説明

アンテナ装置

【課題】AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信可能で、デザイン性に優れたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、後方に向けて拡幅するとともに、長手方向中心軸に沿って後方に向けて流線型状に隆起して形成されたアンテナカバー10と、アンテナカバー10が水密に取り付けられるアンテナベース20と、アンテナカバー10とアンテナベース20で形成された空間に収納されるアンテナ部と、を備える。そして、アンテナ部が、アンテナベース20に立設され、アンテナカバー10の隆起部に対応する空間に収納された巻き付け部材311に、中波から超短波の周波数帯域に対応する所定長のアンテナ線312を上下方向に所定の線間ピッチで巻回した構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に設置される車載用のアンテナ装置に関し、特に、AM/FM放送波等の中波〜超短波(300kHz〜300MHz)を受信可能なシャークフィン型のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AM/FM放送波を受信可能な車載用アンテナ装置としては、伸縮自在のロッド型のもの(以下、ロッドアンテナ)が一般的である。このロッドアンテナのエレメント長(ロッド長)は、FM波の波長λの1/4程度(例えば、共振周波数を50MHzとしたとき1.5m)とされる。この場合、FM波の周波数帯域に適合したアンテナエレメントをAM波の受信に適用することとなり、共振周波数が整合しないので、感度を確保すべくAM波用の共振回路や増幅回路が用いられる。
また、絶縁性のロッドにアンテナエレメント(導線)を螺旋状に巻き付けてアンテナ長を200〜400mm程度に短縮したもの(以下、ヘリカルアンテナ)も知られている。
【0003】
一方、GPS(Global Positioning System)用、携帯電話用又はリモコンエンジンスタータ用などの複数の周波数帯域の電波を受信可能な複合型の車載用アンテナ装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のアンテナ装置は、その外観形状からシャークフィン型と呼ばれている(以下、シャークフィンアンテナ)。
【0004】
上述したロッドアンテナ(又はヘリカルアンテナ)は、車両から突出して取り付けられるため、車両の外観が損なわれるとともに、屋根等の障害物がある駐車場への車庫入れ時にロッドが障害物に衝突して折損する虞がある。また、ロッドアンテナは、アンテナ長が長いため、走行中に風切り音が発生してしまい、運転手や同乗者に不快感を与えかねない。さらには、ロッドアンテナは、着脱が比較的容易であり、盗難にあいやすいという問題もある。
シャークフィンアンテナによれば、ロッドアンテナ(又はヘリカルアンテナ)に比較してアンテナ高さが低くなるので、車両との一体感が得られ外観が向上される等、上記問題点を解消できる。また、アンテナ部品点数が減少するため、ロッドアンテナに比較してコストを低減できるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−514253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シャークフィンアンテナにおいては、アンテナ高さが低く、内部の収納空間が制限されるため、AM/FM放送用の比較的長いアンテナエレメントを収容することが困難である。また、シャークフィン状のアンテナカバーの内面にアンテナパターンを貼着したものもあるが、十分なエレメント長が確保できていないため、ロッドアンテナよりも受信感度が著しく低下してしまい、実用性に乏しい。そのため、AM/FM放送用のアンテナ装置としては未だロッドアンテナ又はヘリカルアンテナが主流となっている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信可能で、デザイン性に優れたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、後方に向けて拡幅するとともに、長手方向中心軸に沿って後方に向けて流線型状に隆起して形成されたアンテナカバーと、
前記アンテナカバーが水密に取り付けられるアンテナベースと、
前記アンテナカバーと前記アンテナベースで形成された空間に収納されるアンテナ部と、を備えたアンテナ装置において、
前記アンテナ部が、前記アンテナベースに立設され、前記アンテナカバーの隆起部に対応する空間に収納された巻き付け部材に、中波から超短波の周波数帯域に対応する所定長のアンテナ線を上下方向に所定の線間ピッチで巻回した構成を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記アンテナ線が、一端側から第1の線間ピッチで巻回され、他端側の数ターンが前記第1の線間ピッチと異なる第2の線間ピッチで巻回されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、前記アンテナ部が、AM/FM放送波を受信可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分なエレメント長が確保されるので、AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信することができる。また、シャークフィン型となっているので、デザイン性が向上し、ロッドアンテナの欠点を解消できる。
したがって、AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信可能で、デザイン性に優れたアンテナ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るアンテナ装置の外観図である。
【図2】実施形態に係るアンテナ装置の内部構造を示す図である。
【図3】AM/FM放送用のアンテナ部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は実施形態に係るアンテナ装置の外観を示す図で、図2はアンテナ装置の内部構造を示す図である。本実施形態のアンテナ装置1は、GPS用、デジタルテレビ放送用及びAM/FM放送用の複数の周波数帯域の電波を受信可能な複合型のアンテナ装置であり、例えば車両のルーフ等の設置面に固定されるものである。
【0014】
図1、2に示すように、アンテナ装置1は、アンテナカバー10、アンテナベース20、及びアンテナ部30を備えて構成されている。
アンテナカバー10は、例えば合成樹脂製であり、後方に向けて拡幅するとともに、長手方向中心軸AXに沿って後方に向けて流線型状に隆起して形成されている。例えば、アンテナカバー10(アンテナ装置1)の外径寸法は、長さ:145mm、幅:75mm、高さ:60mmであり、アンテナカバー10の隆起部10aの寸法は、長さ:70mm、幅:20mm、高さ:35mmである。すなわち、アンテナカバー10は、車両の外観が損なわれないように、低姿勢のシャークフィン状に形成されている。
また、アンテナカバー10は、下面が開放された薄肉の成型品とされ、下面開口にアンテナベース20が嵌合されたときに、アンテナ部30の収納空間が形成されるようになっている。
【0015】
アンテナベース20は、ベース部材21と、このベース部材21の上面に敷設され、ベース部材21と電気的に接続されるアンテナ基板22、23を備えている。
ベース部材21は、例えば金属製で、アンテナカバー10の下面開口に合致する形状を有している。また、ベース部材21には樹脂製の保護部材が周設されており、アンテナカバー10を水密に嵌合可能となっている。
図示を省略するが、ベース部材21の下面には下方に向けて突出部が形成されている。この突出部が設置面(車両のルーフ等)に形成された固定用開口(図示略)に挿嵌され、ベース部材21と固定部材(図示略)によって設置面を狭持することにより、アンテナ装置1が設置面に固定される。このとき、ベース部材21は設置面と電気的に接続され、車両のボディを介して接地される。
【0016】
アンテナ基板22、23は、特定周波数の電波だけを選択的に受信するための同調回路や増幅回路を有し、ベース部材21の上面に、例えばねじ止めにより固定される。このアンテナ基板22、23にアンテナ部30が実装される。アンテナ基板22、23には給電線(図示略、例えば同軸ケーブル)が接続されており、この給電線を介して、アンテナ部30で電波を受信することにより発生した電力が車両内に設置された受信機に伝送される。
【0017】
アンテナ部30は、AM/FM放送波を受信可能なラジオアンテナ31、デジタルテレビ放送波を受信可能なDTVアンテナ32、GPS用の電波を受信可能なGPSアンテナ33、等で構成される。
【0018】
ラジオアンテナ31は、巻き付け部材311に、アンテナエレメントとなるアンテナ線312が上下方向に所定の線間ピッチで巻回されて構成されている。
巻き付け部材311は、例えば合成樹脂製で、底面が二等辺三角形の三角柱を横倒した部材であり、アンテナ基板22に対して立設されている。巻き付け部材311において、アンテナ線312の巻き付け面には複数条の溝が形成されており、アンテナ線312を所定の線間ピッチで容易に巻回できるようになっている。
ここで、同調の容易性や受信感度等のアンテナとしての性能を向上させるためには、アンテナ線312の線間ピッチをできるだけ広げるとともに、アンテナ高さを高くするのが望ましい。そのため、巻き付け部材311は、アンテナカバー10の隆起部10aで形成された空間に応じて、できるだけ高く、周方向長さもできるだけ長くなるように形成される。
【0019】
アンテナ線312は、例えば絶縁被覆を施された外径0.3mmのエナメル線であり、FM放送の周波数帯域(76〜108MHz)に対応する長さ(例えば1.5m)を有している。アンテナ線312の一端はアンテナ基板22の給電点に接続され、他端は巻き付け部材311に固着されている。このアンテナ線312により中波から超短波(300kHz〜300MHz)を受信することができる。
ラジオアンテナ31において、アンテナ線312は、巻き付け部材311に対して、下側から所定ターンは第1の線間ピッチP1で巻回され、上側数ターンは第1の線間ピッチP1と異なる第2の線間ピッチP2で巻回される。実施形態では、第2の線間ピッチP2を、第1の線間ピッチP1よりも幅狭に設定しているが、幅広に設定してもよい。この線間ピッチP1、P2は、巻き付け部材311の高さと、アンテナ線312の長さに応じて適宜決定される。
このように、線間ピッチを部分的に変更することで、ラジオアンテナ31の共振周波数を容易に調整することができるとともに、ラジオアンテナ31を簡単に製造することができる。
【0020】
なお、極端には、アンテナ線312は密着(線間ピッチ:0)して巻回されても構わないが、アンテナとしての性能上、3mm以上離間させるのが望ましい。また、実施形態とは逆に、巻き付け部材311に対して、上側から所定ターンを第1の線間ピッチP1で巻回し、下側数ターンを第1の線間ピッチP1と異なる第2の線間ピッチP2で巻回するようにしてもよい。
【0021】
DTVアンテナ32は、例えば金属製の棒状部材であり、デジタルテレビ放送の周波数帯域(470〜770MHz)に対応する長さ(例えば130mm)を有している。DTVアンテナ32は、一端がアンテナ基板22の給電点に接続され、アンテナカバー10の隆起部10aの内面上縁に沿って延在している。
GPSアンテナ33は、共振周波数が約1.5GHzのパッチアンテナであり、アンテナ基板23に接続されている。
【0022】
アンテナ部30を実装したアンテナベース20に対して、上方からアンテナカバー10を嵌合させて取り付けることにより、アンテナ装置1が組み立てられる。アンテナ部30は、アンテナカバー10とアンテナベース20で形成された空間に収納されることとなる。
【0023】
このように、アンテナ装置1は、後方に向けて拡幅するとともに、長手方向中心軸に沿って後方に向けて流線型状に隆起して形成されたアンテナカバー10と、アンテナカバー10が水密に取り付けられるアンテナベース20と、アンテナカバー10とアンテナベース20で形成された空間に収納されるアンテナ部30(ラジオアンテナ31)と、を備えている。
そして、アンテナ部30(ラジオアンテナ31)が、アンテナベース20(アンテナ基板22)に立設され、アンテナカバー10の隆起部10aに対応する空間に収納された巻き付け部材311に、超短波の周波数帯域に対応する所定長のアンテナ線312を上下方向に所定の線間ピッチP1、P2で巻回した構成を有している。
【0024】
アンテナ装置1によれば、十分なエレメント長が確保されるので、AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信することができる。また、シャークフィン型となっているので、デザイン性が向上し、ロッドアンテナの欠点を解消できる。すなわち、アンテナ装置1は、シャークフィン型で低姿勢となっているので、車両の外観が損なわれることもなく、屋根等の障害物がある駐車場への車庫入れ時に障害物に衝突して破損する危険性も少ない。また、走行中に風切り音が発生することもなく、盗難防止に効果的である。
したがって、AM/FM放送波等の中波〜超短波を感度良く受信可能で、デザイン性に優れたアンテナ装置が提供される。
【0025】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0026】
例えば、アンテナ装置1の外形寸法は、シャークフィン型のデザイン性が損なわれない範囲内において、自由に設計できる。
また、ラジオアンテナ31の巻き付け部材311の形状は実施形態で示したものに制限されず、上下方向にわたって厚さが均一な平板状としたり、楕円柱状又は長円柱状としたりすることができる。また、性能の異なるラジオアンテナ31を、長手方向又は幅方向に複数並べて配置してもよい。
また、アンテナ装置1において、携帯電話用、リモコンエンジンスタータ用又は衛星ラジオ(SDARS:Satellite Digital Audio Radio Service)用のアンテナを、DTVアンテナ32又はGPSアンテナ23に代えて実装してもよいし、追加して実装してもよい。
【0027】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0028】
1 アンテナ装置
10 アンテナカバー
20 アンテナベース
21 ベース部材
22、23 アンテナ基板
30 アンテナ部
31 ラジオアンテナ
311 巻き付け部材
312 アンテナ線
32 DTVアンテナ
33 GPSアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方に向けて拡幅するとともに、長手方向中心軸に沿って後方に向けて流線型状に隆起して形成されたアンテナカバーと、
前記アンテナカバーが水密に取り付けられるアンテナベースと、
前記アンテナカバーと前記アンテナベースで形成された空間に収納されるアンテナ部と、を備えたアンテナ装置において、
前記アンテナ部が、前記アンテナベースに立設され、前記アンテナカバーの隆起部に対応する空間に収納された巻き付け部材に、中波から超短波の周波数帯域に対応する所定長のアンテナ線を上下方向に所定の線間ピッチで巻回した構成を有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ線が、一端側から第1の線間ピッチで巻回され、他端側の数ターンが前記第1の線間ピッチと異なる第2の線間ピッチで巻回されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ部が、AM/FM放送波を受信可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−80388(P2012−80388A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224711(P2010−224711)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】