アンテナ
【課題】簡単な構成で広帯域にわたって電気的特性を良くする。
【解決手段】少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,反射器は,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように折り曲げ形成されており,樹脂製筐体は,反射器後方側から前記アンテナ本体に被せるように,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,収容空間の内面には,反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,反射器を筐体本体の収容空間に収納したときに,反射器が係止手段に係止することによって,反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,反射器の先端部を除いて,少なくとも反射器の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して収納空間に取付けた。
【解決手段】少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,反射器は,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように折り曲げ形成されており,樹脂製筐体は,反射器後方側から前記アンテナ本体に被せるように,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,収容空間の内面には,反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,反射器を筐体本体の収容空間に収納したときに,反射器が係止手段に係止することによって,反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,反射器の先端部を除いて,少なくとも反射器の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して収納空間に取付けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にテレビ受信に利用されるアンテナに関し,詳しくはUHF帯のテレビ電波を受信するUHFアンテナに適したアンテナの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年広がりつつある地上デジタル放送は,一定レベル以上の電波を受信できれば,デジタル放送の持つその優れた特性によって綺麗な画像を受信することが出来ることから,従来のアナログ放送受信用アンテナで一般的であった八木・宇多式アンテナばかりでなく,ベランダでも屋内であっても簡単に取付けができ,しかも邪魔にならないような小型で軽量,且つデザイン性にも優れたアンテナが求められるようになった。このようなアンテナの例として,たとえば,絶縁材と,この絶縁体に導電材によって薄膜状に形成された金属箔アンテナ素子を数枚貼着したアンテナが提案されている。
(例えば,特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】実開昭57−185207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,従来に示されるアンテナは,一般的な八木・宇田式アンテナのように,受信波長で決まる各素子の長さや形状等を金属箔アンテナ素子に置き換えたものであり,所望の特性を得るためには大きく変更することはできず,例えばアンテナを反射器と放射器だけで構成する事によって,アンテナを小型化すると共に,ベランダやアンテナ支柱への取付性がよいアンテナにしようとすると,その電気的特性は従来の細長い導体棒を使用したアンテナと同程度の電気的特性を得るためにはアンテナの外形も同程度の大きさに留まる。更に,絶縁材に形成された金属箔アンテナ素子からアンテナが構成されているので,アンテナが薄型にできるものの,八木・宇田式アンテナに良く見られるように,反射器を構成する金属波器アンテナ素子を多段にして更に特性の改善を図るためには,アンテナの構成が複雑になり延いてはコストが高くなるといった問題があった。
そこで,本発明においては,アンテナを小型化すると共に,なるべく薄型に構成することによって,ベランダやアンテナ支柱だけでなく室内設置にもその操作性がよく汎用性の高いアンテナを提案することになされるものであり,
その目的は,簡単な構成で電気的特性のよいアンテナを提案することを課題とする。
他の目的は,広帯域に亘って特性のよいアンテナを提案することを課題とする。
他の目的は,小型でも高性能なアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,設置工事に際して簡単且つ安全なアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,風などによって発生する振動に対して信頼性の高いアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,構造が簡単で組付けが容易なアンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成した。
【0006】
請求項2の発明は,請求項1に記載のアンテナにおいて,前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成した。
【0007】
請求項3の発明は,請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナにおいて,前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば,少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成したので,
薄板からなる反射器の開口角が,より剛性の強い筐体本体によって所定の角度となるように組付けることができ,製品ごとに電気的特性のバラツキの少ない製品が提供できる。更に加えて,反射器が,反射器自体がもつ付勢力によって,強固に筐体本体に組付けられると共に,例えアンテナが風などによって振動したとしても,アンテナ本体,特に反射器の上部反射面及び外部反射面が,筐体本体の内面壁とが接触しないので,アンテナから異常音が発生することがなくなるのである。
【0009】
請求項2の発明によれば,請求項1に記載のアンテナにおいて,前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成したので,
反射器が,反射器自体がもつ付勢力によって,更に強固に筐体本体に組付けられると共に,例えアンテナが風などによって振動したとしても,アンテナ本体,特に反射器の上部反射面及び外部反射面と筐体本体の内面壁とは,前記係止部分を除いて接触しない,つまり筐体本体との接触部分が極めて少なくなるので,振動に対して異常音の発生の極めて少ないアンテナが提供できるのである。
【0010】
請求項3の発明によれば,請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナにおいて,前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成したので,
小型であっても全帯域にわたって安定した電気的特性を得られるので,地上デジタル放送の受信にすこぶる好適なアンテナを提供できるのである。また,ベランダ等に設置し手も,風などによってアンテナ本体が振動したとしても異常音の発生の少ない静かなアンテナを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
図1は本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。図2は本発明に係るアンテナを構成するアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。図3は本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。図4は樹脂製筐体を構成する筐体本体に反射器を収納した状態を説明するための図面であり,(a)は正面図である。(b)は筐体本体内に反射器と信号処理部を収納した場合の正面図であり,(c)は(b)におけるC−C線から見た断面図である。図5は本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図であり,(b)は断面図である。図6は本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図であり,(b)は図における右側から見た断面図である。図7は図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器を樹脂製筐体に収納する前の図面であり,(b)は樹脂製筐体を装着した後の断面図である。図8は本発明にかかるアンテナを構成するアンテナ本体の実施例を示す斜視図であり,(a)から(b)にそれぞれ反射器が異なる実施例を示す。図9は反射器のスリットの有無による電気的特性の比較である。図10は反射器の整合片の有無による電気的特性の比較である。図11は本発明の異なる実施形態を示すアンテナの電気的特性を示す。
【実施例1】
【0012】
本発明に係るアンテナの実施形態を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。図2は本発明に係るアンテナを構成するアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。図1において1は本発明に係るアンテナである。この実施例におけるアンテナ1は,少なくとも放射器10と,放射器10の後方に位置する反射器20からなるアンテナ本体2と,アンテナ本体2を収納する樹脂製筐体であって,アンテナ本体2の後方側に位置するカバー5と,アンテナ本体2の前方側に位置するフロントカバー6とからなる。尚,前記カバー5が請求項に記載の筐体本体である。
【0013】
本発明における放射器10は,薄板状の導電材料を金型等によって打ち抜き成形した一対の給電素子15,15から構成されたダイポールアンテナである。この給電素子15は,略長方形に形成されており,その基部11側の略中間位置に給電点11aを備えている。また,該基部11に相対向する辺の中間位置には,前記基部11方向に向かって,辺を凹状に切り欠くことによって凹部12を形成している。更に給電素子15の周縁には,図に示されるように,複数の放射素子取付孔17が形成されており,該放射素子取付孔17に,後述するカバー5に形成された放射素子取付用ボス57を挿入装着すれば,放射素子15の前記基部11側の辺同士が,所定の間隔を維持しながら並列配置してカバーに収納されることで放射器10が構成される。
そして,図2によく示されているように,上記のように構成された放射器10の給電点11a,11aには,例えばフェライトコアにポリウレタン線を巻き回してなる平衡不平衡変換部18を介して同軸ケーブル19の一方端側が接続されており,更には,同軸ケーブル19の他方の端部が,後述する前記カバー5に形成された出力端子59の,カバー5内部に突出する内側端子部59aに接続されていることによって,前記放射器10によって受信された信号は,前記出力端子59からカバー5の外部に取出されるように構成されている。
【0014】
ここで,放射器10の具体的な寸法について説明する。放射器の寸法は図2によく示されている。尚,以下に説明する本発明の実施形態に係るアンテナの具体的な寸法は,特にUHF帯を使って行われている地上デジタル放送に好適なアンテナの設計例を示したものである。
放射素子15は導電性のある薄板材を,横幅(図2(c)では縦方向の寸法)が136mm,縦幅(図2(c)では横方向の寸法)が54mmの長方形状に打ち抜き形成したものであり,その基部11側には給電点11aが形成されている。更に,基部11と相対向する側の辺の中間位置には,横幅(図2(c)では縦方向の寸法)が37mm,縦幅(図2(c)では横方向の寸法)が20mmの凹部12を備えている。そして,このように形成された放射素子15の基部11側の辺を,相互に2mmの間隔を隔てて対向配置することによって放射器10が構成されている。
【0015】
次に,反射器20について図3を用いて説明する。図3は本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。本発明に係る反射器20は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した導電材からなる矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部21として,所定の開口角θを有する断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ放射器10方向に向かって折り曲げ形成すると共に,前記反射器20の折曲部21より上方に位置する上部反射面22と,折曲部21より下方に位置する下部反射面23のそれぞれには,受信する電波の偏波の方向に直交する方向に長手方向を有する複数のスリット25が形成されている。
【0016】
更に,本発明に係る実施形態の反射器20には,少なくとも前記上部反射面22若しくは下部反射面23のいずれか一方の先端部(図3では上部反射面22の先端部22a)の所定の位置に,受信する電波の偏波に直交する方向に長手方向を有する細板状の整合片28,28を突出するように備えさせている。
【0017】
反射器20の折曲部21の底部は平面24を形成している。この平面24には,適宜の間隔を置いて,反射器20を後述するカバー5奥部に形成された反射器取付用ボス51aに取付けるための複数の取付孔21a・・・,カバー5の奥部から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bを挿通するための貫通孔21b,21b,及び,後述する信号処理回路の取付用ボス51c,51cを挿通するための貫通孔21c,21cがそれぞれ形成されている。更に,下側反射面23の図面左側には,前記内部端子部59aが突出するための孔23a,及び,図には示されていない内部端子部58aが突出するための孔23bが形成されている。このように形成された反射器20は,樹脂製筐体を構成するカバー5に収納される。
以上本発明の実施形態に係るアンテナを構成する反射器20によれば,平板体状の導電材の両長辺側をそれぞれ放射器10方向に向かって所定の開口角θを有する断面略く字状となるように,折り曲げ形成したので,上下方向の寸法を小さくできる。
【0018】
ここで,反射器20の具体的な寸法について説明する。各部の寸法は図3によく示されている。
横幅が290mmの導電材からなる薄板を,図3(d)に示されるように,折曲部21を中心として上部反射面22と下部反射面23を,開口角θ=45°で前方側に折り返す。このとき上部反射面の縦幅が45mm,折曲部21における平面24の縦幅が6mm,下部反射面の縦幅が45mm,上部反射面22と下部反射面23の先端がなす開口寸法が40.5mm,上部反射面22の先端22aから突出するように備えられた整合片28の長さが30mmとなるように薄板の縦寸法は決められている。
本発明に係る実施形態におけるスリット25は,上部反射面22と下部反射面23のそれぞれに設けられており,前記反射面を縦幅35mm,横幅が5mmのおおきさで長方形状に貫通させたものであり,反射器20の横方向の中心軸線上にスリット25の中心を位置させ,スリット25の中心線が相互に10mmの間隔を隔てて並列配置するように,複数のスリット25が形成されている。
また,本発明に係る実施形態における整合片28は,縦幅が30mm,横幅が5mmの大きさの短冊状に一体に形成されており,この実施形態においては,上部反射面22の前端であって上部反射面22の中心線CLより左右に95mm離れた位置に,整合片28の中心線がくるように一体に備えられている。
【0019】
次に,前出のカバー5について図1及び図4(a)を用いて詳しく説明する。図1はカバー5の斜視図であり,図4(a)はカバー5に反射器20を収納した状態を示す正面図である。
このカバー5は樹脂製材料を金型等で成形したものであり,前記反射器20の形状に合わせて,前方に開口部30aを備えた断面略く字状に形成されており,その内部には,少なくとも前記反射器20を収納する空間30が形成された箱体となるように構成されている。
カバー5の再奥部には,前記反射器20の平面24に対向するように,該平面24を当て付けて,反射器20を取付け及び位置決めをするための当付面34が形成されている。この当付面34には,反射器20の平面24に形成された前記取付孔21aに対向する位置に反射器取付用ボス51aが,反射器20の平面24に形成された前記貫通孔21b,21bに対向する位置に,当付面34から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bが,反射器20の平面24に形成された前記貫通孔21c,21cに対向する位置に,後述する信号処理回路40の取付用ボス51c,51cがそれぞれ形成されている。
【0020】
また,反射器20の上部反射面22と下部反射面23に対向する,カバー5の内面壁には,前記反射器20に形成されたスリット25の前方内側端部に嵌合する複数の受止部35と,前記反射器20を構成する上部反射面22と下部反射面23のそれぞれの先端部と嵌合する複数の突片36が形成されている。尚,本発明に係る実施形態においては,この突片36が請求項に記載の係止手段である。また,この突片36に嵌合する上部反射面22と下部反射面23の先端部が請求項に記載の係止部分である。
更に,カバー5の開口部30aにおける開口端の周縁内側には,該開口端に沿うように,放射器10を構成する前記放射素子15,15を取付けるための手段であって,放射素子15に形成された前記放射素子取付孔17に対向する位置に,放射素子取付用ボス57が形成されている。
加えて,カバー5の下面内側の中間部位には,前記同軸ケーブル19を保持するための係止爪33が形成されている。また,カバー5の下面外側の側方には,同軸ケーブル19に伝送されてきた受信信号を出力するための出力端子59が備えられている。この出力端子59のカバー5の空間30に現れる部分が前記内部端子部59aであり,前記同軸ケーブル19の他方端の中心導体と外部導体がそれぞれ接続されている。
そして,このように構成されたカバー5には,反射器20が収納されると共に,該反射器20の収納が完了した後に,前記開口部30aを塞ぐように,前記放射素子15,15が組付けられる。これによって,一対の放射素子15は,相互に所定の間隔をおいて配設されて放射器10を形成すると共に,該放射器10と前記反射器20とが,前後に所定の間隔をおいて配設されることによって,アンテナ本体2が構成されるのである。
【0021】
本発明に係る実施形態のアンテナ本体2においては,図2(a)に示されているように,放射器10と反射器20の間隔は,放射器10と反射器20の平面24との間隔が100mmとなるように配設されており,この所定寸法によってアンテナ本体2が構成されている。このように構成されているアンテナ本体2がカバー5に収納されたなら,図1に示されるように,カバー5の前方側にフロントパネル6を装着して,カバー5の後方から,例えば,螺子9を使ってカバー5とフロントパネル6を固着することによってアンテナ1の組付けが完了する。
【0022】
ここで,カバー5と反射器20の係止方法について,図5から図7を用いて詳しく説明する。
先ず図5で示される実施例から説明する。図5は本発明のアンテナ1を構成する反射器20をカバー5に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図,(b)は断面図である。反射器20は,反射器20の折曲部21に形成されている平面24が,カバー5の空間30の奥部に形成された当付面34に当接するように装着される。そのとき上述したように,当付面34から突設された反射器取付用ボス51aが,反射器20の平面24に形成された取付孔21を挿通するよう,また,当付面34から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bが,反射器20の平面24に形成された貫通孔21b,21bを挿通するよう,信号処理回路の取付用ボス51c,51cが,反射器20の平面24に形成された貫通孔21c,21cを挿通するようにして取付ける。これによって反射器20はカバー5内の所定位置に位置決めされて収納される。
尚,反射器20の取付後は,反射器取付用ボス51aに対して,熱などを加えることによって変形させるように潰せば,反射器20は確りとカバー5に固着することができる。
【0023】
この装着操作と同時に,図5に示されるように,カバー5の上下の内面壁に形成された前記受止部35が,反射器20に形成されたスリット25の前方内側端部に嵌合すると共に,カバー5の上下の内面壁に形成された突片36が,反射器20を構成する上部反射面22と下部反射面23のそれぞれの先端部における係止部分と嵌合する。
更に詳しく説明する。図5(b)に良く示されているように,前記受止部35は,カバー5の内面壁と一体に空間30に突設するように形成されており,スリット25の前方内側端部と当接する受部35bと,該受部35bの上部若しくは下部にあって,前記スリット25を挿通する突起35aとを備え,突起35aと受部35bとカバー内面壁とで凹状の受止部35が形成されており,この凹状部にスリット25の前方内側端部が嵌合するのである。
また,前記突片36は,カバー5の内面壁と一体に空間30に僅かに突設するように形成されており,反射器20の装着における最後の段階では,上部反射面22と下部反射面23は弾性を有していることから,その先端部が,それぞれ内側に押されながら前記突片36を乗り越えるようにして装着が行なわれる。そして,装着が完了したなら,上部反射面22と下部反射面23の先端部は,その付勢力によって,カバー内面壁を押圧するように取付けられ,前記突片36と該突片36に対向する上下の反射面の先端部における係止部分とが嵌合して,反射器20がカバー5内部に確りと取付けられるのである。
【0024】
上述したように本発明の実施形態における反射器20は,アンテナとしての良好な特性を得るために,その開口角θは45°であるようにするのが良い。ところが部品としての反射器20を考えると,例えば,開口角を所定の角度θより僅かに大きくなるように形成しておいて,反射器20をカバー5に収納して,前記突片36に嵌合させた状態で,反射器20の開口角θが45°となるように構成すれば,反射器20は,その付勢力によって更に強固にカバー5に組み付けられると共に,薄板からなる反射器20の開口角θが,より剛性の強いカバー5によって,略一定のθで組付けられることになり,製品ごとに電気的特性のバラツキの少ない製品が提供できる。
このときの組付けの状態を図7に示している。図7は図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器をカバーに収納する前の図面,(b)は装着した後の断面図である。この図において,カバー5に入れる前の反射器20は,その開口角がθ1(θ1>θ,θ=45°)で形成されており,その結果,反射器20の開口端の寸法はW1>40.5mmである。このように形成された部品としての反射器20を,図5(b)の如くカバー5に収納した状態で,その開口角がθ=45°となる。その結果,反射器20の開口端の寸法はW=40.5mm,中心線CLから整合片28の先端までの寸法はHである。
【0025】
更に,この図7に示す実施例では,カバー5の突片36は,反射器20の開口端の寸法が,所定の寸法であるW=40.5mmとなる位置,即ち,反射器20をカバー5内の所定位置に収納することによって,反射器20の形状が所定の形になるように形成されていると共に,カバー5自体の開口角が,反射器の所定の開口角θより僅かに小さく形成されていることによって,図5(b)の如く,上部反射面22及び外部反射面23の先端部の外面を除いて,上部反射面22及び外部反射面23の外面とカバー5の内面壁との間が接触しないように,適度な間隔を有するように構成されている。このように構成されていることによって,アンテナ本体2,特に反射器20が風などによって振動したとしても,上部反射面22及び外部反射面23とカバー5の内面壁とが接触しないので余分な異常音の発生がなくなるのである。
尚,上部反射面22及び外部反射面23の先端部と,カバー5の内面壁との間に緩衝材を介在させても良い。
【0026】
次に,反射器20の取付構造の異なる実施例を,図6を用いて説明する。図6は本発明のアンテナ1を構成する反射器20をカバー5に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図,(b)は図における右側から見た断面図である。
図6に示される実施例と,図5に示される実施例の異なる点は,前記カバー5に反射器20を収納したときに,図5に示される前記実施例では,少なくとも前記反射器20の上部反射面22及び下部反射面23の先端部外面全てがカバー5の内面壁に当接し,しかも,その先端部の係止部分が前記突片36に嵌合する構成であったが,この図6の実施例では,前記空間30内面に備えられた係止手段としての突片36に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも前記反射器20の上部反射面22及び下部反射面22の外面とカバー5内面壁とが当接しないように,前記空間30の内面に対して所定の間隙を有するように取付けられることを特徴とした例である。即ち,上部反射面22及び下部反射面23の先端部の,前記突片36に対向する位置に,突片36に向かって前記上部反射面22及び下部反射面23より外方向に突出するように形成した係止部分としての突出片26を備えさせ,この突出片26を前記突片36に係止することによって,反射器20は所定の形状でもって,カバー5に収納されるのである。このように構成されていることによって,アンテナ本体2,特に反射器20が風などによって振動したとしても,上部反射面22及び外部反射面23とカバー5の内面壁とは,前記突出片26の先方端部を除いて接触しないので,接触部分が極めて少なくなり,更に振動に対して異常音の発生の少ないアンテナが提供できるのである。
【0027】
ここで以上のように構成された本発明に係るアンテナの電気的特性を示し,反射器20に備えたスリット25及び整合片28の効果について以下に説明する。
先ず,スリット25の効果について図9を用いて説明する。図9はスリット25の有無による電気的特性の比較を示したものである。本発明の実施形態のアンテナによれば,スリット25を設けた反射器20を備えたアンテナは,スリットのない反射器を備えたアンテナに対して,低域側のGAIN及びVSWRの改善がなされ,スリット25の有効性が認められる。
尚,本発明の実施形態のスリット25は,図3に良く示されるように,横幅290mm,縦幅45mmの大きさの上部反射面22,下部反射面23のそれぞれに,横幅5mm,縦幅35mmのスリットを,長手方向の中心軸の間隔が10mmとなるように並列配置するように構成されている。
【0028】
次に,整合片28の効果について図10を用いて説明する。図10は整合片28の有無による電気的特性の比較を示したものである。このデータは,整合片28を上側反射面22の所定位置に2つ設けた反射器と,上側反射面22と下側反射面23のそれぞれに2つ設けた反射器と,整合片のない反射器を備えたアンテナを比較したものである。VSWRのデータからわかるように,整合片28のない反射器を備えたものはVSWRの特性が一番悪く,上側に整合片が2個,上下それぞれに整合片が2個の順にVSWRが良くなる。ところが,GAINに注目すると,整合片28がないもの,上側に整合片が2個のものは殆ど同じGAIN特性を示すものの,上下それぞれに整合片が2個のものはGAINの低下が見られる。本発明の実施形態のアンテナによれば,本発明の実施形態のように,整合片28を少なくとも反射器20を構成する上側反射面22に2つ設けることによって,GAINの低下を招かずに,VSWRの改善ができる事が分かり,整合片28の有効性が認められる。
尚,本発明の実施形態の整合片28は,図3に良く示されているように,縦幅が30mm,横幅が5mmの大きさに形成されており,この実施形態においては,横幅290mm,縦幅45mmの大きさの短冊状に形成された整合片28が,上部反射面22の先端であって,上部反射面22の横幅の中心線より左右に95mm離れた位置に,整合片28の中心線がくるように一体に備えられている。
【0029】
次に,本発明に係るアンテナの異なる実施形態について図3(b)及び(c)を用いて説明する。この図3(b)に示される実施形態と図3(a)に示される実施形態の違いは,アンテナに,図3(b)における40で示される信号処理部を備えたことである。この信号処理部40は,例えば,放射器10で受信した信号を,所定のレベルまで増幅するための増幅回路や,例えば衛星アンテナ等の外部アンテナからの信号を,このアンテナで受信した地上デジタル波の信号と混合するための混合回路等を備えた,図には示されていない信号処理回路を,例えば導電材用で形成されたシールドケース44に収納したものである。本発明におけるシールドケース44は,上下方向が薄手となるよう,上下面と四方を囲む側壁とからなるシールド性を備えた箱体であり,前記上部反射面22及び下部反射面23によって,前記反射器20の前方側に形成される空間の中間部位に,少なくとも前記信号処理部40の一つの側壁45をアンテナの前方向に向けて,該信号処理部40の一部若しくは全てを前記空間に重合するように配設されている。このシールドケース44は,前記側壁45と相対向する側壁に,該側壁より両側方に突設した,中央に貫通孔を備えた取付け脚が備えられており,この取付け脚を,前記取付用ボス51,51に対して当て付け,螺子41,41を前記貫通孔から取付用ボス51C,51cに対して羅着することでカバー5に対する取付けが行なわれる。尚,図3(b)に示される19は放射器10で受信した信号を伝送する入力用の同軸ケーブルであり,42は増幅や混合といった信号処理された信号を出力端子59より出力するための同軸ケーブルである。また,43は図には示されていない外部入力端子から入力される,衛星アンテナ等の外部アンテナからの信号を,信号処理回路に入力するための同軸ケーブルであり,一方は図の58aで示されている内部入力端に接続され,他方は信号処理回路に接続されている。
【0030】
ここで,信号処理部40を放射器10と反射器20の間に入れることの影響についての実験結果を,図11を用いて説明する。図11は信号処理部40のない場合の電気的特性と,信号処理部40の取付け方向の違いによる電気的特性の比較を行なったものである。
信号処理部40の取付け方向は,図3(b)に良く示されているように,前記信号処理部40の側壁45,つまり,薄手方向の面をアンテナの前方向に向けて取付けた場合と,信号処理部40の上面若しくは下面,つまり,長手方向の面をアンテナの前方に向けて取付けた場合の2つである。このデータからわかるように,信号処理部40が無い場合を基準とすると,薄手方向の面をアンテナの前方向に向けて取付けた場合は,信号処理部40が反射器20内に重合するように配設されていても,若干の劣化は見られるものの,GAINもVSWRも前後比も略同程度の特性が得られることがわかる。それに対して,信号処理部40の上面若しくは下面をアンテナの前方に向けて取付けた場合は,帯域の低域側においてVSWRの改善が見られるものの,GAINの低下,前後比の劣化がみられる事が分かる。
つまり,本発明の実施形態によれば,信号処理部40を,前記上部反射面22及び下部反射面23によって前記反射器20の前方側に形成される空間の中間部位に,少なくとも前記信号処理部40の薄手方向の一側壁45をアンテナの前方向に向けて,該信号処理部40の一部若しくは全てを前記空間に重合するように配設することによって,電気的特性の劣化のないアンテナを提供することができる。
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,以下に例示するように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
上述した実施形態は,反射器20にスリット25や整合片28を用いて最適化した例を示したが,例えば,図8(b),(c)に示すようにスリット25が有っても整合片25がないもの(反射器61),スリット25も整合片28もないもの(反射器63)等,適宜に組み合わせて構成しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。
【図2】本発明に係るアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。
【図3】本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。
【図4】樹脂製筐体に反射器を収納した状態を説明するための図面であり,(a)は正面図である。(b)は樹脂製筐体内に反射器と信号処理部を収納した場合の正面図であり,(c)は(b)におけるC−C線から見た断面図である。
【図5】本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図であり,(b)は断面図である。
【図6】本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図であり,(b)は図における右側から見た断面図である。
【図7】図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器を筐体本体に収納する前の図面であり,(b)は装着した後の断面図である。
【図8】本発明にかかるアンテナを構成するアンテナ本体の実施例を示す斜視図であり,(a)から(b)にそれぞれ反射器が異なる実施例を示す。
【図9】反射器のスリットの有無による電気的特性の比較である。
【図10】反射器の整合片の有無による電気的特性の比較である。
【図11】本発明の異なる実施形態を示すアンテナの電気的特性を示す。
【符号の説明】
【0032】
1…アンテナ,2…アンテナ本体,5…カバー,6…フロントパネル,9…螺子,10…放射器,11…基部,11a…給電点,12…凹部,15…放射素子,17…放射素子取付孔,18…平衡不平衡変換部,19…同軸ケーブル,20…反射器,21…折曲部,21a…取付孔,21b・21c…貫通孔,22…上部反射面,22a…先端部,23…下部反射面,23a・23b…孔,24…平面,25…スリット,26…突出片,28…整合片,30…空間,30a…開口部,33…係止爪,34…当付面,35…受止部,35a…突起,35b…受部,36…突片,40…信号処理部,41…螺子,42…出力同軸ケーブル,43…入力同軸ケーブル,44…シールドケース,45…側壁,51a…反射器取付用ボス,51b…フロントパネル取付用ボス,51c…信号処理回路取付用ボス,57…放射素子取付用ボス,58a…内部端子部,59…出力端子,59a…内部端子部,61・62…反射器。
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にテレビ受信に利用されるアンテナに関し,詳しくはUHF帯のテレビ電波を受信するUHFアンテナに適したアンテナの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年広がりつつある地上デジタル放送は,一定レベル以上の電波を受信できれば,デジタル放送の持つその優れた特性によって綺麗な画像を受信することが出来ることから,従来のアナログ放送受信用アンテナで一般的であった八木・宇多式アンテナばかりでなく,ベランダでも屋内であっても簡単に取付けができ,しかも邪魔にならないような小型で軽量,且つデザイン性にも優れたアンテナが求められるようになった。このようなアンテナの例として,たとえば,絶縁材と,この絶縁体に導電材によって薄膜状に形成された金属箔アンテナ素子を数枚貼着したアンテナが提案されている。
(例えば,特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】実開昭57−185207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,従来に示されるアンテナは,一般的な八木・宇田式アンテナのように,受信波長で決まる各素子の長さや形状等を金属箔アンテナ素子に置き換えたものであり,所望の特性を得るためには大きく変更することはできず,例えばアンテナを反射器と放射器だけで構成する事によって,アンテナを小型化すると共に,ベランダやアンテナ支柱への取付性がよいアンテナにしようとすると,その電気的特性は従来の細長い導体棒を使用したアンテナと同程度の電気的特性を得るためにはアンテナの外形も同程度の大きさに留まる。更に,絶縁材に形成された金属箔アンテナ素子からアンテナが構成されているので,アンテナが薄型にできるものの,八木・宇田式アンテナに良く見られるように,反射器を構成する金属波器アンテナ素子を多段にして更に特性の改善を図るためには,アンテナの構成が複雑になり延いてはコストが高くなるといった問題があった。
そこで,本発明においては,アンテナを小型化すると共に,なるべく薄型に構成することによって,ベランダやアンテナ支柱だけでなく室内設置にもその操作性がよく汎用性の高いアンテナを提案することになされるものであり,
その目的は,簡単な構成で電気的特性のよいアンテナを提案することを課題とする。
他の目的は,広帯域に亘って特性のよいアンテナを提案することを課題とする。
他の目的は,小型でも高性能なアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,設置工事に際して簡単且つ安全なアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,風などによって発生する振動に対して信頼性の高いアンテナを提供することを課題とする。
他の目的は,構造が簡単で組付けが容易なアンテナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成した。
【0006】
請求項2の発明は,請求項1に記載のアンテナにおいて,前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成した。
【0007】
請求項3の発明は,請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナにおいて,前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば,少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成したので,
薄板からなる反射器の開口角が,より剛性の強い筐体本体によって所定の角度となるように組付けることができ,製品ごとに電気的特性のバラツキの少ない製品が提供できる。更に加えて,反射器が,反射器自体がもつ付勢力によって,強固に筐体本体に組付けられると共に,例えアンテナが風などによって振動したとしても,アンテナ本体,特に反射器の上部反射面及び外部反射面が,筐体本体の内面壁とが接触しないので,アンテナから異常音が発生することがなくなるのである。
【0009】
請求項2の発明によれば,請求項1に記載のアンテナにおいて,前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられるように構成したので,
反射器が,反射器自体がもつ付勢力によって,更に強固に筐体本体に組付けられると共に,例えアンテナが風などによって振動したとしても,アンテナ本体,特に反射器の上部反射面及び外部反射面と筐体本体の内面壁とは,前記係止部分を除いて接触しない,つまり筐体本体との接触部分が極めて少なくなるので,振動に対して異常音の発生の極めて少ないアンテナが提供できるのである。
【0010】
請求項3の発明によれば,請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナにおいて,前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成したので,
小型であっても全帯域にわたって安定した電気的特性を得られるので,地上デジタル放送の受信にすこぶる好適なアンテナを提供できるのである。また,ベランダ等に設置し手も,風などによってアンテナ本体が振動したとしても異常音の発生の少ない静かなアンテナを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
図1は本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。図2は本発明に係るアンテナを構成するアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。図3は本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。図4は樹脂製筐体を構成する筐体本体に反射器を収納した状態を説明するための図面であり,(a)は正面図である。(b)は筐体本体内に反射器と信号処理部を収納した場合の正面図であり,(c)は(b)におけるC−C線から見た断面図である。図5は本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図であり,(b)は断面図である。図6は本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図であり,(b)は図における右側から見た断面図である。図7は図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器を樹脂製筐体に収納する前の図面であり,(b)は樹脂製筐体を装着した後の断面図である。図8は本発明にかかるアンテナを構成するアンテナ本体の実施例を示す斜視図であり,(a)から(b)にそれぞれ反射器が異なる実施例を示す。図9は反射器のスリットの有無による電気的特性の比較である。図10は反射器の整合片の有無による電気的特性の比較である。図11は本発明の異なる実施形態を示すアンテナの電気的特性を示す。
【実施例1】
【0012】
本発明に係るアンテナの実施形態を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。図2は本発明に係るアンテナを構成するアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。図1において1は本発明に係るアンテナである。この実施例におけるアンテナ1は,少なくとも放射器10と,放射器10の後方に位置する反射器20からなるアンテナ本体2と,アンテナ本体2を収納する樹脂製筐体であって,アンテナ本体2の後方側に位置するカバー5と,アンテナ本体2の前方側に位置するフロントカバー6とからなる。尚,前記カバー5が請求項に記載の筐体本体である。
【0013】
本発明における放射器10は,薄板状の導電材料を金型等によって打ち抜き成形した一対の給電素子15,15から構成されたダイポールアンテナである。この給電素子15は,略長方形に形成されており,その基部11側の略中間位置に給電点11aを備えている。また,該基部11に相対向する辺の中間位置には,前記基部11方向に向かって,辺を凹状に切り欠くことによって凹部12を形成している。更に給電素子15の周縁には,図に示されるように,複数の放射素子取付孔17が形成されており,該放射素子取付孔17に,後述するカバー5に形成された放射素子取付用ボス57を挿入装着すれば,放射素子15の前記基部11側の辺同士が,所定の間隔を維持しながら並列配置してカバーに収納されることで放射器10が構成される。
そして,図2によく示されているように,上記のように構成された放射器10の給電点11a,11aには,例えばフェライトコアにポリウレタン線を巻き回してなる平衡不平衡変換部18を介して同軸ケーブル19の一方端側が接続されており,更には,同軸ケーブル19の他方の端部が,後述する前記カバー5に形成された出力端子59の,カバー5内部に突出する内側端子部59aに接続されていることによって,前記放射器10によって受信された信号は,前記出力端子59からカバー5の外部に取出されるように構成されている。
【0014】
ここで,放射器10の具体的な寸法について説明する。放射器の寸法は図2によく示されている。尚,以下に説明する本発明の実施形態に係るアンテナの具体的な寸法は,特にUHF帯を使って行われている地上デジタル放送に好適なアンテナの設計例を示したものである。
放射素子15は導電性のある薄板材を,横幅(図2(c)では縦方向の寸法)が136mm,縦幅(図2(c)では横方向の寸法)が54mmの長方形状に打ち抜き形成したものであり,その基部11側には給電点11aが形成されている。更に,基部11と相対向する側の辺の中間位置には,横幅(図2(c)では縦方向の寸法)が37mm,縦幅(図2(c)では横方向の寸法)が20mmの凹部12を備えている。そして,このように形成された放射素子15の基部11側の辺を,相互に2mmの間隔を隔てて対向配置することによって放射器10が構成されている。
【0015】
次に,反射器20について図3を用いて説明する。図3は本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。本発明に係る反射器20は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した導電材からなる矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部21として,所定の開口角θを有する断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ放射器10方向に向かって折り曲げ形成すると共に,前記反射器20の折曲部21より上方に位置する上部反射面22と,折曲部21より下方に位置する下部反射面23のそれぞれには,受信する電波の偏波の方向に直交する方向に長手方向を有する複数のスリット25が形成されている。
【0016】
更に,本発明に係る実施形態の反射器20には,少なくとも前記上部反射面22若しくは下部反射面23のいずれか一方の先端部(図3では上部反射面22の先端部22a)の所定の位置に,受信する電波の偏波に直交する方向に長手方向を有する細板状の整合片28,28を突出するように備えさせている。
【0017】
反射器20の折曲部21の底部は平面24を形成している。この平面24には,適宜の間隔を置いて,反射器20を後述するカバー5奥部に形成された反射器取付用ボス51aに取付けるための複数の取付孔21a・・・,カバー5の奥部から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bを挿通するための貫通孔21b,21b,及び,後述する信号処理回路の取付用ボス51c,51cを挿通するための貫通孔21c,21cがそれぞれ形成されている。更に,下側反射面23の図面左側には,前記内部端子部59aが突出するための孔23a,及び,図には示されていない内部端子部58aが突出するための孔23bが形成されている。このように形成された反射器20は,樹脂製筐体を構成するカバー5に収納される。
以上本発明の実施形態に係るアンテナを構成する反射器20によれば,平板体状の導電材の両長辺側をそれぞれ放射器10方向に向かって所定の開口角θを有する断面略く字状となるように,折り曲げ形成したので,上下方向の寸法を小さくできる。
【0018】
ここで,反射器20の具体的な寸法について説明する。各部の寸法は図3によく示されている。
横幅が290mmの導電材からなる薄板を,図3(d)に示されるように,折曲部21を中心として上部反射面22と下部反射面23を,開口角θ=45°で前方側に折り返す。このとき上部反射面の縦幅が45mm,折曲部21における平面24の縦幅が6mm,下部反射面の縦幅が45mm,上部反射面22と下部反射面23の先端がなす開口寸法が40.5mm,上部反射面22の先端22aから突出するように備えられた整合片28の長さが30mmとなるように薄板の縦寸法は決められている。
本発明に係る実施形態におけるスリット25は,上部反射面22と下部反射面23のそれぞれに設けられており,前記反射面を縦幅35mm,横幅が5mmのおおきさで長方形状に貫通させたものであり,反射器20の横方向の中心軸線上にスリット25の中心を位置させ,スリット25の中心線が相互に10mmの間隔を隔てて並列配置するように,複数のスリット25が形成されている。
また,本発明に係る実施形態における整合片28は,縦幅が30mm,横幅が5mmの大きさの短冊状に一体に形成されており,この実施形態においては,上部反射面22の前端であって上部反射面22の中心線CLより左右に95mm離れた位置に,整合片28の中心線がくるように一体に備えられている。
【0019】
次に,前出のカバー5について図1及び図4(a)を用いて詳しく説明する。図1はカバー5の斜視図であり,図4(a)はカバー5に反射器20を収納した状態を示す正面図である。
このカバー5は樹脂製材料を金型等で成形したものであり,前記反射器20の形状に合わせて,前方に開口部30aを備えた断面略く字状に形成されており,その内部には,少なくとも前記反射器20を収納する空間30が形成された箱体となるように構成されている。
カバー5の再奥部には,前記反射器20の平面24に対向するように,該平面24を当て付けて,反射器20を取付け及び位置決めをするための当付面34が形成されている。この当付面34には,反射器20の平面24に形成された前記取付孔21aに対向する位置に反射器取付用ボス51aが,反射器20の平面24に形成された前記貫通孔21b,21bに対向する位置に,当付面34から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bが,反射器20の平面24に形成された前記貫通孔21c,21cに対向する位置に,後述する信号処理回路40の取付用ボス51c,51cがそれぞれ形成されている。
【0020】
また,反射器20の上部反射面22と下部反射面23に対向する,カバー5の内面壁には,前記反射器20に形成されたスリット25の前方内側端部に嵌合する複数の受止部35と,前記反射器20を構成する上部反射面22と下部反射面23のそれぞれの先端部と嵌合する複数の突片36が形成されている。尚,本発明に係る実施形態においては,この突片36が請求項に記載の係止手段である。また,この突片36に嵌合する上部反射面22と下部反射面23の先端部が請求項に記載の係止部分である。
更に,カバー5の開口部30aにおける開口端の周縁内側には,該開口端に沿うように,放射器10を構成する前記放射素子15,15を取付けるための手段であって,放射素子15に形成された前記放射素子取付孔17に対向する位置に,放射素子取付用ボス57が形成されている。
加えて,カバー5の下面内側の中間部位には,前記同軸ケーブル19を保持するための係止爪33が形成されている。また,カバー5の下面外側の側方には,同軸ケーブル19に伝送されてきた受信信号を出力するための出力端子59が備えられている。この出力端子59のカバー5の空間30に現れる部分が前記内部端子部59aであり,前記同軸ケーブル19の他方端の中心導体と外部導体がそれぞれ接続されている。
そして,このように構成されたカバー5には,反射器20が収納されると共に,該反射器20の収納が完了した後に,前記開口部30aを塞ぐように,前記放射素子15,15が組付けられる。これによって,一対の放射素子15は,相互に所定の間隔をおいて配設されて放射器10を形成すると共に,該放射器10と前記反射器20とが,前後に所定の間隔をおいて配設されることによって,アンテナ本体2が構成されるのである。
【0021】
本発明に係る実施形態のアンテナ本体2においては,図2(a)に示されているように,放射器10と反射器20の間隔は,放射器10と反射器20の平面24との間隔が100mmとなるように配設されており,この所定寸法によってアンテナ本体2が構成されている。このように構成されているアンテナ本体2がカバー5に収納されたなら,図1に示されるように,カバー5の前方側にフロントパネル6を装着して,カバー5の後方から,例えば,螺子9を使ってカバー5とフロントパネル6を固着することによってアンテナ1の組付けが完了する。
【0022】
ここで,カバー5と反射器20の係止方法について,図5から図7を用いて詳しく説明する。
先ず図5で示される実施例から説明する。図5は本発明のアンテナ1を構成する反射器20をカバー5に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図,(b)は断面図である。反射器20は,反射器20の折曲部21に形成されている平面24が,カバー5の空間30の奥部に形成された当付面34に当接するように装着される。そのとき上述したように,当付面34から突設された反射器取付用ボス51aが,反射器20の平面24に形成された取付孔21を挿通するよう,また,当付面34から前方に突出するように設けられているフロントパネル6取付用ボス51b,51bが,反射器20の平面24に形成された貫通孔21b,21bを挿通するよう,信号処理回路の取付用ボス51c,51cが,反射器20の平面24に形成された貫通孔21c,21cを挿通するようにして取付ける。これによって反射器20はカバー5内の所定位置に位置決めされて収納される。
尚,反射器20の取付後は,反射器取付用ボス51aに対して,熱などを加えることによって変形させるように潰せば,反射器20は確りとカバー5に固着することができる。
【0023】
この装着操作と同時に,図5に示されるように,カバー5の上下の内面壁に形成された前記受止部35が,反射器20に形成されたスリット25の前方内側端部に嵌合すると共に,カバー5の上下の内面壁に形成された突片36が,反射器20を構成する上部反射面22と下部反射面23のそれぞれの先端部における係止部分と嵌合する。
更に詳しく説明する。図5(b)に良く示されているように,前記受止部35は,カバー5の内面壁と一体に空間30に突設するように形成されており,スリット25の前方内側端部と当接する受部35bと,該受部35bの上部若しくは下部にあって,前記スリット25を挿通する突起35aとを備え,突起35aと受部35bとカバー内面壁とで凹状の受止部35が形成されており,この凹状部にスリット25の前方内側端部が嵌合するのである。
また,前記突片36は,カバー5の内面壁と一体に空間30に僅かに突設するように形成されており,反射器20の装着における最後の段階では,上部反射面22と下部反射面23は弾性を有していることから,その先端部が,それぞれ内側に押されながら前記突片36を乗り越えるようにして装着が行なわれる。そして,装着が完了したなら,上部反射面22と下部反射面23の先端部は,その付勢力によって,カバー内面壁を押圧するように取付けられ,前記突片36と該突片36に対向する上下の反射面の先端部における係止部分とが嵌合して,反射器20がカバー5内部に確りと取付けられるのである。
【0024】
上述したように本発明の実施形態における反射器20は,アンテナとしての良好な特性を得るために,その開口角θは45°であるようにするのが良い。ところが部品としての反射器20を考えると,例えば,開口角を所定の角度θより僅かに大きくなるように形成しておいて,反射器20をカバー5に収納して,前記突片36に嵌合させた状態で,反射器20の開口角θが45°となるように構成すれば,反射器20は,その付勢力によって更に強固にカバー5に組み付けられると共に,薄板からなる反射器20の開口角θが,より剛性の強いカバー5によって,略一定のθで組付けられることになり,製品ごとに電気的特性のバラツキの少ない製品が提供できる。
このときの組付けの状態を図7に示している。図7は図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器をカバーに収納する前の図面,(b)は装着した後の断面図である。この図において,カバー5に入れる前の反射器20は,その開口角がθ1(θ1>θ,θ=45°)で形成されており,その結果,反射器20の開口端の寸法はW1>40.5mmである。このように形成された部品としての反射器20を,図5(b)の如くカバー5に収納した状態で,その開口角がθ=45°となる。その結果,反射器20の開口端の寸法はW=40.5mm,中心線CLから整合片28の先端までの寸法はHである。
【0025】
更に,この図7に示す実施例では,カバー5の突片36は,反射器20の開口端の寸法が,所定の寸法であるW=40.5mmとなる位置,即ち,反射器20をカバー5内の所定位置に収納することによって,反射器20の形状が所定の形になるように形成されていると共に,カバー5自体の開口角が,反射器の所定の開口角θより僅かに小さく形成されていることによって,図5(b)の如く,上部反射面22及び外部反射面23の先端部の外面を除いて,上部反射面22及び外部反射面23の外面とカバー5の内面壁との間が接触しないように,適度な間隔を有するように構成されている。このように構成されていることによって,アンテナ本体2,特に反射器20が風などによって振動したとしても,上部反射面22及び外部反射面23とカバー5の内面壁とが接触しないので余分な異常音の発生がなくなるのである。
尚,上部反射面22及び外部反射面23の先端部と,カバー5の内面壁との間に緩衝材を介在させても良い。
【0026】
次に,反射器20の取付構造の異なる実施例を,図6を用いて説明する。図6は本発明のアンテナ1を構成する反射器20をカバー5に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図,(b)は図における右側から見た断面図である。
図6に示される実施例と,図5に示される実施例の異なる点は,前記カバー5に反射器20を収納したときに,図5に示される前記実施例では,少なくとも前記反射器20の上部反射面22及び下部反射面23の先端部外面全てがカバー5の内面壁に当接し,しかも,その先端部の係止部分が前記突片36に嵌合する構成であったが,この図6の実施例では,前記空間30内面に備えられた係止手段としての突片36に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも前記反射器20の上部反射面22及び下部反射面22の外面とカバー5内面壁とが当接しないように,前記空間30の内面に対して所定の間隙を有するように取付けられることを特徴とした例である。即ち,上部反射面22及び下部反射面23の先端部の,前記突片36に対向する位置に,突片36に向かって前記上部反射面22及び下部反射面23より外方向に突出するように形成した係止部分としての突出片26を備えさせ,この突出片26を前記突片36に係止することによって,反射器20は所定の形状でもって,カバー5に収納されるのである。このように構成されていることによって,アンテナ本体2,特に反射器20が風などによって振動したとしても,上部反射面22及び外部反射面23とカバー5の内面壁とは,前記突出片26の先方端部を除いて接触しないので,接触部分が極めて少なくなり,更に振動に対して異常音の発生の少ないアンテナが提供できるのである。
【0027】
ここで以上のように構成された本発明に係るアンテナの電気的特性を示し,反射器20に備えたスリット25及び整合片28の効果について以下に説明する。
先ず,スリット25の効果について図9を用いて説明する。図9はスリット25の有無による電気的特性の比較を示したものである。本発明の実施形態のアンテナによれば,スリット25を設けた反射器20を備えたアンテナは,スリットのない反射器を備えたアンテナに対して,低域側のGAIN及びVSWRの改善がなされ,スリット25の有効性が認められる。
尚,本発明の実施形態のスリット25は,図3に良く示されるように,横幅290mm,縦幅45mmの大きさの上部反射面22,下部反射面23のそれぞれに,横幅5mm,縦幅35mmのスリットを,長手方向の中心軸の間隔が10mmとなるように並列配置するように構成されている。
【0028】
次に,整合片28の効果について図10を用いて説明する。図10は整合片28の有無による電気的特性の比較を示したものである。このデータは,整合片28を上側反射面22の所定位置に2つ設けた反射器と,上側反射面22と下側反射面23のそれぞれに2つ設けた反射器と,整合片のない反射器を備えたアンテナを比較したものである。VSWRのデータからわかるように,整合片28のない反射器を備えたものはVSWRの特性が一番悪く,上側に整合片が2個,上下それぞれに整合片が2個の順にVSWRが良くなる。ところが,GAINに注目すると,整合片28がないもの,上側に整合片が2個のものは殆ど同じGAIN特性を示すものの,上下それぞれに整合片が2個のものはGAINの低下が見られる。本発明の実施形態のアンテナによれば,本発明の実施形態のように,整合片28を少なくとも反射器20を構成する上側反射面22に2つ設けることによって,GAINの低下を招かずに,VSWRの改善ができる事が分かり,整合片28の有効性が認められる。
尚,本発明の実施形態の整合片28は,図3に良く示されているように,縦幅が30mm,横幅が5mmの大きさに形成されており,この実施形態においては,横幅290mm,縦幅45mmの大きさの短冊状に形成された整合片28が,上部反射面22の先端であって,上部反射面22の横幅の中心線より左右に95mm離れた位置に,整合片28の中心線がくるように一体に備えられている。
【0029】
次に,本発明に係るアンテナの異なる実施形態について図3(b)及び(c)を用いて説明する。この図3(b)に示される実施形態と図3(a)に示される実施形態の違いは,アンテナに,図3(b)における40で示される信号処理部を備えたことである。この信号処理部40は,例えば,放射器10で受信した信号を,所定のレベルまで増幅するための増幅回路や,例えば衛星アンテナ等の外部アンテナからの信号を,このアンテナで受信した地上デジタル波の信号と混合するための混合回路等を備えた,図には示されていない信号処理回路を,例えば導電材用で形成されたシールドケース44に収納したものである。本発明におけるシールドケース44は,上下方向が薄手となるよう,上下面と四方を囲む側壁とからなるシールド性を備えた箱体であり,前記上部反射面22及び下部反射面23によって,前記反射器20の前方側に形成される空間の中間部位に,少なくとも前記信号処理部40の一つの側壁45をアンテナの前方向に向けて,該信号処理部40の一部若しくは全てを前記空間に重合するように配設されている。このシールドケース44は,前記側壁45と相対向する側壁に,該側壁より両側方に突設した,中央に貫通孔を備えた取付け脚が備えられており,この取付け脚を,前記取付用ボス51,51に対して当て付け,螺子41,41を前記貫通孔から取付用ボス51C,51cに対して羅着することでカバー5に対する取付けが行なわれる。尚,図3(b)に示される19は放射器10で受信した信号を伝送する入力用の同軸ケーブルであり,42は増幅や混合といった信号処理された信号を出力端子59より出力するための同軸ケーブルである。また,43は図には示されていない外部入力端子から入力される,衛星アンテナ等の外部アンテナからの信号を,信号処理回路に入力するための同軸ケーブルであり,一方は図の58aで示されている内部入力端に接続され,他方は信号処理回路に接続されている。
【0030】
ここで,信号処理部40を放射器10と反射器20の間に入れることの影響についての実験結果を,図11を用いて説明する。図11は信号処理部40のない場合の電気的特性と,信号処理部40の取付け方向の違いによる電気的特性の比較を行なったものである。
信号処理部40の取付け方向は,図3(b)に良く示されているように,前記信号処理部40の側壁45,つまり,薄手方向の面をアンテナの前方向に向けて取付けた場合と,信号処理部40の上面若しくは下面,つまり,長手方向の面をアンテナの前方に向けて取付けた場合の2つである。このデータからわかるように,信号処理部40が無い場合を基準とすると,薄手方向の面をアンテナの前方向に向けて取付けた場合は,信号処理部40が反射器20内に重合するように配設されていても,若干の劣化は見られるものの,GAINもVSWRも前後比も略同程度の特性が得られることがわかる。それに対して,信号処理部40の上面若しくは下面をアンテナの前方に向けて取付けた場合は,帯域の低域側においてVSWRの改善が見られるものの,GAINの低下,前後比の劣化がみられる事が分かる。
つまり,本発明の実施形態によれば,信号処理部40を,前記上部反射面22及び下部反射面23によって前記反射器20の前方側に形成される空間の中間部位に,少なくとも前記信号処理部40の薄手方向の一側壁45をアンテナの前方向に向けて,該信号処理部40の一部若しくは全てを前記空間に重合するように配設することによって,電気的特性の劣化のないアンテナを提供することができる。
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,以下に例示するように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
上述した実施形態は,反射器20にスリット25や整合片28を用いて最適化した例を示したが,例えば,図8(b),(c)に示すようにスリット25が有っても整合片25がないもの(反射器61),スリット25も整合片28もないもの(反射器63)等,適宜に組み合わせて構成しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るアンテナを説明するための分解斜視図である。
【図2】本発明に係るアンテナ本体を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)はA−A線から見た側面図,(c)は正面図である。
【図3】本発明に係るアンテナを構成する反射器を説明するための図であり,(a)は上面図,(b)は正面図,(c)は下面図,(d)はB−B線からみた断面図である。
【図4】樹脂製筐体に反射器を収納した状態を説明するための図面であり,(a)は正面図である。(b)は樹脂製筐体内に反射器と信号処理部を収納した場合の正面図であり,(c)は(b)におけるC−C線から見た断面図である。
【図5】本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納する実施例を説明するための図であり,(a)は図4(b)におけるD−D線から見た,一部を破断した斜視図であり,(b)は断面図である。
【図6】本発明のアンテナを構成する反射器を樹脂製筐体に収納するための異なる実施例の説明図であり,(a)は一部を破断した斜視図であり,(b)は図における右側から見た断面図である。
【図7】図1におけるE−E線から見た断面図であり,(a)は反射器を筐体本体に収納する前の図面であり,(b)は装着した後の断面図である。
【図8】本発明にかかるアンテナを構成するアンテナ本体の実施例を示す斜視図であり,(a)から(b)にそれぞれ反射器が異なる実施例を示す。
【図9】反射器のスリットの有無による電気的特性の比較である。
【図10】反射器の整合片の有無による電気的特性の比較である。
【図11】本発明の異なる実施形態を示すアンテナの電気的特性を示す。
【符号の説明】
【0032】
1…アンテナ,2…アンテナ本体,5…カバー,6…フロントパネル,9…螺子,10…放射器,11…基部,11a…給電点,12…凹部,15…放射素子,17…放射素子取付孔,18…平衡不平衡変換部,19…同軸ケーブル,20…反射器,21…折曲部,21a…取付孔,21b・21c…貫通孔,22…上部反射面,22a…先端部,23…下部反射面,23a・23b…孔,24…平面,25…スリット,26…突出片,28…整合片,30…空間,30a…開口部,33…係止爪,34…当付面,35…受止部,35a…突起,35b…受部,36…突片,40…信号処理部,41…螺子,42…出力同軸ケーブル,43…入力同軸ケーブル,44…シールドケース,45…側壁,51a…反射器取付用ボス,51b…フロントパネル取付用ボス,51c…信号処理回路取付用ボス,57…放射素子取付用ボス,58a…内部端子部,59…出力端子,59a…内部端子部,61・62…反射器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられることを特徴としたアンテナ。
【請求項2】
前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられることを特徴とした請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成されたことを特徴とした請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項1】
少なくとも,放射器と反射器とを備えるアンテナ本体を樹脂製筐体に収容してなるアンテナにおいて,
前記反射器は,受信する電波の偏波方向に対して平行する方向に長手方向を有した矩形の平板体を,該平板体の両短辺における略中心点を結ぶ中心部位を折曲部として,該折曲部の上側に位置する上部反射面と,該折曲部の下側に位置する下部反射面とが,所定の開口角より僅かに大きい開口角を有した断面略く字状となるように,該平板体の両長辺側をそれぞれ前記放射器方向に向かって折り曲げ形成されており,
前記樹脂製筐体は,前記反射器後方側から前記アンテナ本体に被せることができるように,前方側を開口し,内部に前記反射器を沿わせて収納できる収容空間を備える,前記所定の開口角より僅かに小さな開口角を有した断面略く字状に形成されると共に,前記収容空間の内面には,前記反射器を係止するための係止手段を備えるように形成された筐体本体を備えており,
前記反射器を前記筐体本体の収容空間に収納したときに,少なくとも,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部に備えられた係止部分が前記係止手段に係止することによって,前記反射器の開口角が前記所定の開口角となると共に,前記反射器の上部反射面及び下部反射面の先端部を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられることを特徴としたアンテナ。
【請求項2】
前記筐体本体の収容空間の内面に形成された前記係止手段は,前記収容空間内面に適宜の間隔をおいて複数箇所備えられるように形成されており,
前記筐体本体の収容空間に前記反射器を収納した時に,反射器の前記収納空間内面に備えられた前記係止手段に対向配置する係止部分を除いて,少なくとも上部反射面及び下部反射面の外面が,前記収納空間の内面に対して当接しないよう,所定の間隙を有して前記収納空間に取付けられることを特徴とした請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナはUHF帯の電波を受信するように構成されたことを特徴とした請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のアンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−246755(P2009−246755A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92000(P2008−92000)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
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