説明

イオン性フルオロポリマーの分散体の精製方法

アニオン種が、アニオン交換樹脂を用いてイオン性フルオロポリマーの水性分散体から除去される。いくつかの実施態様において、カチオン種もまた、カチオン交換樹脂を用いて除去される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イオン性フルオロポリマー(例えば、フッ素化イオノマーまたはフッ素化高分子電解質)は、例えば、−SO3-など、共有結合したイオン性基を有するポリマーである。固体の形において、イオン性基は典型的に、カチオン種(例えば、H+、Na+またはZn2+)との塩として存在するが、水溶液中でイオン性基は遊離−SO3-の形として存在する。イオン性フルオロポリマーは、燃料電池において用いられる膜を製造するために用いられる。このような膜は典型的に、水性媒体中のイオン性フルオロポリマーの分散体を基材上にキャスチングし、その後に水性媒体を除去することによって形成される。
【0002】
このような膜は典型的に、燃料電池が適切に機能するために低レベルのアニオン不純物を有するのがよいが、膜中の低レベルのカチオン性不純物は典型的に、増大した耐久性、性能、および膜の品質に結びついている。
【0003】
アニオン不純物を低減するための公知の方法、例えば、洗浄または抽出は、凝固されたイオン性フルオロポリマーの精製に依存する。アニオン不純物を低減した後、凝固されたイオン性フルオロポリマーは概して、過酷な条件および高度に特化された装置を典型的に必要とする費用がかかる方法において水性媒体中に再分散される。
【0004】
次に、カチオン性不純物を交換プロセスによって除去し、次いで、精製された分散体を基材上にキャストし、燃料電池に組み込まれる膜を形成する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本発明は、イオン性フルオロポリマーの分散体の精製方法であって、イオン性モノマー単位と非イオン性モノマー単位とを含むイオン性フルオロポリマーの、水性媒体中の分散体を提供する工程であって、前記イオン性モノマー単位が、式−R1SO3-によって表される少なくとも1つの基を有し、上式中、R1は1〜15個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基、または1〜15個の炭素原子と1〜4個の酸素原子とを有するペルフルオロアルキレンオキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基であり、前記イオン性フルオロポリマーは、少なくとも600グラムから1200グラムまでのスルホネート当量を有し、イオン性フルオロポリマーの前記分散体は、前記イオン性フルオロポリマーに共有結合していないアニオン種を含有する工程と、
イオン性フルオロポリマーの前記分散体を、会合した水酸化物イオンを有するアニオン交換樹脂と接触させ、その結果、前記アニオン種の少なくとも一部が水酸化物イオンと交換されてアニオン交換された分散体を提供する工程と、
前記アニオン交換された分散体を前記アニオン交換樹脂から分離する工程であって、前記アニオン交換された分散体が、イオン性フルオロポリマーを含む工程と、を含む方法を提供する。
【0006】
1つの実施態様において、前記分散体が、前記イオン性フルオロポリマーに共有結合していないカチオン種をさらに含み、前記方法が、前記分散体を酸性プロトンを有するカチオン交換樹脂と接触させて、その結果、前記カチオン種の少なくとも一部がプロトンと交換される工程をさらに含む。
【0007】
別の実施態様において、カチオンの少なくとも一部が、アニオンの少なくとも一部を交換する前に交換される。
【0008】
有利には、アニオン種は、高度に特化された装置を必要とせずに簡単な方法で本発明によって低減されうる。
【0009】
本明細書中で用いられるとき、
用語「スルホネート当量」は、スルホネート基(すなわち、−SO3-)の1モルを含有するポリマーのその重量を指す。
用語「フルオロポリマー」は、ポリマーの全重量を基準として少なくとも30重量パーセントのフッ素含有量を有する有機ポリマーを指す。
語句「非イオン性乳化剤を実質的に含有しない」は、イオン性フルオロポリマーの全重量を基準として非イオン性乳化剤の0.001重量パーセント未満を含有することを意味する。
【0010】
本明細書に記載された数の範囲は、特に記載しない限り、それらの端点を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の方法は、(以下に規定されるように)イオン性モノマー単位と非イオン性モノマー単位とを含むイオン性フルオロポリマーの分散体を精製するために有用である。
【0012】
概して、イオン性フルオロポリマーは、加水分解性モノマーと非加水分解性モノマーとの混合物を重合して加水分解性ポリマーを形成することによって調製されてもよい。従って、加水分解性ポリマーは、例えば、少なくとも5または15モルパーセントから25、30、またはさらに50モルパーセントまでの量であってもよい加水分解性モノマー単位を有し、その少なくとも一部(典型的に実質的に全て)が、例えば、塩基で触媒された加水分解によってイオン性モノマー単位に変換される。加水分解の後、有用なイオン性フルオロポリマーのスルホネート当量は概して、少なくとも600、700、または800グラムから1000、1100またはさらに1200グラムまでの範囲である。
【0013】
加水分解性モノマー単位は、式I:
2C=CF−R1−SO2X (I)
によって表され、上式中、R1は1〜15個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基(例えば、分岐または非分岐ペルフルオロアルキレン)、または1〜15個の炭素原子と1〜4個の酸素原子とを有するペルフルオロアルキレンオキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基(例えば、分岐または非分岐)であり、XはF、Cl、またはBr、典型的にフッ素または塩素、より典型的にフッ素を表す。
【0014】
例えば、R1が、−(CF2a−または−O(CF2a−(aが1〜15の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15)である)、−(CF2CF(CF3))b−、−(CF(CF3)CF2b−、−(OCF2CF2CF2b−、−(OCF2CF(CF3))b−、または−(OCF(CF3)CF2b−(bが1〜5の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、または5)である)、−(CF2CF(CF3))cCF2−、−(OCF2CF(CF3))cOCF2CF2−、または
−(OCF(CF3)CF2cOCF2CF2−(cが1〜4の範囲の整数(例えば、1、2、3、または4)である)、−(OCF2CF2CF2CF2d−、−(OCF2CF(CF2CF3))d−、−(OCF(CF2CF3)CF2−)d、−(OCF2CF(CF2CF3))dOCF2CF2−、−(OCF(CF2CF3)CF2dOCF2CF2−(dが1〜3の範囲の整数(例えば、1、2、または3)である)、または(−O−CF2CF2−)e(eが1〜7の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、または7)である)であってもよい。1つの実施態様において、R1が典型的に−O−CF2CF2CF2CF2−または−OCF2CF(CF3)OCF2CF2−である。
【0015】
このようなモノマーは、例えば、米国特許第6,624,328B1号明細書(グェルラ(Guerra))および米国特許第6,593,019号明細書(アーマンド(Armand)ら)に開示された方法などのいずれの適した手段によって調製されてもよい。
【0016】
典型的に、加水分解性フルオロポリマーは、式Iによって表される少なくとも1つの加水分解性モノマーと、加水分解性ポリマーに混入されたとき、加水分解性モノマー単位を加水分解するために用いられた塩基性加水分解条件下で感知できる程度に加水分解しないモノマー単位(すなわち、非加水分解性モノマー単位)をもたらす、少なくとも1つの中性(すなわち、水中で加水分解性またはイオン化可能でない)エチレン性不飽和コモノマーと共重合することによって調製される。
【0017】
有用なエチレン性不飽和中性コモノマーには、式II:
2C=CFR2 (II)
によって表される過フッ素化コモノマーがあり、上式中、R2はFまたは、1〜5個の炭素原子と0〜2個の酸素原子とを含む分岐または非分岐ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基を表す。例には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、CF3OCF2CF2CF2OCF=CF2、CF3OCF=CF2、CF3CF2CF2OCF=CF2、米国特許第4,558,142号明細書(スクワイア(Squire))に記載されているようなペルフルオロ−1,3−ジオキソール、フッ素化ジオレフィン(例えば、ペルフルオロジアリルエーテルまたはペルフルオロ−1,3−ブタジエン)、およびそれらの組合せなどがある。
【0018】
また、有用なエチレン性不飽和コモノマーには、式III:
2C=CFO(RfO)n(Rf’O)mf’’ (III)
によって表される過フッ素化ビニルエーテルがあり、上式中、RfおよびRf’は2〜6個の炭素原子を有する異なる直鎖または分岐ペルフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)であり、nとmとの合計は少なくとも1であり、Rf’’は1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。
【0019】
式(III)の過フッ素化ビニルエーテルの例には、式(IV):
2C=CFO(CF2CF2CFZO)pf’’ (IV)
の化合物があり、上式中、Rf’’は前に定義された通りであり、pは1〜5の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、または5)であり、ZはFまたはCF3である。式(IV)の化合物の例には、Rf’’がC37であり、p=1、Z=FまたはCF3およびCF3OCF(CF3)CF2CF2OCF=CF2である化合物がある。式(III)に含められるさらに別の有用なフッ素化ビニルエーテルは、式(V):
2C=CFO(CF2CFXO)pf’’’ (V)
に相当し、上式中、pは前に定義された通りであり、XはFまたはCF3であり、Rf’’’は1〜5個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。式Vのモノマーの例には、XがCF3であり、Rf’’’が過フッ素化n−プロピルであり、pが1であるかまたはpが2であるモノマーがある。
【0020】
本発明に有用なさらに別の過フッ素化ビニルエーテルモノマーには、式
2C=CFO[(CF2CF(CF3)O)i(CF2CF2CF2O)j(CF2k]Cx2x+1 (VI)
の化合物があり、上式中、iおよびjは独立して、0〜10の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)であり、kは0〜3の範囲の整数(例えば、0、1、2、または3)であり、xは1〜5の範囲の整数(例えば、1、2、3、4、または5)である。例には、j=1、i=1、k=0、x=1である化合物がある。
【0021】
過フッ素化ビニルエーテルのさらに別の例には、式(VII):
2C=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)qCF3 (VII)
に相当するエーテルがあり、上式中、qは0〜3の範囲の整数(例えば、0、1、2、または3)である。
【0022】
さらに、非過フッ素化エチレン性不飽和コモノマーが、典型的に、上に記載された過フッ素化コモノマーの少なくとも1つと組み合わせて使用されてもよい。例には、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、フッ化ビニル、および二フッ化ビニリデン、およびそれらの組合せなどがある。使用される場合、最終コポリマー中のこれらのコモノマーの量は典型的に、40モルパーセントより少なく、より典型的に20モルパーセントより少ない。
【0023】
使用されてもよいさらに別の非過フッ素化コモノマーには、式VIII:
2C=CF[OCF2CF(CF3)]fO(CF2gC(=O)OCH3 (VIII)
によって表される非過フッ素化コモノマーがあり、上式中、fは0〜3の範囲の整数(例えば、0、1、2、または3)であり、gは0〜6の範囲の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、または6)である。
【0024】
さらに別の中性モノマーには、Br、Cl、I、または−CNを含有する基を有する硬化部位モノマー(CSM)がある。有用なCSMには、式CF2=CY−Qを有するCSMがあり、Yは典型的にFであるが、また、CF3であってもよく、QはBr、Cl、I、またはCNを含有する基である。典型的に、Qは、例えば、式−R1−Zを有する高フッ素化または過フッ素化基であり、R1は上に記載された通りであり、ZはBr、Cl、I、またはCNである。有用なCSMおよびそれらを硬化するための方法に関するさらなる詳細を米国特許出願第10/712,589号明細書(ヤンドラシッツ(Yandrasits)ら)および米国特許出願第10/712,590号明細書(ヤンドラシッツら)に見出すことができる。
【0025】
前述のモノマーは、概して、フリーラジカル開始剤(例えば、過硫酸アンモニウムまたはレドックス系、例えば過硫酸アンモニウム/二亜硫酸アンモニウムおよび過マンガン酸カリウム、および過酸化物、例えば、置換ジベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびビスペルフルオロプロピオニルペルオキシド)の有効量と組合せられる。適した水性エマルション重合技術は、例えば、米国特許第4,138,373号明細書(ウキハシ(Ukihashi)ら)および米国特許第4,320,205号明細書(アサワ(Asawa)ら)に記載されている。液体モノマーの均質な混合および高利用を確実にするために、いわゆる予備乳化技術を用いてもよく、それによって、液体コモノマーは、他の気体モノマーと重合する前に過フッ素化乳化剤(例えばペルフルオロオクタノエートの塩(すなわち、APFO))と水中で予備乳化される。このような手順および技術は、米国特許第5,608,022号明細書(ナカヤマ(Nakayama)ら)、米国特許第5,595,676号明細書(バーンズ(Barnes)ら)、および米国特許第6,602,968号明細書(ベキアリアン(Bekiarian)ら)に記載されている。
【0026】
本発明による分散体中の、本明細書中で「加水分解性フルオロポリマー」と称される式-R1SO2Xによって表される複数の加水分解性側基を有するフルオロポリマーの含有量は、ゼロを超えるいずれかの量(例えば、少なくとも1、5、10、20、30、または40重量パーセント以上)であってもよいが、典型的に15〜45重量パーセントの範囲である。
【0027】
加水分解性フルオロポリマーは、ポリマーの全重量を基準として少なくとも30、40、50、60またはさらに少なくとも70重量パーセントのフッ素含有量を有してもよい。1つの実施態様において、フルオロポリマーは過フッ素化されてもよい。
【0028】
残留した中性モノマーは、加水分解の前または後のどちらかに例えば、水蒸気蒸留(例えば、ストリッピング)によって除去されてもよい。
【0029】
加水分解性フルオロポリマーは、例えば、「イオン性フルオロポリマーの分散体を加水分解する方法(“METHOD OF HYDROLYZING A DISPERSION OF IONIC FLUOROPOLYMER”)」と題された同時出願された米国特許出願(ハムロック(Hamrock)ら)、代理人整理番号59821US002を有するU.S.S.N.10/894,098号に記載されているように、分散体として加水分解されてもよく、または加水分解性フルオロポリマーは、凝固によって、および残留モノマーおよび/またはアニオン種(例えば、界面活性剤および乳化剤)の任意の除去によって単離され、次いで、例えば、激しい剪断混合を用いて塩基性水性媒体中に再分散されてもよい。加水分解性フルオロポリマーを凝固、精製、再分散および加水分解するための方法は、例えば、米国特許第6,593,416号明細書(グロータート(Grootaert)ら)および米国特許第6,733,914号明細書(グロット(Grot)ら)に記載されている。
【0030】
加水分解され、場合により再分散されると、加水分解された分散体(すなわち、イオン性フルオロポリマーの分散体)を精製してアニオンおよび場合によりカチオン種を除去する。本明細書中で用いられるとき、用語「精製する」は、除去が完全であるかどうかに関係なく、不純物を少なくとも部分的に除去することを指す。不純物を構成する場合があるアニオン種には、例えば、フッ化物、界面活性剤および乳化剤からのアニオン残渣(例えば、ペルフルオロオクタノエート)、および加水分解されたモノマーからのアニオン残渣(例えば、F2C=CFO(CF24SO3-)などがある。しかしながら、イオン性フルオロポリマーを分散体から除去することは望ましくないことが指摘されねばならない。
【0031】
典型的に、上のように得られたイオン性フルオロポリマーの分散体は、非イオン性フルオロポリマーを本質的に含有しないが(すなわち、0.1重量パーセント未満を含有する)、方法は、非イオン性フルオロポリマーが存在して実施されてもよい。
【0032】
本発明によって、加水分解された分散体をアニオン交換樹脂の有効量と接触させることによって、イオン性フルオロポリマーの存在下で、アニオン種を有効に除去することができることが見出されている。有用なアニオン交換樹脂は典型的に、様々なアニオン(例えば、ハロゲン化物または水酸化物)と対にされた複数のカチオン性基(例えば、第四アルキルアンモニウム基)を有する(典型的に架橋された)ポリマーを含む。加水分解された分散体と接触したとき、分散体中のアニオン不純物は、アニオン交換樹脂と会合する。アニオン交換工程の後、得られたアニオン交換された分散体は、例えば、濾過によってアニオン交換樹脂から分離される。驚くべきことに、アニオン加水分解フルオロポリマーはアニオン交換樹脂上にかなり固定化されず、凝固および/または材料の損失につながることが見出されている。
【0033】
アニオン交換樹脂は市販されている。市販のアニオン交換樹脂の例には、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのローム・アンド・ハス・カンパニー(Rohm & Haas Company,Philadephia,Pennsylvania)から入手可能な商品名「アンバーライト(AMBERLITE)IRA−402」、「アンバーリスト(AMBERLYST)A26OH」、または「アンバージェット(AMBERJET)4200」の樹脂、ペンシルベニア州、バラシニドのプロライト・カンパニー(The Purolite Company,Bala Cynwyd,Pennsylvania)から入手可能な商品名「プロライト(PUROLITE)A845」の樹脂、ニュージャージー州、バーミンガムのシブロン・ケミカル(Sybron Chemicals,Birmingham,New Jersey)から入手可能な商品名「ルワティット(LEWATIT)MP−500」の樹脂、およびミシガン州、ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical,Midland,Michigan)から入手可能な商品名「ダウエックス(DOWEX)1X2」および「ダウエックス1X8」の樹脂などがある。
【0034】
上述のようなアニオン交換樹脂は、水酸化物または何か他のアニオンとの塩として一般に商業的に供給されている。アニオン交換樹脂が水酸化物の形ではない場合、それは水酸化物塩の形に少なくとも部分的に変換され、典型的には完全に変換されるのがよい。これは典型的に、アニオン交換樹脂をアンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液で処理することによって行われる。
【0035】
典型的に、より良い収量は、マクロポーラスアニオン交換樹脂によってよりもゲルタイプアニオン交換樹脂を用いて得られる。
【0036】
上述の重合および加水分解工程から得られた代表的なカチオン性不純物には、例えば、アルカリ金属カチオン(例えば、Li+、Na+、K+)、アンモニウム、第四アルキルアンモニウム、アルカリ土類カチオン(例えば、Mg2+、Ca2+)、およびIII族金属カチオンの1つまたは複数が挙げられる。有用なカチオン交換樹脂には、複数のアニオンまたは酸性側基を有する(典型的に架橋された)ポリマー、例えば、ポリスルホネートまたはポリスルホン酸、ポリカルボキシレートまたはポリカルボン酸などがある。本発明の実施において使用するために予想されるスルホン酸カチオン交換樹脂には、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂などがある。カルボン酸カチオン交換樹脂は有機酸、カルボン酸カチオン交換樹脂などのカチオン交換樹脂である。
【0037】
カチオン交換樹脂は市販されている。適した市販のカチオン交換樹脂の例には、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのローム・アンド・ハス・カンパニーから入手可能な商品名「アンバージェット(AMBERJET)1200」、「アンバーライト(AMBERLITE)IR−120」、「アンバーライトIR−122」、または「アンバーライト132E」の樹脂、日本、東京の三菱化学から入手可能な商品名「ディアイオン(DIAION)SK1B」および「ディアイオンSK110」の樹脂、ミシガン州、ミッドランドのダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能な商品名「ダウエックス(DOWEX)HCR−W2」、「ダウエックスHCR−S」、および「ダウエックス650C」の樹脂、全てシブロン・ケミカルズ社(Sybron Chemicals,Inc.)から入手可能な、商品名「イオナック(IONAC)C−249」、「イオナックC−253」、「イオナックC−266」、および「イオナックC−267」の樹脂、および商品名「ルワティット(LEWATIT)S100」、「ルワティットS100H」(酸の形)、「ルワティットS110」、「ルワティットS110H」(酸の形)、「ルワティットS1468」、「ルワティット・モノプラス(LEWATIT MONOPLUS)SP112」、「ルワティット・モノプラスSP112」(酸の形)、「ルワティットS2568」、および「ルワティットS2568H」(酸の形)の樹脂、およびプロライト・カンパニー(Purolite Company)から入手可能な商品名「プロライト(PUROLITE)C−100」、「プロライトC−100E」、「プロライトC−100×10」、および「プロライトC−120E」などがある。同じタイプの他の製品が等しく良好であることが予想される。
【0038】
上述のようなカチオン交換樹脂はそれらの酸またはそれらのナトリウムの形のどちらかで一般に市販されている。カチオン交換樹脂が酸の形(すなわち、プロトン付加された形)でない場合、それは、他のカチオンの、分散体への概して望ましくない導入を避けるために、酸の形に少なくとも部分的に変換され、典型的には完全に変換されるのがよい。酸の形へのこの変換は、本技術分野に公知の手段によって、例えばいずれかの十分に強い酸による処理によって行われてもよい。
【0039】
アニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂は、別々に用いられるか、例えば、アニオンおよびカチオン交換樹脂の両方を有する混合樹脂ベッドの場合のように組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
1つの方法において、イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂および/またはカチオン交換樹脂)は、イオン性フルオロポリマーの分散体がカラムを通過される充填カラム構成において用いられてもよい。この方法において、カラムを通る分散体の流量は典型的に、1時間当たり0.5〜20ベッド体積、より典型的に1時間当たり2〜10ベッド体積の範囲であるが、より低いおよびより高い流量もまた用いられてもよい。
【0041】
別の方法(すなわち、非固定樹脂ベッドプロセス)において、粗いイオン交換樹脂粒子をゆるやかに撹拌しながらイオン性フルオロポリマーの分散体に添加し、後で濾過によって除去してもよい。撹拌する方法には、混合物を含有する容器の振盪、撹拌機による容器中の混合物の攪拌、容器の回転、および混合物中にガス(例えば、窒素または空気)を通気するなどがある。イオン交換樹脂とイオン性フルオロポリマーの分散体との混合物の撹拌を行うさらに別の方法は、イオン交換樹脂を流動化させることである。流動化は、分散体を容器内のイオン交換樹脂を通して流動させることによって起こされてもよく、それによって、分散体の流れが交換樹脂をかき混ぜる。撹拌の条件は概して、一方で、アニオン交換樹脂が分散体と完全に接触される(すなわち、アニオン交換樹脂が分散体に完全に浸漬される)ように選択され、なおかつ、撹拌条件は、イオン交換樹脂の損傷を避けるために十分にゆるい。
【0042】
典型的に、10重量パーセントより少ない固形分を有するイオン性フルオロポリマー分散体を用いてアニオン交換プロセスを行うことによって、前記プロセスの間、(アニオン交換樹脂への吸着によって)イオン性フルオロポリマーの損失を最小にする。概して、高い材料処理量を維持するためにアニオン交換プロセスは典型的に、イオン性フルオロポリマー分散体の少なくとも5パーセントから10または20重量パーセントまでの範囲の固形分を用いて実施される。
【0043】
場合により、(例えば、付加的な精製の前および/または後の)イオン性フルオロポリマー分散体の濃度は、(例えば、蒸発または共沸蒸留による水および/または有機溶剤の除去によって)増加されてもよく、および/または(例えば、水および/または有機溶剤の添加によって)低減されてもよい。典型的に、イオン性フルオロポリマー分散体を用いて膜を形成する場合、イオン性フルオロポリマーの濃度が高レベル(例えば、少なくとも20、30、または40重量パーセント)に増加され、水溶性有機溶剤が添加されてフィルムの形成を容易にする。水溶性溶剤の例には、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン)、エーテルアセテート、アセトニトリル、アセトン、およびそれらの組合せなどがある。
【0044】
例えば、バーコーティング、噴霧コーティング、スリットコーティング、ブラシコーティング、キャスチング、成形、および押出などのいずれかの適した方法によって、得られた少なくとも部分的に精製されたイオン性フルオロポリマー分散体を用いてポリマー電解質膜を形成してもよい。形成した後、膜は、典型的に120℃以上の温度において、より典型的に130℃以上、最も典型的に150℃以上の温度においてアニールされてもよい。典型的に、膜は、90ミクロンより小さい、より典型的に60ミクロンより小さい、より典型的に30ミクロンより小さい厚さを有する。
【0045】
イオン性フルオロポリマー分散体を触媒および炭素粒子と配合して、燃料電池に使用するための膜電極接合体(MEA)の製造に用いられてもよい触媒インクを形成してもよい。触媒インクの調製および膜接合体の製造においてのそれらの使用に関する具体的な詳細を例えば米国特許出願公開第2004/0107869A1号明細書(ヴェラマカンニ(Velamakanni)ら)に見出すことができる。
【0046】
本発明の目的および利点は以下の非限定的な実施例においてさらに説明されるが、これらの実施例に記載された特定の材料およびそれらの量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0047】
特に記載しない限り、実施例および明細書の他の部分のすべての部、パーセンテージ、比などは重量に基づき、実施例において使用されたすべての試薬は、一般的な化学薬品供給元、例えば、ミズーリ州、セイント・ルイスのシグマ・アルドリッチ・カンパニー(Sigma−Aldrich Co.,Saint Louis,Missouri)から得られたかまたは入手可能であり、もしくは従来の方法によって合成されてもよい。
【0048】
試験方法
メルトフローインデックス(MFI)は、265℃および5kgの負荷において直径2.1mmおよび長さ8mmの標準化押出ダイを用いて、ISO12086(1985年12月)によって測定された。
【0049】
粒度は、商品名「ゼタサイザー(ZETASIZER)1000HAS」としてマルバーン・インストルメンツ(Malvern Instruments)から入手可能な機器を用いてISO/DIN 13321(2003年10月)による動的光散乱によって測定された。測定の前に、ラテックスを0.001モル/リットルの塩化カリウムで希釈した。測定温度は20℃であった。Z平均値を記録する。
【0050】
−SO2F基を有するモノマーの導入を2つの方法を用いて測定した。
1)マサチューセッツ州、ウォルサムのサーモ・エレクトロン・コーポレーション(Thermo Electron Corporation,Waltham,Massachusetts)から商品名「ニコレット・オムニック(NICOLET OMNIC)5.1」として入手可能なフーリエ変換型赤外分光器。ホットプレスされたフィルム(厚さ100〜200マイクロメートル)で透過技術を用いて測定を行った。モルパーセントでのMV4S含有量は、1004cm-1においてのピーク高さを2365cm-1においてのピーク高さで割り、0.0632で乗じた値として(吸光度モードで)定量された。
【0051】
2)3.2mmのMASプローブを備えた商品名「イノヴァ(INOVA) 400 WB」としてカリフォルニア州、パロアルトのバリアン社(Varian,Inc.,Palo Alto,California)から入手可能な核磁気共鳴分光計を用いる19F−NMR
【0052】
サーモ・エレクトロン・コーポレーションから商品名「ニコレット・オムニック5.1」として入手可能なフーリエ変換型赤外分光器を用いてSO2F含有ポリマーの加水分解度を減衰全反射赤外分光法(ATR IR)によって定量した。ホットプレスされたフィルム(厚さ100〜200マイクロメートル)でATR技術を用いて測定を行った。パーセント単位の加水分解度は、1050〜1080cm-1においてのベースライン補正されたピーク高さを測定し、1450〜1475cm-1においてのベースライン補正されたピーク高さで割ることによって定量された。
【0053】
2C=CFO(CF24SO2F(MV4S)の調製
2C=CFO(CF24SO2Fの調製は、米国特許第6,624,328号明細書(グェルラ(Guerra))に記載されている。
【0054】
フッ素化加水分解性ポリマー分散体(分散体A)の調製
高剪断条件(24,000rpm、ドイツ、シュタウフェンのIKA・ヴェルケ社(IKA−Werke GmbH & Co.KG,Staufen,Germany)から商品名「ウルトラ・ターラックス・モデルT25・ディスパーサー(ULTRA−TURRAX MODEL T25 DISPERSER)」として入手可能なミキサーを使用)下で5分にわたって13.5gのLiOH・H2Oを添加して390gのMV4Sを270gの水中に予備乳化した。得られた乳状の白色分散体は、1.5マイクロメートルの平均粒度および>3時間の貯蔵寿命を有した。インペラ撹拌器システムを備えた53リットルの重合ケットルに23kgの脱イオン水を入れた。ケットルを60℃に加熱し、次いでプレエマルションを酸素を含有しない重合ケットルに入れた。60℃においてケットルに6バール(600kPa)絶対反応圧力まで630gの気体テトラフルオロエチレン(TFE)をさらに入れた。60℃および240rpmの撹拌器速度において15gの二亜硫酸ナトリウムおよび40gのペルオクソ二硫酸アンモニウムを添加することによって重合を開始した。反応の進行中に反応温度を60℃に維持した。付加的なTFEを気相中に供給することによって反応圧力を6バール(600kPa)の絶対反応圧力に維持した。
【0055】
MV4S−プレエマルションの第2の部分を上記の同じ方法および比率で調製したが、4,600gのMV4S、160gのLiOH・H2Oおよび3,200gの水を用いた。第2のプレエマルション部分を、反応の進行中に連続的に前記液相中に供給した。252分の重合時間において6,150gのTFEを供給した後、モノマーの弁を閉じ、モノマーの供給を中断した。重合の継続により、モノマー気相の圧力を40分以内に2バール(200kPa)に低減した。その時に、反応器を脱気し、窒素ガスでフラッシした。このように得られた38.4kgのポリマー分散体は、29.2パーセントの固形分および3のpHを有した。ラテックスの平均粒度は、動的光散乱を用いて測定したとき139ナノメートルであった。凍結凝固されたポリマーを、300℃において厚さ100〜200マイクロメートルのフィルムにプレスした。ポリマーフィルムでの赤外分光測定は、MV4Sの14.1モルパーセントの導入を示した。265℃および5kgにおいてのポリマーフィルムのメルトフローインデックスは0.3グラム/10分であった。
【0056】
フッ素化加水分解性ポリマー分散体(分散体B)の調製
高剪断条件(24,000rpm、ドイツ、シュタウフェンのIKA・ヴェルケ社(IKA−Werke GmbH & Co.KG,Staufen,Germany)から商品名「ウルトラ・ターラックス・モデルT25・ディスパーサー(ULTRA−TURRAX MODEL T25 DISPERSER)」として入手可能なミキサーを使用)下で10分にわたって16gの30重量パーセントのペルフルオロオクタノエートアンモニウム塩溶液(ミネソタ州、セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,Minnesota)から商品名「3Mフルオラド(3M FLUORAD)FX1006」として入手可能)を添加して900gのMV4Sを560gの水中に予備乳化した。分散体の粒度は約1500ナノメートルであった。インペラ撹拌器システムを備えた53リットルの重合ケットルに、22.9kgの脱イオン水中の37gのシュウ酸アンモニウム一水塩および7gのシュウ酸二水塩と、269gの30重量パーセントペルフルオロオクタノエートアンモニウム塩溶液(3Mカンパニーから商品名「3Mフルオラド(3M FLUORAD)FX1006」として入手可能)とを入れた。次に、酸素を含有しないケットルを50℃に加熱し、撹拌システムを240rpmに設定した。ケットルをテトラフルオロエチレン(TFE)でパージした後、次いでプレエマルションを反応ケットルに入れた。6バール(600kPa)の絶対反応圧力までケットルに705gの気体テトラフルオロエチレン(TFE)をさらに入れた。過マンガン酸カリウムの1重量パーセント溶液140gを添加して重合を開始した。反応の進行中、反応温度を50℃に維持した。付加的なTFEを気相に供給することによって反応圧力を6バール(600kPa)の絶対反応圧力に維持した。4,170gのMV4S、73gの30重量パーセントのペルフルオロオクタノエートアンモニウム塩溶液(3Mカンパニーから商品名「3Mフルオラド(3M FLUORAD)FX1006」として入手可能)および2,500gの水を用いて、第2のMV4S−プレエマルションを上述の同じ方法で調製した。反応の進行中に第2のプレエマルションを液相中に供給した。330分の重合時間において5,575gのTFEを供給した後、モノマー弁を閉じ、モノマーの供給を中断した。反応の継続により、モノマー気相の圧力を40分以内に3.4バール(340kPa)に低減した。その時に、反応器を脱気し、窒素ガスでフラッシした。このように得られた37.1kgのポリマー分散体は、27.5重量パーセントの固形分および3のpHを有した。分散体は、直径70ナノメートルのラテックス粒子から成った。ポリマーを凍結凝固し、4回のサイクルで脱イオン水で洗浄し、130℃において15時間乾燥させた。固体状態19F−NMR分光分析は、ポリマーが85.3モルパーセントのTFEおよび14.7モルパーセントのMV4Sを含有することを示した。ポリマーの−SO3-吸光度の、−SO2F吸光度に対するピーク高さ比は0.007であり(ホットプレスされたフィルムとして測定された)、265℃および2.16kgにおいてのメルトフローインデックスは0.2g/10分であった。
【0057】
フッ素化加水分解性ポリマー分散体の加水分解
4時間、80℃において31gの水酸化リチウム一水塩を用いて、攪拌しながら分散体A(1000g)を加水分解した。得られたイオン性フルオロポリマー分散体は、ATR IRによって測定された時にはっきりと認められる−SO2Fがなかったが、これを5重量パーセントの濃度まで脱イオン水で希釈した(分散体AH)。分散体AHのイオン含有量は、Li+=4000百万分率(ppm)、NH4+=150ppm、Na+=100ppm、F-=5000ppm、SO42-=800ppm、SO32-=300ppm、MV4SO3-=17000ppmであった。
【0058】
分散体Bをカチオン交換して、加水分解の間にMnO2を形成しうるMn2+イオンを除去し、次いで分散体Aと同じ方法で加水分解した。カチオン交換を以下のイオン性フルオロポリマー分散体の精製(方法2)手順によって実施し、そこで20gのカチオン性交換樹脂(商品名「ダウエックス650C」)を1000gの分散体Bに対して使用した。得られたイオン性フルオロポリマー分散体は、ATR IRによって測定された時にはっきりと認められる−SO2Fがなかったが、これを5重量パーセントの濃度まで脱イオン水で希釈した(分散体BH)。分散体BHのイオン含有量は、Li+=6000ppm、NH4+=350ppm、K+=100ppm、Mn+=40ppm、F-=6300ppm、C242-=600ppm、PFOA-=3000ppm、MV4SO3-=14000ppmであった。
【0059】
イオン性フルオロポリマー分散体の精製(方法1)
分散体AHと分散体BHとの一部分を、1時間当たり1ベッド体積の速度において315gのカチオン交換樹脂(ミシガン州、ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical,Midland,Michigan)から商品名「ダウエックス650C」として入手可能)を充填された400mLカラムを用いて別々にカチオン交換した。13時間後に、この手順を終了し、フレーム原子吸光分析による分析は、金属カチオンおよびアンモニウムイオンのレベルが1ppmより低いことを示した。
【0060】
次に、カチオン交換された分散体を各々、1時間当たり1ベッド体積の速度において250gのアニオン交換樹脂(ペンシルベニア州、フィラデルフィアのローム・アンド・ハス・カンパニー(Rohm and Haas Company,Philadelphia,Pennsylvania)から商品名「アンバーリストA26OH」として入手可能)を充填された400mLカラムを用いてアニオン交換した。このプロセスは13時間かかった。分析(MV4SO3-含有量を高性能液体クロマトグラフィーを用いて定量した。F-含有量をイオン選択電極を用いて定量し、C715COO-をガスクロマトグラフィーによって定量した)は、精製された分散体中に2,000g/モルより低い分子量を有する低分子量アニオン種50ppm未満を示した。上のように精製された分散体AHは、分散体AHP1で示される。上のように精製された分散体BHは、分散体BHP1で示される。
【0061】
イオン性フルオロポリマー分散体の精製(方法2)
分散体AHと分散体BHとの一部分を、40℃〜50℃の温度において加熱しながら2L丸底フラスコ内で攪拌された612gのカチオン交換樹脂(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)から商品名「ダウエックス650C」として入手可能)を用いて別々にカチオン交換した。5時間後、この手順を終了し、フレーム原子吸光分析による分析は、金属カチオンおよびアンモニウムイオンのレベルが1ppmより低いことを示した。
【0062】
次に、カチオン交換された分散体を各々、2時間高温において2L丸底フラスコ内で攪拌された430gのアニオン交換樹脂(ローム・アンド・ハス・カンパニーから商品名「アンバーリストA26OH」として入手可能)を用いてアニオン交換した。分析(MV4SO3-含有量を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量した。F-含有量をイオン選択電極を用いて定量した。ペルフルオロオクタノエート(PFOA-)をガスクロマトグラフィーによって定量した)は、精製された分散体中に2,000g/モルより低い分子量を有する低分子量アニオン種50ppm未満を示した。上のように精製された分散体AHは、分散体AHP2で示される。上のように精製された分散体BHは、分散体BHP2で示される。
【0063】
イオン交換された分散体の濃度およびn−プロパノールによる希釈
上に調製された精製されたイオン性フルオロポリマー分散体(すなわち、分散体AHP1、BHP1、AHP2、およびBHP2)を、80℃においておよび200ミリバール(0.2kPa)の減圧において撹拌機を用いて2L丸底フラスコ内で固形分40重量パーセントまで濃縮した。得られたゲル(500g)は、65℃において500gのn−プロパノールと配合された。4つの精製された分散体の各々は、20重量パーセントのポリマー固形分、30重量パーセントの水(カール−フィッシャー方法による)、50重量パーセントのn−プロパノールを有し、pH=2、<1百万分率(ppm)より少ないLi+濃度(フレーム原子吸光分析による)、PFOA-<5ppm(HPLCによる)、F−<15ppm(イオン選択電極による)。
【0064】
本発明の様々な修正および変更を本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者は実施することができ、本発明は、ここに示した具体的な実施態様に不当に限定されると理解されるべきでないことは理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性フルオロポリマーの分散体の精製方法であって、
イオン性モノマー単位と非イオン性モノマー単位とを含むイオン性フルオロポリマーの、水性媒体中の分散体を提供する工程であって、前記イオン性モノマー単位が、式−R1SO3-によって表される少なくとも1つの基を有し、R1は1〜15個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基、または1〜15個の炭素原子と1〜4個の酸素原子とを有するペルフルオロアルキレンオキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基であり、前記イオン性フルオロポリマーは、少なくとも600グラムから1200グラムまでのスルホネート当量を有し、イオン性フルオロポリマーの前記分散体は、前記イオン性フルオロポリマーに共有結合していないアニオン種を含有する工程と、
イオン性フルオロポリマーの前記分散体を、会合した水酸化物イオンを有するアニオン交換樹脂と接触させ、その結果、前記アニオン種の少なくとも一部が水酸化物イオンと交換されてアニオン交換された分散体を提供する工程と、
前記アニオン交換された分散体を前記アニオン交換樹脂から分離する工程であって、前記アニオン交換された分散体が、イオン性フルオロポリマーを含む工程と、を含む方法。
【請求項2】
イオン性フルオロポリマーの前記分散体が非イオン性乳化剤を実質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン性フルオロポリマーの前記分散体が非イオン性フルオロポリマーを本質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分散体中のイオン性フルオロポリマーの量が、前記分散体の全固形分を基準として、少なくとも5重量パーセントから20重量パーセントまでの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン性フルオロポリマーが、少なくとも
2C=CF−R1−SO2
[式中、R1は1〜15個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基、または1〜15個の炭素原子と1〜4個の酸素原子とを有するペルフルオロアルキレンオキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基であり、XはF、Cl、またはBrを表す]と、
2C=CFR2[式中、R2はF、または1〜5個の炭素原子と0〜2個の酸素原子とを含む分岐または非分岐ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基を表す]とを含むモノマーから調製可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン性フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンとF2C=CFO(CF24SO2Fとを含むモノマーから調製可能である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記モノマーが式
2C=CFR2
によって表される少なくとも1種の過フッ素化コモノマーをさらに含み、上式中、R2はF、または1〜5個の炭素原子と0〜2個の酸素原子とを含む分岐または非分岐ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシまたはペルフルオロポリ(アルキレンオキシ)基を表す、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、CF3OCF2CF2CF2OCF=CF2、CF3OCF=CF2、CF3CF2CF2OCF=CF2、ペルフルオロ−1,3−ジオキソール、過フッ素化ジオレフィン、
式F2C=CFO(RfO)n(Rf’O)mf’’
によって表される過フッ素化ビニルエーテル[上式中、RfおよびRf’は2〜6個の炭素原子を有する異なる直鎖または分岐ペルフルオロアルキレン基であり、mおよびnは独立して0〜10の整数であり、nとmとの合計が少なくとも1であり、Rf’’は1〜6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である]、
式F2C=CFO[(CF2CF(CF3)O)i(CF2CF2CF2O)j(CF2k]Cx2x+1
によって表される過フッ素化ビニルエーテルモノマー[上式中、iおよびjは独立して0〜10の範囲の整数であり、kは0〜3の範囲の整数であり、xは1〜5の範囲の整数である]、および
式F2C=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)qCF3
によって表される過フッ素化ビニルエーテル(qは0〜3の範囲の整数である)、の少なくとも1つをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記モノマーが、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、フッ化ビニル、または二フッ化ビニリデンの少なくとも1つをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記水性媒体が水および有機溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アニオン種の主要部分が水酸化物イオンと交換される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
イオン性フルオロポリマー膜を前記アニオン交換された分散体から形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン性フルオロポリマー膜を膜電極結合体に組み込む工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
触媒および炭素粒子を前記アニオン交換された分散体と配合する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
水をイオン性フルオロポリマーの前記分散体から少なくとも部分的に除去する工程と、有機溶剤をイオン性フルオロポリマーの前記分散体に添加して溶剤交換された分散体を提供する工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
イオン性フルオロポリマーの前記分散体が、水の前記少なくとも部分的な除去および有機溶剤の添加後に前記アニオン交換樹脂と接触される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イオン性フルオロポリマー膜を前記分散体から形成する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン性フルオロポリマー膜を膜電極結合体に組み込む工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記水性媒体を前記アニオン交換された分散体から少なくとも部分的に除去する工程と、有機溶剤を水性媒体に添加して、溶剤交換された分散体を提供する工程とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
イオン性フルオロポリマー膜を前記溶剤交換された分散体から形成する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記イオン性フルオロポリマー膜を膜電極結合体に組み込む工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記分散体が、前記イオン性フルオロポリマーに共有結合していないカチオン種をさらに含み、前記分散体を酸性プロトンを有するカチオン交換樹脂と接触させて、カチオン交換された分散体を提供し、その結果、前記カチオン種の少なくとも一部がプロトンと交換される工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン種の主要部分がプロトンと交換される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アニオン種の主要部分が水酸化物イオンと交換され、前記カチオン種の主要部分がプロトンと交換されて、カチオン交換された分散体を提供する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記水性媒体を前記カチオン交換された分散体から少なくとも部分的に除去する工程と、有機溶剤を前記水性媒体に添加する工程とをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
カチオンの少なくとも一部が、アニオンの少なくとも一部を交換する前に交換される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
イオン性フルオロポリマー膜を前記カチオン交換された分散体から形成する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記イオン性フルオロポリマー膜を膜電極結合体に組み込む工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
触媒および炭素粒子を前記カチオン交換された分散体と配合する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506834(P2008−506834A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522539(P2007−522539)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/024415
【国際公開番号】WO2006/019652
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】