イオン伝導性ガラスセラミックス、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池
【課題】豊富なナトリウム資源を背景に低コストで提供可能なイオン伝導性ガラスセラミックスを提供することを課題とする。
【解決手段】一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックスにより上記課題を解決する。
【解決手段】一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックスにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性ガラスセラミックス、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池に関する。更に詳しくは、本発明は、豊富なナトリウム資源を背景に低コストで提供可能なイオン伝導性ガラスセラミックス、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高電圧、高容量を有するため、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、電気自動車等の電源として多用されている。一般に流通しているリチウム二次電池は、電解質として、電解塩を非水系溶媒に溶解した液状電解質を使用している。非水系溶媒には、可燃性の溶媒が多く含まれているため、安全性の確保が望まれている。
安全性を確保するために、非水系溶媒を使用せずに、電解質を固体材料であるLi2S−P2S5から形成する、いわゆる固体電解質を使用した全固体二次電池が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.Tatsumisago et.al.,Funct.Mater.Lett.,1(2008)31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車、太陽電池、風力発電等の発電装置等において、電力を貯蔵するためにリチウム二次電池の需要が増大している。しかし、リチウム二次電池は、埋蔵量が少なく、かつ産出地が偏在しているリチウムを使用するため、需要に供給が追いつかないという懸念があると共に、高コストであるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、上記懸念及び課題が全固体二次電池においても生じると考えている。そこで資源量が豊富なナトリウムを使用した電池が、ポストリチウム二次電池として挙げられる。ナトリウムを使用した電池には、ナトリウムイオン伝導性固体が使用されるが、そのナトリウムイオン伝導性固体としては、β-アルミナが広く知られている。この材料は室温で10-3 S cm-1以上のナトリウムイオン伝導性を示す[文献:X. Lu et al., Journal of Power Sources, 195 (2010) 2431-2442.]。しかしながら、この材料の合成には1600℃以上での高温焼成が必要であり、電極活物質との固体界面接合が困難であるという課題があった。高温での焼成を必要とせず、プレスのみで得られる粉末成形体として高い導電率を示す材料が、室温作動型全固体電池の電極-電解質界面構築には重要となる。発明者等は既存の文献を調査したが、室温において粉末成形体として十分なナトリウムイオン伝導性を有する固体材料に関する文献を見い出せていない。
【0006】
そこで、発明者等は、Li2Sに代えてNa2Sの使用を試みたが、イオン伝導性の観点で更なる改善の余地があると考えた。そのため、発明者等は、更に鋭意検討した結果、Na2Sを含む固体材料の原料をメカニカルミリング処理に付すことでガラスを得、次いで、ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することで変換したガラスセラミックスであれば、イオン伝導性が大幅に改善されることを見出し本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックスが提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、
前記一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程と、前記ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程とを含むことを特徴とするイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、正極、負極、及び前記正極と前記負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備え、前記固体電解質層が、上記イオン伝導性ガラスセラミックスを含むことを特徴とする全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リチウムの資源量に依存しない、高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
また、Na2S−MxSyが、Na2S−P2S5である場合、より高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
本発明のガラスセラミックスの製造方法によれば、メカニカルミリング処理と熱処理という簡便な方法で、リチウムの資源量に依存しない、高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
【0011】
メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50〜600回転/分、0.1〜50時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件下で行われる場合、より高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
本発明の全固体二次電池は、ナトリウムを含む固体電解質層を使用するため、豊富なナトリウム資源を背景に低コストで提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のガラスのXRDパターンである。
【図2】実施例1のガラスのDTA曲線である。
【図3】実施例1のガラスのラマンスペクトルである。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】実施例1のガラスの31PMAS−NMRスペクトルである。
【図6】実施例1のガラス及びガラスセラミックスの導電率の温度依存性を示すグラフである。
【図7】実施例1のガラス及びガラスセラミックスの室温における導電率及び伝導の活性化エネルギーを示すグラフである。
【図8】実施例1のガラスセラミックスのXRDパターンである。
【図9】実施例1のガラスセラミックスの31PMAS−NMRスペクトルである。
【図10】実施例3のガラス及びガラスセラミックスの周波数に対するインピーダンスの絶対値|Z|の関係を示すグラフである。
【図11】実施例4に示す様々な焼結体、ガラス及びガラスセラミックスの温度に対する導電率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(イオン伝導性ガラスセラミックス)
ガラスセラミックスは、非晶質状態のガラス成分中に、結晶質部が分散した状態であってもよい。結晶質部の割合は、ガラスセラミックス全体に対して、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。なお、結晶質部の割合は固体NMRにより測定可能である。
更に、ガラスセラミックスは、対応するガラスに存在していたガラス転移点が存在しないものであることが好ましい。
【0014】
本発明のイオン伝導性ガラスセラミックスは、一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で表される。具体的には、Na2S−P2S5、Na2S−SiS2、Na2S−GeS2、Na2S−B2S3、Na2S−Al2S3が挙げられる。この内、Na2S−P2S5が特に好ましい。更に、NaI、Na3PO4等の他のイオン伝導性材料を加えてもよい。
更に、Na2S−MxSyは、67モル%より大きく、80モル%未満のNa2Sを含む。この範囲であれば、対応するガラスより、イオン伝導性を向上できる。また、70モル%より大きく、80モル%未満のNa2Sを含むことがより好ましく、73〜77モル%のNa2Sを含むことが更に好ましい。
【0015】
(イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法)
イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法は、
(i)一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程、
(ii)ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程
とを含んでいる。
【0016】
(1)工程(i)
工程(i)におけるメカニカルミリング処理は、原料を十分混合・反応できさえすれば、処理装置及び処理条件には特に限定されない。
処理装置としては、通常ボールミルが使用できる。ボールミルは、大きな機械的エネルギーが得られるため好ましい。ボールミルの中でも、遊星型ボールミルは、ポットが自転回転すると共に、台盤が公転回転するため、高い衝撃エネルギーを効率よく発生させることができるので、好ましい。
【0017】
処理条件は、使用する処理装置に応じて適宜設定できる。例えば、ボールミルを使用する場合、回転速度が大きいほど及び/又は処理時間が長いほど、原料を均一に混合・反応できる。なお、「及び/又は」は、A及び/又はBで表現すると、A、B又は、A及びBを意味する。具体的には、遊星型ボールミルを使用する場合、50〜600回転/分の回転速度、0.1〜50時間の処理時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件が挙げられる。より好ましい処理条件としては、200〜500回転/分の回転速度、1〜20時間の処理時間、6〜50kWh/原料混合物1kgが挙げられる。
【0018】
(2)工程(ii)
上記工程(i)で得られたガラスを、熱処理に付すことで、イオン伝導性ガラスセラミックスに変換する。この熱処理は、ガラスのガラス転移点以上の温度で行われる。
ガラス転移点(Tg)は、Na2SとMxSyの割合によって相違するが、例えば、Na2S−P2S5の場合、180〜200℃の範囲にある。また第一結晶化温度(Tc)は190〜240℃の範囲にある。熱処理温度の上限は、特に限定されないが、通常、第一結晶化温度+100℃である。
熱処理時間は、ガラスをイオン伝導性ガラスセラミックスに変換し得る時間であり、熱処理温度が高いと短く、低いと長くなる。熱処理時間は、通常、0.1〜10時間の範囲である。
【0019】
(イオン伝導性ガラスセラミックスの用途)
イオン伝導性ガラスセラミックスは、イオン伝導性が求められる用途であれば、いずれの用途にも使用できる。例えば、全固体二次電池及び全固体キャパシタの固体電解質層、センサーの導電層等が挙げられる。この内、全固体二次電池の固体電解質層に使用することが好ましい。
全固体二次電池は、特に限定されないが、通常、正極、負極、及び正極と負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備えている。
【0020】
(1)固体電解質層
固体電解質層には、上記イオン伝導性ガラスセラミックス(Na2S−MxSy)が含まれる。上記イオン伝導性ガラスセラミックス以外に、全固体二次電池に通常使用される電解質(例えば、NaI、Na3PO4等)が含まれていてもよい。なお、固体電解質層中、上記イオン伝導性ガラスセラミックスが占める割合は、90重量%以上であることが好ましく、全量であることがより好ましい。固体電解質層の厚さは、1〜1000μmであることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましい。固体電解質層は、例えば、その原料をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。
【0021】
(2)正極
正極は、特に限定されない。負極は、負極活物質のみからなっていてもよく、結着剤、導電剤、電解質等と混合されていてもよい。
正極活物質としては、Na0.44MnO2、NaNi0.5Mn0.5O2、FeS、TiS2、NaCoO2、NaFeO2、Na3V2(PO4)3、NaMn2O4等の種々の遷移金属化合物等が挙げられる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
導電剤としては、天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、カーボンブラック、気相成長カーボンファィバ(VGCF)等が挙げられる。
電解質としては、固体電解質層に使用される電解質が挙げられる。
正極は、例えば、正極活物質及び、任意に結着剤、導電剤、電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。
正極は、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。
【0022】
(3)負極
負極は、特に限定されない。負極は、負極活物質のみからなっていてもよく、結着剤、導電剤、電解質等と混合されていてもよい。
負極活物質としては、Na、In、Sn等の金属、Na合金、グラファイト、ハードカーボン、Li4/3Ti5/3O4、Na3V2(PO4)3、SnO等の種々の遷移金属酸化物等が挙げられる。
結着剤、導電剤及び電解質は、上記正極の欄で挙げた物をいずれも使用できる。
負極は、例えば、負極活物質及び、任意に結着剤、導電剤、電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。また、負極活物質として金属又はその合金からなる金属シート(箔)を使用する場合、をそのまま使用可能である。
負極は、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。
【0023】
(4)全固体二次電池の製造法
全固体二次電池は、例えば、正極と、電解質層と、負極とを積層し、プレスすることにより得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
工程(i):メカニカルミリング処理
Na2S(アルドリッチ社製純度99%)及びP2S5(アルドリッチ社製純度99%)を67:33、70:30、75:25及び80:20のモル比でそれぞれ遊星型ボールミルに投入した。投入後、メカニカルミリング処理することで、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5を得た。
遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P−7を使用し、ポット及びボールはZrO2製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。メカニカルミリング処理は、510rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で20時間行った。
【0025】
なお、上記製造法は、Akitoshi Hayashi et al., Journal of Non−Crystalline Solids 356 (2010) 2670−2673のExperimentalの記載に準じている。
上記4種のNa2S−P2S580mgをプレス(圧力370MPa/cm2)することで直径10mm、厚さ約1mmのペレットを得た。
【0026】
得られたガラス粉末のXRDパターンを図1に、DTA曲線を図2に、ラマンスペクトルを図3に、図3の要部拡大図を図4に、31PMAS−NMRを図5にそれぞれ示す。
図1から、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5及び75Na2S−25P2S5では、アモルファス材料が得られたことが示されており、80Na2S−20P2S5では、アモルファスに加えて一部Na2Sが残存していることが示されている。
図2から、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5全てにおいてガラス転移点が確認されており、これらアモルファス材料がガラス状態であることが判る。なお、ガラス転移点は180〜200℃の間である。
【0027】
図3及び4から、67Na2S−33P2S5では、P2S74-に由来するピークが主として見られる。70Na2S−30P2S5では、Na2Sの割合の増加につれて、P2S74-に由来するピークが減少し、そのピークに代わって、PS43-に由来するピークが増加し、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、PS43-に由来するピークが主として見られることが示されている。なお、図3及び4の図中のピークの帰属が、PS43-、P2S74-及びP2S64-にそれぞれ由来していることは、Na2S−P2S5の系でのデータが入手できなかったため、Li2S−P2S5の系でのデータから類推している。具体的には、PS43-が419cm-1、P2S74-が406cm-1、P2S64-が382cm-1であるとしている。
図5においても、図3及び4と同様の傾向が見られる。
【0028】
工程(ii):熱処理
上記4種のガラスからなるペレットを、室温(25℃)から結晶化温度以上の280℃に向かって加熱し、ガラスをガラスセラミックス化した。更に、280℃に達してから、室温に向かってガラスセラミックスのペレットを冷却した。この加熱及び冷却サイクル中、約15℃毎に、ペレットの導電率を測定した。測定結果を図6(a)〜(d)に示す。図中、黒丸はガラスセラミックスを、白丸はガラスを意味する。
【0029】
図6(a)から、67Na2S−33P2S5では、ガラス状態とガラスセラミックス状態での導電率に差が殆どないことが示されている。図6(b)〜(d)から、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、ガラス状態とガラスセラミックス状態での導電率に差が生じていることが示されている。特に、前2者の場合、ガラスセラミックス状態の方が、ガラス状態より高い導電率を示している。
また、ガラスとガラスセラミックスのペレットの伝導の活性化エネルギー(Ea)を測定した結果を、室温での導電率の値と合わせて表1に示す。表1中、Gはガラス、GCはガラスセラミックスを意味する。また、表1の結果を、図7にまとめて示す。図7中、黒丸及び黒三角はガラスセラミックスを、白丸及び白三角はガラスを意味する。
【0030】
【表1】
【0031】
図7及び表1から、導電率及び伝導の活性化エネルギーが、ガラス状態とガラスセラミックス状態とで差を生じていることが判る。
熱処理後の67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5のXRDパターンを図8に、31PMAS−NMRを図9にそれぞれ示す。図8には、下記文献Aに掲載されているNa3PS4結晶(正方晶)のXRDパターンも示す。
文献A:M.Jansen et al., Journal of Solid State Chemistry, 92(1992)110.
【0032】
図8から、図1と比較して、結晶構造に由来するピークが存在していることから、4種のNa2S−P2S5が、ガラスセラミック状態であることがわかる。また、図8から、80Na2S−20P2S5では、Na3PS4結晶と同様のピークパターンであるが、Na2Sのモル%が小さくなるに従って、Na3PS4結晶と異なるパターンの存在が観測されるため、Na3PS4結晶とは異なる結晶の析出が考えられる。特に75Na2S−25P2S5では、正方晶Na3PS4のパターンに類似する2θ位置にパターンを示すが、ピークの分裂が見られないことから立方晶Na3PS4が存在していると考えられる。また67Na2S−33P2S5では、結晶の同定ができず、未知の結晶の析出が考えられる。また70Na2S−30P2S5では、67Na2S−33P2S5と75Na2S−25P2S5のパターンを足し合わせたパターンとなっていることがわかる。
【0033】
図9から、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、PS43-に由来するピークが主として見られ、67Na2S−33P2S5では、P2S74-に由来するピークが主として見られる。70Na2S−30P2S5では、PS43-とP2S74-に由来するピークが両方見られる。
【0034】
実施例2
正極活物質としてNa0.44MnO2を、電解質として実施例2の75Na2S−25P2S5からなるガラスセラミックス、導電剤としてアセチレンブラックを、40:60:6の重量比(全重量15.5mg)で秤量し、次いで混合し、プレスすることで正極を得た。
実施例2の75Na2S−25P2S5のガラスセラミックス70mgをプレスすることで固体電解質層を得た。
負極部分にはステンレススチールを用いた。より具体的には、初期充電時にステンレススチール上に金属ナトリウムを析出させることで負極とした。
正極、固体電解質層及び負極を積層し、プレスすることで、全固体二次電池を得た。得られた全固体二次電池は、十分な充放電特性を有していた。
【0035】
実施例3
75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットを製造するに際して、対応するガラスの熱処理の温度を280℃から270℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットを得た。
また、典型的なナトリウムイオン伝導性固体電解質であるβ−アルミナ80mgをプレス(圧力370MPa/cm2)することで直径10mm、厚さ約1mmのペレットを得た。このペレットには、電解質用途の従来のβ−アルミナのペレットに付される1800℃以上での高温焼結を行っていない。
【0036】
得られた75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットの室温(約25℃)での周波数に対するインピーダンスの絶対値|Z|を測定した。測定結果を図10に示す。また、図10には、ガラスセラミックスに変換前の75Na2S−25P2S5のガラスのペレットの室温でのインピーダンスの絶対値|Z|も示す。更に、図10には、β−アルミナのペレットの70℃及び120℃で加温時のインピーダンスの絶対値|Z|も示す。β−アルミナのペレットの室温でのインピーダンスの絶対値|Z|の測定を試みたが、インピーダンスが大きすぎて測定不能であり、図10にはプロットしていない。
なお、インピーダンスは、測定機器としてSolartron社製の品番1260を使用し、乾燥アルゴンガス中、0.1Hz〜8MHzの範囲内の周波数で測定された値である。
【0037】
図10から以下のことが分かる。
インピーダンスの絶対値|Z|は、大きいほど抵抗が高く(導電率が低く)、小さいほど抵抗が低い(導電率が高い)ことを意味している。また、一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の範囲では、周波数に対応するイオンの移動が生じているため、この範囲では、周波数が大きいほど、イオン伝導が速い、即ち導電率が高いことになる。具体的には、
(1)ガラスセラミックスのペレットは、全ての周波数において、他のどのペレットよりも抵抗が低いことが示されており、より導電率の高い電解質層を提供できる。
(2)ほぼ一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の領域が、ガラスセラミックのペレットは104〜107Hzの範囲内であり、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)は0.1〜10Hzである。ガラスセラミックのペレットの方が、β−アルミナより、高い周波数でインピーダンスの絶対値|Z|が一定になるため、高い導電率を得られる。
(3)ほぼ一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の領域において、ガラスセラミックのペレットは103オーダの絶対値|Z|を示し、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)は107〜109のオーダの絶対値|Z|を示す。つまり、ガラスセラミックのペレットは、β−アルミナより、104〜106低い絶対値|Z|を有しているため、高い導電率を得られる。
(4)β−アルミナのインピーダンスの絶対値|Z|は、室温におけるプレス成形体の方が、70℃及び120℃でのプレス成形体より極めて大きい。ガラスセラミックのペレットは、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)より低い絶対値|Z|を有している。従って、室温でのプレスで高い導電率を得ることができる観点で、ガラスセラミックスの成形性の容易さは、プレス成形のみで作製する全固体二次電池用の固体電解質として極めて有利な点となる。
ことが分かる。
【0038】
実施例4
実施例3で得た75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレット及び75Na2S−25P2S5のガラスペレットの温度に対する導電率の変化を図11に示す。図11中、黒丸はガラスセラミックスの、白丸はガラスの測定結果である。
更に、図11に、β−アルミナ(焼結体)、Na3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)、60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラス、Na3PS4結晶(正方晶)、50Na2S−50SiS2のガラス、60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスのペレットの温度に対する導電率の変化の測定結果も示す。
【0039】
β−アルミナ(1800℃で焼成して得られた焼結体)のペレットは、J.Phys.D:Appl.Phys.、10、1487−1496(1977)に記載された方法で得られたものである。
Na3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)のペレットは、Solid State Ionics、122、127−136(1999)に記載された方法で得られたものである。
60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラスは、Solid State Ionics、178、1777−1784(2008)に記載された方法で得られたものである。
Na3PS4結晶(正方晶)は、M.Jansen et al., Journal of Solid State Chemistry, 92(1992)110.に記載された方法で得られたものである。
50Na2S−50SiS2のガラス及び60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスはJ.Non−Cryst.Solids、38&39、271−276(1980)に記載された方法で得られたものである。
【0040】
図11から以下のことが分かる。
75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットは、75Na2S−25P2S5のガラス、60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラス、Na3PS4結晶(正方晶)、50Na2S−50SiS2のガラス、60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスのペレットよりも高い導電率を有していることが分かる。
例えば、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットは、室温(25℃)で2×10-4Scm-1の導電率を有し、27kJmol-1の伝導の活性化エネルギーを有している。75Na2S−25P2S5のガラスのペレットは、室温で6×10-6Scm-1の導電率を有し、47kJmol-1の活性化エネルギーを有している。Na3PS4結晶(正方晶)は、室温で1×10-6Scm-1の導電率を有している。
【0041】
Na3Zr2Si2PO12(NASICON)焼結体は、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットと同等の、β−アルミナ焼結体は、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットより高い導電率(10-3Scm-1)を示している。しかし、β−アルミナ(焼結体)及びNa3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)のペレットは、その製造に、1000℃以上の高温焼結が必要であり、環境負荷が大きく、製造コストが高くつく。また、高温処理により、焼結体が脆くなり、充放電の繰り返し可能数が低下する。更に、高温処理が必要なため、電極と電解質層とを一体形成できず、電解質層単独では高い導電率が得られるものの、電極と電解質層との一体での導電率は低下することになる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性ガラスセラミックス、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池に関する。更に詳しくは、本発明は、豊富なナトリウム資源を背景に低コストで提供可能なイオン伝導性ガラスセラミックス、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、高電圧、高容量を有するため、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、電気自動車等の電源として多用されている。一般に流通しているリチウム二次電池は、電解質として、電解塩を非水系溶媒に溶解した液状電解質を使用している。非水系溶媒には、可燃性の溶媒が多く含まれているため、安全性の確保が望まれている。
安全性を確保するために、非水系溶媒を使用せずに、電解質を固体材料であるLi2S−P2S5から形成する、いわゆる固体電解質を使用した全固体二次電池が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.Tatsumisago et.al.,Funct.Mater.Lett.,1(2008)31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車等の自動車、太陽電池、風力発電等の発電装置等において、電力を貯蔵するためにリチウム二次電池の需要が増大している。しかし、リチウム二次電池は、埋蔵量が少なく、かつ産出地が偏在しているリチウムを使用するため、需要に供給が追いつかないという懸念があると共に、高コストであるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、上記懸念及び課題が全固体二次電池においても生じると考えている。そこで資源量が豊富なナトリウムを使用した電池が、ポストリチウム二次電池として挙げられる。ナトリウムを使用した電池には、ナトリウムイオン伝導性固体が使用されるが、そのナトリウムイオン伝導性固体としては、β-アルミナが広く知られている。この材料は室温で10-3 S cm-1以上のナトリウムイオン伝導性を示す[文献:X. Lu et al., Journal of Power Sources, 195 (2010) 2431-2442.]。しかしながら、この材料の合成には1600℃以上での高温焼成が必要であり、電極活物質との固体界面接合が困難であるという課題があった。高温での焼成を必要とせず、プレスのみで得られる粉末成形体として高い導電率を示す材料が、室温作動型全固体電池の電極-電解質界面構築には重要となる。発明者等は既存の文献を調査したが、室温において粉末成形体として十分なナトリウムイオン伝導性を有する固体材料に関する文献を見い出せていない。
【0006】
そこで、発明者等は、Li2Sに代えてNa2Sの使用を試みたが、イオン伝導性の観点で更なる改善の余地があると考えた。そのため、発明者等は、更に鋭意検討した結果、Na2Sを含む固体材料の原料をメカニカルミリング処理に付すことでガラスを得、次いで、ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することで変換したガラスセラミックスであれば、イオン伝導性が大幅に改善されることを見出し本発明に至った。
【0007】
かくして本発明によれば、一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックスが提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、
前記一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程と、前記ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程とを含むことを特徴とするイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、正極、負極、及び前記正極と前記負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備え、前記固体電解質層が、上記イオン伝導性ガラスセラミックスを含むことを特徴とする全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リチウムの資源量に依存しない、高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
また、Na2S−MxSyが、Na2S−P2S5である場合、より高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
本発明のガラスセラミックスの製造方法によれば、メカニカルミリング処理と熱処理という簡便な方法で、リチウムの資源量に依存しない、高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
【0011】
メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50〜600回転/分、0.1〜50時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件下で行われる場合、より高いイオン伝導性を有するガラスセラミックスを提供できる。
本発明の全固体二次電池は、ナトリウムを含む固体電解質層を使用するため、豊富なナトリウム資源を背景に低コストで提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のガラスのXRDパターンである。
【図2】実施例1のガラスのDTA曲線である。
【図3】実施例1のガラスのラマンスペクトルである。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】実施例1のガラスの31PMAS−NMRスペクトルである。
【図6】実施例1のガラス及びガラスセラミックスの導電率の温度依存性を示すグラフである。
【図7】実施例1のガラス及びガラスセラミックスの室温における導電率及び伝導の活性化エネルギーを示すグラフである。
【図8】実施例1のガラスセラミックスのXRDパターンである。
【図9】実施例1のガラスセラミックスの31PMAS−NMRスペクトルである。
【図10】実施例3のガラス及びガラスセラミックスの周波数に対するインピーダンスの絶対値|Z|の関係を示すグラフである。
【図11】実施例4に示す様々な焼結体、ガラス及びガラスセラミックスの温度に対する導電率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(イオン伝導性ガラスセラミックス)
ガラスセラミックスは、非晶質状態のガラス成分中に、結晶質部が分散した状態であってもよい。結晶質部の割合は、ガラスセラミックス全体に対して、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。なお、結晶質部の割合は固体NMRにより測定可能である。
更に、ガラスセラミックスは、対応するガラスに存在していたガラス転移点が存在しないものであることが好ましい。
【0014】
本発明のイオン伝導性ガラスセラミックスは、一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で表される。具体的には、Na2S−P2S5、Na2S−SiS2、Na2S−GeS2、Na2S−B2S3、Na2S−Al2S3が挙げられる。この内、Na2S−P2S5が特に好ましい。更に、NaI、Na3PO4等の他のイオン伝導性材料を加えてもよい。
更に、Na2S−MxSyは、67モル%より大きく、80モル%未満のNa2Sを含む。この範囲であれば、対応するガラスより、イオン伝導性を向上できる。また、70モル%より大きく、80モル%未満のNa2Sを含むことがより好ましく、73〜77モル%のNa2Sを含むことが更に好ましい。
【0015】
(イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法)
イオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法は、
(i)一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程、
(ii)ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程
とを含んでいる。
【0016】
(1)工程(i)
工程(i)におけるメカニカルミリング処理は、原料を十分混合・反応できさえすれば、処理装置及び処理条件には特に限定されない。
処理装置としては、通常ボールミルが使用できる。ボールミルは、大きな機械的エネルギーが得られるため好ましい。ボールミルの中でも、遊星型ボールミルは、ポットが自転回転すると共に、台盤が公転回転するため、高い衝撃エネルギーを効率よく発生させることができるので、好ましい。
【0017】
処理条件は、使用する処理装置に応じて適宜設定できる。例えば、ボールミルを使用する場合、回転速度が大きいほど及び/又は処理時間が長いほど、原料を均一に混合・反応できる。なお、「及び/又は」は、A及び/又はBで表現すると、A、B又は、A及びBを意味する。具体的には、遊星型ボールミルを使用する場合、50〜600回転/分の回転速度、0.1〜50時間の処理時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件が挙げられる。より好ましい処理条件としては、200〜500回転/分の回転速度、1〜20時間の処理時間、6〜50kWh/原料混合物1kgが挙げられる。
【0018】
(2)工程(ii)
上記工程(i)で得られたガラスを、熱処理に付すことで、イオン伝導性ガラスセラミックスに変換する。この熱処理は、ガラスのガラス転移点以上の温度で行われる。
ガラス転移点(Tg)は、Na2SとMxSyの割合によって相違するが、例えば、Na2S−P2S5の場合、180〜200℃の範囲にある。また第一結晶化温度(Tc)は190〜240℃の範囲にある。熱処理温度の上限は、特に限定されないが、通常、第一結晶化温度+100℃である。
熱処理時間は、ガラスをイオン伝導性ガラスセラミックスに変換し得る時間であり、熱処理温度が高いと短く、低いと長くなる。熱処理時間は、通常、0.1〜10時間の範囲である。
【0019】
(イオン伝導性ガラスセラミックスの用途)
イオン伝導性ガラスセラミックスは、イオン伝導性が求められる用途であれば、いずれの用途にも使用できる。例えば、全固体二次電池及び全固体キャパシタの固体電解質層、センサーの導電層等が挙げられる。この内、全固体二次電池の固体電解質層に使用することが好ましい。
全固体二次電池は、特に限定されないが、通常、正極、負極、及び正極と負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備えている。
【0020】
(1)固体電解質層
固体電解質層には、上記イオン伝導性ガラスセラミックス(Na2S−MxSy)が含まれる。上記イオン伝導性ガラスセラミックス以外に、全固体二次電池に通常使用される電解質(例えば、NaI、Na3PO4等)が含まれていてもよい。なお、固体電解質層中、上記イオン伝導性ガラスセラミックスが占める割合は、90重量%以上であることが好ましく、全量であることがより好ましい。固体電解質層の厚さは、1〜1000μmであることが好ましく、1〜200μmであることがより好ましい。固体電解質層は、例えば、その原料をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。
【0021】
(2)正極
正極は、特に限定されない。負極は、負極活物質のみからなっていてもよく、結着剤、導電剤、電解質等と混合されていてもよい。
正極活物質としては、Na0.44MnO2、NaNi0.5Mn0.5O2、FeS、TiS2、NaCoO2、NaFeO2、Na3V2(PO4)3、NaMn2O4等の種々の遷移金属化合物等が挙げられる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
導電剤としては、天然黒鉛、人工黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、カーボンブラック、気相成長カーボンファィバ(VGCF)等が挙げられる。
電解質としては、固体電解質層に使用される電解質が挙げられる。
正極は、例えば、正極活物質及び、任意に結着剤、導電剤、電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。
正極は、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。
【0022】
(3)負極
負極は、特に限定されない。負極は、負極活物質のみからなっていてもよく、結着剤、導電剤、電解質等と混合されていてもよい。
負極活物質としては、Na、In、Sn等の金属、Na合金、グラファイト、ハードカーボン、Li4/3Ti5/3O4、Na3V2(PO4)3、SnO等の種々の遷移金属酸化物等が挙げられる。
結着剤、導電剤及び電解質は、上記正極の欄で挙げた物をいずれも使用できる。
負極は、例えば、負極活物質及び、任意に結着剤、導電剤、電解質等を混合し、得られた混合物をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。また、負極活物質として金属又はその合金からなる金属シート(箔)を使用する場合、をそのまま使用可能である。
負極は、アルミニウム又は銅等の集電体の上に形成されていてもよい。
【0023】
(4)全固体二次電池の製造法
全固体二次電池は、例えば、正極と、電解質層と、負極とを積層し、プレスすることにより得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
実施例1
工程(i):メカニカルミリング処理
Na2S(アルドリッチ社製純度99%)及びP2S5(アルドリッチ社製純度99%)を67:33、70:30、75:25及び80:20のモル比でそれぞれ遊星型ボールミルに投入した。投入後、メカニカルミリング処理することで、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5を得た。
遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P−7を使用し、ポット及びボールはZrO2製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。メカニカルミリング処理は、510rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で20時間行った。
【0025】
なお、上記製造法は、Akitoshi Hayashi et al., Journal of Non−Crystalline Solids 356 (2010) 2670−2673のExperimentalの記載に準じている。
上記4種のNa2S−P2S580mgをプレス(圧力370MPa/cm2)することで直径10mm、厚さ約1mmのペレットを得た。
【0026】
得られたガラス粉末のXRDパターンを図1に、DTA曲線を図2に、ラマンスペクトルを図3に、図3の要部拡大図を図4に、31PMAS−NMRを図5にそれぞれ示す。
図1から、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5及び75Na2S−25P2S5では、アモルファス材料が得られたことが示されており、80Na2S−20P2S5では、アモルファスに加えて一部Na2Sが残存していることが示されている。
図2から、67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5全てにおいてガラス転移点が確認されており、これらアモルファス材料がガラス状態であることが判る。なお、ガラス転移点は180〜200℃の間である。
【0027】
図3及び4から、67Na2S−33P2S5では、P2S74-に由来するピークが主として見られる。70Na2S−30P2S5では、Na2Sの割合の増加につれて、P2S74-に由来するピークが減少し、そのピークに代わって、PS43-に由来するピークが増加し、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、PS43-に由来するピークが主として見られることが示されている。なお、図3及び4の図中のピークの帰属が、PS43-、P2S74-及びP2S64-にそれぞれ由来していることは、Na2S−P2S5の系でのデータが入手できなかったため、Li2S−P2S5の系でのデータから類推している。具体的には、PS43-が419cm-1、P2S74-が406cm-1、P2S64-が382cm-1であるとしている。
図5においても、図3及び4と同様の傾向が見られる。
【0028】
工程(ii):熱処理
上記4種のガラスからなるペレットを、室温(25℃)から結晶化温度以上の280℃に向かって加熱し、ガラスをガラスセラミックス化した。更に、280℃に達してから、室温に向かってガラスセラミックスのペレットを冷却した。この加熱及び冷却サイクル中、約15℃毎に、ペレットの導電率を測定した。測定結果を図6(a)〜(d)に示す。図中、黒丸はガラスセラミックスを、白丸はガラスを意味する。
【0029】
図6(a)から、67Na2S−33P2S5では、ガラス状態とガラスセラミックス状態での導電率に差が殆どないことが示されている。図6(b)〜(d)から、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、ガラス状態とガラスセラミックス状態での導電率に差が生じていることが示されている。特に、前2者の場合、ガラスセラミックス状態の方が、ガラス状態より高い導電率を示している。
また、ガラスとガラスセラミックスのペレットの伝導の活性化エネルギー(Ea)を測定した結果を、室温での導電率の値と合わせて表1に示す。表1中、Gはガラス、GCはガラスセラミックスを意味する。また、表1の結果を、図7にまとめて示す。図7中、黒丸及び黒三角はガラスセラミックスを、白丸及び白三角はガラスを意味する。
【0030】
【表1】
【0031】
図7及び表1から、導電率及び伝導の活性化エネルギーが、ガラス状態とガラスセラミックス状態とで差を生じていることが判る。
熱処理後の67Na2S−33P2S5、70Na2S−30P2S5、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5のXRDパターンを図8に、31PMAS−NMRを図9にそれぞれ示す。図8には、下記文献Aに掲載されているNa3PS4結晶(正方晶)のXRDパターンも示す。
文献A:M.Jansen et al., Journal of Solid State Chemistry, 92(1992)110.
【0032】
図8から、図1と比較して、結晶構造に由来するピークが存在していることから、4種のNa2S−P2S5が、ガラスセラミック状態であることがわかる。また、図8から、80Na2S−20P2S5では、Na3PS4結晶と同様のピークパターンであるが、Na2Sのモル%が小さくなるに従って、Na3PS4結晶と異なるパターンの存在が観測されるため、Na3PS4結晶とは異なる結晶の析出が考えられる。特に75Na2S−25P2S5では、正方晶Na3PS4のパターンに類似する2θ位置にパターンを示すが、ピークの分裂が見られないことから立方晶Na3PS4が存在していると考えられる。また67Na2S−33P2S5では、結晶の同定ができず、未知の結晶の析出が考えられる。また70Na2S−30P2S5では、67Na2S−33P2S5と75Na2S−25P2S5のパターンを足し合わせたパターンとなっていることがわかる。
【0033】
図9から、75Na2S−25P2S5及び80Na2S−20P2S5では、PS43-に由来するピークが主として見られ、67Na2S−33P2S5では、P2S74-に由来するピークが主として見られる。70Na2S−30P2S5では、PS43-とP2S74-に由来するピークが両方見られる。
【0034】
実施例2
正極活物質としてNa0.44MnO2を、電解質として実施例2の75Na2S−25P2S5からなるガラスセラミックス、導電剤としてアセチレンブラックを、40:60:6の重量比(全重量15.5mg)で秤量し、次いで混合し、プレスすることで正極を得た。
実施例2の75Na2S−25P2S5のガラスセラミックス70mgをプレスすることで固体電解質層を得た。
負極部分にはステンレススチールを用いた。より具体的には、初期充電時にステンレススチール上に金属ナトリウムを析出させることで負極とした。
正極、固体電解質層及び負極を積層し、プレスすることで、全固体二次電池を得た。得られた全固体二次電池は、十分な充放電特性を有していた。
【0035】
実施例3
75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットを製造するに際して、対応するガラスの熱処理の温度を280℃から270℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットを得た。
また、典型的なナトリウムイオン伝導性固体電解質であるβ−アルミナ80mgをプレス(圧力370MPa/cm2)することで直径10mm、厚さ約1mmのペレットを得た。このペレットには、電解質用途の従来のβ−アルミナのペレットに付される1800℃以上での高温焼結を行っていない。
【0036】
得られた75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットの室温(約25℃)での周波数に対するインピーダンスの絶対値|Z|を測定した。測定結果を図10に示す。また、図10には、ガラスセラミックスに変換前の75Na2S−25P2S5のガラスのペレットの室温でのインピーダンスの絶対値|Z|も示す。更に、図10には、β−アルミナのペレットの70℃及び120℃で加温時のインピーダンスの絶対値|Z|も示す。β−アルミナのペレットの室温でのインピーダンスの絶対値|Z|の測定を試みたが、インピーダンスが大きすぎて測定不能であり、図10にはプロットしていない。
なお、インピーダンスは、測定機器としてSolartron社製の品番1260を使用し、乾燥アルゴンガス中、0.1Hz〜8MHzの範囲内の周波数で測定された値である。
【0037】
図10から以下のことが分かる。
インピーダンスの絶対値|Z|は、大きいほど抵抗が高く(導電率が低く)、小さいほど抵抗が低い(導電率が高い)ことを意味している。また、一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の範囲では、周波数に対応するイオンの移動が生じているため、この範囲では、周波数が大きいほど、イオン伝導が速い、即ち導電率が高いことになる。具体的には、
(1)ガラスセラミックスのペレットは、全ての周波数において、他のどのペレットよりも抵抗が低いことが示されており、より導電率の高い電解質層を提供できる。
(2)ほぼ一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の領域が、ガラスセラミックのペレットは104〜107Hzの範囲内であり、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)は0.1〜10Hzである。ガラスセラミックのペレットの方が、β−アルミナより、高い周波数でインピーダンスの絶対値|Z|が一定になるため、高い導電率を得られる。
(3)ほぼ一定のインピーダンスの絶対値|Z|を示す周波数の領域において、ガラスセラミックのペレットは103オーダの絶対値|Z|を示し、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)は107〜109のオーダの絶対値|Z|を示す。つまり、ガラスセラミックのペレットは、β−アルミナより、104〜106低い絶対値|Z|を有しているため、高い導電率を得られる。
(4)β−アルミナのインピーダンスの絶対値|Z|は、室温におけるプレス成形体の方が、70℃及び120℃でのプレス成形体より極めて大きい。ガラスセラミックのペレットは、β−アルミナ(70℃)及び(120℃)より低い絶対値|Z|を有している。従って、室温でのプレスで高い導電率を得ることができる観点で、ガラスセラミックスの成形性の容易さは、プレス成形のみで作製する全固体二次電池用の固体電解質として極めて有利な点となる。
ことが分かる。
【0038】
実施例4
実施例3で得た75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレット及び75Na2S−25P2S5のガラスペレットの温度に対する導電率の変化を図11に示す。図11中、黒丸はガラスセラミックスの、白丸はガラスの測定結果である。
更に、図11に、β−アルミナ(焼結体)、Na3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)、60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラス、Na3PS4結晶(正方晶)、50Na2S−50SiS2のガラス、60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスのペレットの温度に対する導電率の変化の測定結果も示す。
【0039】
β−アルミナ(1800℃で焼成して得られた焼結体)のペレットは、J.Phys.D:Appl.Phys.、10、1487−1496(1977)に記載された方法で得られたものである。
Na3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)のペレットは、Solid State Ionics、122、127−136(1999)に記載された方法で得られたものである。
60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラスは、Solid State Ionics、178、1777−1784(2008)に記載された方法で得られたものである。
Na3PS4結晶(正方晶)は、M.Jansen et al., Journal of Solid State Chemistry, 92(1992)110.に記載された方法で得られたものである。
50Na2S−50SiS2のガラス及び60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスはJ.Non−Cryst.Solids、38&39、271−276(1980)に記載された方法で得られたものである。
【0040】
図11から以下のことが分かる。
75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットは、75Na2S−25P2S5のガラス、60Na2S−40(0.9GeS2・0.1Ga2S3)のガラス、Na3PS4結晶(正方晶)、50Na2S−50SiS2のガラス、60Na2S−40GeS2のガラス及び50Na2S−50P2S5のガラスのペレットよりも高い導電率を有していることが分かる。
例えば、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットは、室温(25℃)で2×10-4Scm-1の導電率を有し、27kJmol-1の伝導の活性化エネルギーを有している。75Na2S−25P2S5のガラスのペレットは、室温で6×10-6Scm-1の導電率を有し、47kJmol-1の活性化エネルギーを有している。Na3PS4結晶(正方晶)は、室温で1×10-6Scm-1の導電率を有している。
【0041】
Na3Zr2Si2PO12(NASICON)焼結体は、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットと同等の、β−アルミナ焼結体は、75Na2S−25P2S5のガラスセラミックスのペレットより高い導電率(10-3Scm-1)を示している。しかし、β−アルミナ(焼結体)及びNa3Zr2Si2PO12(NASICON)(焼結体)のペレットは、その製造に、1000℃以上の高温焼結が必要であり、環境負荷が大きく、製造コストが高くつく。また、高温処理により、焼結体が脆くなり、充放電の繰り返し可能数が低下する。更に、高温処理が必要なため、電極と電解質層とを一体形成できず、電解質層単独では高い導電率が得られるものの、電極と電解質層との一体での導電率は低下することになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項2】
前記Na2S−MxSyが、Na2S−P2S5である請求項1に記載のイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、
前記一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程と、前記ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程とを含むことを特徴とするイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50〜600回転/分、0.1〜50時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件下で行われる請求項3に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項5】
正極、負極、及び前記正極と前記負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備え、前記固体電解質層が、請求項1又は2に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスを含むことを特徴とする全固体二次電池。
【請求項1】
一般式(I):Na2S−MxSy(MはP、Si、Ge、B、Alから選択され、x及びyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える整数であり、Na2Sが67モル%より大きく、80モル%未満含まれる)で示されるイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項2】
前記Na2S−MxSyが、Na2S−P2S5である請求項1に記載のイオン伝導性ガラスセラミックス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法であって、
前記一般式(I):Na2S−MxSyを与えるNa2SとMxSyとを所定割合で含む原料混合物をメカニカルミリング処理に付してガラスを得る工程と、前記ガラスをそのガラス転移点以上の温度で熱処理することでイオン伝導性ガラスセラミックスに変換する工程とを含むことを特徴とするイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記メカニカルミリング処理が、遊星型ボールミルを用いて、50〜600回転/分、0.1〜50時間、1〜100kWh/原料混合物1kgの条件下で行われる請求項3に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスの製造方法。
【請求項5】
正極、負極、及び前記正極と前記負極間に位置する固体電解質層とを少なくとも備え、前記固体電解質層が、請求項1又は2に記載のイオン伝導性ガラスセラミックスを含むことを特徴とする全固体二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−121789(P2012−121789A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236060(P2011−236060)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】
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