説明

アンロード弁及びその加工方法

【課題】逃がし流路閉鎖時のハンチング現象をなくす。また、既存のアンロード弁に対して大きな改造を要しないでハンチング現象をなくすようにする。
【解決手段】アンロード弁10は、第1パイロット流路22、第1パイロット流路22が形成された第1ブロック20と、第2パイロット流路72、第1逃がし流路76、第2逃がし流路78が形成された第2ブロック70と、チャンバー114が形成された第3ブロック100とからなる。第1逃がし流路76にプランジャ80が設けられ、パイロット管路130にはオリフィス132が設けられている。チャンバー114及びオリフィス132を設けたことにより、プランジャ80の閉動作に起因して、圧油供給管路120及びパイロット管路130に伝播する油撃(油圧変動波)を抑制できる。チャンバー114の設置は、既存のアンロード弁に第3ブロック100を取り付けるだけで容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過剰油圧発生時に圧油を逃がす逃がし流路を開閉するプランジャを備えたアンロード弁において、該プランジャの動作に起因して発生するハンチング現象を防止可能にしたアンロード弁及び該アンロード弁の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの蒸気止め弁や蒸気加減弁等を駆動するため、これらの弁にベーンポンプ等で圧油を供給している。この圧油供給流路には、油圧が過大になった時、圧油を逃がすアンロード弁が設けられている。このアンロード弁には、逃がし流路と、該逃がし流路及び圧油供給流路間に接続されたパイロット流路とが設けられている。パイロット流路には、圧油供給流路と逃がし流路との油圧差で作動するピストンが設けられ、圧油供給流路の油圧が過大になった時、このピストンの動作でパイロット弁を開動作させ、逃がし流路を開放するように構成している。特許文献1には、かかる構成のアンロード弁が開示されている。
【0003】
アンロード弁には、さらに、逃がし流路に、逃がし流路とパイロット流路との差圧により動作して逃がし流路を開閉するプランジャが設けられたものがある。このプランジャの設置により、圧油供給流路の油圧上昇に対して、逃がし流路の開閉を精度良く行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−257513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、逃がし流路にプランジャを備えたアンロード弁においては、プランジャが閉動作した時、逃がし流路に油撃(圧力変動)が生じ、この油撃が圧油供給流路及びパイロット流路に伝播する。これによって、油圧のハンチング現象が生じるというという問題がある。このハンチング現象によって、油圧駆動装置に供給される圧油の油圧が変動し、油圧駆動装置を正確に作動できなくなる。
【0006】
この対策として、従来、パイロット流路を長大化し、このパイロット流路にハンチングを伝播させることによって、ハンチングを減衰させるようにしてきた。しかし、この手段では、配管コストが増大すると共に、長いパイロット流路を設置する広いスペースを必要とする。従って、広い設置スペースがない所では現実的な手段ではない。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、かかるハンチング現象をなくしたアンロード弁を実現することを目的とする。また、既存のアンロード弁に対して、広いスペースを必要とせず、大きな改造を要しない手軽な手段でハンチング現象をなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明のアンロード弁は、圧油供給流路から分岐された戻り流路と、該圧油供給流路及び逃がし流路に接続されたパイロット流路と、該パイロット流路に上流側から順に設けられたパイロットピストン、弁体及び該弁体を閉方向に付勢する調整ばねと、逃がし流路に設けられパイロット流路と逃がし流路との差圧により逃がし流路を開閉するプランジャとを備え、圧油供給流路の油圧が設定圧を越えると、パイロットピストンが弁体を開動作させ、パイロット流路が減圧してプランジャを閉位置から開位置に移動させるアンロード弁において、パイロットピストンと圧油供給流路の接続部との間のパイロット流路に、圧油供給流路の油圧が設定圧以下となりプランジャが逃がし流路を閉鎖した時に発生する油圧変動波の伝播を吸収するチャンバーを設けたものである。
【0009】
前記構成のアンロード弁では、逃がし流路が開から閉に動作して、圧油供給流路への圧油供給が復帰するときの手順は、次のとおりである。即ち、圧油供給流路の油圧が設定値より下降すると、パイロット流路に設けられた弁体が閉動作して、パイロット流路を閉じる。パイロット流路が閉じられると、パイロット流路と逃がし流路との差圧がなくなり、プランジャが逃がし流路を閉じる動作を行なう。このとき、油撃(油圧変動波)が発生し、これが逃がし流路→圧油供給流路→パイロット流路の順で伝播する。
【0010】
本発明のアンロード弁では、パイロット流路に油圧変動波の伝播を吸収するチャンバーを設けるという低コストな手段によって、ハンチング現象を効果的になくすことができる。即ち、該チャンバーによってパイロット流路を伝播する油圧変動波を減衰させかつ吸収することができるので、圧油供給流路を伝播するハンチングを消滅させることができる。
【0011】
本発明装置において、チャンバーの容積が30〜70cmであるとよい。チャンバーの容積を30〜70cmとすることで、ハンチングの減衰効果を著しく高めることができる。
また、ハンチングはプランジャの閉動作で発生するので、ハンチングの発生度合いは、プランジャの閉動作時の移動容積にも関係してくると考えられる。本発明装置において、プランジャの閉鎖時の移動容積に対するチャンバーの内容積の比を20〜50倍とすることにより、ハンチングの減衰効果が最も高めることができる。
【0012】
本発明のアンロード弁において、アンロード弁本体を形成する第1のブロックと、チャンバーを形成する第2のブロックとを備え、第1のブロックに対して第2のブロックを着脱可能に取り付けるようにするとよい。これによって、既存のアンロード弁に対して、大きな改造を要することなく、かつ従来のように、広いスペースを必要とせず、パイロット流路にチャンバーを形成できる。
【0013】
また、チャンバーの上流側パイロット流路に絞り用オリフィスを設けるようにするとよい。該絞り用オリフィスによっても、ハンチングを減衰できる。そのため、チャンバーと該絞り用オリフィスとの組み合わせによって、ハンチングを相乗的に減衰させることができる。
【0014】
本発明のアンロード弁において、パイロット流路に設けられた弁体が、円錐状の斜面と端面とからなる円錐体をなす先端部と、該先端部に対して軸線方向に一体をなす軸体とからなり、該円錐体の先端が弁体の軸線に一致するように加工されていると共に、前記端面が軸体に対して直角になるように加工されているとよい。
【0015】
本発明者等は、前記弁体を構成する円錐体の先端が加工精度の誤差により、弁体の軸線からずれて製作された場合、該弁体の閉動作時に首振り現象が発生することを見い出した。この首振り現象がプランジャの閉動作に影響を与え、ハンチング発生の一因になると推定される。
【0016】
そのため、円錐体の先端を弁体の軸線に一致するように加工すると共に、調整ばねが当接する弁体の端面を軸線に対して精密に直角に加工して、該調整ばねから弁体に付加される弾性力を弁体の軸線に平行に作用させることにより、前記首振り現象をなくすことができる。これによって、前記チャンバーの設置との相乗効果でハンチングをなくすことができる。
【0017】
さらに、前記構成に加えて、弁体の先端部と当接するパイロットピストンの当接面が弁体の軸線に対して直角な平面を形成するようにするとよい。このように、弁体の閉動作時に弁体の先端が当るパイロットピストンの当接面を弁体の軸線に対して精密に直角な平面に加工することにより、弁体の先端のすべりを抑制できるので、弁体の首振り現象をさらに抑制できる。
【0018】
さらに、加えて、円錐体の先端の同芯度(弁体軸線からのずれ量)が0.02mm以下であると共に、円錐体の端面の直角度(弁体軸線方向の傾き量)が0.03mm以下であり、パイロットピストンの当接面の直角度が0.03mm以下であり、調整ばねがコイル状体をなし、該コイル状体の端面の直角度(同上)が全長の0.5%以下となるように加工するとよい。
【0019】
本発明者等は、試験によって、前記数値限定の条件下で、弁体の首振り現象をさらに抑制して、ハンチングをさらに効果的に抑えることができることを見い出した。
【0020】
また、パイロットピストンの当接面の中央に、円錐体の先端が摺接する斜面を有する凹部が設けられ、該円錐体の先端が該凹部の斜面に沿って弁体の軸線位置に保持されながら凹部に受け入れられるようにするとよい。
これによって、弁体の閉動作時に、円錐体の先端が前記凹部に沿って弁体の軸線位置に誘導されるので、前記首振り現象を無くすことができる。
【0021】
本発明のアンロード弁の加工方法は、
前記円錐体の斜面と先端とを同時研削可能な研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、該円錐体の先端が弁体の軸線に一致するように加工し、
円錐体の端面と軸体とを互いに直交する研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、円錐体の端面と軸体とを互いに直交するように加工するものである。
【0022】
本発明方法では、同時加工可能な研削砥石を用いて、円錐体の斜面及び先端を同時加工するので、円錐体の先端が弁体の軸線に一致する加工が容易になる。また、同時加工可能な研削砥石を用いて、円錐体の端面と軸体とを同時加工するので、円錐体の端面と軸体とを互いに直交するように加工するのが容易になる。
このように加工することにより、弁体がパイロット流路に組み込まれた後の閉動作時に、円錐体の首振り現象を防止して、ハンチング現象をなくすことができる。
【0023】
本発明方法において、円錐体の先端の同芯度が0.02mm以下で、円錐体の端面の直角度が0.03mm以下となるように研削加工するとよい。これによって、弁体の首振り現象を抑制して、ハンチングをさらに効果的に抑えることができる。
なお、本発明のアンロード弁は、リリーフ弁又は安全弁としても使用できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアンロード弁によれば、圧油供給流路から分岐された戻り流路と、該圧油供給流路及び逃がし流路に接続されたパイロット流路と、該パイロット流路に上流側から順に設けられたパイロットピストン、弁体及び該弁体を閉方向に付勢する調整ばねと、逃がし流路に設けられパイロット流路と逃がし流路との差圧により逃がし流路を開閉するプランジャとを備え、圧油供給流路の油圧が設定圧を越えると、パイロットピストンが弁体を開動作させ、パイロット流路が減圧してプランジャを閉位置から開位置に移動させるアンロード弁において、パイロットピストンと圧油供給流路の接続部との間のパイロット流路に、圧油供給流路の油圧が設定圧以下となりプランジャが逃がし流路を閉鎖した時に発生する油圧変動波の伝播を吸収するチャンバーを設けているので、プランジャの閉動作時に発生するハンチング現象を効果的に消滅させ、油圧駆動装置を正確に作動させることができる。
【0025】
本発明のアンロード弁の加工方法によれば、円錐体の斜面と先端とを同時研削可能な研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、該円錐体の先端が弁体の軸線に一致するように加工し、円錐体の端面と軸体とを互いに直交する研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、円錐体の端面と軸体とを互いに直交するように加工することにより、弁体がパイロット流路に組み込まれた後の閉動作時に、円錐体の首振り現象を防止して、ハンチング現象を消滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係るアンロード弁の断面図である。
【図2】前記第1実施形態のポペット弁の加工方法の説明図である。
【図3】前記ポペット弁の加工精度の説明図である。
【図4】前記第1実施形態のパイロットピストンの加工方法の説明図である。
【図5】前記第1実施形態の調整ばねの加工方法の説明図である。
【図6】本発明装置の第2実施形態に係るアンロード弁の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0028】
(実施形態1)
次に、本発明のアンロード弁及びその加工方法の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本実施形態のアンロード弁10を示す。図1において、アンロード弁10のハウジングは、第1ブロック20と、第2ブロック70と、第3ブロック100とに分割されている。これらのブロックは、Oリング等の密封手段を介してボルト等の結合手段で一体に結合されている。
【0029】
第1ブロック20には、第2ブロック70に穿設された第2パイロット流路72と連通孔24を介して連通する第1パイロット流路22が設けられている。第1パイロット流路22には弁座形成体26が密に嵌合されている。弁座形成体26には、軸方向にパイロットピストン28を移動可能に受け入れる孔と、該孔の端部に後述するポペット弁30が当る弁座26aが設けられている。弁座形成体26の下流側に配置されたポペット弁30は、図2に示すように、円錐状の斜面32aと軸線に対し直角な端面32bとで形成された円錐体32と、該先端部32と一体の軸体34とからなる。なお、円錐体32の先端はR形状をなす。
【0030】
ポペット弁30の下流側には、ばね受け38が設けられ、ポペット弁30とばね受け38間にはコイル状の調整ばね36が介装されている。調整ばね36の一端は、ポペット弁30の端面32bに当接し、調整ばね36がポペット弁30に対してポペット弁30を弁座26aに押し当てる弾性力を付勢している。調整ばね36の内側には、ポペット弁30の矢印b方向の移動量の限界を規定する移動規制材40が設けられている。
【0031】
ばね受け38は、第1パイロット流路22を矢印a又はb方向移動可能であると共に、Oリング42によって第1パイロット流路22を密閉している。ばね受け38の下流側には、支持台44が第1ブロック20に固定されている。支持台44の中央に軸方向にネジ孔44aが設けられている。支持台44には、ばね力調整具46が装着されている。ばね力調整具46は、ネジ軸48と、該ネジ軸48と一体の取っ手50と、ネジ軸48に螺合した固定ナット52とで構成されている。
【0032】
ネジ軸48の先端部がばね受け38と遊嵌しており、オペレータが取っ手50を回すと、ネジ軸48と共に、ばね受け38を矢印a又はb方向に摺動させる。これによって、ポペット弁30に付勢される調整ばね36のばね力を調整できる。
【0033】
第1パイロット流路22の上流端は、Oリング54を介して密閉板56で密閉されている。第1ブロック20には、後述するプランジャ設置空間74に連通する流路58が穿設され、該流路58に絞り60が設けられている。また、第1ブロック20には、後述する逃がし流路に連通する流路62が設けられている。
【0034】
第2ブロック70には、連通孔24を介して第1パイロット流路22に連通する第2パイロット流路72が穿設されている。また、円筒形状の空間74が穿設され、該空間74は、第1ブロック20に設けられた流路58に連通していると共に、第1逃がし流路76及び第2逃がし流路78に連通している。空間74には円筒形状のプランジャ80が上下方向に移動可能に挿入されている。第1ブロック20の流路62は、流路77を介して第2逃がし流路78に連通している。
【0035】
プランジャ80には円筒形状の凹部82が刻設されていると共に、凹部82の底部中央に孔84が穿設されている。凹部82にコイルバネ86が挿入され、孔84に絞り88が装着されている。第2逃がし流路78は、空間74及び第1逃がし流路76に対して直角方向に合流し、その合流部に弁座90が設けられている。プランジャ80が弁座90に当接すると、第1逃がし流路76と第2逃がし流路78とが遮断され、プランジャ80が弁座90から離れると、第1逃がし流路76と第2逃がし流路78とが連通する。
【0036】
第3ブロック100には、第2ブロック70の第2パイロット流路72に連通する第3パイロット流路102と、第2ブロック70の第1逃がし流路76と連通する第3逃がし流路104と、第2ブロック70の第2逃がし流路78と連通する第4逃がし流路106とが穿設されている。第3パイロット流路102には、第3ブロック100の側面に開口する空間108が設けられ、凹部108の開口はOリング110を介して密閉板112によって密閉されている。これによって、チャンバー114が形成されている。
【0037】
前記構成のアンロード弁10は、例えば、蒸気タービンプラントにおいて、蒸気加減弁や蒸気止め弁の駆動装置(図示省略)に圧油を供給する圧油供給管路120に組み込まれている。圧油供給管路120には、例えばベーンポンプ等のポンプ122が設けられ、該ポンプ122によって貯油タンク124から該駆動装置に圧油が供給される。圧油供給管路120には、アキュムレータ126と、圧油の逆流を防ぐ逆止弁128と、第3ブロック100の第3パイロット流路102に連通したパイロット管路130とが設けられている。該パイロット管路130にはオリフィス132が介設されている。
【0038】
また、圧油供給管路120には、逆止弁128の上流側で第3ブロック100の第3逃がし流路104に連通した逃がし管路134が接続されている。また、第4逃がし流路106の戻り油を貯油タンク124に戻す戻し管路136が設けられている。
【0039】
かかる構成において、通常、プランジャ80は弁座90に当接して、逃がし管路134を閉鎖しており、ポンプ122から圧油供給管路120に吐出された圧油は、アキュムレータ126に充填される。アキュムレータ126に圧油が充填され、アキュムレータ126の圧力が上昇すると、圧油が主要弁の駆動装置に供給されて該駆動装置を稼動する。
【0040】
圧油供給管路120の油圧は、パイロット管路130、第3ブロック100の第3パイロット流路102、第2ブロック70の第2パイロット流路72、連通孔24及び第1パイロット流路22に伝達されている。この油圧はパイロットピストン28の頭部に負荷されており、この油圧が設定値を超えると、パイロットピストン28が矢印b方向に押され、ポペット弁30がパイロットピストン28に押されて、弁座形成体26の弁座26aから離れる。
【0041】
ポペット弁30が弁座形成体26の弁座26aから離れると、第1パイロット流路22の圧油が流路62及び77を経て第2逃がし流路78に流れるので、第1パイロット流路22の油圧が低下する。この油圧の低下は、流路58を通し、絞り60によって時間遅れで空間82に伝達する。今まで第1パイロット流路22の油圧とコイルバネ82のばね力との合力でプランジャ80を弁座90に押し付けていたが、第1パイロット流路22の圧力低下で圧力バランスがくずれ、プランジャ80が上昇する。
【0042】
これによって、プランジャ80が弁座90を離れるので、第1逃がし流路76と第2逃がし流路78とが連通し、圧油供給管路120の圧油が、逃がし管路134から、第3逃がし流路104→第1逃がし流路76→第2逃がし流路78→第4逃がし流路106を通り、戻し管路136を経て貯油タンク124に戻される。圧油が貯油タンク124に戻されることで、圧油供給管路120の油圧が低下する。該油圧が設定値以下になると、パイロット管路130の油圧が低下し、調整ばね36のばね力によってポペット弁30が弁座26aに当接し、第1パイロット流路22を閉塞する。これによって、第1パイロット流路22の油圧が増すので、プランジャ80が下降し、プランジャ80が弁座26aに当接して、第1逃がし流路76を閉塞する。
【0043】
プランジャ80が弁座26aに当接するとき、前述のように、油撃(油圧変動)が生じ、これが圧油供給管路120及びパイロット管路130に伝播して、なかなか消滅しない油圧のハンチング現象が発生する。
【0044】
本実施形態では、第3ブロック100の第3パイロット流路102にチャンバー114を設けたので、第3パイロット流路102に伝播した油圧変動波がチャンバー114で減衰され、吸収される。本発明者等は、チャンバー114の容積を種々変えて試験を行なった。その結果、チャンバー114の容積を30〜70cmとしたとき、ハンチングの減衰効果が特に著しいことがわかった。
【0045】
また、このハンチング現象は、プランジャ80の閉動作によって発生するので、ハンチングの発生度合いは、プランジャ80の閉動作時の移動容積にも関係すると考えられる。そこで、本発明者等は、この観点から、チャンバー114の容積とプランジャ80の移動容積を種々変えて試験を行なったところ、該移動容積に対するチャンバー114の容積の比が20〜50倍のときに、ハンチングの減衰効果が特に著しいことがわかった。
【0046】
また、本実施形態では、パイロット管路130にオリフィス132を介設しており、このオリフィス132によっても、油圧変動波が減衰されることがわかった。従って、本実施形態では、チャンバー114とオリフィス132の相乗効果によって、ハンチングを相乗的に大幅に減衰できる。
【0047】
次に、本実施形態のポペット弁30、パイロットピストン28及び調整ばね36の構成及びこれらの加工方法を図2〜図5に基づいて説明する。まず、ポペット弁30の加工方法を説明する。図2において、ポペット弁30の両端を軸線cを中心に回転可能に支持する。ポペット弁30を軸線cを中心に回動させながら、研削砥石140を用いて、円錐体32の端面32aと軸体34の外周面を同時加工する。研削砥石140の研削面140aと140bとは正確に直角に形成されており、この加工方法により、円錐体32の端面32aの直角度が0.03mm以下となるように加工できる。なお、「直角度」とは、図3に示すように、端面32aの軸線方向の傾き量dを指す。
【0048】
次に、円錐体32の斜面32aと先端の加工を行なう。図2において、ポペット弁30を支持具142により軸線cを中心に回転可能に支持する。そして、ポペット弁30を回転させながら、研削砥石144を用いて円錐体32の斜面32aと先端のR形状とを同時加工する。研削砥石144は、円錐体32の斜面32aと先端とを同時加工できる研削面144aを有し、研削砥石144を用いることで、円錐体32の斜面32aと先端とを同時加工でき、この加工方法を採用することで、円錐体32の先端の同芯度e(軸線cからのずれ量)を0.02mm以下に抑えることができる。
【0049】
次に、ポペット弁30に対面するパイロットピストン28の端面28aの加工方法を図4で説明する。図4において、パイロットピストン28の先端にはボス部28bが形成されている。このボス部28bを介してパイロットピストン28を両側から軸線cを中心として回転可能に支持する。そして、パイロットピストン28を回転させ、研削砥石145でパイロットピストン28の外周面の研削を行なう。
【0050】
その後、パイロットピストン28の外周面を支持具146で回転可能に支持し、パイロットピストン28を軸線cを中心に回転させながら、研削砥石147でボス部28bを除去すると共に、バイト148を矢印方向に移動させ、端面28aを研削する。この加工方法によって、端面28aの直角度を0.03mm以下となるように研削する。この場合の「直角度」も、図3のように、軸線方向の端面28aの傾き量dを指す。
【0051】
次に、調整ばね36の端面36aの加工方法を図5で説明する。図5において、調整ばね36をブッシュ152を介して軸線cを中心に支持具150に回転可能に支持させる。調整ばね36を軸線cを中心に回転させた状態で、軸線cに対して正確に直交し平坦な研削面154aを有する研削砥石154を用いて、両側端面36aを精密研削する。この研削方法によって、調整ばね36の両側端面36aの直角度を調整ばね36の全長の0.5%以下となるように研削できる。
【0052】
本実施形態では、ポペット弁30、パイロットピストン28及び調整ばね36を前記のように加工することにより、ポペット弁30が閉動作する時のポペット弁30の首振り現象を解消できる。これによって、アンロード弁10の振動を抑えることができるので、プランジャ80の閉動作時の油撃(油圧変動波)を抑制できる。
【0053】
以上により、本実施形態によれば、第3ブロック100に設けたチャンバー114及びパイロット管路130に設けたオリフィス132を設けたことにより、プランジャ80が閉動作するときに発生する油撃(油圧変動波)を効果的に抑制できる。
また、既存のアンロード弁に対して、チャンバー114を設ける場合でも、第3ブロック100を第2ブロック70に接続するだけでよいので、改造が容易である。また、パイロット管路130にオリフィス132を追設する場合でも、簡単に行なうことができる。そのため、本実施形態では、チャンバー114及びオリフィス132の追設に広いスペースを取る必要がない。
【0054】
本発明者等の試験によって、チャンバー114の容積が30〜70cmであると、ハンチングの減衰効果が特に著しいことがわかった。また、ハンチングの発生度合いは、プランジャ80の閉動作時の移動容積にも関係することがわかり、本発明者等の試験により、プランジャ80の閉動作時の移動容積に対するチャンバー114の容積を30〜70倍としたとき、ハンチングの減衰効果が特に著しいことがわかった。
【0055】
さらに、本実施形態では、ポペット弁30の円錐体32及び軸体34、パイロットピストン28の端面28a及び調整ばね36の端面36aを前述のように精密加工することにより、ポペット弁30の閉動作時の首振り現象を抑制できるようになった。これによって、アンロード弁10の振動を抑制できたので、この点からも、ハンチング現象を抑止できる。
本実施形態では、チャンバー114及びオリフィス132を設けたことによるハンチングの減衰効果と、前記精密加工によるハンチングの減衰効果との相乗効果により、プランジャ80の閉動作時のハンチングを略解消できる。
【0056】
本発明者等の試験によれば、従来のアンロード弁ではプランジャ80の閉動作時に57kgf/cmの油撃が発生したが、本実施形態では、ハンチングの油圧変動幅が10kgf/cmに留まることがわかった。なお、前記精密加工を行わず、チャンバー114及びオリフィス132の設置のみでも、ハンチングの変動幅を16kgf/cmに抑えることができることがわかった。
【0057】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図6により説明する。図6において、本実施形態は、パイロットピストン28の端面28aに軸線cを中心として、円弧状断面の凹部28bを設けたものである。この凹部28bを設けたことにより、ポペット弁30の閉動作時に、ポペット弁30の円錐体32aの先端が、首振り現象を起した場合であっても、該先端が凹部28bの傾斜面に案内されて、軸線c上に向くように誘導される。
【0058】
これによって、ポペット弁30の閉動作時に、円錐体32の先端の同芯度dが0.03mm以下に保持されて閉動作が行なわれるようになる。そのため、プランジャ80の閉動作時のハンチング現象を確実に抑制できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、アンロード弁の油圧開放から復帰する時に発生する油撃(油圧変動波)を抑制して、油圧駆動装置を正確に作動できるようにしたアンロード弁を実現できる。
【符号の説明】
【0060】
10 アンロード弁
20 第1ブロック
22 第1パイロット流路
24 連通孔
26 弁座形成体
26a、90 弁座
28 パイロットピストン
28a、36a 端面
28b、82 凹部
30 ポペット弁
32 円錐体
32a 斜面
32b 端面
34 軸体
36 調整ばね
38 ばね受け
40 移動規制材
42、54、110 Oリング
44 支持台
44a ネジ孔
46 ばね力調整具
48 ネジ軸
50 取っ手
52 固定ナット
56、112 密閉板
58、62、77 流路
60、88 絞り
70 第2ブロック
72 第2パイロット流路
74、108 空間
76 第1逃がし流路
78 第2逃がし流路
80 プランジャ
84 孔
86 コイルバネ
100 第3ブロック
102 第3パイロット流路
104 第3逃がし流路
106 第4逃がし流路
114 チャンバー
120 圧油供給管路
122 ポンプ
124 貯油タンク
126 アキュムレータ
128 逆止弁
130 パイロット管路
132 オリフィス
134 逃がし管路
136 戻し管路
140、144、145、147、154 研削砥石
140a、140b、154a 研削面
142、146、150 支持具
148 バイト
152 ブッシュ
c 軸線
d 直角度
e 同芯度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油供給流路から分岐された戻り流路と、該圧油供給流路及び逃がし流路に接続されたパイロット流路と、該パイロット流路に上流側から順に設けられたパイロットピストン、弁体及び該弁体を閉方向に付勢する調整ばねと、逃がし流路に設けられパイロット流路と逃がし流路との差圧により逃がし流路を開閉するプランジャとを備え、圧油供給流路の油圧が設定圧を越えると、パイロットピストンが弁体を開動作させ、パイロット流路が減圧してプランジャを閉位置から開位置に移動させるアンロード弁において、
前記パイロットピストンと圧油供給流路の接続部との間のパイロット流路に、圧油供給流路の油圧が設定圧以下となり前記プランジャが逃がし流路を閉鎖した時に発生する油圧変動波の伝播を吸収するチャンバーを設けたことを特徴とするアンロード弁。
【請求項2】
前記チャンバーの内容積を30〜70cmとしたことを特徴とする請求項1に記載のアンロード弁。
【請求項3】
前記プランジャの閉鎖時の移動容積に対する前記チャンバーの内容積の比が20〜50倍であることを特徴とする請求項1に記載のアンロード弁。
【請求項4】
アンロード弁本体を形成する第1のブロックと、前記チャンバーを形成する第2のブロックとを備え、第1のブロックに対して第2のブロックを着脱可能に取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載のアンロード弁。
【請求項5】
前記チャンバーの上流側パイロット流路に絞り用オリフィスを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載のアンロード弁。
【請求項6】
前記弁体が、円錐状の斜面と端面とからなる円錐体をなす先端部と、該先端部に対して軸線方向に一体をなす軸体とからなり、該円錐体の先端が弁体の軸線に一致するように加工されていると共に、前記端面が軸体に対して直角になるように加工されていることを特徴とする請求項1に記載のアンロード弁。
【請求項7】
前記弁体の先端部と当接する前記パイロットピストンの当接面が該弁体の軸線に対して直角な平面を形成していることを特徴とする請求項6に記載のアンロード弁。
【請求項8】
前記円錐体の先端の同芯度が0.02mm以下であると共に、円錐体の端面の直角度が0.03mm以下であり、前記パイロットピストンの当接面の直角度が0.03mm以下であり、前記調整ばねがコイル状体をなし、該コイル状体の端面の直角度が全長の0.5%以下であることを特徴とする請求項7に記載のアンロード弁。
【請求項9】
前記パイロットピストンの当接面の中央に、前記円錐体の先端が摺接する斜面を有する凹部が設けられ、該円錐体の先端が該凹部の斜面に沿って弁体の軸線位置に保持されながら凹部に受け入れられるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のアンロード弁。
【請求項10】
請求項6に記載のアンロード弁の加工方法において、
前記円錐体の斜面と先端とを同時研削可能な研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、該円錐体の先端が弁体の軸線に一致するように加工し、
円錐体の端面と軸体とを互いに直交する研削面を有する研削砥石を用いて同時に研削加工して、円錐体の端面と軸体とを互いに直交するように加工することを特徴とするアンロード弁の加工方法。
【請求項11】
前記円錐体の先端の同芯度が0.02mm以下で、円錐体の端面の直角度が0.03mm以下となるように研削加工することを特徴とする請求項10に記載のアンロード弁の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21633(P2012−21633A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161997(P2010−161997)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】