説明

イメージング表面プラズモン共鳴装置

【課題】 平行光束の照射角度が大きく変化しても屈折率によるずれを解消して異なる照射角度における反射光の強度を測定できるイメージング表面プラズモン共鳴装置を提供する。
【解決手段】 第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が表面プラズモン共鳴部を直進して金属薄膜に達する見かけの入射点と第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときの当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、往復駆動部を駆動させて該移動量だけ表面プラズモン共鳴部を移動させた後、反射光束を第二光学系受光部にて受光するイメージング表面プラズモン共鳴装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージング表面プラズモン共鳴装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、表面プラズモンとは金属表面上に存在する電子の粗密波であり、この粗密波の速度が金属面に接触した物質によって制限されるという性質を利用して金属面に被測定物質を接触させてプリズムを介して金属表面に光を照射し、エバネッセント波を生起させて表面プラズモンと共鳴するような入射光の角度を求めることにより、金属面の物質量を解析できることが知られている。そして、この測定方法は測定環境を高真空状態にする必要がなく、常温以外の任意の温度で測定することができ、水溶液状態の被測定物質を測定できるので、生物学分野の研究に適し、生体分子間相互作用を解析するバイオセンサーとして採用されている。
【0003】
前記表面プラズモンの性質を利用した共鳴装置としては、光ビームを照射して1種類の生体分子間相互作用を解析する表面プラズモン共鳴装置や光束を照射して多種類の分子間相互作用を同時に解析できるイメージング表面プラズモン共鳴装置が開発されている。
【0004】
前記表面プラズモン共鳴装置では、試料を載置すると共に表面プラズモン共鳴を起こす第一光学系に対して種々の入射角が得られるようにするために第二光学系を回動させて該第二光学系から照射される光ビームの照射角度を変位させる第一揺動機構と、第一光学系で反射された光ビームの反射光を種々の反射角度毎に受光するために第三光学系を回動させて該第三光学系における反射光の受光角度を変位させる第二揺動機構と、第二光学系及び第三光学系間の相対位置を変位させることなく第一光学系との間の相対位置を接離する方向へ変位させる並進往復運動機構とを備え、第一光学系のプリズムにおいて種々の入射角が得られるように第二光学系及び第三光学系の位置状態を変化させる表面プラズモン共鳴センサ装置(特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
また、前記イメージング表面プラズモン共鳴装置では、被測定物質に接する金属薄膜を表面上に備えたプリズムと、p偏光光の平行な光束をプリズム側から入射させる入光手段と、金属薄膜からの反射光を受光する受光手段とを有し、受光手段を前記入射角度と同じ角度変化の反対方向へ追従させる2次元イメージング表面プラズモン共鳴測定装置(特許文献2参照)や金属薄膜と反対側のガラス基盤に密着されて少なくとも金属薄膜の検鏡領域全体を覆う大きさの半円柱プリズムと、半円柱プリズムの光入射側の外周面に沿った所定の角度で回動可能に支持されて半円柱プリズムの光入射側に対して光源からの光が半円柱プリズム内にて検鏡領域の全体にわたって平行光束になるように照射する光照射装置と、半円柱プリズムの光出射側の外周面に沿って光照射装置の回動方向と反対方向へ同期回動可能に支持されて検鏡領域から反射して半円柱プリズムを透過した平行光束を受光する受光装置とからなり、検出領域に照射される平行光を大きな角度で可変して検出領域に固定された試料を検鏡できるようにした表面プラズモン共鳴角顕微鏡(特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−75335号公報。
【特許文献2】特開2001−255267号公報。
【特許文献3】特開2001−242071号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記表面プラズモン共鳴センサ装置は、第二光学系から照射する光ビームの照射角度を該第二光学系を回動させることにより変位させているから、当該照射角度の変位量が大きいほど第二光学系からの光ビームは試料を載置した第一光学系から大きく外れるので、光ビームが第一光学系に届くようにするために第一光学系を大きく移動させている。従って、図18に示すように、試料101 中に複数種類存在する被測定物質を解析するために当該表面プラズモン共鳴センサ装置を用いて第二光学系102 から光束103 を照射した場合には、当該複数種類の被測定物質における表面プラズモン共鳴による像を得るために広い照射角度範囲から光束103 を照射しなければならないが、照射角度によっては、第一光学系104 から外れた位置に第二光学系102 の焦点が位置付けられて当該照射角度で表面プラズモン共鳴する被測定物質においては像がぼやけたり現れるはずの像が得られないという問題点があった。なお、図18は特開2003-75335号公報に開示されている表面プラズモン共鳴センサ装置を用いて第二光学系から光束を照射する表面プラズモン共鳴センサ装置を説明する正面図であり、同図中、105 は第三光学系、106 は第一揺動機構、107 は第二揺動機構、108 は並進往復運動機構、109 は三角プリズム、110 は金属薄膜である。
【0008】
また、前記イメージング表面プラズモン共鳴装置は、プリズムを中心として入光手段と受光手段とが公転し、受光手段を光束の入射角度の変化に同期させて前記角度変化とは反対方向の同じ角度となるように移動させて反射光束を受光している。従って、光束の光軸を図示した図19に示すように、入光手段111 がプリズム109 を中心として公転すれば、プリズム面に対する光束の入射角が絶えず変化するが、被測定物質(試料)101 への照射角が60°の場合には、プリズム面に対する光束の入射角が90°となり、光軸112 と被測定物質101 の中心との間にずれは生じないから、金属薄膜110 からの反射光束を受光手段113 にて受光することができる。しかし、被測定物質101 への照射角が60°以外の角度の場合には、光束がプリズム内で屈折するので、光軸112 と被測定物質101 の中心との間にずれが生じて金属薄膜110 からの反射光軸112 を受光手段113 にて受光することができないという問題点があった。さらに、アレイ化された被測定物質間における表面プラズモン共鳴角度が大きく異なる場合には、受光手段113 で受光できないものが生じるので、当該各被測定物質を測定できないという問題点があった。なお、図19は特開2001-255267 号公報に開示されているイメージング表面プラズモン共鳴装置の正面図であり、同図中、前記図18と同一符号は同一又は相当部分を示し、114 は公転の中心である。
【0009】
また、表面プラズモン共鳴角顕微鏡は、半円柱形プリズムに入射した光束が該半円柱形プリズムの屈折率により平行光束になるように屈折されるが、図20に示すように、半円柱形状のプリズムであるため、光束の外周附近にある光線115 ほど半円柱形プリズム116 の収差によって光線115 が光軸と平行には進まず、被測定物質全面に平行光線が照射されずに、見かけ上、共鳴角が異なって観測されるという問題点があった。なお、図20は特開2001-242071 号公報に開示されている表面プラズモン共鳴角顕微鏡における半円柱形プリズムの正面図であり、同図中、前記図18と同一符号は同一又は相当部分を示し、117 はガラス基板である。
【0010】
そこで、本発明者等は、前記各問題点を解決するために、平行光束の照射角度が大きく変化しても屈折率によるずれを解消して異なる照射角度における反射光の強度を測定できるイメージング表面プラズモン共鳴装置を得ることを技術的課題として、その具現化をはかるべく研究・実験を重ねた結果、表面プラズモン共鳴部に平行光束の外周付近にある光線においても光軸と平行に屈折する三角プリズムを採用し、当該平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出して該見かけの入射角に基づき、該入射角における見かけの入射点と表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の金属薄膜に対する真の入射点とのずれを解消できる移動量を算出して該移動量に基づき表面プラズモン共鳴部を移動させて屈折率によるずれを調整すればよいという刮目すべき知見を得、前記技術的課題を達成したものである。
【0011】
前記研究・実験に基づき前記ずれの存在を把握し、移動量を特定するに至った考察過程を図面に基づき説明する。
【0012】
先ず、三角プリズムの一側面に直接金属薄膜を蒸着した三角プリズムを用いて該三角プリズムに平行光束を照射した場合の光軸の屈折状態と該屈折によって発生した三角プリズム内での光軸のずれ量を特定した。図1及び図2は三角プリズムに入射した光軸の屈折状態を説明する三角プリズムからなる表面プラズモン共鳴部の正面図であり、これらの図において、1は三角プリズムであり、三角プリズム1の一側面には金属薄膜2が蒸着されている。そして、三角プリズム1が基準の位置に置かれたときの当該三角プリズム1に照射された光束の光軸における見かけの入射光線が三角プリズム1の前記一側面の中心3を通過する光軸を光軸4にて示し、光軸4の屈折光線が中心3を通るように該光軸4を図1において上方向へ平行移動させた光束の光軸を光軸5にて示し、三角プリズム1内での光軸4と光軸5とのずれをずれ量yとして表した。
【0013】
図1において、点A,B及びCは三角プリズム1の正三角形の各頂点、点Dは三角プリズム1に対する光軸5の入射点、点Eは入射点Dから辺ACに下ろした垂線との交点である。そして、空気の屈折率をn1、三角プリズム1の屈折率をn2、光軸4の三角プリズム1への入射角をθ1 、入射角θ1 に対する三角プリズム1内での屈折角をθ2 、金属薄膜2に対する光軸4の見かけの入射角をθa とした。
【0014】
光軸4の入射角θ1 を見かけの入射角θa によって表すことができる。
即ち、θ1 =60°−θa ・・・ (1)
(直角三角形ADE の∠ADE =30°、30°+θa +θ1 =90°)
また、屈折角θ2 を見かけの入射角θa によって表すことができる。
スネルの法則により、n1sin θ1 =n2sin θ2 、
よって、θ2 =arcsin{(n1 /n2)sinθ1 } ・・・ (2)
(2) 式に(1) 式を代入して、
即ち、θ2 =arcsin{(n1 /n2)sin (60°−θa)} ・・・ (3)
【0015】
図2において、点Fは辺ACの中心(中心3)、点Gは入射点Dに立てた法線の延長線と辺BFとの交点、点Hは光軸4の屈折光線と辺BFとの交点、点Iは点Fから光軸4の屈折光線に下ろした垂線との交点、点Jは入射点Dに立てた法線の延長線と辺ACとの交点、点Kは三角プリズム1に対する光軸4の入射点、点Lは入射点Kから辺BFに下ろした垂線との交点であり、辺FHはずれ量yである。そして、金属薄膜2に対する光軸4の真の入射角をθ、三角プリズム1の一辺をx’、∠FHI をθ’、∠FKI をθ3 、辺FIをy’、辺FKをα、辺KLをγ、辺BLをδ1 、辺FLをδ2 とした。
【0016】
ずれ量y(辺FH)は直角三角形FHI において、y=y’/sin θ’により表され、直角三角形FHI のθ’(∠FHI )を入射角θa によって表すことができる。
三角形DFG において、θ+θ2 =60°(直角三角形ADJ と直角三角形GFJ とは相似)、
よって、θ=60°−θ2 ・・・ (4)
(4) 式に(3) 式を代入して、
θ=60°−arcsin{(n1 /n2)sin (60°−θa)}、
θ=θ’(辺DFと辺KIとは平行)より、
即ち、θ’=60°−arcsin{(n1 /n2)sin (60°−θa)} ・・・ (5)
【0017】
続いて、y’(辺FI)を入射角θa によって表すことができる。
直角三角形FKL において、γ=αsin θa ・・・ (6)
また、δ2 =γ/tan θa ・・・ (7)
直角三角形KBL において、δ1 =γ/tan 30° ・・・ (8)
直角三角形ABF において、x’cos 30°=δ1 +δ2 ・・・ (9)
(9) 式に(7) 式と(8) 式とを代入して、
x’cos 30°=γ{( 1/tan 30°) +( 1/tan θa)}
さらに、(6) 式を代入して、
α=x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa } ・・・ (10)
直角三角形FKI において、y’=αsin θ3 、θ3 =θ1 −θ2 、
よって、y’=αsin(θ1 −θ2) ・・・ (11)
(11)式に(10)式を代入して、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
【0018】
従って、直角三角形FHI においてy=y’/sin θ’であるから、(5) 式を代入して、ずれ量yはy=y’/sin[60°−arcsin{(n1 /n2)sin( 60°−θa)}] 、但し、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
となる。
【0019】
即ち、金属薄膜2への見かけの入射角θa が得られれば、三角プリズム1に対する入射角θ1 は(1) 式θ1 =60°−θa により算出でき、屈折角θ2 は(3) 式θ2 =arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}により算出でき、空気の屈折率n1、三角プリズム1の屈折率n2及び三角プリズム1の一辺x’は既知であるから、ずれ量yを特定することができる。
【0020】
次に、図1及び図2に図示した金属薄膜が平行ガラス基板に蒸着されていて該平行ガラス基板を三角プリズムに張り合わせた大きさの三角形が図1及び図2に示す三角プリズム1の三角形と同じ大きさになる三角プリズムの一側面に該平行ガラス基板を密着して該三角プリズムに平行光束を照射した場合の光軸の平行ガラス基板での屈折状態と該屈折によって発生した平行ガラス基板内での光軸のずれ量を特定した。図3は三角プリズムを通過して平行ガラス基板に入射した光軸の屈折状態を説明する三角プリズムと平行ガラス基板とからなる表面プラズモン共鳴部の正面図であり、同図において、6は三角プリズム7の一側面に密着された平行ガラス基板であり、被測定物質が接触する側の平行ガラス基板6には金属薄膜2が蒸着されている。従って、三角プリズム7は三角プリズム1から平行ガラス基板6の厚さ分削り取った大きさの三角プリズムとなっている。そして、図1及び図2において光軸4が三角プリズム1の中心3を通るようにずれ量yにより調整した光軸5は、平行ガラス基板6内で屈折するために三角プリズム1の中心3に相当する平行ガラス基板6面の中心8を通らないので、平行ガラス基板6内で屈折した光軸5の光線が中心8を通るように光軸5を図3において上方向へ平行移動させた光束の光軸を光軸9にて示し、平行ガラス基板6内での光軸5と光軸9とのずれをずれ量ys として表した。
【0021】
図3において、点M及びNは平行ガラス基板6を張り合わせた側の三角プリズム7の各頂点、点Oは平行ガラス基板6での光軸5の屈折光線と光軸9の金属薄膜2への入射点(中心8)に立てた法線の延長線との交点、点Pは平行ガラス基板6に対する光軸5の入射点、点Qは前記法線の延長線と平行ガラス基板6の辺MN(三角プリズム7の一辺MN)との交点、点Rは金属薄膜2に対する光軸5の入射点、点S(中心8)は金属薄膜2に対する光軸9の入射点、点Tは断面が矩形に形成された平行ガラス基板6の金属薄膜2を蒸着した面側の一方側頂点、点Uは光軸5の入射点Rに立てた法線の延長線と辺MNとの交点、点Vは光軸5の入射点Pに立てた法線の延長線と平行ガラス基板6での光軸9の屈折光線との交点、点Wは平行ガラス基板6に対する光軸9の入射点、点Xは光軸9の入射点Wに立てた法線の延長線と三角プリズム7での光軸5の屈折光線との交点である。そして、平行ガラス基板6の屈折率をn3、三角プリズム7の一辺をx、三角プリズム1の一辺x’と三角プリズム7の一辺xとの差(辺CM)をxs 、平行ガラス基板6内での光軸5と光軸9とのずれ量をys (辺OS)、該ずれ量ys が三角プリズム7内に現れるずれ量をzs (辺XW)、光軸5の平行ガラス基板6への入射角θに対する平行ガラス基板6内での屈折角をθs 、辺MTをd(平行ガラス基板6の厚さ)、辺RS(辺UQ)をh、辺PQをc、辺PWをqとした。なお、前記入射角θは図2における金属薄膜2に対する光軸4の入射角θと同じ角度である。
【0022】
ずれ量ys (辺OS)とずれ量zs (辺XW)とは屈折角θs 、即ち、金属薄膜2への入射角θs によって表すことができる。
入射角θs (屈折角θs )は、スネルの法則により、n2sin θ=n3sin θs 、
よって、θs =arcsin{(n2/n3)sin θ} ・・・ (12)
【0023】
三角プリズム1の一辺x’は三角プリズム7の一辺xとxs (辺CM)とを加えた値であるから、x’=x+xs ・・・ (13)
また、直角三角形CMT において、xs =d/cos 30° ・・・ (14)
(直角三角形CMT の∠CMT =30°、cos 30°=d/xs )
(14)式を(13)に代入して、
x’=x+d/cos 30° ・・・ (15)
また、直角三角形RPU において、h=( dtan θs)−c ・・・ (16)
(直角三角形RPU の∠PRU =θs 、辺PU=c+h、tan θs =( c+h) /d)
また、直角三角形ORS において、ys =h/tan θs ・・・ (17)
(直角三角形ORS の∠SOR =θs 、辺RS=h、tan θs =h/ys )
また、直角三角形PQS において、c=dtan θ ・・・ (18)
(直角三角形PQS の∠PSQ =θ、辺PQ=c、tan θ=c/d)
(18)式を(16)式に代入して、
h=dtan θs −dtan θ ・・・ (19)
(19)式を(17)式に代入して、
即ち、ys =d{1−(tanθ/tan θs)} ・・・ (20)
【0024】
続いて、直角三角形PVW において、q=ys tan θs ・・・ (21)
(直角三角形PVW の∠PVW =θs 、tan θs =q/ys )
また、直角三角形PWX において、zs =q/tan θ ・・・ (22)
(直角三角形PWX の∠PXW =θ、辺WX=zs 、tan θ=q/zs )
(21)式を(22)式に代入して、
即ち、zs =ys tan θs /tan θ
【0025】
従って、三角プリズム7内に現れるずれ量zs はzs =ys tan θs /tan θ、但し、ys =d{1−(tanθ/tan θs)}となる。
【0026】
即ち、dは平行ガラス基板6の厚さで既知、平行ガラス基板6への真の入射角θはθ=60°−θ2 より算出でき、金属薄膜2への真の入射角θs はθs =arcsin{(n2/n3)sin θ}により算出でき、三角プリズム7の屈折率n2、平行ガラス基板6の屈折率n3は既知であるから、ずれ量zs を特定することができる。
【0027】
これにより、三角プリズム7により屈折し、平行ガラス基板6により屈折した光束の光軸4と平行ガラス基板6の中心8とのずれは、三角プリズム7によるずれを調整すために光軸4を三角プリズム7内においてずれ量y、即ち、
y=y’/sin[60°−arcsin{(n1 /n2)sin( 60°−θa)}] 、但し、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
移動させれば、解消でき、平行ガラス基板6によるずれを調整するために光軸5を平行ガラス基板6内においてずれ量ys 、即ち、該ずれ量ys が三角プリズム7内において現れるずれ量zs 、即ち、
zs =ys tan θs /tan θ、但し、
ys =d{1−(tanθ/tan θs)}
移動させれば、解消できる。
【0028】
次に、光軸4が点Sを通るように該光軸4を三角プリズム7内においてずれ量y移動させると共に、ずれ量zs 移動させて点Sを通る光軸9の位置へ位置付けるための表面プラズモン共鳴部の移動量を特定した。図4は図3に図示する表面プラズモン共鳴部の移動量を説明する説明図であり、同図において、点Zは光軸9の入射点Wに立てた法線の延長線と三角プリズム7での光軸4の屈折光線との交点、点(a) は図2に図示する入射点Kに相当する三角プリズム7に対する光軸4の入射点、点(b) は三角プリズム7に対する光軸9の入射点、点(c) は入射点(a) から辺MNに下ろした垂線と光軸9の屈折光線との交点、点(d) は入射点(b) から辺MNに下ろした垂線の延長線と光軸4との交点、点(e) は入射点(a) から辺(b) (d) に下ろした垂線と該辺(b) (d) との交点、点(f) は入射点(b) から辺(a) (c) に下ろした垂線と該辺(a) (c) との交点である。また、辺WXはずれ量zs 、辺XZはずれ量yであるから、三角プリズム7内において光軸4を光軸9の位置へ位置付けるためのずれ量をzs +y=Y(辺WZ)として表し、光軸4のずれ量Yを調整するために必要な表面プラズモン共鳴部の移動量をξ(辺(b) (d) )として表した。即ち、ξは光軸4を平行ガラス基板6の点S(中心8)へ一致させる表面プラズモン共鳴部の図4における下向きを正とする移動量である。そして、辺(b) (e) をξ1 、辺(d) (e) をξ2 、辺(b) (f) をλ1 、辺(a) (b) をλ2 、辺(c) (f) をλ3 、辺(a) (f) をλ4 、辺(b) (c) をλ5 、辺(a) (e) をλ6 、辺(a) (d) をλ7 とした。
【0029】
移動量ξ(辺(b) (d) )とYとの関係について考察した。
辺WZ=辺(a) (c) 、即ち、辺(a) (c) =Y、よって、Y=λ3 +λ4
直角三角形(b) (c) (f) において、λ3 =λ1 /tan θ ・・・ (23)
(∠(b) (c) (f) =θ、tan θ=λ1 /λ3 )
直角三角形(a) (b) (f) において、λ1 =λ2 /2 ・・・ (24)
(∠(b) (a) (f) =30°、sin30 °=λ1 /λ2 )
また、cos30 °=λ4 /λ2 、即ち、λ4 =λ2(√3) /2 ・・・ (25)
(24)式を(23)式に代入して、λ3 =λ2 /2tan θ ・・・ (26)
(25)式と(26)式とをY=λ3 +λ4 に代入して、
Y=λ2 {( 1/2tan θ) +( √3) /2}
即ち、λ2 =Y/{( 1/2tan θ) +( √3) /2}
【0030】
続いて、直角三角形(a) (b) (f) と直角三角形(a) (b) (e) において、λ4 =ξ1 、
該式に(25)式を代入して、
ξ1 =λ2 ( √3) /2 ・・・ (27)
直角三角形(a) (d) (e) において、λ6 =λ7 sin θa ・・・ (28)
(∠(a) (d) (e) =θa 、sin θa =λ6 /λ7 )
また、cos θa =ξ2 /λ7 、即ち、ξ2 =λ7 cos θa ・・・ (29)
直角三角形(a) (b) (e) において、λ6 =λ2 /2 ・・・ (30)
(∠(a) (b) (e) =30°、sin30 °=λ6 /λ2 )
(30)式を(28)式に代入して、λ7 =λ2 /2sin θa ・・・ (31)
(31)式を(29)式に代入して、ξ2 =λ2 /2tan θa ・・・ (32)
【0031】
従って、ξ=ξ1 +ξ2 であるから、該式に(27)式と(32)式とを代入して、
即ち、移動量ξはξ=( λ2 /2) {( √3) +1/tan θa }、但し、
λ2 =Y/{( 1/2tan θ) +( √3) /2}、Y=y+zs である。
【0032】
即ち、移動量ξは、ξ=( λ2 /2) {( √3) +1/tan θa }と、
λ2 =Y/{( 1/2tan θ) +( √3) /2}と、
Y=y+zs と、
y=y’/sin[60°−arcsin{(n1 /n2)sin( 60°−θa)}] と、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
、及び、x’=x+d/cos 30°と、
zs =ys tan θs /tan θと、
ys =d{1−(tanθ/tan θs)}
とにより得ることができ、三角プリズム7の一辺x、平行ガラス基板6の厚さd、空気の屈折率n1、三角プリズム7の屈折率n2及び平行ガラス基板6の屈折率n3はそれぞれ既知であり、金属薄膜2への見かけの入射角θa は測定することができ、三角プリズム7に対する入射角θ1 はθ1 =60°−θa により算出することができ、入射角θ1 に対する屈折角θ2 はθ2 =arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}により算出することができ、平行ガラス基板6への真の入射角θはθ=60°−arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}により算出することができ、入射角θに対する屈折角θs はθs =arcsin{(n2/n3)sin θ}により算出することができるから、入射角θa を測定することにより、容易に移動量ξを特定できることを確認した。
【0033】
従って、図4において、金属薄膜2における点Sの位置が中心となるように被測定物質11を金属薄膜2面に接触させ、S点が金属薄膜2に対する光軸4の見かけの入射角における入射点となるように平行光束14を表面プラズモン共鳴部へ照射したときの光軸4の屈折光線が金属薄膜2に到達する位置、即ち、金属薄膜2に対する光軸4の屈折光線の真の入射点と点Sとのずれを解消するには(光軸4を光軸9の位置へ移動させるには)、見かけの入射点に立てた法線の方向へ表面プラズモン共鳴部を移動量ξだけ移動させればよい。移動量ξは、前記S点と表面プラズモン共鳴部より屈折した光軸4の屈折光線の入射点とによって現れるずれをS点に立てた法線方向への移動によって解消できる量である。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0035】
即ち、本発明に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置は、被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部とを備えてなり、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときの当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させた後、前記反射光束を前記第二光学系受光部にて受光するものである。
【0036】
また、本発明に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置は、被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部と、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出する角度検出手段と、前記見かけの入射角に基づき前記往復駆動部を駆動させて前記表面プラズモン共鳴部を往復動させる制御をする制御部とを備えてなるイメージング表面プラズモン共鳴装置であって、前記制御部が、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときに前記角度検出手段より得られた当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させるものである。
【0037】
また、本発明に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置は、被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記平行ガラス基板に並設されて前記被測定物質を前記金属薄膜面に供給する被測定物質供給部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部と、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出する角度検出手段と、前記見かけの入射角に基づき前記往復駆動部を駆動させて前記表面プラズモン共鳴部を往復動させる制御をする制御部とを備えてなるイメージング表面プラズモン共鳴装置であって、前記制御部が、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときに前記角度検出手段より得られた当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させるものである。
【0038】
また、本発明は、被測定物質供給部を備えた前記イメージング表面プラズモン共鳴装置において、被測定物質供給部が、平行ガラス基板に密着して金属薄膜を含む広さの六角形状堰により形成された六角セル部と該六角セル部の相対する隅部近傍にそれぞれ被測定物質を該六角セル部に供給する供給口と該六角セル部内の被測定物質を排出する排出口とを設けてなるセルブロックから構成されているものである。
【0039】
さらに、本発明は、被測定物質供給部を備えた前記イメージング表面プラズモン共鳴装置において、被測定物質供給部が、平行ガラス基板に密着して金属薄膜を含む広さの六角形状堰により形成された六角セル部と該六角セル部の相対する隅部近傍にそれぞれ被測定物質を該六角セル部に供給する供給口と該六角セル部内の被測定物質を排出する排出口とを設けてなるセルブロックと、外周を螺旋状に走る溝型流路を形成した円柱部と該円柱部に密着して外設した筒部とからなる温度調節ブロックとによって構成されていて被測定物質を温度調節ブロックの溝型流路を通過させて前記セルブロックの供給口から前記六角セル部に送り込むようになっているものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出して該入射角に基づき平行光束の光軸と当該金属薄膜に接触した被測定物質の中心との間のずれを解消できる移動量を算出し、該移動量に基づき表面プラズモン共鳴部を移動させて屈折率によるずれを調整しているから、平行光束の照射角度が大きく変化しても屈折率によるずれを解消して異なる照射角度における反射光の強度を測定できるイメージング表面プラズモン共鳴装置を提供することができる。
【0041】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0043】
実施の形態1.
【0044】
図5は本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置の構成を説明する正面図、図6は図5に図示する公転駆動部のギヤ系を示す一部省略縦断面図、図7は図5に図示する表面プラズモン共鳴部を示す正面図、図8は図5に図示する往復駆動部を示す側面図、図9は図7に図示する被測定物質供給部におけるセルブロックの底面図、図10はセルブロックの縦断面図、図11はセルブロックの側面図、図12は図7に図示する被測定物質供給部における温度調節ブロックの筒部を縦断面にて示す温度調節ブロックの側面図、図13は温度調節ブロックの平面図、図14は本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置の制御を説明するブロック図、図15は本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置を制御する位置調整プログラムを説明するフローチャート図、図16は図15に図示する位置調整プログラムの説明図であり、これらの図において、図1〜図4と同一符号は同一又は相当部分を示し、10はイメージング表面プラズモン共鳴装置(以下、「イメージングSPR装置」ともいう。)であり、該イメージングSPR装置10は、図5に示すように、被測定物質11を接触させる金属薄膜2を片面に形成した平行ガラス基板6を三角プリズム7の一側面に密着した表面プラズモン共鳴部12と、平行ガラス基板6に並設されて被測定物質11を前記金属薄膜面2に供給する被測定物質供給部13と、三角プリズム7の一方側面から平行ガラス基板6の金属薄膜2へp偏光平行光束14を照射する第一光学系照射部(以下、「照射部」という。)15と、金属薄膜2によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束16を三角プリズム7の他方側面から受光する第二光学系受光部(以下、「受光部」という。)17と、照射部15と受光部17とを表面プラズモン共鳴部12に対してそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部18と、照射部15からの距離と受光部17からの距離とを等距離に保持した状態で表面プラズモン共鳴部12を往復動作させる往復駆動部19と、照射部15から照射されるp偏光平行光束14の金属薄膜2に対する見かけの入射角を検出する角度検出手段20と、照射部15の上側の基準の公転位置を検出する上側公転検出センサー21と、照射部15の下側の基準の公転位置を検出する下側公転検出センサー22と、表面プラズモン共鳴部12の上側の基準の昇降位置を検出する上側昇降検出センサー23と、表面プラズモン共鳴部12の下側の基準の昇降位置を検出する下側昇降検出センサー24と、角度検出手段20からの回転角信号を受けて見かけの入射角に基づき往復駆動部19を駆動させて表面プラズモン共鳴部12を往復動(上下動)させる制御をする制御部25とを備えている。
【0045】
そして、前記照射部15の光学系は、光源26と該光源26からの光線を平行光にする第一レンズ27と該第一レンズ27からの平行光を偏光する偏光子28と偏光後のp偏光平行光を集光する第二レンズ29と該第二レンズ29の集光位置に配置されたピンホール30と該ピンホール30を通過した光を平行光にする第三レンズ31とp偏光平行光束14の出口に配置されたバンドパスフィルタ32とから構成されており、前記受光部17は表面プラズモン共鳴後の反射光束16を集光する第四レンズ33と該第四レンズ33からの光を平行光にする第五レンズ34と当該平行光を投影するCCD カメラ35とから構成されている。
【0046】
前記公転駆動部18は、図6に示すように、モータ36と、該モータ36の回転を照射部15と受光部17とに伝達して照射部15と受光部17とを表面プラズモン共鳴部12を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させるギア系とからなり、モータ36はイメージングSPR装置10の台座37に立設された支持壁板38に固定され、モータ36の回転を伝達する回転軸39が支持壁板38と該支持壁板38に対して間隔を設けて平行に立設された中壁板40と該中壁板40に対して間隔を設けて平行に立設された表壁板41とを回動自在に貫通して横設されている。また、モータ36の下方位置における支持壁板38には角度検出手段20が固定されており、該角度検出手段20にはモータ36の回転を該角度検出手段20に伝達するための伝達シャフト42が軸着されて支持壁板38と中壁板40と表壁板41とを回動自在に貫通してモータ36の回転軸39に対して平行に横設されている。
【0047】
前記ギア系は、支持壁板38と中壁板40との間に位置付けて回転軸39に軸着されたタイミングプーリ43と、該タイミングプーリ43の回転を双方に掛け渡したタイミングベルト44を介して同一回転方向で伝達シャフト42に伝達する該伝達シャフト42に軸着された受側タイミングプーリ45と、回転軸39に遊嵌状態で挿着されて中壁板40と表壁板41とを回動自在に貫通して横設された反転中空シャフト46と、中壁板40と表壁板41との間に位置付けて伝達シャフト42に軸着されたギヤ47と、該ギヤ47に噛合して反転中空シャフト46に軸着された反転ギヤ48とから構成されている。
【0048】
そして、中壁板40を貫通して突出した反転中空シャフト46の後端部には該反転中空シャフト46の抜け止め用リング状ストッパー49が設けられ、表壁板41を貫通して突出した先端部にはブラケット50を介して受光部17を固定する受光部側支持アーム51が垂設状態で固着され、反転中空シャフト46から突出した回転軸39の先端部にはブラケット52を介して照射部15を固定する照射部側支持アーム53が垂設状態で固着され、これにより、受光部側支持アーム51と照射部側支持アーム53とは回転軸39を中心として同一角度で反対方向へ回る時計の針様に設けられており、照射部15と受光部17とが同じ位置に配置されるように受光部側のブラケット50を照射部側のブラケット52より長く突出させて設け、照射部15と受光部17とは、ギヤ系の歯数により回転軸39を中心としてそれぞれ同一角度で反対方向へ公転するようになっている。また、前記上側公転検出センサー21と前記下側公転検出センサー22とは照射部側支持アーム53を検知できるように当該照射部15の公転軌跡上の表壁板41に固定されている。
【0049】
前記表面プラズモン共鳴部12には、図7に示すように、三角プリズム7を同図において前後の両側から挟んで保持する保持板54が設けられており、該保持板54の上部には平行ガラス基板6を囲んで嵌めた支持台55が設置され、上方から前記被測定物質供給部13が圧接され、保持板54の下部には連結軸56が鉛直下向きに立設されている。
【0050】
前記往復駆動部19は、図8に示すように、進退軸57を上向きにして台座37に固定した直動モータ58と、進退軸57に対して平行に直動モータ58に並設されたガイドレール59と、該ガイドレール59に摺動自在に取り付けられた倒立L型昇降部60とから構成され、該倒立L型昇降部60の下部に当たる足部には前記ガイドレール59を摺動自在に把持するガイド受け60a が設けられ、上部に当たる横向頭部60b は進退軸57に軸着されて該進退軸57は横向頭部60b を介してさらに前記連結軸56に螺着されている。また、前記ガイドレール59には前記表面プラズモン共鳴部12における金属薄膜2が形成されている平行ガラス基板6面の中心位置(図4においてS点、即ち中心8)が前記回転軸39の中心に位置付けられる高さ位置に上側昇降検出センサー23が取り付けられ、該上側昇降検出センサー23の下方位置のガイドレール59には昇降の下限の位置を検知する下側昇降検出センサー24が取り付けられ、倒立L型昇降部60の前記ガイド受け60a には上側昇降検出センサー23と下側昇降検出センサー24とを遮る遮蔽板61が取り付けられている。
【0051】
前記連結軸56は回転軸39を通る鉛直線と一致するように位置付けられ、前記ギヤ系の構成により、回転軸39を中心として同一角度で反対方向へ公転する照射部15と受光部17とは表面プラズモン共鳴部12を挟んで反対方向へ同じ幅で移動し、表面プラズモン共鳴部12は照射部15と受光部17とに対して等距離を保持して上下動するようになっている。
【0052】
前記被測定物質供給部13は、図7に示すように、平行ガラス基板6に密着して金属薄膜2へ被測定物質11を供給するセルブロック62と、被測定物質11の温度を一定にしてセルブロック62へ供給する温度調節ブロック63とから構成されている。そして、セルブロック62は、図9〜図11に示すように、平行ガラス基板6に密着して金属薄膜2を含む広さの弾性を有する六角形状堰64により形成された六角セル部65と、六角セル部65の相対する隅部近傍にそれぞれ設けられた被測定物質11を六角セル部65に供給する供給口66及び六角セル部65内の被測定物質11を排出する排出口67と、六角セル部65内の被測定物質11を一定温度に保持するペルチェ素子部68とから構成され、温度調節ブロック63は、図12及び図13に示すように、外周を螺旋状に下向きに走る溝型流路69を形成した円柱部70と、円柱部70に密着して外設した筒部71と、円柱部70に密着させて筒部71を上下から挟むように設けた上・下ペルチェ素子部72,73と、被測定物質11を溝型流路69に注ぐ注入口74と、温度調節ブロック63にて一定温度になった被測定物質11をセルブロック62の供給口66へ排出する排出口75とから構成されており、被測定物質11を温度調節ブロック63の溝型流路69に通してセルブロック62の供給口66から六角セル部65に送り込むようになっている。これにより、測定後の被測定物質11は排出口67を通って六角セル部65から排出されるが、供給口66と排出口67とは六角セル部65の六角形の相対する隅部に開口しているので六角セル部65内の被測定物質11を排出するために供給口66から次の被測定物質或いは洗浄液を供給すれば、該液が扇形に広がるように六角セル部65内に進入して幅寄状態で測定済の被測定物質11を押し出すので、測定済被測定物質11を六角セル部65内に残すことなく排出することができる。なお、温度調節ブロック63の外周には放熱フィン76(図7参照)が形成されている。
【0053】
前記制御部25は、後述する位置調整プログラム(図15参照)を記憶させた記憶部77と該記憶部77に記憶された位置調整プログラムを読み出して実行する演算部78とを含んで構成されており、図14に示すように、公転駆動部18を駆動・停止させ、上側公転検出センサー21から出力される照射部側支持アーム53を検知した基準位置信号を受信し、下側公転検出センサー22から出力される照射部側支持アーム53を検知した下側公転位置信号を受信し、基準位置信号を受信することにより、回転軸39の中心(公転の中心)を金属薄膜2に位置付けて入射点とした場合の該入射点に対する上側公転検出センサー21の位置が示す角度にこのときの角度検出手段20の回転角信号を対応させて基準の見かけの入射角として演算部78に設けられた基準位置回転角信号メモリー(図示せず。)へ記憶させ、公転駆動部18の駆動中に基準位置信号と回転角信号とに基づき照射部15の公転位置をリアルタイムで監視して所定の見かけの入射角位置で公転駆動部18を停止させ、往復駆動部19を駆動・停止させ、上・下側昇降検出センサー23,24から出力される遮蔽板61を検知した上・下側昇降位置信号を受信して往復駆動部19を停止させ、往復駆動部19の駆動中に上側昇降位置信号と往復駆動部19から出力される進退位置信号とに基づき表面プラズモン共鳴部12の高さ位置をリアルタイムで監視して所定位置で往復駆動部19を停止させ、CCD カメラ35より画像を取り込む制御をしている。なお、図14において入出力インターフェースは省略されている。
【0054】
前記演算部78では、前記角度検出手段20から得られる見かけの入射角θa に基づき、図1〜図4に示すように、三角プリズム1により屈折したp偏光平行光束14の光軸4が金属薄膜2に到達する位置と金属薄膜2の中心(三角プリズム1面の中心3、即ち、点F)とを一致させるための表面プラズモン共鳴部12の往復動方向における第一ずれ量yと平行ガラス基板6により屈折したp偏光平行光束14の光軸5が金属薄膜2に到達する位置と金属薄膜2の中心(平行ガラス基板6面の中心8、即ち、点S)とを一致させるための表面プラズモン共鳴部12の往復動方向における第二ずれ量zs とを、
三角プリズム7に対する入射角θ1 =60°−θa と、
入射角θ1 に対する屈折角θ2 =arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}と、
平行ガラス基板6への真の入射角θ=60°−arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}と、入射角θに対する屈折角θs =arcsin{(n2/n3)sin θ}とを算出して、
第一算出手段、
即ち、y=y’/sin[60°−arcsin{(n1 /n2)sin( 60°−θa)}] と、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
、及び、x’=x+d/cos 30°と、
zs =ys tan θs /tan θと、
ys =d{1−(tanθ/tan θs)}とにより演算すると共に、
三角プリズム7により屈折すると共に平行ガラス基板6により屈折することによって発生する金属薄膜2に対する光軸4の入射点と金属薄膜2に接触した被測定物質11の中心とのずれを解消できる表面プラズモン共鳴部12の移動量ξを第一ずれ量yと第二ずれ量zs とからずれ量Y=y+zs を算出して、第二算出手段、
即ち、λ2 =Y/{( 1/2tan θ) +( √3) /2}と
移動量ξ=( λ2 /2) {( √3) +1/tan θa }とにより演算している。
【0055】
そして、制御部25では、演算部78にて得られた移動量ξに基づき、往復駆動部19を駆動させて表面プラズモン共鳴部12をξだけ移動させる制御をしている。なお、記憶部77に記録されている三角プリズム7の一辺x、平行ガラス基板6の厚さd、空気の屈折率n1、三角プリズム7の屈折率n2及び平行ガラス基板6の屈折率n3の値は入力手段等により、当該制御部25へ入力される。
【0056】
次に、動作について説明する。
【0057】
表面プラズモン共鳴部12と被測定物質供給部13と照射部15とは、表面プラズモン共鳴部12の金属薄膜2が回転軸39の中心の高さ位置に位置付けられているときに照射部15から照射されるp偏光平行光束14の光軸4の見かけの光軸が六角セル部65内における金属薄膜2の中心、即ち、六角セル部65の中央位置に到達するように調節されている。従って、この位置が被測定物質11の中心に一致し、公転の中心に被測定物質11の中心が位置付けられる。
【0058】
先ず、温度調節ブロック63の注入口74より被測定物質11を注入する。細い螺旋状に形成された溝型流路69を通過した被測定物質11は排出口75を介して一定温度でセルブロック62の供給口66から六角セル部65内へ供給される。
【0059】
次いで、図15に示す位置調整プログラムを実行すれば、制御部(例えば、パーソナルコンピュータ)25の図示しないキーボード等の入力手段により入力して記憶部(例えば、ハードディスク)77の定数記録エリア(図示せず。)に格納されている空気の屈折率n1と、三角プリズム7の屈折率n2と、平行ガラス基板6の屈折率n3と、三角プリズム7の一辺xと、平行ガラス基板6の厚さdと、被測定物質11における画像の取り込みを行う測定開始の金属薄膜2に対する見かけの入射角φi ,測定終了の見かけの入射角φt 及び測定角度間隔Δφとを演算部78に読み込む(ステップs1)。次いで、公転駆動部18を駆動させ、図16に示すように、回転軸39を中心として照射部15を同図において上方向へ右回りで公転させると共に、同時に受光部17を同一角度で反対方向の左回り上方向に公転させ、照射部15の上側の基準の公転位置(例えば、回転軸39の中心(公転の中心)79を通る鉛直線80に対して90°の位置)に設けられた上側公転検出センサー21から出力される基準位置信号を受信することにより、このときに角度検出手段20から入力された回転角信号を上側の基準の公転位置角度(90°)と対応させて見かけの基準入射角ω1 として演算部78に記憶させ、続いて、往復駆動部19を駆動させて表面プラズモン共鳴部12を上下動させ、上側昇降検出センサー23からの上側昇降位置信号に基づき該表面プラズモン共鳴部12における平行ガラス基板6と金属薄膜2との境界を前記公転の中心(回転軸39の中心)79に位置付けて表面プラズモン共鳴部12を停止させる(ステップs2)。このとき、光軸4の見かけの光軸が六角セル部65内における金属薄膜2の中心に位置付けられる。
【0060】
続いて、測定する角度の見かけの入射角φi に基づき、前記基準入射角ω1 における照射部15の位置から見かけの入射角φi における照射部15の位置を算出して公転駆動部18を駆動させて照射部15と受光部17とを角度検出手段20からの回転角信号に基づいて公転させ、見かけの入射角φi となる公転位置へ移動させる(ステップs3)。
そして、演算部78にて、θa にφi を代入して、
三角プリズム7に対する入射角θ1 =60°−θa と、
入射角θ1 に対する屈折角θ2 =arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}と、
平行ガラス基板6への真の入射角θ=60°−arcsin{(n1/n2)sin (60°−θa )}と、入射角θに対する屈折角θs =arcsin{(n2/n3)sin θ}とを算出して(ステップs4)、第一ずれ量yと第二ずれ量zs とを位置調整プログラムの第一算出手段:
y=y’/sin[60°−arcsin{(n1 /n2)sin( 60°−θa }] と、
y’=[ x’cos 30°/{(sinθa /tan 30°) +cos θa }]sin (θ1 −θ2)
、及び、x’=x+d/cos 30°と、
zs =ys tan θs /tan θと、
ys =d{1−(tanθ/tan θs)}とにより計算し(ステップs5)、
表面プラズモン共鳴部12の移動量ξを位置調整プログラムの第二算出手段:
Y=y+zs と、
λ2 =Y/{( 1/2tan θ) +( √3) /2}と、
ξ=( λ2 /2) {( √3) +1/tan θa }とにより計算し(ステッスs6)、当該移動量ξに基づき、往復駆動部19を駆動させて表面プラズモン共鳴部12をξだけ移動させ(ステップs7)、この後、CCD カメラ35より画像を取り込む(ステップs8)。
【0061】
次に、見かけの入射角φi をφi +Δφとして、見かけの入射角がφt を越えているか否かを判断し、越えていなければ往復駆動部19を駆動させて表面プラズモン共鳴部12における被測定物質11の中心を公転の中心79に対応させて位置付けて表面プラズモン共鳴部12を停止させ(ステップs9)、前記ステップs3ヘシャンプしてステップs3〜ステップs8を実行する。ステップs9において入射角φi が見かけの入射角φt 越えていれば終了する。
【0062】
これにより、p偏光平行光束14の屈折によって起こるずれに相当する量だけ表面プラズモン共鳴部12を移動すればよいから、表面プラズモン共鳴部12の少量の移動で広い角度範囲の照射角度における表面プラズモン共鳴像を得ることができる。
【0063】
本実施の形態によれば、表面プラズモン共鳴部12に平行光束14の外周付近にある光線においても光軸と平行に屈折する三角プリズムを採用し、平行光束14の金属薄膜2に対する見かけの入射角を検出して該入射角に基づき平行光束14の光軸4と当該金属薄膜2に接触した被測定物質11の中心(見かけの入射点)との間のずれを解消できる移動量ξを算出して該移動量ξに基づき表面プラズモン共鳴部12を移動させて屈折率によるずれを調整しているので、平行光束14の照射角度が大きく変化しても屈折率によるずれを解消して異なる照射角度における反射光の強度を測定することができる。
【0064】
なお、本実施の形態において、公転駆動部18は一台のモータを使用して回転軸39を中心として照射部側支持アーム53と受光部側支持アーム51とを互いに反対方向へ同じ角度で角回転させて照射部15と受光部17とが互いに反対方向へ公転するようにギヤ系を構成したが、照射部15と受光部17とにそれぞれモータを使用して互いに反対方向へ公転するようにギヤ系を構成してもよい。また、表面プラズモン共鳴部12の昇降動作は直動モータ58により実現しているが、照射部15と受光部17との公転運動に同期させたカムによっても表面プラズモン共鳴部12の昇降動作を実現でき、昇降位置は、カムの回転軸に連結したエンコーダや表面プラズモン共鳴部12の上下動を検知するセンサー等により検出すればよい。
【0065】
照射部15において、光源26にはLED ,SLD ,LD,ハロゲンランプ,アークランプ等を使用すればよい。赤外域に発光量の高い光源を用いるほどCCD カメラ35にてコントラストの高い表面プラズモン共鳴像を得ることができる。また、光にムラが生じた場合には第一レンズ27と偏光子28との間に拡散板を挿入してムラを解消させればよく、光量が少なくなった場合には、拡散板を第二レンズ29とピンホール30との間のピンホール30近くに挿入すると共に、偏光子28をピンホール30以降の光軸上に配置することにより、より高い光量のp偏光平行光束14を得ることができる。また、光源26としてSLD やLD等の干渉性の高い光源を用いた場合においてCCD カメラ35により得られた観測像上に干渉縞や回折縞がノイズとして重畳したときには前記配置した拡散板を回転させれば、光の可干渉長を短くすることができるので、ノイズを解消することができる。また、ピンホール30のホールのサイズを小さくすればする程、第三レンズ31の焦点距離を長くすればする程、平行で且つ強度にムラのない均一なp偏光平行光束14を得ることができる。さらに、受光部17においてもバンドパスフィルタを挿着すれば外光の影響を抑制できる。
【0066】
また、フローセルとして六角セル部65を設けているので、反応を見たい被測定物質11を送液しながら表面プラズモン共鳴測定を行うことができるので、反応速度に関する情報を計測により得ることができ、送液物が細胞の懸濁液であれば、予めアレイ化された抗体との反応を表面プラズモン共鳴測定することにより、細胞の表面抗原をスクリーニングすることができる。また、反応液を層流状態で送液できるので、精密な速度論的計測を実施することができる。また、六角セル部65の形成は、弾性Oリングをセルブロック62の下面に形成した六角形状の溝に押し込むことによって形成してもよい。この方法によれば、弾性Oリングの太さを変えることによりフローセルのギャップを自由に変更することができる。また、六角セル部65はペルチェ素子により温度が制御されているので、セルの温度を一定に保つことができる。さらに、被測定物質11は溝型流路69を通すようになっているので、高い精度で反応液を温度制御することができる。なお、溝型流路69は耐薬品性及び不活性を付与するために不活性高分子によりコーディングすればよい。
【0067】
さらに、上側公転検出センサー21の位置は、この位置の公転角度を特定できれば、照射部15の公転角度、即ち、見かけの入射角を特定できるので、どの位置でもよく、例えば、60°の角度位置でもよい。下側公転検出センサー22の位置は、照射部15と受光部17とが接触しない位置であればよく、下側昇降検出センサー24の位置は、直動モータ58の引き込み限界値以内の位置であればよい。
【0068】
実施の形態2.
【0069】
図17は本実施の形態における位置調整プログラムを説明するフローチャート図であり、本実施の形態は、前記実施の形態1の位置調整プログラムにおける測定する見かけの入射角φi と測定終了の見かけの入射角φt とを入力する代わりに測定する真の入射角と測定終了の真の入射角とを入力する変形例である。
【0070】
位置調整プログラムは、図17に示すように、空気の屈折率n1と、三角プリズム7の屈折率n2と、平行ガラス基板6の屈折率n3と、三角プリズム7の一辺xと、平行ガラス基板6の厚さdと、被測定物質11における画像の取り込みを行う測定開始の金属薄膜2に対する真の入射角σi ,測定終了の真の入射角σt 及び測定角度間隔Δφとを演算部78に読み込み(ステップs11)、次いで、前記実施の形態1の位置調整プログラムにおけるステップs2と同じ制御を実行し(ステップs2)、この後、当該真の入射角σi 、測定終了の真の入射角σt より式θa =60°−arcsin{(n2/n1)sin (60°−θ)}と式θ=arcsin{(n3/n2)sin θs }とを用いてθs にσi ,σt を代入して見かけの入射角φi ,測定終了の見かけの入射角φt とを算出し(ステップs12)、続いて、前記実施の形態1の位置調整プログラムにおけるステップs3〜ステップs9を実行する。
【0071】
本実施の形態によれば、真の入射角θを見かけの入射角θa に変換できるので、前記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
平行光束の照射角度が大きく変化しても屈折率によるずれを解消して異なる照射角度における反射光の強度を測定できるから、表面プラズモンと共鳴する入射光の角度が大きく異なる被測定物質を複数含む試料を測定できるイメージング表面プラズモン共鳴装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】三角プリズムに入射した光軸の屈折状態を説明する三角プリズムからなる表面プラズモン共鳴部の正面図である。
【図2】三角プリズムに入射した光軸の屈折状態を説明する三角プリズムからなる表面プラズモン共鳴部の正面図である。
【図3】三角プリズムを通過して平行ガラス基板に入射した光軸の屈折状態を説明する三角プリズムと平行ガラス基板とからなる表面プラズモン共鳴部の正面図である。
【図4】図3に図示する表面プラズモン共鳴部の移動量を説明する説明図である。
【図5】本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置の構成を説明する正面図である。
【図6】図5に図示する公転駆動部のギヤ系を示す一部省略縦断面図である。
【図7】図5に図示する表面プラズモン共鳴部を示す正面図である。
【図8】図5に図示する往復駆動部を示す側面図である。
【図9】図7に図示する被測定物質供給部におけるセルブロックの底面図である。
【図10】セルブロックの縦断面図である。
【図11】セルブロックの側面図である。
【図12】図7に図示する被測定物質供給部における温度調節ブロックの筒部を縦断面にて示す温度調節ブロックの側面図である。
【図13】温度調節ブロックの平面図である。
【図14】本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置の制御を説明するブロック図である。
【図15】本実施の形態に係るイメージング表面プラズモン共鳴装置を制御する位置調整プログラムを説明するフローチャート図である。
【図16】図15に図示する位置調整プログラムの説明図である。
【図17】本実施の形態における位置調整プログラムを説明するフローチャート図である。
【図18】特開2003-75335号公報に開示されている表面プラズモン共鳴センサ装置を用いて第二光学系から光束を照射する表面プラズモン共鳴センサ装置を説明する正面図である。
【図19】特開2001-255267 号公報に開示されているイメージング表面プラズモン共鳴装置の正面図である。
【図20】特開2001-242071 号公報に開示されている表面プラズモン共鳴角顕微鏡における半円柱形プリズムの正面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,7 三角プリズム
2 金属薄膜
3,8 中心
4,5,9 光軸
6 平行ガラス基板
10 イメージング表面プラズモン共鳴装置
11 被測定物質
12 表面プラズモン共鳴部
13 被測定物質供給部
14 p偏光平行光束
15 第一光学系照射部
16 反射光束
17 第二光学系受光部
18 公転駆動部
19 往復駆動部
20 角度検出手段
25 制御部
62 セルブロック
63 温度調節ブロック
65 六角セル部
69 溝型流路
79 回転軸の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部とを備えてなり、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときの当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させた後、前記反射光束を前記第二光学系受光部にて受光することを特徴とするイメージング表面プラズモン共鳴装置。
【請求項2】
被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部と、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出する角度検出手段と、前記見かけの入射角に基づき前記往復駆動部を駆動させて前記表面プラズモン共鳴部を往復動させる制御をする制御部とを備えてなるイメージング表面プラズモン共鳴装置であって、前記制御部が、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときに前記角度検出手段より得られた当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させることを特徴とするイメージング表面プラズモン共鳴装置。
【請求項3】
被測定物質が接触する金属薄膜を片面に形成した平行ガラス基板を三角プリズムの一側面に密着させてなる表面プラズモン共鳴部と、前記平行ガラス基板に並設されて前記被測定物質を前記金属薄膜面に供給する被測定物質供給部と、前記三角プリズムの一方側面から平行ガラス基板の金属薄膜へp偏光平行光束を照射する第一光学系照射部と、前記金属薄膜によって反射された表面プラズモン共鳴後の反射光束を三角プリズムの他方側面から受光する第二光学系受光部と、前記第一光学系照射部と前記第二光学系受光部とを前記表面プラズモン共鳴部を挟んでそれぞれ同一角度で反対方向へ公転させる公転駆動部と、前記第一光学系照射部からの距離と前記第二光学系受光部からの距離とを等距離に保持した状態で前記表面プラズモン共鳴部を往復動作させる往復駆動部と、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の金属薄膜に対する見かけの入射角を検出する角度検出手段と、前記見かけの入射角に基づき前記往復駆動部を駆動させて前記表面プラズモン共鳴部を往復動させる制御をする制御部とを備えてなるイメージング表面プラズモン共鳴装置であって、前記制御部が、前記第一光学系照射部から照射されるp偏光平行光束の光軸が前記表面プラズモン共鳴部を直進して前記金属薄膜に達する見かけの入射点と前記第一光学系照射部の公転の中心とが重なっているときに前記角度検出手段より得られた当該見かけの入射点における見かけの入射角に基づき、前記表面プラズモン共鳴部によって屈折した光軸の前記金属薄膜に対する真の入射点と当該見かけの入射点とのずれを解消する前記表面プラズモン共鳴部の移動量を得て、前記往復駆動部を駆動させて該移動量だけ前記表面プラズモン共鳴部を移動させることを特徴とするイメージング表面プラズモン共鳴装置。
【請求項4】
被測定物質供給部が、平行ガラス基板に密着して金属薄膜を含む広さの六角形状堰により形成された六角セル部と該六角セル部の相対する隅部近傍にそれぞれ被測定物質を該六角セル部に供給する供給口と該六角セル部内の被測定物質を排出する排出口とを設けてなるセルブロックから構成されている請求項3記載のイメージング表面プラズモン共鳴装置。
【請求項5】
被測定物質供給部が、平行ガラス基板に密着して金属薄膜を含む広さの六角形状堰により形成された六角セル部と該六角セル部の相対する隅部近傍にそれぞれ被測定物質を該六角セル部に供給する供給口と該六角セル部内の被測定物質を排出する排出口とを設けてなるセルブロックと、外周を螺旋状に走る溝型流路を形成した円柱部と該円柱部に密着して外設した筒部とからなる温度調節ブロックとによって構成されていて被測定物質を温度調節ブロックの溝型流路を通過させて前記セルブロックの供給口から前記六角セル部に送り込む請求項3記載のイメージング表面プラズモン共鳴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−3282(P2006−3282A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181847(P2004−181847)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(504237267)株式会社ユービーエム (1)
【Fターム(参考)】