説明

イオン発生装置およびそれを用いた電気機器

【課題】昇圧トランスによる磁界の影響を受けることなく、イオン発生素子の配置の自由度の向上を可能とする、イオン発生装置およびそれを用いた電気機器を提供する。
【解決手段】昇圧トランス131,231の一次巻線にトランス駆動回路が接続され、昇圧トランス131,231の二次巻線に、正イオンを発生するイオン発生素子11,12,23,24と負イオンを発生するイオン発生素子13,14,21,22とを一組として、2組以上のイオン発生素子が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はイオン発生装置およびそれを用いた電気機器に関し、特に、正イオンおよび負イオンを発生するイオン発生装置と、それを用いた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、正イオンと負イオンの両方を発生するイオン発生装置が実用化されている。図13は、イオン発生装置500を4つ並べて配置した状態を示す平面図であり、図14はイオン発生装置の外観を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図および(d)は左側面図を示す。
【0003】
イオン発生装置500の平面図に現れる上端部には、イオン発生素子2およびイオン発生素子3が配設されている。イオン発生素子2およびイオン発生素子3はそれぞれ、針電極および針電極を取り囲むように配置された誘導電極を有し、針電極との間に正の高電圧パルスまたは負の高電圧パルスを印加すると、針電極の先端部でコロナ放電が発生して、針電極の先端部で正イオンまたは負イオンが発生する。図では、イオン発生素子2が正イオンを発生し、イオン発生素子3が負イオンを発生する。
【0004】
発生した正イオンおよび負イオンは、送風機等による送風によって室内に送出され、空気中に浮遊するカビ菌やウィルスの周りを取り囲み、カビ菌やウィルスを分解する(たとえば、特許文献1から3参照)。
【0005】
図15は、図14(b)中のXV−XV線矢視断面におけるイオン発生装置500の内部構造を示す断面図である。針電極および誘導電極が設置される基板S1、および、昇圧トランス31が取り付けられ、トランス駆動回路等が組み込まれた回路基板S2は、ウレタン樹脂U1およびエポキシ樹脂E1の充填により筐体501内に一体的に固定される。
【0006】
上記構成からなるイオン発生装置500は、イオンを室内に放出させることを主目的としたイオン発生機、空気清浄機、空気調和機(エアコンディショナー)、冷蔵機器、掃除機、加湿機、除湿機、乾燥洗濯機、洗濯機、電気ファンヒータ、電子レンジなどに搭載され、発生させるイオンの量に応じて数量、配置位置が適宜選択されている。
【0007】
しかし、上記イオン発生装置500を用いる場合には、以下に示すような課題がある。図15に示す筐体501の内部構造を参照すると、負イオンを発生するイオン発生素子3の下方に昇圧トランス31が配置されている。
【0008】
この場合に、イオン発生量の最適化を図るために、図13に示すようにイオン発生装置500を配列した場合には(上段+−−+、下段−++−)、イオン発生素子3が並んで配置される箇所(上段の−−)で、昇圧トランス31が隣接して配置される状態となる。昇圧トランス31が隣接して配置されると、お互いの磁界の影響を受け、高圧の出力電圧が低下してしまうことが懸念される。
【0009】
また、一つのイオン発生装置500を参照した場合、イオン発生素子2およびイオン発生素子3は、筐体501の両側端部に配置されている(たとえば、P2=約38mm、P3=約10mm)。そのため、図13に示すようにイオン発生装置500を配列した場合には中央部にイオン発生素子が集中する配置となる。また、イオン発生素子の配置間隔を均等にした場合には、それぞれのイオン発生装置500を離して配置する必要があり、小型の電気機器では、所望の位置にイオン発生装置500を設置できない課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−305321号公報
【特許文献2】特開2008−198627号公報
【特許文献3】特開2009−135002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、イオン発生装置およびそれを用いた電気機器において、イオン発生装置を並べて配置した場合に昇圧トランスによる磁界の影響を受ける点、イオン発生素子の配置に制限がある点である。したがって、この発明の目的は、昇圧トランスによる磁界の影響を受けることなく、イオン発生素子の配置の自由度の向上を可能とする、イオン発生装置およびそれを用いた電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に基づいたイオン発生装置においては、トランス駆動回路と、上記トランス駆動回路により駆動され、電圧を昇圧するための昇圧トランスと、上記昇圧トランスにより昇圧された電圧が印加されることで正イオンおよび負イオンを生じさせるイオン発生素子とを備え、上記昇圧トランスの一次巻線に上記トランス駆動回路が接続され、上記昇圧トランスの二次巻線に、正イオンを発生する上記イオン発生素子と負イオンを発生する上記イオン発生素子とを一組として、2組以上の上記イオン発生素子が接続される。
【0013】
上記イオン発生装置の他の形態においては、上記トランス駆動回路は、第1トランス駆動回路および第2トランス駆動回路を含み、上記昇圧トランスは、上記第1トランス駆動回路が上記一次巻線に接続される第1トランス駆動回路用昇圧トランス、および上記第2トランス駆動回路が上記一次巻線に接続される第2トランス駆動回路用昇圧トランスを含む。
【0014】
上記第1トランス駆動回路用昇圧トランスの上記二次巻線には、正イオンを発生する上記イオン発生素子と負イオンを発生する上記イオン発生素子とを一組として、2組の上記イオン発生素子が接続され、上記第2トランス駆動回路用昇圧トランスの上記二次巻線には、正イオンを発生する上記イオン発生素子と負イオンを発生する上記イオン発生素子とを一組として、2組の上記イオン発生素子が接続される。
【0015】
上記いずれかのイオン発生装置の他の形態においては、上記第1トランス駆動回路用昇圧トランスに接続される上記イオン発生素子は、均等の間隔で配置され、上記第2トランス駆動回路用昇圧トランスに接続される上記イオン発生素子は、均等の間隔で配置される。
【0016】
上記いずれかのイオン発生装置の他の形態においては、上記第1トランス駆動回路および上記第2トランス駆動回路は、一つの回路基板に組み込まれ、上記第1トランス駆動回路用昇圧トランスおよび上記第2トランス駆動回路用昇圧トランスは、上記回路基板を挟んで配置される。
【0017】
この発明に基づいた電気機器は、上記イオン発生装置と、上記イオン発生装置で発生した正イオンおよび負イオンを送出するための送風装置とを備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明に基づいたイオン発生装置およびそれを用いた電気機器によれば、昇圧トランスによる磁界の影響を受けることなく、イオン発生素子の配置の自由度の向上を可能とする、イオン発生装置およびそれを用いた電気機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1におけるイオン発生ユニットの外観構成の概略を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1におけるイオン発生装置の平面図である。
【図3】実施の形態1におけるイオン発生装置の正面図である。
【図4】実施の形態1におけるイオン発生装置の底面図である。
【図5】実施の形態1におけるイオン発生装置の側面図である。
【図6】実施の形態1におけるイオン発生装置の全体構成を示す回路図である。
【図7】実施の形態1におけるイオン発生装置の他の構成を示す回路図である。
【図8】実施の形態2における電気機器の全体構成を示す斜視図である。
【図9】図8中IX−IX線矢視断面図である。
【図10】図8中X−X線矢視断面図である。
【図11】実施の形態2における電気機器の送風量とイオン発生素子の配置位置との関係を示す模式図である。
【図12】比較例における電気機器の送風量とイオン発生素子の配置位置との関係を示す模式図である。
【図13】背景技術におけるイオン発生装置を複数個配置した状態の平面図である。
【図14】背景技術におけるイオン発生装置(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、および(d)側面図である。
【図15】図14(b)中のXV−XV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に基づいた各実施の形態におけるイオン発生装置およびそれを用いた電気機器について、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は一例であり、種々の形態での実施が本発明の範囲内で可能である。また、以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0021】
(実施の形態1)
図1に、本発明に基づいた実施の形態におけるイオン発生装置が収容されたイオン発生ユニット1000を示す。このイオン発生ユニット1000は、ケース1001とケース1002とを有する。ケース1001とケース1002とは、相互に開閉可能に設けられ、内部にイオン発生装置100を収容可能としている。ケース1001の上端部には、外部電気機器に接続するための電気機器接続用コネクタ1004が設けられている。
【0022】
ケース1001の表面には、イオン発生装置100に設けられたイオン発生素子を露出させるためのイオン放出孔1003が上下2列にそれぞれ4個、合計8個設けられている。
【0023】
図2から図5を参照して、内部に収容されたイオン発生装置100の外観構成を説明する。イオン発生装置100は樹脂製のベース10を有している。ベース10の表面には、上下2列にそれぞれ4個、合計8個のイオン放出孔h11〜h14、および、イオン放出孔h21〜h24が形成されている。
【0024】
イオン放出孔h11〜h14、および、イオン放出孔h21〜h24のそれぞれには、イオン発生素子11〜14、および、イオン発生素子21〜24が設けられている。イオン発生素子11〜14、および、イオン発生素子21〜24が組み込まれる基板(図示省略)は、樹脂製のベース10の内部に収容されている。
【0025】
イオン発生素子11は、針電極101と誘導電極e11とを有している。同様に、イオン発生素子12は、針電極102と誘導電極e12とを有し、イオン発生素子13は、針電極103と誘導電極e13とを有し、イオン発生素子14は、針電極104と誘導電極e14とを有している。
【0026】
また、イオン発生素子21は、針電極201と誘導電極e21とを有し、イオン発生素子22は、針電極202と誘導電極e22とを有し、イオン発生素子23は、針電極203と誘導電極e23とを有し、イオン発生素子24は、針電極204と誘導電極e24とを有している。
【0027】
本実施の形態では、イオン発生素子11、イオン発生素子12、イオン発生素子23およびイオン発生素子24が、正イオンを発生し、イオン発生素子13、イオン発生素子14、イオン発生素子21およびイオン発生素子22が、負イオンを発生する。図2において縦方向のイオン発生素子同士の間隔(S)は、約18mm程度である。横方向のイオン発生素子同士の間隔(P)は、約27mm程度であり、均等の間隔で配置されている。
【0028】
イオン発生素子11〜14に対して一つのトランス駆動回路C1が接続され、イオン発生素子21〜24に対して一つのトランス駆動回路C2が接続されている。トランス駆動回路C1,C2の詳細については、後述する。
【0029】
トランス駆動回路C1に用いられる第2昇圧トランス131と、トランス駆動回路C2に用いられる第2昇圧トランス231とは、ベース10の裏面側の両端部に配置されている。両端部に配置された第2昇圧トランス131と第2昇圧トランス231との間には、トランス駆動回路C1およびトランス駆動回路C2が組み込まれた回路基板S2が、ネジS10によりベース10に対して着脱可能に固定されている。
【0030】
第2昇圧トランス131の一次巻線側のケーブル131Cは、連結部材としてのトランスコネクタC100により、トランス駆動回路C1に対して分離可能に接続されている。第2昇圧トランス131の二次巻線側端子は、イオン発生素子11〜14が組み込まれる回路基板(図示省略)に直接接続されている。
【0031】
第2昇圧トランス231の一次巻線側のケーブル231Cは、連結部材としてのトランスコネクタC200により、トランス駆動回路C2に対して分離可能に接続されている。第2昇圧トランス231の二次巻線側端子は、イオン発生素子21〜24が組み込まれる回路基板(図示省略)に直接接続されている。
【0032】
回路基板S2には外部コネクタC10が設けられ、ケース1001の上端部に設けられた電気機器接続用コネクタ1004に接続される。
【0033】
(トランス駆動回路)
図6は、上記イオン発生装置100のトランス駆動回路C1およびトランス駆動回路C2の構成を示す回路図である。トランス駆動回路C1およびトランス駆動回路C2は、一つの回路基板S2中に組み込まれている。
【0034】
(トランス駆動回路C1)
トランス駆動回路C1は、電源端子T11、接地端子T12、ダイオード120,124,128,129a、抵抗素子121,123,125、NPNバイポーラトランジスタ126、第1昇圧トランス127、第2昇圧トランス131、コンデンサ129b,129c、および2端子サイリスタ130を備える。
【0035】
電源端子T11および接地端子T12には、それぞれ直流電源の正極および負極が接続される。電源端子T11には直流電源電圧(たとえば+12Vまたは+15V)が印加され、接地端子T12は接地される。ダイオード120および抵抗素子121,123,125は、電源端子T11とトランジスタ126のベースとの間に直列接続される。トランジスタ126のエミッタは接地端子T12に接続される。ダイオード124は、接地端子T12とトランジスタ126のベースとの間に接続される。
【0036】
ダイオード120は、直流電源の正極および負極が電源端子T11および設置端子T12に逆に接続された場合に電流を遮断して直流電源を保護するための素子である。抵抗素子121は、昇圧動作を制限するための素子である。抵抗素子123は、起動抵抗素子である。ダイオード124は、トランジスタ126の逆耐圧保護素子として動作する。
【0037】
第1昇圧トランス127は、一次巻線127a、ベース巻線127b、および二次巻線127cを含む。一次巻線127aの一方端子は抵抗素子121,123間のノードN122に接続され、その他方端子はトランジスタ126のコレクタに接続される。
【0038】
ベース巻線127bの一方端子は抵抗素子125を介してトランジスタ126のベースに接続される。二次巻線127cの一方端子はトランジスタ126のベースに接続され、その他方端子はダイオード128,129a、コンデンサ129b、129cを介して接地端子T12に接続される。
【0039】
第2昇圧トランス131は、一次巻線131aおよび二次巻線131bを含む。2端子サイリスタ130は、ダイオード128のカソードと一次巻線131aの一方端子との間に接続される。この接続には、トランスコネクタC100が用いられる。一次巻線131aの他方端子は接地端子T12に接続される。この接続には、トランスコネクタC100が用いられる。
【0040】
第2昇圧トランス131の二次巻線131bの一方端子は誘導電極e11〜e14に接続される。他方端子はダイオード106のアノードおよびダイオード107のカソードに接続される。ダイオード106のカソードは針電極101,102に接続され、ダイオード107のアノードは針電極103,104に接続される。
【0041】
抵抗素子125は、ベース電流を制限するための素子である。2端子サイリスタ130は、端子間電圧がブレークオーバー電圧に到達すると導通状態になり、電流が最小保持電流以下になると非導通になる素子である。
【0042】
以上の回路構成により、昇圧トランス131の二次巻線131bには、正イオンを発生するイオン発生素子11および負イオンを発生するイオン発生素子13の組と、正イオンを発生するイオン発生素子12および負イオンを発生するイオン発生素子14の組との2組のイオン発生素子が接続される。
【0043】
(トランス駆動回路C2)
トランス駆動回路C2は、電源端子T21、接地端子T22、ダイオード220,224,228,229a、抵抗素子221,223,225、NPNバイポーラトランジスタ226、第1昇圧トランス227,第2昇圧トランス231、コンデンサ229b,229c、および2端子サイリスタ230を備える。
【0044】
電源端子T21および接地端子T22には、それぞれ直流電源の正極および負極が接続される。電源端子T21には直流電源電圧(たとえば+12Vまたは+15V)が印加され、接地端子T22は接地される。ダイオード220および抵抗素子221,223,225は、電源端子T21とトランジスタ226のベースとの間に直列接続される。トランジスタ226のエミッタは接地端子T22に接続される。ダイオード224は、接地端子T22とトランジスタ226のベースとの間に接続される。
【0045】
ダイオード220は、直流電源の正極および負極が端子T21,T22に逆に接続された場合に電流を遮断して直流電源を保護するための素子である。抵抗素子221は、昇圧動作を制限するための素子である。抵抗素子223は、起動抵抗素子である。ダイオード224は、トランジスタ226の逆耐圧保護素子として動作する。
【0046】
第1昇圧トランス227は、一次巻線227a、ベース巻線227b、および二次巻線227cを含む。一次巻線227aの一方端子は抵抗素子221,223間のノードN222に接続され、その他方端子はトランジスタ226のコレクタに接続される。
【0047】
ベース巻線227bの一方端子は抵抗素子225を介してトランジスタ226のベースに接続される。二次巻線227cの一方端子はトランジスタ226のベースに接続され、その他方端子はダイオード228,229a、コンデンサ229b、229cを介して接地端子T22に接続される。
【0048】
第2昇圧トランス231は、一次巻線231aおよび二次巻線231bを含む。2端子サイリスタ230は、ダイオード228のカソードと一次巻線231aの一方端子との間に接続される。この接続には、トランスコネクタC200が用いられる。一次巻線231aの他方端子は接地端子T22に接続される。この接続には、トランスコネクタC200が用いられる。
【0049】
第2昇圧トランス231の二次巻線231bの一方端子は誘導電極e21〜e24に接続される。他方端子はダイオード206のアノードおよびダイオード207のカソードに接続される。ダイオード206のカソードは針電極201,202に接続され、ダイオード207のアノードは針電極203,204に接続される。
【0050】
抵抗素子225は、ベース電流を制限するための素子である。2端子サイリスタ230は、端子間電圧がブレークオーバー電圧に到達すると導通状態になり、電流が最小保持電流以下になると非導通になる素子である。
【0051】
以上の回路構成により、昇圧トランス231の二次巻線231bには、正イオンを発生するイオン発生素子23および負イオンを発生するイオン発生素子21の組と、正イオンを発生するイオン発生素子24および負イオンを発生するイオン発生素子22の組との2組のイオン発生素子が接続される。
【0052】
(イオン発生装置100の動作)
次に、このイオン発生装置100の動作について説明する。なお、トランス駆動回路C1およびトランス駆動回路C2の動作は同じであるため、ここでは、トランス駆動回路C1についてのみ説明する。
【0053】
コンデンサ129b、129cは、RCC方式スイッチング電源動作により充電される。すなわち、電源端子T11および接地端子T12間に直流電源電圧が印加されると、電源端子T11からダイオード120および抵抗素子121,123を介してトランジスタ126のベースに電流が流れてトランジスタ126が導通状態となる。これにより、第1昇圧トランス127の一次巻線127aに電流が流れ、ベース巻線127bの端子間に電圧が発生する。
【0054】
ベース巻線127bの巻線方向は、トランジスタ126が導通状態になるとトランジスタ126のベース電圧をさらに上昇させるように設定されている。このため、ベース巻線127bの端子間に発生した電圧は正帰還状態でトランジスタ126の導通抵抗値を低下させる。このとき、ダイオード128によって通電が阻止されるように、二次巻線127cの巻線方向が設定されており、二次巻線127cには電流が流れない。
【0055】
このようにして一次巻線127aおよびトランジスタ126に流れる電流が増加し続けることにより、トランジスタ126のコレクタ電圧は飽和領域から外れて上昇する。これにより、一次巻線127aの端子間電圧が低下してベース巻線127bの端子間電圧も低下し、トランジスタ126のコレクタ電圧はさらに上昇する。
【0056】
このため、正帰還状態で動作して急速にトランジスタ126が非導通状態になる。このとき、二次巻線127cはダイオード128の導通方向に電圧を発生する。これにより、コンデンサ129b,129cが充電される。
【0057】
コンデンサ129b,129cの端子間電圧が上昇して2端子サイリスタ130のブレークオーバー電圧に到達すると、2端子サイリスタ130はツェナーダイオードのように動作してさらに電流を流す。2端子サイリスタ130に流れる電流がブレークオーバー電流に到達すると、2端子サイリスタ130は略短絡状態となり、コンデンサ129に充電された電荷が2端子サイリスタ130および第2昇圧トランス131の一次巻線131aを介して放電され、一次巻線131aにはインパルス電圧が発生する。
【0058】
一次巻線131aにインパルス電圧が発生すると、二次巻線131bに正および負の高電圧パルスが交互に減衰しながら発生する。正の高電圧パルスはダイオード106を介して針電極101,102に印加され、負の高電圧パルスはダイオード107を介して針電極103,104に印加される。これにより、針電極101〜104の先端でコロナ放電が発生し、それぞれ正イオンおよび負イオンが発生する。
【0059】
一方、第1昇圧トランス127の二次巻線127cに電流が流れると、一次巻線127aの端子間電圧が上昇して再度トランジスタ126が導通し、以上の動作が繰り返される。この動作の繰り返し速度は、トランジスタ126のベースに流れる電流が大きいほど速くなる。したがって、抵抗素子121の抵抗値を調整することにより、トランジスタ126のベースに流れる電流を調整し、ひいては針電極101〜104の放電回数を調整することができる。
【0060】
なお、正イオンは、水素イオン(H)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、H(HO)m(ただし、mは任意の自然数である)と表わされる。また負イオンは、酸素イオン(O)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、O(HO)n(ただし、nは任意の自然数である)と表わされる。
【0061】
また、正イオンおよび負イオンを室内に放出すると、両イオンが空気中を浮遊するカビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その表面上で互いに化学反応を起こす。その際に生成される活性種の水酸化ラジカル(・OH)の作用により、浮遊カビ菌などが除去される。
【0062】
(作用・効果)
以上、本実施の形態におけるイオン発生装置100においては、昇圧トランスの一次巻線にトランス駆動回路が接続され、昇圧トランスの二次巻線に、正イオンを発生するイオン発生素子と負イオンを発生するイオン発生素子とを一組として、2組以上のイオン発生素子が接続される構成が採用されている。
【0063】
より具体的には、トランス駆動回路C1において、昇圧トランス131の二次巻線131bには、正イオンを発生するイオン発生素子11および負イオンを発生するイオン発生素子13の組と、正イオンを発生するイオン発生素子12および負イオンを発生するイオン発生素子14の組との2組のイオン発生素子が接続されている。
【0064】
また、トランス駆動回路C2においても、昇圧トランス231の二次巻線231bには、正イオンを発生するイオン発生素子23および負イオンを発生するイオン発生素子21の組と、正イオンを発生するイオン発生素子24および負イオンを発生するイオン発生素子22の組との2組のイオン発生素子とが接続されている。
【0065】
これにより、8個のイオン発生素子(合計4組のイオン発生素子)を、図2に示すように、所望の位置に所定の間隔で配置することが可能となる。また、4個のイオン発生素子に対して1個の昇圧トランスを用いることから、昇圧トランスの配置位置の制限を緩和させることができる。また、電線の削減、消費電力の半減、昇圧トランスの半減を含む回路部品の削減が図られ、イオン発生装置の製造に要するコストの削減を図ることが可能となる。
【0066】
また、図3に示すように、第1トランス駆動回路C1および第2トランス駆動回路C2を、一つの回路基板S2に組み込み、トランス駆動回路C1に用いられる第2昇圧トランス131と、トランス駆動回路C2に用いられる第2昇圧トランス231とを、回路基板S2を挟んだ状態で、ベース10の裏面側の両端部に配置する構成の採用が可能となり、昇圧トランス同士の磁界の影響を排除することが可能となる。
【0067】
また、このイオン発生装置100の構成においては、ベース10の外縁と昇圧トランスとの間に空間を形成するように(図4中の隙間T、図5中の隙間U)、ベース10の外縁よりも内側に昇圧トランスを配置させることができる。その結果、このイオン発生装置100を複数並べて配置する場合であっても、隣接する昇圧トランス同士の磁界の影響を排除することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態においては、正イオンを発生するイオン発生素子と負イオンを発生するイオン発生素子を1組として、4組のイオン発生素子を設ける場合において、トランス駆動回路C1に2組のイオン発生素子を設け、トランス駆動回路C2に2組のイオン発生素子を設ける場合について説明したが、この回路構成に限定されるものではなく、それ以上の組のイオン発生素子を設ける構成を採用することも可能である。
【0069】
また、図7に示すように、トランス駆動回路C1により2組のイオン発生素子のみを有するイオン発生装置の構成を採用することも可能である。
【0070】
また、図6および図7に示す回路においては、電源として直流電源を用いる場合について説明しているが、電源として交流電源を用いる場合であっても、同様に、昇圧トランスの一次巻線にトランス駆動回路が接続され、昇圧トランスの二次巻線に、正イオンを発生するイオン発生素子と負イオンを発生するイオン発生素子とを一組として、2組以上のイオン発生素子が接続される構成を採用することが可能である。
【0071】
(実施の形態2)
図8から図12を参照して、上記実施の形態1に示した、イオン発生装置100を搭載したイオン発生機2000について説明する。このイオン発生機2000は、2組のシロッコファン34を内蔵し、両側面にそれぞれ空気取り入れ口35を有する下ケース31と、上部に2つの空気吹き出し口33を有する上ケース32とを備えている。下ケース31および上ケース32の内部には、シロッコファン34からの送風される空気流を吹き出し口33に向かって案内する風洞36が形成されている。
【0072】
イオン発生装置100は、図1に示したケース1001,1002内に収容され、イオン発生ユニット1000を構成している。イオン放出孔h11〜h14,h21〜h24は、風洞36に面し、イオン発生素子11〜14,21〜24で発生したイオンを上記の空気流に放出できるように配置されている。
【0073】
図11を参照して、シロッコファン34に送風される風速とイオン発生素子11〜14,21〜24の配置位置について説明する。シロッコファン34から送風された風洞36内での風速は、図11に示すように、中央部に最大風速10m/sの領域を有し、左右両側においては、風速が低下する。
【0074】
そこで、このイオン発生装置100においては、イオン発生素子11〜14,21〜24を、シロッコファン34からの最大風速10m/sの位置に配置するようにしている。これにより、イオン発生素子11〜14,21〜24で発生したイオンは、最大風速10m/sの風に乗って運ばれ、室内へのイオンの導出量を増加させることが可能となる。
【0075】
ここで、図12に、背景技術で示したイオン発生装置500を4つ配置した場合について説明する。イオン発生装置500においては、イオン発生素子2とイオン発生素子3との配置ピッチが予め固定されている(約38mm)。そのため、イオン発生機2000に搭載した場合には、イオン発生素子2とイオン発生素子3の配置位置が、シロッコファン34からの最大風速10m/sの位置からずれて配置されることになる。その結果、イオン発生素子2,3により発生したイオンを十分に室内へ運び出すことができない。
【0076】
このように、本発明に基づいたイオン発生装置100を搭載したイオン発生機2000においては、効率良くイオン発生装置100において発生したイオンを室内へ送出することができるため、同じイオンの送出量であれば、背景技術で示したイオン発生装置500を用いた場合に比べて、シロッコファン34の回転速度を低下させることができる。
【0077】
これにより、シロッコファン34の回転音の値を低下させることが可能となる。また、同じ回転数であれば、イオン発生装置100を搭載したイオン発生機2000においては、送出イオンの濃度を高めることが可能となる。
【0078】
なお、実施の形態1に示すイオン発生装置は、上記イオン発生機2000のようなイオンを室内に放出させることを主目的とした電気機器だけでなく、空気清浄機、空気調和機(エアコンディショナー)、冷蔵機器、掃除機、加湿機、除湿機、乾燥洗濯機、洗濯機、電気ファンヒータ、電子レンジなどにも搭載可能であり、イオンを気流に乗せて送るための送風部を有するものであればどのような電気機器にも搭載可能である。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10 ベース、11,12,13,14,21,22,23,24 イオン発生素子、31 下ケース、32 上ケース、33 空気吹き出し口、34 シロッコファン、35 空気取り入れ口、36 風洞、100 イオン発生装置、101,102,103,104 針電極、106,107,120,124,128,129a,206,207,220,224,228,229a ダイオード、121,123,125,221,223,225 抵抗素子、122,222 ノードN、126,226 トランジスタ(NPNバイポーラトランジスタ)、127,227 第1昇圧トランス、127a,227a 一次巻線、127b,227b ベース巻線、127c,131b,231b,227c 二次巻線、129,129b,129c,229b,229c コンデンサ、130,230 2端子サイリスタ、131,231 第2昇圧トランス、131a,231a 一次巻線、131C,231C ケーブル、201,202,203,204 針電極、1000 イオン発生ユニット、1001,1002 ケース、1003 イオン放出孔、1004 電気機器接続用コネクタ、2000 イオン発生機、e11,e12,e13,e14,e21,e22,e23,e24 誘導電極、h11,h12,h13,h14,h21,h22,h23,h24 イオン放出孔、C1,C2 トランス駆動回路、C10 外部コネクタ、C100,C200 トランスコネクタ、S2 回路基板、S10 ネジ、T11,T21 電源端子、T12,T22 接地端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス駆動回路と、
前記トランス駆動回路により駆動され、電圧を昇圧するための昇圧トランスと、
前記昇圧トランスにより昇圧された電圧が印加されることで正イオンおよび負イオンを生じさせるイオン発生素子と、を備え、
前記昇圧トランスの一次巻線に前記トランス駆動回路が接続され、
前記昇圧トランスの二次巻線に、正イオンを発生する前記イオン発生素子と負イオンを発生する前記イオン発生素子とを一組として、2組以上の前記イオン発生素子が接続される、イオン発生装置。
【請求項2】
前記トランス駆動回路は、第1トランス駆動回路および第2トランス駆動回路を含み、
前記昇圧トランスは、前記第1トランス駆動回路が前記一次巻線に接続される第1トランス駆動回路用昇圧トランス、および前記第2トランス駆動回路が前記一次巻線に接続される第2トランス駆動回路用昇圧トランスを含み、
前記第1トランス駆動回路用昇圧トランスの前記二次巻線には、正イオンを発生する前記イオン発生素子と負イオンを発生する前記イオン発生素子とを一組として、2組の前記イオン発生素子が接続され、
前記第2トランス駆動回路用昇圧トランスの前記二次巻線には、正イオンを発生する前記イオン発生素子と負イオンを発生する前記イオン発生素子とを一組として、2組の前記イオン発生素子が接続される、請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記第1トランス駆動回路用昇圧トランスに接続される前記イオン発生素子は、均等の間隔で配置され、
前記第2トランス駆動回路用昇圧トランスに接続される前記イオン発生素子は、均等の間隔で配置される、請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記第1トランス駆動回路および前記第2トランス駆動回路は、一つの回路基板に組み込まれ、
前記第1トランス駆動回路用昇圧トランスおよび前記第2トランス駆動回路用昇圧トランスは、前記回路基板を挟んで配置される、請求項2または3に記載のイオン発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のイオン発生装置と、
前記イオン発生装置で発生した正イオンおよび負イオンを送出するための送風装置とを備える、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−60705(P2011−60705A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211781(P2009−211781)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】