説明

アンテナ装置

【課題】VHF帯のアンテナ外形を小型化でき、さらにUHF帯共用アンテナと共用することによりアンテナ装置の簡素化が実現できる。
【解決手段】アンテナ装置は、アンテナ本体とアンテナ本体を支持する支持部42を備え、アンテナ本体は、自己補対アンテナと鋸歯状のアンテナパターンを有している。自己補対アンテナのインピーダンスは、無限の大きさの平面導体で構成されている場合、周波数に無関係に一定となる。また、アンテナ本体は、定指向性と、広帯域の周波数に対して小型で効率が良く、直交偏波成分が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ放送などを受信するための小型アンテナに関し、特に地上波デジタルテレビ放送と従来の地上波アナログテレビ放送用の共用受信アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタルテレビ放送は、東京・大阪・名古屋の三大都市圏で2003年12月から開始され、その他の地域でも2006年までに開始される予定である。地上波デジタルの特徴の1つは、従来のアナログ放送に比べて電波強度が所定値以下に低下するまではビットエラー訂正機能等でデータ受信漏れを防ぐことが可能であり、アナログ放送と比較して電波強度の低下やゴーストによる画像の乱れが少ないという利点がある。
【0003】
また、テレビ受像機も従来のブラウン管から液晶ディスプレイ又はプラズマディスプレイなどの薄型ディスプレイを用いた薄型テレビが主流になりつつある。薄型テレビは奥行きを取らないため壁にかけるように設置することや、小型軽量となる為、見たい部屋へ自由に移動することが可能である。さらに、地上波デジタルテレビ放送により室内アンテナでも十分受信可能となる。
【0004】
この種の室内アンテナは、VHF帯(90〜108MHz,170〜222MHz)及びUHF帯(470〜770MHz)を1台のアンテナでカバーするために広帯域な電圧定在波特性と指向特性を備える必要があるため、特許文献1と特許文献2に示すようなVHF受信用ロッドアンテナとUHF受信用アンテナエレメントを有している。
【0005】
このような室内アンテナは、アンテナの運搬時や格納時には、ロッドアンテナを縮めてたたみ込むことが可能であるが、使用時はVHF帯の下限周波数90MHz帯を受信するためロッドアンテナを伸展して使用する必要がある。また、小型化に関しては非特許文献1に示すような広帯域平面アンテナにおける「互生自己補対アンテナ」と呼ばれる技術が公開されている。
【0006】
【特許文献1】実公昭60−25134号公報
【特許文献2】特開2001−274609号公報
【非特許文献1】古谷恒雄,石曽根孝之,虫明康人「互生自己補対アンテナとその高利得広帯域アンテナへの応用」,信学技報,AP77−43,1997年7月,P35−40
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7は、従来の室内アンテナの構成を示す構成図である。室内アンテナ100は、2本のロッドアンテナ102,103と、UHF受信エレメント105を有する蓋体104と、これらを格納する収納部106と、転倒防止板107を格納又は展開可能なケース本体101を有している。
【0008】
図7に示すような室内アンテナ100を使用する場合、ロッドアンテナ102,103を伸ばしてアンテナ長をVHF周波数帯の下限周波数の1/4波長と等しくする為に約80cmにして使用する。アンテナを伸ばすと重心位置が変化し、転倒の恐れがあるので、ケース本体に格納されている転倒防止板107を引き延ばして使用するため、幅100cm、奥行き約20cm程度の空間を必要としており、小型化が難しいという問題があった。
【0009】
さらに、ロッドアンテナ等の可動部が有るため、ベランダなどに設置する屋外アンテナとして使用する場合には風雨に対する強度向上、防錆、防塵対策が難しいという問題もある。
【0010】
小型化に関しては、非特許文献1に示されている互生自己補対アンテナを用いて平面アンテナとすることは可能であるが、VHF帯における下限周波数の1/4波長と等しくする必要があるため、1辺の長さを約80cmとする平面アンテナとなり、小型化が出来ないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような問題を解決するために、本発明に係るアンテナ装置は、テレビ放送の電波を受信するアンテナ装置において、誘電体基板と、誘電体基板の表面に形成されるアンテナパターンと、誘電体基板の中央部に配置され、アンテナパターンに給電する給電部と、を有し、アンテナパターンは、誘電体基板の下半分に配置され、上下方向に伸びる中心軸上に配置された幹状の線状導線と、この線状導線から等間隔で左右方向に交互に分岐された枝状の線状導線とを含む下部サブパターンと、誘電体基板の上半分に配置され、下部サブパターンに対し補対の関係になる上部サブパターンと、を有し、下部サブパターンおよび上部サブパターンは、その枝状の線状導線の一部に鋸歯状パターンを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るアンテナ装置において、前アンテナパターンは、外側に位置するVHFアンテナ部と、内側に位置するUHFアンテナ部を備え、VHFアンテナ部とUHFアンテナ部は、チョークコイルで接続されることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係るアンテナ装置において、鋸歯状パターンは、矩形状又は三角状の歯部を含み、その歯は少なくとも2種類幅のものを含むことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、本発明に係るアンテナ装置において、下部サブパターンを水平軸で上側に折り返した場合に鋸歯状パターンの歯の先端部が上部サブパターンの歯の先端部に対向することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明を使用すると、VHF帯のアンテナ外形を小型化でき、さらにUHF帯共用アンテナと共用することによりアンテナ装置の簡素化が実現できる。また、ロッドアンテナのような可動部がない平面アンテナとすることで、薄型テレビとの組み合わせが容易という効果がある。
【0016】
また、本発明によると、銅張プリント基板のエッチングによりパターンを印刷した構成とすることにより量産時の寸法精度が安定し、軽量化及び低価格化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実用化された広帯域アンテナの1つとして、対数周期アンテナがある。その入力インピーダンスは周波数に対して対数周期的に一定変化を繰り返し、近似的に定インピーダンス化している。一般に対数周期構造のアンテナは定インピーダンスになりうると考えられるが、実際は自己補対的構造になっているときに定インピーダンスが保証される。以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0018】
図1は、第1の本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置の外観を示す外観図である。アンテナ装置は、アンテナ本体41と、アンテナで受信したテレビ放送を伝達する図示しないケーブルと、アンテナ本体41を支持する支持部42を備えている。
【0019】
アンテナ本体41は、自己補対アンテナと呼ばれるアンテナ構造を有している。自己補対アンテナの原理は、無限の大きさの平面導体で構成されている場合、周波数に無関係に60π(約188Ω:自由空間の特性インピーダンスの1/2)となる。また、アンテナ本体41は、定指向性と、周波数に対して出来るだけ小型で効率が良く、直交編波成分が少なく、平衡型自己補対アンテナであっても同軸ケーブルで直接接続でき(balunを使用しなくてもアンテナ自身に平衡作用がある)等の特徴を有している。
【実施例1】
【0020】
図2は、第1の実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のアンテナカバーをはずして導体で作成されたアンテナ基板32と、同軸ケーブル27と、支持部42の構成を示す構成図である。アンテナ基板32の導体パターンは、給電点Fを中心に導体を90度回転又は水平軸であるCD軸で折り返すことにより、導体パターンの無い部分に導体パターンの有る部分が重なり合う構造である。
【0021】
図2のアンテナ基板32の導体パターンは、伝送路として機能する幹となるAF―FBの幅が等しく、四角形ABCDのそれぞれの角は90度である。また、幹からの導体の枝が等間隔で交互に分岐し、かつ、枝の外周と内周の長さは隣り合い四角形を構成する辺の長さが同一である。この構成とすることで好適なVSWRを得ることが可能である。
【0022】
図2のアンテナ基板32の伝送路として機能する幹の幅は、FBにSemi−rigid同軸ケーブル(例えば直径3.6mm)を使用して接続し、電気的な板として等価幅はその2倍であることを考慮して上限の伝送路のバランスを取るために同じ幅(例えば6
mm)とした。また、CDのギャップ(ACDの三角形とBDCの三角形の隙間)は、幹の幅と同等の値の時に188Ωへの集中度が好適である。
【0023】
また、第1の実施形態において、導体パターンの外周部分の形状を矩形の鋸歯状とし、4つの一辺で構成される端部の長さが下限周波数の1波長となるように構成した。
【0024】
図2のように同軸ケーブル27を直接給電する場合、一般的には不平衡電流の発生が問題となるが、本実施形態のアンテナ本体41では、アンテナ自身が広帯域のbalunとしての作用があり不平衡電流は実用上問題とならず、部品点数を削減することが可能である。
【実施例2】
【0025】
図3は、第2の本実施形態における誘電体基板の導体薄膜を有するガラスエポキシ基板上にエッチング加工されたアンテナ基板32の構成を示す構成図であり、エッチング加工により微細アンテナパターンとしたものである。
【0026】
最初に給電点Fについて説明する。同軸ケーブル27によりアンテナ本体41に給電されている。詳しくは、同軸ケーブル27のグランド28は給電線25を介してパターン21へ接続され、同様に同軸ケーブル27の芯線29は、給電線26を介してパターン23へ接続されている。これらのループは給電点から、順に第1周〜第7周までがUHF帯、第8〜第9周がVHF帯として機能する。
【0027】
幹状のFBパターン21,22とFAパターン23,24は、同軸ケーブル27により給電され、さらに各々の幹状のパターンはG部に示すようにチョークコイル31で外周の幹状のパターンに接続されている。この構成によりアンテナ本体41の内側がUHF帯アンテナとして作用し、チョークコイル31を介して全体としてVHF帯アンテナとしても作用している。
【0028】
次に、内側のアンテナパターンについて説明する。給電点Fから給電された高周波は、それぞれ等しい1辺の長さを有するパターン2の外周と、ギャップ部を介してパターン3の内周と、パターン1の外周と、ギャップ部を介してパターン4の内周とを結ぶパターンから電磁波として放射される。同様にしてパターン6の内周、パターン3の外周、パターン5の内周、パターン4の外周を結ぶパターン(第1周)及びその外周(第2周〜9周)からも電磁波が放射される。
【0029】
第7周を構成する内側のパターン14の外周、パターン15の内周、パターン13の外周、パターン16の内周に設けられた矩形の鋸歯状形状により第1周〜第7周をUHF帯のアンテナとして作用させている。さらに、アンテナ基板32のアンテナパターンは、給電点Fを中心に導体を90度回転又は水平軸であるCD軸で折り返すことにより、アンテナパターンの無い部分にアンテナパターンの有る部分が重なり合う構造であり、鋸歯状の歯の向きは対向している。この時、向かい合う歯は、先端部が互いに向かい合う位置でも良いし、先端部が互いに噛み合う位置でも良く、鋸歯状の形状を第7周と第9周に設けることを限定するものでもない。
【0030】
外周のパターン18の外周、パターン19の内周、パターン17の外周、パターン20の内周とを結ぶパターンと、内部のUHF帯アンテナと共同してVHF帯アンテナとして作用することで、アンテナの小型化を実現している。
【0031】
また、鋸歯状の各歯の間隔はUHF帯とVHF帯の周波数と外形寸法により決められ、それぞれ異なる間隔で配置されており、かつ各周の各1辺の長は他の辺の長さと等しい。
【0032】
上述したアンテナ装置として重要なものの1つは定指向性である。広い周波数範囲で少なくとも最大放射方向の変化がなく、放射パターンの変化しないアンテナが望まれている。本実施形態のアンテナ装置は、1:10にわたる周波数範囲についてほぼ定指向となるアンテナ装置である。
【0033】
図4は、本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置の記号と座標系を示す模式図である。ここで、各記号と座標系を図4のように定める。
【0034】
電界の偏波面は、Y軸方向に偏波面があり、直交偏波成分はかなり少なく直線偏波のアンテナと同様な特性を示す。以下に、YZ面のE面パターンD(θ)とXZ面のE面パターンD(φ)をVHF帯からUHF帯で測定した結果を示す。
【0035】
図5は、本実施形態に置ける自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のYZ平面におけるD(θ)指向パターンである。D(θ)のパターンは周波数の変化にあまり変化せず、半波長ダイポールアンテナの半値角と同じ(例えば78度から84度)値を示す。同様に、周波数の変化により最大放射方向もZ軸方向から変化せず、Y軸方向の放射は、ほとんどない。
【0036】
図6は、本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のXZ平面におけるD(φ)指向パターンである。D(φ)はZ軸方向に最大値があり、X軸方向の放射はそれより低くなる。以上のことから、本実施形態におけるアンテナ装置の指向パターンと偏波面は、1波長ループアンテナの特性と類似しており、自己補対アンテナパターンを用いてアンテナを小型化してもアンテナ性能には影響しないことが分かる。
【0037】
以上、説明したように、本発明を使用すると、VHF帯のアンテナ外形を小型化でき、さらにVHF帯アンテナとUHF帯アンテナと共用することによりアンテナ装置の簡素化が実現でき、特性も平面方向に指向性があるため、最適な方向に容易に設置可能となる。
【0038】
また、ロッドアンテナのような可動部がない平面アンテナとすることで、薄型テレビとの組み合わせが容易という効果がある。
【0039】
さらにまた、アンテナ本体41は、定指向性と、周波数に対して出来るだけ小型で効率が良く、直交偏波成分が少なく、平衡型自己補対アンテナであっても同軸ケーブル27で直接接続できる等の特徴を有しており、部品点数の削減に寄与している。
【0040】
さらにまた、本発明によると、銅張プリント基板のエッチングによりパターンを印刷した構成とすることにより量産時の寸法精度が安定し、軽量化及び低価格化を実現できる。なお、基板は、ガラスエポキシに限ることなく、さらに安価な紙エポキシ等を用いても好適に実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置の外観を示す外観図である。
【図2】第1の実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のアンテナカバーをはずしてアンテナ基板とその他の部品の構成を示す構成図である。
【図3】第2の実施形態におけるアンテナ基板の構成を示す構成図である。
【図4】本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置の記号と座標系を示す模式図である。
【図5】本実施形態に置ける自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のYZ平面におけるD(θ)指向パターンを示す指向性特性図である。
【図6】本実施形態における自己補対アンテナを用いたアンテナ装置のXZ平面におけるD(φ)指向パターンを示す指向性特性図である。
【図7】従来の室内アンテナの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1〜24 パターン、25,26 給電線、27 同軸ケーブル、28 グランド、29 芯線、31 チョークコイル、32 アンテナ基板、41 アンテナ本体、42 支持部、100 室内アンテナ、101 ケース本体、102,103 ロッドアンテナ、104 蓋体、105 受信エレメント、106 収納部、107 転倒防止板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビ放送の電波を受信するアンテナ装置において、
誘電体基板と、
誘電体基板の表面に形成されるアンテナパターンと、
誘電体基板の中央部に配置され、アンテナパターンに給電する給電部と、
を有し、
アンテナパターンは、
誘電体基板の下半分に配置され、上下方向に伸びる中心軸上に配置された幹状の線状導線と、この線状導線から等間隔で左右方向に交互に分岐された枝状の線状導線とを含む下部サブパターンと、
誘電体基板の上半分に配置され、下部サブパターンに対し補対の関係になる上部サブパターンと、
を有し、
下部サブパターンおよび上部サブパターンは、その枝状の線状導線の一部に鋸歯状パターンを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前アンテナパターンは、
外側に位置するVHFアンテナ部と、内側に位置するUHFアンテナ部を備え、
VHFアンテナ部とUHFアンテナ部は、チョークコイルで接続されることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
鋸歯状パターンは、矩形状又は三角状の歯部を含み、その歯は少なくとも2種類幅のものを含むことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置において、
下部サブパターンを水平軸で上側に折り返した場合に鋸歯状パターンの歯の先端部が上部サブパターンの歯の先端部に対向することを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−245714(P2006−245714A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55320(P2005−55320)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000189486)上田日本無線株式会社 (29)
【Fターム(参考)】