説明

イオン注入装置

【課題】時々刻々と変化する処理室内での圧力変動に応じて、ターゲットに照射されている実質的なビーム電流の値を算出可能にするとともに、ターゲットのチャージアップに起因するゆらぎの影響を受けずに正確なビーム電流の測定を可能とするビーム電流測定器を備えたイオン注入装置を提供する。
【手段】このイオン注入装置1は、処理室7内の圧力を測定する圧力計8と、イオン源2とターゲット9との間に配置されているとともに、イオンビーム3のビーム電流を部分的に測定するビーム電流測定器6と、圧力計8による測定値が予め決められた基準値以上となった時、少なくともビーム電流測定器6の測定結果に基づいて、ターゲット9に所定量のイオンビームが照射されるように、イオン注入パラメーターを調節する制御装置12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理室内の圧力が変動した場合であっても、所望される量のイオンを注入することが出来るイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入装置では、ターゲット近傍に配置されたファラデーカップ等のモニター手段を用いて、イオンビームのビーム電流をモニターし、ターゲットに所望量のイオンが注入されるように、イオンビームのビーム電流やターゲットの走査速度の制御がなされている。
【0003】
ターゲット表面にイオンビームの照射により揮発しやすい物質(例えばフォトレジストなど)が存在している場合、イオンビームがターゲットに照射されることで、当該物質が揮発し、ガスとなって処理室内の圧力が高くなる。このようなガスにイオンビームが衝突すると、荷電変換によりイオンビーム中のイオンが中性粒子となる。
【0004】
中性粒子となったイオンは、電荷を有していない為、ファラデーカップ等のモニター手段によって検出することが出来ない。その為、このようなイオンの中性化が、先述したような所望量のイオンをターゲットに注入する為のビーム電流等の制御にあたって、問題視されていた。そこで、この問題を解決する技術として、特許文献1のような技術が提案されてきた。
【0005】
特許文献1では、標的室内のガス圧をイオン化計により測定する。そして、標的室内に配置された工作物を支持する円板が1回転する毎に円板に設けられた溝を介して、イオンビームのビーム電流をファラデーゲージにより測定する。最終的に、これらの測定結果を所定式に代入することによって、工作物に照射されている実質的なイオンビームのビーム電流を算出する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−16456号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、ファラデーゲージによるビーム電流の測定は、円板を1回転させる必要があるので、時々刻々と変化する処理室内での圧力変動に対応して、工作物に照射されている実質的なビーム電流の値を算出することが出来ない。その為、正確に所望量のイオンを工作物へ注入することが出来ない。
【0008】
また、工作物にイオンビームが照射されることによって、工作物がチャージアップした場合、特許文献1のように工作物よりも下流側(イオンビームが進行する側)にファラデーゲージを配置していると、ファラデーゲージでのビーム電流の測定値にゆらぎ(空間電位の変動による測定値の時間的な変動)が生じる。
【0009】
この測定値のゆらぎは、チャージアップされた工作物が走査されることや工作物のチャージアップの状態が変化することに起因して発生される空間電位の変化が原因になると考えられている。このゆらぎによって、正確にビーム電流を測定することが困難となり、ひいては、実質的なビーム電流の算出に影響を及ぼす。
【0010】
そこで本発明では、時々刻々と変化する処理室内での圧力変動に応じて、ターゲットに照射されている実質的なビーム電流の値を算出可能にするとともに、ターゲットのチャージアップに起因するゆらぎの影響を受けずに正確なビーム電流の測定を可能とするビーム電流測定器を備えたイオン注入装置を提供することを所期課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係るイオン注入装置は、イオン源と、前記イオン源から引出されたイオンビームが照射されるターゲットと、前記ターゲットが配置される処理室と、前記処理室内の圧力を測定する圧力計と、前記ターゲット上に照射される前記イオンビームの照射領域を妨げないようにして、前記イオン源と前記ターゲットとの間に配置されているとともに、前記ターゲットに照射されない前記イオンビームの少なくとも一部のビーム電流を測定するビーム電流測定器と、前記圧力計による測定値が予め決められた基準値以上となった時、前記ターゲットに所定量のイオンが注入されるように、イオン注入パラメーターを調節する制御装置と、を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記したように、ターゲット上に照射されるイオンビームの照射領域を妨げないようにして、イオン源とターゲットとの間にビーム電流測定器を配置するとともに、ターゲットに照射されていないイオンビームの一部を利用して、当該イオンビームのビーム電流の変動を検出するようにしているので、イオンビームがターゲットに向けて照射されている間は、常に、イオンビームの一部のビーム電流を測定することが可能となる。これによって、処理室内での時々刻々と変化する圧力変動に応じて、即座にターゲットに照射されている実質的なビーム電流の値を算出することが可能となる。
【0013】
また、前記イオン注入装置は、前記ターゲットを保持するホルダーと、前記ホルダーを駆動するホルダー駆動手段を、さらに備えており、前記注入パラメーターは、前記ホルダー駆動手段によって前記ホルダーが駆動される際の速度であることが望ましい。
【0014】
ホルダーの駆動速度の変更は、イオンビーム電流等を変更する場合と比較して、手早く行うことが出来る。また、変更後の値がターゲットからの脱ガスの影響を受けることがないので、正確に所望する注入量のイオンをターゲットに注入することが出来る。
【0015】
さらに、前記制御装置の機能を入り切り出来る機能を設けておくことが望ましい。そのようにすれば、制御装置を使わなくても済む場合には、制御装置の機能を働かさないようにしておくことが出来るので、制御装置での処理が省略出来る分、イオン注入装置で単位時間当たりに処理されるターゲットの枚数を増やすことが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明のイオン注入装置に備えられたビーム電流測定器は、イオンビームがターゲットに向けて照射されている間は、常に、イオンビームの一部のビーム電流を測定するように構成されている為、時々刻々と変化する処理室内での圧力変動に応じて、ターゲットに照射されている実質的なビーム電流の値が算出可能となる。さらに、ビーム電流測定器をイオン源とターゲットとの間に配置している為、ターゲットのチャージアップに起因するゆらぎの影響を受けずに正確なビーム電流の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るイオン注入装置を示す平面図である。
【図2】図1に記載のビーム電流測定器6をX方向と反対方向から見た時の様子を表している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のイオン注入装置の一例が、図1に示されている。
【0019】
このイオン注入装置1では、イオン源2より引出されたイオンビーム3から所望のイオンのみがターゲット9に照射されるよう、質量分析マグネット4と分析スリット5を用いて、質量分析が行われる。なお、図1において、イオンビーム3はXY平面上での中心軌道のみが一点鎖線で描かれている。
【0020】
処理室7内で、ターゲット9は、ホルダー10により支持され、図示されない駆動機構により矢印Aの方向に往復搬送される。この往復搬送の際、処理室7に導入されたイオンビーム3を横切ることで、ターゲット9の全面へのイオン注入処理が実施される。駆動機構としては従来から用いられているものを用いれば良い。
【0021】
例えば、処理室7の外部に設けられたモーターによって正逆に回転可能なボールねじを、真空シールを介して、処理室7内に導入しておき、このボールねじに、回転運動を直線運動に変換するボールナットを螺合させ、最終的に、このボールナットとホルダー10とを接続させることで、矢印A方向へのホルダー10の搬送を可能とする機構や、処理室7の外部に設けられたモーターによって矢印A方向に沿って移動可能なシャフトを、真空シールを介して、処理室7内に導入しておき、このシャフトの端部にホルダー10を支持させることで、矢印A方向へのホルダー10の搬送を可能とする機構がそれに当たる。
【0022】
処理室7内の側壁には、イオンビーム3のビーム電流密度分布を測定する為のビーム電流測定器11が設けられている。このビーム電流測定器11は、イオン源2より引出されたイオンビーム3のZ方向(イオンビームの長辺方向)に渡ってのビーム電流密度分布を調整する際に用いられる。その為、ビーム電流計測器11は、Z方向において、少なくとも後述する図2に記載されるイオンビーム3の寸法よりも大きな寸法を有している。なお、ビーム電流測定器11は、従来から用いられているような複数個のファラデーカップをZ方向に沿って配列させた測定器を用いれば良い。
【0023】
圧力計8は処理室7内の圧力を測定する為に、処理室7に取り付けられており、この圧力計8による測定結果を基にして、処理室7内で発生するターゲット9からの脱ガスによる処理室7内での圧力変動を検出している。
【0024】
ターゲット9としては、半導体基板、より具体的には、シリコンウェハやガラス基板が挙げられる。ガラス基板はシリコンウェハに比べて、イオンビームが照射される面積が数十倍大きい。その分、チャージアップしたガラス基板が移送される際に起こる空間電位の変動は、チャージアップしたシリコンウェハが移動される際に起こる空間電位の変動と比べて大きなものとなる。よって、本発明をガラス基板へのイオン注入を行うイオン注入装置に適用した場合、その効果は大きいと言える。
【0025】
もちろん、イオンビーム3がターゲット9に照射された際に、ターゲット9の表面に設けられたレジスト等が揮発することによって、ターゲット9より脱ガスが発生するようなものであれば、ターゲット9としてはどのようなものであっても構わない。
【0026】
実際の圧力変動の検出に当たっては、予め決められた圧力の基準値を用意しておき、この基準値を圧力計8による測定値が超えた場合に、処理室7内での圧力変動があったと判断する。
【0027】
この判断を経た後、後述する注入パラメーターの調節が行われる。圧力変動を検出しないで、注入パラメーターの調節をした場合、イオン源2のフィラメントの断線を招く恐れがある。
【0028】
この理由について述べる。注入パラメーターの調節に先立って、分析スリット5の下流側に配置されたビーム電流測定器6でイオンビーム3のビーム電流が測定される。この際、処理室7内での圧力変動が原因となって、ビーム電流の値が想定される値よりも小さくなっていると誤認識し、ターゲット9へ所定量のイオン注入が達成されるように、イオン源2のフィラメントに流す電流量を増加させたとする。この場合において、実際には、イオン源のフィラメントがスパッタリング等により、先細りしていたことによって、ビーム電流測定器6による測定結果が減少してしまっていたのだとすると、細くなってしまったフィラメントに多量の電流を流すことになるので、フィラメントの断線を招くことになりかねない。
【0029】
しかしながら、圧力計8にて、処理室7内の圧力変動を検出することで、少なくともターゲット9からの脱ガスが原因でイオンビーム3のビーム電流が減少しているのかどうかを知ることが出来るので、いたずらにイオン源2のフィラメントに流す電流量を増加させるといった操作がなされる危険性を少なくすることが出来る。また、ビーム電流の減少要因となる要因を分析する為の一助となる。
【0030】
圧力計8により処理室9内の圧力が脱ガスにより変動したことを検出すると、ビーム電流測定器6による測定結果に基づいて、制御装置12がターゲットへ照射される実質的なイオンビームのビーム電流を算出する。ここで言う、実質的なイオンビームのビーム電流とは、電流測定器で測定可能な電荷を有するイオンによるビーム電流だけでなく、ターゲット9に照射されるイオンビーム中に含まれる中性粒子化したイオンによるビーム電流も考慮したビーム電流を意味している。
【0031】
ビーム電流測定器6では、ターゲット9に照射されないイオンビームの一部を利用して、イオンビームのビーム電流の変動を検出するようにしている。この様子が図2に描かれている。なお、このビーム電流測定器6としては、従来から用いられているファラデーカップを用いれば良い。
【0032】
図2は、図1に記載のビーム電流測定器6をX方向と反対方向から見た時の様子を表している。
【0033】
図2に示されるイオンビーム3は、分析スリット5を通過したイオンビーム3で、ターゲット9に照射される所望のイオン種のみを含んでいる。そして、YZ平面において、その断面は略矩形状をしている。前述のように、このようなイオンビーム3を横切るように、ターゲット9が矢印A方向(Y方向)に往復搬送されるので、ターゲット9の全面へのイオンビーム3の照射が可能となる。
【0034】
この場合において、イオンビーム3の全てがターゲット9に照射されている訳ではない。イオンビーム3、ビーム電流測定器6及び往復搬送されるターゲット9の位置関係を明確にする為に、図2中に処理室7内でのターゲット9の往復搬送される軌跡を破線で描いている。
【0035】
図2中の9A、9Bはターゲットの外形を示す。ここでのターゲット9は、矩形状のガラス基板を想定している。ターゲット9は、9Aと9Bで示されるターゲット間を、Y方向に沿って往復搬送させられる。その際、Z方向において、イオンビーム3の一部はターゲット9に照射されていないことが理解される。このターゲット9に照射されないイオンビームの一部のビーム電流を、ビーム電流測定器6で測定する。
【0036】
図2に示されるような位置にビーム電流測定器6を配置しているので、ターゲット9へのイオンビーム3の照射に支障を来たすことがない。また、イオンビーム3の進行方向において、ターゲット9よりも上流側にビーム電流測定器6を配置させているので、チャージアップしたターゲット9に起因する空間電位の変動の影響を受けることなく、ビーム電流の測定が可能となる。
【0037】
ビーム電流測定器6によるビーム電流の測定結果は、図1に示す制御装置12へ送信される。制御装置12は、処理室7内の圧力変動によって生じたビーム電流に基づき、ターゲット9に注入されるイオンの注入量が所望のものとなるように、注入量に関連するイオン注入のパラメーターを調節する。
【0038】
この注入パラメーターの調節は、具体的には、次のようにして行われる。処理室7内での圧力変動が生じる前に、ビーム電流測定器6にてビーム電流を測定しておき、この値を制御装置12内に記憶しておく。また、一方で、ビーム電流測定器11により、処理室7内での圧力変動が生じる前のイオンビーム3全体のビーム電流の値を測定しておき、この値も制御装置12内に記憶しておく。
【0039】
そして、圧力変動が生じた際に測定されたビーム測定器6での測定値と圧力変動が生じる前に測定されたビーム測定器6での測定値との比から、圧力変動が生じていないときのイオンビーム3の全体のビーム電流の値を用いて、圧力変動が生じた場合におけるイオンビーム3の全体のビーム電流の値(I)を算出する。
【0040】
算出されたビーム電流の値(I)と、処理室7内での圧力計8での測定値(P)とを基にして、次の数式に代入し、ターゲット9に照射されている実質的なビーム電流の値を算出する。
【0041】
【数1】

【0042】
上記した数式において、Kはターゲットに照射されるイオン種やイオン注入装置の構成によって決定される補正係数であり、Itはターゲット9に照射される実質的なビーム電流を示す。
【0043】
Itを算出することにより、ターゲット9に照射されているイオンビームの実質的なビーム電流を知ることが出来るので、この結果を基に、イオンビーム3のビーム電流やターゲット9の往復搬送時の駆動速度を、適宜、変更して最終的にターゲット9に対して所望する注入量のイオン注入を達成することが出来る。
【0044】
なお、注入パラメーターとして、ビーム電流とターゲット9を支持するホルダー10の駆動速度を挙げたが、ターゲット10に注入するイオンの注入量に関連するパラメーターであれば、これら以外のものであっても良い。例えば、スポット状のイオンビームを磁場や電場を用いて走査させるようなタイプのイオン注入装置であれば、イオンビームの走査速度を調節するようにしても良い。
【0045】
しかしながら、イオンビームのパラメーター(ビーム電流や走査速度)を調節して、イオンビームの特性が所望する特性となるように制御するには時間を要する。また、ターゲット9からの脱ガスの影響を受け、調節後の値が再び変動してしまう恐れもある。
【0046】
一方、ターゲット9を支持するホルダー10の駆動速度は、制御の応答性が良く、ターゲット9からの脱ガスの影響を受けない。その為、調整対象とする注入パラメーターとしては、ターゲット9を支持するホルダー10の駆動速度とすることが望ましい。
【0047】
さらに、上記したような数式にて実質的なビーム電流を算出する方法以外に、次の数式を用いて直接に調節対象とする駆動速度を算出する方法もある。
【0048】
【数2】

【0049】
上記した数式において、Vは調節対象とするホルダー10の駆動速度であり、Voは処理室7内での圧力変動が起こる前のホルダー10の駆動速度である。また、Iは処理室7内での圧力変動が起こった後にビーム電流測定器6で測定されたビーム電流の値であり、Ioは処理室7内での圧力変動が起こる前にビーム電流測定器6で測定されたビーム電流の値である。同様に、Pは圧力計8によって測定された圧力変動後の処理室7の圧力であって、Poは圧力変動前の処理室7の圧力である。そして、Kは先の数式同様に、ターゲットに照射されるイオン種やイオン注入装置の構成によって決定される補正係数である。
【0050】
イオン注入条件やターゲットの種類によっては、制御装置12によるイオン注入パラメーターの調節が必要ない場合もある。その為、制御装置12の機能を、イオン注入装置1によって製造されたターゲット上のデバイスの特性に応じて、入り切り出来るように構成しておいても良い。本格的なデバイスの製造の前に、試作として少量のターゲット9がイオン注入装置1にて処理される。この試作段階では、イオン注入装置1に設けられた制御装置12の機能を働かせておかない。つまり、入り切りで言えば、切りの状態にしておく。そして、このような試作段階で製造されたデバイスの特性(閾値電圧等)を検査して、所望するデバイスが製造されたかどうかを確認する。
【0051】
前述の確認においては、ある決められたデバイスの特性に対して基準となる範囲を設けておき、この範囲内に、製造されたデバイスの特性があるかどうかの確認がなされる。仮にこの範囲内にデバイスの特性があった場合には、本格的なデバイスの製造時において、制御装置12の機能を働かせておかない。つまり、制御装置12の機能を切りにしておく。反対に、範囲内にデバイスの特性がなかった場合には、本格的なデバイスの製造時において、制御装置12の機能を働かせておく。つまり、制御装置12の機能を入りにしておく。
【0052】
このようにして、ターゲット9にデバイスを試作製造した時のデバイスの特性を考慮して、必要に応じて、制御装置12の機能を入り切りが出来るように制御装置12を構成した場合、イオン注入装置1の単位時間あたりのターゲット9の処理枚数を増やすことが出来る。これは、制御装置12の機能を使用しない分、制御装置12による算出時間等が省略出来るからである。
【0053】
なお、この制御装置12の入り切りの切り替えは、制御装置12の操作が出来るようなユーザーインターフェースを設けておき、それを介してイオン注入装置1のオペレーターが入り切りの操作を行えるようにしておいても良いし、制御装置12にスイッチ等の物理的な手段を設けておき、これを用いて制御装置12の機能の入り切りを行えるようにしておいても良い。
<その他の変形例>
【0054】
本発明が適用されるイオン注入装置は、上記した実施例のものに限られない。例えば、質量分析マグネット4と分析スリット5がないタイプのイオン注入装置でも構わない。また、ターゲット9を固定させておいて、ターゲット9よりも寸法が大きいイオンビーム3を用いて、ターゲット9の全面にイオンビーム3を照射するタイプのイオン注入装置であっても良い。
【0055】
また、イオン源からスポット状のイオンビームを引出して、磁場や電場によってイオンビームの進行方向と直交する方向にイオンビームが広がりを持つように一平面内で走査し、走査されたイオンビームを磁場や電場によって当該平面内で略平行化する平行化器を通して、ターゲットへ照射するような構成のイオン注入装置であっても良い。その場合、例えば、上記実施例に記載したビーム電流測定器6は平行化器とターゲットとの間に配置させておくようにしても良い。
【0056】
さらに、ビーム電流測定器6をZ方向に沿って移動可能な構成としておき、ビーム電流測定器11の機能も兼用できるようにしておいても良い。具体的には、イオン注入処理前にイオンビーム3を処理室7内に照射しておく。この際、ビーム電流測定器6をZ方向に移動させながら、イオンビーム3のビーム電流の測定を行う。なお、ビーム電流測定器6を移動させる構成については、ホルダー10の駆動機構を小型化したものを用いるようにすれば良い。
【0057】
先の実施形態において、ビーム電流計測器6は、図2に示されるようにイオンビーム3のZ方向における下側部分のみを測定するものであったが、ターゲット9に照射されていない上側部分も測定できるように別のビーム電流計測器を用意しておいても良い。そうした上で、各ビーム電流計測器による測定結果を平均した値を、ビーム電流の測定値として用いるようにしても良い。このように構成しておくことで、より適切に、イオンビーム3全体に波及する脱ガスの影響に対処することが出来る。
【0058】
前述した以外に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行っても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
1.イオン注入装置
2.イオン源
3.イオンビーム
4.質量分析マグネット
5.分析スリット
6.ビーム電流測定器
7.処理室
8.圧力計
9.ターゲット
10.ホルダー
12.制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源と、
前記イオン源から引出されたイオンビームが照射されるターゲットと、
前記ターゲットが配置される処理室と、
前記処理室内の圧力を測定する圧力計と、
前記ターゲット上に照射される前記イオンビームの照射領域を妨げないようにして、前記イオン源と前記ターゲットとの間に配置されているとともに、前記ターゲットに照射されない前記イオンビームの少なくとも一部のビーム電流を測定するビーム電流測定器と、
前記圧力計による測定値が予め決められた基準値以上となった時、前記ターゲットに所定量のイオンが注入されるように、イオン注入パラメーターを調節する制御装置と、を備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記イオン注入装置は、
前記ターゲットを保持するホルダーと、
前記ホルダーを駆動するホルダー駆動手段を、さらに備えており、
前記注入パラメーターは、前記ホルダー駆動手段によって前記ホルダーが駆動される際の速度であることを特徴とする請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記ターゲットは、ガラス基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記制御装置の機能を入り切り出来る機能が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のイオン注入装置。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−243450(P2011−243450A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115407(P2010−115407)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】