説明

イミド酸化合物の製造方法

【課題】式


[式中、Rはハロスルホニル基(−SO21;X1はハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))、又はジハロホスホリル基(−POX23;X2、X3は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))を表す。Bは有機塩基を表す。]で表される「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」を、安価な原料を用いて、高選択率で効率よく製造する。
【解決手段】「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」を製造するにあたり、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させる。副生物の生成を大幅に抑制しつつ、高収率で目的とするイミド酸化合物を製造できる。また、得られた該イミド酸化合物をアルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ土類金属の水酸化物を反応させることにより、容易にイミド酸金属塩に誘導できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬の中間体、電池電解質、そして酸触媒として有用なイミド酸化合物、具体的には、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミド、又はビス(ジハロゲン化ホスホニル)イミド酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から広く知られているビス(ハロゲン化スルホニル)イミド、ビス(ジハロゲン化ホスホニル)イミド酸化合物は、電池電解質用溶媒や酸触媒、イオン液体や帯電防止剤としても有用な物質である。ビス(フルオロスルホニル)イミド化合物の製造方法として、特許文献1に尿素(NH2−CO−NH2)とフルオロスルホン酸と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミド酸を得る製造方法が、そして非特許文献1にビス(クロロスルホニル)イミド酸に金属フッ化物を反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸を得る製造方法が知られている。
【0003】
ビス(クロロスルホニル)イミド酸化合物の製造方法として、特許文献2に クロロスルホン酸(ClSO3H)とクロロスルホニルイソシアネート(ClSO2NCO)を反応させてビス(クロロスルホニル)イミド酸を得る方法が、非特許文献3にクロロスルホン酸(ClSO3H)とN-スルホニルトリクロロホスファゼン(ClSO2NPCl3)を反応させてビス(クロロスルホニル)イミド酸を得る方法が知られている。
【0004】
ビス(ジフルオロホスホニル)イミド酸化合物の製造方法に関して、非特許文献4に、シラザン金属化合物であるLiN(SiMe3)2とホスホリルトリフルオリド(POF3)を反応させて、ビス(ジフルオロホスホニル)イミドリチウムを得る方法が知られている。
【0005】
なお、本願発明で用いているハロゲン化スルフリルを用いた例として、非特許文献5、6に塩化スルフリルまたは、フッ化スルフリルと無水アンモニアを反応させて、スルファミド(H2NSO2NH2)を得る製造方法が、特許文献3に、シラザン誘導体等の3級アミンとハロゲン化スルフリルを反応させて、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミド酸誘導体を得る製造方法が開示されている。
【0006】
一方、本願発明のように有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリル又はハロゲン化ホスホリルとアンモニアを反応させることにより、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミド酸、又はビス(ハロゲン化ホスホニル)イミド酸化合物を得る製造方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3379509号明細書
【特許文献2】米国特許第4315935号明細書
【特許文献3】国際公開2007/022624号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry,37(24),6295−6303頁(1998年)
【非特許文献2】Inorganic Syntheses,11,138−143頁(1968年)
【非特許文献3】Inorganic Chemistry Communications, 2(6), 261−264頁(1999年)
【非特許文献4】Z. Anorg. Allg. Chem. 412(1), 65−70頁(1975年)
【非特許文献5】Ind.Eng.Chem.751−753頁(1943年)
【非特許文献6】Ber., 56, B, 1656頁(1923年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法では、毒性・腐食性の高いフルオロスルホン酸を使用していること、また、この反応で得られるビス(フルオロスルホニル)イミド酸とフルオロスルホン酸の分離が困難であり、低収率となることから、工業的な製造法として採用するには難がある。また、非特許文献1および2の方法は、毒性が高く、高価である三フッ化砒素や三フッ化アンチモンを使用することから、工業的に量産を行うには不利である。
【0010】
また特許文献2、非特許文献3の方法では、比較的高価なクロロスルホニルイソシアネート(ClSO2NCO) や、N-スルホニルトリクロロホスファゼン(ClSO2NPCl3)を用いる点で不利であり、特許文献3、非特許文献4の方法では、窒素源に高価なシラザン誘導体を用いるため、安価な製造法とは言えない。
【0011】
このように、医薬、農薬の中間体、電池電解質用溶媒、そして酸触媒として有用な、ビス(ハロスルホニル)イミド酸化合物の既知の製造方法は、いずれも小規模で目的物を得るには適しているものの、大量規模の製造法としては、十分満足のいくものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討したところ、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」
【化1】

【0013】
[式[1]中、Rはハロスルホニル基(−SO21;X1はハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))、又はジハロホスホリル基(−POX23;X2、X3は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))を表す。Bは有機塩基を表す。]の製造方法であって、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリル(SO245、:X4、X5は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し、前述のX1と同一、又は異なる。)もしくはハロゲン化ホスホリル(P(=O)X678:X6、X7、X8は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し、前述のX2、X3と同一、又は異なる。)、及びアンモニアを反応させることにより、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」を、高選択率かつ高収率で製造できる知見を得、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、以下の[発明1]−[発明9]に記載する発明を提供する。
【0015】
[発明1]
式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法であって、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させることを特徴とする、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法。
【0016】
[発明2]
式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法であって、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリル、及びアンモニアを反応させることを特徴とする、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法。
【0017】
[発明3]
有機塩基、及びハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルを反応系内に共存させた後、続けてアンモニアを反応させることにより行うことを特徴とする、発明1又は2に記載の方法。
【0018】
[発明4]
有機塩基が、式[2]で表される3級アミン
【化2】

【0019】
[式[2]中、R1、R2、R3は同一又は異なり、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又はアリール基(アリール基の水素原子の一部又は全てが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アミノ基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基もしくはヒドロキシル基で置換されていても良い。)を示す。]、含窒素芳香族複素環式化合物、又は次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する化合物である、発明1乃至3の何れかに記載の方法。
【0020】
[発明5]
有機塩基がトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリブチルアミン、又はピリジンである、発明1乃至4の何れかに記載の方法。
【0021】
[発明6]
有機塩基の量が、アンモニア1モルに対して、1モル〜50モルであることを特徴とする、発明1乃至5の何れかに記載の方法。
【0022】
[発明7]
ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルの使用量が、アンモニア1モルに対して、1モル〜10モルであることを特徴とする、発明1乃至3の何れかに記載の方法。
【0023】
[発明8]
有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させる際、反応温度が、−50℃〜150℃であることを特徴とする、発明1乃至7の何れかに記載の方法。
【0024】
[発明9]
発明1乃至8の何れかに記載の方法で得られた「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」に、アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩を反応させることを特徴とする、式[3]で表されるイミド酸金属塩
【化3】

【0025】
[式[3]中、Rは前記に同じ。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。nは該当する金属の価数と同数の整数を示す。]
の製造方法。
【0026】
本願発明は、「有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させる」というところに特徴がある。例えば非特許文献5,6に示すように、ハロゲン化スルフリルと無水アンモニアを反応させた場合、「スルファミド」と呼ばれる化合物が生成することが古くから知られている。また、この文献では、スルファミド以外にも副生成物が多く生成することも開示している(スキーム1参照)。
【化4】

【0027】
一方、特許文献3には、ハロゲン化スルフリルとシラザン誘導体などのアミンを反応させることで、対応するイミド化合物が製造できることが開示されているが、ここで、特許文献3の方法を本願発明に適用させた場合、例えばフッ化スルフリル(SO22)を用いたところ、目的物である「ビスフルオロスルホニルイミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」はほとんど得られず、スルファミド等の副生成物が多く得られることが判った(以下、スキーム2参照)。
【化5】

【0028】
ここで本発明者らは、反応系内に、アンモニアとは別に有機塩基を共存させることで、スルファミドが殆ど生成せず、高変換率及び高選択率で「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」が得られることを見出した(下記スキーム3参照)。
【化6】

【0029】
なお、目的物である「ビスフルオロスルホニルイミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」は、これ自身、水に難溶の化合物であるため、以下の副生成物、
FSO2NHSO2NHSO2
が微量得られることもあるが、簡便な水洗操作により完全に除去することが可能である。
【0030】
また、本願発明は、本願発明を実施するにあたり、反応系内への試剤の導入方法に、好ましい条件を見出した。反応系内へ加える順序を変更する操作、すなわち、有機塩基、及びフッ化スルフリルを系内に加えた後に、アンモニアを反応系内に導入させる方法を取ることで、高選択率かつ高収率で当該目的物が得られるという、極めて有用な知見を見出した。
【0031】
なお、「ビス(ハロゲン化スルホニル)イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」は、アルカリ金属の水酸化物、又はアルカリ土類金属の水酸化物を反応させることにより、容易に式[3]で表されるビス(ハロゲン化スルホニル)イミド酸金属塩が得られることも見出した。
【0032】
このように、本発明では、イミド酸化合物を製造するにあたり、好適な反応条件を適宜採用することで、従来技術と比べて工業的かつ容易に製造することが可能になった。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、安価で、大量の取り扱いにも好適なハロゲン化スルフリル又はハロゲン化ホスホリルを用いて、副生物の生成を大幅に抑制しつつ、高収率で目的とするイミド酸誘導体を製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法であって、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させることを特徴とする、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法である。
【0035】
続いて、得られた「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」をアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩を反応させ、式[3]で表されるビスフルオロスルホニルイミド酸金属塩を得る製造方法も含め、以下にスキーム4としてまとめる。
【化7】

【0036】
本発明で用いるハロゲン化スルフリルとしては、フッ化スルフリル、塩化スルフリル、臭化スルフリル、ヨウ化スルフリルが、ハロゲン化ホスホリルとしては、フッ化ホスホリル、塩化ホスホリル、臭化ホスホリル、ヨウ化ホスホリルが挙げられるが、これらの中で、フッ化スルフリル、塩化スルフリル、フッ化ホスホリル、塩化ホスホリルが特に好ましい。
【0037】
ハロゲン化スルフリル又はハロゲン化ホスホリルの量が、アンモニア1モルに対して、通常、1〜10モルで行い、好ましくは1〜8モル、より好ましくは1〜5モルで行う。
【0038】
本発明で使用する有機塩基は、式[2]で表される3級アミン、含窒素芳香族複素環式化合物、又は次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する化合物であるが、それぞれの化合物の具体的な例を、以下、明示する。
【0039】
(a)三級アミン:トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリス(2−エチルへキシル)アミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、N−ブチルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペコリン、N−メチルピロリドン、N−ビニル−ピロリドン、ビス(2−ジメチルアミノ−エチル)エーテル、N,N,N,N',N''−ペンタメチル−ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N,N',N',N''−ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、テトラメチルイミノ−ビス(プロピルアミン)、N−ジエチル−エタノールアミンなど。
【0040】
(b)含窒素芳香族複素環式化合物:ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−(ジメチルアミノ)プロピルイミダゾール、ピラゾール,フラザン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、プリン、1H−インダゾール、キナゾリン、シンノリン、キノキサリン、フタラジン、プテリジン、フェナントリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,2'−ビピリジン、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、4,4'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、5,5'−ジメチル−2,2'−ビピリジル、6,6'−t−ブチル−2,2'−ジピリジル、4,4'−ジフェニル−2,2'−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、2,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなど。
【0041】
(c)イミン系塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エンなど。
【0042】
これらの中でもトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、ジイソプロピルアミン等の2級アミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジン、3,5,6−コリジン等の含窒素芳香族複素環式化合物が好ましく、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等がより好ましい。
【0043】
有機塩基の使用量としては、化学量論的には、アンモニア1モルに対して3モルであり、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル1モルに対して1.5モルであるが、前述のスキームで示すように、反応を円滑に進行させる為には、化学量論量より多く用いることが好ましい。
【0044】
従って、有機塩基の使用量として、アンモニア1モルに対し1〜50モル(好ましくは1〜10モル)であり、又、該スルフリルもしくは該ホスホリル1モルに対して1.5モル〜10モル(好ましくは2〜5モル)である。
【0045】
なお、有機塩基が該スルフリルもしくは該ホスホリル1モルに対して1.5モル未満の場合、反応自体は進行するが、この場合、反応系内にアンモニアの割合が多くなり、スルファミドが多く生成し、変換率が低下することもあるので、前述の当量で反応を行うことが好ましい。
【0046】
また、本発明は、有機溶媒又は水を共存させて反応を行うこともできる。ここで有機溶媒とは、本発明の反応に直接関与しない不活性な有機化合物のことを言う。反応溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0047】
その中でも酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシドが好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類がより好ましい。これらの反応溶媒は単独又は組み合わせて使用することができる。
【0048】
有機溶媒又は水の使用量としては、特に制限はないが、アンモニア1モルに対して0.1L(リットル)以上を使用すればよく、通常は0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
【0049】
なお、上述の有機塩基が液体である場合には、これら有機塩基(例えばトリエチルアミンなど)が溶媒としての役割も兼ねるため、これらを過剰に用いて溶媒として機能させることもできる。
【0050】
温度条件としては、特に制限はないが、−50〜150℃の範囲で行えばよい。通常は−20〜100℃が好ましく、特に−10〜70℃がより好ましい。−50℃よりも低い温度であれば反応速度が遅くなり、150℃を超える温度であれば、生成物の分解等が生じることもある。
【0051】
圧力条件としては、特に制限はなく、常圧条件(0.1MPa(絶対圧。以下同じ。))、又は圧力に耐えられる反応器を用いて減圧条件もしくは加圧条件の下で行うことができる。すなわち、0.01MPa〜2MPaの範囲で行えば良いが、0.01MPa〜1.5MPaが好ましく、0.1MPa〜1MPaがより好ましい。
【0052】
反応に使われる反応容器としては、モネル、ハステロイ、ニッケル、又はこれらの金属やポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロポリエーテル樹脂などのフッ素樹脂でライニングされた耐圧反応容器などが挙げられる。
【0053】
反応時間としては、特に制限はないが、0.1〜48時間の範囲で行えばよく、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により、反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
【0054】
本発明において、「好ましい反応条件」を以下、述べる。
【0055】
有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させることで、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」が得られるが、例えば、反応器への仕込みの順番として、オートクレーブ等の耐圧反応容器に有機溶媒、有機塩基、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルを加えた後に、アンモニアを加えた後、容器を密閉して反応させることが好ましい。また、反応させる際、アンモニア1モルに対して、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルが2〜5モル、有機塩基が3〜10モルで行うのが好ましい。
【0056】
また、有機溶媒の使用量として、アンモニア1モルに対して0.1〜20Lが好ましく、温度条件として、0〜100℃が好ましい。また、圧力条件としては、0.1MPa〜1.5MPaが好ましい。
【0057】
このような条件で行うことで、高選択率で「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」が得られる。
【0058】
なお、目的物である「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」は、これ自身、水に不溶の化合物であるが、反応系内に以下の副生成物、
XSO2NHSO2NHSO2
が微量、生成することがある。その際、簡便な操作(水洗など)により副生成物を除去することが可能である。例えば、本実施例に示すように、水を加えて洗浄する操作は、該目的物である「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の化学純度を向上させるという点でも、好ましい態様の一つである。
【0059】
次に、得られた「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」をアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩を反応させ、式[3]で表されるビスハロゲン化スルホニルイミド酸金属塩を得る方法について説明する。
【0060】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)が、アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)が、アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)、アルカリ土類金属の炭酸塩としては炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)が挙げられ、好ましくは水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)が挙げられる。また、これらのアルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を用いる場合、同一のアルカリ金属の水酸化物と炭酸塩(例えば、水酸化カリウムと炭酸カリウム)の組み合わせ、又は同一のアルカリ土類金属の水酸化物と炭酸塩(例えば、水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウム)の組み合わせを用いることが好ましい。
【0061】
アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩の使用量は、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」1モルあたり1モル〜5モルが好ましく、より好ましくは1モル〜3モルである。5モルを超える量、すなわち過剰量の塩基を反応させた場合、反応は進行するが、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」が分解してしまい、収率が低下してしまうことがある為、過剰量の塩基を用いることは好ましくない。また、1モルよりも少ないと、変換率が低下することからも、好ましくない。
【0062】
アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩を反応させる際、溶媒を用いることができる。例えば水を溶媒として用いた場合、塩基の濃度を、通常10質量%〜70質量%、好ましくは20質量%〜60質量%、より好ましくは30質量%〜60質量%となるように水を加えると良い。水の量が少なすぎると反応系内における攪拌が困難になり、また多すぎる場合は、反応後の処理が煩雑になることや、通常よりも大きな反応容器が必要となる。
【0063】
なお、本実施例において、水酸化カリウム水溶液の濃度を48質量%で加えることは好ましい態様の一つである。
【0064】
なお、水以外の有機溶媒を用いることもできる。ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類等の溶媒が使用できる。また、水と共に組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量としては、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」に対して通常0.5〜10倍容量、好ましくは1〜7倍容量の範囲から適宜選択される。しかしながら、水を用いても十分反応が進行する為、水以外の有機溶媒を特に用いるメリットは少ない。
【0065】
反応温度に特別に制限はないが、通常−10℃〜110℃、好ましくは25〜80℃である。−10℃未満であると反応が充分に進行せず、収率低下の原因となり、経済的に不利となる、あるいは、反応速度が低下して反応終了までに長時間を要するなどの問題を生ずる場合がある。一方、110℃を超えると、副生物が生じやすく、また過剰な加熱はエネルギー効率が悪い。
【0066】
反応時間としては、特に制限はないが、通常は24時間以内の範囲で行えばよく、イオンクロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質が殆ど消失した時点を終点とするのが好ましい。
【0067】
本工程に用いられる反応器は、ステンレス鋼、ハステロイ、モネルなどの金属製容器や、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、そしてガラスなどを内部にライニングしたもの等、常圧又は加圧下で十分反応を行うことができる反応器を使用することができる。
【0068】
[実施例]
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ここで、組成分析値の「%」とは、特に記述のない場合、反応混合物を核磁気共鳴スペクトル(NMR)によって得られた組成の「モル%」を表す。
【実施例1】
【0069】
1Lオートクレーブにアセトニトリルを184g、トリエチルアミンを184g(1.82 mol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、フッ化スルフリルを153g(1.50 mol)導入した。フッ化スルフリルを導入した後、続いて、無水アンモニアを9.1g(0.53 mol)、1時間掛けて導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応の生成比は、99.2%であり、FSO2NHSO2NHSO2Fが0.8%生成していた。この反応液の溶媒を留去し、残渣にエーテルおよび水を加え、抽出及び水洗を行った。次に有機層を分取し、溶媒を留去することでビスフルオロスルホニルイミドトリエチルアンモニウム塩を128g得た(なお、該アンモニウム塩をここでは単離精製せずに、このまま次の反応に用いた)。
【0070】
次に、該アンモニウム塩と水酸化カリウム25.2gを含む水溶液とを1時間、室温で混合した。反応混合物のトリエチルアミンおよび水を留去して、ビスフルオロスルホニルイミドカリウムを得た。さらにこれにアセトニトリルを加え未溶解成分を濾別し、アセトニトリルを留去させて、純度99%以上のビスフルオロスルホニルイミドカリウムを96.2g、収率83%で得た。
【実施例2】
【0071】
1Lオートクレーブにアセトニトリルを384g、ピリジンを158g(2.00 mol)
仕込み、氷水で5℃に冷却し、フッ化スルフリルを132g(1.29 mol)導入した。フッ化スルフリルを導入した後、続いて、無水アンモニアを9.8g(0.58 mol)、1時間掛けて導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応の生成比は、99.0%であり、FSO2NHSO2NHSO2Fが1.0%生成していた。この反応液の溶媒を留去し、残渣にエーテルおよび水を加え、抽出及び水洗を行った。次に有機層を分取し、溶媒を留去することでビスフルオロスルホニルイミドピリジン塩を127g得た(なお、該ピリジン塩をここでは単離精製せずに、このまま次の反応に用いた)。
【0072】
次に、該ピリジン塩と水酸化リチウム11.6gを含む水溶液とを1時間、室温で混合した。混合した後、実施例1と同様の手法を用いて、ビスフルオロスルホニルイミドリチウムを86.3g得た。純度は99%以上、収率81%であった。
【実施例3】
【0073】
200mLオートクレーブにアセトニトリルを45.0g、トリエチルアミンを45.0g(445 mmol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、無水アンモニアを2.4g(140 mmol)加えた。次に、フッ化スルフリルを28.7g(286 mmol)導入し、反応器を室温まで昇温させ、24時間攪拌した。この反応の生成比は、70.2%であり、FSO2NHSO2NHSO2Fが29.8%生成していた。この反応液の溶媒を留去し、残渣にエーテルおよび水を加え、抽出及び水洗を行った。次に有機層を分取し、溶媒を留去することでビスフルオロスルホニルイミドトリエチルアンモニウム塩を13.3g得た。(なお、該アンモニウム塩をここでは単離精製せずに、このまま次の反応に用いた)。
【0074】
次に、該アンモニウム塩と水酸化カリウム2.7gを含む水溶液とを混合した。混合した後、実施例1と同様の手法を用いて、ビスフルオロスルホニルイミドカリウムを9.9g得た。収率は32%であった。
【実施例4】
【0075】
200mLオートクレーブにアセトニトリルを105g、トリエチルアミンを21.2g(210 mmol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、無水アンモニアを1.2g(70 mmol)加えた。次に、フッ化スルフリルを15.5g(152 mmol)導入した。反応器を室温まで昇温させ、12時間攪拌した。この反応の生成比は、82.3%であり、FSO2NHSO2NHSO2Fが17.7%生成していた。この反応液の溶媒を留去し、残渣にエーテルおよび水を加え、抽出及び水洗を行った。次に有機層を分取し、溶媒を留去することでビスフルオロスルホニルイミドトリエチルアンモニウム塩を13.0g得た(なお、該アンモニウム塩をここでは単離精製せずに、このまま次の反応に用いた)。
【0076】
次に、該アンモニウム塩と水酸化カリウム2.6gを含む水溶液とを1時間、室温で混合した。混合した後、実施例1と同様の手法を用いて、ビスフルオロスルホニルイミドカリウムを9.6g得た。純度は99%以上、収率は63%であった。
【0077】
このように、有機溶媒を実施例3より多く加えることで、収率をより向上させることが可能である。
【実施例5】
【0078】
1Lオートクレーブにアセトニトリルを200g、トリエチルアミンを200g(1.97 mol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、塩化スルフリルを202g(1.50 mol)導入した。塩化スルフリルを導入した後、続いて、無水アンモニアを8.5g(0.50 mol)、1時間掛けて導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応液の溶媒を留去し、残渣にエーテルおよび水を加え、抽出及び水洗を行った。次に有機層を分取し、溶媒を留去することでビス(クロロスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩を126g得た(なお、該アンモニウム塩をここでは単離精製せずに、このまま次の反応に用いた)。
【0079】
次に、該アンモニウム塩と水酸化カリウム22.4gを含む水溶液とを1時間、室温で混合した。反応混合物のトリエチルアミンおよび水を留去して、ビス(クロロスルホニル)イミドカリウムを得た。さらにこれにアセトニトリルを加え未溶解成分を濾別し、アセトニトリルを留去させて、純度99%以上のビス(クロロスルホニル)イミドカリウムを79.6g、収率79%で得た。
【実施例6】
【0080】
1Lオートクレーブにアセトニトリルを210g、トリエチルアミンを210g(2.08 mol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、フッ化ホスホリルを155g(1.56 mol)導入した。続いて、無水アンモニアを10.4g(0.61 mol)、1時間掛けて導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応の生成比は、ビス(ジフルオロホスホリル)イミドの生成が100%であり、F2P(=O)NPF(=O)NP(=O)F2の生成は確認できなかった。
【実施例7】
【0081】
1Lオートクレーブにアセトニトリルを200g、トリエチルアミンを72g(0.71 mol)仕込み、氷水で5℃に冷却し、塩化ホスホリルを57.4g(0.374 mol)導入した。続いて、無水アンモニアを3.0g(0.176 mol)、1時間掛けて導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応の生成比は、ビス(ジクロロホスホリル)イミドの生成が98%であり、中間体のクロロホスホリルアミドが2%残存していた。
【0082】
[比較例1]
200mLオートクレーブにアセトニトリルを50g仕込み、氷水で5℃に冷却し、無水アンモニアを12.4g(729 mol)導入した。続いて、フッ化スルフリルを23.3g(228 mmol)導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応液を濾過し、溶媒を留去して、白色固体を10.1 g得た。この白色固体の主成分はスルファミド(H2NSO2NH2)であることを確認し、この白色固体にフルオロスルホニルアミド(FSO2NH2)が3wt%含まれ、ビスフルオロスルホニルイミドアンモニウム塩は、0.3wt%しか含有していなかった。(収率0.1%)
このように、有機塩基を共存させない場合、目的物である該アンモニウム塩が殆ど得られないことがわかる。
【0083】
[比較例2]
200mLオートクレーブにアセトニトリルを50g仕込み、氷水で5℃に冷却し、塩化スルフリルを27.0g(200 mmol)導入した。続いて、無水アンモニアを12.0g(705 mmol)導入した。反応器を室温まで昇温させ、48時間攪拌した。この反応液を濾過し、溶媒を留去して、白色固体を9.8 g得た。この白色固体の主成分はスルファミド(H2NSO2NH2)であることを確認し、この白色固体に、ビス(クロロスルホニル)イミドアンモニウム塩は、含有していなかった。
【0084】
このように、有機塩基を共存させない場合、目的物である該アンモニウム塩が得られないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」
【化8】

[式[1]中、Rはハロスルホニル基(−SO21;X1はハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))、又はジハロホスホリル基(−POX23;X2、X3は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素))を表す。Bは有機塩基を表す。]の製造方法において、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリル(SO245、:X4、X5は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し、前述のX1と同一、又は異なる。)もしくはハロゲン化ホスホリル(P(=O)X678:X6、X7、X8は同一、又は異なるハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し、前述のX2、X3と同一、又は異なる。)と、アンモニアとを反応させることを特徴とする、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法。
【請求項2】
式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」
【化9】

[式[1]中、R、Bは前記に同じ。]
の製造方法であって、有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリル(SO245、:X45は前記に同じ。)、及びアンモニアを反応させることを特徴とする、式[1]で表される、「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」の製造方法。
【請求項3】
有機塩基、及びハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルを反応系内に共存させた後、続けてアンモニアを反応させることにより行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
有機塩基が、式[2]で表される3級アミン
【化10】

[式[2]中、R1、R2、R3は同一又は異なり、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、又はアリール基(アリール基の水素原子の一部又は全てが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、アミノ基、ニトロ基、アセチル基、シアノ基もしくはヒドロキシル基で置換されていても良い。)を示す。]、含窒素芳香族複素環式化合物、又は次のイミン骨格
−C=N−C−
を有する化合物である、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
有機塩基がトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリブチルアミン、又はピリジンである、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
有機塩基の量が、アンモニア1モルに対して、1モル〜50モルであることを特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリルの使用量が、アンモニア1モルに対して、1モル〜10モルであることを特徴とする、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項8】
有機塩基存在下、ハロゲン化スルフリルもしくはハロゲン化ホスホリル、及びアンモニアを反応させる際、反応温度が、−50℃〜150℃であることを特徴とする、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の方法で得られた「イミド酸と有機塩基からなる塩又は錯体」に、アルカリ金属の水酸化物もしくは炭酸塩、又はアルカリ土類金属の水酸化物もしくは炭酸塩を反応させることを特徴とする、式[3]で表されるイミド酸金属塩
【化11】

[式[3]中、Rは前記に同じ。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。nは該当する金属の価数と同数の整数を示す。]
の製造方法。


【公開番号】特開2010−254554(P2010−254554A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71231(P2010−71231)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】