説明

イノシトールポリリン酸2−キナーゼ遺伝子およびその使用

本発明は、フィチン酸生合成経路において新規に同定されたポリヌクレオチドおよびポリペプチド、それらの変異体および誘導体、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、変異体、誘導体およびアンタゴニストを作製する方法に関する。特に、本発明は、特にトウモロコシまたはダイズ動物飼料において、フィチン酸を低減し、かつ/または非フィチン酸リンを増加させるようにフィチン酸生合成を調節するための、イノシトールポリリン酸2−キナーゼ(IPP2−K)をコードするポリヌクレオチド、およびそのような活性を示すポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年9月9日付で出願された米国仮出願第60/608,244号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、植物分子生物学の分野に関する。詳しくは、本発明は、植物におけるフィチン酸生合成経路に関与する酵素イノシトールポリリン酸2−キナーゼ(IPP2−K)をコードする遺伝子の同定および使用、ならびに植物種子およびそのような種子を含有する食品または飼料中のフィチン酸レベルを低減するため、かつ/または非フィチン酸リンのレベルを増大させるためのこれらの遺伝子およびその突然変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
動物栄養中のリンの役割については十分に認知されている。動物体内のリンの80%は、動物の構造を形作っている骨に見られる。動物内のリンの20%は軟組織に見出すことができ、そこでリンはDNA、RNA、リン脂質および数種のビタミンBの合成および活性を含む無数の生化学反応に関与している。
【0004】
リンは動物の健康に重要なものであるが、飼料中の全てのリンが生体利用可能なわけではない。一般にフィチン酸として知られている、ミオイノシトール1、2、3、4、5、6−ヘキサ−キス−リン酸は、多くの植物種子および根や塊茎などの栄養組織に豊富な分子である。フィチン酸塩は、種子中でのリンの主要な貯蔵形態であり、一般に、種子の総リン(P)の65%〜80%を占める。非反芻動物が種子ベースの食餌を摂取すると、摂取されたフィチン酸は消化管内で栄養的に重要な数種のミネラルとの塩を形成する。これらの塩が排泄されてしまうと、リンおよびミネラル双方の保持と利用(すなわち、バイオアベイラビリティ)が低下する。その結果、このような種子を摂取したヒトも動物もミネラル欠乏になる。さらに、動物性排泄物中のフィチン酸結合リンは地表水および地下水の汚染の原因ともなる。
【0005】
種子のフィチン酸含有が食餌、リンおよびミネラルの保持、ならびに環境にもたらす悪影響を軽減するためにいくつかのアプローチが提案されている。アプローチには、収穫後の介入による食餌中のフィチン酸の低減、および種子のフィチン酸含量の遺伝的低減が含まれる。フィチン酸の少ない種子は、米国特許第5,689,054号(トウモロコシ)および米国特許第6,111,168号(ダイズ)で特許請求されている。ミオイノシトール1−リン酸シンターゼの操作によるフィチン酸塩レベルの変更が、WO00/73473、WO99/05298、米国特許第6,197,561号および米国特許第6,291,224号で記載されている。オノニトールへのイノシトールメチルトランスフェラーゼのフィチン酸塩レベルのシャンティングによるフィチン酸塩レベルの変更が、WO99/37786に記載されている。米国特許第6,197,561号は、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ、ミオイノシトール1,3,4−三リン酸5/6−キナーゼ、ミオイノシトールモノホスファターゼ−3、イノシトールポリリン酸5−ホスファターゼ、D−ミオイノシトール−3−リン酸シンターゼ、D−ミオイノシトール三リン酸3−キナーゼ、ミオイノシトールトランスポーター、トウモロコシフィターゼ、ホスファチジルイノシトールトランスファータンパク質、ホスファチジロ(phosphatidylo)イノシトール−4−リン酸−5−キナーゼ、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼ、ミオイノシトールモノホスファターゼ−1、ホスファチジルイノシトール4−キナーゼ、ホスファチジルイノシトール(4,5)ビス−リン酸5−ホスファターゼ、ホスファチジルイノシトールシンターゼをはじめとする、いくつかのさらなる酵素の変更によりフィチン酸塩レベルを変化させることを提案している。また、フィチン酸塩を分解し得る酵素フィターゼの植物/種子発現も、米国特許第6,399,861号、米国特許第6,303,766号、米国特許第5,994,628号、米国特許第5,714,474号および米国特許第5,543,576号に開示されている。米国特許出願第2003/0009011号(WO02/059324)には、イノシトールポリリン酸キナーゼ遺伝子と、フィチン酸塩レベルを調節するための使用が開示され、さらに、他のイノシトールポリリン酸キナーゼ遺伝子を同定するためのコンセンサス配列が提案されている。米国特許出願第2003/0079247号(WO03/027243)には、1,3,4−トリスリン酸5/6キナーゼ遺伝子ファミリーとして記載されている、さらなるイノシトールポリリン酸キナーゼ遺伝子が開示されている。上記米国特許第5,689,054号に記載されているlpa2突然変異体は、この遺伝子ファミリーのメンバーに突然変異を含む(また、Plant Physiol. 2003 Feb;131(2):507-15も参照)。
【0006】
これらのアプローチにも関わらず、植物、特に、トウモロコシの栄養素含量を、フィチン酸のレベルを低減し、非フィチン酸リンのレベルを増大させることによって改良する必要がなお存在している。
【発明の開示】
【0007】
IPP2−K酵素は、フィチン酸の形成をもたらす複数の工程を触媒する。この酵素は例えばATP+イノシトール1,4,5,6−テトラキスリン酸→ADP+イノシトールペンタキスリン酸、およびATP+イノシトール1,3,4,5,6−ペンタキスリン酸→ADP+イノシトール1,2,3,4,5,6−ヘキサンリン酸の反応を触媒する。さらにこの酵素は、ATP+イノシトール1,4,6−三リン酸→ADP+イノシトール1,2,6−三リン酸の反応を触媒する。発達中の植物種子でこのIPP2−K酵素の活性が低いとフィチン酸合成が妨げられ、それにより、種子中のフィチン酸レベルが低くなり、その種子を摂取した動物にとってリンが代謝上より利用しやすくなる。本発明は、このIPP2−K酵素の全部または一部をコードする核酸配列と、植物細胞におけるフィチン酸生合成経路を操作するための手段を提供することにより、リン酸塩のバイオアベイラビリティを改良する必要に取り組むものである。
【0008】
本発明によれば、(a)配列番号1を含むポリヌクレオチド;(b)配列番号1と少なくとも65%の配列同一性を含むポリヌクレオチド、ここで、この配列同一性%はその全コード領域に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される;(c)配列番号1と少なくとも46%の配列同一性を含むポリヌクレオチド、ここで、この配列同一性%はその全コード領域に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定されたものである;(d)配列番号2を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(e)配列番号1および3に基づくプライマーを用いて植物核酸から増幅される核酸の配列を含むポリヌクレオチド;(f)ストリンジェント条件下で配列番号1のポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ここで、このハイブリダイゼーション条件は0.1×SSC中、60℃での洗浄工程を含む;(g)トウモロコシイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするポリヌクレオチド;(h)植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするポリヌクレオチド;および(i)(a)〜(h)のポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドからなる群から選択されるメンバーを含んでなる単離されたポリヌクレオチドが提供される。
【0009】
本発明はまた、(a)配列番号2の少なくとも25個の隣接するアミノ酸を含むポリペプチド;(b)配列番号2の全長に対して少なくとも45%の配列同一性を含むポリペプチド、ここで、この配列同一性%は全配列長に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される;(c)請求項1の核酸によりコードされているポリペプチド;(d)配列番号1の核酸によりコードされているポリペプチド;および(e)配列番号2で示される配列を有するポリペプチドからなる群から選択されるメンバーを含んでなる単離されたタンパク質に関する。
【0010】
本発明のさらなる側面は、配列番号2と少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、イノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性を有する、単離された植物ポリペプチドである。
【0011】
本発明のさらに別の側面は、植物組織中のイノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性レベルを妨げる方法であり、その方法は、(a)植物組織に対して突然変異誘発を行うこと;(b)突然変異誘発を受けた植物組織またはその後代からDNAサンプルを得ること;(c)DNAサンプルを、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子の損傷に関してアッセイすることを含む。
【0012】
さらに、本発明は、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に人工的に誘発された損傷を含む、トウモロコシ種子に関する。
【0013】
さらに、本発明は、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に人工的に誘発された損傷を含む、カノーラ(Brassica napus)種子に関する。
【0014】
さらに別の実施態様において、本発明は、動物飼料中のフィチン酸レベルを低減する方法を対象とし、その方法は、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に損傷を含む植物から動物飼料を生産することを含み、その動物飼料の利用可能なフィチン酸塩レベルが低い。
【0015】
本発明はまた、動物性排泄物中のリンレベルを低減する方法に関し、その方法は、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に損傷を含む植物から動物飼料を調製することを含む。
【0016】
さらに、本発明は、イノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性が変更されており、その種の親生殖質よりも低いフィチン酸含量を特徴とする、穀類植物種の非致死的突然変異種子を包含する。
【0017】
さらに、本発明は、配列番号2を含んでなるポリペプチドを免疫原として使用することにより産生された精製抗体に関する。
【0018】
また、本発明は、(a)(1)イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子の一本鎖の対応する部分と実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列(ここで、このイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子は低ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする)、(2)イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子によりコードされるRNA配列の対応する部分と実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列と、(b)そのアンチセンスヌクレオチド配列がそれが形質転換された植物細胞内で発現されるように、アンチセンスヌクレオチド配列と作動可能なように連結された調節配列とを含んでなる、植物細胞の形質転換用ベクターに関する。
【0019】
本発明はさらに、植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼ遺伝子のRNA転写物の対応する部分と実質的に相補的なRNA分子をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチド(該植物遺伝子は低ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする)に関することも述べておかなければならない。
【0020】
本発明のさらに別の側面は、ノックアウトされた遺伝子に連関している所望の形質を有する突然変異植物を作出する方法であり、その方法は、植物種子を収集すること;その植物種子収集物を、EMSなどの化学的突然変異誘発物質、またはUV、γ線、X線および高速中性子からなる群から選択される照射線により処理すること;および(c)所望の形質を有する突然変異植物を選択することを含む。
【0021】
本発明のもう1つの側面は、DAXDWXYXXEGXXNLXLXYXGSSP、VEIKXKCGFLXXSXXIXXXNXXKXXXXRXXMXQXCKXXXXXISXXSEYXPLDLFSGSKXXXXXAIKXXXXTPQNXXXXXXGSLXXGG、ISXXSEYXPLDLFSGSK、LXXLLXXQKLDXXIEGXIHXYY、及びLIXXTAXDCSXMISFからなる群から選択される少なくとも1つのモチーフを含んでなる、単離された植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼタンパク質である。
【0022】
配列番号1は、DAS5XH751種子における、トウモロコシIPP2−KをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号2は、配列番号1のヌクレオチド配列に由来するIPP2−Kの推定アミノ酸配列である。
【0024】
配列番号3は、トウモロコシ近交系5XH751のIPP2−KをコードするゲノムDNAのヌクレオチド配列である。
【0025】
ここで、本発明の理解を助けるために定義を示す。単位、接頭辞、および記号はSI認証形式で表すことができる。特に断りのない限り、それぞれ、核酸は左から右へ、5’から3’方向に記載され、アミノ酸配列は左から右へ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に記載される。本明細書に挙げられている数的範囲は、その範囲を定義している数字も含み、定義された範囲内の各整数を含む。本明細書においてアミノ酸は、一般に知られている三文字記号か、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission. Nucleotidesにより奨励されている一文字記号のいずれかにより示すことができ、同様に、一般に受け入れられている一文字記号により示すこともできる。本明細書で用いるソフトウエア用語、電気用語、および電子工学用語は、The New IEEE Standard Dictionary of Electrical and Electronics(1993年、第5版)で定義されている通りである。以下で定義する用語は本明細書全体を見れば、より詳しく定義される。
【0026】
「アンチセンスRNA」とは、標的一次転写物またはmRNAの全部または一部と相補的であり、かつ、標的遺伝子の発現を遮断するRNA転写物を指す(引用文献により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,107,065号)。アンチセンスRNAのこの相補性は、特異的遺伝子転写物の任意の部分、すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはコード配列とのものであってもよい。「機能的RNA」とは、センスRNA、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、RNAi、または翻訳されなくてもよいが、細胞プロセスに作用を有する他のRNAを指す。
【0027】
「相補的DNA」(cDNA)とは、mRNA鋳型から逆転写酵素により形成され得る一本鎖DNA分子を指す。一般に、mRNAの一部に相補的なプライマーは、逆転写の誘導に用いられる。また、当業者は、mRNA分子に由来する二本鎖DNA分子を指して「cDNA」の用語も用いる。
【0028】
「コンティグ」とは、1つの隣接するヌクレオチド配列を形成するための、重複する核酸配列の集合体を指す。例えば、いくつかのDNA配列を比較およびアラインして、共通または重複する領域を特定することができる。次に、これらの個々の配列を、1つの隣接するヌクレオチド配列へと組み立てることができる。
【0029】
「発現」とは、本発明の核酸断片に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写と安定な蓄積を指す。発現とはまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳も指す。「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制し得るアンチセンスRNA転写物の産生を指す。「過剰発現」とは、正常な生物または非形質転換生物での産生レベルを超える、トランスジェニック生物における、ある遺伝子産物の産生を指す。「同時抑制」とは、同一または実質的に同等の外来または内因性遺伝子(引用文献により本明細書中に組み込まれる米国特許第5,231,020号)の発現を抑制し得るセンスRNA転写物の産生を指す。
【0030】
ジンクフィンガー(ZF)認識モチーフを用いるDNA結合タンパク質は、特定のDNA配列を認識および改変するか、または発現を変化させるようにデザインすることができる。このような操作型ジンクフィンガー(ZF)を用い、それらをヌクレアーゼと作動可能なように連結させれば(ZFN)、その天然環境で遺伝子を直接変化させることができる。ZF結合により媒介される部位選択的または部位特異的ヌクレアーゼ切断は、発現または活性に変化をもたらし得る。標的遺伝子における変化としては、相同組換えによる、デザインされたDNAとの置換、挿入または欠失からの遺伝子破壊が挙げられる。ZFNを媒介とするゲノム変化の例は、Biol Chem. 1999 Jul-Aug;380(7-8):841-848; Molecular and Cellular Biology 21(1): 289-297, 2001; Genetics 161: 1169-1175, 2002に見られる。これに対し、ZFは、遺伝子とトランスで相互作用する転写因子として機能するようにデザインされた場合、発現および活性を間接的に調節することができる。このようなZFPは転写を増強または低下させるよう操作することができる(参照文献)。ZFP発現の調節は構成型、組織特異的、時間特異的または誘導型であり得る。ZFPが媒介する発現変化は、Proc. Nat. Acad. Sci. 99(20): 13290-13295, 2002; Proc. Nat. Acad. Sci. 99(20): 13296-13301, 2002; Plant Cell Physiol. 43(12): 1465-1472, 2002; Curr. Opin. Plant Biol. 6: 163-168, 2003の総説に見られる。
【0031】
「遺伝子」とは、コード配列の前の調節配列(5’非コード配列)およびコード配列の後の調節配列(3’非コード配列)を含む特定のタンパク質を発現する核酸断片を指す。「天然遺伝子」とは、その固有の調節配列を伴って自然界に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、自然界に一緒に見られることのない調節配列とコード配列とを含む、天然遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。よって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列とコード配列とを含むか、または同じ供給源に由来するが、自然界で見られるものとは違った様式で配列されている調節配列とコード配列とを含み得る。「内在遺伝子」とは、生物のゲノムにおいてその本来の場所にある天然遺伝子を指す。内在遺伝子の付加的コピーを宿主生物の種々の染色体座に再導入することで、関連性の変化および発現レベルの変化をもたらすことができる。「外来」遺伝子とは、その宿主生物には本来見られないが、遺伝子導入により宿主生物に導入される遺伝子を指す。非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含み得る。「導入遺伝子」とは、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0032】
「ゲノムDNA」とは染色体DNAを指し、イントロンを含み得る。イントロンとは介在配列である。介在配列は、遺伝子内のDNAの非コード配列であり、この配列は核内でヘテロ核RNA(hnRNA)へと転写された後、RNAスプライシングにより除去されて成熟mRNAをもたらし、この成熟mRNAが次に細胞質内で翻訳される。イントロン末端のこの領域は一般に自己相補的であり、hnRNAでは自然にヘアピン構造が形成される。
【0033】
「イノシトールポリリン酸2−キナーゼポリヌクレオチド」または「IPP2−Kポリヌクレオチド」とは、少なくともイノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性を備えたポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または宿主細胞内でIPP2−K mRNAまたはタンパク質の発現を調節し得るポリヌクレオチドを指す。またこの用語には、上述の活性のいずれか1つを備えた断片、変異体、ホモログ、対立遺伝子または前駆体(例えば、プレタンパク質またはプロタンパク質)が含まれる。
【0034】
「IPP2−K」とは、核酸もしくはポリペプチドに関するイノシトールポリリン酸2−キナーゼ、またはその関連の機能活性を指す。本発明のIPP2−K酵素は広範な基質特異性を有し、リン酸供与体としてアデノシン三リン酸(ATP)を用い、限定されるものではないが、イノシトール三リン酸、イノシトールテトラキスリン酸およびイノシトールペンタキスリン酸をはじめとする数種のイノシトールリン酸種をリン酸化し、アデノシン二リン酸(ADP)とリン酸化されたイノシトールリン酸を生じる。
【0035】
「単離」とは、(1)天然環境で見られる場合に、本来、その材料に付随している、またはその材料と相互作用する成分を実質的に、または本質的に含まないか、あるいは(2)その材料がその天然環境にあっても、意図的な人的介入により組成が変更されている、かつ/または細胞内の、その材料本来の場所以外の場所に存在している、核酸またはタンパク質などの材料を指す。
【0036】
「損傷」とは、野生型植物核酸に対する核酸の任意の分子変化を指す。例えば、損傷は、核酸配列の欠失、逆位、挿入、重複、転換、転位または再配列であり得る。
【0037】
「モチーフ」とは、より長い配列の一部を含む核酸またはアミノ酸の保存されている配列の短い領域を指す。
【0038】
「非反芻動物」とは、食道、噴門、胃底および幽門領域に分かれている単純な胃を有する動物を意味する。非反芻動物とはさらに、機能的な第一胃を持たない動物種も意味する。第一胃とは、飼料/食品が浸り、消化管を通過する前に微生物による消化を受ける消化系の一区画である。この現象は非反芻動物には見られない。非反芻動物には、限定されるものではないが、ヒト、ブタ、アヒル、ネコおよびイヌが含まれる。
【0039】
「フィチン酸」とは、ミオイノシトール四リン酸、ミオイノシトール五リン酸、ミオイノシトール六リン酸およびそれらの誘導体(5−ピロリン酸−イノシトール(1,3,4,6)テトラキスリン酸、5−ピロリン酸−イノシトール(1,2,3,4,6)ペンタキスリン酸および5,6−ビス−ピロリン酸−イノシトール(1,2,3,4)テトラキスリン酸など)を指す。陽イオンを伴う塩として、フィチン酸は「フィチン酸塩」となる。
【0040】
「植物」とは、植物、ならびに、限定されるものではないが、葉、茎、根、花、花粉、および種子などの植物細胞および植物組織をはじめとする植物部分を含む。本発明で使用可能な植物種は一般に、幅広く、被子植物(単子葉植物および双子葉植物)、裸子植物、シダ類および多細胞藻類をはじめとする、突然変異誘発を受けやすい高等植物および下等植物種である。
【0041】
「ポリヌクレオチド」とは任意の核酸を指し、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または多鎖ポリマーを含む。核酸にはまた、断片および修飾ヌクレオチドも含まれる。よって、本明細書において、「核酸」および「ポリヌクレオチド」は互換的に用いられる。
【0042】
「プロモーター」とは一般に、RNAを生成するために構造遺伝子を転写させるDNA配列を指す。一般に、プロモーターは、遺伝子の500塩基対上流の領域に転写開始部位に近接して存在する。プロモーターが誘導プロモーターであれば、外因性のまたは内因性の誘導因子に応答して転写速度を上昇または低下させる。これに対し、プロモーターが構成プロモーターであれば、誘導因子により転写速度が調節される程度はより低い。
【0043】
「転写調節領域」および「調節領域」とは、遺伝子転写を調節するDNAの節を指す。調節領域は、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサーおよびホルモン応答エレメントをはじめとする、種々のシス作用エレメントを含み得る。また、イントロンおよび5’UTRも転写に影響を及ぼすことが分かっているので、転写調節領域はこのような配列を含み得る。
【0044】
「実質的に同等」とは、1以上のヌクレオチド塩基の変化が1以上のアミノ酸核酸の置換をもたらすが、そのDNA配列によりコードされるタンパク質の特性には影響を及ぼさない核酸断片を指す。
【0045】
「実質的に同等」とはまた、1以上のヌクレオチド塩基の変化がその核酸断片の、アンチセンスまたは同時抑制技術により遺伝子発現の変化を媒介する能力には影響を及ぼさない核酸断片も指す。「実質的に同等」とはまた、アンチセンスもしくは同時抑制技術による遺伝子発現の変化またはその結果生じるタンパク質分子の機能的特性の変化を媒介する能力とともに、生じる転写物の機能的特性に実質的に影響を及ぼさない1以上のヌクレオチドの欠失または挿入などの、本発明の核酸断片の修飾も指す。よって、本発明は、具体例としての配列より多くのものを包含すると理解される。
【0046】
例えば、遺伝子発現のアンチセンス抑制および同時抑制は、遺伝子の全コード領域より短い核酸断片を用い、かつ、抑制される遺伝子と100%の配列同一性を持つことのない核酸断片により達成され得ることは当技術分野で周知である。さらに、ある位置に化学的に等価なアミノ酸の生成をもたらすが、コードされるタンパク質の機能的特性には作用しない遺伝子の変化が当技術分野で周知である。例えば、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンのコドンは、グリシンなどの別の疎水性のより低い残基、またはバリン、ロイシンもしくはイソロイシンなどの疎水性のより高い残基をコードするコドンにより置換可能である。同様に、ある負電荷残基の別のものへの置換(例えば、アスパラギン酸とグルタミン酸の置換)、またはある正電荷残基の別のものへの置換(例えば、リシンとアルギニンの置換)もまた、機能的に等価な産物を生成するものと予想することができる。タンパク質分子のN末端およびC末端部分に変化をもたらすヌクレオチド変異はそのタンパク質の活性を変化させるとは考えられない。提案される改変も各々、コードされる産物の生物活性の保持が特定される限り、十分、当業者の範囲内である。
【0047】
さらに、実質的に同等な核酸断片もまた、ストリンジェント条件(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃)下で、本明細書に開示される核酸断片とハイブリダイズするそれらの能力を特徴とする。
【0048】
本発明の実質的に同等な核酸断片はまた、当業者が一般に用いるアルゴリズムにより決定されるような、それらがコードするアミノ酸配列の、本明細書で開示されるアミノ酸配列の類似性%も特徴とし得る。そのヌクレオチド配列が、本明細書に示されるアミノ酸配列と80%類似しているアミノ酸配列をコードする核酸断片が好ましい。より好ましい核酸断片は、本明細書で示されるアミノ酸配列と90%類似しているアミノ酸配列をコードする。本明細書で示されるアミノ酸配列と90%類似しているアミノ酸をコードする核酸断片が最も好ましい。配列のアライメントおよび類似性%の算出は、GCGパッケージ(Genetics Computer Group, Madison, WI)からのプログラムを用いて行うことができる。配列のマルチプルアライメントは、アライメントのClustal法(Higgins, D. G. and Sharp, P. M. (1989) CABIOS. 5:151-153)をデフォルトパラメーター(ギャップペナルティ=10、ギャップレングスペナルティ=10)を用いて行った(以下、Clustalアルゴリズム)。Clustal法を用いたペアワイズアライメントのデフォルトパラメーターは、Kタプル1、ギャップペナルティ=3、ウィンドウ=5およびダイアゴナルセーブド=5であった。
【0049】
アミノ酸またはヌクレオチド配列の「実質的部分」とは、当業者の手作業による配列評価か、またはBLAST(Basic Local Alignment Search Tool; Altschul, S. F., et al., (1993) J. Mol. Biol. 215:403-410; www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)などのアルゴリズムを用いたコンピューター自動配列比較および同定により、ポリペプチドまたは遺伝子の推定を与えるのに十分な、あるポリペプチドのアミノ酸配列、またはある遺伝子のヌクレオチド配列を指す。一般に、あるポリペプチドまたは核酸配列を既知のタンパク質または遺伝子と相同であると推定するには、10以上の隣接するアミノ酸または30以上のヌクレオチドが必要である。さらに、ヌクレオチド配列に関しては、遺伝子同定(例えば、サザンハイブリダイゼーション)および単離(例えば、細菌コロニーまたはバクテリオファージプラークのin situハイブリダイゼーション)の配列依存的方法において、20〜30の隣接するヌクレオチドを含んでなる遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを用い得る。さらに、12〜15塩基の短いオリゴヌクレオチドをPCRにおいて増幅プライマーとして用い、それらのプライマーを含んでなる特定の核酸断片を得ることができる。よって、ヌクレオチド配列の「実質的部分」は、その配列を含んでなる核酸断片の特異的同定および/または単離を与えるのに十分な配列を含む。本明細書では、1以上の特定のタンパク質をコードする部分的または完全なアミノ酸およびヌクレオチド配列を教示する。本明細書に報告するような配列の利点をもって、今や、当業者は、当業者に公知の目的のため、開示される配列の全部または実質的部分を使用することができる。よって、本発明は、付属の配列表に示されている完全配列、ならびに上記で定義したような配列の実質的部分を含む。
【0050】
「変異体」とは、実質的に同等な配列を指す。一般に、本発明の核酸配列変異体は、天然ヌクレオチド配列と少なくとも46%、48%、50%、52%、53%、55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。ここで、この%配列同一性は全配列に対するものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される。一般に、本発明のポリペプチド配列変異体は天然タンパク質と少なくとも約60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性有する。ここで、この%配列同一性は全配列に対するものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される。GAPはNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48:443-453, 1970)のアルゴリズムを用いて、一致の数を最大にし、かつ、ギャップの数を最小にする、2つの完全配列のアライメントを見つけるものである。
【0051】
「変異体」はまた、本発明の範囲内に含まれ、場合により本発明の生物機能に必要なモチーフと類似性が高いアミノ酸配列を含む実質的に同等な配列も指す。一般に、本発明のポリペプチド配列変異体は、定義されたモチーフにおいて保存されているアミノ酸残基と少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有する。
【0052】
本明細書で用いる標準的な組換えDNA技術および分子クローニング技術は当技術分野で周知のものであり、Sambrook, J. & Russell, D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory Press. Cold Spring Harbor, NY 2001 (以下、「Sambrook」)にさらに詳しく記載されている。
【0053】
本発明に含まれる変異体は、コードされている配列の1つのアミノ酸または低いパーセンテージのアミノ酸を変更、付加、または欠失させる、その核酸またはポリペプチド配列に対する個々の置換、欠失または付加を含み得る。「保存的修飾変異体」とは、あるアミノ酸と化学的に同等なアミノ酸との置換をもたらす変異である。核酸が合成により調製または変更される場合、意図する宿主の既知のコドン選択性を利用することができる。
【0054】
本発明の核酸断片を用いれば、同じ植物種または他の植物種から、相同なタンパク質をコードするcDNAおよび遺伝子を単離することができる。配列依存的プロトコールを用いた相同遺伝子の単離は、当技術分野で周知である。配列依存的プロトコールの例は、限定されるものではないが、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸増幅技術の様々な使用(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応)によって例示されるような、DNAおよびRNA増幅法が挙げられる。
【0055】
例えば、cDNAまたはゲノムDNAのいずれかとしての、他のイノシトール三リン酸キナーゼ、イノシトールテトラキスリン酸キナーゼ、イノシトールペンタキスリン酸キナーゼ、またはイノシトールポリリン酸2−キナーゼ遺伝子をコードする遺伝子は、当業者に周知の方法論を用い、本核酸断片の全部または一部をDNAハイブリダイゼーションプローブとして用いて、所望のいずれかの植物からライブラリーをスクリーニングすることにより、直接単離することができる。本核酸配列に基づく特異的オリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野で公知の方法(Sambrook)によりデザインおよび合成することができる。さらにまた、全配列を用い、ランダムプライマーDNA標識、ニックトランスレーション、もしくは末端標識技術などの当業者に公知の方法によりDNAプローブを、または利用可能なin vitro転写系を用いてRNAプローブを直接合成することもできる。
【0056】
さらに、本配列の一部または全部を増幅するために特異的プライマーをデザインおよび使用することもできる。得られる増幅産物は増幅反応中に標識することもできるし、または増幅反応後に標識することもでき、これらをプローブとして用い、適当なストリンジェンシー条件下で、全長cDNAまたはゲノム断片を単離する。
【0057】
さらに、本核酸断片の2つのショートセグメントをポリメラーゼ連鎖反応プロトコールで用い、DNAまたはRNA由来の相同遺伝子をコードするより長い核酸断片を増幅することもできる。また、ポリメラーゼ連鎖反応は、一方のプライマーの配列が本核酸断片に由来し、他方のプライマーの配列が、植物遺伝子をコードするmRNA前駆体のポリアデニル酸トラクトから3’末端を利用する、クローニングされた核酸断片のライブラリーに対して行ってもよい。あるいは、第二のプライマー配列はクローニングベクターに由来する配列に基づくものであってもよい。例えば、当業者ならば、RACEプロトコール(Frohman et al, (1988) PNAS USA 85:8998)に従い、PCRを用いて、転写物のある一点と3’または5’末端の間の領域のコピーを増幅することにより、cDNAを作製することができる。本配列から3’方向および5’方向のプライマーをデザインすることができる。市販の3’RACEまたは5’RACE系(Invitrogen, Carlsbad CA)を用い、特異的3’または5’cDNA断片を単離することができる(Ohara et al., (1989) PNAS USA 86:5673; Loh et al., (1989) Science 243:217)。3’および5’RACE法によって生じる産物を組合せ、全長cDNAを作出することができる(Frohman, M. A. and Martin, G. R., (1989) Techniques 1 :165)。
【0058】
本ヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列が利用できれば、cDNA発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングの助けとなる。本アミノ酸配列の一部に相当する合成ペプチドを合成することもできる。これらのペプチドを用いて動物を免疫すれば、それらのアミノ酸配列を含んでなるペプチドまたはタンパク質に対して特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を作製することができる。次に、これらの抗体を用いてcDNA発現ライブラリーをスクリーニングすることができ、対象とする全長cDNAクローンを単離することができる(Lerner, R. A. (1984) Adv. Immunol. 36:1 ; Sambrook)。
【0059】
本発明の核酸断片を用いれば、開示されるイノシトールポリリン酸2−キナーゼ酵素が通常よりも低いレベルで存在するトランスジェニック植物を作出することができる。
【0060】
いくつかの適用に関しては、植物においてイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子の発現を低下または消失させることが望ましい。これを達成するには、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子または遺伝子断片を植物のプロモーター配列に連結することにより、本フィチン酸生合成酵素の同時抑制のためにデザインされたキメラ遺伝子を構築することができる。あるいは、植物プロモーター配列に逆向きに遺伝子または遺伝子断片を作動可能なように連結することにより、本核酸断片の全部または一部に対するアンチセンスRNAを発現するようにデザインしたキメラ遺伝子を構築することもできる。この同時抑制またはアンチセンスキメラ遺伝子のいずれかを、対応する内在遺伝子の発現が低下または消失される形質転換によって植物に導入することができる。
【0061】
遺伝子ノックダウンを達成するための別法としては、RNA干渉(RNAi)および転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)の使用を含む[Fraser et al. (2000), Nature, 408,325-330; Gonczy et al (2000), Nature, 408(331-336)]。これらの生物の細胞に二本鎖RNA(dsRNA)を導入すると、相同な遺伝子転写物の配列特異的分解が起こる。長い二本鎖RNA分子は、内在性のリボヌクレアーゼDicerの作用により、小さな21〜23ヌクレオチド干渉RNA(siRNA)へと減少される(Bernstein et al. (2001), Nature, 409,363-366; Grishok et al. (2000), Science, 287 (5462), 2494-7; Zamore et al. (2000), Cell, 101(1), 25-33; Knight, S. W. and B. L. Bass. (2001), Science, 293(5538), 2269-2271)。
【0062】
本イノシトールポリリン酸2−キナーゼ(またはその一部)は、異種宿主細胞、特に微生物宿主の細胞で産生させることもでき、これを用いて当業者に周知の方法によってこれらのタンパク質に対する抗体を作製することができる。これらの抗体は、細胞内にてin situで、または細胞抽出物にてin vitroでイノシトールポリリン酸2−キナーゼを検出するのに有用である。本イノシトールポリリン酸2−キナーゼの産生のために好ましい異種宿主細胞は微生物宿主である。微生物発現系および外来タンパク質の高レベル発現をもたらす調節配列を含む発現ベクターは当業者に周知のものである。これらのいずれかを用い、本イノシトールポリリン酸2−キナーゼを産生するためのキメラ遺伝子を構築することができる。次に、このキメラ遺伝子を形質転換により適当な微生物に導入し、コードされているフィチン酸生合成酵素の高レベル発現をもたらすことができる。
【0063】
本発明の単離された核酸は、(a)標準的な組換え法、(b)合成技術、またはその組合せを用いて作出することができる。いくつかの実施態様では、本発明のポリヌクレオチドは単子葉植物または双子葉植物からクローニング、増幅、またはそうでなければ構築することができる。単子葉植物の典型例としては、トウモロコシ、ソルガム、オオムギ、コムギ、雑穀、イネ、またはシバがある。典型的な双子葉植物としては、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリ、カノーラ、アルファルファ、バレイショ、またはカッサバが挙げられる。
【0064】
本発明に含まれる機能的断片を、ストリンジェント条件下で選択的にハイブリダイズするプライマーを用いて得ることができる。プライマーは一般に少なくとも12塩基長であり、200塩基といった大きなものであってもよいが、15〜75塩基が一般的であり、15〜50塩基の場合が多い。機能的断片は、制限分析、サザン分析、プライマー伸張分析、PCRおよびDNA配列分析などの様々な技術を用いて同定することができる。
【0065】
本発明は、同一のアミノ酸配列をコードする複数のポリヌクレオチドを含む。遺伝コードの縮重は、例えば、本発明のポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体と選択的にハイブリダイズさせて、それを検出するのに使用可能な「サイレント変異」を可能にする。さらに、本発明は、対立遺伝子変異体を含んでなる単離された核酸を含む。本明細書において「対立遺伝子」とは、同じ遺伝子の関連核酸を指す。
【0066】
本発明に含まれる核酸の変異体は、例えば、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発、リンカー走査突然変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いた突然変異誘発などにより得ることができる。例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Brent et al, Eds., Wiley and Sons, New York (2003) (以下、Brent)。また、一般に、McPherson (ed.), DIRECTED MUTAGENESIS: A Practical Approach, (IRL Press, 1991)も参照。このように本発明はまた、本発明の配列と実質的な配列類似性を有するヌクレオチド配列を含んでなるDNA分子も包含する。
【0067】
特定の核酸配列に関し、保存的修飾変異体とは、同一のアミノ酸配列またはそのアミノ酸配列の保存的修飾変異体をコードする核酸を指す。遺伝コードの縮重のため、機能的に同一な核酸は所与のタンパク質のいずれかをコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。よって、あるコドンによってアラニンが指定されている場所はどこでも、コードされているポリペプチドを変化させずに、記載されている対応コドンのいずれに変更することもできる。このような核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的修飾変異体の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のどの核酸配列も、遺伝コードを参照し、その核酸の可能性のある全てのサイレント変異を表す。当業者ならば、核酸の各コドン(通常、メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンに対する唯一のコドンであるUGGは除き)は、機能的に同一の分子をもたらすように修飾することができることを認識している。よって、本発明のポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載されている各ポリペプチド配列に内包され、本特許請求発明の範囲内にある。
【0068】
アミノ酸配列に関して、当業者であれば、コードされている配列の1つのアミノ酸または低いパーセンテージのアミノ酸を変更、付加、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、その変更があるアミノ酸と化学的に同等なアミノ酸との置換をもたらす「保存的修飾変異体」であることを認識している。1〜50からなる整数群から選択される任意の数のアミノ酸残基は、このように変更することができる。よって、例えば、1、2、3、14、25、37、45または50の変更を行うことができる。保存的修飾変異体は一般に、それらが由来する非修飾ポリペプチド配列と同等の生物活性をもたらす。例えば、基質特異性、酵素活性、またはリガンド/受容体結合は、一般に、その天然基質に対する天然タンパク質の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%である。機能的に同等なアミノ酸をもたらす保存的置換は当技術分野で周知である。
【0069】
例えば、次の6つの群は各々、互いに保存的置換となるアミノ酸を含んでいる。
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0070】
また、(Creighton (1984) Proteins W. H. Freeman and Company)も参照。その他、例えば、GCGパッケージ、BLAST、またはCLUSTALのような配列比較プログラムのスコアリングマトリックスなど、当技術分野で公知の、許容される保存的置換も使用可能である。
【0071】
本特許請求発明はまた、目的の特徴を得るために本発明のポリヌクレオチドの配列シャッフリングにより生じる「シャッフレット」も含む。配列シャッフリングについては、PCT公開番号96/19256に記載されている。また、Zhang, J. H., et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4504-4509 (1997)も参照。
【0072】
本発明はまた、異種コード配列の転写または翻訳の調節のための5’および/または3’UTR領域も含む。ポジティブ配列モチーフとして、翻訳開始コンセンサス配列(Kozak, Nucleic Acids Res. 15:8125 (1987))および7−メチルグアノシンキャップ構造(Drummond et al, Nucleic Acids Res. 13:7375 (1985))を含む。ネガティブエレメントとしては、安定な分子内5’UTRステム−ループ(Muesing et al. Cell 48:691 (1987))およびAUG配列または5’UTRの適当なAUGで始まるショートオープンリーディングフレーム(Kozak, 前掲, Rao et al, Mol. Cell. Biol. 8:284 (1988))がある。
【0073】
さらに、本発明のポリヌクレオチドのポリペプチドコードセグメントを、コドン利用を変更するように修飾することもできる。変更されたコドン利用を用いれば、翻訳効率を変更することができる。本発明のポリヌクレオチドのコード領域におけるコドン利用は、GCG, the University of Wisconsin Genetics Computer Group (Devereaux et al, Nucleic Acids Res. 12:387-395 (1984)から入手可能な「Codon Preference」などの市販のソフトウエアパッケージを用いて統計学的に解析することができる。
【0074】
例えば、本発明の核酸またはそれらのアンチセンス対応物は、目的の植物において発現を増強させるために至適化することができる。例えば、Perlak et al (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3324-3328;およびMurray et al (1989) Nucleic Acids Res. 17:477-498参照、なおその開示は引用文献により本明細書中に組み込まれる。このようにこれらのポリヌクレオチドを、植物が好むコドンを用いて合成することができる。
【0075】
本発明は、特許請求される配列の少なくとも20の隣接する塩基を含む単離された核酸を含んでなる部分配列を提供する。例えば、単離された核酸としては、特許請求される配列の少なくとも25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,500または2,000の隣接するヌクレオチドを含んでなるものが挙げられる。単離された核酸の部分配列を用い、核酸と結合し、それを挿入し、切断し、かつ/または架橋する部分配列化合物へ導入することにより遺伝子発現を調節または検出することができる。
【0076】
本特許請求発明の核酸は、便宜には、ポリヌクレオチドの単離を助けるために核酸に挿入された1以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含んでなる多重クローニング部位を含んでもよい。また、翻訳された本発明のポリヌクレオチドの単離を助けるために翻訳可能な配列を挿入してもよい。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列、またはGST融合配列は、本特許請求発明のタンパク質を精製する便宜な手段を提供する。
【0077】
本特許請求発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドのクローニングおよび/または発現用のベクター、アダプター、プロモーター、輸送ペプチドまたはリンカーと結合させることができる。このようなクローニングおよび/または発現配列に付加的な配列を付加して、クローニングおよび/または発現におけるそれらの機能を至適化すること、そのポリペプチドの単離を助けること、またはそのポリヌクレオチドの細胞への導入を改善することができる。クローニングベクター、発現ベクター、アダプター、およびリンカーの使用は周知であり、当技術分野で十分に記載されている。このような核酸についての記載は、例えば、Stratagene Cloning Systems, Catalogs 2004 (La Jolla, Calif.);およびAmersham BioSciences, Inc, Catalog 2004 (Piscataway, NJ.)参照。
【0078】
RNA、cDNA、ゲノムDNA、またはそのハイブリッドなどの本発明の単離された核酸組成物は、当業者に公知のいくつかのクローニング法を用いて植物生物源から得ることができる。いくつかの実施態様では、ストリンジェント条件下で本発明のポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを用い、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーにおいて目的の配列を同定する。
【0079】
全RNAおよびmRNA単離プロトコールの例は、Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin (1997);およびBrentに記載されている。全RNAおよびmRNA単離キットは、Stratagene (La Jolla, Calif)、Clontech (Palo Alto, Calif)、Amersham Biosciences (Piscataway, NJ.)、および5’-3’ (Paoli, Pa.)などの業者から市販されている。また、米国特許第5,614,391号および同第5,459,253号も参照。
【0080】
典型的なcDNA合成プロトコールは当業者に周知であり、Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin (1997);およびBrentなどの標準的な参照文献に記載されている。cDNA合成キットは、StratageneまたはPharmaciaなどの様々な業者から入手可能である。
【0081】
純度90%を超える全長cDNAライブラリーを構築する方法の例としては、Carninci et al., Genomics 37:327-336 (1996)に記載されている。全長ライブラリーを作製する他の方法も当業者に公知である。例えば、Edery et al., Mol. Cell Biol. 15(6):3363-3371 (1995);およびPCT特許出願WO96/34981参照。
【0082】
各クローンがより均等に提示されるライブラリーを作出するために、cDNAライブラリーをノーマライズするのが便宜である場合が多い。cDNAライブラリーをノーマライズするいくつかのアプローチが当業者で知られている。ノーマライズされたライブラリーの構築については、Ko, Nucl. Acids. Res. 18(19):5705-5711 (1990); Patanjali et al, Proc. Natl. Acad. U.S.A. 88:1943-1947 (1991);米国特許第5,482,685号および同第5,637,685;ならびにSoares et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9228-9232 (1994)に記載されている。
【0083】
サブトラクションcDNAライブラリーは、存在量の少ないcDNA種の産生を高めるもう1つの手段である。Foote et al., Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin (1997); Kho and Zarbl, Technique 3(2):58-63 (1991); Sive and St. John, Nucl. Acids Res. 16(22):10937 (1988); Brent;およびSwaroop et al., Nucl. Acids Res. 19(8):1954 (1991)参照。cDNAサブトラクションキットも市販されている。例えば、PCR-Select (Clontech)参照。
【0084】
ゲノムライブラリーを構築するためには、ランダムフラグメンテーションによりゲノムDNAの大セグメントを生じさせる。適当な分子生物学的技術の例および解説の例は、Sambrook, and Methods in Enzymology, Vol. 152: Guide to Molecular Cloning Techniques, Berger and Kimmel, Eds., San Diego: Academic Press, Inc. (1987), Brent; Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin (1997)に示されている。また、ゲノムライブラリーの構築用のキットも市販されている。
【0085】
cDNAまたはゲノムライブラリーは、当業者に公知の方法で直接PCRを用いて、または本明細書で開示されているものなどの本発明の核酸配列を基づいたプローブを用いてスクリーニングすることができる。プローブを用いてゲノムDNAまたはcDNA配列とハイブリダイズさせ、同じ、または異なる植物種において相同なポリヌクレオチドを単離することができる。当業者ならば、アッセイには種々のストリンジェンシー程度のハイブリダイゼーションを使用できること、およびハイブリダイゼーションまたは洗浄のいずれかがストリンジェントであればよいことが分かるであろう。ストリンジェンシーの程度は、温度、イオン強度、pHおよびホルムアミドなどの部分変性溶媒の存在により制御することができる。
【0086】
一般に、ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、pH7.0〜8.3で、塩濃度が約1.5M Naイオンよりも低い、一般にNaイオン(または他の塩)濃度が約0.01〜1.0Mであり、温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドより長い)では少なくとも約60℃というものである。また、ストリンジェント条件は、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によって達成することができる。
【0087】
低ストリンジェンシー条件の例としては、37℃での30〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)のバッファー溶液を用いたハイブリダイゼーションおよび50℃での1×〜2×SSC(2O×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム中での洗浄を含む。中ストリンジェンシー条件の例としては、37℃、40〜45%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および55℃、0.5×〜1×SSC中での洗浄を含む。高ストリンジェンシー条件の例としては、37℃、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中でのハイブリダイゼーション、および60℃、0.1×SSC中での洗浄を含む。一般に、ハイブリダイゼーション時間は4〜16時間である。
【0088】
核酸のハイブリダイゼーションの包括的な指針は、Tijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acids, Part I, Chapter 2 ”Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assays”, Elsevier, N. Y. (1993);およびBrentに示されている。多くの場合、cDNAライブラリーは、比較的存在度の低いcDNAの提示を高めるようにノーマライズされる。
【0089】
本発明の核酸は、増幅技術を用い、植物核酸サンプルなどの核酸サンプルから増幅させることができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用い、本発明のポリヌクレオチドおよび関連のポリヌクレオチドの配列を、ゲノムDNAライブラリー、cDNAライブラリー、または一般にイントロンプロセシングの任意の段階の核転写物から構築されるライブラリーから直接増幅させることができる。ライブラリーは、雌穂、実生、葉、茎、根、花粉、または種子などの様々な植物組織から作製することができる。PCRおよびその他のin vitro増幅法はまた、例えば、発現させるタンパク質をコードする核酸配列をクローニングし、サンプル中で目的mRNAの存在を検出するため、または核酸配列決定のため、またはその他の目的でプローブとして用いるための核酸を作製するのにも有用であり得る。
【0090】
in vitro増幅法に有用な技術の例は、Berger, Sambrook、およびBrent、ならびにMullis et al., 米国特許第4,683,202号(1987);およびPCR Protocols A Guide to Methods and Applications, Innis et al., Eds., Academic Press Inc., San Diego, Calif. (1990)に示されている。ゲノムPCR増幅用の市販キットは当技術分野で公知である。例えば、Advantage-GC Genomic PCR Kit (Clontech)参照。長いPCR産物の収率を高めるためには、T4遺伝子32タンパク質(Boehringer Mannheim)を使用することができる。PCRに基づくスクリーニング法も記載されている。Wilfinger et al.は、最初の工程で最長のcDNAを同定する、PCRに基づく方法を記載しており、これにより、不完全なクローンを検討から除外することができる(BioTechniques, 22(3):481-486 (1997))。
【0091】
あるいは、本発明の配列を用い、他の生物、特に他の植物、より詳しくは他の単子葉植物において対応する配列を単離することもできる。このように、PCR、ハイブリダイゼーションなどの方法を用い、本発明の配列と実質的な配列類似性を有する配列を同定することができる。例えば、Sambrook, and Innis et al. (1990), PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press, New York)。本明細書に示されている本発明の全コード配列またはその断片との配列同一性に基づいて単離されたコード配列も本発明に包含される。
【0092】
本発明の単離された核酸はまた、Narang et al., Meth. Enzymol. 68:90-99 (1979)のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68:109-151 (1979)のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862 (1981)のジエチルホスホルアミダイト法;例えば、Needham-VanDevanter et al., Nucleic Acids Res. 12:6159-6168 (1984)に記載のような自動合成装置を用いる、Beaucage and Caruthers, Tetra. Lett. 22(20): 1859-1862 (1981)により記載されている固相ホスホルアミダイトトリエステル法;および米国特許第4,458,066号の固相支持体法といった方法による直接化学合成で作製することもできる。化学合成では一般に、一本鎖オリゴヌクレオチドが生成する。これは、相補的配列とのハイブリダイゼーションにより、またはその一本鎖を鋳型として用いたDNAポリメラーゼでの重合により二本鎖DNAへと変換することができる。当業者ならば、DNAの化学合成が約100塩基の配列に制限されるが、短い配列の連結により、より長い配列が得られることを認識している。
【0093】
本発明の核酸断片の全部または実質的部分はまた、それらが一部をなす遺伝子を遺伝的かつ物理的にマッピングするためのプローブとして、また、それらの遺伝子に連関している形質のマーカーとして使用することもできる。このような情報は、植物育種において目的の表現型を有する系統を発達させるために有用であり得る。例えば、本核酸断片は、restriction fragment length polymorphism (RFLP)マーカーとして使用することができる。制限消化した植物ゲノムDNAのサザンブロット(Sambrook)を、本発明の核酸断片でプローブすることができる。得られた結合パターンに対し、次に、遺伝地図を構築するためのMapMaker (Lander et at., (1987) Genomics 1:174-181)などのコンピュータープログラムを用いて遺伝解析を行うことができる。さらに、本発明の核酸断片を用い、所定の遺伝交雑の親と後代に当たる個体組の、制限エンドヌクレアーゼ処理ゲノムDNAを含むサザンブロットをプローブするために使用することができる。DNA多型の分離が注目され、この集団で従前に得られた遺伝地図において本核酸配列の位置を算出するのに用いられる(Botstein, D. et al., (1980) Am. J. Hum. Genet. 32:314-331)。
【0094】
遺伝地図に用いるための植物遺伝子由来のプローブの作製と使用については、R. Bernatzky, R. and Tanksley, S. D. (1986) Plant Mol. Biol. Reporter 4(1):37-41に記載されている。多くの刊行物が、上記で概略を示した方法論またはその変形形態を用いた特異的cDNAクローンの遺伝マッピングについて記載している。例えば、F2交雑集団、戻し交雑集団、無作為交雑集団、同種同系に近い集団、およびその他の個体組をマッピングに用いることができる。このような方法論は当業者に周知である。
【0095】
本核酸配列に由来する核酸プローブはまた、物理マッピング(すなわち、物理地図上に配列を配置すること;Hoheisel, J. D., et al., In: Nonmammalian Genomic Analysis: A Practical Guide, Academic press 1996, pp. 319-346およびその中に引用されている参照文献参照)に使用することもできる。
【0096】
もう1つの実施態様では、本核酸配列に由来する核酸プローブを、直接蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)マッピング(Trask, B. J. (1991) Trends Genet. 7:149-154)に用いることができる。FISHマッピングの現行法では大きなクローン(数kb〜数百kb;Laan, M. et al. (1995) Genome Research 5:13-20)を用いることが好ましいが、感度を高めれば、より短いプローブを用いてFISHマッピングを行うことができる。
【0097】
本核酸配列を用い、核酸増幅に基づく、様々な遺伝マッピングおよび物理マッピングを行うことができる。例としては、対立遺伝子特異的増幅(Kazazian, H. H. (1989) J. Lab. Clin. Med. 114(2):95-96)、PCRにより増幅された断片の多型(CAPS; Sheffield, V. C. et al. (1993) Genomics 16:325-332)、対立遺伝子特異的連結(Landegren, U. et al. (1988) Science 241:1077-1080)、ヌクレオチド伸張反応(Sokolov, B. P. (1990) Nucleic Acid Res. 18:3671)、放射線ハイブリッドマッピング(Walter, M. A. et al. (1997) Nature Genetics 7:22-28)およびHappyマッピング(Dear, P. H. and Cook, P. R. (1989) Nucleic Acid Res. 17:6795-6807)が挙げられる。これらの方法のため、核酸断片の配列を用い、増幅反応またはプライマー伸張反応で用いるためのプライマー対をデザインおよび作製する。このようなプライマーのデザインは当業者に周知である。PCRに基づく遺伝マッピングを用いた方法では、そのマッピング交雑の両親間の、本核酸配列に相当する領域のDNA配列の違いを同定する必要がある場合がある。しかしながら、これは、マッピング法には一般に必要でない。
【0098】
ターゲッティング遺伝子破壊プロトコールによるか、または全ての可能性のある遺伝子に突然変異を有する集団に含まれるこれら遺伝子の特定の突然変異体を同定することにより、本cDNAクローンに対して機能欠失型突然変異表現型を同定することができる(Ballinger and Benzer, (1989) Proc. Natl. Acad. Sci USA 86:9402; Koes et al., (1995) Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:8149; Bensen et al., (1995) Plant Cell 7:75)。前記のアプローチはいくつかの方法で達成することができる。一つ目として、本核酸断片のショートセグメントを、Mutatorトランスポゾンまたは他のいくつかの突然変異誘発DNAエレメントが導入されている植物の集団から調製したDNAに対して、突然変異タグ配列プライマーと組み合わせたポリメラーゼ連鎖反応プロトコールにおいて用いることができる(Bensen, 前掲参照)。これらのプライマーを用いて特異的DNA断片が増幅されるということは、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする植物遺伝子内またはその近傍に突然変異タグエレメントが挿入されていることを示す。あるいは、本核酸断片は、制限酵素部位に固定される合成アダプターのためのものなど、任意のゲノム部位プライマーと組み合わせて突然変異タグ配列プライマーを用いて突然変異集団から作製されたPCR増幅産物に対してハイブリダイゼーションプローブとして用いることもできる。三つ目として、TILLINGとして知られる方法であるが、ミスマッチ部位で切断可能な一本鎖エンドヌクレアーゼを用い、特定の遺伝子内に突然変異をマッピングすることもできる(Till et al.(2004) Nucleic Acids Res. 32:2632-41)。最後に、米国特許出願第20050053975号に記載され、また、本実施例に示されるように、当業者に公知のPCR法を用い、欠失を同定することができる。各方法では、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする内在遺伝子に突然変異を含む植物を同定および取得することができる。次に、この突然変異植物を用い、その遺伝子産物の本来の機能を決定または確認することができる。
【0099】
本発明のタンパク質としては、開示されている配列を有するタンパク質、また同様に、開示されているポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を含む。さらに、本発明のタンパク質としては、その天然タンパク質の1以上の部位における1以上のアミノ酸の欠失、付加または置換により、天然タンパク質から誘導されたタンパク質も含む。このような変異体は例えば、遺伝子多型から、または人為的操作から生じたものであり得る。このような操作法は一般に、当技術分野で公知である。
【0100】
例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、対象とする天然タンパク質をコードするクローニングされたDNA配列における突然変異により作出することができる。突然変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は当技術分野で周知である。例えば、Walker and Gaastra, eds. (1983) Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York); Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492; Kunkel et al. (1987) Methods Enzymol. 154:367-382; Sambrook ;米国特許第4,873,192号;およびその中に引用されている参照文献を参照(引用文献により本明細書中に組み込まれる)。対象とするタンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適当なアミノ酸置換についての指針は当業者ならば容易に理解することができる。あるアミノ酸と、類似の特性を有する別のアミノ酸との交換などの保存的置換が好ましいと考えられる。
【0101】
対象とするタンパク質の変異体を構築する上では、それらの変異体をコードするヌクレオチド配列に対して、一般に、変異体が所望の活性を保持し続けるような修飾を行うことができる。本発明の単離されたタンパク質としては、本発明の核酸のいずれか1つによりコードされている少なくとも25の隣接するアミノ酸を含んでなるポリペプチド、またはその保存的修飾変異体であるポリペプチドを含む。本発明のタンパク質またはその変異体は、本発明のポリペプチド由来の、任意の数の隣接するアミノ酸残基を含むことができ、その数は25〜本発明の全長ポリペプチドの残基数からなる整数群から選択される。場合により、この隣接するアミノ酸の部分配列は、少なくとも25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、または500アミノ酸長である。
【0102】
本発明は触媒的に活性なポリペプチド(すなわち、酵素)を含む。触媒的に活性なポリペプチドは一般に、天然(非合成)型の内在ポリペプチドの少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%の比活性を有する。さらに、基質特異性(Kcat/Km)は、各活性に関して、場合により、天然(非合成)型の内在ポリペプチドと実質的に同等であり得る。一般に、Kmは、ある基質に関して、天然(非合成)型の内在ポリペプチドの少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%である。酵素活性および基質特異性(Kcat/Km)のアッセイおよび定量測定法は当業者に周知である。例えば、Segel, Biochemical Calculations, 2nd ed., John Wiley and Sons, New York (1976)参照。
【0103】
本発明は、本タンパク質に対して行い得る修飾を含む。特に、その遺伝子の活性を低下させることが望まれる場合がある。ターゲッティング分子のクローニング、発現または融合タンパク質への組み込みを助けるために、他の修飾を行うこともできる。このような修飾は当業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されたメチオニン、または便宜な配置の制限部位もしくは終結コドンを作出するため、または精製のためにいずれかの末端に置かれた付加的アミノ酸またはペプチド(例えば、ポリHis、GSTなど)が挙げられる。
【0104】
本発明のタンパク質は、ひと度発現されれば、それらの細胞を溶解し、その溶解物に標準的なタンパク質単離技術を適用することにより、単離することができる。この精製法のモニタリングは、ウエスタンブロット法またはラジオイムノアッセイまたは他の標準的なイムノアッセイ法を用いて行うことができる。また、発現したタンパク質を細胞から培地中へ分泌させる発現カセットも利用可能である。これらの場合、発現したタンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を用いて細胞増殖培地から精製することができる。
【0105】
本発明のタンパク質はまた、無細胞合成法を用いて構築することもできる。約50アミノ酸長よりも小さいタンパク質の固相合成は、不溶性の支持体にその配列のC末端アミノ酸を付着させた後、その配列の残りのアミノ酸を順次付加することにより行うことができる。固相合成技術は、Barany and Merrifield, Solid-Phase Peptide Synthesis, pp. 3-284 in The Peptids: Analysis, Synthesis, Biology. Vol. 2: Special Methods in Peptide Synthesis, Part A.; Merrifield et al, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2156 (1963)、およびStewart et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., Pierce Chem. Co., Rockford, III. (1984)に記載されている。より長いタンパク質は、短い断片のアミノ末端とカルボキシ末端を縮合させることにより合成することができる。カルボキシ末端の活性化による(例えば、カップリング試薬N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドの使用による)ペプチド結合の形成法は当業者に公知である。
【0106】
本発明のタンパク質は、組換え型であれ合成型であれ、洗剤による可溶化、硫酸アンモニウムなどの物質による選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫精製法その他を含む、当技術分野で周知の標準的な技術により、実質的に純粋となるよう精製することができる。例えば、R. Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag: New York (1982); Deutscher, Guide to Pritein Purification, Academic Press (1990)参照。例えば、本明細書に記載のように、これらのタンパク質に対して抗体を作製してもよい。大腸菌(E. coli)からの精製は、米国特許第4,511,503号に記載の手順に従って行うことができる。
【0107】
本発明のタンパク質を検出する手段は、本発明の重要な側面ではない。これらのタンパク質は、十分認知されているいくつかの免疫結合アッセイのいずれかを用いて検出および/または定量することができる(例えば、米国特許第4,366,241号、同第4,376,110号、同第4,517,288号、および同第4,837,168号参照)。また、一般的なイムノアッセイの総説として、Methods in Cell Biology, Vol. 37: Antibodies in Cell Biology, Asai, Ed., Academic Press, Inc. New York (1993); Basic and Clinical Immunology 7th Edition, Stites & Terr, Eds. (1991)も参照。さらに、本発明のイムノアッセイは、例えば、Enzyme Immunoassay, Maggio, Ed., CRC Press, Boca Raton, FIa. (1980); Tijan, Practice and Theory of Enzyme Immunoassays, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers B. V., Amsterdam (1985); Harlow and Lane, 前掲; Immunoassay: A Practical Guide, Chan, Ed., Academic Press, Orlando, Fla. (1987); Principles and Practice of Immunoassays, Price and Newman Eds., Stockton Press, NY (1991);および Non-isotopic Immunoassays, Ngo, Ed., Plenum Press, NY (1988)の総説など、いくつかの構成のいずれで行ってもよい。
【0108】
典型的な方法としては、ウエスタンブロット(イムノブロット)分析、生化学分析法(電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィーなど)、および液体またはゲル沈降素反応、免疫拡散法(一元または二元)、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイなどの種々の免疫学的方法などが挙げられる。
【0109】
非放射性標識は間接的手段により結合させる場合が多い。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)をこの分子に共有結合させる。次に、このリガンドは抗リガンド分子(例えば、ストレプトアビジン)と結合するが、この抗リガンド分子はそれ自体検出可能であるか、または、検出可能な酵素、蛍光化合物もしくは化学発光化合物などのシグナル系と共有結合させる。いくつかのリガンドと抗リガンドが使用可能である。リガンドが天然の抗リガンド、例えば、ビオチン、チロキシン、およびコルチゾールを有する場合、標識した天然抗リガンドとともに使用することができる。あるいは、ハプテン化合物または抗原化合物を抗体と組み合わせて使用してもよい。
【0110】
また、これらの分子は、例えば、酵素または蛍光団とのコンジュゲーションにより、シグナル生成化合物と直接コンジュゲートさせることができる。標識として対象となる酵素としては、主としてヒドロラーゼ、特に、ホスファターゼ、エステラーゼおよびグリコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特に、ペルオキシダーゼがある。蛍光化合物としては、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物としては、ルシフェリン、および0.2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが挙げられる。使用可能な種々の標識系またはシグナル生成系についての総説としては、引用文献により本明細書中に組み込まれる米国特許第4,391,904号を参照。
【0111】
アッセイ形式によっては、標識された成分の使用の必要がないものもある。例えば、凝集アッセイを用い、標的抗体の存在を検出することができる。この場合、抗原コーティング粒子が、標的抗体を含むサンプルにより凝集を生じる。この形式では、標識が必要な成分はなく、標的抗体の存在は単に目視により検出される。
【0112】
本発明のタンパク質は、本発明の触媒的に活性なポリペプチドと結合し、かつ/またはその酵素活性を増加または低下させる(すなわち、調節する)化合物(例えば、基質)を同定するために使用することができる。この方法は、本発明のポリペプチドを、結合能または酵素活性調節能を判定する化合物と接触させることを含む。用いるポリペプチドは、本発明の天然型、全長ポリペプチド(例えば、酵素)の比活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%を有する。酵素動態を測定する方法は当技術分野で公知である。例えば、Segel, Biochemical Calculations, 2nd ed., John Wiley and Sons, New York (1976)参照。
【0113】
天然(全長)型および組換え型または合成型双方の個体変異体、対立遺伝子変異体、系統変異体、または種変異体およびその断片を含む本発明のタンパク質に対して抗体を作製することができる。さらに、天然型構造または非天然型構造いずれかのこれらのタンパク質に対して抗体を作製することもできる。また、抗イディオタイプ抗体も生成可能である。多くの抗体作製法が当業者に公知である。
【0114】
マウス、齧歯類、霊長類、ヒトなどの種々の哺乳類宿主からモノクローナル抗体を作製することが望ましい場合もある。このようなモノクローナル抗体の作製技術の記載は、例えば、Basic and Clinical Immunology, 4th ed., Stites et al., Eds., Lange Medical Publications, Los Altos, Calif.,およびその中で引用されている参照文献; Harlow and Lane, 前掲; Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 2nd ed., Academic Press, New York, N.Y. (1986);およびKohler and Milstein, Nature 256:495-497 (1975)に見出せる。
【0115】
他の好適な技術としては、ファージまたは類似のベクター中での組換え抗体のライブラリーの選択を含む(例えば、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989);およびWard et al., Nature 341:544-546 (1989);およびVaughan et al., Nature Biotechnology 14:309-314 (1996)参照)。あるいは、非再配列ヒト重鎖および軽鎖Ig座のフラグメントを含んでなるトランスジェニックマウス(すなわち、ミニローカストランスジェニックマウス)から高結合力ヒトモノクローナル抗体を得ることもできる。Fishwild et al., Nature Biotech. 14:845-851 (1996)。また、組換え免疫グロブリンを作製することもできる。Cabilly, 米国特許第4,816,567号;およびQueen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029-10033 (1989)参照。
【0116】
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を単離する際のアフィニティークロマトグラフィーのため、または正常タンパク質もしくは異常タンパク質などの特定の発現産物に関して発現ライブラリーをスクリーニングするため、または個々の抗原の存在に関連する種々の病態を検出もしくは診断するのに有用な抗イディオタイプ抗体を作製するために使用することができる。
【0117】
多くの場合、本発明のタンパク質および抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質と共有結合または非共有結合させることにより標識することができる。多様な標識およびコンジュゲーション技術が知られており、科学文献および特許文献の双方で十分に報告されている。好適な標識としては、放射性ヌクレオチド、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、磁気粒子などが挙げられる。
【0118】
本発明はさらに、植物またはその一部において、本特許請求発明のポリペプチドの濃度または組成を調節する(すなわち、低下させる)方法も提供する。調節は、植物体内で、その濃度または組成(本特許請求発明のポリペプチドの比率)を増加または低下させることにより行うことができる。
【0119】
本方法は、(1)イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子の一本鎖の対応する部分(ここで、このイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子は、低ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする)、または(2)イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子にコードされるRNA配列の対応する部分と実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列と、(b)そのアンチセンスヌクレオチド配列が、それが形質転換された植物細胞内で発現されるように、アンチセンスヌクレオチド配列と作動可能なように連結された調節配列とを含んでなる発現カセットを用いて植物細胞を形質転換することを含む。
【0120】
いくつかの実施態様では、植物体内の本発明のポリペプチドの含量および/または組成は、in vivoまたはin vitroで、遺伝子発現をダウンレギュレーションするように本発明の非単離遺伝子のプロモーターを変更することにより低下させることができる。いくつかの実施態様では、本発明の天然遺伝子のコード領域を、コードされている酵素の活性を低下させるように置換、付加、挿入、または欠失により変更することができる。例えば、Kmiec, 米国特許第5,565,350号; Zarling et al., PCT/US93/03868参照。タンパク質のダウンレギュレーションの一つの方法としては、タンパク質分解に対して標的を与えるPEST配列の使用を含む。
【0121】
いくつかの実施態様では、プロモーター配列を含んでなる単離された核酸(例えば、ベクター)を植物細胞にトランスフェクトする。次に、本発明のポリヌクレオチドと作動可能なように連結されたプロモーターを含んでなる植物細胞を、限定されるものではないが、サザンブロット、DNA配列決定、またはプロモーターおよび遺伝子に特異的なプライマーを用い、それから産生されたアンプリコンを検出するPCR分析など、当業者に公知の手段によって選択する。上記実施態様によって変更または修飾された植物または植物部分を、その植物体内の本発明のポリペプチドの濃度および/または組成を低下させるのに十分な期間、植物生育条件下で生育させる。植物生育条件は当技術分野で公知である。
【0122】
一般に、ポリペプチド含量は、上述の発現カセットを欠いた天然型対照植物、植物部分、または細胞よりも少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%増大または低下する。本発明における調節は、目的の発達段階まで植物を生育させる過程で、および/または生育させた後に起こり得る。時間的な、および/または特定の組織での核酸発現の調節は、例えば、上記で詳細に述べたアンチセンス配向で本発明のポリヌクレオチドと作動可能なように連結された適当なプロモーターを用いることで制御することができる。本発明のポリヌクレオチドの発現誘導はまた、有効量の誘導化合物を外から投与することによっても制御することができる。誘導プロモーターおよびこれらのプロモーターからの発現を活性化する誘導化合物は当技術分野で周知である。ある実施態様では、本発明のポリペプチドは、単子葉植物または双子葉植物、例えば、トウモロコシ、ダイズ、ヒマワリ、ベニバナ、ソルガム、カノーラ、コムギ、アルファルファ、イネ、オオムギおよび雑穀において調節される。
【0123】
形質転換法は本発明にとって重要ではなく、現在、種々の形質転換法が利用できる。作物または他の宿主細胞を形質転換するために利用できる新しい方法ほど、直接的な適用が可能となっている。よって、生物において表現型変化を達成するために配列の転写および/または翻訳を得ることを目的に、宿主細胞のゲノムにそのDNA配列を挿入する多様な方法が開発されている。従って、効率的な形質転換/トランスフェクションが得られる方法を用いればよい。
【0124】
本発明の目的のポリヌクレオチドをコードするDNA配列、例えば、全長タンパク質をコードするcDNAまたはゲノム配列を用い、目的の植物に導入することができる発現カセットを構築することができる。本発明の単離された核酸は、当技術分野で公知の技術に従って植物に導入することができる。一般に、上記のような、植物細胞の形質転換に好適な発現カセットが作製される。
【0125】
多様な高等植物種を形質転換する技術が周知であり、技術文献、科学文献および特許文献に記載されている。例えば、Weising et al., Ann. Rev. Genet. 22:421-477 (1988)参照。例えば、植物細胞プロトプラストまたはエンブリオジェニックカルスのエレクトロポレーション、PEGポレーション、粒子衝撃、ケイ素繊維送達、またはマイクロインジェクションなどの技術を用い、植物細胞のゲノムDNAにDNA構築物を直接導入することができる。例えば、Tomes et al., Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells Via Microprojectile Bombardment, pp.197-213 in Plant Cell, Tissue and Organ Culture,, Fundamental Methods, Eds. O. L. Gamborg and G. C. Phillips, Springer-Verlag Berlin Heidelberg New York, 1995参照。あるいは、これらのDNA構築物は好適なT−DNAフランキング領域と組み合わせ、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主ベクターに導入することもできる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主の病原性機能は、細胞がこの細菌に感染した際に、植物細胞DNAへの構築物および隣接するマーカーの挿入を命令する。米国特許第5,591,616号参照。
【0126】
ポリエチレングリコール沈殿を用いるDNA構築物の導入については、Paszkowski et al., Embo J. 3:2717-2722 (1984)に記載されている。エレクトロポレーション技術については、Fromm et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:5824 (1985)に記載されている。弾道形質転換技術については、Klein et al, Nature 327:70-73 (1987)に記載されている。
【0127】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスを媒介とする形質転換技術は科学文献に十分な記載がある。例えば、Horsch et al, Science 233:496-498 (1984)、およびFraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 80:4803 (1983)参照。例えば、トウモロコシのアグロバクテリウム形質転換は、米国特許第5,981,840号に記載されている。ダイズのアグロバクテリウム形質転換は、米国特許第5,563,055号に記載されている。
【0128】
他の形質転換法としては、(1)アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を媒介とする形質転換(例えば、Lichtenstein and Fuller In: Genetic Engineering, Vol. 6, P. W. J. Rigby, Ed., London, Academic Press, 1987;およびLichtenstein, C. P. and Draper, J. In: DNA Cloning, Vol. 11, D. M. Glover, Ed., Oxford, IRI Press, 1985)参照。国際出願PCT/US87/02512(1988年4月7日公開のWO88/02405)は、A.リゾゲネスA4およびそのRiプラスミドを、A.ツメファシエンスベクターpARC8またはpARC16とともに使用することを記載している)、(2)リポソームを媒介とするDNA取り込み(例えば、Freeman et al, Plant Cell Physiol. 25:1353 (1984)参照)、および(3)ボルテックス法(例えば、Kindle, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1228 (1990)参照)が挙げられる。
【0129】
DNAはまた、Zhou et al., Methods in Enzymology 101:433 (1983); D. Hess, Intern Rev. Cytol., 107:367 (1987); Luo et al, Plant Mol. Biol. Reporter 6:165 (1988)により記載されているように、花粉への直接的DNA移入により植物に導入することもできる。ポリヌクレオチドをコードするポリペプチドの発現は、Pena et al, Nature 325:274 (1987)により記載されているような植物の生殖器官へのDNAの注入により得ることができる。DNAはまた、未熟胚の細胞に直接注入することもでき、Neuhaus et al, Theor. Appl. Genet. 75:30 (1987);およびBenbrook et al, in Proceedings Bio Expo 1986, Butterworth, Stoneham, Mass., pp. 27-54 (1986)に記載のような乾燥胚の再水和。
【0130】
動物および下等真核生物(例えば、酵母)宿主細胞は、種々の手段による形質転換に対して有能であるか、または有能であるようにする。動物細胞にDNAを導入するいくつかの周知な方法がある。これらには、リン酸カルシウム沈殿法、レシピエント細胞とそのDNAを含有する細菌プロトプラストとの融合、レシピエント細胞の、そのDNAを含有するリポソームでの処理、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、バイオリスティック法、およびDNAの細胞への直接マイクロインジェクションが挙げられる。トランスフェクトされた細胞は、当技術分野で周知の手段により培養する。Kuchler, R. J., Biochemical Methods in Cell Culture and Virology, Dowden, Hutchinson and Ross, Inc. (1977)。
【0131】
上記の形質転換技術のいずれかにより誘導された形質転換植物細胞を培養すれば、形質転換遺伝子型を有する完全な植物体を再分化させることができる。このような再分化技術は多くの場合、組織培養増殖培地中の特定の植物ホルモンの操作に頼るものであり、一般には、本発明のポリヌクレオチドとともに導入された殺生物剤および/または除草剤マーカーに頼る。トウモロコシの形質転換および再分化については、Gordon-Kamm et al., The Plant Cell 2:603-618 (1990)を参照。
【0132】
植物発現ベクターで形質転換された植物細胞は、標準的な植物組織培養技術に従い、例えば、単細胞、カルス組織またはリーフディスクから再分化させることができる。当技術分野では、ほとんどどの植物の種々の細胞、組織および器官でも上手く培養し、完全な植物体を再分化させることができることが周知である。培養プロトプラストからの植物再分化については、Evans et al., Protoplasts Isolation and Culture, Handbook of Plant ell Culture, Macmillan Publishing Company, New York, pp.124-176 (1983);およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, CRC Press, Boca Raton, pp. 21-73 (1985)に記載されている。
【0133】
アグロバクテリウムにより導入された外来遺伝子を含有する植物の再分化は、Horsch et al., Science, 227:1229-1231 (1985)およびFraley et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:4803 (1983)により記載されているようにして行うことができる。この手順では一般に、2〜4週間以内にシュートが発生し、これらの形質転換体のシュートを次に、選択剤と細菌の増殖を防ぐための抗生物質を含有する適当な発根培地に移す。本発明のトランスジェニック植物は稔性である場合も不稔性である場合もある。
【0134】
再分化はまた、植物カルス、外植体、器官、またはその一部から得ることができる。このような再分化技術は一般に、Klee et al., Ann. Rev. Plant Phys. 38:467-486 (1987)に記載されている。単一の植物プロトプラストまたは種々の外植体からの植物体の再分化は当技術分野で周知である。例えば、Methods for Plant Molecular Biology, A. Weissbach and H. Weissbach, eds., Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (1988)参照。トウモロコシの細胞培養および再分化については一般に、The Maize Handbook, Freeling and Walbot, Eds., Springer, New York (1994); Corn and Corn Improvement, 3rd edition, Sprague and Dudley Eds., American Society of Agronomy, Madison, Wis. (1988)を参照。
【0135】
当業者ならば、発現カセットがトランスジェニック植物に安定的に組み込まれ、機能し得ることが確認された後は、それを有性交雑により他の植物に導入することができることを認識している。交配させる種に応じて、いくつかの標準的な育種技術のいずれかを用いることができる。
【0136】
栄養繁殖作物では、成熟したトランスジェニック植物を、挿し穂、アポミクト種子の産生、または多数の同一植物を産生するための組織培養技術により繁殖させることができる。望ましいトランスジェニック体の選択を行い、新品種を取得し、商業用に栄養繁殖させる。種子繁殖作物では、成熟したトランスジェニック植物を自殖させて同形接合性近交系植物を産生することができる。近交系植物は、新たに導入された異種核酸を含む種子を産生する。これらの種子を生育させ、選択された表現型を表す植物を産生することができる。
【0137】
花、種子、葉、枝、果実などの、再分化植物から得られる部分も、これらの部分が本発明の単離された核酸を含む細胞を含んでいる限り、本発明に含まれる。再分化植物の後代および変異体、ならびに突然変異体も、これらの部分が導入された核酸配列を含んでいる限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0138】
選択マーカーを発現するトランスジェニック植物は、例えば、標準的な免疫ブロットおよびDNA検出技術により、本発明の核酸の伝達に関してスクリーニングすることができる。また、トランスジェニック系統は一般に、異種核酸の発現レベルについて評価される。まず、発現陽性植物を同定および定量するためにRNAレベルで発現を判定することができる。RNA分析の標準的技術が使用可能であり、異種RNA鋳型だけを増幅するようにデザインしたオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR増幅アッセイ、および異種核酸特異的プローブを用いる溶液ハイブリダイゼーションアッセイを含む。これらのRNA陽性植物は次に、本発明の特異的反応性抗体を用いるウエスタン免疫ブロット分析によりタンパク質発現に関して分析することができる。さらに、異種核酸特異的ポリヌクレオチドプローブおよび抗体を用いて、それぞれ、標準的なプロトコールに従う、in situハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学を行って、トランスジェニック組織内での発現部位を特定することができる。一般に、いくつかのトランスジェニック系統を、通常、組み込まれた核酸に関してスクリーニングし、最も適当な発現プロフィールを有する植物を同定および選択する。
【0139】
本発明のトランスジェニック植物は、付加された異種核酸に関して同形接合性であり得、すなわち、2つの付加された核酸配列を含む(1つの遺伝子は染色体対の各染色体上の同じ遺伝子座にある)トランスジェニック植物である。同形接合性トランスジェニック植物は、付加された単一の異種核酸を含む異系接合性トランスジェニック植物を有性交配(自殖)させ、産生された種子のうちいくつかを播種し、産生された植物を、本発明のポリヌクレオチドの発現が対照植物(すなわち、天然、非トランスジェニック)に対して変更されているかどうかを分析することにより、得ることができる。また、親植物との戻し交雑および非トランスジェニック植物との他殖も考えられる。あるいは、アポミクシスにより、異系接合性トランスジェニック植物の繁殖を行うこともできる。
【0140】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む植物を遺伝子型分析の方法を提供する。遺伝子型分析は、染色体対のホモログを識別する手段を提供し、植物集団において分離したものを区別するために使用することができる。分子マーカー法は、系統発生研究、作物品種間の遺伝的関係の同定、交雑雑種または体細胞雑種の同定、一遺伝子性形質に影響を及ぼす染色体セグメントの限局化、地図に基づくクローニング、および量的遺伝の研究に使用することができる。例えば、Plant Molecular Biology: A Laboratory Manual, Chapter 7, Clark, Ed., Springer-Verlag, Berlin (1997)参照。分子マーカー法については、一般に、The DNA Revolution by Andrew H. Paterson 1996 (Chapter 2) in: Genome Mapping in Plants (ed. Andrew H. Paterson) by Academic Press/R. G. Landis Company, Austin, Tex., pp.7-21を参照。
【0141】
本発明の遺伝子型分析の特定の方法は、限定されるものではないが、増幅断片長多型(amplification fragment length polymorphisms, AFLP)など、任意の数の分子マーカー分析技術を用いてもよい。AFLPはヌクレオチド配列変異性により生じるDNA PCR−増幅断片間の対立遺伝子的な違いのある産物である。よって、本発明はさらに、本発明の遺伝子または核酸の分離、ならびにこれらの遺伝子または核酸と遺伝的に連関した染色体配列を、AFLP分析などの技術を用いて追跡する手段を提供する。
【0142】
本発明の方法において使用可能な植物としては、単子葉植物および双子葉植物が挙げられる。好ましい植物としては、トウモロコシ、コムギ、イネ、オオムギ、エンバク、ソルガム、雑穀、ライムギ、ダイズ、ヒマワリ、ベニバナ、アルファルファ、カノーラ(Brassica napus)、ワタ、またはシバが挙げられる。
【0143】
形質転換された植物細胞、植物部分または植物組織から再分化した植物に由来する種子、再分化した形質転換植物に由来する後代は、そのまま飼料または食品として使用してもよいし、あるいはさらなる加工を行ってもよい。
【0144】
以下、本発明を、下記に詳述する実施例によりさらに説明する。しかしながら、これらの実施例および記載に示されるもの以上に、本発明の基本的課題に沿った多くの拡張、変形および改変が存在し、それらも本発明の精神および範囲内にあると考えられる。
【実施例】
【0145】
以下、本発明を下記の実施例でさらに定義する。ここで、特に断りのない限り、全ての部およびパーセンテージは重量に対するものであり、温度はセ氏である。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を示すものであり、単に例示であると考えるべきである。上記の記述およびこれらの実施例から、当業者ならば、本発明の本質的な特徴を把握することができ、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の用途や条件に適合させるために本発明の種々の変更および改変を行うことができる。
【0146】
実施例1.候補IPP2−K遺伝子の同定
ヒトおよび酵母由来の、予測されるイノシトールペンタキスリン酸−キナーゼ(In5−K)遺伝子のDNA配列については、Verbsky, J.W. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277: 31857-31862(以下、「Verbsky」)に記載されている。類似した、推定トウモロコシIPP2−K遺伝子配列の断片については、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)をはじめとする公開データベースで同定した。トウモロコシ配列断片は、ヒトおよび酵母配列とアラインし、BLASTアルゴリズムによるNCBIデータベース検索にも使用した (Altschul, S.F. et al. (1991) J. Mol Biol. 215:403-10)。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来(AT5g42810、ATlg22100、ATlg58936)およびその他の種由来のいくつかの配列については、限定されるものではないが、BM520171、BE556094、BG882429(グリシンマックス);C73039、AA750614、AL606608.3、AAAA01003483、AP008210、AK102842、XM474214(オリザ・サティバ(oryza sativa));BH647760、BH724856(ブラシカ・オレラシア(Brassica oleracea));TC238218(トリチカム・アエスチバム(Triticum aestivum)由来のEST CA732984、BQ579364、BE430881、CD876080、BE498028、CA714664、BE498127、BJ233635、BE496998、CA604588、BJ212905、BJ220381、BE445478、CA700172、CA613702を含んでなるTIGRコンティグ)、TC97085(ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)由来のCD233879、BG054179、BE594569、CD207152を含んでなるTIGRコンティグ)、BN45053K04、BN25068E01、Brassica_napustuc04−02−05_2912、TC1941(ブラシカ・ナプス(Brassica napus)由来のCD832483、CD827663、CD837809およびCD832284を含んでなるTIGRコンティグ)を含むパブリックドメインで同定した。
【0147】
加えて、配列類似性レベルが低く、機能的に異なると予測される配列については、公開データベースおよび公開特許出願(Shi, J. et al WO2003027243)で同定した。これらの配列は、類似度に基づいて、本明細書において特許請求するIPP2−Kに類似したものと区別し得る。これらの配列間の類似性および系統発生関係を図1Aおよび1Bに示す。
【0148】
さらに、Vector NTIのマルチプル配列アライメントアプリケーションを使用して、トウモロコシ、シロイヌナズナおよびイネ由来の推定IPP2−K遺伝子の予測されるアミノ酸配列のアライメントを作成した。このようなアライメントの結果より、アミノ酸配列の同一性に基づいて、図2に示すようなコンセンサス配列として表される保存領域を定義した。5つのコンセンサス配列を決定して、IPP2−K遺伝子特有のモチーフを定義した。当業者ならば、データベース検索(例えば、GeneBank)にこれらのモチーフを用いて、様々な植物種由来のさらなる推定IPP2−K遺伝子を同定し得る:
1:DAXDWXYXXEGXXNLXLXYXGSSP
2:VEIKXKCGFLXXSXXIXXXNXXKXXXXRXXMXQXCKXXXXXISXXSEYXPLDLFSGSKXXXXXAIKXXXXTPQNXXXXXXGSLXXGG
3:ISXXSEYXPLDLFSGSK
4:LXXLLXXQKLDXXIEGXIHXYY
5:LIXXTAXDCSXMISF
【0149】
実施例2:全長cDNA配列の単離
公開トウモロコシ配列データベース(www.maizegdb.org)検索により、発現配列タグ(EST)BG842305、AW066374およびBE639260を隣接する配列(コンティグ)ZMtuc02−12−23.4536の断片であると同定した。このコンティグの長さは1.7kbである。このコンティグの翻訳タンパク質配列には、Verbskyにより記載されているようにヒトイノシトールペンタキスリン酸キナーゼ(In5−K)遺伝子で確認される、保存されているA、B、CおよびDボックスに極めて類似性の高い配列が含まれる。RT−PCRアプローチを利用して、この実施例に記載したトウモロコシIPP2−K cDNAクローンを得た。
【0150】
受粉後9日目(DAP)にTRIzol試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)とMACSキット(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)の組合せを用いてトウモロコシ(DAS 5XH751)種子からポリ(A)+テールを有するmRNAを単離した。このmRNAにおいて、ZMtuc02−12−03.4536に由来する遺伝子特異的プライマー(5’−TCG GAA ATT ACT GTG ACA AGC−3’)および製造業者により推奨されているSuperscriptase II酵素(Invitrogen)を用いて、逆転写反応を行って、cDNAを生成した。IPP2−K cDNAの増幅は、ZMtuc02−12−23.4536に由来する異なる遺伝子特異的プライマー(5’−GAA TCG GCA CGA GGC AGC AGC GGC AGC−3’および5’−TGA CAA GCC ACG GTG TAT GCA−3’)を用いて行った。増幅したcDNAは、製造業者推奨のとおりTAクローニングキット(Invitrogen)を用いてベクタープラスミド ベクターpCR2.1にクローニングした。このトウモロコシIPP2−K cDNAクローン(1.6kb長)をzmIP5K−1と表した。
【0151】
IPP2−K cDNAの5’−および3’−非翻訳領域(UTR)に対応する配列を得るために、InvitrogenのGeneRacer(商標)キットを用いてcDNA末端迅速増幅(RACE)試験を行った。5’−RACEでは、製造業者の説明のとおり、9DAP時点の種子のmRNAを子ウシ腸ホスファターゼおよびタバコ酸性ピロホスファターゼで処理した。キットの使用説明書のとおり、キットに同梱されているRNAオリゴヌクレオチド(RNAアンカー)を上記mRNAに連結した。もう1つのIPP2−K遺伝子特異的プライマー(5’−GCA ATA GCA AAT TGA GAT ACA TTC ATA C−3’)により逆転写を誘導した。続いて、推定トウモロコシIPP2−KキナーゼcDNAの5’末端を、RNAアンカーの配列に由来するプライマーおよび異なる遺伝子特異的プライマー(5’−TTC CAG GCG TTA AGG GTC GAG CCT−3’)を用いて増幅した。得られたアンプリコンをプラスミドベクターpCR2.1にクローニングし、配列決定した。
【0152】
3’−UTR配列を得るために、GeneRacer(商標)キットによりオリゴ−d(T)プライマーおよび3’末端のRNAアンカーに由来するプライマーを用いて9DAP−種子のmRNAの逆転写を誘導した。次いで、zmIP5K−1に由来する遺伝子特異的プライマー(5’−CGT GTT TCT AGG GAT TTT CTG GAG CTT−3’)を用いて、オリゴ−d(T)プライマーにフランキングする3’−RNAアンカー配列から推定IPP2−K転写物の3’末端を増幅した。PCR産物をpCR2.1にクローニングし、配列決定した。続いて、5’−RACE試験および3’−RACE試験の両方で得られたクローンの配列データを用いて、UTRに対応するIPP2−K特異的PCRプライマー(5’−CTT CAG TCC CTT TCC CCG GGC T−3’および5’−TTT TTT TTT TTT GGA GGA TGA AAG TTT CAC CAA ACA TTT CT−3’)を設計した。それらのプライマーを用いて、9DAP種子のmRNAのRT−PCR増幅をプラチナTaq DNAポリメラーゼハイフィデリティ(Invitrogen)を使用して行い、推定全長IPP2−K cDNAを得た。次いで、得られたPCR産物をpCR2.1にクローニングし、4つの独立したクローンを配列決定した。全長IPP2−K cDNAを代表するクローンのヌクレオチド配列を(配列番号1)として示し、このcDNAによってコードされるタンパク質の予測されるアミノ酸配列を(配列番号2)として示す。
【0153】
実施例3:ゲノムDNA配列の同定
単離推定トウモロコシIPP2−K cDNAの配列をクエリとして用い、トウモロコシゲノムデータベース(www.maizegdb.org)をBLASTにより検索し、機能が知られていないさらなる重複類似配列断片を同定した。これらの配列をZMGSStuc28403.1、ZMGSStuc 03−04−29.4761を含むコンティグ/シングレットに構築した。
【0154】
標準的なプロトコール(Sambrook)を用いてゲノムサザンブロットを行った。消化なし、またはBamH I、EcoR I、Hind IIIおよびNot I酵素で単独に消化したトウモロコシ(DAS 5XH751)ゲノムDNAを解析した。gDNA断片を0.8%アガロースでの電気泳動により分離し、ナイロン膜に移し、ストリンジェント条件(0.2×SSC、60℃)下で32P−dCTPで標識した1.6kbトウモロコシIPP2−K cDNA(zmIP5K−l)プローブ(Prime-It II標識キット, Stratagene, La Jolla, CA)25ngとハイブリダイズさせた。2個または3個の遺伝子に対応するバンドが可能性あるIPP2−K候補として同定され、これにより、その遺伝子が小さな遺伝子ファミリーとして存在することが示唆される。
【0155】
実施例4.λファージライブラリーからのIPP2−Kゲノムクローンの単離
トウモロコシ(DAS5XH751)のゲノムDNAを、液体窒素中で摩砕して微粉末にした3週齢の葉組織から単離した。gDNAは、Sambrookにより記載のとおり、標準的な臭化セチルトリメチルアンモニウムに基づく方法(CTAB)を用いて、100mM Tris pH7.5、0.7M NaCl、10mM EDTA、1%CTAB、1%β−メルカプトエタノールからなるバッファーで抽出した。得られたDNAをBamU I制限酵素で消化し、製造業者推奨のとおりクレノウ酵素 (Stratagene, La Jolla, CA)を用いてその末端を平滑末端とした。平滑末端とした後、そのDNAを抽出し、沈殿させ、製造業者により記載されたプロトコールに従って(ただし、連結バッファーおよびリガーゼ酵素はPromega (Madison, WI)の提供品)、Xho Iで前消化したλバクテリオファージベクター (Lambda FixII, Stratagene)に連結した。StratageneのGigapackキットを用い、製造業者推奨のとおり連結ミックスをGigapack III XLパックの抽出物に添加し、Sambrookにより記載された標準的な方法を用いてパッケージングされたライブラリーをLB培地にプレーティングした。得られたトウモロコシゲノムライブラリーのファージ力価は、3.6×106PFUであった。通常の増幅を行った後、このライブラリーの最終力価は3.6×1010PFU/mlとなった。
【0156】
λライブラリースクリーニング法は、Sambrookの方法から派生したものである。トウモロコシDAS5XH751ゲノムライブラリーを高密度でプレーティングし、ナイロン膜に移した。その膜をストリンジェント条件(65℃にて1×SSCで2回洗浄、0.2×SSCで2回洗浄)下で上記のように標識した1.6kb IPP2−K cDNAクローン(zmIP5K−1)断片からなるプローブとハイブリダイズさせた。陽性プラークを単離し、それらの陽性プラークに対してさらに2ラウンドのスクリーニングを行い、いくつかの推定陽性λクローンを得た。クローニングした断片をDNA塩基配列決定することにより、ゲノムIPP2−K遺伝子に由来するこれらの配列の同一性を確認した。これらの配列を下記BACクローンとともに使用して、(配列番号3)として示される隣接するゲノム配列を作製した。
【0157】
実施例5:IPP2−K遺伝子を含むBACクローンの単離および特性決定
トウモロコシ(DAS近交系5XH751)のゲノムDNAの細菌人工染色体(BAC)ライブラリーを、Zhang (2002)により記載された方法に従って調製した。
【0158】
葉組織を2週齢の幼植物組織から収集し、液体窒素で冷凍した。冷凍組織を液体窒素中で摩砕して微粉末にし、0.15%β−メルカプトエタノールおよび0.5%Triton X−100を加えた1×HB(10×ストック:0.1M Trizma base、0.8M KCl、0.1M EDTA、10mMスペルミジン、10mMスペルミン、pH9.4〜9.5)に移し、氷上で10分間回転させ、チーズクロス2枚とミラクロス1枚で濾過した。そのホモジネートをペレット化し、氷冷洗浄バッファー(0.01M Trizma base、0.08M KCl、0.01M EDTA、1mMスペルミジン、1mMスペルミン、2%Triton X−100、0.015%β−メルカプトエタノール、pH9.4〜9.5)で洗浄した。この核ペレットを洗浄バッファーに再懸濁し、1,800×g、4℃にて15分間、3回、遠心分離することにより再びペレット化した。ペレット化した核を1×HB 1mlに再懸濁し、計数した。核濃度を1×HBで5×107核/mlに調整した。無傷の核を、Zhang (2002)に記載のとおりアガロースプラグに埋め込み、0.5M EDTA、pH9.0〜9.3で50℃にて1時間洗浄し、0.05M EDTA、pH8.0で氷上で1時間洗浄し、0.05M EDTA、pH8.0中、4℃にて保存した。プラグ中のメガ塩基対DNAのさらなる精製は、核−プラグを10〜20容量の0.1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を加えた氷冷TE(10mM Tris−HCl、pH8.0、1mM EDTA pH8.0)で1時間、3回、洗浄することにより行った。DNAは、10〜20容量の氷冷TEで1時間、3回、さらに洗浄した。
【0159】
埋め込まれた核中のゲノムDNAを、Zhang (2002)に記載のとおりアガロースプラグ中で直接制限酵素 EcoRlで消化した。消化後、1/10容量の0.5M EDTA、pH8.0を加えて反応を停止させた。Zhang (2002)によるBACベクターでの連結に先立ち、消化したDNAにおいてパルスフィールドゲル電気泳動、続いてアガロースプラグにおけるサイズ選択を行った。
【0160】
Zhang (2002)に記載のとおり、BACベクターpECBACl DNAを制限酵素EcoRIで消化した。線状化したベクターDNAをCIAP酵素(Invitrogen)で脱リン酸化し、この400ul反応を0.5M EDTA、pH8.0 4μl、10%SDS 20μlおよび冷却したTE中の1mg/mlプロテイナーゼK 40μlを加えて停止させた。1/10容量の3M NaAC、pH7.0および2容量の100%エタノールを加え、−80℃にて10分間インキュベートした後、10,000rpmにて15分間遠心分離を行うことによりDNAを沈降させた。洗浄し、再懸濁した後、DNA濃度を10ng/μlに調整し、ベクターを−20℃にて保存した。
【0161】
メガ塩基対ゲノムDNAのBACベクターpECBAClへの連結は、以下のように行った:アガロースプラグから溶出したゲノムDNAを氷冷0.5×TE 1リットルで氷上で1時間、透析した(2回)。回収したDNAの濃度を1%アガロースゲル上で推定した。Zhang (2002)に記載の標準的な方法に従い、ベクター:DNA分子量比1:4にてT4 DNAリガーゼ酵素を用いて連結反応を行った。連結反応物を16℃にて8〜12時間インキュベートした。
【0162】
連結混合物のコンピテント大腸菌細胞(DHBlOB, Invitrogen)への形質転換を、電圧ブースターおよび0.15cmギャップ Cell Porator キュベットを備えたCell Porator システム(Labrepco, Horsham PA)を用いたエレクトロポレーションにより行った。エレクトロポレーション設定はキャパシタンス330uF、抵抗4Kオームであった。エレクトロポレーション後、細胞をSOC培地〜1ml中で37℃にて振盪しながら回復させ、遠心分離によりペレット化し、プレーティングまで寒剤(2.5w/v LBブロス顆粒、13mM KH2PO4、36mM K2HPO4、1.7mMクエン酸ナトリウム、6.8mM(NH42SO4、4.4%w/vグリセロール)中で保存した。培養物を、1.5%バクトアガー、90ug/ml X−gal、90ug/ml IPTGおよび12.5ug/mlクロラムフェニコールを加えたLB培地上にまばらに細菌コロニーが生じる密度でプレーティングした。各コロニーを、Q−ボットロボット(Genetix, Boston MA)採取ルーチンを利用して採取し、300 384ウェルプレートにアレイした。近交系品種DAS 5XH751に由来するこのトウモロコシBACライブラリーの力価試験では、このライブラリーにおよそ115,000クローン(平均インサートサイズは130kbゲノム断片である)が含まれていることが示された。
【0163】
アレイするトウモロコシ5XH751 BACライブラリーを、Q−ボットロボット(Genetix、, Boston MA)スポッティングルーチンを利用して、4×4グリッドの入った22cm2ナイロン膜上にスポットした。Sambrookのとおり(ただし、ハイブリダイゼーションの前にさらなる溶解工程を追加した)、フィルターをLBアガロース上で37℃にて一晩増殖させた後、変性させ、固定し、乾燥させた。そのフィルターをストリンジェント条件(65℃にて1×SSC、0.1%SDSで2回洗浄、0.2×SSC、0.1%SDSで2回洗浄)下で、IPP2−K特異的プライマー(IP5K−PF3:5’−AGTCCCTTTCCCCGGGCTGTGGTAC−3’およびIP5K−PR1:5’−TTAAGTTGTTCTGAGGAGTTGAGAAAAGGGA−3’)を用いたcDNAクローン(zmIP5K−l)のPCRにより作製された916bp IPP2−K断片(zmIP5K−l)からなるプローブとハイブリダイズさせた。プローブをInvitrogenのランダムプライマー標識キットを用いてγ32−P dCTPで放射性標識した。陽性クローンの可視化は、ストレージフォスファスクリーンを用いた16時間露光でのフォスファイメージング、その後の、Incogen (Williamsburg, VA)高密度フィルターリーダーソフトウエアを実行するStorm フォスファイメージャー(Molecular Dynamics, Mountain View CA)解析により行った。陽性クローン培養物をライブラリープレートアレイから回収し、LB培地中で37℃にて一晩増殖させた。製造業者の使用説明書のとおりQiagen (Valencia CA)ラージコンストラクトキットを用いて単離クローンからBAC DNAを抽出した。IPP2−Kのコード領域に特異的なPCRプライマー(IP5−IPF:5’−CGCGGATGCCAAGGACTGGGTTTACAAGGG−3’およびIP5−IPR:5’−TTACAACAGCAGCACCAAGCAGCAGGAAC−3’)を用いて、推定陽性クローンを増幅し、BACにおけるIPP2−K遺伝子の存在を確認した。IPP2−K遺伝子を含むBACクローンをNotIで制限し、それらに対してパルスフィールドゲル電気泳動を行い、解析した。インサートサイズを、IPP2−K遺伝子を含むトウモロコシ染色体のゲノム領域に相当するおよそ180kb長であると推定した。IPP2−Kを含むBACクローンの配列決定は、BAC DNAの直接配列決定を通じて、またはBACのショットガン−サブクローニング後、プラスミド配列決定およびコンティグ構築(Lark Technologies, Houston TX)を行うことにより行った。複数のBAC配列ランを作製し、上記λファージクローン配列とアラインして、(配列番号3)と表される隣接するゲノム配列を得た。トウモロコシDAS 5XH751のIPP2−K遺伝子を含むゲノム遺伝子座の構造を図3に示す。
【0164】
実施例6:in vitroにおけるIPP2−K活性の特性化
製造業者推奨のとおり、1.32kbの予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)に対応するトウモロコシIPP2−K cDNAクローンの断片をpGEX−2Tプラスミド発現ベクター(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)にクローニングし、大腸菌細胞(BL21(DE3) pLysS)で発現させた。このベクターは、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)ペプチドの発現タンパク質N末端へのインフレーム融合物を作製するように設計した。
【0165】
標準的な抽出溶解バッファー(50mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、10mM EDTA、1mM DTT、1mM PMSF、1mg/mlリゾチーム、後に0.4%Triton X−100の添加を行った)により、大腸菌細胞から全タンパク質を抽出した。得られた大腸菌溶解物を、氷上でBranson Sonifier 450(Branson Ultrasonic Corporation, Danbury CT)を出力設定20%およびデューティサイクル50%で各30秒、4サイクル間用いて超音波処理した。細菌発現タンパク質をグルタチオン−アガロースカラムに通し、バッファーA(50mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、10mM EDTA、1mM DTT、1mM PMSFおよび0.4%Triton X−100)で3回、バッファーB(50mM Tris−HCl、pH8.0)で3回洗浄し、50mM Tris−HCl中の10mMグルタチオンで溶出した。Bio-Rad (Hercules CA)タンパク質アッセイ試薬によって判定したタンパク質含有画分0.5mlをプールし、SDS−PAGEにより解析した(Sambrook)。異種発現した精製タンパク質は、Shevchenko, A. et al. (1996) Anal. Chem. 68:850-858により記載されたペプチド断片フィンガープリント法を用いてトウモロコシIPP2−Kと同一であることが確認された。
【0166】
異種発現したトウモロコシIPP2−Kタンパク質の、複数のイノシトール−リン酸種(イノシトールテトラキスリン酸(IP4)およびイノシトールペンタキスリン酸(IP5)を含む)をリン酸化する能力を、32P標識イノシトールリン酸を従来の薄層クロマトグラフィーを用いて分離した後、オートラジオグラフィーにより確認した(図4)。20mM HEPES(pH7.5)、6mM MgCl2、10mM LiCl、1mM DTT、40ng/μlイノシトールリン酸基質、40μM ATPおよび5μCiのγ−32P標識ATP(3000Ci/mmol)を含む反応バッファーにより精製タンパク質のトウモロコシIPP2−K活性測定を行った。反応混合物をPEIセルロースTLCプレート上にスポットし、1.0N HClで展開した。これらのキナーゼ活性測定の結果により、トウモロコシIPP2−K酵素はイノシトール1,3,4,5,6ペンタキスリン酸(IP5)の変換に触媒作用を及ぼして、イノシトール環の2位の位置でのリン酸化反応を介してイノシトール1,2,3,4,5,6ヘキサキスリン酸(フィチン酸)を生成させることができるということが示された(図4)。さらに、このトウモロコシ酵素は、イノシトール1,4,5,6テトラIリン酸(IP4)をリン酸化して、IP5を産生することもできた。さらに観察された酵素活性としては、イノシトール1,4,6−三リン酸(IP3)を放射活性物質で標識したIP3生成物へと変換する能力が含まれた。これらの結果に基づけば、このトウモロコシ酵素はイノシトールポリリン酸キナーゼである。
【0167】
上記TLCアッセイで観察されたIPP2−Kのイノシトール1,4,6−三リン酸キナーゼ活性の異性体特異性をさらに特徴付けるために、NMRに基づくアプローチを利用して、基質変換を調べた。この実施例では、D2O中の50mM Tris DCl、pH7.5、10mM LiCl、6mM MgCl2、1mM DTT、1mMイノシトール、1,4,6−三リン酸および1mM ATPを含む溶液600ulを5mm NMRチューブに入れ、Bruker DRX−600 NMRでのプロトンNMRにより分析した。Liu el. al (2001)の方法に従ってRECUR−TOCSYパルス系列を用いてデータを収集し、下部にある基質ピークを維持しながら4.8ppmにある広い残留水ピークを排除した。出発材料を特性決定した後、精製した異種発現トウモロコシIPP2−K酵素45ugをチューブに加え、従来どおりプロトンNMRを用いて反応をモニタリングした。全てのスペクトルを室温にてプロトン共鳴周波数600MHzで得た。データポイント32K、パルス幅30度および緩和遅延2秒で合計128回の走査を用いた。データ収集および加工を標準的なBrukerソフトウエアXWIN−NMRを用いて行った。酵素の存在下における37℃でのインキュベーションの0分および120分の時点を示すスペクトルを図5に示す。開始時点と終了時点のスペクトルを比較することにより、IPP2−K酵素の存在下において、イノシトール1,4,6−三リン酸がイノシトール1,2,6−三リン酸へと変換されることが示される(図5)。この結果より、IPP2−Kは、TLCアッセイで観察されたようにイノシトール1,4,6−三リン酸の脱リン酸化およびリン酸化の両方に触媒作用を及ぼし得る;さらに、IPP2−Kのキナーゼ活性はイノシトール−2位の位置におけるリン酸化に特異的であり、このことより、IPP2−K遺伝子によってコードされる酵素はイノシトールポリリン酸−2キナーゼであるということが確認される。
【0168】
実施例7.in vivoにおけるIPP2−K活性の特性化
トウモロコシDAS 5XH751から単離されたIPP2−K cDNAによってコードされるタンパク質の機能性は、遺伝的相補性試験により試験し得る。一例を挙げれば、IPP2−K遺伝子に変化を有する双子葉植物(dicotyledenous plant)シロイヌナズナの変異体は、フィチン酸蓄積減少の表現型を示し得る。例えば、あるものは、トウモロコシIPP2−K cDNA配列をクエリとして使用して、TAIRデータベース(www.arabidopsis.org)を検索することにより、予測されるIPP2−K遺伝子にT−DNA挿入物を含むものであるとして記載された、公開されているシロイヌナズナ系統を同定することができる。そのようなT−DNA挿入物を含む系統は、分断されたIPP2−K遺伝子の発現の低下またはノックアウトを示し、その結果として、酵素活性が低下または消失している場合がある。それらの系統の自家受粉後代の種子に対しては、米国特許第006111168A号におけるRaboyにより記載されているchelating assayを用いてフィチン酸含量分析を行うことができる。トウモロコシIPP2−K遺伝子と相同のシロイヌナズナIPP2−K遺伝子の破壊と、結果として起こるIPP2−K活性の消失により、フィチン酸蓄積の減少がもたらされ得ることが予測される。そのような植物を、機能的トウモロコシIPP2−K遺伝子を発現するように、Weigel, D.& Glazebrook, J. (2002) Arabidopsis A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)に記載のとおり、遺伝的形質転換により操作する場合、これらの突然変異系統では、フィチン酸蓄積が正常なレベル、正常に近いレベルまたは増加したレベルに回復し得ることが予測される。
【0169】
上記のシロイヌナズナ試験に類似したもう1つの例において、当業者ならば、IPP2−K遺伝子が破壊されている、公開遺伝子コレクション、(http://www.uniformmu.org;またはhttp://w3.aces.uiuc.edu/maize-coop/)などのトウモロコシの変異体を同定することができる。例えば、トウモロコシのいくつかの変異体は、IPP2−K遺伝子にMu転移因子が挿入されて存在することから、IPP2−K遺伝子が破壊されている可能性がある。これらの変異体はフィチン酸蓄積レベルの低下を示し得ることが予測される。そのような変異体は遺伝的形質転換によって機能的トウモロコシ遺伝子を発現させることにより補完することができる。そのような植物を、トウモロコシIPP2−K遺伝子を発現するように遺伝的形質転換により操作すると、これらの突然変異系統ではフィチン酸蓄積が正常なレベルまたは正常に近いレベルに回復することが予測される。
【0170】
前掲の例において、当業者ならば、NMR解析を利用して、遺伝子操作した植物に存在するイノシトールリン酸代謝産物の量および種類を決定することができる。IPP2−K遺伝子発現が変化したためにフィチン酸蓄積減少を示す植物では、フィチン酸前駆体(例えば、IP5、IP4など)の量および/または種類も変化したと予測される。例えば、そのような変異体からの植物抽出物をリンNMRを用いて解析して、フィチン酸減少によるフィチン酸前駆体の蓄積への影響を判定してもよい。この例を示すために、近交系DAS 5XH751の成熟トウモロコシ種子に存在するイノシトールリン酸分子の測定を行った。この例では、乾燥させた成熟トウモロコシ種子のトウモロコシ粉10gを0.5N HClで抽出し、濾過し、濃縮乾固し、80%メタノールで洗浄した。このメタノールスラリーを黒色タールになるまで濃縮し、30mg/ml EDTAを含むD2O溶液に溶かした。溶液のpHをNaOHを用いて、>12に調整した。濾過せずに、続いて、リンNMR解析を行った。5−mm 1H/13C/19F/31Pプローブを装備したBruker DRX−400 NMR分光計において、400.13MHzにてリンNMRスペクトルを得た。全てのスペクトルを室温にてプロトンデカップリングにより得た。データポイント64K、パルス幅30度および緩和遅延2秒を用いて、合計トランジエント23Kを得、合計取得時間は16時間であった。32Kポイントのスペクトルの未加工データを0で埋め、1.0Hz指数荷重関数を用いて加工した。得られたスペクトルを図6に示す。非突然変異トウモロコシでは、図6に見られるように、イノシトールヘキサキスリン酸(フィチン酸)が主要なイノシトールリン酸種であり、イノシトールペンタキスリン酸およびテトラキスリン酸が少量存在していることが予測される。
【0171】
実施例8:高速中性子(FN)照射を用いたトウモロコシ種子の突然変異誘発
細胞のFN衝撃の方法論および一般的な遺伝的影響については、van Harten (1998)により十分に記載されており、Li, X. et al. (2001) Plant J. 27: 235-242により記載されているように、シロイヌナズナ植物へのこの方法の利用では好結果が得られている。FNは、一般に、概算サイズ範囲が数百塩基対〜数千塩基対以上の欠失を生み出すと予想することができる。FN照射の有効性は、処置を受ける生体物質の種類および量に依存する。この実施例では、ハンガリー、ブダペストにある原子力研究所(the Atomic Energy Research Institute in Budapest, Hungary)において高速中性子ビーム源を用いて照射を行った。トウモロコシ種子サンプルを突然変異誘発する一試験では、照射前に、収穫後約40%の水分まで乾燥させたバルク種子を、研究室の乾燥炉で80℃にて14時間処置する前後に質量を測定することによって水含量について分析した。計器ビーム較正に従って、サンプルの水の重量%に基づき、実際に算出されるビーム露光時間を調整した。これらのサンプルでは、2Y/Cd回転幾何学のBRRのBIFにおける照射幾何学を適用した。照射はU−235、Th−232核分裂電離箱およびによりモニタリングした。種子の各袋に各1145秒間、照射を行い、2Y/Cdでの実際の平均カーマ率12.71mGy/s+3%を得た。複数のトウモロコシ種子サンプルを高速中性子の目的の線量範囲11〜20Gy(11、13、15、17、20Gy)で処置した。得られたM1種子を播種し、標準的な中西部の現場条件下で生育させ、開放受粉させ、各M1雌穂を個別に収穫して、M2系統を得た。各成熟雌穂を収集し、乾燥させ、皮を剥き、M2系統特異的識別子を表示した個々の包装材にパッケージングした。
【0172】
実施例9:突然変異誘発した種子からのゲノムDNAの単離
Invitrogen (Carlsbad, CA)のCharge−Switch技術(CST)による方法に以下の変更を加え、96ウェル形式で、乾燥させたトウモロコシ種子全体から、ゲノムDNAを単離した。ゲノムDNAの抽出のため、各M2系統の種子サンプルを包装材からそれぞれ取り出した。各系統から6個の種子を24ウェル深型ウェルプレート(CoStar Scientific, Cambridge MA)の各ウェルに入れ(1ウェルにつき1系統)、一晩吸水させ、続いて凍結乾燥チャンバー(Virtis, Gardiner NY)で真空下、少なくとも48時間凍結乾燥させた。タングステンカーバイドビーズ(Small Parts, Inc., Miami Lakes FL)と組み合わせて、Genogrinder (Spex Certiprep, Metuchen NJ)を最大設定で用いて、乾燥させた種子を摩砕して粉末にし、0.25%SDS、10mM EDTA pH8.0、50mM Tris pH8.0からなる水性バッファーに再懸濁した。遠心分離後、抽出物上清を新しいプレートに移し、1ウェルにつき6サンプルの組合せ(M2ファミリー)にプールした。氷上でNaClを終濃度750mM、KOAcを1.2Mまで添加した後、短時間遠心分離することにより、溶液からタンパク質を沈殿させた。その上清にPEG8000を終濃度8%まで添加し、混合し、遠心分離して、gDNAをペレット化した。ペレットをCST (Invitrogen)消化ミックスに再懸濁し、製造業者のプロトコールどおりにBiomek FXロボット液体処理システム(Beckman-Couter, Inc., Fullerton CA)を用いて、gDNAを抽出した。溶出後、DNAサンプルを複数の密閉プレートに等分し、湿度容器に入れて−80℃または4℃のいずれかで保存した。
【0173】
実施例10:PCRに基づく欠失変異体スクリーニング
標的遺伝子における欠失についてスクリーニングするために、PCRに基づく方法を適用することができる。そのようないくつかの方法の例については、米国特許出願第20050053975号に記載されている。例えば、目的の遺伝子にフランキングするゲノム配列に対応するオリゴヌクレオチドプライマーは、遺伝子座の配列データに基づいて設計することができる。DNAサンプルに対して、製造業者推奨のとおり(Takara-Bio, Inc., Shiga, Japan)ロングPCRに最適化した市販の方法および酵素(LA−Taq)を用いたPCR増幅を行い得る。欠失の検出をルーチンのアガロースゲル電気泳動(Sambrook)により行って、PCR産物バンドを可視化することができる。この方法の有用性を示すために、トウモロコシAdh−1遺伝子座にフランキングするゲノムDNA配列に対応するオリゴヌクレオチドプライマーを公開情報に基づいて設計した。これらのプライマーを用いて、次の条件下でトウモロコシゲノムDNAを増幅した:1×LA−Taqバッファー、1.6mM dNTPs、0.5mM MgCl2、2%DMSOおよびLA−Taq酵素を含む反応混合物をgDNA鋳型(1〜30ng)および0.4μMオリゴヌクレオチドプライマー(プライマーAdh16s:5’−GTCTGACAACGCCTGAGATTGAATCGAAGACC−3’、プライマーAdh21a:5’−CAGCTACCACTTGCGCTTGAGGGATTTGAA−3’)に加えた。このPCR反応物を自動サーモサイクラー(MJ Research, Waltham, MA)で次の温度管理下で増幅した:ステップ1:94℃、1分間;ステップ2:98℃、10秒間;ステップ3:70℃、15分間;ステップ4:ステップ2&3をさらに31サイクル繰り返す;ステップ5:72℃、10分間;およびステップ6:貯蔵のため4℃に維持。
【0174】
得られたPCR産物を従来のアガロースゲル電気泳動を用いて解析した。このようにして作製されたアンプリコンは全Adh−1遺伝子と数kbのフランキング配列という、合計12.3kbのDNA配列を含んでいた。そのような反応に使用される鋳型gDNAがその12.3kbスパン内に欠失を含む場合では、より小さなPCR産物を検出する可能性があり、このことにより起源生殖質における突然変異が示される。本発明者らはこの方法を他のいくつかの対象遺伝子にも適用した。これらの例にて示されるように、当業者ならば、対照と比べてサイズが小さいアンプリコンを示すPCR反応物を検出することができる。これらの反応に使用されるDNA鋳型の種子起源は、推定欠失突然変異と言うことができ、この推定欠失突然変異に対して解析を繰り返すことができる。一度、欠失が確認されたら、そのファミリーの突然変異トウモロコシを生育させ、自家受粉させて、同形接合体生殖質を作出することができる。そのような生殖質の種子のフィチン酸レベルは、Raboy前掲により記載されているようなフィチン酸検出のための従来のアッセイを用いて10〜20個のM3種子で測定することができる。フィチン酸が減少している種子を再び生育させ、動物飼育試験または他の用途での栄養価が強化されているかどうか試験することができる。
【0175】
【表1】

【0176】
本願に引用されている刊行物、特許、特許出願およびコンピュータープログラムは、個々の刊行物または特許出願が引用文献により組み込まれることが個々に明示される場合と同様に、引用文献により本明細書中に組み込まれる。
【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1A】本明細書で特許請求されるトウモロコシIPP2−Kと他のトウモロコシイノシトールキナーゼの類似性を示す。配列類似性の程度が低いことは、トウモロコシIPP2−Kが新規なイノシトールリン酸キナーゼであることを示唆する。
【図1B】トウモロコシIPP2−Kタンパク質配列とトウモロコシおよび多種由来イノシトールリン酸キナーゼの間の系統発生的関係を示す。広範な種(ヒト〜アラビドプシス(Arabidopsis))の推定IPP2−K遺伝子が近縁である。これに対し、他のイノシトールリン酸キナーゼは、系統発生樹の異なる3つのブランチに分類される。
【図2】推定植物IPP2−K遺伝子から予測されるアミノ酸配列の比較を示す。
【図3】トウモロコシ近交系DAS 5XH751のIPP2−Kの遺伝子組成を示す。
【図4】放射性標識基質とTLCを用いて検出する場合の、32P−γATP、IP4およびIP5基質を用いたトウモロコシIPP2−Kのin vitroキナーゼ活性を示す。IPP2−Kは、イノシトール1,4,5,6−テトラキスリン酸をイノシトールペンタキスリン酸に変換し、イノシトール1,3,4,5,6−ペンタキスリン酸をフィチン酸塩(イノシトールヘキサキスリン酸)に変換する。
【図5】1H−NMRにより検出する場合の、IPP2−K酵素とATPの存在下でのイノシトール1,4,6−三リン酸からイノシトール1,2,6−三リン酸へのin vitro変換を示す。
【図6】トウモロコシ近交系DAS5XH751からの種子抽出物のリン−NMRスペクトルを示すが、これはイノシトールリン酸種の存在を示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号1または配列番号3を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号1と少なくとも65%の配列同一性を含むポリヌクレオチド、ここで、この配列同一性%は配列番号1の全コード領域に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される;
(c)配列番号1と少なくとも46%の配列同一性を含むポリヌクレオチド、ここで、この配列同一性%は配列番号1の全コード領域に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される;
(d)配列番号2を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(e)配列番号1および3に基づくプライマーを用いて植物核酸から増幅される核酸の配列を含むポリヌクレオチド;
(f)ストリンジェント条件下で配列番号1のポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、ここで、このハイブリダイゼーション条件は0.1×SSC中、60℃での洗浄工程を含む;
(g)トウモロコシイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするポリヌクレオチド;および
(h)植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択されるメンバーを含んでなる、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
ポリヌクレオチドが植物ポリヌクレオチドである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが少なくとも25ヌクレオチド長である、請求項1(e)に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
(a)配列番号2の少なくとも25個の隣接するアミノ酸を含むポリペプチド;
(b)配列番号2の全長に対して少なくとも45%の配列同一性を含むポリペプチド、ここで、この配列同一性%は全配列長に基づくものであり、GAP10分析によりデフォルトパラメーターを用いて決定される;
(c)請求項1の核酸によりコードされているポリペプチド;
(d)配列番号1の核酸によりコードされているポリペプチド;および
(e)配列番号2で示される配列を有するポリペプチド
からなる群から選択されるメンバーを含んでなる、単離されたタンパク質。
【請求項7】
配列番号2と少なくとも65%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、イノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性を有する、単離されたポリペプチド。
【請求項8】
イノシトール(insositol)ポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に損傷を含む植物組織を同定する方法であって、
(a)植物組織に対して突然変異誘発を行うこと;
(b)突然変異誘発を受けた植物組織またはその後代からDNAサンプルを得ること;
(c)DNAサンプルを、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子の損傷に関してアッセイすること
を含む、前記方法。
【請求項9】
突然変異誘発が高速中性子突然変異誘発であり、植物組織がトウモロコシ組織である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に人工的に誘発された損傷を含む、トウモロコシ種子。
【請求項11】
前記損傷がイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子の活性に影響を及ぼし、人工的に誘発された損傷が遺伝子ノックアウトである、請求項10に記載のトウモロコシ種子。
【請求項12】
請求項10に記載の種子を生育させることにより産生される、トウモロコシ植物またはその一部。
【請求項13】
前記植物が雄穂を除去(detassel)されている、請求項12に記載のトウモロコシ植物。
【請求項14】
請求項12に記載の植物から産生された再分化可能な細胞の組織培養物。
【請求項15】
前記組織培養物の細胞が、葉、花粉、胚、根、根端、葯、絹糸、花、穀粒、雌穂、穂軸、皮および茎からなる群から選択される組織に由来するものである、請求項14に記載の組織培養物。
【請求項16】
イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に人工的に誘発された損傷を含む、カノーラ(Brassica napus)種子。
【請求項17】
動物飼料中のフィチン酸レベルを低減する方法であって、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に損傷を含む植物から動物飼料を生産することを含み、その動物飼料が低いフィチン酸塩レベルを有する、前記方法。
【請求項18】
動物性排泄物中のリンレベルを低減する方法であって、イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子に損傷を含む植物から動物飼料を調製することを含む、前記方法。
【請求項19】
イノシトールポリリン酸2−キナーゼ活性が変更されており、その種の親生殖質よりも低いフィチン酸含量を特徴とする、穀類植物種の非致死的突然変異種子。
【請求項20】
(a)請求項19に記載の種子
を含んでなる、動物飼料。
【請求項21】
配列番号2を含んでなるポリペプチドを免疫原として使用することにより産生された精製抗体。
【請求項22】
好適な容器手段中に、請求項21に記載の抗体と免疫検出試薬とを含んでなる、免疫検出キット。
【請求項23】
検出可能な標識と作動可能なように結合されている、請求項21に記載の精製抗体。
【請求項24】
(a)(1)イノシトール(insositol)ポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子鎖の対応する部分と実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列(ここで、これらのアンチセンスヌクレオチド配列は低または中ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする)または(2)イノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードするDNA分子によりコードされるRNA配列の対応する部分と実質的に相補的なアンチセンスヌクレオチド配列、および(b)そのアンチセンスヌクレオチド配列が、それが形質転換された植物細胞内で発現されるように、アンチセンスヌクレオチド配列と作動可能なように連結された調節配列とを含んでなる、植物細胞の形質転換用ベクター。
【請求項25】
植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼ遺伝子のRNA転写物の対応する部分と実質的に相補的なRNA分子をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチドであって、その植物遺伝子をコードするDNAが低または中ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項26】
約6〜約100ヌクレオチドを含んでなる、請求項25に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記植物遺伝子のコード領域が配列番号1のヌクレオチド配列を有する、請求項25に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項28】
前記植物遺伝子がトウモロコシ遺伝子である、請求項25に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチド。
【請求項29】
請求項24に記載のベクターで形質転換された細菌細胞。
【請求項30】
請求項24に記載のベクターで形質転換された植物細胞。
【請求項31】
請求項24に記載のベクターで形質転換された植物細胞から産生された植物またはその後代。
【請求項32】
植物からの種子収量を高める方法であって、(1)その植物のゲノムに請求項24に記載のベクターを組み込むこと;および(2)その植物を生育させ、それにより、前記アンチセンスヌクレオチド配列を転写させ、前記RNA配列と結合させ、イノシトールポリリン酸2−キナーゼ遺伝子の発現を阻害することを含む、前記方法。
【請求項33】
遺伝子ノックアウトによりもたらされる所望の形質を有する突然変異植物を作出する方法であって、
(a)植物花粉または植物種子を収集すること;
(b)その植物花粉または植物種子収集物を、UV、γ線、X線および高速中性子からなる群から選択される照射線により処理すること;および
(c)所望の形質を有する突然変異植物を選択すること
を含む、前記方法。
【請求項34】
植物種子の収集がトウモロコシ穀粒またはカノーラ種子の収集である、請求項33に記載の方法、
(a)照射線が高速中性子であり、突然変異の供給源として照射花粉が使用される、請求項33に記載の方法、
(b)遺伝子ノックアウトがイノシトールポリリン酸2−キナーゼをコードする遺伝子におけるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
DAXDWXYXXEGXXNLXLXYXGSSP、VEIKXKCGFLXXSXXIXXXNXXKXXXXRXXMXQXCKXXXXXISXXSEYXPLDLFSGSKXXXXXAIKXXXXTPQNXXXXXXGSLXXGG、ISXXSEYXPLDLFSGSK、LXXLLXXQKLDXXIEGXIHXYY、及びLIXXTAXDCSXMISFからなる群から選択される、少なくとも1つのモチーフを含んでなる、単離された植物イノシトールポリリン酸2−キナーゼタンパク質。
【請求項36】
少なくとも2つの前記モチーフを含んでなる、請求項35に記載の単離された植物タンパク質。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−512124(P2008−512124A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531353(P2007−531353)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/032109
【国際公開番号】WO2006/029296
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(390039192)ダウ・アグロサイエンス・エル・エル・シー (20)
【氏名又は名称原語表記】Dow AgroSciences LLC
【Fターム(参考)】