説明

イミダゾールあるいはベンズイミダゾール基を持つ改良モノマーとそのポリマー、及びそれによって製造された燃料電池製造用のプロトン交換膜

本発明は、イミダゾール(3)タイプの複素環をもつモノマー(6,14)である。本発明によれば、モノマー(6,14)の化学構造は、少なくとも式(1)〔式中、R1がアルケニル基であり、R2が複素環の窒素原子の一つの保護基である。〕をもっている。本発明は、またベンズイミダゾールタイプ複素環をもつモノマーである。本発明は、また上記モノマーから得られる保護基をもつポリマー、保護基をもつポリマーから脱保護基して製造された脱保護基されたポリマー、脱保護基されたポリマーをベースにして製造されたイオン交換膜、この膜を用いた燃料電池に関するものである。さらに、本発明は、上記モノマーおよびポリマーの製造方法に関するものである。
【化3】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水なしでプロトン交換ができる膜を製造するに使用できるモノマーとポリマーに関するものである。本発明は、またそのモノマーとポリマーの製造方法、及びそのモノマーから製造できる膜、及びこの膜の燃料電池の固体電解質ポリマーまたはプロトン交換膜としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池では、電解質が、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するアノード反応およびカソード反応の場である二つの活性層の間にサンドイッチ状に挟まれる。この形態で、電解質は、一方の活性層から他方の活性層にプロトンが移動されなければならない。実際、この燃料電池は、固体ポリマー燃料電池(SPEFC;Solid Polymer Electrolyte Fuel CeIl)またはプロトン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel CeIl)であり、概念と機能で最も進歩したものである。
【0003】
プロトンの移動を行わせるため、公知の膜は、20〜30%の水を含んでおり、水の分子がプロトンを溶媒和して膜内を非常によく動けるようにしている。
【0004】
膜を構成するポリマーが酸官能基を有すると、水の分子が酸官能基を解離してプロトンを遊離し、そのプロトンが移動する。
【0005】
膜の働きは、含有する水の量により制限され、膜を可能な限り脱水するとプロトンの移動を抑えることになる。この脱水は、水分子が移動しても、および/または燃料電池が作動する温度によっても起こり得る。実際、水分子は膜のポリマー構造に結合していないので、動くことができ、プロトンの流れで膜を通過する。この結果、導電性が減少し、プロトンの移動が完全に止まる。
【0006】
別の方法で水分子の移動による脱水を抑えることができるが、これらの方法は、反対に(加湿のための追加で)燃料電池システムの高価格と複雑さを招くことになる。
【0007】
また、大気圧下で100℃という水の沸点による燃料電池の作動温度に限界がある。この温度は物理的限界で、この限界を超えると水の量が減り、膜が完全に乾燥してしまう。
一つの解決法は、熱力学の法則により、システムの作動圧力を高くして、水の沸点を高くすることである。しかしながら、作動圧力を高くすると膜を横切るプロトンの流れが、水分子の移動をより多くして、最終的に燃料電池の性能を損なうことになるので、この解決法は満足できるものではない。
【0008】
燃料電池に使用されるイオン性膜を構成するポリマーの多くは、プロトン基SOH、POを有している。これらの官能基は、水、または塩基性の分子または官能基の存在下で解離する。これら塩基性基がプロトンの供与と受容の場で異なるとき、プロトン移動における水分子と同じ役割を担うことができる。しかしながら、このタイプの膜では、燃料電池の作動時に溶出問題が起きることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、特に上記した不都合を回避するためになされたものであり、100℃以上の作動温度でもプロトンの移動ができる膜、および高収率の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明による膜は、水が存在しなくとも膜中でプロトン移動ができる複素環を有する複素環ポリマーをベースにして製造される。プロトンの移動は、複素環により行われており、複素環が膜中に結合していることで、水分子に比較して溶出の問題も回避できるというさらなる利点を与えている。
【0011】
より正確には、本発明はイミダゾールタイプの複素環をもつモノマーに関するものであり、イオン交換膜の製造に使用でき、その化学構造は、少なくとも下記の式で示される。
【化1】

式中、R1は、アルケニル基であり、R2は、複素環窒素原子の一つを保護するベンジルまたはトリアルキルシリル基のような保護基である。
【0012】
一つの実施の形態では、R1が化学式CH=CHであり、また別の実施の形態では化学式(CH−O−CH=CHである。
【0013】
さらに、本発明による膜を構成するポリマーの製造方法は、イミダゾールタイプの複素環と、この複素環窒素原子の一つに保護基をもつモノマーを製造し、この保護基をもつモノマーを重合して保護基をもつポリマーとし、保護基をもつポリマーから保護基を脱落させる脱保護基段階を行って、プロトン交換ポリマーを高収率で得ることができる。
【0014】
本発明は、また、イオン交換膜の製造に使用できるベンズイミダゾールタイプモノマーに関するものである。
【0015】
本発明によれば、このモノマーの化学構造は、少なくとも下記の式で示される。
【化2】

式中、Rは、複素環窒素の一つの保護基である。
【0016】
さらに、本発明による膜を構成するのポリマーの製造方法は、ベンズイミダゾールタイプの複素環と、この複素環窒素原子の一つに保護基をもつモノマーを製造し、この保護基をもつモノマーを重合して保護基をもつポリマーとし、保護基をもつポリマーから保護基を脱落させる脱保護基段階を行って、プロトン交換ポリマーを高収率で得ることができる。
【0017】
この方法は、次の段階でなっている。
−少なくとも、o−フェニレンジアミンとフッ素をもつモノマーを、有機溶剤の存在下に反応して、ベンズイミダゾールタイプの複素環をもち、フッ素をもつ中間体とする反応段階、
−少なくとも、中間体のベンズイミダゾール基窒素原子の一つに、ベンジル基、トリアルキルシリル基(R1R2R3Si)、またはカルバメート基(COR1)のような置換基Rで保護する保護段階、
−少なくとも、上記の反応で得られた化合物を、塩基と反応させる脱フッ化水素段階、
【0018】
別の特徴では、本発明は、保護基をもつモノマーをベースとしてなる保護基をもつポリマー、およびこの保護基をもつポリマーの製造方法に関するものである。
【0019】
一つの特徴では、保護基をもつポリマーは、保護基をもつモノマーをラジカル単独重合して、または保護基をもつモノマーを、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、2H−1,1,3,3,3−ペンタフルオロエチレン、またはペルフルオロアルキルビニルエーテルのようなフッ素をもつモノマーと共重合して得ることができる。
【0020】
本発明は、また、保護基をもつポリマーから脱保護基されたポリマー、および脱保護基されたポリマーの製造方法に関するものであり、脱保護基されたポリマーの製造方法は、ポリマーの保護基を水素原子に置換え、ベンズイミダゾールタイプ複素環をもつ脱保護基されたポリマーとする窒素原子の脱保護基段階を有している。
【0021】
本発明は、また、脱保護基されたポリマーから製造されたイオン交換膜、このイオン交換膜を電解質とした燃料電池、およびこの膜を電解質としてもつ電気分解装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明、およびその別の目的、利益、特徴は、添付した図面を参照した記載でより良く理解できるであろう。
【図1】本発明によるポリマーに結合できる複素環の例を示している。
【図2】本発明によるイミダゾールタイプ複素環をもつ第1モノマーの合成を示している。
【図3】図2の反応における反応物である中間体の合成を示している。
【図4】図2の第1モノマーから本発明のポリマーの合成を示している。
【図5】図4に示したポリマーの19F−NMRである。
【図6】図4に示したポリマーのH−NMRである。
【図7】イミダゾールをもつ第2ポリマーの生成を示している。
【図8】イミダゾールタイプ複素環をもつ第2モノマーの生成を示している。
【図9】図3の1−ベンズイミダゾール7である。
【図10】図3の中間体9を示している。
【図11】中間体7のH−NMRスペクトルである。
【図12】本発明による第1モノマーである。
【図13】図12のモノマーのH−NMRスペクトルである。
【図14】ベンズイミダゾールにフッ素をもつモノマーを製造する当業者に公知の反応である。
【図15】本発明による保護基をもつ第1モノマーを製造する第1段階(a)である。
【図16】本発明による保護基をもつ第1モノマーを製造する第2段階(b)および第3段階(c)である。
【図17】図17の段階(c)で製造されたモノマーの19FとH−NMRである。
【図18】ベンズイミダゾールをもつ第2モノマーである。
【図19】本発明による保護基をもつ第2モノマーの製造方法における第1段階(a)を示している。
【図20】保護基をもつ第2モノマーの製造方法における第2段階(b)を示している。
【図21】保護基をもつ第2モノマーの製造方法における第3段階(c)を示している。
【図22】図8の保護基をもつモノマーの重合(d)、および段階(d)で得たポリマーの窒素原子の脱保護基を説明している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、大気圧下、特に200℃のような100℃以上でもプロトン交換性能がある膜を形成するポリマーを提供するものである。
【0024】
プロトンの移動は、膜のポリマー構造に固定し結合された複素環2によってできる。このように、複素環2は、大きいプロトン束でもプロトンに伴って移動せず、その結果、高温でも電池の効果を完全に維持している。これには、従来の膜の水分子の代りに、プロトン溶剤として、図1に示したイミダゾール3、ピラゾール4、ベンズイミダゾール5などの複素環2を使用していることにある。つまり、水のように、複素環2は水素結合のネットワークを作り、水の場合と同じようにプロトン移動特性を持っている。
【0025】
複素環2が固定された状況では、プロトン移動は、実質的に複素環2の間をプロトンが移動し、再編成する公知のグロッタス(Grotthuss)タイプの拡散メカニズムに基づいている。
【0026】
複素環2をもつ多くのポリマーが合成され、以下、複素環イミダゾール3をもつポリマー群とその製造ができる種々の方法を詳しく述べる。
【0027】
このポリマーの第1の製造方法は、1−ベンジル−2−(ビニルオキシエチルオキシメチル)イミダゾール6のようなイミダゾール6のモノマーを、ZnI、HgI、またはその他沃素錯体、およびクリベロ(Crivello)塩を開始剤にして、カチオン単独重合することにある。
【0028】
モノマー6の合成は、図2に示すように、相転移触媒(CTP)を用いて、1−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾール7のような中間体7の分子を、2−クロロエチル−ビニル8と反応させて行われる。この反応に使用される相転移触媒は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドであり、収率は85〜90%である。
【0029】
中間体7の分子の生成段階は当業界では知られており、図3に示され、1−ベンジルイミダゾールとホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒド10との反応によっている。
【0030】
モノマー6を上記カチオン単独重合して、複素環イミダゾール3が結合したポリマーが得られ、複素環イミダゾール3の窒素原子は、ベンジル基により保護されていて、このポリマーをPd(OH)と反応させることで脱保護基される。
【0031】
本発明によるイミダゾール3のポリマーを製造する第2の方法は、上記したモノマー6を、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP,X=CF)および/またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE,X=Cl)、またはブロモトリフルオロエチレン(XTFE,X=Br)、トリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)のようなフルオロモノマー11と、図4に示すラジカル共重合することにあり、イミダゾール3をもつ第1のフルオロポリマー12となる。
【0032】
ラジカル共重合は、オートクレーブ中で、ペルオキシド、アゾ、ペルオキシカーボネート、またはペルオキシピバレートタイプのラジカル開始剤と、5〜50barの圧力下、用いる開始剤の性状により半減期が1時間程度となる温度で行う。
【0033】
生成したポリマー12は、共重合反応生成物を、溶剤の蒸発除去、およびペンテン中に析出させて精製した後に、19FとH−核磁気共鳴により同定される。
得られた19F−核磁気共鳴(図5)により、フッ素原子をもつ共重合体12が確認される。すなわち、スペクトル上、70〜85ppmの間、及び108〜125ppmの間にある複雑なシグナルは、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)−ビニルエーテルの共重合体中におけるCTFEのフッ素原子の化学シフトと同定される。
他方、H−NMRスペクトルから、モノマー6がポリマー12(図6)中に組み入れられ、モノマー、溶剤、開始剤およびポリマーに移行していないことが確認できる。
【0034】
ポリマー12は、窒素原子の各保護基であるベンジル基をもつイミダゾール6のモノマーが連結して構成されている。得られた保護基をもつポリマー12は、図7に示した脱保護基段階を行い、これにより、ベンジル保護基を水素原子で置換えてプロトン交換ができるイミダゾール基を形成させる。
【0035】
脱保護基段階は、パラジウム2水素やパラジウムジヒドロキシドPd(OH)13の存在で第1のポリマーを反応させることにある。
得られた脱保護基されたポリマー12’は、第1のポリマー12と似ているが、第1のポリマー12のベンジル基に代って水素原子をもち、その結果プロトン交換性を有している。
【0036】
脱保護基されたポリマー12’の生成を行う実験の詳細を参考に示す。
図3の段階(a)に示す1−ベンジルイミダゾール9の合成:
この実験手順によれば、1L丸フラスコ中で、イミダゾール・44g(0.65mol)、ベンジルクロライド・100g(0.78mol)およびKOH・60g(1.07mol)をTHF・700mLに入れる。反応混合物を120時間還流し、常温に冷却する。有機相をろ過し、減圧下で溶剤を蒸発させる。得られた固体生成物をCHC1・500mLに溶解し、水洗(3×100mL)する。有機相をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧下で溶剤を蒸発させる。得られた固体をトルエンで再結晶して、所望の生成物・67gを得る。
【0037】
図3の段階(b)に示す1−ベンジル−2−ヒドロキシメチル−イミダゾール7の合成:
上記反応の1−ベンジル−イミダゾール粗生成物・50gとパラホルムアルデヒド・15gをジオキサン・150mLに溶解させる。混合物を、オートクレーブ中、135℃で20時間保持する。減圧下で溶剤を蒸発させ、得られた黒色油状の生成物を、CHC1・400mLに溶解し、水洗(2×100mL)する。有機相をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧下で溶剤を蒸発させる。生成物を、真空下に24時間置き、次いで酢酸エチル・100mLで再結晶して、純生成物・30g(イミダゾールから出発して収率50%)を得る。
【0038】
最終生成物のH−NMRスペクトルを図11に示しており、1−ベンジル−2−ヒドロキシメチル−イミダゾール7の生成が確認される。
【0039】
図3の段階(c)に示す1−ベンジル−2−(ビニルオキシエチルオキシメチル)−イミダゾール6の合成:
1−ベンジル−2−ヒドロキシメチルイミダゾール(4.7g、0.024mol)をトルエン(15mL)に溶解し、TEBAC(0.54g、2.4×10−3mol)およびCEVE(5.6g、0.05mol)を加える。20N−NaOHアルカリ溶液(100mL)を加え、この不均一混合物を90℃で24時間激しく攪拌する。冷却後、溶液にエーテル・250mLを加えて希釈して靜置し、有機相をpH=7になるまで水洗(10×100mL)する。有機相をNaSOで脱水し、ろ過し、減圧下で乾燥して、所望の生成物・5.3g(85%)を得る。得られた生成物が満足できる純度であり、さらなる精製の必要がない。
【0040】
図13に示した生成物のH−NMRスペクトルから、1−ベンジル−2−(ビニルオキシエチルオキシメチル)−イミダゾール6の生成が確認される。
【0041】
図4の段階(d)に示すポリ(E.V−alt−CTFE)コポリマー、すなわち保護基をもつポリマー12の合成:
1−ベンジル−2−(ビニルオキシエチルオキシメチル)イミダゾール6とCTFEとの共重合は、マグネチック攪拌棒、2つのバルブ(ガスの入口と出口)、安全ディスク、精密マノメーター及び温度計を取付けたハステロイ製100cmオートクレーブ中で行われる。先ず、真空でオートクレーブの空気をパージする。液状モノマー(保護基のあるイミダゾール基をもつビニルエーテル)・10g、ターシャルブチルペルオキシピバレート開始剤・0.210g、及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン・60mLを、この系に入れる。この混合物を、アセトン浴にて−80℃に冷却し、CTFE・10.1gを加える。オートクレーブは、最後に油浴中75℃にして14時間置くと、圧力が最初15barであったが、14時間後に12barになる。系を常温に戻し、未反応CTFEをパージし、粗反応物を蒸発させて粘稠の黒色油状物を得る。この褐色生成物をジクロロメタンに溶解し、ペンタンに入れて析出させてオレンジ色の粉体を得る。
【0042】
図7〔段階(e)〕に示す水素によるコポリマー(E.V−alt−CTFE)のイミダゾールの脱保護基:
前に用いたと同じオートクレーブに、酢酸・100mL、コポリマー(E.V−alt−CTFE)・4g、パラジウムジヒドロキシドタイプ触媒・1gを入れる。オートクレーブを閉じ、水素を導入して32barsにする。反応混合物を70℃で48時間加熱する。粗反応物をセライトでろ過し、溶剤を蒸発させる。得られた生成物を、5%NaCO溶液・50mlで還流加熱する。生成物をろ過し、蒸留水・50mlで3回洗い、乾燥する。最後に、メタノールに入れ、エーテルで析出して脱保護基率90%のオレンジ色固体・2gを得る。
最終生成物について行った分析では、平均分子量8500g・mol−1(PMMAとして)で、ガラス転移点−33℃、200℃まで熱的に安定である。
【0043】
これらの段階で、図12のモノマー6をベースとしたプロトン交換ポリマーの製造ができる。
【0044】
第2のイミダゾールモノマー14、すなわち1−ベンジル−2−(ビニルオキシメチル)イミダゾールの重合からなる第3の製造方法により、イミダゾール基3をもつポリマーを製造できる
【0045】
図8でみられるように、モノマー14の合成は、酢酸パラジウムPd(OAc)、または酢酸水銀Hg(OAc)16のようなトランスエーテル化触媒の存在下で、図3の中間体7のエチルビニルエーテル15によるトランスエーテル反応にある。
【0046】
次いで、モノマー14を、第1の方法を参照して上記した単独重合により、または第2の方法を参照してフッ素をもつモノマー11との共重合により、フッ素をもつまたはフッ素をもたないイミダゾールに保護基をもつポリマーの生成となる。
【0047】
上記第1及び第2の方法に記載したと同じように、第3の方法で得られたポリマーをPd(OH)と反応して脱保護基、すなわちベンジル基を脱落させて、プロトン交換性のポリマーを得る。
【0048】
本発明によるポリマー生成の第4の方法は、図2と8に説明したモノマー6と14のいずれかを、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP,X=CF)および/またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE,X=Cl)、またはブロモトリフルオロエチレン(XTFE,X=Br)、トリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロペン、3,3,3−フルオロプロペン、ペルフルオロアルキルメチルビニルエーテル(PMVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)またはその他同様のもっと長いフッ素をもつ鎖の分子から選ばれる2つのフルオロアルケンとの三元重合にある。
上記方法で得られたポリマーに関して、第4の方法で得られたポリマーは、Pd(OH)との反応で脱保護基ができ、プロトン交換ポリマーを作る。
【0049】
上記4つの方法で得られた脱保護基された種々のポリマーは、プロトン交換膜のベースとなり得る。
【0050】
モノマー6を製造する第1の方法と同様にして、クロロエチルビニルエーテル8に代えて、例えばクロロエチルビニルエーテル8より長い鎖をもつ化合物を用いて、種々のイミダゾール官能基をもつモノマーが製造できる。
【0051】
同様、モノマー14の製造に係る第2の方法と同様にして、エチルビニルエーテル15に代えて、エチルビニルエーテル15より長い鎖をもつ化合物を用いて本発明による種々のモノマーが製造できる。
【0052】
このように、これらのモノマーから上記したものとは異なる別のポリマーが製造され、種々のイオン交換膜を作る。これらの膜は、電気分解装置または例えば自動車の駆動に使用できる燃料電池のような電気化学装置における電解質として使用できる。
【0053】
本発明による膜は、燃料電池に使用され、公知のポリマー固体電解質で燃料電池の作動温度限界を超え、電池システム(電池およびその付属物)の複雑さを軽減し、その結果、コスト(湿潤化のための補助設備が不要となる)を下げることができる。
【0054】
上記の製造方法で形成された脱保護基されたポリマーの複素環は、膜の中のプロトン移動を可能にし、また、ある製造方法(フルオロアルケン、またはフッ素のある複素環をもつモノマーとの共重合)によるポリマー中のフッ素基は、ポリマーに酸化または還元雰囲気での化学的不活性化をし、特に100℃以上の温度で操作される燃料電池中での使用にとって、作動中の膜の安定性に関係する熱安定性を与えている。
【0055】
複素環2をもつ別のタイプのポリマーも合成され、ベンズイミダゾール20複素環をもつ本発明によるポリマー群を、以下に詳述する。
【0056】
ベンズイミダゾール複素環20をもつポリマーの製造は、ベンズイミダゾールのモノマーを重合して行われる。この重合は、ペルオキシド、アゾ、ペルオキシカーボネートまたはペルオキシピバレートのラジカル開始剤を用いてベンズイミダゾールのモノマーをラジカル単独重合、または、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン(HFP,X=CF)および/またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE,X=Cl)、フっ化ビニル、2H−1,1,3,3,3−ペンタフルオロエチレン、フルオロビニリデン、または炭素原子が1〜20のアルキル鎖をもつペルフルオロアルキルビニルエーテルのようなフッ素をもつモノマーとのラジカル共重合である。
【0057】
本発明によるポリマーの製造に使用できるベンズイミダゾールのモノマーの種々の製造方法を以下に詳述する。
【0058】
図14に示すように、モノマー21aは、ペルフルオロオレフィン22とo−フェニレンジアミン23とによる当業界で公知である第1の方法で製造される。モノマー21aで、Rは、CまたはCである。しかしながらこの反応の収率は、非常に低い。
【0059】
反応収率が高いベンズイミダゾールのモノマーを製造する第2の方法は、第2のベンズイミダゾールモノマー21b’の合成であり、上述のモノマー21aと同様であるが、モノマー中にRをもたず、また、さらに、図16にみられるように、窒素原子の一つにベンジル基のような保護基を付けている。
【0060】
この第2のモノマー21b’は、図15と16にそれぞれ示す3つの段階で得られる。
図15に示した第1段階(a)は、o−フェニレンジアミン23とヘキサフルオロプロペン24をオートクレーブ中で24時間行う反応であり、その生成物が高い収率(75%)で得られる。この反応は、ベンズイミダゾール基をもつフルオロビニルモノマー21bは得られないが、水/メタノール混合溶剤で再結晶して、75%の収率で2−(1,1,1,2−テトラフルオロエチル)ベンズイミダゾール10が得られる。
【0061】
第2段階(b)は、図16に詳細を記しており、2−(1,1,1,2−テトラフルオロエチル)ベンズイミダゾール25のベンズイミダゾール基の保護をすることにあり、この化合物26を塩基の存在下にベンジルクロライド27と反応させることにより行われ、これによりベンズイミダゾール基にある窒素原子の一つの水素原子をベンジル基に置換える。
【0062】
第3段階(c)は、中間体28の脱フッ化水素であり、THF(テトラヒドロフラン)の存在下、−70℃近い温度でブチルリチウム13を作用させ、保護基をもつモノマー21b’を得る。
【0063】
3つの段階(a)(b)(c)の実験の詳細を示す。
−段階(a);2−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)ベンズイミダゾール10の合成:
o−フェニレンジアミン・20g(0.185mol)を酢酸エチル・80mLに溶解し、マノメーター、二つのバルブ(入口と出口)、安全板を付し予め真空/窒素のサイクルを行ったオートクレーブ中に入れる。ヘキサフルオロプロペン(HFP)・41.6g(0.277mol)を、常温でオートクレーブに入れる。内容物を75℃に加温すると、反応器の圧力が13bar近くになる。18時間反応させた後、反応器の圧力は4bar近くになり、オートクレーブを冷却し、0℃で脱ガスし、次いで減圧下で溶剤を蒸発させる。得られた栗色−緑色固体を取出し、水・100mLに入れ、NaCO溶液(固形分10%)でpHを7に中和する。得られた析出物をろ過し、真空で乾燥し、水/エタノールで再結晶して、所望の中間体10・27g(75%)を得る。
【0064】
−段階(b);1−ベンジル−2−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)−ベンズイミダゾール12の合成:
上記で合成した2−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)ベンズイミダゾール10・10g(0.05mol)とベンジルクロライド・7.3g(0.05mol)を、CHCN・140mLに溶解する。KCO・5,2g(0,037mol)を加え、反応混合物を48時間還流する。溶剤をろ過し、減圧下で蒸発させる。
【0065】
得られた黒色油状物をCHCl・150mLに溶解し、水洗(2回50mL)、NaSOで脱水し、減圧下で蒸発させる。得られた生成物を新たに酢酸エチル・15mLに溶解し、ヘプタン・200mL中で析出させ、ろ過、ろ過物を減圧で乾燥する。この淡黄色生成物9gをヘキサン・15mLで再結晶し、純生成物12(淡黄色粉体)・6.3g(43%)を得る。
【0066】
−段階(c);1−ベンジル−2−(1,2,2−トリフルオロビニル)−べンズイミダゾール21b’の合成:
予め窒素でパージした100mLフラスコ中で、1−ベンジル−2−(1,2,2,2−テトラフルオロエチル)−ベンズイミダゾール・12・3g(0.01mol)を、予め水素化カリシウムで脱水し、アルゴン雰囲気下で蒸留したばかりのテトラヒドロフラン(THF)・50mLに溶解する。系を軽く窒素を流しながら−78℃に冷却し、次いでn−BuLi・6.5mL(1.6Mヘキサン、0.01mol)を滴下する。反応混合物を低温で1時間保持し、次いで常温で24時間攪拌する。最後に,EtOH・5mLを加えて反応を完結させ、減圧下で溶剤を蒸発させる。生成物を、CHCl・40mLに入れて取出し、水洗(2回20mL)、NaSOで脱水、溶剤を減圧下で蒸発させる。
【0067】
図17に示したH−および19F−NMRスペクトルから、ベンジル保護基にあるプロトンの存在、およびベンズイミダゾール複素環のプロトンの存在がそれぞれ示され(H−NMRスペク)、また、このモノマーのペルフルオロ二重結合の存在が、19F−NMRスペクに、−105,−124および−175ppmを中心にこの結合の特徴であるダブレット、ダブレット、ダブレットが観測されることから、所望の化合物が得られていることが確認できる。
【0068】
段階(c)の最後に得られたモノマー21b’は、ラジカル開始剤による単独重合、またはテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フっ化ビニル、2H−1,1,3,3,3−ペンタフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、またはフルオロビニリデン(VDF)のようなフルオロオレフィン類と共重合されて、フッ素のある保護基をもつポリマーが得られる。
【0069】
このポリマーを得た後、保護基のベンジル基をもつ窒素原子の脱保護基を行うことができ、図18に示したモノマー21b、すなわち2−(1,2,2−トリフルオロビニル)−ベンズイミダゾールをベースにした脱保護基されたポリマーを得る。
窒素原子を脱保護基されたこのポリマーは、一つの水素原子をもち、最早保護基をもたないので、プロトン交換性である。
【0070】
上記したモノマー21b’に類似するモノマー21c’の合成を以下に記載するが、これは、ベンズイミダゾール基の窒素原子に異なる保護基をもつものである。
より正確には、モノマー21c’は、保護基Rとしてトリアルキルシリル基(R1R2R3Si)またはカルバメート基(COR4)をもっている。ここで、R1からR4は、1〜20の炭素原子のアルキル鎖である。
【0071】
このモノマー21c’は、図19〜21に示した3つの段階でなる第3の製造方法により得られる。
図19の第1段階(a)は、当業界では公知であり、図15で既に説明したが、オートクレーブ中で、o−フェニレンジアミン23とヘキサフルオロプロペン24をアセトニトリルに入れ、75℃に24時間反応させて、2−(1,2,2−テトラフルオロエチル)−ベンズイミダゾールである中間体25を得る。この反応の収率は、水/エタノールで再結晶した後で75%である。
【0072】
図20に示す第2段階(b)は、中間体10におけるベンズイミダゾール基20にある窒素原子の一つを一般式RClで表される反応物29により保護する反応である。ここでRは、トリアルキルシリル基(R1R2R3Si)またはカルバメート基(COR1)である。
反応は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンまたはジメチルホルムアミド(DMF)などの通常の脱水した有機溶剤中、ブチリリチウム(BuLi)、ターシャルブチルリチウム(t−BuLi)、リチウムジイソプロピルアミン(LDA)または水素化ナトリウム(NaH)など塩基Bの存在下で行う。この反応により、窒素原子N1が置換基Rで保護された第2の中間体31が得られる。
【0073】
この方法の第3段階(c)は、図21で明らかなように、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンまたはジメチルホルムアミド(DMF)などの脱水溶剤中で、ブチリリチウム(BuLi)、ターシャルブチルリチウム(t−BuLi)、リチウムジイソプロピルアミン(LDA)などの強塩基による化合物16の脱フッ化水素反応である。この反応で、窒素原子がトリアルキルシリル基またはカルバメート基である置換基Rで保護されたモノマー21c’が得られる。
【0074】
モノマー21b’のときに述べたように、得られたモノマー21c’は、ラジカル開始剤により単独重合、または図22の段階(d)で説明しているようなフルオロオレフィンとの共重合ができる。
フルオロオレフィンは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フルオロビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、または2H−1,1,3,3,3−ペンタフルオロエチレンであることができる。
【0075】
段階(d)により、複素環の窒素原子N1が置換基Rで保護されたフッ素をもつポリマー32が得られる。
この保護されたポリマー32は、次いで脱保護基の段階を受け、置換基Rが水素原子で置き換えられ、プロトン交換性である脱保護基されたポリマー33となる。
【0076】
特に、得られた脱保護基されたポリマーは、フッ素原子の存在により酸化雰囲気で化学的に不活性であり、また熱的に安定であり、複素環が結合していることによりプロトン交換性を有し、燃料電池内部に用いられる膜に製造できる。
【0077】
上記した段階(a)(b)(c)の製造方法により、種々のモノマーが製造でき、例えば、段階(a)のo−フェニレンジアミン23を、o−フェニレンジアミン23のような化合物で換えることができる。
同様に、ベンズイミダゾール基をもち、ペルハロゲン化、フルオロまたは部分フルオロモノマーから出発してペルハロゲン化、フルオロまたは部分フルオロポリマーが製造され、これを脱保護基してプロトン交換性ポリマーにすることができる。
【0078】
その結果、脱保護基されたペルハロゲン化ポリマーから多くのタイプのイオン交換膜が、製造でき、電気分解装置や燃料電池のような多種の電気化学装置の内部に取付けられる種々のタイプの電解質となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明による膜は、公知のポリマー固体電解質で燃料電池の作動温度限界を超え、電池システム(電池およびその付属物)の複雑さを軽減し、その結果、コスト(湿潤化のための補助設備が不要となる)を下げ、燃料電池の寿命を長くすることができる。
【0080】
上記した製造方法により製造されたポリマーの複素環は、膜の中でプロトン移動を可能にし、ポリマー中のフッ素基は、ポリマーに酸化または還元雰囲気で化学的に不活性とし、作動時の膜の安定性に関係する、特に、100℃以上の温度で作動する燃料電池に用いるときの熱安定性を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換膜の製造に使用できるイミダゾールタイプ複素環をもつモノマーであり、少なくとも下記の化学構造〔式中、R1がアルケニル基であり、R2が前記複素環の窒素原子の一つを保護するベンジル基またはトリアルキルシリル基のような置換基である。〕で表されることを特徴とするモノマー。
【化1】

【請求項2】
前記R1が化学式CH=CHであることを特徴とする請求項1に記載のモノマー。
【請求項3】
前記R1が化学式(CH−O−CH=CHであることを特徴とする請求項1に記載のモノマー。
【請求項4】
少なくとも1−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(7)の製造段階(a)、および少なくとも前記1−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(7)から請求項1乃至3いずれか1項記載のモノマー(6,14)の合成段階を有することを特徴とするモノマー製造方法。
【請求項5】
前記モノマー(14)の合成段階が、1−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(7)のエチルビニルエーテル(15)によるトランスエーテル反応で1−ベンジル−2−(ビニルオキシ)イミダゾール(14)とすることを特徴とする請求項4に記載のモノマー製造方法。
【請求項6】
前記トランスエーテル反応が、酢酸水銀(16)の存在下に行われることを特徴とする請求項5に記載のモノマー製造方法。
【請求項7】
前記モノマー(6)の合成段階が、相転移触媒の存在下、1−ベンジル−2−(ヒドロキシメチル)イミダゾール(7)とクロロエチルビニルエーテル(8)との反応で、1−ベンジル−2−(ビニルオキシエチルオキシメチル)イミダゾール(6)とすることを特徴とする請求項4に記載のモノマー製造方法。
【請求項8】
前記相転移触媒が、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドであることを特徴とする請求項7に記載のモノマー製造方法。
【請求項9】
請求項4乃至7いずれか1項記載の製造方法で製造されれた請求項1乃至3いずれか1項記載のモノマーを用いることを特徴とする保護基をもつポリマー。
【請求項10】
さらに、酸官能基をもつことを特徴とする請求項9に記載の保護基をもつポリマー。
【請求項11】
請求項1乃至3いずれか1項記載のモノマーから、請求項9または10に記載の保護基をもつポリマーの製造方法であり、少なくともモノマー(6,14)の重合段階を有することを特徴とする保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項12】
前記重合段階が、沃化亜鉛ZnI、沃化水銀HgIまたはクリベロ(Crivello)塩のようなカチオン性開始剤の存在下で、前記モノマー(6,14)をカチオン単独重合することを特徴とする請求項11に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項13】
前記重合段階が、前記モノマーを第2のモノマーとラジカル共重合することを特徴とする請求項11に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項14】
前記重合段階が、前記モノマー(6,14)を二つの第2のモノマーと三元重合することを特徴とする請求項11に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項15】
前記第2のモノマーが、フルオロまたはぺルフルオロモノマー(11)のような電子吸引性ビニルモノマーであることを特徴とする請求項13または14に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項16】
前記フルオロモノマー(11)が、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロオレフィン、および/またはフルオロビニリデンのようなフルオロアルケン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルコキシブニルエーテルのペルフルオロアルキルビニルエーテルの群から選ばれることを特徴とする請求項15に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項17】
請求項9または10に記載の保護基をもつポリマー(12)、または請求項11乃至16のいずれか1項に記載のポリマー製造方法でのポリマーをベースにして、前記保護基をもつポリマー(12)における保護基(R2)の代りに水素原子としたことを特徴とするて脱保護基されたポリマー(12’)。
【請求項18】
請求項9または10に記載の保護基をもつポリマー(12)、または請求項11乃至16のいずれか1項に記載のポリマー製造方法によるポリマーを用い、ポリマー(12)の保護基(R2)が水素原子で置き換える保護基をもつポリマー(12)の複素環の窒素原子の脱保護基段階を有して、イミダゾールタイプ複素環をもつ脱保護基されたポリマー(12’)とすることを特徴とする請求項17に記載の保護基をもつポリマーの製造方法。
【請求項19】
前記脱保護基段階が、重合段階で得られた保護基をもつポリマー(12)を、水酸化鉛Pd(OH)と反応させることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項17の脱保護基されたポリマー(12’)、または請求項18または19の方法により製造されたポリマーから製造されることを特徴とするイオン交換膜。
【請求項21】
請求項20に記載のイオン交換膜を、電解質としてもつことを特徴とする電気化学装置。
【請求項22】
請求項20に記載のイオン交換膜を、電解質としてもつことを特徴とする燃料電池。
【請求項23】
請求項22に記載の燃料電池を、車両の牽引に使用することを特徴とする燃料電池の使用。
【請求項24】
請求項20に記載のイオン交換膜を、電解質とすることを特徴とする電気分解装置。
【請求項25】
イオン交換膜の製造に使用できるイミダゾールタイプの複素環をもつモノマーであり、少なくとも下記の化学構造〔式中、Rが複素環における窒素原子の一つの保護基である。〕で表されることを特徴とするモノマー。
【化2】

【請求項26】
前記保護基が、ベンジル基、トリアルキルシリル基またはカルバメート基であることを特徴とする請求項25に記載のモノマー。
【請求項27】
請求項25または26に記載のモノマーの製造方法であり、
−少なくとも、o−フェニレンジアミンのようなo−フェニレンジアミンを、ヘキサフルオロプロペン(HFP)のフルオロモノマーと、アセトニトリルのような有機溶剤の存在下に反応して、フッ素をもつベンズイミダゾール(20)タイプの複素環をもつ中間体(25)とする反応段階(a)、
−少なくとも、中間体(25)のベンズイミダゾール基(20)の一つの窒素原子(N1)に、ベンジル基、トリアルキルシリル基(R1R2R3Si)、またはカルバメート基(COR1)のような置換基Rで保護する保護段階(b)、
−少なくとも、段階(b)で得られた化合物を、塩基と反応させて保護基をもつモノマー(2Ib’,21c’)とする脱フッ化水素段階(c)、
を有してなることを特徴とするモノマーの製造方法。
【請求項28】
前記反応段階(a)が、75℃の温度で行われることを特徴とする請求項27に記載のモノマーの製造方法。
【請求項29】
前記反応段階(a)が、オートクレーブ中、5〜50barの高圧で行われることを特徴とする請求項29に記載のモノマーの製造方法。
【請求項30】
前記保護段階(b)が、塩基の存在下で、中間体(25)と、ベンジルクロライドPh−Clのような式R−Xの反応物との反応であることを特徴とする請求項27乃至29のいずれか1項に記載のモノマーの製造方法。
【請求項31】
前記保護段階(b)における前記反応物が、式R−Clであることを特徴とする請求項30に記載のモノマーの製造方法。
【請求項32】
前記段階(b)および(c)で使用される塩基が、ブチルリチウム、ターシャルブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミン、または水素化ナトリウムから選ばれることを特徴とする請求項30または31に記載のモノマーの製造方法。
【請求項33】
前記段階(b)および段階(c)が、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、またはジメチルホルムアルデヒド(DMF)のような脱水した有機溶剤の存在で行われることを特徴とする請求項27乃至32のいずれか1項に記載のモノマーの製造方法。
【請求項34】
前記脱フッ化水素段階(c)が、少なくとも−78℃のような低温度で行われることを特徴とする請求項27乃至33のいずれか1項に記載のモノマーの製造方法。
【請求項35】
請求項25または26に記載のモノマーからなることを特徴とする保護基をもつポリマー(32)。
【請求項36】
さらに酸官能基をもつことを特徴とする請求項11に記載の保護基をもつポリマー。
【請求項37】
請求項35または36に記載のポリマーの製造方法であって、請求項1または2に記載のモノマー(21b’、21c’)、または請求項3乃至10のいずれか1項に記載のモノマー製造方法により製造されたモノマー(21b’、21c’)の重合段階(d)をもつことを特徴とするポリマーの製造方法。
【請求項38】
前記重合段階が、ラジカル開始剤による前記モノマーの単独重合であることを特徴とする請求項37に記載のポリマーの製造方法。
【請求項39】
前記重合段階が、前記モノマーとフッ素をもつモノマーとの共重合であることを特徴とする請求項37に記載のポリマーの製造方法。
【請求項40】
前記フッ素をもつモノマーが、ヘキサフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン、フルオロビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、または2H−1,1,3,3,3−ペンタフルオロエチレンのようなフルオロオレフィン、ペルフルオロアルキルビニルエーテルであることを特徴とする請求項38に記載のポリマーの製造方法。
【請求項41】
請求項35または36に記載のポリマー、または請求項37乃至40のいずれか一項記載の方法で製造されたポリマーをベースにして、保護基(R)を水素原子で置き変えたことを特徴とする脱保護基されたポリマー。
【請求項42】
請求項11または12に記載の保護基をもつポリマー(32)、または請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法により製造された保護基をもつポリマーを用いて、少なくとも、保護基をもつポリマー(32)の保護基(R)を水素原子に置き換えて、プロトン交換性の脱保護基されたポリマーとする窒素原子(N1)の脱保護基段階(e)をもつことを特徴とする脱保護基されたポリマーの製造方法。
【請求項43】
請求項41のポリマー、または請求項42の方法により得られたポリマーからなることを特徴とするイオン交換膜。
【請求項44】
請求項43に記載のイオン交換膜を電解質としてもつことを特徴とする電気化学装置。
【請求項45】
請求項43に記載のイオン交換膜を電解質として含むことを特徴とする燃料電池。
【請求項46】
請求項45に記載の燃料電池を、車両を牽引に使用することを特徴とする燃料電池の使用。
【請求項47】
請求項43のイオン交換膜を、電解質とすることを特徴とする電気分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2009−540038(P2009−540038A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513734(P2009−513734)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051348
【国際公開番号】WO2007/141441
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(507274799)プジョー シトロエン オートモビル エス アー (72)
【出願人】(503466808)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (8)
【Fターム(参考)】