説明

アンモニア濃度モニター装置、飼料製造システムおよび方法

【課題】気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができるアンモニア濃度モニター装置、該アンモニア濃度モニター装置を用いた飼料製造システムおよび方法を提供する。
【解決手段】気体中のアンモニア濃度の変化をモニターするアンモニア濃度モニター装置であって、ガラス膜体と、前記ガラス膜体内に入れられた内部液と、該内部液に接触する第1電極と、前記ガラス膜体の外側の表面に設けられた液膜形成部と、該液膜形成部によって形成される液膜と接触する第2電極と、気体中のアンモニア濃度に対応する物理量を前記第1電極と第2電極間の電圧差により求める検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中のアンモニア濃度の変化をモニターすることができるアンモニア濃度モニター装置、該アンモニア濃度モニター装置を用いた飼料製造システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産廃棄物や生ゴミ等の有機性廃棄物の処理として、メタン発酵菌による発酵処理がある。発酵処理後の残滓である発酵液中にはアンモニア態窒素が多量に含まれている。そこで、このアンモニアの有効利用技術の一つとして、前記発酵液に空気を接触させてアンモニアを回収し、回収したアンモニアを含む気体をアンモニア処理槽内に送り、該処理槽内で穀物の葉茎(例えば、藁類や半乾燥牧草)にアンモニア処理を施すことにより、飼料としての消化性、栄養価及び家畜の嗜好性を向上させて、付加価値の高い飼料を製造する技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この飼料製造技術で得られる飼料の品質には、アンモニア処理槽に供給するアンモニアを含む気体中のアンモニア濃度が影響する。従って、アンモニア濃度の測定が必要となる。
【特許文献1】特開2005−13909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来行われている気体中のアンモニア濃度の測定は、アンモニアの吸着性という性質により、その測定方法は限られている。現状は、試料を採取して別途分析センターに運んで分析にかける。或いはアンモニア濃度検知管により測定するという程度である。前者は、測定結果を得るまで数日かかり、後者も数時間かかり、リアルタイムでアンモニア濃度を検出することができない。更に、いずれもアンモニア濃度の増減変化をモニターすることはできないので、アンモニア濃度の増減変化に対してリアルタイムで対応することができなかった。そのため、飼料の品質にバラツキが生じる問題があった。
【0005】
本発明の目的は、気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができるアンモニア濃度モニター装置、該アンモニア濃度モニター装置を用いた飼料製造システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、気体中のアンモニア濃度の変化をモニターするアンモニア濃度モニター装置であって、ガラス膜体と、前記ガラス膜体内に入れられた内部液と、該内部液に接触する第1電極と、前記ガラス膜体の外側の表面に設けられた液膜形成部と、該液膜形成部によって形成される液膜と接触する第2電極と、気体中のアンモニア濃度に対応する物理量を前記第1電極と第2電極間の電圧差により求める検出部と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
ここで、液膜形成部とはその部分に水等の液体の膜を形成することができる保水性構造であることを意味する。典型的には、布、紙、多孔質体等の保水性シート等が挙げられる。尚、ガラス膜の外表面自体の構造で液膜を形成できるようにしてもよい。
【0008】
当該液膜形成部に気体中に含まれる水が付着して、或いは水が噴き付けられる等により水の液膜が形成されると、気体中のアンモニアは液膜中に溶け込む。アンモニア濃度が高ければ多く溶け込み、アンモニア濃度が低ければ少なく溶け込む。液膜中に溶けるアンモニア濃度は、気体中のアンモニア濃度と平衡に達するまで増減変化する。従って、液膜中のアンモニア濃度は、気体中のアンモニア濃度に対応している。
【0009】
液膜中にアンモニアが多く溶ければ液膜の物理量、例えばpH値等が大きくなる。以下、説明を簡易にするために物理量をpH値に固定して説明する。勿論pH値には限定されない。例えば、電圧差の値そのままであってもよい。アンモニア濃度が増減すればpH値も増減する。気体中のアンモニア濃度に対応する物理量である例えばpH値は、前記第1電極と第2電極間の電圧差によって、検出部で検出することができる。従って、気体中のアンモニア濃度が検知管等により予め求められた濃度既知の気体を数種類用意し、該気体を液膜に接触させ、平衡に達した状態で液膜中のpH値を測定することによって、両者の関係を予め求め、検量線を作成しておくことによって、液膜のpH値を測定することにより、対応する気体中のアンモニア濃度を把握することができる。液膜のペーハー値の増減により対応する気体中のアンモニア濃度の増減をリアルタイムで把握することができる。
すなわち本態様によれば、アンモニアが溶けた液膜のpH値等の物理量の増減を測定することによって気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様のアンモニア濃度モニター装置において、前記検出部は、気体中のアンモニア濃度に対応する物理量として、前記液膜のpH値を求めるように構成されていることを特徴とするものである。記述の通り、液膜のpH値の増減を測定することによって気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様又は第2の態様のアンモニア濃度モニター装置において、前記検出部は、求めた前記物理量に対応するアンモニア濃度の値を表示する表示部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、ユーザーがアンモニア濃度の増減変化を用意に把握することができるので、その後、適切な措置を講ずることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る飼料製造システムは、気体供給部と、有機性廃棄物をメタン発酵させて生じる発酵液から、発酵によって生成するアンモニアを、前記気体供給部から送られる気体と前記発酵液との気液接触により該気体中に回収するアンモニア回収塔と、前記アンモニア回収塔で前記気体中に回収されたアンモニアを、飼料原料と接触させるアンモニア処理槽と、前記アンモニア回収塔の出口とアンモニア処理槽との間の気体送りラインに設けられた第1のアンモニア濃度モニター装置とを備えた飼料製造システムであって、前記第1のアンモニア濃度モニター装置は、前記第1の態様から第3の態様いずれか一つのアンモニア濃度モニター装置であることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、アンモニア回収塔で気液接触により回収された気体中のアンモニア濃度が、当該アンモニア濃度モニター装置によってモニターされるので、回収されたアンモニアの濃度の増減変化をリアルタイムで把握することができる。従って、アンモニア濃度が減少したときは、或いは過剰に増加したとき、その変化を修正する方向に、気液接触における気体と発酵液のそれぞれの量を調整すること等によって、気体中のアンモニア濃度を一定範囲に保持することができる。これにより、飼料としての消化性、栄養価及び家畜の嗜好性を向上させた付加価値の高い飼料を品質のバラツキ無く製造することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様の飼料製造システムにおいて、前記アンモニア処理槽の出口と前記気体供給部との間に気体戻しラインを備え、前記気体送りラインと該気体戻しラインにより気体循環ラインが構成され、前記気体戻しラインに第2のアンモニア濃度モニター装置が設けられ、前記第2のアンモニア濃度モニター装置は、前記第1の態様から第3の態様いずれか一つのアンモニア濃度モニター装置であることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、回収したアンモニアを含む気体は、気体送りラインを通ってアンモニア処理槽に送られ、該アンモニア処理槽で飼料作りにアンモニアが消費され、アンモニア濃度が減少した(ほとんどゼロまで消費される)気体が気体戻しラインを通って気体供給部に戻されて循環されるようになっている。そして、アンモニア処理槽に入る前のアンモニア濃度が第1のアンモニア濃度モニター装置でモニターされ、アンモニア処理槽を出た後のアンモニア濃度が第2のアンモニア濃度モニター装置でモニターされるようになっている。
【0017】
従って、アンモニア処理槽内におけるアンモニアの消費量の増減変化もリアルタイムで検出することができるので、このアンモニアの消費量の情報も加味して、その後の対応を取ることが可能になる。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様の飼料製造システムにおいて、前記第1のアンモニア濃度モニター装置および第2のアンモニア濃度モニター装置の検出結果を受けて、前記アンモニア回収塔に送る発酵液の量および気体の量を調整する制御、前記アンモニア処理槽の運転条件設定部の制御を実行する制御部を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、アンモニア処理槽に送る気体中のアンモニア濃度を自動的に一定範囲に保持することができ、また、アンモニア処理槽の温度等の運転条件を自動的に最適化する方向に調整することができる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る飼料製造方法は、メタン発酵後の発酵液から、発酵によって生成するアンモニアを、気体供給部から送られる気体と前記発酵液との気液接触により該気体中に回収するアンモニア回収工程と、前記アンモニア回収工程で前記気体中に回収されたアンモニアを、飼料原料と接触させるアンモニア処理工程と、前記アンモニア処理工程に送られる気体中のアンモニア濃度の増減変化を検出し、該検出結果に基づいて前記アンモニア回収塔に送る発酵液の量および気体の量を制御する工程と有するものである。
本態様によれば、アンモニア処理槽に送る気体中のアンモニア濃度を自動的に一定範囲に保持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができる。従って、アンモニア回収塔で気液接触により回収された気体中のアンモニア濃度が、当該アンモニア濃度モニター装置によってモニターされるので、回収されたアンモニアの濃度の増減変化をリアルタイムで把握することができる。従って、アンモニア濃度が減少したときは、或いは過剰に増加したとき、その変化を修正する方向に、気液接触における気体と発酵液のそれぞれの量を調整すること等によって、気体中のアンモニア濃度を一定範囲に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
先ず、本発明に係る飼料製造システム及び飼料製造方法の概要について説明する。
【0023】
[有機性廃棄物]
本発明において有機性廃棄物とは、例えば、畜産廃棄物や緑農廃棄物、排水処理汚泥などが挙げられる。ここで畜産廃棄物としては、家畜の糞尿や、屠体および/またはその加工品が挙げられ、より具体的には牛、羊、山羊、ニワトリ等の家畜の屠体、そこから分離された骨、肉、脂肪、内蔵、血液、脳、眼球、皮、蹄、角などのほか、例えば肉骨粉、肉粉、骨粉、血粉などに代表される、家畜屠体の骨、肉等を破砕した破砕物や、血液などを乾燥した乾燥物も含まれる。また緑農廃棄物には、家庭の生ごみのほか、産業廃棄物生ごみとして、農水産業廃棄物、食品加工廃棄物等が含まれる。
【0024】
[発酵工程]
超高温メタン発酵(60℃以上で行うメタン発酵)
超高温メタン発酵に先立ち、原料となる有機性廃棄物の状態により、必要に応じて前処理として破砕・分別工程、夾雑物除去を実施することができる。破砕・分別工程は、例えば、以下に示すような分別破砕、あるいは全量破砕により行うことができる。
【0025】
分別破砕の場合は、破砕分別機を用い、有機性廃棄物の中で容易に破砕可能な部位を液と共にスラリーとして回収する。一方、破砕しにくい部位は塊状物として別途収集する。スラリーの含水率は、70〜90重量%、塊状物の含水率は40〜60重量%程度である。破砕分別機は、有機性の固形物をせん断力、引っ張り力によって破砕するもので、カッター部分は2軸式または3軸式のものが利用できる。牛などの動物屠体を原料とする場合は、3軸式で破砕処理する方が破砕の細かさや均一性の観点から好ましい。
【0026】
選別除去すべき混入プラスチック類、シート類などは、メッシュによる選別、風選(風力による選別)などで除去することができる。
【0027】
また、全量粉砕の場合は、例えばディスポーザー等の破砕機を使用して全対象物を破砕する。含水率は、一例として60〜70重量%であるが、加工品の場合は広い範囲をとる。
【0028】
超高温メタン発酵は、超高温型、またスラリー(湿式)型、ドライ(乾式)型のいずれのタイプでも適用可能である。
【0029】
夾雑物除去の場合は、例えば、牛舎からの糞尿を処理する場合には飼料の稲わらや麦稈が夾雑物として含まれるのでスクリーンやフィルターによって除去しておくとよい。
【0030】
発酵槽は、超高温メタン発酵菌による活動を維持するために、発酵槽内の温度を60℃以上に維持し空気を完全に遮断したタンクにより構成される。発酵槽は固形物濃度(通常3〜40重量%の範囲)等によって、形状や運転条件が異なってくる。例えば、洗浄廃水が混合したりして高含水率になった原料(固形物濃度10重量%まで)の場合は湿式型の完全混合方式の発酵槽、低含水率の原料(固形物濃度30〜40重量%)の場合は、いわゆる乾式型のプラグフロー式(押出し式)の発酵槽を用いることが好ましい。
【0031】
同じ量の有機性廃棄物を処理するのに、中温メタン発酵菌による発酵処理では発酵日数が30日、高温メタン発酵菌による発酵処理では発酵日数が15日と発酵日数に長時間を要するのに対し、超高温メタン発酵菌(60℃以上)では、発酵日数を10日間程度とすることが可能である。
【0032】
従って、滞留時間(Retention Time)が15日間程度の高温メタン発酵菌(至適温度55℃)や滞留時間が30日間程度の中温メタン発酵菌(至適温度37℃)よりも、小さな発酵槽で発酵工程を行うことが可能となり、設備もコンパクト化でき設備にかかるコストも抑えることが可能となる。
【0033】
[アンモニア回収工程]
発酵槽から抜出ポンプによって抜出された発酵液は、液中に含まれているアンモニアを
回収するために、アンモニア回収塔へ送られる。
【0034】
アンモニア回収塔は、発酵液を噴霧するシャワー、発酵液とアンモニア回収塔内を流れる気体とを気液接触させる充填層およびアンモニア回収後の液体を貯留しておく循環タンクから構成されている。
【0035】
上記アンモニア回収塔で発酵液中のアンモニアが放散するので、そのアンモニアを回収し、次工程のアンモニア処理槽へ移送する前までが本工程である。
【0036】
アンモニア回収塔内の温度は発酵槽内の温度と同程度かそれ以上に維持しておくことが好ましい。発酵液中のアンモニアを大量に放散させ、回収するためである。具体的には、55〜75℃である。
【0037】
充填層については、発酵液とアンモニア回収塔内を流れる気体とが接触できるものであれば既知の構造をすべて採用することができる。例えば多孔質マット等を使用できる。気液接触を充分行わせようとすれば、多孔質マット等を棚段的に設けるのが好ましい。
【0038】
なお、循環タンクに蓄えられたアンモニア回収後の発酵液は、一度目で回収しきれなかったアンモニアを回収するために、再度循環ポンプによってアンモニア回収塔に送られる。また、循環タンクに蓄えられたアンモニア回収後の液体は所定量になった場合には図示しないスラリータンクへ送られるかあるいは発酵槽へ戻される。
【0039】
発酵槽へアンモニア回収後の液体を戻すと以下のような効果がある。
発酵槽内で有機性廃棄物に含まれている有機態窒素(ケルダール窒素)が分解されてアンモニア態窒素となり、発酵液中のアンモニア態窒素の量が一定以上になると、発酵槽内のメタン発酵菌の活性を下げることになる(アンモニア阻害)。そこで、アンモニアを回収した後の発酵液を発酵槽に戻すことで、発酵槽内の発酵液中のアンモニアの濃度を薄めることができ、メタン発酵菌の活性を維持することが可能となる。メタン発酵菌がアンモニア阻害を起こす発酵液中のアンモニア態窒素の濃度は、3000〜3500mg/Lである。
【0040】
[アンモニア処理工程(飼料の製造)]
アンモニア回収工程で回収したアンモニアを、アンモニア回収塔とアンモニア処理槽との間を循環している気液接触させた気体(以下「循環空気」という)が、アンモニア回収塔からアンモニア処理槽へ移送し、アンモニア処理槽において飼料原料と接触させる(アンモニア処理)工程である。
【0041】
循環空気はアンモニア回収塔で回収したアンモニアを、アンモニア処理槽へ移送する。
そして、移送されたアンモニアの殆どはアンモニア処理槽内で飼料と接触し反応して消費される。よって、循環空気がアンモニア処理槽を出てからアンモニア回収塔へ流入する際には、循環空気にはアンモニアは殆ど含まれていない。
【0042】
アンモニア処理槽内におけるアンモニア処理(アンモニアの長時間曝気)は、常温から加温条件において、飼料原料の乾物重量あたり、例えば1〜3重量%程度のアンモニアを添加することにより行われる。添加するアンモニアの使用量は本発明で発生するアンモニアで充分にまかなうことができる。
【0043】
アンモニア処理は、密閉した室内などで行うことができる。アンモニア処理の期間は、概ね20〜30日間程度とすることが好ましい。
【0044】
穀物の葉茎(例えば、藁類や半乾燥牧草など)をアンモニア処理することによって、飼料としての消化性、栄養価及び家畜の嗜好性が向上するとともに、保存時の品質も維持される。藁類の主成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグンなどは、互いに複雑に絡み合い、硬い組織を作って、微生物や酸素では分解されにくい組織を形成している。これにアンモニアを作用させると、加安分解(架橋結合の開裂などの分解反応と窒素が添加される反応)などが起って、そのままでは家畜が消化吸収することが困難な穀物の葉茎などが、消化吸収されやすくなり、粗蛋白価が高く、付加価値の高い飼料になる。
【0045】
すなわち、アンモニア処理によって、穀物葉茎などの飼料原料では、セルロースやヘミセルロースにアンモニアが作用して加安分解が起こり、さらにアミノ化された分解物からアミノ酸重合体が形成される結果、消化吸収性の向上と粗蛋白価の増加が起こる。
【0046】
アンモニア処理の効果を数値的に示す方法としては、例えば、(1)高消化性繊維の低消化性繊維に対する割合の増加、(2)全溶解性窒素量の増加など、を測定する方法がある。良好なアンモニア処理を行えば、上記(1)、(2)の数値を未処理品の2倍以上にすることも可能である。
【0047】
本発明の飼料製造方法では、高付加価値を持つ飼料を作る際のアンモニアとして、有機性廃棄物を超高温メタン発酵した発酵液中に存在するアンモニアを回収し、使用する。このように、有機性廃棄物からアンモニアを回収することによって、工業薬品のアンモニアを使用する場合に比べて、アンモニア処理のコストを格段に低減することが可能となる。
【0048】
アンモニア処理においては、回収アンモニアの濃度が10重量%程度である場合、穀物葉茎類に対する効果を充分に得るためには、常温(外気温)よりは、例えば40℃程度の加熱条件で処理することが好ましい。加熱によって反応速度が上がり、充分にアンモニア処理の効果を得ることができる。アンモニア処理時の加熱温度範囲は、好ましくは20℃から60℃程度である。
【0049】
以上、各工程及び各工程における装置について説明したが、一連の工程における各装置内の温度は、メタン発酵槽の温度付近あるいはそれ以上に保たれていることが熱収支上好ましい。
【実施例】
【0050】
本発明の実施例について図5を参考にしながら説明する。
図5には本発明の飼料製造システムの概略図が示されている。最初に、発酵槽から抜出される発酵液の流れについて説明する。
【0051】
発酵槽1からスネークポンプ7によって抜出された発酵液(必要に応じてろ過等を行う)は、循環ポンプ8を経てアンモニア回収塔2の上部に設けられたシャワー3から、充填層4に向けて散布される。一方、アンモニア回収塔2の充填層4の下部からは、アンモニア回収塔2とアンモニア処理槽6とを循環している循環空気が上昇してきて充填層4で発酵液と気液接触する。
【0052】
そして、アンモニア回収塔2で発酵液から放散(回収)したアンモニアを、循環空気がアンモニア処理槽6へ移送して、アンモニア処理槽6内部でアンモニアと飼料が接触し反応する。
【0053】
アンモニア回収塔2でアンモニアを回収した後の発酵液は循環タンク5に蓄えられ、再度循環ポンプ8によってアンモニア回収塔2に送られる。循環ポンプ8内の発酵液が所定量になったら、抜出しポンプ9によって、発酵液は図示しないスラリータンクへ送られる。
【0054】
[発酵槽での発酵]
麦稈片が混入する搾乳牛糞尿を発酵槽1に投入し、発酵槽内1の温度を65℃に維持して10日間メタン発酵(超高温メタン発酵)を行った。なお、超高温メタン発酵菌は、水素資化性メタン生成菌である。
【0055】
[アンモニア回収塔でのアンモニア回収]
その後、65℃の発酵液を抜出し量5L/分で発酵槽1から発酵液をスネークポンプ7によって抜出し、自動スクリーン処理(ろ過)を行った後、循環ポンプ8にてアンモニア回収塔2へ送りシャワー3から充填層4に向けて発酵液を散布し、気体供給部である循環ブロワー10から供給される循環空気と充填層4にて気液接触させた。充填層4は多孔質マットを棚段的に設けて構成した。
【0056】
アンモニア回収塔2内の温度は60℃、充填層の温度は58℃、アンモニア回収塔2とアンモニア処理槽6を循環している循環空気の流量を3m/分とした。
発酵液のpHは8.0、有機態窒素の濃度は600mg/L、アンモニア態窒素の濃度は3900mg/Lであった。
【0057】
以上の状態で、アンモニア回収塔2の出口に設けた後述する第1のアンモニア濃度モニター装置11で、循環空気内に含まれるアンモニアの濃度を測定した。さらに、アンモニア回収塔2内の温度のみを50℃、40℃、30℃と変化させて同様に循環空気内に含まれるアンモニアの濃度を測定した。
結果を図6に示す。この結果から発酵液のpHが高く、アンモニア回収塔2の温度が高い程、アンモニアがよく回収されていることがわかる。
【0058】
[アンモニア濃度モニター装置]
前記アンモニア回収塔2の出口とアンモニア処理槽6との間の気体送りライン12には第1のアンモニア濃度モニター装置11が設けられている。また、前記アンモニア処理槽6の出口と前記循環ブロワー10との間に気体戻しライン14が設けられ、前記気体送りライン12と該気体戻しライン14により気体循環ライン15が構成されている。そして、前記気体戻しライン14に第2のアンモニア濃度モニター装置16が設けられている。
【0059】
更に、第1のアンモニア濃度モニター装置11および第2のアンモニア濃度モニター装置16の検出結果を受けて、前記アンモニア回収塔2に送る発酵液の量および気体の量を調整する制御、前記アンモニア処理槽6の運転条件設定部17の制御を実行する制御部18を備えている。制御部18の制御信号が循環ポンプ8及び循環ブロワー10に送られて前記アンモニア回収塔2に送る発酵液の量および気体の量を調整するようになっている。
【0060】
次に、アンモニア濃度モニター装置11,16の構造を図1及び図2に基づいて説明する。
アンモニア濃度モニター装置11,16は、ガラス膜体20と、前記ガラス膜体20内に入れられた内部液21と、該内部液21に接触する第1電極22と、前記ガラス膜体20の外側の表面に設けられた液膜形成部23と、該液膜形成部23によって形成される液膜29と接触する第2電極24と、気体中のアンモニア濃度に対応する物理量を前記第1電極と第2電極間の電圧差により求める検出部25とを備えている。
【0061】
本実施例では、前記ガラス膜体20と内部液21と第1電極22の関係は、pHメータにおける指示電極及び内部液を有するガラス電極と同様の電極構造になっている。また、前記第2電極24は、pHメータにおける参照電極に対応する電極である。
【0062】
液膜形成部23によって形成される液膜29は、pHメータにおける参照電極が浸漬される測定対象の液体に相当する。ここで、液膜形成部23は、布、紙、多孔質体等の保水性シートで構成されている。尚、ガラス膜の外表面自体の構造で液膜29を形成できるようにしてもよい。基本的には、ガラス膜20を介して内部液中の水素イオン濃度と液膜29中の水素イオン濃度の差に基づく電圧差から、該液膜中のpHを測定できる装置である。
【0063】
ガラス膜体20は、その先端部が風箱26内に密閉されている。風箱26には、測定対象である気体の入口27と出口28が設けられている。また、検出部25は、求めた前記物理量又は該物理量に対応するアンモニア濃度の値を表示する表示部30を備えている。
【0064】
次に、測定原理を説明する。風箱26の入口から流入したアンモニアを含む気体Gは、液膜形成部23と接触しつつ通過して出口28から流出する。液膜形成部23には水の液膜29を形成しておく。尚、該水の液膜29は気体G中に含まれる水が付着して形成される場合もあり、その場合は予め水の液膜29を形成しておかなくてもよい。
【0065】
液膜形成部23に気体中に含まれる水が付着して、或いは水が噴き付けられる等により水の液膜29が形成されると、気体中のアンモニアは液膜29中に溶け込む。アンモニア濃度が高ければ多く溶け込み、アンモニア濃度が低ければ少なく溶け込む。液膜29中に溶けるアンモニア濃度は、気体中のアンモニア濃度と平衡に達するまで増減変化する(図2)。従って、液膜29中のアンモニア濃度は、気体中のアンモニア濃度に対応していることになる。
【0066】
液膜29中にアンモニアが多く溶ければ、そのアルカリ性によって液膜29の物理量であるpH値が大きくなる。アンモニア濃度が増減すればpH値も増減する。気体中のアンモニア濃度に対応する物理量であるpH値は、前記第1電極22と第2電極24間の電圧差によって、検出部25で検出することができる。
【0067】
従って、気体中のアンモニア濃度が検知管等により予め求められた濃度既知の気体を数種類用意し、該気体を液膜に接触させ、平衡に達した状態で液膜中のpH値を測定することによって、両者の関係を予め求め、検量線を作成しておくことによって、液膜のpH値を測定することにより、対応する気体中のアンモニア濃度を把握することができる。
【0068】
図3はその検量線を示す。この図3に示した検量線は、気体中に二酸化炭素が含まれている場合に用いる検量線である。図3から分かるように、アンモニア濃度が10〜1000ppmの範囲でpH値7〜10との間で直線性があり、この範囲のアンモニア濃度を測定するために当該検量線を用いることができる。これは、二酸化炭素の存在により、液膜中で炭酸(HCO)と水酸化アンモニウム(NHOH)が反応して、炭酸アンモニウムが生成することによって、高濃度のアンモニア濃度の変化をpH値の変化で検出できるようになっていると考えられる。本発明の飼料の製造においては、アンモニア濃度は高濃度(1000ppm以上)であり、且つ気体中には二酸化炭素が含まれるため、当該検量線が使われる。
【0069】
図4は気体中に二酸化炭素を僅か又は全く含まない場合の検量線である。この図4から分かるように、アンモニア濃度が低濃度(10ppm以下)でpH値7〜9との間で直線性があり、この低濃度の範囲のアンモニア濃度を測定するために当該検量線を用いることができる。
【0070】
即ち、当該アンモニア濃度モニター装置11,16を用いることにより、液膜29のペーハー値の増減により対応する気体中のアンモニア濃度の増減をリアルタイムで把握することができ、アンモニアが溶けた液膜のpH値等の物理量の増減を測定することによって気体中のアンモニア濃度の増減変化をモニターすることができる。
【0071】
そして、本実施例に係る飼料製造装置においては、アンモニア回収塔2で気液接触により回収された気体中のアンモニア濃度が、当該アンモニア濃度モニター装置11によってモニターされるので、回収されたアンモニアの濃度の増減変化をリアルタイムで把握することができる。従って、アンモニア濃度が減少したときは、或いは過剰に増加したとき、その変化を修正する方向に、気液接触における気体と発酵液のそれぞれの量を調整すること等によって、気体中のアンモニア濃度を一定範囲に保持することができる。これにより、飼料としての消化性、栄養価及び家畜の嗜好性を向上させた付加価値の高い飼料を品質のバラツキ無く製造することができる。
【0072】
更に、回収したアンモニアを含む気体は、気体送りライン12を通ってアンモニア処理槽6に送られ、該アンモニア処理槽6で飼料作りにアンモニアが消費され、アンモニア濃度が減少した(ほとんどゼロまで消費される)気体が気体戻しライン14を通って循環ブロワー10に戻されて循環される。そして、アンモニア処理槽6に入る前のアンモニア濃度が第1のアンモニア濃度モニター装置11でモニターされ、アンモニア処理槽6を出た後のアンモニア濃度が第2のアンモニア濃度モニター装置16でモニターされるようになっている。従って、アンモニア処理槽6内におけるアンモニアの消費量の増減変化もリアルタイムで検出することができるので、このアンモニアの消費量の情報も加味して、その後の対応として、アンモニア処理槽6の運転条件設定部17を調整することが可能になる。
【0073】
本実施例では、制御部18によって、アンモニア処理槽6に送る気体中のアンモニア濃度を自動的に一定範囲に保持することができ、また、アンモニア処理槽6の温度等の運転条件を自動的に最適化する方向に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例のアンモニア濃度モニター装置の断面図である。
【図2】同装置の要部拡大断面図である。
【図3】二酸化炭素を多く含む気体中のアンモニア濃度と液膜のpH値との関係を示す検量線の図である。
【図4】二酸化炭素をほとんど含まない気体中のアンモニア濃度と液膜のpH値との関係を示す検量線の図である。
【図5】本発明の飼料製造システムの概略構成図である。
【図6】アンモニア回収塔におけるアンモニア濃度の温度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 発酵槽 2 アンモニア回収塔 3シャワー 4 充填層 5 循環タンク
6 アンモニア処理槽 7 スネークポンプ 8 循環ポンプ 9 抜出しポンプ
10 循環ブロワー 11a、b アンモニアガス検知管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中のアンモニア濃度の変化をモニターするアンモニア濃度モニター装置であって、
ガラス膜体と、
前記ガラス膜体内に入れられた内部液と、該内部液に接触する第1電極と、
前記ガラス膜体の外側の表面に設けられた液膜形成部と、該液膜形成部によって形成される液膜と接触する第2電極と、
気体中のアンモニア濃度に対応する物理量を前記第1電極と第2電極間の電圧差により求める検出部と、を備えることを特徴とするアンモニア濃度モニター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンモニア濃度モニター装置において、
前記検出部は、気体中のアンモニア濃度に対応する物理量として、前記液膜のpH値を求めるように構成されていることを特徴とするアンモニア濃度モニター装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンモニア濃度モニター装置において、
前記検出部は、求めた前記物理量又は該物理量に対応するアンモニア濃度の値を表示する表示部を備えていることを特徴とするアンモニア濃度モニター装置。
【請求項4】
気体供給部と、
有機性廃棄物をメタン発酵させて生じる発酵液から、発酵によって生成するアンモニアを、前記気体供給部から送られる気体と前記発酵液との気液接触により該気体中に回収するアンモニア回収塔と、
前記アンモニア回収塔で前記気体中に回収されたアンモニアを、飼料原料と接触させるアンモニア処理槽と、
前記アンモニア回収塔の出口とアンモニア処理槽との間の気体送りラインに設けられた第1のアンモニア濃度モニター装置と、を備えた飼料製造システムであって、
前記第1のアンモニア濃度モニター装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンモニア濃度モニター装置であることを特徴とする飼料製造システム。
【請求項5】
請求項4に記載の飼料製造システムにおいて、
前記アンモニア処理槽の出口と前記気体供給部との間に気体戻しラインを備え、前記気体送りラインと該気体戻しラインにより気体循環ラインが構成され、
前記気体戻しラインに第2のアンモニア濃度モニター装置が設けられ、
前記第2のアンモニア濃度モニター装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンモニア濃度モニター装置であることを特徴とする飼料製造システム。
【請求項6】
請求項5に記載の飼料製造システムにおいて、
前記第1のアンモニア濃度モニター装置および第2のアンモニア濃度モニター装置の検出結果を受けて、前記アンモニア回収塔に送る発酵液の量および気体の量を調整する制御、前記アンモニア処理槽の運転条件設定部の制御を実行する制御部を備えていることを特徴とする飼料製造システム。
【請求項7】
メタン発酵後の発酵液から、発酵によって生成するアンモニアを、気体供給部から送られる気体と前記発酵液との気液接触により該気体中に回収するアンモニア回収工程と、
前記アンモニア回収工程で前記気体中に回収されたアンモニアを、飼料原料と接触させるアンモニア処理工程と、
前記アンモニア処理工程に送られる気体中のアンモニア濃度の増減変化を検出し、該検出結果に基づいて前記アンモニア回収塔に送る発酵液の量および気体の量を制御する工程と、有する飼料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−244220(P2009−244220A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93867(P2008−93867)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】