説明

インクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法、プリンタシステム

【課題】往復印刷実行中におけるキャリッジの待機位置への移動に起因する画像の品質の低下を防止して、期待する印刷品質を維持することが可能なインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】待機要因が検出されると、キャリッジ駆動制御部66は、キャリッジ44を待機位置Pに移動させるとともに、主制御部63は、キャリッジ44が待機位置Pに移動する直前の移動方向を移動情報記憶部69に保存し、待機要因が解消すると、主制御部63は、移動情報記憶部69に記憶された移動方向に応じたキャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、キャリッジ44の移動を再開するようキャリッジ駆動制御部66に指示するとともに、実行中であった印刷処理を再開するよう印刷ヘッド制御部65に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷データに応じてキャリッジを第1の方向及び第1の方向と反対の第2の方向に交互に移動させ、キャリッジに搭載された印刷ヘッドによって画像形成を実行するインクジェットプリンタ、その制御方法及びそのインクジェットプリンタを備えたプリンタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主走査方向における印刷ヘッドの動作と副走査方向における紙送り動作とが同期して印刷を行うプリンタにおいて、印刷速度向上のため、印刷ヘッドの往路および復路の双方で印刷を行う、いわゆる往復印刷(双方向印刷)が知られている。この往復印刷は、近年広く普及しているインクジェットプリンタにおいても多く採用されている。しかしながら、インクジェットプリンタの印刷ヘッドは、一般にK(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、C(シアン)の各色に対応したノズル列が主走査方向に配列されているため、カラー画像を印刷すると、往路と復路とのインクの重なり順の違いによって色むらが発生するといった問題があった。そこで、画像データの中から無彩色成分を形成する色調のインクのドット数を算出し、色むらが生じにくいと判断した場合は往復印刷を行い、逆に色むらが生じやすいと判断した場合は一方向印刷を行うといった解決策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記の方法では、色むらが生じやすいか否かの判断が必要となると共に、その判断結果によっては一方向印刷を行うため、画像データの色調によってはスループットが大幅に低下するといった問題がある。つまり、印刷速度向上のために往復印刷を採用しているにも拘わらず、それを有効利用できないといった矛盾が生じていた。
【0004】
このため、印刷速度を低下させることなく、インクの重なり順の違いによる色むらを解消し、更なる画質の向上を図ることが望まれている。例えば、予め往復印刷に対応した色変換処理が施された印刷データをインクジェットプリンタに提供し、インクジェットプリンタはその印刷データに応じて往復印刷を実行するように設定されたプリンタシステムが提案されている。
【特許文献1】特開2003−305838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットプリンタで往復印刷を行うには、印刷データに応じてキャリッジの移動方向を交互に換えることによって、キャリッジに搭載された印刷ヘッドによる印刷方向を交互に換えて印刷を実行する場合が多い。この場合、往復印刷実行中に、フラッシングやインクカバーオープン等のキャリッジの移動方向の変換動作を妨げる要因が発生すると、印刷データに応じたキャリッジの移動方向の変換が正しく行われず、期待する印刷品質が得られない場合が生じる。
【0006】
例えば、図9に示すようにキャリッジ100が待機位置90と反対側の位置91に移動したときに、フラッシング動作が割り込まれると、キャリッジ100は一旦待機位置90へ戻り、待機位置90にてフラッシング動作を行う。通常、プリンタが受信する印刷データは単純に待機位置90側から(一方向から)の印刷を行うデータである。プリンタでは、キャリッジ100の1回の走査で実行される印刷データ(1Band分の印刷データ)毎にキャリッジ100の移動方向を切り替えて、印刷を交互に実行させている。このため、往復印刷実行中にキャリッジ100が一旦待機位置90へ戻ってしまい、移動方向の切り替えがうまくいかなかった場合には、次に実行される印刷は待機位置90方向からの印刷、すなわち往路印刷が実行されてしまう。本来は待機位置90と反対側の位置91からの印刷処理(すなわち復路印刷)に対応させて色変換処理が行われた印刷データを、往路印刷によって実行してしまうので、印刷データに応じた適切な印刷処理が実行されず、印刷品質を維持できない場合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、印刷データに応じてキャリッジの移動方向を変換させ、キャリッジに搭載された印刷ヘッドによる往復印刷を実行するインクジェットプリンタにおいて、往復印刷実行中におけるキャリッジの待機位置への移動に起因する画像の品質の低下を防止して、期待する印刷品質を維持することが可能なインクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及びプリンタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の手段によって達成される。
(1) 印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、
印刷データに応じて前記キャリッジを第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向に交互に移動させるキャリッジ駆動制御部と、
前記キャリッジに搭載され、前記第1の方向及び前記第2の方向に移動しながらインクを前記印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの動作を制御する印刷ヘッド制御部と、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出する待機要因検出部と、
前記キャリッジ駆動制御部及び前記待機要因検出部の状態を管理する状態管理部と、を有し、
前記待機要因が検出されると、前記キャリッジ駆動制御部は、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記状態管理部は、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記状態管理部は、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開するよう前記キャリッジ駆動制御部に指示するとともに、実行中であった前記画像形成を再開するよう前記印刷ヘッド制御部に指示することを特徴とするインクジェットプリンタ。
(2) 印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、該キャリッジに搭載され、第1の方向及び該第1の印刷方向と反対の第2の方向に交互に移動しながらインクを前記印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、を備えたインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出すると、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開させるとともに、実行中であった前記画像形成を再開することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
(3) 印刷対象となる画像データを記憶または生成するホストコンピュータと、
前記ホストコンピュータと通信可能に接続され、該ホストコンピュータからの印刷データに応じて印刷方向を第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向とに交互に切り替え、複数色のインクを用いて画像形成を実行するプリンタと、を備えたプリンタシステムであって、
前記ホストコンピュータは、
前記複数色のインクの混合比率を決定するための色処理テーブルと、
前記色処理テーブル上に存在しない値を推定するための補間演算処理を行う補間演算モジュールと、
前記画像データに対し、前記色処理テーブルおよび前記補間演算モジュールを用いて、前記複数色のインクに応じた色変換処理を行う色変換処理手段と、を有し、
前記色処理テーブルは、前記第1の方向用と前記第2の方向用との2つの色処理テーブルから成り、
前記色変換処理手段は、前記画像データを、第1の方向用の第1画像データと第2の方向用の第2画像データとに分解し、それぞれ前記色処理テーブルを参照して、前記色変換処理を行い、
前記プリンタは、
印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、
前記ホストコンピュータからの印刷データに応じて前記キャリッジを第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向に交互に移動させるキャリッジ駆動制御部と、
前記キャリッジに搭載され、前記第1の方向及び前記第2の方向に移動しながらインクを印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの動作を制御する印刷ヘッド制御部と、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出する待機要因検出部と、
前記キャリッジ駆動制御部及び前記待機要因検出部の状態を管理する状態管理部と、を有し、
前記待機要因が検出されると、前記キャリッジ駆動制御部は、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記状態管理部は、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記状態管理部は、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開するよう前記キャリッジ駆動制御部に指示するとともに、中断された前記画像形成を再開するよう前記印刷ヘッド制御部に指示することを特徴とするプリンタシステム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法によれば、画像形成の実行中に待機要因が検出されると、キャリッジが待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存するように構成されている。すなわち、キャリッジが待機位置に移動されることによって、印刷ヘッドによる画像形成が中断された場合でも、画像形成を再開するときは直前の移動情報を参照することが可能である。そして、キャリッジ駆動制御部はその移動情報に応じたキャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいてキャリッジの移動を再開するように設定されている。したがって、例えば第1の方向にキャリッジが移動され待機位置と反対側の位置(あるいは待機位置側)にキャリッジが位置していたときに待機要因が検出されてキャリッジが待機位置へ移動された場合でも、待機要因が解消すれば直前の移動情報に基づき待機位置と反対側の位置(あるいは待機位置側)にキャリッジを配置させてから第2の方向(あるいは第1の方向)にしたがってその移動を再開させることが可能である。
【0010】
つまり、待機要因によってキャリッジが待機位置に移動され印刷ヘッドによる画像形成が中断されても、直前の移動情報にしたがって、画像形成が中断されたときにキャリッジが配置されていた位置へ再配置させることができる。そして、その位置から印刷データに応じた本来のキャリッジ移動方向に基づいた画像形成を再開させるので期待する印刷品質を維持することが可能となる。
【0011】
また、本発明のプリンタシステムによれば、ホストコンピュータからの印刷データに応じてキャリッジを第1の方向及び第2の方向に交互に移動させて印刷ヘッドによる画像形成を実行する、いわゆる往復印刷を行うタイプのインクジェットプリンタを備えている。そして、ホストコンピュータは、画像データを第1の方向用の第1画像データと第2の方向用の第2画像データとに分解して、それぞれの画像データに対応する色処理テーブルを参照して、色変換処理を行うように設定されている。
【0012】
すなわち、ホストコンピュータ側からは、往復印刷における画像の品質の低下を考慮して、色むらを解消できるように予め実験値に基づいて作成された各色処理テーブルを参照して各画像データに色変換処理が施された印刷データが送信される。一方、インクジェットプリンタ側では、色変換処理が施された印刷データに応じて往復印刷を実行する。そして、往復印刷の実行中にキャリッジが待機位置へ移動する待機要因が検出された場合にはキャリッジを待機位置へ移動させ、待機要因が解消すれば直前の移動情報に基づき待機位置と反対側の位置(あるいは待機位置側)にキャリッジを位置させる。その後、印刷データに応じた本来のキャリッジ移動方向(本来の印刷方向)にしたがってその移動を再開し、印刷ヘッドによる画像形成を再開させることができる。
【0013】
したがって、キャリッジの待機要因が発生した場合でも、確実に、色変換処理が施された印刷データに応じた本来の印刷方向によって画像形成が実行されるので、キャリッジの待機要因に基づく画像の品質の低下を防止して、期待する印刷品質を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のインクジェットプリンタ、インクジェットプリンタの制御方法及びプリンタシステムの実施形態を詳細に説明する。本実施形態のホストコンピュータ20は、画像データを、キャリッジの待機位置から印刷を開始する往路印刷(第1の方向)用の往路画像データと待機位置と反対側から印刷を開始する復路印刷(第2の方向)用の復路画像データに分解し、それぞれ往路印刷用と復路印刷用の色処理テーブルを参照して、色変換処理を行う。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタシステム10のブロック図である。同図に示すように、プリンタシステム10は、各種データを記憶または生成すると共にこれを印刷データ(インク吐出データ)化するホストコンピュータ20と、ホストコンピュータ20から出力された印刷データに基づいて印刷を行うプリンタ40と、から成る。
【0016】
ホストコンピュータ20は、ハーフトーン処理(2値化処理)を必要とする各種データ(以下、「画像データ」と称する)を生成するためのプログラムであるアプリケーション21と、ホストコンピュータ20を制御するための基本プログラムであるOS(オペレーティングシステム)22と、色変換処理およびハーフトーン処理を含む画像処理やコマンド変換処理などを行うプリンタドライバ23と、プリンタ40に印刷データ(画像処理後の処理済みデータ)を出力する印刷データ出力部24と、を備えている。
【0017】
プリンタドライバ23は、レンダリング処理等を行うドライバ上位層25と、画像処理モジュール26と、から成る。画像処理モジュール26は、制御モジュール30、カラーマッチング&ハーフトーンモジュール(色変換処理手段)31およびコマンド変換モジュール32の3つのモジュールを有している。
【0018】
制御モジュール30は、カラーマッチング&ハーフトーンモジュール31と、コマンド変換モジュール32とを統括制御すると共に、各モジュール31,32の機能を補うための制御を行う。
【0019】
カラーマッチング&ハーフトーンモジュール31は、色処理LUT(色処理テーブル)33を参照して、カラーマッチング処理(色変換処理)を行い、ドット発生LUT34を参照して、インクのドットの有無を決定する。ドットの種類としては、例えば、レベル0:ドット無し、レベル1:小ドット、レベル2:中ドット、レベル3:大ドットという4種類のものが挙げられる。それらのうち、どのレベルを何パーセント採用するかを決定することができる。高画質をめざす場合は、4種類だけでなく更にドットの段階を細かく設定してもよい。また、カラーマッチング&ハーフトーンモジュール31は、補間演算モジュール27を有しており、カラーマッチング処理の際に、上記の色処理LUT33上に存在しない値を補間演算により推定する。
【0020】
また、コマンド変換モジュール32は、コマンド変換テーブル38を参照して、プリンタ40が解読可能なコマンド形式に変換するためのコマンド処理を行い、当該コマンド処理後のデータをコマンド処理バッファ39に出力する。
【0021】
一方、プリンタ40は、ホストコンピュータ20から出力された印刷データを入力(取得)する印刷データ入力部41と、入力した印刷データを一時的に格納する印刷バッファ42と、当該印刷バッファ42に格納された印刷データに基づいて往復印刷を行う印刷部43と、を備えている。
【0022】
印刷部43は、キャリッジ44、キャリッジモータ46、印刷ヘッド(インクジェットヘッド)47および紙送りモータ48を有しており、キャリッジモータ46により、印刷ヘッド47を搭載したキャリッジ44を主走査方向に往復移動させる。また、紙送りモータ48により、印刷用紙(印刷媒体)51(図3参照)を副走査方向に搬送させる。そして、これらキャリッジモータ46および紙送りモータ48の駆動と、印刷ヘッド47からのインクの吐出動作とを同期させることにより、所望の印刷画像を印刷用紙51上に形成する。
【0023】
次に、図2を参照し、キャリッジ44に搭載された印刷ヘッド47の構成について説明する。同図は、印刷ヘッド47のノズル面側から見た平面図であり、本実施形態では、1つのキャリッジ44上に、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、C(シアン)の各色に対応した4つの印刷ヘッド47が搭載されている。
【0024】
各印刷ヘッド47は、K→M→Y→Cの順に主走査方向(印刷媒体の移動方向に直交する方向)に配列されており、往路印刷においては、K→M→Y→Cの順にインクを吐出し、復路印刷においては、C→Y→M→Kの順にインクを吐出する。したがって、往路と復路とにおいてインクの吐出順序が異なるため、インクの重ね順序が変わってしまい、往路と復路で発色特性が変わる。したがって、双方向で同一の画像処理(色変換処理)を行うと、往路印刷領域と復路印刷領域との間に色むらが生じてしまう。このため、本実施形態では、カラーマッチング処理において、往路印刷用と復路印刷用の2つの色処理LUT33a,33b(図4参照)を利用し、このインクの吐出順序の違いを起因とする色むらを解消できるようになっている。
【0025】
また、各印刷ヘッド47は、副走査方向に沿って2本のノズル列52が形成されており、各ノズル列52には、それぞれ180dpiのピッチで180個のノズル53が配列されている。また、各印刷ヘッド47の2本のノズル列52は、ノズル53の配置を互いに半画素ずつずらしているため、実質的に各印刷ヘッド47は、360dpiのピッチにて一列にノズル53が配列されたものと同じ状態となっている。
【0026】
次に、図3を参照し、上記のキャリッジ44の動作について説明する。同図は、印刷用紙51とキャリッジ44との相対的な位置関係を示したものであり、キャリッジ44は印刷用紙51に対して図示矢印の方向に相対移動する。図示点線で示した位置を印刷開始位置(待機位置)Pとすると、まずキャリッジ44を主走査方向右側に移動させながら印刷を行う。また、印刷画像の右端まで印刷を終えると一旦キャリッジ44の移動を停止し、図示上方向への紙送りを待って、今度は主走査方向左側に移動させながら印刷を行う。そして、印刷画像の左端まで印刷を終えるとまたキャリッジ44の移動を停止し、図示上方向への紙送り後、再度主走査方向右側に向かって印刷を行う。
【0027】
このように、主走査方向の印刷と副走査方向の紙送り動作とを繰り返しながら、印刷を行っていくが、以後、主走査方向右側に移動する際の印刷を「往路印刷」と称し、主走査方向左側に移動する際の印刷を「復路印刷」と称する。また、往路印刷または復路印刷によって印刷される印刷領域の印刷画像に相当する1パス分の画像データを「部分画像データ」と称する。
【0028】
すなわち、アプリケーション21によって生成された画像データは、上記のプリンタドライバ23によって、n個の部分画像データ(但し、n≧1となる整数)に分割され、このうち最初の部分画像データ(第1部分画像データ)が最初の往路印刷によって印刷される。また、2番目の部分画像データ(第2部分画像データ)が続く復路印刷によって印刷され、3番目の部分画像データ(第3部分画像データ)が続く往路印刷によって印刷される。つまり、奇数番目の部分画像データが往路印刷、偶数番目の部分画像データが復路印刷で印刷されることとなる。なお、画像データ(n個の部分画像データ)に基づく全印刷画像の印刷を終えると、キャリッジ44を、印刷開始位置Pまで移動させ、次の印刷指示まで待機する。
【0029】
(ホストコンピュータの画像処理について)
次に、図4を参照し、プリンタドライバ23における各種処理の概要並びに工程について説明する。プリンタドライバ23は、アプリケーション21(図1参照)によって生成された画像データを取得すると、まずドライバ上位層25により、レンダリングを行う(S01)。レンダリングとは、数値データとして与えられた物体や図形に関する情報を、計算によって画像化する処理であり、取得した画像データが数値データに相当する場合に当該処理を実行する。
【0030】
続いて、プリンタドライバ23は、画像処理モジュール26により、カラーマッチング処理を行う(S02)。ここでは、往路印刷用と復路印刷用の2つの色処理LUT33a,33b、並びに補間演算モジュール27を用いて、RGB多値データをCMYKインク多値データに色変換する。
【0031】
カラーマッチング処理を終えると、続いてハーフトーン処理を行う(S03)。ここでは、カラーマッチング処理の処理結果、並びに往路印刷用と復路印刷用の2つのドット発生LUT34a,34bの参照結果に基づいて、部分画像データごとに誤差拡散法を用いたハーフトーン処理を行う。
【0032】
なお、本実施形態では、往路印刷用と復路印刷用の2つのドット発生LUT34a,34bは同一の内容であるため、画像処理モジュール26内に1つだけ備え、これを双方向の印刷時に用いるようにしても良い。また、ドット発生LUT34a,34bの内容を、往路印刷用と復路印刷用とで変更し、更なる画質の向上を図っても良い。
【0033】
そして、ハーフトーン処理を終えると、その2値化データ(例えば、レベル0:ドット無し、レベル1:小ドット、レベル2:中ドット、レベル3:大ドットの4種類のデータ。高画質をめざす場合は4種類だけでなくドットの段階が更に細かく設定されたデータ)に基づいて、コマンド変換処理を行い(S04)、プリンタ40に出力する。なお、S02〜S04までの処理は、いずれも画像処理モジュール26によって実行されるものである。
【0034】
次に、図5を参照し、上述した往路印刷用と復路印刷用の2つの色処理LUTについて、詳細に説明する。図5は、往路印刷用と復路印刷用の2つの色処理LUT(往路用色処理LUT33a,復路用色処理LUT33b)の一例を示したものである。色処理LUT33a,33bは、上記のとおりRGB(加色混合の割合)をCMYK(減色混合の割合)に変換するための色変換テーブルであり、RGBの各8bit(十進で0〜255)データをCMYKの各8ビット(十進で0〜255)に割り当てるものである。高画質を目指す場合は8ビットでなく16ビットなどの多ビットを割り当てて分解能を向上させることができる。また、色処理LUT33a,33bは、バイナリデータの羅列によって構成され、図示の通りCMYKの順に並べてデータが列記されている(C1M1Y1K1,C2M2Y2K2・・・CnMnYnKn)。
【0035】
但し、RGB全ての組み合わせは、256(0〜255)の3乗=約1677万通り存在するため、これらの組み合わせを全てテーブル上に記載するのは現実的でない。そこで、予め特定のRGBの値を決めておき、その値に対応するCMYKの値(インク吐出量を決定するための値)だけを、各色処理LUT33a,33bに記載している。したがって、例えばRGBを各10グリッドとした場合は、10の3乗=1000グリッドで各色処理LUT33a,33bを構成することとなる。グリッド数は出力する色の精度に影響を与え、当然多いほうが精度は向上するが、容量が大きくなるなどの弊害も生じるため、製品とのバランスを考慮して決定される。同図(a),(b)は、各色処理LUT33a,33bの一部を示したものである。
【0036】
例えば、同図(a)に示すように、往路印刷の対象となる画像データ(奇数番目の部分画像データ)に含まれる任意の画素の加色混合の割合が、R=100,G=30,B=90(十進法)であり、往路用色処理LUT33aに、対応する減色混合の割合(CMYKの組み合わせ)が存在する場合、その減色混合の割合(C=40,M=120,Y=34,B=63(十進法))に基づいて各色のインク量を決定する。
【0037】
また、同図(b)に示すように、復路印刷の対象となる部分画像データ(偶数番目の部分画像データ)に含まれる任意の画素の加色混合の割合が、同じくR=100,G=30,B=90(十進法)であり、復路用色処理LUT33bに、対応する減色混合の割合(CMYKの組み合わせ)が存在する場合、その減色混合の割合(C=35,M=128,Y=35,B=66(十進法))に基づいて各色のインク量を決定する。
【0038】
このように、同じ加色混合の割合であっても、往路用色処理LUT33aと復路用色処理LUT33bに記載されている減色混合の割合は、必ずしも一致しない。これは、インクの重なり順序の違いを考慮したものであり(往路印刷においてはK→M→Y→Cの順、復路印刷においてはC→Y→M→Kの順にインクを吐出する,図2および図3参照)、これによって往路印刷を行った印刷領域と復路印刷を行った印刷領域との色むらを防止している。
【0039】
ところで、上記のように、各色処理LUT33a,33bを1000グリッドとした場合、このグリッド数では、実際の処理に対応できないため、グリッド数をRGBすべての組み合わせのグリッドに拡張する必要がある。そこで、本実施形態では、補間演算モジュール27(図4参照)を用いて補間演算を行い、グリッド上に存在しないRGBの値に基づくCMYKの値を推定するようにしている。
【0040】
(プリンタ側の印刷処理について)
次に、上述のようにホストコンピュータ20の画像処理モジュール26によって画像処理され、コマンド変換モジュール32によってコマンド処理されたのち、印刷データ出力部24から出力された印刷データを、プリンタ40が受信した場合のプリンタ40の印刷処理について詳細に説明する。図6は、プリンタ40側が行う印刷処理に着目した機能ブロック図である。
【0041】
図6に示すように、プリンタ40は、ホストコンピュータ20から送信され、プリンタ40に入力された印刷データの内容を解析するコマンド解析部61を有する。入力された印刷データを解析して制御コマンドデータであると解析すると制御コマンドバッファ62に、ホストコンピュータ20の画像処理モジュール26によって色変換処理された画像データであると解析すると印刷バッファ42に、入力された印刷データを一時的に保存する。
【0042】
制御コマンドバッファ62に一時保存された制御コマンドデータは、主制御部63(状態管理部)によって読み出されて、搬送制御部67を介して紙送りモータを駆動させることによって図示せぬ搬送ローラを回転させて印刷用紙搬送処理を実行する等、各制御コマンドに応じた処理が実行される。一方、印刷バッファ42に一時保存された色変換処理後の画像データは、印刷データ生成部62によってデータ展開処理が行われ、最終的には印刷ヘッド47のノズル列52に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファ42に記憶される。
【0043】
印刷ヘッド47、キャリッジ44及び紙送りモータ48の動作による印刷処理の観点では、印刷ヘッド制御部65と、キャリッジ駆動制御部66と、搬送制御部67と、待機要因検出部68と、移動情報記憶部69とを備えている。印刷ヘッド制御部65は印刷ヘッド47の駆動を制御し、印刷データ生成部64によって生成されたビットパターンデータに応じてノズル列52からのインクの吐出を制御する。
【0044】
キャリッジ駆動制御部66は、キャリッジモータ46を駆動させてキャリッジ44の動作を制御する。また、部分画像データ毎にキャリッジ44の移動方向を往路方向と復路方向とに交互に切り替える。さらに、待機要因が生じた場合にはキャリッジ44を待機位置まで移動させる。待機要因については後ほど説明する。
【0045】
搬送制御部67は、紙送りモータ48を駆動させて図示せぬ搬送ローラの回転動作を制御する。本実施形態ではキャリッジ44が主走査方向に1回駆動することによって部分画像データの印刷を実行する毎に、搬送ローラを所定量だけ回転し部分画像データ分に相当する搬送量だけ印刷用紙51を紙の搬送方向(図8参照)に搬送させる。
【0046】
待機要因検出部68は、往復印刷実行中にキャリッジ44を待機位置Pに移動させる待機要因を検出する。ここで、待機要因とは、キャリッジを待機位置Pに戻さなければならない事情であって、具体的には、フラッシング動作、インクカバーオープンやデータの遅延等が挙げられる。すわなち、フラッシング動作では、印刷ヘッド47のノズル列52の目詰まり解消を目的としてノズルからインクを少量吐出させるために待機位置へ移動させる。インクカバーオープンやデータ遅延では、インクカートリッジの交換等に伴ってインクカバーがオープンされたときあるいはデータ遅延によって印刷処理が一時的に停止状態にあるときに、ノズル列52の乾燥防止を目的として印刷ヘッド47をキャッピングするために待機位置へ移動させる。
【0047】
移動情報記憶部69は、キャリッジ44が待機位置Pに移動する直前のキャリッジ44の移動方向(移動情報)が保存される記憶部である。具体的には、待機位置Pに移動する直前にキャリッジ44が往路方向に移動していたら、「往路」を記憶し、待機位置Pに移動する直前にキャリッジ44が復路方向に移動していたら、「復路」を記憶する。
【0048】
なお主制御部63は、印刷ヘッド制御部65、キャリッジ駆動制御部66、搬送制御部67及び待機要因検出部68の処理状態を管理している。主制御部63による各制御部及び検出部の処理状態の管理については後ほど説明する。
【0049】
次に、図7及び図8を参照して、往復印刷実行中に待機要因が検出された場合のキャリッジ44の駆動制御について詳細に説明する。ここでは、待機要因としてフラッシング動作指示が検出された場合を一例として挙げる。以下では、主制御部63が、どのタイミングでキャリッジ44の移動方向を移動情報記憶部69に保存し、待機要因が解消されたときには、キャリッジ駆動制御部66にどのようなキャリッジ44の移動再開指示を与えるかについて説明する。図7は、往復印刷実行中に待機要因が検出された場合のキャリッジ44の駆動制御を説明するフローチャートであり、図8は、図7のフローチャートに従って駆動制御が実行された場合に得られる印刷結果を模式的に表した図である。
【0050】
ホストコンピュータ20のプリンタドライバ23によって色変換処理された印刷データが、プリンタ40の印刷データ入力部41に入力されると、コマンド解析部61によって解析され、制御コマンドバッファ62、印刷バッファ42のそれぞれにデータが振り分けられる。主制御部63は、制御コマンドバッファ62を参照し印刷コマンド等を読み出すと、印刷バッファ42に保存された画像データにしたがって印刷処理を実行する。すなわち、主制御部63は印刷コマンドに応じて印刷ヘッド制御部65及びキャリッジ駆動制御部66を介して印刷ヘッド47及びキャリッジ44を駆動させつつ、搬送コマンドに応じて搬送制御部67を介して紙送りローラを駆動させて印刷処理を実行する(ステップS11)。
【0051】
本実施形態では、プリンタドライバ23で色変換処理が行われ、往路印刷用の部分画像データあるいは復路印刷用の部分画像データとして、プリンタ40に送信された部分画像データに応じて、キャリッジ駆動制御部66は往路方向あるいは復路方向の移動を指示する。図8に示すように、第1部分画像データの場合には往路方向の移動を指示することによって往路印刷が実行され、第2部分画像データの場合には復路方向の移動を指示することによって復路印刷が実行される。以後同様に、奇数部分画像データに対しては往路印刷が実行され、偶数部分画像データに対しては復路印刷が実行される。この場合、部分画像データを印刷する毎にキャリッジを待機位置側へ戻して待機位置側からの印刷のみを実行する単方向印刷と異なり、キャリッジ44を部分画像データ毎に待機位置側へ移動させる必要がないので無駄なキャリッジ移動を省くことができるので、印刷処理のスループットを向上させることが可能である。
【0052】
第5部分画像データに応じた往路印刷が実行されたときに、待機要因検出部68がフラッシング動作指示を検出すると(ステップS12:Yes)、キャリッジ駆動制御部66は、待機位置Pと反対側の位置Qに配置されているキャリッジ44を待機位置Pへ移動させる(ステップS13)。そして、主制御部63は、キャリッジ44が待機位置Pに移動する直前の移動方向(ここでは、「往路方向」)を移動情報記憶部69に保存する(ステップS14)。
【0053】
待機位置Pにおいて印刷ヘッド47のフラッシング動作が終了すると(ステップS15:Yes)、主制御部63は待機要因が解消したと判断し、移動情報記憶部69に記憶された移動情報「往路方向」に応じたキャリッジ44の移動再開位置及び移動方向に基づいて、キャリッジ44の移動を再開するようにキャリッジ駆動制御部66に指示する。これとともに、実行中であった印刷処理を再開するよう印刷ヘッド制御部65に指示する。すなわち、移動情報「往路方向」に応じて、キャリッジ駆動制御部66は次に移動する移動方向を「往路方向」から「復路方向」へ変換し、移動再開位置を「待機位置Pと反対側の位置Q」として指示する。
【0054】
キャリッジ駆動制御部66が、キャリッジ44を「待機位置Pと反対側の位置Q」へ移動させてから(ステップS16)、「復路方向」に移動させて第6部分画像データからの印刷処理を再開する(ステップ17)。以降、主制御部63は、全ての印刷データ(ここでは第9部分画像データまで)の印刷が終了するまで待機要因の発生を監視し、待機要因が発生すると上述したキャリッジ駆動制御を実行する(ステップS18)。
【0055】
なお、本実施形態では、第5部分画像データに応じた往路印刷が実行されたときに、待機要因が発生した場合を前提に説明したが、逆方向の印刷が実行されていたときに、待機要因が発生した場合にも適用することが可能である。すなわち、ステップS11で第6部分画像データに応じた復路印刷が実行されたときに、待機要因検出部68がフラッシング動作指示を検出した場合には(ステップS12:Yes)、キャリッジ駆動制御部66は、そのまま待機位置Pへキャリッジ44を配置させ(ステップS13)、主制御部63は、キャリッジ44が待機位置Pに移動する直前の移動方向(この場合には、「復路方向」)を移動情報記憶部69に保存する(ステップS14)。
【0056】
待機位置Pにおいて印刷ヘッド47のフラッシング動作が終了すると(ステップS15:Yes)、主制御部63は待機要因が解消したと判断し、移動情報記憶部69に記憶された移動情報「復路方向」に応じたキャリッジ44の移動再開位置及び移動方向に基づいて、キャリッジ44の移動を再開するようにキャリッジ駆動制御部66に指示する。これとともに、実行中であった印刷処理を再開するよう印刷ヘッド制御部65に指示する。すなわち、移動情報「復路方向」に応じて、キャリッジ駆動制御部66は次に移動する移動方向を「復路方向」から「往路方向」へ変換し、移動再開位置を「待機位置P」として指示する。
【0057】
キャリッジ駆動制御部66が、キャリッジ44が既に配置されている「待機位置P」から「往路方向」に移動させて第7部分画像データからの印刷処理を再開する(ステップS16、ステップ17)。
【0058】
本実施形態では待機要因をフラッシング動作として説明したが、これに限らず、キャリッジ44の待機位置への移動を伴う要因であって、印刷動作ではない要因が含まれる。具体的には、インクカバーオープンや紙詰り等のプリンタ40がオフライン状態に陥る要因や、データの遅延等であってもよい。
【0059】
このように、本実施形態のプリンタシステム10によれば、ホストコンピュータ20側からは、往復印刷における画像の品質の低下を考慮して、色むらを解消できるように予め実験値に基づいて作成された往路用色処理LUT33a及び復路用色処理LUT33bを参照して往路印刷用の画像データ及び復路印刷用の画像データに対してそれぞれ色変換処理が施された印刷データが送信される。一方、プリンタ40側では色変換処理が施された印刷データに応じて往復印刷を実行する。そして、往復印刷の実行中にキャリッジ44が待機位置Pへ移動する待機要因が検出された場合にはキャリッジ44を待機位置Pへ移動させ、待機要因が解消すれば直前の移動方向に基づき待機位置と反対側の位置Q(あるいは待機位置P)にキャリッジ44を位置させる。そして、キャリッジ44の移動方向を各印刷方向用の印刷データに応じた本来のキャリッジ移動方向(本来の印刷方向)に変換させて、印刷ヘッド47による印刷処理を再開させることができる。
【0060】
したがって、キャリッジ44の待機要因が発生した場合でも、確実に、色変換処理が施された各印刷方向用の印刷データに応じた本来の印刷方向によって印刷処理が実行されるので、キャリッジ44の待機要因に基づく画像の品質の低下を防止して、期待する印刷品質を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係る印刷システムのブロック図である。
【図2】本実施形態のプリンタが備えるキャリッジの構成を示す図である。
【図3】キャリッジの動作を説明するための図である。
【図4】プリンタドライバにおける各種処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】色処理LUTの一例を示す図である。
【図6】本実施形態のプリンタが行う印刷処理に着目した機能ブロック図である。
【図7】往復印刷実行中に待機要因が検出された場合のキャリッジの駆動制御を説明するフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートに従ってキャリッジの駆動制御が実行された場合に得られる印刷結果を模式的に表した図である。
【図9】従来の往復印刷による印刷結果を模式的に表した図である。
【符号の説明】
【0062】
10:プリンタシステム,20:ホストコンピュータ,23:プリンタドライバ,26:画像処理モジュール,31:カラーマッチング&ハーフトーンモジュール,33:色処理LUT,34:ドット発生LUT,35:誤差バッファ,36:データバッファ,40:プリンタ,43:印刷部,44:キャリッジ,47:印刷ヘッド,51:印刷用紙,63:主制御部,65:印刷ヘッド制御部,66:キャリッジ駆動制御部,67:搬送制御部,68:待機位置検出部,69:移動情報記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、
印刷データに応じて前記キャリッジを第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向に交互に移動させるキャリッジ駆動制御部と、
前記キャリッジに搭載され、前記第1の方向及び前記第2の方向に移動しながらインクを前記印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの動作を制御する印刷ヘッド制御部と、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出する待機要因検出部と、
前記キャリッジ駆動制御部及び前記待機要因検出部の状態を管理する状態管理部と、を有し、
前記待機要因が検出されると、前記キャリッジ駆動制御部は、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記状態管理部は、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記状態管理部は、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開するよう前記キャリッジ駆動制御部に指示するとともに、実行中であった前記画像形成を再開するよう前記印刷ヘッド制御部に指示することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、該キャリッジに搭載され、第1の方向及び該第1の印刷方向と反対の第2の方向に交互に移動しながらインクを前記印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、を備えたインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出すると、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開させるとともに、実行中であった前記画像形成を再開することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項3】
印刷対象となる画像データを記憶または生成するホストコンピュータと、
前記ホストコンピュータと通信可能に接続され、該ホストコンピュータからの印刷データに応じて印刷方向を第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向とに交互に切り替え、複数色のインクを用いて画像形成を実行するプリンタと、を備えたプリンタシステムであって、
前記ホストコンピュータは、
前記複数色のインクの混合比率を決定するための色処理テーブルと、
前記色処理テーブル上に存在しない値を推定するための補間演算処理を行う補間演算モジュールと、
前記画像データに対し、前記色処理テーブルおよび前記補間演算モジュールを用いて、前記複数色のインクに応じた色変換処理を行う色変換処理手段と、を有し、
前記色処理テーブルは、前記第1の方向用と前記第2の方向用との2つの色処理テーブルから成り、
前記色変換処理手段は、前記画像データを、第1の方向用の第1画像データと第2の方向用の第2画像データとに分解し、それぞれ前記色処理テーブルを参照して、前記色変換処理を行い、
前記プリンタは、
印刷媒体の移動方向に直交する方向に移動するキャリッジと、
前記ホストコンピュータからの印刷データに応じて前記キャリッジを第1の方向及び前記第1の方向と反対の第2の方向に交互に移動させるキャリッジ駆動制御部と、
前記キャリッジに搭載され、前記第1の方向及び前記第2の方向に移動しながらインクを印刷媒体に吐出して画像形成を行う印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドの動作を制御する印刷ヘッド制御部と、
前記画像形成の実行中に前記キャリッジを待機位置に移動させる待機要因を検出する待機要因検出部と、
前記キャリッジ駆動制御部及び前記待機要因検出部の状態を管理する状態管理部と、を有し、
前記待機要因が検出されると、前記キャリッジ駆動制御部は、前記キャリッジを前記待機位置に移動させるとともに、前記状態管理部は、前記キャリッジが前記待機位置に移動する直前の移動情報を所定の記憶部に保存し、
前記待機要因が解消すると、前記状態管理部は、前記記憶部に記憶された前記移動情報に応じた前記キャリッジの移動再開位置及び移動方向に基づいて、前記キャリッジの移動を再開するよう前記キャリッジ駆動制御部に指示するとともに、中断された前記画像形成を再開するよう前記印刷ヘッド制御部に指示することを特徴とするプリンタシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−245651(P2007−245651A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75258(P2006−75258)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】