アンテナ、アレイアンテナおよびセクタアンテナ
【課題】小型であるとともに、前方と後方との利得の比(F/B比)が大きいアンテナ等を提供する。
【解決手段】アンテナ140は、反射板120と、ダイポールアンテナ110と、反射板120から遠い側に、ダイポールアンテナ110から予め定められた距離の位置に設けられた無給電素子130とを備えている。無給電素子130は、外形が長方形であるループ状であって、長手方向が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に設けられるとともに、長手方向の長さxがダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている。
【解決手段】アンテナ140は、反射板120と、ダイポールアンテナ110と、反射板120から遠い側に、ダイポールアンテナ110から予め定められた距離の位置に設けられた無給電素子130とを備えている。無給電素子130は、外形が長方形であるループ状であって、長手方向が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に設けられるとともに、長手方向の長さxがダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、アレイアンテナおよびセクタアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信の基地局用のアンテナ(基地局アンテナ)には、電波が放射される方向に対応して設定されたセクタ毎に電波を放射するセクタアンテナが複数組み合わせて用いられている。セクタアンテナには、ダイポールアンテナなどのアンテナ素子をアレイ状に並べたアレイアンテナが用いられている。
【0003】
特許文献1には、ダイポールアンテナ等の給電アンテナと、これに関連して配置された数波長以下の有限長反射板とを含む有限長反射板付アンテナ素子において、前記給電アンテナを含む仮想平面内で、かつ、そのアンテナを囲むように周囲長が約2波長の無給電ループ素子を設置したアンテナ素子が記載されている。
特許文献2には、平面基板に、互いに直交し、中央で交差するように形成された第1及び第2のダイポールアンテナと、前記平面基板に、前記第1及び第2のダイポールアンテナの周囲を環状に取り囲むように形成された無給電素子とを備える平面アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−43604号公報
【特許文献2】特開2009−225030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動体通信用の基地局用のセクタアンテナには、設置スペースおよび受風荷重が低減できるように小型であるとともに、アンテナの後方および側方への放射が抑制されていることが求められている。
本発明の目的は、小型であるとともに、前方と後方との利得の比(F/B比)が大きいアンテナ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明が適用されるアンテナは、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの前記反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備えている。
このようなアンテナにおいて、ループ状の無給電素子は、ループ状の無給電素子が含まれる仮想面が、反射板に垂直な方向と交差するように設けられていることを特徴とする。
また、ダイポールアンテナを構成する第1の導体パタンは、反射板から遠い側に凸部を有する第1の誘電体基板に構成され、無給電素子は、無給電素子を構成するループ状の第2の導体パタンが、ループ状の第2の導体パタンの内側に開口部を有する第2の誘電体基板に構成され、第2の誘電体基板の開口部に、第1の誘電体基板の凸部が嵌めこまれていることを特徴とすることができる。
さらに、ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナが使用される自由空間波長λに対して、ダイポールアンテナの電気的な長さが大略0.5λであって、ダイポールアンテナの長さ方向の反射板の幅が大略0.5λであることを特徴とすることができる。
【0007】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用されるアレイアンテナは、それぞれが、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列している。
さらにまた、他の観点から捉えると、本発明が適用されるセクタアンテナは、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナと、アレイアンテナを収納するレドームとを備えている。
このようなセクタアンテナにおいて、複数のアンテナのそれぞれのアンテナに送受信される送受信信号の位相を設定する移相器をさらに備えていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型であるとともに、前方と後方との利得の比(F/B比)が大きいアンテナ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態が適用される移動通信用の基地局アンテナの全体構成の一例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態におけるセクタアンテナの構成の一例を示す図である。
【図3】セクタアンテナにおけるダイポールアンテナと、移相器および制御器との接続関係を示す図である。
【図4】第1の実施の形態におけるアンテナの上面図と断面図とを示す図である。
【図5】ダイポールアンテナと無給電素子とのパタンを示す図である。
【図6】外形が長方形のループ状の無給電素子を用いた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図7】無給電素子を設けない場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図8】直線(棒)状の無給電素子を設けた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態におけるセクタアンテナの構成の一例を示す図である。
【図10】第2の実施の形態におけるアンテナの上面図と断面図とを示す図である。
【図11】外形が楕円形のループ状の無給電素子を用いた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
<基地局アンテナ1>
図1は、第1の実施の形態が適用される移動通信用の基地局アンテナ1の全体構成の一例を示す図である。図1(a)は、基地局アンテナ1の鳥瞰図であり、図1(b)は、基地局アンテナ1の設置例を説明する図である。
基地局アンテナ1は、図1(a)に示すように、例えば鉄塔20に保持された複数のセクタアンテナ10−1〜10−6を備えている。そして、移動通信においては、図1(b)に示すように、基地局アンテナ1からの電波が到達する範囲をセル2とする。そして、基地局アンテナ1を中心として、セル2を水平面内において角度で分割して複数のセクタ3−1〜3−6が構成されている。
【0011】
図1では、例として6個のセクタアンテナ10−1〜10−6を備えている。ここでは、セクタアンテナ10−1〜10−6をそれぞれ区別しないときは、セクタアンテナ10と表記する。また、セクタ3−1〜3−6をそれぞれ区別しないときは、セクタ3と表記する。他の用語についても同様である。
それぞれのセクタアンテナ10は、図1(b)に示すように、メインローブ11の方向が予め定められたセクタ3に向くように配置されている。
【0012】
さらに、それぞれのセクタアンテナ10には、電波を放射するための送受信信号が供給されるケーブル31および後述する移相器300を駆動する制御器400に制御信号が供給されるケーブル32が接続されている。
そして、これらのケーブル31、32は、基地局(不図示)内に設けられた無線信号を生成する無線装置(不図示)および移相器300を制御する制御装置(不図示)に接続されている。
なお、送信信号が供給されるケーブル31は、通常、同軸ケーブルが用いられる。
【0013】
このようなセクタアンテナ10では、予め定められたセクタ3内に電波を放射することが好ましく、セクタ3外に電波を放射することは好ましくない。例えば、セクタアンテナ10−1が、メインローブ11の方向に対して逆方向のバックローブ12を有していると、バックローブ12は、セクタ3−1に対して逆方向に位置するセクタ3−4に電波を放射するセクタアンテナ10−4の放射する電波(メインローブ11)と干渉してしまう。よって、セクタアンテナ10では、後方および側方への放射が抑制されていることが好ましい。
すなわち、放射が最大となる方向(メインローブ11)と逆方向(バックローブ12)との利得の比(F/B比)が大きいことが求められる。よって、以下ではメインローブ11とバックローブ12との利得の比(F/B比)で説明する。
【0014】
また、基地局アンテナ1は、セル2内に電波を放射し、セルの範囲を越えて隣接するセルに電波を放射しないことが好ましい。このため、図1(a)に示すように、電波(ビーム)の放射方向を水平面から地上方向に角度θ傾けて(ビーム・チルト角θとして)、セル2外に電波が到達しないようにしている。
【0015】
<セクタアンテナ10>
図2は、第1の実施の形態におけるセクタアンテナ10の構成の一例を示す図である。
セクタアンテナ10は、反射板120と、反射板120上に配列された複数(ここでは例として5個)のダイポールアンテナ110−1〜110−5と、それぞれのダイポールアンテナ110−1〜110−5に対応して設けられたループ状の無給電素子130−1〜130−5とを備えている。ここでも、ダイポールアンテナ110−1〜110−5、無給電素子130−1〜130−5をそれぞれ区別しないときは、ダイポールアンテナ110、無給電素子130と表記する。
ここでは、反射板120と、1つのダイポールアンテナ110と、ダイポールアンテナ110に対応して設けられた無給電素子130とをまとめてアンテナ140と表記する。
図2では、反射板120は、5個のダイポールアンテナ110−1〜110−5に共通に設けられているが、ダイポールアンテナ110毎に分かれていると考えてもよい。
そして、反射板120と複数のダイポールアンテナ110と複数の無給電素子130とをまとめてアレイアンテナ100と表記する。
【0016】
それぞれのダイポールアンテナ110は、直線状の第1の素子部111と同じく直線状の第2の素子部112とを備えている。第1の素子部111と第2の素子部112とは、予め定められた間隔を介して、直線状に並べられている。そして、第1の素子部111および第2の素子部112のそれぞれの長さは、同じである。第1の素子部111と第2の素子部112とで、ダイポールを構成する。そして、第1の素子部111と第2の素子部112とが対向する部分において、第1の素子部111に接続され、第1の素子部111を接地電位に設定する接地導体部113を備えている。
また、ダイポールアンテナ110は、第1の素子部111と第2の素子部112とが対抗する部分において、第2の素子部112に接続され、第2の素子部112を接地電位に設定する接地導体部114を備えている。
すなわち、第1の素子部111と第2の素子部112とが「T」の横棒を、接地導体部113、114とが「T」の縦棒を構成している。
第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114は、銅などの導体で構成されている。
それぞれの無給電素子130は、反射板120から遠い側に、ダイポールアンテナ110から予め定められた距離の位置に設けられている。無給電素子130は、銅などの導体で構成されている。
【0017】
なお、ダイポールアンテナ110は、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114が設けられた側の裏面側に、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114とで平衡・不平衡変換回路(マイクロストリップ線路による平衡・不平衡変換回路)を構成するように形成された折返し導体から給電される。ここでは、折返し導体の記載を省略する。
【0018】
そして、アレイアンテナ100では、それぞれのダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とが構成する直線が互いに平行になるとともに、複数のダイポールアンテナ110のそれぞれの第1の素子部111と第2の素子部112との中央の位置が、第1の素子部111と第2の素子部112とが構成する直線と直交する直線上に並ぶように配列されている。アレイアンテナ100において、それぞれのダイポールアンテナ110は間隔Dpで配置されている。
よって、アレイアンテナ100は、図1(a)から分かるように水平偏波を放射する。
【0019】
反射板120のダイポールアンテナ110と対向する部分は、平坦部となっている。反射板120のダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向の両端部は、ダイポールアンテナ110と逆の方向に折り曲げられている。反射板120は、アルミニウム、銅などの導体で構成されている。
なお、アンテナ140の構成については、後に詳述する。
【0020】
また、セクタアンテナ10は、複数のダイポールアンテナ110のそれぞれに接続され、電波を出射するタイミング(位相)をずらす移相器300と、移相器300を制御するための制御器400とを備えている。なお、平衡・不平衡変換回路をさらに備えていてもよい。
そして、セクタアンテナ10は、アレイアンテナ100、移相器300、制御器400を覆う円筒状のレドーム200を備えている。レドーム200は、円筒状の側面201と円筒状の一方の端部を覆う底面202と、他方の端部を覆う蓋面203とを備えている。レドーム200は、FRP(fiber reinforced plastics)などの絶縁性の樹脂で構成されている。
そしてまた、セクタアンテナ10は、レドーム200の底面202に、移相器300に送信信号を給電するケーブル31が接続されるコネクタおよび制御器400に制御信号を供給するケーブル32が接続されるコネクタを備えている。
【0021】
なお、図2に示すセクタアンテナ10のアレイアンテナ100は、5個のアンテナ140から構成されているが、アンテナ140の個数は、5個に限らず、予め定められた個数とすればよい。
また、図2に示すセクタアンテナ10は、5個のアンテナ140を備えた1個のアレイアンテナ100から構成されているが、複数のアレイアンテナ100を並べることで構成されてもよい。
【0022】
また、図2では、アレイアンテナ100等を覆うレドーム200は円筒状としたが、断面が方形の筒状であってもよく、方形の一辺が円弧状となった筒状であってもよい。さらに、レドーム200の側面201の一部が開閉可能に構成されていてもよい。
【0023】
<移相器300、制御器400>
図3は、セクタアンテナ10におけるダイポールアンテナ110と、移相器300および制御器400との接続関係を示す図である。
ここでは、セクタアンテナ10のアレイアンテナ100が5個のダイポールアンテナ110(110−1、110−2、…、110−5)を備えているとして説明する。
移相器300には、ケーブル31を介して、送信信号が供給される。そして、移相器300から、ケーブル(符号無し)を介して、ダイポールアンテナ110−1、110−2、…、110−5のそれぞれに送信信号が供給される。
また、制御器400には、ケーブル32を介して、制御信号が供給される。そして、制御器400が、移相器300を制御して、ダイポールアンテナ110−1、110−2、…、110−5のそれぞれに供給される送受信信号の位相を設定する。
【0024】
移相器300は、アレイアンテナ100のそれぞれのダイポールアンテナ110−1〜110−5に送受信される送受信信号の開始タイミング(位相)をずらす。
送受信信号の開始タイミング(位相)をずらすことで、セクタアンテナ10から送受信される信号の垂直面内の指向性を制御する。すなわち、図1に示したように、セクタアンテナ10から放射される送信信号を地上方向に角度θ(ビーム・チルト角θ)傾けることで、セル2外に電波が到達することを抑制する。
【0025】
移相器300は、線路長を可変にすることにより、送受信信号が開始するタイミング(位相)を変化させる方式のものでもよく、長さの異なる複数のケーブルを用いてもよい。
また、線路長を可変にする方式の位相器300に代えて、誘電体の誘電率を利用して位相を可変にする方式のものを用いてもよい。
【0026】
また、移相器300が線路長を可変にして送受信信号が開始するタイミング(位相)を変化させる方式のものである場合、または誘電体の誘電率を利用して位相を可変にする方式のものである場合に、制御器400は、基地局が制御信号を供給するケーブル32に接続され、移相器300の位相を制御する。
【0027】
<アンテナ140>
図4は、第1の実施の形態におけるアンテナ140の上面図と断面図とを示す図である。図4(a)は、アンテナ140の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線での断面図である。
以下では、使用中心周波数における自由空間波長をλとする。
ダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線の長さDwは、大略0.5λである。すなわち、ダイポールアンテナ110は、0.5波長ダイポールアンテナを基本にしている。なお、インピーダンスマッチングの関係から、ダイポールアンテナ110の長さDwは、0.5λより若干小さい値に設定されている。
反射板120からダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央までは、距離Dhである。距離Dhは、例えば0.25λである。
また、第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向における、反射板120の平坦部幅は、幅Rwである。幅Rwは、例えば0.5λである。
そして、第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向における、反射板120の両端部の折り曲げ部は、ダイポールアンテナ110と反対側に幅Rhで折り曲げられている。折り曲げ部の幅Rhは、例えば0.05λである。
【0028】
無給電素子130は、反射板120に対して逆の側に、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央から距離Nd離れた位置に設けられている。距離Ndは、波長λに比べて十分小さい値であって、例えば0.1λである。
そして、無給電素子130は、外形が長方形であるループ状(幅Lw)であって、長手方向(長さx)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に沿って設けられている。一方、無給電素子130の短手方向(長さy)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向と直交する方向に設けられている。そして、短手方向の中央に第1の素子部111および第2の素子部112が位置するように設けられている。
さらに、ループ状の無給電素子130の外形の長方形が含まれる面は、反射板120の平坦部に平行に設けられている。
なお、ループ状の無給電素子130の長手方向の長さxは、例えばダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている(x<Dw)。また、無給電素子130の短手方向の長さyは、波長λに比べ十分に小さい値となっている。無給電素子130の短手方向の長さyは、例えば0.1λ前後である。
【0029】
無給電素子130は、ダイポールアンテナ110から電磁誘導で電力が供給され、波源となって電波を放射する。
なお、無給電素子130の長手方向の長さxが、ダイポールアンテナ110の長さDwに近づくと、ダイポールアンテナ110から放射された電波が反射されるので好ましくない。また、無給電素子130の長手方向の長さxが、ダイポールアンテナ110の長さDwに比べて小さすぎると、無給電素子130に電力が供給されなくなって、F/B比は大きくならない。
【0030】
また、無給電素子130の幅Lwは、広すぎるとループの内部(開口部)を塞ぐようになってしまうし、細すぎると電流が流れにくくなる。よって、無給電素子130の幅Lwの好ましい値は、1mm〜10mmであって、特に好ましいのは2mm〜7mmである。後述する無給電素子130の製造の点からも好ましい。
【0031】
そして、反射板120、ダイポールアンテナ110および無給電素子130を取り囲む内径Ddのレドーム200が設けられている。
上記の例(Rw=0.5λ、Rh=0.05λ、Dw≒0.5λ、Dh=0.25λ)であれば、レドーム200の内径Ddは、0.58λ以下に設定できる。
すなわち、ダイポールアンテナ110の電気的な長さDwと反射板120の幅Rwとが0.5λの大きさであって、反射板120とダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112との距離Dhを0.25λに設定しているので、レドーム200の内径Ddを小さく設定することができる。
【0032】
次に、ダイポールアンテナ110および無給電素子130の製造方法と組み立て方法を説明する。
図5は、ダイポールアンテナ110と無給電素子130とのパタンを示す図である。図5(a)はダイポールアンテナ110のパタンを示す図、図5(b)は無給電素子130のパタンを示す図、図5(c)はダイポールアンテナ110と無給電素子130とを組み合わせた図である。
【0033】
ダイポールアンテナ110は、図5(a)に示すように、第1の誘電体基板115上に設けられた銅箔の導体膜を、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114のパタン形状に加工することで形成される。なお、第1の誘電体基板115の第1の素子部111、第2の素子部112が設けられた側に、凸部116が設けられている。ここで、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114のパタン形状が第1の導体パタンの一例である。
【0034】
一方、無給電素子130は、図5(b)に示すように、第2の誘電体基板131上に設けられた銅箔の導体膜を、ループ状の無給電素子130のパタン形状に加工することで形成される。そして、第2の誘電体基板131のループ状の無給電素子130の内部に、開口部(スリット)132が設けられている。ここで、ループ状の無給電素子130のパタン形状が第2の導体パタンの一例である。
【0035】
そして、図5(c)に示すように、ダイポールアンテナ110を形成した第1の誘電体基板115の凸部116を、無給電素子130が形成された第2の誘電体基板131に設けられた開口部132に嵌め込むことでダイポールアンテナ110と無給電素子130とが組み立てられる。
なお、図5では、凸部116および開口部132をそれぞれ1つ設けたが、複数の凸部116および複数の開口部132を設けてもよい。
また、ダイポールアンテナ110と無給電素子130とを位置がずれないように固定するため、ダイポールアンテナ110を形成した第1の誘電体基板115と、無給電素子130を形成した第2の誘電体基板131とをハンダにより固定できるように、接続部(図における133)を設けてもよい。
このようにすることで、ダイポールアンテナ110に対して予め定められた位置に、無給電素子130を容易に設けることができる。
【0036】
なお、同様にして、ダイポールアンテナ110を、反射板120に対して組立てればよい。すなわち、第1の誘電体基板115の接地導体部113、114が形成された側を嵌め込むことができる開口部を反射板120に設け、第1の誘電体基板115を嵌め込めばよい。なお、ダイポールアンテナ110の接地導体部113、114が反射板120に接触しないように、反射板120には孔を設けておくのが好ましい。
【0037】
以上説明したように、ダイポールアンテナ110および無給電素子130を、それぞれ第1の誘電体基板115、第2の誘電体基板131上に設けられた銅箔の導体膜を加工して製造することにより、量産を可能とするとともに、パタン精度のばらつきが低減できる。また、容易に平衡・不平衡変換回路も製造することができる。
【0038】
なお、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114は、銅(銅箔)で形成したが、これに限られるものではなく、アルミニウム、銀、金などであってもよい。
【0039】
次に、第1の実施の形態におけるアンテナ140の指向特性について説明する。なお、指向特性はシミュレーションおよび一部は実測によって求めた。
図6は、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図6(a)は、アンテナ140の上面図、図6(b)はアンテナ140の断面図および図6(c)はアンテナ140の指向特性を示している。
図6(a)、(b)において、ダイポールアンテナ110の長さDwを0.47λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の放射導体の中心から無給電素子130までの距離Ndを0.1λ、無給電素子130の外形における長手方向の長さxを0.39λ、短手方向の長さyを0.11λとした場合の指向特性を求めた。
なお、前述したように、反射板120の平坦部の幅Rwは0.5λ、折曲げ部の幅Rhは0.05λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の中心から反射板120までの距離Dhは0.25λである。
そして、図6(b)に示すように、反射板120に対してダイポールアンテナ110がある側が0(°)の方向、反射板120側が180(°)の方向である。これらの方向が図6(c)の指向特性を示す図の外周に記載されている。なお、図6(c)の指向特性は、外周を0dBとし、内側に行くほど利得が小さくなるとして表記している。そして、中心が−30dBである。これらの方向および利得の表記は、以下に示す他の例でも同様である。
【0040】
図6(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は27.3dB、利得がピークから3dB下がった角度から求めたビーム幅は61.8°であった。
また、このアンテナ140を内径0.58λのレドーム200に入れた時のF/B比は29.9dB、ビーム幅は62.4°であった。
なお、同一の形状のアンテナ140(レドーム200なし)で実測したときのF/B比は25dB、ビーム幅は62°であった。シミュレーションと実測とはほぼ一致している。
【0041】
図7は、無給電素子130を設けない場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図7(a)は、アンテナ140の上面図、図7(b)はアンテナ140の断面図および図7(c)はアンテナ140の指向特性を示している。ダイポールアンテナ110、反射板120の形状は、図6に示したアンテナ140と同様である。
図7(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は12.4dB、ビーム幅は70.4°であった。
すなわち、ループ状の無給電素子130を設けることにより、ビーム幅を狭く制御しつつ、F/B比を大幅に向上できた。
【0042】
図8は、直線(棒)状の無給電素子150を設けた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図8(a)は、アンテナ140の上面図、図8(b)はアンテナ140の断面図および図8(c)はアンテナ140の指向特性を示している。ダイポールアンテナ110、反射板120の形状は、図6に示したアンテナ140と同様である。
図8(a)、(b)において、無給電素子150の長手方向の長さxは、図6に示した場合と同様に0.39λであり、第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中心から無給電素子150の下端までの距離Ndは、図6に示した場合と同様に0.1λである。
図8(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は16.6dB、ビーム幅は67.7°であった。
なお、同一の形状のアンテナ140で実測したときのF/B比は15dB、ビーム幅は65°であった。シミュレーションと実測とはほぼ一致している。
すなわち、ループ状の無給電素子130を設けることにより、直線状の無給電素子150を設けた場合に比べ、ビーム幅を60°と狭く制御しつつ、F/B比を向上できた。
【0043】
なお、ループ状の無給電素子130を設ける代わりに、反射板120の幅Rwを大きくする方法により、F/B比を向上させることができることが知られている。しかし、この方法では、反射板120の幅Rwが大きくなって、円筒状のレドーム200の内径Dd(径)が大きくなってしまう。レドーム200の径が大きくなると、セクタアンテナ10の設置容積が大きくなるとともに、受風面積が大きくなって好ましくない。
これに対し、本実施の形態のアンテナ140では、反射板120の幅Rwを小さく設定できるため、レドーム200の径を小さく設定することができる。これにより、セクタアンテナ10の設置容積および受風面積を抑制しうる。
【0044】
以上説明したように、外形が長方形のループ状の無給電素子130を設けることにより、反射板120の幅Rwを抑制しつつ、F/B比を向上させることができる。
外形が長方形のループ状の無給電素子130の長手方向の長さxと短手方向の長さyとは式(1)、(2)で示された範囲にあるのが好ましい。
0.90λ < 2×(x+y) < 0.96λ (1)
0.09λ < y < 0.15λ (2)
【0045】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態のアンテナ140では、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた。第2の実施の形態のアンテナ140では、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いる。以下では、第1の実施の形態と異なる部分を説明し、同一の部分の説明を省略する。
【0046】
<セクタアンテナ10>
図9は、第2の実施の形態におけるセクタアンテナ10の構成の一例を示す図である。
第2の実施の形態のアンテナ140は、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を備えている。
【0047】
<アンテナ140>
図10は、第2の実施の形態におけるアンテナ140の上面図と断面図とを示す図である。図10(a)は、アンテナ140の上面図であり、図10(b)は、図10(a)のXB−XB線での断面図である。
ダイポールアンテナ110は、第1の実施の形態と同様である。
無給電素子160は、外形が楕円形であるループ状であって、長手方向(長さx)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に沿って設けられている。一方、無給電素子160の短手方向(長さy)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向と直交する方向に設けられている。そして、短手方向の中央に第1の素子部111および第2の素子部112が位置するように設けられている。
さらに、楕円形であるループ状の無給電素子160の外形の楕円形が含まれる面は、反射板120の平坦部に平行に設けられている。
【0048】
なお、第1の実施の形態での無給電素子130と同様に、無給電素子160の長手方向の長さxは、例えばダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている(x<Dw)。また、無給電素子160の短手方向の長さyは、波長λに比べ十分に小さい値となっている。無給電素子160の短手方向の長さyは、例えば0.1λ前後である。
また、無給電素子160は、反射板120に対して逆の側に、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央から距離Nd離れた位置に設けられている。距離Ndは、波長λに比べて十分小さい値であって、例えば0.1λである。
【0049】
無給電素子160の幅Lwは、広すぎるとループの内部(開口部)を塞ぐようになるし、細すぎると電流が流れにくくなる。よって、第1の実施の形態における無給電素子130と同様に、無給電素子160の幅Lwの好ましい値は、1mm〜10mmであって、特に好ましいのは2mm〜7mmである。無給電素子160の製造の点からも好ましい。
【0050】
そして、反射板120、ダイポールアンテナ110および無給電素子160を取り囲むレドーム200の内径Ddも、第1の実施の形態と同様に、0.58λ以下に設定できる。
すなわち、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いても、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた第1の実施の形態と同様に、レドーム200の内径Ddを小さく設定することができる。
なお、外形が楕円形のループ状の無給電素子160の製造および無給電素子160とダイポールアンテナ110との組み立ては、第1の実施の形態と同様に行うことができる。
【0051】
次に、第2の実施の形態におけるアンテナ140の指向特性について説明する。なお、指向特性はシミュレーションによって求めた。
図11は、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図11(a)は、アンテナ140の上面図、図11(b)はアンテナ140の断面図および図11(c)はアンテナ140の指向特性を示している。
図11(a)、(b)において、ダイポールアンテナ110の長さDwを0.47λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の中心から無給電素子160までの距離Ndを0.1λ、無給電素子160の外形における長手方向の長さxを0.43λ、短手方向の長さyを0.09λとした場合の指向特性を求めた。
【0052】
図11(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は28.4dB、ビーム幅は62.1°であった。
すなわち、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いても、第1の実施の形態で説明した外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた場合と同様に、ビーム幅を小さく制御しつつ、F/B比を大幅に向上できた。
【0053】
上記のように、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を設けることにより、反射板120の幅Rwを抑制しつつ、F/B比を向上させることができる。
外形が楕円形のループ状の無給電素子160の長手方向の長さxと短手方向の長さyとは式(3)、(4)で示された範囲にあるのが好ましい。
1.08λ < 2×(x+y) < 1.18λ (3)
0.07λ < y < 0.21λ (4)
【0054】
以上説明したように、第1の実施の形態では、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた。第2の実施の形態では、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いた。これらのことから、無給電素子はループ状であればよい。なお、外形の大きさ(x、y)は、アンテナ140等の指向特性を考慮して設定すればよい。
【0055】
以上の説明では、1GHz付近の周波数帯域の水平偏波による電波を送受信するアンテナ140等の例を説明した。なお、アンテナ等の寸法を中心周波数に応じて変更することにより、他の周波数帯の送信用のアンテナ等に適用できる。また、アンテナの可逆性により、受信用のアンテナ等にも適用できる。さらに、水平偏波に限られるものではなく、アンテナ等を垂直面において90°回転させることにより、垂直偏波を送受信できるようにしてもよい。
さらに、偏波方向の異なるアンテナを複数配列することにより、偏波共用のアレイアンテナ、セクタアンテナとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…基地局アンテナ、2…セル、3、3−1〜3−6…セクタ、10、10−1〜10−6…セクタアンテナ、11…メインローブ、12…バックローブ、20…鉄塔、100…アレイアンテナ、110…ダイポールアンテナ、120…反射板、130、150、160…無給電素子、140…アンテナ、200…レドーム、300…移相器、400…制御器
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ、アレイアンテナおよびセクタアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信の基地局用のアンテナ(基地局アンテナ)には、電波が放射される方向に対応して設定されたセクタ毎に電波を放射するセクタアンテナが複数組み合わせて用いられている。セクタアンテナには、ダイポールアンテナなどのアンテナ素子をアレイ状に並べたアレイアンテナが用いられている。
【0003】
特許文献1には、ダイポールアンテナ等の給電アンテナと、これに関連して配置された数波長以下の有限長反射板とを含む有限長反射板付アンテナ素子において、前記給電アンテナを含む仮想平面内で、かつ、そのアンテナを囲むように周囲長が約2波長の無給電ループ素子を設置したアンテナ素子が記載されている。
特許文献2には、平面基板に、互いに直交し、中央で交差するように形成された第1及び第2のダイポールアンテナと、前記平面基板に、前記第1及び第2のダイポールアンテナの周囲を環状に取り囲むように形成された無給電素子とを備える平面アンテナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−43604号公報
【特許文献2】特開2009−225030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動体通信用の基地局用のセクタアンテナには、設置スペースおよび受風荷重が低減できるように小型であるとともに、アンテナの後方および側方への放射が抑制されていることが求められている。
本発明の目的は、小型であるとともに、前方と後方との利得の比(F/B比)が大きいアンテナ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明が適用されるアンテナは、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの前記反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備えている。
このようなアンテナにおいて、ループ状の無給電素子は、ループ状の無給電素子が含まれる仮想面が、反射板に垂直な方向と交差するように設けられていることを特徴とする。
また、ダイポールアンテナを構成する第1の導体パタンは、反射板から遠い側に凸部を有する第1の誘電体基板に構成され、無給電素子は、無給電素子を構成するループ状の第2の導体パタンが、ループ状の第2の導体パタンの内側に開口部を有する第2の誘電体基板に構成され、第2の誘電体基板の開口部に、第1の誘電体基板の凸部が嵌めこまれていることを特徴とすることができる。
さらに、ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナが使用される自由空間波長λに対して、ダイポールアンテナの電気的な長さが大略0.5λであって、ダイポールアンテナの長さ方向の反射板の幅が大略0.5λであることを特徴とすることができる。
【0007】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用されるアレイアンテナは、それぞれが、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列している。
さらにまた、他の観点から捉えると、本発明が適用されるセクタアンテナは、ダイポールアンテナと、ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、ダイポールアンテナの反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、長手方向がダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、長手方向の長さがダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナと、アレイアンテナを収納するレドームとを備えている。
このようなセクタアンテナにおいて、複数のアンテナのそれぞれのアンテナに送受信される送受信信号の位相を設定する移相器をさらに備えていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型であるとともに、前方と後方との利得の比(F/B比)が大きいアンテナ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態が適用される移動通信用の基地局アンテナの全体構成の一例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態におけるセクタアンテナの構成の一例を示す図である。
【図3】セクタアンテナにおけるダイポールアンテナと、移相器および制御器との接続関係を示す図である。
【図4】第1の実施の形態におけるアンテナの上面図と断面図とを示す図である。
【図5】ダイポールアンテナと無給電素子とのパタンを示す図である。
【図6】外形が長方形のループ状の無給電素子を用いた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図7】無給電素子を設けない場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図8】直線(棒)状の無給電素子を設けた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態におけるセクタアンテナの構成の一例を示す図である。
【図10】第2の実施の形態におけるアンテナの上面図と断面図とを示す図である。
【図11】外形が楕円形のループ状の無給電素子を用いた場合の、アンテナの指向特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
<基地局アンテナ1>
図1は、第1の実施の形態が適用される移動通信用の基地局アンテナ1の全体構成の一例を示す図である。図1(a)は、基地局アンテナ1の鳥瞰図であり、図1(b)は、基地局アンテナ1の設置例を説明する図である。
基地局アンテナ1は、図1(a)に示すように、例えば鉄塔20に保持された複数のセクタアンテナ10−1〜10−6を備えている。そして、移動通信においては、図1(b)に示すように、基地局アンテナ1からの電波が到達する範囲をセル2とする。そして、基地局アンテナ1を中心として、セル2を水平面内において角度で分割して複数のセクタ3−1〜3−6が構成されている。
【0011】
図1では、例として6個のセクタアンテナ10−1〜10−6を備えている。ここでは、セクタアンテナ10−1〜10−6をそれぞれ区別しないときは、セクタアンテナ10と表記する。また、セクタ3−1〜3−6をそれぞれ区別しないときは、セクタ3と表記する。他の用語についても同様である。
それぞれのセクタアンテナ10は、図1(b)に示すように、メインローブ11の方向が予め定められたセクタ3に向くように配置されている。
【0012】
さらに、それぞれのセクタアンテナ10には、電波を放射するための送受信信号が供給されるケーブル31および後述する移相器300を駆動する制御器400に制御信号が供給されるケーブル32が接続されている。
そして、これらのケーブル31、32は、基地局(不図示)内に設けられた無線信号を生成する無線装置(不図示)および移相器300を制御する制御装置(不図示)に接続されている。
なお、送信信号が供給されるケーブル31は、通常、同軸ケーブルが用いられる。
【0013】
このようなセクタアンテナ10では、予め定められたセクタ3内に電波を放射することが好ましく、セクタ3外に電波を放射することは好ましくない。例えば、セクタアンテナ10−1が、メインローブ11の方向に対して逆方向のバックローブ12を有していると、バックローブ12は、セクタ3−1に対して逆方向に位置するセクタ3−4に電波を放射するセクタアンテナ10−4の放射する電波(メインローブ11)と干渉してしまう。よって、セクタアンテナ10では、後方および側方への放射が抑制されていることが好ましい。
すなわち、放射が最大となる方向(メインローブ11)と逆方向(バックローブ12)との利得の比(F/B比)が大きいことが求められる。よって、以下ではメインローブ11とバックローブ12との利得の比(F/B比)で説明する。
【0014】
また、基地局アンテナ1は、セル2内に電波を放射し、セルの範囲を越えて隣接するセルに電波を放射しないことが好ましい。このため、図1(a)に示すように、電波(ビーム)の放射方向を水平面から地上方向に角度θ傾けて(ビーム・チルト角θとして)、セル2外に電波が到達しないようにしている。
【0015】
<セクタアンテナ10>
図2は、第1の実施の形態におけるセクタアンテナ10の構成の一例を示す図である。
セクタアンテナ10は、反射板120と、反射板120上に配列された複数(ここでは例として5個)のダイポールアンテナ110−1〜110−5と、それぞれのダイポールアンテナ110−1〜110−5に対応して設けられたループ状の無給電素子130−1〜130−5とを備えている。ここでも、ダイポールアンテナ110−1〜110−5、無給電素子130−1〜130−5をそれぞれ区別しないときは、ダイポールアンテナ110、無給電素子130と表記する。
ここでは、反射板120と、1つのダイポールアンテナ110と、ダイポールアンテナ110に対応して設けられた無給電素子130とをまとめてアンテナ140と表記する。
図2では、反射板120は、5個のダイポールアンテナ110−1〜110−5に共通に設けられているが、ダイポールアンテナ110毎に分かれていると考えてもよい。
そして、反射板120と複数のダイポールアンテナ110と複数の無給電素子130とをまとめてアレイアンテナ100と表記する。
【0016】
それぞれのダイポールアンテナ110は、直線状の第1の素子部111と同じく直線状の第2の素子部112とを備えている。第1の素子部111と第2の素子部112とは、予め定められた間隔を介して、直線状に並べられている。そして、第1の素子部111および第2の素子部112のそれぞれの長さは、同じである。第1の素子部111と第2の素子部112とで、ダイポールを構成する。そして、第1の素子部111と第2の素子部112とが対向する部分において、第1の素子部111に接続され、第1の素子部111を接地電位に設定する接地導体部113を備えている。
また、ダイポールアンテナ110は、第1の素子部111と第2の素子部112とが対抗する部分において、第2の素子部112に接続され、第2の素子部112を接地電位に設定する接地導体部114を備えている。
すなわち、第1の素子部111と第2の素子部112とが「T」の横棒を、接地導体部113、114とが「T」の縦棒を構成している。
第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114は、銅などの導体で構成されている。
それぞれの無給電素子130は、反射板120から遠い側に、ダイポールアンテナ110から予め定められた距離の位置に設けられている。無給電素子130は、銅などの導体で構成されている。
【0017】
なお、ダイポールアンテナ110は、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114が設けられた側の裏面側に、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114とで平衡・不平衡変換回路(マイクロストリップ線路による平衡・不平衡変換回路)を構成するように形成された折返し導体から給電される。ここでは、折返し導体の記載を省略する。
【0018】
そして、アレイアンテナ100では、それぞれのダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とが構成する直線が互いに平行になるとともに、複数のダイポールアンテナ110のそれぞれの第1の素子部111と第2の素子部112との中央の位置が、第1の素子部111と第2の素子部112とが構成する直線と直交する直線上に並ぶように配列されている。アレイアンテナ100において、それぞれのダイポールアンテナ110は間隔Dpで配置されている。
よって、アレイアンテナ100は、図1(a)から分かるように水平偏波を放射する。
【0019】
反射板120のダイポールアンテナ110と対向する部分は、平坦部となっている。反射板120のダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向の両端部は、ダイポールアンテナ110と逆の方向に折り曲げられている。反射板120は、アルミニウム、銅などの導体で構成されている。
なお、アンテナ140の構成については、後に詳述する。
【0020】
また、セクタアンテナ10は、複数のダイポールアンテナ110のそれぞれに接続され、電波を出射するタイミング(位相)をずらす移相器300と、移相器300を制御するための制御器400とを備えている。なお、平衡・不平衡変換回路をさらに備えていてもよい。
そして、セクタアンテナ10は、アレイアンテナ100、移相器300、制御器400を覆う円筒状のレドーム200を備えている。レドーム200は、円筒状の側面201と円筒状の一方の端部を覆う底面202と、他方の端部を覆う蓋面203とを備えている。レドーム200は、FRP(fiber reinforced plastics)などの絶縁性の樹脂で構成されている。
そしてまた、セクタアンテナ10は、レドーム200の底面202に、移相器300に送信信号を給電するケーブル31が接続されるコネクタおよび制御器400に制御信号を供給するケーブル32が接続されるコネクタを備えている。
【0021】
なお、図2に示すセクタアンテナ10のアレイアンテナ100は、5個のアンテナ140から構成されているが、アンテナ140の個数は、5個に限らず、予め定められた個数とすればよい。
また、図2に示すセクタアンテナ10は、5個のアンテナ140を備えた1個のアレイアンテナ100から構成されているが、複数のアレイアンテナ100を並べることで構成されてもよい。
【0022】
また、図2では、アレイアンテナ100等を覆うレドーム200は円筒状としたが、断面が方形の筒状であってもよく、方形の一辺が円弧状となった筒状であってもよい。さらに、レドーム200の側面201の一部が開閉可能に構成されていてもよい。
【0023】
<移相器300、制御器400>
図3は、セクタアンテナ10におけるダイポールアンテナ110と、移相器300および制御器400との接続関係を示す図である。
ここでは、セクタアンテナ10のアレイアンテナ100が5個のダイポールアンテナ110(110−1、110−2、…、110−5)を備えているとして説明する。
移相器300には、ケーブル31を介して、送信信号が供給される。そして、移相器300から、ケーブル(符号無し)を介して、ダイポールアンテナ110−1、110−2、…、110−5のそれぞれに送信信号が供給される。
また、制御器400には、ケーブル32を介して、制御信号が供給される。そして、制御器400が、移相器300を制御して、ダイポールアンテナ110−1、110−2、…、110−5のそれぞれに供給される送受信信号の位相を設定する。
【0024】
移相器300は、アレイアンテナ100のそれぞれのダイポールアンテナ110−1〜110−5に送受信される送受信信号の開始タイミング(位相)をずらす。
送受信信号の開始タイミング(位相)をずらすことで、セクタアンテナ10から送受信される信号の垂直面内の指向性を制御する。すなわち、図1に示したように、セクタアンテナ10から放射される送信信号を地上方向に角度θ(ビーム・チルト角θ)傾けることで、セル2外に電波が到達することを抑制する。
【0025】
移相器300は、線路長を可変にすることにより、送受信信号が開始するタイミング(位相)を変化させる方式のものでもよく、長さの異なる複数のケーブルを用いてもよい。
また、線路長を可変にする方式の位相器300に代えて、誘電体の誘電率を利用して位相を可変にする方式のものを用いてもよい。
【0026】
また、移相器300が線路長を可変にして送受信信号が開始するタイミング(位相)を変化させる方式のものである場合、または誘電体の誘電率を利用して位相を可変にする方式のものである場合に、制御器400は、基地局が制御信号を供給するケーブル32に接続され、移相器300の位相を制御する。
【0027】
<アンテナ140>
図4は、第1の実施の形態におけるアンテナ140の上面図と断面図とを示す図である。図4(a)は、アンテナ140の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB−IVB線での断面図である。
以下では、使用中心周波数における自由空間波長をλとする。
ダイポールアンテナ110の第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線の長さDwは、大略0.5λである。すなわち、ダイポールアンテナ110は、0.5波長ダイポールアンテナを基本にしている。なお、インピーダンスマッチングの関係から、ダイポールアンテナ110の長さDwは、0.5λより若干小さい値に設定されている。
反射板120からダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央までは、距離Dhである。距離Dhは、例えば0.25λである。
また、第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向における、反射板120の平坦部幅は、幅Rwである。幅Rwは、例えば0.5λである。
そして、第1の素子部111と第2の素子部112とを結ぶ直線方向における、反射板120の両端部の折り曲げ部は、ダイポールアンテナ110と反対側に幅Rhで折り曲げられている。折り曲げ部の幅Rhは、例えば0.05λである。
【0028】
無給電素子130は、反射板120に対して逆の側に、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央から距離Nd離れた位置に設けられている。距離Ndは、波長λに比べて十分小さい値であって、例えば0.1λである。
そして、無給電素子130は、外形が長方形であるループ状(幅Lw)であって、長手方向(長さx)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に沿って設けられている。一方、無給電素子130の短手方向(長さy)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向と直交する方向に設けられている。そして、短手方向の中央に第1の素子部111および第2の素子部112が位置するように設けられている。
さらに、ループ状の無給電素子130の外形の長方形が含まれる面は、反射板120の平坦部に平行に設けられている。
なお、ループ状の無給電素子130の長手方向の長さxは、例えばダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている(x<Dw)。また、無給電素子130の短手方向の長さyは、波長λに比べ十分に小さい値となっている。無給電素子130の短手方向の長さyは、例えば0.1λ前後である。
【0029】
無給電素子130は、ダイポールアンテナ110から電磁誘導で電力が供給され、波源となって電波を放射する。
なお、無給電素子130の長手方向の長さxが、ダイポールアンテナ110の長さDwに近づくと、ダイポールアンテナ110から放射された電波が反射されるので好ましくない。また、無給電素子130の長手方向の長さxが、ダイポールアンテナ110の長さDwに比べて小さすぎると、無給電素子130に電力が供給されなくなって、F/B比は大きくならない。
【0030】
また、無給電素子130の幅Lwは、広すぎるとループの内部(開口部)を塞ぐようになってしまうし、細すぎると電流が流れにくくなる。よって、無給電素子130の幅Lwの好ましい値は、1mm〜10mmであって、特に好ましいのは2mm〜7mmである。後述する無給電素子130の製造の点からも好ましい。
【0031】
そして、反射板120、ダイポールアンテナ110および無給電素子130を取り囲む内径Ddのレドーム200が設けられている。
上記の例(Rw=0.5λ、Rh=0.05λ、Dw≒0.5λ、Dh=0.25λ)であれば、レドーム200の内径Ddは、0.58λ以下に設定できる。
すなわち、ダイポールアンテナ110の電気的な長さDwと反射板120の幅Rwとが0.5λの大きさであって、反射板120とダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112との距離Dhを0.25λに設定しているので、レドーム200の内径Ddを小さく設定することができる。
【0032】
次に、ダイポールアンテナ110および無給電素子130の製造方法と組み立て方法を説明する。
図5は、ダイポールアンテナ110と無給電素子130とのパタンを示す図である。図5(a)はダイポールアンテナ110のパタンを示す図、図5(b)は無給電素子130のパタンを示す図、図5(c)はダイポールアンテナ110と無給電素子130とを組み合わせた図である。
【0033】
ダイポールアンテナ110は、図5(a)に示すように、第1の誘電体基板115上に設けられた銅箔の導体膜を、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114のパタン形状に加工することで形成される。なお、第1の誘電体基板115の第1の素子部111、第2の素子部112が設けられた側に、凸部116が設けられている。ここで、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114のパタン形状が第1の導体パタンの一例である。
【0034】
一方、無給電素子130は、図5(b)に示すように、第2の誘電体基板131上に設けられた銅箔の導体膜を、ループ状の無給電素子130のパタン形状に加工することで形成される。そして、第2の誘電体基板131のループ状の無給電素子130の内部に、開口部(スリット)132が設けられている。ここで、ループ状の無給電素子130のパタン形状が第2の導体パタンの一例である。
【0035】
そして、図5(c)に示すように、ダイポールアンテナ110を形成した第1の誘電体基板115の凸部116を、無給電素子130が形成された第2の誘電体基板131に設けられた開口部132に嵌め込むことでダイポールアンテナ110と無給電素子130とが組み立てられる。
なお、図5では、凸部116および開口部132をそれぞれ1つ設けたが、複数の凸部116および複数の開口部132を設けてもよい。
また、ダイポールアンテナ110と無給電素子130とを位置がずれないように固定するため、ダイポールアンテナ110を形成した第1の誘電体基板115と、無給電素子130を形成した第2の誘電体基板131とをハンダにより固定できるように、接続部(図における133)を設けてもよい。
このようにすることで、ダイポールアンテナ110に対して予め定められた位置に、無給電素子130を容易に設けることができる。
【0036】
なお、同様にして、ダイポールアンテナ110を、反射板120に対して組立てればよい。すなわち、第1の誘電体基板115の接地導体部113、114が形成された側を嵌め込むことができる開口部を反射板120に設け、第1の誘電体基板115を嵌め込めばよい。なお、ダイポールアンテナ110の接地導体部113、114が反射板120に接触しないように、反射板120には孔を設けておくのが好ましい。
【0037】
以上説明したように、ダイポールアンテナ110および無給電素子130を、それぞれ第1の誘電体基板115、第2の誘電体基板131上に設けられた銅箔の導体膜を加工して製造することにより、量産を可能とするとともに、パタン精度のばらつきが低減できる。また、容易に平衡・不平衡変換回路も製造することができる。
【0038】
なお、第1の素子部111、第2の素子部112、接地導体部113、114は、銅(銅箔)で形成したが、これに限られるものではなく、アルミニウム、銀、金などであってもよい。
【0039】
次に、第1の実施の形態におけるアンテナ140の指向特性について説明する。なお、指向特性はシミュレーションおよび一部は実測によって求めた。
図6は、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図6(a)は、アンテナ140の上面図、図6(b)はアンテナ140の断面図および図6(c)はアンテナ140の指向特性を示している。
図6(a)、(b)において、ダイポールアンテナ110の長さDwを0.47λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の放射導体の中心から無給電素子130までの距離Ndを0.1λ、無給電素子130の外形における長手方向の長さxを0.39λ、短手方向の長さyを0.11λとした場合の指向特性を求めた。
なお、前述したように、反射板120の平坦部の幅Rwは0.5λ、折曲げ部の幅Rhは0.05λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の中心から反射板120までの距離Dhは0.25λである。
そして、図6(b)に示すように、反射板120に対してダイポールアンテナ110がある側が0(°)の方向、反射板120側が180(°)の方向である。これらの方向が図6(c)の指向特性を示す図の外周に記載されている。なお、図6(c)の指向特性は、外周を0dBとし、内側に行くほど利得が小さくなるとして表記している。そして、中心が−30dBである。これらの方向および利得の表記は、以下に示す他の例でも同様である。
【0040】
図6(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は27.3dB、利得がピークから3dB下がった角度から求めたビーム幅は61.8°であった。
また、このアンテナ140を内径0.58λのレドーム200に入れた時のF/B比は29.9dB、ビーム幅は62.4°であった。
なお、同一の形状のアンテナ140(レドーム200なし)で実測したときのF/B比は25dB、ビーム幅は62°であった。シミュレーションと実測とはほぼ一致している。
【0041】
図7は、無給電素子130を設けない場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図7(a)は、アンテナ140の上面図、図7(b)はアンテナ140の断面図および図7(c)はアンテナ140の指向特性を示している。ダイポールアンテナ110、反射板120の形状は、図6に示したアンテナ140と同様である。
図7(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は12.4dB、ビーム幅は70.4°であった。
すなわち、ループ状の無給電素子130を設けることにより、ビーム幅を狭く制御しつつ、F/B比を大幅に向上できた。
【0042】
図8は、直線(棒)状の無給電素子150を設けた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図8(a)は、アンテナ140の上面図、図8(b)はアンテナ140の断面図および図8(c)はアンテナ140の指向特性を示している。ダイポールアンテナ110、反射板120の形状は、図6に示したアンテナ140と同様である。
図8(a)、(b)において、無給電素子150の長手方向の長さxは、図6に示した場合と同様に0.39λであり、第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中心から無給電素子150の下端までの距離Ndは、図6に示した場合と同様に0.1λである。
図8(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は16.6dB、ビーム幅は67.7°であった。
なお、同一の形状のアンテナ140で実測したときのF/B比は15dB、ビーム幅は65°であった。シミュレーションと実測とはほぼ一致している。
すなわち、ループ状の無給電素子130を設けることにより、直線状の無給電素子150を設けた場合に比べ、ビーム幅を60°と狭く制御しつつ、F/B比を向上できた。
【0043】
なお、ループ状の無給電素子130を設ける代わりに、反射板120の幅Rwを大きくする方法により、F/B比を向上させることができることが知られている。しかし、この方法では、反射板120の幅Rwが大きくなって、円筒状のレドーム200の内径Dd(径)が大きくなってしまう。レドーム200の径が大きくなると、セクタアンテナ10の設置容積が大きくなるとともに、受風面積が大きくなって好ましくない。
これに対し、本実施の形態のアンテナ140では、反射板120の幅Rwを小さく設定できるため、レドーム200の径を小さく設定することができる。これにより、セクタアンテナ10の設置容積および受風面積を抑制しうる。
【0044】
以上説明したように、外形が長方形のループ状の無給電素子130を設けることにより、反射板120の幅Rwを抑制しつつ、F/B比を向上させることができる。
外形が長方形のループ状の無給電素子130の長手方向の長さxと短手方向の長さyとは式(1)、(2)で示された範囲にあるのが好ましい。
0.90λ < 2×(x+y) < 0.96λ (1)
0.09λ < y < 0.15λ (2)
【0045】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態のアンテナ140では、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた。第2の実施の形態のアンテナ140では、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いる。以下では、第1の実施の形態と異なる部分を説明し、同一の部分の説明を省略する。
【0046】
<セクタアンテナ10>
図9は、第2の実施の形態におけるセクタアンテナ10の構成の一例を示す図である。
第2の実施の形態のアンテナ140は、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を備えている。
【0047】
<アンテナ140>
図10は、第2の実施の形態におけるアンテナ140の上面図と断面図とを示す図である。図10(a)は、アンテナ140の上面図であり、図10(b)は、図10(a)のXB−XB線での断面図である。
ダイポールアンテナ110は、第1の実施の形態と同様である。
無給電素子160は、外形が楕円形であるループ状であって、長手方向(長さx)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向に沿って設けられている。一方、無給電素子160の短手方向(長さy)が、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112を結ぶ直線方向と直交する方向に設けられている。そして、短手方向の中央に第1の素子部111および第2の素子部112が位置するように設けられている。
さらに、楕円形であるループ状の無給電素子160の外形の楕円形が含まれる面は、反射板120の平坦部に平行に設けられている。
【0048】
なお、第1の実施の形態での無給電素子130と同様に、無給電素子160の長手方向の長さxは、例えばダイポールアンテナ110の長さDwより短く設定されている(x<Dw)。また、無給電素子160の短手方向の長さyは、波長λに比べ十分に小さい値となっている。無給電素子160の短手方向の長さyは、例えば0.1λ前後である。
また、無給電素子160は、反射板120に対して逆の側に、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の幅方向の中央から距離Nd離れた位置に設けられている。距離Ndは、波長λに比べて十分小さい値であって、例えば0.1λである。
【0049】
無給電素子160の幅Lwは、広すぎるとループの内部(開口部)を塞ぐようになるし、細すぎると電流が流れにくくなる。よって、第1の実施の形態における無給電素子130と同様に、無給電素子160の幅Lwの好ましい値は、1mm〜10mmであって、特に好ましいのは2mm〜7mmである。無給電素子160の製造の点からも好ましい。
【0050】
そして、反射板120、ダイポールアンテナ110および無給電素子160を取り囲むレドーム200の内径Ddも、第1の実施の形態と同様に、0.58λ以下に設定できる。
すなわち、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いても、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた第1の実施の形態と同様に、レドーム200の内径Ddを小さく設定することができる。
なお、外形が楕円形のループ状の無給電素子160の製造および無給電素子160とダイポールアンテナ110との組み立ては、第1の実施の形態と同様に行うことができる。
【0051】
次に、第2の実施の形態におけるアンテナ140の指向特性について説明する。なお、指向特性はシミュレーションによって求めた。
図11は、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いた場合の、アンテナ140の指向特性の一例を示す図である。図11(a)は、アンテナ140の上面図、図11(b)はアンテナ140の断面図および図11(c)はアンテナ140の指向特性を示している。
図11(a)、(b)において、ダイポールアンテナ110の長さDwを0.47λ、ダイポールアンテナ110の第1の素子部111および第2の素子部112の中心から無給電素子160までの距離Ndを0.1λ、無給電素子160の外形における長手方向の長さxを0.43λ、短手方向の長さyを0.09λとした場合の指向特性を求めた。
【0052】
図11(c)に示すように、アンテナ140のF/B比は28.4dB、ビーム幅は62.1°であった。
すなわち、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いても、第1の実施の形態で説明した外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた場合と同様に、ビーム幅を小さく制御しつつ、F/B比を大幅に向上できた。
【0053】
上記のように、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を設けることにより、反射板120の幅Rwを抑制しつつ、F/B比を向上させることができる。
外形が楕円形のループ状の無給電素子160の長手方向の長さxと短手方向の長さyとは式(3)、(4)で示された範囲にあるのが好ましい。
1.08λ < 2×(x+y) < 1.18λ (3)
0.07λ < y < 0.21λ (4)
【0054】
以上説明したように、第1の実施の形態では、外形が長方形のループ状の無給電素子130を用いた。第2の実施の形態では、外形が楕円形のループ状の無給電素子160を用いた。これらのことから、無給電素子はループ状であればよい。なお、外形の大きさ(x、y)は、アンテナ140等の指向特性を考慮して設定すればよい。
【0055】
以上の説明では、1GHz付近の周波数帯域の水平偏波による電波を送受信するアンテナ140等の例を説明した。なお、アンテナ等の寸法を中心周波数に応じて変更することにより、他の周波数帯の送信用のアンテナ等に適用できる。また、アンテナの可逆性により、受信用のアンテナ等にも適用できる。さらに、水平偏波に限られるものではなく、アンテナ等を垂直面において90°回転させることにより、垂直偏波を送受信できるようにしてもよい。
さらに、偏波方向の異なるアンテナを複数配列することにより、偏波共用のアレイアンテナ、セクタアンテナとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…基地局アンテナ、2…セル、3、3−1〜3−6…セクタ、10、10−1〜10−6…セクタアンテナ、11…メインローブ、12…バックローブ、20…鉄塔、100…アレイアンテナ、110…ダイポールアンテナ、120…反射板、130、150、160…無給電素子、140…アンテナ、200…レドーム、300…移相器、400…制御器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイポールアンテナと、
前記ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、
前記ダイポールアンテナの前記反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子と
を備えるアンテナ。
【請求項2】
前記ループ状の無給電素子は、当該ループ状の無給電素子が含まれる仮想面が、前記反射板に垂直な方向と交差するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記ダイポールアンテナは、当該ダイポールアンテナを構成する第1の導体パタンが、前記反射板から遠い側に凸部を有する第1の誘電体基板に構成され、
前記無給電素子は、当該無給電素子を構成するループ状の第2の導体パタンが、ループ状の当該第2の導体パタンの内側に開口部を有する第2の誘電体基板に構成され、
前記第2の誘電体基板の開口部に、前記第1の誘電体基板の凸部が嵌めこまれていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記ダイポールアンテナは、当該ダイポールアンテナが使用される自由空間波長λに対して、当該ダイポールアンテナの電気的な長さが大略0.5λであって、当該ダイポールアンテナの長さ方向の前記反射板の幅が大略0.5λであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
それぞれが、ダイポールアンテナと、当該ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、当該ダイポールアンテナの当該反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナ。
【請求項6】
それぞれが、ダイポールアンテナと、当該ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、当該ダイポールアンテナの当該反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナと、
前記アレイアンテナを収納するレドームと
を備えるセクタアンテナ。
【請求項7】
前記複数のアンテナのそれぞれのアンテナに送受信される送受信信号の位相を設定する移相器をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のセクタアンテナ。
【請求項1】
ダイポールアンテナと、
前記ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、
前記ダイポールアンテナの前記反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子と
を備えるアンテナ。
【請求項2】
前記ループ状の無給電素子は、当該ループ状の無給電素子が含まれる仮想面が、前記反射板に垂直な方向と交差するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記ダイポールアンテナは、当該ダイポールアンテナを構成する第1の導体パタンが、前記反射板から遠い側に凸部を有する第1の誘電体基板に構成され、
前記無給電素子は、当該無給電素子を構成するループ状の第2の導体パタンが、ループ状の当該第2の導体パタンの内側に開口部を有する第2の誘電体基板に構成され、
前記第2の誘電体基板の開口部に、前記第1の誘電体基板の凸部が嵌めこまれていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記ダイポールアンテナは、当該ダイポールアンテナが使用される自由空間波長λに対して、当該ダイポールアンテナの電気的な長さが大略0.5λであって、当該ダイポールアンテナの長さ方向の前記反射板の幅が大略0.5λであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
それぞれが、ダイポールアンテナと、当該ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、当該ダイポールアンテナの当該反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナ。
【請求項6】
それぞれが、ダイポールアンテナと、当該ダイポールアンテナから予め定められた距離に設けられた反射板と、当該ダイポールアンテナの当該反射板から遠い側に設けられ、長手方向と短手方向とを有し、当該長手方向が当該ダイポールアンテナの方向に沿って設けられ、当該長手方向の長さが当該ダイポールアンテナの長さより短いループ状の無給電素子とを備える複数のアンテナを配列したアレイアンテナと、
前記アレイアンテナを収納するレドームと
を備えるセクタアンテナ。
【請求項7】
前記複数のアンテナのそれぞれのアンテナに送受信される送受信信号の位相を設定する移相器をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のセクタアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−110577(P2013−110577A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253951(P2011−253951)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000232287)日本電業工作株式会社 (71)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000232287)日本電業工作株式会社 (71)
【Fターム(参考)】
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