を介して可動型１３のみに集中して配設することができる。これにより、成形用金型装置１０全体をコンパクトに構成することが可能となり、省スペース化の要請にも応じることができ、金型１１への加工および組み込みが容易となる。
【００５０】
特に、アンダーカット処理機構は、図７に示すように、予めホルダー４０に組み込んだ形でユニットとして構成することができ、図１に示すように、ホルダー４０を介して可動型１３内に容易に後付けすることができる。かかる構成は、可動型１３が小型である場合のように、可動型１３自体にホルダー４０を収納する空間を穿設するような加工が容易な場合に適している。
【００５１】
図２において、成形品Ｐが抜き去られると、各エジェクタピン２０が成形時の位置に戻るに従い、各エジェクタピン２０に引かれて各成形コア３０や中子ピン５０も、成型時の初期位置に戻る。また、固定型１２も成形位置に戻って、次の成形品Ｐが成形されることになる。ところで、各成形コア３０は、アンダーカット部Ｐ１を含む成形品Ｐ全体の型抜き可能なストロークに応じた長さに設計する。これにより、成形品Ｐの型抜きにおける大きなストロークから小さなストロークまでに適宜対応することができる。
【００５２】
なお、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、成形品Ｐや各成形コア３０の形状は、具体的に図示したものに限定されるわけではない。
【００５３】
また、前記実施の形態では、各エジェクタピン２０や各成形コア３０を一対となる２つ設けたが、他に例えば、３つ放射状に設けたり、あるいは５つ、６つ、７つ以上と、ホルダー内の配置スペースに応じて適当な数だけ設けることができる。また、保持駒部２４を凸条として形成し、逃げ動作駒部３２を凸条に対して移動可能に嵌合する蟻溝として形成したが、逆の態様として、保持駒部２４を蟻溝として、逃げ動作駒部３２を凸条として形成しても良い。
【００５４】
また、前記各実施の形態では、エジェクタピン２０を角棒部材から構成したが、丸棒部材により構成しても良い。エジェクタピン２０は、各成形コア３０ごとに対応させて同数用意したが、他の構成として、エジェクタピン２０は１本だけにして、このエジェクタピン２０の先端部２３に、各成形コア３０の基端部にある逃げ動作駒部３２にそれぞれ対応した保持駒部２４を複数まとめて設けるようにしても良い。
【００５５】
また、前記実施の形態では、ホルダー４０内に、各成形コア３０の斜条３１に嵌合する斜溝４３を設けることで、各成形コア３０を傾斜方向に案内するガイド手段としたが、他に例えば、ホルダー４０の端面部に、各成形コア３０が貫通して傾斜した状態で移動可能に案内されるガイド孔を穿設してガイド手段としたり、あるいは、ホルダー４０の内部に、各成形コア３０の外周全体を摺動可能に案内する溝を設けてガイド手段としても良い。
【００５６】
さらに、前記各実施の形態では、ホルダー４０を可動型１３に対して一体に設けているが、可動型１３ではなく固定型１２に一体に設けるように構成しても良い。また、ホルダー４０自体を、可動型１３（または固定型１２）における中空部を囲む一部として構成しても良い。
【００５７】
すなわち、金型１１に直接ホルダー４０の内部空間の代わりとなる中空部を形成して、この中空部内に各成形コア３０等を収納すれば良い。これにより、ホルダー４０に関する部品点数が削減され、成形用金型装置１０全体の構成をよりいっそう簡易化することができ、コストを低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００５８】
アンダーカット処理機構は、予めホルダーに組み込んだ形でユニットとして構成することができ、ホルダーを介して可動型内に容易に後付けすることができる。かかる構成は、可動型が小型である場合のように、可動型自体にホルダーを収納する空間を穿設するような加工が容易な場合に適している。
【符号の説明】
【００５９】
Ｐ…成形品
Ｐ１…アンダーカット部
Ｐ２…センター孔
１０…成形用金型装置
１１…金型
１２…固定型
１３…可動型
１３ａ…縦孔
１３ｂ…ブロック
１４…可動取付板
１５…エジェクタ台板
２０…エジェクタピン
２１…ノックピン
２２…基端部
２３…先端部
２４…保持駒部
２５…ガイド溝
３０…成形コア
３０ａ…成形部
３１…斜条
３２…逃げ動作駒部
４０…ホルダー
４１…内部空間
４２…縦孔
４３…斜溝
５０…中子ピン
５０ａ…成形部
５１…係合ピン
５２…ガイド杆
５３…挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項１】
固定型と可動型から成る金型において、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記アンダーカット部は、センター孔を有するボス形状であり、
前記アンダーカット部のセンター孔を成形する中子ピンと、
前記アンダーカット部の外周側を成形すべく、前記中子ピンを外側から囲む状態に複数に分割されて配置される成形コアと、
前記固定型または前記可動型に内設され前記各成形コアを収納するホルダーとを有し、
前記中子ピンは、前記成形品の型抜き方向への移動に伴い前記センター孔からの逃げ方向に後退可能に前記ホルダー内に支持され、
前記各成形コアは、前記ホルダー内に収まり前記中子ピンを全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、前記ホルダー外に一部が突出して前記中子ピンから互いに離れる離型位置とに移動可能に前記ホルダーに収納され、
前記ホルダー内に、前記各成形コアを成形位置から離型位置に向けて、成形品の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段を設けた
ことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【請求項２】
前記ホルダーの内壁および前記各成形コアの外壁の何れか一方に、前記各成形コアがそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝を設け、
何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条を設け、
前記ホルダー内にある各斜溝または各斜条を前記ガイド手段とした
ことを特徴とする請求項１に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項３】
前記各成形コアに対応して、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する複数のエジェクタピンを有し、
前記ホルダーは、前記各エジェクタピンの先端部が移動可能に案内される状態で前記可動型に内設され、
前記各成形コアは、それぞれの基端部が前記エジェクタピンの先端部に対して前記離隔方向に摺動可能に連結された
ことを特徴とする請求項１または２に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項４】
前記各成形コアを、前記成形品の型抜きストロークに応じた長さに設計する
ことを特徴とする請求項１，２または３に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項５】
前記ホルダー自体を、該ホルダーを設ける前記可動型または前記固定型の一部として構成した
ことを特徴とする請求項１，２，３または４に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項１】
固定型と可動型から成る金型において、成形品の型抜き方向と交差する方向へ突き出したアンダーカット部を型抜き可能とするアンダーカット処理機構であって、
前記アンダーカット部は、センター孔を有するボス形状であり、
前記アンダーカット部のセンター孔を成形する中子ピンと、
前記アンダーカット部の外周側を成形すべく、前記中子ピンを外側から囲む状態に複数に分割されて配置される成形コアと、
前記固定型または前記可動型に内設され前記各成形コアを収納するホルダーとを有し、
前記中子ピンは、前記成形品の型抜き方向への移動に伴い前記センター孔からの逃げ方向に後退可能に前記ホルダー内に支持され、
前記各成形コアは、前記ホルダー内に収まり前記中子ピンを全周方向から囲んで互いに隣接する成形位置と、前記ホルダー外に一部が突出して前記中子ピンから互いに離れる離型位置とに移動可能に前記ホルダーに収納され、
前記ホルダー内に、前記各成形コアを成形位置から離型位置に向けて、成形品の型抜き方向、および該型抜き方向と交差して前記アンダーカット部から離れる離隔方向に、それぞれ同時に移動する傾斜方向に沿って案内するガイド手段を設けた
ことを特徴とするアンダーカット処理機構。
【請求項２】
前記ホルダーの内壁および前記各成形コアの外壁の何れか一方に、前記各成形コアがそれぞれ移動する前記傾斜方向に沿って延びる複数の斜溝を設け、
何れか他方に、同じく前記傾斜方向に沿って延び前記各斜溝にそれぞれ摺動可能に嵌合する複数の斜条を設け、
前記ホルダー内にある各斜溝または各斜条を前記ガイド手段とした
ことを特徴とする請求項１に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項３】
前記各成形コアに対応して、型抜き方向に駆動されて突き出し動作する複数のエジェクタピンを有し、
前記ホルダーは、前記各エジェクタピンの先端部が移動可能に案内される状態で前記可動型に内設され、
前記各成形コアは、それぞれの基端部が前記エジェクタピンの先端部に対して前記離隔方向に摺動可能に連結された
ことを特徴とする請求項１または２に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項４】
前記各成形コアを、前記成形品の型抜きストロークに応じた長さに設計する
ことを特徴とする請求項１，２または３に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項５】
前記ホルダー自体を、該ホルダーを設ける前記可動型または前記固定型の一部として構成した
ことを特徴とする請求項１，２，３または４に記載のアンダーカット処理機構。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【公開番号】特開２０１０−１８８６４０（Ｐ２０１０−１８８６４０Ａ）
【公開日】平成２２年９月２日（２０１０．９．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−３６１１７（Ｐ２００９−３６１１７）
【出願日】平成２１年２月１９日（２００９．２．１９）
【出願人】（３０２０６７９４７）株式会社テクノクラーツ (19)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年９月２日（２０１０．９．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年２月１９日（２００９．２．１９）
【出願人】（３０２０６７９４７）株式会社テクノクラーツ (19)
【Ｆターム（参考）】
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