説明

イオン交換によって生体液試料を分析するための方法、システム、及び装置

イオン交換樹脂で処理された生体液試料の物理的または化学的特性を測定するのに効果的な装置、方法、及びシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体が本明細書に参照によって組み込まれる、2008年5月20日に出願された米国仮特許出願第61/128,280号の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本願の主題は、生体液試料が、試料分析される前にイオン交換媒体に曝露される、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するのに効果的な方法、システム、及び装置に関する。
【0003】
生体液の様々な化学的及び物理的パラメータは、病気の診断、及び病状の日常的監視において、日常的に分析される。多くの生体液が、干渉タンパク質、生体分子、または試料のバルク特性を除去するために、分析前に処理されなければならない。これは、生体試料分析の結果を得ること及び有効にすることに困難性を示し得る。データの信頼性及び再現性が重要である。したがって、正確性、信頼性、及び再現性のある結果を生み出す単純な試料調製方法が強く望まれている。
【0004】
試料調製プロセスは、正確度、精度、及び定量の下限に関して、上記の分析に直接の影響を有する。効果的な試料調製は、分析プロセスに非常に重要である。好ましくは、試料調製プロセスは、比較的早く、簡単で、且つ安価な手段であり、生体液の化学的または物理的パラメータを分析するときに、正確で一貫した結果を得ることができるものである。
【0005】
また、従来の血液検査に関連した皮膚外傷、痛み、感染リスク、及び血液の浪費を減らすかまたは排除する非侵入性試料収集の別の手段も好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
唾液診断は、様々な病気及び病状の検知または診断のために、容易に得られる生体液としての唾液を利用する新たな分野である。未処理の唾液は、独特のせん断特性を有する不安定な粘性流体であり、多くのタンパク質を含む。唾液のこれらの特性は、唾液のバルク特性を分析することを困難にする。溶媒抽出、遠心分離ろ過、及び/またはシール容器内における比較的長期の沈降等の実験技術が、その後の分析に、唾液をより適するようにするためによく用いられる。
【0007】
持ち運びができ、簡単で、すぐに使用でき、正確で、信頼性があり、再現性がある結果をもたらす唾液等の生体液の化学的または物理的パラメータを評価する非侵入性手法が強く望まれている。本方法及びシステムは、このニーズに応える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、生体液の物理的または化学的特性を測定するための方法が提供される。本方法は、
生体液試料を提供する工程;
イオン交換媒体を用いて生体液試料を処理する工程;
ある物理的または化学的特性を有するヒドロゲルを含むセンサーであって、前記物理的または化学的特性の初期値が知られており、ヒドロゲルが、イオン交換媒体で処理した生体液試料に曝露されることに反応する物理的または化学的特性の変化によって特徴付けられる、センサーをさらに提供する工程;
ヒドロゲルを、イオン交換媒体で処理した生体液試料と接触させる工程;
ヒドロゲルにおける変化を評価する工程;及び
ヒドロゲルにおける変化と、生体液の物理的または化学的特性とを関連づける工程、
を含む。
【0009】
典型的な生体液としては、唾液、全血、血漿、血清、リンパ液、滑液、腹水、胸膜液、尿、痰、精液、膣洗浄液、骨髄液、脳脊髄液、及び涙液が挙げられる。
【0010】
典型的な物理的特性としては、所定波長における吸収、密度、電気導電性、pH、重量オスモル濃度(osmolality)、容量オスモル濃度(osmolarity)、熱的特性、粘度、誘電率、屈折率、及び光散乱が挙げられる。
【0011】
典型的な物理的特性としては、グルコース、クレアチニン、尿素、コルチゾール、総タンパク量、総電解質量、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、陽イオン、例えばナトリウム(Na+)、カルシウム(Ca+)、カリウム(K+)、またはマグネシウム(Mg2+);陰イオン、例えば塩化物(Cl-)、フッ化物(Fl)、臭化物(Br)、硫酸塩(SO42-)、硝酸塩(NO3-)、炭酸塩(CO32-)、及び重炭酸塩(HCO3-)の濃度が挙げられる。
【0012】
ヒドロゲルの物理的または化学的特性の測定される変化は、概して、体積の変化、光学的濃度の変化、屈折率の変化、交流伝導率の変化、または静電容量の変化である。
【0013】
典型的なヒドロゲルは、架橋しており、正味の負電荷を有する。典型的なヒドロゲルとしては、例えば、カルボキシレート基、硫酸基、スルホン酸基、及びリン酸基から選択されるアニオン性部分を含む、アクリルアミド部分、ヒドロキシアルキルアクリレート若しくはヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエーテル、またはビニルピロリドンからなる架橋したヒドロゲルが挙げられる。
【0014】
いくつかの実施態様において、イオン交換材料は、陽イオン交換樹脂及び/またはイミノ二酢酸官能性を含み得るキレート樹脂である。
【0015】
他の実施態様において、イオン交換材料は、水不溶性ポリマー陽イオン交換樹脂、EDTA、シュウ酸、クエン酸、及び水溶性ポリアクリレートからなる群から選択される。
【0016】
典型的なイオン交換媒体は、陰イオン交換媒体、陽イオン交換媒体、及び混合イオン交換媒体からなる群から選択され、好ましくは陽イオン交換媒体または混合イオン交換媒体である。好ましいイオン交換媒体は、水溶性樹脂の形態で、プロトン、ナトリウム、またはカリウム型の陽イオン交換媒体である。
【0017】
1つの好ましい実施態様において、生体液は唾液であり、測定される物理的特性は重量オスモル濃度であり、イオン交換媒体は陽イオン交換またはキレート樹脂であり、測定は、ヒドロゲルの体積変化に基づく。一実施態様において、イオン交換媒体で生体液試料を処理することは、生体液からCa2+を除去するのに効果的である。
【0018】
一実施態様において、イオン交換媒体で生体液試料を処理することは、生体液からCa2+及び/またはMg2+を除去するのに効果的である。
【0019】
他の態様において、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するためのヒドロゲルセンサーシステム及び装置が提供される。ヒドロゲルセンサーシステムは、概して、生体液試料を収集しイオン交換媒体で処理するためのカートリッジ、及び生体液の物理的または化学的特性を測定するのに効果的なヒドロゲルセンサーを含む装置に接続する手段を含む。装置は概して、マイクロカンチレバーの先端の初期位置に対応した既知の抵抗を有する可動マイクロカンチレバーセンサーを含む。カンチレバーは片側上に配置されたヒドロゲル層を有して自立していてもよく、または剛性の高い物質に固定され且つマイクロカンチレバーに対向して配置されたヒドロゲルを含んでもよく、ヒドロゲルの物理的特性の変化が、マイクロカンチレバー及びマイクロカンチレバーの動作に応じて検出可能な信号を生成する信号発信部品をたわませる。他の実施態様において、ヒドロゲルセンサーシステムは、圧力センサーに接したまたは反射面上に配置されたヒドロゲルを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施態様において、センサーは使い捨てである。
【0021】
本方法及びシステムは、添付した図面を参照しながら、次の詳細な説明を読むことで最も理解される。一般の慣行に従って、図面の様々な形状は原寸に比例していないことを強調しておく。それどころか、様々な形状の寸法は、明確にするために、任意に拡大または減少されている。図面に含まれるものは、以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】参照NaCl溶液及びヒト唾液試料についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図2】ヒト唾液試料(485唾液)、参照NaCl溶液(484模倣物(mimic))、及び活性炭で処理した唾液試料についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム;センサー485)のグラフ図である。
【図3】7人のボランティアの、個々の唾液試料への活性炭処理(0〜0.6g/ml)の効果を表したグラフ図である。
【図4】2つのNaCl溶液、未処理のヒト唾液試料、及びDowfaxC10Lで処理したヒト唾液試料についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図5】2つのNaCl溶液、未処理のヒト唾液試料、及びTritonH55で処理したヒト唾液試料についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図6】2つのNaCl溶液、未処理のヒト唾液試料(唾液)、及び1%のTritonGR−5Mで処理したヒト唾液試料についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図7A】活性炭で処理した唾液(炭素処理唾液)及び181mOsmNaCl溶液(NaCl 181mOsm)と比較してイオン交換樹脂で処理した唾液(イオン交換処理唾液)についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図7B】リン酸緩衝液(NaCl緩衝(従来))でpHを7から7.5に調節したNaCl溶液及びNaCl対照(NaCl 181)と比較してイオン交換樹脂で処理した唾液1X(1X処理唾液)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図8A】NaCl対照(センサ−1059)と比較して、イオン交換樹脂、クエン酸、イオン交換樹脂及びCaCl2、クエン酸及びCaCl2で処理された唾液(それぞれ、IER処理唾液、クエン酸処理唾液、IER+CaCl2、クエン酸+CaCl2)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図を提供する。
【図8B】NaCl対照(センサ−1066)と比較して、イオン交換樹脂、クエン酸、イオン交換樹脂及びCaCl2、クエン酸及びCaCl2で処理された唾液(それぞれ、IER処理唾液、クエン酸処理唾液、IER+CaCl2、クエン酸+CaCl2)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図を提供する。
【図9】NaCl対照(センサ−1073)と比較して、イオン交換樹脂、クエン酸、イオン交換樹脂及びCaCl2、並びにクエン酸及びCaCl2で処理された唾液(それぞれ、IER処理唾液、クエン酸処理唾液、IER+CaCl2、クエン酸+CaCl2)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図10】約1.5時間までの、3種類の異なるセンサーについての、IER曝露時間に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【図11A】浸漬若しくはすくい上げた後の、センサーに結合された繊維型陽イオン交換媒体を有する浸透圧的応答ヒドロゲルに結合したピエゾ抵抗カンチレバーから構成されるセンサーの顕微鏡写真である。
【図11B】5分間、70℃にてオーブンで乾燥した後の、センサーに結合された繊維型陽イオン交換媒体を有する浸透圧的応答ヒドロゲルに結合したピエゾ抵抗カンチレバーから構成されるセンサーの顕微鏡写真である。
【図12】センサー#2004(BM42−178D)についてのカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図であり、ここでは、センサーを(図11A及び図11Bで示されるように)IEF粉末で覆い、唾液に対するNaCl対照の重量オスモル濃度(mOsm)を試験するために用いた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A. 導入部
装置を用いて生体液の物理的または化学的特性を測定するための組成物、装置、方法、及びシステムが提供される。物理的または化学的特性の測定の正確さを有し、生体液にみられる物質の干渉が最小化または排除されるように、生体液を処理するための方法が提供される。処理に続いて、生体液試料は、検知装置の検出材料として機能するヒドロゲルと接して配置される。ヒドロゲルは、物理的または化学的変化、例えば生体液の物理的または化学的特性に反応して体積膨張または収縮といった変化をする。変化は、生体液の物理的または化学的特性と相関がある。変化は、定性的または定量的であることができる。装置は、生体液の物理的または化学的特性が測定されるように、変化の結果を記録及び表示する。
【0024】
次の開示は、本発明を構成する組成物、方法、システム、及びキットを記載する。本発明は、本明細書に記載の特定の装置、手順、システム、キット、または条件に限定されず、当然、変化し得る。また、当然のことながら、本明細書に用いられる専門用語は、特定の実施態様を記載することのみを目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0025】
本明細書及び添付の請求項で用いられる場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」には、文脈が明確に別のものを示していなければ、複数の参照が含まれる。
【0026】
別のものを規定しなければ、本明細書に用いられる全ての技術及び技術用語は概して、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものに類似または等しいいずれの方法、装置、及び材料も本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法、装置、及び材料が、ここで記載される。
【0027】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前の刊行物の開示のためにのみ提供され、本発明が先行発明を理由として前記開示に先行しないと解されるべきではない。
【0028】
B 定義
「イオン交換媒体」、「イオン交換材料」、及び「イオン交換樹脂」という用語は、生体液試料の物理的または化学的特性の分析に干渉する生体液試料のイオン成分、例えば生体液試料に含まれるカルシウム等の二価の陽イオンを除去するのに効果的な任意の材料に関連して、本明細書で相互交換可能に用いられる。「イオン交換」媒体は、計量棒、紙の上に、カートリッジ、チューブ、パイプ、シリンジ内に、または分析前に生体液試料の干渉イオン成分を除去するのに効果的な方法でイオン交換媒体が生体液試料に曝露され得る任意の態様で、樹脂として提供され得る。
【0029】
「生体液」という用語は、唾液、全血、血漿、血清、リンパ液、滑液、腹水、胸膜液、尿、痰、精液、膣洗浄液、骨髄液、脳脊髄液、及び涙液からなる群から選択される対象から取られる生体液に関連して、本明細書で用いられる。試料は、しばしば、患者から生じる試料である「臨床サンプル」であるだろう。
【0030】
「化学的特性」という用語は、化学反応の際に明らかになる生体液の特性または生体液中の特定の化学物質の量に関連して、本明細書で用いられる。
【0031】
「MEMS」または「微小電気機械システム」という用語は、微細加工技術による、共通のシリコン基板上への、機械構成部品、センサー、アクチェーター、及び電子装置の集積化を提供する。
【0032】
「物理的特性」という用語は、試料を変化させることなく測定、評価、または観察され得る生体液の任意の態様に関連して、本明細書で用いられる。
【0033】
「重量オスモル濃度(osmolality)」という用語は、1キログラムの溶媒あたりの溶質のオスモルに関連して本明細書で用いられる。オスモル(Osm)とは、溶液の浸透圧に寄与する化合物のモル数を規定する測定単位である。実験施設において、重量オスモル濃度は、通常、浸透圧計及び凝固点降下法を用いて測定される。1キロの水に溶解した1モル(グラムを単位とする分子量)の任意の物質は、17,000mmHgの浸透圧、0.52℃の沸点上昇、0.3mmHgの蒸気圧降下、及び−1.86℃の凝固点降下を発生するだろうし、水1キロあたり1000mOsmolsのオスモル濃度(1000mOsmols)に対応する。凝固点降下法を用いて、1mOsmolsは、ほんの0.0018℃の温度変化を発生するだろう。
【0034】
「容量オスモル濃度(osmolarity)」という用語は、1リットルの溶液あたりの溶質のオスモルに関連して、本明細書で用いられる。容量モル濃度及び重量オスモル濃度は、通常、非対称に使われない。というのは、それらは温度依存性があり、水は温度によってその体積を変化させるからである。
【0035】
「相変化」及び「相転移」という用語は、本明細書にて相互交換可能に用いられ、水の蒸発、溶融、及び凝固、霜及び雪の形成、並びに周知の現象であるドライアイスの昇華が含まれ、これらは(i)液体への固体の溶解、(ii)固体への液体の凝固、(iii)気体への液体の気化、(iv)液体への気体の凝縮、(v)気体への固体の気化(昇華)、及び(vi)固体への蒸気の凝固の、6つの一般的な状態変化のうちの5つの例である。上記対の各プロセスが互いに逆の対における変化が分けて列挙される。物質が、ヒドロゲル等の多様な固体形態を有する場合、他の相転移が可能であって、そのような相転移は、米国特許出願公開第20070249059号(本明細書に参照によって明確に組み込まれる)に記載されている。
【0036】
「融点」という用語は、ポリマー系に関する別の相変化に関連して、本明細書で用いられる。ポリマーは、通常、個々の構成要素の統計学的な混合物であるので、概して純粋な成分または化合物より広い融点範囲を有する。ゲルを含むポリマーの融点は、熱量測定法(例えば、示差走査熱量測定法)または光学的方法または機械的方法により測定され得る。
【0037】
「マイクロカンチレバー」という用語は、カンチレバーの曲げまたは振動数の変化を検知することによって、物理的または化学的センサーとして機能し得る装置に関連して、本明細書で用いられる。カンチレバーの片側への吸着応力は、物理的または化学的特性、例えばヒドロゲルの膨張または収縮を検知する手段として用いられ得る。ヒドロゲルの変化の性質に依存して、たわみは上方または下方であることができる。たわみは前記変化に比例する。マイクロカンチレバーは、SU8樹脂を含む単結晶シリコンウエハまたは類似の材料から微細加工及び量産され得る微小電気機械システム(MEMs)である。マイクロカンチレバーは、幅広い生体及び化学的センサーについて高感度及び選択性を提供する。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「ピエゾ抵抗」という用語は、電流路の方向に材料に適用される機械的圧力によって発生する圧縮に反応して、減少する電気抵抗を有する材料をいう。そのようなピエゾ抵抗材料は、例えば、気泡の壁を覆う導電性コーティングを有する弾性多孔性ポリマー発泡体、または導電性粒子を含有するエラストマーであることができる。ピエゾ抵抗マイクロカンチレバーがたわむとき、ピエゾ抵抗素子へ圧力を適用するであろう変形を受け、それによって、電子的手段によって測定し得る抵抗の変化を発生させる。ピエゾ抵抗方法の1つの利点は、読み出しシステムが1チップ上に集積化され得ることである。
【0039】
「抵抗」という用語は、材料内の電流路に沿った電流の流れへの材料の抵抗を意味し、オームを単位として測定される。抵抗は、材料の電流路の長さ及び比抵抗または「抵抗率」に比例して増加し、電流が利用可能な断面積の大きさに反比例して変化する。抵抗率は材料の特性であり、(抵抗/長さ)/面積の値として考えられ得る。より具体的には、抵抗は次の式:
R=(rho×L)/A (I)
(式中、Rはオームを単位とする抵抗、rhoはオーム・インチを単位とする抵抗、Lはインチを単位とする長さ、及びAは平方インチを単位とする面積である)にしたがって測定され得る。回路を流れる電流は、オームの法則:
I=V/R
(式中、Iはアンペアを単位とする電流、Vはボルトを単位とする電圧、及びRはオームを単位とする抵抗である)で提供されるように、印加電圧に比例して、及び抵抗に反比例して変化する。
【0040】
C. イオン交換媒体
本明細書では、取り除かない場合には、生体液試料の化学的または物理的特性の測定に干渉し得る生体液試料の成分の除去に有益なイオン交換媒体が提供される。例えば、アミノ基等の塩基性基を有する生体液試料の干渉の可能性がある成分は、硫酸基またはカルボキシレート基等の酸性基を有するイオン交換樹脂と複合し得る。反対に、酸性基を有する生体液試料の干渉の可能性がある成分は、塩基性基を有するイオン交換樹脂と複合し得る。
【0041】
唾液中には、生体液の分析に干渉し得るムチン等の多くのタンパク質がある。ムチンは高度にグリコシル化されたタンパク質である。ムチンのようなタンパク質は、カルシウムイオンが介在する多分子ネットワーク内に入り込む。分析のための唾液試料を調整する上で、安定した読み出し及び正確且つ再現性のある結果が得られるように試料を処理することが必要である。理論に束縛されるつもりはないが、次に提供する例において記載されるように、干渉の可能性があるタンパク質及び介在カルシウムを除去するための技術を適用することは、ヒドロゲルセンサーを利用する装置を用いて、安定した読み出し及び正確且つ再現性のある結果を得るのに効果的である。
【0042】
本発明の主題は、分析前に生体液試料から干渉材料を除去するためのプロセスに関する。1つの典型的な手法において、錯体化またはキレート化された陽イオンが、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて生体液試料から除去される。
【0043】
イオン交換樹脂は、水不溶性材料であり、しばしばポリマー鎖の繰り返し位置における共有結合している塩形成基を含む架橋ポリマーである。イオン交換媒体は合成物質(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スルホン化スチレン、スルホン化ジビニルベンゼンのポリマーまたはコポリマー)、または部分的に合成物質(例えば変性セルロース及びデキストラン)であることができる。イオン交換はまた、無機、例えば、自然状態またはイオン基を添加することによる修飾状態のシリカゲルまたはアルミノシリケートであることができる。
【0044】
官能基の変化は、樹脂に引きつけられ得るイオン種を決定する。例えば、いくつかのカチオン樹脂は概して、負に帯電しそれによって正に帯電した陽イオンを引きつけるスルホン酸基を含有する。いくつかのアニオン樹脂は、正に帯電しそれによってアニオン性基を引きつけるアミン系官能基を含有する。
【0045】
陽イオン交換樹脂は、錯体がその後の酸処理で分解されるときに、溶液から陽イオンを除去するために用いられ得る。例えば、Amberlite(商標)IRC−718キレート樹脂(Rohm and Haas)は、イミノ二酢酸官能性を有し、二価の金属イオン、Fe2+、Cu2+、Zn2+、及びNi2+を選択的に錯体化する。Raynal, T. et al., J Biol Chem. 2003 Aug 1 ;278(31):28703−10を参照されたい。
【0046】
他の実施態様において、Resintecから入手可能なSACMP、強酸性イオン交換樹脂が、ナトリウム溶液を用いた交換によって水素型から変換されナトリウム型を生成し、次いで唾液からカルシウムを除去するために利用される。
【0047】
陰イオン交換体は、弱または強として分類され得る。本明細書で用いる場合、「弱陰イオン交換媒体」または「弱陽イオン交換体」は、荷電基が、脱プロトン化体になりそれゆえに高pHにてその電荷を失う弱塩基である交換体である。一方で、「強陽イオン交換体」は、強塩基として機能し、1〜14のpHにわたって正に帯電したままである。
【0048】
陽イオン交換媒体もまた、弱または強のいずれかとして分類され得る。「強陽イオン交換媒体」または「強陽イオン交換体」は、1〜14のpHで電荷を維持する強酸(スルホプロピル基等)を含有する。一方で、「弱陽イオン交換媒体」または「弱陽イオン交換体」は弱酸(カルボキシメチル基等)を含有し、pHが4または5未満に低減するとき、徐々にその電荷を失う。
【0049】
分析に干渉するために試料の分析前に除去されなければならない試料成分の性質に依存して、任意の種類のイオン交換材料が、分析前の生体液試料を処理するために用いられ得る。
【0050】
陽イオン交換樹脂の具体例には、限定されるものではないが、AMBERJET(商標)1200(H); Amberlite(商標)CG−50、IR−120(plus)、IR−120(plus)ナトリウム型、IRC−50、IRC−50S、及びIRC−718; Amberlyst(商標)15、15(wet)、36(wet)、A−21、A−26ホウ化水素、臭化物、クロム酸、フッ化物、及び三臭化物; 並びにDOWEX(商標)50WX2−100、50WX2−200、50WX2−400、50WX4−50、50WX4−100、50WX4−200、50WX4−200R、50WX4−400、HCR−W2、50WX8−100、50WX8−200、50WX8−400、650C、MARATHON(商標)C、DR−2030、HCR−S、MSC−1、88、CCR−3、MR−3、MR−3C、Fiban(商標)、及びRetardion(商標)が含まれる。
【0051】
陰イオン交換樹脂の具体例には、限定されるものではないが、AMBERJET(商標)4200(Cl); Amberlite(商標)IRA−67、IRA−400、IRA−400(Cl)、IRA−410、IRA−743、IRA−900、IRP−64、IRP−69、XAD−4、XAD−7、及びXAD−16; AMBERSORB(商標)348F、563、572、及び575; DOWEX(商標)1X2−100、1X2−200、1X2−400、1X4−50、1X4−100、1X4−200、1X4−400、1X8−50、1X8−100、1X8−200、1X8−400、21K Cl、2X8−100、2X8−200、2X8−400、22 Cl、MARATHON(商標)A、MARATHON(商標)A2、MSA−1、MSA−2、550A、66、MARATHON(商標)WBA、及びMARATHON(商標)WGR−2; 並びにMerrifieldのペプチド樹脂が含まれる。
【0052】
イオン交換粒子の大きさは概して約2ミリメートル未満、好ましくは約1000マイクロメートル未満、さらに好ましくは約500マイクロメートル未満、さらに好ましくは約150マイクロメートル未満(約40標準メッシュ)である。商業的に入手可能なイオン交換樹脂(Amberlite(商標)IRP−69、INDION(商標)244、及びINDION(商標)254、並びに多くの他の製品)が、概していくつかの粒子径範囲で入手可能であり、多くが150マイクロメートル未満の入手可能な粒子径範囲を有する。
【0053】
粒径は重要変数ではない。イオン交換樹脂は様々な大きさの空孔を有し、活性剤の結合に利用可能な面積を拡大する。代表的な空孔径は、約30〜300ナノメートル(nm)の範囲内であるが、500〜2000nm等のより大きな空孔を有する樹脂も使用され得る。
【0054】
イオン交換媒体の最終濃度は、処理される試料の種類及びイオン交換媒体のイオン交換容量に依存するが、分析される試料中の干渉の可能性があるイオンを効果的に除去するのに十分でなければならない。
【0055】
イオン交換媒体の容量は大きく変化することができ、概して乾燥樹脂1グラムあたりのミリグラム当量(meq)を単位として規定される。好ましい実施態様において、イオン交換樹脂は、分析される試料に接する前に、水で平衡化される。必要なイオン交換媒体の最小量は、処理される試料の代表的組成を測定または見積もり、次いで特定の大きさの試料を効果的に処理するのに必要なイオン交換媒体の量を計算することによって計算され得る。唾液からカルシウムを除去する場合、例えば、唾液が約2ミリモル/Lのカルシウムを含有することが知られている。したがって、1mlの唾液試料は、0.002ミリモルのカルシウムを除去するのに十分なイオン交換媒体を必要とするだろう。
【0056】
唾液を処理するための1つの好ましいイオン交換媒体は、Amberlite748、4.4meq/gの交換容量を有するキレート型イオン交換媒体である。したがって、1mlの唾液は、少なくとも2mgの樹脂が必要になる。概して、分析前に生体液試料を処理するときに、5倍過剰〜20倍過剰が使用される。唾液を処理するための他の好ましいイオン交換媒体として、Fiban、繊維系イオン交換媒体、及び官能化セルロースから調製されたイオン交換フィルター紙または繊維または粉末が挙げられる。
【0057】
D. 生体液の物理的または化学的特性を測定するための方法及び組成物
本明細書には、対象から収集される生体液の物理的または化学的特性を測定するための組成物及び方法が提供される。本方法を実行する上で、(1)生体液が対象から収集される;(2)生体液がイオン交換媒体で処理される;(3)既知の物理的または化学的特性を有するヒドロゲルセンサーを含む装置であって、物理的または化学的特性の初期値が知られているヒドロゲルセンサーを含む装置が提供される;(4)イオン交換材料で処理された試料が、ヒドロゲルセンサーに接して置かれる;(5)イオン交換材料で処理された試料に曝露した後で、ヒドロゲルセンサーの物理的または化学的特性、例えば体積変化、または電気的特性の変化、例えばヒドロゲルの交流伝導率、静電容量、若しくは抵抗が評価される;並びに(6)ヒドロゲルセンサーの物理的または化学的特性の変化と、生体液試料の特定の物理的または化学的特性とを関連づける。
【0058】
試料収集及びイオン交換媒体の処理の任意の手段を用いて、分析用に生体液試料を調製することができる。試料収集容器は概して使い捨てであり、所定量のイオン交換媒体を含み、且つ所定の試料体積を収集するように設計されている。試料体積は概して約150〜250マイクロリットル(uLs)であるが、当業者に理解されるように、試料の大きさは変化してもよく、反応条件に応じて200uLsよりも大幅に大きいかまたは小さくてもよい。試料分析を行う前に、生体液試料のイオン交換媒体処理は概して、分析前に干渉イオン性物質が試料から除去されるように、生体液試料及びイオン交換媒体を平衡に到達させることができる条件下でイオン交換媒体を試料に曝露することを含む。
【0059】
生体液試料の分析を行う上で、センサーは、光学屈折計、干渉計、または1つ若しくは複数のヒドロゲルの測定可能な物理的特性の変化を検出することができる1以上の電気回路などの検出手段を含む。特定の実施態様において、ヒドロゲルの体積は、マイクロカンチレバーによって監視される。センサーの特定の物理的または化学的特性を、生体液試料をセンサーに導入する前及び後に測定することができ、その結果を比較してマイクロカンチレバーの1つまたは複数の物理的特性の変化及び変化の割合が検出される。次いで、その変化自体は、例えば唾液試料の重量オスモル濃度と関連し得る。本方法のこの典型的な用途において、変化の割合は、同様に唾液試料の重量オスモル濃度に対応するマイクロカンチレバーのアームのたわみ度合いに対応する。
【0060】
本装置は、センサーの測定可能な物理的または化学的特性の変化を検出するための手段を含む。当業者に理解されるように、抵抗は、マイクロカンチレバーの変化を検出するために用いられる測定可能な物理的特性の一例である。他の例には、限定されるものではないが、ヒドロゲルの化学的または物理的変化に対応して変化する、光透過率(光学濃度)、屈折率、及び交流伝導率が含まれる。
【0061】
E. 生体液の化学的及び物理的特性
本明細書に記載される方法及び装置は、ヒドロゲルを含むセンサーを用いて測定され得る生体液の任意の化学的または物理的特性の測定において有用性を見出す。
【0062】
典型的な化学的特性は、グルコース、クレアチニン、尿素、コルチゾール、総タンパク量、総電解質量、総エストロゲン量、総プロゲステロン量、総テストステロン量、陽イオン、例えばナトリウム(Na+)、カルシウム(Ca+)、カリウム(K+)、またはマグネシウム(Mg2+);陰イオン、例えば塩化物(Cl-)、フッ化物(Fl)、臭化物(Br)、硫酸塩(SO42-)、硝酸塩(NO3-)、炭酸塩(CO32-)、重炭酸塩(HCO3-)、または他の既知のバイオマーカー等の特定の成分の濃度からなる群から選択される。
【0063】
典型的な物理的特性は、所定波長における吸収、密度、電気導電性、pH、重量オスモル濃度、容量オスモル濃度、熱転写、粘度、誘電率、屈折率、または光散乱からなる群から選択される。
【0064】
F. 唾液
唾液は、分析用に優れた生体液である。唾液は、非侵入性技術を用いて容易に収集され、試料は複数の時点にて容易に収集され得る。
【0065】
唾液を分析することは、そのタンパク質の量及び他の潜在的不純物のために、血清または血漿を分析することに似ている。
【0066】
理論に束縛されるつもりはないが、唾液中には多くのタンパク質、例えばムチンがあり、生体液の分析に干渉し得る。唾液模倣溶液または唾液類似物が形成されてムチンを含む場合、ムチンはヒドロゲルセンサーの挙動に干渉し、唾液試料の正確な分析を妨げ得ることが示唆される。ムチンは、粘膜面から分泌される高度にグリコシル化されたタンパク質のファミリーであり、ムチンはヒト唾液の粘度及び「糸挽き(stringiness)」に大きく関与する。ムチンは、比較的豊富であるが、ヒト唾液中で幅広い濃度変化がある。
【0067】
分析用に唾液試料を調製する上で、安定した読み出し及び正確且つ再現性のある結果が得られるように試料を処理することが必要である。下記に提供される例で記載されるように、イオン交換媒体を用いて唾液などの生体液試料を処理することは、本明細書に記載されるヒドロゲルセンサーを用いて安定で一貫性のある結果を生むのに効果的であった。
【0068】
唾液重量オスモル濃度の測定用装置に用いられるヒドロゲルセンサーは概して、50〜250mOsmの範囲の重量オスモル濃度の変化に反応するヒドロゲルを含む。
【0069】
G. 生体液の物理的及び化学的特性を測定するための装置
イオン交換媒体で処理した生体液の化学的または物理的特性を評価するための本方法は概して、感度が高く高度に選択的なセンサーを含む装置を用いて達成される。本装置は、基板上の定位置に固定されたセンサー材料、可変アーム、及びアームの動作に反応して検出可能な信号を発生する信号発信部品から構成される。装置の感度は、目的の標的分子に反応して相変化等の大きな体積変化を受けるセンサー材料、例えばヒドロゲルを用いることによって向上される。センサー材料の体積変化は、特定の化学物質の存在、pH、重量オスモル濃度、温度変化、またはアームを動かして信号発信部品(例えばピエゾ抵抗体)に検出可能な信号(例えば抵抗の変化)を発生させるヒドロゲルの環境の変化に反応して起こり、それによってイオン交換媒体で処理した生体液における化学物質またはオスモルの存在/量が示される。
【0070】
本明細書に記載される方法及び装置は、イオン交換媒体で処理された生体液とヒドロゲルセンサーとを接触させることによってイオン交換媒体で処理された生体液の化学的または物理的特性を評価するための手段を提供する。一実施態様において、マイクロカンチレバーのたわみ可能なアームが、ヒドロゲルセンサーに隣接して及び接触して位置する。他の実施態様において、イオン交換媒体で処理された生体液試料に関する特定の化学物質の存在下で、ヒドロゲルセンサーは体積変化を受け、膨張によって、たわみ可能なマイクロカンチレバーのアームが上方にたわむ。さらに他の実施態様において、ヒドロゲルは体積変化以外の(すなわち膨張または収縮以外の)物理的または化学的変化を受ける。その例には、ヒドロゲルの交流伝導率、静電容量、イオン移動度、抵抗、光透過率、蛍光性、屈折率、または粘弾性特性が含まれる。
【0071】
別法では、他の実施態様において、イオン交換媒体で処理された生体液試料の特定の物理的特性に反応して、ヒドロゲルは、マイクロカンチレバーのたわみ可能なアームの上方への移動をもたらす体積の縮小を受ける。イオン交換媒体で処理された生体液試料の化学的または物理的特性を評価するための装置は、例えば、本明細書に参照によって明確に組み込まれる米国特許出願公開第20070249059号に記載されている。
【0072】
一実施態様において、ヒドロゲルはマイクロカンチレバーの片側に配置される。他の実施態様において、マイクロカンチレバーは、検出材料を含む表面から離された基板上に形成される。常用の半導体加工技術を用いて、マイクロカンチレバーを形成してもよい。様々な構成及び方向のマイクロカンチレバーを使用してもよい。マイクロカンチレバーは、マイクロカンチレバーの基板の端を越えるオーバーハング部分を含み、且つ検出材料を含む基板及び表面が、マイクロカンチレバーのたわみ可能なアームが検出材料の上および検出材料に接して配置されるように、互いにごく接近して配置されることを可能にする。マイクロマニピュレーターは、部品を配置し整列するために用いられ得る。マイクロカンチレバーのたわみ可能なアームは、ヒドロゲルセンサーの体積変化に反応してたわみ可能なアームがたわむときに変化する少なくとも1つの測定可能な物理的特性を含む。また、本明細書に記載される装置は、たわみ可能なアームの位置の変化を検出する様々な電気回路の形態の検出手段を提供する。
【0073】
マイクロカンチレバーは、イオン交換媒体で処理された生体液試料について測定された変化と、生体液試料の化学的または物理的特性とを関連付けるように調整され得る。生体液の化学的または物理的特性が検出できない場合、例えば特定の化学分析物が存在しない場合、マイクロカンチレバーはたわまないので、イオン交換媒体で処理された生体液試料の導入前及び後に行われる測定値は、実質的に同じとなる。
【0074】
1つの好ましいセンサーは、ピエゾ抵抗マイクロカンチレバー20μM幅、300μM長さ、及び3μM厚み、並びに周囲のダイ、並びにワイヤーボンディングコネクター及びメスのピンブロックを含む、微小電気機械システム(MEMS)装置である。カンチレバーを横切る公称抵抗値は2.2キロオームであり、カンチレバーの先端がニュートラルから1ミクロンたわむと約1オーム増加する。この実施態様において、ヒドロゲルの膨張がマイクロカンチレバーをたわませるように、ヒドロゲルは硬質基板に固定され、マイクロカンチレバーに対向して配置される。
【0075】
本装置は、マイクロカンチレバーのアームの非常に小さい動作に反応して、または共鳴装置においては、それが接触する材料のレオロジー特性に反応して、抵抗、共振周波数、電気出力、または静電容量の変化等の変化を受ける。
【0076】
H. ヒドロゲル
検出プロセスの際に、センサー材料は、ヒドロゲルシートの、例えば厚みが、約5、10、20、50、または100マイクロメートル拡大するか、または0.5%以上、1%以上、5%以上、または10%以上縮小する体積変化を受け、相変化を含み得る1〜1000Å以上の動作を検出することができるアームによって検出される。
【0077】
ヒドロゲルは、架橋して水膨潤性であるが水不溶性構造を形成する親水性ポリマーの三次元ネットワークである。ヒドロゲルという用語は、乾燥状態(キセロゲル)並びに湿潤状態の親水性ポリマーに適用される。これらのヒドロゲルは、本明細書に参照によって明確に組み込まれる米国特許出願公開第20070249059号に記載されるように、多くの方法で架橋され得る。別法では、ヒドロゲルは、イオン種を用いるか若しくは物理的架橋をもたらす自己会合モノマーの導入によって架橋され得るか、または相互侵入網目構造に取り込むことによって効果的に不溶性にされ得る。
【0078】
典型的なヒドロゲル化学センサー材料には、部分的に加水分解されたポリ(酢酸ビニル)(PVA)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(PEVA)、改質PEVA、ポリ(4−ビニルフェノール)、ポリ(スチレン−co−アリルアルコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アルキルエーテル)、例えばポリ(エチレンオキシド)、及びポリ(エチレンオキシド)コポリマーポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、またはメタクリレート、またはアクリルアミド、例えばヒドロキシエチルアクリレート、及びヒドロキシプロピルアクリレート、置換または非置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、例えばn,n−ジメチルアクリルアミド、n−イソプロピルアミド、並びに他の既知のヒドロゲルが含まれる。
【0079】
完全に機能的なセンサーの基本構成の一例は、センサーのニュートラル抵抗を決定し、次いでヒドロゲルが膨潤するにつれてカンチレバーをたわませるように、基板とヒドロゲルとをダイに取り付けることを含む。この例示的方法において、ヒドロゲルポリマーを、直径約25μmを有する繊維として引き出して硬化することができ、約200μmの長さ部分に切断することができ、シランで処理されたシリコンウエハの断片上で硬化してもよい。次いで、この断片は、エポキシでセンサーに対して取り付けられ、「ヒドロゲル繊維センサー」を形成する。
【0080】
別法では、シラン処理されたシリコンウエハの表面は、均一な連続層で、ヒドロゲルポリマー溶液でコーティングされ得る。これは、注がれたポリマーのニュートラル表面張力、スピンコーティング、または湿潤ヒドロゲルポリマーの上部に配置されたマイラー(Mylar)フィルムの低表面エネルギー側からの表面反発(surface repulsion)によって達成され得る。また、ヒドロゲルセンサーはフォトリソグラフィー法を用いて容易に調製され得る。
【0081】
I. 有用性
概して、生体液は、分析前に処理されて、干渉タンパク質または他の生体分子を除去しなければならない。処理ステップは、生体試料の分析において正確で一貫性のある結果を得ることに困難性を示し得る。データの信頼性及び再現性が重要であることから、データエラーを減少する簡単で効果的な試料調製方法が高く望まれている。
【0082】
また、持ち運びが可能であり、簡単で、すぐに使用されるものであり、正確な分析結果を提供する、生体液の化学的または物理的パラメータを評価するための非侵入性手段が望まれる。したがって、カンチレバー系センサーシステムを含む手持ち式装置を用いて生体液試料の物理的または化学的特性を分析するための本装置、方法、及びシステムに有用性がある。本発明は、このニーズに対応する。
【0083】
眼表面は、健康及び機能を維持するために完全な涙液膜を必要とする。涙液の適切な生成、保存、及びバランスのとれた排出は、このプロセスに必要である。これらの成分のいかなるアンバランスも、ドライアイの条件につながり得る。涙液膜へのインプット及びアウトプットのバランスを捕捉する簡単な生物物理学測定値は、涙液重量オスモル濃度である。涙液の高重量オスモル濃度は、不快感、眼表面の損傷、及びドライアイの炎症の主要因である。高重量オスモル濃度は、眼の乾燥をもたらす2つの経路、涙液の分泌の減少か涙液の蒸発の増加のいずれかから得られ得る。したがって高重量オスモル濃度は、全てのケースのドライアイ疾患についての共通の特徴と考えられる。
【0084】
重量オスモル濃度を含む涙液膜の特性についての迅速で正確な測定のニーズが存在する。使いやすい涙液膜の浸透圧計は、例3に記載するように、マイクロファイバーの陽イオン交換樹脂をマイクロカンチレバーセンサーにコーティングすることによって構成された。
【0085】
血清または血液の重量オスモル濃度の分析は、血液の液体部分に溶解した化学物質の量を測定する。血清重量オスモル濃度に影響する化学物質には、ナトリウム、塩化物、重炭酸塩、タンパク質、及び糖類(グルコース)が含まれる。血清重量オスモル濃度の分析は、静脈または手掌での採血から得られる血液サンプルについて行われる。血清重量オスモル濃度を測定して:(1)血液中に溶解した水と化学物質との間のバランスを検査;(2)深刻な脱水または水分過剰が起こってないかを測定;(3)視床下部による抗利尿ホルモン(ADH)の生成を評価;(4)体の中の水と電解質とのアンバランスによって引き起こされ得る発作または昏睡の原因を究明;(5)ヒトが所定の毒を飲み込んだかどうかを決定する。血清の標準値は、280〜295mOsm/L、または1キログラムあたり約280〜303ミリオスモル(mOsm/kg)である。
【0086】
標準よりも高い血清または血液重量オスモル濃度は、(a)脱水症;(b)尿崩症;(c)高血糖症;(d)高ナトリウム血症;(e)メタノールの摂取;(f)エチレングリコールの摂取;(e)腎尿細管壊死;(f)ADHの分泌不足をもたらす脳卒中または頭蓋骨損傷(頭蓋尿崩症);または(g)尿毒症を示し得る。
【0087】
標準よりも低い血清または血液重量オスモル濃度は、(a)水分の過剰摂取;(b)低ナトリウム血症;(c)水分過剰;(d)肺ガンと関連する腫瘍随伴症候群;または(e)ADHの異常分泌を示し得る。
【0088】
全血及び血清の重量オスモル濃度は、凝固点または蒸気圧浸透圧計を用いて一般的に測定される。本センサーが用いて、例3に記載されるように全血の重量オスモル濃度を効果的に測定した。
【0089】
本方法及びシステムは、例証として提供され、いかなる方法でも本発明を制限するものではない次の例を参照することによって記載される。当技術分野で周知の標準的技術または次に具体的に記載する技術が利用される。それゆえに、説明及び例は、例となる実施態様についての添付の記載によって説明される本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0090】
材料及び方法
A.検出ヒドロゲルの調製
浸透圧性応答性ヒドロゲル前駆体を、85:15:1のヒドロキシプロピルアクリレート、アクリルアミド、及びアクリル酸の混合物を重合することによって調製した。重合は、開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル(Aldrich Chemical)を利用して、70:30w/wの水及びジメチルホルムアミドの混合物中で行った。得られたポリマーは、そのまま利用したか、または熱水で洗浄して精製した。センサー材料の1種を、ヒドロゲル前駆体を架橋剤と組み合わせて、基板上にフィルムをキャストすること、または繊維を引き出し、その後にその材料を乾燥及び硬化することによって調製した。好適な硬化剤の例には、Cymel327(Cytec)、ポリアジリジン(Cytec)等のアミノプラスト樹脂、亜鉛またはジルコニウム等の多価の金属イオン、多官能性イソシアネート、CX−100(DSM)等の多官能性アジリジン、または幅広い他の商業的に入手可能な反応性硬化剤等が含まれる。別法では、ヒドロゲルを、少量の多官能性モノマー、例えばエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、または他の多官能性材料(例えば商標名EbercrylでCytecから、またはSartomerから提供される材料)を含むヒドロゲル前駆体モノマーの混合物を重合することによって、所定位置に形成した。センサーを形成する便利な方法は、フォトマスク及び紫外光を使用することにより、前駆体材料を選択的に架橋するかまたは重合して、特定の厚み、形状、及び大きさのヒドロゲルを形成する。
【0091】
ヒドロゲル系センサーの調製は、本明細書に参照によって明確に組み込まれる、米国特許出願公開第20050164299号;Trinh et al, Electronics System Integration Technology Conference, Sept. 2006, Volume 2: 1061−1070; Sorber et al., Anal Chem. 2008 Apr 15;80(8):2957−62. Epub 2008 Feb 28; 及びRichter et al., 「Review on Hydrogel−based pH Sensors and Microsensors」 in Sensors, 2008, 8: 561− 581 (566−571頁を参照)等の多くの刊行物に記載されている。
【0092】
重量オスモル濃度を測定するためのセンサーは、ピエゾ抵抗マイクロカンチレバー(Cantimer, Inc., Menlo Park CA)を利用して構成される。利用されるカンチレバーは、おおよそ長さ200μm×幅20μm×厚み3μmの寸法を有する。第2のシリコン基板パターンを、おおよそ厚み25μm及び直径100μmのヒドロキシプロピルアクリレート系ヒドロゲルディスクを用いてUVリソグラフィーによってコーティングした。カンチレバーの約1/4がヒドロゲルと接するかまたは直接上になるように、コーティング基板を個片化して光硬化性エポキシ樹脂を用いてカンチレバー基板に結合した。センサーを、pH9に調節された50mOsmolの塩化ナトリウム溶液中で平衡化し、次いで、使用前に脱イオン水でリンスした。それぞれのセンサーについて基準のカンチレバー抵抗を測定し、センサーを様々な範囲の緩衝塩溶液に曝露することによって検量線曲線を準備した。
【0093】
B. 溶液重量オスモル濃度の測定
溶液重量オスモル濃度の測定を、1.7mLのVWR微小遠心管に1mLの分析対象物を充填し、これを蒸留水で充填したFischer Scientific 9110循環チラーに接続された流水温度制御ブロック中に置くことによって行った。特に断りがなければ、循環チラーは、温度25℃を維持するように設定した。センサーを、温度制御ブロック中に配置した微小遠心管内に入れたワイヤハーネスに接続した。ブロックの周囲に配置した発泡断熱材が、さらなる温度制御を提供した。
【0094】
ヒドロゲルセンサーを、ダイの全体が浸漬するように液体試料中に置いた。マイクロカンチレバーの抵抗を、1Hz〜1/10Hzのサンプリング周波数で、Agilent34970Aデータ収集システムを用いて、追跡した。カンチレバーの抵抗変化が安定したとき、その値を記録し、(Fiske110凝固点降下浸透圧計によって測定される)既知の重量オスモル濃度の標準NaCl溶液中で生成した抵抗に由来したセンサーに特有の曲線と比較し、試料の溶液重量オスモル濃度を測定した。
【0095】
C.唾液の重量オスモル濃度の測定
ボランティアから得られた唾液試料を、吐出物を介して、ガラス小瓶に収集した。ボランティアには、試料を提供する前に、少なくとも30分間、飲食行動をやめるように指示した。上記のセクションAで記載したように、測定用に、初期試料を、0.5mLのアリコートにピペットで取り微小遠心管内に入れた。分析前に唾液試料について、ろ過、精製、または遠心分離を行わなかった。唾液をはき出す行為及び試料を提供する心理的期待を除いて、刺激無しに収集した。
【0096】
例1
試料調製の標準方法と比較した未処理の唾液試料の重量オスモル濃度の測定
A.未処理の唾液試料の重量オスモル濃度の測定
ヒドロゲルセンサーを用いて唾液から重量オスモル濃度のデータを得るための最初の試みは、不安定な重量オスモル濃度の読み出し及び一貫性がない結果が得られた。ヒト唾液の重量オスモル濃度を測定する試みは、遅く、不正確で、再現性がなく、並びに(凝固点降下浸透圧法によって測定される)同様の重量オスモル濃度の食塩水のセンサー測定値と比較すると上昇したセンサー測定値をもたらした。
【0097】
より具体的には、ヒドロゲルセンサーを未処理の唾液試料中に直接置くと、センサーの反応が15分〜1時間以上かかり、0.1オーム/分未満のカンチレバー抵抗の変化率を達成するだろう。同一の唾液試料について繰り返し測定すると、特に別々の試料に分けた場合には、一貫性のない結果が得られた。
【0098】
カンチレバー抵抗は、ヒドロゲルの膨潤状態と関連性がある。帰属(imputed)重量オスモル濃度の測定値は上昇した。言い換えれば、唾液試料中でのヒドロゲルの膨潤は、測定対象の唾液試料と同じ重量オスモル濃度の食塩水溶液中のヒドロゲルによって起こる膨潤よりも大幅に小さかった(図1)。
【0099】
B.活性炭で処理された唾液試料の重量オスモル濃度の測定
ろ過前の活性炭処理を、唾液から干渉材料を除去して唾液試料の重量オスモル濃度の測定におけるヒドロゲルセンサーの反応の安定性及び正確性を改良するために取り得る方法として評価した。唾液試料を、0.1g/mlまたは0.3g/mlの活性炭とともに、15分間、封止した小瓶内で保管することによって処理し、ヒドロゲルセンサーを用いて、凝固点降下浸透圧法によって重量オスモル濃度を測定するために、微小遠心管内にピペットで取った。
【0100】
センサー#485について図2に示す結果は、重量オスモル濃度をヒドロゲルセンサーを用いて評価した場合に、活性炭処理が結果を向上しなかったことを示す。図2は、ヒト唾液試料(485唾液)、参照NaCl溶液(484模倣物(mimic))、及び0.1g/mlの活性炭、0.3g/mlの活性炭、0.1g/mlの活性炭で処理した唾液試料(それぞれ、485 0.1g/ml 炭素、485 0.3g/ml 炭素、485 0.1g/ml 炭素)についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム;センサー485)のグラフ図である。
【0101】
7人のボランティアの、オリジナル及び活性炭処理後の唾液試料の間の重量オスモル濃度の差を示す図3に示すように、活性炭処理の後、唾液試料の重量オスモル濃度が、減少した。図3は、7人のボランティアの、個々の唾液試料への活性炭処理(0〜0.6g/ml)の効果を、非炭素処理唾液試料からのパーセント(%)の差として表したグラフ図を提供する。7つの対象のそれぞれの唾液についての重量オスモル濃度の減少は、炭素が、唾液から溶質をうまく吸着したことを示すが、不安定な読み出し及び一貫性がないことの問題を解決しなかった。
【0102】
重量オスモル濃度の減少は、炭素が、唾液から溶質をうまく吸着したことを示すが、未処理唾液試料にみられた不安定な重量オスモル濃度の読み出し及び一貫性がない結果の問題を解決しなかった。
【0103】
C.遠心分離によって処理されたモデル試料の重量オスモル濃度の測定
干渉唾液成分についてのモデルとしてムチンを使用して、唾液模倣溶液を含むムチンを、0.45μM及び100kMWCO(分子量カットオフ)遠心分離フィルターを用いた遠心分離ろ過を使用して、調製及び加工した。100kMWCOろ過は、ムチン溶液中のヒドロゲルセンサーの反応をやや改良することが分かったが、生産性が低く、ポータブル装置用には非実用的な取り扱い性をもたらした。
【0104】
D.凝集剤添加により処理した唾液試料の重量オスモル濃度の測定
ヒドロゲルセンサーを用いた重量オスモル濃度の測定前に、一般的な「プールクリーナー(pool cleaner)」タイプの陽イオン凝集剤を、唾液試料からより大きい生体分子を沈殿させるために、唾液試料に添加した。凝集剤を、1mLの唾液につき2μLの濃度にて添加し、混合した。試料を、10分間、微小遠心管(最高速度におけるEppendorf 5415C)で沈降させた。上述のように、上澄みをピペットで取り出し、ヒドロゲルセンサー及び凝固点降下浸透圧法を用いてサンプリングした。
【0105】
例2
イオン交換樹脂で処理された唾液試料の重量オスモル濃度の測定
唾液重量オスモル濃度の正確で一貫性のある測定が、ヒドロゲルセンサーを用いた重量オスモル濃度の測定前のイオン交換樹脂を用いた試料処理によって達成され得るかどうかについてさらなる調査を行った。
【0106】
結局、所定のイオン交換樹脂を用いた唾液試料の処理が、凝固点降下法を用いて得られる結果と一致する、ヒドロゲルセンサーを用いた唾液重量オスモル濃度の正確で一貫性のある測定をもたらすことが、測定された。
【0107】
調査を行う上で、検出ヒドロゲルを、使用前に1時間、低濃度(0.05M)の水酸化ナトリウムに浸漬した。
【0108】
その結果は、唾液重量オスモル濃度をヒドロゲルセンサーを用いて測定したとき、約20秒〜約5分以上の時間の、約0.001meq交換容量/ml〜約0.05meq交換容量/mlの最終濃度における様々な陽イオン交換またはキレート樹脂を用いた処理が、一貫性があり正確な値をもたらしたことを示した。
【0109】
イオン交換樹脂(IER)で処理された唾液試料
唾液試料を、個々から収集して、250マイクロリットルの唾液を微小遠心管に添加した。
【0110】
IER処理の前及び後に、試料の重量オスモル濃度をFiske310浸透圧計で測定した。次いで、全ての試料を一晩、冷蔵保存し、次の日にセンサーについて試験した。
【0111】
ヒドロゲルセンサーを用いて唾液等の生体液の物理的または化学的特性を分析するとき、干渉陽イオン、例えば二価のカルシウムイオンが、正確で信頼性があり再現性がある結果を得ることを困難にさせる要因であるという仮説を検証するため、さらなる調査を行った。多くのカルシウムキレート剤を試験して、キレート剤からのヒドロゲルの干渉がなければ、センサー反応が改良され、参照の生理食塩水(NaCl)溶液を用いて得られたものに近い結果を生じることが示された。例えば、酸の量を試料のカルシウム量に正確に合わせなければ、カルシウムをキレートする酸の添加は、試料のpHをシフトさせ、ヒドロゲルの挙動に干渉する。
【0112】
1つの調査において、活性炭処理(0〜0.6g/ml)を、ヒトボランティアからの唾液試料のAmberlite(商標)718処理と比較した。図7Aは、活性炭で処理した唾液(炭素処理唾液)及び181mOsmNaCl溶液(NaCl 181mOsm)と比較したイオン交換樹脂で処理した唾液(イオン交換処理唾液)についての、溶液重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。図7Bは、緩衝NaCl(NaCl緩衝(従来))及びNaCl対照(NaCl 181)と比較したイオン交換樹脂で処理した唾液1X(1X処理唾液)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。緩衝NaCl溶液は、CO2雰囲気及び温度変化に曝露したにもかかわらず溶液のpHが安定を維持するように、平衡状態にある少量の弱酸及び塩基(リン酸水素ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム)を添加した蒸留水及び塩化ナトリウムを含む。
【0113】
特に、カルシウム等の二価の陽イオンを結合することが知られているイオン交換樹脂(IER)は、非常に効果的であることが分かった。さらに、試料調製においてIERを用いることは、ヒドロゲルセンサーを用いた唾液などの生体液の重量オスモル濃度を分析するときに、正確で、信頼性があり、再現性がある結果を得るために、正確な量の樹脂を必要としないという利点を提供する。言い換えれば、IERが少し過剰でも、センサー反応のタイミングや大きさ並びに試料重量オスモル濃度は変わらなかった。
【0114】
さらなる調査において、唾液を、小瓶の中で、0.46g/mL及び0.92g/mLの間の濃度におけるIERに曝露(IERで処理)した。IERは管の底部に沈降し、上澄みの唾液重量オスモル濃度を測定した。IERに曝露した直後の唾液試料の物理的観察によって、唾液の粘度及び「糸挽き」が大幅に減少したことが示された。これらの観察は、唾液の分解(deaggregation)が、唾液試料の重量オスモル濃度の測定におけるヒドロゲルセンサー反応の正確性及び一貫性を大幅に改良したことを示す。
【0115】
0.92g/mLのIERを唾液に添加することによって、単純なNaCl溶液についてのヒドロゲルセンサーの値に合ったヒドロゲルセンサーで測定された重量オスモル濃度の値が得られた。効果的なイオン除去のためのイオン交換媒体の量の上限は、乾燥樹脂(水を吸収することによって重量オスモル濃度を増加させる)または水を添加した樹脂(重量オスモル濃度を減少させる)から得られる重量オスモル濃度の変化によって影響される。概して、水溶性イオン交換媒体は、重量オスモル濃度に寄与し、エラーを招く可能性がある。このように、水を吸収しないイオン交換媒体は、試料に添加することができる量についての上限を有する可能性は低く、試料に接触する物理的性能を除いて、ヒドロゲルセンサーを用いて信頼性があり正確な重量オスモル濃度の結果を生じる。また一方、水吸収樹脂を用いると、試料への大量のイオン交換媒体の添加は、エラーを招き得る。
【0116】
両方について0.46g/mLのIERで処理した試料は、3つのセンサーについて同時に1日目を経過した。両方について0.92g/mLのIERで処理した試料を冷蔵し、3つのセンサーについて同時に翌日を経過した。0.46g/mLのIERで処理した試料は良好な結果を示したが、0.92g/mLのIERで処理した試料はさらに良好な結果を示した。最悪の場合では、IER処理は、最初の唾液重量オスモル濃度の読み出しを5mOsm変更した。唾液データ点は、緩衝NaClを用いた参照の測定値の周辺の予測されたばらつきに適合する。
【0117】
B.イオン交換樹脂またはクエン酸で処理した唾液試料
他の調査において、唾液試料を、個々から収集し、微小遠心管内に12の二次試料に分けた。6つの試料をAmberlite(商標)718樹脂で処理し、6つの試料をクエン酸で処理した。Amberlite(商標)718樹脂を、約0.46g/mLの濃度にて唾液に添加し、クエン酸を約0.08g/mLの濃度にて唾液に添加した。クエン酸の量は、報告された標準範囲のヒト唾液のCa2+イオンを錯体化させるのに十分であるように若干過剰に計算した。クエン酸は、水溶液から沈殿するカルシウム、クエン酸カルシウムと不溶性錯体を形成する。
【0118】
IER及びクエン酸処理の前及び後に、試料の重量オスモル濃度をFiske310浸透圧計で測定した。10μLの1603mOsmのCaCl2溶液を、6つのIER処理唾液試料のうちの3つ及び6つのクエン酸試料のうちの3つに添加し、0.2mg/mL(唾液のカルシウム含量について報告された文献の値より大きい)のカルシウム濃度をもたらした。次いで全ての試料を一晩冷蔵し、次の日にセンサーについて試験した。
【0119】
表1
唾液重量オスモル濃度の測定についての活性炭、クエン酸、及び様々なIERの濃度の効果
【表1】

【0120】
唾液試料の処理及び測定を組み合わせた単一センサーを次のように調製した。浸透圧センサーを上述のように構成し、5点のNaCl検量線を得た。
【0121】
0.15gの繊維状陽イオン交換材料(Whatman P11リン酸セルロース)を小瓶内で1mLのDI水と混合した。0.1MのNaOHを用いてpHを調節した。次いで、繊維がセンサー面積を覆うように、センサーをイオン交換繊維溶液に浸漬し、取り出した(図11A)。次いで、繊維でコーティングしたセンサーを、5分間、70℃のオーブン内に置いた。次いで、このセンサーを使用して、許容できる正確さを有して唾液重量オスモル濃度を直接測定した(図11B)。
【0122】
カルシウムの除去を確認することは、ヒドロゲルセンサーを用いて改良された唾液重量オスモル濃度を測定する上で重要な要因であり、カルシウムをIERまたはクエン酸処理の後に試料に直接添加し、オスモル濃度を再測定する場合の調査を行った。
【0123】
図8A及び8Bは、NaCl対照(図8Aはセンサ−1059、図8Bはセンサ−1066)と比較して、イオン交換樹脂、クエン酸、イオン交換樹脂及びCaCl2、クエン酸及びCaCl2で処理された唾液(それぞれ、IER処理唾液、クエン酸処理唾液、IER+CaCl2、クエン酸+CaCl2)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図を提供する。図9は、NaCl対照(センサ−1073)と比較して、イオン交換樹脂、クエン酸、イオン交換樹脂及びCaCl2、並びにクエン酸及びCaCl2で処理された唾液(それぞれ、IER処理唾液、クエン酸処理唾液、IER+CaCl2、クエン酸+CaCl2)についての、試料重量オスモル濃度(mOsm)に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。
【0124】
その結果は、唾液試料のIER処理が、ヒドロゲルセンサーを用いた唾液重量オスモル濃度の正確な測定をもたらしたことを示す。クエン酸処理は、カルシウム除去によってセンサー反応を改良したが、溶液重量オスモル濃度を変更し、ヒドロゲルセンサーを用いて正確な全体的結果を得るには効果的でなかった。さらに、CaCl2をIER処理唾液に添加したときに不正確な結果が得られ、IERがカルシウムを除去し、カルシウムが、ヒドロゲルセンサーを用いた唾液重量オスモル濃度の正確な測定を妨げることを示した。
【0125】
さらなる調査において、IERで処理した唾液試料の重量オスモル濃度の測定におけるヒドロゲルセンサー反応の安定性を評価した。図10は、約1.5時間までの、3種類の異なるセンサーについての、IER曝露時間に対するカンチレバー抵抗(オーム)のグラフ図である。その結果は、カンチレバー抵抗(オーム)ひいては重量オスモル濃度の測定が、少なくとも1.5時間の間、3種類のセンサー全てについて安定していたことを示す。
【0126】
例3
涙液及び血液または血清試料の重量オスモル濃度の測定
涙液膜は、毛細管収集法(capillary collection method)によって容易に得られ、分析前にイオン交換樹脂で処理することができ、次いでマイクロカンチレバーセンサー上にスポットすることができる。使いやすい涙液膜浸透圧計を、マイクロカンチレバーセンサー上にマイクロファイバー陽イオン交換樹脂をコーティングすることによって構成した。次いで、センサーを角膜の外表面に直接置き、重量オスモル濃度を含む涙液膜特性を測定した。
【0127】
全血及び血清の重量オスモル濃度は、凝固点または蒸気圧浸透圧計を用いて一般的に測定される。刺したフィンガースティックを用いて全血(100μL)を得て、上記のように調製し、(図11A及び11Bに示すように)IEF粉末でコーティングしたセンサー上に直接スポットした。センサーは、3分以内に平衡抵抗値に到達し、308mOsmolに相当した。
【0128】
上述した本発明については、明確にするため及び理解のために図と例とを挙げていくつか詳細に記述してあるが、当業者であれば、所定の変更及び改変を行うことができることが明らかである。本発明の様々な態様が数々の実験によって達成されるが、そのうちのいくつかを非限定的な例として記載した。したがって、明細書の記載は、例示的な実施態様についての添付の説明によって記載される本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)対象から生体液試料を収集する工程;
b)イオン交換材料を用いて該生体液を処理する工程;
c)既知の物理的または化学的特性を有するヒドロゲルであって該物理的または化学的特性の初期値が知られているヒドロゲルを含むセンサーをさらに提供する工程;
d)該センサーを該イオン交換材料で処理した生体液試料と接触させる工程;
e)該イオン交換材料で処理した生体液試料に曝露することに反応した該ヒドロゲルセンサーの該物理的または化学的特性の変化を評価する工程;並びに
f)該ヒドロゲルセンサーの変化と、該生体液試料の物理的または化学的特性とを関連性付ける工程、
を含む、対象から収集した生体液の物理的特性を測定する方法。
【請求項2】
該生体液が、唾液、全血、血漿、血清、涙液、リンパ液、滑液、尿、痰、精液、膣洗浄液、骨髄液、及び脳脊髄液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該生体液が唾液である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該ヒドロゲルの該物理的または化学的特性の該変化が、体積の変化、光学的濃度の変化、屈折率の変化、または交流伝導率の変化である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該ヒドロゲルが、正味の負電荷を有する架橋したヒドロゲルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該ヒドロゲルが、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ビニルエーテル、またはビニルピロリドンから構成された架橋したヒドロゲルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該ヒドロゲルが、カルボキシレート基、硫酸基、スルホン酸基、及びリン酸基から選択されるアニオン性部分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
該イオン交換材料が、脂肪酸塩、アルキルまたはアルキルアリール硫酸塩、スルホン酸塩またはスルホン酸、スルホ酢酸塩、アルキルまたはアルキルアリールリン酸塩、リン酸エステル、ジオクチルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ラクチレート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、及びドデシルベンゼン硫酸塩(DBS)からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
該イオン交換材料が陽イオン交換樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該イオン交換材料がキレート樹脂である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該キレート樹脂がイミノ二酢酸官能性を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該イオン交換材料が、水不溶性ポリマー陽イオン交換樹脂、EDTA、シュウ酸、クエン酸、及び水溶性ポリアクリレートからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該処理が、該唾液からCa2+を除去するのに効果的である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該生体液試料の該特性が、所定波長における吸収、密度、電気導電性、pH、重量オスモル濃度、容量オスモル濃度、熱転写、粘度、誘電率、屈折率、及び光散乱からなる群から選択される物理的特性である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該物理的特性が重量オスモル濃度である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該特性が、グルコース、クレアチニン、尿素、コルチゾール、総タンパク量、総電解質量、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、陽イオン、例えばナトリウム(Na+)、カルシウム(Ca2+)、カリウム(K+)、またはマグネシウム(Mg2+);陰イオン、例えば塩化物(Cl-)、フッ化物(Fl)、臭化物(Br)、硫酸塩(SO42-)、硝酸塩(NO3-)、炭酸塩(CO32-)、及び重炭酸塩(HCO3-)の濃度からなる群から選択される化学的特性である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該評価する工程が、該ヒドロゲルの体積減少について監視して、唾液の重量オスモル濃度を検出することを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該評価する工程が、ヒドロゲルの体積増加を監視して、唾液の重量オスモル濃度を検出することを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
生体液試料を収集及び処理するためのカートリッジを含む、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するためのヒドロゲルセンサーシステムであって、
該カートリッジが側面、底部、及び開口可能な蓋を有する内部空間を画定する、イオン交換材料を含む容器を含み、
該容器が、該イオン交換材料と混合するために該生体液試料を捕集し、且つ該生体液の物理的または化学的特性を測定するのに効果的なヒドロゲルセンサーを含む装置へ取り付けられるように構成された、
ヒドロゲルセンサーシステム。
【請求項20】
生体液試料を収集及び処理するための使い捨てカートリッジを含む、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するためのヒドロゲルセンサーシステムであって、
該カートリッジが、側面、底部、及び開口可能な蓋を有する内部空間を画定する容器であってイオン交換材料を含み且つ生体液試料を受けるように構成された容器を含み、
該容器が選択的に開閉される開口部を有し、閉位置にて該容器が該生体液試料を保持し、開位置にて、該容器が該生体液試料が容器から出ることを可能にし、
該カートリッジが、該生体液の物理的または化学的特性を測定するのに効果的なヒドロゲルセンサーを含む装置へ取り付けられるように構成された、
ヒドロゲルセンサーシステム。
【請求項21】
生体液試料を収集及び処理するための使い捨てカートリッジを有する、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するためのヒドロゲルセンサーシステムであって、該使い捨てカートリッジが、
(a)側面、底部、及び開口可能な蓋を有する内部空間を画定する、該生体液試料を収集及び保管するための第1区画;
(b)イオン交換材料を含み、且つ該第1区画から該生体液試料を受けるように構成された第2区画であって、該生体液試料及び該イオン交換材料が、該第2区画で組み合わされイオン交換媒体で処理された試料を生成する、第2区画;並びに
(c)該イオン交換媒体で処理された試料の保管及びサンプリングのための第3区画であって、該第3区画が選択的に開口可能な開口部を有し、閉位置にて該イオン交換媒体で処理された試料が該第3区画で保持され、開位置にて該イオン交換媒体で処理された試料が、該カートリッジから、該生体液の物理的または化学的特性を測定するのに効果的なヒドロゲルセンサーを含む装置へ移動され得る、第3区画、
を含む、
ヒドロゲルセンサーシステム。
【請求項22】
生体液試料を収集及び処理するための使い捨てカートリッジを有する、生体液試料の物理的または化学的特性を測定するためのヒドロゲルセンサーシステムであって、
該使い捨てカートリッジが、液体試料をその中に受けるように構成されたキャピラリーチャネルを備えた第1部分、イオン交換媒体を包含するチャンバーを含む第2部分を有する収集容器を含み、該第1及び第2部分の間の隔壁が、該隔壁に浸透するための機構を有するプランジャーの動作によって浸透され、該イオン交換媒体を含むチャンバー及び該キャピラリーチャネルの内容物が混合され、
該カートリッジが、該生体液の物理的または化学的特性を測定するための装置へ取り付けられるように構成された、
ヒドロゲルセンサーシステム。
【請求項23】
対象から生体液試料を収集するため、及び該液の物理的または化学的特性を測定するための装置であって、
(a)マイクロカンチレバーの先端の初期位置に対応した既知の抵抗を有する可動マイクロカンチレバーセンサー;
(b)剛性の高い物質に固定され、且つ該マイクロカンチレバーに対向して配置されたヒドロゲルであって、該ヒドロゲルの物理的特性の変化が該マイクロカンチレバーをそらして抵抗の変化をもたらす、ヒドロゲル;
(c)イオン交換媒体で処理された生体液試料を該ヒドロゲルと接触させて配置するように構成された、請求項19〜22のいずれか一項に記載のヒドロゲルセンサーシステム;並びに
(d)該マイクロカンチレバーの動作に応じて検出可能な信号を発生する信号発信部品、
を含む、装置。
【請求項24】
該センサーが使い捨てである、請求項23に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2011−523704(P2011−523704A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510514(P2011−510514)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/003146
【国際公開番号】WO2009/142742
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(510307624)カンタイマー,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】