説明

アンテナ内蔵シリンダ錠及びそれを用いた電気錠システム

【課題】防犯性や作業効率の向上を図ったアンテナ内蔵シリンダ錠を提供する。
【解決手段】アンテナ内蔵シリンダ錠1は、電気錠を施解錠するためのIDキーのID情報を受信する受信用アンテナ4が室外側の化粧リング3の内側に組み込まれ、アンテナが室外側から見えない状態であり、室外側からリーダがあることが判らず、リーダの直接攻撃による異常解錠を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠前の施解錠に必要なID情報(例えば暗証番号、部屋番号などの情報)を受信するためのアンテナを内蔵したアンテナ内蔵シリンダ錠及びそれを用いた電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホテルやオフィスビル等の商業施設や公共施設の入出口、集合住宅や一般住宅のエントランスや玄関等には、利用者が所持するIDカードから錠前の施解錠に必要なID情報(例えば暗証番号、部屋番号などの情報)を取得し、この取得したID情報の正当性を判別し、ID情報を正常に認証した場合のみ、そのときの錠前の施解錠状態及び扉の開閉状態に応じて錠前を解錠又は施錠する電気錠システムが広く普及している。
【0003】
この種の電気錠システムとしては、例えば下記特許文献1に開示される電動錠の開閉システムが知られている。この電動錠の開閉システム51は、図4に示すように、非接触カード(IDカード)52に記憶された識別コード(ID)を非接触で読み取る読み取り装置(非接触リーダ)53と、読み取り装置53が読み取った識別コードを照合して開閉情報を作成する演算装置54と、演算装置54が作成した開閉情報を無線伝送する壁側ワイヤレスカプラ55とが壁側に設けられ、壁側ワイヤレスカプラ55と結合するドア側ワイヤレスカプラ56と、両カプラ55,56を介して取得した開閉情報を処理して制御信号を出力する制御装置57と、電動錠の開閉駆動を行う駆動装置58とが扉側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−093289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上述した特許文献1を含め、従来より一般的に知られている非接触リーダは、室外側の扉周辺の壁や扉面直接に取り付けられ、室外側から本体が見える状態であるため、非接触リーダを直接攻撃して異常解錠される恐れがあり、防犯性に欠けていた。
【0006】
また、この種の非接触リーダは、扉に装備されるシリンダ錠とは別体に扉周辺の壁や扉面に取り付けられるので、作業工程数が増え、取付作業に手間を要するという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、防犯性や作業効率の向上を図ることができるアンテナ内蔵シリンダ錠及びそれを用いた電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載されたアンテナ内蔵シリンダ錠は、電気錠を施解錠するためのIDキーのID情報を受信する受信用アンテナが室外側の化粧リングの内側に組み込まれたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された電気錠システムは、請求項1のアンテナ内蔵シリンダ錠を用いた電気錠システムであって、
前記受信用アンテナを介して前記IDキーのID情報を読み取り、当該読み取ったID情報の正当性を判別するリーダ制御部と、
前記リーダ制御部が前記IDキーのID情報を正常認証したときに前記電気錠を解錠又は施錠する電気錠制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、錠前の施解錠に必要なID情報(例えば暗証番号、部屋番号などの情報)を受信するためのアンテナが室外側から見えない状態なので、室外側からリーダがあることが判らず、リーダの直接攻撃による異常解錠を防ぐことができ、従来に比べて防犯性を向上させることができる。
【0011】
また、アンテナがシリンダ錠の化粧リングの内面に固定されているので、シリンダ錠と一緒に扉に取り付けることができ、作業工程数を増すことなく、取付作業の手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a),(b)本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠の平面図及び側面図である。
【図2】(a),(b)本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠に採用されるアンテナ基板の平面図及び側面図である。
【図3】本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠を採用した電気錠システムの概略構成図である。
【図4】従来の電気錠システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1(a),(b)は本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠の平面図及び側面図、図2(a),(b)は本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠に採用されるアンテナ基板の平面図及び側面図、図3は本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ錠を採用した電気錠システムの概略構成図である。
【0014】
まず、本発明に係るアンテナ内蔵シリンダの構成について図1乃至図3を参照しながら説明する。本発明に係るアンテナ内蔵シリンダ1は、図1(a),(b)及び図3に示すように、本体をなす筒状のシリンダ2と、化粧リング3と、受信用アンテナ4とを備えて概略構成される。
【0015】
シリンダ2は、鍵穴2aに合致する鍵を挿入して回転させることにより、扉枠の係合穴に係合するデッドボルトが進退する周知の構造である。
【0016】
化粧リング3は、その内面側に受信用アンテナ4を収容固定するため、従来の金属製に代えて全体が樹脂製で構成されており、扉面から突出するシリンダ2の外周2bに固定して設けられる。
【0017】
受信用アンテナ4は、後述する電気錠16を施解錠するためのIDキーのID情報を受信するべく、図3に示すように、例えば両面テープや接着剤等を用いて化粧リング3の内面に収容固定されるアンテナ基板4Aと、このアンテナ基板4Aに接続される接続コネクタ4Bとから構成される。
【0018】
アンテナ基板4Aは、柔軟性があって大きく変形させることが可能なフレキシブルなプリント基板からなり、図2(a),(b)に示すように、例えば厚み12〜50μmのフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に接着層を形成し、さらにその上に厚み12〜50μm程度の導体箔をパターン形成して構成される。尚、アンテナ基板4Aの端子部やはんだ付け部以外の部分は、絶縁体を被せて保護している。
【0019】
接続コネクタ4Bは、リード線4aを介してアンテナ基板4Aと接続され、後述するリーダ制御部14にコネクタ接続される。
【0020】
次に、本発明に係る電気錠システムの構成について図3を参照しながら説明する。本発明に係る電気錠システム11は、図3に示すように、上述したアンテナ内蔵シリンダ1に加え、扉12内の電気錠ケース13に内蔵されたリーダ制御部14、電気錠制御部15、電気錠16を備えて構成される。
【0021】
リーダ制御部14は、アンテナ内蔵シリンダ1の接続コネクタ4Bを介して受信用アンテナ4に接続され、受信用アンテナ4を介して外部(IDキー)に問い合わせ信号を周期的に出力している。リーダ制御部14は、IDキーがアンテナ内蔵シリンダ錠1の近傍でかざされ、周期的に出力される問い合わせ信号に応答すると、受信用アンテナ4からIDキーのID情報(例えば暗証番号、部屋番号などの情報)を読み取り、この読み取ったIDキーのID情報と予め登録された登録済ID情報とを照合し、IDキーから読み取ったID情報の正当性を判別している。そして、リーダ制御部14は、IDキーから読み取ったID情報を正常認証したときに、照合OKの旨の判別信号を電気錠制御部15に出力している。
【0022】
電気錠制御部15は、リーダ制御部14から照合OKの旨の判別信号が入力されると、そのときの錠前の施解錠状態及び扉12の開閉状態に応じて電気錠16の解錠を指令する解錠指令信号又は電気錠16の施錠を指令する施錠指令信号を電気錠16に出力している。すなわち、現在の電気錠16の状態が閉扉・施錠であれば電気錠16に解錠指令信号を出力し、現在の電気錠16の状態が閉扉・解錠であれば電気錠16に施錠指令信号を出力している。
【0023】
電気錠16は、例えばモータやソレノイドなどの駆動装置と錠前とからなる周知の構造であり、電気錠制御部15から解錠指令信号又は施錠指令信号が入力されたときに、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込み(解錠時)、錠前を解錠又は施錠している。
【0024】
尚、特に図示はしないが、電気錠システム11は、電気錠ケース13に着脱交換自在に設けられる電池、商用電源(AC100V)等から各部に必要な駆動電源が供給されるようになっている。
【0025】
次に、上記構成によるアンテナ内蔵シリンダ錠1を採用した電気錠システム11の動作について説明する。
【0026】
この電気錠システム11では、アンテナ内蔵シリンダ錠1(化粧リング3)の近傍でIDキーをかざすと、化粧リング3の内面に設けられた受信用アンテナ4を介してリーダ制御部14がIDキーのID情報を読み取る。リーダ制御部14は、IDキーから読み取ったID情報と予め登録された登録済ID情報とを照合し、両者が一致するか否かを判別し、両者が一致したときに照合OKの旨の判別信号を電気錠制御部15に出力する。電気錠制御部15は、リーダ制御部14から照合OKの旨の判別信号が入力されると、現在の電気錠16の状態が閉扉・施錠であれば電気錠16に解錠指令信号を出力し、現在の電気錠16の状態が閉扉・解錠であれば電気錠16に施錠指令信号を出力する。そして、電気錠16は、電気錠制御部15から解錠指令信号が入力されると錠前を解錠し、電気錠制御部15から施錠指令信号が入力されると錠前を施錠する。
【0027】
このように、本例のアンテナ内蔵シリンダ錠1は、錠前の施解錠に必要なID情報(例えば暗証番号、部屋番号などの情報)を受信するための受信用アンテナ4が室外側から見えない状態なので、室外側からリーダがあることが判らず、リーダの直接攻撃による異常解錠を防ぐことができ、従来に比べて防犯性を向上させることができる。
【0028】
また、受信用アンテナ4がシリンダ2の化粧リング3の内面に固定して内蔵された構成なので、シリンダ2と一緒に扉12への取り付けを行うことができ、作業工程数を増すことなく、取付作業の手間を省くことができる。
【0029】
ところで、上述した実施の形態では、電気錠16を装備した電気錠ケース13にリーダ制御部14と電気錠制御部15を内蔵した構成として説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、リーダ制御部14と電気錠制御部15を電気錠ケース13でなく室内側に設け、これらリーダ制御部14と電気錠制御部15を、通電金具などの配線手段を介して電気錠ケース13内の電気錠16と配線接続する構成としても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 アンテナ内蔵シリンダ錠
2 シリンダ
2a 鍵穴
3 化粧リング
4 受信用アンテナ
4A アンテナ基板
4B 接続コネクタ
11 電気錠システム
12 扉
13 電気錠ケース
14 リーダ制御部
15 電気錠制御部
16 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気錠を施解錠するためのIDキーのID情報を受信する受信用アンテナが室外側の化粧リングの内側に組み込まれたことを特徴とするアンテナ内蔵シリンダ錠。
【請求項2】
請求項1のアンテナ内蔵シリンダ錠を用いた電気錠システムであって、
前記受信用アンテナを介して前記IDキーのID情報を読み取り、当該読み取ったID情報の正当性を判別するリーダ制御部と、
前記リーダ制御部が前記IDキーのID情報を正常認証したときに前記電気錠を解錠又は施錠する電気錠制御部とを備えたことを特徴とする電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196272(P2010−196272A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39489(P2009−39489)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】