説明

イコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸の生産方法

【課題】パブロバ藻体を容易に大量培養することにより、イコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸を同時に効率よく生産する方法を提供する。
【解決手段】培養槽中の無機液体培地に接種したパブロバ藻体に、光照射と、炭酸ガス含有空気を通気しつつ、第1工程として、培養槽に光を照射して、培養可能まで培養した後、この培養液に、第2工程として、培養槽に第1工程より強い光を照射して、培養可能まで培養した後、該培養液に第3工程として、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲内に調整して重量乾燥藻体濃度の増加が殆ど認められないまでに培養する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハプト植物門に属するパブロバ藻体を培養することにより、イコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単細胞微細藻類を縦型偏平水槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、ナンノクロロプシス藻体を、PVC濃度を0 .9 〜1 .7ml /l 接種して、水槽の前後面の何れかの片面から照度6000〜16000lx の光を照射しつつ、PVC濃度が1 .8 〜4 .9ml /l になるまで培養する第1工程と、当該PVC濃度1 .8 〜4 .9ml /l の培養液に、水槽の前後面の両面から照度11000 〜21000lx の光を照射しつつ、PVC濃度が5 .0 〜7 .Oml /l になるまで培養する第2工程と、当該PVC濃度5 .0 〜7 .Oml /l の培養液に、水槽の前後面の両面から照度10000 〜35000lx の光を照射しつつ、PVC濃度が10.3 〜11.Oml /l になるまで培養する第3工程とから成ることを特徴とするエイコサペンタエン酸を生産させることは、特許文献1に開示されており公知である。
【0003】
また、単細胞微細藻類を縦型偏平水槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、円石藻体を、PVC濃度を0 .1 〜0 .4ml /l に接種して、水槽の前後面の何れかの片面から照度3000〜4000lxの光照射をしつつ、PVC濃度が0 .5 〜1ml /l まで培養する第1工程と、該0 .5 〜1ml /l 濃度の培養液に、水槽の前後の両面から照度3000〜4000lxの光照射をしつつ、PVC濃度が2 .0 〜2 .3ml /l まで培養する第2工程と、該2 .0 〜2 .3ml /l 濃度の培養液に、水槽の前後の両面から照度5000〜6000lxの光照射しつつ、PVC濃度が5 .0 〜5 .5ml /l まで培養する第3工程とから成ることを特徴とするドコサヘキサエン酸を生産させることは、特許文献2に開示されており公知である。
【特許文献1】特開平9−252761号公報
【特許文献2】特開平9−252762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のナンノクロロプシス藻体の培養法では、(エ)イコサペンタエン酸だけしか生産させることができなかった。
【0005】
さらに、上記従来の円石藻体の培養法では、ドコサヘキサエン酸だけしか生産させることができなかった。
【0006】
そこで、本発明者は、イコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸を同時に大量に生産させるパブロバ藻体の培養法について研究した結果、本発明を達成したのである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラスなどの透明体からなる培養槽中の無機液体培地に接種したパブロバ藻体に、光照射と、炭酸ガス含有空気を通気しつつ、第1工程として、培養槽に光を照射して、培養可能まで培養した後、この培養液に、第2工程として、培養槽に第1工程より強い光を照射して、培養可能まで培養した後、該培養液に第3工程として、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲内に調整して重量乾燥藻体濃度の増加が殆ど認められないまでに培養するものとしている。
【0008】
すなわち、本発明は、単細胞微細藻類を培養槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、パブロバ藻体を重量乾燥藻体濃度10〜40mg/l に接種して、培養槽に光強度75〜100 μE /m ・s2の光を照射しつつ、50〜100mg /l まで培養する第1工程と、この50〜100mg /l 濃度の培養液に、培養槽に光強度125 〜150 μE /m ・s2の光を照射しつつ、200 〜230mg /l まで培養する第2工程と、この200 〜230mg /l 濃度の培養液に、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲に調整して、500 〜550mg /l まで培養する第3工程とから成ることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明は、単細胞微細藻類を培養槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、パブロバ藻体を重量乾燥藻体濃度10〜40mg/l に接種して、培養槽の片側から光強度75〜100 μE /m ・s2の光を照射しつつ、50〜100mg /l まで培養する第1工程と、この50〜100mg /l 濃度の培養液に、培養槽の両側から光強度125 〜150 μE /m ・s2の光を照射しつつ、200 〜230mg /l まで培養する第2工程と、この200 〜230mg /l 濃度の培養液に、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲に調整して、500 〜550mg /l まで培養する第3工程とから成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明で使用する培養槽としては、例えば縦型偏平水槽が挙げられる。この縦型偏平水槽とは、好ましくは、前後の各面の幅が0 .5 〜2m程度、高さが1 .5 〜2 .5m程度で、左右の各側面の幅が7 〜17cmの縦長の偏平の水槽で、上端の細い長方形の開口部には、周壁に適数個の通気孔が設けられ、かつ先端部が閉鎖されている。炭酸ガス含有空気を無機液体培地に送入する通気管が、その先端から挿入され、また、下端部に形成された船底形状の底部には、培養液の排出管が、開閉自在の弁部材を介して装着されているものである。そして、側面幅は、17cmを超えると、パブロバ藻体が光りを十分に受けることかできず、イコサペンタエン酸(以下、EPAという)及びドコサヘキサエン酸(以下、DHAという)の生産が低下するので好ましくない。また、船底形態の底部は、培養液が排出され易いように培養液排出管に向けて下方に傾斜されていることが好ましく、水槽を形成するガラス板またはアクリル板の厚さは3cm程度が望ましい。なお、本発明での光照射は、白色、昼色蛍光灯または白熱灯の照射をいう。
【0011】
本発明でいうパブロバ藻体とは、ハプト植物部門(Haptophyta)に属するハプト藻網(Haptophyceae)のパブロバ目(Pavlovales)のパブロバ(Pavlova)が挙げられ、具体的には本発明者らによって発見された新規な藻体である、NP−20070122(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター、受領番号FERM AP−21170)が挙げられる。
【0012】
ハプト植物部門に属するハプト藻網には、前記パブロバ目の他に、イソクリシス目(Isochrysidales)、コッコスフェラ目(Coccosphaerales) 、プリムネシウム目(Prymnesiales)が存在する。そして、パブロバ目には、前記パブロバの他に、ディアクロネマ(Diacronema)、エキサンテマクリシス(Exanthemachrysis)等が知られている。イソクリシス目には、アピストネマ(Apistonema)、クリソネマ(Chrysonema)、クリソティラ(Chrysotila)、クリコスフェラ(Cricosphaera)、ディクラテリア(Dicrateria)、エミリアニア(Emiliania) 、ゲフィロカプサ(Gephyrocapsa)、ヒメノモナス(Hymenomonas) 、イマントニア(Imantonia) 、イソクリシス(Isochrysis)、ペルロクリシス(Pleurochrysis) 、オクロスフェラ(Ochrosphaera)等が知られている。コッコスフェラ目には、アカントイカ(Acanthoica)、アノプロソレニア(Anoplosolenia) 、アントスフェラ(Anthosphaera)、ブラルドスフェラ(Braarudosphaera) 、カルシオパップス(Calciopappus)、カルシオソレニア(Calciosolenia) 、カリプトロスフェラ(Calyptrosphaera) 、コッコリタス(Coccolithus) 、コリスフェラ(Corisphaera) 、クリスタロリタス(Crystallolithus) 、シクロコッコリタス(Cyclococcolithus)、ドイツランディア(Deutschlandia) 、ディスコスフェラ(Discosphaera)、ヘリコスフェラ(Helicosphaera) 、ヘラドスフェラ(Helladosphaera)、ホモジゴスフェラ(Homozygosphaera) 、ミカエルサルシア(Michaelsarsia) 、オフィアスター(Ophiaster) 、パッポスフェラ(Papposphaera)、ポントスフェラ(Pontosphaera)、ラブドスフェラ(Rhabdosphaera) 、ラブドソラックス(Rhabdothorax)、シフォスフェラ(Scyphosphaera) 、スフェロカリテプトラ(Sphaerocalyptra) 、シラコリタス(Syracolithus)、シラコスフェラ(Syracosphaera) 、トラコスフェラ(Thoracosphaera)、ジゴスフェラ(Zygosphaera) 等が知られている。プリムネシウム目には、クリソクロムリナ(Chrysochromulina)、コリムベラス(Corymbellus) 、フェオシスティス(Phaeocystis) 、プラティクリシス(Platychrysis)、プリムネシウム(Prymnesium)等が知られている。
【0013】
本発明では、これら多くのハプト植物部門に属するハプト藻網のうち、前記パブロバ目のパブロバ、具体的には前記NP−20070122が、EPA及びDHAを同時に大量に生産させることを見いだしたものである。
【0014】
本発明でいう無機液体培地とは、培地100 リットルに対して、NaClが2400〜3000g 、MgSO4 ・7H2 Oが600 〜700g、KNO3 が30〜100g、CaCl2 ・2H2 Oが10〜18g 、KH2 PO4 が5 〜9g、NaHCO3 が3 〜5g、Tris−HClが220 〜260g、ビタミンB12が0 .3 〜0 .7mg 、チアミン−HClが40〜60mg、ビオチンが0 .1 〜1mg 、FeCl2 ・6H2 Oが200 〜300mg 、Na2 EDTAが1500〜2500mg、ZnCl2 が0 .4 〜40mg、H3 BO3 が6 〜60mg、CoCl2 ・6H2 Oが0 .15〜1 .5mg 、CuCl2 ・2H2 Oが0 .4 〜4mg 、MnCl2 ・4H2 Oが4 〜40mg、(NH46 MoO24が0 .37〜37mgの割合で含まれている培地をいう。
【0015】
本発明で、第1工程において、培養開始重量乾燥藻体濃度10〜40mg/l を接種し、培養槽の片側から光強度75〜100 μE /m ・s2光を照射して培養するのは、好適に培養することができるからであり、また50〜100mg / lまで培養するのは、100mg /l を超えてまで培養すると、照度が不足となり、培養液中のパブロバ藻体を凝集・黄変させ、EPA及びDHAの生産が低下するからである。よって、上記条件で培養することにより、EPA及びDHAの生産を低下させることなく、順調に第2工程の培養に移行することができるからである。
【0016】
第1工程で培養した重量乾燥藻体濃度50〜100mg /l の培養液に、第2工程において、培養槽の両側から光強度125 〜150 μE /m ・s2の光を照射して、200 〜230mg /l まで培養するのは、パブロバ藻体を順調に培養してEPA及びDHAを生産させるためであり、そして、230mg /l を超えるとEPA及びDHAの生産速度を低下させるからである。また、培養液中のパブロバ藻体を凝集体させたり、黄変させたりして、第3工程の培養に移行できないからである。
【0017】
第2工程で培養した重量乾燥藻体濃度200 〜230mg /l の培養液に、第3工程として、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲に調整して500 〜550mg /l まで培養するのは、550mg /l まで培養した後の重量乾燥藻体濃度の増加は殆ど無くなり、従って、EPA及びDHAの生産も無くなるからである。
【0018】
本発明において、第1工程〜第3工程を通じ、温度10〜30℃で行うのが好ましく、10℃未満では重量乾燥藻体濃度の増加は殆どなく、30℃を超えればパブロバ藻体が凝集し、光照射時間が18〜24時間/日であればEPA及びDHAの生産量の低下は来さず、また、炭酸ガス1 〜5 %含有空気を5 〜7ml /l の割合で通気、攪拌することにより、EPA及びDHAの生産量の低下を来すことがない。
【0019】
なお、確認試験として、パブロバ藻体を上記条件下において、10mg/l 培養(30日間)したところ、図1に示したように、第1工程だけを行った場合は150mg /l (26日目)までしか増殖せず、第1工程、第2工程(6日目に開始)を行った場合は、287mg /l (24日目)までしか増殖しなかったが、第1工程、第2工程(6日目に開始)、第3工程(18日目に開始)を行った場合は、503mg /l (26日目)まで増殖した。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上に述べたように構成されているので、パブロバ藻体を容易に大量培養することができ、EPA及びDHAを同時に効率よく生産できるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
〔実施例1〕
培地100 リットルに対して、NaClが2700g 、MgSO4 ・7H2 Oが660g、KNO3 が36g 、CaCl2 ・2H2 Oが15g 、KH2 PO4 が7g、NaHCO3 が4g、Tris−HClが242g、ビタミンB12が0 .5mg 、チアミン−HClが60mg、ビオチンが0 .1mg 、FeCl2 ・6H2 Oが276.9mg 、Na2 EDTAが1860mg、ZnCl2 が0 .4 mg、H3 BO3 が6 mg、CoCl2 ・6H2 Oが0 .15mg、CuCl2 ・2H2 Oが0 .4mg 、MnCl2 ・4H2 Oが4mg 、(NH46 MoO24が3.7mg の割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )100 リットルを、高さ2 m 、前後の各面の幅1m、左右の各面の幅13cmのアクリル製の縦型偏平水槽に入れ、培養温度を26℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %を含む空気を5 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度10mg/l の割合で接種し、水槽の前面片面に光強度75μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、50mg/l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度150 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、230mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを6 .8 に調整して培養して、507mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、48g の乾燥藻体を得た。
【0022】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を、5%の塩酸を含むメタノール溶媒に入れ、95℃で3 時間還流後、ヘキサン溶媒で脂肪酸メチルエステルを抽出し、トリコサン酸を内部標準によるガスタロマイグラフイー分析法で定量した結果、2 .2gのEPA及び1 .OgのDHAを得た。
【0023】
〔実施例2〕
実施例1記載と同様に、無機液体培地100 リットルを縦型偏平水槽に入れ、培養温度を25℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %含有空気を5 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の100 リットルの無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度20mg/l の割合で接種して、水槽の前面片面に光強度75μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、100mg /l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度125 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、230mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを7 .2 に調整して515mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた100 リットルの培養液から分取した70リットルの培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回転/分)で分取した藻体を蒸留水で洗浄し、凍結乾燥して32g の乾燥藻体を得た。そして、得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1記載と同様に定量した結果、1 .6gのEPA及び0 .6gのDHAを得た。
【0024】
また、70リットルを分別した残余の、重量乾燥藻体濃度515mg /l の培養液30リットルに、実施例1の無機液体培地を適量加えて、上記実施例2の第3工程と同様に光強度125 μE /m・s2 の白色蛍光灯を18時間/日照射しつつ培養することを6回繰り返して得た培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回転/分)で得た藻体を洗浄、凍結乾燥した乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を定量した結果、9 .2gのEPA及び3 .8gのDHAが得られた。
【0025】
〔実施例3〕
培地200 リットルに対して、NaClが5400g 、MgSO4 ・7H2 Oが1320g 、KNO3 が72g 、CaCl2 ・2H2 Oが30g 、KH2 PO4 が14g 、NaHCO3 が8g、Tris−HClが482g、ビタミンB12が1mg 、チアミン−HClが120mg 、ビオチンが0 .2mg 、FeCl2 ・6H2 Oが553.8mg 、Na2 EDTAが3730mg、ZnCl2 が0 .8 mg、H3 BO3 が12mg、CoCl2 ・6H2 Oが0 .3mg 、CuCl2 ・2H2 Oが0 .8mg 、MnCl2 ・4H2 Oが8mg 、(NH46 MoO24が7.4mg の割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )200 リットルを、高さ2 m 、前後面の各幅2m、左右側面の各幅13cmのアクリル製の縦型偏平水槽に入れ、培養温度を23℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %を含む空気を7 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度10mg/l の割合で接種し、水槽の前面片面に光強度75μE /m・s2 の昼色蛍光灯を照射し、培養して、70mg/l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度150 μE /m・s2 の昼色蛍光灯を照射し、培養して、220mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを6 .8 に調整して培養して、520mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、101gの乾燥藻体を得た。
【0026】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは4 .4g、DHAは1 .8gであった。
【0027】
〔実施例4〕
培地50リットルに対して、NaClが1350g 、MgSO4 ・7H2 Oが330g、KNO3 が18g 、CaCl2 ・2H2 Oが7g、KH2 PO4 が3.5g、NaHCO3 が2g、Tris−HClが121g、ビタミンB12が0.25mg、チアミン−HClが30mg、ビオチンが0 .05mg、FeCl2 ・6H2 Oが138.5mg 、Na2 EDTAが930mg 、ZnCl2 が0 .2mg 、H3 BO3 が3mg 、CoCl2 ・6H2 Oが0 .075mg 、CuCl2 ・2H2 Oが0 .2mg 、MnCl2 ・4H2 Oが2mg 、(NH46 MoO24が1.85mgの割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )50リットルを、高さ2 m 、前後面の各幅0.5m、左右側面の各幅13cmのガラス製の縦型偏平水槽に入れ、培養温度を26℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %を含む空気を5 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度13mg/l の割合で接種し、水槽の前面片面に光強度75μE /m・s2 の白熱灯を照射し、培養して、50mg/l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度138 μE /m・s2 の白熱灯を照射し、培養して、220mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを7 .0 に調整して培養して、510mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、26g の乾燥藻体を得た。
【0028】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは1 .1g、DHAは0 .5gであった。
【0029】
〔実施例5〕
培地50リットルに対して、NaClが1200g 、MgSO4 ・7H2 Oが330g、KNO3 が15g 、CaCl2 ・2H2 Oが6g、KH2 PO4 が2.5g、NaHCO3 が1.5g、Tris−HClが110g、ビタミンB12が0.15mg、チアミン−HClが20mg、ビオチンが0 .05mg、FeCl2 ・6H2 Oが100mg 、Na2 EDTAが750mg 、ZnCl2 が0 .2mg 、H3 BO3 が3mg 、CoCl2 ・6H2 Oが0 .075mg 、CuCl2 ・2H2 Oが0 .2mg 、MnCl2 ・4H2 Oが2mg 、(NH46 MoO24が1.85mgの割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )50リットルを、高さ1.5m、前後面の各幅0.5m、左右側面の各幅7cm のガラス製の縦型偏平水槽に入れ、培養温度を10℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス0.5 %を含む空気を5 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度10mg/l の割合で接種し、水槽の前面片面に光強度75μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、50mg/l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度148 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、200mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを7 .1 に調整して培養して、507mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、24g の乾燥藻体を得た。
【0030】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは1 .1g、DHAは0 .6gであった。
【0031】
〔実施例6〕
培地50リットルに対して、NaClが1500g 、MgSO4 ・7H2 Oが350g、KNO3 が20g 、CaCl2 ・2H2 Oが9g、KH2 PO4 が4.5g、NaHCO3 が2.5g、Tris−HClが130g、ビタミンB12が0.35mg、チアミン−HClが30mg、ビオチンが0 .5mg 、FeCl2 ・6H2 Oが150mg 、Na2 EDTAが1250mg、ZnCl2 が1mg 、H3 BO3 が15mg、CoCl2 ・6H2 Oが0 .375mg 、CuCl2 ・2H2 Oが1mg 、MnCl2 ・4H2 Oが10mg、(NH46 MoO24が9.25mgの割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )50リットルを、高さ2.5m、前後面の各幅2m、左右側面の各幅16cmのアクリル製の縦型偏平水槽に入れ、培養温度を30℃とし、照射の時間を24時間/日として、炭酸ガス5 %を含む空気を7 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、水槽中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度40mg/l の割合で接種し、水槽の前面片面に光強度100 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、100mg /l となった後、第2工程として、水槽の前後の両面に、光強度100 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、220mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを7 .0 に調整して培養して、550mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、43g の乾燥藻体を得た。
【0032】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは1 .2g、DHAは0 .5gであった。
【0033】
〔実施例7〕
培地500 リットルに対して、NaClが13. 5kg 、MgSO4 ・7H2 Oが3.3kg 、KNO3 が180g、CaCl2 ・2H2 Oが70g 、KH2 PO4 が35g 、NaHCO3 が20g 、Tris−HClが1.21kg、ビタミンB12が2.5mg 、チアミン−HClが300mg 、ビオチンが0 .5mg 、FeCl2 ・6H2 Oが1385mg、Na2 EDTAが9.3g、ZnCl2 が2mg 、H3 BO3 が30mg、CoCl2 ・6H2 Oが0 .75mg、CuCl2 ・2H2 Oが2mg 、MnCl2 ・4H2 Oが20mg、(NH46 MoO24が18.5mgの割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )500 リットルを、直径1.1m、高さ0.8mの500リットル容積の円形ポリタンクに入れ、培養温度を26℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %を含む空気を5 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、円形ポリタンク中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度13mg/l の割合で接種し、円形ポリタンクの上方から光強度75μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、50mg/l となった後、第2工程として、円形ポリタンクの上方から光強度138 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、220mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを7 .0 に調整して培養して、510mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、260gの乾燥藻体を得た。
【0034】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは1 1g、DHAは5gであった。
【0035】
〔実施例8〕
培地2000リットルに対して、NaClが54Kg、MgSO4 ・7H2 Oが13.2Kg、KNO3 が720g、CaCl2 ・2H2 Oが300g、KH2 PO4 が140g、NaHCO3 が80g 、Tris−HClが4.82Kg、ビタミンB12が10mg、チアミン−HClが1.2g、ビオチンが2mg 、FeCl2 ・6H2 Oが5.538g、Na2 EDTAが37.3g 、ZnCl2 が8mg 、H3 BO3 が120mg 、CoCl2 ・6H2 Oが3mg 、CuCl2 ・2H2 Oが8mg 、MnCl2 ・4H2 Oが80mg、(NH46 MoO24が74mgの割合で含まれている無機液体培地(pH8 .0 )2000リットルを、縦10m、横3mの2トン容の強化プラスチック製レースウェイ培養タンクに入れ、培養温度を23℃とし、照射の時間を18時間/日として、炭酸ガス1 %を含む空気を7 l /min の割合で通気しつつ、第1工程として、培養タンク中の無機液体培地に、パブロバを重量乾燥藻体濃度10mg/l の割合で接種し、培養タンクの前面片面に光強度75μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、70mg/l となった後、第2工程として、培養タンクの前後の両面に、光強度150 μE /m・s2 の白色蛍光灯を照射し、培養して、220mg /l となった後、第3工程として、培養液のpHを6 .8 に調整して培養して、520mg /l となった後、培養処理を止めて、得られた培養液をシャープレス遠心分離機(15000 回/分)で分別して得た藻体を蒸留水で洗浄してから凍結乾燥して、1010g の乾燥藻体を得た。
【0036】
得られた乾燥藻体中のEPA量及びDHA量を実施例1と同様にして定量した結果、EPAは44g 、DHAは18g であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1〜3工程の各工程までそれぞれパブロア藻体を30日間培養した培養曲線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養槽中の無機液体培地に接種したパブロバ藻体に、光照射と、炭酸ガス含有空気を通気しつつ、第1工程として、培養槽に光を照射して、培養可能まで培養した後、この培養液に、第2工程として、培養槽に第1工程より強い光を照射して、培養可能まで培養した後、該培養液に第3工程として、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲内に調整して重量乾燥藻体濃度の増加が殆ど認められないまでに培養することを特徴とするイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸の生産方法。
【請求項2】
単細胞微細藻類を培養槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、パブロバ藻体を重量乾燥藻体濃度10〜40mg/l に接種して、培養槽に光強度75〜100 μE /m ・s2の光を照射しつつ、50〜100mg /l まで培養する第1工程と、この50〜100mg /l 濃度の培養液に、培養槽に光強度125 〜150 μE /m ・s2の光を照射しつつ、200 〜230mg /l まで培養する第2工程と、この200 〜230mg /l 濃度の培養液に、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲に調整して、500 〜550mg /l まで培養する第3工程とから成ることを特徴とするイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸の生産方法。
【請求項3】
単細胞微細藻類を培養槽中の無機液体培地に接種して、光照射しつつ、かつ、炭酸ガス含有空気を通気しつつ培養する方法において、パブロバ藻体を重量乾燥藻体濃度10〜40mg/l に接種して、培養槽の片側から光強度75〜100 μE /m ・s2の光を照射しつつ、50〜100mg /l まで培養する第1工程と、この50〜100mg /l 濃度の培養液に、培養槽の両側から光強度125 〜150 μE /m ・s2の光を照射しつつ、200 〜230mg /l まで培養する第2工程と、この200 〜230mg /l 濃度の培養液に、培養液のpHを6 .8 〜7 .2 の範囲に調整して、500 〜550mg /l まで培養する第3工程とから成ることを特徴とするイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸の生産方法。
【請求項4】
パブロバ藻体が、NP−20070122(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター、受領番号FERM AP−21170)である請求項1〜3のいずれかに記載のイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸の生産方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−182962(P2008−182962A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19483(P2007−19483)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(399127603)株式会社日健総本社 (19)
【Fターム(参考)】