イメージング方法
【解決手段】本願発明は、サンプルをイメージングするための方法に関する。本方法は、少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標においてサンプルに対して速度データをコード化する画像ペア相互相関解析を実行するステップ1と、解析から得られた画像ペア相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ2と、を含む。再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく実行される。ステップ1および2は自動化されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、イメージング、特に動きのイメージングに関する。
【0002】
ある態様では、本願発明は医用生体工学の分野、特に生体内または試験管内のイメージングに関する。
【0003】
他の態様では、本願発明は研究用途、医療用途および産業用途の広範囲において機能および形状をイメージングするための技術に関する。
【0004】
さらに別の態様では、本願発明は生体組織の動きをイメージングするための方法および装置として使用されるのに適している。
【0005】
以下、本願発明を生体内の医用イメージングに関連して説明するのが都合がよいであろう。しかし、当然ながら本願発明はその用途のみに限定されるものでないこと、ならびに試験管内の用途、診断および治療などの他の医療用途、加えて研究用途および産業用途にも使用できる。特に、本明細書の説明は肺系統および血管系に特に言及する。しかし、当業者は、本願発明の用途はこれに限定されず、機能に対して機械的に動的な側面を有する他のシステムに拡張可能であることを理解するであろう。
【0006】
さらに以下、コンピュータ断層撮影X線粒子画像速度測定(CTXV)に使用されるようなX線を放射するエネルギー源(source)を用いたイメージングに関連して本願発明を説明するのが便利であるが、本願発明はあらゆる便利なエネルギー源を用いて画像を提供する任意のシステムに拡張可能であることが理解されるであろう。
【0007】
人体における重要なプロセスの多くは動きを伴う。分かりやすい例として、心臓血管系(心臓および血流の動き)、肺系統(横隔膜および肺の動き)、腎臓系(血液の動きおよびろ過)、および筋骨格系(筋肉、結合組織、骨および関節の動き)が含まれる。血栓形成および肺疾患などの血管系の病気は、先進国では死亡率および疾病率の主な原因である。これらのシステムの機械的に動的な側面を研究することは、人体の根本的な働きをさらに理解することに貢献し、機能障害や病気と戦う上で有用な手助けとなる。
【0008】
これらのシステムにおいて病気または機能障害を見分けて治療する能力は、これらをそのままの状態で高分解能にて撮影する我々の能力に左右される。特に、現在のイメージングは臨床的にはっきり分かる前に肺病のほとんどの形態を発見することができない。それらの病気は発見が早いほど予後が良くなる。
【0009】
肺気腫や肺線維症などの肺の病気の多くに比較的一般的な特徴は、肺組織のコンプライアンス(compliance)における著しい局所的な変化につながる末梢の気道構造に対する局所的な変化である。したがって、呼吸サイクル中で肺の全域にわたる組織の速度の領域差を検出することができ、その結果初期段階において肺病および機能障害を検出することができるイメージング技術を開発する試みがなされてきた。
【背景技術】
【0010】
本明細書における資料、装置、行為または知見に関するあらゆる議論は、本願発明の背景を説明するために記載されたことが理解されるべきである。さらに、本明細書の全体にわたる議論は、発明者の認識により、および/または発明者がある従来技術の問題を特定するためになされている。さらに本明細書における資料、装置、行為または知見などの題材に関するあらゆる議論は、発明者の知見および経験の観点から本願発明の背景を説明するために含められている。したがって、任意のそのような議論は、本願明細書の開示および特許請求の範囲の優先日またはそれ以前において、任意の材料が従来技術の基礎の一部をなすこと、あるいはオーストラリアまたはそれ以外における従来技術における共通の一般的な知見をなすことを自白したものとみなされるべきではない。
【0011】
本明細書中における「動き」との記載は、「流れ」または「速度」(時間に対する動きの関数である)と置換可能であることが理解されるであろう。
【0012】
生体内の三次元(3D)の血流場を測定する能力は、アテローム性動脈硬化症などの心臓血管の病気の発達、診断および治療における血流特性の影響を研究する上で重要な能力である。生体内の血流場測定から有用な情報を得るために、光学的に不透明な組織を通る高分解能で非侵襲性の測定が必要である。
【0013】
人体の形状および機能に関する生体内の測定を支える技術の発展は、様々な総説において議論されている(たとえばFouras A、Kitchen MJ、Dubsky S、Lewis RA、Hooper SBおよびHourigan K/2009年/Journal of Applied Physics/第105巻を参照)。
【0014】
磁気共鳴映像法に基づく技術などの不透明な血管における流れ場の測定に対して現在使用可能な技術は、低い空間分解能および時間分解能に悩まされている。そのため、生体内の流れ解析に対するこれらの技術の用途は制限されている。よりよい結果が粒子画像速度測定(PIV)などの技術を用いて実現されてきた。ここでは、トレーサ粒子の変位が粒子画像ペア内の領域の統計的な相互相関を用いて決定される。体積の(volumetric)流れ解析には、断層撮影PIV、体積の粒子追跡およびホログラフィックPIVを含むいくつかのバリエーションが存在する。
【0015】
(PIVイメージング全般)
粒子画像速度測定法(PIV)は、瞬間的な速度場を正確に測定するためによく知られた方法である。可視光を用いるPIV技術は、光学的に透明なサンプルに限られる。しかし、PIVを用いたX線の使用は、本方法の用途を不透明な組織にまで広げてきた。これにより、このイメージング方法が生体内の血流場の測定に理想的なものとなった。
【0016】
PIVでは、複数のトレーサ粒子(通常は可視波長レーザにより照射される)を含む液体の領域が既知の時間間隔が空いた時間上の2点にてイメージングされ、相関ソフトウェアを用いて処理される。特に、画像ペアが個別の調査(interrogation)領域の中に割り当てられる。各調査領域において画像ペア間で相互相関が行われる。統計的には、相互相関の最大値が調査領域の内部における粒子変位(displacement)になる可能性が最も高い。
【0017】
近年、PIVはX線イメージングと組み合わせられてきた。X線の透過能力により、非侵襲性で高分解能の血流場測定に対する用途とともに、不透明な物体の内部で流れを測定することができる。
【0018】
(2D粒子画像の速度測定)
KimおよびLee(Kim GBおよびLee SJ/2006年/Exp.Fluids/第41巻195頁)は、粒子および血液細胞をトレーサとし、X線PIVを用いたチューブ内の流れを測定した。この研究において説明された方法は、測定体積内における速度の2成分(画像平面と垂直な次元に関して平均化されている)に限定されている。使用されたPIVアルゴリズムは、光学/レーザーに基づいた速度測定に関連する従来技術であった。これらのアルゴリズムは、パルス状の(瞬間的な)照射およびゼロの面外流量勾配を仮定していた。そのため、X線を用いて現実の流れをイメージングする3D特性を考慮することができなかった。これにより流速が大幅に過小評価されてしまっていた。
【0019】
(3D粒子画像の速度測定)
最近、X線PIV解析は3D流量データを含むように拡張されてきた。Fourasら(Fouras A、Dusting J、Lewis RおよびHourigan Kら/2009年/Journal of Applied Physics/第102巻第064916頁)が教示するのは、相関ピークが測定体積内における速度の確率密度関数(PDF)を表すということである。流れ場に関するある仮定と組み合わせた場合、速度に関するこの体積PDFを速度プロファイルへと変換することが可能である。これにより、3Dの流量データを単一のX線投影画像から測定することができるようになる。
【0020】
CTは、物体を二次元の投影から三次元空間にて再構築するために使用される技術である。一般に、投影方向にて積分された物体の密度がX線減弱から計算される。X線減弱は、デジタル投影画像における画素の強度値に比例するであろう。次に、フーリエ逆投影法または代数法を用いて異なる視角にて取得された投影画像から、物体の構造が再構築される。また、少数の映写角から物体を再構築するための変形例も存在する。これらの変形例は、たとえばサンプルが単一物質で構成されているというサンプルの予備知識を多くの場合利用することにより、サンプルの構造を再構築するために反復法を使用する。
【0021】
したがってCTXVは、心臓血管系で見られるような複雑な3Dの流れ場に対して3成分の速度測定を提供することができる。単一の投影画像は、速度の3成分を評価するためには不十分である。単一の映写角にて取得された画像は、X線ビームに平行な方向に変位(displacement)情報を含んでいない。これにより、単一の投影X線PIVは2成分の速度測定に制限される。CTに似たある方法では、複数の映写角を用いることによりCTXVがこの制限を克服する。位相差画像法および位相回復法を用いることによりSN比を増大させることができる。
【0022】
特に従来技術の単一の投影X線PIVのように、画像ペア内の調査領域に対して相互相関関数が計算される。速度場は、全ての映写角に対する調査領域の列によって定義される軸方向の切片において再構築される。3成分で2Dの長方形格子モデルは、各切片に対する速度場を表す。あらゆる角度および各切片内のすべての調査領域に対して推定された相互相関関数が生成される。モデル内の調査領域に対する速度PDFとともに測定された自己相関関数の畳み込み(convolution)を用いて、推定された相互相関関数が生成される。モデル中の速度係数が繰り返し最適化されることにより、その切片内において同時に、全ての映写角および調査領域にわたって、測定された相互相関関数と推定された相互相関関数との間の誤差が最小化される。この反復方法を用いて、各切片内の3成分速度場を正確に表現するモデルが得られる。
【0023】
比較的少数の投影しか必要とならない。これが放射線量を最小にするためには重要である。これにより、CTXVを上述したようなCT再構築と統合することにより、形状と機能の両方の同時測定を行うことも可能となる。
【0024】
CTには、全ての医用画像モダリティの最高の分解能および透過性を提供できるという利点がある。一方で、高線量のX線を伝達してしまうという著しい欠点もある。もしこの放射線量の心配がなかったら、高分解能CTは標準的なスクリーニング手段になるであろう。
【0025】
従来技術のX線PIV技術は、すべての医用画像モダリティに対して最高の分解能および透過性を提供するが、単一の視角にて取得された粒子画像を使用する。この粒子画像は、X線ビームに平行な方向に粒子の変位情報を含まない。したがって、従来技術のX線PIV技術は、2成分の速度測定に限られるという欠点を有する。また、画像平面に垂直な次元における速度プロファイルに関して、情報が取得できない。したがって、流れの予備知識なしに3D測定を行うことはできない。
【0026】
構造、体積および動きに関して形状と機能の両方を測定し、より確かな流れ場の3D再構築を行うために、性能を高めることが現在も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Fouras A、Kitchen MJ、Dubsky S、Lewis RA、Hooper SBおよびHourigan K 2009年 Journal of Applied Physics 第105巻
【非特許文献2】Kim GBおよびLee SJ 2006年 Exp.Fluids 第41巻195頁
【非特許文献3】Fouras A、Dusting J、Lewis RおよびHourigan Kら 2009年 Journal of Applied Physics 第102巻第064916頁
【発明の概要】
【0028】
本願発明の目的は、3D画像の再構築というよりもむしろより正確な3D再構築というべき、改善された画像を提供することである。
【0029】
本願発明のさらなる目的は、3D画像の再構築というよりもむしろより正確な3D再構築へとデータセットを変換するための改善された方法を提供することである。
【0030】
本明細書中に記載の実施の形態は、従来技術のシステムの少なくとも1つの欠点を克服するか和らげる。または少なくとも従来技術のシステムに対する有用な代替技術を提供する。
【0031】
本質的に本願発明の実施の形態は、イメージングが2次元、好ましくは3次元空間座標(x,y,z)+時間(t)における動きの3成分(u,v,w)を利用することができるという認識に端を発する。これらはここでは必要に応じて「3D」または「4D」と呼ぶ。しかし実際には、本願発明の実施の形態は、従来技術の3Dイメージングよりも多くの成分を測定することができる。さらにこの手法は、あらゆる種類の動きの測定に適用可能であることが分かってきた。たとえば生理的な測定に関して、この方法は、血液、空気またはリンパ液などの動く液体の測定および/または吸息や吐息中における肺組織などの組織の測定に適用することができる。コンプライアンスやずれ(shear)などの特性に関連するデータを処理することも、さらに実現することができる。実際には、本願発明は、
(i)従来技術の3Dイメージング技術を用いては行えない、動きの3D再構築を行い、
(ii)初めに3D画像を再構築することなく3Dの動き(速度)情報を再構築し、
(iii)ずれ、コンプライアンスおよび体積流れなどのデータを4D(x,y,z,t)において評価し、3Dまたは4D上に速度の3成分を再構築することにより、それらを画像形式にて表示する能力を提供する。
【0032】
本明細書中で説明される実施の形態の第1の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析で得られた画像ペアの相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ。
ここで、再構築は初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0033】
ステップ2の再構築は、反復法により行われてもよいし、これに代えて直接法により行われてもよい。
【0034】
速度場の画像はしたがって、視覚的に大量の情報を伝達しうる。しかし、速度場の画像は、物理学者にはなじみが深いが、これらの画像を解釈する必要が出る可能性があって、生理的特徴を観るのに慣れた開業医や病理学者などの他の専門家にはなじみがない。より簡単に認識でき理解できる画像を提供するために、速度場をサンプルのデジタル化(セグメント化)画像の対応する特徴と関連づけることが必要である可能性がある。画像データを認識できる生理的特徴または他の特徴と関連づけることが必要なのは速度場に限られない。任意の手段により取得された任意の適切な画像データにも当てはめることができる。
【0035】
サンプルの画像を提供するための方法がさらに提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:デカルト座標にてサンプルに対するデータをコード化する画像を記録するステップと、
2:記録された画像においてコード化された情報から、2Dまたは3Dデータ場を再構築するステップと、
3(a):サンプルの画像をセグメント化するステップと、
3(b):各セグメントと2Dまたは3Dデータ場の領域とを関連づけるステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0036】
画像は複数の角度から記録されることが好ましい。しかし、(Irvine SC、Paganin DM、Dubsky S、Lewis RAおよびFouras A/2008年/Applied Physics Letters/第93巻第153901頁、ならびにFouras A、Lo Jacono D、Nguyen CVおよびHourigan K/2009年/体積相関PIV:3D速度ベクトル場測定に対する新たな技術/Experiments in Fluids/第47巻第4号、第569〜577頁に開示されているように)サンプルが形状または動きに関して回転対称を有するならば、1つの映写角からの計測しか必要とならないことが当業者には明らかであろう。さらに、もし速度データに加えて位相(phase)または焦点(focus)からの深度のデータが記録されるならば、1つの映写角しか必要とならない。
【0037】
したがって、本明細書中で開示された実施の形態の第2の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1.少なくとも1つの映写角から画像を記録し、3つのデカルト座標に関してサンプルに対する2D速度データを得るために画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2.相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するステップ。
ここで、ステップ1および2は自動化されている。
【0038】
本方法を用いることにより、サンプルの2Dつまり「単投影」画像が得られる。これらのステップを何度も繰り返すことにより、3Dデータを4Dデータへと拡張することができる。
【0039】
したがって、本明細書中で開示された実施の形態の第3の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対する速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2(a):相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するための反復法を用いるステップと、
2(b):4D速度場を生成するために反復法を繰り返すステップと、
3:4D速度場を使用することにより、さらなる情報を提供するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1〜3は自動化されている。
【0040】
上述の方法に従って提供されるさらなる情報は、ずれやコンプライアンスなどの任意の有用な特性に関連してもよい。これらの情報は、サンプルの機能性の程度または質の解析に重要であってもよい。速度データを記録することに加えて、ステップ1は位相(ホログラフィ)または焦点から得られた深度情報を記録することを含んでもよい。
【0041】
典型的には、反復法は反復CT方法に類似するであろう。
【0042】
画像を提供する任意のエネルギー源を本願発明の方法とともに使用することができる。任意のエネルギー源には、以下の種類のエネルギーを放出するエネルギー源が含まれる:
・X線
・可視レーザーを含む可視光
・赤外レーザーを含む赤外線放射
・紫外線レーザーを含む紫外線放射
・超音波
・電気インピーダンス
・磁気共鳴
【0043】
好ましい実施の形態では、本願発明はサンプルをCTXVイメージングするための方法である。
【0044】
本明細書中で開示された実施の形態の第4の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1(a):複数の映写角から画像を記録するステップと、
1(b):画像を長方形の調査(interrogation)ウィンドウ内に割り当てるステップと、
1(c):画像からx,y,z方向に速度成分u,v,wを導出するステップと、
1(d):調査ウィンドウによって規定された画像ペアにおいて相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0045】
本明細書中で開示された実施の形態の第5の態様では、速度場を規定するデータセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1(a):少なくとも1つの映写角から画像を記録し、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
(i)時間に対する(against time)デカルト座標(x,y,z)とは正反対の(opposite)速度(u,v,w)
(ii)圧力または体積を含む群から選択されたさらなる物理的パラメータ(p)
2(a):測定を積分することにより、単一の3D速度場を提供するステップと、
2(b):以下の式により定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ。
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δp
ここでステップ2は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0046】
本願発明の実施の形態のさらに別の態様では、速度場を規定するデータセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法が提供される。本方法は以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペアの相互相関解析を行うステップと、
(i)デカルト座標(x,y)とは正反対の動き(u,v)、
(ii)サンプルの厚さ(t)、圧力(p)および体積(V)
2(a):測定を積分することにより、単一の3D速度場を提供するステップと、
2(b):以下の式に関して局所的なコンプライアンスを記述するステップと、
(δu/δx+δv/δy).t/δp
2(c):全コンプライアンスと、以下の式に従って局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ。
t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)
ここでステップ2は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0047】
たとえば上述の方法は、肺、心拍、または動脈中の血液の脈動の吸息または吐息に対する局所的なコンプライアンス地図を作成するために使用することができる。したがって本願発明は、液体であろうと組織であろうと、あらゆる動きを測定するために使用することができる。
【0048】
特に肺に関連して、本願発明の方法は、肺組織の動きを検出するため、および呼吸全体にわたる局所的な肺の動きの速度および方向を規定する速度場を測定するために使用することができる。肺の局所的な地図を生成することにより、速度場からの膨張の程度およびタイミングを示し、実験的に誘導された不均一な肺病により引き起こされた異常な組織特性を有する領域を明らかにすることができる。これには肺線維症、嚢胞性線維症、がんおよびぜんそくなどの病気が含まれる。
【0049】
具体的にはこれは、デカルト座標(x,y,z)とは正反対の時間に対する空気の速度(u,v,w)のパラメータを測定し、肺の気道の3D画像をセグメント化し、次に速度が測定された肺の各領域と3D画像の対応する区分とを関連づけることにより、時間に対して気道内部の気流を描写することを含む。これは以下のフローチャートに要約することができる:
【0050】
【表1】
【0051】
以前はX線イメージングにおいて使用できなかった本願発明の方法の機能的能力を、線量の劇的な減少が期待されることと合わせて考えることにより、本方法に基づく装置またはシステムは、たとえば臨床用スキャナとして大きな有用性を見出すことができる可能性がある。そのようなスキャンシステムは、早期発見および病気または疾患の診断を提供するために使用可能である。本装置は、たとえば選鉱において、または前臨床医療、選鉱、地球物理学および液体力学の研究室において、動きを測定する産業に対しても適用することができるであろう。
【0052】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用された場合、本装置は以下を含む:
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、
(iii)1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間にサンプルを配置するためのサンプル保持具。
使用時には、サンプル保持具はサンプルを複数のエネルギー映写角に回転させることにより、少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録される。
【0053】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用される場合、本装置は以下を含む:
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器。
使用時には、サンプルは1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間に配置される。エネルギー源および検出器はサンプルに対して複数のエネルギー映写角に回転されることにより、サンプルの少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録される。
【0054】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用される場合、本装置は以下を含む:
(i)それぞれの映写角を有する2つ以上のエネルギー源と、
(ii)エネルギー源から発せられたエネルギーによりサンプルを通過するときに作られた画像を記録するための1つ以上の検出器。
ここで各映写角における記録は同時に行われる。
【0055】
1°〜360°の任意の便利な範囲の映写角を使用してもよい。しかし、通常は映写角の範囲はこの範囲の境界値には達しない。たとえば、30°しか間隔が空いていない映写角、または180°も間隔が空いた映写角が好適である可能性がある。
【0056】
少なくとも1つのエネルギー源および検出器に加えて、本願発明の方法とともに使用される装置は、多くの他の構成要素を含んでもよい。他の構成要素には、たとえば、(i)エネルギー源、標的および/または検出器を調節および整列させるためのシステム、(ii)画像撮影,加工、および解析用のシステム、ならびに(iii)便利なユーザーインターフェース、が含まれる。
【0057】
他の態様および好適な形状は、明細書に開示および/または添付の特許請求の範囲に規定されている。これらは本願発明の説明の一部をなす。
【0058】
ドップラー超音波法、磁気共鳴映像法(MRI)、ホログラフィックPIV、デジタルインラインホログラフィックPTV、断層撮影PIVおよびピンぼけ(defocusing)PIVなどの3D速度情報を測定可能な従来技術のシステムが多く存在する。しかし、これらのシステムはすべて本願発明が有さない欠点を有する。たとえば、ドップラー超音波法は限られた空間分解能および時間分解能しか有さない。分解能は測定深度が増大するにつれて低下する。MRIは空間分解能および時間分解能が限られている。これらは一時的な測定において特に顕著である。ホログラフィックPIV、デジタルインラインホログラフィックPTVおよび断層撮影PIVは、透明体に限定される。そのため、生体内のイメージングに対する実用性が事実上除外される。またこれらは、形状/解剖学的情報を提供することもできない。さらに、これらの技術は、4D画像を再構築することにより、次に動きを測定することに基づく。このことは、これらの技術を使用するシステムが比較的複雑であって、本願発明のシステムと比べて限られた空間分解能しか有さないことを意味する。
【0059】
上述したシステムおよび他の従来技術のシステムと比較して、本願発明は以下を含む有利な点をもたらす:
・従来のCTが画像から抽出する(X線吸収の線積分)よりも画像ペアからはるかに多くの情報(すべての投影速度の確率密度関数)を解読する能力
・従来技術の方法と比べてより高い解像度を有する改善されたイメージング
・PIV技術、特にX線PIVおよびホログラフィック速度測定における著しい進歩
・肺、心臓および血管などの不透明なサンプルにおける3D動き場を測定するための改善された性能
・放射線源に対するサンプル暴露を最小限にする比較的短い走査時間
・臨床的診断および治療に対する新たな選択肢
【0060】
本願発明は、医療用途、生物用途および産業用途の広範囲に対して好適である。医療分野および生物分野において、本願発明は以下に関連した動きの研究または測定に特に適している:
・血液
・心臓およびその弁
・肺組織
・粘液線毛除去を含む繊毛
・肺や他の組織の内部における空気の流れ
・消化管およびその内容物
・鼓膜、繊毛および骨を含む耳の内部の構造
・耳の内部の液体
・脳腫脹を含む腫脹
・関節における滑液および結合組織を含む骨
・筋肉
・リンパ液を含むリンパ液システム
【0061】
本願発明の実施の形態の適用性のさらなる範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、当然のことながら、詳細な説明および具体例は、好ましい本願発明の実施の形態を示すが、説明のためのみに示されたのであって、本願発明の開示の精神および範囲において様々な変更や修正を加えてもよいことは、この詳細な説明から当業者には明らかであろう。
【0062】
本出願の好ましい実施の形態および他の実施の形態のさらなる開示、目的、利点および態様は、添付の図とあわせて以下の実施の形態の記載を参照することにより、関連技術を知る当業者によってさらに理解されるであろう。添付の図は、説明のためだけに掲載されている。したがって、本願明細書における開示を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本願発明によるCTXVシステムの基本デザインの概略を説明する概略図である。この概略図は、サンプルを通過して伝達され、シンチレータによって可視光に変換される3つの多色X線ビームを示す。高速検出器システムは次に画像セットを生成する。サンプルを回転させることなく複数の投影データが同時に集められる。デカルト座標(x,y,z)がサンプルに対して固定され、ビーム軸pから角度θにて回転される。
【図2】サンプルに対して固定されビーム軸pから角度θにて回転されたデカルト座標(x,y,z)を説明する実験用のイメージング設定の概略図である。この概略図は、サンプルを通過して伝達され、シンチレータによって可視光に変換される単色のX線ビームを示す。高速検出器システムは次に画像を生成する。サンプルを回転させることにより、複数の投影データが集められる。デカルト座標(x,y,z)がサンプルに対して固定され、ビーム軸pから角度θにて回転される。
【図3(a)】本願発明による前方投影モデルの概略図である。相互相関関数は、流れモデルから投影された速度PDFの畳み込みによって投影画像から計算された自己相関関数を用いて推定される。
【図3(b)】3DのCTXV動き再構築を示す。推定された相互相関と測定された相互相関との間の剰余が、全調査ウィンドウおよび全映写角にわたって同時に最小化されることにより、流れ場を正確に表現する断面の流れモデルが生成される。
【図3(c)】相互相関関数の1次元化を説明する。2D相互相関関数における行および列にわたって積分することにより、それぞれrおよびq方向において速度PDFの1D表現が得られる。
【図4】ある単一の時点における3Dで再構築された血液速度場を説明する。明確にするために、各ベクトルを見えるようにするために全次元において減少されたベクトル分解とともに、サンプルの半分のみが描かれている。各ベクトルは異なる色で表現されている。ここでは各色は異なる速度の大きさを表す。
【図5】図4に表現されたタイプの肺に対する速度場である。本図には、吸息(inspiration)中の単一の時点における肺組織の速度を示すベクトルが含まれる。
【図6】本願発明に従った肺の気道構造の画像の3D図解である。ここでは速度場のベクトルは、気道(気管、細気管支、肺胞)の対応する生理的特徴と一致している。
【図7】実施例3のサンプルの中空断面に使用されたコンピュータ支援設計モデル(図7(a))および粒子スペックル対照に基づくCT再構築(図7(b))を示す。サンプルの形状は、錐体とらせん状に湾曲した円との結合体に基づく。
【図8】どのようにしてCTXVが3D構造および複雑な形状を通過する流速を同時に測定できるのかを示すために、図7に描かれたサンプルを通過する流れのCTXV再構築を説明する。画像の一部を透明にすることにより、サンプル内部の流れおよびベクトルが見えるようにされている。また明確にするために、x,y,z方向においてベクトル分解が4倍減少されている。
【図9(a)】実施例4で説明するX線照射および速度測定相互相関解析の三次元性を示す。
【図9(b)】本願発明に従った肺組織の動き生体内検出を示す。
【図10】ブレオマイシン暴露36時間後(図10(a)〜(d))および暴露6日後(図10(b)〜(h))の群と対照群を含む肺の病状の統計測定を示す。
【図11】比較組織学的イメージとともに肺の内部における局所的な膨張を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
上述したように、FourasらはX線画像ペアから計算された相互相関関数が投影された測定体積に対する速度PDFを表すことを実証してきた。
【0065】
本願発明はここでは流れを複数の映写角からイメージングすることによって、三次元空間において速度の3成分に関する情報を得ることを含む技術を提供する。この情報を用いて、体積の画像を再構築することなく、3D速度場を画像ペアの相互相関から直接的に再構築することができる。
【0066】
(収集されたデータのさらなる使用)
上述したように、本願発明は、血液などの液体の動きをイメージングすることに限られず、組織または肺などの器官全体の動きを表現することもできる。イメージングに使用されるデータをさらに定量的に処理することにより、肺の内部の気流やずれの量などの追加的で有用な情報を提供することができる。
【0067】
収集されたデータは、速度と同時に器官などの構造の形状/骨格に関する画像を構築するためにも使用することができる。
【0068】
本願発明は、呼吸、心拍または蠕動などのシステムの周期的性質に関連する有用な情報も提供することができる。特に異なる時点にて収集されたデータは、たとえば呼吸、心拍または蠕動収縮の1サイクルを再構成するために組み合わせることができる。
【0069】
本願発明に従って収集されたデータは、位相(ホログラフィック)データまたは焦点データから得られる深度情報を含んでもよい。これらのタイプのデータは、同数の投影に対して、またはデータが収集される投影の数が減少した場合にデータ表現の質を向上させるために使用することができる。ある極端な場合には、データがわずか1つまたは2つの投影から収集できるかもしれない。しかし、単一の投影が使用された場合、何らかのデータは失われるであろう。したがって、本方法は以下のステップを含むことが好ましい:
1:少なくとも1つの映写角、好ましくは複数の映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析で得られた画像ペアの相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0070】
(データセットのコンプライアンス地図への変換)
本願発明は、データセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法を提供する。たとえば肺換気に対しては、(速度場を規定する)データセットは、2Dまたは3Dにおける速度の測定、呼吸中の肺圧力の範囲の測定、および場合によっては患者が呼吸をする際に吸入および吐出した空気の体積の測定を含んでもよい。
【0071】
データセットが3D+時間(つまり4D)の速度場を規定する場合、変換方法は以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角、好ましくは複数の映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2(a):吸息または吐息の任意の部分にわたって速度を積分することにより、単一の3D速度場を得るステップ(この3D地図は、方向(directional)座標(x,y,z)においてu,v,wとして定義できる速度量を有する)と、
2(b):次に局所的なコンプライアンスは、数学的に以下の式で記述される:
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δp
(式中、δp=ステップ2(a)における吸息または吐息の同じ部分に対する圧力変化)
ここでは、ステップ2の再構築は初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0072】
データセットが2D+時間(つまり3D)速度場を規定する場合、本変換方法は以下のステップを含む:
2(a):吸息または吐息の任意のすべての部分にわたって速度を積分することにより、単一の2D速度場を得るステップ(この2D地図は、方向座標(x,y)においてu,vとして定義できる速度量を有する)と、
2(b):局所的なコンプライアンスを以下の式により数学的に記述するステップと、
(δu/δx+δv/δy).t/δp
(式中、t=厚さ、p=吸息または吐息における圧力)
2(c):(一般に測定される)全コンプライアンスと、方程式の形で以下の式により表現できる局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ。
t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)
(式中、V=吸入または吐出された体積)
ここで、このステップ2の再構築は、最初に2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、自動化されている。
【0073】
本方法を使用することにより、図5に示したタイプのベクトル場の画像を生成することができる。この画像では、ベクトルはCTXVを用いて測定された吸息中の単一の時点における肺組織の速度を示す。灰色の異なる影(または好ましくは異なる色)は、速度の大きさおよび全次元による(aids)視覚化により減少したベクトル分解を表現するために使用することができる。この画像では、速度測定間の間隔は約0.18mmである。これは、CTXVが非常に少数の投影を用いて高分解能で正確な測定を生み出すことができることを示す。
【0074】
ベクトル場を肺の生理的な構造と関係づけることにより、より容易に認識できる画像を生成することができる。これは以下のさらなるステップにより実現することができる:
3(a):サンプルの3D画像をセグメント化するステップと、
3(b):3D画像のセグメントと対応する微分係数とを関連づけるステップ。
【0075】
図6は、肺気道構造の3Dレンダリングを作るために適用されてきた、これらのさらなるステップの例を示す。CTXVを用いて測定された肺組織の動きは、肺の膨張、したがって空気の肺への流れを領域ごとに計算するために使用されてきた。主な気道は灰色の影(または好ましくは異なる色)で表現されることにより、異なる領域における異なる体積流れが示される。
【0076】
したがって、肺組織の動きデータ(図5)は上述したステップ3を用いて処理される。これにより、肺の内部(図6)における空気の動きの測定を確立することができる。この「2部」法は、液体の動きの直接測定に対して、はるかに低い放射線量でさえ使用できるという点で利点を有する。
【0077】
類似の2部法を心臓などの他の器官における動きの測定に適用することができるであろう。特に、本願発明の方法を血液の流れを直接的に測定するために使用することができるであろう。本願発明の方法を、心臓組織(筋肉壁、心臓弁および/または血管)の動きの測定に使用することにより、液体(血液)流れの測定ができるようにすることもできるであろう。
【0078】
(システムおよび装置)
本願発明の方法は、広範囲のイメージングシステムに実装することができるであろう。本方法はCTXVシステムを用いて実装されることが好ましい。なぜなら本方法はあらゆる医療用イメージングモダリティに対して最高の分解能および透過性を与えることができるという利点を有するからである。
【0079】
本願発明に組み込まれる典型的なCTXVシステムは、主に多数の位相差X線イメージングライン(通常は少なくとも3つのイメージングライン)から構成されるであろう。3つを超えるラインにより、収集されるデータの質が改善されるが、これに伴ってシステムの複雑さ、コストおよび潜在的に送られるX線量を増大させるであろう。
【0080】
図1を参照して、各イメージングラインは通常は以下の重要な構成要素から構成されるであろう:
a:ビデオの速度または二重シャッタX線カメラ(1)と、
b:円錐ビームX線源(2)と、
c:エネルギー源調節システム(3)と、
d:基本エネルギー源整列ハードウェア(4)と、
e:高分解能カメラ整列ハードウェア(4)と、
f:画像撮影および解析ハードウェア(5)と、
g:ユーザーインターフェース(6)
【0081】
イメージングハードウェアに加えて、画像撮影、解析ハードウェアおよびソフトウェアが必要とされる。画像撮影、解析ハードウェアおよびソフトウェアは、通常は以下の重要な構成要素から構成されるであろう:
h:高速画像撮影ハードウェアと、
i:高速画像処理ハードウェアと、
j:画像処理ソフトウェアと、
k:整列、イメージングおよび解析用のユーザーインターフェース。
【0082】
好適な構成要素または構成要素群の詳細は、以下の段落に説明されている。
【0083】
円錐ビームX線源:位相差エネルギー源に通常見られるように、エネルギー源の大きさを考慮した場合にはトレードオフが存在する。レーザーエネルギー源はコントラストが低いが光量が多いため、露光時間が短くてすむ。現在の多くの位相差システムは、5μm未満のいわゆるマイクロまたはナノエネルギー源を用いている。通常は、少なくとも20〜50μmのサイズを有する工業用の「既製の」エネルギー源が、本願発明の方法およびシステムに使用されるためには好適であろう。
【0084】
エネルギー源調節システム(X線シャッタ):静止画の写真撮影が動きの測定に必要である。連続的な光源は、一次的な方形波にできるだけ近くなるよう短いバースト(bursts)へと変調されなければならない。暴露を2〜20ミリ秒にて完全に制御することが好ましい。高速シャッタを使用することによっても、照射線量を最小限に抑えることができる。画像の撮影に必要な最小限の時間しか、サンプルがX線に暴露されなくなるからである。
【0085】
基本エネルギー源整列ハードウェア:エネルギー源の最も明るい領域が興味のあるサンプル領域に焦点を当てられるように、X線源を配置することが好ましい。
【0086】
ビデオの速度または二重シャッタX線カメラ:システムの測定は、各イメージングラインから得られた2つ以上の生画像に基づくことができる。これらの画像は、素早く連続的に(ビデオのフレーム率またはそれ以上にて)取得されなければならない。持続的ビデオフレーム率を有するカメラシステムまたは2つの画像を素早く取得できる性能を有する「二重シャッタ」カメラが必要となるであろう。最適な画素サイズ、最小フレーム率、および感度が決定された場合、正しい仕様を有する適切な市販の「既製」カメラを使用できる可能性がある。
【0087】
高分解能カメラ整列ハードウェア:本システムは、各エネルギー源および他の任意のカメラに関して、自動化されたロボット式の各カメラの整列を含むことが好ましい。
【0088】
高速画像撮影ハードウェア:市販された「既製の」データ取得システムは、カメラを制御し解析をほぼリアルタイムに進めることができる速度において、各イメージングラインからデータを保存するために使用することができる。
【0089】
高速画像処理ハードウェア:適切な選択肢には、たとえばGPU、FPGAまたはDSP処理プラットフォームが含まれる。
【0090】
画像処理ソフトウェア:適切なソフトウェアの説明は、たとえばDubsky S、Jamison RA、Irvine SC、Siu KKW、Hourigan KおよびFouras A/2010年/計算された断層撮影X線速度測定/Applied Physics Letters/第96巻第2号第023702頁に見いだすことができる。本ソフトウェアは、本願発明の方法に従った再構築を実行できる必要がある。図3に記載された本願発明の実施の形態を例として使用して、本ソフトウェアは、サンプル画像を長方形の調査ウィンドウへと離散化し、これらウィンドウ上で相互相関を実行できてもよい。次に体積が調査ウィンドウの列により規定された軸方向断面に再構築されてもよい。断面の速度プロファイルを規定するために、長方形格子モデルが次に使用されてもよい。次に相互相関関数が各調査ウィンドウ測定領域から推定できる。3D速度場の再構築は次に、速度モデルを用いて推定された相互相関関数と、X線画像ペアから計算された相互相関関数との間の誤差を全映写角に対して最小化することになる。この解法は、非線形の最小二乗最適化を実行するレーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを用いて実装することができる。
【0091】
整列、イメージングおよび解析用のユーザーインターフェース:中央制御システムおよびユーザーインターフェースは、検査、キャリブレーションおよび整列などの技術的な機能を単純に起動できることが好ましい。本インターフェースは、イメージング、画像処理、および再構築された画像の視覚化などのユーザに関連する他の機能の制御も可能にすることが好ましい。
【0092】
(実施例)
本願発明は、Spring−8シンクロトロンにおいて4頭の異なる動物試験に使用されて成功してきた。これらの試験では、以下の内容が研究された:
a.人工呼吸器により誘導された肺損傷
b.ブレオマイシンに誘導された線維症
c.メタコリン接種およびサルブタモール反転(reversal)に基づくぜんそく
d.嚢胞性線維症肺病
【0093】
これら4つすべての試験は、肺の動きを測定するために本願発明を使用することにより、異常な肺機能の早期かつ正確で局所的な検出を提供することができることを明確に示している。病変の検出は、組織構造または組織検査から明らかとなる前に、肺の動きを測定することにより可能となる場合がある。この方法は、肺がんなど他の病気の診断に対しても有用でありうる。
【0094】
ここで本願発明を、以下の限定的ではない実施例を参照してさらに説明する。
【0095】
(実施例1)
本実施例では、本願発明の方法が強い3D流れの測定に適用された。
【0096】
関連するイメージング設備を図1に示す。本実施例の単色ビームは粒子を播種させた液体(中空のガラス球入りのグリセリン)を通過する。X線は物質間の表面にてわずかに屈折される。伝達され反射されたX線は、シンチレータにより可視光へと戻される前に、伝播し干渉することが可能となる。次にこれが高速検出器および可視光装置(optics)を用いて撮像される。その結果、位相差投影画像が得られる。この画像は、忠実に粒子を追跡する動的なスペックルパターンを形成する粒子と液体との接触面によりつくられた干渉縞の重ね合わせから生じる。
【0097】
画像が深度を推測可能な焦点またはホログラフィック重ね合わせ情報を含む、可視光に基づくイメージングシステムとは異なり、CTXVの伝達特性は全体積に焦点が当てられている2D体積の投影画像をもたらす。したがって、X線ビームの伝搬方向に平行な平面における速度分布に関する情報を含まない。さらに、任意の1つの視角からは、変位の2成分しか決定することができない。この情報不足は、サンプルを回転させて複数の映写角からイメージングを行うことにより克服される。これにより、体積内の速度場の断層撮影再構築が可能となる。これらの複数の投影から、物体の構造を同時的に断層撮影再構築することも可能となる。
【0098】
(前方投影)
従来のPIVのように、粒子画像ペアは調査領域へと離散化され、相互相関がこれらの調査領域上で実行される(図3(a)(i))。しかし、投影された調査領域内における広い速度分布によって、相互相関関数は大きく歪められるであろう。結果として生じる投影された相互相関統計値は、その画像の小区画上に投影され、粒子画像の自己相関関数(図3(a)(ii))とともに畳み込まれた流れの速度の確率密度関数(PDF)としてモデル化することができる。したがって、流れ場および粒子画像の自己相関関数が知られている場合には、理論的には流れ場から生じる相互相関関数を推定することができる。これは前方投影モデルをあらわす(図3(a)(iii)を参照)。CTXVは、既知の相互相関データから流れ場を再構築するという逆問題の解法を提供する。
【0099】
有限の露光時間が投影画像ペアの相互相関関数に及ぼす影響もまた考慮されなければならない。暴露中の粒子の動きによって、各速度の相互相関関数に対する寄与は、その速度に正比例する大きさにてその速度の方向に沿って拡大されるであろう。この影響は十分に明らかにされてきたため、この現象によるあらゆる誤差を除去するためにこの影響を前方投影モデル中に取り込むことは容易にできる。
【0100】
(逆問題に対する解決策)
図3(b)はCTXVの実装を示す。投影画像内における調査領域の列(図3(b)(iii))とともに、速度場は回転軸に直角の切片(図3(b)(i))にて再構築される。長方形格子モデルは、再構築領域内の流れ場を表す。3つの速度成分はモデル中の各節点にて規定されている。また、節点間の流れを規定するために、双線形補間が使用されている。計算時間および堅牢性を犠牲にして、スプライン補間などのより高次の補間スキームが使用されてもよい。
【0101】
相互相関関数は図3(a)に示す方法を用いて推定される。高速フーリエ変換(FFT)を実装することを通じて、畳み込みがもたらされる。流れモデルから推定された相互相関関数と投影画像ペアから測定された相互相関関数との間の誤差を最小限に抑えるために、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムが利用される。その結果、流れ場を正確に表現する計算された流れモデルがもたらされる。この問題は必要以上に重く考えられすぎているため、再構築の収束を確実にするために、チホノフ型の正規化計画が使用される。ここでは正規化された関数は、各結節点の速度値とその隣接点(neighbours)の平均値との間の差の合計に等しい。
【0102】
(相互相関の1次元化)
再構築に必要な最適化パラメータおよびメモリの数量を減らすために、相互相関関数の1次元化が実行される。これにより、vrおよびvqに対する個々のデータの再構築が可能となる。相互相関データの投影によって、図3(C)に示すように速度成分vrおよびvqのそれぞれに対して関数の2つの1次元表現がもたらされる。2成分を分けることにより、これらは個別に再構築することができる。これにより、再構築に必要となる最適化パラメータの数を大幅に減らすことができる。さらに、このプロセスにより保存および解析されるべきデータ量が大幅に減少する。
【0103】
(構造の同時的な再構築)
速度PDFの前方投影を正確にモデル化するために、再構築される領域内の粒子の相対播種密度が分からなければならない。作動流体内に均一に播種されていると仮定すると、相対播種密度は流れ形状の知見に対応する。したがって、CTXVスキャン中に得られたデータを用いて流れ形状を再構築することを可能とするCT技術が提供される。
【0104】
典型的なCT再構築技術では、投影方向にて積分された物体の密度がX線透過から計算される。この密度は、デジタル映写画像上の画素の強度値に比例するであろう。一定密度の物質の場合、この積分された物体の密度は、物体の厚さに比例する。粒子スペックルのコントラスト(画像強度の標準偏差と平均強度との比として定義される)は、物体の厚さの平方根とともに増大する。そのため、この統計値は物体の構造を断層撮影により再構築するためにも使用されてもよい。血管の生体内のイメージングを含む多くの場合に見られるように、吸収のコントラスト単独では断層撮影の再構築には不十分であるため、これは有利である。さらに、異なる映写角にて取得された画像間の粒子の動きは、その後の再構築において人為的な結果が生じてしまう。一方、粒子スペックルのコントラストはすべての視角に対して不変であろう。粒子スペックルのコントラストは、個々の小区画に対して各位相コントラスト画像において位相回復に先立って計算される。流れ形状は、代数の再構築技術を用いて粒子スペックルのコントラストデータから再構築される。代数技術を使用することにより、投影数の少ない正確な再構築が可能となる。
【0105】
(実施例2)
本実施例では、構造と速度の同時測定に対するCTXVの適用を実証する実験が説明される。図2に示されるように設置されたSpring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医療用イメージングビームライン(BL20XU)とともに、本願発明の方法が使用される。245mというエネルギー源とサンプルとの距離により、位相差イメージングに対して非常に位相のそろったX線が得られる。25KeVの単色ビームエネルギーを供給するために、Si−111複結晶モノクロメータが使用される。
【0106】
(サンプル)
サンプルは、3D印刷技術を用いて製造された950μmの平均直径を有する光学的に不透明な可塑性の動脈模型を含んでいた。本模型は、Objet社(商標)のFullCure(登録商標)アクリル系感光性樹脂材料から製造された。模型を保護する16μmの層厚を備えた高分解能技術は、研究された小規模において正確であった。形状は狭窄動脈を模倣するために選択された。この形状により、生体内において生じるのと類似した三次元の流れ場が生じる。血液は、注射器ポンプ(WPI社のUMP2)を用いてこの模型を通して流速4.8μl/mnにて供給された。PCIは赤血球をPIVトレーサ粒子としてイメージングするのに成功を収めてきたが、SN比を増大させるために、血液が気体の超微粒気泡とともに播種された。PCIは気体と液体の接触面にて高コントラストを形成する。そのため、超微粒気泡はこのイメージングモダリティに対して理想的な流れ追跡媒体となる。超音波造影剤であるDefinityr(Bristol−Myers Squibb Medical Imaging社)が使用された。活性化された場合、Definityrは2.5μmの平均直径を有し、安定かつ注入可能でペルフルオロカーボンで充填された超微粒気泡の均一な懸濁液を形成する。
【0107】
(データ収集)
イメージング設備が図2に示されている。シンクロトロン貯蔵リング(7)から、X線ビームがモノクロメータ(8)を通過する。X線ビームの放出は、X線シャッタ(9)により制御される。X線ビーム(10)はサンプル(12)を通って方向pに進む。サンプル(12)は、注射器ポンプ(11)の制御のもと、方向zへと流れる。X線ビーム(10)は次にシンチレータ(14)に作用する。シンチレータ(14)はX線の放射を可視光へと変換する。シンチレータは、高速増感CMOS検出器(20)(IDT社、X5i、4メガピクセル)を用いて顕微鏡対物レンズ(16)を通してイメージングされる。その結果、約15倍の倍率または有効画素サイズ0.52μmとなる。光学ミラー(18)は、検出器をX線ビーム(10)経路から除去する。高速増感カメラを使用することにより、10秒未満の合計走査時間が実現された。この合計走査時間により、4.5ミリ秒の露光時間および200Hzのフレーム率が可能となった。サンプルは、180°にわたって間隔が空けられた9つの映写角にて回転された。各角度において195画像を取得することにより、粒子投影画像(22)が提供された。サンプルと検出器との距離は、blood−Definity(登録商標)の混合物の位相差に対して実験的に最適化された。これにより、最適なシグナルを得るためには900mmが最適であることが明らかとなった。
【0108】
(画像の前処理)
X線位相差粒子画像には、相互相関解析の前に前処理が必要となる。不均一な照射の影響を除去するために、空間高域フィルタが用いられた。血管壁などの固定構造、モノクロメータの影響、および検出器または関連する光学機器上のほこりは、平均画像減算により除去された。Irvineら(Irvine SC、Paganin DM、Dubsky S、Lewis RAおよびFouras A/2008年/Applied Physics Letters/第93巻第153901頁)により説明されたように、Paganinら(Paganin D、Mayo SC、Gureyev TE、Miller PRおよびWilkins SW/2002年/Journal of Microscopy/第206巻第1号第33〜40頁)により説明された単一画像の位相回復アルゴリズムが次に実行されることにより、位相差縞(fringes)が取り除かれ、相互相関解析用の画像が改善される。
【0109】
(速度の再構築)
図3は、使用された再構築方法を概説する。粒子画像は長方形の調査ウィンドウ内に割り当てられる。また相互相関がこれらのウィンドウにおいて投影画像ペア間で行われる(図3(a))。調査ウィンドウの列によって定義される軸方向断面において体積が再構築される。断面の流れプロファイルを規定するために、長方形格子モデルが使用される(図3(c))。x,y,z方向における速度成分vx,vy,vzは、モデル中の各結節点において定義される。節点間で双線形補間が使用されることにより、モデル空間において速度プロファイルが規定される。モデル上の地点P(x,y)が画像平面上にP(q)として投影される。この場合、zにおける所定の断面に対して
q=ycos(θ)−xsin(θ)
である。同様に、以下の式により速度成分が画像平面上へと変換される。
vq=vysin(θ)−vxcos(θ)
vr=vz
式中、vqおよびvrはqおよびr方向における速度成分である。
【0110】
PDFを流れモデルから画像平面上へと投影することによって、各調査ウィンドウ測定領域に対して相互相関関数が推定される。この投影されたPDFを画像の自己相関関数と畳み込むことによって、推定された相互相関関数が得られる。3D速度場の再構築は次に、流れモデルを用いて推定された相互相関関数と、X線画像ペアから計算された相互相関関数との間の誤差を全映写角に対して最小化することになる(図3(b))。この解法は、非線形最小二乗法を用いて実装される。
【0111】
図4は、光学的に不透明な血管モデルの内部における血流の3D速度場を示す。質量保存から予想されるように、血管の形状が膨張するにつれ、最高速度が減少する。独立に再構築された断面は、体積の流れ速度に関して2%以内まで自己矛盾がない。またこれらの断面は、注射器ポンプの設定と一致している。この結果は、光学的に接近することなくある体積内における速度の3成分すべてを測定する本願発明の能力を実証している。
【0112】
(実施例3)
本実施例では、さらなる実験が説明される。この実験は、構造と速度の同時測定に対するCTXVの適用を実証する。Spring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医療用イメージングビームライン(BL20XU)とともに、本願発明の方法が再び使用される。
【0113】
(サンプル)
使用されたサンプルは、複雑な三次元の形状を有する不透明な可塑性のモデル(図7(a))であった。このサンプルは、物体高速プロトタイピング技術を用いて製造された。試験された区画は、内部に作動流体を流すことができる中空断面を有する直径14mmの固体円柱で構成されていた。中空断面の形状は、錐体とらせん状に湾曲した(swept)円との結合体として構築された。これにより、断面積が減少するコルク栓抜き形状として形成された。この形状は、強力な三次元の流れを示すために選択された。作動流体である(公称)35μmの固体のガラス球が播種されたグリセリンが注射器ポンプを用いて0.1ml/分にてモデル中に供給された。物体の前面からシンチレータまでの距離として定義される伝搬距離は、6mにてグリセリン/ガラス混合物のSN比の最大値に対して最適化された。
【0114】
(データ収集)
イメージング設備が図2に示され、実施例2を参照して説明される。具体的には、BL20B2ビームラインは、曲げ(bending)磁石挿入装置を使用した。Si−111モノクロメータを用いて25keVのX線エネルギーが選択された。サンプル線量を最小化するため、およびP43シンチレータを高中性子束X線ビームから保護するためにも、高速X線シャッタが使用された。高感度および低ノイズ特性を有するため、EM−CCD検出器(浜松ホトニクス社のC9100−02)が使用された。使用された光学機器により、9.5×9.5μm2の有効画素サイズがもたらされた。これにより、9.5mm×9.5mmの視界が得られた。画像は19の角度にて取得され、180°の全体にわたって均一に間隔が空けられた(包括的)。サンプルの回転中心の計算を可能とするために、180°の投影が含められた。しかし、180°の投影は、単純なキャリブレーション/整列プロセスの代わりに除外されてもよい。検出器は、30ミリ秒の露光時間を用いて1秒あたり28.5フレームにて画像を取得した。
【0115】
(速度の再構築)
実施例1で説明した方法を用いて流れ形状が再構築された。(生の位相差画像を用いた場合と比較して)粒子スペックル対照データを用いて大幅に高いシグナルが得られた。50%オーバーラップした16×16px2(ピクセル2)の小区画を用いて、スペックル対照地図が作成された。図7は、勾配型エッジ検出法(図7(b))を用いて分割され、流れモデルの中空断面および断層撮影法により再構築された形状の作成に使用されたコンピュータ支援設計(CAD)モデル(図7(a))を示す。
【0116】
速度を再構築するために、75%オーバーラップした64×64px2の調査ウィンドウを用いて相互相関関数が計算された。平均化された相関データを生成するために各映写角にて取得された99の画像ペアと組み合わせることにより、相関平均化法(Correlation averaging)が使用された。124×124px2の単位(sub−)格子上に挿入された各切片内の物体の大きさに応じて、69個の軸方向の切片が約300の節点を有する長方形格子上に個別に再構築された。その結果生じた構造および速度場が図8に示されている。予想されたように、流れは、錐体部分を通って血管が狭くなるにつれ速度が上昇するらせん形状をたどる。この結果は、投影が少数の場合にも複雑な4D流れを測定できる本技術の能力を示している。
【0117】
(実施例4)
本実施例は、肺組織の動きを検出するため、および呼吸中における局所的な肺の動きの速度および方向を規定する速度場を測定するための位相差X線イメージング(PCXI)とのPIVの結合を説明する。肺の局所的な地図が速度場からの膨張の程度およびタイミングを示すために生成される。肺の局所的な地図は、実験的に誘導された不均一な肺病により引き起こされた異常な組織特性を有する領域を明らかにする。
【0118】
(方法)
動物実験:青年期のオスのヌードマウス(Balb/c)には、イソフルラン麻酔のもと、経鼻投与の点滴によってブレオマイシン(20μlの生理食塩水中に体重1kgあたり20mg、シグマ社、n=8)または生理食塩水(20μl、n=6)が投与された。イメージング中に、マウスは麻酔され(ソムノペンチル、15mg/kg、腹腔内投与)、筋肉が弛緩され(ミオブロック1gh/kg、筋肉内投与)、次に外科的に挿管され、あらかじめ温められた(37℃)水柱中に換気およびイメージングのために配置された。次にマウスは人道的に殺された(ソムノペンチル、100mg/kg、腹腔内投与)。肺が摘出され、10%ホルマリン中で20cmH2Oの圧力にて固定された。パラフィンに包埋され、マッソントリクロームにより染色された肺の切片(5μm)、つまり3つ以上の無作為に選択された肺の切片/マウスから5つの視角が、アシュクロフトスコアを決定するために使用された。アシュクロフトスコアに対して1回換気量の平均値およびパラメータを比較するために、片側t検定が使用された。両側反復測定の分散分析が、肺膨張の度数分布および時間における差を決定するために使用された。結果は、5%の確率水準にて統計的に有意であるとみなされた。値は平均±標準誤差として報告された(特に断らない限り)。
【0119】
マウスは、合計4つの群(n=14)を用いて2つの別々の実験中に分析された。各実験は2つの群から構成された:暴露後36時間および6日にて行われた測定に対して、対照群(n=3)およびブレオマイシンで処理された群(n=4)。マウスをブレオマイシンに暴露することにより、進行性の肺損傷が引き起こされる。吸入ブレオマイシンは十分に明らかにされているため、炎症カスケードから始まる肺線維症の実験モデルに一般に使用されている。本実験ではヌードマウス(Balb/c)(免疫不全系統)が利用された。そのため、線維性肺疾患の反応が他の系統における報告と比べてこれらのマウスで低下したことは驚くべきことではない。これらのマウスでは、炎症反応が低下しているからである。
【0120】
X線イメージング:X線イメージングは、図2に示すように設置されたSpring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医用画像ビームライン(BL20XU)を用いて実行された。伝播型位相差イメージングが25keVにてサンプルと検出器との距離を2mとして実行された。X線光子は、浜松ホトニクス社のビームモニタ(BM5)を用いて可視光に変換され、浜松ホトニクス社のEMCCDカメラ(C9100−02)を用いて撮影された。20ミリ秒の露光時間、34.5ミリ秒のフレーム間時間および19μmの有効画素サイズにより画像が取得された。画像の取得は、吸息中に取得された70フレームおよび吐息中に取得された30フレームの換気(ventilation)とともに同期された。
【0121】
速度測定解析:速度測定解析にはカスタムソフトウェアを用いた。動物の大量の動きが計算され、上位椎骨のPIV解析によって連続した画像から除去された。続いて、固定された参照フレーム上に画像が挿入された。肺は、適切な頻度カットオフ値に基づいて帯域通過フィルタリングによって画像から分離された。5回の連続した吸息に対してマスクされた領域上で行われた肺組織の動きの速度測定の解析を用いて、肺により占められた画像の領域が特定されマスクされた。次にこれらのデータが位相平均化されることにより、各動物に対する呼吸の吸息位相を表す速度測定に関する70フレームのデータセットが得られた。各時点において、局所的な膨張速度はベクトル場の発散として表現することができる。ここでは空間微分係数(derivates)は速度ベクトル場から正確かつ容易に求められる。吸息に対する全膨張は、続く時点の各ペア間における膨張の合計である。全吸息に対してデータが積分されたため、全膨張は単一の地図に表現された。ベクトル場が時間に対して3次元(3D)において測定できるのであれば、3Dにおける膨張の定量化は局所的なコンプライアンスに直接関係するであろうし、コンプライアンスの平均時間は気道抵抗に直接関係するであろう。データ量を減らすと同時に膨張地図の一次的な質を保存するために、平均膨張が生じる時間の時間地図が開発された。平均時間は、膨張と時間との積を合計し、膨張の合計により標準化されることによって求められた。
【0122】
(速度測定の適用)
上を覆う複数の気道を通るX線ビームの投影により、高コントラストなスペックル強度パターンが生成された。このパターンの続くX線画像上における動きは、従来型のPIVに使用される導入された追跡粒子の代わりをする。PIVの解析方法を位相差X線画像に適用することにより、呼吸サイクルにおける局所的な肺の速度の包括的な地図が生成された。
【0123】
図9(a)は、X線照射および速度測定の相互相関解析の三次元性を示す。投影画像中の各2Dサンプリング領域は、速度分布が存在してもよい三次元体積を表す。現在の解析は最頻値の速度を選択する。この速度は、平均から有意に異なってもよい。図9(b)は、肺組織の動きに関するこの生体内の検出を図示する。具体的には、本実施例では、肺の画像は、各区画に関する速度ベクトルを有する2641のオーバーラップする区画へと分割された。各速度測定の間隔は155μmであった。これは1つの肺胞と同じような大きさである。1回の呼吸あたり100の画像が5回の呼吸にわたり取得された。また完全なデータセットが使用されることにより、呼吸を通じた肺の動きの速度および方向における変化の一次的なパターンを実演する動画が生成された。上位椎骨に対して速度が測定された。上位椎骨の動きは、測定された後に連続する画像から解析前に取り除かれた。
【0124】
肺組織の動きは、局所的なコンプライアンス、近くの組織のコンプライアンスおよび動き、加えて横隔膜、心臓および胸壁などの構造への近さの局所的な特性の複雑な関数である。たとえば、横隔膜近くの肺組織は、局所的なコンプライアンスに関係なく、肺の頂部近くの組織に比べて著しく多くの動きを示した。肺の全体にわたる異なる動きの程度を含むために、コンプライアンスに関する2つの測定、つまり局所的な膨張速度および膨張の平均時間が開発され、評価された。いずれも実験に含まれるすべての対照群に対する平均を用いて標準化された。
【0125】
図10は、対照群と、ブレオマイシン暴露36時間後の群(図10(a)〜(d))および暴露6日後の群(図10(b)〜(h))とを含む肺の病状の統計的な測定を示す。膨張の程度の度数分布(上部、速度測定を用いて測定された)が治療された群(n=4)について対照群(n=3)と比較された。基準値は対照群の平均により正規化された。治療36時間後において、治療されたマウスは平均して24%大きな膨張を示した。また、治療された肺の14%は対照群の平均の2倍超膨張した。一方、対照群の肺は5%未満であった。治療6日後において、治療されたマウスは平均して76%大きな膨張を示した。また、治療された肺の47%は対照群の平均の2倍超膨張した。一方、対照群の肺は4%未満であった。星印は、対照群のマウスと治療されたマウスとの間に有意差(p<0.001)があることを示す。対照群のマウスおよび治療されたマウスにおける膨張(中間)の平均時間の度数分布が示されている。星印は、対照群のマウスと治療されたマウスとの間に有意差(p<0.001)があることを示す。底部:対照群のマウスと治療されたマウスとの間のコンプライアンスの比較(統計的に有意でない)および1回換気量(Vt)の比較(対照群における1回換気量は、治療された群よりも有意に低い。しかし、実際は特異的で全体的な減少ではない)。
【0126】
図11は、肺の内部における局所的な膨張と、比較組織学的イメージとを示す。局所的な膨張の地図(通常は着色されている)が、典型的な対照マウス(図11(a))および暴露6日後のブレオマイシン処理されたマウス(図11(b))に対して、PIVを用いて決定された。データは、対照群全体にわたる局所的な膨張の平均およびカラースケールを用いて生成された地図を用いて標準化された。ブレオマイシンにより処理されたマウス(図11(b))は、肺膨張のパターンにおいて劇的な局所的変化を示した。図11(a)でイメージングされた肺から得られた図11(c)の組織画像は、対照群の典型例である。図11(b)でイメージングされた肺から得られた図11(d)および図11(e)の組織画像は、ブレオマイシン治療後6日後の病気の群の典型例である。図11(a)および図11(b)のスケールバーは、画像の相対的な大きさを示す。また、図11(c)、図11(d)および図11(e)の挿入ボックスは、図11(a)および図11(b)のスケールを示す。
【0127】
本願発明を特定の実施の形態に関連して説明してきた。しかし、当然のことながら本願発明にさらに修正を加えることもできる。本出願は、本願発明の使用または適用が一般に本願発明の原理に付随するあらゆる変形例、および本願発明の使用または適用が本願発明の属する分野における既知のものまたは慣行の内部で生じる本願開示からの逸脱および上述した本質的な特徴に適用されうる本願開示からの逸脱を含む、あらゆる変形例を含むことが意図されている。
【0128】
本願発明の本質的特徴の精神から逸脱することなく、本願発明はいくつかの形態で具現化されてもよい。そのため、当然のことながら、特に断らない限り、上述の実施の形態は本願発明を制限するものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲において規定された本願発明の精神および範囲内において、広く解釈されるべきである。説明された実施の形態は、すべての観点において説明するためだけのものであって制限的ではないと考えられるべきである。
【0129】
本願発明の精神および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲には、様々な修正および同等の配置が含まれることが意図されている。したがって、特定の実施の形態は、本願発明の原理が実行されうる多くの方法の実例であることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲では、ミーンズプラスファンクション節(clauses)は、規定された機能を実行するものとして構造を包含すること、および構造的な同等物だけではなく同等の構造を包含することが意図されている。
【0130】
当然のことながら「サーバ」、「安全なサーバ」または類似の用語が使用された場合、文脈が別の意味を示さない限り、通信システムに使用されてもよい通信装置が説明される。また本願発明を任意の特定の通信装置型に制限すると解釈されるべきではない。したがって、通信装置はブリッジ、ルータ、ブリッジルータ(ルータ)、スイッチ、ノード、または他の通信装置を含んでもよいが、これらに限られない。これらは安全であってもよいし、安全でなくてもよい。
【0131】
本願発明の様々な態様を示すために本明細書中でフローチャートが使用される場合、本願発明を任意の特定の論理の流れまたは論理の実装に対して制限すると解釈されるべきではない点も注目すべき点である。全体の結果を変えることなく、またはそうでなければ本願発明の真の範囲から外れることなく、説明された論理は異なる論理ブロック(たとえばプログラム、モジュール、関数、またはサブルーチン)へと分割されてもよい。全体の結果を変えることなく、またはそうでなければ本願発明の真の範囲から外れることなく、多くの場合、論理要素が追加、修正、省略、異なる順序において実行、または異なる論理構成物(たとえば論理ゲート、ループ型基本命令(looping primitives)、条件付きロジック、および他の論理構成物)を用いて実装されてもよい。
【0132】
様々な本願発明の実施の形態は、多くの異なる形式にて具体化されてもよい。多くの異なる形式には、プロセッサ(たとえばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、または汎用コンピュータ)とともに使用されるコンピュータプログラム論理、プログラマブル論理装置(たとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のPLD)、個別の構成要素、集積回路工学(たとえば特定用途向け集積回路(ASIC))とともに使用されるプログラマブル論理、またはこれらの任意の組み合わせを含む他の任意の手段が含まれる。本願発明の典型的な実施の形態では、ユーザとサーバとのほとんどすべてのやりとりは、コンピュータ実行形式へと変換された一連のコンピュータプログラム命令として実装されている。コンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読のメディアなどに保存され、オペレーティングシステムの制御のもと、マイクロプロセッサにより実行される。
【0133】
本明細書中で説明した機能性のすべてまたは一部を実装しているコンピュータプログラム論理は、様々な形式にて具体化されてもよい。様々な形式には、ソースコード形式、コンピュータ実行形式および様々な中間の形式(たとえばアセンブラ、コンパイラ、リンカー、またはロケータにより生成された形式)が含まれる。ソースコードは、様々なオペレーティングシステムまたは動作環境とともに使用される任意の様々なプログラミング言語(たとえばオブジェクトコード、アセンブリ言語、またはFortran、C、C++、JAVA(登録商標)、もしくはHTMLなどの高級言語)にて実装された一連のコンピュータプログラム命令を含んでもよい。ソースコードは様々なデータ構造および通信メッセージを規定し使用してもよい。ソースコードはコンピュータ実行形式(たとえばインタプリタを用いて)であってもよい。または、ソースコードは(たとえば変換機構、アセンブラまたはコンパイラを用いて)コンピュータ実行形式へと変換されてもよい。
【0134】
コンピュータプログラムは、任意の形態(たとえばソースコード形式、コンピュータ実行形式、または中間の形式)にて恒久的にまたは一時的に、半導体記憶装置(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはFlashプログラム可能RAM)、磁気記憶装置(たとえばディスケットまたは固定ディスク)、光学記憶装置(たとえばCD−ROMまたはDVD−ROM)、PCカード(たとえばPCMCIAカード)、または他のメモリ装置などの有形の記憶媒体中に固定されてもよい。コンピュータプログラムは、任意の様々な通信技術を用いてコンピュータに送信可能な信号の任意の形態にて固定されてもよい。任意の様々な通信技術は、アナログ技術、デジタル技術、光技術、ワイヤレス技術(たとえばBluetooth(登録商標))、ネットワーク技術、およびインターネットワーキング技術を含むが、決してこれらには限られない。コンピュータプログラムは、添付のプリントされた文書または電子文書(たとえばパッケージソフトウェア)を備えたリムーバブル記憶媒体として任意の形態にて配布されてもよいし、(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上に)コンピュータシステムがあらかじめ組み込まれていてもよいし、または通信システム(たとえばインターネットまたはワールドワイドウェブ)上のサーバまたは電子掲示板から配布されていてもよい。
【0135】
本明細書中で説明した機能性のすべてまたは一部を実装しているハードウェア論理(プログラマブル論理装置とともに使用されるプログラマブル論理を含む)は、従来の手作業による方法により設計されてもよい。または、コンピュータを利用した設計(CAD)、ハードウェア記述言語(たとえばVHDLまたはAHDL)、またはPLDプログラミング言語(たとえばPALASM、ABEL、またはCUPL)などの様々な手段を用いて電子的に設計、保存、シミュレーション、または記録されていてもよい。
【0136】
プログラマブル論理は、半導体記憶装置(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはFlashプログラム可能RAM)、磁気記憶装置(たとえばディスケットまたは固定ディスク)、光学記憶装置(たとえばCD−ROMまたはDVD−ROM)、または他の記憶装置などの有形の記憶メディア中に、恒久的にまたは一時的に固定されてもよい。プログラマブル論理は、任意の様々な通信技術を用いてコンピュータに送信可能な信号中に固定されていてもよい。様々な通信技術としては、アナログ技術、デジタル技術、光技術、ワイヤレス技術(たとえばBluetooth)、ネットワーク技術、およびインターネットワーキング技術が含まれるが、決してこれらには限られない。プログラマブル論理は、添付のプリントされた文書または電子文書(たとえばパッケージソフトウェア)を備えたリムーバブル記憶媒体として配布されてもよいし、(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上に)コンピュータシステムがあらかじめ組み込まれていてもよいし、または通信システム(たとえばインターネットまたはワールドワイドウェブ)上のサーバまたは電子掲示板から配布されていてもよい。
【0137】
「含む(comprises)/〜を含む(comprising)」および「含む(includes)/〜を含む(including)」が本明細書中で使用された場合、表明した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定したことになる。しかしこれらの記載は、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはこれらの集合の存在または追加を除外するものではない。したがって、明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が明確に別の意味を示さない限り、「含む(comprise)」、「〜を含む(comprising)」、「含む(includes)」、「〜を含む(including)」などの用語は、排他的または包括的な意味とは反対の包含的な意味として、つまり「〜を含むがこれらには限定されない」の意味として解釈されることになる。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、イメージング、特に動きのイメージングに関する。
【0002】
ある態様では、本願発明は医用生体工学の分野、特に生体内または試験管内のイメージングに関する。
【0003】
他の態様では、本願発明は研究用途、医療用途および産業用途の広範囲において機能および形状をイメージングするための技術に関する。
【0004】
さらに別の態様では、本願発明は生体組織の動きをイメージングするための方法および装置として使用されるのに適している。
【0005】
以下、本願発明を生体内の医用イメージングに関連して説明するのが都合がよいであろう。しかし、当然ながら本願発明はその用途のみに限定されるものでないこと、ならびに試験管内の用途、診断および治療などの他の医療用途、加えて研究用途および産業用途にも使用できる。特に、本明細書の説明は肺系統および血管系に特に言及する。しかし、当業者は、本願発明の用途はこれに限定されず、機能に対して機械的に動的な側面を有する他のシステムに拡張可能であることを理解するであろう。
【0006】
さらに以下、コンピュータ断層撮影X線粒子画像速度測定(CTXV)に使用されるようなX線を放射するエネルギー源(source)を用いたイメージングに関連して本願発明を説明するのが便利であるが、本願発明はあらゆる便利なエネルギー源を用いて画像を提供する任意のシステムに拡張可能であることが理解されるであろう。
【0007】
人体における重要なプロセスの多くは動きを伴う。分かりやすい例として、心臓血管系(心臓および血流の動き)、肺系統(横隔膜および肺の動き)、腎臓系(血液の動きおよびろ過)、および筋骨格系(筋肉、結合組織、骨および関節の動き)が含まれる。血栓形成および肺疾患などの血管系の病気は、先進国では死亡率および疾病率の主な原因である。これらのシステムの機械的に動的な側面を研究することは、人体の根本的な働きをさらに理解することに貢献し、機能障害や病気と戦う上で有用な手助けとなる。
【0008】
これらのシステムにおいて病気または機能障害を見分けて治療する能力は、これらをそのままの状態で高分解能にて撮影する我々の能力に左右される。特に、現在のイメージングは臨床的にはっきり分かる前に肺病のほとんどの形態を発見することができない。それらの病気は発見が早いほど予後が良くなる。
【0009】
肺気腫や肺線維症などの肺の病気の多くに比較的一般的な特徴は、肺組織のコンプライアンス(compliance)における著しい局所的な変化につながる末梢の気道構造に対する局所的な変化である。したがって、呼吸サイクル中で肺の全域にわたる組織の速度の領域差を検出することができ、その結果初期段階において肺病および機能障害を検出することができるイメージング技術を開発する試みがなされてきた。
【背景技術】
【0010】
本明細書における資料、装置、行為または知見に関するあらゆる議論は、本願発明の背景を説明するために記載されたことが理解されるべきである。さらに、本明細書の全体にわたる議論は、発明者の認識により、および/または発明者がある従来技術の問題を特定するためになされている。さらに本明細書における資料、装置、行為または知見などの題材に関するあらゆる議論は、発明者の知見および経験の観点から本願発明の背景を説明するために含められている。したがって、任意のそのような議論は、本願明細書の開示および特許請求の範囲の優先日またはそれ以前において、任意の材料が従来技術の基礎の一部をなすこと、あるいはオーストラリアまたはそれ以外における従来技術における共通の一般的な知見をなすことを自白したものとみなされるべきではない。
【0011】
本明細書中における「動き」との記載は、「流れ」または「速度」(時間に対する動きの関数である)と置換可能であることが理解されるであろう。
【0012】
生体内の三次元(3D)の血流場を測定する能力は、アテローム性動脈硬化症などの心臓血管の病気の発達、診断および治療における血流特性の影響を研究する上で重要な能力である。生体内の血流場測定から有用な情報を得るために、光学的に不透明な組織を通る高分解能で非侵襲性の測定が必要である。
【0013】
人体の形状および機能に関する生体内の測定を支える技術の発展は、様々な総説において議論されている(たとえばFouras A、Kitchen MJ、Dubsky S、Lewis RA、Hooper SBおよびHourigan K/2009年/Journal of Applied Physics/第105巻を参照)。
【0014】
磁気共鳴映像法に基づく技術などの不透明な血管における流れ場の測定に対して現在使用可能な技術は、低い空間分解能および時間分解能に悩まされている。そのため、生体内の流れ解析に対するこれらの技術の用途は制限されている。よりよい結果が粒子画像速度測定(PIV)などの技術を用いて実現されてきた。ここでは、トレーサ粒子の変位が粒子画像ペア内の領域の統計的な相互相関を用いて決定される。体積の(volumetric)流れ解析には、断層撮影PIV、体積の粒子追跡およびホログラフィックPIVを含むいくつかのバリエーションが存在する。
【0015】
(PIVイメージング全般)
粒子画像速度測定法(PIV)は、瞬間的な速度場を正確に測定するためによく知られた方法である。可視光を用いるPIV技術は、光学的に透明なサンプルに限られる。しかし、PIVを用いたX線の使用は、本方法の用途を不透明な組織にまで広げてきた。これにより、このイメージング方法が生体内の血流場の測定に理想的なものとなった。
【0016】
PIVでは、複数のトレーサ粒子(通常は可視波長レーザにより照射される)を含む液体の領域が既知の時間間隔が空いた時間上の2点にてイメージングされ、相関ソフトウェアを用いて処理される。特に、画像ペアが個別の調査(interrogation)領域の中に割り当てられる。各調査領域において画像ペア間で相互相関が行われる。統計的には、相互相関の最大値が調査領域の内部における粒子変位(displacement)になる可能性が最も高い。
【0017】
近年、PIVはX線イメージングと組み合わせられてきた。X線の透過能力により、非侵襲性で高分解能の血流場測定に対する用途とともに、不透明な物体の内部で流れを測定することができる。
【0018】
(2D粒子画像の速度測定)
KimおよびLee(Kim GBおよびLee SJ/2006年/Exp.Fluids/第41巻195頁)は、粒子および血液細胞をトレーサとし、X線PIVを用いたチューブ内の流れを測定した。この研究において説明された方法は、測定体積内における速度の2成分(画像平面と垂直な次元に関して平均化されている)に限定されている。使用されたPIVアルゴリズムは、光学/レーザーに基づいた速度測定に関連する従来技術であった。これらのアルゴリズムは、パルス状の(瞬間的な)照射およびゼロの面外流量勾配を仮定していた。そのため、X線を用いて現実の流れをイメージングする3D特性を考慮することができなかった。これにより流速が大幅に過小評価されてしまっていた。
【0019】
(3D粒子画像の速度測定)
最近、X線PIV解析は3D流量データを含むように拡張されてきた。Fourasら(Fouras A、Dusting J、Lewis RおよびHourigan Kら/2009年/Journal of Applied Physics/第102巻第064916頁)が教示するのは、相関ピークが測定体積内における速度の確率密度関数(PDF)を表すということである。流れ場に関するある仮定と組み合わせた場合、速度に関するこの体積PDFを速度プロファイルへと変換することが可能である。これにより、3Dの流量データを単一のX線投影画像から測定することができるようになる。
【0020】
CTは、物体を二次元の投影から三次元空間にて再構築するために使用される技術である。一般に、投影方向にて積分された物体の密度がX線減弱から計算される。X線減弱は、デジタル投影画像における画素の強度値に比例するであろう。次に、フーリエ逆投影法または代数法を用いて異なる視角にて取得された投影画像から、物体の構造が再構築される。また、少数の映写角から物体を再構築するための変形例も存在する。これらの変形例は、たとえばサンプルが単一物質で構成されているというサンプルの予備知識を多くの場合利用することにより、サンプルの構造を再構築するために反復法を使用する。
【0021】
したがってCTXVは、心臓血管系で見られるような複雑な3Dの流れ場に対して3成分の速度測定を提供することができる。単一の投影画像は、速度の3成分を評価するためには不十分である。単一の映写角にて取得された画像は、X線ビームに平行な方向に変位(displacement)情報を含んでいない。これにより、単一の投影X線PIVは2成分の速度測定に制限される。CTに似たある方法では、複数の映写角を用いることによりCTXVがこの制限を克服する。位相差画像法および位相回復法を用いることによりSN比を増大させることができる。
【0022】
特に従来技術の単一の投影X線PIVのように、画像ペア内の調査領域に対して相互相関関数が計算される。速度場は、全ての映写角に対する調査領域の列によって定義される軸方向の切片において再構築される。3成分で2Dの長方形格子モデルは、各切片に対する速度場を表す。あらゆる角度および各切片内のすべての調査領域に対して推定された相互相関関数が生成される。モデル内の調査領域に対する速度PDFとともに測定された自己相関関数の畳み込み(convolution)を用いて、推定された相互相関関数が生成される。モデル中の速度係数が繰り返し最適化されることにより、その切片内において同時に、全ての映写角および調査領域にわたって、測定された相互相関関数と推定された相互相関関数との間の誤差が最小化される。この反復方法を用いて、各切片内の3成分速度場を正確に表現するモデルが得られる。
【0023】
比較的少数の投影しか必要とならない。これが放射線量を最小にするためには重要である。これにより、CTXVを上述したようなCT再構築と統合することにより、形状と機能の両方の同時測定を行うことも可能となる。
【0024】
CTには、全ての医用画像モダリティの最高の分解能および透過性を提供できるという利点がある。一方で、高線量のX線を伝達してしまうという著しい欠点もある。もしこの放射線量の心配がなかったら、高分解能CTは標準的なスクリーニング手段になるであろう。
【0025】
従来技術のX線PIV技術は、すべての医用画像モダリティに対して最高の分解能および透過性を提供するが、単一の視角にて取得された粒子画像を使用する。この粒子画像は、X線ビームに平行な方向に粒子の変位情報を含まない。したがって、従来技術のX線PIV技術は、2成分の速度測定に限られるという欠点を有する。また、画像平面に垂直な次元における速度プロファイルに関して、情報が取得できない。したがって、流れの予備知識なしに3D測定を行うことはできない。
【0026】
構造、体積および動きに関して形状と機能の両方を測定し、より確かな流れ場の3D再構築を行うために、性能を高めることが現在も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Fouras A、Kitchen MJ、Dubsky S、Lewis RA、Hooper SBおよびHourigan K 2009年 Journal of Applied Physics 第105巻
【非特許文献2】Kim GBおよびLee SJ 2006年 Exp.Fluids 第41巻195頁
【非特許文献3】Fouras A、Dusting J、Lewis RおよびHourigan Kら 2009年 Journal of Applied Physics 第102巻第064916頁
【発明の概要】
【0028】
本願発明の目的は、3D画像の再構築というよりもむしろより正確な3D再構築というべき、改善された画像を提供することである。
【0029】
本願発明のさらなる目的は、3D画像の再構築というよりもむしろより正確な3D再構築へとデータセットを変換するための改善された方法を提供することである。
【0030】
本明細書中に記載の実施の形態は、従来技術のシステムの少なくとも1つの欠点を克服するか和らげる。または少なくとも従来技術のシステムに対する有用な代替技術を提供する。
【0031】
本質的に本願発明の実施の形態は、イメージングが2次元、好ましくは3次元空間座標(x,y,z)+時間(t)における動きの3成分(u,v,w)を利用することができるという認識に端を発する。これらはここでは必要に応じて「3D」または「4D」と呼ぶ。しかし実際には、本願発明の実施の形態は、従来技術の3Dイメージングよりも多くの成分を測定することができる。さらにこの手法は、あらゆる種類の動きの測定に適用可能であることが分かってきた。たとえば生理的な測定に関して、この方法は、血液、空気またはリンパ液などの動く液体の測定および/または吸息や吐息中における肺組織などの組織の測定に適用することができる。コンプライアンスやずれ(shear)などの特性に関連するデータを処理することも、さらに実現することができる。実際には、本願発明は、
(i)従来技術の3Dイメージング技術を用いては行えない、動きの3D再構築を行い、
(ii)初めに3D画像を再構築することなく3Dの動き(速度)情報を再構築し、
(iii)ずれ、コンプライアンスおよび体積流れなどのデータを4D(x,y,z,t)において評価し、3Dまたは4D上に速度の3成分を再構築することにより、それらを画像形式にて表示する能力を提供する。
【0032】
本明細書中で説明される実施の形態の第1の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析で得られた画像ペアの相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ。
ここで、再構築は初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0033】
ステップ2の再構築は、反復法により行われてもよいし、これに代えて直接法により行われてもよい。
【0034】
速度場の画像はしたがって、視覚的に大量の情報を伝達しうる。しかし、速度場の画像は、物理学者にはなじみが深いが、これらの画像を解釈する必要が出る可能性があって、生理的特徴を観るのに慣れた開業医や病理学者などの他の専門家にはなじみがない。より簡単に認識でき理解できる画像を提供するために、速度場をサンプルのデジタル化(セグメント化)画像の対応する特徴と関連づけることが必要である可能性がある。画像データを認識できる生理的特徴または他の特徴と関連づけることが必要なのは速度場に限られない。任意の手段により取得された任意の適切な画像データにも当てはめることができる。
【0035】
サンプルの画像を提供するための方法がさらに提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:デカルト座標にてサンプルに対するデータをコード化する画像を記録するステップと、
2:記録された画像においてコード化された情報から、2Dまたは3Dデータ場を再構築するステップと、
3(a):サンプルの画像をセグメント化するステップと、
3(b):各セグメントと2Dまたは3Dデータ場の領域とを関連づけるステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0036】
画像は複数の角度から記録されることが好ましい。しかし、(Irvine SC、Paganin DM、Dubsky S、Lewis RAおよびFouras A/2008年/Applied Physics Letters/第93巻第153901頁、ならびにFouras A、Lo Jacono D、Nguyen CVおよびHourigan K/2009年/体積相関PIV:3D速度ベクトル場測定に対する新たな技術/Experiments in Fluids/第47巻第4号、第569〜577頁に開示されているように)サンプルが形状または動きに関して回転対称を有するならば、1つの映写角からの計測しか必要とならないことが当業者には明らかであろう。さらに、もし速度データに加えて位相(phase)または焦点(focus)からの深度のデータが記録されるならば、1つの映写角しか必要とならない。
【0037】
したがって、本明細書中で開示された実施の形態の第2の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1.少なくとも1つの映写角から画像を記録し、3つのデカルト座標に関してサンプルに対する2D速度データを得るために画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2.相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するステップ。
ここで、ステップ1および2は自動化されている。
【0038】
本方法を用いることにより、サンプルの2Dつまり「単投影」画像が得られる。これらのステップを何度も繰り返すことにより、3Dデータを4Dデータへと拡張することができる。
【0039】
したがって、本明細書中で開示された実施の形態の第3の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対する速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2(a):相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するための反復法を用いるステップと、
2(b):4D速度場を生成するために反復法を繰り返すステップと、
3:4D速度場を使用することにより、さらなる情報を提供するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1〜3は自動化されている。
【0040】
上述の方法に従って提供されるさらなる情報は、ずれやコンプライアンスなどの任意の有用な特性に関連してもよい。これらの情報は、サンプルの機能性の程度または質の解析に重要であってもよい。速度データを記録することに加えて、ステップ1は位相(ホログラフィ)または焦点から得られた深度情報を記録することを含んでもよい。
【0041】
典型的には、反復法は反復CT方法に類似するであろう。
【0042】
画像を提供する任意のエネルギー源を本願発明の方法とともに使用することができる。任意のエネルギー源には、以下の種類のエネルギーを放出するエネルギー源が含まれる:
・X線
・可視レーザーを含む可視光
・赤外レーザーを含む赤外線放射
・紫外線レーザーを含む紫外線放射
・超音波
・電気インピーダンス
・磁気共鳴
【0043】
好ましい実施の形態では、本願発明はサンプルをCTXVイメージングするための方法である。
【0044】
本明細書中で開示された実施の形態の第4の態様では、サンプルのイメージング方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1(a):複数の映写角から画像を記録するステップと、
1(b):画像を長方形の調査(interrogation)ウィンドウ内に割り当てるステップと、
1(c):画像からx,y,z方向に速度成分u,v,wを導出するステップと、
1(d):調査ウィンドウによって規定された画像ペアにおいて相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析から得られた画像ペアの相互相関から直接的に3D速度場を再構築するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0045】
本明細書中で開示された実施の形態の第5の態様では、速度場を規定するデータセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法が提供される。本方法は、以下のステップを含む:
1(a):少なくとも1つの映写角から画像を記録し、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
(i)時間に対する(against time)デカルト座標(x,y,z)とは正反対の(opposite)速度(u,v,w)
(ii)圧力または体積を含む群から選択されたさらなる物理的パラメータ(p)
2(a):測定を積分することにより、単一の3D速度場を提供するステップと、
2(b):以下の式により定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ。
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δp
ここでステップ2は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0046】
本願発明の実施の形態のさらに別の態様では、速度場を規定するデータセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法が提供される。本方法は以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペアの相互相関解析を行うステップと、
(i)デカルト座標(x,y)とは正反対の動き(u,v)、
(ii)サンプルの厚さ(t)、圧力(p)および体積(V)
2(a):測定を積分することにより、単一の3D速度場を提供するステップと、
2(b):以下の式に関して局所的なコンプライアンスを記述するステップと、
(δu/δx+δv/δy).t/δp
2(c):全コンプライアンスと、以下の式に従って局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ。
t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)
ここでステップ2は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0047】
たとえば上述の方法は、肺、心拍、または動脈中の血液の脈動の吸息または吐息に対する局所的なコンプライアンス地図を作成するために使用することができる。したがって本願発明は、液体であろうと組織であろうと、あらゆる動きを測定するために使用することができる。
【0048】
特に肺に関連して、本願発明の方法は、肺組織の動きを検出するため、および呼吸全体にわたる局所的な肺の動きの速度および方向を規定する速度場を測定するために使用することができる。肺の局所的な地図を生成することにより、速度場からの膨張の程度およびタイミングを示し、実験的に誘導された不均一な肺病により引き起こされた異常な組織特性を有する領域を明らかにすることができる。これには肺線維症、嚢胞性線維症、がんおよびぜんそくなどの病気が含まれる。
【0049】
具体的にはこれは、デカルト座標(x,y,z)とは正反対の時間に対する空気の速度(u,v,w)のパラメータを測定し、肺の気道の3D画像をセグメント化し、次に速度が測定された肺の各領域と3D画像の対応する区分とを関連づけることにより、時間に対して気道内部の気流を描写することを含む。これは以下のフローチャートに要約することができる:
【0050】
【表1】
【0051】
以前はX線イメージングにおいて使用できなかった本願発明の方法の機能的能力を、線量の劇的な減少が期待されることと合わせて考えることにより、本方法に基づく装置またはシステムは、たとえば臨床用スキャナとして大きな有用性を見出すことができる可能性がある。そのようなスキャンシステムは、早期発見および病気または疾患の診断を提供するために使用可能である。本装置は、たとえば選鉱において、または前臨床医療、選鉱、地球物理学および液体力学の研究室において、動きを測定する産業に対しても適用することができるであろう。
【0052】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用された場合、本装置は以下を含む:
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、
(iii)1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間にサンプルを配置するためのサンプル保持具。
使用時には、サンプル保持具はサンプルを複数のエネルギー映写角に回転させることにより、少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録される。
【0053】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用される場合、本装置は以下を含む:
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器。
使用時には、サンプルは1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間に配置される。エネルギー源および検出器はサンプルに対して複数のエネルギー映写角に回転されることにより、サンプルの少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録される。
【0054】
本願発明の実施の形態の別の態様では、装置が提供される。本願発明の方法に使用される場合、本装置は以下を含む:
(i)それぞれの映写角を有する2つ以上のエネルギー源と、
(ii)エネルギー源から発せられたエネルギーによりサンプルを通過するときに作られた画像を記録するための1つ以上の検出器。
ここで各映写角における記録は同時に行われる。
【0055】
1°〜360°の任意の便利な範囲の映写角を使用してもよい。しかし、通常は映写角の範囲はこの範囲の境界値には達しない。たとえば、30°しか間隔が空いていない映写角、または180°も間隔が空いた映写角が好適である可能性がある。
【0056】
少なくとも1つのエネルギー源および検出器に加えて、本願発明の方法とともに使用される装置は、多くの他の構成要素を含んでもよい。他の構成要素には、たとえば、(i)エネルギー源、標的および/または検出器を調節および整列させるためのシステム、(ii)画像撮影,加工、および解析用のシステム、ならびに(iii)便利なユーザーインターフェース、が含まれる。
【0057】
他の態様および好適な形状は、明細書に開示および/または添付の特許請求の範囲に規定されている。これらは本願発明の説明の一部をなす。
【0058】
ドップラー超音波法、磁気共鳴映像法(MRI)、ホログラフィックPIV、デジタルインラインホログラフィックPTV、断層撮影PIVおよびピンぼけ(defocusing)PIVなどの3D速度情報を測定可能な従来技術のシステムが多く存在する。しかし、これらのシステムはすべて本願発明が有さない欠点を有する。たとえば、ドップラー超音波法は限られた空間分解能および時間分解能しか有さない。分解能は測定深度が増大するにつれて低下する。MRIは空間分解能および時間分解能が限られている。これらは一時的な測定において特に顕著である。ホログラフィックPIV、デジタルインラインホログラフィックPTVおよび断層撮影PIVは、透明体に限定される。そのため、生体内のイメージングに対する実用性が事実上除外される。またこれらは、形状/解剖学的情報を提供することもできない。さらに、これらの技術は、4D画像を再構築することにより、次に動きを測定することに基づく。このことは、これらの技術を使用するシステムが比較的複雑であって、本願発明のシステムと比べて限られた空間分解能しか有さないことを意味する。
【0059】
上述したシステムおよび他の従来技術のシステムと比較して、本願発明は以下を含む有利な点をもたらす:
・従来のCTが画像から抽出する(X線吸収の線積分)よりも画像ペアからはるかに多くの情報(すべての投影速度の確率密度関数)を解読する能力
・従来技術の方法と比べてより高い解像度を有する改善されたイメージング
・PIV技術、特にX線PIVおよびホログラフィック速度測定における著しい進歩
・肺、心臓および血管などの不透明なサンプルにおける3D動き場を測定するための改善された性能
・放射線源に対するサンプル暴露を最小限にする比較的短い走査時間
・臨床的診断および治療に対する新たな選択肢
【0060】
本願発明は、医療用途、生物用途および産業用途の広範囲に対して好適である。医療分野および生物分野において、本願発明は以下に関連した動きの研究または測定に特に適している:
・血液
・心臓およびその弁
・肺組織
・粘液線毛除去を含む繊毛
・肺や他の組織の内部における空気の流れ
・消化管およびその内容物
・鼓膜、繊毛および骨を含む耳の内部の構造
・耳の内部の液体
・脳腫脹を含む腫脹
・関節における滑液および結合組織を含む骨
・筋肉
・リンパ液を含むリンパ液システム
【0061】
本願発明の実施の形態の適用性のさらなる範囲は、以下に示す詳細な説明から明らかとなるであろう。しかし、当然のことながら、詳細な説明および具体例は、好ましい本願発明の実施の形態を示すが、説明のためのみに示されたのであって、本願発明の開示の精神および範囲において様々な変更や修正を加えてもよいことは、この詳細な説明から当業者には明らかであろう。
【0062】
本出願の好ましい実施の形態および他の実施の形態のさらなる開示、目的、利点および態様は、添付の図とあわせて以下の実施の形態の記載を参照することにより、関連技術を知る当業者によってさらに理解されるであろう。添付の図は、説明のためだけに掲載されている。したがって、本願明細書における開示を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本願発明によるCTXVシステムの基本デザインの概略を説明する概略図である。この概略図は、サンプルを通過して伝達され、シンチレータによって可視光に変換される3つの多色X線ビームを示す。高速検出器システムは次に画像セットを生成する。サンプルを回転させることなく複数の投影データが同時に集められる。デカルト座標(x,y,z)がサンプルに対して固定され、ビーム軸pから角度θにて回転される。
【図2】サンプルに対して固定されビーム軸pから角度θにて回転されたデカルト座標(x,y,z)を説明する実験用のイメージング設定の概略図である。この概略図は、サンプルを通過して伝達され、シンチレータによって可視光に変換される単色のX線ビームを示す。高速検出器システムは次に画像を生成する。サンプルを回転させることにより、複数の投影データが集められる。デカルト座標(x,y,z)がサンプルに対して固定され、ビーム軸pから角度θにて回転される。
【図3(a)】本願発明による前方投影モデルの概略図である。相互相関関数は、流れモデルから投影された速度PDFの畳み込みによって投影画像から計算された自己相関関数を用いて推定される。
【図3(b)】3DのCTXV動き再構築を示す。推定された相互相関と測定された相互相関との間の剰余が、全調査ウィンドウおよび全映写角にわたって同時に最小化されることにより、流れ場を正確に表現する断面の流れモデルが生成される。
【図3(c)】相互相関関数の1次元化を説明する。2D相互相関関数における行および列にわたって積分することにより、それぞれrおよびq方向において速度PDFの1D表現が得られる。
【図4】ある単一の時点における3Dで再構築された血液速度場を説明する。明確にするために、各ベクトルを見えるようにするために全次元において減少されたベクトル分解とともに、サンプルの半分のみが描かれている。各ベクトルは異なる色で表現されている。ここでは各色は異なる速度の大きさを表す。
【図5】図4に表現されたタイプの肺に対する速度場である。本図には、吸息(inspiration)中の単一の時点における肺組織の速度を示すベクトルが含まれる。
【図6】本願発明に従った肺の気道構造の画像の3D図解である。ここでは速度場のベクトルは、気道(気管、細気管支、肺胞)の対応する生理的特徴と一致している。
【図7】実施例3のサンプルの中空断面に使用されたコンピュータ支援設計モデル(図7(a))および粒子スペックル対照に基づくCT再構築(図7(b))を示す。サンプルの形状は、錐体とらせん状に湾曲した円との結合体に基づく。
【図8】どのようにしてCTXVが3D構造および複雑な形状を通過する流速を同時に測定できるのかを示すために、図7に描かれたサンプルを通過する流れのCTXV再構築を説明する。画像の一部を透明にすることにより、サンプル内部の流れおよびベクトルが見えるようにされている。また明確にするために、x,y,z方向においてベクトル分解が4倍減少されている。
【図9(a)】実施例4で説明するX線照射および速度測定相互相関解析の三次元性を示す。
【図9(b)】本願発明に従った肺組織の動き生体内検出を示す。
【図10】ブレオマイシン暴露36時間後(図10(a)〜(d))および暴露6日後(図10(b)〜(h))の群と対照群を含む肺の病状の統計測定を示す。
【図11】比較組織学的イメージとともに肺の内部における局所的な膨張を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
上述したように、FourasらはX線画像ペアから計算された相互相関関数が投影された測定体積に対する速度PDFを表すことを実証してきた。
【0065】
本願発明はここでは流れを複数の映写角からイメージングすることによって、三次元空間において速度の3成分に関する情報を得ることを含む技術を提供する。この情報を用いて、体積の画像を再構築することなく、3D速度場を画像ペアの相互相関から直接的に再構築することができる。
【0066】
(収集されたデータのさらなる使用)
上述したように、本願発明は、血液などの液体の動きをイメージングすることに限られず、組織または肺などの器官全体の動きを表現することもできる。イメージングに使用されるデータをさらに定量的に処理することにより、肺の内部の気流やずれの量などの追加的で有用な情報を提供することができる。
【0067】
収集されたデータは、速度と同時に器官などの構造の形状/骨格に関する画像を構築するためにも使用することができる。
【0068】
本願発明は、呼吸、心拍または蠕動などのシステムの周期的性質に関連する有用な情報も提供することができる。特に異なる時点にて収集されたデータは、たとえば呼吸、心拍または蠕動収縮の1サイクルを再構成するために組み合わせることができる。
【0069】
本願発明に従って収集されたデータは、位相(ホログラフィック)データまたは焦点データから得られる深度情報を含んでもよい。これらのタイプのデータは、同数の投影に対して、またはデータが収集される投影の数が減少した場合にデータ表現の質を向上させるために使用することができる。ある極端な場合には、データがわずか1つまたは2つの投影から収集できるかもしれない。しかし、単一の投影が使用された場合、何らかのデータは失われるであろう。したがって、本方法は以下のステップを含むことが好ましい:
1:少なくとも1つの映写角、好ましくは複数の映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2:相互相関解析で得られた画像ペアの相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ。
ここで再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0070】
(データセットのコンプライアンス地図への変換)
本願発明は、データセットを局所的なコンプライアンス地図へと変換する方法を提供する。たとえば肺換気に対しては、(速度場を規定する)データセットは、2Dまたは3Dにおける速度の測定、呼吸中の肺圧力の範囲の測定、および場合によっては患者が呼吸をする際に吸入および吐出した空気の体積の測定を含んでもよい。
【0071】
データセットが3D+時間(つまり4D)の速度場を規定する場合、変換方法は以下のステップを含む:
1:少なくとも1つの映写角、好ましくは複数の映写角から画像を記録し、デカルト座標に関してサンプルに対して速度データをコード化する画像ペアの相互相関解析を実行するステップと、
2(a):吸息または吐息の任意の部分にわたって速度を積分することにより、単一の3D速度場を得るステップ(この3D地図は、方向(directional)座標(x,y,z)においてu,v,wとして定義できる速度量を有する)と、
2(b):次に局所的なコンプライアンスは、数学的に以下の式で記述される:
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δp
(式中、δp=ステップ2(a)における吸息または吐息の同じ部分に対する圧力変化)
ここでは、ステップ2の再構築は初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、ステップ1および2は自動化されている。
【0072】
データセットが2D+時間(つまり3D)速度場を規定する場合、本変換方法は以下のステップを含む:
2(a):吸息または吐息の任意のすべての部分にわたって速度を積分することにより、単一の2D速度場を得るステップ(この2D地図は、方向座標(x,y)においてu,vとして定義できる速度量を有する)と、
2(b):局所的なコンプライアンスを以下の式により数学的に記述するステップと、
(δu/δx+δv/δy).t/δp
(式中、t=厚さ、p=吸息または吐息における圧力)
2(c):(一般に測定される)全コンプライアンスと、方程式の形で以下の式により表現できる局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ。
t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)
(式中、V=吸入または吐出された体積)
ここで、このステップ2の再構築は、最初に2Dまたは3D画像を再構築することなく行われる。また、自動化されている。
【0073】
本方法を使用することにより、図5に示したタイプのベクトル場の画像を生成することができる。この画像では、ベクトルはCTXVを用いて測定された吸息中の単一の時点における肺組織の速度を示す。灰色の異なる影(または好ましくは異なる色)は、速度の大きさおよび全次元による(aids)視覚化により減少したベクトル分解を表現するために使用することができる。この画像では、速度測定間の間隔は約0.18mmである。これは、CTXVが非常に少数の投影を用いて高分解能で正確な測定を生み出すことができることを示す。
【0074】
ベクトル場を肺の生理的な構造と関係づけることにより、より容易に認識できる画像を生成することができる。これは以下のさらなるステップにより実現することができる:
3(a):サンプルの3D画像をセグメント化するステップと、
3(b):3D画像のセグメントと対応する微分係数とを関連づけるステップ。
【0075】
図6は、肺気道構造の3Dレンダリングを作るために適用されてきた、これらのさらなるステップの例を示す。CTXVを用いて測定された肺組織の動きは、肺の膨張、したがって空気の肺への流れを領域ごとに計算するために使用されてきた。主な気道は灰色の影(または好ましくは異なる色)で表現されることにより、異なる領域における異なる体積流れが示される。
【0076】
したがって、肺組織の動きデータ(図5)は上述したステップ3を用いて処理される。これにより、肺の内部(図6)における空気の動きの測定を確立することができる。この「2部」法は、液体の動きの直接測定に対して、はるかに低い放射線量でさえ使用できるという点で利点を有する。
【0077】
類似の2部法を心臓などの他の器官における動きの測定に適用することができるであろう。特に、本願発明の方法を血液の流れを直接的に測定するために使用することができるであろう。本願発明の方法を、心臓組織(筋肉壁、心臓弁および/または血管)の動きの測定に使用することにより、液体(血液)流れの測定ができるようにすることもできるであろう。
【0078】
(システムおよび装置)
本願発明の方法は、広範囲のイメージングシステムに実装することができるであろう。本方法はCTXVシステムを用いて実装されることが好ましい。なぜなら本方法はあらゆる医療用イメージングモダリティに対して最高の分解能および透過性を与えることができるという利点を有するからである。
【0079】
本願発明に組み込まれる典型的なCTXVシステムは、主に多数の位相差X線イメージングライン(通常は少なくとも3つのイメージングライン)から構成されるであろう。3つを超えるラインにより、収集されるデータの質が改善されるが、これに伴ってシステムの複雑さ、コストおよび潜在的に送られるX線量を増大させるであろう。
【0080】
図1を参照して、各イメージングラインは通常は以下の重要な構成要素から構成されるであろう:
a:ビデオの速度または二重シャッタX線カメラ(1)と、
b:円錐ビームX線源(2)と、
c:エネルギー源調節システム(3)と、
d:基本エネルギー源整列ハードウェア(4)と、
e:高分解能カメラ整列ハードウェア(4)と、
f:画像撮影および解析ハードウェア(5)と、
g:ユーザーインターフェース(6)
【0081】
イメージングハードウェアに加えて、画像撮影、解析ハードウェアおよびソフトウェアが必要とされる。画像撮影、解析ハードウェアおよびソフトウェアは、通常は以下の重要な構成要素から構成されるであろう:
h:高速画像撮影ハードウェアと、
i:高速画像処理ハードウェアと、
j:画像処理ソフトウェアと、
k:整列、イメージングおよび解析用のユーザーインターフェース。
【0082】
好適な構成要素または構成要素群の詳細は、以下の段落に説明されている。
【0083】
円錐ビームX線源:位相差エネルギー源に通常見られるように、エネルギー源の大きさを考慮した場合にはトレードオフが存在する。レーザーエネルギー源はコントラストが低いが光量が多いため、露光時間が短くてすむ。現在の多くの位相差システムは、5μm未満のいわゆるマイクロまたはナノエネルギー源を用いている。通常は、少なくとも20〜50μmのサイズを有する工業用の「既製の」エネルギー源が、本願発明の方法およびシステムに使用されるためには好適であろう。
【0084】
エネルギー源調節システム(X線シャッタ):静止画の写真撮影が動きの測定に必要である。連続的な光源は、一次的な方形波にできるだけ近くなるよう短いバースト(bursts)へと変調されなければならない。暴露を2〜20ミリ秒にて完全に制御することが好ましい。高速シャッタを使用することによっても、照射線量を最小限に抑えることができる。画像の撮影に必要な最小限の時間しか、サンプルがX線に暴露されなくなるからである。
【0085】
基本エネルギー源整列ハードウェア:エネルギー源の最も明るい領域が興味のあるサンプル領域に焦点を当てられるように、X線源を配置することが好ましい。
【0086】
ビデオの速度または二重シャッタX線カメラ:システムの測定は、各イメージングラインから得られた2つ以上の生画像に基づくことができる。これらの画像は、素早く連続的に(ビデオのフレーム率またはそれ以上にて)取得されなければならない。持続的ビデオフレーム率を有するカメラシステムまたは2つの画像を素早く取得できる性能を有する「二重シャッタ」カメラが必要となるであろう。最適な画素サイズ、最小フレーム率、および感度が決定された場合、正しい仕様を有する適切な市販の「既製」カメラを使用できる可能性がある。
【0087】
高分解能カメラ整列ハードウェア:本システムは、各エネルギー源および他の任意のカメラに関して、自動化されたロボット式の各カメラの整列を含むことが好ましい。
【0088】
高速画像撮影ハードウェア:市販された「既製の」データ取得システムは、カメラを制御し解析をほぼリアルタイムに進めることができる速度において、各イメージングラインからデータを保存するために使用することができる。
【0089】
高速画像処理ハードウェア:適切な選択肢には、たとえばGPU、FPGAまたはDSP処理プラットフォームが含まれる。
【0090】
画像処理ソフトウェア:適切なソフトウェアの説明は、たとえばDubsky S、Jamison RA、Irvine SC、Siu KKW、Hourigan KおよびFouras A/2010年/計算された断層撮影X線速度測定/Applied Physics Letters/第96巻第2号第023702頁に見いだすことができる。本ソフトウェアは、本願発明の方法に従った再構築を実行できる必要がある。図3に記載された本願発明の実施の形態を例として使用して、本ソフトウェアは、サンプル画像を長方形の調査ウィンドウへと離散化し、これらウィンドウ上で相互相関を実行できてもよい。次に体積が調査ウィンドウの列により規定された軸方向断面に再構築されてもよい。断面の速度プロファイルを規定するために、長方形格子モデルが次に使用されてもよい。次に相互相関関数が各調査ウィンドウ測定領域から推定できる。3D速度場の再構築は次に、速度モデルを用いて推定された相互相関関数と、X線画像ペアから計算された相互相関関数との間の誤差を全映写角に対して最小化することになる。この解法は、非線形の最小二乗最適化を実行するレーベンバーグ・マルカートアルゴリズムを用いて実装することができる。
【0091】
整列、イメージングおよび解析用のユーザーインターフェース:中央制御システムおよびユーザーインターフェースは、検査、キャリブレーションおよび整列などの技術的な機能を単純に起動できることが好ましい。本インターフェースは、イメージング、画像処理、および再構築された画像の視覚化などのユーザに関連する他の機能の制御も可能にすることが好ましい。
【0092】
(実施例)
本願発明は、Spring−8シンクロトロンにおいて4頭の異なる動物試験に使用されて成功してきた。これらの試験では、以下の内容が研究された:
a.人工呼吸器により誘導された肺損傷
b.ブレオマイシンに誘導された線維症
c.メタコリン接種およびサルブタモール反転(reversal)に基づくぜんそく
d.嚢胞性線維症肺病
【0093】
これら4つすべての試験は、肺の動きを測定するために本願発明を使用することにより、異常な肺機能の早期かつ正確で局所的な検出を提供することができることを明確に示している。病変の検出は、組織構造または組織検査から明らかとなる前に、肺の動きを測定することにより可能となる場合がある。この方法は、肺がんなど他の病気の診断に対しても有用でありうる。
【0094】
ここで本願発明を、以下の限定的ではない実施例を参照してさらに説明する。
【0095】
(実施例1)
本実施例では、本願発明の方法が強い3D流れの測定に適用された。
【0096】
関連するイメージング設備を図1に示す。本実施例の単色ビームは粒子を播種させた液体(中空のガラス球入りのグリセリン)を通過する。X線は物質間の表面にてわずかに屈折される。伝達され反射されたX線は、シンチレータにより可視光へと戻される前に、伝播し干渉することが可能となる。次にこれが高速検出器および可視光装置(optics)を用いて撮像される。その結果、位相差投影画像が得られる。この画像は、忠実に粒子を追跡する動的なスペックルパターンを形成する粒子と液体との接触面によりつくられた干渉縞の重ね合わせから生じる。
【0097】
画像が深度を推測可能な焦点またはホログラフィック重ね合わせ情報を含む、可視光に基づくイメージングシステムとは異なり、CTXVの伝達特性は全体積に焦点が当てられている2D体積の投影画像をもたらす。したがって、X線ビームの伝搬方向に平行な平面における速度分布に関する情報を含まない。さらに、任意の1つの視角からは、変位の2成分しか決定することができない。この情報不足は、サンプルを回転させて複数の映写角からイメージングを行うことにより克服される。これにより、体積内の速度場の断層撮影再構築が可能となる。これらの複数の投影から、物体の構造を同時的に断層撮影再構築することも可能となる。
【0098】
(前方投影)
従来のPIVのように、粒子画像ペアは調査領域へと離散化され、相互相関がこれらの調査領域上で実行される(図3(a)(i))。しかし、投影された調査領域内における広い速度分布によって、相互相関関数は大きく歪められるであろう。結果として生じる投影された相互相関統計値は、その画像の小区画上に投影され、粒子画像の自己相関関数(図3(a)(ii))とともに畳み込まれた流れの速度の確率密度関数(PDF)としてモデル化することができる。したがって、流れ場および粒子画像の自己相関関数が知られている場合には、理論的には流れ場から生じる相互相関関数を推定することができる。これは前方投影モデルをあらわす(図3(a)(iii)を参照)。CTXVは、既知の相互相関データから流れ場を再構築するという逆問題の解法を提供する。
【0099】
有限の露光時間が投影画像ペアの相互相関関数に及ぼす影響もまた考慮されなければならない。暴露中の粒子の動きによって、各速度の相互相関関数に対する寄与は、その速度に正比例する大きさにてその速度の方向に沿って拡大されるであろう。この影響は十分に明らかにされてきたため、この現象によるあらゆる誤差を除去するためにこの影響を前方投影モデル中に取り込むことは容易にできる。
【0100】
(逆問題に対する解決策)
図3(b)はCTXVの実装を示す。投影画像内における調査領域の列(図3(b)(iii))とともに、速度場は回転軸に直角の切片(図3(b)(i))にて再構築される。長方形格子モデルは、再構築領域内の流れ場を表す。3つの速度成分はモデル中の各節点にて規定されている。また、節点間の流れを規定するために、双線形補間が使用されている。計算時間および堅牢性を犠牲にして、スプライン補間などのより高次の補間スキームが使用されてもよい。
【0101】
相互相関関数は図3(a)に示す方法を用いて推定される。高速フーリエ変換(FFT)を実装することを通じて、畳み込みがもたらされる。流れモデルから推定された相互相関関数と投影画像ペアから測定された相互相関関数との間の誤差を最小限に抑えるために、レーベンバーグ・マルカートアルゴリズムが利用される。その結果、流れ場を正確に表現する計算された流れモデルがもたらされる。この問題は必要以上に重く考えられすぎているため、再構築の収束を確実にするために、チホノフ型の正規化計画が使用される。ここでは正規化された関数は、各結節点の速度値とその隣接点(neighbours)の平均値との間の差の合計に等しい。
【0102】
(相互相関の1次元化)
再構築に必要な最適化パラメータおよびメモリの数量を減らすために、相互相関関数の1次元化が実行される。これにより、vrおよびvqに対する個々のデータの再構築が可能となる。相互相関データの投影によって、図3(C)に示すように速度成分vrおよびvqのそれぞれに対して関数の2つの1次元表現がもたらされる。2成分を分けることにより、これらは個別に再構築することができる。これにより、再構築に必要となる最適化パラメータの数を大幅に減らすことができる。さらに、このプロセスにより保存および解析されるべきデータ量が大幅に減少する。
【0103】
(構造の同時的な再構築)
速度PDFの前方投影を正確にモデル化するために、再構築される領域内の粒子の相対播種密度が分からなければならない。作動流体内に均一に播種されていると仮定すると、相対播種密度は流れ形状の知見に対応する。したがって、CTXVスキャン中に得られたデータを用いて流れ形状を再構築することを可能とするCT技術が提供される。
【0104】
典型的なCT再構築技術では、投影方向にて積分された物体の密度がX線透過から計算される。この密度は、デジタル映写画像上の画素の強度値に比例するであろう。一定密度の物質の場合、この積分された物体の密度は、物体の厚さに比例する。粒子スペックルのコントラスト(画像強度の標準偏差と平均強度との比として定義される)は、物体の厚さの平方根とともに増大する。そのため、この統計値は物体の構造を断層撮影により再構築するためにも使用されてもよい。血管の生体内のイメージングを含む多くの場合に見られるように、吸収のコントラスト単独では断層撮影の再構築には不十分であるため、これは有利である。さらに、異なる映写角にて取得された画像間の粒子の動きは、その後の再構築において人為的な結果が生じてしまう。一方、粒子スペックルのコントラストはすべての視角に対して不変であろう。粒子スペックルのコントラストは、個々の小区画に対して各位相コントラスト画像において位相回復に先立って計算される。流れ形状は、代数の再構築技術を用いて粒子スペックルのコントラストデータから再構築される。代数技術を使用することにより、投影数の少ない正確な再構築が可能となる。
【0105】
(実施例2)
本実施例では、構造と速度の同時測定に対するCTXVの適用を実証する実験が説明される。図2に示されるように設置されたSpring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医療用イメージングビームライン(BL20XU)とともに、本願発明の方法が使用される。245mというエネルギー源とサンプルとの距離により、位相差イメージングに対して非常に位相のそろったX線が得られる。25KeVの単色ビームエネルギーを供給するために、Si−111複結晶モノクロメータが使用される。
【0106】
(サンプル)
サンプルは、3D印刷技術を用いて製造された950μmの平均直径を有する光学的に不透明な可塑性の動脈模型を含んでいた。本模型は、Objet社(商標)のFullCure(登録商標)アクリル系感光性樹脂材料から製造された。模型を保護する16μmの層厚を備えた高分解能技術は、研究された小規模において正確であった。形状は狭窄動脈を模倣するために選択された。この形状により、生体内において生じるのと類似した三次元の流れ場が生じる。血液は、注射器ポンプ(WPI社のUMP2)を用いてこの模型を通して流速4.8μl/mnにて供給された。PCIは赤血球をPIVトレーサ粒子としてイメージングするのに成功を収めてきたが、SN比を増大させるために、血液が気体の超微粒気泡とともに播種された。PCIは気体と液体の接触面にて高コントラストを形成する。そのため、超微粒気泡はこのイメージングモダリティに対して理想的な流れ追跡媒体となる。超音波造影剤であるDefinityr(Bristol−Myers Squibb Medical Imaging社)が使用された。活性化された場合、Definityrは2.5μmの平均直径を有し、安定かつ注入可能でペルフルオロカーボンで充填された超微粒気泡の均一な懸濁液を形成する。
【0107】
(データ収集)
イメージング設備が図2に示されている。シンクロトロン貯蔵リング(7)から、X線ビームがモノクロメータ(8)を通過する。X線ビームの放出は、X線シャッタ(9)により制御される。X線ビーム(10)はサンプル(12)を通って方向pに進む。サンプル(12)は、注射器ポンプ(11)の制御のもと、方向zへと流れる。X線ビーム(10)は次にシンチレータ(14)に作用する。シンチレータ(14)はX線の放射を可視光へと変換する。シンチレータは、高速増感CMOS検出器(20)(IDT社、X5i、4メガピクセル)を用いて顕微鏡対物レンズ(16)を通してイメージングされる。その結果、約15倍の倍率または有効画素サイズ0.52μmとなる。光学ミラー(18)は、検出器をX線ビーム(10)経路から除去する。高速増感カメラを使用することにより、10秒未満の合計走査時間が実現された。この合計走査時間により、4.5ミリ秒の露光時間および200Hzのフレーム率が可能となった。サンプルは、180°にわたって間隔が空けられた9つの映写角にて回転された。各角度において195画像を取得することにより、粒子投影画像(22)が提供された。サンプルと検出器との距離は、blood−Definity(登録商標)の混合物の位相差に対して実験的に最適化された。これにより、最適なシグナルを得るためには900mmが最適であることが明らかとなった。
【0108】
(画像の前処理)
X線位相差粒子画像には、相互相関解析の前に前処理が必要となる。不均一な照射の影響を除去するために、空間高域フィルタが用いられた。血管壁などの固定構造、モノクロメータの影響、および検出器または関連する光学機器上のほこりは、平均画像減算により除去された。Irvineら(Irvine SC、Paganin DM、Dubsky S、Lewis RAおよびFouras A/2008年/Applied Physics Letters/第93巻第153901頁)により説明されたように、Paganinら(Paganin D、Mayo SC、Gureyev TE、Miller PRおよびWilkins SW/2002年/Journal of Microscopy/第206巻第1号第33〜40頁)により説明された単一画像の位相回復アルゴリズムが次に実行されることにより、位相差縞(fringes)が取り除かれ、相互相関解析用の画像が改善される。
【0109】
(速度の再構築)
図3は、使用された再構築方法を概説する。粒子画像は長方形の調査ウィンドウ内に割り当てられる。また相互相関がこれらのウィンドウにおいて投影画像ペア間で行われる(図3(a))。調査ウィンドウの列によって定義される軸方向断面において体積が再構築される。断面の流れプロファイルを規定するために、長方形格子モデルが使用される(図3(c))。x,y,z方向における速度成分vx,vy,vzは、モデル中の各結節点において定義される。節点間で双線形補間が使用されることにより、モデル空間において速度プロファイルが規定される。モデル上の地点P(x,y)が画像平面上にP(q)として投影される。この場合、zにおける所定の断面に対して
q=ycos(θ)−xsin(θ)
である。同様に、以下の式により速度成分が画像平面上へと変換される。
vq=vysin(θ)−vxcos(θ)
vr=vz
式中、vqおよびvrはqおよびr方向における速度成分である。
【0110】
PDFを流れモデルから画像平面上へと投影することによって、各調査ウィンドウ測定領域に対して相互相関関数が推定される。この投影されたPDFを画像の自己相関関数と畳み込むことによって、推定された相互相関関数が得られる。3D速度場の再構築は次に、流れモデルを用いて推定された相互相関関数と、X線画像ペアから計算された相互相関関数との間の誤差を全映写角に対して最小化することになる(図3(b))。この解法は、非線形最小二乗法を用いて実装される。
【0111】
図4は、光学的に不透明な血管モデルの内部における血流の3D速度場を示す。質量保存から予想されるように、血管の形状が膨張するにつれ、最高速度が減少する。独立に再構築された断面は、体積の流れ速度に関して2%以内まで自己矛盾がない。またこれらの断面は、注射器ポンプの設定と一致している。この結果は、光学的に接近することなくある体積内における速度の3成分すべてを測定する本願発明の能力を実証している。
【0112】
(実施例3)
本実施例では、さらなる実験が説明される。この実験は、構造と速度の同時測定に対するCTXVの適用を実証する。Spring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医療用イメージングビームライン(BL20XU)とともに、本願発明の方法が再び使用される。
【0113】
(サンプル)
使用されたサンプルは、複雑な三次元の形状を有する不透明な可塑性のモデル(図7(a))であった。このサンプルは、物体高速プロトタイピング技術を用いて製造された。試験された区画は、内部に作動流体を流すことができる中空断面を有する直径14mmの固体円柱で構成されていた。中空断面の形状は、錐体とらせん状に湾曲した(swept)円との結合体として構築された。これにより、断面積が減少するコルク栓抜き形状として形成された。この形状は、強力な三次元の流れを示すために選択された。作動流体である(公称)35μmの固体のガラス球が播種されたグリセリンが注射器ポンプを用いて0.1ml/分にてモデル中に供給された。物体の前面からシンチレータまでの距離として定義される伝搬距離は、6mにてグリセリン/ガラス混合物のSN比の最大値に対して最適化された。
【0114】
(データ収集)
イメージング設備が図2に示され、実施例2を参照して説明される。具体的には、BL20B2ビームラインは、曲げ(bending)磁石挿入装置を使用した。Si−111モノクロメータを用いて25keVのX線エネルギーが選択された。サンプル線量を最小化するため、およびP43シンチレータを高中性子束X線ビームから保護するためにも、高速X線シャッタが使用された。高感度および低ノイズ特性を有するため、EM−CCD検出器(浜松ホトニクス社のC9100−02)が使用された。使用された光学機器により、9.5×9.5μm2の有効画素サイズがもたらされた。これにより、9.5mm×9.5mmの視界が得られた。画像は19の角度にて取得され、180°の全体にわたって均一に間隔が空けられた(包括的)。サンプルの回転中心の計算を可能とするために、180°の投影が含められた。しかし、180°の投影は、単純なキャリブレーション/整列プロセスの代わりに除外されてもよい。検出器は、30ミリ秒の露光時間を用いて1秒あたり28.5フレームにて画像を取得した。
【0115】
(速度の再構築)
実施例1で説明した方法を用いて流れ形状が再構築された。(生の位相差画像を用いた場合と比較して)粒子スペックル対照データを用いて大幅に高いシグナルが得られた。50%オーバーラップした16×16px2(ピクセル2)の小区画を用いて、スペックル対照地図が作成された。図7は、勾配型エッジ検出法(図7(b))を用いて分割され、流れモデルの中空断面および断層撮影法により再構築された形状の作成に使用されたコンピュータ支援設計(CAD)モデル(図7(a))を示す。
【0116】
速度を再構築するために、75%オーバーラップした64×64px2の調査ウィンドウを用いて相互相関関数が計算された。平均化された相関データを生成するために各映写角にて取得された99の画像ペアと組み合わせることにより、相関平均化法(Correlation averaging)が使用された。124×124px2の単位(sub−)格子上に挿入された各切片内の物体の大きさに応じて、69個の軸方向の切片が約300の節点を有する長方形格子上に個別に再構築された。その結果生じた構造および速度場が図8に示されている。予想されたように、流れは、錐体部分を通って血管が狭くなるにつれ速度が上昇するらせん形状をたどる。この結果は、投影が少数の場合にも複雑な4D流れを測定できる本技術の能力を示している。
【0117】
(実施例4)
本実施例は、肺組織の動きを検出するため、および呼吸中における局所的な肺の動きの速度および方向を規定する速度場を測定するための位相差X線イメージング(PCXI)とのPIVの結合を説明する。肺の局所的な地図が速度場からの膨張の程度およびタイミングを示すために生成される。肺の局所的な地図は、実験的に誘導された不均一な肺病により引き起こされた異常な組織特性を有する領域を明らかにする。
【0118】
(方法)
動物実験:青年期のオスのヌードマウス(Balb/c)には、イソフルラン麻酔のもと、経鼻投与の点滴によってブレオマイシン(20μlの生理食塩水中に体重1kgあたり20mg、シグマ社、n=8)または生理食塩水(20μl、n=6)が投与された。イメージング中に、マウスは麻酔され(ソムノペンチル、15mg/kg、腹腔内投与)、筋肉が弛緩され(ミオブロック1gh/kg、筋肉内投与)、次に外科的に挿管され、あらかじめ温められた(37℃)水柱中に換気およびイメージングのために配置された。次にマウスは人道的に殺された(ソムノペンチル、100mg/kg、腹腔内投与)。肺が摘出され、10%ホルマリン中で20cmH2Oの圧力にて固定された。パラフィンに包埋され、マッソントリクロームにより染色された肺の切片(5μm)、つまり3つ以上の無作為に選択された肺の切片/マウスから5つの視角が、アシュクロフトスコアを決定するために使用された。アシュクロフトスコアに対して1回換気量の平均値およびパラメータを比較するために、片側t検定が使用された。両側反復測定の分散分析が、肺膨張の度数分布および時間における差を決定するために使用された。結果は、5%の確率水準にて統計的に有意であるとみなされた。値は平均±標準誤差として報告された(特に断らない限り)。
【0119】
マウスは、合計4つの群(n=14)を用いて2つの別々の実験中に分析された。各実験は2つの群から構成された:暴露後36時間および6日にて行われた測定に対して、対照群(n=3)およびブレオマイシンで処理された群(n=4)。マウスをブレオマイシンに暴露することにより、進行性の肺損傷が引き起こされる。吸入ブレオマイシンは十分に明らかにされているため、炎症カスケードから始まる肺線維症の実験モデルに一般に使用されている。本実験ではヌードマウス(Balb/c)(免疫不全系統)が利用された。そのため、線維性肺疾患の反応が他の系統における報告と比べてこれらのマウスで低下したことは驚くべきことではない。これらのマウスでは、炎症反応が低下しているからである。
【0120】
X線イメージング:X線イメージングは、図2に示すように設置されたSpring−8シンクロトロン(日本の兵庫県)の高分解能医用画像ビームライン(BL20XU)を用いて実行された。伝播型位相差イメージングが25keVにてサンプルと検出器との距離を2mとして実行された。X線光子は、浜松ホトニクス社のビームモニタ(BM5)を用いて可視光に変換され、浜松ホトニクス社のEMCCDカメラ(C9100−02)を用いて撮影された。20ミリ秒の露光時間、34.5ミリ秒のフレーム間時間および19μmの有効画素サイズにより画像が取得された。画像の取得は、吸息中に取得された70フレームおよび吐息中に取得された30フレームの換気(ventilation)とともに同期された。
【0121】
速度測定解析:速度測定解析にはカスタムソフトウェアを用いた。動物の大量の動きが計算され、上位椎骨のPIV解析によって連続した画像から除去された。続いて、固定された参照フレーム上に画像が挿入された。肺は、適切な頻度カットオフ値に基づいて帯域通過フィルタリングによって画像から分離された。5回の連続した吸息に対してマスクされた領域上で行われた肺組織の動きの速度測定の解析を用いて、肺により占められた画像の領域が特定されマスクされた。次にこれらのデータが位相平均化されることにより、各動物に対する呼吸の吸息位相を表す速度測定に関する70フレームのデータセットが得られた。各時点において、局所的な膨張速度はベクトル場の発散として表現することができる。ここでは空間微分係数(derivates)は速度ベクトル場から正確かつ容易に求められる。吸息に対する全膨張は、続く時点の各ペア間における膨張の合計である。全吸息に対してデータが積分されたため、全膨張は単一の地図に表現された。ベクトル場が時間に対して3次元(3D)において測定できるのであれば、3Dにおける膨張の定量化は局所的なコンプライアンスに直接関係するであろうし、コンプライアンスの平均時間は気道抵抗に直接関係するであろう。データ量を減らすと同時に膨張地図の一次的な質を保存するために、平均膨張が生じる時間の時間地図が開発された。平均時間は、膨張と時間との積を合計し、膨張の合計により標準化されることによって求められた。
【0122】
(速度測定の適用)
上を覆う複数の気道を通るX線ビームの投影により、高コントラストなスペックル強度パターンが生成された。このパターンの続くX線画像上における動きは、従来型のPIVに使用される導入された追跡粒子の代わりをする。PIVの解析方法を位相差X線画像に適用することにより、呼吸サイクルにおける局所的な肺の速度の包括的な地図が生成された。
【0123】
図9(a)は、X線照射および速度測定の相互相関解析の三次元性を示す。投影画像中の各2Dサンプリング領域は、速度分布が存在してもよい三次元体積を表す。現在の解析は最頻値の速度を選択する。この速度は、平均から有意に異なってもよい。図9(b)は、肺組織の動きに関するこの生体内の検出を図示する。具体的には、本実施例では、肺の画像は、各区画に関する速度ベクトルを有する2641のオーバーラップする区画へと分割された。各速度測定の間隔は155μmであった。これは1つの肺胞と同じような大きさである。1回の呼吸あたり100の画像が5回の呼吸にわたり取得された。また完全なデータセットが使用されることにより、呼吸を通じた肺の動きの速度および方向における変化の一次的なパターンを実演する動画が生成された。上位椎骨に対して速度が測定された。上位椎骨の動きは、測定された後に連続する画像から解析前に取り除かれた。
【0124】
肺組織の動きは、局所的なコンプライアンス、近くの組織のコンプライアンスおよび動き、加えて横隔膜、心臓および胸壁などの構造への近さの局所的な特性の複雑な関数である。たとえば、横隔膜近くの肺組織は、局所的なコンプライアンスに関係なく、肺の頂部近くの組織に比べて著しく多くの動きを示した。肺の全体にわたる異なる動きの程度を含むために、コンプライアンスに関する2つの測定、つまり局所的な膨張速度および膨張の平均時間が開発され、評価された。いずれも実験に含まれるすべての対照群に対する平均を用いて標準化された。
【0125】
図10は、対照群と、ブレオマイシン暴露36時間後の群(図10(a)〜(d))および暴露6日後の群(図10(b)〜(h))とを含む肺の病状の統計的な測定を示す。膨張の程度の度数分布(上部、速度測定を用いて測定された)が治療された群(n=4)について対照群(n=3)と比較された。基準値は対照群の平均により正規化された。治療36時間後において、治療されたマウスは平均して24%大きな膨張を示した。また、治療された肺の14%は対照群の平均の2倍超膨張した。一方、対照群の肺は5%未満であった。治療6日後において、治療されたマウスは平均して76%大きな膨張を示した。また、治療された肺の47%は対照群の平均の2倍超膨張した。一方、対照群の肺は4%未満であった。星印は、対照群のマウスと治療されたマウスとの間に有意差(p<0.001)があることを示す。対照群のマウスおよび治療されたマウスにおける膨張(中間)の平均時間の度数分布が示されている。星印は、対照群のマウスと治療されたマウスとの間に有意差(p<0.001)があることを示す。底部:対照群のマウスと治療されたマウスとの間のコンプライアンスの比較(統計的に有意でない)および1回換気量(Vt)の比較(対照群における1回換気量は、治療された群よりも有意に低い。しかし、実際は特異的で全体的な減少ではない)。
【0126】
図11は、肺の内部における局所的な膨張と、比較組織学的イメージとを示す。局所的な膨張の地図(通常は着色されている)が、典型的な対照マウス(図11(a))および暴露6日後のブレオマイシン処理されたマウス(図11(b))に対して、PIVを用いて決定された。データは、対照群全体にわたる局所的な膨張の平均およびカラースケールを用いて生成された地図を用いて標準化された。ブレオマイシンにより処理されたマウス(図11(b))は、肺膨張のパターンにおいて劇的な局所的変化を示した。図11(a)でイメージングされた肺から得られた図11(c)の組織画像は、対照群の典型例である。図11(b)でイメージングされた肺から得られた図11(d)および図11(e)の組織画像は、ブレオマイシン治療後6日後の病気の群の典型例である。図11(a)および図11(b)のスケールバーは、画像の相対的な大きさを示す。また、図11(c)、図11(d)および図11(e)の挿入ボックスは、図11(a)および図11(b)のスケールを示す。
【0127】
本願発明を特定の実施の形態に関連して説明してきた。しかし、当然のことながら本願発明にさらに修正を加えることもできる。本出願は、本願発明の使用または適用が一般に本願発明の原理に付随するあらゆる変形例、および本願発明の使用または適用が本願発明の属する分野における既知のものまたは慣行の内部で生じる本願開示からの逸脱および上述した本質的な特徴に適用されうる本願開示からの逸脱を含む、あらゆる変形例を含むことが意図されている。
【0128】
本願発明の本質的特徴の精神から逸脱することなく、本願発明はいくつかの形態で具現化されてもよい。そのため、当然のことながら、特に断らない限り、上述の実施の形態は本願発明を制限するものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲において規定された本願発明の精神および範囲内において、広く解釈されるべきである。説明された実施の形態は、すべての観点において説明するためだけのものであって制限的ではないと考えられるべきである。
【0129】
本願発明の精神および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲には、様々な修正および同等の配置が含まれることが意図されている。したがって、特定の実施の形態は、本願発明の原理が実行されうる多くの方法の実例であることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲では、ミーンズプラスファンクション節(clauses)は、規定された機能を実行するものとして構造を包含すること、および構造的な同等物だけではなく同等の構造を包含することが意図されている。
【0130】
当然のことながら「サーバ」、「安全なサーバ」または類似の用語が使用された場合、文脈が別の意味を示さない限り、通信システムに使用されてもよい通信装置が説明される。また本願発明を任意の特定の通信装置型に制限すると解釈されるべきではない。したがって、通信装置はブリッジ、ルータ、ブリッジルータ(ルータ)、スイッチ、ノード、または他の通信装置を含んでもよいが、これらに限られない。これらは安全であってもよいし、安全でなくてもよい。
【0131】
本願発明の様々な態様を示すために本明細書中でフローチャートが使用される場合、本願発明を任意の特定の論理の流れまたは論理の実装に対して制限すると解釈されるべきではない点も注目すべき点である。全体の結果を変えることなく、またはそうでなければ本願発明の真の範囲から外れることなく、説明された論理は異なる論理ブロック(たとえばプログラム、モジュール、関数、またはサブルーチン)へと分割されてもよい。全体の結果を変えることなく、またはそうでなければ本願発明の真の範囲から外れることなく、多くの場合、論理要素が追加、修正、省略、異なる順序において実行、または異なる論理構成物(たとえば論理ゲート、ループ型基本命令(looping primitives)、条件付きロジック、および他の論理構成物)を用いて実装されてもよい。
【0132】
様々な本願発明の実施の形態は、多くの異なる形式にて具体化されてもよい。多くの異なる形式には、プロセッサ(たとえばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、または汎用コンピュータ)とともに使用されるコンピュータプログラム論理、プログラマブル論理装置(たとえばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のPLD)、個別の構成要素、集積回路工学(たとえば特定用途向け集積回路(ASIC))とともに使用されるプログラマブル論理、またはこれらの任意の組み合わせを含む他の任意の手段が含まれる。本願発明の典型的な実施の形態では、ユーザとサーバとのほとんどすべてのやりとりは、コンピュータ実行形式へと変換された一連のコンピュータプログラム命令として実装されている。コンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読のメディアなどに保存され、オペレーティングシステムの制御のもと、マイクロプロセッサにより実行される。
【0133】
本明細書中で説明した機能性のすべてまたは一部を実装しているコンピュータプログラム論理は、様々な形式にて具体化されてもよい。様々な形式には、ソースコード形式、コンピュータ実行形式および様々な中間の形式(たとえばアセンブラ、コンパイラ、リンカー、またはロケータにより生成された形式)が含まれる。ソースコードは、様々なオペレーティングシステムまたは動作環境とともに使用される任意の様々なプログラミング言語(たとえばオブジェクトコード、アセンブリ言語、またはFortran、C、C++、JAVA(登録商標)、もしくはHTMLなどの高級言語)にて実装された一連のコンピュータプログラム命令を含んでもよい。ソースコードは様々なデータ構造および通信メッセージを規定し使用してもよい。ソースコードはコンピュータ実行形式(たとえばインタプリタを用いて)であってもよい。または、ソースコードは(たとえば変換機構、アセンブラまたはコンパイラを用いて)コンピュータ実行形式へと変換されてもよい。
【0134】
コンピュータプログラムは、任意の形態(たとえばソースコード形式、コンピュータ実行形式、または中間の形式)にて恒久的にまたは一時的に、半導体記憶装置(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはFlashプログラム可能RAM)、磁気記憶装置(たとえばディスケットまたは固定ディスク)、光学記憶装置(たとえばCD−ROMまたはDVD−ROM)、PCカード(たとえばPCMCIAカード)、または他のメモリ装置などの有形の記憶媒体中に固定されてもよい。コンピュータプログラムは、任意の様々な通信技術を用いてコンピュータに送信可能な信号の任意の形態にて固定されてもよい。任意の様々な通信技術は、アナログ技術、デジタル技術、光技術、ワイヤレス技術(たとえばBluetooth(登録商標))、ネットワーク技術、およびインターネットワーキング技術を含むが、決してこれらには限られない。コンピュータプログラムは、添付のプリントされた文書または電子文書(たとえばパッケージソフトウェア)を備えたリムーバブル記憶媒体として任意の形態にて配布されてもよいし、(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上に)コンピュータシステムがあらかじめ組み込まれていてもよいし、または通信システム(たとえばインターネットまたはワールドワイドウェブ)上のサーバまたは電子掲示板から配布されていてもよい。
【0135】
本明細書中で説明した機能性のすべてまたは一部を実装しているハードウェア論理(プログラマブル論理装置とともに使用されるプログラマブル論理を含む)は、従来の手作業による方法により設計されてもよい。または、コンピュータを利用した設計(CAD)、ハードウェア記述言語(たとえばVHDLまたはAHDL)、またはPLDプログラミング言語(たとえばPALASM、ABEL、またはCUPL)などの様々な手段を用いて電子的に設計、保存、シミュレーション、または記録されていてもよい。
【0136】
プログラマブル論理は、半導体記憶装置(たとえばRAM、ROM、PROM、EEPROM、またはFlashプログラム可能RAM)、磁気記憶装置(たとえばディスケットまたは固定ディスク)、光学記憶装置(たとえばCD−ROMまたはDVD−ROM)、または他の記憶装置などの有形の記憶メディア中に、恒久的にまたは一時的に固定されてもよい。プログラマブル論理は、任意の様々な通信技術を用いてコンピュータに送信可能な信号中に固定されていてもよい。様々な通信技術としては、アナログ技術、デジタル技術、光技術、ワイヤレス技術(たとえばBluetooth)、ネットワーク技術、およびインターネットワーキング技術が含まれるが、決してこれらには限られない。プログラマブル論理は、添付のプリントされた文書または電子文書(たとえばパッケージソフトウェア)を備えたリムーバブル記憶媒体として配布されてもよいし、(たとえばシステムROMまたは固定ディスク上に)コンピュータシステムがあらかじめ組み込まれていてもよいし、または通信システム(たとえばインターネットまたはワールドワイドウェブ)上のサーバまたは電子掲示板から配布されていてもよい。
【0137】
「含む(comprises)/〜を含む(comprising)」および「含む(includes)/〜を含む(including)」が本明細書中で使用された場合、表明した特徴、整数、ステップまたは構成要素の存在を特定したことになる。しかしこれらの記載は、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはこれらの集合の存在または追加を除外するものではない。したがって、明細書の記載および特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が明確に別の意味を示さない限り、「含む(comprise)」、「〜を含む(comprising)」、「含む(includes)」、「〜を含む(including)」などの用語は、排他的または包括的な意味とは反対の包含的な意味として、つまり「〜を含むがこれらには限定されない」の意味として解釈されることになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標においてサンプルに対して速度データをコード化する画像ペア相互相関解析を実行するステップ1と、
前記解析から得られた画像ペア相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ2と、を含むサンプルのイメージング方法であって、
再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく実行され、ステップ1および2は自動化されていることを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項2】
ステップ2は、
反復法または直接法を用いることによって、前記解析から得られた画像ペア相互相関から直接的に3Dの速度場を再構築するステップ2(a)と、
4Dの速度場を生成するために反復法または直接法を繰り返すステップ2(b)と、を含み、
4Dの速度場を用いてさらなる情報を提供するステップをさらに含む請求項1に記載のサンプルのイメージング方法。
【請求項3】
ステップ1は、
複数の映写角から画像を記録するステップ1(a)と、
画像を長方形の調査ウィンドウへと割り当てるステップ1(b)と、
画像からx,y,z軸方向に速度成分u,v,wを導出するステップ1(c)と、
調査ウィンドウにより規定された画像ペアにおいて相互相関解析を実行するステップ1(d)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のサンプルのイメージング方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプルのイメージング方法であって、
ステップ1は、少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペア相互相関解析を実行するステップ1(a)を含み、
(i)デカルト座標(x,y,z)とは正反対の時間に対する速度(u,v,w)
(ii)圧力または体積を含む群から選択される追加的な物理的パラメータ(p)
ステップ2は、
単一の3D速度場をもたらすために、測定を統合するステップ2(a)と、
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δpで定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ2(b)とを含むことを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプルのイメージング方法であって、
ステップ1は、少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペア相互相関解析を実行するステップ1(a)を含み、
(i)デカルト座標(x,y)とは正反対の動き(u,v)
(ii)サンプルの厚さ(t)、圧力(p)および体積(V)
ステップ2は、
単一の3D速度場をもたらすために、測定を統合するステップ2(a)と、
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δpで定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ2(b)と、
全コンプライアンスと、t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)に従って局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ2(c)と、を含むことを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項6】
サンプルの画像を断片化するステップ3(a)と、
各断片を2Dまたは3Dデータ場の領域と関連づけるステップ3(b)と、をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
映写角は、1°〜360°の範囲、より好ましくは30°〜180°の範囲をカバーすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
サンプルがヒトまたは動物の組織を含み、動きを測定するために使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
組織の動きが測定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体の動きが測定され、
動きは、空気、血液、リンパ液またはこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
イメージングできるように構成されたアプリケーションであって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行できるように構成された所定の命令セットを含むことを特徴とするアプリケーション。
【請求項12】
コンピュータで使用可能なメディアを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記メディア上で統合されたコンピュータ可読のプログラムコードおよびコンピュータ可読のシステムコードと、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に従って画像ペアの相互相関解析および速度場の再構築を可能にするアプリケーションと、を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、
(iii)1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間にサンプルを配置するためのサンプル保持具と、を含み、
使用時には、サンプル保持具はサンプルを複数のエネルギー映写角に回転させることにより、少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、を含み、
使用時には、サンプルは1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間に配置され、エネルギー源および検出器がサンプルに対して複数のエネルギー映写角に回転されることにより、サンプルの少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)それぞれ個別の映写角を有する2つ以上のエネルギー源と、
(ii)エネルギー源から供給されたエネルギーがサンプルを通過するときに形成された画像を記録するための1つ以上の検出器と、を含み、
各映写角における記録が同時に行われることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の装置の制御に使用されることを特徴とするコンピュータ実装システム。
【請求項17】
サンプルの画像を提供するための方法であって、
サンプルに対してデカルト座標に関してデータをコード化する画像を記録するステップ1と、
記録された画像中にコード化された情報から2Dまたは3Dデータ場を再構築するステップ2と、
サンプルの画像をセグメント化するステップ3(a)と、
各セグメントを2Dまたは3Dデータ場の領域と関連づけるステップ3(b)と、を含み、
ステップ1〜3が自動化されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
サンプルがヒトまたは動物の組織を含み、動きを測定するために使用されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組織の動きが測定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
液体の動きが測定され、
動きは、空気、血液、リンパ液またはこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
イメージングできるように構成されたアプリケーションであって、
請求項17にしたがった方法を可能とするよう構成された所定の命令セットを含むことを特徴とするアプリケーション。
【請求項22】
コンピュータで使用可能なメディアを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記メディア上で統合されたコンピュータ可読のプログラムコードおよびコンピュータ可読のシステムコードと、請求項21に従ったイメージングを可能にするアプリケーションと、を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項1】
少なくとも1つの映写角から画像を記録し、デカルト座標においてサンプルに対して速度データをコード化する画像ペア相互相関解析を実行するステップ1と、
前記解析から得られた画像ペア相互相関から直接的に2Dまたは3Dの速度場を再構築するステップ2と、を含むサンプルのイメージング方法であって、
再構築は、初めに2Dまたは3D画像を再構築することなく実行され、ステップ1および2は自動化されていることを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項2】
ステップ2は、
反復法または直接法を用いることによって、前記解析から得られた画像ペア相互相関から直接的に3Dの速度場を再構築するステップ2(a)と、
4Dの速度場を生成するために反復法または直接法を繰り返すステップ2(b)と、を含み、
4Dの速度場を用いてさらなる情報を提供するステップをさらに含む請求項1に記載のサンプルのイメージング方法。
【請求項3】
ステップ1は、
複数の映写角から画像を記録するステップ1(a)と、
画像を長方形の調査ウィンドウへと割り当てるステップ1(b)と、
画像からx,y,z軸方向に速度成分u,v,wを導出するステップ1(c)と、
調査ウィンドウにより規定された画像ペアにおいて相互相関解析を実行するステップ1(d)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のサンプルのイメージング方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプルのイメージング方法であって、
ステップ1は、少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペア相互相関解析を実行するステップ1(a)を含み、
(i)デカルト座標(x,y,z)とは正反対の時間に対する速度(u,v,w)
(ii)圧力または体積を含む群から選択される追加的な物理的パラメータ(p)
ステップ2は、
単一の3D速度場をもたらすために、測定を統合するステップ2(a)と、
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δpで定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ2(b)とを含むことを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプルのイメージング方法であって、
ステップ1は、少なくとも1つの映写角から画像を記録することにより、コード化された以下のパラメータを測定するために画像ペア相互相関解析を実行するステップ1(a)を含み、
(i)デカルト座標(x,y)とは正反対の動き(u,v)
(ii)サンプルの厚さ(t)、圧力(p)および体積(V)
ステップ2は、
単一の3D速度場をもたらすために、測定を統合するステップ2(a)と、
(δu/δx+δv/δy+δw/δz)/δpで定義される微分係数に関して、局所的なコンプライアンスを記述するステップ2(b)と、
全コンプライアンスと、t=V/Σ/(δu/δx+δv/δy)に従って局所的なコンプライアンスを加えることにより決定された全コンプライアンスとを数学的に比較することにより、tに対して解くステップ2(c)と、を含むことを特徴とするサンプルのイメージング方法。
【請求項6】
サンプルの画像を断片化するステップ3(a)と、
各断片を2Dまたは3Dデータ場の領域と関連づけるステップ3(b)と、をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
映写角は、1°〜360°の範囲、より好ましくは30°〜180°の範囲をカバーすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
サンプルがヒトまたは動物の組織を含み、動きを測定するために使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
組織の動きが測定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体の動きが測定され、
動きは、空気、血液、リンパ液またはこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
イメージングできるように構成されたアプリケーションであって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実行できるように構成された所定の命令セットを含むことを特徴とするアプリケーション。
【請求項12】
コンピュータで使用可能なメディアを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記メディア上で統合されたコンピュータ可読のプログラムコードおよびコンピュータ可読のシステムコードと、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に従って画像ペアの相互相関解析および速度場の再構築を可能にするアプリケーションと、を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、
(iii)1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間にサンプルを配置するためのサンプル保持具と、を含み、
使用時には、サンプル保持具はサンプルを複数のエネルギー映写角に回転させることにより、少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)1つ以上のエネルギー源と、
(ii)1つ以上のエネルギー源から発せられたサンプルを通過するエネルギーにより作られた画像を記録するための1つ以上の検出器と、を含み、
使用時には、サンプルは1つ以上のエネルギー源と1つ以上の検出器との間に配置され、エネルギー源および検出器がサンプルに対して複数のエネルギー映写角に回転されることにより、サンプルの少なくとも1つの画像が映写角のそれぞれに対して記録されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に使用される装置であって、
(i)それぞれ個別の映写角を有する2つ以上のエネルギー源と、
(ii)エネルギー源から供給されたエネルギーがサンプルを通過するときに形成された画像を記録するための1つ以上の検出器と、を含み、
各映写角における記録が同時に行われることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の装置の制御に使用されることを特徴とするコンピュータ実装システム。
【請求項17】
サンプルの画像を提供するための方法であって、
サンプルに対してデカルト座標に関してデータをコード化する画像を記録するステップ1と、
記録された画像中にコード化された情報から2Dまたは3Dデータ場を再構築するステップ2と、
サンプルの画像をセグメント化するステップ3(a)と、
各セグメントを2Dまたは3Dデータ場の領域と関連づけるステップ3(b)と、を含み、
ステップ1〜3が自動化されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
サンプルがヒトまたは動物の組織を含み、動きを測定するために使用されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組織の動きが測定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
液体の動きが測定され、
動きは、空気、血液、リンパ液またはこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
イメージングできるように構成されたアプリケーションであって、
請求項17にしたがった方法を可能とするよう構成された所定の命令セットを含むことを特徴とするアプリケーション。
【請求項22】
コンピュータで使用可能なメディアを含むコンピュータプログラム製品であって、
前記メディア上で統合されたコンピュータ可読のプログラムコードおよびコンピュータ可読のシステムコードと、請求項21に従ったイメージングを可能にするアプリケーションと、を有することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【図1】
【図2】
【図3(b)(i)−3(b)(iii)】
【図3(c)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図11(a)−11(e)】
【図3(a)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図10f】
【図10g】
【図10h】
【図2】
【図3(b)(i)−3(b)(iii)】
【図3(c)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8】
【図11(a)−11(e)】
【図3(a)】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図10f】
【図10g】
【図10h】
【公表番号】特表2013−504394(P2013−504394A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529063(P2012−529063)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001199
【国際公開番号】WO2011/032210
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(594202523)モナシュ ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001199
【国際公開番号】WO2011/032210
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(594202523)モナシュ ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】
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