説明

アンドログラフィス・パニキュラータ抽出物

アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)の抽出物を提供する。抽出物は、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、ネオアンドログラホライド、多糖類、およびフラバノイド類を含む。また、そのような抽出物を含有する製薬上の組成物、および炎症性腸疾患を処置するためのその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドログラフィス・パニキュラータ抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患には、消化管の粘膜への炎症細胞の浸入によって特徴付けられる慢性胃腸障害が含まれる。潰瘍性大腸炎およびクローン病は中でも2つの優勢な状態である。
潰瘍性大腸炎は大腸(すなわち、結腸)において起こる。障害のある腸の内層は、炎症を起こし、そして潰瘍を発達させる。
【0003】
クローン病は、最も普通に、小腸(すなわち、回腸終端部)の末端および大腸の部分に影響を及ぼす。それは、潰瘍性大腸炎よりも腸壁の層中に大いに深く広がる炎症を引き起こす。
【0004】
潰瘍性大腸炎およびクローン病の双方は、TNFαおよびIL-1βを含む炎症促進性サイトカインの調節不全に起因する。例は、McClane(マクレーン)S. J.ら、Journal of Parenteral and Enteral Nutrition(ジャーナル・オブ・パレンテラル・アンド・エンテラル・ニュートリション)23、1999年参照。治療剤は、炎症促進性サイトカインのダウンレギュレーション(下方制御)に基づいて開発された。たとえば、5-アミノサリチル酸、TNFαシグナル伝達事象のインヒビター(抑制剤)は、潰瘍性大腸炎を処置するのに用いられた。例は、Therapeutic Immunology(セラペウティック・イムノロジー)、Ed.(編)Austen(オースティン)、K F.、Blackwell Publishing(ブラックウェル出版)、2001年、159-167参照。しかし、大部分の炎症性腸疾患の治療学は、有効性または重大な副作用に制限を受けた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】McClane S. J. et al., Journal of Parenteral and Enteral Nutrition 23, 1999
【非特許文献2】Therapeutic Immunology Ed. Austen, K F., Blackwell Publishing, 2001, 159-167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炎症性腸疾患を処置するために、より一層有効な治療剤を開発する必要性がいまだにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)の抽出物が炎症性腸疾患に対して治療効果を有効に発揮するという驚くべき知見に基づく。抽出物には、アンドログラホライドラクトン類(andrographolide lactones)、多糖類(polysacchorides)、およびフラバノイド類(flavanoids)が、それぞれ、抽出物の乾燥重さの10-22%(好ましくは13-17%)、18-28%(好ましくは20-25%)、および10-15%(好ましくは12-14)を構成して含有される。アンドログラホライドラクトン類には、アンドログラホライド、14-デオキシアンドログラホライド、14-デオキシ-11,12-デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドが、それぞれ、抽出物の乾燥重さの2-20%(好ましくは3-10%、より一層好ましくは6-10%)、0.01-6%(好ましくは0.01-2%、より一層好ましくは0.01-1%)、1-6%(好ましくは2-5%、より一層好ましくは2-4%)、および1-5%(好ましくは2-4%)を構成して含有される。
【0008】
この発明の別の局面は、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)を処置する方法に関する。この方法には、処置を必要としている対象体に上記の抽出物の効果的な量を施すことが含まれる。
【0009】
また、この発明の範囲内には、上述の抽出物および薬学的に許容可能なキャリヤー(担体)を含む製薬上の組成物、炎症性腸疾患を処置するためのそのような組成物の使用、およびこの病気の処置用の薬の製造のためのそのような組成物の使用がある。
【0010】
本発明のいくつかの具体化の詳細を、下記の説明において述べる。本発明の他の特長、目的、および利点は、その説明から、そしてまた請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の抽出物を調製するために、1つには、アンドログラフィス・パニキュラータの地上部を、80-95%のエタノール中に浸し、エタノール相を収集し、そして次いでエタノールを除去することができる。実際の例を以下に提供する。このようにして得られる抽出物はさらに、薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、または他の任意の適した方法によっても精製することができる。
【0012】
この発明には、炎症性腸疾患の処置を必要としている対象体にこの発明の抽出物の効果的な量を施すことによってそれを処置する方法が含まれる。用語“効果的な量”は、対象体において上記の治療上の効果の1種を与えるのに要求される抽出物の量に言及する。この技術における熟練者(当業者)によって認識されるように、効果的な量は、投与の経路、賦形剤の使用、および他の薬剤との共使用(co-usage)の可能性に応じて変動しうる。好ましくは、効果的な量は抽出物の乾燥重さに基づき1-100mg/kg/日である。用語“処置し”は、炎症性腸疾患をもち、またはその疾患の徴候をもち、またはその疾患になりやすい素因をもつ対象体に、その疾患、その疾患の徴候、またはその疾患になりやすい素因を治癒させ、癒やし、軽減し、解放し、変え、是正し、回復させ、改善し、または影響を与える目的を伴って、抽出物を施すことに言及する。
【0013】
上記の方法の1種を実践するために、1つには、それを必要としている対象体に、吸入スプレー(噴霧)によって、または植え込みリザーバー(貯蔵所)を介して、経口的に、直腸性に、非経口的に、上記の抽出物単独または抽出物および薬学的に許容可能なキャリヤーの混合物のいずれかである組成物が施される。用語“非経口的”には、ここで用いるように、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、くも膜下腔内、病巣内、頭蓋内での注射または注入の技術が含まれる。
【0014】
経口的な組成物は、制限されないが、タブレット(錠剤)、カプセル、エマルジョン類および水性懸濁物、分散物および溶液を含め、任意の経口的に許容可能な剤形であることができる。タブレットのための普通に用いられるキャリヤーには、ラクトースおよびコーンスターチ(トウモロコシ澱粉)が含まれる。滑剤(Lubricating agents)で、ステアリン酸マグネシウムのようなものはまた、タブレットに典型的に加えられる。タブレットはまた、配送または表面的な効果のために被覆しうる。カプセルの形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁物またはエマルジョン類が経口的に施されるとき、活性原材料は、乳化または懸濁化の薬剤を組み合わせた油性相において懸濁し、または溶かすことができる。必要なら、一定の甘味料、香味料、または着色剤を加えることができる。
【0015】
直腸の組成物は、制限されないが、クリーム、ゲル、エマルジョン、懸濁物、坐剤、およびタブレットを含め、任意の直腸的に許容可能な剤形であることができる。1種の好ましい剤形は、ヒトの体の直腸の開口部への導入のために設計される形状およびサイズをもつ坐剤である。坐剤は通常、体温にて柔化し、溶融し、溶解する。坐剤の賦形剤には、制限されないが、カカオ脂(カカオバター)、グリセリンで処理されたゼラチン、水素化された植物油(ails)、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、およびポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0016】
無菌の(滅菌した)注入可能な組成物(例は、水性または油質の懸濁物)は、適した分散剤または湿潤剤〔たとえば、ツイーン(Tween)80のようなもの〕および懸濁化剤を用いるこの分野において既知の技術に従って調剤することができる。無菌の注入可能な調製物はまた、毒性のない非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒において、たとえば、1,3-ブタンジオールにおける溶液として、無菌の注入可能な溶液または懸濁物であることができる。許容可能なビヒクル(媒介物)および溶媒中、採用することができるものはマンニトール、水、リンガー溶液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の、不揮発性油は慣習的に、溶媒または懸濁化剤(例は、合成モノ-またはジ-グリセリド)として採用される。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、オリーブ油またはヒマシ油のように、特にそれらのポリオキシエチル化されたバージョン(種類)において、自然な薬学的に許容可能なオイルであるので、注入物質の調製において有用である。これらのオイル溶液または懸濁物はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(dispersant)、またはカルボキシメチルセルロースまたは類似した分散性薬剤(dispersing agent)を含有することができる。
【0017】
吸入組成物は、製薬上の調剤の分野でよく知られた技術に従って調製することができ、そして食塩水における溶液として調製することができ、ベンジルアルコールまたは他の適した保存料、生物学的利用能を高めるための吸収プロモーター(促進剤)、フルオロカーボン類、および/またはこの技術において既知の他の可溶化剤または分散性薬剤が採用される。
【0018】
局所的な組成は、オイル、クリーム、ローション、軟膏などの形態において調剤することができる。組成物のための適したキャリヤーには、植物性または鉱物性のオイル、白色ワセリン(白い軟質パラフィン)、分枝鎖脂肪またはオイル、動物性脂肪および高分子量アルコール類(C12よりも大きい)が含まれる。好ましいキャリヤーは活性原材料が溶解性であるものである。乳化剤、安定剤、保湿剤および酸化防止剤はまた、必要に応じ、色または香りを分け与える薬剤と同様に含めることができる。加えて、経皮的浸透エンハンサーは、これらの局所的調剤物において採用することができる。そのようなエンハンサーの例は、米国特許第3,989,816号および第4,444,762号明細書において見出すことができる。クリームは好ましくは、鉱油、自己乳化蜜ろうおよび水の混合物から調剤され、その混合物では、活性原材料は、アーモンド油のような、オイルの小量において溶かされ、混ぜられる。そのようなクリームの例は、約40部の水、約20部の蜜ろう、約40部の鉱油および約1部のアーモンド油が含有されるものである。軟膏は、アーモンド油のような植物油において活性原材料の溶液を、暖かい軟質パラフィンと混合し、そして混合物を冷やすことによって調剤することができる。そのような軟膏の例は、重さによって約30%のアーモンドおよび約70%の白い軟質パラフィンが含有されるものである。
【0019】
製薬上の組成物におけるキャリヤーは、調剤物の活性原材料と適合性であるという意味において“許容可能”でなければならず(および好ましくは、それを安定化させることができる)、そして処置される対象体に有害であってはならない。たとえば、安定化剤で、シクロデクストリン類のようなもの(それは、特定の、より一層可溶性の複合体を、抽出物の1種またはそれよりも多くの活性化合物と共に形成する)は、活性化合物の配送のために製薬上の賦形剤として利用することができる。他のキャリヤーの例には、コロイド性の二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD&C Yellow(ディー・アンド・シー・イエロー)# 10が含まれる。
【0020】
適したインビトロ(試験管内)アッセイは、TNFαまたはIL-1βの発現の抑制(inhibiting expression)において上記抽出物の有効性を予め評価するのに用いることができる。抽出物はさらに、インビボ(生体内)アッセイによって炎症性腸疾患の処置において、その有効性について検査することができる。たとえば、抽出物は、炎症性腸疾患をもつ動物(例は、マウスモデル)またはヒトに施すことができ、そして次いでその治療上の効果にアクセスされる。結果に基づいて、適切な薬用量範囲および投与経路を定めることもできる。
【0021】
さらなる詳細を伴わずに、上記説明が本発明を十分に有効にしたと考えられる。したがって、以下の特定の例は、単なる例示であり、そして決して少しも残りの本開示の制限的なものでないと解釈される。特許を含め、ここに引用する出版物のすべては、参照によってそれらの全体をここに組み込む。
【実施例】
【0022】
例1:アンドログラフィス・パニキュラータ抽出物の調製
アンドログラフィス・パニキュラータの葉の乾燥粉体(350kg)を、90%のエタノールに浸した(2,100kg)。混合物を二時間75-80℃にて還流させた。エタノール相を収集し、そして固体残留物を再び抽出にかけた。エタノール溶液を組み合わせ、ろ過し、そして1.00-1.10g/mlの密度をもつ湿った混合物が利用可能になるように濃縮した。
【0023】
小量の混合物を、乾燥し、そして高性能液体クロマトグラフィーおよび分光測定によってその組成物について分析した。結果は、乾燥抽出物がアンドログラホライドラクトン類(抽出物の乾燥重さの14.8%)、多糖類(polysacchrides)(24.6%)およびフラバノイド(12.8%)を含むことを示した。アンドログラホライドラクトン類の間で、アンドログラホライドは、抽出物の乾燥した重さの9.2%であり、14-デオキシアンドログラホライドは<0.1%で、14-デオキシ-11,12-デヒドロアンドログラホライドは2.6%であり、そしてネオアンドログラホライドは3.0%であった。デキストリンを湿った混合物に加え(0.03kg)、それを次いで噴霧乾燥した(注入口:185-195℃、出口:90-100℃)。このようにして得られる固体抽出物を、下記のようにタブレットおよびカプセルを形成するために粉砕し、ふるいにかけ、そして包装した。
【0024】
タブレットを以下のように調製した。スターチ(10g)および糖(砂糖)(10g)を、ペーストを産生するために、精製水(80.0g)と混合した。別に、抽出物(500.0g)、スターチ(140.0g)、微結晶性セルロース(337.5g)、およびペーストを混合し、湿式粒状化して(wet granulized)、55℃にて乾燥した。乾燥顆粒(957.6g)およびステアリン酸マグネシウム(2.4g)を5分間混合した。最終的な混合物を、タブレット(400mg/タブレット、200mg抽出物/タブレットに等しい(eqv. to)。)を形成するために圧縮した。タブレットを、所望のアンドログラフィス・パニキュラータ抽出物を含有するタブレットが利用可能になるように、ヒプロメロース(7.5g)、プロピレングリコール(1.6g)、二酸化チタン(3.0g)、Food Drug & Cosmetic color lake(フード・ドラッグ・アンド・コスメティック・カラー・レーキ)(0.4g)、および精製水(87.5g)を混合することによって調製したペーストによりフィルム被覆した。
【0025】
カプセルを以下のように調製した。抽出物(340.0g)、予め乾燥したスターチ(221.0g)、二酸化ケイ素(2.125g)、および微結晶性セルロース(34.0g)を混合した。混合物を、所望のアンドログラフィス・パニキュラータ抽出物含有カプセル(351.25mgの混合物/カプセル、200mg抽出物/カプセルに等しい。)を形成するために、#0ハード-シェル・カプセル中に、カプセル充填ボード(capsule filling board)を用いて充填した。
【0026】
例2:TNFαおよびIL-1βの発現の抑制
製造者によって提供されるプロトコルに従い、末梢血単球(PBMC)細胞を、Ficoll-Paque Plus(フィコール-パーケ・プラス)〔Amersham Bioscience(アマシャム・バイオサイエンス社)〕を用いて新鮮血から単離する。細胞を、1×105細胞/mlの濃度にて10%FBS含有RPMI 1640培地に懸濁させ、そして96ウェルプレートに播種する。各反応を3つのウェルにおいて遂行する。
【0027】
DMSO中のアンドログラフィス・パニキュラータの抽出物の10μlを、各ウェル中に加える(終濃度:0.1、0.3、1、3、10、および30μg/ml)。デキサメタゾン(終濃度:10μM)を陽性コントロールとして用いる。培地の10μlを陰性コントロールとして用いる。プレートを、15分間5%のCO2の下で37℃にてインキュベーション(温置)する。100μg/mlのリポ多糖の10μlのアリコートを、陰性コントロールを除き、すべてのウェルに加えて後、プレートを終夜5%CO2の下で37℃にてインキュベーションする。
【0028】
プレートを、1000rpmで15分間回転させ、そして上澄みを収集する。TNFαおよびIL-1βの濃度を、TNFαELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)キットおよびIL1-βELISAキット〔Jingmei Bioengineer Technology(チンメイ・バイオエンジニア・テクノロジー)〕を用いて測定する。
【0029】
抑制率を以下のように算出する。
【0030】
【数1】

式中、Cextract(C抽出)は抽出物およびLPSで処置されたPBMC細胞でのTNFαまたはIL-1βの濃度であり、CLPSはLPSおよびデキサメタゾンで処置されたPBMC細胞でのTNFαまたはIL-1βの濃度であり、そしてCControl(Cコントロール)はLPSまたは抽出物で処置されることのないPBMC細胞でのT NFαまたはIL-1βの濃度である。
【0031】
例3:マウスモデルにおける炎症性腸疾患の処置
Balb/c雄性マウス〔18-24g、Chinese Academy of Science animal center(チャイニーズ・アカデミー・オブ・サイエンス・アニマル・センター)から購入される〕〕を、0.05mg/10gにて、1%のペントバルビタールナトリウムで麻酔する。50%のエタノールにおける1.5mgの2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸を、炎症性腸疾患を誘導するために、カテーテルを介して緩徐に各マウスに投与する(ブランクのコントロールマウスを除く)。ブランクのコントロールマウスは0.1mlの50%エタノールを受け取るだけである。マウスを、炎症性腸疾患の投与に先立ち24時間および2時間およびその投与後5日間日常的に、試験試料で処置する。
【0032】
各マウスの体重を、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸の投与の前および後に毎日監視する。マウスを試験試料の最後の投与後の24時間に犠牲にする。結腸を取り出し、そして秤量する。さらにまた、結腸の重さの体重に対する比率を算出し、そして結腸および他の器官の間の接着も監視する。
【0033】
肛門管より上に正確に2cmに位置する結腸組織の試料を得、10%の緩衝化したリン酸塩において固定し、パラフィン中に埋め、切片にし、そしてヘマトキシリン/エオシンで染色する。顕微鏡的な断面上の炎症の程度を、0から4まで等級分ける〔0:炎症のサイン(兆候)がない、1:炎症の非常に低いレベル、2:白血球浸入の低レベル、3:白血球浸入の高レベル、高い脈管密度、そして肥厚化した結腸壁、および4:貫壁性浸潤、杯細胞の喪失(loss of)、高い脈管密度、そして肥厚化結腸壁〕。
【0034】
例4:潰瘍性大腸炎の臨床上の処置
潰瘍性大腸炎の処置におけるアンドログラフィス・パニキュラータ抽出物の有効性を調査するために、ランダム化した、ダブルダミーの、活性な制御された8週間の臨床試験を、中国の、上海において、International Conference on Harmonisation-Good Clinical Practice (ICH-GCP) guidelines〔インターナショナル・コンファレンス・オン・ハーモナイセーション-グッド・クリニカル・プラクティス(ICH-GCP)ガイドライン〕に応じて5つの場所で行った。結腸鏡検査で確認された穏和から中適度までに活性な潰瘍性大腸炎を有する120体の受動体(患者)を、2つの群(60体の患者/群)に割り当てた。1つの群はアンドログラフィス・パニキュラータ抽出物を含有する上記のタブレットで処置され(日常的に3回、各回2つのタブレット)、そして他のものを、5-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸、すなわち、Etiasa(エチアサ)で処置した(日常的に3回、各回500-mgの顆粒)。他のすべての薬物療法を除外した。治療上の効果をpartial Mayo Scoring System(パーシャル・メイヨー・スコアリング・システム)に類似したスケール(尺度)を用いて隔週で評定し、そして臨床症状のスコアの減少(徴候での≧50%の減少)を算出した。スコアは次いで、遡及的に標準的なパーシャル・メイヨー・スコアリング(PMS)、臨床反応(改善≧2ポイントまたは0の最終スコア)および寛解(週8にて≦1のPMSスコア)を用いて算出した。始めの、および処置の終わりでの結腸鏡検査は、修飾したBaron(バロン)スコアを伴って格付けされ、そして結腸鏡検査の間に採られた生検を、0-3のスケールで組織学的に等級分けた。
【0035】
2つの群における患者は類似した人口統計をもった。各群において、病気の平均継続時間は3.5-3.7年から動き、そして基線平均(baseline mean)PMSは3.8であった。抽出物で処置された53体の包括解析(intent-to-treat)の患者において、臨床症状スコア減少は、週2での患者における27%であり、そして週8までで患者において56%にまで改善した。55体の包括解析のエチアサ処置された患者は、類似した減少を示した。週8での臨床反応率は、抽出物で処置された患者において58%であり、そしてエチアサで処置された患者では58%であった。週8での寛解率は、抽出物で処置された患者において43%であり、そしてエチアサで処置された患者において58%であった。基線および週8での双方の群におけるPMSの結果は、統計的に有意である(p<0.0002)。
【0036】
内視鏡的に、週8にて、抽出物で処置された患者の28%およびエチアサで処置されたものの24%は、完全寛解にあり(0のバロンのスコア)、そして抽出物で処置された患者の47 %およびエチアサで処置されたものの42%は、少なくとも2つの等級だけ減ったスコアをもった。
【0037】
組織学的に、抽出物で処置された患者の19体およびエチアサで処置された患者の15体を評価した。抽出物で処置された19体の患者の10体は、週8にて25-50%だけ炎症スコアの低下を示し、そしてエチアサで処置された15体の患者の6体はそのようであった。抽出物-処置群において、エチアサ-処置群での4/6と比較して、高められたC-反応性タンパク質レベルを伴って入る12/15は、週8にて正常レベルを示した。双方の群における結果は統計的に有意である(p<0.0001)。
【0038】
結果は、抽出物が潰瘍性大腸炎を処置することに有効であることを指し示した。驚くべきことに、その有効性はエチアサに相当するか、またはそれよりもさらに良好であった。
他の具体化
本発明の多数の具体化を説明した。それでもなお、種々の修飾が本発明の精神および範囲から離れることなく行いうることが理解されよう。したがって、他の具体化はまた、以下の請求の範囲の領域内にある。
【0039】
本発明の1種またはそれよりも多くの具体化の詳細を、添付の図面およびその下の説明で述べる。本発明の他の特長、目的および利点は、その説明および図面、そして請求の範囲から明らかになろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類を含み、アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの10−22%、18−28%、および10−15%を構成し、およびアンドログラホライドラクトン類は、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドが、それぞれ、抽出物の乾燥重さの2−20%、0.01−6%、1−6%、および1−5%を構成して含有される、アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)の抽出物。
【請求項2】
アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの13−17%、20−25%、および12−14%を構成する、請求項1の抽出物。
【請求項3】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの3−10%、0.01−2%、2−5%、および2−4%を構成する、請求項1の抽出物。
【請求項4】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの6−10%、0.01−1%、2−4%、および2−4%を構成する、請求項3の抽出物。
【請求項5】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの3−10%、0.01−2%、2−5%、および2−4%を構成する、請求項2の抽出物。
【請求項6】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの6−10%、0.01−1%、2−4%、および2−4%を構成する、請求項5の抽出物。
【請求項7】
多糖類、フラバノイド類、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの24.6%、12.8%、9.2%、<0.1%、2.6%、および3.0%を構成する、請求項1の抽出物。
【請求項8】
アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)から調製される抽出物であって、抽出物は、次の
アンドログラフィス・パニキュラータの植物を80−95%のエタノールと混合すること、
混合物から上澄みを分けること、および
抽出物を提供するために上澄みからエタノールを除去すること
を含むプロセスによって調製される、抽出物。
【請求項9】
アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類を含み、アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの10−22%、18−28%、および10−15%を構成し、およびアンドログラホライドラクトン類は、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドが、それぞれ、抽出物の乾燥重さの2−20%、0.01−6%、1−6%、および1−5%を構成して含有される、アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)の抽出物、および
製薬上許容可能な担体
を含む、製薬上の組成物。
【請求項10】
アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの13−17%、20−25%、および12−14%を構成する、請求項9の製薬上の組成物。
【請求項11】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの3−10%、0.01−2%、2−5%、および2−4%を構成する、請求項9の製薬上の組成物。
【請求項12】
多糖類、フラバノイド類、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの24.6%、12.8%、9.2%、<0.1%、2.6%、および3.0%を構成する、請求項9の製薬上の組成物。
【請求項13】
炎症性腸疾患の処置を必要としている対象体においてそれを処置する方法であって、アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類を含み、アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの10−22%、18−28%、および10−15%を構成し、およびアンドログラホライドラクトン類は、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドが、それぞれ、抽出物の乾燥重さの2−20%、0.01−6%、1−6%、および1−5%を構成して含有される、アンドログラフィス・パニキュラータ(Andrographis paniculata)の抽出物の効果的な量を対象体に施すことを含む、方法。
【請求項14】
アンドログラホライドラクトン類、多糖類、およびフラバノイド類は、それぞれ、抽出物の乾燥重さの13−17%、20−25%、および12−14%を構成する、請求項13の方法。
【請求項15】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの3−10%、0.01−2%、2−5%、および2−4%を構成する、請求項13の方法。
【請求項16】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの6−10%、0.01−1%、2−4%、および2−4%を構成する、請求項15の方法。
【請求項17】
アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの6−10%、0.01−1%、2−4%、および2−4%を構成する、請求項14の方法。
【請求項18】
多糖類、フラバノイド類、アンドログラホライド、14−デオキシアンドログラホライド、14−デオキシ−11,12−デヒドロアンドログラホライド、およびネオアンドログラホライドは、それぞれ、抽出物の乾燥重さの24.6%、12.8%、9.2%、<0.1%、2.6%、および3.0%を構成する、請求項13の方法。
【請求項19】
炎症性腸疾患はクローン病である、請求項13の方法。
【請求項20】
炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である、請求項13の方法。
【請求項21】
効果的な量は抽出物の乾燥重さに基づき1−100mg/kg/日である、請求項13の方法。
【請求項22】
抽出物は対象体に経口投与される、請求項13の方法。
【請求項23】
抽出物は対象体に直腸性坐剤を介して施される、請求項13の方法。
【請求項24】
炎症性腸疾患はクローン病である、請求項18の方法。
【請求項25】
炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である、請求項18の方法。

【公表番号】特表2011−502995(P2011−502995A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532287(P2010−532287)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082022
【国際公開番号】WO2009/059158
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(506361683)ハッチソン メディファーマ エンタープライジズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】