イオンビーム照射装置およびビーム均一性調整方法
【課題】 イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることなく、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させる。
【解決手段】 このイオンビーム照射装置は、ターゲット8近傍におけるイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタ14と、ターゲット位置よりも上流側におけるイオンビーム経路を挟んで相対向するようにy方向に並べて配置されていて互いに独立してx方向に可動の複数の可動遮蔽板16をそれぞれ有する可動遮蔽板群18a、18bと、それらを構成する各可動遮蔽板16を互いに独立してx方向に往復駆動する遮蔽板駆動装置22a、22bと、モニタ14による測定情報に基づいて遮蔽板駆動装置22a、22bを制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くして、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる遮蔽板制御装置24とを備えている。
【解決手段】 このイオンビーム照射装置は、ターゲット8近傍におけるイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタ14と、ターゲット位置よりも上流側におけるイオンビーム経路を挟んで相対向するようにy方向に並べて配置されていて互いに独立してx方向に可動の複数の可動遮蔽板16をそれぞれ有する可動遮蔽板群18a、18bと、それらを構成する各可動遮蔽板16を互いに独立してx方向に往復駆動する遮蔽板駆動装置22a、22bと、モニタ14による測定情報に基づいて遮蔽板駆動装置22a、22bを制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くして、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる遮蔽板制御装置24とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、進行方向と交差する面内におけるy方向(長手方向)の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい、いわゆるリボン状(これはシート状または帯状と呼ばれることもある。以下同様)の形をしたイオンビームをターゲットに照射して、例えばイオン注入等の処理を施すイオンビーム照射装置および当該イオンビームのy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法に関する。この明細書において、リボン状のイオンビームには、y方向の走査を経ることなくリボン状をしているイオンビームと、y方向の走査を経てリボン状をしているイオンビームとが含まれている。
【背景技術】
【0002】
上記のようなリボン状のイオンビームをターゲット(例えば半導体基板、ガラス基板等)に照射してターゲットにイオン注入等の処理を施す場合に、y方向における処理の均一性を高めるためには、ターゲットに照射されるイオンビームのy方向のビーム電流密度分布の均一性が良いことが重要である。
【0003】
リボン状のイオンビームの長手方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるために、従来は例えば特許文献1に記載されているように、イオンビームの長手方向における複数の調整箇所において、磁界によってイオンビームを発散または集束させることによって、ビーム電流密度分布を調整していた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−342639号公報(段落0007−0008、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、ビーム電流密度分布調整のために、複数の調整箇所においてイオンビームを発散または集束させる結果として、各調整箇所を通過したイオンビームの進行方向や発散角が変化するために、イオンビーム(イオンビーム全体)の平行度や発散角に悪影響を与えるという課題がある。即ち、イオンビームの平行度や発散角を一定以下に保つのが困難であり、イオンビームの品質の悪化を招くという課題がある。電界によってイオンビームを発散または集束させる場合も同様である。
【0006】
そこでこの発明は、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることなく、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる装置および方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る第1のイオンビーム照射装置は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板と、前記複数の可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する遮蔽板駆動装置と、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記遮蔽板駆動装置を制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る第2のイオンビーム照射装置は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群と、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第1の遮蔽板駆動装置と、前記第2の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第2の遮蔽板駆動装置と、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記第1および第2の遮蔽板駆動装置を制御して、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記第1および第2のイオンビーム照射装置においては、y方向のビーム電流密度の大小に対応して、それを解消するように可動遮蔽板が動かされる制御が行われる。それによって、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。
【0010】
この発明に係る第1のビーム均一性調整方法は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板とを用いて、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る第2のビーム均一性調整方法は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群とを用いて、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴としている。
【0012】
前記各可動遮蔽板は、例えば、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を自動的に制御して、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの発明は、調整箇所においてイオンビームを磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることがない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の発明の上記効果と同様の効果を奏する。更に、第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かす制御が行われるので、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板間を通過するイオンビームのx方向の中心位置がずれないという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、隣り合う可動遮蔽板同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板間からイオンビームが下流側へ漏れるのを防止することができる、という更なる効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を調整して、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの発明は、調整箇所においてイオンビームを磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることがない。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4記載の発明の上記効果と同様の効果を奏する。更に、第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすので、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板間を通過するイオンビームのx方向の中心位置がずれないという効果を奏する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、隣り合う可動遮蔽板同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板間からイオンビームが下流側へ漏れるのを防止することができる、という更なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す平面図である。図2は、図1中の可動遮蔽板周りを矢印P方向に見て部分的に示す側面図である。
【0020】
このイオンビーム照射装置は、イオン源2から引き出したイオンビーム4を、質量分離器6を通して質量分離を行い、更に必要に応じて加速または減速を行った後、ホルダ10に保持されたターゲット8に照射して、ターゲット8にイオン注入等の処理を施すよう構成されている。イオンビーム4の経路は真空雰囲気に保たれる。質量分離器6を設けない場合もある。ターゲット8にイオン注入を行う場合は、この装置はイオン注入装置とも呼ばれる。
【0021】
ターゲット8に照射されるイオンビーム4は、その進行方向zと交差(例えば直交)する面内におけるy方向(長手方向。例えば垂直方向)の寸法Wy が、当該y方向と直交するx方向(例えば水平方向)の寸法Wx よりも大きい形をしている。このような形をしているイオンビーム4は、リボン状のイオンビームと呼ばれている。シート状または帯状のイオンビームと呼ばれる場合もある。但し、x方向の寸法Wx が紙のように薄いという意味ではない。一例を挙げると、y方向の寸法Wy は350mm〜400mm程度、x方向の寸法Wx は80mm〜100mm程度である。
【0022】
この実施形態では、イオンビーム4は、y方向の走査を経ることなく、即ちイオン源2から引き出した形状自体がリボン状をしている。但し、ターゲット8に照射されるイオンビーム4は、前述したように、例えば質量分離器6の下流側においてy方向の走査(例えば平行走査)を経てリボン状をしているものでも良い。
【0023】
ターゲット8は、例えば、半導体基板、ガラス基板等である。
【0024】
ターゲット8は、この実施形態では、ホルダ10に保持されて、ターゲット駆動装置12によって、矢印Aに示すように、前記x方向に沿って機械的に往復駆動(メカニカルスキャン)される。イオンビーム4のy方向の寸法Wy は、ターゲット8の同方向の寸法よりも若干大きく、このことと、上記往復駆動とによって、ターゲット8の全面にイオンビーム4を照射することができる。
【0025】
イオンビーム4の照射位置にあるターゲット8の近傍に、例えばこの実施形態では当該ターゲット8の後方近傍に、イオンビーム4を受けてターゲット8の位置近傍におけるイオンビーム4の少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタ14が設けられている。これによる測定時には、ターゲット8を邪魔にならない位置に移動させれば良い。ビームプロファイルモニタ14から測定情報DAが出力される。
【0026】
ビームプロファイルモニタ14は、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布を測定する一次元の測定器でも良いし、イオンビーム4のy方向とx方向の両方のビーム電流密度分布を測定する二次元の測定器でも良い。ビームプロファイルモニタ14は、例えば、イオンビーム4のビーム電流密度を測定する多数の測定器(例えばファラデーカップ)をy方向に、またはy方向およびx方向に、並設した構成をしている。
【0027】
更にこの実施形態では、ターゲット8の位置よりも上流側におけるイオンビーム4の経路のx方向の両側に、第1の可動遮蔽板群18aおよび第2の可動遮蔽板群18bが設けられている。各可動遮蔽板群18a、18bは、それぞれ、y方向のほぼ一直線上に多段に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動のものであってイオンビーム4を遮るための複数の可動遮蔽板16を有している。両可動遮蔽板群18a、18bを構成する各可動遮蔽板16は、イオンビーム4の経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するように配置されている。即ち、イオンビーム4のx方向の中心4xを中心にしてx方向に対称に配置されている。
【0028】
両可動遮蔽板群18a、18bを構成する各可動遮蔽板16は、この実施形態では、図2を参照して、ルーバのように、y方向に対して斜めに傾け、かつ隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して配置されている。しかも、一つの可動遮蔽板16の上端位置とその上の可動遮蔽板16の下端位置とがy方向において互いに幾分重なるようにして、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置されている。従って、図2中に矢印Cで示すように、同じx方向の位置にあって隣り合う可動遮蔽板16間をイオンビーム4が通過することはできない。
【0029】
なお、図2では第1の可動遮蔽板群18aしか図示されていないけれども、紙面の裏側方向には、イオンビーム4を挟んで、第1の可動遮蔽板群18aと同様の構成をした第2の可動遮蔽板群18bが設けられている。図9、図10においても同様である。
【0030】
図1中の矢印Bで示すように、第1の可動遮蔽板群18aを構成する各可動遮蔽板16は、第1の遮蔽板駆動装置22aによって、連結棒20を介して、互いに独立してx方向に沿って往復駆動される。同様に第2の可動遮蔽板群18bを構成する各可動遮蔽板16は、第2の遮蔽板駆動装置22bによって、連結棒20を介して、互いに独立してx方向に沿って往復駆動される。これによって、各可動遮蔽板16によってイオンビーム4の一部を遮ったり、その遮る量(遮蔽量)を調整したりすることができる。
【0031】
遮蔽板駆動装置22aは、可動遮蔽板16の数だけ設けられていて1台の遮蔽板駆動装置22aで一つの可動遮蔽板16を上記のように駆動するものでも良いし、1台の遮蔽板駆動装置22aで複数の可動遮蔽板16をそれぞれ上記のように駆動するものでも良い。この実施形態では前者の構成を採用している。遮蔽板駆動装置22bについても同様である。
【0032】
この実施形態では更に遮蔽板制御装置24を備えている。この遮蔽板制御装置24は、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、両遮蔽板駆動装置22aおよび22bを制御して、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ちイオンビーム4のx方向の中心4xを中心にして対称に)動かすことによって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行うものである。この遮蔽板制御装置24を用いたビーム均一性調整の制御内容のより具体例は後述する。「相対的に」というのは、他と比べて、という意味である。
【0033】
従ってこのイオンビーム照射装置によれば、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこのイオンビーム照射装置は、前記特許文献1に記載の技術と違って、調整箇所においてイオンビーム4を磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビーム4の平行度や発散角に悪影響を与えることがない。即ち、イオンビーム4の平行度や発散角といった品質に悪影響を与えることなく、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、ターゲット8に対するy方向における処理の均一性を高めることができる。
【0034】
更にこの実施形態では、第1および第2の可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を、x方向に沿って、互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ち前述したように対称に)動かす制御が行われるので、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心位置がずれない。
【0035】
これを図3を参照して説明すると、図3Aは遮蔽量の少ない場合の例であり、図3Bは遮蔽量の多い場合の例であるが、どちらの場合も、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心4xの位置は、可動遮蔽板16間を通過する前の中心4xの位置と実質的に同じであり、遮蔽量の大小によって中心4xがずれることはない。仮に中心4xがずれると、遮蔽量の大小によって、イオンビームを切り取る位置がずれて、切り取るイオンビーム4の平行度や発散角といった品質が若干変わる場合があるけれども、この実施形態によればそれを防止することができる。
【0036】
また、この実施形態では、前述したように、各可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16は、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置されているので、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。仮に下流側へ漏れると、例えば、その漏れたイオンビーム4を避けるためにターゲット8のx方向の駆動距離を大きくする必要が生じるけれども、この実施形態によればそれを防止することができる。
【0037】
隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止するためには、例えば図10に示す例のように、複数の可動遮蔽板16を、y方向のほぼ一直線上に、かつy方向にほぼ平行に並べて配置すると共に、隣り合う可動遮蔽板16間の境界26の隙間を無くするという構成を採用しても良い。但し、そのようにすると、各境界26において隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクル(微小粒子)が発生して、それがターゲット8の表面を汚染する等の課題が発生する場合があるけれども、上記実施形態では、図2に示すように、各可動遮蔽板16を斜めに傾け、かつ隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して配置しているので、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止することができる。即ち、上記実施形態によれば、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0038】
各可動遮蔽板群18a、18bを構成する複数の可動遮蔽板16は、図9に示す例のように、それぞれy方向にほぼ平行なものを、隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して互い違いに2列に並べて配置することによって、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置しても良い。矢印Cは図2において説明したとおりである。このような配置によっても、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0039】
次に、遮蔽板制御装置24を用いたビーム均一性調整の制御内容のより具体例を図4〜図6にそれぞれ示す。図4、図6は、イオンビーム4のx方向におけるビーム電流密度は一定であるとみなして、当該ビーム電流密度の不均一性を考慮しない場合の例である。図5は、イオンビーム4のx方向におけるビーム電流密度の不均一性を考慮する場合の例である。
【0040】
図4に示す例では、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)を測定し(ステップ50)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。(y)は、y方向の位置の関数であることを示している。ビーム電流密度分布D(y)の一例を図7Aに示す。
【0041】
まず、ビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを、例えば次の数1に従って算出する(ステップ51)。
【0042】
[数1]
U=σ/M
【0043】
ここで、Mはビーム電流密度分布D(y)の平均値、σは次の数2で表される標準偏差である。数2において、Di はビーム電流密度分布D(y)を離散量で表したものであり、nはy方向における測定点の数、iはその内の測定点(i=1,2,・・・,n)である。
【0044】
【数2】
【0045】
そして、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを判定し(ステップ52)、入っていれば可動遮蔽板16を動かす必要はないので、ビーム均一性調整の処理は終了する。調整処理終了後は、例えば、当該イオンビーム4をターゲット8に照射する処理(例えばイオン注入)を行えば良い(以下においても同様)。均一性Uが規格内に入っていなければ、可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量S(y)を、例えば次の数3に従って算出する(ステップ53)。
【0046】
[数3]
S(y)=R(y)・Wx
【0047】
ここで、R(y)は次の数4で表される、y方向の各位置における遮蔽率、Wx は前述したイオンビーム4のx方向の寸法、Dmin はy方向におけるビーム電流密度の最小値である。この例は、簡単に言えば、y方向におけるビーム電流密度を、一番低い値に揃えるように遮蔽率R(y)を計算するものである。遮蔽率R(y)の一例を図7Bに示す。
【0048】
[数4]
R(y)=(D(y)−Dmin )/D(y)
【0049】
そして、上記遮蔽量S(y)だけ、y方向における各可動遮蔽板16をそれぞれ駆動する(ステップ54)。より具体的には、上記遮蔽量S(y)の距離だけ、y方向における各可動遮蔽板16を内側(イオンビーム4の中心4x側)へそれぞれ移動させる。その場合、上記遮蔽量S(y)は、イオンビーム4のx方向の両側からのトータルの遮蔽量であるので、上記実施形態のようにイオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を対称に駆動する場合は、片側の可動遮蔽板16の移動量は上記遮蔽量S(y)の1/2にする。
【0050】
以上によって、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。理想的には、図7Cに示すように、ビーム電流密度分布D(y)を均一にすることができる。
【0051】
図5に示す例では、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のx、y両方向の二次元のビーム電流密度分布D(x,y)を測定し(ステップ60)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。
【0052】
即ち、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを上記ステップ51の場合と同様に算出し(ステップ61)、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを上記ステップ52の場合と同様に判定し(ステップ62)、入っていなければ可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量を、例えば次のようにして算出する(ステップ63)。
【0053】
即ち、y方向のそれぞれの位置について、ビーム電流密度Dのx方向の積分値が一定になるように、可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量を算出する。例えば、あるy方向の位置y1 (例えばy1 =100mm)におけるイオンビーム4のx方向のビーム電流密度分布が図8A、Bに示すような場合、当該y方向位置Y1 における上記積分値は、図8A、B中にハッチングを付した領域G1 に相当する。
【0054】
ここで一例として、y方向の各位置における上記積分値の最小値をG0 とし、可動遮蔽板16を移動させる前の上記あるy方向位置y1 における上記積分値が図8Aに示すようにG1 (>G0 )だとすると、可動遮蔽板16をイオンビーム4の内側に移動させてこの例ではイオンビーム4の両側を幾らか遮って、上記積分値G1 を上記最小の積分値G0 に実質的に等しくするために必要な可動遮蔽板16の移動量を計算する。図8Bに示す例では、相対向する可動遮蔽板16の先端を両側から内側へそれぞれx1 、−x1 の位置まで移動させるとG1 =G0 となる。このような移動量(遮蔽量)の計算を、y方向の各位置について行う。
【0055】
そして、上記のようにして求めた移動量だけ、y方向における各可動遮蔽板16をそれぞれ駆動する(ステップ64)。より具体的には内側へ移動させる。
【0056】
以上によって、上記積分値が実質的に一定になるように可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。
【0057】
この例は、上記積分値を基準にしてそれが実質的に一定になるように制御するのであるが、それでも良いのは、図1に示す実施形態のようにターゲット8をx方向に往復駆動する場合は、ターゲット8に対するイオンビーム照射量(例えばイオン注入量)は、上記積分値に比例したものになるからである。
【0058】
図6に示す例では、上記ステップ50の場合と同様に、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)を測定し(ステップ70)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。
【0059】
即ち、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを上記ステップ51の場合と同様に算出し(ステップ71)、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを上記ステップ52の場合と同様に判定し(ステップ72)、入っていなければ、ビーム電流密度Dが最小値Dmin よりも大きい位置の可動遮蔽板16を、イオンビーム4を遮る方向に微少量駆動する(ステップ73)。そして、上記ステップ70〜73を、均一性Uが規格内に入るまで繰り返す。
【0060】
以上によって、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。理想的には、図7Cに示したように、ビーム電流密度分布D(y)を均一にすることができる。
【0061】
以上においては、y方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16を内側に移動させて当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くする制御を行う遮蔽板制御装置24を備えている例を説明したけれども、それとは反対に、初期状態として、各可動遮蔽板16によってイオンビーム4を幾分遮る状態にしておいて、y方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16を外側へ移動させて当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくする制御を行う遮蔽板制御装置24を備えていても良い。
【0062】
あるいは、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くする制御と、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくする制御との両方を行う遮蔽板制御装置24を備えていても良い。
【0063】
なお、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる観点からは、必ずしも上記実施形態のように相対向する可動遮蔽板16を対称に動かす構成を採用しなくても良い。
【0064】
例えば、イオンビーム4の経路のx方向の少なくとも片側に上記のような複数の可動遮蔽板16およびそれ用の上記のような遮蔽板駆動装置を設けて、例えば上記二つの可動遮蔽板群18a、18bの内の片方の可動遮蔽板群(例えば18a)およびそれ用の遮蔽板駆動装置(例えば22a)を設けて、その反対側には遮蔽板を設けないか、あるいはy方向に伸びた1枚の固定の遮蔽板を設けて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて遮蔽板制御装置24によって遮蔽板駆動装置22aを制御して、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行うようにしても良い。
【0065】
可動遮蔽板群およびそれ用の遮蔽板駆動装置をイオンビーム経路の片側にのみ設ける場合は、構成の簡素化を図ることができるという利点がある。
【0066】
また、上記のような全自動制御を行う遮蔽板制御装置24を用いる代わりに、上記ビームプロファイルモニタ14、第1および第2の可動遮蔽板群18a、18bを用いて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、例えば手動操作によって、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法を採用しても良い。この調整方法は、例えば、図6に示した処理を、人が介在して行うようなものである(後述する調整方法も同様)。その場合、上記遮蔽板駆動装置22aおよび22bを設けておいても良いし、設けていなくても良い。設けていれば、各可動遮蔽板16を動かすことが容易になる。
【0067】
このビーム均一性調整方法によれば、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を調整して、イオンビーム4のy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの調整方法の場合も、調整箇所においてイオンビーム4を磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビーム4の平行度や発散角に悪影響を与えることがない。即ち、イオンビーム4の平行度や発散角といった品質に悪影響を与えることなく、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、ターゲット8に対するy方向における処理の均一性を高めることができる。
【0068】
更に、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ち前述したように対称に)動かすので、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心位置がずれない。
【0069】
また、図2を参照して先に説明したような配置構成の可動遮蔽板16を採用することによって、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0070】
また、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる観点からは、必ずしも上記調整方法のように相対向する可動遮蔽板16を対称に動かす方法を採用しなくても良い。
【0071】
例えば、イオンビーム4の経路のx方向の少なくとも片側に上記のような複数の可動遮蔽板16を設けておいて、例えば上記二つの可動遮蔽板群18a、18bの内の片側の可動遮蔽板群(例えば18a)を設けておいて、その反対側には遮蔽板を設けないか、あるいはy方向に伸びた1枚の固定の遮蔽板を設けておいて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、例えば手動操作によって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法を採用しても良い。その場合、上記遮蔽板駆動装置(例えば22a)を設けておいても良いし、設けていなくても良い。設けていれば、各可動遮蔽板16を動かすことが容易になる。
【0072】
上記イオンビーム照射装置およびビーム均一性調整方法のいずれの例においても、例えば図11に示す例のように、可動遮蔽板16の上流側におけるイオンビーム経路のx方向近傍の両側に、あるいは可動遮蔽板16を片側にのみ設ける場合はそれと同じ片側に、遮蔽板28を設けても良い。この遮蔽板28は可動である必要はない。このような遮蔽板28を設けると、その下流側に位置する可動遮蔽板16と協働して、イオンビーム4の内の発散角の大きい成分4a(ハッチングを付して示した部分)を除去して、当該成分4aがターゲット8に入射するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1中の可動遮蔽板周りを矢印P方向に見て部分的に示す側面図である。
【図3】可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量の少ない場合(A)、および多い場合(B)の例を拡大して示す平面図である。
【図4】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の他の例を示すフローチャートである。
【図6】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の更に他の例を示すフローチャートである。
【図7】図4に示す制御内容の場合の均一性調整前のビーム電流密度分布(A)、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽率(B)、および均一性調整後のビーム電流密度分布の理想形(C)の例を示す図である。
【図8】図5に示す制御内容の場合の、あるy方向位置におけるビーム電流密度のx方向の積分値の一例(A)、および他の例(B)を示す図である。
【図9】可動遮蔽板の配置の他の例を示す図であり、図2に対応している。
【図10】可動遮蔽板の配置の更に他の例を示す図であり、図2に対応している。
【図11】可動遮蔽板の上流側に他の遮蔽板を設けた例を部分的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
4 イオンビーム
8 ターゲット
14 ビームプロファイルモニタ
16 可動遮蔽板
18a 第1の可動遮蔽板群
18b 第2の可動遮蔽板群
22a 第1の遮蔽板駆動装置
22b 第2の遮蔽板駆動装置
24 遮蔽板制御装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、進行方向と交差する面内におけるy方向(長手方向)の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい、いわゆるリボン状(これはシート状または帯状と呼ばれることもある。以下同様)の形をしたイオンビームをターゲットに照射して、例えばイオン注入等の処理を施すイオンビーム照射装置および当該イオンビームのy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法に関する。この明細書において、リボン状のイオンビームには、y方向の走査を経ることなくリボン状をしているイオンビームと、y方向の走査を経てリボン状をしているイオンビームとが含まれている。
【背景技術】
【0002】
上記のようなリボン状のイオンビームをターゲット(例えば半導体基板、ガラス基板等)に照射してターゲットにイオン注入等の処理を施す場合に、y方向における処理の均一性を高めるためには、ターゲットに照射されるイオンビームのy方向のビーム電流密度分布の均一性が良いことが重要である。
【0003】
リボン状のイオンビームの長手方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるために、従来は例えば特許文献1に記載されているように、イオンビームの長手方向における複数の調整箇所において、磁界によってイオンビームを発散または集束させることによって、ビーム電流密度分布を調整していた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−342639号公報(段落0007−0008、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、ビーム電流密度分布調整のために、複数の調整箇所においてイオンビームを発散または集束させる結果として、各調整箇所を通過したイオンビームの進行方向や発散角が変化するために、イオンビーム(イオンビーム全体)の平行度や発散角に悪影響を与えるという課題がある。即ち、イオンビームの平行度や発散角を一定以下に保つのが困難であり、イオンビームの品質の悪化を招くという課題がある。電界によってイオンビームを発散または集束させる場合も同様である。
【0006】
そこでこの発明は、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることなく、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる装置および方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る第1のイオンビーム照射装置は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板と、前記複数の可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する遮蔽板駆動装置と、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記遮蔽板駆動装置を制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る第2のイオンビーム照射装置は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群と、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第1の遮蔽板駆動装置と、前記第2の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第2の遮蔽板駆動装置と、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記第1および第2の遮蔽板駆動装置を制御して、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記第1および第2のイオンビーム照射装置においては、y方向のビーム電流密度の大小に対応して、それを解消するように可動遮蔽板が動かされる制御が行われる。それによって、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。
【0010】
この発明に係る第1のビーム均一性調整方法は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板とを用いて、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る第2のビーム均一性調整方法は、進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群とを用いて、前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴としている。
【0012】
前記各可動遮蔽板は、例えば、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を自動的に制御して、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの発明は、調整箇所においてイオンビームを磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることがない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1記載の発明の上記効果と同様の効果を奏する。更に、第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かす制御が行われるので、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板間を通過するイオンビームのx方向の中心位置がずれないという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、隣り合う可動遮蔽板同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板間からイオンビームが下流側へ漏れるのを防止することができる、という更なる効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を調整して、イオンビームのy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの発明は、調整箇所においてイオンビームを磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビームの平行度や発散角に悪影響を与えることがない。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4記載の発明の上記効果と同様の効果を奏する。更に、第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすので、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板間を通過するイオンビームのx方向の中心位置がずれないという効果を奏する。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、隣り合う可動遮蔽板同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板間からイオンビームが下流側へ漏れるのを防止することができる、という更なる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す平面図である。図2は、図1中の可動遮蔽板周りを矢印P方向に見て部分的に示す側面図である。
【0020】
このイオンビーム照射装置は、イオン源2から引き出したイオンビーム4を、質量分離器6を通して質量分離を行い、更に必要に応じて加速または減速を行った後、ホルダ10に保持されたターゲット8に照射して、ターゲット8にイオン注入等の処理を施すよう構成されている。イオンビーム4の経路は真空雰囲気に保たれる。質量分離器6を設けない場合もある。ターゲット8にイオン注入を行う場合は、この装置はイオン注入装置とも呼ばれる。
【0021】
ターゲット8に照射されるイオンビーム4は、その進行方向zと交差(例えば直交)する面内におけるy方向(長手方向。例えば垂直方向)の寸法Wy が、当該y方向と直交するx方向(例えば水平方向)の寸法Wx よりも大きい形をしている。このような形をしているイオンビーム4は、リボン状のイオンビームと呼ばれている。シート状または帯状のイオンビームと呼ばれる場合もある。但し、x方向の寸法Wx が紙のように薄いという意味ではない。一例を挙げると、y方向の寸法Wy は350mm〜400mm程度、x方向の寸法Wx は80mm〜100mm程度である。
【0022】
この実施形態では、イオンビーム4は、y方向の走査を経ることなく、即ちイオン源2から引き出した形状自体がリボン状をしている。但し、ターゲット8に照射されるイオンビーム4は、前述したように、例えば質量分離器6の下流側においてy方向の走査(例えば平行走査)を経てリボン状をしているものでも良い。
【0023】
ターゲット8は、例えば、半導体基板、ガラス基板等である。
【0024】
ターゲット8は、この実施形態では、ホルダ10に保持されて、ターゲット駆動装置12によって、矢印Aに示すように、前記x方向に沿って機械的に往復駆動(メカニカルスキャン)される。イオンビーム4のy方向の寸法Wy は、ターゲット8の同方向の寸法よりも若干大きく、このことと、上記往復駆動とによって、ターゲット8の全面にイオンビーム4を照射することができる。
【0025】
イオンビーム4の照射位置にあるターゲット8の近傍に、例えばこの実施形態では当該ターゲット8の後方近傍に、イオンビーム4を受けてターゲット8の位置近傍におけるイオンビーム4の少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタ14が設けられている。これによる測定時には、ターゲット8を邪魔にならない位置に移動させれば良い。ビームプロファイルモニタ14から測定情報DAが出力される。
【0026】
ビームプロファイルモニタ14は、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布を測定する一次元の測定器でも良いし、イオンビーム4のy方向とx方向の両方のビーム電流密度分布を測定する二次元の測定器でも良い。ビームプロファイルモニタ14は、例えば、イオンビーム4のビーム電流密度を測定する多数の測定器(例えばファラデーカップ)をy方向に、またはy方向およびx方向に、並設した構成をしている。
【0027】
更にこの実施形態では、ターゲット8の位置よりも上流側におけるイオンビーム4の経路のx方向の両側に、第1の可動遮蔽板群18aおよび第2の可動遮蔽板群18bが設けられている。各可動遮蔽板群18a、18bは、それぞれ、y方向のほぼ一直線上に多段に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動のものであってイオンビーム4を遮るための複数の可動遮蔽板16を有している。両可動遮蔽板群18a、18bを構成する各可動遮蔽板16は、イオンビーム4の経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するように配置されている。即ち、イオンビーム4のx方向の中心4xを中心にしてx方向に対称に配置されている。
【0028】
両可動遮蔽板群18a、18bを構成する各可動遮蔽板16は、この実施形態では、図2を参照して、ルーバのように、y方向に対して斜めに傾け、かつ隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して配置されている。しかも、一つの可動遮蔽板16の上端位置とその上の可動遮蔽板16の下端位置とがy方向において互いに幾分重なるようにして、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置されている。従って、図2中に矢印Cで示すように、同じx方向の位置にあって隣り合う可動遮蔽板16間をイオンビーム4が通過することはできない。
【0029】
なお、図2では第1の可動遮蔽板群18aしか図示されていないけれども、紙面の裏側方向には、イオンビーム4を挟んで、第1の可動遮蔽板群18aと同様の構成をした第2の可動遮蔽板群18bが設けられている。図9、図10においても同様である。
【0030】
図1中の矢印Bで示すように、第1の可動遮蔽板群18aを構成する各可動遮蔽板16は、第1の遮蔽板駆動装置22aによって、連結棒20を介して、互いに独立してx方向に沿って往復駆動される。同様に第2の可動遮蔽板群18bを構成する各可動遮蔽板16は、第2の遮蔽板駆動装置22bによって、連結棒20を介して、互いに独立してx方向に沿って往復駆動される。これによって、各可動遮蔽板16によってイオンビーム4の一部を遮ったり、その遮る量(遮蔽量)を調整したりすることができる。
【0031】
遮蔽板駆動装置22aは、可動遮蔽板16の数だけ設けられていて1台の遮蔽板駆動装置22aで一つの可動遮蔽板16を上記のように駆動するものでも良いし、1台の遮蔽板駆動装置22aで複数の可動遮蔽板16をそれぞれ上記のように駆動するものでも良い。この実施形態では前者の構成を採用している。遮蔽板駆動装置22bについても同様である。
【0032】
この実施形態では更に遮蔽板制御装置24を備えている。この遮蔽板制御装置24は、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、両遮蔽板駆動装置22aおよび22bを制御して、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ちイオンビーム4のx方向の中心4xを中心にして対称に)動かすことによって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行うものである。この遮蔽板制御装置24を用いたビーム均一性調整の制御内容のより具体例は後述する。「相対的に」というのは、他と比べて、という意味である。
【0033】
従ってこのイオンビーム照射装置によれば、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこのイオンビーム照射装置は、前記特許文献1に記載の技術と違って、調整箇所においてイオンビーム4を磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビーム4の平行度や発散角に悪影響を与えることがない。即ち、イオンビーム4の平行度や発散角といった品質に悪影響を与えることなく、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、ターゲット8に対するy方向における処理の均一性を高めることができる。
【0034】
更にこの実施形態では、第1および第2の可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を、x方向に沿って、互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ち前述したように対称に)動かす制御が行われるので、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心位置がずれない。
【0035】
これを図3を参照して説明すると、図3Aは遮蔽量の少ない場合の例であり、図3Bは遮蔽量の多い場合の例であるが、どちらの場合も、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心4xの位置は、可動遮蔽板16間を通過する前の中心4xの位置と実質的に同じであり、遮蔽量の大小によって中心4xがずれることはない。仮に中心4xがずれると、遮蔽量の大小によって、イオンビームを切り取る位置がずれて、切り取るイオンビーム4の平行度や発散角といった品質が若干変わる場合があるけれども、この実施形態によればそれを防止することができる。
【0036】
また、この実施形態では、前述したように、各可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16は、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置されているので、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。仮に下流側へ漏れると、例えば、その漏れたイオンビーム4を避けるためにターゲット8のx方向の駆動距離を大きくする必要が生じるけれども、この実施形態によればそれを防止することができる。
【0037】
隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止するためには、例えば図10に示す例のように、複数の可動遮蔽板16を、y方向のほぼ一直線上に、かつy方向にほぼ平行に並べて配置すると共に、隣り合う可動遮蔽板16間の境界26の隙間を無くするという構成を採用しても良い。但し、そのようにすると、各境界26において隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクル(微小粒子)が発生して、それがターゲット8の表面を汚染する等の課題が発生する場合があるけれども、上記実施形態では、図2に示すように、各可動遮蔽板16を斜めに傾け、かつ隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して配置しているので、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止することができる。即ち、上記実施形態によれば、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0038】
各可動遮蔽板群18a、18bを構成する複数の可動遮蔽板16は、図9に示す例のように、それぞれy方向にほぼ平行なものを、隣り合う可動遮蔽板16間を互いに離して互い違いに2列に並べて配置することによって、イオンビーム4の進行方向zに見て、隣り合う可動遮蔽板16間に隙間がないように配置しても良い。矢印Cは図2において説明したとおりである。このような配置によっても、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0039】
次に、遮蔽板制御装置24を用いたビーム均一性調整の制御内容のより具体例を図4〜図6にそれぞれ示す。図4、図6は、イオンビーム4のx方向におけるビーム電流密度は一定であるとみなして、当該ビーム電流密度の不均一性を考慮しない場合の例である。図5は、イオンビーム4のx方向におけるビーム電流密度の不均一性を考慮する場合の例である。
【0040】
図4に示す例では、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)を測定し(ステップ50)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。(y)は、y方向の位置の関数であることを示している。ビーム電流密度分布D(y)の一例を図7Aに示す。
【0041】
まず、ビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを、例えば次の数1に従って算出する(ステップ51)。
【0042】
[数1]
U=σ/M
【0043】
ここで、Mはビーム電流密度分布D(y)の平均値、σは次の数2で表される標準偏差である。数2において、Di はビーム電流密度分布D(y)を離散量で表したものであり、nはy方向における測定点の数、iはその内の測定点(i=1,2,・・・,n)である。
【0044】
【数2】
【0045】
そして、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを判定し(ステップ52)、入っていれば可動遮蔽板16を動かす必要はないので、ビーム均一性調整の処理は終了する。調整処理終了後は、例えば、当該イオンビーム4をターゲット8に照射する処理(例えばイオン注入)を行えば良い(以下においても同様)。均一性Uが規格内に入っていなければ、可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量S(y)を、例えば次の数3に従って算出する(ステップ53)。
【0046】
[数3]
S(y)=R(y)・Wx
【0047】
ここで、R(y)は次の数4で表される、y方向の各位置における遮蔽率、Wx は前述したイオンビーム4のx方向の寸法、Dmin はy方向におけるビーム電流密度の最小値である。この例は、簡単に言えば、y方向におけるビーム電流密度を、一番低い値に揃えるように遮蔽率R(y)を計算するものである。遮蔽率R(y)の一例を図7Bに示す。
【0048】
[数4]
R(y)=(D(y)−Dmin )/D(y)
【0049】
そして、上記遮蔽量S(y)だけ、y方向における各可動遮蔽板16をそれぞれ駆動する(ステップ54)。より具体的には、上記遮蔽量S(y)の距離だけ、y方向における各可動遮蔽板16を内側(イオンビーム4の中心4x側)へそれぞれ移動させる。その場合、上記遮蔽量S(y)は、イオンビーム4のx方向の両側からのトータルの遮蔽量であるので、上記実施形態のようにイオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を対称に駆動する場合は、片側の可動遮蔽板16の移動量は上記遮蔽量S(y)の1/2にする。
【0050】
以上によって、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。理想的には、図7Cに示すように、ビーム電流密度分布D(y)を均一にすることができる。
【0051】
図5に示す例では、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のx、y両方向の二次元のビーム電流密度分布D(x,y)を測定し(ステップ60)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。
【0052】
即ち、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを上記ステップ51の場合と同様に算出し(ステップ61)、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを上記ステップ52の場合と同様に判定し(ステップ62)、入っていなければ可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量を、例えば次のようにして算出する(ステップ63)。
【0053】
即ち、y方向のそれぞれの位置について、ビーム電流密度Dのx方向の積分値が一定になるように、可動遮蔽板16によるイオンビーム4のy方向の各位置における遮蔽量を算出する。例えば、あるy方向の位置y1 (例えばy1 =100mm)におけるイオンビーム4のx方向のビーム電流密度分布が図8A、Bに示すような場合、当該y方向位置Y1 における上記積分値は、図8A、B中にハッチングを付した領域G1 に相当する。
【0054】
ここで一例として、y方向の各位置における上記積分値の最小値をG0 とし、可動遮蔽板16を移動させる前の上記あるy方向位置y1 における上記積分値が図8Aに示すようにG1 (>G0 )だとすると、可動遮蔽板16をイオンビーム4の内側に移動させてこの例ではイオンビーム4の両側を幾らか遮って、上記積分値G1 を上記最小の積分値G0 に実質的に等しくするために必要な可動遮蔽板16の移動量を計算する。図8Bに示す例では、相対向する可動遮蔽板16の先端を両側から内側へそれぞれx1 、−x1 の位置まで移動させるとG1 =G0 となる。このような移動量(遮蔽量)の計算を、y方向の各位置について行う。
【0055】
そして、上記のようにして求めた移動量だけ、y方向における各可動遮蔽板16をそれぞれ駆動する(ステップ64)。より具体的には内側へ移動させる。
【0056】
以上によって、上記積分値が実質的に一定になるように可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。
【0057】
この例は、上記積分値を基準にしてそれが実質的に一定になるように制御するのであるが、それでも良いのは、図1に示す実施形態のようにターゲット8をx方向に往復駆動する場合は、ターゲット8に対するイオンビーム照射量(例えばイオン注入量)は、上記積分値に比例したものになるからである。
【0058】
図6に示す例では、上記ステップ50の場合と同様に、ビームプロファイルモニタ14によってイオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)を測定し(ステップ70)、その測定情報DAに基づいて、遮蔽板制御装置24において以下の処理を行う。
【0059】
即ち、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布D(y)の均一性Uを上記ステップ51の場合と同様に算出し(ステップ71)、算出した均一性Uが所定の規格内に入っているか否かを上記ステップ52の場合と同様に判定し(ステップ72)、入っていなければ、ビーム電流密度Dが最小値Dmin よりも大きい位置の可動遮蔽板16を、イオンビーム4を遮る方向に微少量駆動する(ステップ73)。そして、上記ステップ70〜73を、均一性Uが規格内に入るまで繰り返す。
【0060】
以上によって、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を自動的に制御して、イオンビーム4のy方向におけるビーム電流密度分布D(y)の均一性を向上させることができる。理想的には、図7Cに示したように、ビーム電流密度分布D(y)を均一にすることができる。
【0061】
以上においては、y方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16を内側に移動させて当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くする制御を行う遮蔽板制御装置24を備えている例を説明したけれども、それとは反対に、初期状態として、各可動遮蔽板16によってイオンビーム4を幾分遮る状態にしておいて、y方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16を外側へ移動させて当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくする制御を行う遮蔽板制御装置24を備えていても良い。
【0062】
あるいは、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くする制御と、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくする制御との両方を行う遮蔽板制御装置24を備えていても良い。
【0063】
なお、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる観点からは、必ずしも上記実施形態のように相対向する可動遮蔽板16を対称に動かす構成を採用しなくても良い。
【0064】
例えば、イオンビーム4の経路のx方向の少なくとも片側に上記のような複数の可動遮蔽板16およびそれ用の上記のような遮蔽板駆動装置を設けて、例えば上記二つの可動遮蔽板群18a、18bの内の片方の可動遮蔽板群(例えば18a)およびそれ用の遮蔽板駆動装置(例えば22a)を設けて、その反対側には遮蔽板を設けないか、あるいはy方向に伸びた1枚の固定の遮蔽板を設けて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて遮蔽板制御装置24によって遮蔽板駆動装置22aを制御して、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行うようにしても良い。
【0065】
可動遮蔽板群およびそれ用の遮蔽板駆動装置をイオンビーム経路の片側にのみ設ける場合は、構成の簡素化を図ることができるという利点がある。
【0066】
また、上記のような全自動制御を行う遮蔽板制御装置24を用いる代わりに、上記ビームプロファイルモニタ14、第1および第2の可動遮蔽板群18a、18bを用いて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、例えば手動操作によって、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法を採用しても良い。この調整方法は、例えば、図6に示した処理を、人が介在して行うようなものである(後述する調整方法も同様)。その場合、上記遮蔽板駆動装置22aおよび22bを設けておいても良いし、設けていなくても良い。設けていれば、各可動遮蔽板16を動かすことが容易になる。
【0067】
このビーム均一性調整方法によれば、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を調整して、イオンビーム4のy方向(長手方向)のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。しかもこの調整方法の場合も、調整箇所においてイオンビーム4を磁界や電界によって発散または集束させるものではないので、イオンビーム4の平行度や発散角に悪影響を与えることがない。即ち、イオンビーム4の平行度や発散角といった品質に悪影響を与えることなく、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることができる。その結果、ターゲット8に対するy方向における処理の均一性を高めることができる。
【0068】
更に、両可動遮蔽板群18a、18bを構成する可動遮蔽板16の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板16を、x方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に(即ち前述したように対称に)動かすので、可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を変えても、相対向する可動遮蔽板16間を通過するイオンビーム4のx方向の中心位置がずれない。
【0069】
また、図2を参照して先に説明したような配置構成の可動遮蔽板16を採用することによって、隣り合う可動遮蔽板16同士が擦れてパーティクルが発生することを防止しつつ、隣り合う可動遮蔽板16間からイオンビーム4が下流側へ漏れるのを防止することができる。
【0070】
また、イオンビーム4のy方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる観点からは、必ずしも上記調整方法のように相対向する可動遮蔽板16を対称に動かす方法を採用しなくても良い。
【0071】
例えば、イオンビーム4の経路のx方向の少なくとも片側に上記のような複数の可動遮蔽板16を設けておいて、例えば上記二つの可動遮蔽板群18a、18bの内の片側の可動遮蔽板群(例えば18a)を設けておいて、その反対側には遮蔽板を設けないか、あるいはy方向に伸びた1枚の固定の遮蔽板を設けておいて、ビームプロファイルモニタ14による測定情報DAに基づいて、例えば手動操作によって、(a)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する可動遮蔽板16をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に多くすることと、(b)測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する可動遮蔽板16をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板16によるイオンビーム4の遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させるビーム均一性調整方法を採用しても良い。その場合、上記遮蔽板駆動装置(例えば22a)を設けておいても良いし、設けていなくても良い。設けていれば、各可動遮蔽板16を動かすことが容易になる。
【0072】
上記イオンビーム照射装置およびビーム均一性調整方法のいずれの例においても、例えば図11に示す例のように、可動遮蔽板16の上流側におけるイオンビーム経路のx方向近傍の両側に、あるいは可動遮蔽板16を片側にのみ設ける場合はそれと同じ片側に、遮蔽板28を設けても良い。この遮蔽板28は可動である必要はない。このような遮蔽板28を設けると、その下流側に位置する可動遮蔽板16と協働して、イオンビーム4の内の発散角の大きい成分4a(ハッチングを付して示した部分)を除去して、当該成分4aがターゲット8に入射するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1中の可動遮蔽板周りを矢印P方向に見て部分的に示す側面図である。
【図3】可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量の少ない場合(A)、および多い場合(B)の例を拡大して示す平面図である。
【図4】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の一例を示すフローチャートである。
【図5】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の他の例を示すフローチャートである。
【図6】図1中の遮蔽板制御装置を用いたビーム均一性調整の制御内容の更に他の例を示すフローチャートである。
【図7】図4に示す制御内容の場合の均一性調整前のビーム電流密度分布(A)、可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽率(B)、および均一性調整後のビーム電流密度分布の理想形(C)の例を示す図である。
【図8】図5に示す制御内容の場合の、あるy方向位置におけるビーム電流密度のx方向の積分値の一例(A)、および他の例(B)を示す図である。
【図9】可動遮蔽板の配置の他の例を示す図であり、図2に対応している。
【図10】可動遮蔽板の配置の更に他の例を示す図であり、図2に対応している。
【図11】可動遮蔽板の上流側に他の遮蔽板を設けた例を部分的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0074】
4 イオンビーム
8 ターゲット
14 ビームプロファイルモニタ
16 可動遮蔽板
18a 第1の可動遮蔽板群
18b 第2の可動遮蔽板群
22a 第1の遮蔽板駆動装置
22b 第2の遮蔽板駆動装置
24 遮蔽板制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板と、
前記複数の可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する遮蔽板駆動装置と、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記遮蔽板駆動装置を制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項2】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群と、
前記第1の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第1の遮蔽板駆動装置と、
前記第2の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第2の遮蔽板駆動装置と、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記第1および第2の遮蔽板駆動装置を制御して、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記各可動遮蔽板は、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている請求項1または2記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板とを用いて、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴とするビーム均一性調整方法。
【請求項5】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群とを用いて、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴とするビーム均一性調整方法。
【請求項6】
前記各可動遮蔽板は、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている請求項4または5記載のビーム均一性調整方法。
【請求項1】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板と、
前記複数の可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する遮蔽板駆動装置と、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記遮蔽板駆動装置を制御して、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項2】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群と、
前記第1の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第1の遮蔽板駆動装置と、
前記第2の可動遮蔽板群を構成する各可動遮蔽板を互いに独立してx方向に沿って往復駆動する第2の遮蔽板駆動装置と、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて前記第1および第2の遮蔽板駆動装置を制御して、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させる制御を行う遮蔽板制御装置とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記各可動遮蔽板は、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている請求項1または2記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の少なくとも片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板とを用いて、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記可動遮蔽板をx方向に沿って動かして当該可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴とするビーム均一性調整方法。
【請求項5】
進行方向と交差する面内におけるy方向の寸法が当該y方向と直交するx方向の寸法よりも大きい形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置における調整方法であって、
前記ターゲットの位置近傍におけるイオンビームの少なくともy方向のビーム電流密度分布を測定するビームプロファイルモニタと、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の一方の片側に、y方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第1の可動遮蔽板群と、
前記ターゲットの位置よりも上流側におけるイオンビーム経路のx方向の他方の片側に、前記第1の可動遮蔽板群を構成する各遮蔽板とイオンビーム経路を挟んでx方向においてそれぞれ相対向するようにy方向に並べて配置されていて、互いに独立してx方向に沿って可動でありイオンビームを遮るための複数の可動遮蔽板を有する第2の可動遮蔽板群とを用いて、
前記ビームプロファイルモニタによる測定情報に基づいて、前記第1および第2の可動遮蔽板群を構成する可動遮蔽板の内の、イオンビーム経路を挟んで相対向する可動遮蔽板をx方向に沿って互いに実質的に同じ距離だけ逆方向に動かすことによって、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に大きい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に多くすることと、測定したy方向のビーム電流密度が相対的に小さい位置に対応する前記相対向する可動遮蔽板によるイオンビームの遮蔽量を相対的に少なくすることの少なくとも一方を行って、y方向のビーム電流密度分布の均一性を向上させることを特徴とするビーム均一性調整方法。
【請求項6】
前記各可動遮蔽板は、y方向に対して斜めに傾け、隣り合う可動遮蔽板間を互いに離し、かつイオンビームの進行方向に見て、隣り合う可動遮蔽板間に隙間がないように配置されている請求項4または5記載のビーム均一性調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−172927(P2007−172927A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366499(P2005−366499)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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