説明

アンテナ装置

【課題】衛星放送受信アンテナによる電波の受信への影響を小さくしながら地上波放送の電波も受信できる、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとを一体化したアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、衛星放送受信アンテナ2と、地上波放送受信アンテナとしてのダイポールアンテナ10とを備える。ダイポールアンテナ10は、アーム4と一体化される。これによって、放送衛星からの電波が反射鏡3に届く前に地上放送受信アンテナによって遮られることを防止できる。また、地上波放送受信アンテナが風を受けることによりアーム4が振動する(これにより受信部5の位置がずれる)といった問題が生じる可能性も小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとを一体化したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上波放送および衛星放送の両方を受信するために、それぞれの放送電波を受信するためのアンテナが別々に設置されていた。しかし、それらを別々に設置するためのスペースが必要になるという課題、あるいは取り付けに手間がかかるといった課題がある。
【0003】
このような課題を解決するためのアンテナ装置として、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとを一体化したアンテナ装置が提案されている。たとえば特開2007−60009号公報(特許文献1)は、衛星放送受信アンテナと、衛星放送受信アンテナの受信部に取り付けられたUHFアンテナとを有する一体型アンテナを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案のアンテナでは、UHFアンテナが、衛星放送受信アンテナによる電波の受信を妨げる可能性がある。UHFアンテナ(放射器)の幅は、UHF帯(UHFテレビ放送の周波数帯)の中心波長の約1/2程度であるので、たとえば20cm程度である。これに対して、衛星放送受信用アンテナの反射鏡のサイズは、たとえば約45cmである。このように反射鏡に対して比較的大きなUHFアンテナが配置されるために衛星からの電波が反射鏡の前でUHFアンテナに遮られる可能性が考えられる。
【0006】
また、UHFアンテナがアームの先端に位置する一次放射器付コンバータ部に取り付けられるため、UHFアンテナが風を受けた場合に、アームが振動する可能性がある。アームが振動することによってアームに取り付けられた一次放射器付コンバータ部が電波を良好に受信できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、衛星放送受信アンテナによる電波の受信への影響を小さくしながら地上波放送の電波も受信できる、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとを一体化したアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は要約すれば、アンテナ装置であって、衛星放送受信アンテナと、地上波放送受信アンテナとを備える。衛星放送受信アンテナは、衛星からの電波を反射するための反射鏡と、反射鏡に支持されたアームと、反射鏡によって反射された電波を受信するためにアームに取付けられた受信部とを有する。地上波放送受信アンテナは、アームと一体化される。
【0009】
好ましくは、地上波放送受信アンテナは、第1および第2の放射素子を有する第1のダイポールアンテナである。第1および第2の放射素子は、アームの延びる方向に沿って配置されるとともにアームに固定される。
【0010】
好ましくは、第1および第2の放射素子の各々は筒状に形成される。アームは、アームの延びる方向に沿って形成された溝部を有する。第1および第2の放射素子は、アームの溝部に挿入される。
【0011】
好ましくは、アームは、樹脂により形成される。地上波放送受信アンテナは、第1および第2の放射素子を有する第1のダイポールアンテナである。第1および第2の放射素子の表面が露出するように、第1および第2の放射素子が樹脂に埋め込まれている。
【0012】
好ましくは、地上波放送受信アンテナは、第3および第4の放射素子を有する第2のダイポールアンテナをさらに含む。第3および第4の放射素子は、第1のダイポールアンテナと略直交して配置されるようにアームに取付けられる。アンテナ装置は、第1および第2のダイポールアンテナの受信信号の位相差が略90°となるように、第1および第2のダイポールアンテナに給電するための給電部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとを一体化したアンテナ装置において、衛星放送受信アンテナによる電波の受信への影響を小さくしながら地上波放送の電波も受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】図1に示した地上波放送受信アンテナを詳細に説明するためのアームの部分拡大図である。
【図3】第1の実施の形態に係るアンテナ装置の他の構成例を示した図である。
【図4】図3に示した受信部5の構成を概略的に示したブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図6】図5に示した放射素子11A,12Aをアームに取り付けるためのアームの構造を示した図である。
【図7】図5に示した同軸ケーブル7,8の配置を説明するための図である。
【図8】図7に示したダイポールアンテナ10Aの給電構造をより詳細に説明するための図である。
【図9】ダイポールアンテナの給電部の他の構成例を示した図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図11】図10に示した2つのダイポールアンテナのアームへの設置を説明した図である。
【図12】図11に示したクロスダイポールアンテナの給電構造を説明するための図である。
【図13】図12に示した給電構造を説明するためのブロック図である。
【図14】図10に示した同軸ケーブル7および8の配置を詳細に示した図である。
【図15】図11,12に示したクロスダイポールアンテナの給電構造の他の例を示した図である。
【図16】クロスダイポールアンテナの他の構成例を示した図である。
【図17】2つのダイポールアンテナの間で給電されるアンテナを切換えるための構成の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。図1を参照して、アンテナ装置1は、衛星放送受信アンテナ2と、地上波放送受信アンテナとしての第1のダイポールアンテナ、たとえばダイポールアンテナ10とを備える。衛星放送受信アンテナ2は、反射鏡3と、アーム4と、受信部5とを含む。受信部5は、一次放射器とコンバータ部とを含んでいる。反射鏡3は図示しない衛星(たとえばBS(放送衛星)あるいはCS(通信衛星))からの電波を反射する。アーム4は反射鏡3の裏面にその一端が取り付けられることで反射鏡3によって支持される。図1に示すように、衛星放送受信アンテナ2は、たとえば支柱6に取り付けられる。
【0017】
アーム4は絶縁材料によって形成される。本発明の実施の形態では、アーム4は樹脂材料により形成される。樹脂材料としては、たとえばABS、AES、ASA等を用いることができるが、樹脂材料はこれらに限定されるものではない。
【0018】
受信部5は、反射鏡3の焦点位置に配置される。受信部5は、反射鏡3によって反射された電波(衛星からの電波)を受信するためにアーム4の先端に取付けられる。受信部5からの信号は同軸ケーブル7を介してチューナ等の受信装置(図示せず)に送られる。
【0019】
ダイポールアンテナ10は、アーム4と一体化される。ダイポールアンテナ10は、直線上に配置された第1および第2の放射素子、たとえば放射素子11、12を含む。たとえばダイポールアンテナ10はUHFアンテナとして機能するように、そのサイズ(素子長など)が定められる。ダイポールアンテナ10は、給電ケーブルとしての同軸ケーブル8に接続される。ダイポールアンテナ10によって受信された地上波放送信号は同軸ケーブル8を介してチューナ等の受信装置(図示せず)に送られる。
【0020】
図2は、図1に示した地上波放送受信アンテナを詳細に説明するためのアームの部分拡大図である。図2を参照して、ダイポールアンテナ10は、アーム4の表面に固定される。上述のようにアーム4は、樹脂素材によって形成することができる。図2に示した構成では、インサート成形によって、ダイポールアンテナ10は、アーム4の表面に固定される。すなわちダイポールアンテナ10の周りに溶融樹脂を注入するとともに、その溶融樹脂をアーム4の形状に成形する。これによってダイポールアンテナ10をアーム4と一体化できる。放射素子11,12は、その表面が露出するように樹脂製のアーム4に埋め込まれている。
【0021】
ただし、ネジなどの固定手段によってアーム4の表面にダイポールアンテナ10を取り付けても良い。また、溶融樹脂を用いてアーム4を成形する際に、アーム4の表面にダイポールアンテナ10(放射素子11,12)の形状に合わせた凹部を金型で形成するとともに、溶融樹脂の硬化後に放射素子11,12をその凹部にはめ込んでもよい。これらの方法によっても、アーム4とダイポールアンテナ10とを一体化することができる。
【0022】
同軸ケーブル8は、内部導体13と外部導体14とを有する。内部導体13は、ネジ15によって放射素子11に接続される。外部導体14は、ネジ16によって放射素子12に接続される。ネジ15,16の位置がダイポールアンテナ10の給電点の位置に対応する。なおダイポールアンテナ10の防水のためにダイポールアンテナ10全体、あるいは同軸ケーブル8とダイポールアンテナ10との接続部分をカバーで覆ってもよい。カバーは、絶縁材料、たとえば樹脂によって形成される。
【0023】
図1に示した構成によれば、アンテナ装置1から図示しない受信装置に信号を出力するために、2本の同軸ケーブル(同軸ケーブル7,8)が用いられる。ただし以下に説明するように、衛星放送受信アンテナ2の受信部5およびダイポールアンテナ10の給電部の各々からの信号を1本の同軸ケーブルのみを用いて受信装置等に伝送することもできる。
【0024】
図3は、第1の実施の形態に係るアンテナ装置の他の構成例を示した図である。図3を参照して、ダイポールアンテナ10からの信号は同軸ケーブル8を介して衛星放送受信アンテナ2の受信部5に入力される。
【0025】
後で詳細に説明するが、受信部5には混合器が内蔵される。当該混合器は、衛星放送電波を処理することで得られた受信信号と、ダイポールアンテナ10が地上波放送電波を受信することで得られた受信信号とを混合して出力する。これにより、同軸ケーブル7には上記の混合信号が伝達される。
【0026】
図4は、図3に示した受信部5の構成を概略的に示したブロック図である。図4を参照して、受信部5は、一次放射器20と、コンバータ部21と、混合器22とを含む。一次放射器20は、放送衛星9から送信され、かつ反射鏡3によって集められた電波をコンバータ部21に送る。コンバータ部21は、同軸ケーブル7および混合器22を介して送られた電源電圧(図中「DC」と示されるように、たとえば15Vの直流電圧)を受けることによって、入力された衛星放送電波に対して増幅および周波数変換等の所定の信号処理を実行する。そしてコンバータ部21は、その信号処理によって生成された受信信号を混合器22に出力する。
【0027】
混合器22は、コンバータ部21から入力された受信信号と、同軸ケーブル8から入力された受信信号(ダイポールアンテナ10が地上波放送用電波を受信することでダイポールアンテナ10から出力された受信信号)を混合して、混合信号を同軸ケーブル7へ出力する。混合信号は同軸ケーブル7を介して、図示しない受信装置等に送られる。
【0028】
第1の実施の形態によれば、地上波放送受信用アンテナとしてのダイポールアンテナ10がアーム4と一体化されている。したがって、地上波放送受信用アンテナを固定するための部品が不要となる。さらに地上波放送受信用アンテナと衛星放送受信用アンテナとで取り付け金具の共通化および設置スペースの共通化を図ることができる。したがって、地上波放送受信用アンテナと衛星放送受信用アンテナとを個別に設置する場合に比較してアンテナ装置の低価格化および省スペース化を図ることができる。
【0029】
ここで受信部5のケースにUHFアンテナを取り付けた場合、反射鏡3の前方には、反射鏡3の直径(たとえば約45cm)に対して比較的大きなアンテナ(たとえば幅が20cm程度のアンテナ)が配置されることになる。したがって放送衛星9から送信された電波が反射鏡3に届く前にUHFアンテナによって放送衛星9からの電波の受信が妨げられる可能性がある。さらにUHFアンテナが風を受けることでアームが振動する可能性がある。上記のように受信部5は反射鏡3の焦点位置に配置されている。アーム4が振動することによって、受信部5が放送衛星9からの電波を良好に受信できない可能性がある。
【0030】
これに対して、第1の実施の形態では、地上波放送受信アンテナとしてのダイポールアンテナ10がアーム4と一体化される。これによって、放送衛星9からの電波が反射鏡3に届く前に地上放送受信アンテナによって遮られることを防止できる。また、地上波放送受信アンテナが風を受けることによりアーム4が振動する(これにより受信部5の位置がずれる)といった問題が生じる可能性も小さくできる。したがって第1の実施の形態によれば、衛星放送受信アンテナと地上波放送受信アンテナとが一体化されたアンテナ装置において、衛星放送受信アンテナの受信への影響を小さくしながら、衛星放送電波および地上波放送電波を受信することができる。
【0031】
[実施の形態2]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。図5および図1を参照して、第2の実施の形態に係るアンテナ装置1Aは、衛星放送受信アンテナ2Aと、ダイポールアンテナ10Aとを備える。
【0032】
衛星放送受信アンテナ2Aは、アーム4に代えてアーム4Aを備える点において衛星放送受信アンテナ2と異なる。アーム4Aは絶縁材料、たとえば上述の樹脂材料によって形成される。
【0033】
ダイポールアンテナ10Aは、同軸ダイポールアンテナであり、放射素子11,12に代えて筒状に形成された放射素子11A,12Aを備える点においてダイポールアンテナ10と異なる。アンテナ装置1Aの他の部分の構成はアンテナ装置1の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0034】
放射素子11A,12Aはアーム4Aに取り付けられることによってアーム4Aと一体化される。放射素子11A,12Aは筒状に形成される。ダイポールアンテナ10に給電するための同軸ケーブル8は、放射素子12Aの内部(筒の内部)を通り、放射素子11A,12Aに接続される。受信部5からの信号を伝達するための同軸ケーブル7は、放射素子11A,12Aの内部(筒の内部)を通される。
【0035】
図6は、図5に示した放射素子11A,12Aをアームに取り付けるためのアームの構造を示した図である。なおアームの構造を説明するために図6では同軸ケーブル7,8は示されていない。図6を参照して、アーム4Aは、アーム4Aの延びる方向に沿って形成された溝部31を有する。すなわちアーム4Aは、コの字状の断面を有する。放射素子11A,12Aは溝部31に挿入されることによってアーム4Aと一体化される。溝部31の側面には、放射素子11A,12Aを固定するためのリブ32が凸状に形成されている。
【0036】
放射素子11A,12Aは同軸上に配置される。具体的には、放射素子11A,12Aすなわち2つの筒状導体は、その中心軸が共通の軸Yとなるように配置される。
【0037】
図7は、図5に示した同軸ケーブル7,8の配置を説明するための図である。図7を参照して、受信部5からの受信信号を伝達するための同軸ケーブル7が放射素子11A,12Aの内部(筒の内部)を通される。さらに、ダイポールアンテナ10Aに給電するための同軸ケーブル8が放射素子12Aの内部(筒の内部)を通り、放射素子11A,12Aに接続される。
【0038】
図8は、図7に示したダイポールアンテナ10Aの給電構造をより詳細に説明するための図である。図8を参照して、放射素子11Aは、筒の中心軸方向(軸Yの方向)に沿って筒の側面から突出するように形成された給電部33を有する。給電部33には貫通孔34が形成される。同様に放射素子12Aは、筒の中心軸方向に沿って筒の側面から突出するように形成された給電部35を有する。給電部35には貫通孔36が形成される。
【0039】
同軸ケーブル8の内部導体13は貫通孔34に通される。同軸ケーブル8の外部導体14は貫通孔36に通される。内部導体13を給電部33に電気的に接続させるとともに外部導体14を給電部35に電気的に接続させることによって、ダイポールアンテナ10Aへの給電が可能となる。なお、同軸ケーブル8の内部導体13および外部導体14を給電部33,35にそれぞれ電気的に接続させるための方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を適用できる。たとえば内部導体13および外部導体14を給電部33,35にそれぞれ巻きつけてもよい。
【0040】
第2の実施の形態によれば、ダイポールアンテナ10A(同軸ダイポールアンテナ)を構成する放射素子11A,12Aが筒状に形成される。これによって、アームの重量の増加を抑制できる。
【0041】
さらに、ダイポールアンテナ10Aによる電波の受信において同軸ケーブルの影響を受けにくくすることができる。ダイポールアンテナ10Aの外側に同軸ケーブル7あるいは同軸ケーブル8を配置した場合には、そのケーブルによって、ダイポールアンテナ10Aによる地上波放送電波の受信が妨げられる可能性がある。第2の実施の形態によれば、ダイポールアンテナ10Aに給電するための同軸ケーブル8および、衛星放送受信アンテナ2Aの受信部5から出力される信号を伝達するための同軸ケーブル7は、放射素子11A,12Aの内部を通される。したがって、ダイポールアンテナ10Aによる電波の受信において同軸ケーブルの影響を受けにくくすることができる。
【0042】
なお、図3および図4に示した構成と同様に、衛星放送受信アンテナ2Aの受信部5に混合器を内蔵するとともに、ダイポールアンテナ10Aからの受信信号を伝達する同軸ケーブル8が受信部5に接続されてもよい。
【0043】
また、図9に示すように、放射素子11A,12Aの各々の給電部をカバー38によって覆ってもよい。また、図示しないが、給電部33,35と接続される回路、たとえば整合回路がカバー内部に設けられてもよい。
【0044】
[実施の形態3]
図10は、本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置の斜視図である。図10および図5を参照して、第3の実施の形態に係るアンテナ装置1Bは、衛星放送受信アンテナ2Aと、アーム4Aに設置されるクロスダイポールアンテナ10Bとを備える。クロスダイポールアンテナ10Bは、ダイポールアンテナ10Aに加えて第2のダイポールアンテナ、たとえばダイポールアンテナ40を備える。第3の実施の形態では、クロスダイポールアンテナ10Bが地上波放送受信アンテナとして機能する。
【0045】
ダイポールアンテナ40は、ダイポールアンテナ10Aに対して略直交配置される。ダイポールアンテナ40は、ダイポールアンテナ10Aに直交するように、一直線上に配置された第3および第4の放射素子、たとえば放射素子41,42を備える。
【0046】
ダイポールアンテナ10Aの受信信号とダイポールアンテナ40の受信信号の位相差が互いに略90°となるように異なるようにダイポールアンテナ10A,40が給電される。クロスダイポールアンテナ10Bからの信号は同軸ケーブル8を介して衛星放送受信アンテナ2の受信部5に入力される。図3および図4に示した構成と同じく、受信部5には混合器が内蔵される。当該混合器は、衛星放送電波を処理することで得られた受信信号と、クロスダイポールアンテナ10Bが地上波放送電波を受信することで得られた受信信号とを混合して出力する。これにより、同軸ケーブル7には上記の混合信号が伝達される。
【0047】
アンテナ装置1Bは、さらにアーム4Aに取り付けられるカバー38Aを備える。カバー38Aは、クロスダイポールアンテナ10Bの給電部を覆うようにアーム4Aに取り付けられる。アンテナ装置1Bの他の部分は、アンテナ装置1Aの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0048】
図11は、図10に示した2つのダイポールアンテナのアームへの設置を説明した図である。図11を参照して、第2の実施の形態(図6参照)と同様に、ダイポールアンテナ10A(放射素子11A,12A)はアーム4Aの溝部31に挿入されることでアーム4Aと一体化される。溝部31の側面には、放射素子11A,12Aを固定するためのリブ32が凸状に形成されている。放射素子11A,12Aは筒状に形成される。
【0049】
ダイポールアンテナ40を構成する放射素子41,42は、たとえば金属板によって形成される。放射素子41,42は、それぞれネジ43,44によってアーム4Aに固定される。放射素子41,42の配置方向を示す軸Xは、ダイポールアンテナ10A(放射素子11A,12A)の配置方向を示す軸Yと直交する。
【0050】
放射素子41は、軸Xの方向に放射素子41から突出するように形成された給電部45を有する。放射素子42は、軸Xの方向に放射素子42から突出するように形成された給電部46を有する。
【0051】
図12は、図11に示したクロスダイポールアンテナの給電構造を説明するための図である。図12を参照して、同軸ケーブル8Aは、ダイポールアンテナ10Aに接続される。同軸ケーブル8Aは、内部導体51と、外部導体52とを有する。内部導体51は、放射素子12Aの給電部35に形成された貫通孔36に通され、かつ給電部35に電気的に接続される。外部導体52は、放射素子11Aの給電部33に形成された貫通孔34に通され、かつ給電部33に電気的に接続される。
【0052】
同軸ケーブル8Bは、ダイポールアンテナ40に接続される。同軸ケーブル8Bは、内部導体53と、外部導体54とを有する。内部導体53は、放射素子41の給電部45に電気的に接続される。外部導体54は、放射素子42の給電部46に電気的に接続される。クロスダイポールアンテナ10Bの給電部(給電部33,35および給電部45,46)を覆うようにカバー38Aがアーム4Aに取り付けられる。なお、カバー38Aをアーム4Aに取り付ける際に、位相器60および位相器60に接続された同軸ケーブル8もクロスダイポールアンテナ10Bの給電部に取り付けられる。位相器60、同軸ケーブル8A,8B,8は、ダイポールアンテナ10A,40の受信信号の位相差が略90°となるように、ダイポールアンテナ10A,40に給電するための給電部を構成する。
【0053】
図13は、図12に示した給電構造を説明するためのブロック図である。図13を参照して、ダイポールアンテナ10Aが地上波放送の電波を受信することによって、ダイポールアンテナ10Aから受信信号が同軸ケーブル8Aを介して位相器60に入力される。同じく、ダイポールアンテナ40が地上波放送の電波を受信することによって、ダイポールアンテナ40から受信信号が同軸ケーブル8Bを介して位相器60に入力される。
【0054】
同軸ケーブル8Bを介して位相器60に入力された受信信号は、位相調整回路62によって、同軸ケーブル8Aを介して位相器60に入力された受信信号との位相差が略90°となるように調整される。たとえば同軸ケーブル8A,8Bの長さが略等しい場合、位相調整回路62は、電気長が略λ/4の伝送線路によって実現可能である。
【0055】
同軸ケーブル8Aを介して位相器60に入力された受信信号と、位相調整回路62から出力された受信信号が合成される。その合成信号が同軸ケーブル8によって伝達される。
【0056】
なお、同軸ケーブル8Aによって伝達された受信信号(ダイポールアンテナ10Aからの信号)が位相調整回路62に入力されるとともに、同軸ケーブル8Bを介して位相器60に入力された受信信号と位相調整回路62から出力された信号が合成されてもよい。
【0057】
図14は、図10に示した同軸ケーブル7および8の配置を詳細に示した図である。図14を参照して、クロスダイポールアンテナ10Bからの信号を伝達するための同軸ケーブル8は、放射素子11Aの内部を通り、衛星放送受信アンテナ2の受信部5に接続される。受信部5には混合器が内蔵される。当該混合器は、衛星放送電波を処理することで得られた受信信号と、クロスダイポールアンテナ10Bが地上波放送電波を受信することで得られた受信信号とを混合して出力する。受信部5からの混合信号を伝達するための同軸ケーブル7は、放射素子11A,12Aを通される。したがって実施の形態2と同様に、クロスダイポールアンテナ10Bによる電波の受信において同軸ケーブルの影響を受けにくくすることができる。
【0058】
図15は、図11,12に示したクロスダイポールアンテナの給電構造の他の例を示した図である。図15を参照して、位相器60は、クロスダイポールアンテナ10Bの給電部とは別に設けられる。クロスダイポールアンテナ10Bの給電部はカバー38Aによって覆われる。同軸ケーブル8A,8Bは放射素子11Aの内部を通されて位相器60に接続される。これらの点において図15に示した給電構造は、図12および図14に示した給電構造と異なっている。なお、図が複雑になるのを避けるため図15では同軸ケーブル7は示されていないが、上述したように、受信部5には、受信部5に内蔵された混合器からの混合信号を伝達するための同軸ケーブル7が接続される。
【0059】
一般にダイポールアンテナは、水平面において8の字の指向性を有する。このためダイポールアンテナ10Aのみでは、衛星放送受信アンテナ2Aの反射鏡3を衛星の方向に向けた際に地上波放送用の電波を良好に受信することが難しくなる可能性がある。第3の実施の形態によれば、地上波放送受信アンテナにクロスダイポールが用いられる。クロスダイポールアンテナは水平面でほぼ無指向性となる。したがって、衛星放送受信アンテナ2Aの反射鏡3を衛星の方向に向けた際に、地上波放送用の電波の受信性能が低下する可能性を小さくできる。
【0060】
なお、クロスダイポールアンテナの構成は、図11等に示した構成に限定されるものではない。図16に示すように、ダイポールアンテナ10Aに代えて、第1の実施の形態に係るダイポールアンテナ10を用いることもできる。
【0061】
また、上記の構成では、略直交するように配置された2つのダイポールアンテナを用いてクロスダイポールアンテナが構成される。ただし、2つのダイポールアンテナの間で給電されるアンテナを切換えることによって指向性を切換えてもよい。
【0062】
図17は、2つのダイポールアンテナの間で給電されるアンテナを切換えるための構成の一例を模式的に示した図である。図17を参照して、スイッチ63は、ダイポールアンテナ10Aから同軸ケーブル8Aを介して送られた受信信号と、ダイポールアンテナ40から同軸ケーブル8Bを介して送られた受信信号との一方を選択する。スイッチ63によって選択された受信信号(地上波放送受信アンテナからの受信信号)と、コンバータ部21からの受信信号(衛星放送受信アンテナからの受信信号)とは混合器22において混合される。混合器22からは、これらの受信信号を混合した混合信号が同軸ケーブル7を介して出力される。
【0063】
一方、同軸ケーブル7および混合器22を介して、スイッチ63を制御するための制御信号がスイッチ63に送られる。スイッチ63は、その制御信号に応じて、ダイポールアンテナ10Aから同軸ケーブル8Aを介して送られた受信信号と、ダイポールアンテナ40から同軸ケーブル8Bを介して送られた受信信号との一方を選択する。このようにして、2つのダイポールアンテナの間で給電されるアンテナを切換えることにより、指向性を切換えることができる。
【0064】
なお、地上波放送受信アンテナは、ダイポールアンテナに限定されるものではなく、アームと一体化可能(たとえば実施の形態1に示されるように、アームの表面に取り付け可能あるいはインサート成形が可能)であれば、他の種類のアンテナであってもよい。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B アンテナ装置、2,2A 衛星放送受信アンテナ、3 反射鏡、4,4A アーム、5 受信部、6 支柱、7,8,8A,8B 同軸ケーブル、9 放送衛星、10,10A,40 ダイポールアンテナ、10B クロスダイポールアンテナ、11,12,11A,12A,41,42 放射素子、13,51,53 内部導体、14,52,54 外部導体、15,16,43,44 ネジ、20 一次放射器、21 コンバータ部、22 混合器、31 溝部、32 リブ、33,35,45,46 給電部、34,36 貫通孔、38,38A カバー、60 位相器、62 位相調整回路、63 スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの電波を反射するための反射鏡と、前記反射鏡に支持されたアームと、前記反射鏡によって反射された電波を受信するために前記アームに取付けられた受信部とを有する衛星放送受信アンテナと、
前記アームと一体化された地上波放送受信アンテナとを備える、アンテナ装置。
【請求項2】
前記地上波放送受信アンテナは、第1および第2の放射素子を有する第1のダイポールアンテナであり、
前記第1および第2の放射素子は、前記アームの延びる方向に沿って配置されるとともに前記アームに固定される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1および第2の放射素子の各々は筒状に形成され、
前記アームは、前記アームの延びる方向に沿って形成された溝部を有し、
前記第1および第2の放射素子は、前記アームの前記溝部に挿入される、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アームは、樹脂により形成され、
前記地上波放送受信アンテナは、第1および第2の放射素子を有する第1のダイポールアンテナであり、
前記第1および第2の放射素子の表面が露出するように、前記第1および第2の放射素子が前記樹脂に埋め込まれている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記地上波放送受信アンテナは、
第3および第4の放射素子を有する第2のダイポールアンテナをさらに含み、
前記第3および第4の放射素子は、前記第1のダイポールアンテナと略直交して配置されるように前記アームに取付けられ、
前記アンテナ装置は、
前記第1および第2のダイポールアンテナの受信信号の位相差が互いに略90°となるように、前記第1および第2のダイポールアンテナにそれぞれ給電するための給電部をさらに備える、請求項2から4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−229003(P2011−229003A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97960(P2010−97960)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】