説明

イオン化されない熱活性ナノ触媒を含む化学機械的研磨スラリー組成物及びこれを用いた研磨方法

【課題】 イオン化されない熱活性ナノ触媒を含み、金属層の化学機械的平坦化工程に有用な研磨スラリー組成物及びこれを用いた研磨方法が開示される。
【解決手段】 化学機械的研磨スラリー組成物は、化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤を含む。イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、イオン化されない熱活性ナノ触媒は、水溶液状態で10ないし100℃の温度で電子と正孔を放出させる半導体物質であるものが好ましく、好ましくは、CrSi、MnSi、CoSi、FeSi及びこれらの混合物からなる群より選ばれる遷移金属シリサイドを用いることができ、さらに好ましくは、ナノフェロシリコンのような半導体物質を用いることができる。イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は、全体スラリー組成物に対して0.00001ないし0.1重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの製造に用いられる化学機械的研磨スラリー組成物に関するものであって、さらに詳しくは、イオン化されない熱活性ナノ触媒を含み、金属(metal)層の化学機械的平坦化工程に特に有用な研磨スラリー組成物及びこれを用いた研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積回路の技術が適用された半導体チップには、トランジスタ、キャパシタ、抵抗器など数多い機能要素(素子)が含まれており、このような個別的な機能要素が一定の形態に図案された配線により互いに連結され、回路を構成する。集積回路は各世帯を経るごとに小型化され、これによってチップ一つが有する機能もますます増大している。半導体チップの小型化において、単に素子のサイズを減少させることには限界があるため、最近は各素子を多層に形成する多層配線構造に対する研究が活発に進められている。このように多層配線構造の半導体素子を製造するためには、金属層を研磨して平坦化する工程を行わなければならない。しかし、一般に、金属層は強度が高くて研磨が容易でないため、金属層を効果的に研磨するためには、金属層を比較的に強度の低い金属酸化物の形態に酸化させた後、研磨を行わなければならない。
【0003】
しかし、通常の化学機械的研磨スラリー組成物は金属層を金属酸化物の形態に酸化させる化学的転換過程の効率が十分満たせなれない短所がある。一方、過酸化水素と鉄塩(鉄イオン)を含む研磨スラリー組成物を用いて、金属層の酸化を促進させる方法(韓国特許登録第745447号)も知られているが、前記方法は多量の鉄塩を用いるため、研磨される金属層が鉄イオンで汚染されて、欠陥が発生したり、またはプラグ(配線と配線との連結通路)に鉄イオンが残留して、過度な酸化による過度なエッチング現象が発生する恐れがある。よって、研磨される金属層に欠陥を発生させないながらも、金属層を効果的に酸化させられる酸化剤と研磨粒子の選択及びその濃度の調節が化学機械的研磨(CMP)スラリー組成物の開発においてかなり重要な要素となる。
【0004】
また、前記化学機械的研磨過程の触媒または酸化剤として、韓国特許公開2001−0043798号には、金属酸化物(TiO等)触媒が開示されているが、金属酸化物(TiO等)触媒は、光活性触媒であって、CMP組成物が作用する基板とパッドとの間に光活性に必要な光を照射するなどの問題点がある。
【0005】
また、韓国登録特許公報10−736325号には、ペントン酸化反応によって活性化するものと公知された金属からなる群より選ばれる活性化剤を粒子及び流体の表面に結合させたCMP組成物が開示されているが、活性化剤と粒子が分離されない場合にも複数の酸化価を有するため、活性化剤であるFeイオンなどによる汚染の可能性があり、汚染水準を減少させるための有機添加剤が必要な問題点がある。
【0006】
また、米国特許5,861,055号及び韓国特許公開2008−0070053号には、金属シリサイド(Metal silicide)成分を研磨剤として用いる化学機械的スラリー組成物が開示されているが、金属シリサイド(Metal silicide)を活性剤でない単純な研磨剤の一つとして認識している。
【0007】
そこで、本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決しようと鋭意努力した結果、金属(鉄)イオンが存在しない、イオン化されない熱活性ナノ触媒を含む化学機械的研磨スラリー組成物を用いることによって、研磨工程時に金属による汚染を低下させ、過度な酸化反応を防止することができ、研磨効率を向上させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させる新規メカニズムによる、イオン化されない熱活性ナノ触媒を用いる化学機械的研磨スラリー組成物を提供することであり、本発明の他の目的は、多量の鉄イオン(鉄塩)と過酸化水素を用いる代わりに、新規のイオン化されない熱活性ナノ触媒を用いて、金属層の酸化を促進し、金属層を容易に研磨できる、化学機械的研磨スラリー組成物を提供することであり、本発明のさらに他の目的は、安定性に優れており、金属イオンの発生によって基板を汚染させないイオン化されない熱活性ナノ触媒を用い、金属イオンによって発生する汚染水準を減少させるために投入する有機添加剤を必要としない化学機械的研磨スラリー組成物及びこれを用いた研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤を含み、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒は、水溶液状態で10ないし100℃の温度で電子と正孔を放出させる半導体物質であるものが好ましく、さらに好ましくは、CrSi、MnSi、CoSi、フェロシリコン(FeSi)及びこれらの混合物からなる群より選ばれる遷移金属シリサイド(transition metal silicide)が用いられ、最も好ましくは、ナノフェロシリコン(nano ferrosilicon)のような半導体物質を用いることができる。また、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は0.00001ないし0.1重量%である化学機械的研磨スラリー組成物を提供する。ここで、前記研磨剤の含有量は、0.1ないし20.0重量%であるのが好ましい。
【0010】
本発明はまた、化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤を含む化学機械的研磨スラリー組成物を金属層の形成された基板に塗布するステップ、前記化学機械的研磨スラリー組成物が塗布された基板と研磨パッドとを接触させ、研磨パッドを基板に対して移動させるステップ、及び基板から金属層の少なくとも一部を除去するステップ、を含み、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は、全体化学機械的研磨スラリー組成物に対して0.00001ないし0.1重量%である基板の研磨方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による化学機械的研磨スラリー組成物を用いてW(タングステン)膜を研磨する場合において、パッド表面の温度変化を示すグラフである。
【図2】本発明による化学機械的研磨スラリー組成物を用いてW(タングステン)膜を研磨する場合において、研磨時間によるW膜の研磨速度を示すグラフである。
【図3】本発明による化学機械的研磨スラリー組成物と硝酸第2鉄((Fe(NO)を含むスラリー組成物におけるFeイオン検出の有無を示すグラフである。
【図4】本発明による化学機械的研磨スラリー組成物中における、熱活性ナノ触媒として用いられるナノフェロシリコン(FeSi)の結合状態を示すグラフであり、(a)は、XPSを用いて広いスキャン領域での定性分析を、(b)は、XPSを用いて狭いスキャン領域での結合状態分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の他の特徴及び具現例は、次の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【0013】
本発明は、化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤を含み、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、前記熱活性ナノ触媒の含有量は0.00001ないし0.1重量%である化学機械的研磨スラリー組成物に関するものである。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0014】
本発明による化学機械的研磨(CMP)スラリー組成物は、イオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤及び酸化剤を含み、ここで、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なるものである。本発明による化学機械的研磨スラリー組成物に用いられるイオン化されない熱活性ナノ触媒としては、化学機械的研磨工程で発生される熱エネルギにより電子及び/または正孔を放出させ、放出された電子が過酸化水素などの酸化剤と反応して、ヒドロキシルラジカルを発生させる物質で、低いエネルギバンドギャップを有するすべての半導体物質を用いることができる。イオン化しない熱活性半導体ナノ触媒が化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるメカニズムは、次の通りである。
nano FeSi → e(放出) + h(表面)
+ H → ・OH + OH
+ O → O・(super oxide radical)
2O・ + 2HO → 2・OH + 2OH + O
2h + 2OH → 2・OH
⇒ 6・OH + W → WO + 3H
【0015】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒として用いることのできる半導体物質は、水溶液状態で、10ないし100℃、好ましくは20ないし80℃、さらに好ましくは30ないし70℃の温度で、電子と正孔を放出させる物質であって、0.001ないし3.0eV、好ましくは0.005ないし2.0eVのエネルギバンドギャップを有するものが好ましい。ここで、前記温度が低すぎると、電子と正孔が発生しない恐れがあり、高すぎると、急激な反応によって不均一な研磨が行われる恐れがあり、また、前記エネルギバンドギャップが低すぎると、導体となり触媒の機能を失う恐れがあり、高すぎると、研磨工程で発生するエネルギによって触媒が励起できない恐れがある。前記イオン化されない熱活性ナノ触媒はナノサイズの粒子であって、具体的に、1ないし1,000nm、好ましくは1ないし20nm、さらに好ましくは2ないし10nmの粒子サイズを有し、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の粒子が小すぎると、粒子に形成できない恐れがあり、大きすぎると、触媒活性が低下したり、または研磨工程でスクラッチなどの欠陥を起こす恐れがある。
【0016】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒としては、MSi(M:遷移金属)で表される遷移金属シリサイド(transition metal silicide)を用いることができる。一般に、遷移金属シリサイドは水溶液で不活性物質であって、反応性はないが、高温で溶融されたKOH、KF、KClなどと反応するものと知られている。前記遷移金属シリサイドとしては、CrSi、MnSi、CoSi、フェロシリコン(FeSi)等を例示することができ、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の特に好ましい例は、粒子サイズが約4ないし5nmのフェロシリコン(FeSi)である。ナノサイズに合成したフェロシリコンは活性が非常に高いことから、CMP工程で発生する熱エネルギによって十分活性化される特徴を有する。
【0017】
前記フェロシリコン(FeSi)は、本願発明の出願者が特許権者として登録された韓国特許登録10−850877号に記載されている通り、水溶液中で、FeCl等の鉄塩の存在下でSiCl等のシリカ塩を反応させて製造することができる。
【0018】
また、フェロシリコン(FeSi)は、本願発明の出願者が出願した韓国出願発明10−2009−42594号に記載されている通り、反応タンクに遷移金属化合物及び有機溶媒を投入し、前記有機溶媒が超臨界状態に到達するように加熱及び加圧するステップ、前記反応タンクにシリコン化合物を投入して混合するステップ、及び前記混合された混合液を不純物除去タンクに移送し、前記有機溶媒及び未反応物を除去するステップを経て、製造する超臨界流体を用いた遷移金属シリサイドの製造方法で製造することができる。
【0019】
上記本願発明の出願者の発明によるフェロシリコン(FeSi)は、製造工程後、未だ反応できなかった不純物としてイオンが存在することがあるが、熱活性固体研磨組成物を製造する工程で前記反応液内に存在するイオンの除去は、前記組成物をOH−とH+イオンで交換できるように、例えば、イオン交換樹脂を用いて、組成物の不純物を処理したイオン交換樹脂処理法(Ion Exchange Resin Method)を用いて行われる。
【0020】
そして、前記フェロシリコン(FeSi)は鉄とシリコンの合金であって、通常、溶鉱炉、電気炉などで溶融物として製造され、商業的に市販される製品の場合、シリコン含有量が約15ないし90重量%である。前記フェロシリコン(FeSi)において、鉄(Fe)成分の一般的な含有量は、フェロシリコン(FeSi)全体に対して、好ましくは0.01ないし99重量%、さらに好ましくは0.1ないし50重量%であり、前記鉄(Fe)成分の含有量が少なすぎると、研磨工程エネルギにより活性化しない恐れがあり、多すぎると、導体になって触媒の機能を失う恐れがある。
【0021】
前記フェロシリコン(FeSi)は、ナノ粒子製造工程である液相法、固相法、気相法などで製造することができ、超臨界法を通じて物性を調節しながら製造されることもある。このように、本発明に用いられる遷移金属シリサイドにおいて、各成分の含有量は、本発明の目的を害さない限度内で、つまり、多層配線構造の半導体素子の構造及び構成要素の性状に合わせて、0.0001ないし99.9999重量%、好ましくは0.1ないし99.9重量%、さらに好ましくは1ないし99重量%、最も好ましくは10ないし90重量%に多様に設定できる。
【0022】
本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒は、化学機械的研磨工程において、正孔と電子を放出して、過酸化水素などの酸化剤と反応し、反応性の非常に強いヒドロキシラジカルを生成させることによって、金属層を酸化させる。本発明による化学機械的研磨スラリー組成物において、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は、全体化学機械的研磨スラリー組成物に対して、0.00001ないし0.1重量%、好ましくは0.00005ないし0.07重量%、さらに好ましくは0.0001ないし0.05重量%、最も好ましくは0.001ないし0.03重量%である。ここで、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量が少なすぎると、触媒作用が十分でない恐れがあり、多すぎると、反応性が過度に増加して、研磨が不均一になる恐れがある。
【0023】
本発明による化学機械的研磨スラリー組成物は、研磨される金属層の表面に酸化膜を形成して、金属層の研磨を助けるための酸化剤を含む。前記酸化剤としては、モノ過硫酸塩(mononopersulfate)、過硫酸塩(persulfate)、パーオキシド(peroxide)、過ヨウ素酸塩(periodate)、これらの混合物などを用いることができ、好ましくは過酸化水素を用いることができる。前記モノ過硫酸塩としては、KHSO、KHSO、KSO等を例示することができ、前記パーオキシド化合物としては、過酸化水素、ベンゾイルパーオキシド、過酢酸(peracetic acid)、ジ−t−ブチルパーオキシド、ナトリウムパーオキシドなどを例示することができる。本発明のスラリー組成物に含まれる酸化剤の含有量は、全体スラリー組成物に対して0.1ないし10.0重量%であることが好ましく、0.2ないし5.0重量%であればさらに好ましい。ここで、前記酸化剤の含有量が0.1重量%未満であれば、酸化膜の形成が十分でない恐れがあり、前記酸化剤の含有量が10.0重量%を超えれば、研磨効率が低下する恐れがある。前記酸化剤は、熱エネルギによって活性化された熱活性ナノ触媒から発生される電子及び正孔と反応して、反応性の高いヒドロキシラジカル(−OH)を生成する。
【0024】
本発明のスラリー組成物は、金属層の機械的研磨を行う通常の研磨剤(abrasive)を含む。前記研磨剤としては、ヒュームドシリカ(fumed silica)、コロイダルシリカなどのシリカ、γ−アルミナ、α−アルミナなどのアルミナ、セリア(ceria)、ゲルマニア、チタニア、ジルコニアなど通常の研磨剤を単独または混合して用いることができ、ヒュームドシリカを用いることが好ましい。前記研磨剤のサイズは、一般に、1.0μm未満であり、好ましくは400nm未満であり、前記研磨剤の含有量は、全体スラリー組成物に対して0.1ないし20.0重量%であることが好ましく、0.5ないし10.0重量%であればさらに好ましい。前記研磨剤の含有量が0.1重量%未満であれば、金属層の研磨が十分でない恐れがあり、前記研磨剤の含有量が20.0重量%を超えれば、スラリーの安定性が低下する恐れがある。
【0025】
本発明によるスラリー組成物の残りの成分は、水、好ましくは脱イオン水または蒸溜水であり、必要によって、保管温度、熟成などによるゲル化及び粒子沈殿現象を抑制し分散安定性を維持するための分散剤、基板の平坦度の差による酸化剤の不均等な反応を調整するための反応調節剤を用いることができ、好ましい反応調節剤はマロン酸を適正量用いることができ、金属イオンの汚染水準を減少させるためのジヒドロキシエノ−ル化合物及びアスコルビン酸など有機添加剤は必要でない。pH変化による影響を抑制するためのバッファー溶液などの通常の添加剤をさらに含むことができ、本発明によるスラリー組成物のpHは、1ないし10、好ましくは1ないし9、さらに好ましくは1ないし7である。前記スラリー組成物のpHが1未満であれば、粒子が凝集してゲル化する恐れがあり、pHが10を超えれば、酸化反応が不十分に行われる恐れがある。前記スラリー組成物のpHを前記範囲で調節するために、必要に応じてpH調節剤を添加することができ、このようなpH調節剤としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸、または酒石酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸などの有機酸を用いることができる。
【0026】
本発明の組成物は、多層配線構造の半導体素子の構造及び構成要素の性状に合わせて、公知された任意の方法で製造することができる。例えば、研磨剤及びイオン化されない熱活性ナノ触媒を脱イオン水、蒸溜水などの水性媒質に必要な濃度で添加した後、酸化剤または酸化剤水溶液を前記水性媒質に所望の濃度で添加して、本発明の組成物を製造することができる。また、分散剤などの通常の添加剤を任意の方法で本発明の組成物に添加することができる。ただし、金属イオンの汚染水準を減少させるためのジヒドロキシエノ−ル化合物及びアスコルビン酸などの有機添加剤は必要でない。
【0027】
本発明の組成物を構成する各成分は、ウエハの研磨工程直前に混合されて研磨工程に用いられることもあり、混合後所定の時間が経過した後に研磨工程に用いられることもあり、1以上の成分を含む2以上の包装(package)単位で提供された後、研磨工程直前に前記2以上の包装単位に含まれている成分を混合して用いることもできる。本発明のスラリー組成物を用いて、ウエハ、ケイ素、ガラスなどの基板、具体的に前記基板に形成された金属層を研磨するためには、前記スラリー組成物を基板に塗布し、研磨パッドを基板と接触させ、研磨パッドを基板に対して移動させて、基板から金属層の少なくとも一部を除去する。本発明のスラリー組成物を用いて研磨できる基板には、一つ以上の金属層、例えば、チタン層、窒化チタン層、タングステン層などを含む基板を例示することができ、好ましくは、タングステン層を含む基板を例示することができる。
【0028】
以下、実施例を参照しながら本発明についてさらに詳しく説明する。これら実施例はひたすら本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものと解釈されないのは当該分野における通常の知識を有する者にとっては自明なことであるだろう。
【実施例】
【0029】
<実施例1〜5、比較例1:シリカ含有量によるタングステン層の研磨速度試験>
下記表1に記載されているように、シリカ(SiO)、過酸化水素、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)及び残りの脱イオン水を含む化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(実施例1ないし5)。また、イオン化されない熱活性ナノ触媒の代わりに通常の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)を用いて、化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(比較例1)。製造されたスラリー組成物を用いて、0.8μm厚さのタングステン層が形成されたタングステンウエハを研磨し、その研磨結果を表1に共に示した。前記研磨に使用された研磨装置は、日本Ebara社のFrex−200 CMP Polisherであり、研磨パッドは、米国Rom&Haas社のIC 1000であり、研磨条件は、200hPaのパッド圧力、90rpmのパッド回転速度、及び150ml/minのスラリー供給速度(flow rate)であった。
【0030】
【表1】

【0031】
上記比較例1の組成物において、鉄イオンの含有量は60ppmであり(下記実験例4を参照)、実施例1ないし5に用いられたナノフェロシリコン(FeSi)で鉄の含有量は8ppm(全体組成物基準)であり、前記鉄はイオン形態で存在しない。また、上記表1において、研磨速度と平坦度は、比較例1の研磨速度と平坦度をそれぞれ1000Å/min及び5%に調整した(normalize)場合の相対的な値である。上記表1から、研磨粒子であるシリカの含有量が増加するにつれて研磨速度が線形的に増加し、比較例1の従来のスラリー組成物と比較すると、研磨粒子(シリカ)を同一量で用いる場合(実施例5及び比較例1)、本発明のスラリーの研磨速度が15%程度優れていることが分かる。
【0032】
<実施例6〜9、比較例2:酸化剤含有量によるタングステン層の研磨速度試験>
下記表2に記載されているように、シリカ(SiO)、過酸化水素、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)及び残りの脱イオン水を含む化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(実施例6ないし9)。また、イオン化されない熱活性ナノ触媒の代わりに通常の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)を用いて、化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(比較例2)。製造されたスラリー組成物を用いて、実施例1〜5と同一の条件で研磨を施し、その研磨結果を表2に共に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
上記比較例1及び2の組成物において、鉄イオンの含有量は60ppmであり、実施例6ないし9に用いられたナノフェロシリコン(FeSi)で鉄の含有量は8ppmであり、前記鉄はイオン形態で存在しない。また、上記表2において、研磨速度と平坦度は、比較例1の研磨速度と平坦度をそれぞれ1000Å/min及び5%に調整した(normalize)場合の相対的な値である。上記表2から、酸化剤である過酸化水素の含有量が増加するにつれて研磨速度が増加し、比較例1及び2の従来スラリー組成物と比較して研磨速度及び平坦度が同等以上であることが分かる。
【0035】
<実施例10〜18、比較例1:ナノ触媒含有量による研磨速度試験>
下記表3に記載されているように、シリカ(SiO)、過酸化水素、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)及び残りの脱イオン水を含む化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(実施例10ないし18)。また、熱活性ナノ触媒の代わりに通常の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)を用いて、化学機械的研磨スラリー組成物を製造した(比較例1)。製造されたスラリー組成物を用いて、実施例1〜5と同一の条件で研磨を施し、その研磨結果を表3に共に示した。
【0036】
【表3】

【0037】
上記比較例1の組成物において、鉄イオンの含有量は60ppmであり、実施例10ないし18に用いられたナノフェロシリコン(FeSi)の含有量は100ppbから1,000ppmであり、前記鉄はイオン形態で存在しない。また、上記表3において、研磨速度と平坦度は、比較例1の研磨速度と平坦度をそれぞれ1000Å/min及び5%に調整した(normalize)場合の相対的な値である。上記表3から、ナノフェロシリコン(触媒)の含有量が増加するにつれて研磨速度が増加し、ナノフェロシリコンの含有量が17ppm以上であると、研磨速度がほぼ一定に維持されることが分かる。比較例1と対比して、ナノフェロシリコンを適用する場合の研磨後の平坦度をみると、実施例10のように非常に極微量のフェロシリコンの場合を除いて、平坦度が相対的にさらに均一であることが分かる。
【0038】
<実施例19〜21:遷移金属別メタルシリサイド(MSi)の研磨性能試験>
フェロシリコンと他の遷移金属(Mn、Co)別メタルシリサイド(MSi)の研磨性能を比較試験した結果を表4に示した。表から分かるように、ナノフェロシリサイドに比べてマンガンシリサイドとコバルトシリサイドの試験において、タングステン基板の研磨速度は低下したが、研磨機能に対する効果を確認することができ、これと関連して、イオン化されない熱活性ナノ触媒としてフェロシリサイドの外にもマンガンシリサイド及びコバルトシリサイドなど、その他遷移金属シリサイドも化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒に該当することが分かる。
【0039】
前記研磨性能試験は、実施例1〜5と同一の条件の研磨方法及び装置を用いて実施した。つまり、前記研磨に使用された研磨装置は、日本Ebara社のFrex−200 CMP Polisherであり、研磨パッドは、米国Rohm&Haas社のIC 1000であり、研磨条件は、200hPaのパッド圧力、90rpmのパッド回転速度、及び150ml/minのスラリー供給速度(flow rate)であった。
【0040】
【表4】

【0041】
<実験例1〜3:熱エネルギに対する反応性実験>
酸化剤(過酸化水素)と触媒の反応性を確認するために、純粋な脱イオン水、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)0.0017重量%(Fe含有量:8ppm)を含む水溶液、及び従来の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)0.0434重量%(Feイオン含有量:60ppm)を含む水溶液に酸化剤3.0重量%を投入し、水溶液の状態(酸化剤との反応による色変化及び起泡発生)を観察した。また、水溶液を60℃で加熱してから酸化剤を投入した後、水溶液の状態を観察して、下記表5に共に示した。
【0042】
【表5】

【0043】
上記表5から、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)0.0017重量%を含む水溶液は、酸化剤を投入すると、反応しないが、ホットプレートで60℃で加熱した後に酸化剤を投入すると、反応を進めて(起泡発生)、90分間の間反応が進められ、反応終了後透明な色を呈した(実験例2)。それに対し、従来の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)0.0434重量%を含む水溶液は、酸化剤を投入すると、褐色を呈しながら、常温で直ちに起泡が発生(ペントン酸化反応;廃水処理場で多く用いる化学反応)し、60℃で加熱後、30分内に反応が終了し、最終的に濃い褐色を呈した。また、触媒を添加せずに、酸化剤(過酸化水素)のみを投入する場合(実験例1)には、常温及び加熱状態で反応が全くないため、熱を加えても酸化剤単独では分解されて起泡を発生させないことが分かる。前記実験において、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒を用いた場合、硝酸第2鉄を用いた場合に比べて、非常に微細な起泡が発生した。前記実験から、従来の硝酸第2鉄を用いる反応メカニズムとは異なって、本発明による熱活性ナノ触媒は熱によって励起された状態で電子を発生させ、これが過酸化水素と反応することが分かる。
【0044】
<実験例4:研磨温度及び研磨速度の関係>
研磨温度と研磨速度の関係を把握するために、8,000Å厚さのW(タングステン)CVD(化学気相蒸着)膜がコーティングされたウエハ(Wafer)をCMP装備(日本Ebara社、FREX−200)及び実施例7の化学機械的研磨スラリー組成物を用いて研磨した。この際、IR(赤外線)センサ(日本SATO社のSK−8700)を用いて、CMPヘッド(head)と最も近いパッド(米国Rohm&Haas社のIC 1000)面の温度を測定(detect)することによって、研磨工程の間のパッド表面の温度変化を測定し、その結果を図1に示した。図1から、研磨開始後、約30ないし40秒後には研磨温度が50℃程度まで上昇して、維持されることが分かる。
【0045】
また、研磨時間(Polishing time、単位:sec)によるW膜の研磨速度(Removal rate、単位:Å/sec)を測定して、図2に示した。図2において、(1)は、シリカ研磨粒子の含有量が2重量%、酸化剤の含有量が2重量%である実施例7のスラリー組成物を用いた場合の研磨速度(RR)であり、(2)は、シリカ研磨粒子の含有量が3重量%、酸化剤の含有量が3重量%である実施例5のスラリー組成物を用いた場合の研磨速度(RR)である。図2から、化学機械的研磨が進められる間、熱エネルギが継続して増加するのではなく、ある程度の水準で一定に維持され、よって、メタル(W)膜の研磨速度も、図2のように、ある程度の水準で一定に維持されることが分かる。つまり、本発明によるスラリー組成物を用いて研磨工程を行う場合、研磨速度が一定範囲で維持され、研磨粒子や酸化剤の含有量が増加すると、それに伴って研磨速度も増加することが分かる。
【0046】
<実験例5:電気泳動を用いたスラリー組成物におけるFeイオンの検出試験>
スラリー中のFeイオンの存在の有無を確認するために、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)17ppmを含むスラリーと、従来の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)434ppmを含むスラリーを準備した。次に、超高速遠心分離機を用いて、スラリー中の研磨剤粒子(Abrasive)と液相とを分離した。分離された液相試料を採取して、60秒間コラムに注入し、電気泳動させ、試料中のFeイオンの存在を確認し、その結果を表6に示した。前記実験において、電気泳動装置は日本大塚電子のCAPI−3200装備を用い、直径75μm及び長さ50cmのコラムを用い、Fe3+バッファー溶液(buffer solution)を移動相(Eluent)として用いた。使用された装備の検出限界(detection limit)は1ppmであった。一方、ICP−MS(Inductively coupled plasma masss pectrometry)を用いて、ナノフェロシリコン(FeSi)17ppmを含むスラリーを酸で完全に溶かして分析した結果、Feの含有量が8ppmであることを確認した。
【0047】
【表6】

【0048】
上記表6から、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)を含むスラリーにはFeイオンが存在しないのに対し、硝酸第2鉄(Fe(NO)を含むスラリーには多量のFeイオンが存在することが分かる。
【0049】
<実験例6:CMP後、残留スラリー溶液におけるFeイオンの検出試験>
CMP(化学的機械的研磨)工程後、イオン化されない熱活性ナノ触媒が化学的機械的環境の影響によってイオンに解離したか否かを判断するために、Feイオンの検出試験を実施した。
【0050】
CMP後、Feイオンの発生の有無を確認するために、イオン化されない熱活性ナノ触媒を含むスラリーと硝酸第2鉄を含むスラリーをそれぞれ用いて、研磨した後、残留スラリー溶液におけるFeイオンの検出を確認した。シリカ研磨粒子の含有量が3重量%、酸化剤の含有量が3重量%、ナノフェロシリコンの含有量が17ppmである実施例5のスラリー組成物と、シリカ研磨粒子の含有量が3重量%、酸化剤の含有量が3重量%、硝酸第2鉄(Fe(NO)の含有量が434ppmである比較例1のスラリー組成物とを用いて、実施例1〜5と同一の条件で研磨を施し、残留スラリーのFeイオンを分析して、表7に示した。前記実験において、分析装置はCAPI−3200装備を用い、Fe3+バッファー溶液(buffer solution)を移動相(Eluent)として用い、常温でFused silica capillary column(I.D:75μm、長さ:50cm)を用いて、235nm領域で測定した。使用された装備の検出限界は1ppmであった。
【0051】
Feイオンの検出実験を実施した結果、表7に示されているように、比較例1はCMP工程後、Feイオンが確認されたが、実施例5ではCMP工程前と同様に、CMP工程進行後にもFeイオンの存在が確認されなかった。
【0052】
前記実験結果から、CMP工程中に発生される圧力と摩擦によっても熱活性ナノ触媒がイオン化しないことを確認することができた。
【0053】
【表7】

【0054】
<実験例7:CMP後、ウエハ表面の不純物確認試験>
スラリー中のFeイオンの存在の有無を確認するために、イオン化されない熱活性ナノ触媒を含むスラリーと硝酸第2鉄を含むスラリーをそれぞれ用いて、研磨した後、ウエハ表面の不純物を確認した。イオン化されない熱活性ナノ触媒を含むスラリー組成物は、シリカ研磨粒子の含有量が3重量%、酸化剤の含有量が3重量%、ナノフェロシリコンの含有量が17ppmである実施例5のスラリー組成物を用い、硝酸第2鉄を含むスラリーは、シリカ研磨粒子の含有量が3重量%、酸化剤の含有量が3重量%、硝酸第2鉄(Fe(NO)の含有量が434ppmである比較例1のスラリー組成物を用いた。
【0055】
この際、実施例1〜5と同一の条件の研磨方法及び装置を用いて、研磨を施した。つまり、前記研磨に使用された研磨装置は、日本Ebara社のFrex−200 CMP Polisherであり、研磨パッドは、米国Rohm&Haas社のIC 1000であり、研磨条件は、200hPaのパッド圧力、90rpmのパッド回転速度、及び150ml/minのスラリー供給速度(flow rate)であり、前記研磨条件下で0.8μm厚さのタングステンが形成されたタングステンウエハを研磨した。
【0056】
研磨後には、DIWを用いたpost−CMP洗浄及び希釈したアンモニア溶液を用いた洗浄を進めた後、ウエハ表面の不純物を測定した。前記ウエハ表面の不純物測定に使用された装備はRigaku社のTXRF 3750であり、前記使用された装備の検出限界は10Atoms/cmであった。
【0057】
前記のようにイオン化されない熱活性ナノ触媒を含むスラリーと硝酸第2鉄を含むスラリーをそれぞれ用いて、化学機械的研磨後、ウエハ表面の不純物を確認した。
【0058】
【表8】

注1)Referenceは、CMPする前にclean状態のblanket Wafer表面上での不純物含有量の結果である。
【0059】
その結果、表8に示されているように、イオン化されない熱活性ナノ触媒を含むスラリーは硝酸第2鉄を含むスラリーと対比して、CMP過程において基板汚染を起こすFeイオンの沈殿物などがCMP後のウエハ上で不純物として作用しないことが分かった。また、Fe及びNiでの金属の極少量増加は研磨過程における機械的作用によるものと推定され、イオン化による不純物の増加はFe及びNi以外の物質ではほとんど発生しないことを確認することができた。
【0060】
<実験例8:EPRを用いたスラリー組成物におけるFeイオンの検出試験>
スラリー中のFeイオンの存在の有無を確認するために、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)17ppmを含むスラリー(実施例5)と、従来の触媒として硝酸第2鉄(Fe(NO)434ppmを含むスラリー(比較例1)を凍結乾燥し、固体試料を準備した。EPR(Electron Paramagnetic Resonance)を用いて、100kHz磁場変調でX−bandマイクロ波周波数(9.3GHz)で試料中のFeイオンの存在を確認し、その結果を図3に示した。前記実験において、EPR装置はBruker E500装備を使用した。
【0061】
図3から、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)を含むスラリーと硝酸第2鉄(Fe(NO)を含むスラリー上のEPRデータを分析した結果、本発明によるスラリーではFeイオン(Fe3+)の存在が確認されず、その差が明らかに分かった。
【0062】
<実験例9:XPSを用いた熱活性ナノ触媒(FeSi)の結合状態分析>
熱活性ナノ触媒の結合状態を分析するために、本発明によるイオン化されない熱活性ナノ触媒としてナノフェロシリコン(FeSi)と、市販されるフェロアルミニウム(FeAl)、コバルトアルミニウム(CoAl)、コバルトシリコン(CoSi)を固体試料(板状サイズ 7×7mm〜10×10mm)として準備した。超高真空(ultra−high vacuum、UHV)でX線photonsとしてsoptサイズが60〜800μm水準のAlKaを用いた。前記実験において、XPS装置はPHI社の5800 ESCA装備を使用した。
【0063】
状態を分析した結果、図4から広い(wide)スキャン領域で合成されたFeSiの存在を確認することができ、より精密な狭い(narrow)スキャン領域ではFeSiが結合している状態であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明による化学機械的研磨スラリー組成物においては、スラリー内に金属(鉄)イオンが存在しないため、ウエハの研磨工程後、ウエハの金属汚染が少なく、CMP工程以外には追加的な酸化反応が起こらないため、工程の前後または工程の中断期間中、意図しない追加反応によるタングステンプラグの腐食を誘発しない。また、本発明によるスラリー組成物は、金属(Fe)の汚染水準を減少させるための有機添加剤が必要とならず、従来のタングステン(W)スラリーに比べて、シリカ粒子の含有量が少ないながらも、タングステン(W)の研磨速度及び研磨後の平坦度が優れた長所がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤、を含み、
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は0.00001ないし0.1重量%であることを特徴とする化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項2】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒は、MSi(M:遷移金属)で表される遷移金属シリサイドであることを特徴とする請求項1に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項3】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒は、CrSi、MnSi、CoSi、フェロシリコン(FeSi)及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項4】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒は、フェロシリコン(FeSi)であることを特徴とする請求項1に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項5】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒は、水溶液状態で10ないし100℃の温度で電子と正孔を放出させる半導体物質であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項6】
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の粒子サイズは、1ないし20nmであることを特徴とする請求項5に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項7】
前記研磨剤の含有量は、0.1ないし20.0重量%であることを特徴とする請求項6に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項8】
全体化学機械的研磨スラリー組成物に対して、前記イオン化されない熱活性ナノ触媒の含有量は、0.00005ないし0.07重量%であり、前記研磨剤の含有量は、0.5ないし10.0重量%であることを特徴とする請求項7に記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項9】
前記研磨剤は、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、γ−アルミナ、α−アルミナ、セリア、ゲルマニア、チタニア、ジルコニア及びこれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項10】
前記酸化剤は、モノ過硫酸塩、過硫酸塩、パーオキシド、過ヨウ素酸塩及びこれらの混合物からなる群より選ばれ、前記酸化剤の含有量は、全体スラリー組成物に対して0.1ないし10.0重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の化学機械的研磨スラリー組成物。
【請求項11】
化学機械的研磨工程で発生するエネルギにより電子と正孔を放出させるイオン化されない熱活性ナノ触媒、研磨剤、及び酸化剤を含む化学機械的研磨スラリー組成物を金属層の形成された基板に塗布するステップ、
前記化学機械的研磨スラリー組成物が塗布された基板と研磨パッドを接触させ、研磨パッドを基板に対して移動させるステップ、及び
基板から金属層の少なくとも一部を除去するステップ、を含み、
前記イオン化されない熱活性ナノ触媒と研磨剤は互いに異なっており、前記熱活性ナノ触媒の含有量は、全体化学機械的研磨スラリー組成物に対して0.00001ないし0.1重量%であることを特徴とする基板の研磨方法。
【請求項12】
前記金属層は、チタン層、窒化チタン層、及びタングステン層からなる群より選ばれることを特徴とする請求項11に記載の基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−529174(P2012−529174A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513862(P2012−513862)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003349
【国際公開番号】WO2010/140788
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(500013751)東進セミケム株式会社 (72)
【氏名又は名称原語表記】Dongjin Semichem Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】472−2 Gajwa−dong,Seo−ku,Incheon−city 404−250,Korea
【Fターム(参考)】