説明

イオンビーム治療装置及びそのベッド位置決め方法

【課題】ベッドの位置決めに要する時間を短縮できる、イオンビームを用いる治療装置を提供する。
【解決手段】イオンビームを用いる治療装置は、X線管を備えたイオンビーム照射装置を設置した回転ガントリーを有する。複数のX線検出器を有するX線検出装置が、回転ガントリーの回転軸方向に移動可能に設置される。患者が載ったベッドが、照射装置のイオンビーム経路の延長線上に患部がほぼ位置するまで、移動される。X線管がイオンビーム経路に位置され、X線検出装置がその延長線上に位置される。回転ガントリーの回転に伴って、X線を放出するX線管及びX線検出装置が患者の周囲を旋回する。そのX線は、患者に照射され、患者を透過し、X線検出器で検出される。X線検出器から出力された信号に基づいて患者の断層像情報が作成される。この断層像情報を用いてベッドの位置決め情報が作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を用いる治療装置及び患者ベッドの位置決め方法に係り、特に、陽子及び炭素イオン等のイオンビームを患部に照射する治療装置及びベッド位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの患者の患部に照射目標中心を設定して陽子、炭素イオン等のイオンビームを照射する治療方法が知られている。この治療に用いるイオンビーム治療装置は、加速器及びビーム輸送系からなるビーム発生装置、及び回転ガントリーに設置されたビーム照射装置を備えている。加速器で加速されたイオンビームは、ビーム輸送系を経てビーム照射装置に達し、このビーム照射装置によってモニタされかつ患者の患部の形に合うよう整形される。陽子、炭素ビーム等のイオンビームは、ビーム粒子が停止するに直前にエネルギーの大部分を放出する特性を有している(その結果得られる照射線量分布の形はブラッグピークと呼ばれている)。粒子線治療装置は、この特性を利用し、イオンビームの起動エネルギーを選択することでイオンビームを照射目標で停止させてエネルギーの大部分を患部に放出する。
【0003】
イオンビームを照射する前に、照射線量が患部で最大となりかつ正常な組織を傷つけないように、ビーム照射装置に対して患部が正しく配置されなければならない。
【0004】
このため、患者ベッド位置決め装置によって患者ベッドの位置決めを行う(例えば、USP5,825,845号(特表2000-510023号公報)参照)。その患者ベッド位置決め装置を用いてビーム照射装置に対する患者の位置決めを確実に行うため、予め、患者の体における特定の位置決めポイント(つまり、骨格上のランドマーク)に対する照射目標の位置が直交する2方向の2つの画像によって決定される。
【0005】
イオンビームの照射に先立って、X線源がビーム照射装置内でビーム経路上の位置に挿入され、ビーム経路の延長線上でベッドに横たわった患者の反対側にX線受像器(複数のX線検出器)が挿入される。X線受像器は、患者のX線透過画像を生成する。ビーム経路の延長線上にあるアイソセンタに患部を位置決めさせるために、X線画像における特定の位置決めポイントの各々からのX線ビーム中心までのオフセット距離と、DRR上における同じ特定の位置決めポイントからアイソセンタまでのオフセット距離とを用いて、患者ベッドのビーム照射装置に対しての移動方向及び移動距離を求める。次いで、この位置決め方向及び移動距離に基づいて患者ベッドの位置決め制御を行い、患者を位置決めする。
【0006】
X線CTで予め(位置決め処理前に)得られた断層像から作成された参照画像(基準画像)、及びX線源及びX線受像器によって得られた直交する2方向の現在のX線画像を用いて、イオンビームの照射装置に対する患部の位置決めのためのベッドの移動量を算出することが、USP5,039,867号(特開平1−151467号公報、特開平1−209077号公報)のコラム8、37行からコラム9、66行(特に(1a)〜(1h))、及び図3,4,5に記載されている。また、USP5,039,867号は、コラム9、67行からコラム11,18行(特に(2a)〜(2g))、図6に、垂直なビーム照射装置のビーム軸上でビーム照射装置の下方にX線CTを配置し、このX線CTで得られた断層像(現在断層像)と、別のX線CTで治療計画前に得られた断層像(基準断層像)を用いてベッドの移動量を算出することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】USP5,825,845号
【特許文献2】USP5,039,867号
【特許文献3】USP6,094,760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
USP5,825,845号、及びUSP5,039,867号のコラム8、37行からコラム9、66行に記載された位置決めでは、X線放出時にはX線源の位置が一点に保持されており、その固定された(後退可能であるが)X線源から放出されて患者の患部を透過したX線ビームでX線画像が作成される。このため、本来は3次元的な存在である患者体内の患部形状や位置に関する情報(以下、単に位置情報という)を、鮮明かつ正確に得るのは容易ではなかった。
【0009】
これに対し、USP5,039,867号のコラム9、67行からコラム11,18行に記載された位置決めでは、X線CT技術を用いて患部を含む三次元の現在断層像を作成できる。このため、USP5,825,845号に記載されたX線画像を用いた位置決めよりも、現在断層像及び基準断層像を用いることによってより精度の高いベッドの位置決めを行うことができる。
【0010】
ビーム照射装置の回転とUSP6,094,760号(特開平11−313900号公報)の図1、2、11に記載されている水平方向におけるベッドの位置決めとを組み合わせ、イオンビームの患部への照射方向がより自由に設定できることが必要な場合がある。しかしながら、回転ガントリーに設置されているビーム照射装置を用いてそのような目的を達成する場合には、USP5,039,867号のようにX線CTと得られた現在断層像を用いてのベッドの位置決めは、ベッドの位置決めに要する時間が長くなり、患者1人当りの治療時間を増大させることにつながる。すなわち、粒子線治療装置の患者が横たわっているベッドをUSP6,094,760号に記載する移動装置を用いてX方向、Y方向及びZ方向に移動させ、更に水平方向に回転させる。その後、そのベッドの位置を保持したまま、患部を含む現在断層像が得られるように、ビーム照射装置のビーム経路の延長線上の位置までX線CTを移動する。このとき、そのベッドはX線CT内に挿入された状態にある。X線CTによる撮影が終了した後、X線CTをビーム照射装置からイオンビームの照射に支障のない位置まで移動させる。このようなX線CTの設定及び退避のための移動は、ベッドの位置決めに要する時間を増大させる。特に、ベッドを移動させないでX線CTを移動させてベッドをX線CT内に挿入させ、ビーム経路の延長上の位置にX線CTを設定することは困難であり長い時間を要する。更に、X線CTのアイソセンタは必ずしも回転ガントリーのアイソセンタと一致しないため、X線CTにより得られた画像を回転ガントリーのアイソセンタ回りの座標の画像に変換することが必要となる。これもまた患者に対する治療の準備に要する時間を長期化させる。
【0011】
本発明の目的は、治療照射野内で目標部位の正確な位置決めを行うための患者ベッドの位置決めに要する時間を短縮できるイオンビームを用いる治療装置及びベッド位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明の治療装置はイオンビームを用いた従来の治療目的のためだけではなく、患者ベッドを位置決めするための正確な位置決め情報を生成する三次元画像情報を得るための回転ガントリーを備えている。治療する患部にイオンビームを照射するためのビーム照射装置が設けられた回転ガントリーはX線発生装置を備え、このX線発生装置は、イオンビーム照射のビーム経路の位置まで移動可能であり、回転ガントリーの回転に伴って回転ガントリーの回転軸の周りを旋回し、回転ガントリーの複数の回転角でX線を発生する。また、回転ガントリーはX線検出装置(複数のX線検出器)を備え、このX線検出装置はX線発生装置から放出されたX線を検出してX線検出信号を出力し、回転ガントリーの回転に伴ってその回転軸の周りを旋回する。
【0013】
本発明では、回転ガントリーに備えられたX線発生装置とX線検出装置の両方が回転ガントリーの種々の回転角で作動され、X線検出装置から出力されたそれぞれのX線検出信号を基に得られた情報を用いて、照射対象の三次元断層像情報を作成するものであり、ベッド位置決め用のX線CTをビーム経路の位置まで移動させ、撮影終了後に、照射対象へのイオンビームの照射に支障のない位置までそのX線CTを退避させる必要がない。また、上記別個のX線CTを用いる場合に必要であったX線画像又は照射対象座標の変換を行う必要がない。その結果、ベッドの位置決めに要する時間を短縮できかつ患部の位置決め精度が向上する。
【0014】
好ましくは、X線発生装置をビーム照射装置に設け、X線発生装置をビーム経路内の第1位置とビーム経路から離れた第2位置との間を移動するように構成することが望ましい。これによって、X線発生装置の第1位置と第2位置との間の移動が容易になり、X線発生装置の回転ガントリーへの取り付け構造を単純化できる。
【0015】
好ましくは、治療装置は、第1断層像情報、及び照射対象に対する治療計画時に得た照射対象の第2断層像情報を用いて、ベッドの位置決め情報を生成する位置決め情報生成装置、及びその位置決め情報を用いてベッドの移動を制御するベッド移動制御装置を備えると良い。これにより置決め情報生成装置で生成した位置決め情報を用いて、ベッド移動制御装置によりベッドの位置決めを制御できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、治療照射野を患部に一致させるための患者ベッドの位置決めに要する時間を短縮することができ、かつ同時に位置決め精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な一実施例である放射線治療装置を、図1乃至図11を用いて説明する。本実施例の放射線治療装置である治療装置1は、ビーム発生装置2、回転ガントリー3(図3)、ビーム照射装置4、治療台5(図2)及びベッド位置決め装置6(図5)を備える。ベッド位置決め装置6は、X線源装置(X線発生装置)39、撮影装置40、X線源制御装置41及び撮影部移動制御装置42を備える。
【0018】
本実施例の放射線治療装置は、がん治療装置である。ビーム発生装置2は、イオン源(図示せず)、前段加速器7及びシンクロトロン8を有する。イオン源で発生したイオン(例えば、陽イオンまたは炭素イオン)は前段加速器(例えば直線加速器)7で加速される。このイオンビーム(例えば陽子ビーム)は前段加速器7からシンクロトロン8に入射される。本実施例ではイオンビームとして陽子ビームが用いられる。そのイオンビームはシンクロトロン8で加速され、設定エネルギーまでに高められた後、出射用デフレクタ9から出射される。
【0019】
シンクロトロン8から出射されたイオンビームは、ビーム輸送系10を経て、イオンビームを患者に照射する装置であるビーム照射装置4に達する。ビーム照射装置4、及びビーム輸送系10の一部である逆U字状のビーム輸送装置11は回転ガントリー3に設置され(図3)、回転ガントリー3と共に回転する。イオンビームはビーム輸送装置11を通ってビーム照射装置4の出射口4aから治療台5の治療用ベッド(以下、ベッドという)13に横たわっている患者14の患部15(図8)に照射される。
【0020】
回転ガントリー3は、図3に示すように、フロントリング16及びリアリング17を有する円筒状の回転胴(回転体)12を備える。回転胴12の一端部に設けられたフロントリング16は、回転可能な複数のサポートローラ18Aによって支持される。サポートローラ18Aは、回転ガントリー設置領域(建屋基礎)19に設置された支持装置20Aのロール支持部材21に取り付けられる(図4)。回転胴12の他端部に設けられて外径がフロントリング16と同じであるリアリング17も、支持装置20Bのロール支持部材(図示せず)に回転自在に取り付けられた複数のサポートローラ18Bによって支持される。これら複数のサポートローラ18Bのうちの1つの回転軸には第1モータ23が連結されている。また、回転ガントリー3の回転角は、フロントリング16を支持する複数のサポートローラ18Aのうちの1つの回転軸に連結された角度検出計24によって測定される。
【0021】
回転胴12内には図3及び図4に示すように粒子線治療用照射室25が設けられる。
【0022】
治療台5は、図6に示すように、ベッド13、X方向駆動機構33、Y方向駆動機構34、上下方向駆動機構35及び回転駆動機構36を有するベッド駆動装置37を備える。X方向駆動機構33は治療台取付領域38に設置される。X方向駆動機構33及び上下方向駆動機構35は回転胴12の外側に設けられる。上下方向駆動機構35はX方向駆動機構33の上に、Y方向駆動機構34は上下方向駆動機構35の上に、それぞれ設置される。ベッド13は回転駆動機構36の上に設置され、かつベッド駆動装置37によって支持される。
【0023】
治療用ベッド13はX方向駆動機構33によりフロントリング16と平行で水平方向に伸びる関節軸37A(X軸)の方向に移動される。また治療用ベッド13は上下方向駆動機構35により関節軸37Aに対して垂直な関節軸37B(Z軸)の方向に移動される。さらに治療用ベッド13はY方向駆動機構34により関節軸37A(X軸)及び関節軸37B(Z軸)のそれぞれに対して直角で回転胴12の回転軸の方向に伸びる関節軸37C(Y軸)の方向に移動される。すなわち、治療用ベッド13はY方向駆動機構34により治療ケージ31内に出し入れされる。また、治療用ベッド13は回転駆動機構36により関節軸37C(Y軸)に対して垂直な関節軸37D(ψ軸)のまわりに回転される。
【0024】
ベッド位置決め装置6の構成を、図3〜図5を用いて説明する。ベッド位置決め装置6は、図3に示すように、X線源装置(X線発生装置)39、撮影装置40、X線源制御装置41及び撮影部移動制御装置42を備える。なお、X線源装置39はビーム照射装置4内に設けられ、撮影装置40は回転胴12の内面に固定される。
【0025】
X線源装置39は、図7A及び図7Bに示すように、開口部43が形成された移動台車44及びX線管45を有する。移動台車44はビーム照射装置4内に設置されたガイドレール46A,46B上を移動する。X線源移動装置47は、移動台車44及び移動台車44に設けられた第2モータ(図示せず)を有する。第2モータの駆動により移動台車44が移動され、X線管45がビーム照射装置4内におけるイオンビーム経路の中心軸(ビーム軸という)上の第1位置とイオンビーム経路を外れた第2位置との間を移動する。図4に示すX線管45は第1位置上に位置する。撮影装置40は、ガイド部材48、透視画像撮影部49、撮影部移動装置50を備える。ガイド部材48は、回転胴12の軸方向に延びて配置され、一端部が支持部材51によって回転胴12の内面に固定される。撮影部保持部材52がガイド部材48の一面に取り付けられる。撮影部移動装置50が、ガイド部材48の上記一面に固定され、撮影部保持部材52に連結される。撮影部移動装置50は撮影部保持部材52を含んでいる。このように構成される撮影装置40とX線源装置39(すなわちビーム照射装置4)とは、回転胴12の回転軸を挟んで対向するように配置されている。
【0026】
開口部53は、隔壁32に形成されており、回転胴12の回転軸の周囲に配置される(図4)。図4に示すように、撮影装置40の撮影部保持部材52及び透視画像撮影部49は、この開口部53内を通過して治療ケージ31内に達する。
【0027】
X線透視画像撮影装置54の詳細構成を図5により説明する。X線透視画像撮影装置54は、X線検出装置(X線検出装置)55,複数の信号増幅器56,複数の信号処理装置57及び画像情報作成装置(断層情報作成装置)58を有する。X線検出装置55は透視画像撮影部49の支持部材(図示せず)に設置される。X線検出装置55は、ビーム照射装置4から見て、X方向(図5中紙面に垂直な方向)に一列及びY方向(回転胴12の回転軸方向、すなわち図5中上下方向)に複数個が密接した状態で配置された、X線を検出するシンチレータ、半導体などのX線検出器59を有する。X線検出器59の、ビーム照射装置4に対向するX線入射面が、例えば、一辺がおよそ1.5mmの正方形となっている。複数の検出器59が、Y方向において、最大の照射野サイズの幅をカバーするように例えば50cmの幅に互いに接近して配置される。検出器59は、例えばY方向に約330個、配置されている。検出器59はX方向に複数列(例えば2〜3列)配置しても良い。信号増幅器56及び信号処理装置57は、検出器59ごとに一つずつ設置され、直列に該当する半導体検出器59に接続される。各信号処理装置57から出力されたX線強度の情報は、画像情報作成装置58に伝えられる。X線検出装置55、複数の信号増幅器56及び複数の信号処理装置57は透視画像撮影部49内に設置され、画像情報作成装置58は回転ガントリー3から離れた位置(例えば、制御室)に設置される。
【0028】
ベッド位置決め装置6は、図5に示すように、上記した構成以外に、図示しない入力手段(キーボード,マウス等)を有する位置決めデータ生成装置(演算処理装置)60,医療画像アーカイブサーバ61,ベッド制御装置62、及びディスプレイ装置63A,63Bを備える。位置決めデータ生成装置60,医療画像アーカイブサーバ61,ベッド制御装置62及びディスプレイ装置63A,63Bは上記した制御室に設置されている。位置決めデータ生成装置60は、画像情報作成装置58,医療画像アーカイブサーバ61,ベッド制御装置62及びディスプレイ装置63A,63Bにそれぞれ接続される。ベッド制御装置62に接続された、入力装置及び表示装置を有する小型のペンダント(図示せず)は、治療ケージ31内において持ち運び可能に設けられている。
【0029】
以上のような構成である本実施例の放射線治療装置における患者14の位置決め(ベッド13の位置決め)について、説明する。
【0030】
まず、治療台5上の患者14に対するX線CT撮影を行う。最初に、患者14が横たわった治療用ベッド13を、治療ケージ(治療室)31内の所定の位置まで移動させる。この治療用ベッド13の移動は、ベッド制御装置62による制御によって行われる。すなわち、治療ケージ31内にいる操作者(例えば放射線治療士(radiation therapist))は、患者14のおおよその治療対象位置(イオンビームを照射する患部15の位置)をペンダントの表示装置(図示せず)に表示された治療計画情報に基づいて知ることができる。このため、操作者は、その治療計画情報を基に、ペンダントの入力装置を用いてベッド制御装置62に治療用ベッド移動指令を入力する。ベッド制御装置62は、その移動指令に基づいて、ベッド駆動装置37,具体的にはX方向駆動機構33,Y方向駆動機構34,上下方向駆動機構35及び回転駆動機構36のそれぞれの駆動を制御する。これらの駆動により、患者14の患部15がビーム軸の延長線上付近で回転ガントリー3の回転軸(アイソセンタ)64(図8)付近に位置される。なお、上記ペンダントは撮影部移動制御装置42及びX線源制御装置41にも接続されている。
【0031】
次に、患部15に対向する位置まで透視画像撮影部49を移動させるために、撮影部移動制御装置42にペンダントより透視画像撮影部49の移動指令を入力する。この撮影部移動制御装置42の制御によって、撮影部移動装置50は撮影部保持部材52をガイド部材48に沿って移動させる。透視画像撮影部49が、開口部53内を通る撮影部保持部材52の移動によって、ベッド13の下方でビーム照射装置4のビーム軸の延長線の真下の位置に達する。このとき、操作者はペンダントからの移動指令の入力を停止する。これにより、透視画像撮影部49に設置されたX線検出装置55は、ベッド13上の患者14の患部15の下方に位置される。すなわち、X線検出装置55、具体的には複数の放射線検出器59が、患部15を透過するX線を入射できる位置に配置される。
【0032】
また、操作者は、上記のペンダントを用いてX線源制御装置41に、X線源装置39の移動指令を入力する。移動指令を入力されたX線源制御装置41の制御によって、X線源移動装置47は移動台車44をX線管45と共にガイドレール46A,46Bに沿って移動させる。これにより、X線管45がビーム照射装置4内でビーム経路外の第2位置からビーム経路上の第1位置に到達する。
【0033】
このようにして操作者による大まかな位置調整が済むと、イオンビームの進行方向に整合して配置されたX線管45とX線検出装置55との間に患者14を位置させた状態で、回転ガントリー3を回転させつつ患者14の患部15のX線CT撮影を行う。
【0034】
本実施例での回転ガントリー3を用いたX線CT撮影(以下、現在X線CT撮影という)を具体的に説明する。前述の大まかな調整が終了した後、操作者は、治療ケージ31から退出して前述した制御室(図示せず)に入る。操作者が制御室内に設置されたコンソール(図示せず)に設けられた入力装置(図示せず)を操作することによって、X線照射指令がX線源制御装置41に、第1ガントリー回転指令がガントリー制御装置(図示せず)にそれぞれ出力される。
【0035】
X線源制御装置41は入力したX線照射指令に基づいてX線管45よりX線65を患者14の患部15の方向に向かって放出させる(図4及び図8)。X線65は、前述した一辺50cmの正方形内で格子状に配置された検出器59の全て又はその大部分にX線が入射できるように、コーン状になっている。ガントリー制御装置は入力した回転指令に基づいて第1モータ23を駆動させる。これにより、回転ガントリー3が回転し、X線管45を備えた照射装置4が、患者14が横たわっているベッド13の周囲を旋回する(図8)。回転ガントリー3、つまり回転胴12の回転角が、角度検出計24によって検出される。ビーム照射装置4が旋回している間、X線管45から患者14に向かってX線65が照射される。このX線65は、患者14の患部15を透過した後、透視画像撮影部49に設けられたX線検出装置55の各検出器59で検出される。X線を検出した各検出器59はX線検出信号(電気信号)を出力する。各検出器59から出力されたX線検出信号は、対応する信号増幅器56で増幅され、信号処理装置57で設定時間間隔で積算される。この積算によりX線強度情報が得られる。そして、これらのX線強度情報は画像情報作成装置58に入力される。なお、回転ガントリー3が1回転してビーム照射装置4が元の位置に戻ると、前述のコンソールから回転停止指令がガントリー制御装置に入力されると、第1モータ23の駆動が停止されて回転ガントリー3の回転が停止される。また、そのコンソールからX線源制御装置41にX線照射停止指令が入力されると、X線管45からのX線放出が停止される。以上に述べた回転ガントリー3を回転させてのX線CTでは、回転ガントリー3の一回転に要する時間は約1分である。
【0036】
現在X線CT撮影終了後、操作者は制御室内に設置されたコンソールから撮影部後退指令を入力する。撮影部移動制御装置42は、撮影部後退指令に基づいて撮影部移動装置50を駆動させて、透視画像撮影部49を隔壁32付近まで移動させる。
【0037】
画像情報作成装置58は、各信号処理装置57からのX線強度情報を入力すると共に、図3に示す回転ガントリー3の角度検出計24から出力された回転角の測定値を入力する。回転胴12の回転軸を中心とし円筒状の回転胴12の回転方向に設定角度(例えば0.5度)ごとに区切った設定角度領域が設定されている。これらの設定角度領域は、画像情報作成装置58に記憶されている。その設定角度は、他の角度、例えば0.1度にしてもよい。画像情報作成装置58は、入力した回転角測定値に基づいて、回転ガントリー3の回転中にX線管45が位置している設定角度領域をそれぞれ認識する。これは、円筒状の回転胴12の周方向におけるX線管45の位置を認識することである。X線管45の位置が定まれば、その時点における、それに対向して位置する各検出器59の位置も定まる。画像情報作成装置58は、X線管45の位置情報、この位置情報に対応する各検出器59の位置情報、及び該当する位置で各検出器59により検出したX線の各強度情報を用いて、X線管45と各検出器59との間の線減弱係数を求める。更に、この線減弱係数を基に、アイトリプルイー トランザクションオン ニュークリア サイエンス(IEEE Transaction on Nuclear Science)NS−21巻の228〜229頁に記載されているフィルタードバックプロジェクション法(Filtered Back Projection Method)などを用いて患者内部における各小容積部分の線減弱値を求め、それらの値をCT値に変換する。画像情報作成装置58は、得られた各CT値を用いて、患者14の患部15を含む断層像情報(以下、現在断層像情報という)を作成する。回転胴12の軸方向に約330個の半導体検出器59が配置されるため、その軸方向において50cmの幅の三次元の現在断層像情報を作成することができる。そして、この現在断層像情報は、位置決めデータ生成装置60に入力される。
【0038】
ここで、医療画像アーカイブサーバ61は、患者14に対する事前(治療計画立案前)のX線CT撮影(基準X線CT撮影という)により得られた三次元の断層像情報(以下、基準断層像情報と称する)を図示されていない治療計画装置の記憶装置から予め取り込んで記憶している。
【0039】
回転ガントリー3の回転が停止して現在X線CT撮影が終了した後、操作者は、治療ケージ31内に入り、ペンダントを操作してガントリー制御装置に第2ガントリー回転指令を入力する。ガントリー制御装置は、この指令を受けて、治療を受ける患者の治療計画情報の1つである回転ガントリー3の角度情報(イオンビームの照射方向の情報)を用いてビーム照射装置4が所定の角度になるまで回転ガントリー3を回転させる。画像情報作成装置58における現在断層像情報の作成処理は、回転ガントリー3のその回転操作と並行して行われる。
【0040】
位置決めデータ生成装置60は、現在断層像情報及び基準断層像情報を用いて、X−Y平面(X方向及びY方向の二軸によって確定される面)での位置決めデータ(第1位置決めデータ)、及びX−Z平面(X方向及びZ方向の二軸によって確定される面)での位置決めデータ(第2位置決めデータ)を作成する。これらの位置決めデータの作成を、図9を用いて具体的に説明する。三次元画像情報である基準断層情報を用いて、治療計画で設定されたアイソセンタ(患部に相当)を含むX−Y平面における二次元画像情報である第1基準画像情報(X−Y平面基準画像情報という)、及びアイソセンタを含むX−Z平面における二次元画像情報である第2基準画像情報(X−Z平面基準画像情報という)を作成する(ステップ70)。三次元画像情報である現在断層情報を用いて、基準断層像情報と同じX−Y平面における二次元画像情報である第1現在画像情報(X−Y平面現在画像情報という)、及び基準断層像情報と同じX−Z平面における二次元画像情報である第2現在画像情報(X−Z平面現在画像情報という)を作成する(ステップ71)。現在X線CT撮影でも、患者は基準X線CT撮影時に用いられる患者固定具(イオンビームの照射時にも使用)でベッド上に固定されているため、基準画像情報と同じ断面での現在画像情報の断面画像情報を作成することは容易である。
【0041】
X−Y平面現在画像情報及びX−Y平面基準画像情報をディスプレイ装置63Aに、及びX−Z平面現在画像情報及びX−Z平面基準画像情報をディスプレイ装置63Bに出力する(ステップ72)。なお、上記X−Y平面及びX−Z平面現在画像情報はUSP5,039,867号(特開平1−209077号公報)に記載されたX−TV画像に該当し、X−Y平面及びX−Z平面基準画像情報はUSP5,039,867号(特開平1−209077号公報)に記載された参照画像に該当する。
【0042】
位置決めデータ生成装置60は、X−Y平面現在画像情報及びX−Y平面基準画像情報を用いて、X−Y平面におけるベッド位置決めデータであるX方向及びY方向におけるベッド13の各移動量、及びベッド13の回転角を算出する(USP5,039,867号図3)(ステップ73)。具体的には、USP5,039,867号のコラム8〜9の(1d)に記載されているように、第1基準画像に付されたランドマークM1、M2、M3、及びランドマークM1、M2、M3に対応した位置で第1現在画像に付されたランドマークN1、N2、N3を用いて、X方向及びY方向におけるベッド13の各移動量(ずれ量)を算出する。ベッド13のψ軸周りの回転角は、X−Y平面基準画像情報及びX−Y平面現在画像情報のそれぞれのランドマークの位置に基づいて算出される。
【0043】
X−Z平面現在画像情報及びX−Z平面基準画像情報を用いて、Z−X平面におけるベッド位置決めデータであるZ方向におけるベッド13の移動量を算出する(ステップ74)。Z方向におけるベッド13の移動量は、USP5,039,867号のコラム9、51〜58行に記載されているように、ステップ73と同様に算出される。X−Y平面において算出された各移動量及びZ−X平面において算出された移動量が、ディスプレイ装置63A,63Bに出力される(ステップ75)。次に、現在画像情報を移動させる(ステップ76)。ディスプレイ装置63Aに表示されたX−Y平面現在画像情報がX−Y平面位置決めデータに基づいて移動され、ディスプレイ装置63Bに表示されたX−Z平面現在画像情報がX−Z平面位置決めデータに基づいて移動される。操作者は、各ディスプレイ装置を見てX−Y平面現在画像情報がX−Y平面基準画像情報と一致し、X−Z平面現在画像情報がX−Z平面基準画像情報と一致しているとき、図示されていない入力装置から「YES」を入力する。X−Y平面現在画像情報とX−Y平面基準画像情報の一致、及びX−Z平面現在画像情報とX−Z平面基準画像情報の一致の少なくとも一方が達成されないとき、操作者はその入力装置から「NO」を入力する。位置決めデータ生成装置60は、「YES」が入力されたとき、X−Y平面及びX−Z平面現在画像情報と対応するX−Y平面及びX−Z平面基準画像情報との一致を認識する(ステップ76)。そして、算出された各移動量及び回転角の情報がベッド制御装置62に出力される(ステップ79)。
【0044】
「NO」が入力されると、位置決めデータ生成装置60は、X−Y平面及びX−Z平面現在画像情報と対応するX−Y平面及びX−Z平面基準画像情報との一致が達成していないことを認識する。このときには、ステップ78の処理が実行される。操作者は、「NO」を入力すると共に、マウス(図示せず)による操作によって、ディスプレイ装置63Aの画面上でX−Y平面現在画像情報を移動させてX−Y平面基準画像情報に、ディスプレイ装置63Bの画面上でX−Z平面現在画像情報を移動させてX−Z平面基準画像情報にそれぞれ合わせる。ステップ78は、X−Y平面及びX−Z平面現在画像情報のそれぞれの移動に基づいて、X方向、Y方向およびZ方向におけるベッド13の各移動量、及びψ軸周りの回転角を算出する。ステップ78で算出された各情報がベッド制御装置62に出力される(ステップ79)。
【0045】
ベッド制御装置62は、入力したX方向、Y方向及びZ方向におけるベッド13の各移動量、及び回転角に基づいて、ベッド駆動装置37を制御し、ベッド13を移動させる。すなわち、X方向における移動量にてX方向駆動機構33が駆動されてベッド13がX方向に移動され、Y方向における移動量に応じてY方向駆動機構34が駆動されてベッド13がY方向に移動され、Z方向における移動量に応じて上下方向駆動機構35が駆動されてベッド13がZ方向に移動され、回転角に応じて回転駆動機構36が駆動されてベッド13がφ軸を中心に回転される。このような各駆動機構の駆動によりベッド13がビーム照射装置4に対して位置決めされ、患者14の患部15が照射装置4のビーム軸及び回転胴12の回転軸(アイソセンタ64)と一致する。
【0046】
なお、ベッド13の位置決めデータの算出には、ディスプレイ装置63A,63Bに表示された各現在画像情報及び各基準画像情報内のそれぞれに2次元座標を有する1つ以上の点を指定し、これらの点の位置の差が最小になるように第1及び第2現在画像情報をアフィン変換する方法を用いてもよい。また、このような際には、現在画像情報と基準画像情報の一致具合を視覚的に分かりやすくするために、現在及び基準画像情報を1つのディスプレイ装置に重ねて表示してもよい。
【0047】
このようにして、治療ベッド13の位置決めが完了すると、後退指令を入力されたX線源制御装置41の制御によって、X線源移動装置47は移動台車44をX線管45と共にガイドレール46A,46Bに沿って移動させて、X線管45をビーム照射装置4内で第1位置から第2位置に移動させる。そして、ビーム照射装置4の出射口4aから出射されたイオンビームが、位置決めされたベッド13上の患者14の患部15に照射される。
【0048】
以上述べた本実施例は、X線管45、放射線検出装置55、回転ガントリー3及び画像情報作成装置58を含む断層像撮影装置であるX線CTを備えている。このため、本実施例は、このX線CTでベッド位置決めに用いる現在断層像情報を得ることができる。これは、USP5,039,867号のコラム9、67行からコラム11,18行及び図6に記載された従来技術のように、別個のX線CTを用い、このX線CTをビーム照射装置4のイオンビーム経路の延長線上に配置する必要がない。すなわち、本実施例は、X線CTを治療台取付領域38より治療ケージ31内に搬入してビーム照射装置4のビーム経路の延長線上に位置するようにして移動床28に置き、撮影終了後に、X線CTを治療ケージ31内から治療台取付領域38まで搬出する必要がない。また、従来技術における回転ガントリーとX線CT間での画像及び位置情報を変換する必要がない。これは、本実施例におけるベッドの位置決めに要する時間を、別個のX線CTを用いる従来技術の場合と比較して5分以上短縮することにつながる。ベッドの位置決めに要する時間の短縮は、患者1人当りの治療のために拘束する時間を短縮することになる。
【0049】
本実施例は、移動台車44によりX線管45をイオンビーム経路まで移動させ、放射線検出装置55を撮影部移動装置50によりイオンビーム経路の延長線上まで移動させることによって、簡単にX線CTによる撮影を行うことができる。
【0050】
本実施例は、照射装置4と放射線検出装置55との間にベッド13が位置するため、X線管45及び放射線検出装置55が、ベッドの位置決めのためにベッド13の移動の障害となるケースが著しく低減される。
【0051】
本実施例では、照射装置4を、X線源装置39を回転ガントリー3に設置する保持部材として利用しているために、別途、X線源装置39を回転ガントリー3に設置する保持部材を設ける必要がない。これは、回転ガントリー3の重量の増大を抑制し、回転ガントリー3を回転させる第1モータ23の容量の増大を抑制する。また、その保持部材を、別途、設ける必要がないので、回転ガントリー3内の構造を単純化できる。
【0052】
前述した従来技術を適用した場合は、X線CTを移動床28上に置く場合には、X線CTの重量に耐えるように移動床28の厚みを厚くする必要がある。本実施例は、移動床28上にX線を置く必要がないため、移動床28の厚みを薄くでき、移動床28の全重量を軽減できる。これは、第1モータ23の容量の軽減につながる。
【0053】
本実施例によれば、さらに、回転ガントリー3に位置決め用のX線を発生させるX線管45とその位置決め用のX線を入射してこれに応じた出力信号を出力する透視画像撮影部49とを設け、回転ガントリー3を回転しつつX線CT撮影を行い、得られた断層像情報から投影像情報を作成して治療計画立案時の投影像情報と比較することにより、患者14の患部15の位置を画定する。これにより、従来のように患者14を挟んで反対側に位置決めされた一対のX線源及びX線受信手段を互いのX線ビーム進路が直交するように2対設けそれぞれで得た2つの2次元的な患部像のみで患部15の位置を画定する場合に比べ、各回転方向からの投影像情報を有する断層像情報に基づいて患部15の位置を画定するので、正確に患部15の位置情報を得ることができる。その結果、上記従来手法のように患部15を完全に照射可能とするためイオンビームの照射範囲を実際の患部15より大きめにとる(=マージンをとる)必要がなくなり、患部15のみに正確にイオンビームを照射して正常な組織の損傷を防止することができる。
【0054】
位置決めデータ生成装置60においてベッド13の移動量(ずれ量)を算出する他の実施例を、図10を用いて説明する。
【0055】
位置決めデータ生成装置60は、医療画像アーカイブサーバ61から入力した基準断層像情報、及び画像情報作成装置58から入力した現在断層像情報を、1つのディスプレイ装置63Aに出力する(ステップ80)。これらの基準断層像情報及び現在断層像情報はディスプレイ装置63Aに表示される。なお、それらの三次元画像情報の表示方法としては、例えば三次元画像情報をそのまま表示するボリュームレンダリング表示や、閾値処理により断層像情報をサーフェスデータに変換したサーフェス表示等を用いる。
【0056】
操作者は、マウス(図示せず)による操作によって、ディスプレイ装置63Aの画面上で表示されている現在断層像を移動させて基準断層像に合わせる。ステップ81は、現在断層像の移動に基づいて、X方向、Y方向およびZ方向におけるベッド13の各移動量、及びψ軸周りの回転角を算出する。算出された位置決めデータであるX方向、Y方向およびZ方向におけるベッド13の各移動量、及びψ軸周りの回転角が、ディスプレイ装置63A(またはディスプレイ装置63B)に表示される(ステップ82)。位置決めデータ生成装置60は、現在断層像情報を移動させる(ステップ83)。ステップ80の状態でディスプレイ装置63Aに表示された現在断層像情報が、位置決めデータに基づいて移動される。操作者は、ディスプレイ装置63Aを見て現在断層像情報が基準断層像情報と一致しているとき、図示されていない入力装置から「YES」を入力する。現在断層像情報と基準断層画像情報が一致していないとき、操作者はその入力装置から「NO」を入力する。位置決めデータ生成装置60は、「YES」が入力されたとき、現在断層像情報と基準断層像情報との一致を認識する(ステップ84)。そして、算出された各移動量及び回転角の情報がベッド制御装置62に出力される(ステップ85)。「NO」が入力されると、位置決めデータ生成装置60は、現在断層像情報と基準断層像情報が一致していないことを認識し、ステップ81〜84の処理を繰り返す。ステップ84で現在断層像情報と基準断層像情報との一致を認識したとき、ステップ85の処理を実行する。
【0057】
ベッド制御装置62は、入力したX方向、Y方向及びZ方向におけるベッド13の各移動量、及び回転角に基づいて、前述したようにベッド駆動装置37を制御し、ベッド13をビーム照射装置4に対して位置決めする。
【0058】
位置決めデータの算出は、上記した断層像を移動操作する方法の他に、ディスプレイ装置63Aに表示された現在断層像情報及び基準断層像情報内のそれぞれに3次元座標を有する1つ以上の点を指定し、これらの点間の位置の差が最小になるように現在断層像情報をアフィン変換する方法を用いてもよい。
【0059】
本実施例の移動量の算出によれば、現在X線CT撮影で得られた現在断層像情報、及び基準X線CT撮影で得られた基準断層像情報と比較することにより患者14の患部15の位置を画定する。このように、三次元画像情報である現在断層像情報及び基準断層像情報を用いることにより、極めて精度の高い患部15(ベッド13)の位置決め情報を得ることが可能となる。本実施例で算出された位置決め情報は図9の処理で得られたその情報よりも精度が高くなり、結果としてベッド13の位置決め精度が向上する。
【0060】
位置決めデータ生成装置60においてベッド13の移動量(ずれ量)を算出する他の実施例を、図11を用いて説明する。本移動量の算出法は、図9及び図10に示す算出法を合せたものである。すなわち、図9に示すステップ70〜77の処理を実行する。ステップ76でX−Y平面及びX−Z平面現在画像情報と対応するX−Y平面及びX−Z平面基準画像情報との一致を認識したとき、ステップ79の処理が実行される。ステップ76でX−Y平面及びX−Z平面現在画像情報と対応するX−Y平面及びX−Z平面基準画像情報との一致が認識されないときには、図10に示すステップ80〜82の処理が実行され、ステップ82の後にステップ79の処理が実行される。ただし、ステップ80では、ステップ76の処理による移動後のX−Y平面及びX−Z平面現在画像情報の状態になるように、現在断層情報が、基準断層像情報と共にディスプレイ装置63Aに表示される。ステップ81では、ステップ80で表示された現在断層像情報を基準断層像情報に合せることによって、位置決め情報が求められる。
【0061】
ベッド制御装置62は、ステップ79の処理により入力したX方向、Y方向及びZ方向におけるベッド13の各移動量、及び回転角に基づいて、前述したようにベッド駆動装置37を制御し、ベッド13をビーム照射装置4に対して位置決めする。
【0062】
本実施例によれば、ステップ81の処理が行われることにより、図9の処理で得られる位置決め情報よりも精度が高い位置決め情報が得られる。また、二次元の現在画像情報及び基準画像情報を用いて位置決め情報を求めるため、三次元の現在断層像情報の移動距離を小さくできるため、三次元の現在断層像情報及び基準断層像情報を用いたベッドの移動量等の算出に用いるデータ容量を低減することができ、その結果、図10の処理に比べて位置決め情報を求めるのに要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例である治療装置の構成図である。
【図2】X線CT撮影時におけるX線管とX線透視画像撮影装置との位置関係を示す説明図である。
【図3】X線源装置とX線透視画像撮影装置(複数のX線検出器)とを備えた、図1の粒子線治療装置における回転ガントリーの回転胴の縦断面図である。
【図4】図3のIV-IV矢視図である。
【図5】図1の粒子線治療装置におけるベッド位置決め装置の概略構成図である。
【図6】図1の粒子線治療装置における治療台の斜視図である。
【図7A】図1に示すビーム照射装置に設けられたX線源装置の概略縦断面図である。
【図7B】図7AのX線源装置の平面図である。
【図8】X線CT撮影を行うX線照射時におけるX線管の動きを示す説明図である。
【図9】図5に示す位置決めデータ生成装置で実行されるベッドの移動量を算出する処理手順を示すフローチャートである。
【図10】位置決めデータ生成装置で実行されるベッドの移動量を算出する処理手順の他の実施例のフローチャートである。
【図11】位置決めデータ生成装置で実行されるベッドの移動量を算出する処理手順の他の実施例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
1 治療装置
2 ビーム発生装置
3 回転ガントリー
4 ビーム照射装置
5 治療台
6 ベッド位置決め装置
7 前段加速器
8 シンクロトロン
9 出射用デフレクタ
10,11 ビーム輸送系
12 回転胴
13 治療用ベッド
14 患者
15 患部
16 フロントリング
17 リアリング
18A,18B サポートローラ
19 回転ガントリー設置領域(建屋基礎)
20A,20B 支持装置
23 第1モータ
24 角度検出計
25 粒子線治療用照射室
28 移動床
31 治療ケージ
32 隔壁
33 X方向駆動機構
34 Y方向駆動機構
35 上下方向駆動機構
36 回転駆動機構
37 ベッド駆動装置
39 X線源装置(X線発生装置)
40 撮影装置
41 X線源制御装置
42 撮影部移動制御装置
44 移動台車
45 X線管
47 X線源移動装置
48 ガイド部材
49 透視画像撮影部
50 撮影部移動装置
51 支持部材
52 撮影部保持部材
53 開口部
54 X線透視画像撮影装置
55 X線検出装置(X線検出装置)
56 信号増幅器
57 信号処理装置
58 画像情報作成装置(断層情報作成装置)
59 X線検出器
60 位置決めデータ生成装置(演算処理装置)
61 医療画像アーカイブサーバ
62 ベッド制御装置
63A,63B ディスプレイ装置
64 回転軸(アイソセンタ)
65 X線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用のイオンビームを照射対象に照射するイオンビームを用いる治療装置において、
回転ガントリーと、
前記イオンビームを発生するビーム発生装置と、
前記回転ガントリーに設けられ、前記イオンビームを出射するビーム照射装置と、
X線を発生し、前記回転ガントリーに設けられて前記イオンビームが通るビーム経路の位置まで移動可能であり、前記回転ガントリーの回転に伴って前記回転ガントリーの回転軸の周りを旋回しかつ前記回転ガントリーの複数の回転角度でX線を放出するX線発生装置と、
前記X線発生装置から放出された前記X線を検出してX線検出信号を出力し、前記回転ガントリーに設けられ、前記回転ガントリーの回転に伴って前記回転軸の周りを旋回する複数のX線検出器と、
前記複数のX線検出器から出力されたそれぞれの前記X線検出信号を基に得られた各情報を用いて、前記照射対象の断層像情報を作成する断層情報作成装置とを備えたことを特徴とするイオンビームを用いる治療装置。
【請求項2】
前記X線発生装置は、前記回転ガントリーの回転に伴って前記回転ガントリーの回転軸の周りを旋回する前記ビーム照射装置に設置され、前記ビーム経路内の第1位置と前記ビーム経路から離れた第2位置との間を移動する請求項1記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項3】
前記ビーム照射装置は、前記第1位置と前記第2位置との間で前記X線発生装置を移動させる移動装置を有する請求項2記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項4】
前記照射対象を支持し、前記ビーム経路の延長線上への位置決めが可能なベッドを備えた請求項1記載の荷電粒子ビームを用いる治療装置。
【請求項5】
前記断層像情報、及び前記照射対象に対する治療計画時に得た前記照射対象の断層像情報を用いて、前記ベッドの位置決め情報を生成する位置決め情報生成装置と、前記位置決め情報を用いて前記ベッドの移動を制御するベッド移動制御装置とを備えた請求項4記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項6】
前記照射対象を支持し、前記ビーム経路の延長線上への配置が可能なベッドを備えた請求項2記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項7】
前記断層像情報、及び前記照射対象に対する治療計画時に得た前記照射対象の断層像情報を用いて、前記ベッドの位置決め情報を生成する位置決め情報生成装置と、前記位置決め情報を用いて前記ベッドの移動を制御するベッド移動制御装置とを備えた請求項6記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項8】
前記位置決め情報生成装置は、前記位置決め情報の生成を、三次元の前記断層像情報及び三次元の治療計画時に得た前記断層像情報を用いて行う請求項5記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項9】
前記ビーム照射装置の移動経路を挟んで配置される、前記回転ガントリー内に設置された回転可能な第1環状フレーム、及び前記ビーム照射装置の固定された第2環状フレームと、前記第1及び第2環状フレームにそれぞれ設けられた環状ガイドによってガイドされ、前記回転ガントリーの周方向に屈曲自在で、前記ビーム照射装置の旋回によって前記周方向に移動する移動床とを備え、前記ビーム照射装置は前記移動床によって囲まれて形成された空間内に挿入されており、前記複数のX線検出器は前記X線発生装置から放出された前記X線の検出を前記空間内で行う請求項2記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項10】
前記X線発生装置から放出されるX線が入射される位置に前記複数のX線検出器を位置させる検出部移動装置を備えた請求項1記載のイオンビームを用いる治療装置。
【請求項11】
治療用のイオンビームを照射対象に出射するビーム照射装置及びX線を放出するX線発生装置が設置された回転ガントリーを回転させることによって、前記X線を放出している前記X線発生装置を、前記照射対象を支持するベッドの周りに旋回させ、
前記回転ガントリーに設けられて前記回転ガントリーの回転と共に前記照射対象の周りを旋回している複数のX線検出器によって、前記照射対象を透過した前記X線を検出し、
前記複数のX線検出器から出力されたそれぞれのX線検出信号を基に得られた情報を用いて前記照射対照の断層像情報を作成することを特徴とする放射線断層撮影方法。
【請求項12】
前記ビーム照射装置に設けられた前記X線発生装置を、前記イオンビームが通るビーム経路の位置に移動させ、前記ビーム経路に位置する前記X線発生装置から前記X線を放出する請求項11記載の放射線断層撮影方法。
【請求項13】
治療用のイオンビームを照射対象に出射するビーム照射装置及びX線を放出するX線発生装置が設置された回転ガントリーを回転させることによって、前記X線を放出している前記X線発生装置を、前記照射対象を支持するベッドの周りに旋回させ、
前記回転ガントリーに設けられて前記回転ガントリーの回転と共に前記照射対象の周りを旋回している複数のX線検出器によって、前記照射対象を透過した前記X線を検出し、
前記複数のX線検出器から出力されたそれぞれのX線検出信号を基に得られた情報を用いて前記照射対照の断層像情報を作成することを特徴とするX線断層撮影方法。
【請求項14】
前記ビーム照射装置に設けられた前記X線発生装置を、前記イオンビームが通るビーム経路の位置に移動させ、前記ビーム経路に位置する前記X線発生装置から前記X線を放出する請求項13記載のX線断層撮影方法。
【請求項15】
イオンビームを照射対象に照射するビーム照射装置に設置されたX線発生装置を、前記イオンビームのビーム経路の位置まで移動させ、
前記ビーム経路に位置してX線を放出している前記X線発生装置、及び前記X線を検出する複数のX線検出器を、前記ビーム照射装置が設置される回転ガントリーを回転させることによって、前記照射対象を支持するベッドの回りを旋回させ、
前記照射対象を透過した前記X線を複数のX線検出器で検出し、
これらのX線検出器のそれぞれから出力されたX線検出信号を基に得られた各情報を用いて、前記照射対象の第1断層像情報を作成し、
前記第1断層像情報、及び前記照射対象に対する治療計画時に得た前記照射対象の第2断層像情報を用いて、前記ベッドの位置決め情報を生成し、
前記位置決め情報を基づいて前記ベッドを移動させることを特徴とするベッド位置決め方法。
【請求項16】
前記位置決め情報の生成は、三次元の前記第1断層像情報及び三次元の前記第2断層像情報を用いて行う請求項15記載のベッド位置決め方法。
【請求項17】
前記位置決め情報の生成は、前記第1断層像情報を基に作成した第1二次元画像情報及び前記第2断層像情報を基に作成した第2二次元画像情報を用いて行う請求項15記載のベッド位置決め方法。
【請求項18】
治療用のイオンビームを照射対象に出射するビーム照射装置及びX線を放出するX線発生装置が設置された回転ガントリーを回転させることによって、前記X線を放出している前記X線発生装置を、ベッドに載った前記照射対象の周りに旋回させ、
前記回転ガントリーに設けられて前記回転ガントリーの回転と共に前記照射対象の周りを旋回している複数のX線検出器によって、前記照射対象を透過した前記X線を検出し、
前記複数のX線検出器から出力されたそれぞれのX線検出信号を基に得られた情報を用いて作成された前記照射対象の断層像情報と、治療計画時に得た前記照射対象の断層像情報に基づいて前記ベッドを位置決めし、
前記ビーム照射装置から前記位置決めされたベッドに載った前記照射対象に前記イオンビームを照射することを特徴とするイオンビーム照射方法。
【請求項19】
回転ガントリーと、
前記回転ガントリーに設けられ、治療用のイオンビームを出射するビーム照射装置と、
前記回転ガントリーに設けられ、X線を発生するX線発生装置であって、前記イオンビームが通るビーム経路の位置まで移動可能であり、前記回転ガントリーの回転に伴って前記回転ガントリーの回転軸の周りを旋回しかつ前記回転ガントリーの複数の回転角度でX線を放出するX線発生装置と、
前記回転ガントリーに設けられた複数のX線検出器であって、前記X線発生装置から放出された前記X線を検出してX線検出信号を出力し、前記回転ガントリーの回転に伴って前記回転軸の周りを旋回する複数のX線検出器と、
前記複数のX線検出器から出力されたそれぞれのX線検出信号を基に得られた情報による照射対象の断層像情報と、治療計画時に得た前記照射対象の断層像情報に基づいてベッドを位置決めする制御装置とを備えたことを特徴とするベッド位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−239403(P2006−239403A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14372(P2006−14372)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(506025899)ザ ボード オブ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム (3)
【Fターム(参考)】