説明

アンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置

【課題】移動体通信用の無線装置などに使用されるアンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置に関し、アンテナ素子の配置に起因するアンテナ特性の効率ロス発生が少なくできるものを提供する。
【解決手段】アンテナ体41として、基体51に配された第1および第2アンテナ素子61および62を有し、上記第1および第2アンテナ素子61および62が、その基体51の一つの面上において左右位置にそれぞれ配され、かつ同じ方向に傾斜する先端どうしが間隔をあけた対向状態になるように突き合わせて配されたものを用い、その素子61または62のいずれかが配線基板70上に設けられた導電パターン75を含めて対応する周波数帯域に整合する状態に搭載してアンテナ装置80を構成するものとしたため、素子61、62どうし間の干渉などを無くせて効率ロスの少ないものが実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として移動体通信用の無線装置などに使用されるアンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話を代表とする移動体通信用の無線装置に対する需要が急激に高まっており、その携帯電話においても複数の周波数帯で使用できるマルチバンド対応のものが主流となっている。
【0003】
そして、その電波の送受信を行うために搭載されるアンテナ装置としても、二つ以上の電波の周波数帯域に対応するアンテナ体を機器内に内蔵状態に搭載して構成したものが多くなっている。
【0004】
ここで、そのような内蔵状態で搭載されてマルチバンド対応可能に構成されたアンテナ装置について図面を用いて説明する。
【0005】
図4は、二つの周波数帯域に対応する従来のアンテナ体が機器内に搭載される状態を示す図、図5は同アンテナ体が装着されて構成されたアンテナ装置の模式図である。
【0006】
従来のアンテナ体1は、同図に示すように、合成樹脂からなる基体5と、第1の周波数であるGSM帯域で共振する線状構成の第1アンテナ素子11と、第2の周波数であるDCS帯域で共振する線状構成の第2アンテナ素子21とから構成され、上記アンテナ素子11、21は、弾性金属薄板からそれぞれ個別に形成され、独立して基体5にそれぞれカシメ固定されている。
【0007】
そして、各アンテナ素子11、21のそれぞれの一端側には、片持ちばね状の給電ばね部11A、21Aが形成されており、上記給電ばね部11A、21Aは基体5の側面部分から並んで突出している。
【0008】
各アンテナ素子11、21の他端側は、基体5の上面部に主に配置されている。その上面部において、長寸となる第1アンテナ素子11は略コの字状に折り返されて配され、短寸の第2アンテナ素子21は、その第1アンテナ素子11が配置された残部の位置に直線状のままで配されている。
【0009】
そして、機器側の構成としては、第1、第2給電点32、33が、それぞれ対応する整合回路34、35に接続され、その整合回路34、35の他端どうしがつながる同じ接続点を介してRF回路37につながれた構成となっている。
【0010】
そして、上記構成のアンテナ体1は、機器の配線基板40の地板31から所定距離離した位置に配され、その状態で、上記各給電ばね部11Aおよび21Aが、第1および第2給電点32および33に弾接されて図5に示すアンテナ装置39として構成される。
【0011】
上記従来のアンテナ体1が搭載されて構成されたアンテナ装置39を内蔵した機器(携帯電話)において、GSMの電波を送信する際には、RF回路37で発生された信号が接続点を介して整合回路34、第1給電点32を介して第1アンテナ素子11に伝達されて、その信号が第1アンテナ素子11により励起されて電波として放射される。一方、GSMの電波を受信する際には、第1アンテナ素子11で受信した電波により励起された電流が、第1給電点32、整合回路34、接続点を介してRF回路37に伝達されて電波の受信が行われる。
【0012】
また、DCSの電波の送信時には、RF回路37で発生された信号が接続点を介して整合回路35、第2給電点33を介して第2アンテナ素子21に伝達されて、その信号が第2アンテナ素子21により励起されて電波として放射され、その受信時には、第2アンテナ素子21で受信した電波により励起された電流が、第2給電点33、整合回路35、接続点を介してRF回路37に伝達されて電波の受信が行われる。
【0013】
以上のように、従来のアンテナ体1を用いて構成したアンテナ装置39は、電波の送受信を行う帯域ごとに応じた個別のアンテナ素子11、21を有し、かつその搭載状態では、それぞれのアンテナ素子11、21に応じた整合回路34、35を個別に備えさせているものであったため、対応する周波数帯域への合わせ込みなどの調整が容易にできるものであった。
【0014】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開2005−244553号公報
【特許文献2】特開2005−323318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記従来のアンテナ体1を用いて構成したアンテナ装置39は、個別のアンテナ素子11、21毎で対応する周波数帯域に合わせ込む調整が容易にできて好ましかったが、特にGSMに対応する第1アンテナ素子11の長さは長く必要となるため、そのアンテナ素子11の配置状態としては、アンテナ体1における基体5の上面部で折り返した配置状態になっており、アンテナ素子11を介して電波の送受信を行う際に、その第1アンテナ素子11の折り返された側の先端は、他の素子部分とは電波が逆方向に流れることとなる。
【0016】
つまり、図4に示した構成のものでは、例えばGSMの電波の送信時には図6に矢印で示したように、その折り返し部分どうしで電流が逆方向に流れる電流の逆送状態となり、互いの干渉に基づく損失が発生するため、アンテナ特性的に効率ロスが発生してしまうという課題があった。また、その第1アンテナ素子11の折り返された側の先端を、例えば第2アンテナ素子21に近接させるように配置しても、同様にアンテナ素子11、21どうし間での干渉が発生してしまい、いずれにしても効率ロスの発生を防止することは困難であった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、アンテナ素子の配置に起因するアンテナ特性の効率ロス発生が少なくできるアンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、合成樹脂製の基体と、その基体に配された二つのアンテナ素子とを有し、上記第1および第2アンテナ素子は、その基体の一つの面上において左右位置にそれぞれ配され、かつ同じ方向に傾斜する先端どうしが間隔をあけた対向状態になるように突き合わせて配されたことを特徴とするアンテナ体であり、当該構成であれば、電波の送受信時に各アンテナ素子自身での電流の逆送現象もなく、しかもアンテナ素子どうし間での干渉し合う領域が少なくて済むため、それらに基づく損失の少ないものとして実現できるという作用を有する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のアンテナ体の第1または第2アンテナ素子の少なくとも一方が、配線基板上に設けられた導電パターンを含めて対応する周波数帯域に整合されるようにして搭載されて構成されたアンテナ装置であり、必要とするアンテナ長を基板上に設けた導電パターンで補填することから、アンテナ体において、それぞれのアンテナ素子が配置される基体の一つの面を有効に活用でき、例えば、各アンテナ素子を太幅で形成するなどしてアンテナ特性の向上や高帯域化などが図られたものとして実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、電波の送受信時に、アンテナ素子の配置に起因するアンテナ特性の効率ロス発生が少なくできるアンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置を実現することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、従来の技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるアンテナ体の基体へのアンテナ素子の配置状態を示す外観斜視図、図2は同アンテナ体が機器内に搭載される状態を示す図、図3は同アンテナ体が装着されて構成されたアンテナ装置の模式図である。
【0024】
本実施の形態によるアンテナ体41は、同図に示すように、合成樹脂からなる基体51の平坦な装着面としてなる上面部に第1アンテナ素子61と第2アンテナ素子62とがそれぞれ固定されて構成されている。
【0025】
第1アンテナ素子61、第2アンテナ素子62は、それぞれ弾性金属薄板から形成されており、その詳細は後述するが、第1アンテナ素子61がGSM帯域に対応するもの、第2アンテナ素子62がDCS帯域で共振するものとなっている。
【0026】
そして、第1アンテナ素子61は基体51の上面部における右側位置に配され、その右側後方端部から後方に突出する給電ばね部61Aを一体で備えている。また、第2アンテナ素子62は基体51の上面部における左側位置に配され、その左側後方端部から後方に突出する給電ばね部62Aを一体で備えている。
【0027】
そして、第1アンテナ素子61と第2アンテナ素子62のそれぞれは、基体51の装着面としてなる上面部の平坦部分の幅とほぼ同等の太幅構成のものとなっている。
【0028】
また、その第1アンテナ素子61と第2アンテナ素子62は、対向する先端61Bと62Bが同じ方向に傾斜する形状でそれぞれ構成されており、その先端61B、62Bどうしが所定間隔をあけた対向状態になるようにして基体51の上面部上に配されている。
【0029】
以上のように、当該実施の形態によるアンテナ体41は構成されている。
【0030】
そして、上記アンテナ体41は、対応する配線基板70(図2参照)に搭載されて使用される。
【0031】
その配線基板70の構成は、後方領域に地板31が構成されていると共に、第1アンテナ素子61、第2アンテナ素子62のそれぞれの給電ばね部61A、62Aに応じる位置に第1給電点32、第2給電点33が設けられているものとなっている。
【0032】
つまり、図2にも示しているように、第1給電点32は配線基板70の右側前方位置に配設され、第2給電点33は配線基板70の左側前方位置に配設されており、それぞれの第1および第2給電点32および33は、対応する整合回路34、35にそれぞれ接続され、その整合回路34、35の他端どうしがつながる同じ接続点を介してRF回路37につながれている。
【0033】
なお、第1給電点32と整合回路34とを繋ぐ導電パターン75は、可能な限り地板31から離れるようにして引き回していると共に、その導電パターン75と第1アンテナ素子61との電気的な合計の長さがGSM帯域に相当する長さに整合するようにしている。
【0034】
そして、上記配線基板70に対し、アンテナ体41は、各給電ばね部61Aおよび62Aを第1および第2給電点32および33に弾接させて搭載され、図3に示すアンテナ装置80が構成されている。なお、そのときに各素子61、62などが地板31から離れた位置に配置されて搭載状態にされることが好ましい。
【0035】
以上のようにして、当該実施の形態によるアンテナ体41は機器に内蔵されてアンテナ装置80に構成されて使用される。
【0036】
続いて、上記アンテナ装置80の動作について説明する。GSMの電波を送信する際には、RF回路37で発生された信号が接続点を介して整合回路34に伝達され、その信号が、整合回路34に繋がる導電パターン75、第1給電点32を介して第1アンテナ素子61に伝わり、導電パターン75と第1アンテナ素子61を介して電波として放射される。そして、GSMの電波の受信時には上記とは逆の経路でなり、その電波を、整合する導電パターン75と第1アンテナ素子61とにより受信し、それが整合回路34を介してRF回路37に伝達されて電波の受信が行われる。
【0037】
なお、上記GSMの電波の送受信状態においては、第1アンテナ素子61自身の電気的長さは短いものの、導電パターン75によって必要とするアンテナ長を補填する構成としているため、GSM帯域での送受信に必要となるアンテナ長は容易に確保されたものにでき、その送受信での不具合などはない。
【0038】
一方、DCSの電波の送受信時は、従来同様であり、送信時には、RF回路37で発生された信号が接続点を介して整合回路35、第2給電点33を介して第2アンテナ素子62に伝達されて、その信号が第2アンテナ素子62から電波として放射され、受信時には、第2アンテナ素子62で受信した電波により励起された電流が、上記とは逆の流れでRF回路37に伝達されて電波の受信が行われる。
【0039】
以上のように、上記第1アンテナ素子61の必要とする電気長を導電パターン75で補填する構成とした当該実施の形態によるものであれば、アンテナ体41における第1アンテナ素子61そのものとしては短寸のもので済むため、第1アンテナ素子61と第2アンテナ素子62とをその先端61B、62Bどうしを付き合わせるようにして基体51の装着面に配置した構成のものにできる。
【0040】
さらに、上記素子61、62の先端61B、62Bどうしを付き合わせるように配置できることから、各素子61、62は基体51の装着面の全体幅に応じた太幅のものにでき、これにより高帯域化などが図れてアンテナ特性が向上したものとして実現できる。なお、当該実施の形態によるものであれば、第2アンテナ素子62自身も従来よりも太幅構成のものにできることから、DCSの送受信特性も向上したものにできる。
【0041】
そして、各素子61、62自身での折り返し配置もなく、また素子61、62どうしの隣接配置部分も少なく構成できるため、電波の送受信時での電流の逆送現象などによる影響も殆ど無くせる上、素子61、62間での干渉なども低減され、効率ロスが少ないアンテナ装置80として実現できる。さらに、各素子61、62の先端61B、62Bどうしの隙間の設定や、各先端61B、62Bそれぞれの角度を変えること等によって電気長を調整することも可能である。なお、各先端61B、62Bの角度は特に規制されるものではないが、傾斜が小さいと従来同様に互いの影響を受けやすくなるため、例えば30°以上の角度で傾斜させておくとよい。
【0042】
なお、アンテナ体41において、第1アンテナ素子61と第2アンテナ素子62とを配置する基体51の装着面の位置としては、地板31からできるだけ離れた位置関係とすることが好ましく、各図に示した上面部側に設定したもの以外であってもよい。例えば、基体51の前方側面に上述同様に各素子61、62を配置したものとすると最も好ましい。その場合においても、当該アンテナ装置の構成であれば、その装着面に各素子61、62を太幅で配置し、所望の電気長を導電パターンで補填させて構成できるため、薄型化などが進展する携帯電話などに容易に対応することもでき、しかもそのアンテナ特性としても良好なものとして実現することができるものである。
【0043】
なお、上記搭載状態とされた当該アンテナ体41は、個別の整合回路34、35で対応する周波数帯域に個々に調整が可能であるため、対応する周波数帯域に合わせ込む調整が容易であることは従来同様である。
【0044】
また、アンテナ装置80の構成の一部を担う導電パターン75としては、図2に示した直線形態以外のものであってもよく、例えばエレメント長を稼ぐためメアンダ状などとしてもよく、さらには、2つの導電パターン間をコイル部品等で接続させて構成したものなどとしてもよい。
【0045】
そして、上記にはアンテナ装置80の対応周波数がGSM、DCSであるものを例として説明したがそれ以外であってもよい。
【0046】
また、各素子61、62への給電方法も、上述した給電ばね部61A、62Aを用いたものに限られることもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によるアンテナ体およびそれを用いて構成されたアンテナ装置は、アンテナ素子の配置に起因するアンテナ特性の効率ロス発生が少なくできるものとして実現することができるという効果を有し、主として移動体通信用の無線装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施の形態によるアンテナ体の基体へのアンテナ素子の配置状態を示す外観斜視図
【図2】同アンテナ体が機器内に搭載される状態を示す図
【図3】同アンテナ体が装着されて構成されたアンテナ装置の模式図
【図4】二つの周波数帯域に対応する従来のアンテナ体が機器内に搭載される状態を示す図
【図5】同アンテナ体が装着されて構成されたアンテナ装置の模式図
【図6】同GSMに対応する第1アンテナ素子での電波の送信時での電流の流れる方向を示す図
【符号の説明】
【0049】
31 地板
32 第1給電点
33 第2給電点
34、35 整合回路
37 RF回路
41 アンテナ体
51 基体
61 第1アンテナ素子
61A、62A 給電ばね部
61B、62B 先端
62 第2アンテナ素子
70 配線基板
75 導電パターン
80 アンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基体と、その基体に配された二つのアンテナ素子とを有し、上記第1および第2アンテナ素子は、その基体の一つの面上において左右位置にそれぞれ配され、かつ同じ方向に傾斜する先端どうしが間隔をあけた対向状態になるように突き合わせて配されたことを特徴とするアンテナ体。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ体の第1または第2アンテナ素子の少なくとも一方が、配線基板上に設けられた導電パターンを含めて対応する周波数帯域に整合されるようにして搭載されて構成されたアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−85431(P2008−85431A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260231(P2006−260231)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】