説明

インク、インクセット、記録方法、インクタンク、並びに記録装置

【課題】 長期保管時の噴射性に優れたインク、インクセット、記録方法、インクタンク、並びに、記録装置を提供する。
【解決手段】少なくとも色材、イオン性液体、水を含有するインクであり、このインクは、インクジェット方式に特に好適に用いられる。インクセットは、このインクと及び/又は少なくとも凝集剤を含有する処理液を少なくとも含むインクセットである。このインクセットを用いた記録方法及び装置は、インク及び処理液を互いに接触するように記録媒体上に付与し、画像を形成する記録方法及び装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクセット、記録方法、インクタンク、並びに記録装置、さらには、前記インクを用いて記録された記録物、インク吐出方法、インク吐出装置に関し、特にインクジェット記録方式に用いるのに好適なインク、インクセット、記録方法、インクタンク、並びに記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、インクとして、溶媒主成分が水である水性インク、又は、溶媒主成分が有機溶媒である油性インクなどが知られている。この水性インク溶媒として用いられる水は、蒸気圧が大きいため、経時とともに蒸発し、インク中の色材が固化するという不具合が生じることが知られている。
【0003】
一方で、ノズル、スリット、多孔質フィルム等により形成されるインク吐出口からインクを吐出するインクジェット方式は、小型で安価である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを吐出する熱インクジェット方式は高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0004】
特にインクジェット用のインクの場合、インクを噴射するノズル径が小さく、インクの状態変化がインクの噴射製に対して大きく影響する傾向にある。そのため、インクをヘッドに充填した状態で、長期間放置しておくと、ノズル先端から水分が蒸発し、ノズルを閉塞させるという不具合が生じる。その結果、インクが噴射されない不吐出や、インクの噴射方向性が曲がる方向性不良などの画質劣化が生じる場合が存在する。
【0005】
これらの不具合に対して、親水性有機溶媒などを保湿剤としてインクに添加し、水分減少時の色材の安定性を高める方法が知られている。(特許文献1等)
親水性溶媒は、沸点を指標に、沸点の高い高沸点溶媒、及び、沸点が低い低沸点溶媒などに分けられる。まず、親水性溶媒として、高沸点有機溶媒を用いた場合について説明する。高沸点有機溶媒は揮発しにくく、保水性も高いために、インク中の水分蒸発を抑制することができ、長期保管時の噴射性に有利である。但し、高沸点溶媒は粘度が高く、インク粘度も高くなる傾向にあるため、特にインクジェット方式に用いる場合、噴射性が問題となる場合がある。次に、親水性溶媒として、低沸点溶媒を用いた場合について説明する。低沸点溶媒は粘度が低く、インク粘度も低くすることが可能である。従って、特にインクジェット方式などで印字する場合、噴射性で問題が生じにくい傾向にある。その反面、低沸点溶媒は、溶媒自身が揮発するため、長期間放置した場合には、水だけでなく、低沸点溶媒も揮発し、色材が凝集する場合がある。特に、インクジェット方式においては、ノズルが微細であるため、色材凝集物がノズルを閉塞することにより、不吐出や方向性不良等の画質欠陥を引き起こすこととなる。
【0006】
上述したように、従来の方法では、インク粘度が低い状態で、長期間を保持するという観点では充分に満足できるものは得られておらず、従って、初期噴射性と長期保管時の噴射性を同時に満足できるものは得られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特許3033069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、長期間保持した場合にもインク特性が安定し、その結果、初期噴射性と長期保管時の噴射性を両立するインク、インクセット、記録方法、インクタンク、並びに、記録装置、さらには、前記インクを用いて記録された記録物、インク吐出方法、インク吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明の構成を満たすことにより長期間保持した場合にもインク特性が安定し、その結果、初期噴射性と長期保管時の噴射性を同時に満足するという結論に至った。即ち、
本発明は、少なくとも色材、イオン性液体、水を含有するインク、該インク及び処理液を含むインクセット、該インク又は該インクを含むインクセットを用いた記録方法、インクタンク、並びに、記録装置、さらには、前記インクを用いて記録された記録物、インク吐出方法、インク吐出装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクに含有されるイオン性液体の特性によって、長期間保持時のインク特性の変化がなく、この結果、特にインクの初期噴射性に優れ、かつ長期間保持後のインクの噴射性に優れているため、このインクによって得られるパターンまたは画像が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、詳細に説明する。
一般的に塩は常温で固体であり、数百度に加熱することで溶融することが知られている。それに対し、所定の有機陽イオンと陰イオンの組み合わせにおいて、常温で液体状態となる所謂イオン性液体が見出された。このイオン性液体が常温付近の温度で液体となる理由としては、イオンの大きさ、及び、イオン間の静電相互作用が関係しているものと推定される。更に、該イオン性液体は、蒸気圧が低く、不揮発性であり、同時に、不燃性・難燃性であるという特徴も有する。これは、分子間に静電的相互作用が働くため、イオンが拘束されるためであると推測される。
【0012】
本発明者は、イオン性液体をインク溶媒として用いることで、上記問題が解決可能であることを見出し本発明に到達した。そのメカニズムは明らかとはなっていないが、次のように推測している。
まず、インク特性として要求される特性について説明する。インク要求特性としては、インク粘度を低くすることが挙げられる。これは、インクを記録物上に塗布した場合に、均一な薄層画像を形成するために必要となるためである。特に、インクジェット方式に用いる場合においては、インクの噴射性を確保するためにも重要となる。これは、主として二つの因子が想定されており、その一つは、ノズルからの噴射にインク粘度に応じたエネルギーが必要となることであり、インク粘度を低くすることで噴射に要するエネルギーを低減することが可能となる。二つ目は、インク噴射後にノズル部分にインクタンクからインクが供給される際のインク供給時間である。インクジェット方式において、インク供給はメニスカスによる毛管への液体の浸透力を用いており、インク粘度を低くすることで、ノズル先端へのインク供給時間を短くすることができ、インク噴射性を改善することが可能となると推定している。
【0013】
本発明で用いられるイオン性液体は有機陽イオンと陰イオンの組み合わせにより、粘度を低く調整することが可能となる。これは、有機陽イオンと陰イオンの分子の大きさ、分子間の相互作用を適切に調整することで実現可能となるものと想定している。上述したように、特にインクジェット方式に用いるインクの場合、噴射時のエネルギーの観点から、並びに、インク供給の観点から、インクは低粘度であることが好ましい。従って、粘度を低く保つことが可能な本発明に係るインクは、初期噴射性に優れていると考えられる。
【0014】
一方、インクは大気下に放置すると、溶媒が揮発してインク組成が変化する。特に、水性インクの場合、インクの主成分は水であり、この水が蒸発することで、インク粘度が増粘する、又は、インク中の色材が凝集するという不具合が生じる。インク粘度が増粘することで、薄層画像の形成に不具合が生じる。一方、インクジェット方式においてはインク噴射性に不具合が生じ、更に、色材凝集物が微細なノズルを閉塞させるという不具合も引き起こす。このように、長期保管時のインク組成、並びに、インク物性変化は、噴射性に大きく影響するものであるが、本発明で用いられるイオン性液体は蒸気圧が低く、揮発しにくいという特徴を有している。更に、有機陽イオンと陰イオンの組み合わせを調整することで、水との親和性が大きいイオン性液体も提供可能である。従って、保湿剤が揮発しないため、ノズル先端での過度の水分蒸発を抑制することが可能となり、長期間保管しても、長期保管時の噴射性を改善することが可能となった。
このように、従来、初期噴射性と長期保管時の噴射性という相反する特性を、同時に満足することが可能となった。
【0015】
続いて、本発明について詳しく説明する。
本発明において、インクは、少なくとも、色材、イオン性液体、水を含有する。
本発明に用いられる色材としては、染料、顔料、着色微粒子など着色により画像を形成する機能を有するものであれば、何れでもかまわない。
【0016】
本発明において使用される染料としては、水溶性染料、分散染料のいずれでも構わない。
水溶性染料の具体例としては、C.I.Direct Black−2,−4,−9,−11,−17,−19,−22,−32,−80,−151,−154,−168,−171,−194,−195、C.I.Direct Blue−1,−2,−6,−8,−22,−34,−70,−71,−76,−78,−86,−112,−142,−165,−199,−200,−201,−202,−203,−207,−218,−236,−287,−307,C.I.Direct Red−1,−2,−4,−8,−9,−11,−13,−15,−20,−28,−31,−33,−37,−39,−51,−59,−62,−63,−73,−75,−80,−81,−83,−87,−90,−94,−95,−99,−101,−110,−189,−227、C.I.Direct Yellow−1,−2,−4,−8,−11,−12,−26,−27,−28,−33,−34,−41,−44,−48,−58,−86,−87,−88,−132,−135,−142,−144,−173、C.I.Food Black−1,−2、C.I.Acid Black−1,−2,−7,−16,−24,−26,−28,−31,−48,−52,−63,−107,−112,−118,−119,−121,−156,−172,−194,−208、C.I.Acid Blue−1,−7,−9,−15,−22,−23,−27,−29,−40,−43,−55,−59,−62,−78,−80,−81,−83,−90,−102,−104,−111,−185,−249,−254、C.I.Acid Red−1,−4,−8,−13,−14,−15,−18,−21,−26,−35,−37,−52,−110,−144,−180,−249,−257,−289、C.I.Acid Yellow−1,−3,−4,−7,−11,−12,−13,−14,−18,−19,−23,−25,−34,−38,−41,−42,−44,−53,−55,−61,−71,−76,−78,−79,−122などが挙げられる。
【0017】
次に、分散染料の具体例としては、C.I.Disperse Yellow−3、−5、−7、−8、−42、−54、−64、−79、−82、−83、−93、−100、−119、−122、−126、−160、−184:1、−186、−198、−204、−224、C.I.Disperse Orange−13、−29、−31:1、−33、−49、−54、−66、−73、−119、−163、C.I.Disperse Red−1、−4、−11、−17、−19、−54、−60、−72、−73、−86、−92、−93、−126、−127、−135、−145、−154、−164、−167:1、−177、−181、−207、−239、−240、−258、−278、−283、−311、−343、−348、−356、−362、C.I.Disperse Violet−33、C.I.Disperse Blue−14、−26、−56、−60、−73、−87、−128、−143、−154、−165、−165:1、−176、−183、−185、−201、−214、−224、−257、−287、−354、−365、−368、C.I.Disperse Green−6:1、−9などが挙げられる。
【0018】
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料を使用することも可能である。更には、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0019】
本発明における顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Rav
en2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1
080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1, Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
シアン色にはC.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
マゼンタ色は、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−184,−202、C.I.Pigment Violet−19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
黄色は、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−155,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
また、本発明において、水に自己分散可能な顔料を用いることも可能である。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で安定に分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0024】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、Cab−o−jet−300、IJX−444、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0025】
更に、色材として樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
また、樹脂を染料・顔料などで着色したものを分散させた所謂着色微粒子を使用することも可能である。
【0026】
イオン性液体は塩を溶解しやすい性質を有しており、染料を溶解させやすい傾向にある。一方、色材に顔料、着色微粒子を用いた場合、顔料又は着色微粒子の表面の親水性・疎水性バランス、表面官能基種、及び、表面官能基量とイオン性液体とバランスを適切に調整することで分散することが可能となる。色材に顔料を使用した場合、顔料としては、自己分散顔料又は、高分子分散剤を用いて分散された顔料、マイクロカプセル顔料などが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる色材は、インク全質量に対し0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、更に好ましくは1質量%以上20質量%以下の範囲で使用される。インク中の色材量が0.1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、色材量が50質量%よりも多い場合には、インクの噴射性が不安定となる場合が存在した。
【0028】
本発明においては、色材を分散させるために分散剤を用いても構わない。分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用できる。
例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、酢酸ビニル、酢酸アリル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、ビニルアルコール、並びに上記化合物の誘導体等が挙げられる。
【0029】
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体が高分子分散剤として使用される。具体的には、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0030】
本発明においてインクに使用される分散剤は、重量平均分子量で2,000〜50,000のものが好ましい。分散剤の分子量が2,000未満の場合、色材が安定に分散しない場合が存在し、一方、分子量が50,000を超える場合には、インクの粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合が存在した。より好ましい重量平均分子量は、3,500〜20,000である。
【0031】
本発明においてインクに添加する分散剤は、色材に対する添加量比率が、質量比で1%以上100%以下の範囲で使用される。添加量比率が100%を超える場合には、インク粘度が高くなり、インクの噴射特性が不安定となる場合が存在した。一方、添加量が1%未満の場合には、色材の分散安定性が低下する場合が存在した。分散剤添加量としては、2.5%以上75%以下がより好ましく、更に好ましくは、5%以上50%以下である。
【0032】
本発明においてインクにおける色材の体積平均粒子径は30nm以上250nm以下であることが好ましい。色材粒子の体積平均粒子径とは、色材そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、体積平均粒子径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。尚、即提示に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には色材の密度を用いた。より好ましい体積平均粒子径は、60nm以上250nm以下であり、更に好ましくは150nm以上230nm以下である。インク中の粒子の体積平均粒子径が30nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、色材の分散安定性が確保できない場合が存在した。
【0033】
本発明に使用されるイオン性液体としては、有機陽イオンとしては、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、ピペリジニウム系、4級アンモニウム系、ホスホニウム系などが挙げられる。
【0034】
イミダゾリウム塩は下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
【0035】
【化1】

【0036】
一般式(1)中、R1〜R3 は水素、アルキル基又はアルコキシ基を示し、アルキル基又はアルコキシ基としては炭素数1〜20であることが好ましく,特に1〜8が好ましい。
具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩などが挙げられる。これらのなかで、特に1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましい。
【0037】
ピリジニウム塩は下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
【0038】
【化2】

【0039】
一般式(2)中、Rは、水素、アルキル基又はアルコキシ基を示し、アルキル基又はアルコキシ基としては炭素数1〜20であることが好ましく,特に1〜8が好ましい。
具体例としては、1-エチルピリジニウム塩、1-ブチルピリジニウム塩、1-ヘキシルピリジニウム塩等が挙げられ、これらのなかで、特に1-エチルピリジニウム塩、1-ブチルピリジニウム塩が好ましい。
【0040】
4級アンモニウム塩は下記一般式(3)で表される。
一般式(3)
【0041】
【化3】

【0042】
一般式(3)中、R1〜R4 は、水素、アルキル基又はアルコキシ基を示し、アルキル基又はアルコキシ基としては炭素数1〜20であることが好ましく,特に1〜8が好ましい。
具体的には脂肪族4級アンモニウム塩などが挙げられる。具体例としては、トリメチル-ヘキシルアンモニウム塩、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩などが挙げられ、これらのなかで、特にN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム塩が好ましい。
【0043】
下記一般式(4)で表されるピペリジニウム塩を用いることも可能である。
一般式(4)
【0044】
【化4】

【0045】
一般式(4)中、R1〜R2は水素またはアルキル基を示し、アルキル基としては炭素数1〜20のアルキル基が好ましく,特に1〜8が好ましい。
【0046】
なお、一般式(1)〜(4)において、アルキル基の一部に、カルボン酸基又はスルホン酸基を有するZwitterionic型のイオン性液体を使用することも可能である。
【0047】
また、ピロリニウム塩系、フェニルインドリウム塩系、アルキルインドリウム塩系、アルキルカルバゾリウム塩系、ピラゾリウム塩系、ピロリジニウム塩系などを用いることも可能である。
【0048】
更に、陰イオンとの組合わせにより得られる化合物の融点を低くする設計が可能であることから、有機陽イオンとしてはイミダゾリウム系、ピリジニウム系、ピペリジニウム系が好ましく、4級アンモニウム系においてはアルキル鎖長が長い化合物が好ましい。具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウム塩、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム塩、1-ブチルピリジニウム塩、1-ヘキシルピリジニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、ピペリジニウム塩などが好ましい。
【0049】
一方、陰イオンとしては、リチウムイオン、臭素イオン、塩素イオン、乳酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリフルオロメタンスルフォネートなどが挙げられる。
更に、材料の毒性などの安全性、及び、水への溶解度の観点から、陰イオンとしては、リチウムイオン、臭素イオン、塩素イオン、乳酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリフルオロメタンスルフォネートが好ましく、更には、リチウムイオン、臭素イオン、塩素イオン、乳酸イオンが好ましい。
【0050】
イオン性液体の具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-エチルピリジニウムブロマイド、1-エチルピリジニウムクロライド、1-ブチルピリジニウムブロマイド、1-ブチルピリジニウムクロライド、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-ヘキシルピリジニウムブロマイド、1-ヘキシルピリジニウムクロライド、1-ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレイト、1-ヘキシルピリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレイト、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリメチルヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリメチルオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、2-メチル-1-ピロリニウムヘキサフルオロボレート、1-エチル-2-フェニルインドリウムヘキサフルオロボレート、1,2-ジメチルインドリウムヘキサフルオロボレイト、1-エチルカルバゾリウムヘキサフルオロボレート、1-メチルピラゾリウムヘキサフルオロボレート、1-メチルピロリジニウムヘキサフルオロボレイトなどが挙げられる。
【0051】
更に、材料の安全性、並びに、水への溶解度の観点から、イオン性液体としては以下の化合物が好ましい。また、特にインクジェット方式を用いる場合には、噴射性はインク粘度に影響するため、インク噴射性を確保するという効果も有する。具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-エチルピリジニウムブロマイド、1-エチルピリジニウムクロライド、1-ブチルピリジニウムブロマイド、1-ブチルピリジニウムクロライド、1-ヘキシルピリジニウムブロマイド、1-ヘキシルピリジニウムクロライドなどが好ましい。
【0052】
本発明において、イオン性液体が、有機陽イオンと陰イオンからなる化合物であり、かつ、該化合物の融点が25℃以下であることが好ましい。イオン性化合物の融点が25℃を超える場合、低温時に固化するため、インクが記録媒体に正常に付与されない場合が存在した。より好ましくは、イオン性液体の融点は20℃以下であり、更に好ましくは10℃以下である。
【0053】
本発明において、イオン性液体の分子量は1000未満であることが好ましく、より好ましくは750未満、更に好ましくは500未満である。イオン性液体の分子量が1000以上の場合、インク粘度が高くなり、特にインクジェット方式でインクを付与する場合、インクを正常に噴射することが出来ない場合が生じた。
【0054】
本発明において、イオン性液体の添加量はインク全体に対し質量比で1質量%以上75質量%未満であることが好ましく、より好ましくは、5質量%以上60質量%未満であり、更に好ましくは、10質量%以上30質量%未満である。イオン性液体の添加量が1質量%未満の場合、長期保管時の噴射性が低下する場合が存在した。一方、イオン性液体の添加量が75質量%を超える場合、記録媒体上での乾燥性が遅くなる場合が存在した。
【0055】
本発明に使用されるイオン性液体としては、水100gに対する溶解度が5g以上であることが好ましい。より好ましくは7.5g以上であり、更に好ましくは、10g以上である。水100gに対する溶解度が5g未満の場合、イオン性液体と水とが分離し、インク内での色材濃度に偏りが生じる場合が存在した。その結果、特にベタ画像部において、ムラが発生した。
【0056】
本発明において、イオン性液体の沸点としては400℃以上であることが好ましい。
より好ましくは450℃以上であり、更に好ましくは、500℃以上である。沸点が400℃未満の場合、長期保管時の噴射性が低下する場合が存在した。
【0057】
本発明のインクに用いる水は、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水など何れも使用できるが、インクでの保管安定性や、目詰まり防止の点で、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水が好ましく、特に好ましくはイオン交換水、純水、超純水が用いられる。
【0058】
本発明のインクは、インクジェット方式によりインクを付与する機構を備えたインクジェット用インクとして用いられることが好ましい。インクジェット方式では、インク粘度が高くなった場合、正常に噴射できない場合が存在する。本発明のインクは、イオン性液体及び色材を調整することで、インクジェット方式で噴射可能な粘度に設定することが可能である。インクジェット用インクとして適している粘度は、1mPa・s以上50mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは、1.2mPa・s以上50mPa・s以下であり、更に好ましくは1.5mPa・s以上30mPa・s以下である。粘度が50mPa・sを超える場合、インクが正常に噴射されない場合が存在した。
【0059】
本発明におけるインク、並びに、インクセットには有機溶媒を添加することも可能である。例えば、グリコール類、グリコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類等の有機溶媒が使用される。
次に、溶媒の具体例について説明する。
グリコール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
グリコール誘導体の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒の具体例としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
上述の溶媒の中でも、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のグリコール類、及び、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のグリコール誘導体等が好ましく用いられる。
【0060】
本発明においてインクに使用される有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性有機溶媒の含有量としては、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下で使用される。25質量%よりも多い場合には、インクの粘度が大きくなり、インクの噴射特性が不安定になる場合が存在した。
【0061】
本発明において、界面活性剤を添加することも可能である。界面活性剤は、イオン性液体への溶解性を考慮し、適切に選択する必要がある。以下に、界面活性剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明においてインクには、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は、両性界面活性剤などが含まれる。その他、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することも出来、更には、上記分散剤を使用することも可能である。
【0062】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型など挙げられる。ポリエチレングリコール型としては、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレングリコールアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。一方、多価アルコール型としては、グリセロール脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、アルカノールアミン類脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0063】
例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。具体的にはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が使用でき、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
【0065】
両性界面活性剤としては、アミノ酸型及びベタイン型などのカルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型などが挙げられる。また、アラニン型、アミドプロピルベタイン型、スルホベタイン型、アミドアミンオキシド型、イミダゾリン型なども存在し、具体的には、アルキルベタイン、スルホベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリドンベタイン、アミドプロピルベタイン、アミノジプロピオン酸塩等を用いることができる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0067】
本発明において、界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して使用しても構わない。本発明におけるインクに添加する界面活性剤量は、インク全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.1〜3質量%の範囲で使用される。添加量が5質量%以上の場合には、光学濃度、及び、インクの保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0068】
次に処理液について説明する。本発明においては、上記インクと併用する処理液を用いることも出来る。処理液は、少なくとも前記インク中の成分を凝集させる機能を有するものであり、凝集剤として、例えば、pKaが4.5以下の有機酸、無機電解質、有機アミン塩などが使用される。
【0069】
本発明において使用されるpKaが4.5以下の有機酸とは、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(5)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
一般式(5)
【0070】
【化5】

【0071】
一般式(5)おいて、R1としてアルキル基、Xは、O、CO、NH、NR2(R2 はアルキル基を示す)、S、又はSO2を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。lは1〜5の整数、nは3〜7の整数、mは1又は2である。
【0072】
ここで、一般式(5)中、Xとして好ましくは、CO、NH、NR,Oであり、より好ましくは、CO、NH、Oである。Mとして好ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より好ましくは、H、Na,Kであり、更に好ましくは、水素原子である。nとして好ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より好ましくは、5員環の場合である。一般式(5)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。R1として好ましくは、CH3、C25、C24OHである。
【0073】
一般式(5)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
【0074】
有機酸としては、好ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0075】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0076】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
より好ましくは、多価金属塩が使用される。これは、多価金属塩はインク中色材の凝集能がより大きいと考えられるためである。
【0077】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0078】
アミン化合物としては、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が好ましい。また、分子量が500以上であるアミン化合物も有効に使用できる。
【0079】
pKaが4.5以下の有機酸、無機電解質、有機アミン化合物等の凝集剤は、単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、本発明液体中における凝集剤の有機酸の添加量としては、処理液全量に対し、0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%で使用される。処理液中における凝集剤の添加量が0.01質量%未満の場合には、インク接触時において顔料の凝集が不充分となり、光学濃度、滲み、色間滲みが改善されない場合が存在し、一方、添加量が30質量%を超える場合には、長期保管時の噴射性が悪化する場合が存在した。
【0080】
本発明において、上述したインクと、少なくとも凝集剤を含有する処理液とを用いたインクセットを用いることで、光学濃度、滲みなどの画質を改善することも可能である。これは、インクと処理液を記録媒体上で混合することで、インク中の色材を凝集させるためであると考えている。即ち、記録媒体上の色材濃度を高くすることで、光学濃度を高くすることが可能となり、色材がインクとともに拡散しないため、滲みを改善することが可能となると推測している。
【0081】
処理液はインクと同様、イオン性液体、有機溶媒、又は、水などを使用することができる。処理液中におけるイオン性液体、有機溶媒、及び水の含有量の総量は、1質量%以上95質量%以下、好ましくは、1質量%以上60質量%以下、より好ましくは5質量%以上40質量%以下で使用される。液体中の水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、95質量%よりも多い場合には、初期噴射性、又は、長期保管後の噴射性が不安定になる場合が存在した。
【0082】
処理液はインクと同様の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の添加量はインク全質量に対して10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%の範囲で使用される。添加量が10質量%以上の場合には、光学濃度、及び、処理液の保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0083】
処理液中に色材を含有させることも可能である。処理液に含有させる色材としては、染料、表面にスルホン酸又はスルホン酸塩を有する顔料、自己分散顔料が好ましい。これら色材は、凝集剤との共存時においても色材が凝集しにくいためと考えられる。このような色材を使用することにより、処理液の保存安定性が悪化しない。染料、表面にスルホン酸又はスルホン酸塩を有する顔料、及び自己分散顔料は、インクの顔料として説明したものと同様のものが使用できる。
【0084】
処理液に顔料を用いる場合には、顔料粒子の体積平均粒子径は、30nm以上250nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上200nm以下であり、更に好ましくは75nm以上175nm以下である。液体中の粒子の体積平均粒子径が30nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、顔料の分散安定性が確保できない場合が存在した。
【0085】
ここで、インクジェット用インクと処理液との混合液における5μm以上の粗粒数は、1,000個/μL以上5,000,000個/μL以下であることが好ましい。より好ましくは2,500個/μL以上1,000,000個/μL以下であり、更に好ましくは5,000個/μL以上500,000個/μL以下である。インクジェット用インクと処理液との混合液における5μm以上粗粒数が、1,000個/μL未満の場合には、光学濃度が低下する場合が存在した。5μm以上粗粒数が、5,000,000個/μLを超える場合には、凝集力が強すぎ、インク広がりが抑制されるため、白スジなどが発生し、光学濃度も低下する場合が存在することが判明した。
【0086】
なお、インクと処理液との混合液における5μm以上粗粒数は、インクと処理液を質量比で1:1の割合で混合し、撹拌しながら2μLを採取し、Accusizer TM770 Optical Particle Sizer (Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。尚、測定時のパラメーターとして、分散粒子の密度には顔料の密度を入力した。この顔料の密度は、顔料分散液を加熱、乾燥させることによって得られた紛体を比重計、又は比重ビン等を用いて測定することにより求めることができる。
【0087】
その他、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
【0088】
(インクジェット記録物)
本発明にかかるインク、インクタンク、記録方法、記録装置を用いて作成した画像は、目詰りによる画像欠陥が少なく、良好な画質を提供することが可能である。
【0089】
(インクジェット用インクタンク)
本発明にかかるインクジェット用インクタンクとしては、例えば、特開2001−138541等に記載のインクタンクに適用することができる。この場合、インクタンク20にインクを充填し、記録ヘッド18からインク吐出する際においてもインクタンク20におけるける長期保管時のインク特性変化が抑制され、特に長期保管時の記録ヘッド18からの噴射性において充分満足できるものとなる。
【0090】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクジェット用インクと処理液とを互いに接触させるように印字するものである。また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インクセットの各液体を記録媒体に吐出する記録ヘッドを備えるものである。これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体に記録材料を印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
【0091】
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
【0092】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、1画素を形成するために要するインクジェット用インク付与量と処理液付与量との質量比は、1:20〜20:1であることが好ましい。より好ましくは1:10〜10:1であり、さらに好ましくは、1:5〜5:1である。インクジェット用インク付与量が処理液付与量に対して少なすぎたり、多すぎたり場合には、凝集が不充分となり、光学濃度の低下、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。ここで、画素とは、所望の画像を主走査方向、及び、副走査方向に対してインクを付与可能な最小距離で分割した際に構成される格子点であり、夫々の画素に対して適切なインクセットを付与することで、色及び画像濃度が調整され、画像が形成される。
【0093】
また、インクジェット用インクと処理液とは互いに接触するように、記録媒体上に付与されるが、インクジェット用インクと処理液とが互いに接触することで、凝集剤の作用によりインクが凝集し、発色性、ベタ部ムラ、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れる記録方法となるからである。接触していれば、互いに隣接するよう付与されても、覆い被さるように付与されても、どちらでもよい。
【0094】
また、記録媒体への付与の順番は、処理液を付与した後、インクジェット用インクを付与する。処理液を先に付与することで、インクジェット用インクの構成成分を効果的に凝集させることが可能となるからである。処理液を付与した後であれば、いかなる時期にインクジェット用インクを付与してもかまわない。好ましくは、処理液を付与してから0.5秒以下である。
【0095】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インクジェット用インク及び処理液ともに、1ドロップ当たりの液体質量は0.01ng以上25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、0.5ng以上15ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、第1の液体及び第2の液体の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。1ドロップ当たりの液体質量が0.01ng未満の場合には、噴射安定性が悪化する場合が存在した。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
【0096】
本発明において、前記インクタンク、及び/又は、前記インク付与機構の少なくとも一部分を加熱する機構を備えた記録装置を用いることも出来る。本方法は、融点が25℃以上のイオン性液体を用いたインクを融点以上に加熱し、記録媒体に付与する場合などに有効である。特に、インク付与機構としてインクジェット方式を用いた場合、インク粘度が高くなると噴射性が低下するという問題が生じる場合がある。そこで、加熱することでインク粘度を低くし、記録媒体に付与する方法が知られているが、一般的なインク溶媒は、加熱により揮発しやすくなり、目詰まりなどの噴射性に問題が生じる場合が存在した。本発明のようにインク溶媒にイオン性液体を用いた場合、イオン性液体は蒸気圧が低いため、高温に加熱しても揮発せず、長期放置の噴射性においても問題が生じないという特徴を有する。
【0097】
本発明において、前記インク付与機構と前記記録媒体間に電位差を設けた記録装置を用いることも出来る。インク付与機構と記録媒体間に電位差を設けることで、電界の作用でインクの飛翔速度、方向性が改善されるためである。本発明のように、インク溶媒としてイオン性液体を用いた場合、電界による作用を受けやすく、飛翔速度、方向性の両面で改善効果が大きい傾向にある。
【0098】
本発明において、記録媒体上に付与したインクの少なくとも一部を記録媒体から除去する機能を有する記録装置を用いることが出来る。通常のインクにおいて、インク溶媒は、大気中に揮発することで、乾燥、定着が進行する。本発明のように、インク溶媒としてイオン性液体を用いた場合、イオン性液体は揮発しにくいため、記録媒体中に留まり、乾燥、定着しにくいという特徴を有する。そのため、記録媒体上からインクの少なくとも一部を除去する機能を有することで、乾燥性、定着性が改善される。この除去方式としては、記録媒体に電界を掛けて、インクを除去する方式、記録媒体に水又は有機溶媒を接触させ、インク溶媒を除去する方法などが考えられる。
なお、記録媒体に塗布されたイオン性液体の分解物質をさらに塗布して固化または定着させたり、記録媒体上のイオン性液体を吸引して回収してもよい。
【0099】
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、実質的に同様の機能を有する部材については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び液体組成物を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)とそれぞれのサブインクタンク5へインク及び処理液を補給するメインインクタンク4とから構成されている。
【0100】
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラで構成された紙送り機構であり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に装置100内部に搬送する。
【0101】
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、インクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
【0102】
インクタンク5はそれぞれ異なる色のインク又は液体組成物が吐出可能に格納されたインクタンク51、52、53、54、55を有している。これらには、例えば、インクジェット用インクとして、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)、及び、処理液が納められている。無論、処理液を用いない場合、又は、処理液が色材を含有する場合は、処理液用のインクタンクを設ける必要はない。
【0103】
サブインクタンク5には、それぞれ排気孔56と補給孔57とが設けられている。そして、記録ヘッド3が待機位置(もしくは補給位置)に移動したとき、排気孔56及び補給孔57に補給装置15の排気用ピン151及び補給用ピン152がそれぞれ挿入されることで、サブインクタンク5と補給装置15とが連結可能となっている。また、補給装置15はメインインクタンク4と補給管16を介して連結されており、補給装置15によりメインインクタンク4から補給孔57を通じてサブインクタンク5へとインク又は処理液を補給する。
ここで、メインインクタンク4も、同様にそれぞれ異なる色のインク及び処理液が納めされたメインインクタンク41、42、43、44、45を有している。そして、これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液が満たされ、それぞれが画像形成装置100に脱着可能に格納されている。
【0104】
さらに、図2に示すように、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各インクタンクから所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
【0105】
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
【0106】
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
【0107】
メンテナンスユニット14は、チューブを介して減圧装置(図示せず)に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続されており、記録ヘッド3のノズル内を減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。このメンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。
【0108】
図3は本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図である。図4は、図3のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置101は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。
【0109】
図3及び図4に示す画像形成装置101は、記録ヘッド3の幅が記録媒体1幅と同じ又はそれ以上であり、キャリッジ機構を持たず、副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)の紙送り機構(本実施形態では搬送ローラ2を示しているが、例えばベルト式の紙送り機構でもよい)で構成されている。
【0110】
また、図示しないが、インクタンク51〜55を副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)に順次配列させるのと同様に、各色(処理液も含む)を吐出するノズル群も副走査方向に配列させている。これ以外の構成は、図1及び2に示す画像形成装置100と同様なので説明を省略する。なお、図中、記録ヘッド3は移動しないので、サブインクタンク5は補給装置15と常時連結した構成を示しているが、インク補給時に補給装置15と連結する構成でもよい。
【0111】
図3及び図4に示す画像形成装置101では、記録媒体1の幅方向(主走査方向)の印字を記録ヘッド3により一括で行なうため、キャリッジ機構を持つ方式に比べ、装置の構成が簡易であり、印字速度も速くなる。
【0112】
本発明に係るインク、インクセット、インクタンク、記録物、記録方式、及び、記録装置は、普通紙などの浸透紙だけでなく、アート紙、フィルム、及び、金属等の非浸透性媒体上に画像を形成するものに適用することが可能である。従って、印刷物、電気配線基板作成技術、カラーフィルター、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置作成技術、医療用フィルム記録、DNA情報記録、壁紙又は化粧版などの建材材料などの分野で用いることが可能である。
【0113】
本発明にかかるインクは、インクジェット記録方式に最も有効であるが、インクジェット記録方式以外にもオフセット印刷、グラビヤ印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などに適用することができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0115】
<インク作成方法1>
顔料100gに対してイオン交換水500gを加え、超音波ホモジナイザーを掛けた。遠心分離装置にて遠心処理を行い、上澄み液を除去した。この作業を3回繰り返した後、得られた顔料を減圧下で乾燥させた。
初期顔料分散体中の顔料濃度が15質量%となるように、イオン交換水、顔料分散剤を添加し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5に調整した。この顔料分散体に、超音波ホモジナイザーを掛け、顔料を分散した。この分散液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分(全量に対して20%)を除去することで、顔料分散液を得た。所定のインク組成となるように、溶媒、顔料分散液、その他添加剤を添加し、攪拌する。得られた液体を5μmフィルターを通過させることにより、所望の液体を得た。
【0116】
<インク作成方法2>
顔料100gに対してイオン交換水500gを加え、超音波ホモジナイザーを掛けた。遠心分離装置にて遠心処理を行い、上澄み液を除去した。この作業を3回繰り返した後、得られた顔料を減圧下で乾燥させた。
スルファニル酸水溶液を加温し、撹拌しながら上記処方により得られた顔料100gを加えた。この混合物を撹拌しながら室温まで冷やし、14gの濃硝酸を滴下した。この溶液にNaNO2水溶液10gを添加し、反応が終了するまで撹拌した。この顔料に対し、脱塩処理を行なった。得られた表面処理顔料を顔料濃度が12質量%となるようにイオン交換水を加え、pHを7.5に調整した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散を行なった。この分散液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分(全量に対して20%)を除去することで、顔料分散液を得た。所定のインク組成となるように、溶媒、顔料分散液、その他添加剤を添加し、攪拌する。得られた液体を5μmフィルターを通過させることにより、所望の液体を得た。
【0117】
<インク作成方法3>
所定の溶媒に、色材、その他添加剤を添加し、攪拌する。得られた液体を5μmフィルターを通過させることにより、所望の液体を得た。
【0118】
(インクA)
インク作成方法1に従い、インクを作製した。
―組成―
・Mogul L(キャボット社製) : 4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体 : 1質量%
・1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ブロマイド(分子量191 / 融点25℃以下)
: 25質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 69質量%
【0119】
(インクB)
インク作成方法2に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Blue -15:3 : 4質量%
・1-ヘキシルピリジニウム クロライド(分子量 199 / 融点25℃以下) : 72質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 23質量%
【0120】
(インクC)
インク作成方法1に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Red −122 : 5質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体 : 1質量%
・1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム クロライド(分子量 161 / 融点25℃以下)
: 10質量%
・グリセリン : 10質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・水 : 73質量%
【0121】
(インクD)
インク作成方法1に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Yellow −128 : 4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体 : 1質量%
・N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)テトラフルオロボレート (分子量 233 / 融点25℃以下) : 10質量%
・ジエチレングリコール : 10質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・水 : 74質量%
【0122】
(インクE)
インク作成方法1に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Yellow −74 : 4質量%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体 : 1質量%
・MP-200(TREKSTAR社製) (分子量 422 / 融点11℃ ): 6質量%
・1,2-ヘキサンジオール : 18質量%
・ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル : 1質量%
・イオン交換水 : 70質量%
【0123】
(インクF)
インク作成方法3に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Direct Blue 199 : 4質量%
・1-ブチルピリジニウムクロライド (分子量 172 / 融点25℃以下)
: 77.5質量%
・ポリオキシエチレンステアリルエーテル : 1質量%
・N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 : 1.2質量%
・水酸化ナトリウム : 0.6質量%
・イオン交換水 : 15.7質量%
【0124】
(インクG)
インク作成方法2に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Red −122 : 4質量%
・1-ブチルピリジニウム トリフルオロメタンスルフォネート (分子量 285 / 融点25℃以下) : 10質量%
・ジグリセリンエチレンオキサイド付加物 : 15質量%
・ポリオキシエチレンステアリルエーテル : 1質量%
・イオン交換水 : 70質量%
【0125】
(インクH)
インク作成方法2に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Pigment Red −122 : 4質量%
・1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ブロマイド(分子量190 / 融点25℃以下)
: 15質量%
・ジグリセリンエチレンオキサイド付加物 : 10質量%
・ポリオキシエチレンステアリルエーテル : 1質量%
・イオン交換水 : 70質量%
【0126】
(インクI)
インク作成方法3に従い、インクを作製した。
―組成―
・Cabojet-300 : 4質量%
・エチレングリコール : 30質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 65質量%
【0127】
(インクJ)
インク作成方法3に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Direct Blue 199 : 4質量%
・イソプロピルアルコール : 75質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 : 1.2質量%
・水酸化ナトリウム : 0.6質量%
・イオン交換水 : 18.2質量%
【0128】
(インクK)
インク作成方法3に従い、インクを作製した。
―組成―
・C. I. Direct Blue 199 : 4質量%
・ポリアリルアミン酢酸塩(平均分子量5000) : 75質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 : 1.2質量%
・水酸化ナトリウム : 0.6質量%
・イオン交換水 : 18.2質量%
【0129】
(処理液A)
―組成―
・ジエチレングリコール : 10質量%
・2−フランカルボン酸(pKa=2.4) : 8質量%
・水酸化ナトリウム : 0.8質量%
・ジグリセリンエチレンオキサイド付加物 : 8質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 残部
【0130】
(処理液B)
―組成―
・ジエチレングリコール : 15質量%
・硝酸マグネシウム・6水和物 : 10質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 残部
【0131】
(処理液C)
―組成―
・ジエチレングリコール : 10質量%
・ポリアリルアミン : 12質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 : 1質量%
・イオン交換水 : 残部
【0132】
尚、上記イオン性液体の水への溶解度については、23±0.5℃の環境下で、水100gとイオン性液体5gを混合、撹拌し、1時間放置した。放置後、水とイオン性液体の混合状態を確認し、溶解しているものについては、溶解度が5g以上であると判断した。
上記イオン性液体の融点については、25℃保管時の性状を調べ、液体状態であるものは融点が25℃以下であると判断した。更に、材料物性表などで融点の記載のあるものは、その値を記載した。
【0133】
(実施例1〜11、比較例1〜3)
表1及び表2に従ったインクセットを、600dpi、1024ノズルの試作プリントヘッド(ドロップ量14ng)を用いて、FX−C2紙(富士ゼロックス社製)に印字した。尚、実施例1〜8及び比較例1〜3においては、インクのみを記録媒体に付与した。一方、実施例9〜11においては、インク、及び、処理液が記録媒体上互いに接するように印字する方法で行った。印字は、一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)で行った。インクと処理液を吐出する場合、1画素を形成するためのインクと処理液との付与量の質量比を1:0.2とした。
【0134】
《初期噴射性》
初期噴射性については、インクジェット記録装置にインクを充填し、ノズルチェックパターンを印字させ、吐出ノズル数を観察した。
−評価基準−
◎ … 全ノズル吐出
○ … 全ノズルのうち90%以上のノズルが吐出
△ … 全ノズルのうち80%以上90%未満のノズルが吐出
× … 全ノズルのうち80%未満のノズルが吐出
【0135】
《長期保管後噴射性》
長期保管後噴射性については、インクジェット記録装置にインクを充填し、キャップをせずに、一般環境下で15日間放置した。その後、ノズルチェックパターンを印字させ、吐出ノズル数を観察した。
−評価基準−
◎ … 全ノズル吐出
○ … 全ノズルのうち90%以上のノズルが吐出
△ … 全ノズルのうち80%以上90%未満のノズルが吐出
× … 全ノズルのうち80%未満のノズルが吐出
【0136】
<評価結果まとめ>
評価結果を表1〜2にまとめた。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
表1〜2に示したように、色材及びイオン性液体を含有するインクを用いた実施例1〜11では、長期保管時の噴射性に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図。
【図2】図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図。
【図4】図3のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0141】
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置
16 補給管
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも色材、イオン性液体、水を含有するインク。
【請求項2】
水100gに対する溶解度が5g以上であるイオン性液体を含有する請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記インクが、インクジェット方式に用いられるインクジェット用インクである請求項1または請求項2に記載のインク。
【請求項4】
前記イオン性液体が、有機陽イオンと陰イオンからなる化合物であり、かつ、該化合物の融点が25℃以下である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
前記イオン性液体の分子量が1000未満である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインク。
【請求項6】
前記イオン性液体の添加量がインク全体に対し質量比で1質量%以上75質量%未満である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインク。
【請求項7】
前記イオン性液体の有機陽イオンが、イミダゾリウム系、アンモニウム系、ピリジニウム系、またはピペリジニウム系からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のインク。
【請求項8】
前記イオン性液体の陰イオンが、リチウムイオン、臭素イオン、塩素イオン、乳酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、またはトリフルオロメタンスルフォネートの群の中から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のインク。
【請求項9】
前記色材が、染料、顔料、または着色微粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のインク。
【請求項10】
前記顔料が、自己分散顔料、高分子分散剤を用いて分散された顔料、またはマイクロカプセル顔料から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のインク。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインク及び少なくとも凝集剤を含有する処理液を少なくとも含むインクセット。
【請求項12】
前記凝集剤が、pKaが4.5以下である有機酸、無機電解質、有機アミン化合物からなる群の中から少なくとも選ばれる請求項11に記載のインクセット。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインク又は請求項11若しくは請求項12に記載のインクセットを用いて記録媒体上に画像を形成した記録物。
【請求項14】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインクを用いてインクを吐出するインク吐出方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインクをインクジェット方式を用いて記録媒体に付与する記録方法。
【請求項16】
前記請求項11又は請求項12に記載のインクセットを用いた記録方法であって、インク及び処理液を互いに接触するように記録媒体上に付与し、パターン又は画像を形成する記録方法。
【請求項17】
インクジェット方式を用いて前記インクセットからインク及び処理液を記録媒体に付与する請求項16に記載の記録方法。
【請求項18】
1画素を形成する前記インクと前記処理液の記録媒体に対する付与量が、質量比で1:20〜20:1の範囲である請求項16又は請求項17に記載の記録方法。
【請求項19】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインク又は前記請求項11若しくは請求項12に記載のインクセットを収納するインクタンク。
【請求項20】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のインクを吐出するインク吐出手段を備えたインク吐出装置。
【請求項21】
請求項19に記載のインクタンク及び該インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与するインク付与機構を備えた記録装置。
【請求項22】
前記請求項19に記載のインクタンク及び該インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与するインク付与機構を備えた記録装置であって、少なくともパターン又は画像の一部は、前記インク、及び処理液を用いてパターン又は画像を形成する記録装置。
【請求項23】
前記インク付与機構がインクジェット方式である請求項21 又は請求項22に記載の記録装置。
【請求項24】
記録媒体に、前記インクを1ドロップ当たり0.01ng以上25ng以下で付与する請求項23に記載の記録装置。
【請求項25】
1画素を形成するために付与される前記インク、及び、前記処理液の付与量が、質量比で1:20〜20:1である請求項22に記載の記録装置
【請求項26】
前記インクタンクまたは前記インク付与機構の少なくとも一部分を加熱する機構を備えた請求項21に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−206687(P2006−206687A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18646(P2005−18646)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】